光導波路、光導波路モジュールおよび光導波路の製造方法
【課題】曲げ部分を形成してもその曲げによる光伝送の損失が小さく、曲げ部分以外ではモードフィールド径が大きく、高精度な位置合わせが無くても接続損失を低減でき、小さな角度の端面斜め研磨処理で大きな反射減衰量を得ることができる光導波路を提供する。
【解決手段】光導波路1では、コア2とコア2を被覆するクラッド3を有する光導波路1の加熱対象部分9が加熱されて加工歪開放状態に移行し、加工歪開放状態に移行した加熱対象部分9を所定の曲げ半径で曲線状に曲げることで曲げ部分10を形成しており、曲げ部分10は加工歪状態に移行されている。曲げ部分10のコア2とクラッド3の屈折率差と物理的な大きさが、加熱対象部分9が加熱されたことにより変化している。
【解決手段】光導波路1では、コア2とコア2を被覆するクラッド3を有する光導波路1の加熱対象部分9が加熱されて加工歪開放状態に移行し、加工歪開放状態に移行した加熱対象部分9を所定の曲げ半径で曲線状に曲げることで曲げ部分10を形成しており、曲げ部分10は加工歪状態に移行されている。曲げ部分10のコア2とクラッド3の屈折率差と物理的な大きさが、加熱対象部分9が加熱されたことにより変化している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路、光導波路モジュールおよび光導波路の製造方法に関し、特に光導波路の小さな曲げ部分により曲げ損失を小さくして光の導波方向を変換することができる光導波路、光導波路モジュールおよび光導波路の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電気回路の動作速度は光伝送回路の動作速度に近づきつつあることから、電気回路の高速動作の一部を光導波路で補うために、電気回路と光伝送路を融合させることが行われている。光導波路の一例としては光ファイバが用いられている。
【0003】
具体的には、VCSEL(垂直共振器型表面発光レーザー)が電気回路基板に実装され、VCSELから出射された光信号が光導波路に入射して伝播され、電気回路基板に実装されたPD(フォトダイオード)で受光して信号伝送を行う。この光導波路が電気回路基板自体に埋め込まれたり、光導波路が複数の電気回路基板間に配置されて電気コードの代わりに使用されることが検討されている。光導波路としては、例えば有機導波路シート(代表的な導波路シートとしては、ポリイミドの導波路シートがある。)や、光ファイバを有する光ファイバシートが提案されている。
【0004】
VCSELは表面発光レーザであり、そのレーザ光の出射方向は実装された電気回路基板に対して垂直方向である。VCSELの実装方向を電気回路基板に対して垂直にすれば、レーザ光出射方向は電気回路基板に対して平行方向になるが、このようなレーザの実装はVCSELの高密度多重実装の利点を生かせないので、通常VCSELの実装方向を垂直にはしない。
【0005】
電気回路基板に埋め込まれた光導波路は、電気回路基板と平行方向に光を導波するので、VCSELのレーザ光を、これらの光導波路に結合されるようにするには、90度の光導波方向の変換が必要となる。
このような、90度の光導波方向の変換方法として、光ファイバの端面を45度に研磨し、研磨面に金属蒸着などを施してミラーとし、90度の光導波方向の変換を行う方法や、45度の角度を持ったミラーで光導波方向の変換を行う方法が検討されている。
【0006】
前述のような90度の光導波方向の変換の必要性とは適用領域が異なるが、例えばFTTH(光ファイバによる家庭向けのデータ通信サービス:Fiber to the home)では、ユーザー宅の建屋内に光ファイバを配線するが、一般の光ファイバでは機械的特性及び光学的特性の問題から、数cm以下の曲げ半径で光ファイバを曲げることができない。このため、部屋の角部分や屋外から屋内に光ファイバを取り込んだ穴部分で光ファイバを大きな曲げ半径で緩やかに曲げるための空間を確保する必要があり、家具の配置の自由度や屋内の景観を損ねる。これに対して、近年最小曲げ半径が15mmでも機械的、光学的に曲げることが可能な光ファイバが開発されている。
【0007】
更に、超小型で光導波方向を変換する応用として、光ファイバの所望部分を非常に微細な径に細くして、曲げる方法が提案され商品化されている。この方法では細くされた部分の光ファイバ径は数μm〜10μm程度で、この細さでは光ファイバを例えば曲げ半径1mmで曲げたとしても、その曲げによる曲げ歪は1%以下となり機械的に十分曲げることが可能になる。また、光学的にはこの細い部分のファイバだけで光を閉じ込める構造とはならないが、この細い光ファイバ部分とその外側の環境、すなわち空気との組み合わせにより、コアが光ファイバ、クラッドが環境(空気)という関係になり、等価的に数十%もの超高屈折率差の導波路として機能し、微小な曲げ半径でも光の損失無く曲げることが可能となる。
【0008】
上述した光ファイバや光導波路の端面を45度に研磨し、研磨面に金属蒸着などを施してミラーとし、90度の変換を行う方法では、光ファイバや導波路を45度に精度良く研磨する作業が容易でなく、金属蒸着などの更なる工程も大掛かりな製造設備を必要とする。実装時にも45度面を電気回路基板に対して真上または真下方向に捩れることなく実装する必要があるが、このような実装は容易とは言い難い。また、この方式では光ファイバのコアや導波路のコアから90度方向に変換された後は、光導波路の構造ではない媒体中を光が導波するため、ビーム径が広がり良好な結合を得ることは難しい。
【0009】
また、45度の角度を持ったミラーで変換を行う方法では、小型化のために微小なミラーが必要となり、この微小なミラーとの位置合わせや、ミラー部分までに空間中を光ビームが伝播することによるビーム広がりを抑えるためには、レンズ部品などが追加されなければならず、部品点数が増え、それらの位置合わせは容易ではない。
【0010】
空間伝播を伴う系では、光導波路や光ファイバからの空間への光出射端面は反射減衰量を大きく取るために、無反射コーティングや斜め研磨が必要となる。しかし、無反射コーティングを行うには大掛かりな装置を必要とし、斜め研磨は光ビームの放射方向が光導波路中または光ファイバ中での光軸からずれるので、45度ミラーとの位置合わせが更に難しくなる場合がある。
【0011】
次に、光ファイバの最小曲げ半径が15mmでも、機械的、光学的に曲げることが可能な光ファイバは屋外では有効であるが、屋内や狭い空間では許容される曲げ半径はさらに小さい方がより良い。光ファイバの曲げ部分の曲げ半径を15mmよりも小さくしたい場合には、このような光ファイバは使用できない。
【0012】
上述したよ
うに光ファイバの所望部分を非常に微細な径に細くして曲げる方法では、数μm程度の外径という非常に細い径とするために、取り扱い時に折れてしまうなどの問題がある。また、この方式では曲げの部分の光損失低減は、外部環境がクラッドとして働くことが基本であり、外部環境変化に敏感である。すなわち、環境湿度や温度変動によりこの微小径部分に水分の結露が起こると、微小曲げ部分での光閉じ込めは機能しなくなる。
【0013】
微小曲げ部分での光閉じ込めの機能を維持するには、この微小径部分は空気などの気体中に曝された状態で、気密封止を行う必要がある。すなわち、空洞内に微小径部分を配置しての気密封止が必要となるが、これは容易ではない。また、微小径部分が小さくても、それを気密封止し、保護する構造部分は微小径部分よりも非常に大きな構造とならざるを得ない。
【0014】
しかも、光ファイバや光導波路として、有機光導波路シートや光ファイバシートが提案されているが、まず、有機光導波路シートの現状の技術レベルでの光損失は約0.2dB/cmと非常に大きく、長さ15cm伝送しただけで光パワーが3dB損失、すなわち半分以下となってしまう。光電気融合基板からバックプレーン、更に別の光電気融合基板へ光信号を伝送する場合を考えると、光信号は数十cmから1m程度の距離を伝送すると考えられ、この場合には、コネクタ部分の接続損失などを無視して、光導波路の伝送損失だけでも、最大20dB程度の光損失が発生することになる。
【0015】
一方、光ファイバシートは、2枚の可撓性プラスチックフィルム間に複数本の光ファイバを配線したものであり、特性は光ファイバで決定される。有機光導波路の伝送損失が0.2dB/cmであるのに比較して、石英系の光ファイバの伝送損失は約0.2dB/kmという遥かな小ささであり、光電気回路融合基板内での伝送といった、最大でも数mという距離では伝送損失は無視できる小ささである。
【0016】
プラスチック系の光ファイバの場合には、数dB〜数十dB/kmという伝送損失増加があるが、例えば500dB/kmの損失でも、0.5dB/m程度と有機導波路に比べれば1/40程度の低損失であり、最大でも数mという距離ではやはり伝送損失は小さく、実用上問題となることはない。
【0017】
しかし、この光ファイバシートは、複数本の光ファイバを所望の場所に光を配線するため、配線した光ファイバが交差するが、この交差の程度によって光損失が発生する。この交差による光損失を回避するには、配線形状を工夫する、交差部分に緩衝材を入れるなどが考えられるが、このような方策は歩留まりを悪くし、さらにコストアップに繋がる。また、シート上での配線には光ファイバの光学的および機械的強度から曲げ半径を小さくすることができないという問題がある。
【0018】
一般には、石英系の光ファイバは、曲げ半径15mm以下では光損失増大、機械的破壊が懸念されるので、それ以上の半径で配線する必要があり、光ファイバシートを小さくすることが困難であり、配線形状も制限されてしまう。
【0019】
そこで、本発明者らは、コアとクラッドを有する光導波路の所望部分を加熱して、所望部分を加工歪開放状態に移行させて、この加工歪開放状態に移行した所望部分を所定の曲げ半径で曲線状に曲げて、加工歪状態に移行させることを提案している。これにより、コアとクラッドの屈折率差を通常使用される光ファイバよりも大きくして、かつ加熱により加工歪みを与えないで小さな曲げ半径により曲げることができる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−292718号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
ところが、特許文献1に記載された本発明者らが提案した光導波路では、次のような問題がある。通常の光ファイバよりもコアとクラッドの屈折率差が大きいために、曲げによる光伝送損失は少ないものの、そのモードフィールド径(以下MFDと略す)が小さくなるといった現象が生じていた。
【0021】
このMFDが小さくなることとは、光が大きな屈折率差によってコア内に強く閉じ込められることにより、曲げによる光伝送損失は小さくできるが、同時にその閉じ込めの強さにより光電界の広がりが小さい、すなわちMFDが小さいという現象である。このMFDが小さいことは、低損失な光ファイバ同士の接続を行うためには、非常に高精度な光ファイバ同士の位置合わせが必要となることを意味している。
【0022】
