説明

光導波板用液状シリコーンゴム組成物

【解決手段】(A)M、Q、D及びT単位から選択される単位からなり、M及びQ単位の合計量が80mol%以上で、Q単位に対するM単位のモル比が0.5〜1.5の範囲であるアルケニル基を含有するシリコーン樹脂
(B)平均重合度が2,000以下のアルケニル基を含有する室温で液状のオルガノポリシロキサン
(C)平均重合度が2,000を超えるアルケニル基を含有する室温で生ゴム状のオルガノポリシロキサン
(D)ケイ素原子と結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(E)ヒドロシリル化反応触媒
を必須成分とする光導波板用ヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物。
【効果】本発明の組成物の硬化物フィルムは、高透明で高硬度、かつ可撓性を備えているので、携帯電話のキーパッド照光用バックライト装置の光導波板として最適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オルガノポリシロキサンを主成分とし、ヒドロシリル化反応によって硬化する光導波板用液状シリコーンゴム組成物に関し、特に高透明、高硬度の成型物が得られるため、携帯電話のキーパッド照光用バックライト装置の光導波板に好適に用いられるものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話の夜間使用のため、多くのキーパッドは照光用バックライト装置を備えているが、従来は発光ダイオード(LED)をキーパッドの裏側に多数個配置する構成であった。しかし、最近の携帯電話の高機能化に伴い、照光用バックライト装置にも薄型化、軽量化、高輝度化、コストダウンの要求が高まっており、液晶ディスプレイ(LCD)でも採用されている光導波板による照光用バックライト装置が提案された。これは、LED光源と、該光源に対向する端面から光を内部に導入して拡散し、照光したいキー部分に設置した反射面で光を反射して反射光を外部に投射する光導波板から構成されている(特許文献1:特開2003−59321号公報参照)。この装置の特徴は、LEDを横方向に設置することで薄型化が可能になり、従来の裏側にLEDを設置したタイプに比べてLED個数を減少してもキーパッド全面を均一に、高輝度に照光可能となった。また、消費電力も低下したので電池の小型、軽量化も進み、低コスト化にも寄与した。
【0003】
LCDバックライト装置の光導波板は、光学的特性のみを要求されるが、キーパッド照光用バックライト装置の光導波板は、キー入力の変位(クリック)をスイッチング素子に伝達する役目も担うので、高透明であることに加え、弾性やその温度依存性が小さいこと、薄く均一な厚みで表面平滑なフィルムを成型できること等も必要となる。一般にアクリル樹脂やポリカーボネート樹脂は高透明でフィルム成型性は良好であるが、弾性の温度依存性、特に低温領域では脆化のため、キー入力時にクラックが発生することがあった。そこで、LEDの封止材等の光学材料にも応用されている高透明なシリコーン系樹脂(特許文献2:特開2002−265787号公報、特許文献3:特開2006−202952号公報、特許文献4:特開2006−342200号公報参照)が低温特性に優れている点で注目された。中でも、シリカを全く含まないために高透明、かつ低温でも弾性を損なわず、熱硬化によるフィルム成型も比較的容易なヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物の硬化物がキーパッド照光用バックライト装置の光導波板として採用されるようになった。
【0004】
しかし、補強材としてのシリカを全く含まないシリコーンゴムは、一般に強度がなくて柔らかく、表面粘着性を有するためフィルム成型に適さない。架橋密度を上げると強度と硬さが向上し、粘着性も小さくなるため、フィルム成型性は改善されるが、可撓性のない脆いフィルムになってしまう。
【0005】
【特許文献1】特開2003−59321号公報
【特許文献2】特開2002−265787号公報
【特許文献3】特開2006−202952号公報
【特許文献4】特開2006−342200号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、補強材としてのシリカを全く含まない高透明なヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物であって、硬さと可撓性を両立させた硬化物を形成することができ、特にバックライト装置用として好適な光導波板用ヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、硬化物の硬さを発現させるためのシリコーン樹脂と可撓性を付与させるための生ゴム状オルガノポリシロキサンとを併用したヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物とすることにより、硬化後の成型フィルムの硬さと可撓性の両立が可能であることを見出し、本発明に至ったものである。
【0008】
即ち、本発明は、
(A)R3SiO1/2単位(M単位)、SiO4/2単位(Q単位)、R2SiO2/2単位(D単位)、及びRSiO3/2単位(T単位)から選択される単位からなり、これらの全構成単位のうちM単位及びQ単位の合計量が80mol%以上であり、かつQ単位に対するM単位のモル比が0.5〜1.5の範囲であるシリコーン樹脂
100質量部
(ここで、Rは炭素数1〜6の一価炭化水素基であり、かつ一分子中の少なくとも2個はアルケニル基である。)
(B)平均重合度が2,000以下で、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子と結合したアルケニル基を含有する室温で液状のオルガノポリシロキサン
50〜200質量部
(C)平均重合度が2,000を超える、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子と結合したアルケニル基を含有する室温で生ゴム状のオルガノポリシロキサン
1〜50質量部
(D)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子と結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(A),(B)成分及び(C)成分中のケイ素原子と
