説明

光干渉式流体特性測定装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、被測定流体と標準流体との光の屈折率の相異を干渉縞の変移として検出し、この変移に基づいて被測定流体の発熱量や濃度等の特性を測定する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】液化天然ガスのようにプロパンやnーブタン等を所定の割合で混合して調製された燃料ガスの熱量は、一方に被測定燃料ガスを、他方に標準ガスを収容する2つの光学セルを併設し、これらセルに同一光源から出た光を分割して照射し、各セルを透過した光により干渉縞を発生させ、干渉縞の特定領域の変移量、例えば最高輝度を示す部分の変移量から測定する装置が実用化されている。
【0003】図6は、上述した光干渉式流体特性測定装置の一例を示すものであって、図中符号Aはその両端を光透過性の板より封止された測定セルで、一端に被測定ガス流入口Bが、また他端にガス流出口Cが形成されていて被測定ガスが流入するように構成されている。
【0004】Dは、リファレンスセルで、一端に標準ガス源Eからの標準ガスが流入する流入口Fを、また他端に標準ガスの流出口Gを設けて構成されている。
【0005】これら測定セルA、及びリファレンスセルDには、光源となる白熱電球Hからの光をレンズJにより平行光ビームにした後、ビームスプリッタをなす平行平面鏡Kで分割されて発生した光ビームL1、L2を入射させ、これら各セルA、Dから出射した2本のビームをプリズムLにより同一光路L3に重ね合わせて干渉縞を発生させ、干渉縞検出手段Sにより電気信号に変換するように構成されている。
【0006】ところで、流体の特性変動に伴って生じる干渉縞の変移量は、極めて微小であるため、光源となる白熱電球Hからの光ビームの位置や、形状が測定精度に影響を与えるため、白熱電球Hのフィラメントの位置や、姿勢を最適な状態に調整する作業が必要となる。このため、多数の電球の中からフィラメントが特定の位置に取り付けられている電球だけを選別し、その上で、図7R>7に示したように電球Hを球面受座Qを備えた取付具Rを介して電球Hを筐体Mに取り付け、筐体Mから突出した突起Nにより電球Hを揺動させてフィラメントの姿勢を微調整することが行われている。しかしながら、フィラメントの姿勢の調整は極めて微妙で、技術を要するため、測定装置本体を工場に持ち帰って調整する必要があり、メンテナンスに手間が掛かるという問題を抱えている。
【0007】
【発明が解決しようする課題】本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、光源装置の交換後に発光素子の位置調整を不要とした新規な光干渉式流体特性測定装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】このような問題を解消するために、本発明においては同一の光源からの平行光ビームをビームスプリッタにより分割して測定セルと標準セルとに入射させ、前記各セルを通過した光ビームの干渉縞から流体の特性を測定する光干渉式流体特性測定装置において、前記ビームスプリッタに対向する位置に挿入口、及び第1の基準位置出し用ピン挿入孔が穿設された測定装置本体の筐体と、前記挿入口に弾接する筒状部と第2の基準位置出し用ピン挿入孔が形成されたフランジとからなる基台と、該基台の先端に位置決め可能で、かつ平行光ビーム発生手段が固定された位置決めリングとからなる光源手段を備え第1、及び第2の基準位置出し用ピン挿入孔に基準位置出し用ピンを挿入して前記平行光ビーム発生手段の位置が調整されている。
【0009】
【実施例】そこで以下に本発明の詳細を図示した実施例に基づいて説明する。図1は本発明の一実施例を示すものであって、図中符号1は測定チャンバ、また符号2、3は、測定チャンバ1の両側に配置されたリファレンスチャンバで、これら各チャンバ1、2、3はその両端を光透過性の板4、4により封止され、またそれぞれの端部に流体流入口、流出口H1、H2、H3、H4、H5、H6を設けて構成されている。
【0010】リファレンスチャンバ2、3は、それぞれ端部に設けられた通孔H3、H6を図示しない流路により接続され、1つの標準ガス源からの同一の標準ガスの供給を受けることができるように構成されている。これら各チャンバ1、2、3の一側側にはビームスプリッタをなす平行平面鏡5が、また他側側にはメインプリズム6が配置されている。