例えば、通常の光ファイバの代表的なMFDである10μmの場合には、0.5dBの接続損失を許容した時に、接続の位置ずれ許容量は約1.7μmである。しかし、MFDが5μmの場合には、この許容量は約0.85μmとなる。
このため、光ファイバのコアとクラッドの屈折率差を大きくして曲げに強くして、微小な曲げでも低損失に曲げられることは達成できたが、光ファイバ同士をコネクタなどで接続する場合には、コネクタの接続ロスが通常の光ファイバを用いるよりも大きくなり、この接続による光伝送ロスを低減するためには、通常の精度よりもより高精度に製作されたコネクタが必要になる。
【0023】
また、この高屈折率差ファイバでは端面での光の反射、すなわち反射減衰量が、通常の光ファイバの処理で得られる値より小さく、反射光によってシステムが不安定になる可能性があった。これは、屈折率差が大きいことで、光の軸ずれによる損失は大きくなるが、角度のずれによる接続損失が低減されるので、コネクタ端面を通常光ファイバの反射減衰量対策で行われる8度研磨などの斜め研磨でも、反射減衰量が十分に取れないためである。例えば、8度の斜め研磨によりMFDが10μmの通常の光ファイバでは、ファイバ端面での反射率を4%として約−50dBの反射減衰量が得られても、MFDが5μmの高屈折率差の光ファイバでは同じく8度の斜め研磨を施しても約−23dBの反射減衰量しか得られない。
【0024】
そこで、本発明は上記課題を解消するために、小さな半径で加熱によって曲げることで曲げ部分を形成してもその曲げによる光伝送の損失が小さく、曲げ部分以外ではモードフィールド径が大きく、高精度な位置合わせが無くても接続損失を低減でき、小さな角度の端面斜め研磨処理で大きな反射減衰量を得ることができる光導波路、光導波路モジュールおよび光導波路の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
従来の課題を解決するために本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、光導波路の所望部分を所定の温度に加熱すると光導波路の部分が加工歪開放状態になり、その状態で所定の曲げ半径で曲げ加工を施すと、歪の無い状態で曲げることを見出し、この歪みの開放はファイバの屈折率差にも影響を及ぼすことを見出し、この現象を利用して、加熱による機械的な曲げ部分の形成を実現すると同時に、その加熱対象部分の屈折率差を変化させることで、曲げによる光伝送の損失も小さくすることとした。しかも、この屈折率変化と同時にコア径も変化させて、加熱対象部分での屈折率変化とコア径変化によるパラメータ変化で、曲げ部分における光伝送の効率を確保してシングルモード光ファイバ条件を維持することとした。
【0026】
このため上記課題を解消するために、本発明の光導波路は、コアと前記コアを被覆するクラッドを有する光導波路の加熱対象部分が加熱されて加工歪開放状態に移行し、前記加工歪開放状態に移行した前記加熱対象部分を所定の曲げ半径で曲線状に曲げることで曲げ部分を形成しており、前記曲げ部分は前記加工歪状態に移行されている前記光導波路であって、
前記曲げ部分の前記コアと前記クラッドの屈折率差と物理的な大きさが、前記加熱対象部分が加熱されたことにより変化していることを特徴とする。
本発明の光導波路は、好ましくは前記光導波路の前記曲げ部分の前記コアと前記クラッドの屈折率差が、加熱前よりも大きくなり、前記コアの直径が小さくなることを特徴とする。
【0027】
本発明の光導波路は、好ましくは前記光導波路の加熱前の前記コアと前記クラッドの屈折率差が、0.2%以上2%以下のシングルモード光ファイバとして機能し、前記光導波路の前記加熱対象部分を加熱することで、前記加熱対象部分の前記コアと前記クラッドの屈折率差が、加熱前よりも大きくなり、前記コアの直径が小さくなることを特徴とする。
【0028】
本発明の光導波路は、好ましくは前記光導波路の前記曲げ部分の前記コアと前記クラッドの屈折率差が、加熱前よりも0.2%以上2%以下で大きくなることで、前記曲げ部分の前記コアと前記クラッドの屈折率差が、0.4%以上4%以下に変化し、前記コアの直径が前記屈折率差の変化でシングルモード条件を維持する大きさに小さく変化することを特徴とする。
【0029】
本発明の光導波路は、好ましくは前記光導波路の前記曲げ半径は、5.0mm以下であることを特徴とする。
本発明の光導波路モジュールは、光導波路が複数本アレイ状に並べられており、複数本の前記光導波路の少なくとも一部が位置決め機構を有する固定部材により固定されていることを特徴とする。
本発明の光導波路モジュールは、好ましくは光導波路が、1枚のシート上に配線された状態で固定されていることを特徴とする。
【0030】
本発明の光導波路モジュールは、好ましくは光導波路が、少なくとも2枚のシート間に配線された状態で固定されていることを特徴とする光導波路モジュール。
本発明の光導波路モジュールは、好ましくは複数本の前記光導波路を有しており、複数本の前記光導波路が配線された状態で固定されていることを特徴とする。
本発明の光導波路モジュールは、好ましくは前記シートの材質が可撓性を有する材質であることを特徴とする。
【0031】
本発明の光導波路の製造方法は、コアと前記コアを被覆するクラッドを有する光導波路の加熱対象部分を加熱し、
前記光導波路の前記加熱対象部分を加工歪開放状態に移行し、
前記加工歪開放状態に移行した前記加熱対象部分を所定の曲げ半径で曲線状に曲げることで曲げ部分を形成し、
前記曲げ部分は前記加工歪状態に移行し、
前記曲げ部分の前記コアと前記クラッドの屈折率差と物理的な大きさが、前記加熱対象部分が加熱されたことにより変化していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、小さな半径で加熱によって曲げることで曲げ部分を形成してもその曲げによる光伝送の損失が小さく、曲げ部分以外ではモードフィールド径が大きく、高精度な位置合わせが無くても接続損失を低減でき、小さな角度の端面斜め研磨処理で大きな反射減衰量を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の光導波路の好ましい実施形態を示す図である。図1では、光導波路1とこの光導波路1の曲げ部分製造装置200を示している。
図1(A)に示す光導波路1は例えば石英系の光ファイバであり、全長にわたって一定のコアとクラッドの屈折率差Δ1を有している。光導波路1はコア2と、このコア2を被覆するクラッド3を有するシングルモード光ファイバである。光導波路1のクラッド3の外径Dは、例えば125μmである。
【0034】
図1(A)に示す直線状の光導波路1は、図1に示す曲げ部分製造装置200を用いて図1(B)に示すように、曲げ部分10を加熱により形成する。図1(B)に例示するように、曲げ部分製造装置200は、2つの電極4,5と制御部6を有しており、制御部6が電極4,5に通電して電極4,5の間にアーク放電7を形成する。このアーク放電7は、直線状の光導波路1の加熱対象部分9に当てることで、図1(B)に示すように曲げ部分10を形成する。
【0035】
直線状の光導波路1の所望の加熱対象部分9がアーク放電7により加熱されると、加熱対象部分9は屈曲点以上で軟化点以下の範囲の温度で加熱されて、光導波路1の加熱対象部分9は加工歪開放状態に移行する。そして、加工歪開放状態に移行した加熱対象部分9が、図2に示す所定の曲げ半径Rで曲線状に曲げられて曲げ部分10が形成され、この曲げ部分10は加工歪状態に移行する。曲げ部分10は加工歪状態になると、この曲げ部分10のコア2とクラッド3の屈折率差と物理的な大きさが、加熱対象部分9が加熱されたことにより変化している。この場合に、光導波路1の曲げ部分10のコア2とクラッド3の屈折率差が、加熱前よりも加熱後では大きくなり、コア2の直径Sが加熱前に比べて加熱後では小さくなっている。
【0036】
この際に、この光導波路1の曲げ部分10は高温状態で曲げられ、曲げられた後に常温環境に移されるので、曲げることによる歪はない。すなわち、光導波路1の曲げ部分10は、曲げた状態が初期状態となるように加工したものである。光導波路1は加工後に加工された状態から変形すると歪が発生して破断するが、曲げ部分10が加工された状態を使用状態とすることで、使用時には歪が発生せず破断しないのである。ただし、この曲げ部分10を、直線状に戻す場合には歪が発生して破断に至る。結局は、初期の歪開放状態が直線状態であるか、曲げ状態であるかを選択することで、所望の形状の光導波路1を作成する場合の歪による破断を回避することができる。
【0037】
本発明の実施形態の光導波路1では、微小な空間で光導波の方向を確実にかつ簡単に変換することが目的であるので、変換するための状態を初期の歪開放状態となるように予め曲げ部分10を加工しておくことで光導波路1の破断を回避している。本発明の実施形態の光導波路1は、小さな曲げ部分10を用いて、曲げ損失を小さくして光の導波方向を90度変換することができる
光導波路1の曲げ半径Rは、好ましくは5.0mm以下である。このように曲げ半径Rを5.0mm以下とすることで、光導波路1は配置の制限がある屋内や狭い空間においても簡単に配置することができる。
【0038】
光導波路1の直径(外径)Dが、好ましくは50μm以上であり、曲げ半径Rは、好ましくは5.0mm以下である。すなわち、直径Dが50μmの光導波路1に対して、単純に曲げ半径Rを50μmで曲げることは物理的に不可能である。また、直径Dが50μm未満の光導波路を取り扱うのも容易ではないことから、光導波路1の最小の直径を例えば50μmに規定することで取り扱いやすさを確保して、曲げ半径Rの数値としては、使用する光導波路1の最小直径の10倍とすることで、物理的に曲げを実現させる構造としている。
【0039】
また、光導波路1の直径Dが好ましい一例として125μmであるのは、現在一般に使用されている代表的な光導波路と互換できる外径であるので、この直径Dを用いることで、光導波路の適用範囲を大幅に広げられる。更に曲げ半径Rを5.0mm以下とすることで、本発明の光導波路の製造方法を採用する利点が生かされる。すなわち、曲げ半径Rが5.0mmを超えた場合では細径の光ファイバを用いた場合に、曲げ半径Rによっては破断歪に至らず、本発明の実施形態における加工歪開放加工を必要としない場合があるが、曲げ半径Rを5.0mm以下とすると、取り扱いが困難とならない最小の直径Dを50μmとした光導波路1でも、加工歪開放加工が必要となる。
【0040】
好ましくは、光導波路1は、光導波路1の加熱前のコア2とクラッド3の屈折率差が、0.2%以上2%以下のシングルモード光ファイバとして機能して、光導波路1の加熱対象部分9を加熱することで、加熱対象部分9のコア2とクラッド3の屈折率差が、加熱前よりも加熱後において大きくなり、コア2の直径Sが加熱前よりも加熱後において小さくなる。ここで、光導波路1の加熱前のコア2とクラッド3の屈折率差が、0.2%未満であると、光導波路としての光閉じ込めが弱く、少しの曲げや側圧によって光が漏れて損失を発生しやすいので好ましくない。
