説明

光学部材の製造方法およびこの製造方法により形成された光学部材

【課題】ナノコンポジット材料を短時間で均一な性状で作製し、このナノコンポジット材料を用いて所望の光学特性に安定して成形できる光学部材の製造方法およびこの製造方法により形成された光学部材を提供する。
【解決手段】無機微粒子が熱可塑性樹脂に含有されてなるナノコンポジット材料を調製し、該調製されたナノコンポジット材料から光学部材を形成する光学部材の製造方法であって、無機微粒子を含有した高分子を溶液中で合成する第1の工程S1と、第1の工程S1で得られる高分子を含む溶液を乾燥固化させ、比表面積(表面積/体積)が15mm−1以上の乾燥したナノコンポジット材料を取り出す第2の工程S2と、第2の工程S2で取り出したナノコンポジット材料を加熱圧縮して所定形状の光学部材を成形する第3の工程S3とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材の製造方法およびこの製造方法により形成された光学部材に関し、より詳細には、ナノコンポジット材料を用いて光学部材を形成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば携帯型カメラのような光学機器や、DVDドライブ、CDドライブ、MOドライブのような光情報記録機器の高性能化、小型化、低コスト化に伴って、これらの機器に用いられる光学レンズやフィルタ等の光学部材に対しても、優れた材料や製造工程の開発が強く望まれている。
【0003】
特にプラスチックレンズは、ガラスなどの無機材料に比べ軽量で割れにくく、様々な形状に加工できるため、さらに低コストで生産できるため、眼鏡レンズのみならず、上記の光学レンズとしても急速に普及しつつある。これに伴い、レンズを薄肉化するために素材自体を高屈折率化することや、光学屈折率を熱膨張や温度変化に対して安定化させること等が求められている。その一つの解決策としてプラスチック樹脂中に金属微粒子などの無機微粒子を分散させたナノコンポジット材料をレンズ材料として用いることで、光学屈折率を向上させ、熱膨張率や光学屈折率の温度変化を抑える試みが種々行われている(例えば特許文献1〜3参照)。
【0004】
このようなナノコンポジット材料を用いて光学部材を形成する場合、高度の透明性を要求される光学部材に対しては、無機微粒子をプラスチック樹脂中に分散させる際、光散乱を低減させるために無機微粒子の粒径を少なくとも使用する光の波長よりも小さくする必要がある。さらに、レイリー散乱による透過光強度の減衰を低減するためには、粒子サイズが15nm以下に揃ったナノ粒子を調製して分散する必要がある。
プラスチック樹脂中に無機微粒子(ナノ粒子)を分散させたナノコンポジット材料を作製する方法としては、次のような手法が考えられる。
(1)可塑性プラスチック樹脂に無機微粒子を直接投入し、射出成形する方法(特許文献4)
(2)モノマーと無機微粒子を混合させた後、モノマーを重合させ型の内部で固化させる方法(特許文献5)
(3)溶液中で無機微粒子と樹脂を分散させた後、溶媒を除去する方法(特許文献6)
【特許文献1】特開2006−343387号公報
【特許文献2】特開2002−47425号公報
【特許文献3】特開2003−155415号公報
【特許文献4】特開2006−299032号公報
【特許文献5】特開2003−137912号公報
【特許文献6】特開2003−147090号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のナノコンポジット材料を作製する各方法のうち、(1)の方法では、無機微粒子の分布に偏りが発生しやすく、安定した光学性能を得ることが困難である。また、無機微粒子濃度を高くすると無機微粒子を分散させる効果が向上するが、樹脂の急激な流動性の悪化が発生し、無機微粒子を入れた効果を得ることが難しい。この流動性の悪化は、無機微粒子を添加する母材の樹脂特性により差違はあるが、無機微粒子の添加量が概ね2質量%程度から発生し、5質量%もあれば明らかに流動性が悪化する。
(2)の方法では、モノマーの重合に伴う体積収縮が大きく、形状の制御が困難であり
、例えば結像レンズのような高精度の光学部品が要求する精度を確保することが難しくなる。
(3)の方法では、最も品質の高いレンズを作ることが可能であるが、実際の光学部材の製造工程においては、溶媒除去に時間がかかるという問題が残されていた。
【0006】
本発明は、このような従来の問題に鑑みてなされたもので、無機微粒子の添加密度が高いナノコンポジット材料であっても、比較的短い時間で光学部品に好適な精度で成形が可能となる光学部材の製造方法、およびこの製造方法により形成された光学部材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明では、無機のナノ粒子を分散させたプラスチック溶液の表面積を大きくして乾燥させる乾燥促進工程と、その乾燥促進工程により得られたナノコンポジット材料を所望の光学部材に成形する、少なくとも2工程を有する製造方法とした。
具体的には、本発明の上記目的は、下記構成により達成される。
(1)無機微粒子が熱可塑性樹脂に含有されてなるナノコンポジット材料を調製し、該調製されたナノコンポジット材料から光学部材を形成する光学部材の製造方法であって、
前記無機微粒子を含有した高分子を溶液中で合成する第1の工程と、
前記第1の工程で得られる前記高分子を含む溶液を乾燥固化させ、比表面積(表面積/体積)が15mm−1以上の乾燥した前記ナノコンポジット材料を取り出す第2の工程と、
前記第2の工程で取り出した前記ナノコンポジット材料を加熱圧縮して所定形状の光学部材を成形する第3の工程と、
を含む光学部材の製造方法。
【0008】
この光学部材の製造方法によれば、溶液中から比表面積(表面積/体積)が15mm−1以上の乾燥したナノコンポジット材料(すなわち無機微粒子を含有した高分子)を加熱圧縮して所定形状の光学部材を成形するので、溶媒の除去に膨大な時間を要することなく、品質の高いレンズを製造できる。また、製造する光学部材の形状制御も容易になり、透明で品質の高い高精度の光学部材が得られる。
【0009】
(2) (1)に記載の光学部材の製造方法であって、
前記第2の工程は、前記無機微粒子を含有した高分子を含む溶液を液滴にした状態で乾燥させ、前記ナノコンポジット材料を形成する光学部材の製造方法。
【0010】
この光学部材の製造方法によれば、無機微粒子を含有した高分子を含む溶液が、液滴として霧状に噴霧された状態で乾燥されるので、溶液全体の表面積が増大した状態で乾燥が進み、乾燥のための所要時間は大幅に短縮される。
【0011】
(3) (2)に記載の光学部材の製造方法であって、
前記第2の工程は、噴霧ノズルから加圧した状態で前記溶液の液滴を連続吐出させ、乾燥させることで前記ナノコンポジット材料を形成する光学部材の製造方法。
【0012】
この光学部材の製造方法によれば、噴霧ノズルから加圧した状態で溶液の液滴を連続吐出させるので、溶液を液滴として霧状に噴霧することができる。また、噴霧ノズルの大きさや加圧時の圧力を調整することにより、液滴を所望のサイズに微細化することが可能となる。また、比較的大量の液滴を短時間で吐出させることができ、大量のナノコンポジット材料を形成する場合に有利となる。
【0013】
(4) (2)に記載の光学部材の製造方法であって、
前記第2の工程は、インクジェットヘッドのノズルから前記溶液の液滴を所定量繰り返し吐出させ、乾燥させることで前記ナノコンポジット材料を形成する光学部材の製造方法。
【0014】
この光学部材の製造方法によれば、インクジェットヘッドのノズルから溶液の液滴を所定量繰り返し吐出させるので、微細化された液滴の吐出によって粒径の細かなナノコンポジット材料を形成できる。また、粒径のサイズが揃った液滴が吐出できるので、乾燥所要時間も全ての液滴について均一になり、乾燥ムラが生じにくくなる。
【0015】
(5) (4)記載の光学部材の製造方法であって、
前記第3の工程で加熱圧縮する少なくとも1つの光学部材の容積になるまで前記所定量の液滴を繰り返し吐出する光学部材の製造方法。
【0016】
この光学部材の製造方法によれば、例えば加熱圧縮のための型内に液滴を直接吐出する等すれば、粉体を移し替える必要がなくなり、難しい粉体の高精度計量を簡単に実現することができる。
【0017】
(6) (2)〜(5)のいずれか1項記載の光学部材の製造方法であって、
前記溶液の液滴の直径が0.5mm以下である光学部材の製造方法。
【0018】
この光学部材の製造方法によれば、液滴の直径が0.5mm以下であると、吐出される溶液全体の表面積が非常に大きくなり、実用上十分な程度に乾燥所要時間が短縮される。
【0019】
(7) (1)〜(6)のいずれか1項記載の光学部材の製造方法であって、
前記第2の工程は、前記無機微粒子を含有した高分子を含む溶液を、凍結乾燥して前記乾燥したナノコンポジット材料を形成する光学部材の製造方法。
【0020】
この光学部材の製造方法によれば、溶液を凍結乾燥させることで、乾燥度合いが一回の凍結乾燥で十分に高められる。その結果、乾燥後に再度真空乾燥させる等の追加乾燥処理が不要となって、乾燥の所要時間を短縮できる。なお、凍結乾燥を行う場合の乾燥所要時間は、例えばスプレードライ法等の他の乾燥方法と比べると長くなる傾向があるが、スプレードライ法等の他の乾燥方法では、処理後の残存溶媒量が比較的多い。光学レンズなどを形成するために用いるナノコンポジット材料に求められる残存溶媒量は小さく抑える必要があるが、スプレードライ法等の他の乾燥方法を用いる場合、乾燥処理後でも残存溶媒をさらに除去する必要が生じる。しかし、凍結乾燥を行う場合は、凍結乾燥工程が終了した時点で残存溶媒量が十分に少なくなるので、更なる乾燥処理を行う必要がなくなり、工程全体の所要時間を短縮することができる。さらに、スプレードライ法と比較して、静電気が発生しにくいのでゴミの混入が少ない。また、通常の濃縮乾燥より表面積が大きくなるので、乾燥速度が速められる。そして、溶液状態で計量して、塊状で乾燥させることができるので、後の工程におけるハンドリング性が向上する。
【0021】
(8) (7)記載の光学部材の製造方法であって、
前記第2の工程は、1つの光学部材を形成する前記ナノコンポジット材料を含んだ前記溶液を計量し、
前記光学部材の外形よりも小さい型の中で凍結乾燥させる光学部材の製造方法。
【0022】
この光学部材の製造方法によれば、1つの光学部材の外形よりも小さい型の中へ溶液を計量して注入し、凍結乾燥させるので、材料の取り扱いが容易となって生産性が向上し、さらにゴミなどのコンタミ混入の可能性が減少して、より高品位な光学部材の製造が可能
となる。また、凍結乾燥後の外形が最終形状のレンズの径より小さいため、後段の圧縮加熱工程で変形代が得られ、高精度な成形が可能となる。
【0023】
(9) (1)〜(8)のいずれか1項記載の光学部材の製造方法であって、
前記第3の工程は、真空中、二酸化炭素ガス中、または窒素ガス雰囲気中のいずれかで前記ナノコンポジット材料を加熱圧縮する光学部材の製造方法。
【0024】
この光学部材の製造方法によれば、真空中、あるいは樹脂への溶解性の高い二酸化炭素ガス雰囲気中または窒素ガス雰囲気中で第2の工程で形成した乾燥ナノコンポジット材料を加熱圧縮するので、残留空気の混入のない高品質の光学部材を容易に製造できる。つまり、二酸化炭層ガスや窒素ガスは樹脂に対する溶解性が高いので、乾燥ナノコンポジット材料を加熱圧縮する場合に、雰囲気のガスが乾燥ナノコンポジット材料中に残存しても樹脂に溶け込み、転写不良や光学歪などの不良を引き起こすことがない。また、真空中で加熱圧縮すれば残存空気は発生せず、前述の不良発生を防止できる。一方、第2の工程で形成した乾燥ナノコンポジット材料を空気中で加熱圧縮して光学部材を形成する場合には、残存空気が樹脂材料中に閉じこめられ、加熱圧縮の際に転写不良や光学歪などの不良が発生しやすくなる。
【0025】
(10) (1)〜(9)のいずれか1項記載の光学部材の製造方法であって、
前記光学部材がレンズまたはレンズ前駆体(プリフォーム)である光学部材の製造方法。
【0026】
この光学部材の製造方法によれば、屈折率が大きいナノコンポジット材料のレンズまたはレンズ前駆体(プリフォーム)を従来よりも短時間&低コストで形成することが可能になる。すなわち、同じ光学性能のレンズユニットを従来よりも小型に形成できる。
【0027】
(11) (1)〜(10)のいずれか1項記載の光学部材の製造方法により形成された光学部材。
【0028】
この光学部材によれば、屈折率が大きいナノコンポジット材料からなる光学部材を従来よりも短時間&低コストで形成することが可能になる。すなわち、同じ光学性能の光学ユニットを従来よりも小型に形成できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の光学部材の製造方法によれば、溶液中から比表面積15mm−1以上の状態で取り出したナノコンポジット材料(すなわち無機微粒子を含有した高分子)を加熱圧縮して所定形状の光学部材を成形するので、品質の高い高精度の光学部材を、溶媒の除去に膨大な時間を要することなく形成できる。また、光学部材の形状制御も容易になり、設計自由度も向上する。また光学ユニットの小型化・高解像度化にも寄与できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明に係る光学部材の製造方法およびこの製造方法により形成された光学部材の好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
本実施形態における光学部材の製造方法に関する基本的な処理手順を図1に示した。本製造方法は基本的に3つの工程S1、S2、S3を実施することにより実現される。
【0031】
まず、最初の工程S1では、ナノコンポジット材料を構成する材料を溶液として形成する。なお、ナノコンポジット材料とは、無機微粒子を有機溶剤などの溶媒中で熱可塑性樹脂に混合させ、調整したナノコンポジット溶液から溶媒を除去することで得られる材料であって、その詳細な材料については後述する。すなわち、工程S1では均一に分散した状態で無機微粒子を含有した高分子を形成するために、これを溶媒となる液中で合成する。
なお、無機微粒子を含有した高分子は、無機微粒子が高分子に分散した状態、結合した状態のいずれであってもよい。
【0032】
次に、工程S2では、前の工程S1で得られた溶液から、ナノコンポジット材料を形成する。すなわち、前記の溶液を乾燥させることにより溶媒を蒸発させ、無機微粒子を含有した高分子を固化させ、乾燥されたナノコンポジット材料として取り出す。ここで取り出されるナノコンポジット材料は、その比表面積を15mm−1以上としている。比表面積とは、物体の表面積/物体の体積で表されるパラメータである。比表面積が小さいと乾燥に寄与する表面積の比率が小さくなり、乾燥時間が長くなる。実用的に必要とされる残存溶媒量は2質量%以下でありそのレベルにまで乾燥させるには、比表面積が15mm−1未満では乾燥時間が長く、実用的でない。そのため、比表面積は15mm−1以上、好ましくは30mm−1以上、さらに好ましくは100mm−1以上とすることがよい。
【0033】
そして、工程S3では、前の工程S2で得られたナノコンポジット材料を加工してレンズ等の光学部材を成形する。具体的には、適当な型に所定量のナノコンポジット材料を充填し、型内のナノコンポジット材料を加熱しながら圧縮することにより、光学部材を成形する。
【0034】
ところで、図1に示す製造工程の中で特に工夫が必要になるのは工程S2である。すなわち、従前、工程S1で得られた溶液から光学部材の材料(ナノコンポジット材料)が得られるまでには、非常に長い時間がかかるのが実情であった。つまり、溶液の乾燥に膨大な時間がかかり、乾燥が不十分である場合には、十分な特性が得られず光学部材としての機能を発揮できないという問題があった。
【0035】
本実施形態では、そのような問題を解決する新規な製造方法を提示する。現実的な製造工程の具体例について以下に説明する。
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態では、図1に示す工程S2で、溶液の乾燥を行うために、一例として図2に示す構成の噴霧乾燥装置(スプレードライヤー)100を利用することを想定している。このスプレードライヤーを利用する場合には、高温気体中に溶液を微小な液滴に分離して乾燥することになる。つまり、溶液は液滴として表面積が増大した状態で乾燥するので、乾燥のための所要時間は格段に短くなる。但し、スプレードライヤーの処理によって得られる粉体状のナノコンポジット材料の乾燥度合いは必ずしも十分ではないので、更に真空乾燥装置(後述の図4参照)を用いて乾燥処理を行う。
