説明

光干渉性多層膜被覆粉体の設計方法、製造方法および光干渉性多層膜被覆粉体

耐候性および鮮やかな所望の色を有する光干渉性多層膜被覆粉体、その設計および製造方法である。所望の機能をもたらす基体粒子の物質および所望する色を選択し、該所望する色の分光光度曲線及びCEALAB表色系の値を測定し、使用し得る被覆層物質とその屈折率とをファクターに含め、薄膜多重干渉の漸化式等の数値解を解き、色差が最小になり、色相が1に近くなるCEALAB表色系の値を有する光干渉性多層膜被覆粉体となる、各被膜の物質、膜厚および製膜順序を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、光干渉性多層膜被覆粉体の設計方法、製造方法および光干渉性多層膜被覆粉体に関し、詳細には、耐候性および鮮やかな所望の色を有する光干渉性多層膜被覆粉体の設計方法、製造方法および光干渉性多層膜被覆粉体に関する。
【背景技術】
粉体の表面を他の物質の膜で被覆することにより、その粉体の性質を改善することや、その性質に多様性を与えることが知られ、特異な性質を備えた粉体を求める要望が増大している。特に金属粉体または金属化合物粉体だけが備える性質の他に別の性質を合わせ持ち、複合した機能を有する粉体が求められている。これらの粉体を製造するには、基体粒子の上に均一な厚さの金属酸化物膜等を複数層設けることが考えられた。
本発明者らは、先に基体粒子上に金属膜を形成し、その膜の反射効果により、粉体を白色化する方法(特開平3−271376号公報、特開平3−274278号公報)、金属アルコキシド溶液中に基体粒子を分散し、金属アルコキシドを加水分解することにより、基体粒子の表面に均一な0.01〜20μmの厚みの金属酸化物膜を形成し、前記基体を構成する金属とは異種の金属を成分とする金属酸化物膜を有する粉体を生成させる方法を発明した(特開平6−228604号公報)。
特に、上記に挙げた金属酸化物膜や金属膜を複数層設けた粉体は、各層の膜厚を調整することにより特別の機能を付与することができるものであって、例えば基体粒子の表面に、屈折率の異なる被覆膜を入射光の4分の1波長に相当する厚さずつ設けるようにすると、入射光を全て反射する粉体が得られる。これを磁性体を基体粒子とするものに適用すると、光を反射して白色のトナー用粉体を製造することができ、更にこの粉体の表面の前記光干渉性多層膜を構成する各単位被覆層が特定の同一波長の干渉反射ピークを有するように、多層薄膜の膜数、および各膜の屈折率、膜厚等を設定すると、染料や顔料を用いずとも、単色の粉体にすることができることを示した。
多層薄膜の被覆制御は、各層被覆後毎の分光反射曲線の実測値を設計値にフィッティングすることにより行われる。この制御は、特に基材が平板の場合であれば、Maxwellの電磁方程式の平面波解を設計値として精密に行うことができる。一般に、入射光波長λの光が全部でN層の多層膜積層部に入射角ΦN+1をもって入射する場合、n、dを下から第j番目の層(以下、第j層ともいう)の屈折率、膜厚とし、Φを第j層への光の入射角として、平面波についてMaxwellの式を展開すると、第j層からその直上の第j+1層への振幅反射強度をRj+1,jとして

なる漸化式が得られる。ここに式中rj+1,jは第j+1層、第j層間界面のフレネル反射係数であり、p偏光(電場が入射面に平行な成分)については、

s偏光(電場が入射面に垂直な成分)については

で与えられる。これらを解くことから、N層積層部からの振幅反射率Rflat(λ,θ)が得られる。
しかし、基材が粉体の場合においては、各被覆膜を、分光光度計にて測定される最大または最小反射波長が基材が平板体であるときに勘案される所望の値になるように製膜すると、最終的に得られる多層膜被覆粉体が所望の波長で所望の反射強度とならないという問題も生じた。
この問題に対しては、多層被覆平板体からの光反射を与える式に、特定の補正を行うことによって、特定波長光の反射強度が最大または最小になる各被覆膜の膜厚設計が適切になされる技術が開示された(例えば、特許文献1参照。)。
(特許文献1);特開2001−271006号公報
しかし、上記特許文献1に記載の技術は、分光光度波形の反射ピークまたはボトムが、所望の色に相当する波長領域に位置し、かつその反射率が最大または最小になることのみを目的としたものである。よって、上記特許文献1に記載の技術で設計された被膜構造の粉体の分光光度波形は、所望する色の分光光度波形とは、必ずしも一致しなかった。そのため、他の顔料等を用いて、所望する色に近くなるように、色合わせ・調色を行う必要があった。しかし、従来の有機顔料は、色が鮮やかであるが、耐候性が悪く、色が褪せてしまうという問題があった。
また、反射ピークまたはボトムのみに一致させるのみでは、玉虫色のような光沢の強いメタリックな不自然な光干渉色となる問題があった。
従って、本発明は、従来の技術の欠点を克服し、耐候性および鮮やかな所望の色を有する光干渉性多層膜被覆粉体、その設計および製造方法を提供することを目的とする。
【発明の開示】
以下に説明するように、目標とする色を出すために、フレネル干渉の原理を応用し、多層膜被覆粉体の最も目標に近づくよう、目標色との色差が最小となる反射波形を求め、それを再現することにより課題を解決することができた。
即ち本発明は以下の通りである。
(1)屈折率の異なる少なくとも2層の被覆層を基体粒子上に有し、かつ特定の波長の光を反射する光干渉性多層膜被覆粉体の設計方法において、
所望の機能をもたらす基体粒子の物質および所望する色を選択し、
該所望する色の分光光度曲線及びCIELAB表色系の値のL、a、bを測定し、
使用し得る被覆層物質とその屈折率とをファクターに含め、
基体粒子が平板状の場合、下記漸化式(1)

