説明

光学部品素子の製造方法及び光学部品素子

【課題】光学機器に用いられる環境を配慮した耐候試験において外部から熱が加えられた場合に光学薄膜にき裂が発生しない、生産性が向上された光学部品素子の製造方法を提供する。
【解決手段】一方の主面から他方の主面まで貫通穴が形成され、前記貫通穴内側を向く面の一方の主面側の縁部に沿って前記貫通穴内側に凸形状となるように環状の凸部が設けられている成膜用ジグに、主面の大きさが前記貫通穴の他方の主面側の開口部と同形状となっているウエハを前記貫通穴の内部に収納しつつ、前記ウエハの主面の縁部と前記凸部とが接触するように前記ウエハを配置する配置工程と、 前記凸部側を向く前記ウエハの面のうち露出している面に光学薄膜を前記ウエハが配置されている前記成膜用ジグの一方の主面側から成膜する成膜工程と、を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学薄膜が形成され光学機器に用いられる光学部品素子の製造方法と、光学薄膜が形成され光学機器に用いられる光学部品素子に関する。
【0002】
光学部品素子は、例えば、ビデオカメラやデジタルカメラといった光学機器に多く用いられている。
【0003】
このような光学部品素子は、例えば、光学薄膜が形成されている二つのウエハが水晶板を挟んで接着されている構造となっている。このとき、光学薄膜は、一方のウエハ側から光が入射された他方のウエハ側から光が出射された場合、光が入射又は出射する際にウエハの主面で反射することを防ぐために成膜され形成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、光学薄膜が形成されている光学部品素子の別の一例として、直接接合により複数の水晶板が接合されウエハが形成され、このウエハの光が入射される面及び光が出射される面に光学薄膜が設けられている場合がある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、光学薄膜が形成されている光学部品素子の更に別の一例として、1枚のウエハの一方の主面に光学薄膜が形成されている場合がある。
【0006】
つまり、前述したような光学部品素子では、光が入射されるウエハの面又は/及び光が出射されるウエハの面に光学薄膜が形成されている。
【0007】
このような光学薄膜が形成されている光学部品素子の製造方法は、ウエハ配置工程、成膜工程を備えている。
ここで、製造される光学部品素子は、例えば、図5(a)及び図5(b)に示すように、両主面が矩形形状となっているウエハ210の一方の主面にのみ光学薄膜Mが成膜されて形成されている。
【0008】
(ウエハ配置工程)
ウエハ配置工程は、図7(a)と図7(b)と図7(c)に示すように、成膜用ジグ220にウエハ210を配置する工程である。
【0009】
ウエハ210は、例えば、両主面が矩形形状となっている水晶部材が用いられる。
また、ウエハ210は、例えば、互いに直交するX軸とY軸とZ軸とからなる結晶軸を有するランバード人工水晶部材が切断された後、両面研磨機により両主面が研磨されて形成されている。
【0010】
成膜用ジグ220は、例えば、図6(a)と図6(b)と図6(c)に示すように、矩形形状の平板状に形成されており、開口部が矩形形状であって、一方の主面から他方の主面まで貫通している貫通穴222(222a,222b)が形成されている。
また、成膜用ジグ220は、成膜用ジグ220の一方の主面側の貫通穴222内側を向く面のうち対向している所定の二つの面に沿って凸部221が設けられている。
【0011】
ここで、貫通穴222は、凸部221の面に挟まれている空間を成膜用空間222bとし、成膜用空間222bを除く貫通穴222の内側を向く面に囲まれている空間をウエハ収納空間222aとする。
つまり、貫通穴222は、成膜用空間222bとウエハ収納空間222aとが連なった状態で構成されており、成膜用ジグ220の一方の主面側に成膜用空間222bが形成されつつ成膜用ジグ220の他方の主面側にウエハ収納空間222aが形成されて、成膜用ジグ220の一方の主面から他方の主面にかけて貫通した状態で形成されている。
【0012】
ウエハ収納空間222aは、例えば、図6(a)に示すように、開口部が矩形形状に形成されている。
また、ウエハ収納空間222aの開口部は、例えば、図7(a)及び図7(b)に示すように、ウエハ210が三つ並んでいるときの大きさと同じ大きさとなっている。
