光学読取装置および紙葉類処理装置
【課題】紙葉類の透かし画像の検出と形状や欠損の検出を同一ステージで実現することができる光学読取装置および紙葉類処理装置を提供することである。
【解決手段】実施形態に係る光学読取装置は、搬送される紙葉類の一方の面に第1の波長を有する光を照射する第1の光源と、前記搬送される紙葉類の一方の面で、前記第1の光源による光照射と同じ位置に第2の波長を有する光を照射する第2の光源と、前記搬送される紙葉類の他方の面側に設けられ、前記第1の光源の光照射により当該紙葉類を透過した第1の波長を有する光を受光して電気信号に変換する第1の受光手段と、前記搬送される紙葉類の他方の面側に設けられ、前記第2の光源の光照射により当該紙葉類を透過した第2の波長を有する光を受光して電気信号に変換する第2の受光手段とを具備している。
【解決手段】実施形態に係る光学読取装置は、搬送される紙葉類の一方の面に第1の波長を有する光を照射する第1の光源と、前記搬送される紙葉類の一方の面で、前記第1の光源による光照射と同じ位置に第2の波長を有する光を照射する第2の光源と、前記搬送される紙葉類の他方の面側に設けられ、前記第1の光源の光照射により当該紙葉類を透過した第1の波長を有する光を受光して電気信号に変換する第1の受光手段と、前記搬送される紙葉類の他方の面側に設けられ、前記第2の光源の光照射により当該紙葉類を透過した第2の波長を有する光を受光して電気信号に変換する第2の受光手段とを具備している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、光学読取装置および紙葉類処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
銀行券に盛り込まれた真偽アイテムのうち、透かし画像を偽造するのは用紙の製造技術に関わる技術が必要なことから難易度が高く、簡単なことではないことが容易に推察できる。したがって、用紙の表面に白または淡色で模様を描画することで透かして見ると、透かし画像が存在するように見える効果を生む偽造券が流通する可能性がある。これら偽造券を検査する方法として、各種技術が提案されている。これらは、銀行券の透かし画像部分の透過光画像や反射光画像を取得し比較することや、登録情報との照合をすることで真贋を判別するようになっている。
【0003】
また、装置の小型化やコスト抑制を考慮し、1つの受光センサと複数の照明装置(反射および透過条件)で構成し、銀行券の移動時に時間分割で照明を切換えつつ、銀行券からの反射光や透過光情報を取得する仕組みが多く提案されている。
【0004】
これらの検査装置のポイントは、真性の透かし画像は透過光画像で濃淡変化を有するが、反射光では透かし模様の輪郭部などはほとんど確認できないものであるが、比較的稚拙な偽造券では、反射光にて模様の輪郭が確認できる。そのため、透過光画像と反射光画像の透かし画像部の特徴を本物の特徴と比較することで真偽判別することを提案している。
【0005】
一方、使用する用紙に漉き込みで透かし画像を造り込んだ偽造券の場合、人間が得た視覚情報を脳で処理するように、透過光取得画像から、真贋を判断する機能を機械的に提供した例も存在する。この技術では、透かし画像の透過光画像を細かいエリアで積分したデータをもとに判別処理している。
【0006】
しかしながら、上記した従来技術には以下のような問題がある
(1)銀行券処理装置の搭載可能検査装置数と高速化対応の課題
銀行券処理装置では銀行券の損傷具合や種別の判別をしつつ、再流通できる銀行券か否かを判別し区分する機能と、本物か偽物かを判別し区分する機能を実現する必要がある。それぞれの検査目的に合わせて検査装置を搬送通路上に複数の異なる機能ユニットを並べて、総合的な真偽判別性能の向上を実現している。
【0007】
しかし、製品の設置条件や処理能力に応じて機械の大きさが決まり、搭載できる検査装置のユニット数にも制限がでてくる。様々な国の銀行券では様々なセキュリティ素子が盛り込まれている。同時に偽造券も多く流通している場合が多く、これらを排除できる高い真偽判別性能が求められている。したがって、機械に搭載できるユニット数の制約が性能実現の問題となる。
【0008】
この問題を解決する方法として、前述のように同一ユニット内に異なる波長の照明光を出力する光源を搭載して、銀行券を照明できる構造とし、受光センサを1つとする構成を用意することで、銀行券の通過時に時分割で照明光を切換えて、異なる照明条件の画像を取得する工夫がされている。たとえば、可視光と赤外光や反射光と透過光など、異なる画像情報を1つのユニットで様々な媒体情報を取得する方法がある。
【0009】
しかし、この時分割露光制御方式では、銀行券が移動している状態で2分割や3分割など分割数設けるため、取得画像の位置が異なる情報となり、媒体情報の同時性が確保できない。また、時分割するため高速に銀行券が移動する場合には、取得できる光量の制限やセンサ駆動時間の制限などを受けるため、容易に高速化できないという課題を抱えている。
【0010】
(2)搬送位置ばらつきと透かし検査視野の関係
銀行券処理装置等では、銀行券を1枚づつ取出し、ベルト等の挟持搬送手段で移動させつつ検出ユニットを通過させる機構を有する。これらの装置では、常に同一位置に銀行券を通過させるのは難しく、同一機体内でも異なる機体間でも一定のばらつきを持っている。具体的には、検出する銀行券を搬送する機構の影響でその位置が搬送方向に直交する方に位置がずれる「スライド」や、銀行券の中心から回転する「スキュー」を起こす。
【0011】
これらの搬送される銀行券の位置ばらつきは機械処理する上で、ある程度の範囲で認めて処理する許容範囲が必要となる。この許容範囲は製品によりさまざまに異なる場合が多い。銀行券の搬送速度や、搬送路下流の機構の能力等により条件が異なるためである。検査装置としては、機構の許容範囲内までばらつきを許し、検出性能を維持できることが、装置のバランスという点や処理能力的に望ましい姿となる。
【0012】
一方、検査装置から見ると検査対象位置が通過する銀行券ごとに異なり、一定でない条件となる。特に、検査対象である透かし画像が銀行券の狭い一部分で、かつ、銀行券の長手方向の端に配置されている場合、最も大きな影響を受ける。銀行券の透かし画像を検査する場合、検出エリア内に透かし画像以外の印刷画像領域が混入すると、光透過率の高い透かし画像に比較し光透過率の低い印刷画像部の影響が大きく、検出する特徴量が大きく変動する。この結果、透かし画像の真偽判別で正常な銀行券を偽物と誤判別する可能性が高くなる。
【0013】
従来、このようなケースでは、銀行券の位置変動を考慮し、検査対象領域を狭く設定することで影響を低減していた。このように、銀行券の搬送位置ずれを許容する範囲を広くする程、銀行券の検査範囲を狭めるという課題がある。
【0014】
また、銀行券の内面を細かい積分エリアに分割したデータに対し、ニューラルネットワークを使うことで、パターンを構成する個々のデータの連結関係を捉え、銀行券の位置ずれの影響を除去するようにした技術も提案がされているが、積分した段階で細かい明るさ分布は除去されてしまい繊細な偽造券では性能が期待できないこと、銀行券の位置ずれで周辺の印刷画像部が検出範囲に混入することで、判別性能が低下することが問題となるため、銀行券内の透かし画像位置を特定する能力が性能を左右するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2002−74449号公報
【特許文献2】特開平6−203244号公報
【特許文献3】特開2006−155341号公報
【特許文献4】特開2000−307819号公報
【特許文献5】特開2003−77025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明が解決しようとする課題は、紙葉類の透かし画像の検出と形状や欠損の検出を同一ステージで実現することができる光学読取装置および紙葉類処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
実施形態に係る光学読取装置は、搬送される紙葉類の一方の面に第1の波長を有する光を照射する第1の光源と、前記搬送される紙葉類の一方の面で、前記第1の光源による光照射と同じ位置に第2の波長を有する光を照射する第2の光源と、前記搬送される紙葉類の他方の面側に設けられ、前記第1の光源の光照射により当該紙葉類を透過した第1の波長を有する光を受光して電気信号に変換する第1の受光手段と、前記搬送される紙葉類の他方の面側に設けられ、前記第2の光源の光照射により当該紙葉類を透過した第2の波長を有する光を受光して電気信号に変換する第2の受光手段とを具備している。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態に係る光学読取装置が適用される形状・透かし検出装置の光学系部分を模式的に示す側面図。
【図2】実施形態に係る光学読取装置が適用される形状・透かし検出装置の光学系部分を模式的に示す正面図。
【図3】実施形態に係る銀行券の一例を示す模式図。
【図4】実施形態に係る光学読取装置が適用される形状・透かし検出装置の構成を概略的に示すブロック図。
【図5】実施形態に係る射影画像処理部の処理を説明する模式図。
【図6】実施形態に係る射影画像処理部の処理を説明する模式図。
【図7】実施形態に係る射影画像処理部の処理を説明する模式図。
【図8】実施形態に係る射影画像処理部の処理を説明する模式図。
【図9】実施形態に係る射影画像処理部の処理を説明する模式図。
【図10】実施形態に係る透過画像補正処理部の処理を説明する模式図。
【図11】実施形態に係る透過画像補正処理部の処理を説明する模式図。
【図12】実施形態に係る銀行券の搬送位置ばらつき時の検査対象位置変動を説明する模式図。
【図13】他の実施形態に係る光学読取装置が適用される形状・透かし検出装置の光学系部分を模式的に示す正面図。
【図14】他の実施形態に係る光学読取装置が適用される形状・透かし検出装置の光学系部分を模式的に示す正面図。
【図15】他の実施形態に係る光学読取装置が適用される形状・透かし検出装置の光学系部分を模式的に示す側面図。
【図16】他の実施形態に係る光学読取装置が適用される形状・透かし検出装置の光学系部分を模式的に示す側面図。
【図17】実施形態に係る光学読取装置が適用される形状・透かし検出装置を用いた紙葉類処理装置の外観を模式的に示す斜視図。
【図18】実施形態に係る光学読取装置が適用される形状・透かし検出装置を用いた紙葉類処理装置の内部構成を模式的に示す構成図。
【図19】実施形態に係る光学読取装置が適用される形状・透かし検出装置を用いた紙葉類処理装置の制御系統の構成を概略的に示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。
まず、本実施形態に係る光学読取装置が適用される形状・透かし検出装置を用いた紙葉類処理装置について説明する。
【0020】
図17、図18は、本実施形態に係る光学読取装置が適用される形状・透かし検出装置を用いた紙葉類処理装置の構成を模式的に示すものである。この紙葉類処理装置111は、たとえば、複数の銀行の各支店等から送られた銀行券(以降、紙葉類ともいう)を検査して、再使用可能な銀行券だけを結束して再使用に供するためのものである。
【0021】
図17、図18において、紙葉類処理装置111は、その一端部に集積状態の複数枚の銀行券をセットする供給部112を有する。供給部112の上部には、当該供給部112にセットされた銀行券をその集積方向上端のものから1枚ずつ取出す取出部113が設けられている。取出部113は、最上端の銀行券に転接して負圧を生じつつ回転する吸着ローラ114を有する。吸着ローラ114は、たとえば、1回転するごとに1枚の銀行券を取出すように機能し、銀行券を一定のピッチで取出すように動作する。