また、光導波路1の加熱前のコア2とクラッド3の屈折率差が、2%を超えると、光導波路としての光閉じ込めは強く、曲げや側圧に強くなるが、モードフィールド径が小さくなるので、例えばコネクタ接続等の位置決めが必要な結合において、高精度な位置決めが必要となり、精度が悪いと大きな接続損失を発生してしまうので好ましくない。
【0041】
光導波路1の曲げ部分10のコア2とクラッド3の屈折率差が、加熱前よりも加熱後において0.2%以上2%以下で大きくなることで、加熱後の曲げ部分10のコア2とクラッド3の屈折率差が、0.4%以上4%以下に変化し、コア2の直径Sが屈折率差の変化でシングルモード条件を維持する大きさに小さく変化する。ここで、曲げ部分10のコア2とクラッド3の屈折率差が、0.4%未満であると、R=5.0mm以下での曲げ半径に対応が困難となり、大きな曲げ損失を発生するので好ましくない。
また、曲げ部分10のコア2とクラッド3の屈折率差が、4%を超えると、シングルモード条件を維持する為に、コア径を数μm以下という微細な径にする必要が生じ、単に4%を越すと、マルチモード条件となり、やはり大きな曲げ損失やモード不整合による損失を発生させる原因となるので好ましくない。
【0042】
一例として、この加工歪開放状態に移行した加熱対象部分9の屈折率は、加熱前には0.7%であったが、加熱により1.7%に変化している。また、コアの直径Sは加熱前では約7μmであったが、加熱後には約4μmに縮小している。
図3には、加熱対象部分9を加熱する前と加熱後におけるこの屈折率変化の様子と、コア2の直径Sの様子を示している。図3では、縦軸が加熱対象物9の屈折率の変化分Δnを示し、横軸がコア2の直径Sを示す。
【0043】
また、この曲げ部分10および曲げ部分10を除く光導波路1の残りの部分ではシングルモード条件が維持されており、光導波路1は、加熱対象部分9に相当する曲げ部分10とこの曲げ部分10を除いた非加熱対象部分と合わせて、シングルモードによる光伝送が可能となっている。
なお、この実施例では、曲げ半径Rは5.0mmよりも大きい例えば約1.0mmであり、曲げに伴う光伝送損失は約0.2dBである。本発明の比較例として、もし、加熱対象部分9の屈折率差とコア2の直径Sが、加熱対象部分9の加熱によっても変化しない場合には、この曲げ部分10の曲げによる光伝送損失は数10dB以上であり、光伝送線路として使用不可能である。
【0044】
また、反射減衰量は、8度研磨の処理を光導波路1の端面に施した場合には、約−37dBである。もし、加熱対象部分9以外の光導波路1の非加熱部分も全て加熱後と同じ屈折率差とコア2の直径Sを有していると、8度研磨の処理を施しても反射減衰量は約−24dBしか得られない。
なお、この実施形態では、コア2とクラッド3の屈折率分布形状はステップインデックス型であり、コア2は何もドープしない純SiO2で作られており、クラッド3にはフッ素をドープしてコア2よりも屈折率を下げている。なお、このフッ素ドープ領域は、直径が約100μmの部分であり、その外側は直径125μmまで純SiO2で作られており、直径100μmの部分までがクラッド2として機能する。
【0045】
本発明の別の実施形態の光導波路1では、光導波路1の直径Dが80μmであるものであり、内部の屈折率差や加熱後の屈折率差の変化とコア径の変化とも同等のものである。ただし、直径Dが125μmの光導波路1では、コア2より外側は直径100μmまでフッ素ドープ領域でその外側は純SiO2であったが、直径Dが80μmの光導波路1では,コア2より外側は外径80μmまで全てフッ素ドープのクラッド3となっている。この直径Dが80μmの光導波路1では、直径Dが125μmの光導波路1に比べて外径が細いために、曲げに対する機械的歪みが小さく、折れにくいという特徴がある。
【0046】
図4と図5は、本発明の光導波路の実施形態を示している。
これらの光導波路は互いに異なる屈折率差を有する複数種類の光導波路を接続することで形成されているので、光導波路モジュールとも言うことができる。
図4と図5の光導波路(光導波路モジュール70)1は、図2に示す光導波路1とは異なり、互いに異なる屈折率差を有する複数種類の光導波路1が融着接続部50により直列に接続された例である。
【0047】
図4の光導波路モジュール70は、1つの第1の光導波路1−1と1つの第2の光導波路1−2を直列に接続して構成されている。第1の光導波路1−1は例えばコアとクラッドの屈折率差Δ1が0.8%以上3.5%以下の範囲内、好ましくは屈折率差Δ1が1.0%以上3.0%以下の範囲内である。第2の光導波路1−2は例えばコアとクラッドの屈折率差Δ2が0.2%以上である。第1の光導波路1−1と第2の光導波路1−2とは、融着接続部分50を用いて融着して接続している。
融着接続部分50を加熱して、コアとクラッドの屈折率差Δ1,Δ2のミスマッチと、モードフィールド径のミスマッチを低減して、光導波路1−1の加熱対象部分9を加熱して曲げ部分10が形成されている。
【0048】
図4の光導波路モジュール70では、高い屈折率差の光導波路1−1,1−2を使用するため、そのコアやクラッドの等価屈折率は一般の光導波路のコアやクラッドの等価屈折率とは異なる。また、屈折率差Δも異なるために、一般の光導波路のモードフィールド径と、本発明の光導波方向変換部に使用する光導波路のモードフィールド径との間に差がある。屈折率の異なるもの同士を接触させて、その部分に光信号を通過させると、屈折率の境界部分で光が反射される。これは、光通信においては避けなければならない現象である。一般にこの反射減衰量として50dB以上が要求される。
【0049】
また、モードフィールド径が異なるもの同士を接続した場合、接続部分では径差による接続損失が発生する。一般の光導波路のモードフィールド径は使用波長によっても異なるが、約10μm程度であり、光導波方向変換部である曲げ部分10に使用する光導波路1−1のモードフィールド径は約3μmである。この径差でそのまま接続すると、接続損失は5dB以上となる。また、外部の機器やレーザ発生装置との接続を容易にするためには、一般の光ファイバと外部機器を接続し、その後、光導波路モジュールに接続することが、有効である。そこで、これらの反射減衰と接続損失を低減する為、コアとクラッドの屈折率差Δ1が0.8%以上3.5%以下の範囲内、好ましくは1.0%以上3.0%以下の範囲内である第1の光導波路1−1と、コアとクラッドの屈折率差Δ2が0.2%以上である第2の光導波路1−2とを融着接続して、融着接続部分50を加熱してコアとクラッドの屈折率差Δのミスマッチとモードフィールド径のミスマッチを低減させる。これにより、反射減衰量を大きくし、接続損失を抑制している。この方法によって、反射減衰量は50dB以上となり、接続損失は約0.2dBとなった。
【0050】
図4の実施形態では、直径Dが80μm、曲げ半径Rが1mmで90度曲げるのに、屈折率差Δ1を2.5%で、使用波長による光導波モードが単一モードとなる光ファイバを用いて、その片側に直径Dが80μm、屈折率差Δ2を0.35%で、使用波長による光導波モードが単一モードとなる光ファイバとを融着接続し、融着接続部分50をガスバーナーで加熱して、屈折率差Δのミスマッチとモードフィールド径のミスマッチを低滅させた。使用波長は1.3μmである。測定結果では反射減衰量が50dB以上、接続損失は0.2dBであった。
【0051】
図5の別の実施形態では、光導波路モジュール71は、1つの第1の光導波路1−3と2つの第2の光導波路1−4を直列に接続して構成されている。第1の光導波路1−3は例えばコアとクラッドの屈折率差Δ1が0.8%以上3.5%以下の範囲内、好ましくは1.0%以上3.0%以下の範囲内である。第2の光導波路1−4は例えばコアとクラッドの屈折率差Δ2が0.2%以上である。第1の光導波路1−3と第2の光導波路1−4とは、融着接続し、融着接続部分50を加熱してコアとクラッドの屈折率差Δのミスマッチと、モードフィールド径のミスマッチを低減し、光導波路の加熱対象部分9を加熱して曲げ部分10を形成している。
【0052】
図4の光導波路モジュール70では、光導波方向変換部の片側にだけ一般の光導波路の特性と互換な光導波路を融着接続して、融着接続部分50を加熱することで屈折率差Δ1,Δ2のミスマッチとモードフィールド径のミスマッチを低減させている。これに対して、図5の実施形態では、第1の光導波路1−3の両端部には一般の光導波路の特性と互換な第2の光導波路1−4を融着接続して、2カ所の融着接続部分50を加熱することで屈折率差Δ1,Δ2のミスマッチとモードフィールド径のミスマッチを低減させ
る。これにより、光導波方向変換部のどちら側にも、外部機器との接続が容易となる。
【0053】
図5の実施形態では直径Dが80μm、曲げ半径Rが1mmで90度曲げるのに、屈折率差Δ1を2.5%、使用波長による光導波モードが単一モードとなる光ファイバを用いて、その両側に直径Dが80μm、屈折率差Δ2が0.35%、使用波長による光導波モードが単一モードとなる光ファイバを融着接続し、融着接続部分50をガスバーナーで加熱して、屈折率差Δ1,Δ2のミスマッチとモードフィールド径のミスマッチを低減させた。使用波長は1.3μmである。測定結果では反射減衰量が50dB以上、接続損失は0.4dB程度であった。
【0054】
図6と図7は、本発明の光導波路モジュールの好ましい実施形態を示す図である。
図6と図7の光導波路モジュール100は、複数本の光導波路1をアレイ化して固定部材120により固定したものである。これにより、複数本の光導波路1は、一括して光導波方向を90度変換が行える。光導波路モジュール100の入出力部分が、一般の光導波路と特性が互換の光導波路となっていることで、外部機器との特性の良い接続が可能となる。
この実施形態では、例えば直径が125μmであり、屈折率差Δ1が2.5%の光導波路1が平行になるように、固定手段120は位置決め機構130を有している。この位置決め機構130は複数の位置決め穴131から構成されている。各光導波路1では、入力側端部から出力側端部に対して90度の光導波方向の変換が行われる。固定手段120は、直方体形状のブロック体であり、穴150が形成されている。各穴150には、他の部材に対して機械的に固定するためのピン140が挿入されるようになっている。各光導波路1の研磨端面である入力側端面と出力側端面の両方ともが、90度面に対し4度ずつ傾けて研磨されている。
【0055】
図8は、本発明の光導波路モジュールの別の好ましい実施形態を示す。
光導波路モジュール300を作製するに際し、一例として2本の光導波路1と2枚のシート350を用いている。2本の光導波路1は2枚のシート350内に配置されている。2枚のシート350内に配置される各光導波路1のコアとクラッドの屈折率差Δ1を例えば0.8%以上3.5%以下の範囲内とした。
図8の実施形態では、ガラス部分の外径125μm、被覆外径250μmの一般的な外径の光ファイバを使用しているが、コアとクラッドの屈折率差Δ1は2.5%と一般的な単一モード光ファイバの屈折率差Δ1である0.3%程度とは異なる、非常に大きな屈折率差Δ1の光導波路を使用している。