結合したアルケニル基1個当たり、ケイ素原子に
結合した水素原子の数が1.0〜10.0個となる量
(E)ヒドロシリル化反応触媒 触媒量
を必須成分とすることを特徴とする光導波板用ヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物
を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物の硬化物フィルムは、高透明で高硬度、かつ可撓性を備えたものであるので、携帯電話のキーパッド照光用バックライト装置の光導波板として最適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明を更に詳細に説明する。
本発明のヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物の(A)成分のシリコーン樹脂は、R3SiO1/2単位(M単位)、SiO4/2単位(Q単位)、R2SiO2/2単位(D単位)、及びRSiO3/2単位(T単位)から選択される単位からなり、これらの全構成単位のうちM単位及びQ単位の合計量が80mol%以上であり、かつQ単位に対するM単位のモル比が0.5〜1.5の範囲である、分岐状又は三次元網状構造のものである。ここで、Rは炭素数1〜6の一価炭化水素基であり、かつ一分子中の少なくとも2個はアルケニル基である。
【0011】
上記シリコーン樹脂の炭素数1〜6の一価炭化水素基Rの具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、並びにフェニル基等の非置換の一価炭化水素基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノメチル基等の上記一価炭化水素基の水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子やシアノ基で置換された置換アルキル基等の置換の一価炭化水素基が挙げられ、(A)成分のシリコーン樹脂に含まれる複数のRは同じでも異なってもよいが、ヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物の他の成分との相溶性の観点から、Rの80mol%以上がメチル基であることが好ましい。各成分の相溶性が悪化すると、ヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物の硬化物の透明性が低下するためである。また、アルケニル基としてはビニル基が好ましいが、これも他の成分との相溶性を保つことが理由である。
【0012】
上記の(A)成分のシリコーン樹脂において、上記四種の構成単位のうちR3SiO1/2単位(M単位)とSiO4/2単位(Q単位)は必須であり、ヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物の硬化物の硬さを向上させるためには、全構成単位に占めるこの2種の構成単位の割合が80mol%以上であることが必要であり、好ましくは90mol%以上、より好ましくは100mol%である。R2SiO2/2単位(D単位)及びRSiO3/2単位(T単位)は含まれていてもいなくてもよい。
【0013】
また、SiO4/2単位(Q単位)に対するR3SiO1/2単位(M単位)のモル比が0.5より小さいと、ヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物の他の成分との相溶性が悪化し、1.5よりも大きいとヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物の硬化物の硬さが低下してしまう。従ってQ単位に対するM単位のモル比は0.5〜1.5の範囲にあることが必要とされ、好ましくは0.7〜1.2の範囲である。
【0014】
上記の(A)成分のシリコーン樹脂として具体的には、ビニルジメチルシロキシ基とQ単位の共重合体、ビニルジメチルシロキシ基・トリメチルシロキシ基とQ単位の共重合体、ビニルジメチルシロキシ基・ジメチルシロキサン単位とQ単位の共重合体、ビニルジメチルシロキシ基・フェニルシルセスキオキサン単位とQ単位の共重合体、ビニルジメチルシロキシ基・ジメチルシロキサン単位・フェニルシルセスキオキサン単位とQ単位の共重合体、トリメチルシロキシ基・ビニルメチルシロキサン単位とQ単位の共重合体等が挙げられる。
【0015】
本発明のヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物の(B)成分の室温で液状のオルガノポリシロキサンは、平均重合度が2,000以下で、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子と結合したアルケニル基を含有するもので、通常、ヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物のベースポリマーとして使用されている公知のものであり、25℃での粘度が1〜100Pa・s、好ましくは5〜100Pa・sの粘度を有するものである。
【0016】
また、本発明のヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物の(C)成分の室温で生ゴム状のオルガノポリシロキサンは、平均重合度が2,000以上を超える、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子と結合したアルケニル基を含有するもので、通常、ミラブルタイプのシリコーンゴムコンパウンドのベースポリマーとして使用されている公知のものである。平均重合度は、好ましくは2,100〜100,000、より好ましくは3,000〜10,000である。
【0017】
(B)成分、(C)成分の平均重合度は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析におけるポリスチレン換算による重量平均分子量から算出される平均値(重量平均重合度)等を適用することができる。
【0018】
上記の(B)成分、(C)成分は共にアルケニル基含有オルガノポリシロキサンであるが、違いは分子量(重合度)だけである。これらは通常、下記平均組成式(I)
1aSiO(4-a)/2 (I)
