光情報記録媒体の製造方法

【目的】樹脂層が透明基板から剥離することがなく、情報の書き込みならびに読み出し特性に優れた情報記録媒体を提供することを目的とする。
【構成】ガラス製透明基板１上に光硬化性の樹脂２を用いて信号パターンを形成する光情報記録媒体の製造方法において、上記ガラス製透明基板１の表面を研磨加工したのち、上記光硬化性の樹脂２を用いて信号パターンを形成することを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【０００１】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば光ディスクなどの光情報記録媒体の製造方法に係り、特に透明基板としてガラス板を用いた光情報記録媒体の製造方法に関する。
【０００２】
【従来の技術】従来より、ガラス製あるいはプラスチック製の透明基板の片面に、情報信号に対応するピット列およびトラッキング信号に対応する案内溝のうち少なくともいずれか一方の信号パターンが転写された樹脂層を形成し、その樹脂層の信号パターンの表面に記録膜が形成された、少なくとも１つの光ディスク単板を備えた光ディスクが知られている。
【０００３】即ち、両面記録方式の光ディスクは、上記樹脂層および記録膜が内側で対向するように２つの光ディスク単板がスペーサを介して接合されており、また、片面記録方式の光ディスクは、上記樹脂層および記録膜を内向きにして１つの光ディスク単板と補強板がスペーサを介して接合されている。
【０００４】この種の光ディスクは、透明基板の上記樹脂層および記録膜が形成されていない側から透明基板を通して上記樹脂層と記録膜の界面にレーザ光を照射することにより、該記録膜からの反射光を情報として読み出し、また、記録膜に情報を書き込む。従って、上記透明基板としては、高度の透光性と平滑度、それに厚さの均一性と物性上の均質性とが要求される。
【０００５】ところで、光ディスク用の透明基板は、従来、以下に述べるような方法で製造されている。
【０００６】その第１の方法は、光ディスク用透明基板の寸法および形状に形成された金型に透明基板の材料となる溶融ガラスあるいは溶融プラスチックを注入して固化する方法である。
【０００７】この方法によって製造された透明基板は、金型と接触する面は、金型の表面粗さがそのまま転写されるので、金型の表面を超精密に仕上げる必要があり、そのために金型のコストが非常に高くなるという問題を有している。
【０００８】また、透明基板の他の製造方法として、市販の板ガラスを所要の形状に切断して用いるという方法がある。市販の板ガラスは、通常、コルバーン法あるいはフロート法によって製造される。
【０００９】ここで、コルバーン法とは、図３に示すように、溶融炉１０にて溶融されたガラス１１をナールローラ１２で上方に引き出し、ベンディングローラ１３で水平に引出方向を変換した後、徐冷槽１４に配置された搬送ローラ１５にて半溶融ガラス板を固化しつつ引き出す製造方法である。
【００１０】一方、フロート法は、図４に示すように、溶融炉１０にて溶融されたガラス１１を厚さ調整ローラ１６で厚さを調整した後、溶融金属槽１７内の溶融錫１８の表面に静かに流し込み、徐冷槽１９内に配置された搬送ローラ２０で半溶融ガラス板を固化しつつ引き出す製造方法である。
【００１１】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記何れの方法で製造されたガラス製の透明基板であっても、表面に目視不可能な汚れ、あるいは洗浄しても落ちないような汚れがあり、そのために透明基板とその上に形成される樹脂層との密着性が余り良くない。そしてこれが原因で信号パターンを有する樹脂層が透明基板から剥離することがあり、情報の書き込みあるいは読み出し特性に悪影響を及ぼす。
【００１２】本発明の目的は、このような従来の欠点を解消し、信頼性の高い光情報記録媒体の製造方法を提供することにある。
【００１３】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するため、本発明は、ガラス製透明基板上に光硬化性の樹脂を用いて信号パターンを形成する光情報記録媒体の製造方法において、上記ガラス製透明基板の表面を研磨加工したのち、上記光硬化性の樹脂を用いて信号パターンを形成することを特徴とするものである。
【００１４】
【作用】ガラス製透明基板を使用する前にその表面を研磨加工することにより、目視不可能な汚れや洗浄では落ちにくい汚れを根本的に排除することができる。そのため、ガラス製透明基板と樹脂層との密着力が増大し、樹脂層が透明基板から剥離するようなことがなくなった。
