説明

光学読み取り帳票

【課題】不織布に印字された光学読み取りコードの読み取り性能を向上させる。
【解決手段】不織布からなる基材2に光学読み取りコード3を印字した光学読み取り帳票1において、光学読み取りコード3に対応する基材2の光学読み取りコード3の印字面とは反対側の面に紫外線硬化型インキまたは酸化重合型インキを塗布した遮蔽層4を設けることにより、基材2を透けにくくして、対象物の影響を受けないようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布に光学読み取りコードを印字した光学読み取り帳票に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基材にバーコードや二次元コードなどのいわゆる光学読み取りコードを印字した帳票の中で、基材の材料に不織布を使用したものが知られている(例えば下記の特許文献1を参照)。同文献に記載されているのは、生鮮食品、冷凍食品又は加工食品などに同封される保冷材として使用される食品包装用不織布である。この食品包装用不織布は、中に保冷材を詰め込めるように基材の不織布が袋状になっており、その不織布の表面に、水性インキを使用して食品に関する情報が二次元コードで印刷されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−261613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された食品包装用不織布のように、基材の材料に不織布を使用した場合、不織布は紙などに比べて破れにくく、耐久性に優れるという利点がある。ところがその反面、不織布は繊維同士を結合してなるため、薄くて透けやすく、印字した光学読み取りコードが対象物の影響を受けて読み取りに支障を来たすという問題がある。また、使用環境下において、不織布が水に濡れた状態になると、光反射率が低下したり対象物に貼り付いたりするため、更に読み取り性能が低下するという問題もある。
【0005】
本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、その第1の目的は、不織布に光学読み取りコードを印字した光学読み取り帳票において、対象物の影響を受けにくくして光学読み取りコードの読み取り性能を向上させることにある。また、本発明の第2の目的は、水に濡れた状態でも光反射率の低下や対象物への貼り付きを防ぎ、高い読み取り性能を維持することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記第1の目的を達成するため、本発明に係る光学読み取り帳票は、不織布からなる基材に光学読み取りコードが印字され、この光学読み取りコードに対応する基材の光学読み取りコードの印字面とは反対側の面に、紫外線硬化型インキまたは酸化重合型インキを塗布した遮蔽層が設けられていることを特徴とする。
【0007】
また、上記第2の目的を達成するため、本発明に係る光学読み取り帳票は、不織布からなる基材に光学読み取りコードが印字され、この光学読み取りコードに対応する基材の光学読み取りコードの印字面とは反対側の面に、紫外線硬化型インキまたは酸化重合型インキにシリコーン含有の剥離ニスを混合したインキを塗布した撥水性遮蔽層が設けられていることを特徴とする。
【0008】
上記の構成からなる光学読み取り帳票において、紫外線硬化型インキまたは酸化重合型インキに酸化チタンが含有されていることが好ましく、また、遮蔽層が不織布とは異なる色で形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る光学読み取り帳票によれば、基材に不織布を用いているため、紙などの材料に比べて破れにくく、屋外で使用するのに好適な耐久性が得られる。また、光学読み取りコードの裏面に遮蔽層が設けられていて、基材が透けにくくなっている。このため、光学読み取りコードを光学読み取り装置で機械読み取りする際に、対象物の影響を受けないので、読み取りエラーの発生を防止することができ、読み取り性能が向上する。
【0010】
また、本発明に係る光学読み取り帳票によれば、屋外で使用した時に雨などで濡れた場合でも撥水性遮蔽層が水分をはじき、不織布からなる基材への浸透が阻止される。したがって、基材が透けて光反射率が低下することがなく、かつ、基材が対象物に貼り付きにくくなるので、高い読み取り性能を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る光学読み取り帳票の構成例を示す平面図である。