(ここで、R1は炭素数1〜6の置換又は非置換の一価炭化水素基で、具体例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、フェニル基等の非置換の一価炭化水素基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノメチル基等の上記一価炭化水素基の水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子やシアノ基で置換された置換アルキル基等の置換の一価炭化水素基である。複数の置換基は異なっていても同一であってもよいが、分子中にアルケニル基を2個以上含んでいることが必要である。また、aは1.9〜2.4、好ましくは1.95〜2.05の範囲の数である。)
で表され、直鎖状であっても分岐していてもよい。好ましくは主鎖がジオルガノポリシロキサン単位(D単位)の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基(M単位)で封鎖された直鎖状オルガノポリシロキサンであるものが例示され、ケイ素原子に結合した置換基はメチル基又はフェニル基が好ましい。また、一分子中に2個以上含有することが必須であるケイ素原子と結合したアルケニル基はビニル基が好ましく、これは分子鎖末端にあっても側鎖にあってもよいが、両末端に2個含有するものが好ましい。
【0019】
本発明のヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物の硬化後の成型フィルムの硬さと可撓性を両立させるため、(A)成分100質量部に対し、(B)成分は50〜200質量部、(C)成分は1〜50質量部の範囲が好適である。(B)成分、(C)成分ともにこの範囲未満の組成では可撓性のない脆いフィルムとなり、逆にこの範囲を超える組成では柔らかくて表面粘着性のあるフィルムとなるため適さない。好ましくは、(A)成分100質量部に対し、(B)成分は80〜150質量部、(C)成分は5〜20質量部である。
【0020】
本発明のヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物の(D)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子と結合した水素原子(SiH基)を含有するもので、下記平均組成式(II)
2bcSiO(4-b-c)/2 (II)
(ここで、R2は炭素数1〜6の置換又は非置換の一価炭化水素基で、好ましくは脂肪族不飽和結合を有さないものである。具体例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、フェニル基等の非置換の一価炭化水素基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノメチル基等の上記一価炭化水素基の水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子やシアノ基で置換された置換アルキル基等の置換の一価炭化水素基である。bは0.7〜2.1、cは0.18〜1.0、かつb+cは0.8〜3.0、好ましくはbは0.8〜2.0、cは0.2〜1.0、かつb+cは1.0〜2.5を満足する正数で示される。)
で示される従来から公知のオルガノハイドロジェンポリシロキサンが適用可能である。また、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網目状のいずれの構造であってもよい。この場合、一分子中のケイ素原子の数(又は重合度)は2〜300個、特に4〜200個程度の室温で液状のものが好適に用いられる。なお、ケイ素原子に結合する水素原子(SiH基)は分子鎖末端にあっても側鎖にあっても、その両方にあってもよく、一分子中に少なくとも2個(通常2〜300個)、好ましくは3個以上(例えば3〜200個)、より好ましくは4〜150個程度含有するものが使用される。
【0021】
上記の(D)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとして具体的には、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、環状メチルハイドロジェンポリシロキサン、環状メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、環状メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位とから成る共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C65)SiO3/2単位とからなる共重合体等や上記各例示化合物において、メチル基の一部又は全部がエチル基、プロピル基等の他のアルキル基やフェニル基等のアリール基で置換されたものなどが挙げられる。
【0022】
(D)成分の配合量については、本発明のヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物の硬化後の成型フィルムの硬さと可撓性を両立させるため、(A)成分、(B)成分及び(C)成分中のケイ素原子と結合したアルケニル基1個当たり、ケイ素原子に結合した水素原子の数が1.0〜10.0、好ましくは1.5〜5.0の範囲となるように(D)成分の量を調整する必要がある。この範囲未満では柔らかく、表面粘着性のあるフィルムとなり、この範囲を超えると可撓性のないフィルムとなる。
【0023】
本発明のヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物の(E)成分のヒドロシリル化反応触媒は、公知のものが適用可能で、例えば、白金黒、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等が挙げられる。なお、このヒドロシリル化反応触媒の配合量は触媒量とすることができ、通常、白金族金属として(A)成分に対し、0.5〜1,000ppm、好ましくは1〜200ppm程度である。
【0024】
本発明のヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、アルコキシシリル基を含有するアルコキシシラン系化合物、シランカップリング剤、チタン系やジルコニウム系等の縮合触媒等を架橋補助剤として配合してもよい。
【0025】