【0011】10は、後述する光源装置で、測定装置本体の筐体11に平行平面鏡5の一側寄りの所定位置P0に、出射口14が対向するように、筐体11に穿設された位置出し用のピン挿入孔18と光源装置10の位置出し用のピン挿入孔26とをピン13で一致させて取り付けられている。
【0012】光源装置10からの平行ビームL0は、平行平面鏡5により2本のビームL1、L2に分割され、一方のビームL1は測定セル1の一側寄りの光路を通って、メインプリズム6に入射し、再び測定セル1の他側寄りの光路を通るビームL3となって平行平面鏡5に入射する。
【0013】また他方のビームL2は、一方のリファレンスセル2を通過してプリズム6により他方のリファレンスセル3からビームL4として出射し、平行平面鏡5の、測定セル1からの出射したビームL3の照射点と同一点P1で重なって干渉縞を生じ、ビームL5としてプリズム15に入射する。プリズム15から出射したビームは、対物レンズ16と、後述する筒状体50の前面の光学部材、この実施例では凹レンズ51とにより形成される拡大光学系により検出に適した大きさの拡大されて検出手段17の像検出面に干渉縞の像を結ぶ。この検出手段17は、像の各座標と、そこにおける明るさとを電気信号に変換できる撮像手段により構成されている。
【0014】これにより、測定セル1の流体とリファレンスセル2、3の流体との特性の相異により生じる光路差に基づいて干渉縞の像の変位を検出手段17のアドレス信号として検出することができる。
【0015】図中符号50は、筒状体で、検出手段17の受光面から一定の距離を確保して後述するレンズ51に塵埃が付着しても検出手段17の出力が影響を受けないように、所定の長さ、この実施例では30mmを有しており、先端側に前方の凸レンズ16に対して接眼レンズとして機能して拡大光学系を形成する凹レンズ51が密閉状態で固定されており、また他端には透光用の窓52を有し、フランジ50aを介して筐体11の通孔54に固定されている。フランジ50aと検出手段17との間には窓56を有するパッキン55が介装されていて、検出手段17と筒状体50との気密を確保するようになっている。
【0016】この実施例において、上述の工程により製造された光源装置10の基台20を測定装置本体の筐体11の挿入口12に挿入すると、基台20は周囲の弾性部材22、22により挿入口12の中心軸を平行平面鏡5側に向かって移動する。このようにしてフランジ21が筐体11に当接するまで挿入した段階で、フランジ21のピン挿入孔26にピン13を挿入して筐体11のピン挿入孔18に位置合わせする。これにより、光源装置10からのビームL0は、平行平面鏡5の所定位置P0を照射し、各セル1、2、3に最適なビームL1、L2が入射することになる。
【0017】図2は、前述の光源装置10の一実施例を示すものであって、図中符号20は、光干渉測定装置本体の挿入口12に挿入可能な基台で、一端にフランジ21を有する筒状体として構成され、また外周にはOリング等の弾性部材22、22が設けられ、さらに先端側には後述する位置決めリング25をネジ止めするための複数のネジ孔23、23が螺設されている。
【0018】フランジ21には筐体11のピン挿入孔18と協同して発光素子32からの平行ビームL0を平行平面鏡5の所定の位置P0に位置決めするためのピン挿入孔26が穿設されている。
【0019】位置決めリング25は、後述する平行光ビーム発生手段30を螺合させるネジ孔27が穿設され、また周囲には位置決め用のネジ28、28よりも若干大きめの径を備え、ネジ28との間で相対移動可能ならしめる通孔29、29が穿設されている。
【0020】30は、前述の平行光ビーム発生手段で、筒状ケース31の後端に発光素子32、たとえば白熱ランプが、また他端に発光素子32の発光点、例えば白熱ランプの場合にはフィラメントに焦点を結び、発光素子32からの光を平行ビームに変換するレンズ33を収容して構成されている。
【0021】そして筒状ケース31の少なくとも先端側の外周にはネジ31aが切られていて、位置決めリング25のネジ孔27に螺合し、出射口14とフランジ21との相対距離を調整できるようになっている。なお、図中符号37は、平行光ビーム発生手段30を位置決めリング25に固定するためのナットを、また38は発光素子32に電力供給するためのリード線をそれぞれ示す。