【図2】図1に示すA−A線断面図である。
【図3】本発明に係る光学読み取り帳票の他の構成例を示す断面図である。
【図4】本発明に係る光学読み取り帳票の更に他の構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、願書に添付した図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の光学読み取り帳票1は、特に屋外で物品(例えば建築用木材など)を管理するための表示札として使用されるものであり、耐久性を持たせるため、基材2に不織布を使用して構成されている。また、基材2の表面には物品に関する識別情報が光学読み取りコード3で印字されており、この光学読み取りコード3に対応する基材2の光学読み取りコード3が印字される面とは反対側の面(裏面)に遮蔽層4が設けられている。
【0014】
基材2を構成する不織布は、その原料については特に限定されず、例えばポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維などの各種の合成樹脂繊維を使用することができる。中でも特に、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維のような融点の高い耐熱性を有する原料を使用すれば、光学読み取りコード3をレーザービーム方式のノンインパクトプリンタ(以下「レーザーNIP」という)で印字することができるので好ましい。市販の不織布としては、PET繊維不織布「E05070−R02」(旭化成せんい(株)製)を使用することができる。なお、不織布の加工方法としては様々な方法が考えられるが、例えばスパンボンド法(熱可塑性高分子を溶融させて連続した長繊維状に吐出しながら形成し、プレスして固める方法)を利用して所望の形状に加工すれば良い。
【0015】
光学読み取りコード3は、バーコードリーダ等の光学読み取り装置によって光学的に機械読み取り可能なデータを印字したコードをいい、バーコードや二次元コードを含む。バーコードとしては、例えばJAN、ITF、CODE39、CODE128などが、二次元コードとしては、例えばQRコード、PDF417、データマトリックス、MaxiCodeなどが挙げられる。本実施形態では、図示したように光学読み取りコード3がQRコードであり、レーザーNIPを使用することにより、物品に関する識別情報がQRコードで印字されている。
【0016】
遮蔽層4は、光の透過を阻止するために設けられたもので、不織布の上に屈折率の高い顔料(例えば酸化チタン[TiO2]など)が含有された紫外線硬化型インキを塗布することにより形成されている。市販のインキとしては、紫外線硬化型インキ「ベストキュアーUV NVR白」((株)T&K TOKA製)を使用することができる。ここで、遮蔽層4を形成する面を光学読み取りコード3の印字面とは反対側の面とした理由は、基材2の表面に紫外線硬化型インキを塗布しその上にレーザーNIPで印字すると、トナーが定着しにくく、鮮明な光学読み取りコード3を印字するのが難しいからである。なお、遮蔽層4の形成箇所は、図2に示すように、少なくとも光学読み取りコード3を印字した部分が覆われる範囲に形成されていれば良い。
【0017】
また、遮蔽層4を構成するインキに、不織布の色とは異なる色であって、光学読み取りに影響の少ない色(例えば黄色)を添加すると、不織布の印字面を判別しやすくなるので好ましい。市販の添加インキとしては、例えば紫外線硬化型インキ「ベストキュアーUV NVR黄」((株)T&K TOKA製)を使用することができる。ただし、添加インキの色は黄色に限られない。この添加インキを上記の紫外線硬化型インキ「ベストキュアーUV NVR白」に対してそれぞれ0.5%、1.0%、3.0%含有させたものを不織布に塗布して遮蔽層4を形成したところ、いずれも良好に光学読み取りを行えることが確認された。なお、遮蔽層4を構成するインキの塗布厚は、少なくとも0.5μm以上であれば良い。特に0.5〜2.0μmの範囲内であると、印刷加工上好ましい。
【0018】
本実施形態の光学読み取り帳票1は上記のとおりに構成されており、基材2の材料に不織布を用いているため、紙などの材料に比べて破れにくく、屋外での使用に好適な耐久性が得られる。また、光学読み取りコード3の裏面には遮蔽層4が設けられており、基材2の表面と裏面の間を透過する光が遮蔽されて透けにくくなっている。
【0019】
したがって、光学読み取りコード3を光学読み取り装置で機械読み取りする際に、この帳票1を取り付けた物品の色や模様などの干渉を受けないので、読み取りエラーの発生を防止することができ、その読み取り性能が向上する。