【0056】
機械的に小さく曲げられるようにするには、ガラス部分の直径Dをもっと小さくすれば良いが、直径Dを小さくしすぎると、コアに閉じ込められた光はクラッドが薄すぎるために逃げ出してしまい、光伝送損失を発生する。そこで、クラッドの直径すなわち光ファイバの外径はモードフィールド径の少なくとも10倍以上とすることで、この伝送損失を抑えることが可能となる。
【0057】
図9の実施形態では、2枚のシート350を用いるのではなく、1枚のシート350を用いて光導波路1を固定している。
図8と図9に示すシート350の材質は、可撓性を有する材質であり、この材質としては、ポリイミド、ポリエチレンテレフタラート、低密度または高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン6、ナイロン66、エチレン−テトラフルオルエチレン共重合体、ポリ4−メチルペンテン、ポリ塩化ビニリデン、可塑化ポリ塩化ビニル、ポリエーテルエステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、軟質ポリウレタンなどのフィルムが用いられる。
【0058】
図10は、本発明のさらに別の好ましい光導波路モジュール400を示している。
図10では、複数本の光導波路1が、建屋800の部屋の角部801において、固定手段120を用いて壁部802,803に沿って配線されている例を示している。このように部屋の角部801において光導波路1を配線する場合には、光導波路1の最小曲げ半径としては数cmを確保する必要があったが、本発明の実施形態の光導波路モジュール400を用いることで、光導波路モジュール400の固定手段100の寸法は1cm以下の大きさですみ、角部801における光伝送用の配線が90度曲げてできるようになった。
【0059】
図11は、本発明のさらに別の好ましい光導波路モジュール300を示している。
図11電気光融合基板とも言い、2枚の電気回路基板501,501の間には、例えば図8に示すような光導波路モジュール300がサンドイッチされた構造である。光導波路モジュール300は、電気回路基板501,501を光伝送可能にしている。
本発明の実施形態の光導波路1では、コア2とコア2を被覆するクラッド3を有する光導波路1の加熱対象部分9が加熱されて加工歪開放状態に移行し、加工歪開放状態に移行した加熱対象部分9を所定の曲げ半径で曲線状に曲げることで曲げ部分10を形成しており、曲げ部分10は加工歪状態に移行されている。曲げ部分10のコア2とクラッド3の屈折率差と物理的な大きさが、加熱対象部分9が加熱されたことにより変化している。
【0060】
本発明の実施形態では、光導波路1の曲げ部分のコア2とクラッド3の屈折率差が、加熱前よりも大きくなり、コア2の直径が小さくなる。これにより、小さな曲げ半径Rで加熱によって曲げることで曲げ部分10を形成しても、その曲げ部分10による光伝送の損失が小さく、曲げ部分10以外ではモードフィールド径が大きく、高精度な位置合わせが無くても接続損失を低減でき、小さな角度の端面斜め研磨処理で大きな反射減衰量を得ることができる
【0061】
本発明の実施形態では、光導波路1の加熱前のコア2とクラッド3の屈折率差が、0.2%以上2%以下のシングルモード光ファイバとして機能し、光導波路の前記加熱対象部分を加熱することで、加熱対象部分のコア2とクラッド3の屈折率差が、加熱前よりも大きくなり、コア2の直径が小さくなる。これにより、光導波路1は、曲げによる光伝送の損失が小さく、曲げ部分以外ではモードフィールド径が大きく、高精度な位置合わせが無くても接続損失を低減でき、小さな角度の端面斜め研磨処理で大きな反射減衰量を得ることができるシングルモード光ファイバとして用いることができる。
【0062】
本発明の実施形態では、光導波路1の曲げ部分10のコア2とクラッド3の屈折率差が、加熱前よりも0.2%以上2%以下で大きくなることで、曲げ部分10のコア2とクラッド3の屈折率差が、0.4%以上4%以下に変化し、コア2の直径が屈折率差の変化でシングルモード条件を維持する大きさに小さく変化する。これにより、曲げによる光伝送の損失が小さく、曲げ部分以外ではモードフィールド径が大きく、高精度な位置合わせが無くても接続損失を低減でき、小さな角度の端面斜め研磨処理で大きな反射減衰量を確実に得ることができる
【0063】
本発明の実施形態では、光導波路の曲げ半径は、5.0mm以下であることを特徴とする。これにより、小さな空間や角部であっても光導波路が配置できる。
本発明の実施形態の光導波路モジュールでは、光導波路1が複数本アレイ状に並べられており、複数本の光導波路1の少なくとも一部が位置決め機構を有する固定部材120により固定されている。これにより、小さな半径で加熱によって曲げることで曲げ部分を形成してもその曲げによる光伝送の損失が小さく、曲げ部分以外ではモードフィールド径が大きく、高精度な位置合わせが無くても接続損失を低減でき、小さな角度の端面斜め研磨処理で大きな反射減衰量を得ることができる
【0064】
本発明の実施形態の光導波路モジュールでは、光導波路1が、1枚のシート350上に配線された状態で固定されている。これにより、光導波路1は1枚のシートを用いて確実に光導波路モジュールを作ることができる。
本発明の実施形態の光導波路モジュールでは、光導波路1が、少なくとも2枚のシート間に配線された状態で固定されている。これにより、光導波路1は2枚のシートを用いて確実に光導波路モジュールを作ることができる。
【0065】
本発明の実施形態の光導波路モジュールでは、複数本の光導波路を有しており、複数本の前記光導波路が配線された状態で固定されている。これにより、複数の光伝送路を確実に得ることができる。
本発明の実施形態の光導波路モジュールでは、シート350の材質が可撓性を有する材質である。これにより、光導波路モジュールの可撓性が確保でき、光導波路モジュールを設定する部位の状態に応じて光導波路モジュール確実に配置できる。
【0066】
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されず種々の変形例を採用できる。
例えば、図1の曲げ部分の製造装置200は、光導波路1において曲げ部分10の形成を行う際に、光導波路1の所望の加熱対象部分9を加熱するために、アーク放電による加熱を行っている。しかし、曲げ部分の製造装置200としては、これに限らずバーナーによる加熱、炉による加熱等の各種の手段を採用できる。
図示例の光導波路1は、光の変更方向が90度であるが、90度に限らず任意の角度を選択できる。
図示の実施形態では、屈折率差は等価屈折率差とも言う。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の光導波路の好ましい実施形態を示す斜視図である。
【図2】曲げ部分を有する光導波路の形状例を示す図である。
【図3】加熱対象部分を加熱する前と加熱後におけるこの屈折率変化の様子と、コアの直径の変化の様子を示す図である。
【図4】本発明の光導波路モジュールの好ましい実施形態を示す図である。
【図5】本発明の光導波路モジュールの好ましい実施形態を示す図である。
【図6】本発明の光導波路モジュールの好ましい実施形態を示す図である。
【図7】本発明の光導波路モジュールの好ましい実施形態を示す図である。
【図8】本発明の光導波路モジュールの好ましい実施形態を示す図である。
【図9】本発明の光導波路モジュールの好ましい実施形態を示す図である。
【図10】本発明の光導波路モジュールの好ましい実施形態を示す図である。
【図11】本発明の光導波路モジュールの好ましい実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0068】
1 光導波路
4,5 電極
6 制御部
9 加熱対象部分
10 曲げ部分
70,71 光導波路モジュール
100 光導波路モジュール
200 光導波路1の曲げ部分製造装置200
300 光導波路モジュール
301 光導波路モジュール
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路、光導波路モジュールおよび光導波路の製造方法に関し、特に光導波路の小さな曲げ部分により曲げ損失を小さくして光の導波方向を変換することができる光導波路、光導波路モジュールおよび光導波路の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電気回路の動作速度は光伝送回路の動作速度に近づきつつあることから、電気回路の高速動作の一部を光導波路で補うために、電気回路と光伝送路を融合させることが行われている。光導波路の一例としては光ファイバが用いられている。
【0003】
具体的には、VCSEL(垂直共振器型表面発光レーザー)が電気回路基板に実装され、VCSELから出射された光信号が光導波路に入射して伝播され、電気回路基板に実装されたPD(フォトダイオード)で受光して信号伝送を行う。この光導波路が電気回路基板自体に埋め込まれたり、光導波路が複数の電気回路基板間に配置されて電気コードの代わりに使用されることが検討されている。光導波路としては、例えば有機導波路シート(代表的な導波路シートとしては、ポリイミドの導波路シートがある。)や、光ファイバを有する光ファイバシートが提案されている。
【0004】
VCSELは表面発光レーザであり、そのレーザ光の出射方向は実装された電気回路基板に対して垂直方向である。VCSELの実装方向を電気回路基板に対して垂直にすれば、レーザ光出射方向は電気回路基板に対して平行方向になるが、このようなレーザの実装はVCSELの高密度多重実装の利点を生かせないので、通常VCSELの実装方向を垂直にはしない。
【0005】
電気回路基板に埋め込まれた光導波路は、電気回路基板と平行方向に光を導波するので、VCSELのレーザ光を、これらの光導波路に結合されるようにするには、90度の光導波方向の変換が必要となる。
このような、90度の光導波方向の変換方法として、光ファイバの端面を45度に研磨し、研磨面に金属蒸着などを施してミラーとし、90度の光導波方向の変換を行う方法や、45度の角度を持ったミラーで光導波方向の変換を行う方法が検討されている。
【0006】
前述のような90度の光導波方向の変換の必要性とは適用領域が異なるが、例えばFTTH(光ファイバによる家庭向けのデータ通信サービス:Fiber to the home)では、ユーザー宅の建屋内に光ファイバを配線するが、一般の光ファイバでは機械的特性及び光学的特性の問題から、数cm以下の曲げ半径で光ファイバを曲げることができない。このため、部屋の角部分や屋外から屋内に光ファイバを取り込んだ穴部分で光ファイバを大きな曲げ半径で緩やかに曲げるための空間を確保する必要があり、家具の配置の自由度や屋内の景観を損ねる。これに対して、近年最小曲げ半径が15mmでも機械的、光学的に曲げることが可能な光ファイバが開発されている。
【0007】