(式中、Rj+1,j:下から第j番目の層とその直上の層との間の振幅反射強度、
j:1以上の整数(j−1=0は基体を示す)、
i:虚数単位、
j+1,j:下から第j番目の層とその直上の層との間の界面のフレネル反射係数、
j,j−1:下から第j−1番目の層とその直上の層との間の振幅反射強度、
2δ:下から第j番目の層における位相差、
λ:所望の反射光波長、
:下から第j番目の層の屈折率、
:下から第j番目の層の膜厚、
φ:下から第j番目の層への光の入射角。)
に基づき、
基体粒子の形状を補正する式としては、上記漸化式(1)に代入して得られたRflat値をさらに下記式(2)

(式中、θ:最外層への入射角を示す)
に適用することにより得られる可視光反射波形に基づき、
下記式(3)

で表される色差(ΔZ)が最小になり、下記式(4)

で表される色相の比が1に近くなるL、a、bを有する光干渉性多層膜被覆粉体となる、各被膜の物質、膜厚および製膜順序を求めることを特徴とする光干渉性多層膜被覆粉体の設計方法。
(2)前記式(4)で表される色相が0.9〜1.1の範囲になるL、a、bを有する光干渉性多層膜被覆粉体となる、各被膜の物質、膜厚および製膜順序を求めることを特徴とする前記(1)の光干渉性多層膜被覆粉体の設計方法。
(3)前記式(3)で表される色差(ΔZ)が100以下となるL、a、bを有する光干渉性多層膜被覆粉体となる、各被膜の物質、膜厚および製膜順序を求めることを特徴とする前記(1)の光干渉性多層膜被覆粉体の設計方法。
(4)前記式(3)で表される色差(ΔZ)が50以下となるL、a、bを有する光干渉性多層膜被覆粉体となる、各被膜の物質、膜厚および製膜順序を求めることを特徴とする前記(3)の光干渉性多層膜被覆粉体の設計方法。
(5)コンピュータによるシュミレーションで行うことを特徴とする前記(1)の光干渉性多層膜被覆粉体の設計方法。
(6)屈折率の異なる少なくとも2層の被覆層を基体粒子上に有し、かつ特定の波長の光を反射する光干渉性多層膜被覆粉体の製造方法において、
所望の機能をもたらす基体粒子の物質および所望する色を選択し、
該所望する色の分光光度曲線及びCIELAB表色系の値のL、a、bを測定し、
使用し得る被覆層物質とその屈折率とをファクターに含め、
基体粒子が平板状の場合、下記漸化式(1)

(式中、Rj+1,j:下から第j番目の層とその直上の層との間の振幅反射強度、
j:1以上の整数(j−1=0は基体を示す)、
i:虚数単位、
j+1,j:下から第j番目の層とその直上の層との間の界面のフレネル反射係数、
j,j−1:下から第j−1番目の層とその直上の層との間の振幅反射強度、
2δ:下から第j番目の層における位相差、
λ:所望の反射光波長、
:下から第j番目の層の屈折率、
:下から第j番目の層の膜厚、
φ:下から第j番目の層への光の入射角。)
に基づき、
基体粒子の形状を補正する式としては、上記漸化式(1)に代入して得られたRflat値をさらに下記式(2)

(式中、θ最外層への入射角を示す)
に適用することにより得られる可視光反射波形に基づき、
下記式(3)

で表される色差(ΔZ)が最小になり、下記式(4)

で表される色相の比が1に近くなるL、a、bを有する光干渉性多層膜被覆粉体となる、各被膜の物質、膜厚および製膜順序を求め、
上記のように求められた、各被膜の物質、膜厚および製膜順序になるよう基体粒子上に各被覆膜を設け、光干渉性多層膜被覆粉体を製造する。また、製膜を行う場合は、得られる膜の膜厚が、原料組成あるいは反応時間(堆積時間)および粉体の比表面積等との関係をあらかじめ求めておくことが好ましい。
原料量および比表面積と膜厚の関係をあらかじめ明らかにしておき、これら製膜条件と膜厚の関係を利用して、目標とする色のL、a、bと実際に多層膜製膜後に得られた多層膜被覆粉体の色をL、a、bの色差、ΔZと下記式(5)で表わされる色差ΔZ がほぼ等しくなり、

