説明

光情報記録媒体用接着剤フィルムおよび光情報記録媒体

【課題】光情報記録媒体への読み書き等を阻害することなく、光情報記録媒体における干渉縞の発生を抑制できる光情報記録媒体用接着剤フィルムおよびそれを用いた光情報記録媒体を提供する。
【解決手段】接着剤層18を備えた光情報記録媒体用接着剤フィルム17において、前記接着剤層18中に、光情報記録媒体への読み書きを行なう際のレーザ波長をλrwとしたときに、当該レーザ波長(λrw)と異なる波長域に最大光吸収ピーク波長(λmax)を有する着色剤18bを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光情報記録媒体用接着剤フィルムおよび光情報記録媒体に関する。特に、光情報記録媒体への読み書き等を阻害することなく、光情報記録媒体における干渉縞の発生を抑制できる光情報記録媒体用接着剤フィルムおよびそれを用いた光情報記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光学的特性や機械的特性が優れていることから、様々な用途にフィルム状やプレート状のポリカーボネート樹脂(以下、単にポリカーボネートと称する場合がある。)が用いられている。かかるポリカーボネート樹脂からなる基板は、単独で用いられることは極めて少なく、多くの場合、何らかの表面加工がなされている。例えば、光情報記録媒体として、CD(コンパクトディスク)やDVD(デジタル多用途ディスク)を構成する場合には、ポリカーボネート基板の表面に記録層を設けた後、その上に紫外線硬化型樹脂による保護層を形成するか、あるいは、もう一枚のポリカーボネート基板を、紫外線硬化型樹脂を用いて貼り合せている。
また、図7に示すように、短波長の青色レーザを用いて情報の記録再生を行う次世代光ディスク(例えば、Blu−ray Disc)100も考案されている。かかる次世代光ディスク100の場合には、使用する青色レーザの波長が短く、焦点深度が浅くなることから、記録層102が形成されたポリカーボネート基板101(例えば、厚さ1.1mm)と、薄膜(例えば、厚さ0.075mm)のポリカーボネート製の光透過性フィルム106との間に、光ディスク用接着剤フィルムからなる接着剤層104を形成して貼り合せることが試みられている。
【0003】
このような光ディスクを製造する際に、例えば図8に示すような接着剤層202の両面に剥離シート201a、201bを備えた光ディスク製造用シート200が使用されており、接着剤層202の一部がスタンパーに付着することを防止すべく、エネルギー線硬化性を有する高分子材料を主成分とし、硬化前の貯蔵弾性率が1×103〜1×106Paである接着剤層(スタンパー受容層)202を形成することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、ポリカーボネート製の光透過性基材フィルムの片面にアクリル系粘着剤層を有する光ディスク用保護フィルムも光ディスク製造用に用いられている(例えば、特許文献2参照)。
より具体的には、光ディスク用保護フィルムの波長405nmの光に対する初期透過率をTa、80℃、相対湿度85%の環境下に1000時間放置後の波長の光に対する透過率をTbとした場合に、下式(2)で表される透過率の変化率(X)が10%以下であるとともに、アクリル系粘着剤層を構成するアクリル系粘着剤のハロゲンイオン及びアルカリ性イオンの溶出量を、それぞれ10ppm以下とした光ディスク用保護フィルムも提案されている。
X(%)=[(Ta−Tb)/Ta]×100 (2)
【0005】
さらに、選別性や装飾効果を高めるために、2枚の基板が貼り合わされて構成された光ディスクにおいて、記録層が設けられていない側のディスク基板を着色することも提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2003−123332号(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2003−203387号(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開平8−279188号(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1および2に記載された光ディスク製造用シートや光ディスク用保護フィルムを用いて得られた光ディスクは、いずれも多層構造であって、かつ光の屈折現象に起因して、接着剤層等においてわずかな厚さむらがあると、干渉縞が観察されやすいという問題が見られた。
また、特許文献3に記載された光ディスクは、ディスク基板を黄色、橙色および黒色等の着色剤で着色することを特徴としているが、かかる着色剤をポリカーボネート樹脂等からなるディスク基板に添加すると、ディスク基板において加水分解が生じやすくなるという問題が見られた。また、ディスク基板を着色したとしても、接着剤層の厚さむらに起因した干渉縞の発生はいまだ抑制できないという問題も見られた。
そこで、本発明の発明者らは従来の課題を鋭意検討した結果、光情報記録媒体用シートにおける接着剤層中に、特定の最大光吸収ピークを有する着色剤を所定量添加することにより、光情報記録媒体への読み書き等を阻害することなく、かつ多少の厚さむらが生じたとしても、干渉縞の発生が効果的に抑制されて、それが観察されなくなることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は、光情報記録媒体への読み書き等を阻害することなく、光情報記録媒体における干渉縞の発生を抑制できる光情報記録媒体用接着剤フィルムおよびそれを用いた光情報記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、接着剤層を備えた光情報記録媒体用接着剤フィルムにおいて、接着剤層中に、光情報記録媒体への読み書きを行なう際のレーザ波長をλrwとしたときに、当該レーザ波長(λrw)と異なる波長域に最大光吸収ピーク波長(λmax)を有する着色剤を含有する光情報記録媒体用接着剤フィルムが提供され、上述した問題点を解決することができる。
すなわち、着色剤を所定量添加することにより、多少の厚さむらが生じたとしても、接着剤層において、人の目に観察され易い干渉縞の波長領域の光を吸収することにより、光情報記録媒体における干渉縞の発生自体を抑制することができるとともに、仮に、干渉縞が若干発生したとしても、それを目立たせなくすることができる。
また、特定の最大光吸収ピークを有する着色剤を使用することにより、光情報記録媒体への読み書きを阻害することも有効に防止することができる。
【0008】
また、本発明の光情報記録媒体用接着剤フィルムを構成するにあたり、光情報記録媒体用接着剤フィルムを用いて、光情報記録媒体の一部を構成するカバーフィルムを貼り合わせた状態において、レーザ波長(λrw)での光透過率を70%以上の値とすることが好ましい。
【0009】