【0013】
成膜用空間222bは、例えば、図6(a)及び図6(c)に示すように、開口部が凸部221の分だけウエハ収納空間222aの開口部より小さくなっている。
【0014】
ウエハ配置工程では、成膜用ジグ220の他方の主面側から成膜用ジグ220の貫通穴221の内にウエハ210を収納しつつ、ウエハ210の主面が凸部212に接触するようにウエハ210を成膜用ジグ220に配置している。
また、ウエハ配置工程では、例えば、図7(a)及び図7(b)に示すように、三つのウエハ210が並べて配置されている。このとき、図7(c)に示すように、凸部212側を向くウエハ210の面のうち対向している所定の二辺の縁部を成膜用ジグ220の凸部212で保持している状態となっている。
【0015】
(成膜工程)
成膜工程は、例えば、図8(a)及び図8(b)に示すように、凸部212側を向くウエハ210の面のうち露出しているウエハ210の面に光学薄膜Mをウエハ210が配置されている成膜用ジグ220の一方の主面側から成膜する工程である。
成膜工程では、例えば、蒸着法が用いられ、図8(a)に示すように、ウエハ210が配置されている成膜用ジグ220の一方の主面が蒸着源J側を向くように配置され、図8(b)に示すように、凸部212側を向くウエハ210の面のうち露出しているウエハ210の面に光学薄膜Mが成膜される。
【0016】
従って、光学薄膜Mが形成されている光学部品素子の製造方法では、光学薄膜Mが形成されるウエハ210の主面の対向する所定の二辺に沿った縁部でウエハ210が保持された状態で、光学薄膜Mが成膜されて形成される。このとき、光学薄膜Mが形成されるウエハ210の主面の対向する所定の他の二辺に沿った縁部には、光学薄膜Mが形成される。
【0017】
このような光学部品素子の製造方法により製造された光学部品素子200は、例えば、図5(a)及び図5(b)に示すように、成膜用ジグ220の凸部221と接触していた部分を残してウエハ210の全面に光学薄膜Mが形成された状態となる。つまり、ウエハ210の主面を見た場合、光学薄膜Mは、平行な二つの縁部がウエハ210の平行な二つの縁部と一致し、平行な他の二つの縁部がウエハ210の平行な他の二つの縁部から離れて存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開平11−218612号公報
【特許文献2】特開2006−276313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、従来の光学部品素子の製造方法は、光学薄膜が形成されるウエハの主面の対向する所定の二辺に沿った縁部でウエハが保持された状態で、光学薄膜が成膜されて形成されているので、光学薄膜が形成されるウエハの主面の対向する所定の他の二辺に沿った縁部に光学薄膜が形成されることとなる。従来の光学部品素子の製造方法では、ウエハの主面の縁部に微少な傷や欠けがあった場合に、この微少な傷又は欠けの上に光学薄膜が成膜されてしまう。
このため、従来の光学部品素子の製造方法では、光学機器が用いられる環境に配慮した耐候試験において外部から熱が加えられた場合、微少な傷又は欠け上の光学薄膜部分に歪みが生じ、その部分を起点として光学膜にき裂が発生し、生産性が低減する恐れがある。
【0020】
従来の光学部品素子は、光学薄膜側から光学薄膜が形成されているウエハ側を見た場合、光学薄膜の縁部と光学薄膜が形成されるウエハの面の縁部から離れている部分、及び、光学薄膜の縁部と光学薄膜が形成されるウエハの面の縁部と一致している部分が存在するので、光学薄膜が形成されるウエハの面の縁部に微少な傷や欠けがあった場合に、この微少な傷又は欠けの上に光学薄膜が成膜され形成されている。
このため、従来の光学部品素子は、光学機器が用いられる環境に配慮した耐候試験において外部から熱が加えられた場合、微少な傷又は欠け上の光学薄膜部分に歪みが生じその部分を起点として光学膜にき裂が発生してしまう恐れがある。
【0021】
そこで、本発明は、前述した課題を解決し、光学機器に用いられる環境を配慮した耐候試験において外部から熱が加えられた場合に光学薄膜にき裂が発生しない光学部品素子と生産性が向上された光学部品素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
