説明

光学部材、および該光学部材を用いた面状光源装置

【課題】 複数のLED光源を配置した直下型バックライトにおいて、LED光源と光学シートの設置間隔の縮小化、あるいはLED光源の配置間隔の拡大化に対しても、輝度ムラの低減、さらには解消可能な光学部材、および面状光源装置を提供する。
【解決手段】 反射シート上に設置された複数個のLED(発光ダイオード)を光源とする面状光源装置用の光学部材であり、LED光源の反対側の表面に多角錐形状または転倒多角錐形状のレンズ群をする樹脂シート(A)と、透明樹脂中に、該透明樹脂と屈折率が異なる光拡散剤が分散しているものであり、少なくとも1つの直交する方向の拡散度(D50)の差が7°以上である樹脂シート(B)を積層してなることを特徴とする面状光源装置用光学部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示パネルなどの照明に用いる面状光源装置用光学部材、および該光学部材用いた面状光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薄型テレビや薄型モニターなどの大型ディスプレイには、画像表示のための液晶表示装置が広く採用されている。これらの液晶表示装置には、自発光性がない液晶表示パネルを照射するためにバックライトユニットが用いられている。バックライトユニットとしては、例えば導光板と、該導光板の端面に配置したLED光源を備え、光源からの光を導光して主面全体から液晶表示パネルへ向け照射するエッジタイプや、導光板を用いず、液晶パネルの直下にLED光源を配置し、光拡散板や光学シートの主面全体から液晶パネルに向け照射する直下タイプがある。
【0003】
近年、液晶テレビの大画面化にともない、軽量化や薄型化に対する要望がより高くなってきているが、導光板を用いたエッジタイプでは、導光板自体の重量増によりテレビ自体の軽量化が困難になるとともに、表示画面の輝度上昇が困難になってきている。一方、導光板を用いない直下タイプでは、導光板がない分軽量化が可能であるが、LED光源の指向性が強いため、LED直上部分が非常に明るくなり著しい輝度ムラが生じ、出光面全体で輝度ムラの少ない照射光を得るためには、LED光源の配置間隔を狭くするか、光拡散板とLED光源の距離を充分離す必要があり、薄型化やコスト削減が困難な状況にある。
【0004】
特許文献1には、光束制御部材をLED素子上に取り付け、LED直上部分への指向性を緩和し、直下型バックライトの光源として用いた際の明暗を抑制する方法が開示されている。特許文献2には、LED光源をマトリックス上に配置した直下型バックライトユニットにおける輝度ムラ解消を目的として、表面に略逆多角錐または略逆多角錐台形状の凹部を有し、凹部形状を有する面を入光面とする全光線透過率が65%〜100%であり、凹部形状を有する面の反対面を入光面とした全光線透過率が30%〜80%である光拡散板を用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−117207号公報
【特許文献2】特開2010−117707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、バックライトコスト削減のためのLED光源数のさらなる削減や、あるいは液晶テレビのさらなる薄型化、具体的には、図2に示すような反射シート上に設置された複数個のLED光源間の最も接近した間隔(L)と、反射シートと光学シートの点光源側の面までの最も接近した距離(D)の比であるL/Dが、2.5以上においても、輝度ムラを解消できるという課題に対しては、応えられていないのが現状である。
【0007】
すなわち、直下型バックライトの点光源として光束制御部材をLED素子上に配置することによりLEDの直上以外の範囲に広く配光することが可能となるが、LED光源側に配置される光拡散板とLED光源との間隔を縮小、あるいはLED光源の配置間隔を拡げていくと光束制御部材の形状に起因する明暗パターンが生じてしまい、従来の光拡散板や光学シートの構成では、さらなる液晶表示装置の薄型化やLED光源数の削減が困難となっている。
【0008】