また、本発明の光情報記録媒体用接着剤フィルムを構成するにあたり、光情報記録媒体の初期化を行なうレーザ波長をλinとしたときに、着色剤の最大光吸収ピーク波長(λmax)が、レーザ波長(λin)と異なることが好ましい。
【0010】
また、本発明の光情報記録媒体用接着剤フィルムを構成するにあたり、光情報記録媒体用接着剤フィルムを用いて、光情報記録媒体の一部を構成するカバーフィルムを貼り合わせた状態において、レーザ波長(λin)での光透過率を70%以上の値とすることが好ましい。
なお、かかるカバーフィルムの構成材料として、ポリカーボネート樹脂等の透明樹脂を用いることが好ましい。
【0011】
また、本発明の光情報記録媒体用接着剤フィルムを構成するにあたり、光情報記録媒体用接着剤フィルムが、主成分として、(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含む接着剤であることが好ましい。
【0012】
また、本発明の光情報記録媒体用接着剤フィルムを構成するにあたり、光情報記録媒体用接着剤フィルムが、エネルギー線硬化型接着剤であることが好ましい。
【0013】
また、本発明の光情報記録媒体用接着剤フィルムを構成するにあたり、着色剤の最大光吸収ピーク波長(λmax)における初期光透過率(T(λmax)0)を50%以下の値とし、80℃、相対湿度85%の環境条件に1,000時間放置した後の着色剤の最大光吸収ピーク波長(λmax)における光透過率(T(λmax)1000)を60%以下とすることが好ましい。
【0014】
また、本発明の光情報記録媒体用接着剤フィルムを構成するにあたり、着色剤の最大光吸収ピーク波長(λmax)における初期光透過率(T(λmax)0)と、80℃、相対湿度85%の環境条件に1000時間放置した後の着色剤の最大光吸収ピーク波長(λmax)における光透過率(T(λmax)1000)とが、下式(1)の関係式を満足することが好ましい。
|(T(λmax)1000)−(T(λmax)0)|/(100−(T(λmax)0))×100<50 (1)
【0015】
また、本発明の別の態様は、上述したいずれかの光情報記録媒体用接着剤フィルムを用いて、光情報記録媒体の一部を構成するポリカーボネートフィルムと、記録層を備えたポリカーボネート基板とを貼り合わせてなる光情報記録媒体である。
【0016】
また、本発明の光情報記録媒体を構成するにあたり、記録層が、複数の記録層から構成されているとともに、当該複数の記録層の間に、光情報記録媒体用接着剤フィルムが、さらに中間層として形成してあることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、図1(a)、(b)に例示するような、接着剤層18を備えた光情報記録媒体用接着剤フィルム17において、接着剤層18の接着剤18a中に、光情報記録媒体への読み書きを行う際のレーザ波長をλrwとしたときに、当該レーザ波長(λrw)と異なる波長域に最大吸収ピーク波長(λmax)を有する着色剤18bを含有する光情報記録媒体用接着剤フィルム17である。
光情報記録媒体用接着剤フィルム17は、図1(a)に示すように光情報記録媒体を構成するカバーフィルム20と接着剤層18の保護のための剥離フィルム19を接着剤層18の表面に積層したカバーフィルム付き接着フィルムの形態とされることが多いが、これに限定されず、後述する中間層用の場合と同様に、図1(b)に示すように、使用前において、接着剤層18の保護のために接着剤層18の両面に剥離フィルム19、19´が設けられていて、使用する際に剥離フィルムを順次剥離して使用する形態であっても構わない。
以下、第1の実施形態の光情報記録媒体用接着剤フィルムを構成する接着剤層等の構成要件、あるいはその製造方法について説明する。
【0018】
1.接着剤層
(1)種類
また、接着剤層を構成する接着剤の種類は特に制限されるものではないが、三次元架橋体から構成されている接着剤が好ましい。
この理由は、かかる三次元架橋物であれば、弾性率の値が比較的高い一方、光情報記録媒体用接着剤フィルムを貼り合せた剥離フィルムをロール状態で長期間保管した場合であっても、剥離力がほとんど変化しないという特徴を有しているためである。したがって、剥離フィルムから光情報記録媒体用接着剤フィルムを容易に剥がすことができる。
【0019】
接着剤の種類に関しては、主成分として、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体を含む接着剤が使用できる。
特に、エネルギー線硬化型接着剤を使用することが好ましい。この場合、エネルギー線硬化性を有するポリマー成分を主成分とするものが使用できるが、その他に、エネルギー線硬化性を有しないポリマー成分とエネルギー線硬化性の多官能モノマーまたはオリゴマ−との混合物を主成分とするものであってもよい。
接着剤が、エネルギー線硬化性を有するポリマー成分を主成分とする場合について、以下説明する。
接着剤を構成するエネルギー線硬化性を有するポリマー成分は、側鎖にエネルギー線硬化性基を有するアクリル酸エステル共重合体であるのが好ましい。また、このアクリル酸エステル共重合体は、官能基含有モノマー単位を有するアクリル系共重合体(a1)と、その官能基に結合する置換基を有する不飽和基含有化合物(a2)とを反応させて得られる、側鎖にエネルギー線硬化性基を有する重量平均分子量100,000以上のエネルギー線硬化型共重合体(A)であるのが好ましい。
アクリル系共重合体(a1)は、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体から導かれる構成単位と官能基含有モノマーから導かれる構成単位とからなる。
アクリル系共重合体(a1)を構成する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、シクロアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、アルキル基の炭素数が1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどが用いられる。これらの中でも、特に好ましくはアルキル基の炭素数が1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステル、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート等の一種単独または二種以上の組み合わせが用いられる。アクリル系共重合体(a1)を構成する官能基含有モノマーは、重合性の二重結合と、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等の官能基とを分子内に有するモノマーであり、好ましくはヒドロキシル基含有不飽和化合物、カルボキシル基含有不飽和化合物及びアミノ基含有不飽和化合物が用いられる。