【００１５】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図１ならびに図２とともに説明する。
【００１６】図１は本発明の一実施例を示す光ディスクの断面図であって、１はガラス基板、２は樹脂層、３は記録膜、４は２つのガラス基板１，１の間に介設されたスペーサ、５は２枚のガラス基板１，１の上記記録膜３，３の間に設定された空気間隙を示している。
【００１７】ガラス基板１はコルバーン法によって製造されたものであって、表面が研磨加工された後、ガラス基板１の光学的性質を改善するためのカリウム置換処理と、ガラス基板１と樹脂層２の接着力を高めるためにガラス基板１の屈折率と略等しい屈折率のシラン処理が施されている。
【００１８】樹脂層２は、例えばアクリル基またはメタクリル基をもつアクリル系硬化性樹脂など、屈折率が上記ガラス基板１を構成するガラス材料の屈折率（≒１．５）と略等しい光硬化性樹脂を用いて形成されたものである。
【００１９】記録膜３はＰｂ−Ｓｅ−Ｔｅ合金からなり、上記樹脂層２の表面に２７ｎｍの厚さに真空蒸着される。
【００２０】スペーサ４ａは厚さ０．６ｍｍのＦｅ−Ｃｒ系合金によって、スペーサ４ｂは厚さ０．６ｍｍのアルミニウムによって構成されており、２つのガラス基板１，１の内周部および外周部に介設され、各ガラス基板１，１の内側に形成された記録膜３，３の間に０．４６ｍｍの空気間隙５を形成している。
【００２１】次にこの光ディスクの製造方法を図２とともに説明する。
【００２２】まず、図２（ａ）に示すように、コルバーン法で製造された厚さ１．１７ｍｍのガラス板を直径３０ｃｍの円板形に成形し、研磨加工ならびに洗浄したのち光学的性質を改善するためのカリウム置換処理を施こし、さらに、樹脂層２との接合力を高めるためのシラン処理を施して、光ディスク用のガラス基板１を作製する。
【００２３】続いて、図２（ｂ）に示すように、光ディスクに転写しようとする信号パターンと反転したパターンの凹凸が形成されたスタンパ６のパターン成形面６ａのほぼ中央部に、光の屈折率が上記ガラス基板１の光の屈折率と略等しくなるように調製された光硬化性の成形用樹脂７を置く。
【００２４】続いて、図２（ｃ）に示すように、その中央部が上記スタンパ６側に突出するようにガラス基板１を湾曲させ、該ガラス基板１の中央部を上記成形用樹脂７に圧着したのち、該ガラス基板１の弾性変形を徐々に解放しながら上記成形用樹脂７をスタンパ６の中心部から外周部に向けて放射状に一様に展伸する。
【００２５】展伸が終了し、ガラス基板１が成形用樹脂７に均一に圧着された状態で、図２（ｄ）に示すように、ガラス基板１の外側から成形用樹脂７に樹脂硬化用の光８を照射する。
【００２６】そして、成形用樹脂７が硬化したのち、図２R>２（ｅ）に示すように、スタンパ６からガラス基板１に一体に接合された樹脂層２を剥離する。
【００２７】続いて図２（ｆ）に示すように、上記樹脂層２の表面にＰｂ−Ｓｅ−Ｔｅ合金からなる記録膜３を２７ｎｍの厚さに真空蒸着し、光ディスク単板８を得る。
【００２８】最後に、上記のようにして形成された２枚の光ディスク単板８，８を、厚さ０．６ｍｍのスペーサ４ａ，４ｂを介して接着し、図１に示すような両記録膜３，３間に０．４６ｍｍの空気間隙５を有するエアサンドウイッチ型の光ディスクを得る。
【００２９】
【発明の効果】以上説明したように、本発明は、ガラス製透明基板を使用する前にその表面を研磨加工することにより、目視不可能な汚れや洗浄では落ちにくい汚れを根本的に排除することができる。そのため、ガラス製透明基板と樹脂層との密着力が増大し、樹脂層が透明基板から剥離するようなことがなく、情報の書き込みならびに読み出し特性に優れた情報記録媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の実施例に係る光ディスクの断面図である。
【図２】その光ディスクの製造方法を示す説明図である。
【図３】コルバーン式板ガラス製造方法の概略を示す説明図である。
【図４】フロート式板ガラス製造方法の概略を示す説明図である。
【符号の説明】
１ガラス基板
２樹脂層
３記録膜
４スペーサ
５空気間隙
６スタンパ
７成形用樹脂
８ディスク単板

【特許請求の範囲】
【請求項１】ガラス製透明基板上に光硬化性の樹脂を用いて信号パターンを形成する光情報記録媒体の製造方法において、上記ガラス製透明基板の表面を研磨加工したのち、上記光硬化性の樹脂を用いて信号パターンを形成することを特徴とする光情報記録媒体の製造方法。

【図３】