【0022】
取出部113の下流側には、吸着ローラ114によって取出された銀行券を搬送する搬送手段としての搬送路115が延設されている。搬送路115には、図示しない搬送ベルトや駆動プーリが配設され、図示しない駆動モータによって搬送ベルトを走行させることにより銀行券を一定速度で搬送するようになっている。
【0023】
取出部113から延びた搬送路115上には、搬送されている銀行券の光学的および磁気的な特徴情報を検出して銀行券の種類、汚棄損、表裏、真偽などを検査する検査部116が設けられている。検査部116は、搬送路115の両側に配設され、搬送される銀行券の両面の画像を読取るための2つの画像読取装置117,118を有する。画像読取装置117,118は、たとえば、撮像手段としてCCDカメラを有し、撮像した画像から銀行券の表面の模様画像を読取る。
【0024】
また、検査部116は、搬送路115を搬送される銀行券の厚みを検査する厚み検査部119を有する。厚み検査部119は、銀行券の2枚取りを検出するのに用いられる。
【0025】
さらに、検査部116は、搬送される銀行券の形状および透かし画像等を検出する形状・透かし検出装置135を有する。形状・透かし検出装置135については後で詳細を説明する。
【0026】
この他に、検査部116は、銀行券の磁気的な特徴情報を検出する少なくとも1つ以上の磁気センサ等をも備えている。
【0027】
検査部116の下流側の搬送路115上には、たとえば、6つのゲート120〜125が順次配設されている。ゲート120〜125は、検査部116における検査結果に基づいて図示しない制御部による制御にしたがって切換えられ、当該銀行券を所定の処理部へ案内する。
【0028】
検査部116の直後に配設されたゲート120は、搬送路115を排除搬送路126に分岐する位置に設けられ、検査部116を介して正規の銀行券ではないことが検出された排除券、および、検査部116において検査できなかった検査不能券等を排除搬送路126へ案内するように切換えられる。
【0029】
排除搬送路126の終端部には、取出部113にて取出した姿勢のまま、すなわち、表裏を反転しないで(実際には360°回転させて)、排除券および検査不能券をその取出し順序を変えずに集積する排除集積部(排除部)127が設けられている。
【0030】
排除集積部127には、この他に、銀行券を重ね取りした検査不能券や正規の銀行券ではないことが判定された偽券などが集積される。
【0031】
また、ゲート120の下流側の搬送路115に沿って設けられたゲート121〜124によって分岐された位置には、それぞれ第1乃至第4の集積・結束部(集積部)128〜131(以下、総称して集積・結束部132と称する場合もある)が配設されている。集積・結束部132には、ゲート120を介して導かれた排除券以外の正規の銀行券のうち再使用可能な正券だけが集積されて結束される。
【0032】
たとえば、第1および第2の集積・結束部128,129には、表面を上にした正券が100枚ずつ集積されて結束され、第3および第4の集積・結束部130,131には、裏面を上にした正券が100枚ずつ集積されて結束される。具体的には、集積・結束部128に正券を100枚集積した後、この100枚の正券を結束しているときに、もう一方の集積・結束部129に次の100枚の正券を集積する。このようにして集積・結束部132で結束された正券は、図示しないコンベア等によって機外へ排出されて再使用に供される。
【0033】
最も下流側に配設されたゲート125によって搬送路115から分岐された位置には、ゲート120を介して導かれた排除券以外の銀行券のうち、集積・結束部132へ集積されなかった損券、すなわち、正規の銀行券ではあるが汚棄損等の理由によって再使用不可能と判断された銀行券を裁断して失効させたのち収納する裁断部133が配設されている。なお、損券裁断モードが選択されていない場合、損券は裁断部133へ搬送されずに損券集積用のスタッカ134に集積される。
【0034】
また、紙葉類処理装置111は、その供給部112側にオペレータが操作する操作部136を有する。操作部136には、オペレータによる各種操作入力等を受付けるとともに、オペレータに対して各種操作案内等を表示する操作・表示パネル(表示部)137が設けられている。操作・表示パネル137は、表示したボタンにオペレータが触れることで当該ボタンの入力を検知するタッチパネルにより構成されている。この他に、操作・表示パネル137の近傍には、供給部112の銀行券投入口を開閉する取っ手を有するドア138、排除集積部127に集積された銀行券を取出すための取出口139、オペレータが操作するキーボード140などが設けられている。
【0035】
図19は、上記のように構成された紙葉類処理装置111の制御系統の構成を概略的に示すものである。
【0036】
図19において、主制御部151は、全体的な制御を司るもので、これには前記検査部116、操作・表示パネル137およびキーボード140がそれぞれ接続されるとともに、搬送制御部152および集積・結束制御部153がそれぞれ接続される。
【0037】
主制御部151は、操作・表示パネル137からの指示や検査部116の検査結果などに基づき搬送制御部152および集積・結束制御部153をそれぞれ制御する。
【0038】
検査部116は、前記画像読取装置117,118、厚み検査部119、形状・透かし検出装置135、その他の銀行券のセンサ類(磁気センサ等)154、および、これらからのデータを処理することにより光学的および磁気的な特徴情報を検出して銀行券の種類、汚棄損、表裏、真偽などを判定するCPU(セントラル・プロセッシング・ユニット)155により構成されている。
【0039】
搬送制御部152は、主制御部151の制御に基づき前記取出部113、搬送路115、排除搬送路126およびゲート120〜125を制御することにより、銀行券の取出・搬送制御を行なう。
【0040】
集積・結束制御部153は、主制御部151の制御に基づき前記排除集積部127および集積・結束部128〜131を制御することにより、銀行券の集積・結束制御を行なう。
【0041】
以下、このように構成された紙葉類処理装置111の動作について簡単に説明する。
まず、オペレータの手作業によって1まとめの銀行券が供給部112にセットされる。この場合、オペレータは、ドア138を開けて銀行券を供給部112へセットする。この後、取出部113が駆動されることで、銀行券が最上端のものから順に1枚ずつ搬送路115上に取出される。搬送路115上に取出された銀行券は、検査部116を通過し、検査される。
【0042】
このとき、たとえば、取出部113によって複数枚の銀行券が重なった状態で取出されている場合、集積方向両端にある銀行券の表面の画像がそれぞれ画像読取装置117,118により読取られる。当然のことながら、銀行券が1枚だけ正常に取出されている場合には、当該銀行券の表裏の画像がそれぞれ読取られることになる。
【0043】
このようにして銀行券から読取られた画像は、検査部116内の図示しないメモリに一時記憶され、必要に応じて操作・表示パネル137を介してオペレータに対して表示される。本実施形態では、取出部113で取出された銀行券のうち、排除集積部127へ集積される銀行券の画像のみをメモリに記憶するようにしている。なお、メモリに記憶した画像は、操作・表示パネル137における所定の操作により切換え表示可能となっている。
【0044】
検査部116は、画像読取装置117,118により読取られた画像や厚み検査部119の検査結果、形状・透かし検出装置135の検出結果等に基づいて、当該銀行券が正規の銀行券であるか否かを判定する。この判定の結果、正規の銀行券である場合、当該銀行券は再使用可能な正券であるか否かを判定する。
【0045】
この判定の結果、当該銀行券が再使用可能な正券である場合、ゲート120が集積・結束部132に向かう搬送路115の方向に切換えられる。そして、ゲート121〜124のうちいずれか1つのゲートが集積・結束部132方向に切換えられ、ゲート120を介して導かれた当該正券がいずれかの集積・結束部132に集積される。
【0046】
本実施形態では、たとえば、一方の画像読取装置117で表の模様が検出された正券、すなわち、表面を上にした状態で搬送された正券を第1、第2の集積・結束部128,129のいずれか一方に集積し、他方の画像読取装置118で表の模様が検出された正券、すなわち、裏面を上にした状態で搬送された正券を第3、第4の集積・結束部130,131のいずれか一方に集積するようにしている。
【0047】
これにより、正券の表裏を取り揃えるようにしている。たとえば、第1の集積・結束部128に表面が上の正券を集積していき、第1の集積・結束部128の正券が100枚に達した時点で、100枚の正券を結束するとともに、第2の集積・結束部129に対する正券の集積を開始し、2つの集積・結束部に100枚ずつ交互に集積して結束するようにしている。
【0048】
上記判定の結果、当該銀行券が再使用不可能な損券である場合、ゲート125が切換えられて搬送中の当該損券が裁断部133へ導かれ、当該損券が裁断されて失効される。なお、集積・結束した正券の枚数、および、裁断して失効した損券の枚数は、主制御部151で計数されて、集計される。
【0049】
上記判定の結果、当該銀行券が正規の銀行券でない場合、ゲート120が切換えられて搬送路115が排除搬送路126に接続される。そして、検査部116は、当該被処理媒体が他の媒体であるか否かを判定する。この判定の結果、当該被処理媒体は他の媒体でない場合、すなわち、2つの画像読取装置117,118で読取ったいずれの画像からも当該被処理媒体が他の媒体ではないことが判定されると、当該被処理媒体が正規の銀行券ではない例えば偽造された排除券であることが判断され、あるいは、2枚以上の銀行券の重ね取りが判断され、排除搬送路126に導かれた当該被処理媒体がそのまま排除集積部127へ集積される。
【0050】
上記判定の結果、当該被処理媒体は他の媒体である場合、たとえば異物であることが判断され、当該被処理媒体の搬送が停止されて排除搬送路126上に停止される。このようにして、排除搬送路126上に停止された当該被処理媒体は、オペレータによって取出されて確認され、手作業によって処理される。
【0051】
次に、前記形状・透かし検出装置135について詳細に説明する。
図1および図2は、形状・透かし検出装置135の光学系部分の構成を模式的に示すものである。図1および図2において、銀行券(紙葉類)11は、たとえば、図3に示すように偽造防止用の透かし画像Pおよび印刷画像(図示省略)を有していて、搬送ローラ12,13(前記搬送路115に相当)により挟持して図示矢印a方向に搬送されるものとする。
【0052】
搬送される銀行券11の一方の面側には、銀行券11の一方の面に第1の波長を有する光として赤外光および第2の波長を有する光として可視光を照射する照明部14が設けられている。
【0053】
照明部14は、たとえば、複数のLEDチップ(発光素子)15を銀行券11の搬送方向aと直交する方向に一定間隔で直線状に並設したもので、赤外光を発するLEDチップLRと可視光を発するLEDチップLWを1個置きに並べることで、赤外光と可視光とが混ざった混色照明光を実現している。
【0054】
照明部14と搬送される銀行券11との間には、照明拡散板16が配設されている。これにより、点光源であるLEDチップの輝点間の光源の存在しないエリアに照明光が広がる効果を得て、直線状の照明領域を確保することができるようになっている。