このような官能基含有モノマーのさらに具体的な例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有アクリレート、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有化合物、(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等のアミド基含有化合物などが挙げられ、これらを単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
アクリル系共重合体(a1)を構成する(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体から導かれる構成単位と上記官能基含有モノマーから導かれる構成単位との比は、重量比で95:5〜60:40の割合が好ましい。
アクリル系共重合体(a1)は、上記のような(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体と官能基含有モノマーとを常法で共重合することにより得られるが、これらのモノマーの他にも少量(例えばアクリル系共重合体に対して0〜10重量%、好ましくは0〜5重量%)の割合で、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、スチレン、(メタ)アクリロニトリル等のビニルモノマーやアクリルアミド類、三級アミノ基含有アクリル酸エステル類、窒素含有複素環ビニルモノマー等の窒素含有モノマーが単独または二種以上組み合わせて共重合されてもよい。
上記官能基含有モノマー単位を有するアクリル系共重合体(a1)を、その官能基に結合する置換基を有する不飽和基含有化合物(a2)と反応させることにより、エネルギー線硬化型共重合体(A)が得られる。
不飽和基含有化合物(a2)が有する置換基は、アクリル系共重合体(a1)が有する官能基含有モノマー単位の官能基の種類に応じて、適宜選択することができる。例えば、官能基がヒドロキシル基、アミノ基または置換アミノ基の場合、置換基としてはイソシアナート基またはエポキシ基が好ましく、官能基がカルボキシル基の場合、置換基としてはアジリジニル基、エポキシ基またはオキサゾリン基が好ましく、官能基がエポキシ基の場合、置換基としてはアミノ基、カルボキシル基またはアジリジニル基が好ましい。このような置換基は、不飽和基含有化合物(a2)1分子毎に一つずつ含まれている。
また不飽和基含有化合物(a2)には、エネルギー線重合性の炭素−炭素二重結合が、1分子毎に1〜5個、好ましくは1〜2個含まれている。このような不飽和基含有化合物(a2)の具体例としては、例えば、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアナート、メタ−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアナート、メタクリロイルイソシアナート、アリルイソシアナート;ジイソシアナート化合物またはポリイソシアナート化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアナート化合物;ジイソシアナート化合物またはポリイソシアナート化合物と、ポリオール化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアナート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸、2−(1−アジリジニル)エチル(メタ)アクリレート、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
不飽和基含有化合物(a2)は、上記アクリル系共重合体(a1)の官能基含有モノマー100当量当たり、通常20〜100当量、好ましくは40〜95当量、特に好ましくは60〜90当量の割合で用いられる。
アクリル系共重合体(a1)と不飽和基含有化合物(a2)との反応においては、官能基と置換基との組合せに応じて、反応の温度、圧力、溶媒、時間、触媒の有無、触媒の種類を適宜選択することができる。これにより、アクリル系共重合体(a1)中の側鎖に存在する官能基と、不飽和基含有化合物(a2)中の置換基とが反応し、不飽和基がアクリル系共重合体(a1)中の側鎖に導入され、エネルギー線硬化型共重合体(A)が得られる。この反応における官能基と置換基との反応率は、通常70%以上、好ましくは80%以上であり、未反応の官能基がエネルギー線硬化型共重合体(A)中に残留していてもよい。
このようにして得られるエネルギー線硬化型共重合体(A)の重量平均分子量は、100,000以上であり、好ましくは150,000〜1,500,000であり、特に好ましくは200,000〜1,000,000である。
【0021】
ここで、エネルギー線として紫外線を用いる場合には、上記エネルギー線硬化型共重合体(A)に光重合開始剤(B)を添加することにより、重合硬化時間および光線照射量を少なくすることができる。
また、光重合開始剤としては、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−プロペニル)フェニル)プロパノン)などのヒドロキシフェニルケトン系開始剤;2−ヒドロキシ−2,2−ジメチルアセトフェノン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンなどのアセトフェノン系開始剤;ベンジルジメチルケタールなどのケタール系開始剤;ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド、アシルホスフィナート、ベンゾイン、過酸化ベンゾイル、ジクミルパーオキサイド等の一種または二種以上の組み合わせを挙げることができる。
かかる光重合開始剤の添加量は、接着剤の全体量に対して0.01〜10質量%の範囲内の値とすることが好ましい。
【0022】
上記接着剤においては、エネルギー線硬化型共重合体(A)および光重合開始剤(B)に、適宜他の成分を配合してもよい。他の成分としては、例えば、エネルギー線硬化性を有しないポリマー成分またはオリゴマ−成分(C)、エネルギー線硬化性の多官能モノマーまたはオリゴマー成分(D)、架橋剤(E)、その他の添加剤(F)が挙げられる。
エネルギー線硬化性を有しないポリマー成分またはオリゴマー成分(C)としては、例えば、ポリアクリル酸エステル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリオレフィン等が挙げられ、重量平均分子量が3,000〜250万のポリマーまたはオリゴマ−が好ましい。
エネルギー線硬化性の多官能モノマーまたはオリゴマー成分(D)としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエステルオリゴ(メタ)アクリレート、ポリウレタンオリゴ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