同時に、下記式(6)で表わされる色相の比がほぼ1になるように、

、a、bを有する被膜が製膜された光干渉性多層膜被覆粉体の製造方法。
(7)前記式(4)で表される色相が0.9〜1.1の範囲になるL、a、bを有する光干渉性多層膜被覆粉体となる、各被膜の物質、膜厚および製膜順序を求めることを特徴とする前記(6)の光干渉性多層膜被覆粉体の製造方法。
(8)前記式(3)で表される色差(ΔZ)が100以下となるL、a、bを有する光干渉性多層膜被覆粉体となる、各被膜の物質、膜厚および製膜順序を求めることを特徴とする前記(6)の光干渉性多層膜被覆粉体の製造方法。
(9)前記式(3)で表される色差(ΔZ)が50以下となるL、a、bを有する光干渉性多層膜被覆粉体となる、各被膜の物質、膜厚および製膜順序を求めることを特徴とする前記(8)の光干渉性多層膜被覆粉体の製造方法。
(10)コンピュータによるシュミレーションで、各被膜の物質、膜厚および製膜順序を求めることを特徴とする前記(6)の光干渉性多層膜被覆粉体の製造方法。
(11)屈折率の異なる少なくとも2層の被覆層を基体粒子上に有し、かつ特定の波長の光を反射する光干渉性多層膜被覆粉体において、
所望の機能をもたらす基体粒子の物質および所望する色を選択し、
該所望する色の分光光度曲線及びCIELAB表色系の値のL、a、bを測定し、
使用し得る被覆層物質とその屈折率とをファクターに含め、
基体粒子が平板状の場合、下記漸化式(1)

(式中、Rj+1,j:下から第j番目の層とその直上の層との間の振幅反射強度、
j:1以上の整数(j−1=0は基体を示す)、
i:虚数単位、
j+1,j:下から第j番目の層とその直上の層との間の界面のフレネル反射係数、
j,j−1:下から第j−1番目の層とその直上の層との間の振幅反射強度、
2δ:下から第j番目の層における位相差、
λ:所望の反射光波長、
:下から第j番目の層の屈折率、
:下から第j番目の層の膜厚、
φ:下から第j番目の層への光の入射角。)
に基づき、
基体粒子の形状を補正する式としては、上記漸化式(1)に代入して得られたRflat値をさらに下記式(2)

(式中、θ:最外層への入射角を示す)
に適用することにより得られる可視光反射波形に基づき、
下記式(3)

で表される色差(ΔZ)が最小になり、下記式(4)

で表される色相が1に近くなるL、a、bを有する光干渉性多層膜被覆粉体となる、各被膜の物質、膜厚および製膜順序が求め、
上記のように求められた、各被膜の物質、膜厚および製膜順序になるよう基体粒子上に各被覆膜を設け、光干渉性多層膜被覆粉体を製造する。また、製膜を行う場合は、得られる膜の膜厚が、原料組成あるいは反応時間(堆積時間)および粉体の比表面積等との関係をあらかじめ求めておくことが好ましい。
原料量および比表面積と膜厚の関係をあらかじめ明らかにしておき、これら製膜条件と膜厚の関係を利用して、目標とする色のL、a、b と実際に多層膜製膜後に得られた多層膜被覆粉体の色をL、a、bの色差、ΔZと下記式(5)で表わされる色差ΔZがほぼ等しくなり、

同時に、下記式(6)で表わされる色相の比がほぼ1になるように、

、a、bを有する被膜が製膜された光干渉性多層膜被覆粉体。
(12)前記式(4)で表される色相が0.9〜1.1の範囲になるL、a、bを有する光干渉性多層膜被覆粉体となる、各被膜の物質、膜厚および製膜順序を求めたことを特徴とする前記(11)の光干渉性多層膜被覆粉体。
(13)前記式(3)で表される色差(ΔZ)が100以下となるL、a、bを有する光干渉性多層膜被覆粉体となる、各被膜の物質、膜厚および製膜順序を求めたことを特徴とする前記(11)の光干渉性多層膜被覆粉体。
(14)前記式(3)で表される色差(ΔZ)が50以下となるL、a、bを有する光干渉性多層膜被覆粉体となる、各被膜の物質、膜厚および製膜順序を求めたことを特徴とする前記(13)の光干渉性多層膜被覆粉体。
(15)コンピュータによるシュミレーションで、各被膜の物質、膜厚および製膜順序を求めたことを特徴とする前記(11)の光干渉性多層膜被覆粉体。
以下に本発明の光干渉性多層膜被覆粉体の設計方法、製造方法および光干渉性多層膜被覆粉体について詳細に説明する。
本発明の方法によって、光干渉性多層膜被覆粉体を設計する際には、第1に、所望の機能をもたらす基体粒子の物質を選択する。例えば、カラー磁性インキ用として光干渉性多層膜被覆粉体を設計、製造する際には、基体粒子として、マグネタイト粉や鉄粉等の磁性体のものを選択すればよい。
基体粒子の物質が特定されると、必然的に、その屈折率も特定される。
第2に、所望する色を選択する。例えば、カラー磁性インキ用として光干渉性多層膜被覆粉体を設計、製造する際には、設計、製造を目的とする磁性インキの色を選択する。色の選択は、実存するサンプルより選択するのが好ましい。
例えば、各国の塗料工業会が発行している塗料用標準色見本帳等より選択するのが好ましい。
第3に、選択した所望する色の分光光度曲線及びCIELAB表色系の値のL、a、bを測定する。例えば、各国の塗料工業会が発行している塗料用標準色見本帳等の実存する色サンプルの分光光度曲線及びCIELAB表色系の値のL、a、bを測定する。
第4に、使用し得る被覆層物質とその屈折率とをファクターに含め、
基体粒子が平板状の場合、下記漸化式(1)