一方、バックライトユニットのさらなる薄型化、あるいはLED光源の配置間隔拡大によるLED使用数の削減化において求められる、上記のL/D≧2.5となるという厳しい条件下において、反射シート上に配置されたLED光源に、略逆多角錐または略逆多角錐台形状の凹部を有し、凹部形状を有する面を入光面とする全光線透過率が65%〜100%、凹部形状を有する面の反対面を入光面とした全光線透過率が30%〜80%である光拡散板を用い、この拡散板上に熱可塑性フィルム表面に光拡散剤となる微粒子を塗布した従来タイプの“拡散シート”、従来から光拡散板に重ね合わせてきたプリズムシート、マイクロレンズシート、反射偏光シートなどを適宜重ね合わせるといった光学シート構成だけで、輝度ムラの大幅低減や解消することには、限界が生じるようになってきている。
【0009】
本発明は前述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、LED光源を配置した直下型バックライトにおいて、さらなる薄型化、あるいはさらなるLED光源数削減を実現させることが可能な面状光源装置用光学部材および該光学部材を備えた面状光源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目標を達成するために、本発明は以下の手段を採用した。すなわち、第1の発明は 反射シート上に設置された複数個のLED(発光ダイオード)を光源とする面状光源装置用の光学部材であって、LED光源の反対側の表面に多角錐形状または転倒多角錐形状のレンズ群をする樹脂シート(A)と、透明樹脂中に、該透明樹脂と屈折率が異なる光拡散剤が分散しているものであり、少なくとも1つの直交する方向の拡散度(D50)の差が7°以上である樹脂シート(B)を積層してなることを特徴とする面状光源装置用光学部材である。
【0011】
ここで、拡散度(D50)とは、変角光度計ゴニオメーター(村上色彩社製、GP−5)で、該樹脂シートに垂直方向から光を入射した場合に、0°出射光に対する出射光の強度が50%となる出射角を意味する。
【0012】
第2の発明は、第1の発明の光学部材において、前記樹脂シート(B)の表面の算術平均粗さが10μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の面状光源装置用光学部材である。
【0013】
第3の発明は、第1〜2の発明の光学部材において、前記樹脂シート(B)は、分散されている光拡散剤が扁平な楕円形状を有するものであって、下記式(1)で表される架橋密度が0.001%以上、0.12%以下である架橋重合粒子からなり、且つその長軸方向が一方向に配向している光拡散層を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の面状光源装置用光学部材である。
【0014】
架橋密度(%)=〔{Fn(c)/Mw(c)}×{W(c)}×100〕/{W(m)+W(c)} ・・・(1)
[式中、Fn(c)は架橋重合粒子の製造に用いる架橋剤の架橋性官能基数を示し;Mw(c)は架橋重合粒子の製造に用いる架橋剤の分子量を示し;W(c)は架橋重合粒子の製造に用いる架橋剤の、単量体と架橋剤の合計に対する質量配合割合(質量%)を示し;W(m)は架橋重合粒子の製造に用いる単量体の、単量体と架橋剤の合計に対する質量配合割合(質量%)を示す]。
【0015】
第4の発明は、反射シート上に設置された複数個のLED(発光ダイオード)を光源とし、第1〜3の発明のいずれかに記載の光学部材を有することを特徴とする面状光源装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の光学部材を、反射シート上に配置された複数個のLEDを光源とする面状光源装置に用いることにより、LED光源配置間隔が従来の間隔よりも拡大、あるいはLED光源と光学シートの間隔が縮小しても、輝度ムラ低減化や解消が可能になる。また、本発明の光学部材を用いた面状光源装置は、LED光源配置間隔が従来の間隔よりも拡大、あるいはLED光源と光学シートの間隔が縮小しても、輝度ムラ低減化や解消が可能になるため、LED光源を配置した直下型面状光源装置として、さらなる薄型化を促進できるとともに、低コスト化のためのさらなるLED光源数削減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態において、複数のLED光源を配置した面状光源を示す簡略的な要部の平面図である。
