説明

光学部品用接着剤

【課題】波長が300〜415nmの短波長の光が照射されても、接着剤自体の蛍光が少ない、ポリエン−ポリチオール系の光学部品接着用接着剤の提供。
【解決手段】ポリエンとポリチオールとを含有し、かつ、ポリチオールがイソシアヌル環誘導体である光学部品用接着剤。光ラジカル重合開始剤を含有してもよい。光ラジカル重合開始剤はアルキルフェニルケトン誘導体、ベンゾイン、ベンゾイン誘導体が好ましい。光学部品用接着剤を、波長200〜450nm、照射強度0.1〜10000mW/cm2、積算照射量10〜100000mJ/cm2の光を照射し、厚さ0.0001〜1mmにて接着してなることを特徴とする光学部品用接着剤の接着方法。該接着剤を用いて接着した光学部品接着体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエン−ポリチオール系樹脂組成物からなる接着剤、該接着剤を用いて接着した接着体および光学部材に関する。ここで、「ポリ」とは二官能性以上の多官能性を示す。
【背景技術】
【0002】
近年、紫外線等の活性光線の照射によって硬化する樹脂組成物が、接着剤、コーティング剤等として各種の分野で用いられるようになってきている。このような光硬化性樹脂組成物のひとつとして、ポリエンとポリチオールとを成分とする樹脂組成物が知られている(特許文献1〜10)。特許文献10は、ポリチオールとしてイソシアヌル環誘導体を使用せず、ポリエンとしてイソシアヌル環誘導体を使用しているので、本発明と異なる。
【0003】
【特許文献1】特開平03−243626号公報
【特許文献2】特開平07−082376号公報
【特許文献3】特開平07−003025号公報
【特許文献4】特開平09−111189号公報
【特許文献5】特開平10−330450号公報
【特許文献6】特開2000−102933号公報
【特許文献7】特開2001−194510号公報
【特許文献8】特開2002−182002号公報
【特許文献9】特開2003−238904号公報
【特許文献10】特開2003−277505号公報
【0004】
ポリエンとポリチオールとを成分とする樹脂組成物は、可視光域(400〜800nm)の優れた透明性、接着性、空気下での表面の硬化性(以下、表面硬化性という)を有することから、ガラス及び透明プラスチック用等の接着剤として、光学部品や電子部品等の各種分野で用いられている。
【0005】
しかしながら、近年、DVDドライブ等の光ピックアップ光源の波長が300〜415nmと短波長化するなどの背景がある。そのため、DVDドライブ等の光学部材の接着に用いる接着剤には、可視光透明性に加え、新たな特性として、300〜415nmの短波長域の光が照射されても、接着剤自体の蛍光発光が少なく、可視光域の透明性を損なわない低蛍光性の接着剤が求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ポリエンとポリチオールとを主成分として含有する低蛍光性ポリエン−ポリチオール樹脂組成物からなる接着剤、該接着剤を用いて接着した接着体および光学部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決は、以下を採用することにより達成される。
【0008】
ポリエンとポリチオールとを含有し、かつ、ポリチオールが下記一般式〔1〕又は〔2〕で表されるイソシアヌル環誘導体である光学部品用接着剤。
ここで、一般式〔1〕、〔2〕は
【化5】

【化6】

であり、これら式中のRは、−SH基を含有する基を表す。
光ラジカル重合開始剤を含有することを特徴とする該光学部品用接着剤。
光ラジカル重合開始剤が下記一般式〔3〕で表される基を有するアルキルフェニルケトン誘導体である該光学部品用接着剤。
ここで、一般式〔3〕は
【化7】

であり、式中のXは、水素、アルキル基、アルキルエーテル基、アルキルチオエーテル基、アルキルアミノ基の群から選択されるいずれかであり、YおよびZは、水素又はメチル基であり、R1は、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルキルアミノアルキル基、アルキルエーテル基、アルキルフェニル基、フェニル基、オキシム基、アシルフォスフィン基またはそれらの誘導体である。
光ラジカル重合開始剤が、ベンゾインまたは下記一般式〔4〕で表されるベンゾイン誘導体であることを特徴とする該光学部品用接着剤。
ここで、一般式〔4〕は
【化8】