(式中、Rj+1,j:下から第j番目の層とその直上の層との間の振幅反射強度、
j:1以上の整数(j−1=0は基体を示す)、
i:虚数単位、
j+1,j:下から第j番目の層とその直上の層との間の界面のフレネル反射係数、
j,j−1:下から第j−1番目の層とその直上の層との間の振幅反射強度、
2δ:下から第j番目の層における位相差、
λ:所望の反射光波長、
:下から第j番目の層の屈折率、
:下から第j番目の層の膜厚、
φ:下から第j番目の層への光の入射角。)
に基づき、
基体粒子の形状を補正する式としては、上記漸化式(1)に代入して得られたRflat値をさらに下記式(2)

(式中、θ:最外層への入射角を示す)
に適用することにより得られる可視光反射波形に基づき、、
下記式(3)

で表される色差(ΔZ)が最小になり、下記式(4)

で表される色相の比が1に近くなるL、a、bを有する光干渉性多層膜被覆粉体となる、各被膜の物質、膜厚および製膜順序を求める。
このとき、色差と色相では、色相を優先して適合させるようにするのが好ましい。始めに色相の比が1に近くなるようなおおよその被膜条件を導き出し、次いで、色差が最小になるように前記の導き出されたおおよその被膜条件を更に補正する。色差が最小になるように被膜条件を前記の通り補正した後、更に、色相の比がより1に近くなるように被膜条件を更に補正する。そしてまた、色差がより最小になるように被膜条件を再度補正する。この被膜条件の補正する作業は、色差が最小になり、色相の比が最も1に近くなるまで行なわれる。なおこの補正作業は、前記漸化式(1)とそれにより得られる解析解をJIS Z 8729の付表を用いて換算することによって行なわれる。
上記の作業において、色相の比は1に近くなるようにすればよいが、具体的には0.9〜1.1の範囲になるようにするのが好ましい。
また、色差が最小になるようすればよいが、具体的には100以下となるようにするのが好ましく、50以下となるようにするのがより好ましい。
また、上記の作業は、コンピュータによるシュミレーションで行うことが好ましい。
コンピュータによるシュミレーションで行う際には、選択した基体粒子の屈折率、選択した所望する色の分光光度曲線及びCIELAB表色系の値のL、a、bおよび使用し得る被覆層物質とその屈折率とをコンピュータに入力し、上記漸化式(1)及び基体粒子の形状を補正する(球近似を行う)ための式(2)に基づいて作製されたプログラムにより解析解を求める。
ついで、上記のように求められた、各被膜の物質、膜厚および製膜順序になるよう基体粒子上に各被覆膜を設け、光干渉性多層膜被覆粉体を製造する。また、製膜を行う場合は、得られる膜の膜厚が、原料組成あるいは反応時間(堆積時間)および粉体の比表面積等との関係をあらかじめ求めておくことが好ましい。
特に液相での製膜の場合には、原料量および比表面積と膜厚の関係をあらかじめ明らかにしておくことが好ましい。気相での製膜の場合には、原料供給量(蒸発量)と比表面積の関係から堆積速度を求めておくことが好ましい。
これら製膜条件と膜厚の関係を利用すると、目標とする膜厚に対して精度の高い膜厚制御が可能になり、目標とする色のL、a、bをL、a、b、設計した多層膜被覆粉体の色をL、a、bとし、実際に製膜して得られる多層膜被覆粉体の色をL、a、bとすると、目標とする色と設計上の多層膜被覆粉体の色との色差、ΔZと下記式(3)(5)で表わされるΔZがほぼ等しくなり、