【0055】
照明拡散板16は、乳白色ガラスや白色フィルムなど、光を拡散させるものを使用する。たとえば、透過効率が良く拡散性を制御できるレンズ拡散板(LSD(Light Shaping Diffuser))等が利用できる。
【0056】
搬送される銀行券11の他方の面側には、銀行券11を透過した赤外光および可視光をそれぞれ受光して電気信号に変換する受光部17が設けられている。受光部17は、光学像を結ぶレンズ等の結像手段18、および、ラインイメージセンサ等の第1受光素子19および第2受光素子20を有する。これらの2つの受光部19,20は、互いに異なる波長の光を受光するように、受光光路中に設けたダイクロイックミラー21により2つの波長光に分離し受光する。
【0057】
すなわち、照明部14による光照射による銀行券11の透過光を直線上の光軸で受光するように、搬送路の照明部14とは反対側にCCDラインイメージセンサ等のライン状に走査する第1受光素子19および第2受光素子20を配設する。2つの受光部19,20は、照明部14の2つの波長光にそれぞれ合わせて受光波長を制限するため、ダイクロイックミラー21により赤外光を反射させて第1受光素子19に結び、ダイクロイックミラー21を透過する可視光は第2受光素子20に結像する。このように、照明部14の異なる2つの波長光に合わせて、受光部17も2つの波長光で分離し同時に同一箇所の画像を結像する構成にしている。
【0058】
なお、ダイクロイックミラー21を、可視光を反射し、赤外光を透過するタイプに変えることにより受光する波長と配置を変更することもできる。
【0059】
このような構成により、銀行券11の同一箇所の透過光画像を2つの異なる波長で捉えた画像として取得できる。本実施形態では、銀行券11に真偽用セキュリティ素子として組み込まれた透かし画像Pを透過赤外光の濃淡変化により検査し、透過可視光による射影情報を利用して銀行券11の外形形状、端面部の位置、損傷や欠損などを検査する。
【0060】
この2つの検査では、銀行券11の透過光量を検査するが、その透過光量レベルに大きな相違がある。透かし画像等は用紙の拡散光透過や吸収により照明光量に対して透過光量が1/10以下程度まで減衰する。この減衰した光量を中心に濃淡変化を多値情報として検査し評価可能な信号を抽出する必要がある。
【0061】
一方、銀行券11の形状等を検査する場合、銀行券11の端面位置を捉えることが必要なため、銀行券11からの透過光量は照明光量の1/2から1/5程度で「あり/なし」を判断できればその機能を満たす。ただし、必要以上に光量を増すと、銀行券11の端面部では照明光による回折の影響や受光素子の画素にじみの影響で透過光領域が大きくなり、端面位置が正しく計測できなくなる。
【0062】
このように、2つの透過光検出光学系では評価する透過光量の大きさに相違があるため、それぞれ用途に適合した照明光量の最適化調整が必要となる。そこで、照明部14は、後述するように検査用途ごとに最適な照明条件が設定される。
【0063】
図4は、本実施形態に係る形状・透かし検出装置135の構成を概略的に示すものである。照明部14の各赤外光用のLEDチップLRは照明駆動部41により駆動され、各可視光用のLEDチップLWは照明駆動部42により駆動される。照明駆動部41,42は、LEDチップLR,LWをそれぞれ用途に適合した照明光量となるように、最適な照明条件で駆動するようになっている。
【0064】
第1受光素子19および第2受光素子20は、受光部制御部43によって走査制御、露光制御される。その場合、搭載する製品ごとに銀行券11の搬送速度が異なる場合にも、受光素子を走査(スキャン)するための駆動信号の周波数を変えて対応可能としている。
【0065】
第1受光素子19および第2受光素子20からの各アナログ信号は、それぞれ受光増幅部44,45で適正な出力信号レベルまで増幅された後、A/D変換部46,47に送られ、それぞれ量子化(デジタル化)される。A/D変換部46,47で量子化された各信号は、それぞれの検査目的に合わせて透過画像処理部48、射影画像処理部49へ送られ、ここで補正処理等が行なわれる。
【0066】
透過画像処理部48の処理結果は透過画像補正処理部50へ送られ、射影画像処理部49の処理結果は形状・位置・欠損等検出部51へ送られる。透過画像補正処理部50の処理結果は透かし検出部52へ送られ、形状・位置・欠損等検出部51の検出結果は透過画像補正処理部50へ送られる。透かし検出部52および形状・位置・欠損等検出部51の各検出結果は検査部116のCPU155(図19参照)へ送られる。これら各部48〜52の詳細は次に説明する動作説明にて述べる。
【0067】
以下、上記のように構成された形状・透かし検出装置135の動作について説明する。
銀行券11が搬送ローラ12,13により図示矢印a方向に搬送され、照明部14の位置に到達すると、銀行券11は照明部14により赤外光と可視光からなる混合照明光が搬送方向aと直交方向にライン状に照射される。
【0068】
照明部14の光照射による銀行券11からの透過光は、受光部17において、結像手段18を介してダイクロイックミラー21に導かれ、ここで2つの波長光に分離され、赤外光(透過赤外光)は第1受光素子19へ入射し、可視光(透過可視光)は第2受光素子20へ入射し、それぞれ電気信号に変換される。
【0069】
第1受光素子19および第2受光素子20の各出力信号(アナログ信号)は、それぞれ受光増幅部44,45で適正な出力信号レベルまで増幅された後、A/D変換部46,47に送られ、ここで量子化(デジタル化)されて透過赤外光画像および透過可視光画像となる。
【0070】
A/D変換部46から得られる透過赤外光画像は透過画像処理部48へ送られ、A/D変換部47から得られる透過可視光画像は射影画像処理部49へ送られ、ここで補正処理等が行なわれる。
【0071】
補正処理としては、たとえば、銀行券11が搬送路に存在しなし状態で照明光を直接受光して、明るさや受光素子感度ばらつきによる信号レベルの違い(歪)を補正するシェーディング補正や、照明光量の経時変化や温度変化による明るさ変動等を一定に保つ出力信号レベル補正などを行ない、安定な検査性能を維持するための機能を実現する。
【0072】
また、射影画像処理部49は、A/D変換部47からの透過可視光画像から、図5に示すように、透過光が「明」から「暗」に、「暗」から「明」に変化する位置情報を座標情報として抽出する。座標情報は、座標値「0,0」から座標値「m,n」までの全走査範囲E1における走査(スキャン)方向(受光素子の走査方向)bの何画素目と、銀行券11の移動(搬送)方向aの何スキャン目かを示す座標値である。
【0073】
この銀行券11の端面位置座標値(以降、媒体端面位置座標値ともいう)により、全走査範囲E1内のどこに銀行券11が位置するかの元となる座標情報を抽出する。同時に、銀行券11の端面から内側に位置する孔や破れのように、銀行券11の内部で透過光領域が存在する場合も、その「暗」から「明」への変化位置座標情報も抽出する。
【0074】
次に、形状・位置・欠損等検出部51は、射影画像処理部49で取得された座標情報から、図5の座標値(0,a)、(0,b)、(c,a)、(d,b)の4点を特定することで、銀行券11の端面位置を検出する。次に、この銀行券11の四隅の対向する2コーナを結び(破線で示す)、交差する点の位置座標値を重心座標値gとして認識する。この重心位置(重心座標値g)により、銀行券11の走査方向bの標準搬送センタ(搬送方向の中心点)の走査方向bへのずれ量を算出する。このずれ量がスライド量であり、標準搬送センタからどれほど銀行券11が離れているかを判断する量とする。
【0075】
続いて、図6に示すように、銀行券11の長辺方向の2つのコーナ座標値(0,e)、(f,g)から、走査方向bにどれだけ差があるかを算出する。この差が銀行券11の傾き(スキュー)を判断する特徴量として抽出する。この特徴量は、反対側の2つのコーナ座標値(h,i)、(j,k)からも算出され、2つの情報が得られる。このうち大きい方の値をスキュー量を求める値として採用し、銀行券11の長辺方向の長さ情報からスキュー量を判定する。同様に、銀行券11の短辺方向の2つのコーナの搬送方向の座標値差を求め、上記スキュー判定の妥当性を検証する。相互の検出量に大きな差が生じた場合、最大値を採用するなどの判定処理をする。
【0076】
図7に示す例のように、銀行券11の四隅の一部に欠損部11aがある場合は、スライド量とスキュー量の算出に誤差が生じないように、長方形であるかの検証を端面位置座標の連続性を検査することで異常を検出する。コーナの欠損部11aを認識した場合には、端面位置情報の連続性から仮想コーナ座標値を求める。この仮想コーナ座標値を用いて、スライド量とスキュー量を算出することで誤検出を回避する。
【0077】
同様に、射影画像処理部49で取得された座標情報から、銀行券11の外形形状および寸法を、また、銀行券11の外形の内側に透過光が存在する場合には、孔や破れ等の欠損情報を検出する。図8は、銀行券11が走査方向bに平行に移動したスライド状態を示す図で、重心位置ずれによりスライド量を求める。図9は、銀行券11にスライドとスキューが混在した場合を示し、前述の方法でスライド量とスキュー量を算出し、銀行券11の搬送状態とその位置を特定する。
【0078】
次に、透過画像補正処理部50は、透過画像処理部48で補正処理された後の透過赤外光画像から、検査対象の透かし画像エリア(透かし画像Pが存在するエリア)を抽出し、透過濃度変化や明るさ情報などを専用のアルゴリズムにより抽出処理する。この際、透かし画像エリアの抽出には、形状・位置・欠損等検出部51から銀行券11の通過位置情報に基づくスキュー量とスライド量を取得し、このスキュー量とスライド量に基づき、入力された透過赤外光画像をアフィン変換等の手法を用いて回転や移動する補正処理を行なう。
【0079】
図10に、スキューした入力画像(透過赤外光画像)Ia(またはIb)の回転補正により、正常に搬送された場合と同等の辞書画像Rpと同じ位置条件に合わせ込んだ場合の概念図を示す。この補正処理により、後段の透かし検出部52での照合処理を高精度に実現可能となる。
【0080】
また、透過画像補正処理部50は、検査部116のCPU155(図19参照)から、当該銀行券11の金種や表裏や通過方向などの情報を取得し、これらの情報から、透かし検出処理するための透かし画像エリアを検出切り出し、透かし画像エリア内の画像情報を透かし検出部52に出力する。
【0081】
さらに、透過画像補正処理部50は、図11に示すように、銀行券11の透かし画像P内に孔等の欠損部11bが存在した場合にも、その大きさが透かし画像Pに比較して充分小さければ、欠損部11bを含む周囲のエリア11cを透かし画像エリアから除外する。この機能の精度は、画像読取分解能が小さいほど高精度に実現できる。
【0082】
透かし検出部52は、透過画像補正処理部50から供給される透かし画像エリア内の画像情報に対し、あらかじめ設定された真性の透かし画像(辞書情報)とのマッチング処理や、濃淡情報や透過光量など様々な情報を駆使し透かし画像の真偽を評価する。
【0083】
形状・位置・欠損等検出部51の検出結果および透かし検出部52の評価結果は検査部116のCPU155に送られ、銀行券11の種類判定や真偽判定等を行なうためのパラメータの1つとして用いられる。
【0084】
図12は、検査対象である銀行券11の透かし画像Pの位置が、搬送時位置ずれにより変動する様子を示している。この変動量を求めた条件としては、銀行券11の長さが160mm、銀行券11の幅が82mm、位置ずれ量が±5mm、回転量が±5°とした。この図のように、銀行券11の搬送位置ずれ許容範囲を広げると検査対象位置が大きく変わることが分かる。同時に検出位置補正機能が重要であることが分かる。