【0036】
図2に示すスプレードライヤー100は、ナノコンポジット材料を含む溶液を貯留する溶液タンク10A、溶液送出ポンプ11A、溶媒タンク10B、溶媒送出ポンプ11B、溶液を液滴状にするための噴霧ノズル12、溶液の噴霧を回遊させる乾燥チャンバ13、乾燥チャンバ13に接続されヒータ14aを有するヒータ装置14、ヒータ装置14に送風して温風を発生させて乾燥チャンバ13に導入する送風器15を備える。また、スプレードライヤー100は、乾燥チャンバ13に連絡管16を通じて接続されるサイクロンチャンバ17、サイクロンチャンバ17の排気口17aに接続されたフィルタ18、凝縮器19、サイクロンチャンバ17の粉体取り出し口17bに取り付けられ、生成された粉体状のナノコンポジット材料Aを回収する密封容器20を備えている。さらに、乾燥チャンバ13にはバルブ21を介して窒素等の不燃性ガスを供給するための不燃性ガス供給路22が接続されている。不燃性ガス供給路22は、送風器15の上流側に接続してもよい。また、凝縮器19には、凝縮により液状化された溶媒を回収する溶媒回収部23が接続される。
そして、噴霧ノズル12には、コンプレッサ24が接続されて溶液の噴霧条件が調整される。また、送風機15による乾燥チャンバ13への流路の途中には酸素濃度計25が設
けられ、流路内の酸素濃度を監視している。なお、溶媒タンク10Bと溶媒送出ポンプ11Bの溶媒供給系は、溶液タンク10Aと溶液送出ポンプ11Aとの流路の途中に流路変換手段を介装して接続し、溶液送出ポンプ10Aを共用して供給する構成としてもよい。
【0037】
本実施形態における製造工程(図1のS2に相当)の手順を図3に示した。この手順について以下に説明する。
まず、乾燥チャンバ13およびサイクロンチャンバ16内の雰囲気を窒素等の不燃性ガスで置換する。不燃性ガスは、不燃性ガス供給路22のバルブ21を開くことで、乾燥チャンバ13およびサイクロンチャンバ17内等を不燃性ガスで充満させる。不燃性ガスとしては、窒素、二酸化炭素、希ガスなどを用いることができる。中でも、窒素が価格的にも人体に無害な点からも望ましく、特に、窒素や二酸化炭素は樹脂に溶解しやすいので、より好ましい。
【0038】
次に、凝縮器19を動作させ、乾燥チャンバ13やサイクロンチャンバ17内に水蒸気が凝結することを防止する。凝縮器19の設定温度は、溶液中の溶媒の沸点と融点との間の温度に設定する。
【0039】
次いで、ヒータ装置14のヒータ14aをONにし、温風を乾燥チャンバ13の内部空間に送り出す。こうして、乾燥チャンバ13内の温度を予め定めた温度に設定する(S11)。
【0040】
そして、乾燥チャンバ13内の温度が所望の雰囲気温度となった後に、溶媒送出ポンプ11Bを動作させて溶媒を噴霧ノズル12から乾燥チャンバ13内に噴霧して、噴霧状態の調節を行う。また、溶媒は、この他にも送液量の調節、温度安定の確認用として使用することができる。なお、この溶媒としては、ヘキサン、ベンゼン、ジエチルエーテル、クロロホルム、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、アセトン、MEK、DMAc、トルエン、酢酸エチル、ジオキソラン等のナノコンポジット材料を溶解できる有機溶媒が利用できる。なお、これらのうち1種類を溶媒として用いてもよく、例えばトルエンとエタノールの混合溶媒などのように複数種を混ぜて用いてもよい。特に、沸点が60℃以上のものが好ましい。
【0041】
次に、溶液送出ポンプ11を動作させて、ナノコンポジット材料を含む溶液を噴霧ノズル12から乾燥チャンバ13内に噴霧する(S12)。ここで、溶液の好適な噴霧条件は、以下の通りである。
噴霧環境温度:下限温度は、溶媒沸点−50℃以上、より好ましくは、溶媒沸点−30℃以上、さらに好ましくは溶媒沸点以上である。上限温度は、材料の耐熱温度、または樹脂のガラス転移温度Tg +50℃以下、より好ましくはTg+30℃、さらに好ましくはTg+10℃である。前記下限温度が溶媒沸点より低すぎると十分に乾燥されなくなり、前記上限温度が樹脂のガラス転移点温度より高すぎると、粉体状のナノコンポジット材料が軟化して互いに溶着しやすくなり、良質な粉体が得られなくなる。
溶液の濃度:固形分濃度50質量%以下、より好ましくは10質量%以上30質量%以下である。固形分濃度が低すぎると、乾燥させるべき溶媒が多くなるので生産性が低下し、逆に高すぎると溶液の粘度が上がり、ノズル部で液滴にすることが出来なくなる。なお、溶液はノズル近傍まで冷却水などによって冷却しても良い。
【0042】
上記のようにして、溶液は噴霧ノズル12先端の開口部から細かい液滴(液滴の直径は0.5mm以下が望ましい)となって、乾燥チャンバ13の内部空間に噴霧される(S12)。液滴の直径を0.5mm以下とすると、吐出される溶液全体の表面積が非常に大きくなり、実用上十分な程度に乾燥所要時間が短縮される。
【0043】
温風は、乾燥チャンバ13内の液滴を攪拌しながら、液滴と共に連絡管16を通じてサイクロンチャンバ17に送られる。サイクロンチャンバ17では内部空間でサイクロンが形成され、液滴から乾燥固化したナノコンポジット材料の粉体と気体とが分離される。気体は排気口17から排気され、フィルタ18を通過することでサイクロンでは捕集できない小さな粉体が除かれ、凝縮器19内で溶媒蒸気が凝縮される。溶媒蒸気が除かれた気体は送風器15、ヒータ装置14に戻り、再び加熱されて乾燥チャンバ13に送られる。一方、サイクロンチャンバ17で分離された粉体状のナノコンポジット材料は、密封容器20内に回収される(S14)。
このように、溶液送出ポンプ11から送り出される溶液は、細かい液滴として乾燥チャンバ13内に噴霧されるので、短時間で乾燥し、液滴毎に独立した粒子となり、ナノコンポジット材料(乾燥前)Aとなって密封容器20内に取り出される。
【0044】
しかし、工程S14で回収されるナノコンポジット材料Aの乾燥度合いは十分でない場合がある。そこで、次の工程S15で、例えば真空乾燥装置を用いて更なる乾燥処理を行う。
【0045】
ここでの真空乾燥処理は、油回転真空ポンプが好適に使用される。ここでは高い真空度で乾燥処理することが望ましい。また、バッチ式で乾燥処理することで、一度に大量処理が可能となる。
真空乾燥時の圧力は10Pa以下、望ましくは1Pa以下、さらに好ましくは0.1Pa以下である。真空引きは、油回転式の真空ポンプで行うことが、高い耐久性を有し簡単に繰り返し使用できる点で好ましい。
また、真空乾燥時の温度Tは、(室温)<T<Tg(ガラス転移温度)、より好ましくは(室温+10℃)<T<Tg−10℃である。温度が高い方が乾燥速度は速いが、Tgより高いと粉同士が融着して表面積が低下し、逆に乾燥速度が遅くなる場合がある。加熱方式としては、輻射式が加熱ムラが無いため望ましい。また、攪拌羽の回転によりムラをなくす構成としても良い。ただし、その場合には、静電気除去のために乾燥終了後、チャンバを開ける前に除電を行うことが望ましい。
【0046】
図4に真空乾燥装置の一構成例を示した。この真空乾燥装置200は、乾燥釜31、蓋32、加熱ジャケット33、攪拌羽根34、熱交換器35、冷却装置36等を備えている。この真空乾燥装置200では、乾燥釜31の上部の蓋32を開くことにより、乾燥処理するナノコンポジット材料(図2のA)を乾燥釜31の内空間に投入する。乾燥釜31の内空間には、投入されたナノコンポジット材料の乾燥を促進するために、攪拌羽根34を回転させてナノコンポジット材料を攪拌している。また、乾燥釜31は、乾燥釜31の周囲に設けられた加熱ジャケット33により、投入されたナノコンポジット材料を加熱する。
【0047】
乾燥釜31の内空間は蓋32を閉じることにより気密状態に維持できる。乾燥釜31内部に残留している空気は、熱交換器35を介して接続されている前述の油回転真空ポンプ(図示略)によって吸引される。さらに、熱交換器35側に吸引された空気を凝縮器36により冷却・凝縮して、揮発した溶媒を液化させることで真空度を上げている。これにより、乾燥釜31の内空間は、揮発した溶媒量を減少させながら真空状態に維持される。
そして、乾燥釜31の内部で十分に乾燥された乾燥ナノコンポジット材料Bは、乾燥釜31の下方に位置する排出口31aからトレー37上に回収される。
なお、適宜な除電処理を真空乾燥中または真空破壊後のいずれか、あるいは両方で行うことが望ましい。
【0048】
ところで、上記噴霧乾燥を行う前に、遠心法やプレッシャーフィルトレーション、再沈等による析出、等の手段で、材料を濃縮しても良い。噴霧乾燥時の液体粘度としては10
00cP以下が好ましく、より好ましくは500cP以下、さらに好ましくは100cP以下である(液粘度は溶液の濃度により調整可能)。
【0049】
上記のようにして粉体状の乾燥ナノコンポジット材料Bを生成した後、この乾燥ナノコンポジット材料Bを充填材料として、図1に示す工程S3で乾燥ナノコンポジット材料を加熱及び圧縮して所定の光学部材を成形する。
【0050】
この例では、前述の乾燥ナノコンポジット材料Bを、粉体状のままレンズ成形装置300に投入し、加熱工程及び圧縮工程を経て光学部材であるレンズ(あるいは、レンズ前駆体であるレンズ形状と近似形状を有するプリフォーム)を成形する。プリフォームである場合には、このプリフォームを用いて所定のプレス成形工程を実施することにより、最終製品であるレンズが形成される。また、プリフォームの場合は、レンズより形状精度が低くて良い。すなわち、最終的な光学部材の形状に近似した形状にプリフォームを仕上げればよいので、レンズ成形装置の各金型は比較的高い精度を必要とせず、金型の製作コストが安価で済む。また、プリフォームを成形する場合、凸面を成形する際はプリフォームの曲率を最終形状より大きく、逆に凹面を成形する際はプリフォームの曲率を最終形状より小さくすることが望ましい。これにより、最終形状としてのレンズをより高精度に成形することができる。
【0051】
次に、乾燥ナノコンポジット材料Bからレンズを成形する工程例を図5に示した。
図5に示すように、レンズ成形装置300は、上金型51、下金型53、及び上金型51と下金型53が組み合わされる外金型55とを少なくとも有し、上金型51の下面51a、及び下金型53の上面53aは、それぞれ最終製品である光学部材65の形状となるように形成されている。
【0052】
具体的な手順を説明すると、図5に示すように、乾燥ナノコンポジット材料Bは、粉体状のまま外金型55内に配置された下金型53上に投入され(図5(a))、加熱されながら上金型51と下金型53との間でプレスされて光学部材であるレンズ65に成形される(図5(b))。そして、加圧状態のまま冷却した後、下金型53を上方に移動させて上金型51と下金型53を開く。これにより、圧縮成形されたレンズ65が取り出される。(図5(c))。
【0053】
圧縮成形条件としては、例えば、金型温度はナノコンポジット材料のガラス転移温度Tg〜Tg+150℃の範囲で設定し、好ましくはTg〜Tg+100℃の範囲である。加圧力は0.005〜100kg/mmの範囲で行い、好ましくは0.01〜50kg/mm、さらに好ましくは0.05〜25kg/mmである。加圧速度は0.1〜1000kg/sec、加圧時間は0.1〜900secで、好ましくは0.5〜600sec、さらに好ましくは1〜300secである。また、プレスの開始タイミングは、加熱前でも良いし、加熱直後でも良いし、さらには均熱(乾燥ナノコンポジット材料Bの温度を内部まで均一にすること)のために一定時間を置いた後でも良い。また、冷却時にレンズ65は収縮するので、この冷却に合わせてプレスを行う方が金型形状(光学機能転写面51a、53a)を高精度で光学部材67に転写できる。しかし、レンズ65がガラス転移温度Tg以下の温度まで冷却されると、形状変化は無くなるので、離型・取り出すことが望ましい。また、サイクル短縮のために、加熱・冷却処理は速い方が良く、例えば高周波誘導加熱方式による加熱方式が好適に採用できる。なお、加圧のタイミングとしては、残留気体を減らすために、加熱の前に加圧することが好ましい。
【0054】
以上の工程により、溶液から粉体状にされた乾燥ナノコンポジット材料Bは、所望の形状に高精度に加工されたレンズ、またはレンズ前駆体(プリフォーム)となる。このように、溶液中から粉体状として取り出したナノコンポジット材料(すなわち無機微粒子を含
有した高分子)を加熱圧縮して所定形状の光学部材を成形するので、品質の高い高精度の光学部材を溶媒の除去に膨大な時間を要することなく形成できる。また、光学部材の形状制御も容易になり、設計自由度も向上する。しかも、ナノコンポジット材料は屈折率が高いため、高屈折率で品質の高い光学部材を簡単に得ることができ、また光学部材の小型化・高解像度化にも寄与できる。
【0055】
なお、図5に示すレンズ成形装置300がプリフォームを形成するものである場合、所望の最終形状となるような金型を備えた上記同様の圧縮成形装置によって、プリフォームを加熱加圧してレンズに成形する。
プリフォームを介して最終形状のレンズを形成する場合は、次のような利点がある。
すなわち、微粒子状の乾燥ナノコンポジット材料Bを短時間で且つ精度よく重量計測することは高い技術を必要とする。しかし、プリフォームを介する場合は、乾燥ナノコンポジット材料Bの重量(体積)を概略計量して圧縮成形装置に投入し、所定の厚さとなるように圧縮成形する工程となる。ここで成形されるプリフォームは、高精度に重量(体積)制御する必要はなく、最低限、粉体から透明な固形体になっていればよい。つまり、圧縮成形装置の金型内に乾燥ナノコンポジット材料Bを重量(体積)を特に意識することなく詰め込むだけで済む。仮に余剰な乾燥ナノコンポジット材料Bを詰め込んでも、レンズフランジ部に過剰分を吸収させる部位を設けることで、この余剰分を吸収させることができ、プリフォーム形成工程が簡略化される。
そして、出来上がったプリフォームを、必要に応じてフランジ部の外周部分を削る等して、レンズの最終形状に近似させたり、後段のプレス成形工程でレンズ形状に仕上げ、加工精度を高めることができる。これにより、高精度で安定してレンズに近似した形状にできる。
【0056】
(変形例1)
上述の光学部材の製造方法については、様々の変形例が考えられる。例えば、図1に示した工程S2で溶液の乾燥を行う際に、図2に示すような構成のスプレードライヤーを利用する代わりに、インクジェットプリンタ等に用いられるインクジェット機構を利用して、溶液を細かい液滴に分離して噴射してナノコンポジット材料を得ることもできる。
【0057】
インクジェット機構を利用する場合の構成例を図6及び図7に示した。
図6にインクジェット機構の一概略構成例を示すように、インクジェット機構400は、インクジェットヘッド41と、溶液の貯留されたタンク42と、タンク42からインクジェットヘッド41に溶液を供給するチューブ43と、インクジェットヘッド41による液滴の塗出を駆動するドライバ44とを有して構成されている。
【0058】
また、図7にインクジェット機構の動作原理の例を示すように、インクジェットヘッド41の内部は、圧電素子であるピエゾ素子45と、ピエゾ素子45の一端側を接続された可撓性を有するダイアフラム46と、溶液の供給ラインとなる溶液供給部47と、溶液供給部47から溶液が取り込まれる圧力室48と、圧力室48の一部に開口されたノズル49とを1系統の構成として設けられている。このジェットヘッド41には上記1系統の構成が複数系統分設けられている。
【0059】
上記構成によれば、タンク42内に充填された前述の溶液は、チューブ43を経由してインクジェットヘッド41に導かれる。そして、図7(a)に示す初期状態から、図7(b)に示すようにピエゾ素子45を収縮状態としてダイアフラム46を吸引して圧力室48内を負圧とし、溶液供給部47から溶液を圧力室48内に導入する。そして、図7(c)に示すようにピエゾ素子45を延伸させてダイアフラム46を押し出して圧力室48を加圧する。これにより、ノズル49から液滴が吐出されて液滴が形成される。この動作を繰り返し行うことで、ピエゾ素子45の伸縮量に応じた溶液の液滴が連続的に生成される。
【0060】
このインクジェットヘッド41によれば、前述のスプレードライヤー100で用いた噴霧ノズル12よりも十分に小さな液滴サイズを生成でき、溶液の乾燥をより確実に早められる。なお、液滴の直径は0.1mm以下にすることが望ましい。
【0061】