また、例えば、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサンや1,3,5−トリアリル−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン(トリアリルイソシアヌレート)等の多官能アルケニル化合物、1−エチニルシクロヘキサノール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール等のアセチレンアルコール誘導体等のヒドロシリル化反応抑制剤を、ポットライフの確保のために添加してもよいし、例えば、トリメチルクロロシランやオクタメチルテトラシクロシロキサンで表面処理した処理シリカ等の無機充填材を、硬化物の硬さや強度を向上させるために配合してもよい。更に染料、顔料、難燃剤、離型剤等の配合も、本発明の効果を損なわない範囲ならば可能である。
これらの各任意成分は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0026】
本発明のヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物は、通常の混合攪拌器、混練器等を用いて上記の各成分を均一に混合することにより調製することができる。
【0027】
本発明のヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物の硬化物からなるバックライト装置用光導波板は、各成分を均一に混合した上記のヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物を80〜350℃、好ましくは100〜200℃、より好ましくは120〜150℃で加熱硬化することにより得られる。成型法は公知の熱硬化樹脂によるフィルム成型法を用いることができ、例えばプレス成型法ならば、2枚の樹脂フィルム(ライナー)の間に本発明のヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物を流し込み、所定の金型、条件で加圧加硫させればよい。また延伸成型法の例としては、2枚の連続樹脂フィルムの間に本発明のヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物を供給しながらロールにより一定厚みに延伸し、加熱炉に連続的に供給して常圧熱気加硫させる。硬化後、冷却してからライナーを剥離すれば、光導波板が得られる。
【0028】
この場合、本発明のヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物の硬化物は、そのゴム硬度がデュロメータAで70度以上(通常70〜85度)、特に75〜85度であることが好ましい。また、厚さ2mmの硬化物シートの全光線透過率がスガ試験機(株)製直読ヘーズコンピューターHGM−2による測定値で90%以上、特に92%以上であることが好ましい。更に、厚さ0.2mmの硬化物フィルムを二つ折り(即ち180°)に折り曲げても、割れが生じないものが好ましい。
【実施例】
【0029】
以下、実施例と比較例によりこの発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、配合量の単位は質量部である。また、重量平均分子量、重量平均重合度は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析におけるポリスチレン換算値である。粘度は回転粘度計による値である。
【0030】
[実施例1〜7、比較例1〜6]
ヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物の各例について、(A)シリコーン樹脂、(B)液状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、(C)生ゴム状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、(D)オルガノハイドロジェンポリシロキサン、(E)ヒドロシリル化反応触媒、(F)ヒドロシリル化反応制御剤、それぞれの配合量を表1に示した。各組成物は均一に混合撹拌、減圧脱泡した。
プレス板上に、ポリエチレンテレフタレート(PET)ライナー、厚さ2.2mmの枠を重ね、この枠内に上記のヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物を流し込み、この上に更にPETライナー、プレス板を積層して120℃で10分間プレス成型した。2枚のPETライナーごと取り出して冷却後、PETライナーを剥離して厚さ約2mmのシリコーンゴム製透明フィルムを得た。
同様に厚さ0.2mmのスペーサー(枠)を使用して、150℃で2分間プレス成型することにより、厚さ約0.2mmのシリコーンゴム製透明シートを得た。
【0031】
これらについて下記の物性を評価した。
・ゴム硬度:JIS−K6249(2mmシート)、デュロメータA
・透明性:2mmシートの全光線透過率を測定した。
・可撓性:0.2mmシートから縦60mm×横20mmのピースを切り出し、縦方向ほぼ中央で二つ折りにし、屈曲部にクラック(割れ)が生じていなければ合格とした。
・総合評価:ゴム硬度がデュロメータAで70以上、透明性が全光線透過率90%以上、可撓性が合格の3項目全てが満足された時○、それ以外を×とした。
【0032】
使用した材料
(A)シリコーン樹脂
A−1 (CH33SiO1/2単位、(CH2=CH)(CH32SiO1/2単位、SiO4/2単位の共重合体
モル比:(CH33SiO1/2/(CH2=CH)(CH32SiO1/2/SiO4/2=40/10/50
一分子当たりのアルケニル基数:4.2個(重量平均分子量=3,000)
A−2 (CH33SiO1/2単位、(CH2=CH)(CH32SiO1/2単位、SiO4/2単位の共重合体
モル比:(CH33SiO1/2/(CH2=CH)(CH32SiO1/2/SiO4/2=40/5/55
一分子当たりのアルケニル基数:3.5個(重量平均分子量=5,000)
A−3 (CH33SiO1/2単位、(CH2=CH)(CH3)SiO2/2単位、SiO4/2単位の共重合体
モル比:(CH33SiO1/2/(CH2=CH)(CH3)SiO2/2/SiO4/2=45/10/45
一分子当たりのアルケニル基数:4.2個(重量平均分子量=3,000)
