説明

光放射を用いて材料を硬化するための装置および方法

【課題】望ましい硬化パワー密度、サイズ、および熱特性の固体発光構成要素を備える硬化装置を提供する。
【解決手段】患者の口内の光硬化性化合物を硬化するための器具10であって、前記器具が、ハウジング12と、基板上の複数の固体発光要素とを備える。集合アレイ32を基板上に形成する。光合焦装置44は、要素のアレイ32によって放出される光を平行にして、化合物を硬化するために化合物上に向けられるビームにする非結像光装置を含む。使い捨てスリーブ50は、ハウジングおよびアレイをカバーして、光合焦装置を組み込むことができる。スリーブ50は、使用後に取り外され、廃棄されて、器具を高圧蒸気滅菌する必要をなくす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、放射を用いた材料の硬化に関し、より詳細には、光を用いて歯科被覆および充填化合物を硬化することに関する。
【背景技術】
【0002】
硬化性接着化合物および結合または充填化合物が、対象物面を構造的に一体に接続するため、または対象物面内のギャップ、開口、および腔を充填するために広く使用されている。そのような硬化性化合物は、一般に、対象物面において半固体状態で扱われ、位置決めされ、次いで、より固い永久的な状態に適所に固化または硬化される。適用可能な化合物の硬化または固化は通常、1つまたは複数の硬化条件または要因によって促され、進められる化学プロセスである。例えば、硬化プロセスは、半固体化合物およびその成分を空気へ露出することによって、またはそのような化合物およびその成分を熱源などエネルギー源へ露出することによって進めることができる。
【0003】
他の硬化性接着および充填化合物は、可視および不可視の光エネルギーなど放射エネルギーへの露出によって硬化される。光硬化性化合物と呼ばれるそのような化合物は、半固体状態で、ある領域内に、または作業面上に向けて扱われる。次いで、好ましくは特定の波長または波長帯域での光ビームの形で、光放射が化合物上に向けられる。化合物は、感光化学成分を含み、この成分は、特定の波長の光にさらされると、作業面上の所望の位置での化合物の硬化または固化を促進して、表面を結合し、充填し、または被覆する。
【0004】
一例として、光硬化性充填および接着化合物が歯科処置で広く使用されている。歯科医は、歯面を被覆して封鎖し、歯面の齲歯および他の腔を充填し、歯冠および様々な他の歯科構造を歯面に固定するための光硬化性歯科化合物を使用する。従来、歯科化合物は、スペクトルの青色範囲での光に露出することによって硬化される。硬化されると、歯科化合物はさらなる歯の齲食を低減し、歯科構造を接合し、かつ/または追加の構造を歯に提供する。したがって、化合物が完全に硬化されることが重要である。
【0005】
より具体的には、光硬化性歯科化合物を硬化するために、手持ち式硬化光装置からの可視青色光、特に青色光ビームが、所望の化合物層を含む歯面上に向けられる。青色光は、歯面上の化合物層内に貫入して、完全な硬化を行う。化合物層を適切に硬化するために青色光に露出する持続期間は、化合物のタイプおよび化合物層の厚さ、ならびにパワーレベル、および硬化光装置からの青色光の特性によって決定される。例えば、薄い歯面コーティングまたはベニアは、放射光パワーをあまり必要とせず、一方、齲歯および他の腔に対するより厚く深い充填は、適切な硬化のために歯面上に向けられる、より大きな放射パワーを必要とする。
【0006】
光硬化性化合物は、歯科分野で非常に有益な結果を示しているが、歯面に光を送達するために利用される既存の技法および歯科硬化光装置は、様々な欠点を有する。例えば、既存の歯科硬化装置は、特定のフィルタリング機構を必要とする。フィルタリングは、いくつかの理由により行わなければならない。第1に、青色光の特定の波長がヒト組織に有害であることが知られている。歯面上にのみ光ビームを向ける試みが行われているが、光に対するある量の口腔組織の露出は避けられない。したがって、有害な波長をフィルタリングしなければならない。さらに、光硬化性化合物は通常、現在利用可能な歯科化合物での特定の青色光波長など何らかの特定の波長を有する光に敏感である。したがって、歯科硬化光フィルタリング装置は、患者の安全性と適切な硬化との両方に適した波長で光を放出するように調整される。
【0007】
多くの既存の従来式歯科硬化光が、ハロゲンバルブなど広域スペクトルのランプ要素を使用する。その結果、歯科硬化ライトは、ランプ要素から広域スペクトルの光を受け取り、次いで光をフィルタリングして、所望の波長での光のみを提供する特別な、かつ複雑なフィルタリング装置を利用しなければならない。利用可能なランプ要素は、可視光、UV光、および赤外光を含めた放射線の広いスペクトルを送達する。したがって、従来技術の硬化技法およびライト装置は通常、非常に効率の悪いものであった。これは、単に光スペクトルの相当な部分をフィルタリングすることにより、大量の放射光パワーが失われるためである。例えば、従来のハロゲンバルブへの入力パワーは典型的には約80ワットにすることができ、しかし所望の青色波長、例えば400〜500ナノメートルの光の歯科ライト装置からの出力パワーは典型的には0.5ワット未満である。
【0008】
さらに、従来技術歯科硬化ライトの効率は、フィルタリング要素への放射光の入射角によるパワー損失によってさらに低下する。例えば、多くの従来技術硬化ライトが、青色光など所望の波長での光のみを歯面および歯科化合物上に反射する反射フィルタを利用する。望ましくない波長での光が、フィルタを介して光吸収構成要素に向かい、そこで光が放散される。ハロゲンバルブからの光の入射角が、フィルタリング要素面に対する所望の入射角度(例えば45°)と大幅に異なっている場合、望ましい光は少量しか歯面上に反射されない。これはさらに、歯科化合物を硬化するために利用可能な所望の光パワーの量を低減する。逆に、フィルタリング要素を介して伝送させて放散させるのではなく、望ましくない波長でのより大量の光を歯面上に反射する場合もある。
【0009】
従来技術硬化ライトに関するさらに別の欠点は、適切な温度範囲内で動作するために、かなりの量の熱を発生し、したがって複雑な冷却システムが必要であることである。ハロゲンバルブによって発生される望ましくない波長での相当な量の光エネルギーを、フィルタリングし、または他の方法で捕捉しなければならない。次いで、捕捉またはフィルタリングされたエネルギーが熱の形で放散される。したがって、パワー吸収および熱放散要素が、従来の硬化光装置内で必要とされる。
【0010】
反射されず、使用されない光エネルギーを熱の形で吸収して放散するために、反射フィルタに関して熱遮蔽がしばしば利用される。硬化のための所望の光パワーレベルを発生するためにハロゲンバルブが必要とする高いパワー出力が、遮蔽に対してかなり高い熱負荷を生み出す。このとき、遮蔽を冷却しなければならない。一般に、ファン要素を歯科ライト装置で使用して、遮蔽に対流冷却を提供する。追加の冷却要素が、ライト装置のサイズを増大し、その設計を複雑にする。理解されるように、手持ち式であり、患者の口内で使用されるので、光装置をできるだけ小さく、操作可能に保つことが望ましい。