上記の説明ではピエゾ素子を用いたオンデマンド型のインクジェットヘッドを用いたが、これ以外にも、例えば、コンティニュアス型のインクジェットヘッドや、ピエゾ素子などの圧電素子を用いないサーマル方式のインクジェットヘッドを用いても良い。
【0062】
このようなインクジェット機構を利用して溶液を微小な液滴として噴射することにより、液滴の表面積が増大し、スプレードライヤーを利用する場合よりも乾燥の所要時間を短縮できる。スプレードライヤーを利用する場合は、噴射する液滴の粒径が不均一になる傾向がある反面、短時間で大量の液滴を噴射することができる。一方、インクジェット機構を利用して液滴を噴射する場合は、短時間で大量の液滴を噴射することは困難となる反面、粒径を高精度で制御して均一な液滴を安定して噴射できる。そのため、インクジェット機構を利用して粉体状のナノコンポジット材料を形成する場合には、粉体の粒径を高精度に均一化でき、粒径が均一であると液滴毎の乾燥所要時間も均一化される。これにより乾燥ムラが生じにくくなる。そして、インクジェットヘッドのノズル数を多数ノズルとすることで、液滴の吐出量を稼ぐことができ、多量の液滴を容易に得ることができる。
【0063】
ここで、インクジェット機構を利用して、溶液を液滴として吐出する際の液滴量をカウントすることで、高精度にナノコンポジット材料を計量する方法について説明する。
この方法によれば、液滴の吐出量をカウントするので、後段においてプレス成形する量を正確に設定することができる。
具体的な本方法の実施手順は、次に示す通りである。
【0064】
(1)インクジェット機構により吐出量をカウントしながら高温ガス中に液滴を吐出し、これにより得られる乾燥したナノコンポジット材料を容器またはトレー上に堆積させる。(2)容器またはトレー上に堆積したナノコンポジット材料が、作製しようとするレンズ1つ分の容量になったら、その容器またはトレーを新規なものに交換する(あるいは、中身を別の容器に移しても良い)。
(3)ナノコンポジット材料をさらに真空乾燥機で乾燥させる。
(4)乾燥したナノコンポジット材料を成形型に入れて、加熱圧縮する。
【0065】
液滴を吐出してナノコンポジット材料を堆積させる容器は、成形用の金型であっても良い。これによれば、ナノコンポジット材料の移送処理により計量精度が低下することがなく、高精度に成形できる。なお、金型に直接堆積させる場合は、プリフォーム用の金型とすることが好ましい。プリフォーム用の金型とすることで、コストのかかる高精度の金型を複数個作ることが不要となる。
なお、適宜な除電処理を真空乾燥中または真空破壊後のいずれか、あるいは両方で行うことが望ましい。
【0066】
ところで、図1に示す工程S3において、乾燥ナノコンポジット材料Bを加熱、圧縮して光学部材を成形する際には、ナノコンポジット材料の粒子同士の間に残留している空気の分子がこの材料の内部に閉じこめられた状態で成形が行われる可能性があり、その結果、型の転写不良や光学歪み等の不良、さらにはボイドを発生させることがある。
【0067】
このような不良の発生を防止するためには、乾燥ナノコンポジット材料Bから光学部材を成形する際に、粒子間の空気を十分に取り除く必要がある。このため、光学部材を加熱
圧縮して成形するときは、真空中で行うことが好ましい。このときの真空度は0.01kPa〜50kPa以下、好ましくは0.1〜10kPa以下がよい。気圧が高いと上記不良が発生しやすくなり、気圧が低いと生産性が低下することになる。
【0068】
一方、乾燥ナノコンポジット材料Bから光学部材を成形する際に、真空状態の雰囲気を作り出す代わりに、例えば二酸化炭素CO2 ガス、又は窒素N2ガスで満たされた雰囲気の下で成形処理を行うことも出来る。
【0069】
二酸化炭素ガスや窒素ガスは樹脂材料に対する溶解性が高いため、二酸化炭素ガスや窒素ガスで満たされた雰囲気中で圧縮成形を行う場合には、空気のようにそれらの分子が材料中に閉じこめられて残存することがなく、型の転写不良や光学歪み等の不良の発生を抑制できる。しかも、二酸化炭酸ガス雰囲気や窒素ガス雰囲気を作り出すのは、真空雰囲気と比べて容易であるため、圧縮成形の工程にかかる作業の所要時間を短縮できる。なお、樹脂材料に対する溶解性については、炭酸ガスの方が窒素ガスよりも高いので、乾燥ナノコンポジット材料Bを圧縮成形する工程で用いる雰囲気については、炭酸ガス雰囲気の方が好ましい。
【0070】
(第2の実施の形態)
次に、本発明に係る光学部材の製造方法の第2の実施の形態を説明する。
本実施の形態においては、図1に示す工程S2における溶液の乾燥を、液滴にして粉体状のナノコンポジット材料を形成する方法に代えて、凍結乾燥方法を用いて行っている。この凍結乾燥方法は、溶液を真空乾燥させて固形状にして取り出すことで塊状のナノコンポジット材料を得るものである。
【0071】
一般的に、凍結乾燥方法を用いる場合は、溶液を液滴にすることなく乾燥させるので、噴霧乾燥法やインクジェット乾燥法と比較して、ウェット時表面積の違いにより乾燥にかかる所要時間は比較的長くなる。但し、この凍結乾燥が終了した時点では、前述のナノコンポジット材料Aをさらに乾燥処理した乾燥ナノコンポジット材料Bの乾燥度合いと同等に、十分に乾燥された状態となる。したがって、例えば図3の真空乾燥工程S15を実施する必要はなく、光学部材の製造に利用可能な乾燥ナノコンポジット材料を得るための所要時間は、凍結乾燥方法を用いる場合でも十分に短縮できる。
【0072】
ここで、凍結乾燥方法について説明する。
図8は凍結乾燥装置の一例を示す概略構成図である。この凍結乾燥装置500は、真空チャンバ71と、コールドトラップ部72と、冷凍機73とを有する。真空チャンバ71の内部には、溶液を貯留するトレー74と、トレー74を加熱するヒータ75とが配置され、コールドトラップ部72の内部には、冷凍パイプ76が配置されるとともに、真空ポンプ77によりコールドトラップ部72内を減圧可能にしている。また、冷凍機73は、冷凍パイプ76からの熱を冷却水に放出する熱交換機78を有している。
【0073】
本実施形態では、上記構成の凍結乾燥装置500を用いて図1の工程S2に相当する処理を行う。以下に、図9に一例として示す凍結乾燥方法の手順に従って処理手順を説明する。
最初に真空チャンバ71内のトレー74に、乾燥対象である前記溶液を貯留させ、予備凍結を行う(S21)。すなわち、冷凍機73を駆動してコールドトラップ部72内の冷凍パイプ76を凍結状態にする。
【0074】
次に、真空ポンプ77を駆動して真空引きを行い、真空チャンバ71及びコールドトラップ部72内の空気を抜く(S22)。
【0075】
その後、凍結乾燥処理を行う(S23)。すなわち、トレー74上の溶液は真空チャンバ71内で昇華し、昇華潜熱がヒータ75によって供給される。コールドトラップ部72内は、低温に冷却された冷凍パイプ76が配置され、真空チャンバ71内の蒸気圧と釣り合った圧力に保たれている。つまり、真空チャンバ71内で昇華して発生した揮発溶媒は、冷凍パイプ76により冷却されて凝固し、冷凍パイプ76に付着する。これにより、真空チャンバ71内は真空に近い状態を維持したまま、溶液の乾燥が進行する。また、昇華によってトレー74上の溶液から奪われる熱と、ヒータ75から供給される熱とが相殺されるため、トレー74上の溶液の温度はほとんど上昇しないまま乾燥が進行する。また、真空ポンプ77は、乾燥工程において凝縮できない非凝縮ガスを排出するためにも利用される。
【0076】
工程S23で乾燥が終了すると、次に、凍結乾燥装置の真空状態を解除する(S24)。
【0077】
そして、図10に示すようにトレー74上に凝固した塊状のナノコンポジット材料49を真空チャンバ41から取り出す(S25)。また、必要に応じて粉砕処理することで、ナノコンポジット材料はより細かい粉体状にされる。また、塊状のナノコンポジット材料49をレンズ一つ分の重量で切断してもよい。
【0078】
以上のように、図8に示すような凍結乾燥装置500を用いて溶液の凍結乾燥を行う場合には、凍結乾燥が終了した時点で既に非常に高い乾燥度が得られるので、例えば図3に示す真空乾燥工程S15に相当する更なる乾燥工程を実施する必要がない。また、本実施形態の方法は、スプレードライ法と比較して、静電気が発生しにくいのでゴミの混入が少ない。また、通常の自然乾燥(濃縮乾燥)より表面積が大きくなるので、乾燥速度が速められる。そして、溶液状態で計量して、塊状で乾燥させることができるので、後の工程におけるハンドリング性が向上する。
【0079】
しかし、凍結乾燥を行う場合には、第1の実施の形態のように溶液を細かい液滴に分離した状態で乾燥する場合と比べると、乾燥開始時の溶液全体の表面積が小さいので、その分、乾燥所要時間が長くなる。従って、凍結乾燥を行う場合の乾燥所要時間を短縮するために、乾燥処理時の溶液の表面積を出来るだけ大きくすることが重要である。
【0080】
すなわち、例えば図8、図10に示すように面積の広いトレー74上に薄く伸ばした状態で溶液を配置し凍結乾燥を行うことにより、厚みtの小さい薄膜状のナノコンポジット材料79とすれば、比較的短時間で乾燥処理が終了する。この厚みtは、10mm以下が好ましく、薄いほど乾燥処理が早められる。この凍結乾燥装置500を用いて溶液の凍結乾燥を行う場合には、乾燥処理が1回の工程で済むので、製造工程を簡略化することができる。
【0081】
また、上記の乾燥処理を行う前に、濃縮法や遠心法、プレッシャーフィルトレーション、再沈等による析出、等の手段で、予め材料を濃縮しても良い。これにより、より一層の乾燥時間の短縮化が図られる。
【0082】
(変形例1)
上述の実施の形態では、凍結乾燥後にトレー74から取り出したナノコンポジット材料79を粉砕してナノコンポジット材料を形成し、ナノコンポジット材料を用いて光学材料を成形する場合を想定しているが、粉体化することなく光学材料を成形することも可能である。
【0083】
例えば、図11に示すように、凍結乾燥装置内に配置するトレー74Bの表面に、レン
ズの最終形状を見越して、加圧圧縮後に最終形状に近くなるような形状の溝74Baを形成しておき、この溝74Baの中に溶液を注入して凍結乾燥を行う。これにより、凍結乾燥後にトレー74Bから取り出されるナノコンポジット材料79Bは、レンズの最終形状よりも肉厚のプリフォームとして得られる。このプリフォームを図12に示すように、1つのプリフォームを収容する型によって加熱、圧縮成形することにより、最終形状のレンズを得る。この方法によれば、粉体ではなく溶液状態で計量できるので、生産性に優れる。またゴミなどのコンタミ混入の可能性が減少して、より高品位な光学部材の製造が可能となる。
【0084】
つまり、図12(a)に示すように圧縮成形装置600の下金型61上にプリフォーム投入し、図12(b)に示すように加熱しながら外金型62内で上金型63と下金型61との間でプレスして製品形状に成形する。そして、加圧状態のまま冷却した後、図12(c)に示すように上下金型61,63を開く。これにより、プリフォームのときに存在した空隙が潰されて、最終形状に圧縮成形された光学部材であるレンズ64が取り出される。この加熱加圧時は、前述同様に真空雰囲気・二酸化炭素ガス雰囲気、窒素ガス雰囲気とすることが好ましい。これにより、ナノコンポジット材料を粉体状にすることなく塊状として扱うことができ、取り扱い作業が軽減されるとともに正確な形状に仕上げることができる。
なお、凍結乾燥時の溝74Baは、最終形状となるレンズの外形より小さくする。これにより、プリフォームの高さがレンズ形状より高くなり、後段の圧縮成形時の変形代となる。
【0085】
(変形例2)
次に、他の凍結乾燥方法の例を説明する。
凍結乾燥方法により溶液を凍結乾燥させる場合に、第1の実施の形態と同様に溶液を液滴に分離した状態で乾燥を行うと、乾燥所要時間を短縮できる。そこで、例えば、図13に示すような噴霧型凍結装置を利用することにより液滴毎に凍結した粉体状の粒子(未乾燥)を形成できるので、溶液を図13に示す噴霧型凍結装置700で処理した後、出来上がる粉体状の凍結粒子を図8に示す凍結乾燥装置500を用いて乾燥処理すると、乾燥所要時間を短縮できる。
【0086】
図13に示す噴霧型凍結装置について以下に説明する。この噴霧型凍結装置700は、低温室81、低温室81内に配置されたスプレーノズル82、スプレーノズル82に溶液を供給するポンプ83、ポンプ83に接続される溶液タンク84、低温室81の下方に配置されたメッシュベルト85、メッシュベルト85の下方に配置された冷却器86、冷却器86に向けて送風して冷却風を発生させるファン87、冷却風をメッシュベルト85を通して低温室81に循環させるガイド板88を備えている。
【0087】
この噴霧型凍結装置700によれば、溶液タンク84の中に貯留された乾燥対象となる溶液は、ポンプ83の駆動により、スプレーノズル82から下方に向けて細かい液滴として霧状に噴射される。
【0088】
この溶液の液滴が噴射される断熱状態の低温室81の内部には、冷却器86によって冷却された空気がファン87により吹き出され、低温室81内部を循環することで低温室81内を氷結可能な温度に冷却する。
【0089】
スプレーノズル82から噴射される溶液の液滴は、低温室81内で冷却されて霧状に拡散し、液滴のサイズを維持したままメッシュベルト85上に付着して、徐々に凍結が進行する。メッシュベルト85は、図中矢印方向に駆動されており、メッシュベルト85上で液滴毎に凍結した粒子は、メッシュベルト85の移動に伴って出口81aまで搬送される
。そして、粉体として容器89に回収される。
【0090】
この容器89に回収された粉体には、溶媒が多く含まれているので、これを図8に示した凍結乾燥装置500等を用いて凍結乾燥処理する。このような凍結乾燥処理によれば、溶液を短時間で凍結させることができ、かつ凍結した粒子の表面積が大きいために短時間で乾燥処理を終了させることができる。その結果、粉砕工程も不要となり、生産性向上だけでなく、コンタミ混入も防止できる。
【0091】
以上説明した溶液を乾燥、固化させる場合の経過時間と溶媒残存量との関係を図14に示した。
例えば、溶解しているナノコンポジット材料の質量に対する溶媒質量を溶媒残存量として定義すると、光学部材の成形に利用可能なナノコンポジット材料を作るためには、溶媒残存量が2質量%以下になるまで前記溶液を乾燥させる必要があることが分かっている。なお、乾燥開始時の溶媒残存量は、150質量%〜600質量%に達する。
【0092】
溶液を乾燥するための工程には、自然乾燥(濃縮乾燥)では図14に示すように膨大な時間(t3)を要するのは避けられず、乾燥工程を工夫することは非常に重要である。凍結乾燥を実施する場合には、乾燥所要時間(t1,t2)を自然乾燥に比べて大幅に短縮できる。
ここで、乾燥時間が短縮されるメカニズムを以下に説明する。
図15に示すように、凍結乾燥においては、凍結部の上側表面から昇華が始まり、既乾燥層(凍結部)と未乾燥層との界面である昇華面は、昇華の進行に伴って次第に凍結部内部に下がっていく。昇華面近傍については、図中矢印で示すように、既乾燥層においては、未乾燥層(凍結部)に存在する溶媒部と溶質部のうち、溶媒部が昇華により消失し、溶質部のみが残留するようになる。したがって、既乾燥層では、溶質部である既乾燥部が空洞を伴って空隙率の高い状態に形成される。ここでの昇華面における溶媒は飽和値となっており、昇華面は一定速度で凍結部内部に下がる挙動を示す。つまり、一定速度で乾燥が進むことになる。
【0093】
一方、自然乾燥(濃縮乾燥)においては、溶媒が液表面から蒸発するが、溶液中で溶媒の分子が蒸発面まで拡散するまでには時間がかかり、そのため、溶液内から溶媒分子が蒸発面に現れにくくなる。これにより、蒸発面付近の溶媒濃度が低下して、乾燥速度が低下し、乾燥が完了するまでには膨大な時間が掛かる。
【0094】
以上により、凍結乾燥は、自然乾燥より乾燥時間が短縮され、特に、フィルム状に薄くした状態で溶液を乾燥させたり、液滴毎に分離した状態の溶液を乾燥させることにより、溶液の乾燥面積が増大するので、乾燥所要時間は非常に短くなる。
【0095】
次に、本発明の光学部材の製造方法に用いるナノコンポジット材料(無機微粒子が熱可塑性樹脂に含有された材料)について、以下に詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
【0096】
次に、本発明の光学部材の製造方法に用いるナノコンポジット材料(無機微粒子が熱可塑性樹脂に含有された材料)について、以下に詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0097】
[一般式(1)で表される化合物]
本発明のナノコンポジット材料は、無機微粒子とともに、下記一般式(1)で表される化合物を含む。
【0098】
【化1】