【0085】
以上述べた少なくとも1つの実施形態によれば、以下の作用効果を期待できる。
(1)銀行券処理機の搭載可能検査装置数の確保と高速化対応
銀行券の透かし画像を検査する装置に銀行券の形状や欠損を同一位置で同時に検査する光学手段を搭載することで、透かし画像の真偽判別性能の向上を実現できるとともに、銀行券の搬送路上の搭載ユニットを2個から1個にできる。もともと搭載可能ユニット数の制限数から1ユニットスペースを異なる真偽アイテム用に利用できるため、装置としての総合的な真偽性能向上に寄与し、コスト低減にも寄与する。また、削減スペース分装置を小型化することも可能となる。
【0086】
(2)搬送ばらつきと透かし検査視野ずれによる誤判別削減
銀行券が移動する際の位置ずれや回転などの変動による検査性能への悪影響を、透かし画像を検査している同一位置で取得した銀行券の位置や回転情報を有効に活用することで、取得画像のうち透かし画像の検出エリアを正確に捕捉することができる。その結果、検査閾値を緩めることなく常に高い真偽判別性能を実現できるとともに、銀行券の存在するエリアを狭めることなく、そのセキュリティ素子のほぼ全域を検査できる。また、検査する銀行券の位置が正確に把握できるため、読取り分解のまま基準データとの比較評価が可能となり、より細かい画像情報で検査が可能となる。
【0087】
(3)検査対象位置欠損の真偽検査性能影響を低減
透かし画像を検査する銀行券のセキュリティ素子が損傷している場合に、同一位置で取得した射影情報による銀行券の欠損情報を有効に活用することで、その欠損が透かし画像の検査エリアに比較して大きくない場合は、欠損位置の周囲を含むエリアを検査対象から除外し、透かし画像の検出判定処理を行なうことができる。その結果、欠損に影響されない真偽判別性能を実現できるとともに、損傷の多い劣悪な銀行券を検査する場合に、真偽性能を維持しつつ排除率を低減できる。
【0088】
なお、前記実施形態では、照明部14として、複数のLEDチップ15を銀行券11の搬送方向aと直交する方向に一定間隔で直線状に並設し、かつ、赤外光を発するLEDチップLRと可視光を発するLEDチップLWを1個置きに並べることで、赤外光と可視光とが混ざった混色照明光を実現したものを用いたが、たとえば、図13に示すように、伝送ライト方式の透明構造体(ロッド光学体)22を銀行券11の搬送方向と直交する方向に配設し、この透明構造体22の両端面から、それぞれ照明光を照射することにより、受光部17から見てライン状の照明光を得るようにしてもよい。
【0089】
この場合、赤外光と可視光との混合照明光は、透明構造体22の両端面側にそれぞれ赤外光を発するLED(発光素子)23,23、可視光を発するLED24,24、およびダイクロイックミラー25,25を配設し、LED23,23からの赤外光とLED24,24からの可視光をダイクロイックミラー25,25を介して透明構造体22の両端面からそれぞれ照射することにより実現可能である。この例の場合、照明拡散板16を省略してもよい。
【0090】
また、照明部14として、たとえば、図14に示すように、伝送ライト方式の透明構造体(ロッド光学体)26を銀行券11の搬送方向と直交する方向に配設し、この透明構造体26の両端面から、それぞれ照明光を照射することにより、受光部17から見てライン状の照明光を得るようにしてもよい。
【0091】
この場合、赤外光と可視光との混合照明光は、透明構造体26の両端面側にそれぞれハロゲンランプのようにブロードな発光波長を持つ光源27,27、光学フィルタ(可視光吸収赤外光透過フィルタ)28、および光学フィルタ(赤外光吸収可視光透過フィルタ)29を配設し、光源27,27からの光を光学フィルタ28,29を介して透明構造体26の両端面からそれぞれ照射することにより実現可能である。この例の場合も、照明拡散板16を省略してもよい。
【0092】
なお、光学フィルタ28,29を共通の光透過特性を有するものを使用することもできる。その場合、可視光と赤外光の光量バランスを受光部17が必要なバランスとなるような透過分光特性を光学フィルタ28,29に持たせる。
【0093】
また、受光部17として、たとえば、図15に示すように、自己収束型の結像レンズであるセルフォックレンズ(登録商標)30,31、光学フィルタ(可視光吸収赤外光透過フィルタ)32、光学フィルタ(赤外光吸収可視光透過フィルタ)33、および、密着型イメージセンサ34,35の組み合わせでも実現可能である。
【0094】
さらに、受光部17として、たとえば、図16に示すように、結像レンズ36,37、光学フィルタ(可視光吸収赤外光透過フィルタ)32、光学フィルタ(赤外光吸収可視光透過フィルタ)33、および、密着型イメージセンサ34,35の組み合わせでも実現可能である。
【0095】
また、前記実施形態では、透過画像補正処理部50で入力画像を回転や移動処理して、標準位置で生成された辞書画像と照合する方法を記述しているが、入力画像はそのままで、形状・位置・欠損等検出部52から銀行券11の媒体通過位置情報に基づくスキュー量とスライド量を受取り、辞書画像の方を回転や移動することで照合処理する方法でも同様の効果を得られる。
【0096】
さらに、前記実施形態では、紙葉類が銀行券の場合について説明したが、これに限定されるものではなく、たとえば、銀行券以外の有価証券であっても同様に適用可能である。
【0097】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0098】
11…銀行券(紙葉類)、P…透かし画像、12,13…搬送ローラ(搬送路)、14…照明部、15…LEDチップ、16…照明拡散板、17…受光部、18…結像手段、19…第1受光素子、20…第2受光素子、21…ダイクロイックミラー、48…透過画像処理部、49…射影画像処理部、50…透過画像補正処理部、51…形状・位置・欠損等検出部、52…透かし検出部、111…紙葉類処理装置、112…供給部、113…取出部、115…搬送路(搬送手段)、116…検査部、120〜125ゲート、126…排除搬送路、127…排除集積部、128〜131…集積・結束部、135…形状・透かし検出装置。
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、光学読取装置および紙葉類処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
銀行券に盛り込まれた真偽アイテムのうち、透かし画像を偽造するのは用紙の製造技術に関わる技術が必要なことから難易度が高く、簡単なことではないことが容易に推察できる。したがって、用紙の表面に白または淡色で模様を描画することで透かして見ると、透かし画像が存在するように見える効果を生む偽造券が流通する可能性がある。これら偽造券を検査する方法として、各種技術が提案されている。これらは、銀行券の透かし画像部分の透過光画像や反射光画像を取得し比較することや、登録情報との照合をすることで真贋を判別するようになっている。
【0003】
また、装置の小型化やコスト抑制を考慮し、1つの受光センサと複数の照明装置(反射および透過条件)で構成し、銀行券の移動時に時間分割で照明を切換えつつ、銀行券からの反射光や透過光情報を取得する仕組みが多く提案されている。
【0004】
これらの検査装置のポイントは、真性の透かし画像は透過光画像で濃淡変化を有するが、反射光では透かし模様の輪郭部などはほとんど確認できないものであるが、比較的稚拙な偽造券では、反射光にて模様の輪郭が確認できる。そのため、透過光画像と反射光画像の透かし画像部の特徴を本物の特徴と比較することで真偽判別することを提案している。
【0005】
一方、使用する用紙に漉き込みで透かし画像を造り込んだ偽造券の場合、人間が得た視覚情報を脳で処理するように、透過光取得画像から、真贋を判断する機能を機械的に提供した例も存在する。この技術では、透かし画像の透過光画像を細かいエリアで積分したデータをもとに判別処理している。
【0006】
しかしながら、上記した従来技術には以下のような問題がある
(1)銀行券処理装置の搭載可能検査装置数と高速化対応の課題
銀行券処理装置では銀行券の損傷具合や種別の判別をしつつ、再流通できる銀行券か否かを判別し区分する機能と、本物か偽物かを判別し区分する機能を実現する必要がある。それぞれの検査目的に合わせて検査装置を搬送通路上に複数の異なる機能ユニットを並べて、総合的な真偽判別性能の向上を実現している。
【0007】
しかし、製品の設置条件や処理能力に応じて機械の大きさが決まり、搭載できる検査装置のユニット数にも制限がでてくる。様々な国の銀行券では様々なセキュリティ素子が盛り込まれている。同時に偽造券も多く流通している場合が多く、これらを排除できる高い真偽判別性能が求められている。したがって、機械に搭載できるユニット数の制約が性能実現の問題となる。
【0008】
この問題を解決する方法として、前述のように同一ユニット内に異なる波長の照明光を出力する光源を搭載して、銀行券を照明できる構造とし、受光センサを1つとする構成を用意することで、銀行券の通過時に時分割で照明光を切換えて、異なる照明条件の画像を取得する工夫がされている。たとえば、可視光と赤外光や反射光と透過光など、異なる画像情報を1つのユニットで様々な媒体情報を取得する方法がある。
【0009】
しかし、この時分割露光制御方式では、銀行券が移動している状態で2分割や3分割など分割数設けるため、取得画像の位置が異なる情報となり、媒体情報の同時性が確保できない。また、時分割するため高速に銀行券が移動する場合には、取得できる光量の制限やセンサ駆動時間の制限などを受けるため、容易に高速化できないという課題を抱えている。
【0010】
(2)搬送位置ばらつきと透かし検査視野の関係
銀行券処理装置等では、銀行券を1枚づつ取出し、ベルト等の挟持搬送手段で移動させつつ検出ユニットを通過させる機構を有する。これらの装置では、常に同一位置に銀行券を通過させるのは難しく、同一機体内でも異なる機体間でも一定のばらつきを持っている。具体的には、検出する銀行券を搬送する機構の影響でその位置が搬送方向に直交する方に位置がずれる「スライド」や、銀行券の中心から回転する「スキュー」を起こす。
【0011】
これらの搬送される銀行券の位置ばらつきは機械処理する上で、ある程度の範囲で認めて処理する許容範囲が必要となる。この許容範囲は製品によりさまざまに異なる場合が多い。銀行券の搬送速度や、搬送路下流の機構の能力等により条件が異なるためである。検査装置としては、機構の許容範囲内までばらつきを許し、検出性能を維持できることが、装置のバランスという点や処理能力的に望ましい姿となる。
【0012】
一方、検査装置から見ると検査対象位置が通過する銀行券ごとに異なり、一定でない条件となる。特に、検査対象である透かし画像が銀行券の狭い一部分で、かつ、銀行券の長手方向の端に配置されている場合、最も大きな影響を受ける。銀行券の透かし画像を検査する場合、検出エリア内に透かし画像以外の印刷画像領域が混入すると、光透過率の高い透かし画像に比較し光透過率の低い印刷画像部の影響が大きく、検出する特徴量が大きく変動する。この結果、透かし画像の真偽判別で正常な銀行券を偽物と誤判別する可能性が高くなる。
【0013】
従来、このようなケースでは、銀行券の位置変動を考慮し、検査対象領域を狭く設定することで影響を低減していた。このように、銀行券の搬送位置ずれを許容する範囲を広くする程、銀行券の検査範囲を狭めるという課題がある。