【図2】本発明の光学部材を、複数のLED光源上に配置した実施形態の1例を示す簡略的断面図である。
【図3】本発明の光学部材における、樹脂シート(A)の実施形態の表面形状(転倒四角錘形状)の電子顕微鏡観察図(シート表面の法線方向から観察)を示す。
【図4】本発明の光学部材における、樹脂シート(A)の実施形態の表面形状(転倒四角錘形状)の電子顕微鏡観察図(シート表面の法線方向から約60°の角度から観察)を示す。
【符号の説明】
【0018】
1:反射シート
2:LED
3:LED光源の反対側の表面に多角錐形状または転倒多角錐形状のレンズ群を有する樹脂シート(A)
4:透明樹脂中に、該透明樹脂と屈折率が異なる光拡散剤が分散しているものであり、少なくとも1つの直交する方向の拡散度(D50)の差が7°以上である樹脂シート(B)
5:プリズムシート
6:マイクロレンズシート
7:反射偏光シート
D: 反射シート表面からLED光源側へ最接近した光学シートの入光面までの距離
L: LED配置間隔の最短距離
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る光学部材および該光学部材を用いた面状光源装置について詳細に説明する。本発明の光学部材は、LED光源の反対側の表面に多角錐形状または転倒多角錐形状のレンズ群を有してなる樹脂シート(A)と、透明樹脂中に、該透明樹脂と屈折率が異なる光拡散剤が分散しているものであり、少なくとも1つの直交する方向の拡散度(D50)の差が7°以上である樹脂シート(B)を積層してなるものであり、これらの光学シートは、ラミネート法などにより貼りあわされ、一体化されたものであることが好ましい。また積層される順序としては、光源側から樹脂シート(A)、樹脂シート(B)の順が好ましい。
【0020】
図2は本発明の光学部材を用いた面状光源装置の1例となる断面模式図を示す。反射シート1上に、複数のLED光源2が最も接近した間隔(L)で配置されており、その上方に、LED光源の反対側の表面に多角錐形状または転倒多角錐形状のレンズ群をする樹脂シート(A)と、透明樹脂中に、該透明樹脂と屈折率が異なる光拡散剤が分散しているものであり、少なくとも1つの直交する方向の拡散度(D50)の差が7°以上である樹脂シート(B)を有する光学シート構成からなる本発明の光学部材が、反射シートの光反射面とLED光源側に最も接近した光学シートのLED光源からの入光面との距離(D)で設置されている。図2においては、樹脂シート(A)と樹脂シート(B)からなる光学部材により、一部は光源側に反射され、一部は拡散、偏向し、光学シート構成の最もLED光源から離れた光学シートの出光面において輝度ムラが低減あるいは解消される。
【0021】
さらに、図2の樹脂シート(A)、樹脂シート(B)の上方に、表面に連続的に三角柱レンズを並べた、いわゆるプリズムシートや、表面に半球状のレンズを配したマイクロレンズシート、表面に拡散性微粒子をバインダーにより塗布したタイプの拡散シート、シート中に拡散性微粒子を分散させたタイプの拡散シートなどを併用することによって、輝度ムラ解消効果をさらに高めることも好ましい態様のひとつである。
【0022】
本発明の光学部材における樹脂シート(A)は、LED光源に最も接近して設置されることが好ましい態様であるため、樹脂シート(B)や他の光学シートを併用する際の支持体的役割を果たす必要があることと、熱的影響を受けやすい環境下にあり、機械的あるいは熱的変形を避けるために、樹脂シート(A)の厚みは、0.5mm以上とすることが好ましく、0.8mm以上とすることがより好ましく、1.0mm以上とすることがさらに好ましい。また樹脂シート(A)の厚みの上限としては、液晶表示装置の薄型化や材料コストの観点から、4mm以下が好ましく、3mm以下がより好ましく、2mm以下がさらに好ましい。
【0023】