前記課題を解決するために、一方の主面から他方の主面まで貫通穴が形成され、前記貫通穴内側を向く面の一方の主面側の縁部に沿って前記貫通穴内側に凸形状となるように環状の凸部が設けられている成膜用ジグに、主面の大きさが前記貫通穴の他方の主面側の開口部と同形状となっているウエハを前記貫通穴の内部に収納しつつ、前記ウエハの主面の縁部と前記凸部とが接触するように前記ウエハを配置する配置工程と、前記凸部側を向く前記ウエハの面のうち露出している面に光学薄膜を前記ウエハが配置されている前記成膜用ジグの一方の主面側から成膜する成膜工程と、を備えていることを特徴とする。
【0023】
また、前記課題を解決するために、平板状に形成されているウエハと、前記ウエハの主面に成膜され形成されている光学薄膜と、からなり、前記光学薄膜側から前記ウエハの主面側を見た場合、前記光学薄膜の縁部と前記光学薄膜が形成されているウエハの主面の縁部とが離れていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
このような光学部品素子の製造方法によれば、光学薄膜が形成されるウエハの主面の縁部でウエハが成膜用ジグに保持された状態で、光学薄膜が成膜され形成されているので、ウエハの主面の縁部には光学薄膜が成膜されず、ウエハの主面の縁部に微少な傷や欠けがあった場合でも、微少な傷又は欠けの上に光学薄膜が成膜されること防ぐことができる。
このため、このような光学部品素子の製造方法によれば、光学機器が用いられる環境に配慮した耐候試験において外部から熱が加えられても、微少な傷又は欠けによる光学薄膜の歪みが生じないので、光学薄膜にき裂が発生することを防ぐことができ、従来の光学部品素子の製造方法と比較して生産性を向上させることができる。
【0025】
このような光学部品素子によれば、光学薄膜側から光学薄膜が形成されているウエハ側を見た場合、光学薄膜の縁部と光学薄膜が形成されるウエハの面の縁部とが離れているので、光学薄膜が形成されるウエハの面の縁部に微少な傷や欠けがあっても、この微少な傷又は欠けの上に光学薄膜が成膜されること防ぐことができる。
このため、このような光学部品素子によれば、光学機器が用いられる環境に配慮した耐侯試験において外部から熱が加えられた場合、微少な傷又は欠けによる光学薄膜の歪みが生じないので、光学薄膜にき裂が発生することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(a)は、本発明の実施形態に係る光学部品素子の一例を示す斜視図であり、(b)は、本発明の実施形態に係る光学部品素子の一例を示す平面図である。
【図2】(a)は、本発明の実施形態に係る光学部品素子の製造方法で用いる成膜用ジグの平面図であり、(b)は、図2(a)のA−A断面図であり、(c)は、図2(a)のB−B断面図である。
【図3】(a)は、本発明の実施形態に係る光学部品素子の製造方法のウエハ配置工程の状態の一例を示す平面図であり、(b)は、図3(a)のC−C断面図であり、(c)は、図3(a)のD−D断面図である。
【図4】(a)は、本発明の実施形態に係る光学部品素子の製造方法の成膜工程の状態の一例を示す断面図であり、(b)は、本発明の実施形態に係る好学部品素子の製造方法の成膜工程後の状態の一例を示す断面図である。
【図5】(a)は、従来の光学部品素子の一例を示す斜視図であり、(b)は、従来の光学部品素子の一例を示す平面図である。
【図6】(a)は、従来の光学部品素子の製造方法で用いる成膜用ジグの平面図であり、(b)は、図6(a)のE−E断面図であり、(c)は、図6(a)のF−F断面図である。
【図7】(a)は、従来の光学部品素子の製造方法のウエハ配置工程の状態の一例を示す平面図であり、(b)は、図7(a)のG−G断面図であり、(c)は、図7(a)のH−H断面図である。
【図8】(a)は、従来の光学用部品素子の製造方法の成膜工程の状態の一例を示す断面図であり、(b)は、従来の光学用部品素子の製造方法の成膜工程後の状態の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、各図面において各構成要素の状態を分かりやすくするために誇張して図示している。
【0028】
本発明の実施形態に係る光学部品素子100は、図1(a)及び図1(b)に示すように、ウエハ110と光学薄膜Mとから構成されており、例えば、ウエハ110の一方の主面に光学薄膜Mが成膜され形成されている。
【0029】