架橋剤(E)としては、エネルギー線硬化型共重合体(A)等が有する官能基との反応性を有する多官能性化合物を用いることができる。このような多官能性化合物の例としては、イソシアナート化合物、エポキシ化合物、アミン化合物、メラミン化合物、アジリジン化合物、ヒドラジン化合物、アルデヒド化合物、オキサゾリン化合物、金属アルコキシド化合物、金属キレート化合物、金属塩、アンモニウム塩、反応性フェノール樹脂等を挙げることができる。
その他の添加剤(F)としては、例えば、紫外線吸収剤、可塑剤、充填剤、酸化防止剤、粘着付与剤、顔料、染料、カップリング剤等が挙げられる。
これらの他の成分を接着剤に配合することにより、硬化前における凹凸パターンの転写の容易性、硬化後の強度、他の層との接着性および剥離性、保存安定性などを改善することができる場合がある。
次に、接着剤が、エネルギー線硬化性を有しないポリマー成分とエネルギー線硬化性の多官能モノマーまたはオリゴマーとの混合物を主成分とする場合について、以下説明する。
このような接着剤に用いられるポリマー成分としては、例えば、前述したアクリル系共重合体(a1)と同様の成分が使用できる。この場合のアクリル系共重合体の重量平均分子量は10,000以上であり、好ましくは150,000〜1,500,000であり、特に好ましくは200,000〜1,000,000である。
また、エネルギー線硬化性の多官能モノマーまたはオリゴマーとしては、前述の成分(D)と同じものが選択される。ポリマー成分とエネルギー線硬化性の多官能モノマーまたはオリゴマーとの配合比は、ポリマー成分100重量部に対して、多官能モノマーまたはオリゴマー10〜150重量部であるのが好ましく、特に25〜100重量部であるのが好ましい。
【0023】
(2)着色剤
(2)−1 種類
着色剤の種類に関して、特にその種類は制限されるものではないが、例えば、シアニン化合物、フタロシアニン化合物、アゾ化合物、縮合アゾ化合物、アゾレーキ化合物、アンスラキノン化合物、ペリレン化合物、ペリノン化合物、インジゴ化合物、チオインジゴ化合物、イソインドリノン化合物、アゾメチンアゾ化合物、ジオキサジン化合物、キナクリドン化合物、アニリンブラック化合物、トリフェニルメタン化合物、カーボンブラック等の有機顔料や、酸化チタン、酸化鉄、水酸化鉄、酸化クロム、スピネル型焼成物、クロム酸塩、クロムバーミリオン化合物、紺青化合物、アルミニウム粉末、ブロンズ粉末等の無機顔料の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
また、着色剤として染料を用いることも好ましく、具体的には、サルファーブラックTなどの硫化染料、インダンスロンなどの建染染料、スピリットブルーなどの酒精溶染料、スダンIIなどの油溶染料 、セリトンファストバイオレットBなどの分散染料、ナフトールAS、アマランスなどのアゾ染料などの非水溶性染料、メチレンブルーなどの塩基性染料 、オレンジIIなどの酸性染料、コンゴーレッドなどの直接染料、アントラゾールOなどの可溶性建染染料、エリオクロムブラックTなどの酸性媒染染料、アリザリンレッドSなどの媒染染料等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
特に、比較的少量の使用で干渉縞の抑制効果が得られる一方、耐久性にも比較的優れていることから、アゾ化合物、縮合アゾ化合物、アゾレーキ化合物、インジゴ化合物、シアニン化合物、フタロシアニン化合物、およびチオインジゴ化合物は、本発明に好適な着色剤である。
【0024】
(2)−2 添加量
また、着色剤の添加量を、接着剤層を構成する接着剤100重量部に対して、0.01〜30重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる着色剤の添加量が0.01重量部未満の値になると、光情報記録媒体における干渉縞の抑制が不十分となったり、発生した干渉縞を目立たせなくすることが困難となったりする場合があるためである。一方、かかる着色剤の添加量が30重量部を超えると、着色の度合いが強くなったり、劣化しやすくなったりして、光情報記録媒体の一部を構成するカバーフィルムを貼り合わせた状態において、光情報記録媒体への読み書きを行なう際のレーザ波長(λrw)や、光透過率光情報記録媒体を初期化するレーザ波長(λin)における光透過率をそれぞれ所定値以上に調整することが困難となる場合があるためである。
したがって、着色剤の添加量を、接着剤層を構成する接着剤100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、0.5〜5重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0025】
(2)−3 最大光吸収ピーク波長
また、着色剤の最大光吸収ピーク波長(λmax)を、光情報記録媒体への読み書きを行なう際のレーザ波長(λrw)と異ならせることを特徴とする。
この理由は、特定の最大光吸収ピークを有する着色剤を使用することにより、光情報記録媒体への読み書きを阻害することも有効に防止することができるためである。また、このような着色剤であれば、所定量添加することにより、接着剤層に多少の厚さむらが生じたとしても、接着剤層において人の目に観察され易い干渉縞の波長領域の光を吸収することにより、光情報記録媒体における干渉縞の発生自体を抑制することができるとともに、仮に、干渉縞が若干発生したとしても、それを目立たせなくすることができるためである。
より具体的には、光情報記録媒体への読み書きを行なう際のレーザ波長(λrw)は、通常、395〜410nmの範囲内の値であることから、その範囲に最大光吸収ピーク波長(λmax)を有しない着色剤を用いることを特徴とする。したがって、例えば、450〜700nmの範囲内に最大光吸収ピーク波長(λmax)を有する着色剤を使用することが好ましく、500〜650nmの範囲内に最大光吸収ピーク波長(λmax)を有する着色剤を使用することがより好ましい。
ここで、図2および図3を参照して、着色剤の最大光吸収ピーク波長(λmax)を、光情報記録媒体への読み書きを行なう際のレーザ波長(λrw)との関係を詳細に説明する。
すなわち、図2および図3は、光情報記録媒体の一部を構成するカバーフィルムに接着剤層を積層した状態で測定した光透過率曲線であって、図2は、接着剤層中に、着色剤を全く含まない場合であり、図3は、接着剤層中に、最大光吸収ピーク波長(λmax)が580nmの着色剤を含んだ場合に対応している。そして、図3に示すように、光情報記録媒体への読み書きを行なう際のレーザ波長(λrw)である395〜410nmと、着色剤の最大光吸収ピーク波長(λmax)である580nmとは、波長が100nm以上異なっている。したがって、このような着色剤であれば、光情報記録媒体への読み書きへの阻害が生じないことが容易に理解できる。
