説明

光情報記憶媒体用基板の製造方法及びその方法に使用する成型ローラ

【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
本発明は、光情報記憶媒体用基板の製造方法及びその方法に使用する成型ローラに関し、詳しくはプリフォーマット信号の凹凸やトラッキング信号の為の案内溝の凹凸に形成されている光ディスク等の高密度情報記憶媒体用基板の製造方法及びその方法に使用する成型ローラに関するものである。
[従来の技術]
従来、上記光情報記憶媒体用基板の製造は、インジェクション成型、あるいはコンプレッション成型等の方法が行われているが、この方法では基板の平面度,平滑度が充分でなく、またそり,気泡の混入等が発生し易く、このために光による情報の検出が著しく阻害される問題がある。この様な問題をさけるためには製造時の温度,圧力の条件出しや、型の精度,気泡の発生防止等に非常に困難が伴ない、また大きい装置を必要とし費用は莫大となる。さらに、コンプレッション成型においては、枚葉処理であるため、後工程が繁雑で生産性が悪い問題がある。
他方、プラスチックの平板は、気泡もなく平滑で均一な板が容易に製造されているので、このプラスチックの平板にスタンパを密着させて圧力を加え、凹凸を転写する方法も提案されているが、平板の盤面全体に圧力をかけるには、非常に大きな圧力を必要とする。
これを解決する方法として、押出し機から押出されたプラスチックシートを、スタンパを密着させた成型ローラと加圧ローラの間を通せば、小さい圧力でスタンパーの凹凸をプラスチックシートに刻み込む事ができ、その後中心穴及び外周をトリミングすれば、小さな装置で手軽に光情報記憶媒体用基板を得ることができる。
[発明が解決しようとする課題]
しかしながら、成型ローラの製作において、スタンパを鏡面ローラの表面に密着させる方法としては、スタンパの一方をネジで押えて鏡面ローラに固定し、他方を機械的に引張りテンションを加えながら鏡面ローラに巻きつけて固定する方法が行なわれているが、この方法では鏡面ローラとスタンパの間に隙間が出来やすく平面性等に欠点があった。さらに、隙間による鏡面ローラとスタンパの熱の不均一の為、プラスチックシートに凹凸の転写を良好に行うことができない欠点があった。
また、鏡面ローラとスタンパの間をエポキシ樹脂等の接着剤で固定することが考えられるが、スタンパの凹凸は押出シートに押されているうちに変形するために変換する必要がある。しかし、スタンパを鏡面ローラに接着剤で固定しているために成型ローラごと交換しなければならず、生産性が悪くなる欠点がある。
本発明は、この様な従来技術の欠点を改善するためになされたものであり、スタンパの凹凸を押出しシートに良好に転写することが可能な高密度光情報記憶媒体用基板の製造方法、及び鏡面ローラとスタンパを均一に隙間なく密着させ、またスタンパの交換を容易に行うことが可能な成型ローラを提供することを目的とするものである。
[課題を解決するための手段]
即ち、本発明は、光を用いて記録再生する光情報記憶媒体用の基板を製造する方法において、押出し機から押出された熱可塑性合成樹脂シートを、鏡面ローラの表面に低融点金属を介してスタンパを固定してなる成型ローラと加圧ローラ間を通して前記熱可塑性合成樹脂シートの表面に凹凸状の信号を形成することを特徴とする光情報記憶媒体用基板の製造方法である。
また、本発明は、その製造方法に使用する、鏡面ローラの表面に低融点金属を介してスタンパを固定してなることを特徴とする成型ローラである。
本発明において、鏡面ローラの表面に低融点金属を介してスタンパを固定する方法は、ネジとめ等の着脱が可能な方法があればよい。
[作用]
本発明の光情報記憶媒体用基板の製造方法は、光を用いて記録再生する光情報記憶媒体用の基板を製造する方法において、鏡面ローラの表面に低融点金属を介してスタンパをネジで固定してなる成型ローラを使用するので、成型時に成型ローラを高温にした際に低融点金属が軟らかくなり鏡面ローラとスタンパ間の隙間をなくし、さらに固定しているネジをはずした時にスタンパを簡単に取外すことが可能になる。
この様な成型ローラを使用し、押出し機から押出された熱可塑合成樹脂シートを、成型ローラと加圧ローラ間を通すことにより、前記熱可塑性合成樹脂シートの表面にスタンパの凹凸状の信号を良好に転写することが可能となる。
[実施例]
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
実施例1 第1図は本発明の光情報記憶媒体用基板の製造方法に用いる装置の一例を示す説明図である。同第1図において、1は押出し機、2はポリカーボネート等の熱可塑性合成樹脂シート、3は成型ローラ、4及び5は鏡面の加圧ローラ、6は引取機である。