ウエハ110は、例えば、両主面が矩形形状となっている水晶部材が用いられる。
また、ウエハ110は、例えば、互いに直交するX軸とY軸とZ軸とからなる結晶軸を有するランバード人工巣賞部材が切断され後、両面研磨機により両主面が研磨されて形成されている。このため、ウエハ110の主面の縁部には、縁部から0.5mmより小さい範囲内に傷や欠けが生じている場合がある。
【0030】
光学薄膜Mは、例えば、図1(a)及び図1(b)に示すように、ウエハ110の一方の主面に成膜され形成されている。このとき、光学薄膜Mの縁部は、ウエハ110の一方の主面の縁部から離れている。
また、光学薄膜Mは、例えば、ウエハ110の一方の主面に光が入射される場合に、ウエハ110の一方の主面で光の反射を防ぐ反射防止膜の役割を果たしている。
【0031】
このような光学用部品素子100は、光学薄膜M側から光学薄膜Mが成膜され形成されているウエハ110の面側を見た場合に、光学薄膜Mの縁部と光学薄膜Mが形成されるウエハ110の面の縁部とが離れている。つまり、このような光学用部品素子100は、ウエハ110の面の縁部に沿って環状に光学薄膜Mが形成されていない部分がある。
【0032】
ここで、光学薄膜M側から光学薄膜Mが成膜され形成されているウエハ110の面側を見た場合に、光学薄膜Mの縁部と光学薄膜Mが形成されるウエハ110の面の縁部との距離が0.5mm以上となっている。つまり、ウエハ110の面の縁部に沿って環状に光学薄膜Mが形成されていない部分の幅が0.5mm以上となっている。
【0033】
ウエハ110の面の縁部に沿って環状に光学薄膜Mが形成されていない部分の幅が0.5mmより小さい場合、光学薄膜Mが形成されるウエハ110の面の縁部に傷又は欠けの上に光学薄膜Mが形成されることとなってしまう。
このため、ウエハ110の面の縁部に沿って環状に光学薄膜Mが形成されていない部分の幅が0.5mm以上となっている。
【0034】
従って、このような光学用部品素子100は、光学薄膜M側から光学薄膜Mが成膜され形成されているウエハ110の面側を見た場合に、光学薄膜Mの縁部と光学薄膜Mが形成されるウエハ110の面の縁部とが離れているので、光学薄膜Mが形成されるウエハ110の面の縁部に傷や欠けがあっても、この傷や欠けを避けて光学薄膜が形成される構造となっている。
【0035】
また、このような光学用部品素子100は、ウエハ110の主面の縁部から0.5mmより小さい範囲内に傷や欠けが生じている場合があるが、ウエハ110の面の縁部に沿って環状に光学薄膜Mが形成されていない部分の幅が0.5mm以上となっているため、光学薄膜Mが形成されるウエハ110の面の縁部に傷や欠けがあっても、この傷や欠けを避けて光学薄膜が形成される構造となっている。
【0036】
このような本発明の実施形態に係る光学部品素子100によれば、光学薄膜M側から光学薄膜Mが形成されているウエハ110側を見た場合、光学薄膜Mの縁部と光学薄膜Mが形成されるウエハ110の面の縁部とが離れているので、光学薄膜Mが形成されるウエハ110の面の縁部に微少な傷や欠けがあっても、この微少な傷又は欠けの上に光学薄膜Mが成膜されること防ぐことができる。
このため、このような本発明の実施形態に係る光学部品素子100によれば、光学機器が用いられる環境に配慮した耐侯試験において外部から熱が加えられた場合、微少な傷又は欠けによる光学薄膜Mの歪みが生じないので、光学薄膜Mにき裂が発生することを防ぐことができる。
【0037】
次に、本発明の実施形態に係る光学用部品素子の製造方法について説明する。
本発明の実施形態に係る光学用部品素子の製造方法は、ウエハ配置工程、成膜工程を備えている。
【0038】
ここで、本発明の実施形態に係る光学用部品素子の製造方法で製造される光学用部品素子は、本発明の実施形態に係る光学用部品素子100である。
従って、本発明の実施形態に係る光学用部品素子の製造方法で製造される光学用部品素子は、両主面が矩形形状のウエハ110とウエハ110の一方の主面に成膜され形成されている光学薄膜Mとから構成されている。
【0039】
(ウエハ配置工程)
ウエハ配置工程は、図3(a)と図3(b)と図3(c)に示すように、一方の主面から他方の主面まで貫通穴122が形成され、前記貫通穴122内側を向く面の一方の主面側の縁部に沿って前記貫通穴122内側に凸形状となるように環状の凸部121が設けられている成膜用ジグ120に、主面の大きさが前記貫通穴122の他方の主面側の開口部と同形状となっているウエハ110を前記貫通穴122の内部に収納しつつ、前記ウエハ110の主面の縁部と前記凸部121とが接触するように前記ウエハ110を配置する工程である。