なお、本発明において、光情報記録媒体への読み書きを行なう際のレーザ波長(λrw)と、着色剤の最大光吸収ピーク波長(λmax)とが異なっていれば十分であるが、光情報記録媒体への読み書きへの阻害をさらに防止するためには、波長が50nm以上異なっていることがより好ましく、70nm以上異なっていることがさらに好ましい。
【0026】
また、着色剤の種類や添加量等を調節して、光情報記録媒体の一部を構成するカバーフィルムを貼り合わせた状態において、光情報記録媒体への読み書きを行なう際のレーザ波長(λrw)における光透過率を70%以上の値とすることが好ましい。
この理由は、仮に、最大光吸収ピーク波長(λmax)と、光情報記録媒体への読み書きを行なう際のレーザ波長(λrw)とが異なっていたとしても、かかるレーザ波長(λrw)における光透過率が過度に低くては、光情報記録媒体へのレーザによる読み書きを阻害する場合があるためである。
したがって、着色剤の種類や添加量、あるいはその他の要因を適宜調節し、光情報記録媒体の一部を構成するカバーフィルムを貼り合わせた状態において、光情報記録媒体への読み書きを行なう際のレーザ波長(λrw)における光透過率を80%以上の値とすることがより好ましく、90%以上の値とすることがさらに好ましい。
なお、図3に示す光透過率曲線においては、光情報記録媒体への読み書きを行なう際のレーザ波長(λrw)における光透過率は約80%以上であることから、光情報記録媒体への読み書き性が阻害されるような問題は生じないことが容易に理解される。
【0027】
また、着色剤の最大光吸収ピーク波長(λmax)を、光情報記録媒体の初期化を行なうレーザ波長(λin)とも異ならせることが好ましい。
この理由は、特定の最大光吸収ピークを有する着色剤を使用することにより、光情報記録媒体の読み書きのみならず、光情報記録媒体の初期化についても阻害することを有効に防止することができるためである。
より具体的には、光情報記録媒体の初期化を行なうレーザ波長(λin)は、通常、800〜820nmの範囲内の値であることから、その範囲に最大光吸収ピーク波長(λmax)を有しない着色剤を用いることが好ましい。したがって、例えば、450〜700nmの範囲内に最大光吸収ピーク波長(λmax)を有する着色剤を使用することが好ましく、500〜650nmの範囲内に最大光吸収ピーク波長(λmax)を有する着色剤を使用することがより好ましい。
なお、図3に示す光透過率曲線においては、光情報記録媒体の初期化を行なうレーザ波長(λin)である800〜820nmと、着色剤の最大光吸収波長(λmax)である580nmとは、波長が200nm以上異なっている。したがって、このような着色剤であれば、光情報記録媒体への初期化の際にも、光情報記録媒体への初期化が阻害されるような問題が生じないことが容易に理解できる。
【0028】
また、光情報記録媒体の一部を構成するカバーフィルムを貼り合わせた状態において、光情報記録媒体を初期化するレーザ波長(λin)における光透過率を70%以上の値とすることが好ましい。
この理由は、仮に、最大光吸収ピーク波長(λmax)と、光情報記録媒体を初期化するレーザ波長(λrw)とが異なっていたとしても、かかるレーザ波長(λrw)における光透過率が過度に低くては、光情報記録媒体へのレーザによる初期化を阻害する場合があるためである。
したがって、着色剤の種類や添加量等を調節し、光情報記録媒体の一部を構成するカバーフィルムを貼り合わせた状態において、光情報記録媒体を初期化するレーザ波長(λrw)における光透過率を80%以上の値とすることがより好ましく、90%以上の値とすることがさらに好ましい。
なお、図3に示す光透過率曲線においては、光情報記録媒体を初期化するレーザ波長(λin)における光透過率は約90%以上であることから、光情報記録媒体への読み書き性が阻害されるような問題は生じないことが容易に理解される。
【0029】
(2)−4 耐久性
また、着色剤の耐久性に関して、以下の光透過率に関する関係を満足することが好ましい。すなわち、着色剤の最大光吸収ピーク波長(λmax)における初期光透過率(T(λmax)0)を50%以下の値とし、80℃、相対湿度85%の環境条件に1,000時間放置した後の着色剤の最大光吸収ピーク波長(λmax)における光透過率(T(λmax)1000)を60%以下とすることが好ましい。
この理由は、かかる光透過率の数値範囲を満足しない場合に、着色剤が劣化して、低分子量化すると、最大光吸収ピークの位置がずれて、光情報記録媒体への読み書きを阻害する場合が生じたり、光情報記録媒体における干渉縞の抑制効果が低下したりする場合があるためである。
なお、図3に示す光透過率曲線において、T(λmax)0は約15%であり、T(λmax)1000は約42.5%であることから、上述した基準を満足することが理解できる。
【0030】
また、着色剤の最大光吸収ピーク波長(λmax)における初期光透過率(T(λmax)0)と、80℃、相対湿度85%の環境条件に1,000時間放置した後の着色剤の最大光吸収ピーク波長(λmax)における光透過率(T(λmax)1000)とが、以下の関係式(1)を満足することが好ましい
|(T(λmax)1000)−(T(λmax)0)|/(100−(T(λmax)0))×100<50 (1)
この理由は、かかる関係式(1)を満足しない場合、着色剤が劣化して、低分子量化すると、最大光吸収ピークの位置がずれて、光情報記録媒体への読み書きを阻害する場合が生じたり、光情報記録媒体における干渉縞の抑制効果が低下したりする場合があるためである。
なお、図3に示す光透過率曲線において、T(λmax)0は約15%であり、T(λmax)1000は約42.5%であることから、関係式(1)を満足することが理解できる。
【0031】
(4)厚さ
光情報記録媒体用接着剤フィルムにおける接着剤層の厚さを1〜30μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる接着剤層の厚さが1μm未満の値になると、光情報記録媒体用接着剤フィルムと、光情報記録媒体との貼り合せが困難になったり、あるいは貼り合せた後に、光情報記録媒体用接着剤フィルムが自然剥離したりする場合があるためである。
一方、かかる接着剤層の厚さが30μmを超えると、光情報記録媒体用接着剤フィルムを貼り合せた剥離フィルムをロール状態で長期間保管した場合や加熱した場合に、剥離フィルムから光情報記録媒体用接着剤フィルムを容易に剥がすことが困難となったり、ロール状に巻き取る際にロール径が大きくなる不具合が生じたりする場合があるためである。
さらに、接着剤層の厚さを5〜25μmの範囲内の値とすることがより好ましい。
【0032】
(5)剥離フィルム
光情報記録媒体用接着剤フィルムにおいて、接着剤層の保護等を目的として、剥離フィルムを接着剤層の表面に積層することが好ましい。
このような剥離フィルムの種類としては特に制限されるものではないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。剥離フィルムの厚さは、10〜200μmとすることが好ましい。