【0099】
一般式(1)中、RおよびRはそれぞれ独立に置換基を表す。R1およびR2が採りうる置換基としては特に制限はないが、例えば、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子)、アルキル基(例えばメチル基、エチル基)、アリール基(例えばフェニル基、ナフチル基)、アルケニル基、アルキニル基、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル基)、置換または無置換のカルバモイル基(例えばカルバモイル基、N−フェニルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基)、アルキルカルボニル基(例えばアセチル基)、アリールカルボニル基(例えばベンゾイル基)、ニトロ基、アシルアミノ基(例えばアセトアミド基、エトキシカルボニルアミノ基)、スルホンアミド基(例えばメタンスルホンアミド基)、イミド基(例えばスクシンイミド基、フタルイミド基)、イミノ基(例えばベンジリデンアミノ基)、アルコキシ基(例えばメトキシ基)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ基)、アシルオキシ基(例えばアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基)、アルキルスルホニルオキシ基(例えばメタンスルホニリオキシ基)、アリールスルホニルオキシ基(例えばベンゼンスルホニルオキシ基)、スルホ基、置換または無置換のスルファモイル基(例えばスルファモイル基、N−フェニルスルファモイル基)、アルキルチオ基(例えばメチルチオ基)、アリールチオ基(例えばフェニルチオ基)アルキルスルホニル基(例えばメタンスルホニル基)、アリールスルホニル基(例えばベンゼンスルホニル基)、ホルミル基、ヘテロ環類などを挙げることができる。これらの置換基はさらに置換されていてもよい。一般式(1)で表される分子内に置換基が複数ある場合は、各置換基は同じでも異なってもよい。また、置換基がベンゼン環と縮環構造を形成してもよい。RおよびRの置換基として好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、置換または無置換のカルバモイル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、スルホンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、置換または無置換のスルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基であり、より好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールスルホニル基であり、特に好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アリールオキシ基である。
【0100】
m1およびm2はそれぞれ独立に0〜5の整数を表す。m1およびm2は好ましくは0〜3であり、より好ましくは0〜2であり、さらに好ましく0〜1である。m1およびm2が2以上の整数の場合、同一のベンゼン環上の置換基はそれぞれ同じでも異なってもよい。
【0101】
aは0もしくは1を表す。aが0の場合にはベンゼン環同士が単結合していることを意味する。aが1であるとき、ベンゼン環同士がLで連結される。Lはオキシ基またはメチレン基を表す。このように一般式(1)で表される化合物のベンゼン環同士は、単結合、オキシ基またはメチレン基で結合されるが、好ましいのは単結合もしくはオキシ基である。
【0102】
一般式(1)で表される化合物の分子量は2000未満であることが好ましく、より好ましくは1000未満であり、さらに好ましくは700未満である。
【0103】
以下に一般式(1)で表される化合物の具体例を示すが、本発明で用いることができる一般式(1)の化合物はこれらに限定されるものではない。
【0104】
【化2】