【0014】
また、銀行券の内面を細かい積分エリアに分割したデータに対し、ニューラルネットワークを使うことで、パターンを構成する個々のデータの連結関係を捉え、銀行券の位置ずれの影響を除去するようにした技術も提案がされているが、積分した段階で細かい明るさ分布は除去されてしまい繊細な偽造券では性能が期待できないこと、銀行券の位置ずれで周辺の印刷画像部が検出範囲に混入することで、判別性能が低下することが問題となるため、銀行券内の透かし画像位置を特定する能力が性能を左右するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2002−74449号公報
【特許文献2】特開平6−203244号公報
【特許文献3】特開2006−155341号公報
【特許文献4】特開2000−307819号公報
【特許文献5】特開2003−77025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明が解決しようとする課題は、紙葉類の透かし画像の検出と形状や欠損の検出を同一ステージで実現することができる光学読取装置および紙葉類処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
実施形態に係る光学読取装置は、搬送される紙葉類の一方の面に第1の波長を有する光を照射する第1の光源と、前記搬送される紙葉類の一方の面で、前記第1の光源による光照射と同じ位置に第2の波長を有する光を照射する第2の光源と、前記搬送される紙葉類の他方の面側に設けられ、前記第1の光源の光照射により当該紙葉類を透過した第1の波長を有する光を受光して電気信号に変換する第1の受光手段と、前記搬送される紙葉類の他方の面側に設けられ、前記第2の光源の光照射により当該紙葉類を透過した第2の波長を有する光を受光して電気信号に変換する第2の受光手段とを具備している。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態に係る光学読取装置が適用される形状・透かし検出装置の光学系部分を模式的に示す側面図。
【図2】実施形態に係る光学読取装置が適用される形状・透かし検出装置の光学系部分を模式的に示す正面図。
【図3】実施形態に係る銀行券の一例を示す模式図。
【図4】実施形態に係る光学読取装置が適用される形状・透かし検出装置の構成を概略的に示すブロック図。
【図5】実施形態に係る射影画像処理部の処理を説明する模式図。
【図6】実施形態に係る射影画像処理部の処理を説明する模式図。
【図7】実施形態に係る射影画像処理部の処理を説明する模式図。
【図8】実施形態に係る射影画像処理部の処理を説明する模式図。
【図9】実施形態に係る射影画像処理部の処理を説明する模式図。
【図10】実施形態に係る透過画像補正処理部の処理を説明する模式図。
【図11】実施形態に係る透過画像補正処理部の処理を説明する模式図。
【図12】実施形態に係る銀行券の搬送位置ばらつき時の検査対象位置変動を説明する模式図。
【図13】他の実施形態に係る光学読取装置が適用される形状・透かし検出装置の光学系部分を模式的に示す正面図。
【図14】他の実施形態に係る光学読取装置が適用される形状・透かし検出装置の光学系部分を模式的に示す正面図。
【図15】他の実施形態に係る光学読取装置が適用される形状・透かし検出装置の光学系部分を模式的に示す側面図。
【図16】他の実施形態に係る光学読取装置が適用される形状・透かし検出装置の光学系部分を模式的に示す側面図。
【図17】実施形態に係る光学読取装置が適用される形状・透かし検出装置を用いた紙葉類処理装置の外観を模式的に示す斜視図。
【図18】実施形態に係る光学読取装置が適用される形状・透かし検出装置を用いた紙葉類処理装置の内部構成を模式的に示す構成図。
【図19】実施形態に係る光学読取装置が適用される形状・透かし検出装置を用いた紙葉類処理装置の制御系統の構成を概略的に示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。
まず、本実施形態に係る光学読取装置が適用される形状・透かし検出装置を用いた紙葉類処理装置について説明する。
【0020】
図17、図18は、本実施形態に係る光学読取装置が適用される形状・透かし検出装置を用いた紙葉類処理装置の構成を模式的に示すものである。この紙葉類処理装置111は、たとえば、複数の銀行の各支店等から送られた銀行券(以降、紙葉類ともいう)を検査して、再使用可能な銀行券だけを結束して再使用に供するためのものである。
【0021】
図17、図18において、紙葉類処理装置111は、その一端部に集積状態の複数枚の銀行券をセットする供給部112を有する。供給部112の上部には、当該供給部112にセットされた銀行券をその集積方向上端のものから1枚ずつ取出す取出部113が設けられている。取出部113は、最上端の銀行券に転接して負圧を生じつつ回転する吸着ローラ114を有する。吸着ローラ114は、たとえば、1回転するごとに1枚の銀行券を取出すように機能し、銀行券を一定のピッチで取出すように動作する。
【0022】
取出部113の下流側には、吸着ローラ114によって取出された銀行券を搬送する搬送手段としての搬送路115が延設されている。搬送路115には、図示しない搬送ベルトや駆動プーリが配設され、図示しない駆動モータによって搬送ベルトを走行させることにより銀行券を一定速度で搬送するようになっている。
【0023】
取出部113から延びた搬送路115上には、搬送されている銀行券の光学的および磁気的な特徴情報を検出して銀行券の種類、汚棄損、表裏、真偽などを検査する検査部116が設けられている。検査部116は、搬送路115の両側に配設され、搬送される銀行券の両面の画像を読取るための2つの画像読取装置117,118を有する。画像読取装置117,118は、たとえば、撮像手段としてCCDカメラを有し、撮像した画像から銀行券の表面の模様画像を読取る。
【0024】
また、検査部116は、搬送路115を搬送される銀行券の厚みを検査する厚み検査部119を有する。厚み検査部119は、銀行券の2枚取りを検出するのに用いられる。
【0025】
さらに、検査部116は、搬送される銀行券の形状および透かし画像等を検出する形状・透かし検出装置135を有する。形状・透かし検出装置135については後で詳細を説明する。
【0026】
この他に、検査部116は、銀行券の磁気的な特徴情報を検出する少なくとも1つ以上の磁気センサ等をも備えている。
【0027】
検査部116の下流側の搬送路115上には、たとえば、6つのゲート120〜125が順次配設されている。ゲート120〜125は、検査部116における検査結果に基づいて図示しない制御部による制御にしたがって切換えられ、当該銀行券を所定の処理部へ案内する。
【0028】
検査部116の直後に配設されたゲート120は、搬送路115を排除搬送路126に分岐する位置に設けられ、検査部116を介して正規の銀行券ではないことが検出された排除券、および、検査部116において検査できなかった検査不能券等を排除搬送路126へ案内するように切換えられる。
【0029】
排除搬送路126の終端部には、取出部113にて取出した姿勢のまま、すなわち、表裏を反転しないで(実際には360°回転させて)、排除券および検査不能券をその取出し順序を変えずに集積する排除集積部(排除部)127が設けられている。
【0030】
排除集積部127には、この他に、銀行券を重ね取りした検査不能券や正規の銀行券ではないことが判定された偽券などが集積される。
【0031】
また、ゲート120の下流側の搬送路115に沿って設けられたゲート121〜124によって分岐された位置には、それぞれ第1乃至第4の集積・結束部(集積部)128〜131(以下、総称して集積・結束部132と称する場合もある)が配設されている。集積・結束部132には、ゲート120を介して導かれた排除券以外の正規の銀行券のうち再使用可能な正券だけが集積されて結束される。
【0032】
たとえば、第1および第2の集積・結束部128,129には、表面を上にした正券が100枚ずつ集積されて結束され、第3および第4の集積・結束部130,131には、裏面を上にした正券が100枚ずつ集積されて結束される。具体的には、集積・結束部128に正券を100枚集積した後、この100枚の正券を結束しているときに、もう一方の集積・結束部129に次の100枚の正券を集積する。このようにして集積・結束部132で結束された正券は、図示しないコンベア等によって機外へ排出されて再使用に供される。
【0033】
最も下流側に配設されたゲート125によって搬送路115から分岐された位置には、ゲート120を介して導かれた排除券以外の銀行券のうち、集積・結束部132へ集積されなかった損券、すなわち、正規の銀行券ではあるが汚棄損等の理由によって再使用不可能と判断された銀行券を裁断して失効させたのち収納する裁断部133が配設されている。なお、損券裁断モードが選択されていない場合、損券は裁断部133へ搬送されずに損券集積用のスタッカ134に集積される。
【0034】
また、紙葉類処理装置111は、その供給部112側にオペレータが操作する操作部136を有する。操作部136には、オペレータによる各種操作入力等を受付けるとともに、オペレータに対して各種操作案内等を表示する操作・表示パネル(表示部)137が設けられている。操作・表示パネル137は、表示したボタンにオペレータが触れることで当該ボタンの入力を検知するタッチパネルにより構成されている。この他に、操作・表示パネル137の近傍には、供給部112の銀行券投入口を開閉する取っ手を有するドア138、排除集積部127に集積された銀行券を取出すための取出口139、オペレータが操作するキーボード140などが設けられている。
【0035】
図19は、上記のように構成された紙葉類処理装置111の制御系統の構成を概略的に示すものである。
【0036】
図19において、主制御部151は、全体的な制御を司るもので、これには前記検査部116、操作・表示パネル137およびキーボード140がそれぞれ接続されるとともに、搬送制御部152および集積・結束制御部153がそれぞれ接続される。
【0037】
主制御部151は、操作・表示パネル137からの指示や検査部116の検査結果などに基づき搬送制御部152および集積・結束制御部153をそれぞれ制御する。
【0038】
検査部116は、前記画像読取装置117,118、厚み検査部119、形状・透かし検出装置135、その他の銀行券のセンサ類(磁気センサ等)154、および、これらからのデータを処理することにより光学的および磁気的な特徴情報を検出して銀行券の種類、汚棄損、表裏、真偽などを判定するCPU(セントラル・プロセッシング・ユニット)155により構成されている。
【0039】
搬送制御部152は、主制御部151の制御に基づき前記取出部113、搬送路115、排除搬送路126およびゲート120〜125を制御することにより、銀行券の取出・搬送制御を行なう。
【0040】
集積・結束制御部153は、主制御部151の制御に基づき前記排除集積部127および集積・結束部128〜131を制御することにより、銀行券の集積・結束制御を行なう。
【0041】
以下、このように構成された紙葉類処理装置111の動作について簡単に説明する。
まず、オペレータの手作業によって1まとめの銀行券が供給部112にセットされる。この場合、オペレータは、ドア138を開けて銀行券を供給部112へセットする。この後、取出部113が駆動されることで、銀行券が最上端のものから順に1枚ずつ搬送路115上に取出される。搬送路115上に取出された銀行券は、検査部116を通過し、検査される。