【0011】
さらに、熱負荷は反射フィルタ要素に対しても加わり、これも後でヒートシンクおよびファンなどによって冷却しなければならない。吸収装置および熱放散システムは、ライト装置の動作および設計を複雑にするだけでなく、製造の費用を高くし、動作故障が生じやすくする。
【0012】
従来技術の歯科硬化ライト装置の別の欠点は、ハロゲンバルブなどランプ要素の動作寿命に限界があることである。バルブは、頻繁に焼き切れ、交換しなければならない。さらに、通常は閉じられているライト装置内部で発生する熱が、バルブの効果的な動作寿命を短縮する。
【0013】
これらの欠点のいくつかに対処するための試みが従来技術で行われている。例えば、特願平6−30275号、特願平6−285508号、特願平7−163863号、および特願平8−194786号、米国特許第5420768号および米国特許第5634711号、ならびに英国特許出願GB2329756号は全て、パッケージされた従来の発光ダイオード、すなわちLEDを使用する様々な装置を開示して、望ましい青色範囲内での光を用いる硬化光源を提供する。大幅なフィルタリングを伴わずに特定の青色光がLEDによって提供されるが、様々なこれらの装置が、硬化光を合焦するために複雑な内部設計を必要とし、またはLEDの特定の電子制御を必要とする。さらに、多数の従来式LEDが必要である。上記出願の図に例示されているように、固体LED要素は、回路板または他の支持構造体にわたって広げられ、実際の硬化での使用のために必要とされる光の強度を発生するのに必要な全ての従来式LEDを含むようにいくぶん大きなハウジングを必要とする。したがって、小さく完全な設計で十分な硬化パワーを発生する、従来のLEDを使用する適切な硬化ライトを提供することは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上で引用した技術で開示されている従来のパッケージ式LEDの使用は、適切に冷却することができる妥当なサイズの装置で十分な硬化パワーを発生することに伴う難しさを特に表している。そのような装置でのさらなる複雑さは、従来式LEDの大きなグループからの光を、小さな領域内に、硬化に有用となるような十分なパワー密度で集中させる試みによって生じる。既存の従来のパッケージ式LED技術を利用する適切な硬化ライト装置を提供するそのような難しさは、そのような技術を利用する市場で、十分に受け入れられ、広く利用されている歯科硬化ライトがないことにより強調される。
【0015】
別法として、上述した米国特許出願第09/009205号に開示される装置および技術は、適切に冷却することができる妥当なサイズの装置で十分な硬化パワー密度を発生する固体発光構成要素を備える硬化装置を提供している。この先行出願で開示されている既存の技術を改善し、正常な市販硬化装置に必要な望ましい硬化パワー密度、サイズ、および熱特性を提供するために、本出願の発明者によるさらなる努力が続けられている。
【0016】
従来技術の硬化ライトに関連するさらに別の欠点は、光が要素またはバルブによって発生された後に、歯面など作業面に光を伝送する効率が悪いことである。光は、硬化ライトの主要ハウジング内部で発生し、ハウジングの出力端に伝送しなければならない。既存の歯科硬化ライトは、細長い光学ガイドを利用して、ハウジング内部の光発生要素から歯に光を送達する。
【0017】
光学ガイドは通常、細長いガイドに一体に融合された多数の光ファイバを備える。光発生要素と光学ガイドの入力端との間、および光学ガイドの出力端と口内との間にある空気/ガラス界面は、非効率的であり、界面当たり約10%のパワー損失をもたらす可能性がある。さらに、従来技術装置は、集束レンズを利用して光学ガイドの入力端に光を合焦する場合がある。これは、光が直面する別の損失の大きい界面を提供する。そのような非効率性がさらに、必要な硬化時間を長くし、かつ/または必要な硬化光強度を提供するためのより高いパワー(および関連する熱)の必要性を生み出す。
【0018】
歯科硬化ライトに関する別の問題は、そのようなライトが医療/歯科器具であり、器具の一部分が体腔すなわち口内に導入されることである。様々な患者に同じ硬化ライトが利用されるので、患者間の相互汚染を避けなければならない。したがって、従来の装置では、硬化ライトまたはその一部分の殺菌が必要とされている。しばしば高圧蒸気滅菌と呼ばれる殺菌は、歯科医または他の医師が購入し、保守管理しなければならない追加の機器を必要とする。殺菌はまた、硬化処置間に余分なステップを導入する。さらに、殺菌に必要な高い熱が、時間の経過と共に硬化ライトの構成要素に損傷を加える可能性がある。したがって、従来の硬化ライトは、殺菌の問題に対処するために、殺菌およびそれに関連する高温に耐えるように設計しなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0019】
したがって、本発明の目的は、光硬化性化合物を固化または硬化するための単一の耐久性硬化ライト装置を提供することである。特に、目的は、歯科充填および被覆に使用される歯科化合物を硬化するためにそのような硬化ライト装置を提供することである。
【0020】
別の目的は、固体ライト要素を利用する硬化ライトを提供することである。
【0021】
別の目的は、コンパクトで単純な設計を有し、実際の硬化適用例に有用な光パワー密度を提供することができる硬化ライトを提供することである。
【0022】
本発明のさらに別の目的は、パワーをあまり利用せず、高い効率を有する硬化ライトを用いて化合物を硬化し、装置によって発生される熱エネルギーの量を低減し、それにより放散しなければならない熱エネルギーを低減することである。さらに、光発生装置のより効率の良い冷却を提供することが望まれる。
【0023】
本発明のさらに別の目的は、光硬化性化合物を硬化するためのライト装置内部での、反射フィルタおよび他のフィルタ要素の必要性をなくすことである。
【0024】
さらに別の目的は、硬化ライト内部の殺菌の必要性に対処することである。
【0025】
さらなる目的は、小さな空間内で動作し、歯科患者の口内で簡単に操作される青色光装置を提供することである。
【0026】
これらの目的および様々なその他の目的は、以下の発明の詳細から、より容易に明らかになろう。
【0027】
患者の口内の歯科化合物など光硬化性化合物を硬化するための器具および方法が、複数の固体発光要素を支持するハウジングを備える。要素は、好ましくは、半導体材料から形成された発光ダイである。要素は、ハウジングによって支持される基板上に取り付けられて、狭い波長帯域内の波長を有する光を集めて放出するように動作可能な集合アレイを形成する。本発明の一実施形態では、狭い波長帯域が青色波長の帯域を含む。しかし、利用される硬化性化合物の感光性に応じて、他の波長を利用することもできる。
【0028】