また、本発明の光学部材における樹脂シート(B)は、樹脂シート(A)を基準として光源と反対側に配置されることが好ましい態様であり、樹脂シート(A)のように他の光学シートの支持体的役割を果たす必要性は低く、液晶表示装置の薄型化や材料コストの観点から、厚みは0.8mm以下が好ましく、0.6mm以下がより好ましく、0.3mm以下がさらに好ましい。
【0024】
本発明の光学部材は、本発明の光学部材は、LED光源の反対側の表面に多角錐形状または転倒多角錐形状のレンズ群を有してなる樹脂シート(A)と、透明樹脂中に、該透明樹脂と屈折率が異なる光拡散剤が分散しているものであり、少なくとも1つの直交する方向の拡散度(D50)の差が7°以上である樹脂シート(B)を有することが必須であり、用いられる面状光源装置におけるLED配置間隔や、LEDが配置されている反射シートと光学シートまでの距離など、LED光源や面状光源装置の仕様によっては、樹脂シート(A)または樹脂シート(B)を2枚以上用いた態様も含まれる。ただし、面状光源装置が装着される液晶表示装置の薄肉化が進められている状況下においては、本発明の光学部材に占める樹脂シート(A)、樹脂シート(B)とも使用枚数は1枚が好ましい。
【0025】
本発明のLED光源側の反対面に多角錐形状または転倒多角錐形状を有する樹脂シート(A)の多角錐形状または転倒多角錐形状は、底面積が10〜10μmであり、かつ底面から最高部または最深部までの高低差が10〜500μmであることが好ましい。底面積が10μm未満であり、かつ底面から最高部または最深部までの高低差が10μm未満であると、樹脂シート(A)表面に再現性よく多角錐形状または転倒多角錐形状を賦型することが困難となり、安定的な輝度ムラ低減や解消が困難となる。また、底面積が10μmを超え、かつ底面から最高部または最深部までの高低差が500μmを超えると、賦型LED光源側の反対面に多角錐形状または転倒多角錐形状を再現性よく賦型できるものの、LED光源配置間隔が従来の間隔よりも拡大、あるいはLED光源と光学シートの間隔が縮小した面状光源装置においては輝度ムラ低減化や解消が難しくなる傾向がある。
【0026】
本発明の光学部材を構成する樹脂シート(A)の表面に形成される多角錐形状または転倒多角錐形状は、各側面が光学シート平面に対して35°〜55°の傾斜角を有することが、LED光源からの光を効率よく反射、偏向でき、輝度ムラの減少した面状光源を発現させることができるため好ましく、より好ましくは40°〜50°である。また、多角錐形状または転倒多角錐形状を形成する複数の側面の傾斜角は、同一でも異なっていてもよい。
【0027】
本発明の光学部材を構成する樹脂シート(A)の表面に賦型されている多角錐形状または転倒多角錐形状の底面積および底面から最高部または最深部までの高低差は、同一でも異なっていてもよい。
【0028】
本発明の光学部材を構成する樹脂シート(A)の表面に賦型されている多角錐形状または転倒多角錐形状としては、三角錘形状、四角錘形状、または、転倒三角錐形状、転倒四角錘形状等があげられるが、中でもLED光源からの光を反射、偏向できる傾斜角を有する側面が多い四角錘形状、または転倒四角錘形状が好ましく、連続して用いる樹脂シート(B)の傷つき防止の観点から、転倒四角錐形状がより好ましい。
【0029】
本発明の光学部材を構成する樹脂シート(A)の表面に賦型されている多角錐形状または転倒多角錐形状は、その底辺がなす形状は、成型上の容易さから、すべての内角が180°未満である凸多角形であることが好ましく、多角錐形状または転倒多角錐形状を樹脂シート上に連続的に配置するために、正方形を含む平行四辺形、または台形が好ましい。
本発明の光学部材を構成する樹脂シート(A)の表面に賦型されている多角錐形状または転倒多角錐形状は、光学シート表面に隙間なく配置してもよいし、間隔をあけて配置してもよい。間隔をあけて配置する場合、単位形状間の形状は曲面でも、平面でもよい。
【0030】
本発明の光学部材を構成する樹脂シート(B)は、透明樹脂中に、該透明樹脂と屈折率が異なる光拡散剤が分散しているものであり、少なくとも1つの直交する方向の拡散度(D50)の差が7°以上であるものであり、この直交する方向の拡散度(D50)の差は、9°以上がより好ましく、11°以上がさらに好ましい。
【0031】