【0042】
このとき、たとえば、取出部113によって複数枚の銀行券が重なった状態で取出されている場合、集積方向両端にある銀行券の表面の画像がそれぞれ画像読取装置117,118により読取られる。当然のことながら、銀行券が1枚だけ正常に取出されている場合には、当該銀行券の表裏の画像がそれぞれ読取られることになる。
【0043】
このようにして銀行券から読取られた画像は、検査部116内の図示しないメモリに一時記憶され、必要に応じて操作・表示パネル137を介してオペレータに対して表示される。本実施形態では、取出部113で取出された銀行券のうち、排除集積部127へ集積される銀行券の画像のみをメモリに記憶するようにしている。なお、メモリに記憶した画像は、操作・表示パネル137における所定の操作により切換え表示可能となっている。
【0044】
検査部116は、画像読取装置117,118により読取られた画像や厚み検査部119の検査結果、形状・透かし検出装置135の検出結果等に基づいて、当該銀行券が正規の銀行券であるか否かを判定する。この判定の結果、正規の銀行券である場合、当該銀行券は再使用可能な正券であるか否かを判定する。
【0045】
この判定の結果、当該銀行券が再使用可能な正券である場合、ゲート120が集積・結束部132に向かう搬送路115の方向に切換えられる。そして、ゲート121〜124のうちいずれか1つのゲートが集積・結束部132方向に切換えられ、ゲート120を介して導かれた当該正券がいずれかの集積・結束部132に集積される。
【0046】
本実施形態では、たとえば、一方の画像読取装置117で表の模様が検出された正券、すなわち、表面を上にした状態で搬送された正券を第1、第2の集積・結束部128,129のいずれか一方に集積し、他方の画像読取装置118で表の模様が検出された正券、すなわち、裏面を上にした状態で搬送された正券を第3、第4の集積・結束部130,131のいずれか一方に集積するようにしている。
【0047】
これにより、正券の表裏を取り揃えるようにしている。たとえば、第1の集積・結束部128に表面が上の正券を集積していき、第1の集積・結束部128の正券が100枚に達した時点で、100枚の正券を結束するとともに、第2の集積・結束部129に対する正券の集積を開始し、2つの集積・結束部に100枚ずつ交互に集積して結束するようにしている。
【0048】
上記判定の結果、当該銀行券が再使用不可能な損券である場合、ゲート125が切換えられて搬送中の当該損券が裁断部133へ導かれ、当該損券が裁断されて失効される。なお、集積・結束した正券の枚数、および、裁断して失効した損券の枚数は、主制御部151で計数されて、集計される。
【0049】
上記判定の結果、当該銀行券が正規の銀行券でない場合、ゲート120が切換えられて搬送路115が排除搬送路126に接続される。そして、検査部116は、当該被処理媒体が他の媒体であるか否かを判定する。この判定の結果、当該被処理媒体は他の媒体でない場合、すなわち、2つの画像読取装置117,118で読取ったいずれの画像からも当該被処理媒体が他の媒体ではないことが判定されると、当該被処理媒体が正規の銀行券ではない例えば偽造された排除券であることが判断され、あるいは、2枚以上の銀行券の重ね取りが判断され、排除搬送路126に導かれた当該被処理媒体がそのまま排除集積部127へ集積される。
【0050】
上記判定の結果、当該被処理媒体は他の媒体である場合、たとえば異物であることが判断され、当該被処理媒体の搬送が停止されて排除搬送路126上に停止される。このようにして、排除搬送路126上に停止された当該被処理媒体は、オペレータによって取出されて確認され、手作業によって処理される。
【0051】
次に、前記形状・透かし検出装置135について詳細に説明する。
図1および図2は、形状・透かし検出装置135の光学系部分の構成を模式的に示すものである。図1および図2において、銀行券(紙葉類)11は、たとえば、図3に示すように偽造防止用の透かし画像Pおよび印刷画像(図示省略)を有していて、搬送ローラ12,13(前記搬送路115に相当)により挟持して図示矢印a方向に搬送されるものとする。
【0052】
搬送される銀行券11の一方の面側には、銀行券11の一方の面に第1の波長を有する光として赤外光および第2の波長を有する光として可視光を照射する照明部14が設けられている。
【0053】
照明部14は、たとえば、複数のLEDチップ(発光素子)15を銀行券11の搬送方向aと直交する方向に一定間隔で直線状に並設したもので、赤外光を発するLEDチップLRと可視光を発するLEDチップLWを1個置きに並べることで、赤外光と可視光とが混ざった混色照明光を実現している。
【0054】
照明部14と搬送される銀行券11との間には、照明拡散板16が配設されている。これにより、点光源であるLEDチップの輝点間の光源の存在しないエリアに照明光が広がる効果を得て、直線状の照明領域を確保することができるようになっている。
【0055】
照明拡散板16は、乳白色ガラスや白色フィルムなど、光を拡散させるものを使用する。たとえば、透過効率が良く拡散性を制御できるレンズ拡散板(LSD(Light Shaping Diffuser))等が利用できる。
【0056】
搬送される銀行券11の他方の面側には、銀行券11を透過した赤外光および可視光をそれぞれ受光して電気信号に変換する受光部17が設けられている。受光部17は、光学像を結ぶレンズ等の結像手段18、および、ラインイメージセンサ等の第1受光素子19および第2受光素子20を有する。これらの2つの受光部19,20は、互いに異なる波長の光を受光するように、受光光路中に設けたダイクロイックミラー21により2つの波長光に分離し受光する。
【0057】
すなわち、照明部14による光照射による銀行券11の透過光を直線上の光軸で受光するように、搬送路の照明部14とは反対側にCCDラインイメージセンサ等のライン状に走査する第1受光素子19および第2受光素子20を配設する。2つの受光部19,20は、照明部14の2つの波長光にそれぞれ合わせて受光波長を制限するため、ダイクロイックミラー21により赤外光を反射させて第1受光素子19に結び、ダイクロイックミラー21を透過する可視光は第2受光素子20に結像する。このように、照明部14の異なる2つの波長光に合わせて、受光部17も2つの波長光で分離し同時に同一箇所の画像を結像する構成にしている。
【0058】
なお、ダイクロイックミラー21を、可視光を反射し、赤外光を透過するタイプに変えることにより受光する波長と配置を変更することもできる。
【0059】
このような構成により、銀行券11の同一箇所の透過光画像を2つの異なる波長で捉えた画像として取得できる。本実施形態では、銀行券11に真偽用セキュリティ素子として組み込まれた透かし画像Pを透過赤外光の濃淡変化により検査し、透過可視光による射影情報を利用して銀行券11の外形形状、端面部の位置、損傷や欠損などを検査する。
【0060】
この2つの検査では、銀行券11の透過光量を検査するが、その透過光量レベルに大きな相違がある。透かし画像等は用紙の拡散光透過や吸収により照明光量に対して透過光量が1/10以下程度まで減衰する。この減衰した光量を中心に濃淡変化を多値情報として検査し評価可能な信号を抽出する必要がある。
【0061】
一方、銀行券11の形状等を検査する場合、銀行券11の端面位置を捉えることが必要なため、銀行券11からの透過光量は照明光量の1/2から1/5程度で「あり/なし」を判断できればその機能を満たす。ただし、必要以上に光量を増すと、銀行券11の端面部では照明光による回折の影響や受光素子の画素にじみの影響で透過光領域が大きくなり、端面位置が正しく計測できなくなる。
【0062】
このように、2つの透過光検出光学系では評価する透過光量の大きさに相違があるため、それぞれ用途に適合した照明光量の最適化調整が必要となる。そこで、照明部14は、後述するように検査用途ごとに最適な照明条件が設定される。
【0063】
図4は、本実施形態に係る形状・透かし検出装置135の構成を概略的に示すものである。照明部14の各赤外光用のLEDチップLRは照明駆動部41により駆動され、各可視光用のLEDチップLWは照明駆動部42により駆動される。照明駆動部41,42は、LEDチップLR,LWをそれぞれ用途に適合した照明光量となるように、最適な照明条件で駆動するようになっている。
【0064】
第1受光素子19および第2受光素子20は、受光部制御部43によって走査制御、露光制御される。その場合、搭載する製品ごとに銀行券11の搬送速度が異なる場合にも、受光素子を走査(スキャン)するための駆動信号の周波数を変えて対応可能としている。
【0065】
第1受光素子19および第2受光素子20からの各アナログ信号は、それぞれ受光増幅部44,45で適正な出力信号レベルまで増幅された後、A/D変換部46,47に送られ、それぞれ量子化(デジタル化)される。A/D変換部46,47で量子化された各信号は、それぞれの検査目的に合わせて透過画像処理部48、射影画像処理部49へ送られ、ここで補正処理等が行なわれる。
【0066】
透過画像処理部48の処理結果は透過画像補正処理部50へ送られ、射影画像処理部49の処理結果は形状・位置・欠損等検出部51へ送られる。透過画像補正処理部50の処理結果は透かし検出部52へ送られ、形状・位置・欠損等検出部51の検出結果は透過画像補正処理部50へ送られる。透かし検出部52および形状・位置・欠損等検出部51の各検出結果は検査部116のCPU155(図19参照)へ送られる。これら各部48〜52の詳細は次に説明する動作説明にて述べる。
【0067】
以下、上記のように構成された形状・透かし検出装置135の動作について説明する。
銀行券11が搬送ローラ12,13により図示矢印a方向に搬送され、照明部14の位置に到達すると、銀行券11は照明部14により赤外光と可視光からなる混合照明光が搬送方向aと直交方向にライン状に照射される。
【0068】
照明部14の光照射による銀行券11からの透過光は、受光部17において、結像手段18を介してダイクロイックミラー21に導かれ、ここで2つの波長光に分離され、赤外光(透過赤外光)は第1受光素子19へ入射し、可視光(透過可視光)は第2受光素子20へ入射し、それぞれ電気信号に変換される。
【0069】
第1受光素子19および第2受光素子20の各出力信号(アナログ信号)は、それぞれ受光増幅部44,45で適正な出力信号レベルまで増幅された後、A/D変換部46,47に送られ、ここで量子化(デジタル化)されて透過赤外光画像および透過可視光画像となる。
【0070】
A/D変換部46から得られる透過赤外光画像は透過画像処理部48へ送られ、A/D変換部47から得られる透過可視光画像は射影画像処理部49へ送られ、ここで補正処理等が行なわれる。
【0071】
補正処理としては、たとえば、銀行券11が搬送路に存在しなし状態で照明光を直接受光して、明るさや受光素子感度ばらつきによる信号レベルの違い(歪)を補正するシェーディング補正や、照明光量の経時変化や温度変化による明るさ変動等を一定に保つ出力信号レベル補正などを行ない、安定な検査性能を維持するための機能を実現する。
【0072】
また、射影画像処理部49は、A/D変換部47からの透過可視光画像から、図5に示すように、透過光が「明」から「暗」に、「暗」から「明」に変化する位置情報を座標情報として抽出する。座標情報は、座標値「0,0」から座標値「m,n」までの全走査範囲E1における走査(スキャン)方向(受光素子の走査方向)bの何画素目と、銀行券11の移動(搬送)方向aの何スキャン目かを示す座標値である。
【0073】