【0022】図3は、前述の位置決めリング25と基台20との位置出しを行うための治具の一実施例を示すものであって、図中符号40は、基台で、測定装置の筐体11の挿入口12と、ピン挿入孔18と同一の位置関係となるように基台取り付け口41とピン挿入孔42とが穿設され、またピン挿入孔42に対して平行平面鏡5の照射点P0とピン孔18の位置関係と同一となる位置にビーム検出手段43が設けられている。
【0023】次ぎに、基台20と位置決めリング25との位置決め作業について説明する。基台20とリング25とが相対移動可能な程度にネジ28、28を緩めた状態で、基台20を取り付け口41に挿入し、ピン13により基台20のピン挿入孔26と治具の基台40の挿入孔42とを一致させる。
【0024】この状態で発光素子32に電力を供給して発光させ、位置決めリング25の通孔29、29、29‥‥とネジ28、28、28‥‥とのガタを利用してリング25を基台20に対して相対移動させて、位置決めリング20をその面内でX軸方向、及びY軸方向にそれぞれ基台20、つまりピン13に対して所定量ΔX、ΔY調整ながら、出射口14からの光ビームL6がビーム検出手段43に入射するように位置調整を行い、最適な位置でネジ28、28、28‥‥を閉めて位置決めリング25を基台20に固定する。これにより出射口14からのビームL6がピン孔26に対して所定の位置に調整された光源装置10が完成する。
【0025】一方、長期間に使用により発光素子32の光量が低下した場合には、筐体11から光源装置10を取り外し、出し、代わって新しい光源装置10を挿入し、位置決めピン13で筐体11の所定位置に位置決めするだけで、出射口14が平行平面鏡5の所定位置P0に対向する状態に正確に位置決めされ、正常な測定が可能となる。
【0026】また、長時間の使用により筒状体50先端の凹レンズ51に塵埃が付着しても、凹レンズ51と検出手段17との間には距離が確保されているため、例えば変換手段としてCCDのように画像を複数の光電検出素子のアレイで構成されているものを用い、各光電変換素子の出力の大きさとそのアドレス(図5(イ))に基づいて、最高レベルの信号のアドレス変化から干渉縞の移動を検出するようなものに適用した場合にあっても、凹レンズ51に付着した塵埃が像全体の明るさを減少させるものの、特定のアドレスA1、A2の信号を特異的に変動させる(図5(ロ))ことがなく、しかも全体が気密的に封止されて検出手段の受光面に塵埃が直接付着することが防止されているから、高い精度で干渉縞の移動を検出することができる。
【0027】なお、この実施例においては白熱ランプを使用した場合に例を採って説明したが、発光ダイオード等他の発光素子を使用しても同様の作用を奏することは明らかである。
【0028】また、この実施例においては、弾性部材を光源装置に設けているが、本体の挿入口内に設けても同様の作用を奏することは明らかである。
【0029】さらに上述の実施例では、位置決めリングと基台とをネジにより固定するようにしているが、接着剤等他の固定手段を用いることもできる。
【0030】また上述の実施例においては筒状体50の前面を凹レンズにより封止して筒状体50前方の凸レンズとにより拡大光学系を構成しているが、拡大光学系が必要な場合には凸レンズで封止してもよく、また特に干渉縞の像の拡大を必要としない場合には平板ガラスで封止しても塵埃の影響を小さくできることは明らかである。
【0031】
【発明の効果】以上、説明したように本発明によれば、位置決めリングと基台との相対位置を予め工場で調整しておくことにより、基台を本体筐体の挿入口に挿入して、ピンにより所定位置に位置決めするという簡単な操作で、ビームスプリッタに対して光源手段を適正な位置にセットすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を、筐体の蓋と、測定セル、及びリファレンスセルの上板を外して示す装置の正面図である。
【図2】図(イ)、(ロ)は、それぞれ同上装置に使用されている光源装置の一実施例を示す断面図と正面図である。
【図3】同上光源装置の位置決めリングの調整装置の一実施例を示す一部断面図である。