【0105】
【化3】

【0106】
一般式(1)で表される化合物は、当業者に周知の方法にしたがって合成してもよいし、市場から入手してもよい。例えば、(株)村松石油研究所製S−3101、S−3103、S−3105、S−3230などを用いることができる。
【0107】
一般式(1)で表される化合物の有機無機複合組成物への添加量は、好ましくは0.1〜30質量%であり、より好ましくは0.3〜25質量%であり、さらに好ましくは0.5〜20質量%である。添加量が30質量%以下であれば成形中や保存中の泣き出しを防ぎやすくなる傾向があり、添加量が0.1質量%以上であれば添加することによる効果が得られやすくなる傾向がある。なお、ここでいう泣き出しとは、添加した化合物が成形体表面に滲み出す現象を意味する。
【0108】
[無機微粒子]
本発明のナノコンポジット材料は、一般式(1)で表される化合物とともに無機微粒子を含む。本発明に用いられる無機微粒子としては特に制限はなく、例えば特開2002−241612号公報、特開2005−298717号公報、特開2006−70069号公報等に記載の微粒子を用いることができる。
【0109】
具体的には、酸化物微粒子(酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化テルル、酸化イットリウム、酸化インジウム、酸化錫等)、複酸化物微粒子(ニオブ酸リチウム、ニオブ酸カリウム、タンタル酸リチウムなど)、硫化物微粒子(硫化亜鉛、硫化カドミウム等)、その他半導体結晶微粒子(セレン化亜鉛、セレン化カドミウム、テルル化亜鉛、テルル化カドミウム等)、あるいはLiAlSiO、PbTiO、Sc12、ZrW、AlPO、Nb,LiNOなどを用いることができる。
【0110】
これらの中でも特に、金属酸化物微粒子が好ましく、中でも酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化錫および酸化チタンからなる群より選ばれるいずれか一つであることが好ましく、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛および酸化チタンからなる群より選ばれるいずれか一つであることがより好ましく、さらには可視域透明性が良好で光触媒活性の低い酸化ジルコニウム微粒子を用いることが特に好ましい。
【0111】
本発明で用いられる無機微粒子は、屈折率、透明性、安定性などの観点から、複数の成分による複合物であってもよい。また、無機微粒子には、光触媒活性低減、吸水率低減など種々の目的から、異種元素をドープしたり、表面層をシリカ、アルミナ等異種金属酸化物で被覆したり、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、有機酸(カルボン酸類、スルホン酸類、リン酸類、ホスホン酸類等)などで表面修飾しても良い。さらに目的に応じて、これらの2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0112】
本発明で用いられる無機微粒子の屈折率に特に制限はないが、本発明のようにナノコンポジット材料が高屈折率を必要とする光学部材に用いられる場合には、無機微粒子は上記熱温度依存性に加えて高屈折率特性を併せ持つことが好ましい。この場合、用いられる無機微粒子の屈折率は22℃、589nmの波長において1.9〜3.0であることが好ましく、より好ましくは2.0〜2.7であり、特に好ましくは2.1〜2.5である。微粒子の屈折率が3.0以下であれば、樹脂との屈折率差が比較的小さいためレイリー散乱を抑制しやすくなる傾向がある。また、屈折率が1.9以上であれば高屈折率化の効果が得られやすくなる傾向がある。
【0113】
無機微粒子の屈折率は、例えば本発明で用いる熱可塑性樹脂と複合化した複合物を透明フィルムに成形して、アッベ屈折計(例えば、アタゴ社製「DM−M4」)で屈折率を測定し、別途測定した樹脂成分のみの屈折率から計算する方法、あるいは濃度の異なる微粒子分散液の屈折率を測定することにより微粒子の屈折率を算出する方法などによって見積もることができる。
【0114】
本発明で用いられる無機微粒子の数平均粒子サイズは、小さすぎると該微粒子を構成する物質固有の特性が変化する場合があり、逆に該数平均粒子サイズが大きすぎるとレイリー散乱の影響が顕著となり、有機無機複合組成物の透明性が極端に低下する場合がある。従って、本発明で用いられる無機微粒子の数平均粒子サイズの下限値は、好ましくは1nm以上、より好ましくは2nm以上、さらに好ましくは3nm以上であり、上限値は好ましくは15nm以下、より好ましくは10nm以下、さらに好ましくは7nm以下である。
すなわち、本発明における無機微粒子の数平均粒子サイズとしては、1nm〜15nmが好ましく、2nm〜10nmがさらに好ましく、3nm〜7nmが特に好ましい。
また本発明に用いられる無機微粒子は上記の平均粒子サイズを満たし、かつ粒子径分布が狭いほど望ましい。このような単分散粒子の定義の仕方はさまざまであるが、例えば特開2006−160992号公報に記載されるような数値規定範囲が、本発明で用いられる微粒子の好ましい粒径分布範囲にも当てはまる。
ここで、上述の数平均粒子サイズとは例えば、X線回折(XRD)装置あるいは透過型電子顕微鏡(TEM)などで測定することができる。
【0115】
本発明に用いられる無機微粒子の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知のいずれの方法も用いることができる。
例えば、ハロゲン化金属やアルコキシ金属を原料に用い、水を含有する反応系において加水分解することにより、所望の酸化物微粒子を得ることができる。この方法の詳細は、例えば、ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジクス第37巻4603〜4608頁(1998年)、あるいは、ラングミュア第16巻第1号241〜246頁(2000年)等に記載されている。
【0116】
また、水中で加水分解させる方法以外の方法として、有機溶媒中や本発明における熱可塑性樹脂が溶解した有機溶媒中で無機微粒子を作製する方法を採用してもよい。この際、必要に応じて各種表面処理剤(シランカップリング剤類、アルミネートカップリング剤類、チタネートカップリング剤類、有機酸類(カルボン酸類、スルホン類、ホスホン酸類など))を共存させてもよい。
これらの方法に用いられる溶媒としては、アセトン、2−ブタノン、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、アニソール等が例として挙げられる。これらは、1種類を単独で使用してもよく、また複数種を混合して使用してもよい。
【0117】
無機微粒子の合成法としては、上記以外に、分子ビームエピタキシー法やCVD法のような真空プロセスで作製する方法など、例えば特開2006−70069号公報等に記載される各種一般的な微粒子合成法を挙げることができる。
【0118】
本発明のナノコンポジット材料における無機微粒子の含有量は、透明性と高屈折率化の観点から、20〜95質量%が好ましく、25〜70質量%がさらに好ましく、30〜60質量%が特に好ましい。また、本発明における無機微粒子と熱可塑性樹脂(分散ポリマー)との質量比は、分散性の点から、1:0.01〜1:100が好ましく、1:0.05〜1:10がさらに好ましく、1:0.05〜1:5が特に好ましい。
【0119】
[熱可塑性樹脂]
本発明のナノコンポジット材料は、熱可塑性樹脂を含有する。特に、本発明のナノコンポジット材料は、少なくとも高分子鎖末端または側鎖に無機微粒子と任意の化学結合を形成しうる官能基を有する熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。ここでいう化学結合は、共有結合、イオン結合、水素結合、配位結合を含むものと定義する。このような熱可塑性樹脂の好ましい例としては、以下の3種の熱可塑性樹脂を挙げることができる。
(1)側鎖に下記から選ばれる官能基を有する熱可塑性樹脂
【0120】
【化4】