本発明に適した1つのハウジングは、ハンドル部分およびバレル部分を有する銃形状ハウジングを含む。ハンドル部分は、操作者によって保持され、バレル部分は、歯など作業面に向けられる。可搬性電源をハウジング内部で利用して、それにより器具を、完全に可搬性をもつ手持ち式機器にすることができる。本発明の一実施形態では、発光要素のアレイが、患者の口内に配置されたハウジングのバレル部分の遠位端に位置決めされ、それにより光が歯など作業面に直接送達される。代替実施形態では、要素のアレイをハウジング内に位置決めする場合があり、したがって発生された光を、光ファイバ光学ガイドなどによって遠位端に伝送しなければならない。
【0029】
本発明の一態様によれば、光合焦装置は、要素のアレイによって放出される光を遮るように位置決めされる。光合焦装置は、アレイからの光を平行(コリメート)にして、化合物を硬化するために化合物上に向けられるビームにするように動作可能な非結像光装置である。非結像装置は、従来技術での結像レンズに関連する非効率性を伴わずに、アレイから作業面に光を効率良く平行にし、伝送する。反射要素をアレイと光合焦装置との間に位置決めして、アレイから光合焦装置に光をさらに効率良く向けて、平行にし、作業面に送達することができる。
【0030】
本発明の別の態様によれば、ダイのアレイは、200〜1400mW/cmの範囲内での光パワー密度を放出するように動作可能な密度で基板上に配置されている。そのような密度は、適切な硬化のために作業面に望ましい硬化パワーを提供する。そのようなアレイと、要素が取り付けられている基板とを冷却するために、本発明は伝導冷却を利用し、熱伝導液体を含むヒートチューブが、要素のアレイによって発生される熱を基板から伝導により伝達して逃がすために基板に熱的に結合されている。本発明の一実施形態では、ヒートシンクが基板に熱的に結合され、次いでヒートチューブがヒートシンクに熱的に結合される。このようにすると、熱は、基板および要素から伝導により伝達されて逃げる。ファンの利用などによって対流により熱を空気に伝達するために、熱交換器がヒートチューブのもう一方の端部に結合されている。
【0031】
本発明の別の態様では、硬化プロセス中にハウジングの一部分にわたってスリーブが利用される。各硬化プロセスの後、スリーブを取り外して廃棄する、または高圧蒸気滅菌することができ、それにより各使用の後に、かつ次の使用の前に、硬化器具全体を高圧蒸気滅菌する必要をなくす。そのために、スリーブは、1回使用の後に廃棄されるように完全に使い捨てにすることができる。本発明の一実施形態では、非結像レンズなどの非結像光装置と反射要素とがスリーブの端部に結合される。スリーブがハウジングの一部分にわたって位置決めされるとき、反射要素とレンズが、アレイと同軸に位置合わせされ、アレイからの光を平行にする。スリーブの使い捨て実施形態では、非結像レンズと反射要素との両方が使い捨てであり、各使用の後にスリーブと共に廃棄される。
【0032】
平坦な基板上に位置決めされる複数のダイを備えるアレイは通常、0〜180°の範囲で光を放出する。アレイがハウジングの近位端に位置するとき、非結像レンズおよび反射要素が、180°の範囲内の光を捕捉し、効果的に、かつ効率良く光を平行にして、作業面に向けられるビームにすることができる。アレイが、ハウジングのさらに内部に、ハウジングの遠位端から離して、かつ作業面から離して位置決めされているとき、非結像レンズは、180°範囲内の光を平行にして、光ファイバ光学ガイドの受入角度から大きく発散しないビームにするように動作可能である。このようにすると、光は、光学ガイドおよびハウジングを介してハウジングの遠位端に効率良く向けられて、その後、歯など作業面上に放出される。好ましくは、アレイは、作業面に光を直接送達するためにハウジングの遠位端に取り付けられる。このようにすると、複数の損失の大きな空気/ガラス界面を有する光ファイバ光学ガイドを、効率の良い光伝送のためになくすことができる。
【0033】
本発明の一実施形態は、要素のアレイに関して単一の非結像光合焦装置を利用する。別法として、要素を、アレイ上でサブグループとして整列させることができ、複数の非結像光装置を利用することができる。
【0034】
本明細書の一部に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付図面は、本発明の実施形態を例示し、以下に与える本発明の一般的な説明と共に、本発明の原理を説明する働きをする。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の原理による硬化ライト装置の一実施形態の部分断面側面図である。
【図2】図1に例示された本発明の実施形態の一部分の部分断面側面図である。
【図2A】本発明の別の実施形態の一部分の部分断面側面図である。
【図2B】本発明の別の実施形態の一部分の部分断面図である。
【図3】本発明の別の実施形態の一部分の部分断面側面図である。
【図4】本発明の別の実施形態の一部分の部分断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1に、本発明の一態様による、歯科化合物など光硬化性化合物を硬化するための硬化ライト装置または硬化ライトの一実施形態を例示する。図1で、装置10は、硬化のために操作されるハウジング12を含む。ハウジング12は、概して銃の形状をしており、ハンドル部分14とバレル部分16とを含む。歯科医など操作者は、ハンドル部分14の周りでハウジング12を把持し、歯面(または他の作業面)および硬化すべき化合物(図示せず)の方向にバレル部分16を向ける。歯科充填および被覆化合物を硬化するために、歯科医は通常、バレル部分の放射端17を特定の1本または複数本の歯に向けた状態で、バレル部分の少なくとも一部分を患者の口内に位置決めする。以下にさらに論じるように、ハンドル部分14は操作トリガスイッチ18を含み、スイッチ18は、電源20および/または制御回路24に動作可能に結合されて、硬化光ビームを発生するために装置を選択的に操作し、電力を発光要素アレイ32に供給する。電源20は、ハンドル部分14内に位置して示してあるが、ハウジング内のどこに位置してもよい。
【0037】
本発明の一実施形態では、電源は、携帯型であり、電池22を組み込んでいる。電池は、任意の適切なタイプのもの(例えばリチウム電池)であってよく、使い捨てのものでも、充電式のものでもよい。そのために、ハウジング12は、充電式電池22を充電するために電源20に外部充電器(図示せず)を結合するためのポート23を含むことができる。あるいは、交流コンセントによって電力投入されるものなど外部電源を電源20に結合して、装置10を操作するのに必要な電力を提供することができる。
【0038】