同時に、下記式(4)(6)で表わされる式差の比がほぼ1に近い同じ値になる。

したがって、目標色および設計値とほぼ同じ色の多層膜被覆粉体を再現することができる。
本発明の光干渉性多層膜被覆粉体に用いられる基体粒子としては、予めその材質、を選定するのであれば、特に限定されず、金属を含む無機物でも、有機物でもよく磁性体、誘電体、導電体および絶縁体等でもよい。基体が金属の場合、鉄、ニッケル、クロム、チタン、アルミニウム等、どのような金属でもよいが、その磁性を利用するものにおいては、鉄等磁性を帯びるものが好ましい。これらの金属は合金でも良く、前記の磁性を有するものであるときには、強磁性合金を使用することが好ましい。また、その粉体の基体が金属化合物の場合には、その代表的なものとして前記した金属の酸化物が挙げられるが、例えば、鉄、ニッケル、クロム、チタン、アルミニウム、ケイ素等の他、カルシウム、マグネシウム、バリウム等の酸化物、あるいはこれらの複合酸化物でも良い。さらに、金属酸化物以外の金属化合物としては、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物、金属フッ化物、金属炭酸塩、金属燐酸塩などを挙げることができる。
さらに、基体粒子として、金属以外では、半金属、非金属の化合物、特に酸化物、炭化物、窒化物であり、シリカ、ガラスビーズ等を使用することができる。その他の無機物としてはシラスバルーン(中空ケイ酸粒子)などの無機中空粒子、微小炭素中空球(クレカスフェアー)、電融アルミナバブル、アエロジル、ホワイトカーボン、シリカ微小中空球、炭酸カルシウム微小中空球、炭酸カルシウム、パーライト、タルク、ベントナイト、合成雲母、白雲母、など雲母類、カオリン等を用いることができる。
有機物としては、樹脂粒子が好ましい。樹脂粒子の具体例としては、セルロースパウダー、酢酸セルロースパウダー、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリエステル、メラミン樹脂、ポリウレタン、酢酸ビニル樹脂、ケイ素樹脂、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル、スチレン、エチレン、プロピレン及びこれらの誘導体の重合または共重合により得られる球状または破砕の粒子などが挙げられる。特に好ましい樹脂粒子はアクリル酸またはメタアクリル酸エステルの重合により得られる球状のアクリル樹脂粒子である。但し、樹脂粒子を基体とする場合、乾燥における加熱温度は樹脂の融点以下でなければならない。
基体の形状としては、球体、亜球状体、正多面体等の等方体、直方体、回転楕円体、菱面体、板状体、針状体(円柱、角柱)などの多面体、さらに粉砕物のような全く不定形な粉体も使用可能である。これらの基体は、粒径については特に限定するものでないが、0.01μm〜数mmの範囲のものが好ましい。
また、基体粒子の比重としては、0.1〜10.5の範囲のものが用いられるが、得られた粉体を液体等に分散させて使用する場合には、流動性、浮遊性の面から0.1〜5.5が好ましく、より好ましくは0.1〜2.8、更に、好ましくは0.5〜1.8の範囲である。得られた粉体を液体等に分散させて使用する場合、基体の比重が0.1未満では液体中の浮力が大きすぎ、膜を多層あるいは非常に厚くする必要があり、不経済である。一方、10.5を超えると、浮遊させるための膜が厚くなり、同様に不経済である。
上記の基体粒子上に、求められた、被覆膜物質、膜厚および製膜順序になるように各被覆膜を、製膜する。製膜する被覆膜としては、求められた被覆膜物質、被覆数、被覆順序、とする以外は、特に限定されないが、金属化合物、有機物等からなるものが挙げられる。
前記金属化合物としては、金属酸化物や金属硫化物、金属セレン化物、金属テルル化物、金属フッ化物を挙げることができる。より具体的には、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化カドミウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化ケイ素、酸化アンチモン、酸化ネオジウム、酸化ランタン、酸化ビスマス、酸化セリウム、酸化錫、酸化マグネシウム、酸化リチウム、酸化鉛、硫化カドミウム、硫化亜鉛、硫化アンチモン、セレン化カドミウム、テルル化カドミウム、フッ化カルシウム、フッ化ナトリウム、フッ化アルミニウム3ナトリウム、フッ化リチウム、フッ化マグネシウム等を好適に使用できる。
以下に、前記金属化合物膜の製膜方法について説明する。製膜方法としては、PVD法、CVD法あるいはスプレードライ法等の気相蒸着法により、基体粒子の表面に直接、蒸着する方法が可能である。しかしながら、本発明者らが先に提案した特開平6−228604号公報、特開平7−90310号公報、国際公開WO96/28269号公報に記載されている有機溶媒中での金属アルコキシドの加水分解による固相析出法(金属アルコキシド法)や、特開平11−131102号公報に記載の水溶液中での金属塩からの反応による固相析出法(水系法)等が好ましい。
なお、上記製膜方法において、金属アルコキシド法は原料として高価な金属アルコキシドや、反応溶媒として比較的高価で危険性のある有機溶媒を必要とする。このため、製造装置または設備等も防爆仕様にしなければならず、更に、コストパーフォマンスが悪くなる。この点からも金属アルコキシド法に比べ水系法が好ましい。
前記有機物としては、特に限定されるものではないが、好ましくは樹脂である。樹脂の具体例としては、セルロース、酢酸セルロース、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリエステル、メラミン樹脂、ポリウレタン、酢酸ビニル樹脂、ケイ素樹脂、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル、スチレン、エチレン、プロピレン及びこれらの誘導体の重合体または共重合体などが挙げられる。
有機物膜(樹脂膜)を形成する場合、a.液相中、基体粒子を分散させて乳化重合させることにより、その粒子の上に樹脂膜を形成させる方法(液相中での重合法)や、b.気相中での製膜法(CVD)(PVD)等が採られる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、実施例における、目標色サンプルと設計粉体と実際に作製した粉体の分光光度曲線を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下に本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、勿論本発明の範囲は、これらによって限定されるものではない。
【実施例】
1.初期条件の決定
▲1▼機能にあわせて基体粒子を決めた。磁性を持たせるため、カーボニル鉄粉(平均粒径4μm)を選んだ。
▲2▼目標とする色を決めた。目標とした色は、さえたシアン色、すなわち(社)日本塗料工業会の塗料用標準色見本帳のマンセル色5B4/9を目標とした。
▲3▼目標とする色の分光反射曲線、及び、CIELAB表色系の値のL、a、bを測定した。
目標とする色の分光光度曲線は第1図の破線の通りであり、CIELAB表色系の値のL、a、bは次の表のとおりであった。