【0033】
また、所望により、接着剤層から剥離フィルムを容易に剥離できるように、剥離フィルムの表面に、例えば、シリコーン樹脂層、長鎖アルキル基含有(共)重合体層等からなる剥離層を設けることができる。
【0034】
(6)カバーフィルム
本発明の光情報記録媒体用接着剤フィルム17は、光情報記録媒体を構成するカバーフィルム20をその表面に積層して用いられる。この場合のカバーフィルム20の構成材料としては、例えば、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂等の透明樹脂を用いることが好ましい。カバーフィルム20の厚さは、通常は25〜300μm程度であり、好ましくは50〜200μmである。
【0035】
2.製造方法
光情報記録媒体用接着剤フィルムの製造方法は特に制限されるものではないが、フィルム基材を準備した後、例えば、ナイフコーター、ロールコーター、グラビアコーター、アプリケーターコーター、回転塗布装置等を用いて、エネルギー線硬化性組成物等からなる接着剤を塗布して、それをエネルギー線硬化等させて接着剤層を形成することができる。
【0036】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、図4に示すように、第1の実施形態の光情報記録媒体用接着剤フィルムを構成する接着剤層18を用いて、光情報記録媒体の一部を構成するカバーフィルム20、例えば、ポリカーボネートフィルムと、記録層12、16を含むポリカーボネート基板10と、を貼り合わせなる光情報記録媒体30である。
また、図4に示す光情報記録媒体30の場合、複数の記録層12、16の間に中間層14が設けてあるが、かかる中間層14を構成する接着剤としても、第1の実施形態の光情報記録媒体用接着剤フィルムを用いることができる。
なお、光情報記録媒体用接着剤フィルムの内容については、既に第1の実施形態で説明したため、以下、光情報記録媒体の構成および製造方法について中心に説明する。
【0037】
1.構成
光情報記録媒体としては、例えば、CD(コンパクトディスク)やDVD(デジタル多用途ディスク)に代表されるが、その構成としては、図5に示すように、光情報記録媒体に含まれる記録層が一層構造であっても良く、あるいは図4に示すように、記録層が、第1の記録層12と、第2の記録層16との間に、接着剤層として、中間層14を含んで構成された二層構造であっても良い。
より具体的には、図5に示す光情報記録媒体30´の場合、下層から、ポリカーボネート基板10、スタンパー受容層(スタンパー接着剤層)21、記録層16、第1の接着剤層18、およびカバーフィルム20から構成されている。
一方、図4に示す光情報記録媒体の場合には、下層から、ポリカーボネート基板10、第1の記録層12、中間層(第2の接着剤層)14、第2の記録層16、第1の接着剤層18、およびカバーフィルム20から構成されている。そして、中間層14は、図1(b)に示されるように、使用前においては、通常、両側に剥離フィルム19´、19´´が設けられている。そして、使用する際には、両側の剥離フィルム19´、19´´を順次剥離して、第1の記録層12と、第2の記録層16との間に載置されて、中間層14を構成する。中間層14は接着剤14aを含み、さらに必要に応じ着色剤14bを含んでも良い。
なお、スタンパー接着剤層や中間層を構成する接着剤の構成は、第1の実施形態で説明した接着剤層(第1の接着剤層)を構成する接着剤と、同様の内容とすることもできるし、あるいは一部変更した類似構成の接着剤とすることもできる。
スタンパー接着剤層および中間層の厚さは前記のように1〜30μmが好ましく、5〜25μmとすることがより好ましい。
【0038】
2.製造方法
光情報記録媒体用接着剤フィルムを用いた光情報記録媒体の製造方法についても、特に制限されるものではないが、例えば、光ディスクを例にとって、図6(a)〜(e)に示すように製造することができる。
すなわち、図6(a)に示すように、光情報記録媒体用接着剤フィルム1の片面側の剥離フィルム(図示せず)を剥離除去した後、露出したスタンパー受容層21をポリカーボネート等からなる光情報記録媒体基板10に積層し、さらに、スタンパー受容層21上に積層されている他方の剥離フィルム19を剥離除去して、スタンパー受容層21を露出させる。
【0039】
次いで、図6(b)に示すように、凹凸パターンを備えたスタンパー(S)を準備し、図6(c)に示すように、露出したスタンパー受容層21の表面にスタンパー(S)を圧着して、スタンパー受容層21に対して、スタンパー(S)の凹凸パターンを転写する。
なお、スタンパー受容層21の室温における貯蔵弾性率が1×103〜1×106Paの範囲である場合には、スタンパー(S)の圧着による凹凸パターンの転写は室温で行うことができる。
また、図示するスタンパー(S)は、通常はニッケル合金等の金属材料または、ノルボルネン樹脂やポリカーボネート樹脂などから構成されていることが好ましく、さらに、図示するスタンパー(S)の形状は板状であるが、これに限定されるものではなく、ロール状等の各種形態を採用することができる。
【0040】
次いで、図6(d)に示すように、スタンパー受容層21にスタンパー(S)を密着させた状態で、エネルギー線照射装置、例えば、UVランプ(L)を使用して、光情報記録媒体基板10の裏側からスタンパー受容層21に対してエネルギー線を照射する。また、透明スタンパーを用いる場合には、スタンパー側から照射することも可能である。これにより、スタンパー受容層21を構成するエネルギー線硬化性接着剤が硬化して、スタンパー(S)をスタンパー受容層21から分離することができる。すなわち、スタンパー受容層21にスタンパー(S)の凹凸パターンが転写・固定されて、ピットまたはグルーブが形成されることになる。
なお、エネルギー線としては、通常、紫外線や電子線等が用いられる。また、エネルギー線の照射量は、エネルギー線の種類によって異なるが、例えば紫外線の場合には、照射量としては100〜500mJ/cmの範囲内が好ましく、電子線の場合には、10〜1000kradの範囲内が好ましい。
【0041】
次いで、図6(e)に示すように、スタンパー受容層21の表面に、スパッタリング等の手段を用いて、記録層16としての反射膜を形成する。かかる記録層16としての反射膜は、相変化記録層等の記録層をさらに含む多層膜であってもよい。
【0042】
最後に、図5に示すように、上記反射膜16上の接着剤層18の表面に、カバーフィルム20を積層して、光情報記録媒体としての光ディスク30´を得ることができる。
このようにして作成した光ディスクによれば、接着剤層中に、光ディスクへの読み書きを行なう際のレーザ波長をλrwとしたときに、当該レーザ波長(λrw)と異なる波長域に最大光吸収ピーク波長(λmax)を有する着色剤を含有していることより、光ディスクへの読み書き等を阻害することなく、光ディスクにおける干渉縞の発生を抑制できるようになった。