ここで、拡散度(D50)とは、変角光度計ゴニオメーター(村上色彩社製、GP−5)で、該樹脂シートに垂直方向から光を入射した場合に、0°出射光に対する出射光の強度が50%となる出射角を意味する。
【0032】
少なくとも1つの直交する方向の拡散度(D50)の差が、上記範囲であると、樹脂シート(B)での光の拡散性に適度な方向性が生じ、さらに樹脂シート(B)の上部に使用されるプリズムシートなどの光学シートにより、その方向性を緩和することで、より高いレベルの輝度均整化が可能となる。
【0033】
樹脂シート(B)の表面は、微細な凹凸形状、または鏡面となっていることが好ましく、その算術平均粗さとしては10μm以下が好ましく、7μm以下がより好ましい。
【0034】
また、樹脂シート(B)は、少なくとも1つの直交する方向の拡散度(D50)の差が7°以上であることを特徴とするが、この拡散度の差は、本発明の好適な例の一つである、扁平な楕円形状を有する光拡散剤が樹脂シート(B)の内部に、その長軸方向が一方向に配向している光拡散層などによる、内部拡散に起因するものであることが好ましい。
【0035】
樹脂シート(B)の全光線透過率は、50%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましい。全光線透過率が上記範囲未満であると、本発明の光学部材をバックライトに使用した場合に、輝度が不足する傾向がある。
【0036】
本発明の光学部材に用いる樹脂シート(A)の表面に賦型されている多角錐形状または転倒多角錐形状の底辺と、樹脂シート(B)の拡散度が最大となる方向は、10°以上の傾きを持つように配置されていることが好ましく、20°以上がより好ましい。樹脂シート(A)の表面に賦型されている多角錐形状または転倒多角錐形状の底辺と、樹脂シート(B)の拡散度が最大となる方向の傾きが上記範囲未満である場合、輝度ムラ解消効果が小さくなる恐れがある。
【0037】
本発明の光学部材は、既存のプリズムシート、マイクロレンズシート、レンチキュラーシート、拡散シート、反射偏光シートなど併用することができ、本光学部材が使用される面状光源装置の仕様、あるいは液晶表示装置の仕様によって、適宜これらの光学シートを重ね合わせて用いることができる。
【0038】
樹脂シート(A)は、透明樹脂に光拡散剤が分散されたシートの片面に多角錐形状または転倒多角錐形状が賦型されたものであり、多角錐形状または転倒多角錐形状が賦型された面の反対面は鏡面、あるいは算術平均粗さが0.5〜50μmのエンボス、マットなど凹凸形状が施されていてもよく、また片面と同じく多角錐形状または転倒多角錐形状が賦型されたものでも良い。
【0039】
樹脂シート(A)、及び樹脂シート(B)を構成する透明樹脂は、無色透明であり、かつ光学シートの主な構成要素として適度な強度を有するものであれば特に制限されない。例えば、ポリカーボネート樹脂;ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂;ポリスチレン、ポリビニルトルエン、ポリ(p−メチルスチレン)などのスチレン系樹脂;MS樹脂(メチルメタクリレートとスチレンの共重合体);ノルボルネン系樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリエーテルスルホン樹脂や、これらのうち2種以上の混合樹脂などを用いることができる。好適にはポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂またはノルボルネン系樹脂を用いる。中でもポリカーボネート樹脂は、透明性や耐熱性、加工性に優れており、且つそれらのバランスがよいので光学シート用の樹脂として特に好ましい。
【0040】
本発明の樹脂シート(A)、及び樹脂シート(B)に用いる光拡散剤としては、有機系微粒子、無機系微粒子、有機−無機ハイブリッド系微粒子のいずれの微粒子でも使用でき、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、アミノ系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、これらの共重合体などの有機系微粒子;ガラス、スメクタイト、カオリナイト、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化ジルコニウムなどの無機系微粒子;アクリル−シリカなどの有機−無機ハイブリッド系微粒子などが挙げられる。これらの材質のうち、(メタ)アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、シリカが特に好適である。