【0040】
ウエハ110は、前述したように、両主面が矩形形状となっている水晶部材が用いられる。
また、ウエハ110は、例えば、互いに直交するX軸とY軸とZ軸とからなる結晶軸を有するランバード人工巣賞部材が切断され後、両面研磨機により両主面が研磨されて形成されている。このため、ウエハ110の主面の縁部には、縁部から0.5mmより小さい範囲内に傷や欠けが生じている場合がある。
【0041】
成膜用ジグ120は、例えば、図2(a)と図2(b)と図2(c)に示すように、矩形形状の平板状に形成されており、開口部が矩形形状であって、一方の主面から他方の主面まで貫通している貫通孔122(122a,122b)が形成されている。
また、成膜用ジグ120は、例えば、図2(a)と図2(b)と図2(c)に示すように、貫通穴122内側を向く面の成膜用ジグ120の一方の主面側の縁部に沿って環状の凸部121が設けられている。
【0042】
ここで、凸部121の面に囲まれている空間を成膜用空間122bとし、成膜用空間122bを除く貫通穴122内側を向く面に囲まれている空間をウエハ収納空間122aとする。
つまり、貫通穴122は、成膜用空間122bとウエハ収納空間122aとが連なった状態で構成されており、成膜用ジグ120の一方の主面側に成膜用空間222bが形成されつつ成膜用ジグ120の他方の主面側にウエハ収納空間122aが形成されて、成膜用ジグ120の一方の主面から他方の主面にかけて貫通した状態で形成されている。
【0043】
ウエハ収納空間122aは、例えば、図2(a)に示すように、開口部が矩形形状に形成されている。
また、ウエハ収納空間122aの開口部は、例えば、成膜用ジグ220の一方の主面側にそれぞれ独立して並んで設けられている。
また、ウエハ収納空間122aの開口部は、図3(a)と図3(b)と図3(c)に示すように、開口部の大きさがウエハ110の主面の大きさと同じ大きさとなっている。
【0044】
成膜用空間122bは、例えば、図2(a)と図2(b)と図2(c)に示すように、成膜用空間122bの開口部が凸部121の分だけウエハ収納空間122aの開口部より小さくなっている。
【0045】
ウエハ配置工程では、図3(a)と図3(b)と図3(c)に示すように、成膜用ジグ120の他方の主面側から成膜用ジグ120の貫通穴122内にウエハ110を収納しつつ、ウエハ110の主面が凸部121に接触するようにウエハ110を成膜用ジグ1120に配置している。
このとき、図3(b)及び図3(c)に示すように、凸部121側を向くウエハ110の面の縁部が成膜用ジグ120の凸部112の面と対向しつつ接触するように配置されるので、凸部121側を向くウエハ110の面の縁部が貫通穴122内側を向く面に沿って環状に設けられている凸部121で保持されている状態となる。
【0046】
また、ウエハ配置工程では、例えば、ウエハ110と凸部121とが接触している部分に着目した場合、貫通穴122内側を向く面に最も近い辺からこの辺に対向する辺までの長さが0.5mm以上となっている。つまり、ウエハ配置工程では、ウエハ110と凸部121とが接触している部分が凸部121側を向くウエハ110の面の縁部に沿って環状となっており、その幅が0.5mm以上となっている。
【0047】
ウエハ110と凸部121とが接触している部分が0.5mmより小さい場合、成膜用ジグ120にウエハ110を配置した後に成膜用ジグ120の他方の主面側から見ると、凸部121側を向くウエハ110の面であって露出されている面、つまり、成膜用空間122bの底面となっている面に、ウエハ110の傷や欠けが露出されている恐れがある。
従って、ウエハ配置工程では、成膜用ジグ120にウエハ110を配置した後に成膜用ジグ120の他方の主面側から見た場合、凸部121側を向くウエハ110の面であって露出されている面、つまり、成膜用空間122bの底面となっている面に、ウエハ110の傷や欠けが露出しないように配置することができる。
【0048】
このため、ウエハ110と凸部121とが接触している部分に着目した場合、貫通穴122内側を向く面に最も近い辺からこの辺に対向する辺までの長さが0.5mm以上となっている。
【0049】
(成膜工程)