第2図は、本発明に使用する成型ローラの一例を示す説明図である。同図において、成型ローラ3は、鏡面ローラ7の表面にシート状の低融点金属8を介してスタンパ9を密着し、スタンパ9の両端部を鏡面ローラ7の外周面の一端部に設けられた凹部にネジ10で取付け固定してなるものである。
また、成型ローラ3と加圧ローラ4、及び成型ローラ3と加圧ローラ5の間隔は、熱可塑性合成樹脂シート2の表面に成型ローラ3に設けられるスタンパ9の凹凸が充分に転写し得る様に調整することが可能に構成されている。
第1図において、押出し機1から押出された熱可塑性合成樹脂シート2は、軟化した状態で成型ローラ3と加圧ローラ4間、及び成型ローラ3と加圧ローラ5のローラ間に挿入され、成型ローラ3の凹凸面と加圧ローラ3及び4の鏡面により押圧されて、熱可塑性合成樹脂シート2の表面にスタンパの凹凸状の信号が逐次転写されて、矢印X方向に移動して転写を完了する。
成型ローラ3は熱可塑性合成樹脂シート2を成型する時に高温にする必要がある。例えば、ポリカーボネートを使用した場合、120〜150℃に加熱する。この場合、低融点金属8としては融点が成型ローラ3の温度より高いものを使用する必要があり、例えばハンダ合金等のSn,Pb,Inなどの合金を用いる。したがって、成型ローラ温度に応じ、低融点金属の組成を変化させて使用する。例えば、成型ローラの温度が140℃の場合、ハンダ合金の融点は160℃が好ましい。
低融点金属8の厚みは、薄いほうが熱伝導が良く、厚みのムラが少なく、シートの平面性,耐久性に優れている。そのため低融点金属8の厚みは100μm以下、好ましくは5〜50μmが望ましい。
また、成型ローラ3は、電鋳で作製した信号に応じた凹凸を形成したスタンパ9を低融点金属8を介して鏡面ローラ7の外側に配置する。スタンパは一般にニッケルが用いられている為、厚すぎるとローラ径を大きくしなければならなくなり、装置が大きくなる。また、薄すぎるとスタンパの腰がなくなり折れやすくなる。そのためスタンパの厚みは、10〜500μmが適当である。
上記のスタンパをシート状の低融点金属を介して鏡面ローラに巻きつける。次いで、一端をネジで固定し、均一なテンションで鏡面ローラに巻きつけ、もう一端をネジで固定することにより成型ローラを作成することができる。
この成型ローラを所定の温度に加熱し、加圧ローラとの間で押出し機より押出された熱可塑性合成樹脂シートを加圧し、スタンパの凹凸を転写させる。この温度で低融点金属は軟らかくなりスタンパと鏡面ローラの間の隙間がなくなり成型ローラの熱はスタンパに均一に分布し、凹凸の転写は良好に行われる。さらに、低融点金属とスタンパ,鏡面ローラは接着していないため、固定に使用しているネジを外せば、スタンパの交換を容易に行うことができる。
[発明の効果]
以上説明したように、本発明によれば、スタンパと鏡面ローラの間に低融点金属を配し、ネジどめ等によりに固定してなる成型ローラを使用することにより、鏡面ローラとスタンパを均一に隙間なく密着させ、またスタンパの交換を容易に行うことが可能となり、さらにスタンパの凹凸を押出しシートに良好に転写した高密度光情報記憶媒体用基板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の光情報記憶媒体用基板の製造方法に用いる装置の一例を示す説明図及び第2図は本発明に使用する成型ローラの一例を示す説明図である。
1……押出し機
2……熱可塑性合成樹脂シート
3……成型ローラ、4,5……加圧ローラ
6……引取機、7……鏡面ローラ
8……低融点金属、9……スタンパ
10……ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】光を用いて記録再生する光情報記憶媒体用の基板を製造する方法において、押出し機から押出された熱可塑性合成樹脂シートを、鏡面ローラの表面に低融点金属を介してスタンパを固定してなる成型ローラと加圧ローラ間を通して前記熱可塑性合成樹脂シートの表面に凹凸状の信号を形成することを特徴とする光情報記憶媒体用基板の製造方法。
【請求項2】鏡面ローラの表面に低融点金属を介してスタンパを固定してなることを特徴とする成型ローラ。

【第1図】
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【第2図】
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【特許番号】第2622871号
【登録日】平成9年(1997)4月11日
【発行日】平成9年(1997)6月25日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭63−274413
【出願日】昭和63年(1988)11月1日
【公開番号】特開平2−122916
【公開日】平成2年(1990)5月10日
【出願人】(999999999)キヤノン株式会社
【参考文献】
【文献】特開 昭56−86721(JP,A)