【0041】
本発明の光学部材を構成する、樹脂シート(A)、及び樹脂シート(B)に用いる光拡散剤の平均粒子径は、0.3μm〜30μmが好ましく、これ以上小さくても、大きくても光拡散効果が大きく低下して好ましくなく、より好ましくは0.5μm〜15μmであり、さらに好ましくは1.0μm〜10μmである。光拡散剤の最適配合量は、樹脂シート(A)表面に賦型された多角錐形状または転倒多角錐形状や、樹脂シート(B)表面に賦型された直線畝状に形成された凸状のレンズ群による拡散効果、樹脂シートを構成する透明樹脂と光拡散剤の屈折率差、光拡散剤の粒子径によって異なるが、樹脂シート中に0.001〜10質量%分散されていることが必要である。より好ましくは、0.005〜5質量%、さらに好ましくは0.01〜3質量%である。
【0042】
本発明の光学部材を構成する、樹脂シート(A)、樹脂シート(B)における、光拡散剤の分散形態としては、樹脂シート全体に均一に分散した形態、LED光源側または、LED光源の反対側に光拡散剤分散層を形成した形態などがある。
【0043】
本発明の光学部材を構成する、樹脂シート(A)の製法としては、上記の透明熱可塑性樹脂と光拡散剤、さらに熱安定剤などを均一に配合した熱可塑性樹脂混合物を、所望の凹凸形状の反転形状が実質全面に彫刻加工された金型を用いて、押出成形、射出成形、プレス成形などにより得ることができる。なかでも押出成形による方法が、光拡散層や、帯電防止性能や特定波長の光吸収層などの表面機能層を形成できるなど多層化が容易なことや、生産効率が高いなどの点で特に好ましい。
【0044】
一方、本発明の光学部材を構成する樹脂シート(B)は、透明樹脂中に、該透明樹脂と屈折率が異なる光拡散剤が分散しているものであり、少なくとも1つの直交する方向の拡散度(D50)の差が7°以上であるものであり、その製法としては、特開2008−292853に記載のような、架橋密度が0.001%以上、0.12%以下である架橋重合粒子を分散させた透明熱可塑性樹脂をシート状に成型し、得られたシートを一軸延伸することにより、架橋重合微粒子を扁平な楕円形状に変形させ、かつその長軸方向が一方向に配向したシートを作成する方法や、特許4484330号に記載のような、屈折率が異なる連続層と分散層から構成される溶融押出してシート状とし、一軸延伸する方法等をとることができる。
【0045】
本発明の面状光源装置に用いるLED光源は、出射強度のピークがLED光源設置面の法線方向であるランバーシャータイプ、法線から傾いた方向である側面放射タイプの白色LEDが好ましく用いられるが、面状光源装置の輝度ムラ低減や解消のし易さから、LEDチップ上にレンズ、あるいは光束制御部材を設置した側面放射型が特に好ましく用いられる。
【0046】
なかでも、配光パターンがLED光源設置面の法線から30°以上の深い角度に出射強度のピークを有する略回転対称の出射分布を有するレンズ付LEDであることが好ましい。さらに、配光パターンがLED光源設置面の法線から45°以上の深い角度に出射強度のピークを有する略回転対称の出射分布を有するレンズ付LEDを光源に用いることは、LED光源配置間隔の拡大化した面状光源装置、あるいはLED光源が配置されている反射シートと光学シートの間隔が縮小した薄型面状光源装置においても、一層、輝度ムラ解消や低減をはかれることとなり、より好ましい。
【0047】
LED光源の配置方法としては、特に制約はなく、直線状配列セットの並列配置、格子状や千鳥状配置などが用いられる。
【0048】
本発明の面状光源装置に用いる反射シートは、白色シートであり、反射機能を有する金属板、フィルム、金属箔、アルミなどを蒸着したフィルムでできており、LED光源からの出射光、光学シート(A)、(B)、(C)からの偏向あるいは反射光などを、再度光学シートの出光方向に戻すとともに光学シートへの入射角度の平準化役割を担っており、輝度ムラ解消や低減に重要な働きをしている。