であり、式中のR2は、炭素数1〜8のアルキル基である。
該光学部品用接着剤を、波長200〜450nm、照射強度0.1〜10000mW/cm2、積算照射量10〜100000mJ/cm2の光を照射し、厚さ0.0001〜1mmにて接着してなることを特徴とする光学部品用接着剤の接着方法。
該接着剤を用いて接着した光学部品接着体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ポリエンとポリチオールとを主成分として含有するポリエン−ポリチオール樹脂組成物からなる接着剤を用いることで、波長が300〜415nmの短波長の光が照射されても、接着剤自体の蛍光が少なく、可視光域の透明性を損なわない接着体および光学部品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
本発明で使用するポリエンとは、1分子当たり2個以上の炭素−炭素不飽和結合を有するアルケン類であり、本発明に於いて使用されるポリエンの具体例としては、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン等のビニル化合物、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ジアリルマレエート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、テトラアリロキシエタン等のアリル化合物、ポリオキシプロピレンジアリルエーテル等のアリルエーテル化合物などが挙げられる。
【0012】
本発明で使用するポリチオールは、1分子当たり2個以上のチオール基を有する平均分子量が50〜15000の物質であり、特に好ましいポリチオールとしては、ジメルカプトブタンやトリメルカプトヘキサンなどのメルカプト基置換アルキル化合物、ジメルカプトベンゼンなどのメルカプト基置換アリル化合物、チオグリコール酸やチオプロピオン酸などの多価アルコールエステル及び多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物と硫化水素の反応生成物などが挙げられる。
【0013】
本発明に於いて使用されるポリチオールの具体例としては、トリメチロールプロパン−トリス−(β−チオプロピネート)、トリス−2−ヒドロキシエチル−イソシアヌレート・トリス−β−メルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(β−チオプロピオネート)、1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン、1,8−ジメルカプト−3,6−ジスルフィドオクタン、トリアジンチオールなどが挙げられる。
【0014】
さらに、本発明におけるポリチオールは下記一般式〔1〕又は〔2〕で表されるイソシアヌル環誘導体であることが、接着性、表面硬化性、低蛍光性をバランスよく得られるため好ましい。
【0015】
ここで、一般式〔1〕、〔2〕は
【化9】

【化10】

であり、これら式中のRは、−SH基を含有する基を表す。
【0016】
イソシアヌル酸誘導体のポリチオールの具体例としては、トリス−2−ヒドロキシエチル−イソシアヌレート・トリス−β−メルカプトプロピオネート等が挙げられる。
【0017】
ポリエンが一般式〔1〕又は〔2〕で表されるイソシアヌル環誘導体であってもよい。ポリエンの場合、一般式〔1〕、〔2〕中のRは、炭素−炭素二重結合を含有する基を表す。
【0018】
イソシアヌル酸誘導体の(1)ポリエンの具体例としては、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0019】
本発明に於いて用いるポリエンとポリチオールの質量比は49:1〜1:49の範囲が好ましく、特にポリエン中の二重結合とポリチオール中のチオール基が化学当量であるときが、良好な接着性、表面硬化性を得られる点から最も好ましい。ここで言う化学当量とは、(ポリエンのモル数/ポリエン分子が有する二重結合の数)と、(ポリチオールのモル数/ポリチオール分子が有するSH基の数)が等しいことを意味している。
【0020】
本発明に於ける光ラジカル重合開始剤は、光を吸収して重合開始能のあるラジカルを発生する化合物であれば特に制限はないが、好ましくは下記一般式〔3〕で表される基を有するアルキルフェニルケトン誘導体が挙げられる。
【0021】
ここで、一般式〔3〕は
【化11】