更に、超小型で光導波方向を変換する応用として、光ファイバの所望部分を非常に微細な径に細くして、曲げる方法が提案され商品化されている。この方法では細くされた部分の光ファイバ径は数μm〜10μm程度で、この細さでは光ファイバを例えば曲げ半径1mmで曲げたとしても、その曲げによる曲げ歪は1%以下となり機械的に十分曲げることが可能になる。また、光学的にはこの細い部分のファイバだけで光を閉じ込める構造とはならないが、この細い光ファイバ部分とその外側の環境、すなわち空気との組み合わせにより、コアが光ファイバ、クラッドが環境(空気)という関係になり、等価的に数十%もの超高屈折率差の導波路として機能し、微小な曲げ半径でも光の損失無く曲げることが可能となる。
【0008】
上述した光ファイバや光導波路の端面を45度に研磨し、研磨面に金属蒸着などを施してミラーとし、90度の変換を行う方法では、光ファイバや導波路を45度に精度良く研磨する作業が容易でなく、金属蒸着などの更なる工程も大掛かりな製造設備を必要とする。実装時にも45度面を電気回路基板に対して真上または真下方向に捩れることなく実装する必要があるが、このような実装は容易とは言い難い。また、この方式では光ファイバのコアや導波路のコアから90度方向に変換された後は、光導波路の構造ではない媒体中を光が導波するため、ビーム径が広がり良好な結合を得ることは難しい。
【0009】
また、45度の角度を持ったミラーで変換を行う方法では、小型化のために微小なミラーが必要となり、この微小なミラーとの位置合わせや、ミラー部分までに空間中を光ビームが伝播することによるビーム広がりを抑えるためには、レンズ部品などが追加されなければならず、部品点数が増え、それらの位置合わせは容易ではない。
【0010】
空間伝播を伴う系では、光導波路や光ファイバからの空間への光出射端面は反射減衰量を大きく取るために、無反射コーティングや斜め研磨が必要となる。しかし、無反射コーティングを行うには大掛かりな装置を必要とし、斜め研磨は光ビームの放射方向が光導波路中または光ファイバ中での光軸からずれるので、45度ミラーとの位置合わせが更に難しくなる場合がある。
【0011】
次に、光ファイバの最小曲げ半径が15mmでも、機械的、光学的に曲げることが可能な光ファイバは屋外では有効であるが、屋内や狭い空間では許容される曲げ半径はさらに小さい方がより良い。光ファイバの曲げ部分の曲げ半径を15mmよりも小さくしたい場合には、このような光ファイバは使用できない。
【0012】
上述したよ
うに光ファイバの所望部分を非常に微細な径に細くして曲げる方法では、数μm程度の外径という非常に細い径とするために、取り扱い時に折れてしまうなどの問題がある。また、この方式では曲げの部分の光損失低減は、外部環境がクラッドとして働くことが基本であり、外部環境変化に敏感である。すなわち、環境湿度や温度変動によりこの微小径部分に水分の結露が起こると、微小曲げ部分での光閉じ込めは機能しなくなる。
【0013】
微小曲げ部分での光閉じ込めの機能を維持するには、この微小径部分は空気などの気体中に曝された状態で、気密封止を行う必要がある。すなわち、空洞内に微小径部分を配置しての気密封止が必要となるが、これは容易ではない。また、微小径部分が小さくても、それを気密封止し、保護する構造部分は微小径部分よりも非常に大きな構造とならざるを得ない。
【0014】
しかも、光ファイバや光導波路として、有機光導波路シートや光ファイバシートが提案されているが、まず、有機光導波路シートの現状の技術レベルでの光損失は約0.2dB/cmと非常に大きく、長さ15cm伝送しただけで光パワーが3dB損失、すなわち半分以下となってしまう。光電気融合基板からバックプレーン、更に別の光電気融合基板へ光信号を伝送する場合を考えると、光信号は数十cmから1m程度の距離を伝送すると考えられ、この場合には、コネクタ部分の接続損失などを無視して、光導波路の伝送損失だけでも、最大20dB程度の光損失が発生することになる。
【0015】
一方、光ファイバシートは、2枚の可撓性プラスチックフィルム間に複数本の光ファイバを配線したものであり、特性は光ファイバで決定される。有機光導波路の伝送損失が0.2dB/cmであるのに比較して、石英系の光ファイバの伝送損失は約0.2dB/kmという遥かな小ささであり、光電気回路融合基板内での伝送といった、最大でも数mという距離では伝送損失は無視できる小ささである。
【0016】
プラスチック系の光ファイバの場合には、数dB〜数十dB/kmという伝送損失増加があるが、例えば500dB/kmの損失でも、0.5dB/m程度と有機導波路に比べれば1/40程度の低損失であり、最大でも数mという距離ではやはり伝送損失は小さく、実用上問題となることはない。
【0017】
しかし、この光ファイバシートは、複数本の光ファイバを所望の場所に光を配線するため、配線した光ファイバが交差するが、この交差の程度によって光損失が発生する。この交差による光損失を回避するには、配線形状を工夫する、交差部分に緩衝材を入れるなどが考えられるが、このような方策は歩留まりを悪くし、さらにコストアップに繋がる。また、シート上での配線には光ファイバの光学的および機械的強度から曲げ半径を小さくすることができないという問題がある。
【0018】
一般には、石英系の光ファイバは、曲げ半径15mm以下では光損失増大、機械的破壊が懸念されるので、それ以上の半径で配線する必要があり、光ファイバシートを小さくすることが困難であり、配線形状も制限されてしまう。
【0019】
そこで、本発明者らは、コアとクラッドを有する光導波路の所望部分を加熱して、所望部分を加工歪開放状態に移行させて、この加工歪開放状態に移行した所望部分を所定の曲げ半径で曲線状に曲げて、加工歪状態に移行させることを提案している。これにより、コアとクラッドの屈折率差を通常使用される光ファイバよりも大きくして、かつ加熱により加工歪みを与えないで小さな曲げ半径により曲げることができる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−292718号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
ところが、特許文献1に記載された本発明者らが提案した光導波路では、次のような問題がある。通常の光ファイバよりもコアとクラッドの屈折率差が大きいために、曲げによる光伝送損失は少ないものの、そのモードフィールド径(以下MFDと略す)が小さくなるといった現象が生じていた。
【0021】
このMFDが小さくなることとは、光が大きな屈折率差によってコア内に強く閉じ込められることにより、曲げによる光伝送損失は小さくできるが、同時にその閉じ込めの強さにより光電界の広がりが小さい、すなわちMFDが小さいという現象である。このMFDが小さいことは、低損失な光ファイバ同士の接続を行うためには、非常に高精度な光ファイバ同士の位置合わせが必要となることを意味している。
【0022】
例えば、通常の光ファイバの代表的なMFDである10μmの場合には、0.5dBの接続損失を許容した時に、接続の位置ずれ許容量は約1.7μmである。しかし、MFDが5μmの場合には、この許容量は約0.85μmとなる。
このため、光ファイバのコアとクラッドの屈折率差を大きくして曲げに強くして、微小な曲げでも低損失に曲げられることは達成できたが、光ファイバ同士をコネクタなどで接続する場合には、コネクタの接続ロスが通常の光ファイバを用いるよりも大きくなり、この接続による光伝送ロスを低減するためには、通常の精度よりもより高精度に製作されたコネクタが必要になる。
【0023】
また、この高屈折率差ファイバでは端面での光の反射、すなわち反射減衰量が、通常の光ファイバの処理で得られる値より小さく、反射光によってシステムが不安定になる可能性があった。これは、屈折率差が大きいことで、光の軸ずれによる損失は大きくなるが、角度のずれによる接続損失が低減されるので、コネクタ端面を通常光ファイバの反射減衰量対策で行われる8度研磨などの斜め研磨でも、反射減衰量が十分に取れないためである。例えば、8度の斜め研磨によりMFDが10μmの通常の光ファイバでは、ファイバ端面での反射率を4%として約−50dBの反射減衰量が得られても、MFDが5μmの高屈折率差の光ファイバでは同じく8度の斜め研磨を施しても約−23dBの反射減衰量しか得られない。
【0024】
そこで、本発明は上記課題を解消するために、小さな半径で加熱によって曲げることで曲げ部分を形成してもその曲げによる光伝送の損失が小さく、曲げ部分以外ではモードフィールド径が大きく、高精度な位置合わせが無くても接続損失を低減でき、小さな角度の端面斜め研磨処理で大きな反射減衰量を得ることができる光導波路、光導波路モジュールおよび光導波路の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
従来の課題を解決するために本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、光導波路の所望部分を所定の温度に加熱すると光導波路の部分が加工歪開放状態になり、その状態で所定の曲げ半径で曲げ加工を施すと、歪の無い状態で曲げることを見出し、この歪みの開放はファイバの屈折率差にも影響を及ぼすことを見出し、この現象を利用して、加熱による機械的な曲げ部分の形成を実現すると同時に、その加熱対象部分の屈折率差を変化させることで、曲げによる光伝送の損失も小さくすることとした。しかも、この屈折率変化と同時にコア径も変化させて、加熱対象部分での屈折率変化とコア径変化によるパラメータ変化で、曲げ部分における光伝送の効率を確保してシングルモード光ファイバ条件を維持することとした。
【0026】
このため上記課題を解消するために、本発明の光導波路は、コアと前記コアを被覆するクラッドを有する光導波路の加熱対象部分が加熱されて加工歪開放状態に移行し、前記加工歪開放状態に移行した前記加熱対象部分を所定の曲げ半径で曲線状に曲げることで曲げ部分を形成しており、前記曲げ部分は前記加工歪状態に移行されている前記光導波路であって、
前記曲げ部分の前記コアと前記クラッドの屈折率差と物理的な大きさが、前記加熱対象部分が加熱されたことにより変化していることを特徴とする。
本発明の光導波路は、好ましくは前記光導波路の前記曲げ部分の前記コアと前記クラッドの屈折率差が、加熱前よりも大きくなり、前記コアの直径が小さくなることを特徴とする。
【0027】
本発明の光導波路は、好ましくは前記光導波路の加熱前の前記コアと前記クラッドの屈折率差が、0.2%以上2%以下のシングルモード光ファイバとして機能し、前記光導波路の前記加熱対象部分を加熱することで、前記加熱対象部分の前記コアと前記クラッドの屈折率差が、加熱前よりも大きくなり、前記コアの直径が小さくなることを特徴とする。
【0028】
本発明の光導波路は、好ましくは前記光導波路の前記曲げ部分の前記コアと前記クラッドの屈折率差が、加熱前よりも0.2%以上2%以下で大きくなることで、前記曲げ部分の前記コアと前記クラッドの屈折率差が、0.4%以上4%以下に変化し、前記コアの直径が前記屈折率差の変化でシングルモード条件を維持する大きさに小さく変化することを特徴とする。
【0029】
本発明の光導波路は、好ましくは前記光導波路の前記曲げ半径は、5.0mm以下であることを特徴とする。