A−4 (CH33SiO1/2単位、SiO4/2単位の共重合体
モル比:(CH33SiO1/2/SiO4/2=50/50
一分子当たりのアルケニル基数:0個(重量平均分子量=3,000)
【0033】
(B)液状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン
B−1 両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン
重量平均重合度:約1,100(重量平均分子量=約80,000)
粘度:約100Pa・s
B−2 両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン
重量平均重合度:約450(重量平均分子量=約33,000)
粘度:約5Pa・s
B−3 両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン・ジメチルポリシロキサン共重合体
重量平均重合度:約750(重量平均分子量=約56,000)
粘度:約30Pa・s
一分子当たりのアルケニル基数:3.8個
【0034】
(C)生ゴム状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン
C−1 両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン
重量平均重合度:約8,000(重量平均分子量=約600,000)
C−2 両末端トリメチルシロキシ基封鎖ビニルメチルシロキサン・ジメチルポリシロキサン共重合体
重量平均重合度:約8,000(重量平均分子量=約600,000)
一分子当たりのアルケニル基数:10個
C−3 両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン
重量平均重合度:約8,000(重量平均分子量=約600,000)
一分子当たりのアルケニル基数:0個
【0035】
(D)オルガノハイドロジェンポリシロキサン
D−1 両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン
粘度:20mPa・s
一分子当たりのSiH基数:40個(SiH基含有量0.016mol/g)
D−2 両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン・メチルハイドロジェンポリシロキサン共重合体
粘度:40mPa・s
一分子当たりのSiH基数:45個(SiH基含有量0.011mol/g)
(E)ヒドロシリル化反応触媒
E−1 1−エチニルシクロヘキサノール
(F)ヒドロシリル化反応触媒
F−1 白金触媒
Pt濃度:1重量%
【0036】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)R3SiO1/2単位(M単位)、SiO4/2単位(Q単位)、R2SiO2/2単位(D単位)、及びRSiO3/2単位(T単位)から選択される単位からなり、これらの全構成単位のうちM単位及びQ単位の合計量が80mol%以上であり、かつQ単位に対するM単位のモル比が0.5〜1.5の範囲であるシリコーン樹脂
100質量部
(ここで、Rは炭素数1〜6の一価炭化水素基であり、かつ一分子中の少なくとも2個はアルケニル基である。)
(B)平均重合度が2,000以下で、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子と結合したアルケニル基を含有する室温で液状のオルガノポリシロキサン
50〜200質量部
(C)平均重合度が2,000を超える、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子と結合したアルケニル基を含有する室温で生ゴム状のオルガノポリシロキサン
1〜50質量部
(D)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子と結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(A),(B)成分及び(C)成分中のケイ素原子と
結合したアルケニル基1個当たり、ケイ素原子に
結合した水素原子の数が1.0〜10.0個となる量
(E)ヒドロシリル化反応触媒 触媒量
を必須成分とすることを特徴とする光導波板用ヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物。
【請求項2】
(B)成分及び(C)成分が、直鎖状のジオルガノポリシロキサンである請求項1記載の光導波板用ヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物。
【請求項3】
該ヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物の硬化物のゴム硬度がデュロメータAで70度以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の光導波板用ヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物。
【請求項4】
該ヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物の厚さ2mmの硬化物シートの全光線透過率が90%以上であることを特徴とする請求項1,2又は3記載の光導波板用ヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物。
【請求項5】
該ヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物の厚さ0.2mmの硬化物フィルムを折り曲げても割れが生じないことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の光導波板用ヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物。

【公開番号】特開2008−291124(P2008−291124A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−138724(P2007−138724)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】