この銀行券11の端面位置座標値(以降、媒体端面位置座標値ともいう)により、全走査範囲E1内のどこに銀行券11が位置するかの元となる座標情報を抽出する。同時に、銀行券11の端面から内側に位置する孔や破れのように、銀行券11の内部で透過光領域が存在する場合も、その「暗」から「明」への変化位置座標情報も抽出する。
【0074】
次に、形状・位置・欠損等検出部51は、射影画像処理部49で取得された座標情報から、図5の座標値(0,a)、(0,b)、(c,a)、(d,b)の4点を特定することで、銀行券11の端面位置を検出する。次に、この銀行券11の四隅の対向する2コーナを結び(破線で示す)、交差する点の位置座標値を重心座標値gとして認識する。この重心位置(重心座標値g)により、銀行券11の走査方向bの標準搬送センタ(搬送方向の中心点)の走査方向bへのずれ量を算出する。このずれ量がスライド量であり、標準搬送センタからどれほど銀行券11が離れているかを判断する量とする。
【0075】
続いて、図6に示すように、銀行券11の長辺方向の2つのコーナ座標値(0,e)、(f,g)から、走査方向bにどれだけ差があるかを算出する。この差が銀行券11の傾き(スキュー)を判断する特徴量として抽出する。この特徴量は、反対側の2つのコーナ座標値(h,i)、(j,k)からも算出され、2つの情報が得られる。このうち大きい方の値をスキュー量を求める値として採用し、銀行券11の長辺方向の長さ情報からスキュー量を判定する。同様に、銀行券11の短辺方向の2つのコーナの搬送方向の座標値差を求め、上記スキュー判定の妥当性を検証する。相互の検出量に大きな差が生じた場合、最大値を採用するなどの判定処理をする。
【0076】
図7に示す例のように、銀行券11の四隅の一部に欠損部11aがある場合は、スライド量とスキュー量の算出に誤差が生じないように、長方形であるかの検証を端面位置座標の連続性を検査することで異常を検出する。コーナの欠損部11aを認識した場合には、端面位置情報の連続性から仮想コーナ座標値を求める。この仮想コーナ座標値を用いて、スライド量とスキュー量を算出することで誤検出を回避する。
【0077】
同様に、射影画像処理部49で取得された座標情報から、銀行券11の外形形状および寸法を、また、銀行券11の外形の内側に透過光が存在する場合には、孔や破れ等の欠損情報を検出する。図8は、銀行券11が走査方向bに平行に移動したスライド状態を示す図で、重心位置ずれによりスライド量を求める。図9は、銀行券11にスライドとスキューが混在した場合を示し、前述の方法でスライド量とスキュー量を算出し、銀行券11の搬送状態とその位置を特定する。
【0078】
次に、透過画像補正処理部50は、透過画像処理部48で補正処理された後の透過赤外光画像から、検査対象の透かし画像エリア(透かし画像Pが存在するエリア)を抽出し、透過濃度変化や明るさ情報などを専用のアルゴリズムにより抽出処理する。この際、透かし画像エリアの抽出には、形状・位置・欠損等検出部51から銀行券11の通過位置情報に基づくスキュー量とスライド量を取得し、このスキュー量とスライド量に基づき、入力された透過赤外光画像をアフィン変換等の手法を用いて回転や移動する補正処理を行なう。
【0079】
図10に、スキューした入力画像(透過赤外光画像)Ia(またはIb)の回転補正により、正常に搬送された場合と同等の辞書画像Rpと同じ位置条件に合わせ込んだ場合の概念図を示す。この補正処理により、後段の透かし検出部52での照合処理を高精度に実現可能となる。
【0080】
また、透過画像補正処理部50は、検査部116のCPU155(図19参照)から、当該銀行券11の金種や表裏や通過方向などの情報を取得し、これらの情報から、透かし検出処理するための透かし画像エリアを検出切り出し、透かし画像エリア内の画像情報を透かし検出部52に出力する。
【0081】
さらに、透過画像補正処理部50は、図11に示すように、銀行券11の透かし画像P内に孔等の欠損部11bが存在した場合にも、その大きさが透かし画像Pに比較して充分小さければ、欠損部11bを含む周囲のエリア11cを透かし画像エリアから除外する。この機能の精度は、画像読取分解能が小さいほど高精度に実現できる。
【0082】
透かし検出部52は、透過画像補正処理部50から供給される透かし画像エリア内の画像情報に対し、あらかじめ設定された真性の透かし画像(辞書情報)とのマッチング処理や、濃淡情報や透過光量など様々な情報を駆使し透かし画像の真偽を評価する。
【0083】
形状・位置・欠損等検出部51の検出結果および透かし検出部52の評価結果は検査部116のCPU155に送られ、銀行券11の種類判定や真偽判定等を行なうためのパラメータの1つとして用いられる。
【0084】
図12は、検査対象である銀行券11の透かし画像Pの位置が、搬送時位置ずれにより変動する様子を示している。この変動量を求めた条件としては、銀行券11の長さが160mm、銀行券11の幅が82mm、位置ずれ量が±5mm、回転量が±5°とした。この図のように、銀行券11の搬送位置ずれ許容範囲を広げると検査対象位置が大きく変わることが分かる。同時に検出位置補正機能が重要であることが分かる。
【0085】
以上述べた少なくとも1つの実施形態によれば、以下の作用効果を期待できる。
(1)銀行券処理機の搭載可能検査装置数の確保と高速化対応
銀行券の透かし画像を検査する装置に銀行券の形状や欠損を同一位置で同時に検査する光学手段を搭載することで、透かし画像の真偽判別性能の向上を実現できるとともに、銀行券の搬送路上の搭載ユニットを2個から1個にできる。もともと搭載可能ユニット数の制限数から1ユニットスペースを異なる真偽アイテム用に利用できるため、装置としての総合的な真偽性能向上に寄与し、コスト低減にも寄与する。また、削減スペース分装置を小型化することも可能となる。
【0086】
(2)搬送ばらつきと透かし検査視野ずれによる誤判別削減
銀行券が移動する際の位置ずれや回転などの変動による検査性能への悪影響を、透かし画像を検査している同一位置で取得した銀行券の位置や回転情報を有効に活用することで、取得画像のうち透かし画像の検出エリアを正確に捕捉することができる。その結果、検査閾値を緩めることなく常に高い真偽判別性能を実現できるとともに、銀行券の存在するエリアを狭めることなく、そのセキュリティ素子のほぼ全域を検査できる。また、検査する銀行券の位置が正確に把握できるため、読取り分解のまま基準データとの比較評価が可能となり、より細かい画像情報で検査が可能となる。
【0087】
(3)検査対象位置欠損の真偽検査性能影響を低減
透かし画像を検査する銀行券のセキュリティ素子が損傷している場合に、同一位置で取得した射影情報による銀行券の欠損情報を有効に活用することで、その欠損が透かし画像の検査エリアに比較して大きくない場合は、欠損位置の周囲を含むエリアを検査対象から除外し、透かし画像の検出判定処理を行なうことができる。その結果、欠損に影響されない真偽判別性能を実現できるとともに、損傷の多い劣悪な銀行券を検査する場合に、真偽性能を維持しつつ排除率を低減できる。
【0088】
なお、前記実施形態では、照明部14として、複数のLEDチップ15を銀行券11の搬送方向aと直交する方向に一定間隔で直線状に並設し、かつ、赤外光を発するLEDチップLRと可視光を発するLEDチップLWを1個置きに並べることで、赤外光と可視光とが混ざった混色照明光を実現したものを用いたが、たとえば、図13に示すように、伝送ライト方式の透明構造体(ロッド光学体)22を銀行券11の搬送方向と直交する方向に配設し、この透明構造体22の両端面から、それぞれ照明光を照射することにより、受光部17から見てライン状の照明光を得るようにしてもよい。
【0089】
この場合、赤外光と可視光との混合照明光は、透明構造体22の両端面側にそれぞれ赤外光を発するLED(発光素子)23,23、可視光を発するLED24,24、およびダイクロイックミラー25,25を配設し、LED23,23からの赤外光とLED24,24からの可視光をダイクロイックミラー25,25を介して透明構造体22の両端面からそれぞれ照射することにより実現可能である。この例の場合、照明拡散板16を省略してもよい。
【0090】
また、照明部14として、たとえば、図14に示すように、伝送ライト方式の透明構造体(ロッド光学体)26を銀行券11の搬送方向と直交する方向に配設し、この透明構造体26の両端面から、それぞれ照明光を照射することにより、受光部17から見てライン状の照明光を得るようにしてもよい。
【0091】
この場合、赤外光と可視光との混合照明光は、透明構造体26の両端面側にそれぞれハロゲンランプのようにブロードな発光波長を持つ光源27,27、光学フィルタ(可視光吸収赤外光透過フィルタ)28、および光学フィルタ(赤外光吸収可視光透過フィルタ)29を配設し、光源27,27からの光を光学フィルタ28,29を介して透明構造体26の両端面からそれぞれ照射することにより実現可能である。この例の場合も、照明拡散板16を省略してもよい。
【0092】
なお、光学フィルタ28,29を共通の光透過特性を有するものを使用することもできる。その場合、可視光と赤外光の光量バランスを受光部17が必要なバランスとなるような透過分光特性を光学フィルタ28,29に持たせる。
【0093】
また、受光部17として、たとえば、図15に示すように、自己収束型の結像レンズであるセルフォックレンズ(登録商標)30,31、光学フィルタ(可視光吸収赤外光透過フィルタ)32、光学フィルタ(赤外光吸収可視光透過フィルタ)33、および、密着型イメージセンサ34,35の組み合わせでも実現可能である。
【0094】
さらに、受光部17として、たとえば、図16に示すように、結像レンズ36,37、光学フィルタ(可視光吸収赤外光透過フィルタ)32、光学フィルタ(赤外光吸収可視光透過フィルタ)33、および、密着型イメージセンサ34,35の組み合わせでも実現可能である。
【0095】
また、前記実施形態では、透過画像補正処理部50で入力画像を回転や移動処理して、標準位置で生成された辞書画像と照合する方法を記述しているが、入力画像はそのままで、形状・位置・欠損等検出部52から銀行券11の媒体通過位置情報に基づくスキュー量とスライド量を受取り、辞書画像の方を回転や移動することで照合処理する方法でも同様の効果を得られる。
【0096】
さらに、前記実施形態では、紙葉類が銀行券の場合について説明したが、これに限定されるものではなく、たとえば、銀行券以外の有価証券であっても同様に適用可能である。
【0097】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0098】
11…銀行券(紙葉類)、P…透かし画像、12,13…搬送ローラ(搬送路)、14…照明部、15…LEDチップ、16…照明拡散板、17…受光部、18…結像手段、19…第1受光素子、20…第2受光素子、21…ダイクロイックミラー、48…透過画像処理部、49…射影画像処理部、50…透過画像補正処理部、51…形状・位置・欠損等検出部、52…透かし検出部、111…紙葉類処理装置、112…供給部、113…取出部、115…搬送路(搬送手段)、116…検査部、120〜125ゲート、126…排除搬送路、127…排除集積部、128〜131…集積・結束部、135…形状・透かし検出装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される紙葉類の一方の面に第1の波長を有する光を照射する第1の光源と、
前記搬送される紙葉類の一方の面で、前記第1の光源による光照射と同じ位置に第2の波長を有する光を照射する第2の光源と、
前記搬送される紙葉類の他方の面側に設けられ、前記第1の光源の光照射により当該紙葉類を透過した第1の波長を有する光を受光して電気信号に変換する第1の受光手段と、