本発明の光導波路モジュールは、光導波路が複数本アレイ状に並べられており、複数本の前記光導波路の少なくとも一部が位置決め機構を有する固定部材により固定されていることを特徴とする。
本発明の光導波路モジュールは、好ましくは光導波路が、1枚のシート上に配線された状態で固定されていることを特徴とする。
【0030】
本発明の光導波路モジュールは、好ましくは光導波路が、少なくとも2枚のシート間に配線された状態で固定されていることを特徴とする光導波路モジュール。
本発明の光導波路モジュールは、好ましくは複数本の前記光導波路を有しており、複数本の前記光導波路が配線された状態で固定されていることを特徴とする。
本発明の光導波路モジュールは、好ましくは前記シートの材質が可撓性を有する材質であることを特徴とする。
【0031】
本発明の光導波路の製造方法は、コアと前記コアを被覆するクラッドを有する光導波路の加熱対象部分を加熱し、
前記光導波路の前記加熱対象部分を加工歪開放状態に移行し、
前記加工歪開放状態に移行した前記加熱対象部分を所定の曲げ半径で曲線状に曲げることで曲げ部分を形成し、
前記曲げ部分は前記加工歪状態に移行し、
前記曲げ部分の前記コアと前記クラッドの屈折率差と物理的な大きさが、前記加熱対象部分が加熱されたことにより変化していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、小さな半径で加熱によって曲げることで曲げ部分を形成してもその曲げによる光伝送の損失が小さく、曲げ部分以外ではモードフィールド径が大きく、高精度な位置合わせが無くても接続損失を低減でき、小さな角度の端面斜め研磨処理で大きな反射減衰量を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の光導波路の好ましい実施形態を示す図である。図1では、光導波路1とこの光導波路1の曲げ部分製造装置200を示している。
図1(A)に示す光導波路1は例えば石英系の光ファイバであり、全長にわたって一定のコアとクラッドの屈折率差Δ1を有している。光導波路1はコア2と、このコア2を被覆するクラッド3を有するシングルモード光ファイバである。光導波路1のクラッド3の外径Dは、例えば125μmである。
【0034】
図1(A)に示す直線状の光導波路1は、図1に示す曲げ部分製造装置200を用いて図1(B)に示すように、曲げ部分10を加熱により形成する。図1(B)に例示するように、曲げ部分製造装置200は、2つの電極4,5と制御部6を有しており、制御部6が電極4,5に通電して電極4,5の間にアーク放電7を形成する。このアーク放電7は、直線状の光導波路1の加熱対象部分9に当てることで、図1(B)に示すように曲げ部分10を形成する。
【0035】
直線状の光導波路1の所望の加熱対象部分9がアーク放電7により加熱されると、加熱対象部分9は屈曲点以上で軟化点以下の範囲の温度で加熱されて、光導波路1の加熱対象部分9は加工歪開放状態に移行する。そして、加工歪開放状態に移行した加熱対象部分9が、図2に示す所定の曲げ半径Rで曲線状に曲げられて曲げ部分10が形成され、この曲げ部分10は加工歪状態に移行する。曲げ部分10は加工歪状態になると、この曲げ部分10のコア2とクラッド3の屈折率差と物理的な大きさが、加熱対象部分9が加熱されたことにより変化している。この場合に、光導波路1の曲げ部分10のコア2とクラッド3の屈折率差が、加熱前よりも加熱後では大きくなり、コア2の直径Sが加熱前に比べて加熱後では小さくなっている。
【0036】
この際に、この光導波路1の曲げ部分10は高温状態で曲げられ、曲げられた後に常温環境に移されるので、曲げることによる歪はない。すなわち、光導波路1の曲げ部分10は、曲げた状態が初期状態となるように加工したものである。光導波路1は加工後に加工された状態から変形すると歪が発生して破断するが、曲げ部分10が加工された状態を使用状態とすることで、使用時には歪が発生せず破断しないのである。ただし、この曲げ部分10を、直線状に戻す場合には歪が発生して破断に至る。結局は、初期の歪開放状態が直線状態であるか、曲げ状態であるかを選択することで、所望の形状の光導波路1を作成する場合の歪による破断を回避することができる。
【0037】
本発明の実施形態の光導波路1では、微小な空間で光導波の方向を確実にかつ簡単に変換することが目的であるので、変換するための状態を初期の歪開放状態となるように予め曲げ部分10を加工しておくことで光導波路1の破断を回避している。本発明の実施形態の光導波路1は、小さな曲げ部分10を用いて、曲げ損失を小さくして光の導波方向を90度変換することができる
光導波路1の曲げ半径Rは、好ましくは5.0mm以下である。このように曲げ半径Rを5.0mm以下とすることで、光導波路1は配置の制限がある屋内や狭い空間においても簡単に配置することができる。
【0038】
光導波路1の直径(外径)Dが、好ましくは50μm以上であり、曲げ半径Rは、好ましくは5.0mm以下である。すなわち、直径Dが50μmの光導波路1に対して、単純に曲げ半径Rを50μmで曲げることは物理的に不可能である。また、直径Dが50μm未満の光導波路を取り扱うのも容易ではないことから、光導波路1の最小の直径を例えば50μmに規定することで取り扱いやすさを確保して、曲げ半径Rの数値としては、使用する光導波路1の最小直径の10倍とすることで、物理的に曲げを実現させる構造としている。
【0039】
また、光導波路1の直径Dが好ましい一例として125μmであるのは、現在一般に使用されている代表的な光導波路と互換できる外径であるので、この直径Dを用いることで、光導波路の適用範囲を大幅に広げられる。更に曲げ半径Rを5.0mm以下とすることで、本発明の光導波路の製造方法を採用する利点が生かされる。すなわち、曲げ半径Rが5.0mmを超えた場合では細径の光ファイバを用いた場合に、曲げ半径Rによっては破断歪に至らず、本発明の実施形態における加工歪開放加工を必要としない場合があるが、曲げ半径Rを5.0mm以下とすると、取り扱いが困難とならない最小の直径Dを50μmとした光導波路1でも、加工歪開放加工が必要となる。
【0040】
好ましくは、光導波路1は、光導波路1の加熱前のコア2とクラッド3の屈折率差が、0.2%以上2%以下のシングルモード光ファイバとして機能して、光導波路1の加熱対象部分9を加熱することで、加熱対象部分9のコア2とクラッド3の屈折率差が、加熱前よりも加熱後において大きくなり、コア2の直径Sが加熱前よりも加熱後において小さくなる。ここで、光導波路1の加熱前のコア2とクラッド3の屈折率差が、0.2%未満であると、光導波路としての光閉じ込めが弱く、少しの曲げや側圧によって光が漏れて損失を発生しやすいので好ましくない。
また、光導波路1の加熱前のコア2とクラッド3の屈折率差が、2%を超えると、光導波路としての光閉じ込めは強く、曲げや側圧に強くなるが、モードフィールド径が小さくなるので、例えばコネクタ接続等の位置決めが必要な結合において、高精度な位置決めが必要となり、精度が悪いと大きな接続損失を発生してしまうので好ましくない。
【0041】
光導波路1の曲げ部分10のコア2とクラッド3の屈折率差が、加熱前よりも加熱後において0.2%以上2%以下で大きくなることで、加熱後の曲げ部分10のコア2とクラッド3の屈折率差が、0.4%以上4%以下に変化し、コア2の直径Sが屈折率差の変化でシングルモード条件を維持する大きさに小さく変化する。ここで、曲げ部分10のコア2とクラッド3の屈折率差が、0.4%未満であると、R=5.0mm以下での曲げ半径に対応が困難となり、大きな曲げ損失を発生するので好ましくない。
また、曲げ部分10のコア2とクラッド3の屈折率差が、4%を超えると、シングルモード条件を維持する為に、コア径を数μm以下という微細な径にする必要が生じ、単に4%を越すと、マルチモード条件となり、やはり大きな曲げ損失やモード不整合による損失を発生させる原因となるので好ましくない。
【0042】
一例として、この加工歪開放状態に移行した加熱対象部分9の屈折率は、加熱前には0.7%であったが、加熱により1.7%に変化している。また、コアの直径Sは加熱前では約7μmであったが、加熱後には約4μmに縮小している。
図3には、加熱対象部分9を加熱する前と加熱後におけるこの屈折率変化の様子と、コア2の直径Sの様子を示している。図3では、縦軸が加熱対象物9の屈折率の変化分Δnを示し、横軸がコア2の直径Sを示す。
【0043】
また、この曲げ部分10および曲げ部分10を除く光導波路1の残りの部分ではシングルモード条件が維持されており、光導波路1は、加熱対象部分9に相当する曲げ部分10とこの曲げ部分10を除いた非加熱対象部分と合わせて、シングルモードによる光伝送が可能となっている。
なお、この実施例では、曲げ半径Rは5.0mmよりも大きい例えば約1.0mmであり、曲げに伴う光伝送損失は約0.2dBである。本発明の比較例として、もし、加熱対象部分9の屈折率差とコア2の直径Sが、加熱対象部分9の加熱によっても変化しない場合には、この曲げ部分10の曲げによる光伝送損失は数10dB以上であり、光伝送線路として使用不可能である。
【0044】
また、反射減衰量は、8度研磨の処理を光導波路1の端面に施した場合には、約−37dBである。もし、加熱対象部分9以外の光導波路1の非加熱部分も全て加熱後と同じ屈折率差とコア2の直径Sを有していると、8度研磨の処理を施しても反射減衰量は約−24dBしか得られない。
なお、この実施形態では、コア2とクラッド3の屈折率分布形状はステップインデックス型であり、コア2は何もドープしない純SiO2で作られており、クラッド3にはフッ素をドープしてコア2よりも屈折率を下げている。なお、このフッ素ドープ領域は、直径が約100μmの部分であり、その外側は直径125μmまで純SiO2で作られており、直径100μmの部分までがクラッド2として機能する。
【0045】
本発明の別の実施形態の光導波路1では、光導波路1の直径Dが80μmであるものであり、内部の屈折率差や加熱後の屈折率差の変化とコア径の変化とも同等のものである。ただし、直径Dが125μmの光導波路1では、コア2より外側は直径100μmまでフッ素ドープ領域でその外側は純SiO2であったが、直径Dが80μmの光導波路1では,コア2より外側は外径80μmまで全てフッ素ドープのクラッド3となっている。この直径Dが80μmの光導波路1では、直径Dが125μmの光導波路1に比べて外径が細いために、曲げに対する機械的歪みが小さく、折れにくいという特徴がある。
【0046】
図4と図5は、本発明の光導波路の実施形態を示している。
これらの光導波路は互いに異なる屈折率差を有する複数種類の光導波路を接続することで形成されているので、光導波路モジュールとも言うことができる。
図4と図5の光導波路(光導波路モジュール70)1は、図2に示す光導波路1とは異なり、互いに異なる屈折率差を有する複数種類の光導波路1が融着接続部50により直列に接続された例である。
【0047】