制御回路24は、ハウジング12内部に取り付けられ、電源20と、トリガスイッチ18と、発光要素アレイ32などの装置10の他の構成要素とに動作可能に結合されて、構成要素を操作し、制御する。例えば、制御回路24は、装置10の所望の電力および制御を提供するために、回路板に取り付けられ、当業者によって決定される形で配置された様々な電気回路構成要素を含むことができる。例えば、制御回路24は通常、トリガスイッチがつながれたときに装置に関する操作放射サイクルのタイミングを合わせるためのタイマなど、硬化ライト装置用の従来の制御回路を含む。そのような制御のために、個別的な構成要素ではなくマイクロプロセッサを利用することもできる。制御回路は、硬化ライト10を適切に操作するように様々な異なる形で構成することができることを容易に理解されよう。一実施形態では、マイクロプロセッサ制御が、一定の出力を発生するようにランプ電圧を調整する。他の実施形態では、マイクロプロセッサ制御を利用して、適切な硬化のために選択された形で電力を次第に上げるまたは下げることができる。
【0039】
バレル部分16は、ハウジングの外、および歯面または他の作業面に硬化光ビーム21を向けるように適切に形成されており、角度の付いた遠位端すなわち放射端17を含むことができる。ハウジング12の形状を変えることもできることを当業者は理解されよう。バレル部分16は、図では堅固なものとして示した。しかし、熱放散の目的で排気口を付けることもできる。さらに、バレル部分16は、ハウジングの残りの部分から分離したものであってよく、当該技術分野で知られている任意の適切な方法によってハウジングに取外し可能に固定することができる。例えば、バレル部分16を、ハウジング12にねじ式に取り付けることができる。さらに、電源をバレル部分に並べて位置決めして、ハンドル部分を縮小し、またはなくし、それにより小さなポケット硬化ライト用などのデザインを流線型化することができる。ハウジング12は、ポリスルホンなど適切な軽量プラスチック材料から形成される。
【0040】
図1は、硬化の目的で利用される放射線または光のビームが、バレル部分16の放射端17に近接して位置決めされた発光要素のアレイ32によって発生される本発明の一実施形態を例示する。アレイ32が発生する熱は、放射端17すなわち遠位端から、バレル部分の近位端19に戻るように伝えられ、さらに近位端19で放散される。図1の実施形態では、ヒートチューブ38がアレイ32に熱的に結合され、アレイによって発生された熱を熱交換器26に伝導により伝達し、熱交換器は次いで対流により冷却される。図1に示されるように、モータ29およびブレード30を備える適切なファン28をハウジング12内部に取り付けて、対流冷却を補助することができる。
【0041】
より具体的には、図2を参照すると、本発明の例示実施形態は、基板34上にアレイ32を形成するために取り付けられた複数の個別発光ダイ30を利用する。ダイ30は、小さく、裸の半導体ジャンクションであり、光発生半導体材料を使用して構成される。ダイ30は、従来の発光ダイオードすなわちLEDと同様に個別インテグラルレンズと共に個別に、すなわち、個々にはパッケージされない、またはその他の方法で取り付けられないことが好ましい。従来技術で使用されている従来LEDは、通常は反射器と、一体に形成された個別レンズとを含むインテグラルパッケージおよび個別パッケージを有する。本発明のダイは、透明保護コーティング40など追加の構成要素と共に使用することができ、このコーティングは、基板34上のダイ、または他の追加構成要素の上に塗布される。しかし、取り付けられたダイは、本質的には裸の半導体ジャンクションであり、従来のLEDで見られるように、事前パッケージされた個別およびインテグラル反射器およびインテグラルレンズを有さない。
【0042】
上述したように、ダイ30は、従来のLEDと同様に個別にはレンズ化されない。しかし、プラスチックからなる透明保護層すなわちコーティング40によってカバーして、アレイ32の耐久性を改善することができる。
【0043】
基板34は、熱伝導性をもつ電気絶縁基板である。本発明の一実施形態では、基板34は、電気絶縁性をもち、しかしまたアレイ32から熱を伝導して逃がすサファイア基板またはダイアモンドにすることができる。概して円形の断面を有するビーム内での均一な光発生のために、アレイのダイ30は円形パターンで配置されることが好ましい。米国特許出願09/009205号は、本発明の一実施形態に適したダイおよび光発生要素のいくつかの円形パターンを例示する。
【0044】
基板34は、銅など適切な熱伝導材料から形成されるヒートシンク36に結合される。次いで、ヒートシンク36は、ダイ30が発生した熱をヒートシンク36、基板34、およびアレイ32から伝導により伝達して逃がすための液体充填ヒートチューブまたはヒートパイプ38の一端に溶接される、またははんだ付けされる。熱伝導液体39は、基板34およびアレイ32と反対のヒートシンク36の後側に接触し(図2参照)、熱をシンクから熱的に引き出す。したがって、アレイは、ヒートチューブ38および基板34、ヒートシンク36を使用して効果的に伝導により冷却される。内部に食塩水など熱伝導液体39を含むヒートチューブ38は、Aavid Thermal Technologiesから市販されている。
【0045】
本発明の1つの特に独自的な態様は、アレイ32が、伝導により冷却されて、光発生ダイ30からの適切な伝熱を提供することである。従来技術の構造は、従来、光発生要素に熱的に結合されているヒートシンクおよび他の熱放散装置がファンなどによって対流により空気冷却される対流冷却に依拠している。従来技術装置に伴う1つの特定の問題は、内部で利用されるLEDまたは他の光発生要素が発生する熱の放散である。本発明では、ヒートチューブ38が、アレイ32およびダイ30から伝導により迅速に熱を引き取って逃がし、冷却特性を改善する。これにより、過熱しないアレイを維持しながら、適切な硬化のために十分な量の硬化光パワーを発生することができる。したがって、本発明は、従来技術に対する伝熱および熱放散能力の改善を提供する。
【0046】
再び図1、およびバレル部分16の遠位端すなわち放射端17に位置するアレイ32を利用する本発明の実施形態を参照すると、ヒートチューブ38の反対側の端部、すなわち近位端が、熱交換器26に熱的に係合され、熱交換器は次いでファン28によって対流により冷却される。ヒートチューブ38にはんだ付けすることができる熱交換器は、図示されるようにフィンを有し、フィンに空気が向けられる。したがって、アレイ32は、ヒートチューブ38および内部の液体によって伝導により冷却され、次いでヒートチューブが、ファンなどによって、空気によって反対側の端部で対流により冷却される。
【0047】
アレイ32が発生するビームを指向および平行にするために、図2に例示される本発明の実施形態は、反射面42および光合焦装置44を利用して、アレイ32からの光を平行ビームにして、口内の化合物を硬化するために患者の口内に向ける、または何らかの他の作業面に向ける。図示されるように、アレイ32、反射面42、および光合焦装置44は全て、バレル部分の遠位端に位置決めされている。それにより、光は、作業面および化合物上に直接放射される。したがって、図1および図2の実施形態は、損失の大きい傾向がある様々な空気と対象物との間の界面をなくす。したがって、本発明は、光発生要素から作業面にパワーをより効率的に送達する。一般に、放射端すなわち遠位端17が、患者の口内に位置決めされて、光硬化性化合物を有する作業面上に光のビームを直接放射する。損失の大きい界面を複数有する光伝送装置を使用する従来技術装置は、しばしば、硬化に十分な光パワー密度を発生するのが困難である。本発明は、様々な損失の大きい界面をなくすことによってこの問題に対処している。