であり、式中のXは、水素、アルキル基、アルキルエーテル基、アルキルチオエーテル基、アルキルアミノ基の群から選択されるいずれかであり、YおよびZは、水素又はメチル基であり、R1は、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルキルアミノアルキル基、アルキルエーテル基、アルキルフェニル基、フェニル基、オキシム基、アシルフォスフィン基またはそれらの誘導体である。
【0022】
本発明に於いて使用される光ラジカル重合開始剤の具体例としては、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾイン安息香酸、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン誘導体、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール等のアルキルアセトフェノン誘導体、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−(4−イソプロピルフェニル)2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のα−ヒドロキシアセトフェノン誘導体、ビスジエチルアミノベンゾフェノン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2-ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン−1等のα−アミノアルキルアセトフェノン誘導体、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド誘導体が挙げられる。
【0023】
さらに前記アルキルフェニルケトン誘導体の中でも、低蛍光性且つ反応性に優れているベンゾインまたは下記一般式〔4〕で表されるベンゾイン誘導体が特に好ましい。
【0024】
ここで、一般式〔4〕は
【化12】

であり、式中のR2は、炭素数1〜8のアルキル基である。
【0025】
これら光ラジカル重合開始剤は、1種もしくは2種以上を組み合わせて使用することができ、また、予め、ポリエン又はポリチオール、あるいは、ポリエン及びポリチオールに反応させておくことも可能である。光ラジカル重合開始剤の配合量は、ポリエンとポリチオールの合量に対し、0.01質量%以上0.5質量%以下が好ましく、特に0.02質量%以上0.3質量%以下が好ましい。0.01質量%以上であれば、充分な硬化性を得ることができ、0.5質量%未満であれば、蛍光発光により可視光透明性を損なうこともない。
【0026】
また、本発明の樹脂組成物は、目的の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、シランカップリング剤等の密着性向上剤、酸化防止剤、硬化促進剤、充填剤、着色剤、チキソトロピー付与剤、可塑剤、界面活性剤、滑剤、帯電防止剤などの添加剤を加えることができる。
【0027】
本発明の樹脂組成物からなる接着剤を用いる光学部品用の透明基材としては、例えば石英、石英ガラス、硼珪酸ガラス、ソーダガラス等のガラス材料、臭素化カリウム、フッ化カルシウム等のハロゲン化鉱物、サファイア等の単結晶セラミックス、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素樹脂、セルロース樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体、シリコーン樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂等の樹脂材料が例示できる。
【0028】
本発明の樹脂組成物は光等の活性エネルギー線によって硬化でき、該樹脂組成物からなる接着剤を用いた光学部材も光等の活性エネルギー線によって接着できる。
【0029】
光等の活性エネルギー線による硬化又は接着には、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ(インジウム等を含有する)、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、キセノンエキシマランプ、キセノンフラッシュランプ等を光源とした照射装置が適用でき、さらには、レーザー光や電子線(EUV)等も適用可能である。
【0030】
上記装置は、直接照射、反射鏡等により、集光照射、ファイバー等による集光照射をすることができ、低波長カットフィルター、熱線カットフィルター、コールドミラー等も用いることもできる。
【0031】
本発明によれば、ポリエンとポリチオールとを主成分として含有する低蛍光性ポリエン−ポリチオール樹脂組成物およびその硬化物、さらに該樹脂組成物からなる接着剤、該接着剤を用いて接着した光学部材を提供することができる。
【0032】