成膜工程は、図4(a)及び図4(b)に示すように、前記凸部121側を向く前記ウエハ110の面のうち露出している面に光学薄膜Mを前記ウエハ110が配置されている前記成膜用ジグ120の一方の主面側から成膜する工程である。
【0050】
成膜工程では、例えば、蒸着法が用いられ、図4(a)に示すように、ウエハ110が配置されている成膜用ジグ110の一方の主面が蒸着源J側を向くように配置され、図4(b)に示すように、凸部121側を向くウエハ110の面のうち露出しているウエハ210の面、つまり、凸部121と接触していた部分を残してウエハ110の全面に光学薄膜Mが成膜される。
【0051】
成膜工程後のウエハ110は、図4(b)に示すように、凸部121側を向くウエハ110の面のうち露出しているウエハ210の面にのみ光学薄膜Mが成膜され、かつ、ウエハ110と凸部121とが接触している部分に光学薄膜Mが成膜されない状態となる。
従って、成膜工程では、ウエハ配置工程でウエハ110の傷や欠けが露出しないように成膜用ジグ120にウエハ110が配置された状態で光学薄膜Mが成膜されているので、光学薄膜Mが傷や欠けの上に成膜されない。
【0052】
このような本発明の実施形態に係る光学部品素子の製造方法によれば、光学薄膜Mが形成されるウエハ110の主面の縁部でウエハ110が成膜用ジグ120に保持された状態で、光学薄膜Mが成膜され形成されているので、ウエハ110の主面の縁部には光学薄膜Mが成膜されず、ウエハ110の主面の縁部に微少な傷や欠けがあった場合でも、傷又は欠けの上に光学薄膜Mが成膜されること防ぐことができる。
このため、このような本発明の実施形態に係る光学部品素子の製造方法によれば、光学機器が用いられる環境に配慮した耐候試験において外部から熱が加えられても、傷又は欠けによる光学薄膜の歪みが生じないので、光学薄膜Mにき裂が発生することを防ぐことができ、従来の光学部品素子の製造方法と比較して生産性を向上させることができる。
【0053】
なお、成膜用ジグに貫通穴が三つ設けられている場合について図示しているが、それぞれの貫通穴が独立していれば、貫通穴の数が幾つ設けられていてもよい。例えば、一つだけ設けられていてもよい。また、例えば、四つ設けられていてもよい。
【0054】
また、光学薄膜がウエハの一方の主面にのみ設けられている場合について説明しているが、例えば、両主面に光学薄膜が設けられていてもよい。
【0055】
また、光学薄膜をウエハの一方の主面に成膜する場合ついて説明したが、例えば、ウエハの一方の主面に光学薄膜を成膜した後、光学薄膜が設けられていないウエハの他方の主面を成膜用ジグの凸部側に向けた状態でウエハを配置し成膜することでウエハの両主面に成膜を行ってもよい。
【0056】
また、光学薄膜が蒸着法により成膜されている場合について説明しているが、例えば、スパッタ法を用いて成膜してもよい。
【0057】
100,200 光学部品素子
110,210 ウエハ
M 光学薄膜
120,220 成膜用ジグ
121,221 凸部
122,222 貫通穴
122a,222b ウエハ収納空間
122b、222b 成膜用空間
J 蒸着源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の主面から他方の主面まで貫通穴が形成され、前記貫通穴内側を向く面の一方の主面側の縁部に沿って前記貫通穴内側に凸形状となるように環状の凸部が設けられている成膜用ジグに、主面の大きさが前記貫通穴の他方の主面側の開口部と同形状となっているウエハを前記貫通穴の内部に収納しつつ、前記ウエハの主面の縁部と前記凸部とが接触するように前記ウエハを配置する配置工程と、
前記凸部側を向く前記ウエハの面のうち露出している面に光学薄膜を前記ウエハが配置されている前記成膜用ジグの一方の主面側から成膜する成膜工程と、
を備えていることを特徴とする光学部品素子の製造方法。
【請求項2】
平板状に形成されているウエハと、
前記ウエハの主面に成膜され形成されている光学薄膜と、
からなり、
前記光学薄膜側から前記ウエハの主面側を見た場合、前記光学薄膜の縁部と前記光学薄膜が形成されているウエハの主面の縁部とが離れている
ことを特徴とする光学部品素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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