【実施例】
【0043】
以下、実施例を参照しながら、さらに本発明を詳細に説明する。ただし、言うまでも無いが、実施例は本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲は実施例の記載に制限されるものでは無い。
【0044】
[実施例1]
1.光ディスクの作成
(1)エネルギー線硬化型接着剤溶液の調整
モノマー成分として、n−ブチルアクリレート/アクリル酸=69.22/30.78(モル比)を用い、重量平均分子量が約80万、固形分濃度が35重量%のポリアクリル酸エステル溶液を溶液重合により得た。
このポリアクリル酸エステル溶液100重量部に、固形分濃度が100重量%のジペンタエリスリトールヘキサアクリレート35重量部と、キレート系架橋剤アルミニウムトリスアセチルアセトネート0.05重量部(川研ファインケミカル(株)社製アルミキレートA(W))を酢酸エチルにて希釈し、固形分濃度が1重量%濃度となるようにしたもの5重量部と、光重合開始剤2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、イルガキュア651)2,1重量部をメチルエチルケトンに希釈し固形分濃度が25重量%となるようにしたもの8.4重量部とを加え、十分に攪拌してエネルギー線硬化型接着剤溶液を得た。
【0045】
(2)光情報記録媒体用接着剤フィルムの作成
得られたエネルギー線硬化型接着剤溶液を、38μm厚のポリエチレンテレフタレート(以下「PET」とする)フィルムを基材とした剥離フィルム(SP−PET3811;LTC製)を、シリコーン樹脂にて剥離処理した剥離処理面に、乾燥後の接着剤層の厚さが24μmとなるように塗布乾燥した。次いで、乾燥後の接着剤面に、38μm厚のPETフィルムを基材とする剥離フィルム(SP−PET3801;LTC製)をシリコーン樹脂にて剥離処理した剥離処理面を貼り合わせ、記録層を多層化する際に用いるスタンパー受容層を兼ねたエネルギー線硬化型の中間層材料を得た。
次いで、先のエネルギー線硬化型接着剤溶液100重量部に対して、シアニン系赤色着色剤(FEW CHEMICALS社製、S0360:3-Butyl-2-〔3-(1,3-dihydro-1,3,3-trimethyl-2H-indol-2-ylidene)-propenyl〕-1,1-dimethyl-1H-benzo(e)indolium perchlorate)をメチルエチルケトンにて固形分濃度を0.5重量%に調整した着色剤溶液を30重量部加え、赤色に着色したエネルギー線硬化型接着剤溶液を得た。この着色したエネルギー線硬化型接着剤溶液を、剥離フィルム(SP‐PET3811;LTC製)の剥離処理面に、乾燥後の厚さが16μmとなるように塗布乾燥し、この乾燥した接着剤面に、60μm厚のポリカーボネートフィルム(ピュアエースC110‐60;帝人化成(株)製)を貼り合わせて記録層保護用のカバーフィルムを得た。
【0046】
(3)光情報記録媒体用接着剤フィルムを用いた光ディスクの作成
射出成型にて製造した1.1mm厚のポリカーボネート基板に対して、スパッタリング装置により、反射膜(銀合金薄膜;100nm)、誘電膜(ZnS−SiO2;45nm)、相変化膜(Ge−Sb−Te系合金膜;16nm)、誘電膜(ZnS−SiO2;68nm)を順次に成膜して、複数層からなる記録層を形成した。
次いで、得られた記録層の表面に、先に作成した中間層材料の一面を、片側の剥離フィルム(SP−PET3801)を剥離して貼合し、さらにもう一方の剥離フィルム(SP−PET3801)を剥離した後、この中間層材料の他方の面に対して、ノルボルネン樹脂製の透明スタンパーのグルーブ(凹凸パターン)が形成してある面を、25℃、29Nの条件で押圧し、スタンパーの凹凸パターンを転写した。
次いで、紫外線照射装置(リンテック社製、Adwill Rad−2000m/B)を用いて、スタンパー側から紫外線を、照射量300mJ/cm2の条件で照射して、中間層材料を紫外線硬化させ、上記凹凸パターンを固定形成した。さらに、スタンパーを硬化させた中間層材料から分離した後、硬化させた中間層材料の表面にスパッタリング装置により、上述したのと同様の記録層を形成した。すなわち、誘電膜(SiN/ZnS−SiO2;130/5nm)、相変化膜(Ge−Sb−Te系合金膜;5nm)、誘電膜(ZnS−SiO/SiN2;5/125nm)と、を順次に成膜して、複数層からなる記録層を形成した。この記録層の表面に、先に作成した記録層保護用のカバーフィルムを、片側の剥離フィルム(SP−PET3811)を剥離した後、貼合した。
最後に、カバーフィルム側から、紫外線照射装置(リンテック社製、Adwill Rad−2000m/B)を用いて、照射量300mJ/cm2の条件で照射して、エネルギー線硬化型接着剤を紫外線硬化させて、実施例1の光ディスクとした。
【0047】
2.光ディスクの評価
2−(1) 干渉縞評価
得られた光ディスクについて、光ディスクのカバー層側から目視観察を行い、以下の基準に沿って干渉縞評価を行った。その後、かかる光ディスクを80℃、相対湿度85%の環境下に1,000時間放置し後に、同様の干渉縞評価を実施した。
◎:干渉縞は全く観察されなかった。
○:干渉縞はほとんど観察されなかった。
△:実用上は問題無いレベルであるが、干渉縞が少々観察された。
×:干渉縞が顕著に観察された。
【0048】
2−(2) 光透過率測定
得られた光情報記録媒体用接着剤フィルムをカバーフィルムを貼り合わせた状態で、厚さ1.1mmのソーダガラス板に貼付け、紫外可視分光光度計(株式会社島津製作所製、UV−3100PC)を用いて下記の光透過率をそれぞれ測定した。
rw :読み書きを行うレーザ波長(405nm)における光透過率(%)
in :初期化を行うレーザ波長(810nm)における光透過率(%)
(λmax)0 :着色剤の最大光吸収ピーク波長における初期光透過率(%)
その後、得られた光情報記録媒体用接着剤フィルムを、厚さ1.1mmのソーダガラス
板に貼付けた状態で、80℃、相対湿度85%の環境下に1000時間放置した後、下記
の光透過率を同様に測定した。
(λmax)1000:1000時間放置した後の最大光吸収ピークにおける光透過率(%)
また、上記の光透過率測定結果から下記のΔTを求めた。
ΔT=|(T(λmax)1000)−(T(λmax)0)|/(100−(T(λmax)0))×100
【0049】
[実施例2]
実施例2においては、実施例1で使用した着色剤溶液の添加量を30重量部から、20重量部とした以外は、実施例1と同様に、光ディスクを作成して、評価した。
【0050】
[実施例3]
実施例3においては、実施例1で使用した赤色着色剤のかわりに、シアニン系青色着色剤(FEW CHEMICALS社製、S0409:1-Butyl-2-〔5-(1-butyl-1, 3-dihydro-3,3 -dimethyl-2H-indol-2-ylidene)-penta-1,3-dienyl〕-3,3-dimethyl-3H-indolium perchlorate)を30重量部用いた以外は、実施例1と同様に、光ディスクを作成して、評価した。