【0048】
アレイ32からの光を合焦するために、硬化ライト装置10は、図2に示されるアレイを取り囲む反射面または反射器42を使用する。例示実施形態では、反射面42は、適切に形状付けされたプラスチックリング構造体43によって形成され、このリング構造体43は、基板34によって画定されるアレイ32の外縁部を円周方向に取り巻く。反射面42は、概ね放物面状であり、効率の良い反射のために反射コーティングでプラスチック構造体43の表面42を被覆することによって形成される。3Mから市販されているマイラー・コーティングは、この目的に適した性質を有することが実証されており、図2に例示した本発明のこの実施形態の目的では、約99%の反射効率を有する。図2に示されるように、プラスチックリング構造体43は、ダイ30から、光合焦装置44の入力端45に光を指向するために、アレイ32の周りに概ね放物面状の反射面42を形成する。
【0049】
本発明の一実施形態による光合焦装置は非結像装置である。1つの適切な非結像光合焦装置は、図2に例示されるように概ね円錐台の形状を有する非結像レンズ44である。レンズ44など非結像レンズは、入力端45でアレイ32からの光を受け取り、アレイ32からの光を指向して集中させて、非結像レンズ44の出力端47で合焦ビームにする。しかし、非結像レンズは、効率的でない光イメージを形成しない。本発明で使用する非結像光合焦装置は、光を効率良く平行にし、それにより歯の表面など作業面で望ましい光パワー密度が達成される。アレイ32からの光パワー密度は、従来の光学レンズと同様のイメージの形成によって低減されない。1つの適切な非結像レンズは、透明なポリカーボネート材料から形成される。例示したように、構造43は、レンズ44の入力端45を受け取るように適切に形成されて、軸線51に関してアレイ32および表面42と同軸位置合わせになるようにレンズを位置決めする。レンズおよび表面42はそれぞれ、軸線51に沿った効率の良い光の伝送のために概ね円形の横方向断面を有することが好ましい。動作可能に互いに結合される反射面と光合焦装置の1つの適切な組合せは、Teledyne(米国カリフォルニア州ホーソン)から市販されている。
【0050】
図2に例示される本発明の実施形態は、ダイのアレイ32に関する単一の非結像光合焦装置44を示す。本発明の別の態様によれば、複数の非結像光合焦装置を利用することができることが予想される。例えば、図2Aを参照すると、基板34a、34bが、基板34a、34b上に配置されて光発生要素の個別グループとして動作する複数のダイ・グループ30a、30bを含むことができる。そのために、非結像光合焦装置44aを1つのダイ・グループ30aと関連付けることができ、別の非結像光合焦装置44bを他のダイ・グループ30bと関連付けることができる。当然、より多数の非結像光合焦装置を、他の別々のダイ・グループに関して利用することができる。しかし、一般には、存在する個別のダイよりも実質的に少ない非結像光合焦装置が存在する。すなわち、図2および図2Aに例示される本発明の実施形態では、単一の非結像光合焦装置が、複数の個別発光ダイを受け持つ。複数の合焦装置が協働して、軸線51に沿って光を伝送する。
【0051】
本発明の別の態様によれば、装置10のバレル部分16、特にバレル部分の遠位端すなわち放射端17が、口内の化合物を硬化するために患者の口内に挿入される。したがって、次の患者に使用する前に、装置を殺菌しなければならないことを理解されたい。上述したように、従来技術装置は、高圧蒸気滅菌などによって完全に殺菌しなければならず、これは硬化手順をさらに複雑にして遅らせる。本発明は、装置全体の殺菌、または殺菌プロセスの必要性を完全になくす独自の構成を提供し、それにより硬化プロセスを、より簡単であり、より迅速であり、よりコスト効果の高いものにする。
【0052】
そのために、本発明は、個別に高圧蒸気滅菌することができる取外し可能スリーブを利用する。あるいは、上述したように、スリーブを使い捨てのものにして、1回使用後に廃棄することができる。具体的には、図1および図2に例示される本発明の実施形態において、反射面42を形成するリング構造体43と、それに隣接する非結像レンズ44とが、スリーブ50内部に取り付けられて、固定される。スリーブ50は、PVCなど適切な使い捨てプラスチック、または高圧蒸気滅菌可能なプラスチックから作成することができ、スリーブは、装置10のバレル部分16の少なくとも1セクションを覆って位置決めされるように構成される。好ましくは、スリーブは、バレル部分16の重要なセクションを覆うように、少なくとも、患者の口に露出されるバレル部分16の一部分を覆うように延在するように構成される。図2に例示される実施形態では、スリーブ50は、ヒートチューブ38およびアレイ32を覆って位置決めされるように構成される。スリーブ50は、レンズ44および反射面をアレイ32と同軸に位置決めするように構成される。本発明の一実施形態では、この装置を使用して硬化した後、スリーブ50、リング構造体43、および非結像レンズ44をヒートチューブから取り外し、発光ダイのアレイ32から離すことができる。次いで、レンズおよび反射構造体43を含めたスリーブを、スリーブ50と共に廃棄することができる。別法として、スリーブおよびレンズおよび反射構造体を取り外し、高圧蒸気滅菌し、次いで適所に再び配置することができる。
【0053】
1つの代替実施形態では、スリーブのみを高圧蒸気滅菌可能にする、または使い捨てのものにすることができる。このとき、レンズ44およびリング構造体は、アレイ32と共に残る、またはスリーブ50から離してアレイと共に個別に位置決めすることができる。このような場合、スリーブのみが廃棄される、または高圧蒸気滅菌される。
【0054】
ヒートチューブ38、ヒートシンク36、基板34、およびダイ32を含む装置および構成要素部品は、スリーブによってカバーされているので患者に直接露出されない。レンズおよびリング構造体43がスリーブとは別個のものである実施形態では、それらの部品も同様に隔離される。したがって、隔離またはカバーされた構成要素は、従来技術装置および方法で要求されるように殺菌または高圧蒸気滅菌する必要がない。その後、場合によっては新たな、または殺菌されたリング構造体43およびレンズ44を含めた新たな、または殺菌されたスリーブが、ヒートチューブ38およびバレル部分16に対して挿入されて、次の使用のためにダイのアレイ32と位置合わせされる。したがって、本発明は、歯科患者間の汚染の可能性を減らし、さらに、殺菌プロセスを完全になくす、またはスリーブを高圧蒸気滅菌することしか必要としないことにより、硬化方法を向上させる。その結果、硬化プロセスはより簡単になり、より効率が良くなる。使い捨てスリーブを用いる場合、プロセスは、コスト効果もより良いものになる。これは、硬化ライトを殺菌するために高圧蒸気滅菌機器を購入して操作する必要がないためである。