【0020】
ところで上述した実施形態では、遮蔽層4の形成箇所を光学読み取りコード3の印字部分に限定したが、これに替えて、図3に示すように、基材2の裏面全体を覆うような遮蔽層4を設けても良い。このような構造によると、基材2の表面に光学読み取りコード3以外の情報として、例えば文字や識別番号などの目視で確認する情報(目視情報)5が印字されている場合に、目視情報5とその背景とのコントラストが高くなり、目視情報5の視認性が高まって確認しやすくなるという利点がある。
【0021】
また、光学読み取り帳票1が屋外での雨や雪などの厳しい環境下で使用されることを考慮すると、上記の遮蔽層4に撥水性を持たせておくことが好ましい。そこで、図4に示すように、基材2の裏面全体にわたって撥水性の遮蔽層6を設けても良い。この撥水性遮蔽層6は、上述した紫外線硬化型インキに、表面滑性に優れたシリコーン系剥離剤が含有された剥離ニスを混合してなるインキを使用し、この混合インキを不織布の上に塗布することにより形成されている。なお、市販の剥離ニスとしては、紫外線硬化型剥離ニス「ベストキュアーUVハクリOPニスUP−200」((株)T&K TOKA製)を使用することができ、この剥離ニスと上記の紫外線硬化型インキ「ベストキュアーUV NVR白」(同)を1:9の割合で混合することで所望の撥水効果が得られる。
【0022】
このような構造によると、光学読み取り帳票1を屋外で使用した時、雨などによって濡れてしまった場合でも、撥水性遮蔽層6が水分をはじき、不織布からなる基材2への浸透が阻止される。したがって、基材2が透けにくく光反射率が低下せず、しかも、撥水性遮蔽層6が間に介在することによって基材2が対象物に貼り付きにくくなるので、高い読み取り性能を維持することができる。なお、上述した実施形態では、遮蔽層4あるいは撥水性遮蔽層6を構成するインキに紫外線硬化型インキを使用したが、これに替えて、酸化重合型インキを使用しても同様な作用効果が得られる。
【0023】
最後に、本発明の作用効果を実証データに基づいて説明する。その方法は、不織布にインキを塗布して遮蔽層を設けたもの(実施例)と、遮蔽層を設けないもの(比較例)を用意し、不織布に印字したQRコードの読み取り性能を評価した。その評価結果を以下の表1に示す。
【0024】
使用した材料、装置及び評価方法は以下のとおりである。
*不織布
PET繊維不織布「E05070−R02」旭化成せんい(株)製
サイズ:A4判(210mm×297mm)
*インキ
紫外線硬化型インキ「ベストキュアーUV NVR白」(株)T&K TOKA製
*QRコード
セルピッチ:0.423mm
コードサイズ角:12.267mm(セル数29×セルピッチ0.423mm)
*装置
QRコード検証ソフトウェア「QRチェッカー」(株)デンソーウェーブ製
*評価方法
QRコードを印字した不織布を水に浸漬させて十分に濡らした状態とし、QRチェッカーでグレードを評価した(比較例1〜4)。QRチェッカーでの評価時は、不織布のQRコード印字面の反対側に黒紙を当てて測定し、「黒当て」とした。「黒当て1」と「黒当て2」は測定箇所を変えて測定したものである。また、不織布のQRコード印字面の反対側にインキで白色印刷を行い、同条件の下、QRチェッカーでグレードを評価した(実施例1〜4)。
【0025】

【0026】
各評価項目の内容と判定結果は以下のとおりである。
【0027】
〔総合グレード〕
総合グレードは、リファランスデコードから誤り訂正未使用率までの評価の中で最も低い評価(A〜F)が採用される。判定結果を見ると、比較例1は判定不可能であり、比較例2、3及び4はいずれもF判定であった。これに対して、実施例3はB判定であったものの、その他の実施例1、2及び4はすべてA判定であった。
【0028】
〔リファランスデコード〕
リファランスデコードは、デコード可能かどうかを評価するものである。判定結果を見ると、比較例のうち、比較例2では正常にデコードすることができたものの、比較例1ではコードを認識することができず、比較例3と4では誤り訂正エラーが発生した。これに対して、実施例1〜4はすべて正常にデコードすることができた。
【0029】
〔シンボルコントラスト〕
シンボルコントラストは、白セルと黒セルの反射率の差を評価するものである。判定結果を見ると、比較例1は反射率の差を認識することができず、これ以外の比較例2、3及び4はすべてコントラストがやや低いB判定であった。これに対して、実施例1〜4はすべてA判定であり、高いコントラストを維持することができた。