▲4▼前記基体粒子の表面に、2層以上の多層膜を被覆した多層膜被覆粉体のL、a、bが次の条件を満たすものを探す。
波形算出には、薄膜多重干渉の漸化式(1)と形状補正の式(2)に基づいて、各被膜層について解くことにより各層膜厚を決定した。最適膜厚はプログラムを作っておき、数値解として、コンピュータを用いて解いた。多層膜の膜厚最適化の方法はシンプレックス法にて行なった。
2.目標膜厚算出
目標とする膜厚、膜構成の数値解を得るための限定条件を次のようにして数値解を求めた。
a.製膜可能な膜物質についてあらかじめ用意した光学常数(測定済)を用いた。
b.色差が最小になるもの(100以下、好ましくは50以下であるもの)を探索した。

c.色相が一致するよう以下の条件も付けた。
0.9≦(a/b)/(a/b)≦1.1も満たすものを探した。
(色相の比が1の場合色が同じになる。但し明るさは違う。)
d.膜数は2層から始め、解が見つかるまで最大60層までを限度とした。
▲5▼最適化された3層で、目標色に近い色となる多層被覆粉体の、理論上の分光反射曲線が求められた。その理論上の分光反射曲線を第1図に細い実線で示す。またこの分光光度曲線から、JIS Z 8729の付表を用いて換算することによって得られる設計上のCIELAB表色系の値L、a、bは以下の表の通りであった。

また、目標色((社)日本塗料工業会の塗料用標準色見本帳のマンセル色5B4/9)との色差、色相は以下の通りであった。

また、設計作業により得られた膜構成条件(膜数、膜物質種類、膜順序、各膜厚)は、以下の通りであった。

3.各被覆層製膜
上記の膜構造条件を製膜時の目標とした。
設計に従い、所定の膜数、膜物質を所定の膜厚どおり被覆するために次の操作を行った。
▲6▼基体粒子の表面に形成するそれぞれの膜物質の原料添加量と膜厚の関係を決めておいた。
▲7▼粒子表面に目標の膜厚の膜を製膜した。この際、最適化された各膜について、膜被覆粉体が設計値どおりに製膜されているが波形により確認しながら行なった。
(1)1層目酸化ケイ素の製膜
(緩衝溶液の調整)
1リットルの水に対し、0.3モルの塩化カリウムと0.3モルのホウ酸を溶解し水溶液1とした。
1リットルの水に対し、0.4モルの水酸化ナトリウムを溶解し水溶液2とした。
水溶液1と水溶液2を容積比で250:115で混合し、緩衝溶液とした。
(酸化ケイ素膜製膜)
BASF製カーボニル鉄粉(平均粒径4μm)30gに対しあらかじめ準備しておいた3751mlの緩衝溶液と純水313mlを入れ、超音波槽で28kHz、600Wの超音波をかけながら、原料粉体を前記混合溶液に攪拌しながら投入し十分に分散させた。
これに、前記粉体を分散した混合溶液を30℃に保ちながら、あらかじめ用意しておいた1400mlのケイ酸ナトリウム水溶液(10wt%)を2.67ml/分で徐々に添加し、粉体表面にシリカ膜を析出させた。
ケイ酸ナトリウム水溶液添加終了後、さらに2時間反応させた。
製膜反応終了後、シリカ製膜粉を含むスラリーを十分な水でデカンテーションを繰り返し洗浄した。
洗浄後、固液分離し、固形分をバットに入れ、乾燥機で120℃で、8時間乾燥した。
この乾燥粉を回転式チューブ炉で、窒素雰囲気で500℃で30分間熱処理を行い、酸化ケイ素被覆鉄粉Aを得た。
(2)2層目酸化アルミニウムの製膜
(1)で用意したものと同じ緩衝溶液4200mlと純水353mlを混合後、(1)で得られた粉体Aの25gを、28kHz、600Wの超音波槽で超音波をかけながら、該混合液に攪拌しながら投入し十分に分散させた。
次いで、前記粉体Aを分散した混合溶液を30℃に保ちながら、あらかじめ用意しておいた770mlの塩化アルミニウム水溶液(8wt%)を2.1ml/分の供給速度で添加し、粉体Aの表面にアルミナ膜を析出させた。
塩化アルミニウム水溶液添加終了後、さらに2時間反応させた。
製膜反応終了後、アルミナ製膜粉を含むスラリーを十分な水でデカンテーションを繰り返し洗浄した。
洗浄後、固液分離し、固形分をバットに入れ、乾燥機で120℃、8時間乾燥した。
この乾燥粉を回転式チューブ炉で、窒素雰囲気下で、500℃、30分間熱処理を行い、酸化ケイ素/酸化アルミニウム被覆鉄粉Aを得た。
(3)3層目酸化チタンの製膜
(滴下液の調整)
20%塩化チタン[III]溶液133gに、28%アンモニア水273g、31%過酸化水素水133gを混合しベルオキソチタン酸溶液(以下滴下液と称す)を得た。
(酸化チタン被膜の製膜)
酸化ケイ素/酸化アルミニウム被覆鉄粉Aの20gを、(1)で用意したものと同じ緩衝溶液4200mlと純水353mlを混合した混合液に、28kHz、600Wの超音波槽で超音波をかけながら、攪拌しながら投入し十分に分散させた。
これに、滴下液135.2gを1.5ml/分の供給速度で添加し、粉体表面にチタニア膜を析出させた。
滴下終了後2時間製膜反応を行った。
製膜反応終了後、チタニア製膜粉を含むスラリーを十分な水でデカンテーションを繰り返し洗浄した。
洗浄後、固液分離し、固形分をバットに入れ、乾燥機で、120℃、8時間乾燥した。
この乾燥粉を回転式チューブ炉で、窒素雰囲気下で、500℃、30分間熱処理を行い、酸化ケイ素/酸化アルミニウム/酸化チタン被覆鉄粉Aを得た。
4.製造物評価
得られた粉体Aの分光反射曲線、及び、CIELAB表色系の値L、a、bを測定した。
得られた粉体Aの分光反射曲線は、第1図に太い実線で示す通りであり、CIELAB表色系の値値L、a、bは次の表のとおりであった。