【0049】
LED光源を用いた直下型面状光源装置において、実質的に輝度ムラ解消可能なレベルを、図2や図3に示すように反射シート上に設置された複数個のLED光源間の最も接近した間隔(L)と、反射シートの光反射面と、光学シート構成の最もLED光源側に接近した光学シートのLED光源からの入光面との距離(D)の比であるL/Dで示すと、本発明の光学シート構成を用いることにより、従来の光学シート構成では難易度が高かった、L/D≧2.5の面状光源装置の実現をも可能にすることができた。
【実施例】
【0050】
次に、本発明に係る面状光源装置を、実験例、実施例、比較例により具体的に説明する。
【0051】
<製造例1> 架橋重合微粒子の製造
攪拌機(特殊機化工業社製、T.K.ホモジナイザー)、窒素ガス導入管、還流冷却器および温度計を備えたフラスコへ、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム(第一工業製薬社製、商品名「ハイテノール(登録商標)NF−08」)1質量部を溶解した脱イオン水900部を入れた。さらに、メタクリル酸メチル99質量部、エチレングリコールジメタクリレート1質量部、およびラウリルパーオキサイド2質量部を加え、3500rpm、常温で3分間攪拌した。次いで、窒素ガスを吹き込みながら反応混合液が65℃になるまで加熱し、65℃で4時間架橋重合反応させた後、さらに75℃で2時間熟成させた。次に反応混合液を室温まで放冷し、濾過により架橋反応物を濾別した。得られた架橋反応物を熱風乾燥機(ヤマト科学社製)により65℃で20時間乾燥することにより架橋重合体微粒子を得た。当該微粒子の粒度分布を精密粒度分布測定装置(ベックマン・コールター社製、コールターマルチサイザーIII)で測定したところ、平均粒子径(50%累積径)は7.3μm、変動係数は40.5%であった。また、当該微粒子の架橋密度を前述の式(1)により計算したところ、0.01であった。
【0052】
<製造例2> 樹脂シート(B)の製造
上記製造例1で得られた架橋重合粒子3重量部、ポリカーボネート(「ユーピロンE2000FN」:三菱エンジニアリングプラスチック社製)97重量部、リン系酸化防止剤(BASF社製、IRGAFOS168)0.1重量部をブレンドした原料を押出成形機(日立造船社製、SHT90、スクリュー径:90mm、L/D=32)に投入し、両方の面が鏡面となるように3本のポリシングロールでシート状に成形してのち、第3のポリシングロール速度に対する引取りロールの速度を2倍として延伸して、厚さ0.3mmの樹脂シート(B1)を得た。
【0053】
この樹脂シートを変角光度計ゴニオメーター(村上色彩社製 GP−5)で、延伸方向の拡散度(D50)と延伸方向に垂直な方向の拡散度(D50)を測定したところ、その直交する2方向の拡散度の差は15°であった。
【0054】
<製造例3>
成型したシートを延伸しない以外は製造例2と同様にして、厚さ0.3mmの樹脂シート(C)を得た。
この樹脂シートを変角光度計ゴニオメーター(村上色彩社製 GP−5)で、延伸方向の拡散度(D50)と延伸方向に垂直な方向の拡散度(D50)を測定したところ、その直交する2方向の拡散度の差は2°であった。
【0055】
<製造例4> 樹脂シート(A)の製造
ポリカーボネート(「ユーピロンE2000FN」:三菱エンジニアリングプラスチック社製)100質量部に、光拡散剤としてシリコーン系微粒子(「トスパール120」:モメンティブパーフォーマンス社製)0.1質量部、熱安定剤としてリン系酸化防止剤(「イルガフォス168」:BASF社製)0.1質量部を配合し、押出成形により、底辺が150μm、シート平面に対する各側面の傾斜角が45°、深さが74μmの転倒四角錐が凹状に一方の全面に賦型され、反対面が数平均粗さ(Ra)が4.5μmのエンボス面である厚さ1.25mmの樹脂シート(A1)を得た。
【0056】
<製造例5>
製造例2で得られた樹脂シート(B1)を、製造例4で得られた樹脂シート(A1)の転倒四角錘の凹状形状が賦型された面に、アクリル系粘着材を用いて貼りあわせて、厚さ1.55mmの樹脂シートを得た。
【0057】
<製造例6>