【0051】
[比較例1]
比較例1においては、実施例1で使用した着色剤溶液を全く添加しなかった以外は、実施例1と同様に、光ディスクを作成して、評価した。
【0052】
なお、上述した実施例及び比較例の光透過率と干渉縞の評価結果を示す。そして、表1に示す結果から明らかなように、実施例1及び2においては、波長575nm付近に最大光吸収ピークを有していた。実施例3では、波長655nm付近に最大光吸収ピークを有していた。一方、比較例1では、光吸収ピークはみられなかった。
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の光情報記録媒体用接着剤フィルムおよびそのような光情報記録媒体用接着剤フィルムを用いた光情報記録媒体によれば、接着剤層中に、光情報記録媒体への読み書きを行なう際のレーザ波長をλrwとしたときに、当該レーザ波長(λrw)と異なる波長域に最大光吸収ピーク波長(λmax)を有する着色剤を含有することより、光情報記録媒体への読み書き等を阻害することなく、光情報記録媒体における干渉縞の発生を抑制できるようになった。
したがって、CD(コンパクトディスク)やDVD(デジタル多用途ディスク)に代表される光情報記録媒体への外観性や装飾性が良好となるばかりか、干渉縞の発生による誤動作等についても有効に防止できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】光情報記録媒体用接着剤フィルムの断面図である。
【図2】光情報記録媒体(着色剤無添加)における光透過率曲線の経時変化を説明するために供する図である。
【図3】光情報記録媒体(着色剤添加)における光透過率曲線の経時変化を説明するために供する図である。
【図4】光情報記録媒体用接着剤フィルムを用いた光情報記録媒体における断面図である。
【図5】光情報記録媒体用接着剤フィルムを用いた光情報記録媒体における断面図である。
【図6】光情報記録媒体の製造方法を説明するために供する図である。
【図7】次世代光ディスク(Blu−ray Disc)を説明するために供する図である。
【図8】従来の光ディスク製造用シートの構造を説明するために供する図である。
【符号の説明】
【0055】
1、17:光情報記録媒体用接着剤フィルム
10 :ポリカーボネート基板
12、16:記録層
14 :中間層(第2の接着剤層)
14´:中間層材料
18 :接着剤層(第1の接着剤層)
18a:接着剤
18b:着色剤
19、19´、19´´:剥離フィルム
20 :カバーフィルム
21 :接着剤層(スタンパー受容層)
30、30´:光情報記録媒体
100:次世代光ディスク
101:ポリカーボネート基材
102:記録層
104:接着剤層
106:光透過性フィルム
S :スタンパー
L :UVランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤層を備えた光情報記録媒体用接着剤フィルムにおいて、前記接着剤層中に、光情報記録媒体への読み書きを行なう際のレーザ波長をλrwとしたときに、当該レーザ波長(λrw)と異なる波長域に最大光吸収ピーク波長(λmax)を有する着色剤を含有することを特徴とする光情報記録媒体用接着剤フィルム。
【請求項2】
前記光情報記録媒体用接着剤フィルムを用いて、前記光情報記録媒体の一部を構成するカバーフィルムを貼り合わせた状態において、前記レーザ波長(λrw)での光透過率を70%以上の値とすることを特徴とする請求項1に記載の光情報記録媒体用接着剤フィルム。
【請求項3】
前記光情報記録媒体の初期化を行なうレーザ波長をλinとしたときに、前記着色剤の最大光吸収ピーク波長(λmax)が、前記レーザ波長(λin)と異なることを特徴とする請求項1または2に記載の光情報記録媒体用接着剤フィルム。
【請求項4】
前記光情報記録媒体用接着剤フィルムを用いて、前記光情報記録媒体の一部を構成するカバーフィルムを貼り合わせた状態において、前記レーザ波長(λin)での光透過率を70%以上の値とすることを特徴とする請求項3に記載の光情報記録媒体ディスク用接着剤フィルム。
【請求項5】
前記カバーフィルムが、ポリカーボネートフィルムであることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の光情報記録媒体用接着剤フィルム。
【請求項6】
前記光情報記録媒体用接着剤フィルムが、主成分として、(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含む接着剤であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の光情報記録媒体用接着剤フィルム。
【請求項7】
前記光情報記録媒体用接着剤フィルムが、エネルギー線硬化型接着剤であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の光情報記録媒体用接着剤フィルム。
【請求項8】
前記着色剤の最大光吸収ピーク波長(λmax)における初期光透過率(T(λmax)0)を50%以下の値とし、80℃、相対湿度85%の環境条件に1,000時間放置した後の着色剤の最大光吸収ピーク波長(λmax)における光透過率(T(λmax)1000)を60%以下とすることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の光情報記録媒体用接着剤フィルム。
【請求項9】
前記着色剤の最大光吸収ピーク波長(λmax)における初期光透過率(T(λmax)0)と、80℃、相対湿度85%の環境条件に1,000時間放置した後の着色剤の最大光吸収ピーク波長(λmax)における光透過率(T(λmax)1000)とが、以下の関係式(1)を満足することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の光情報記録媒体用接着剤フィルム。
|(T(λmax)1000)−(T(λmax)0)|/(100−(T(λmax)0))×100<50 (1)
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の光情報記録媒体用接着剤フィルムを用いて、前記光情報記録媒体の一部を構成するポリカーボネートフィルムと、記録層を備えたポリカーボネート基板とを貼り合わせてなる光情報記録媒体。
【請求項11】
前記記録層が、複数の記録層から構成されているとともに、当該複数の記録層の間に、前記光情報記録媒体用接着剤フィルムが、さらに中間層として形成してあることを特徴とする請求項10に記載の光情報記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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