【図4】光源装置を本体筐体に取り付けた状態を示す正面図である。
【図5】図(イ)、(ロ)は、それぞれ光電変換手段からの出力と、これに塵埃が付着した場合の出力とを示す説明図である。
【図6】光干渉を利用した従来の流体特性測定装置の一例を示す図である
【図7】従来の光源装置をなすランプ取付具の一例を示す図である。
【符号の説明】
1 測定セル
2、3 リファレンスセル
5 平行平面鏡
6 メインプリズム
10 光源装置
12 光源装置挿入口
13 ピン
14 出射口
17 光電変換手段
20 基台
21 フランジ
18、26 ピン挿入孔
30 平行光ビーム発生手段
50 筒状体
51 接眼レンズ
52、56 窓

【特許請求の範囲】
【請求項1】 同一の光源からの平行光ビームをビームスプリッタにより分割して測定セルと標準セルとに入射させ、前記各セルを通過した光ビームの干渉縞から流体の特性を測定する光干渉式流体特性測定装置において、前記ビームスプリッタに対向する位置に挿入口、及び1の基準位置出し用ピン挿入孔が穿設された測定装置本体の筐体と、前記挿入口に弾接する筒状部と第2の基準位置出し用ピン挿入孔が形成されたフランジとからなる基台と、該基台の先端に位置決め可能で、かつ平行光ビーム発生手段が固定された位置決めリングとからなる光源手段を備第1、及び第2の基準位置出し用ピン挿入孔に基準位置出し用ピンを挿入して前記平行光ビーム発生手段の位置が調整されている光干渉式流体特性測定装置。
【請求項2】 前記平行ビーム発生手段は、前記位置決めリングに対して前記平行光ビームに平行な方向に位置調整が可能な請求項1の光干渉式流体特性測定装置。
【請求項3】 前記基台の筒状部の外周に複数のリング状弾性部材が設けられている請求項1の光干渉式流体特性測定装置。
【請求項4】 前記平行ビーム発生手段は、筒状のケースにレンズと発光素子を収容するとともに、前記筒状のケースの外周にネジを有し、また前記位置決めリングは前記ネジに螺合するネジ孔が設けられている請求項1の光干渉式流体特性測定装置。
【請求項5】 同一の光源からの平行光ビームをビームスプリッタにより分割して測定セルと標準セルとに入射させ、前記各セルを通過した光ビームの干渉縞から流体の特性を測定する光干渉式流体特性測定装置において、前記ビームスプリッタに対向する位置に挿入口、及び1の基準位置出し用ピン挿入孔が穿設された測定装置本体の筐体と、前記挿入口に弾接する筒状部と第2の基準位置出し用ピン挿入孔が形成されたフランジとからなる基台と、該基台の先端に位置決め可能で、かつ平行光ビーム発生手段が固定された位置決めリングとからなる光源手段を備第1、及び第2の基準位置出し用ピン挿入孔に基準位置出し用ピンを挿入して前記平行光ビーム発生手段の位置が調整され、また前記光電変換手段、一端側を光学部材により封止された筒状体の他端側に封止されている光干渉式流体特性測定装置。
【請求項6】 前記筒状体の前方に凸レンズが配置され、また前記光学部材が前記凸レンズと拡大光学系を構成するレンズである請求項5に記載の光干渉式流体特性測定装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【特許番号】特許第3310109号(P3310109)
【登録日】平成14年5月24日(2002.5.24)
【発行日】平成14年7月29日(2002.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−131001
【出願日】平成6年5月20日(1994.5.20)
【公開番号】特開平7−311150
【公開日】平成7年11月28日(1995.11.28)
【審査請求日】平成12年6月16日(2000.6.16)
【出願人】(000250421)理研計器株式会社 (216)
【参考文献】
【文献】特開 昭47−45692(JP,A)
【文献】実開 昭48−37691(JP,U)
【文献】実開 昭53−47883(JP,U)
【文献】特公 昭38−11345(JP,B1)
【文献】特公 昭26−1694(JP,B1)
【文献】特公 昭41−12994(JP,B1)
【文献】特公 昭48−38277(JP,B1)
【文献】実公 昭39−22299(JP,Y1)
【文献】実公 昭42−19641(JP,Y1)