【0121】
[R11、R12、R13、R14は、それぞれ独立に水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアルキニル基、あるいは、置換または無置換のアリール基を表す。]、−SOH、−OSOH、−COH、または−Si(OR15m1163−m1[R15、R16はそれぞれ独立に水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアルキニル基、あるいは、置換または無置換のアリール基を表し、m1は1〜3の整数を表す。];
【0122】
(2)高分子末端の少なくとも1箇所に、下記から選ばれる官能基を有する熱可塑性樹脂
【0123】
【化5】

【0124】
〔R21、R22、R23、R24は、それぞれ独立に水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアルキニル基、あるいは置換または無置換のアリール基を表す。〕、−SOH、−OSOH、−COH、および、−Si(OR25m2263−m2〔R25、R26は、それぞれ独立に水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアルキニル基、あるいは置換または無置換のアリール基を表す。m2は1〜3の整数を表す。〕;
【0125】
(3)疎水性セグメントおよび親水性セグメントで構成されるブロック共重合体
以下、特に熱可塑性樹脂(3)について、詳細に説明する。
【0126】
<熱可塑性樹脂(3)>
本発明で用いられる熱可塑性樹脂(3)は、疎水性セグメントおよび親水性セグメントで構成されるブロック共重合体である。
【0127】
ここで、疎水性セグメント(A)とは、セグメント(A)のみからなるポリマーが水またはメタノールに溶解しない特性を有するセグメントをいい、親水性セグメント(B)とは、セグメント(B)のみからなるポリマーが水またはメタノールに溶解する特性を有するセグメントをいう。前記ブロック共重合体の型としては、AB型、BAB型(2つの親水性セグメントBとBとは同じでも異なっていてもよい)およびABA型(2つの疎水性セグメントAとAとは同じでも異なっていてもよい)が挙げられ、分散特性が良好な点から、AB型あるいはABA型のブロック共重合体が好ましく、製造適性の点から、AB型あるいはABA型(ABA型の2つの疎水性セグメントが同じ型)がより好ましく、AB型が特に好ましい。
【0128】
前記疎水性セグメントおよび前記親水性セグメントは、各々、ビニルモノマーの重合によって得られるビニルポリマー、ポリエーテル、開環メタセシス重合ポリマーおよび縮合ポリマー(ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホンなど)など従来公知のポリマーのいずれからでも選択可能であるが、ビニルポリマー、開環メタセシス重合ポリマー、ポリカーボネート、ポリエステルが好ましく、製造適性の点からビニルポリマーがより好ましい。
【0129】
前記疎水性セグメント(A)を形成するビニルモノマー(A)としては、例えば、以下のものが挙げられる。
アクリル酸エステル類やメタクリル酸エステル類(エステル基は置換または無置換の脂肪族エステル基、置換または無置換の芳香族エステル基であり、例えば、メチル基、フェニル基、ナフチル基など);
【0130】
アクリルアミド類、メタクリルアミド類、具体的には、N−モノ置換アクリルアミド、N−ジ置換アクリルアミド、N−モノ置換メタクリルアミド、N−ジ置換メタクリルアミド(モノ置換体およびジ置換体の置換基は、置換または無置換の脂肪族基、置換または無置換の芳香族基であり、前記置換基としては、例えば、メチル基、フェニル基、ナフチル基など);
【0131】
オレフィン類、具体的には、ジシクロペンタジエン、ノルボルネン誘導体、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、イソプレン、クロロプレン、ブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、ビニルカルバゾールなど;スチレン類、具体的には、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、トリブロモスチレン、ビニル安息香酸メチルエステルなど;
【0132】
ビニルエーテル類、具体的には、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテルなど;その他のモノマーとして、クロトン酸ブチル、クロトン酸ヘキシル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジブチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジブチル、メチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、メトキシエチルビニルケトン、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニルピロリドン、ビニリデンクロライド、メチレンマロンニトリル、ビニリデン、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジオクチル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェートなどが挙げられる。
【0133】
中でも、エステル基が無置換の脂肪族基、置換または無置換芳香族基であるアクリル酸エステル類およびメタクリル酸エステル類;置換基が無置換の脂肪族基、置換または無置換芳香族基であるN−モノ置換アクリルアミド、N−ジ置換アクリルアミド、N−モノ置換メタクリルアミドおよびN−ジ置換メタクリルアミド;スチレン類;が好ましく、エステル基が置換または無置換芳香族基であるアクリル酸エステル類およびメタクリル酸エステル類;スチレン類;がより好ましい。
【0134】
前記親水性セグメント(B)を形成するビニルモノマー(B)としては、例えば、以下のものが挙げられる。
アクリル酸、メタクリル酸、エステル部位に親水性の置換基を有するアクリル酸エステル類およびメタクリル酸エステル類;芳香環部に親水性の置換基を有するスチレン類;親水性の置換基を有するビニルエーテル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−モノ置換アクリルアミド、N−ジ置換アクリルアミド、N−モノ置換メタクリルアミドならびにN−ジ置換メタクリルアミドなどが挙げられる。
親水性の置換基としては、
【0135】
【化6】

【0136】
〔但し、R31、R32、R33、R34は、それぞれ独立に、水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアルキニル基、あるいは置換または無置換のアリール基を表す。〕、−SOH、−OSOH、−COH、−OH、および、−Si(OR35m3363−m3〔但し、R35、R36は、それぞれ独立に、水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアルキニル基、あるいは置換または無置換のアリール基を表す。m3は1〜3の整数を表す。〕からなる群より選ばれる官能基を有するのが好ましい。
31、R32、R33、R34、R35、R36が、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアルキニル基、あるいは置換または無置換のアリール基である場合、これらの好ましい範囲は、R11、R12、R13、R14の好ましい範囲として述べたものと同様である。また、m3は、3であることが好ましい。
前記官能基としては、
【0137】
【化7】

【0138】
、−COH、もしくは、−Si(OR35m3363−m3が好ましく、
【0139】
【化8】

【0140】
および−COHがより好ましく、
【0141】
【化9】

【0142】
が特に好ましい。
本発明では特に、前記ロック共重合体が、
【0143】
【化10】

【0144】
、−SOH、−OSOH、−COH、−OH、および、−Si(OR35m3363−m3から選ばれる官能基を有し、該官能基の含有量が0.05mmol/g以上5.0mmol/g以下であることが好ましい。
【0145】
中でも、親水性セグメント(B)としては、アクリル酸、メタクリル酸、エステル部位に親水性の置換基を有するアクリル酸エステル類およびメタクリル酸エステル類、芳香環部に親水性の置換基を有するスチレン類が好ましい。
【0146】
前記疎水性セグメント(A)を形成するビニルモノマー(A)は疎水性の特性を妨げない範囲で、前記ビニルモノマー(B)を含有していてもよい。前記疎水性セグメント(A)に含有される前記ビニルモノマー(A)と前記ビニルモノマー(B)とのモル比は、100:0〜60:40であるのが好ましい。
【0147】
前記親水性セグメント(B)を形成するビニルモノマー(B)は親水性の特性を妨げない範囲で、前記ビニルモノマー(A)を含有していてもよい。前記親水性セグメント(B)に含有される前記ビニルモノマー(B)と前記ビニルモノマー(A)とのモル比は、100:0〜60:40であるのが好ましい。
【0148】
前記ビニルモノマー(A)および前記ビニルモノマー(B)は各々、1種類を単独で用いても、2種類以上を用いてもよい。前記ビニルモノマー(A)および前記ビニルモノマー(B)は、種々の目的(例えば、酸含量調節やガラス転移点(Tg)の調節、有機溶剤や水への溶解性調節、分散物安定性の調節)に応じて選択される。
【0149】
前記官能基の含有量は前記ブロック共重合体の全体に対して0.05〜5.0mmol/gであるのが好ましく、0.1〜4.5mmol/gであるのがさらに好ましく、0.15〜3.5mmol/gであるのが特に好ましい。前記官能基の含有量が少なすぎると分散適性が小さくなる場合があり、多すぎると水溶性が高くなりすぎたり、有機無機複合組成物がゲル化したりする場合がある。尚、前記ブロック共重合体において、前記官能基はアルカリ金属イオン(例えば、Na、Kなど)またはアンモニウムイオンなどカチオン性のイオンと塩を形成していてもよい。
【0150】
前記ブロック共重合体の分子量(Mn)としては、1000〜100000が好ましく、2000〜80000であることがより好ましく、3000〜50000であることが特に好ましい。ブロック共重合体の分子量を1000以上とすることにより、安定な分散物を得やすくなる傾向にあり、100000以下とすることにより、有機溶剤への溶解性が向上する傾向にあり好ましい。
【0151】
本発明で用いられるブロック共重合体は、屈折率が1.50より大きいことが好ましく、1.55以上であることがより好ましく、1.60より大きいことがさらに好ましく、1.65より大きいことが特に好ましい。なお、ここでいう、屈折率は、アッベ屈折計(アタゴ社「DR−M4」)にて波長589nmの光について測定した値である。
【0152】
本発明において用いられるブロック共重合体は、ガラス転移温度が80℃〜400℃で
あることが好ましく、130℃〜380℃であることがより好ましい。ガラス転移温度を80℃以上とすることにより、耐熱性が向上する傾向にあり、ガラス転移温度を400℃以下とすることにより、成形加工性が向上する傾向にある。
【0153】
本発明において用いられるブロック共重合体は、波長589nmにおける厚さ1mm換算の光線透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。
【0154】
前記ブロック共重合体の具体例(例示化合物Q−1〜Q−20)を以下に列挙する。尚、本発明に用いられるブロック共重合体は、これらの具体例に何ら限定されるものではない。
【0155】
【表1】