前記搬送される紙葉類の他方の面側に設けられ、前記第2の光源の光照射により当該紙葉類を透過した第2の波長を有する光を受光して電気信号に変換する第2の受光手段と、
を具備する光学読取装置。
【請求項2】
前記第1、第2の受光手段の各受光光軸を前記紙葉類上で同一位置にする請求項1記載の光学読取装置。
【請求項3】
前記第1、第2の受光手段の各受光光軸を前記紙葉類から前記第1、第2の受光手段の受光部まで同一位置にする請求項1記載の光学読取装置。
【請求項4】
透かし画像および印刷画像を有し搬送される紙葉類の一方の面に赤外光を照射する第1の光源と、
前記搬送される紙葉類の一方の面で、前記第1の光源による光照射と同じ位置に可視光を照射する第2の光源と、
前記搬送される紙葉類の他方の面側に設けられ、前記第1の光源の光照射により当該紙葉類を透過した赤外光を受光して電気信号に変換することにより透過赤外光画像を取得する第1の受光手段と、
前記搬送される紙葉類の他方の面側に設けられ、前記第2の光源の光照射により当該紙葉類を透過した可視光を受光して電気信号に変換することにより透過可視光画像を取得する第2の受光手段と、
を具備する光学読取装置。
【請求項5】
前記第2の受光手段により取得された透過可視光画像に基づき当該紙葉類の射影画像を取得し、この取得した射影画像に基づき当該紙葉類の形状および位置を検出する検出手段と、
前記第1の受光手段により取得された透過赤外光画像から、前記検出手段により検出された紙葉類の形状および位置情報に基づき前記透かし画像が存在する透かし画像エリアを特定する透かし画像エリア特定手段と、
をさらに具備する請求項4記載の光学読取装置。
【請求項6】
前記第2の受光手段により取得された透過可視光画像に基づき当該紙葉類の射影画像を取得し、この取得した射影画像に基づき当該紙葉類の形状、位置および欠損を検出する検出手段と、
前記第1の受光手段により取得された透過赤外光画像から、前記検出手段により検出された紙葉類の形状および位置情報に基づき前記透かし画像が存在する透かし画像エリアを特定するとともに、前記検出手段により検出された紙葉類の欠損情報に基づき前記特定された透かし画像エリアから当該欠損部分を除外する透かし画像エリア特定手段と、
をさらに具備する請求項4記載の光学読取装置。
【請求項7】
前記透かし画像エリア特定手段は、前記第1の受光手段により取得された透過赤外光画像から、前記検出手段により検出された紙葉類の形状および位置情報と外部から供給される当該紙葉類の種類情報と搬送方向情報に基づき前記透かし画像が存在する透かし画像エリアを特定する請求項5または請求項6記載の光学読取装置。
【請求項8】
透かし画像および印刷画像を有する紙葉類を搬送する搬送手段と、
この搬送手段により搬送される前記紙葉類の一方の面に赤外光を照射する第1の光源と、
前記搬送手段により搬送される紙葉類の一方の面で、前記第1の光源による光照射と同じ位置に可視光を照射する第2の光源と、
前記搬送手段により搬送される紙葉類の他方の面側に設けられ、前記第1の光源の光照射により当該紙葉類を透過した赤外光を受光して電気信号に変換することにより透過赤外光画像を取得する第1の受光手段と、
前記搬送手段により搬送される紙葉類の他方の面側に設けられ、前記第2の光源の光照射により当該紙葉類を透過した可視光を受光して電気信号に変換することにより透過可視光画像を取得する第2の受光手段と、
前記第1の受光手段により取得された透過赤外光画像に基づき当該紙葉類の透かし画像を検出し、その真偽を判定する判定手段と、
前記第2の受光手段により取得された透過可視光画像に基づき当該紙葉類の形状および欠損を検出する検出手段と、
前記判定手段の判定結果および前記検出手段の検出結果に応じて前記搬送手段により搬送される紙葉類を区分処理する区分処理手段と、
を具備する紙葉類処理装置。
【請求項9】
透かし画像および印刷画像を有する紙葉類を搬送する搬送手段と、
この搬送手段により搬送される前記紙葉類の一方の面に赤外光を照射する第1の光源と、
前記搬送手段により搬送される紙葉類の一方の面で、前記第1の光源による光照射と同じ位置に可視光を照射する第2の光源と、
前記搬送手段により搬送される紙葉類の他方の面側に設けられ、前記第1の光源の光照射により当該紙葉類を透過した赤外光を受光して電気信号に変換することにより透過赤外光画像を取得する第1の受光手段と、
前記搬送手段により搬送される紙葉類の他方の面側に設けられ、前記第2の光源の光照射により当該紙葉類を透過した可視光を受光して電気信号に変換することにより透過可視光画像を取得する第2の受光手段と、
前記第2の受光手段により取得された透過可視光画像に基づき当該紙葉類の射影画像を取得し、この取得した射影画像に基づき当該紙葉類の形状、位置および欠損を検出する検出手段と、
前記第1の受光手段により取得された透過赤外光画像から、前記検出手段により検出された紙葉類の形状および位置情報に基づき前記透かし画像が存在する透かし画像エリアを特定する透かし画像エリア特定手段と、
この透かし画像エリア特定手段により特定された透かし画像エリアから当該紙葉類の透かし画像を抽出し、その真偽を判定する判定手段と、
この判定手段の判定結果および前記検出手段の検出結果に応じて前記搬送手段により搬送される紙葉類を区分処理する区分処理手段と、
を具備する紙葉類処理装置。
【請求項1】
搬送される紙葉類の一方の面に第1の波長を有する光を照射する第1の光源と、
前記搬送される紙葉類の一方の面で、前記第1の光源による光照射と同じ位置に第2の波長を有する光を照射する第2の光源と、
前記搬送される紙葉類の他方の面側に設けられ、前記第1の光源の光照射により当該紙葉類を透過した第1の波長を有する光を受光して電気信号に変換する第1の受光手段と、
前記搬送される紙葉類の他方の面側に設けられ、前記第2の光源の光照射により当該紙葉類を透過した第2の波長を有する光を受光して電気信号に変換する第2の受光手段と、
を具備する光学読取装置。
【請求項2】
前記第1、第2の受光手段の各受光光軸を前記紙葉類上で同一位置にする請求項1記載の光学読取装置。
【請求項3】
前記第1、第2の受光手段の各受光光軸を前記紙葉類から前記第1、第2の受光手段の受光部まで同一位置にする請求項1記載の光学読取装置。
【請求項4】
透かし画像および印刷画像を有し搬送される紙葉類の一方の面に赤外光を照射する第1の光源と、
前記搬送される紙葉類の一方の面で、前記第1の光源による光照射と同じ位置に可視光を照射する第2の光源と、
前記搬送される紙葉類の他方の面側に設けられ、前記第1の光源の光照射により当該紙葉類を透過した赤外光を受光して電気信号に変換することにより透過赤外光画像を取得する第1の受光手段と、
前記搬送される紙葉類の他方の面側に設けられ、前記第2の光源の光照射により当該紙葉類を透過した可視光を受光して電気信号に変換することにより透過可視光画像を取得する第2の受光手段と、
を具備する光学読取装置。
【請求項5】
前記第2の受光手段により取得された透過可視光画像に基づき当該紙葉類の射影画像を取得し、この取得した射影画像に基づき当該紙葉類の形状および位置を検出する検出手段と、
前記第1の受光手段により取得された透過赤外光画像から、前記検出手段により検出された紙葉類の形状および位置情報に基づき前記透かし画像が存在する透かし画像エリアを特定する透かし画像エリア特定手段と、
をさらに具備する請求項4記載の光学読取装置。
【請求項6】
前記第2の受光手段により取得された透過可視光画像に基づき当該紙葉類の射影画像を取得し、この取得した射影画像に基づき当該紙葉類の形状、位置および欠損を検出する検出手段と、
前記第1の受光手段により取得された透過赤外光画像から、前記検出手段により検出された紙葉類の形状および位置情報に基づき前記透かし画像が存在する透かし画像エリアを特定するとともに、前記検出手段により検出された紙葉類の欠損情報に基づき前記特定された透かし画像エリアから当該欠損部分を除外する透かし画像エリア特定手段と、
をさらに具備する請求項4記載の光学読取装置。
【請求項7】
前記透かし画像エリア特定手段は、前記第1の受光手段により取得された透過赤外光画像から、前記検出手段により検出された紙葉類の形状および位置情報と外部から供給される当該紙葉類の種類情報と搬送方向情報に基づき前記透かし画像が存在する透かし画像エリアを特定する請求項5または請求項6記載の光学読取装置。
【請求項8】
透かし画像および印刷画像を有する紙葉類を搬送する搬送手段と、
この搬送手段により搬送される前記紙葉類の一方の面に赤外光を照射する第1の光源と、
前記搬送手段により搬送される紙葉類の一方の面で、前記第1の光源による光照射と同じ位置に可視光を照射する第2の光源と、
前記搬送手段により搬送される紙葉類の他方の面側に設けられ、前記第1の光源の光照射により当該紙葉類を透過した赤外光を受光して電気信号に変換することにより透過赤外光画像を取得する第1の受光手段と、
前記搬送手段により搬送される紙葉類の他方の面側に設けられ、前記第2の光源の光照射により当該紙葉類を透過した可視光を受光して電気信号に変換することにより透過可視光画像を取得する第2の受光手段と、
前記第1の受光手段により取得された透過赤外光画像に基づき当該紙葉類の透かし画像を検出し、その真偽を判定する判定手段と、
前記第2の受光手段により取得された透過可視光画像に基づき当該紙葉類の形状および欠損を検出する検出手段と、
前記判定手段の判定結果および前記検出手段の検出結果に応じて前記搬送手段により搬送される紙葉類を区分処理する区分処理手段と、
を具備する紙葉類処理装置。
【請求項9】
透かし画像および印刷画像を有する紙葉類を搬送する搬送手段と、
この搬送手段により搬送される前記紙葉類の一方の面に赤外光を照射する第1の光源と、
前記搬送手段により搬送される紙葉類の一方の面で、前記第1の光源による光照射と同じ位置に可視光を照射する第2の光源と、
前記搬送手段により搬送される紙葉類の他方の面側に設けられ、前記第1の光源の光照射により当該紙葉類を透過した赤外光を受光して電気信号に変換することにより透過赤外光画像を取得する第1の受光手段と、
前記搬送手段により搬送される紙葉類の他方の面側に設けられ、前記第2の光源の光照射により当該紙葉類を透過した可視光を受光して電気信号に変換することにより透過可視光画像を取得する第2の受光手段と、
前記第2の受光手段により取得された透過可視光画像に基づき当該紙葉類の射影画像を取得し、この取得した射影画像に基づき当該紙葉類の形状、位置および欠損を検出する検出手段と、
前記第1の受光手段により取得された透過赤外光画像から、前記検出手段により検出された紙葉類の形状および位置情報に基づき前記透かし画像が存在する透かし画像エリアを特定する透かし画像エリア特定手段と、
この透かし画像エリア特定手段により特定された透かし画像エリアから当該紙葉類の透かし画像を抽出し、その真偽を判定する判定手段と、
この判定手段の判定結果および前記検出手段の検出結果に応じて前記搬送手段により搬送される紙葉類を区分処理する区分処理手段と、
を具備する紙葉類処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2013−77163(P2013−77163A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216573(P2011−216573)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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