【0055】
図2に例示される本発明はまた、作業面(例えば歯)に近接するビーム源から光のビームを送達することにより、従来技術を改善する。具体的には、バレル部分16の遠位端すなわち放射端17は、硬化性化合物を含む歯面に、または歯面近傍に位置決めされる。アレイ32から非結像レンズ44のみを介して表面に光が直接送達されると、ダイ・アレイ32と装置10の出力面49との間の多数の損失の大きい空気/ガラス界面がなくなる。従来、光発生要素は、作業面から離してハウジング内部に位置決めされており、作業面に光を伝送するのに光ファイバ光学ガイドが必要であった。さらに、そのような光学ガイドを用いる場合、しばしば、生成された光を光学ガイドの入力端に効率良く合焦することができるように光学ガイドの前で集束光学レンズを使用する必要がある。光学ガイドおよび集束レンズは、光ビームに対して、損失の大きい空気/ガラス界面を提示する。空気/ガラス界面は、界面あたり約10%の範囲での光パワー損失を生じる可能性があると推定されている。ダイ30と歯面の間の界面をなくすことによって、本発明のライトは、従来技術で必要とされる様々な界面でのパワー損失を減らして、効率良く平行にされた形で光を伝送する。したがって、本発明は、平行にされた光ビームを、歯の作業面および面上の硬化性化合物に効率良く伝送することができる。光の伝送をより効率良くすると、レンズの出力面49に十分な光強度または光パワー密度を依然として提供しながらアレイ32内で使用するダイ30の数をより少なくすることができる。このようにして、本発明は、概してコンパクトであり、簡単に操作できる装置で、適切な硬化パワーレベルを提供することができる。さらに、界面での損失がより少ないと、熱があまり発生せず、従来技術がさらに改善される。
【0056】
本発明の好ましい実施形態では、ダイ30は、約200〜約1400mW/cmの範囲で所望の波長での光パワー出力密度を提供するのに十分な密度でアレイ32内に位置決めされる。本発明の一実施形態では、ダイは通常、正方形状であり、一辺が0.025cm(0.010インチ)である。ダイは、基板に、具体的にはリード線(図示せず)にスポット溶接され、リード線は、制御回路24および/または電源20に電気的に結合されている。ダイ基板は円形であり、約4.8ミリメートル(0.19インチ)の直径を有することが好ましい。
【0057】
非結像光合焦装置44の出力面49で所望の光およびパワー密度を発生するために、適切な数のダイが基板34上に位置決めされる。一般に、本発明の一実施形態では、望ましい硬化光パワー密度を発生するのに30〜60個のダイが適している。当然、本発明の他の実施形態では、より多数、またはより少数のダイを利用することができる。
【0058】
伝導冷却を利用する本発明の独自の冷却構成、損失の大きい界面の低減、および本明細書で開示する本発明の実施形態の全体的な構成により、約200〜約1400mW/cmの範囲での所望の光パワー出力または光密度を生み出すのに十分なパワーレベルでダイを駆動することができる。一般にダイは、3個のダイの直列セットで、DC12ボルトによって駆動することができる。
【0059】
例えば、一実施形態は、8.13ワット(8.7Vおよび0.935A)で動作することができる34ダイ・ランプである。そのような設計は、効率が良いことが実証され、適切な硬化作業が行われた。別の実施形態は、より高いパワー出力(例えば67%のパワー増大)のために60個のダイを使用する。
【0060】
本発明の一実施形態では、3個のダイの直列グループが、電流制限抵抗器を介してDC12ボルト電源に直列に接続される。そのために、ここで、各ダイが約DC4ボルトで駆動される。さらに、12ボルト電源を利用することによって、そのDC源によってファンを駆動することもできる。様々な異なるパワーまたは電圧出力レベルを有する電源によって駆動される、ダイの他の構成を利用することもできることが容易に理解できよう。
【0061】
好ましくは、ダイ30は、適切な硬化に適した光パワー出力を有し、しかし歯など作業面を取り巻く組織を過熱しない硬化光を提供するのに十分な密度でアレイ32内に位置決めされる。本発明のランプは、ハロゲンランプよりも弱い熱を組織に与える。例えば、上述した34個のダイを有する実施形態は、200mW/cmの放射計示を示し、52ワット・ハロゲンランプを用いた同等の硬化は、約600mW/cmの計示を示した。はるかに低い放射計計示により、組織損傷は、本発明ではハロゲンライトほどには重要な問題とならない。
【0062】
現行の歯科適用例では、現行化合物が青色光に感受性があるので、約470±20ナノメートルの波長範囲内の青色光を発生するダイ・アレイ32を利用することが望ましい。現行フィルタ・ハロゲンランプは、400〜500ナノメートルの範囲内の光を発生する。そのような青色光は現行の歯科適用例に適しているが、本発明は、硬化のために青色光波長のみに限定されない。そうではなく、本発明は、他の様々な波長での光を利用して硬化することができる化合物と共に利用することができる。
【0063】
さらに、非結像光合焦装置44を、適用例に応じて適切なサイズにすることができる。例えば、出力面49で8ミリメートル断面直径を有するレンズを、小さな硬化適用例に利用することができ、より大きな硬化適用例に関しては、表面49で11ミリメートルの断面直径を有するレンズを利用することができる。理解できるように、作業面への硬化光の効率の良い伝達を保証するために、アレイ32のダイが発生する光の全てではないにせよ大部分を非結像光合焦装置44に伝送し、そこから出すことが望ましい。そのために、反射面42は、光ビームが光合焦装置44の入力端45内に集合されて反射されることを保証するような直径の形状に構成される。例示実施形態では、光合焦装置の入力端45とインターフェースする反射面の出力端が、入力端45よりも小さな直径になっている。このようにすると、表面42によって反射された光が、光合焦装置44によって捕捉される。非結像光合焦装置44は、非結像装置なので、焦点距離によって制限されない。このようにして、装置44は、光ビームを捕捉して平行にし、歯など作業面に効率良く伝送する。したがって、本発明は、歯面から出力端49が維持される距離に特に敏感なわけではない。当然、一般には、効率の良い硬化のためにできるだけ歯面に近づけて出力端49を位置決めすることが望ましい。
【0064】
本発明の別の態様によれば、ダイ30は、米国特許出願09/009205号に開示されている実施形態のいくつかに例示されているように、基板34上に均等に配置して、概ね円形のアレイを形成することができる。ダイはまた、4つ、または何らかの他の数のサブグループなど、様々なグループとして取り付けることができ、次いでそのようなサブグループが基板上に取り付けられる。すなわち、複数のダイのサブグループを、個別に取り付けて、互いに電気的に結合することができ、その後、サブグループを、他のサブグループと共に基板上に取り付けることができる。したがって、本発明は、全てのダイの個別取付けに限定されない。