【0156】
【表2】

【0157】
前記ブロック共重合体は、必要に応じてカルボキシル基などを保護したり、ポリマーに官能基を導入する手法を用いてリビングラジカル重合およびリビングイオン重合を利用して合成することができる。また、末端官能基ポリマーからのラジカル重合および末端官能基ポリマー同士の連結によって合成することができる。中でも、分子量制御やブロック共重合体の収率の点から、リビングラジカル重合およびリビングイオン重合を利用するのが好ましい。前記ブロック共重合体の製造方法については、例えば、「高分子の合成と反応(1)(高分子学会編、共立出版(株)発行(1992))」、「精密重合(日本化学会編、学会出版センター発行(1993))」、「高分子の合成・反応(1)(高分子学会編、共立出版(株)発行(1995))」、「テレケリックポリマー:合成と性質、応用(R.Jerome他、Prog.Polym.Sci.Vol16.837−906頁(1991))」、「光によるブロック,グラフト共重合体の合成(Y.Yagch他、Prog.Polym.Sci.Vol15.551−601頁(1990))」、米国特許5085698号明細書などに記載されている。
【0158】
これらの樹脂は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0159】
[他の添加剤]
本発明のナノコンポジット材料には、上記の前記一般式(1)で表される化合物、無機微粒子、熱可塑性樹脂以外に、均一分散性、離型性、耐候性等の観点から適宜各種添加剤を配合してもよい。例えば、表面処理剤、帯電防止剤、分散剤、可塑剤、離型剤等を挙げることができる。また前記樹脂以外に前記官能基を有さない樹脂を添加しても良く、このような樹脂の種類に特に制限はないが、前記熱可塑性樹脂と同様の光学物性、熱物性、分子量を有するものが好ましい。
これら添加剤の配合割合は目的に応じて異なるが、前記無機微粒子および熱可塑性樹脂の合計量に対して、0〜50質量%であることが好ましく、0〜30質量%であることがより好ましく、0〜20質量%であることが特に好ましい。
【0160】
<表面処理剤>
本発明では、後述するように水中またはアルコール溶媒中に分散された無機微粒子を熱可塑性樹脂と混合する際に、有機溶媒への抽出性または置換性を高める目的、熱可塑性樹脂への均一分散性を高める目的、微粒子の吸水性を下げる目的、あるいは耐候性を高める目的など種々目的に応じて、上記熱可塑性樹脂以外の微粒子表面修飾剤を添加してもよい。該表面処理剤の重量平均分子量は50〜50,000であることが好ましく、より好ましくは100〜20,000、さらに好ましくは200〜10,000である。
【0161】
前記表面処理剤としては、下記一般式(2)で表される構造を有するものが好ましい。一般式(2)
A−B
【0162】
一般式(2)中、Aは本発明で用いられる無機微粒子の表面と化学結合を形成しうる官能基を表し、Bは本発明で用いられる熱可塑性樹脂を主成分とする樹脂マトリックスに対する相溶性または反応性を有する炭素数1〜30の1価の基またはポリマーを表す。ここで、「化学結合」とは、例えば、共有結合、イオン結合、配位結合、水素結合等をいう。
【0163】
Aで表わされる基の好ましい例は、本発明で用いられる熱可塑性樹脂の官能基として前記したものと同じである。
一方、Bで表される基の化学構造は、相溶性の観点から該樹脂マトリックスの主体である熱可塑性樹脂の化学構造と同一または類似するものであることが好ましい。本発明では特に高屈折率化の観点から、前記熱可塑性樹脂とともにBの化学構造が芳香環を有していることが好ましい。
【0164】
本発明で好ましく用いられる、表面処理剤の例としては例えば、p−オクチル安息香酸、p−プロピル安息香酸、酢酸、プロピオン酸、シクロペンタンカルボン酸、燐酸ジベンジル、燐酸モノベンジル、燐酸ジフェニル、燐酸ジ−α−ナフチル、フェニルホスホン酸、フェニルホスホン酸モノフェニルエステル、KAYAMER PM−21(商品名;日本化薬社製)、KAYAMER PM−2(商品名;日本化薬社製)、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、パラオクチルベンゼンスルホン酸、あるいは特開平5−221640号、特開平9−100111号、特開2002−187921号各公報記載のシランカップリング剤などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0165】
これらの表面処理剤は1種類を単独で用いてもよく、また複数種を併用してもよい。
これら表面処理剤の添加量の総量は無機微粒子に対して、質量換算で0.01〜2倍で
あることが好ましく、0.03〜1倍であることがより好ましく、0.05〜0.5倍であることが特に好ましい。
【0166】
<帯電防止剤>
本発明のナノコンポジット材料の帯電圧を調節するために、帯電防止剤を添加することができる。本発明のナノコンポジット材料では、光学特性改良の目的で添加した無機微粒子自体が別の効果である帯電防止効果にも寄与する場合がある。帯電防止剤を添加する場合には、アニオン性帯電防止剤、カチオン性帯防止剤、ノ二オン性帯電防止剤、両性イオン性帯電防止剤、高分子帯電防止剤、あるいは帯電性微粒子などが挙げられ、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの例としては、特開2007−4131号公報、特開2003−201396号公報に記載された化合物を挙げることができる。
帯電防止剤の添加量はまちまちであるが、全固形分の0.001〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜30質量%であり、特に好ましくは0.1〜10質量%である。
【0167】
<その他>
前記化合物以外に、離型効果を高めたり、成形時の流動性をさらに向上させたりする目的で、カルナバワックス、ライスワックス、綿ロウ、木ロウ等の植物系ワックス、ミツロウ、ラノリン等の動物系ワックス、オゾケライト、セレシン等の鉱物系ワックス、およびパラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラタム等の石油ワックス等の天然ワックスの外、フィッシャ・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成炭化水素ワックス、ステアリン酸アミド、塩素化炭化水素等の長鎖脂肪族アミド、エステル、ケトン、エーテル等の合成ワックス、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類、および、デュポン社製のゾニルFSN、ゾニルFSO等のフッ素テロマー類を添加することもできる。また耐光性や熱劣化を改良する目的で、ヒンダードフェノール系、アミン系、リン系、チオエーテル系等の公知の劣化防止剤を適宜添加してもよく、これらを配合する場合には樹脂組成物の全固形分に対して0.1〜5質量%程度が好ましい。
【0168】
[有機無機複合組成物の製造方法]
本発明のナノコンポジット材料は、好ましくは無機微粒子を前記官能基を有する熱可塑性樹脂と化学結合して該樹脂中に分散することにより製造する。このとき、一般式(1)で表される化合物を存在させておく。
本発明に用いられる無機微粒子は粒子サイズが小さく、表面エネルギーが高いため、固体で単離すると再分散させることが難しい。よって、無機微粒子は溶液中に分散された状態で熱可塑性樹脂と混合し安定分散物とすることが好ましい。ナノコンポジット材料の好ましい製造方法としては、
[1]無機粒子を上記表面処理剤の存在下にて表面処理し、表面処理された無機微粒子を有機溶媒中に抽出し、抽出した該無機微粒子を前記熱可塑性樹脂および前記一般式(1)で表される化合物と均一混合して無機微粒子と熱可塑性樹脂の複合物を製造する方法、
[2]無機微粒子と熱可塑性樹脂および一般式(1)で表される化合物および他の添加剤を均一分散あるいは溶解できる溶媒を用いて全ての成分を均一混合して無機微粒子と熱可塑性樹脂の複合物を製造する方法が挙げられる。
【0169】
上記[1]の方法によって無機微粒子と熱可塑性樹脂の複合物を製造する場合には、有機溶媒としてトルエン、酢酸エチル、メチルイソブチルケトン、クロロホルム、ジクロロエタン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、メトキシベンゼン等の非水溶性の溶媒が用いられる。微粒子の有機溶剤への抽出に用いられる表面処理剤と前記熱可塑性樹脂は同種のものであっても異種のものであってもよいが、好ましく用いられる表面処理剤については、前述<表面処理剤>の欄で述べたものが挙げられる。
有機溶媒中に抽出された無機微粒子と熱可塑性樹脂を混合する際に、前記一般式(1)で表される化合物も添加し、さらに可塑化剤、離型剤、あるいは別種のポリマー等の添加剤を必要に応じて添加してもよい。
【0170】
上記[2]の方法を採用する場合は、溶剤として、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシー2−プロパノール、tert−ブタノール、酢酸、プロピオン酸等の親水的な極性溶媒の単独または混合溶媒、あるいはクロロホルム、ジクロロエタン、ジクロロメタン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、クロロベンゼン、メトキシベンゼン等の非水溶性溶媒と上記極性溶媒との混合溶媒が好ましく用いられる。この際、前述の熱可塑性樹脂とは別に分散剤、可塑化剤、離型剤、あるいは別種のポリマーを必要に応じて添加してもよい。水/メタノールに分散された微粒子を用いる際には、水/メタノールより高沸点で熱可塑性樹脂を溶解する親水的な溶媒を添加した後、水/メタノールを濃縮留去することによって、微粒子の分散液を極性有機溶媒に置換した後、樹脂と混合することが好ましい。このとき、前記表面処理剤を添加してもよい。
【実施例】
【0171】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
以下の方法により、乾燥ナノコンポジット材料を作成し、残存溶媒と非表面積を測定した。
【0172】
[微粒子分散液の調製]
(1)酸化ジルコニウム微粒子の合成
50g/Lの濃度のオキシ塩化ジルコニウム溶液を48%水酸化ナトリウム水溶液で中和し、水和ジルコニウム懸濁液を得た。この懸濁液をろ過した後、イオン交換水で洗浄し、水和ジルコニウムケーキを得た。このケーキを、イオン交換水で溶媒として酸化ジルコニウム換算で濃度15質量%に調整して、オートクレーブに入れ、圧力150気圧、150℃で24時間水熱処理して酸化ジルコニウム微粒子懸濁液を得た。TEMより数平均粒子サイズが5nmの酸化ジルコニウム微粒子の生成を確認した。微粒子の屈折率は2.1であった。
【0173】
(2)酸化ジルコニウムジメチルアセトアミド分散液の調製
前記(1)で調製した酸化ジルコニウム微粒子懸濁液(濃度15質量%)500gに500gのN,N’−ジメチルアセトアミドを加え約500g以下になるまで減圧濃縮して溶媒置換を行った後、N,N’−ジメチルアセトアミドの添加で濃度調整をすることによって15質量%の酸化ジルコニウムジメチルアセトアミド分散液を得た。
【0174】
[熱可塑性樹脂の合成]
熱可塑性樹脂Q−1の合成
tert−ブチルアクリレート2.1g、2−ブロモプロピオン酸tert−ブチルエステル0.72g、臭化銅(I)0.46g、N,N,N’,N’,N”,N” −ペンタメチルジエチレンテトラミン0.56g、メチルエチルケトン9mlからなる混合液を調製し、窒素置換した。油浴温度80℃で1時間攪拌し、スチレン136.2gを窒素気流下添加した。油浴温度90℃で16時間攪拌し、室温に戻してから酢酸エチル100ml、アルミナ30gを加え30分攪拌した。この反応液をろ過し、濾液を過剰のメタノールに滴下した。生じた沈殿を濾取、メタノール洗浄、乾燥し、樹脂を61g得た。この樹脂をトル
エン300mlに溶解し、p−トルエンスルホン酸一水和物6gを添加し、3時間加熱還流した。この反応液を過剰のメタノールに滴下した。生じた沈殿を濾取、メタノール洗浄、乾燥し、表1に示すブロック共重合体Q−1を55g得た。GPCで測定した該樹脂の数平均分子量は32000、重量平均分子量は35000であった。またアッベ屈折計で測定した該樹脂の屈折率は1.59であった。
【0175】
[ナノコンポジット材料の溶液の生成]
前記酸化ジルコニウムジメチルアセトアミド分散液に熱可塑性樹脂Q−1、化合物PL−1、および表面処理剤(4−プロピル安息香酸)を質量比が、ZrO固形分/PL−1/4−プロピル安息香酸安息香酸=41.7/8.3/8.3となるように添加して均一に攪拌混合した後、加熱減圧下ジメチルアセトアミド溶媒を濃縮した。この濃縮溶液をナノコンポジット材料の溶液として以下に用いる。
【0176】
[実施例1]
上記作製した溶液を図2に示すスプレードライヤーにより噴霧乾燥させ、粉体にした。このときの溶液濃度は30質量%、乾燥チャンバ温度は145℃であった。そして、得られた粉体を図4に示す真空乾燥装置により真空乾燥を行った。真空乾燥時の圧力は0.1Pa、真空乾燥温度は80℃、真空乾燥時間は12時間とした。
【0177】
[実施例2]
上記作製した溶液を図6に示すインクジェット機構により液滴にし、乾燥することで粉体にした。このときの溶液濃度は30質量%、液滴径は0.4mm(32pL)であった。そして、得られた粉体を図4に示す真空乾燥装置により真空乾燥を行った。真空乾燥時の条件は実施例と同一とし、圧力は0.1Pa、真空乾燥温度は80℃、真空乾燥時間は12時間とした。
【0178】
[実施例3]
上記作製した溶液を図8に示す凍結乾燥装置により凍結乾燥し、レンズ前駆体であるプリフォームを形成した。このときの溶液濃度は30質量%、真空乾燥時間は50時間とした。
【0179】
[実施例4]
実施例3の場合と同様に凍結乾燥装置により、溶液を厚さ0.5mmのフィルム状に凍結乾燥させた。このときの溶液濃度は30質量%、真空乾燥時間は10時間とした。
【0180】
[実施例5]
実施例4の場合と同様に凍結乾燥装置により、溶液を液滴状にして噴霧することで極めて薄いフィルム状にして凍結乾燥させた。このときの溶液濃度は30質量%、真空乾燥時間は5時間とした。
【0181】
[比較例1−1,1−2]
実施例3で形成したプリフォームと同じ形状を濃縮乾燥処理で作製した。このときの真空乾燥処理は、圧力が0.1Pa、温度が80℃であり、真空乾燥時間は、比較例1−1は24時間、比較例1−2はさらに延長して240時間とした。
【0182】
[比較例2−1,2−2]
実施例4の凍結乾燥処理により作製したフィルム状と同じ形状を濃縮乾燥処理で作製した。このときの真空乾燥処理は、圧力が0.1Pa、温度が80℃であり、真空乾燥時間は、比較例2−1は24時間、比較例2−2は240時間とした。
【0183】
実施例1〜5および比較例1−1〜2,2−1〜2で調製した成形体の比表面積、残存溶媒量を、乾燥時間と合わせて表3に示した。
【0184】
【表3】