図4の光導波路モジュール70は、1つの第1の光導波路1−1と1つの第2の光導波路1−2を直列に接続して構成されている。第1の光導波路1−1は例えばコアとクラッドの屈折率差Δ1が0.8%以上3.5%以下の範囲内、好ましくは屈折率差Δ1が1.0%以上3.0%以下の範囲内である。第2の光導波路1−2は例えばコアとクラッドの屈折率差Δ2が0.2%以上である。第1の光導波路1−1と第2の光導波路1−2とは、融着接続部分50を用いて融着して接続している。
融着接続部分50を加熱して、コアとクラッドの屈折率差Δ1,Δ2のミスマッチと、モードフィールド径のミスマッチを低減して、光導波路1−1の加熱対象部分9を加熱して曲げ部分10が形成されている。
【0048】
図4の光導波路モジュール70では、高い屈折率差の光導波路1−1,1−2を使用するため、そのコアやクラッドの等価屈折率は一般の光導波路のコアやクラッドの等価屈折率とは異なる。また、屈折率差Δも異なるために、一般の光導波路のモードフィールド径と、本発明の光導波方向変換部に使用する光導波路のモードフィールド径との間に差がある。屈折率の異なるもの同士を接触させて、その部分に光信号を通過させると、屈折率の境界部分で光が反射される。これは、光通信においては避けなければならない現象である。一般にこの反射減衰量として50dB以上が要求される。
【0049】
また、モードフィールド径が異なるもの同士を接続した場合、接続部分では径差による接続損失が発生する。一般の光導波路のモードフィールド径は使用波長によっても異なるが、約10μm程度であり、光導波方向変換部である曲げ部分10に使用する光導波路1−1のモードフィールド径は約3μmである。この径差でそのまま接続すると、接続損失は5dB以上となる。また、外部の機器やレーザ発生装置との接続を容易にするためには、一般の光ファイバと外部機器を接続し、その後、光導波路モジュールに接続することが、有効である。そこで、これらの反射減衰と接続損失を低減する為、コアとクラッドの屈折率差Δ1が0.8%以上3.5%以下の範囲内、好ましくは1.0%以上3.0%以下の範囲内である第1の光導波路1−1と、コアとクラッドの屈折率差Δ2が0.2%以上である第2の光導波路1−2とを融着接続して、融着接続部分50を加熱してコアとクラッドの屈折率差Δのミスマッチとモードフィールド径のミスマッチを低減させる。これにより、反射減衰量を大きくし、接続損失を抑制している。この方法によって、反射減衰量は50dB以上となり、接続損失は約0.2dBとなった。
【0050】
図4の実施形態では、直径Dが80μm、曲げ半径Rが1mmで90度曲げるのに、屈折率差Δ1を2.5%で、使用波長による光導波モードが単一モードとなる光ファイバを用いて、その片側に直径Dが80μm、屈折率差Δ2を0.35%で、使用波長による光導波モードが単一モードとなる光ファイバとを融着接続し、融着接続部分50をガスバーナーで加熱して、屈折率差Δのミスマッチとモードフィールド径のミスマッチを低滅させた。使用波長は1.3μmである。測定結果では反射減衰量が50dB以上、接続損失は0.2dBであった。
【0051】
図5の別の実施形態では、光導波路モジュール71は、1つの第1の光導波路1−3と2つの第2の光導波路1−4を直列に接続して構成されている。第1の光導波路1−3は例えばコアとクラッドの屈折率差Δ1が0.8%以上3.5%以下の範囲内、好ましくは1.0%以上3.0%以下の範囲内である。第2の光導波路1−4は例えばコアとクラッドの屈折率差Δ2が0.2%以上である。第1の光導波路1−3と第2の光導波路1−4とは、融着接続し、融着接続部分50を加熱してコアとクラッドの屈折率差Δのミスマッチと、モードフィールド径のミスマッチを低減し、光導波路の加熱対象部分9を加熱して曲げ部分10を形成している。
【0052】
図4の光導波路モジュール70では、光導波方向変換部の片側にだけ一般の光導波路の特性と互換な光導波路を融着接続して、融着接続部分50を加熱することで屈折率差Δ1,Δ2のミスマッチとモードフィールド径のミスマッチを低減させている。これに対して、図5の実施形態では、第1の光導波路1−3の両端部には一般の光導波路の特性と互換な第2の光導波路1−4を融着接続して、2カ所の融着接続部分50を加熱することで屈折率差Δ1,Δ2のミスマッチとモードフィールド径のミスマッチを低減させ
る。これにより、光導波方向変換部のどちら側にも、外部機器との接続が容易となる。
【0053】
図5の実施形態では直径Dが80μm、曲げ半径Rが1mmで90度曲げるのに、屈折率差Δ1を2.5%、使用波長による光導波モードが単一モードとなる光ファイバを用いて、その両側に直径Dが80μm、屈折率差Δ2が0.35%、使用波長による光導波モードが単一モードとなる光ファイバを融着接続し、融着接続部分50をガスバーナーで加熱して、屈折率差Δ1,Δ2のミスマッチとモードフィールド径のミスマッチを低減させた。使用波長は1.3μmである。測定結果では反射減衰量が50dB以上、接続損失は0.4dB程度であった。
【0054】
図6と図7は、本発明の光導波路モジュールの好ましい実施形態を示す図である。
図6と図7の光導波路モジュール100は、複数本の光導波路1をアレイ化して固定部材120により固定したものである。これにより、複数本の光導波路1は、一括して光導波方向を90度変換が行える。光導波路モジュール100の入出力部分が、一般の光導波路と特性が互換の光導波路となっていることで、外部機器との特性の良い接続が可能となる。
この実施形態では、例えば直径が125μmであり、屈折率差Δ1が2.5%の光導波路1が平行になるように、固定手段120は位置決め機構130を有している。この位置決め機構130は複数の位置決め穴131から構成されている。各光導波路1では、入力側端部から出力側端部に対して90度の光導波方向の変換が行われる。固定手段120は、直方体形状のブロック体であり、穴150が形成されている。各穴150には、他の部材に対して機械的に固定するためのピン140が挿入されるようになっている。各光導波路1の研磨端面である入力側端面と出力側端面の両方ともが、90度面に対し4度ずつ傾けて研磨されている。
【0055】
図8は、本発明の光導波路モジュールの別の好ましい実施形態を示す。
光導波路モジュール300を作製するに際し、一例として2本の光導波路1と2枚のシート350を用いている。2本の光導波路1は2枚のシート350内に配置されている。2枚のシート350内に配置される各光導波路1のコアとクラッドの屈折率差Δ1を例えば0.8%以上3.5%以下の範囲内とした。
図8の実施形態では、ガラス部分の外径125μm、被覆外径250μmの一般的な外径の光ファイバを使用しているが、コアとクラッドの屈折率差Δ1は2.5%と一般的な単一モード光ファイバの屈折率差Δ1である0.3%程度とは異なる、非常に大きな屈折率差Δ1の光導波路を使用している。
【0056】
機械的に小さく曲げられるようにするには、ガラス部分の直径Dをもっと小さくすれば良いが、直径Dを小さくしすぎると、コアに閉じ込められた光はクラッドが薄すぎるために逃げ出してしまい、光伝送損失を発生する。そこで、クラッドの直径すなわち光ファイバの外径はモードフィールド径の少なくとも10倍以上とすることで、この伝送損失を抑えることが可能となる。
【0057】
図9の実施形態では、2枚のシート350を用いるのではなく、1枚のシート350を用いて光導波路1を固定している。
図8と図9に示すシート350の材質は、可撓性を有する材質であり、この材質としては、ポリイミド、ポリエチレンテレフタラート、低密度または高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン6、ナイロン66、エチレン−テトラフルオルエチレン共重合体、ポリ4−メチルペンテン、ポリ塩化ビニリデン、可塑化ポリ塩化ビニル、ポリエーテルエステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、軟質ポリウレタンなどのフィルムが用いられる。
【0058】
図10は、本発明のさらに別の好ましい光導波路モジュール400を示している。
図10では、複数本の光導波路1が、建屋800の部屋の角部801において、固定手段120を用いて壁部802,803に沿って配線されている例を示している。このように部屋の角部801において光導波路1を配線する場合には、光導波路1の最小曲げ半径としては数cmを確保する必要があったが、本発明の実施形態の光導波路モジュール400を用いることで、光導波路モジュール400の固定手段100の寸法は1cm以下の大きさですみ、角部801における光伝送用の配線が90度曲げてできるようになった。
【0059】
図11は、本発明のさらに別の好ましい光導波路モジュール300を示している。
図11電気光融合基板とも言い、2枚の電気回路基板501,501の間には、例えば図8に示すような光導波路モジュール300がサンドイッチされた構造である。光導波路モジュール300は、電気回路基板501,501を光伝送可能にしている。
本発明の実施形態の光導波路1では、コア2とコア2を被覆するクラッド3を有する光導波路1の加熱対象部分9が加熱されて加工歪開放状態に移行し、加工歪開放状態に移行した加熱対象部分9を所定の曲げ半径で曲線状に曲げることで曲げ部分10を形成しており、曲げ部分10は加工歪状態に移行されている。曲げ部分10のコア2とクラッド3の屈折率差と物理的な大きさが、加熱対象部分9が加熱されたことにより変化している。
【0060】
本発明の実施形態では、光導波路1の曲げ部分のコア2とクラッド3の屈折率差が、加熱前よりも大きくなり、コア2の直径が小さくなる。これにより、小さな曲げ半径Rで加熱によって曲げることで曲げ部分10を形成しても、その曲げ部分10による光伝送の損失が小さく、曲げ部分10以外ではモードフィールド径が大きく、高精度な位置合わせが無くても接続損失を低減でき、小さな角度の端面斜め研磨処理で大きな反射減衰量を得ることができる
【0061】
本発明の実施形態では、光導波路1の加熱前のコア2とクラッド3の屈折率差が、0.2%以上2%以下のシングルモード光ファイバとして機能し、光導波路の前記加熱対象部分を加熱することで、加熱対象部分のコア2とクラッド3の屈折率差が、加熱前よりも大きくなり、コア2の直径が小さくなる。これにより、光導波路1は、曲げによる光伝送の損失が小さく、曲げ部分以外ではモードフィールド径が大きく、高精度な位置合わせが無くても接続損失を低減でき、小さな角度の端面斜め研磨処理で大きな反射減衰量を得ることができるシングルモード光ファイバとして用いることができる。
【0062】
本発明の実施形態では、光導波路1の曲げ部分10のコア2とクラッド3の屈折率差が、加熱前よりも0.2%以上2%以下で大きくなることで、曲げ部分10のコア2とクラッド3の屈折率差が、0.4%以上4%以下に変化し、コア2の直径が屈折率差の変化でシングルモード条件を維持する大きさに小さく変化する。これにより、曲げによる光伝送の損失が小さく、曲げ部分以外ではモードフィールド径が大きく、高精度な位置合わせが無くても接続損失を低減でき、小さな角度の端面斜め研磨処理で大きな反射減衰量を確実に得ることができる