【0065】
図3に、ハウジングのバレル部分16の遠位端すなわち放射端17に近接してダイ・アレイも位置決めされた本発明の別の実施形態を例示する。代替実施形態では、構造は、図1、図2、および図2A内に例示した装置10と少し似ているが、図3に例示されるように遠位端すなわち放射端17で異なる構成を有している。具体的には、代替実施形態は、基板層62に取り付けられたダイ60のアレイを利用する。基板層は、電気絶縁を保ちながら熱放散に適した熱伝導性を有するサファイアまたはダイアモンドにすることができる。次いで、基板62が、銅など適切な材料から作成することができるヒートシンク64に結合される。次いで、ダイ・アレイ60と、基板62およびヒートシンク64を含めたアセンブリとが、液体充填ヒートチューブ66の端部に溶接され、またははんだ付けされ、ヒートチューブ66がヒートシンクから熱を伝導により伝達する。このようにして、本発明の代替実施形態は、基板およびダイ・アレイの伝導冷却により、上述の実施形態によって提供される利点を利用する。図1に例示したように、ヒートチューブ66の反対側の端部は、ファン28などによって対流冷却される熱交換器26に結合される。
【0066】
ダイ・アレイ60からの光を効率良く合焦して、合焦された光平行ビームにするために、図3に示した本発明の実施形態は、全内反射すなわちTIRレンズを利用する。TIRレンズは公知であり(例えば米国特許第4337759号)、Teledyneの一部門であるTIR Technologiesなどから市販されている。TIRレンズは、典型的なフレネルレンズよりも効率が良く、ダイ・アレイ60によって発生される光平行ビームを提供する。図3に示されるTIRレンズ構造68は、一連の鋸歯面69を利用して、アレイ60からの様々な角度での光を平行にして、参照番号70によって例示されるように、アレイの平面にほぼ垂直な方向に合焦された光のビーム70にする。このようにすると、アレイからの光を、作業面上の硬化性化合物に効率良く送達することができる。好ましくは、TIRレンズは非結像光合焦装置である。レンズ68は、適切には、効率の良い光伝送のために、アレイ60とほぼ同軸に位置合わせされるように配置されている。
【0067】
本発明の1つの態様によれば、TIRレンズ68は、適切なポリカーボネートから作成される。上述したように、レンズ68を、ヒートパイプ66の周りに位置決めされた使い捨てスリーブ72と共に組み込むことができる。適用が完了すると、スリーブ72およびTIRレンズ69を取り外して廃棄することができ、それにより、装置10をさらに殺菌する、または高圧蒸気滅菌する必要をなくす。別法として、レンズ68を、スリーブ72に関して個別に位置決めして、個別に廃棄する、またはアレイ60と共に残すことができる。図3に例示される実施形態はさらに、ダイ・アレイから作業面への光の効率良い送達を提供する。これは、ダイおよびレンズが、バレル部分の放射端すなわち遠位端17に位置決めされて、作業面に直接隣接するためである。このようにすると、様々な空気/ガラス界面がなくなり、上述したように、そのような界面に関連するパワー損失が低減される。
【0068】
ダイ・アレイ60は、図2に例示した実施形態に関して上述したのと同様に構成し、寸法決めすることができる。TIRレンズ68は通常、アレイの円形断面直径よりもかなり大きな円形断面直径を有し、アレイ60の平面に関して非常に小さな角度でアレイによって発生された光を捕捉する。図3に例示される実施形態では、ダイ・アレイ60とレンズ68の間で反射器が利用されない。したがって、レンズは、参照ライン73によって例示されるものなど低角度の光を捕捉するように適切にサイズを取らなければならない。
【0069】
図4は、ダイ・アレイが、ハウジング内部のより中心側に位置決めされ、バレル部分から後ろ方向に離隔されている本発明の代替実施形態を例示する。具体的には、図2に例示したのと同様のダイ・アセンブリが、バレル部分の近位端19近傍でハウジング内に取り付けられている。このとき、基板34は、ファン28などによって対流冷却することができる熱交換器26に直接結合される。バレル部分16は、ヒートチューブを収容せず、光学パイプまたは光学ガイド76を収容する。そのような光学ガイドは、様々なサイズで市販されている。一般に、そのような光学パイプは、複数の光ファイバ(例えば、単一の光学パイプ構造体に融合された約5000本のファイバ)から形成される。バレル部分16の近位端19に位置された入力端77内に伝送された光ビームは、光学パイプを介して伝送され、バレル部分16の遠位端17でパイプの伝送端78から外に向けられる。光学パイプは、入力端77から、出力端すなわち伝送端78に均一な直径を保っていても、1つの直径から、伝送端78でのより小さな直径へテーパが付いていてもよい。光学パイプは、光ビームが患者の口内など下方向に向けられるように、図4に例示した湾曲バレル部分16に従うように湾曲されることが好ましい。代替方法として、光学パイプ自体が、バレル部分の一部分を形成することができ、例えばハウジング内にねじ留めすることによってハウジング12に取り付けることができる。
【0070】
非結像光学レンズ44など非結像光合焦装置を使用して、光を光学パイプ内に合焦する。光学パイプの入力端77は、光が合焦装置44を介して光学パイプ76に効率良く送達されるように適切に寸法決めされる。そのために、合焦装置44が光を平行にし、それにより光は光学パイプの入力端77を越えて発散しない。
【0071】
一般に、光学パイプは、その入力端77で定義された受入角度、例えば40°を有する。その受入角度よりも外に向けられた光は、光学パイプによって捕捉されず、作業面に伝達されない。図4の実施形態で利用される反射面42および非結像光合焦装置44は、光学パイプの受入角度よりも大きく発散しない光ビームを発生するように設計される。このようにすると、概して180°の角度で光を出力するアレイから効率良くエネルギーが変換される。したがって、本発明は、180°光出力源からの光を、光が入力される光学パイプの受入角度よりも大きく発散しない柱に、平行にする非結像光合焦装置を利用する。
【0072】
本発明のさらなる実施形態では、図3に示したのと同様のダイ・アレイおよびTIRレンズ構造を、図4に示したハウジング内部で利用することができる。そのために、ダイ・アレイ60、基板62、およびヒートシンク64が適切な熱変換器に結合されて、このとき熱交換器は、ファンなどによって対流冷却される。そのような実施形態では、図4に例示した実施形態と同様に、装置10を通常、各使用の後に殺菌または高圧蒸気滅菌しなければならない。しかし、ダイ・アレイおよび光合焦装置は、ハウジングのハンドル部分内部に位置決めされているので、これらは、そのような殺菌と関連する高温から保護されている。
【0073】
代替方法として、図4に例示されるように、使い捨てスリーブ82をこの実施形態と共に利用して光学パイプをカバーすることができる。使い捨てスリーブ82は、各使用ごとに廃棄することができ、したがって、必要な高圧蒸気滅菌ステップを効果的になくす。