本発明の光学部品用接着剤は、波長200〜450nm、照射強度0.1〜10000mW/cm2、積算照射量10〜100000mJ/cm2の光を照射し、厚さ0.0001〜1mmの条件下で接着することが好ましい。
【実施例】
【0033】
次に本発明を更に具体的に実施例、比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実
施例に限定されるものではない。
【0034】
以下の実施例で断りのない限り部は、質量部を示す。
【0035】
実験例1〜7
ポリエンとして、ジアリルマレエートを13部、イソホロンジイソシアネートの2−ヒドロキシエチルアクリレート付加物を17部、ポリチオールとして、トリス−2−ヒドロキシエチル−イソシアヌレート・トリス−β−メルカプトプロピオネート70部とを混合した組成物に、光ラジカル重合開始剤として、ベンゾインエチルエーテル(精工化学(株)製、セイクオールBEE)を表1に示す質量部にて添加し、各々溶解するまで十分に攪拌し、樹脂組成物を製造した。
【0036】
実験例8
ポリエンとして、ジアリルマレエートを13部、イソホロンジイソシアネートの2−ヒドロキシエチルアクリレート付加物を17部、ポリチオールとして、トリス−2−ヒドロキシエチル−イソシアヌレート・トリス−β−メルカプトプロピオネート70部とを混合した組成物に、光ラジカル重合開始剤として、ベンゾインプロピルエーテル(精工科学(株)性、セイクオールBPE)を表1に示す質量部にて添加し、各々溶解するまで十分に攪拌し、樹脂組成物を製造した。
【0037】
実験例9
ポリエンとして、トリアリルイソシアヌレートを30部、ポリチオールとして、トリス−2−ヒドロキシエチル−イソシアヌレート・トリス−β−メルカプトプロピオネート70部とを混合した組成物に、光ラジカル重合開始剤として、ベンゾインエチルエーテル(精工化学(株)製、セイクオールBEE)を0.1部にて添加し、各々溶解するまで十分に攪拌し、樹脂組成物を製造した。
【0038】
実験例10
ポリエンとして、トリアリルイソシアヌレートを30部、ポリチオールとして、トリメチロールプロパン−トリス−(β−チオプロピネート)を70部とを混合した組成物に、光ラジカル重合開始剤として、ベンゾインエチルエーテル(精工化学(株)製、セイクオールBEE)を表1に示す質量部にて添加し、各々溶解するまで十分に攪拌し、樹脂組成物を製造した。
【0039】
実験例11
ポリエンとして、ジアリルマレエートを13部、イソホロンジイソシアネートの2−ヒドロキシエチルアクリレート付加物を17部、トリメチロールプロパントリアクリレートを70部とを混合した組成物に、光ラジカル重合開始剤として、ベンゾインエチルエーテル(精工化学(株)製、セイクオールBEE)を0.3部にて添加し、各々溶解するまで十分に攪拌し、樹脂組成物を製造した。
【0040】
実験例12
ポリエンとして、ジアリルマレエートを13部、イソホロンジイソシアネートの2−ヒドロキシエチルアクリレート付加物を17部、ポリチオールとして、トリメチロールプロパン−トリス−(β−チオプロピネート)を70部とを混合した組成物に、光ラジカル重合開始剤として、ベンゾインエチルエーテル(精工化学(株)製、セイクオールBEE)を0.3部にて添加し、各々溶解するまで十分に攪拌し、樹脂組成物を製造した。
【0041】
上記実施例及び比較例で得られた組成物につき、下記の性能評価を行い、その結果を表1に示す。
【0042】
(1)表面硬化性
1枚のガラス試験片(25mm×25mm、厚さ2mm)の片面に得られた組成物を厚さ1mmで塗布し、これを空気雰囲気下で集光型のフュージョン社製無電極放電ランプを用い、照射強度100mW/cm2(365nm)で、積算照射量6,000mJ/cm2の光を照射したものを表面硬化性評価用試料とした。表面硬化性の評価方法は指触により、次に示す判定基準で評価した。
判定:○表面タック無し、△表面タック有り、×未硬化
【0043】
(2)光線透過率
1枚の石英ガラス試験片(25mm×25mm、厚さ2mm)の片面に得られた組成物を塗布し、もう一枚の同形状である石英ガラス試験片を樹脂膜厚10μmになる様に貼り合わせた。これを集光型のフュージョン社製無電極放電ランプを用い、照射強度100mW/cm2(365nm)で、積算照射量6,000mJ/cm2の光を石英ガラス越しに光照射することにより組成物を硬化させ、接着して光線透過率評価用試料とした。光線透過率は、分光光度計(島津製作所(株)製、UV−2550)を用い、波長415nmの透過率を測定し、98%以上のものを評価良好とした。
【0044】
(3)蛍光強度
各組成物に集光型のフュージョン社製無電極放電ランプを用い、照射強度100mW/cm2(365nm)で、積算照射量6,000mJ/cm2の光を照射することにより25mm×25mm、厚さ1mmの硬化物を作製し、蛍光強度評価用試料とした。蛍光強度は、蛍光分光光度計(日立650−60型)を用い、励起波長365nmにおける415nmの蛍光強度を測定し、1000以下のものを評価良好とした。
【0045】
【表1】