また、目標色((社)日本塗料工業会の塗料用標準色見本帳のマンセル色5B4/9)との色差、色相は以下の通りであった。

(a/b)/(a/b)=0.97であった。
実際に得られた粉体Aの色は、目視では目標色((社)日本塗料工業会の塗料用標準色見本帳のマンセル色5B4/9)と同じであった。すなわち上記の手順により、多層膜被覆粉体を設計、製造することにより、所望の色を有する粉体が得ることができた。
【産業上の利用可能性】
本発明の光干渉性多層膜被覆粉体の設計方法により、耐候性および鮮やかな所望の色を有する光干渉性多層膜被覆粉体を得ることができる。このようにして得られた光干渉性多層膜被覆粉体は、工業の多くの分野で、例えば自動車被覆、装飾被覆、プラスチック顔料着色、塗料、印刷インキ等において有用なものである。
また、このようにして得られた光干渉性多層膜被覆粉体は、偽造防止秘密文書、例えば紙幣、小切手、小切手カード、クレジットカード、収入印紙、切手、鉄道及び航空券、テレホンカード、宝くじ券、ギフト券、渡航及び身分証明書の作成のためにも有用である。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈折率の異なる少なくとも2層の被覆層を基体粒子上に有し、かつ特定の波長の光を反射する光干渉性多層膜被覆粉体の設計方法において、
所望の機能をもたらす基体粒子の物質および所望する色を選択し、
該所望する色の分光光度曲線及びCIELAB表色系の値のL、a、bを測定し、
使用し得る被覆層物質とその屈折率とをファクターに含め、
基体粒子が平板状の場合、下記漸化式(1)

(式中、Rj+1,j:下から第j番目の層とその直上の層との間の振幅反射強度、
j:1以上の整数(j−1=0は基体を示す)、
i:虚数単位、
j+1,j:下から第j番目の層とその直上の層との間の界面のフレネル反射係数、
j,j−1:下から第j−1番目の層とその直上の層との間の振幅反射強度、
2δ:下から第j番目の層における位相差、
λ:所望の反射光波長、
:下から第j番目の層の屈折率、
:下から第j番目の層の膜厚、
φ:下から第j番目の層への光の入射角。)
に基づき、
基体粒子の形状を補正する式としては、上記漸化式(1)に代入して得られたRflat値をさらに下記式(2)

(式中、θ:最外層への入射角を示す)
に適用することにより得られる可視光反射波形に基づき、
下記式(3)

で表される色差(ΔZ)が最小になり、下記式(4)

で表される色相の比が1に近くなるL、a、bを有する光干渉性多層膜被覆粉体となる、各被膜の物質、膜厚および製膜順序を求めることを特徴とする光干渉性多層膜被覆粉体の設計方法。
【請求項2】
前記式(4)で表される色相が0.9〜1.1の範囲になるL、a、bを有する光干渉性多層膜被覆粉体となる、各被膜の物質、膜厚および製膜順序を求めることを特徴とする請求の範囲第1項記載の光干渉性多層膜被覆粉体の設計方法。
【請求項3】
前記式(3)で表される色差(ΔZ)が100以下となるL、a、bを有する光干渉性多層膜被覆粉体となる、各被膜の物質、膜厚および製膜順序を求めることを特徴とする請求の範囲第1項記載の光干渉性多層膜被覆粉体の設計方法。
【請求項4】
前記式(3)で表される色差(ΔZ)が50以下となるL、a、bを有する光干渉性多層膜被覆粉体となる、各被膜の物質、膜厚および製膜順序を求めることを特徴とする請求の範囲第3項記載の光干渉性多層膜被覆粉体の設計方法。
【請求項5】
コンピュータによるシュミレーションで行うことを特徴とする請求の範囲第1項記載の光干渉性多層膜被覆粉体の設計方法。
【請求項6】
屈折率の異なる少なくとも2層の被覆層を基体粒子上に有し、かつ特定の波長の光を反射する光干渉性多層膜被覆粉体の製造方法において、
所望の機能をもたらす基体粒子の物質および所望する色を選択し、
該所望する色の分光光度曲線及びCIELAB表色系の値のL、a、bを測定し、
使用し得る被覆層物質とその屈折率とをファクターに含め、
基体粒子が平板状の場合、下記漸化式(1)