【0063】
本発明の実施形態では、光導波路の曲げ半径は、5.0mm以下であることを特徴とする。これにより、小さな空間や角部であっても光導波路が配置できる。
本発明の実施形態の光導波路モジュールでは、光導波路1が複数本アレイ状に並べられており、複数本の光導波路1の少なくとも一部が位置決め機構を有する固定部材120により固定されている。これにより、小さな半径で加熱によって曲げることで曲げ部分を形成してもその曲げによる光伝送の損失が小さく、曲げ部分以外ではモードフィールド径が大きく、高精度な位置合わせが無くても接続損失を低減でき、小さな角度の端面斜め研磨処理で大きな反射減衰量を得ることができる
【0064】
本発明の実施形態の光導波路モジュールでは、光導波路1が、1枚のシート350上に配線された状態で固定されている。これにより、光導波路1は1枚のシートを用いて確実に光導波路モジュールを作ることができる。
本発明の実施形態の光導波路モジュールでは、光導波路1が、少なくとも2枚のシート間に配線された状態で固定されている。これにより、光導波路1は2枚のシートを用いて確実に光導波路モジュールを作ることができる。
【0065】
本発明の実施形態の光導波路モジュールでは、複数本の光導波路を有しており、複数本の前記光導波路が配線された状態で固定されている。これにより、複数の光伝送路を確実に得ることができる。
本発明の実施形態の光導波路モジュールでは、シート350の材質が可撓性を有する材質である。これにより、光導波路モジュールの可撓性が確保でき、光導波路モジュールを設定する部位の状態に応じて光導波路モジュール確実に配置できる。
【0066】
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されず種々の変形例を採用できる。
例えば、図1の曲げ部分の製造装置200は、光導波路1において曲げ部分10の形成を行う際に、光導波路1の所望の加熱対象部分9を加熱するために、アーク放電による加熱を行っている。しかし、曲げ部分の製造装置200としては、これに限らずバーナーによる加熱、炉による加熱等の各種の手段を採用できる。
図示例の光導波路1は、光の変更方向が90度であるが、90度に限らず任意の角度を選択できる。
図示の実施形態では、屈折率差は等価屈折率差とも言う。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の光導波路の好ましい実施形態を示す斜視図である。
【図2】曲げ部分を有する光導波路の形状例を示す図である。
【図3】加熱対象部分を加熱する前と加熱後におけるこの屈折率変化の様子と、コアの直径の変化の様子を示す図である。
【図4】本発明の光導波路モジュールの好ましい実施形態を示す図である。
【図5】本発明の光導波路モジュールの好ましい実施形態を示す図である。
【図6】本発明の光導波路モジュールの好ましい実施形態を示す図である。
【図7】本発明の光導波路モジュールの好ましい実施形態を示す図である。
【図8】本発明の光導波路モジュールの好ましい実施形態を示す図である。
【図9】本発明の光導波路モジュールの好ましい実施形態を示す図である。
【図10】本発明の光導波路モジュールの好ましい実施形態を示す図である。
【図11】本発明の光導波路モジュールの好ましい実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0068】
1 光導波路
4,5 電極
6 制御部
9 加熱対象部分
10 曲げ部分
70,71 光導波路モジュール
100 光導波路モジュール
200 光導波路1の曲げ部分製造装置200
300 光導波路モジュール
301 光導波路モジュール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと前記コアを被覆するクラッドを有する光導波路の加熱対象部分が加熱されて加工歪開放状態に移行し、前記加工歪開放状態に移行した前記加熱対象部分を所定の曲げ半径で曲線状に曲げることで曲げ部分を形成しており、前記曲げ部分は前記加工歪状態に移行されている前記光導波路であって、
前記曲げ部分の前記コアと前記クラッドの屈折率差と物理的な大きさが、前記加熱対象部分が加熱されたことにより変化していることを特徴とする光導波路。
【請求項2】
前記光導波路の前記曲げ部分の前記コアと前記クラッドの屈折率差が、加熱前よりも大きくなり、前記コアの直径が小さくなることを特徴とする請求項1に記載の光導波路。
【請求項3】
前記光導波路の加熱前の前記コアと前記クラッドの屈折率差が、0.2%以上2%以下のシングルモード光ファイバとして機能し、前記光導波路の前記加熱対象部分を加熱することで、前記加熱対象部分の前記コアと前記クラッドの屈折率差が、加熱前よりも大きくなり、前記コアの直径が小さくなることを特徴とする請求項2に記載の光導波路。
【請求項4】
前記光導波路の前記曲げ部分の前記コアと前記クラッドの屈折率差が、加熱前よりも0.2%以上2%以下で大きくなることで、前記曲げ部分の前記コアと前記クラッドの屈折率差が、0.4%以上4%以下に変化し、前記コアの直径が前記屈折率差の変化でシングルモード条件を維持する大きさに小さく変化することを特徴とする請求項2に記載の光導波路。
【請求項5】
前記光導波路の前記曲げ半径は、5.0mm以下であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つの項に記載の光導波路。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の光導波路が複数本アレイ状に並べられており、複数本の前記光導波路の少なくとも一部が位置決め機構を有する固定部材により固定されていることを特徴とする光導波路モジュール。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の光導波路が、1枚のシート上に配線された状態で固定されていることを特徴とする光導波路モジュール。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の光導波路が、少なくとも2枚のシート間に配線された状態で固定されていることを特徴とする光導波路モジュール。
【請求項9】
複数本の前記光導波路を有しており、複数本の前記光導波路が配線された状態で固定されていることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の光導波路モジュール。
【請求項10】
前記シートの材質が可撓性を有する材質であることを特徴とする請求項7〜請求項9のいずれか1項に記載の光導波路モジュール。
【請求項11】
コアと前記コアを被覆するクラッドを有する光導波路の加熱対象部分を加熱し、
前記光導波路の前記加熱対象部分を加工歪開放状態に移行し、
前記加工歪開放状態に移行した前記加熱対象部分を所定の曲げ半径で曲線状に曲げることで曲げ部分を形成し、
前記曲げ部分は前記加工歪状態に移行し、
前記曲げ部分の前記コアと前記クラッドの屈折率差と物理的な大きさが、前記加熱対象部分が加熱されたことにより変化していることを特徴とする光導波路の製造方法。
【請求項1】
コアと前記コアを被覆するクラッドを有する光導波路の加熱対象部分が加熱されて加工歪開放状態に移行し、前記加工歪開放状態に移行した前記加熱対象部分を所定の曲げ半径で曲線状に曲げることで曲げ部分を形成しており、前記曲げ部分は前記加工歪状態に移行されている前記光導波路であって、
前記曲げ部分の前記コアと前記クラッドの屈折率差と物理的な大きさが、前記加熱対象部分が加熱されたことにより変化していることを特徴とする光導波路。
【請求項2】
前記光導波路の前記曲げ部分の前記コアと前記クラッドの屈折率差が、加熱前よりも大きくなり、前記コアの直径が小さくなることを特徴とする請求項1に記載の光導波路。
【請求項3】
前記光導波路の加熱前の前記コアと前記クラッドの屈折率差が、0.2%以上2%以下のシングルモード光ファイバとして機能し、前記光導波路の前記加熱対象部分を加熱することで、前記加熱対象部分の前記コアと前記クラッドの屈折率差が、加熱前よりも大きくなり、前記コアの直径が小さくなることを特徴とする請求項2に記載の光導波路。
【請求項4】
前記光導波路の前記曲げ部分の前記コアと前記クラッドの屈折率差が、加熱前よりも0.2%以上2%以下で大きくなることで、前記曲げ部分の前記コアと前記クラッドの屈折率差が、0.4%以上4%以下に変化し、前記コアの直径が前記屈折率差の変化でシングルモード条件を維持する大きさに小さく変化することを特徴とする請求項2に記載の光導波路。
【請求項5】
前記光導波路の前記曲げ半径は、5.0mm以下であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つの項に記載の光導波路。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の光導波路が複数本アレイ状に並べられており、複数本の前記光導波路の少なくとも一部が位置決め機構を有する固定部材により固定されていることを特徴とする光導波路モジュール。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の光導波路が、1枚のシート上に配線された状態で固定されていることを特徴とする光導波路モジュール。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の光導波路が、少なくとも2枚のシート間に配線された状態で固定されていることを特徴とする光導波路モジュール。
【請求項9】
複数本の前記光導波路を有しており、複数本の前記光導波路が配線された状態で固定されていることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の光導波路モジュール。
【請求項10】
前記シートの材質が可撓性を有する材質であることを特徴とする請求項7〜請求項9のいずれか1項に記載の光導波路モジュール。
【請求項11】
コアと前記コアを被覆するクラッドを有する光導波路の加熱対象部分を加熱し、
前記光導波路の前記加熱対象部分を加工歪開放状態に移行し、
前記加工歪開放状態に移行した前記加熱対象部分を所定の曲げ半径で曲線状に曲げることで曲げ部分を形成し、
前記曲げ部分は前記加工歪状態に移行し、
前記曲げ部分の前記コアと前記クラッドの屈折率差と物理的な大きさが、前記加熱対象部分が加熱されたことにより変化していることを特徴とする光導波路の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−20766(P2008−20766A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−193666(P2006−193666)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
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