製造例3で得られた樹脂シート(C1)を、製造例4で得られた樹脂シート(A1)の転倒四角錘の凹状形状が賦型された面に、アクリル系粘着材を用いて貼りあわせて、厚さ1.55mmの樹脂シートを得た。
【0058】
<実施例、および比較例>
設置面の法線から約70°に出射強度のピークを有するレンズ付白色LEDを、図1に示すように、300mm×240mmの白色の反射シート上に20個、60mm間隔(X方向、Y方向とも)で格子状に配置し、反射シートからの距離が15mmになるように、上記製造例3及び、4で作製した樹脂シートを設置し、その上にプリズムシートBEFIII(住友3M社製)、マイクロレンズシートPTD837(SHINWHA INTERTECH社製)、反射偏光フィルム、DBEF−D400(住友3M社製)の順に設置して、LEDを点灯させ、輝度ムラを目視判定した。結果を表.1に示す。
【0059】
<輝度ムラ評価>
輝度ムラ評価は、LED上に配置した光学シートの法線方向から目視により判定し、下記の5段階に区分した。
1: 明確な境界線を有する明暗のパターンが確認できる
2: 明暗領域の明確な境界線は認められないが、明暗パターンが明確に認められる
3: 薄い明暗パターンが認められるが、一定以上の輝度均一化効果は得られている。
4: わずかに明暗パターンが認められるものの、ほぼ全体的な輝度均一レベルが得られている
5: 明暗領域の存在が確認できず、全体的に輝度均一レベルが得られている。
【0060】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の光学部材、および該光学部材を用いた面状光源装置は、LED光源直下型液晶表示装置の薄型化、コスト削減化に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射シート上に設置された複数個のLED(発光ダイオード)を光源とする面状光源装置用の光学部材であって、
LED光源の反対側の表面に多角錐形状または転倒多角錐形状のレンズ群をする樹脂シート(A)と、透明樹脂中に該透明樹脂と屈折率が異なる光拡散剤が分散しているものであり、少なくとも1つの直交する方向の拡散度(D50)の差が7°以上である樹脂シート(B)を積層してなることを特徴とする面状光源装置用光学部材。
拡散度(D50):変角光度計ゴニオメーターで、該樹脂シートに垂直方向から光を入射した場合に、0°出射光に対する出射光の強度が50%となる出射角
【請求項2】
樹脂シート(B)の表面の算術平均粗さが10μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の面状光源装置用光学部材。
【請求項3】
樹脂シート(B)は、分散されている光拡散剤が扁平な楕円形状を有するものであって、下記式(1)で表される架橋密度が0.001%以上、0.12%以下である架橋重合粒子からなり、且つその長軸方向が一方向に配向している光拡散層を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の面状光源装置用光学部材。
架橋密度(%)=〔{Fn(c)/Mw(c)}×{W(c)}×100〕/{W(m)+W(c)} ・・・(1)
[式中、Fn(c)は架橋重合粒子の製造に用いる架橋剤の架橋性官能基数を示し;Mw(c)は架橋重合粒子の製造に用いる架橋剤の分子量を示し;W(c)は架橋重合粒子の製造に用いる架橋剤の、単量体と架橋剤の合計に対する質量配合割合(質量%)を示し;W(m)は架橋重合粒子の製造に用いる単量体の、単量体と架橋剤の合計に対する質量配合割合(質量%)を示す]
【請求項4】
反射シート上に設置された複数個のLED(発光ダイオード)を光源とし、請求項1〜3のいずれかに記載の光学部材を有することを特徴とする面状光源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−242764(P2012−242764A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115294(P2011−115294)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】