【0046】
表1から以下のことが判る。本発明によれば、ポリチオールとしてイソシアヌル環誘導体を使用することにより、415nmの短波長の光が照射されても、樹脂組成物自体の蛍光が少ないという効果を奏する(実験例1〜9)。ポリチオールとしてイソシアヌル環誘導体を使用することにより、充分な表面硬化性が得られるという効果も奏する(実験例1〜9)。ポリチオールとしてイソシアヌル環誘導体を使用せず、ポリエンとしてイソシアヌル環誘導体を使用した場合、415nmの短波長の光が照射されると、樹脂組成物自体の蛍光が多く、本発明の効果を奏さない(実験例10)。ポリエンやポリチオールとしてイソシアヌル環誘導体を使用しない場合、樹脂組成物が硬化せず、表面硬化性が得られない(実験例11〜12)。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のポリエン−ポリチオール樹脂組成物からなる接着剤を用いることにより、波長が300〜415nmの短波長の光が照射されても、接着剤自体の蛍光が少なく、可視光域の透明性を損なわない接着体および光学部品を提供することができる。従って、本発明は、低蛍光性が要求される光学部品や電子部品の接着用途において顕著な効果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエンとポリチオールとを含有し、かつ、ポリチオールが下記一般式〔1〕又は〔2〕で表されるイソシアヌル環誘導体である光学部品用接着剤。
ここで、一般式〔1〕、〔2〕は
【化1】

【化2】

であり、これら式中のRは、−SH基を含有する基を表す。
【請求項2】
光ラジカル重合開始剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の光学部品用接着剤。
【請求項3】
光ラジカル重合開始剤が下記一般式〔3〕で表される基を有するアルキルフェニルケトン誘導体である請求項2に記載の光学部品用接着剤。
ここで、一般式〔3〕は
【化3】

であり、式中のXは、水素、アルキル基、アルキルエーテル基、アルキルチオエーテル基、アルキルアミノ基の群から選択されるいずれかであり、YおよびZは、水素又はメチル基であり、R1は、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルキルアミノアルキル基、アルキルエーテル基、アルキルフェニル基、フェニル基、オキシム基、アシルフォスフィン基またはそれらの誘導体である。
【請求項4】
光ラジカル重合開始剤が、ベンゾインまたは下記一般式〔4〕で表されるベンゾイン誘導体であることを特徴とする請求項3に記載の光学部品用接着剤。
ここで、一般式〔4〕は
【化4】

であり、式中のR2は、炭素数1〜8のアルキル基である。
【請求項5】
請求項1〜4に記載の光学部品用接着剤を、波長200〜450nm、照射強度0.1〜10000mW/cm2、積算照射量10〜100000mJ/cm2の光を照射し、厚さ0.0001〜1mmにて接着してなることを特徴とする光学部品用接着剤の接着方法。
【請求項6】
請求項1〜4に記載の接着剤を用いて接着した光学部品接着体。

【公開番号】特開2009−270068(P2009−270068A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−124036(P2008−124036)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】