【0030】
〔印刷拡張〕
印刷拡張は、タイミングパターンの部位のみを計測し、印刷の安定性を評価する指標になる。平均セルピッチに対して、黒セルの長さが±15%未満の太り/細りがグレードAと判定され、±30%以上の場合にグレードFと判定される。判定結果を見ると、比較例1で計測不可能であったのを除けば、比較例2〜4、並びに実施例1〜4はすべてA判定であり、セルの太り/細りに関しては大きな差異は見られなかった。
【0031】
〔軸の非均一性〕
軸の非均一性は、コードの縦横比を評価するものである。プリンタの紙送り機構や生成ソフトウェアの異常などによる横長/縦長の不良コードを検出する。判定結果を見ると、比較例1で計測不可能であったのを除けば、比較例2〜4、並びに実施例1〜4はすべてA判定であり、コードの縦横比はほぼ正常であった。
【0032】
〔誤り訂正未使用率〕
誤り訂正とは、運用段階での取り扱いや経時変化によってQRコードの一部に汚れや破損等により読み取れない部分が生じても、コード自身がデータを復元する機能のことをいう。この誤り訂正機能によってQRコードのデータの読み取りが可能になるが、誤り訂正未使用率が0%になると読み取りができなくなる。判定結果を見ると、比較例1は判定不可能、比較例2、3及び4はいずれもF判定であり、特に裏面印字を施した比較例3と4では誤り訂正未使用率が0%で読み取り不可能であった。これに対して、実施例1〜4はすべてA判定であり、読み取り性能は良好であった。
【0033】
また、上記の検証で使用した比較例(白色印刷無)と実施例(白色印刷有)について、不織布の光透過率を測定して比較した。その測定結果を以下の表2に示す。
【0034】
測定に使用した機器と測定の方法は次のとおりである。
*測定機器
紫外可視分光光度計 (株)島津製作所製
*測定方法
積分球使用透過法にて測定した。なお、測定波長は660nm、測定回数n=5とし、平均値をその値として採用した。
【0035】

【0036】
表2の測定結果を見ると、実施例(白色印刷有)は比較例(白色印刷無)に比べて、光透過率が平均で約11.7%も低く、透けにくいことが分かる。
【0037】
以上の結果から明らかなように、不織布が水濡れ状態になると、印字したQRコードが読み取り不可能か又は読み取り困難になるが、不織布に紫外線硬化型インキを塗布して遮蔽層を設けることにより、反対面に印字したQRコードを良好に読み取れることが判明した。なお、不織布にはメーカーが推奨する表面(印字に適している面)と裏面(印字に適していない面)が決められているが、評価結果の実施例1及び2と実施例3及び4とを比べる限りでは、表面印字と裏面印字との間に特に差異は見られない。したがって、本発明において、光学読み取りコードの印字面は、不織布の表面と裏面のいずれの面であっても良い。
【符号の説明】
【0038】
1…光学読み取り帳票
2…基材
3…光学読み取りコード
4…遮蔽層
5…目視情報
6…撥水性遮蔽層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布からなる基材に光学読み取りコードが印字され、この光学読み取りコードに対応する基材の光学読み取りコードの印字面とは反対側の面に、紫外線硬化型インキまたは酸化重合型インキを塗布した遮蔽層が設けられていることを特徴とする光学読み取り帳票。
【請求項2】
不織布からなる基材に光学読み取りコードが印字され、この光学読み取りコードに対応する基材の光学読み取りコードの印字面とは反対側の面に、紫外線硬化型インキまたは酸化重合型インキにシリコーン含有の剥離ニスを混合したインキを塗布した撥水性遮蔽層が設けられていることを特徴とする光学読み取り帳票。
【請求項3】
紫外線硬化型インキまたは酸化重合型インキに酸化チタンが含有されていることを特徴とする請求項1または2に記載の光学読み取り帳票。
【請求項4】
遮蔽層が不織布とは異なる色で形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光学読み取り帳票。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−218653(P2011−218653A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89652(P2010−89652)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000186566)小林クリエイト株式会社 (169)
【Fターム(参考)】