【0185】
表3から明らかなように、比較例1−1,2−1のような濃縮乾燥処理では、比表面積が13mm-1以下となり、残存溶媒量を十分に減少させることができず、また、十分なレベルに乾燥させるには、比較例1−2,2−2のように乾燥時間が大幅に増加する。一方、実施例1〜5は、比表面積を15mm−1以上にすることで、残存溶媒量が短い乾燥時間で十分に減少する。
【0186】
ここで、上記の残存溶媒量は質量分析機能付きのガスクロマトグラフィーGC/MSにより測定した結果であり、比表面積は比表面積測定装置(ジェミニ2380, 島津製作所)を用いて測定した結果である。
【産業上の利用可能性】
【0187】
以上のように、本発明の光学部材の製造方法では、屈折率の大きいナノコンポジット材料を用いて高品質の光学材料を短時間で製造できるので、例えば携帯型のカメラなどに利用可能な小型のレンズなどの光学部材を製造する際に極めて利用価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【0188】
【図1】光学部材の製造方法に関する基本的な処理手順を表すフローチャートである。
【図2】溶液から粉体状のナノコンポジット材料を形成するための製造工程で利用可能なスプレードライヤーの示す概略構成図である。
【図3】図2に示すスプレードライヤーを利用する場合の製造工程に関する具体的な処理手順を表すフローチャートである。
【図4】真空乾燥装置を示す概略構成図である。
【図5】粉体状のナノコンポジット材料からレンズを形成する工程例を示す説明図(a),(b),(c)である。
【図6】インクジェット機構の一例を示す概略構成図である。
【図7】図6に示すインクジェットヘッドの内部構造とその動作を示す説明図(a),(b),(c)である。
【図8】凍結乾燥装置の一例を示す概略構成図である。
【図9】凍結乾燥方法の手順を表すフローチャートである。
【図10】凍結乾燥装置により形成され凍結されたナノコンポジット材料の様子を示す説明図である。
【図11】凍結乾燥装置によりプリフォームを形成する様子を示す説明図である。
【図12】プリフォームからレンズを形成する場合の熱プレス工程の動作例を示す説明図(a),(b),(c)である。
【図13】噴霧型凍結乾燥装置の一例を示す概略構成図である。
【図14】乾燥処理中の溶媒残存量と時間経過との関連を表すグラフである。
【図15】凍結乾燥における乾燥時間が短縮されるメカニズムを示す説明図である。
【符号の説明】
【0189】
10A 溶液タンク
11A 溶液送出ポンプ
12 噴霧ノズル
13 乾燥チャンバ
14a ヒータ
14 ヒータ装置
15 送風器
16 連絡管
17 サイクロンチャンバ
18 フィルタ
19 凝縮器
20 密封容器
21 バルブ
22 不燃性ガス供給路
31 乾燥釜
31a 排出口
32 蓋
33 加熱ジャケット
34 攪拌羽根
35 熱交換器
36 冷却装置
37 トレー
41 インクジェットヘッド
42 タンク
43 チューブ
44 ドライバ
45 ピエゾ素子
46 ダイアフラム
47 溶液供給部
48 圧力室
49 ノズル
51 上金型
51a 下面
53 下金型
53a 上面
55 外金型
61 下金型
62 外金型
63 上金型
64,65 レンズ(光学部材)
71 真空チャンバ
72 コールドトラップ部
73 冷凍機
74 トレー
74B トレー
74Ba 溝
75 ヒータ
76 冷凍パイプ
77 真空ポンプ
78 熱交換機
79 ナノコンポジット材料
79B ナノコンポジット材料
81 低温室
81a 出口
82 スプレーノズル
83 ポンプ
84 溶液タンク
85 メッシュベルト
86 冷却器
87 ファン
88 ガイド板
89 容器
100 真空乾燥装置
200 真空乾燥装置
300 レンズ成形装置
400 インクジェット機構
500 凍結乾燥装置
600 圧縮成形装置
700 噴霧型凍結装置
A ナノコンポジット材料
B 乾燥ナノコンポジット材料
t 厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機微粒子が熱可塑性樹脂に含有されてなるナノコンポジット材料を調製し、該調製されたナノコンポジット材料から光学部材を形成する光学部材の製造方法であって、
前記無機微粒子を含有した高分子を溶液中で合成する第1の工程と、
前記第1の工程で得られる前記高分子を含む溶液を乾燥固化させ、比表面積(表面積/体積)が15mm−1以上の乾燥した前記ナノコンポジット材料を取り出す第2の工程と、
前記第2の工程で取り出した前記ナノコンポジット材料を加熱圧縮して所定形状の光学部材を成形する第3の工程と、
を含む光学部材の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の光学部材の製造方法であって、
前記第2の工程は、前記無機微粒子を含有した高分子を含む溶液を液滴にした状態で乾燥させ、前記ナノコンポジット材料を形成する光学部材の製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の光学部材の製造方法であって、
前記第2の工程は、噴霧ノズルから加圧した状態で前記溶液の液滴を連続吐出させ、乾燥させることで前記ナノコンポジット材料を形成する光学部材の製造方法。
【請求項4】
請求項2記載の光学部材の製造方法であって、
前記第2の工程は、インクジェットヘッドのノズルから前記溶液の液滴を所定量繰り返し吐出させ、乾燥させることで前記ナノコンポジット材料を形成する光学部材の製造方法。
【請求項5】
請求項4記載の光学部材の製造方法であって、
前記第3の工程で加熱圧縮する少なくとも1つの光学部材の容積になるまで前記所定量の液滴を繰り返し吐出する光学部材の製造方法。
【請求項6】
請求項2〜請求項5のいずれか1項記載の光学部材の製造方法であって、
前記溶液の液滴の直径が0.5mm以下である光学部材の製造方法。
【請求項7】
請求項1記載の光学部材の製造方法であって、
前記第2の工程は、前記無機微粒子を含有した高分子を含む溶液を、凍結乾燥して前記乾燥したナノコンポジット材料を形成する光学部材の製造方法。
【請求項8】
請求項7記載の光学部材の製造方法であって、
前記第2の工程は、1つの光学部材を形成する前記ナノコンポジット材料を含んだ前記溶液を計量し、
前記光学部材の外形よりも小さい型の中で凍結乾燥させる光学部材の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれか1項記載の光学部材の製造方法であって、
前記第3の工程は、真空中、二酸化炭素ガス中、または窒素ガス雰囲気中のいずれかで前記ナノコンポジット材料を加熱圧縮する光学部材の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれか1項記載の光学部材の製造方法であって、
前記光学部材がレンズまたはレンズ前駆体(プリフォーム)である光学部材の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜請求項10のいずれか1項記載の光学部材の製造方法により形成された光学部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−69774(P2009−69774A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−240875(P2007−240875)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】