【0074】
本発明を、本発明の実施形態の説明によって例示し、それら実施形態をかなり詳細に説明してきたが、そのような詳細に頭記の特許請求の範囲を制限し、あるいは何らかの形で限定することを本出願人は意図していない。追加の利点および修正形態が当業者に容易に明らかになろう。したがって、より広範な態様での本発明は、特に詳細な代表的装置および方法、ならびに図示して説明した例に限定されない。したがって、出願人の全般的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、そのような詳細から逸脱することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の口内において硬化可能な光硬化性化合物を硬化するための器具であって、
ハウジングと、
複数の固体発光ダイとを備え、
前記ダイが、基板上にアレイを形成するように、該基板に取り付けられ、狭い波長帯域内の波長を有する光を放出するように動作可能である半導体ジャンクションである器具において、
前記器具が、前記基板および前記ダイを取り巻くように結合された光反射要素にして、前記ダイのアレイから放出された光を反射して、化合物を硬化するために光を化合物の方に向ける光反射要素と、前記ダイによって発生された熱を吸収するために前記基板に熱的に結合されたヒートシンクと、前記ダイによって発生された熱を前記ダイから熱伝導によって逃がすための熱伝導要素とを有していることを特徴とする、器具。
【請求項2】
前記ダイによって放出され、前記反射要素から合焦された光を途中で受け取るように位置決めされた光合焦装置をさらに備え、前記光合焦装置が、前記ダイからの光を平行にして、化合物上に向けられるビームにするように動作可能な非結像光装置である、請求項1に記載の器具。
【請求項3】
前記光合焦装置が、光反射要素によって捕捉された光を受け取り、さらに光を化合物に向けるための非結像レンズである、請求項2に記載の器具。
【請求項4】
前記基板が、ダイアモンドおよびサファイアのうちの1つから形成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の器具。
【請求項5】
前記熱伝導要素がヒートチューブである、請求項1に記載の器具。
【請求項6】
前記ダイによって発生された熱を放散するために前記基板に熱的に結合された熱交換器をさらに備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の器具。
【請求項7】
ヒートチューブが、前記ダイによって発生された熱をヒートシンクおよび前記基板から伝導により伝達するためにヒートシンクに熱的に結合されている、請求項5に記載の器具。
【請求項8】
前記ハウジングが、患者の口内に配置されるように構成された遠位端を有するバレル部分を備え、前記ダイが、化合物を硬化するために患者の口内に位置決めされるように前記遠位端に近接して支持されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の器具。
【請求項9】
前記ハウジングが、遠位端と、該遠位端から離隔された近位端を有するバレル部分を備え、前記遠位端が患者の口に近接配置されるように構成され、光伝送装置が前記遠位端を通じて光を伝送するために前記光反射要素と動作可能に結合されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の器具。
【請求項10】
前記光伝送装置が、前記ビームを指向するために一体に動作可能に結合された複数のファイバ光要素を備える、請求項9に記載の器具。
【請求項11】
前記ハウジングに対して取外し可能に取り付けられたスリーブをさらに備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の器具。
【請求項12】
前記光反射要素が前記スリーブと結合されている、請求項12に記載の器具。
【請求項13】
前記ハウジングが患者の口内に配置されるように構成された遠位端を有するバレル部分を備え、前記スリーブがその一端に結合され前記バレル部分に取り付けられるように構成された前記光反射要素を有し、それにより前記光反射要素が前記遠位端に近接するように位置決めされて、光ビームを患者の口内に送達する、請求項12に記載の器具。
【請求項14】
前記ハウジングに対して取外し可能に取り付けられたスリーブをさらに備え、前記光反射要素および非結像レンズが前記スリーブに結合されている、請求項3に記載の器具。
【請求項15】
前記スリーブが1回使用後に廃棄される使い捨て材料から作成される、請求項11から14のいずれか一項に記載の器具。
【請求項16】
前記スリーブが1回使用後に殺菌される高圧蒸気滅菌可能材料から作成される、請求項11から14のいずれか一項に記載の器具。
【請求項17】
前記ハウジングが近位端および遠位端を有するバレル部分を備え、前記遠位端が患者の口に近接して位置決めされるように構成され、前記ダイおよび光反射要素が前記バレル部分の遠位端に近接して取り付けられ、前記反射要素が前記遠位端から出て化合物に向かうように光を向けるように動作可能である、請求項1から7のいずれか一項に記載の器具。
【請求項18】
前記器具の可搬性操作のために前記ハウジング内に位置決めされた可搬性電源をさらに備える、請求項1から17のいずれか一項に記載の器具。
【請求項19】
前記アレイが200〜1400mW/cmの範囲内の光パワー密度を収集して放出するように動作可能な基板上でのダイの密度を有する、請求項1から18のいずれか一項に記載の器具。
【請求項20】
前記ダイによって放出された光を捕捉するように位置決めされた複数の光反射要素をさらに備える、請求項1から19のいずれか一項に記載の器具。
【請求項21】
前記ダイよりもかなり少数の光反射要素が存在し、それにより各光反射要素が、複数のダイからの光を平行にする、請求項20に記載の器具。
【請求項22】
前記非結像光合焦装置が、コリメート全反射(TIR)レンズである、請求項2に記載の器具。
【請求項23】
前記反射要素が放物面状の反射面を有している、請求項1に記載の器具。

【図1】
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【図2】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−235132(P2011−235132A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155231(P2011−155231)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【分割の表示】特願2002−516980(P2002−516980)の分割
【原出願日】平成13年8月2日(2001.8.2)
【出願人】(599079034)カー コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】