(式中、Rj+1,j:下から第j番目の層とその直上の層との間の振幅反射強度、
j:1以上の整数(j−1=0は基体を示す)、
i:虚数単位、
j+1,j:下から第j番目の層とその直上の層との間の界面のフレネル反射係数、
j,j−1:下から第j−1番目の層とその直上の層との間の振幅反射強度、
2δ:下から第j番目の層における位相差、
λ:所望の反射光波長、
:下から第j番目の層の屈折率、
:下から第j番目の層の膜厚、
φ:下から第j番目の層への光の入射角。)
に基づき、
基体粒子の形状を補正する式としては、上記漸化式(1)に代入して得られたRflat値をさらに下記式(2)

(式中、θ:最外層への入射角を示す)
に適用することにより得られる可視光反射波形に基づき、
下記式(3)

で表される色差(ΔZ)が最小になり、下記式(4)

で表される色相の比が1に近くなるL、a、bを有する光干渉性多層膜被覆粉体となる、各被膜の物質、膜厚および製膜順序を求め、
上記の求めた被膜構造となるように、上記で選択した基体粒子上に、多層膜を被覆することを特徴とする光干渉性多層膜被覆粉体の製造方法。
【請求項7】
前記式(4)で表される色相の比が0.9〜1.1の範囲になるL、a、bを有する光干渉性多層膜被覆粉体となる、各被膜の物質、膜厚および製膜順序を求めることを特徴とする請求の範囲第6項記載の光干渉性多層膜被覆粉体の製造方法。
【請求項8】
前記式(3)で表される色差(ΔZ)が100以下となるL、a、bを有する光干渉性多層膜被覆粉体となる、各被膜の物質、膜厚および製膜順序を求めることを特徴とする請求の範囲第6項記載の光干渉性多層膜被覆粉体の製造方法。
【請求項9】
前記式(3)で表される色差(ΔZ)が50以下となるL、a、bを有する光干渉性多層膜被覆粉体となる、各被膜の物質、膜厚および製膜順序を求めることを特徴とする請求の範囲第8項記載の光干渉性多層膜被覆粉体の製造方法。
【請求項10】
コンピュータによるシュミレーションで、各被膜の物質、膜厚および製膜順序を求めることを特徴とする請求の範囲第6項記載の光干渉性多層膜被覆粉体の製造方法。
【請求項11】
屈折率の異なる少なくとも2層の被覆層を基体粒子上に有し、かつ特定の波長の光を反射する光干渉性多層膜被覆粉体において、
所望の機能をもたらす基体粒子の物質および所望する色を選択し、
該所望する色の分光光度曲線及びCIELAB表色系の値のL、a、bを測定し、
使用し得る被覆層物質とその屈折率とをファクターに含め、
基体粒子が平板状の場合、下記漸化式(1)

(式中、Rj+1,j:下から第j番目の層とその直上の層との間の振幅反射強度、
j:1以上の整数(j−1=0は基体を示す)、
i:虚数単位、
j+1,j:下から第j番目の層とその直上の層との間の界面のフレネル反射係数、
j,j−1:下から第j−1番目の層とその直上の層との間の振幅反射強度、
2δ:下から第j番目の層における位相差、
λ:所望の反射光波長、
:下から第j番目の層の屈折率、
:下から第j番目の層の膜厚、
φ:下から第j番目の層への光の入射角。)
に基づき、
基体粒子の形状を補正する式としては、上記漸化式(1)に代入して得られたRflat値をさらに下記式(2)

(式中、θ:最外層への入射角を示す)
に適用することにより得られる可視光反射波形に基づき、
下記式(3)

で表される色差(ΔZ)が最小になり、下記式(4)

で表される色相が1に近くなるL、a、bを有する光干渉性多層膜被覆粉体となる、各被膜の物質、膜厚および製膜順序が求め、
上記の求められた被膜構造となるように、上記で選択された基体粒子上に、多層膜を被覆したことを特徴とする光干渉性多層膜被覆粉体。
【請求項12】
前記式(4)で表される色相の比が0.9〜1.1の範囲になるL、a、bを有する光干渉性多層膜被覆粉体となる、各被膜の物質、膜厚および製膜順序を求めたことを特徴とする請求の範囲第11項記載の光干渉性多層膜被覆粉体。
【請求項13】
前記式(3)で表される色差(ΔZ) が100以下となるL、a、bを有する光干渉性多層膜被覆粉体となる、各被膜の物質、膜厚および製膜順序を求めたことを特徴とする請求の範囲第11項記載の光干渉性多層膜被覆粉体。
【請求項14】
前記式(3)で表される色差(ΔZ)が50以下となるL、a、bを有する光干渉性多層膜被覆粉体となる、各被膜の物質、膜厚および製膜順序を求めたことを特徴とする請求の範囲第13項記載の光干渉性多層膜被覆粉体。
【請求項15】
コンピュータによるシュミレーションで、各被膜の物質、膜厚および製膜順序を求めたことを特徴とする請求の範囲第11項記載の光干渉性多層膜被覆粉体。

【国際公開番号】WO2004/031305
【国際公開日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【発行日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−541180(P2004−541180)
【国際出願番号】PCT/JP2002/010210
【国際出願日】平成14年10月1日(2002.10.1)
【出願人】(000227250)日鉄鉱業株式会社 (82)
【出願人】(594166535)
【Fターム(参考)】