説明

光束制御部材および照明装置

【課題】発光素子を含む照明装置に使用される光束制御部材であって、側方方向および後方方向へ向かう出射光量だけではなく、前方方向へ向かう出射光量も制御して、照明装置の配光特性をより白熱電球に近づけることができる光束制御部材を提供すること。
【解決手段】光束制御部材130は、平面視形状が略円形の部材であって、発光素子120から出射された光を反射させる反射面132と、発光素子120から出射された光を透過させる透過部134とを有する。反射面132は、外周部138よりも中心部136の方が発光素子120寄りに位置する凹面である。光束制御部材130を平面視した場合に、少なくとも中心側の半分の領域には、透過部134が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子から出射された光の進行方向を制御する光束制御部材に関する。また、本発明は、前記光束制御部材を有する照明装置であって、白熱電球に代えて使用されうる照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギーや環境保全の観点から、発光ダイオード(以下「LED」ともいう)を光源とする照明装置(例えば、LED電球)が、白熱電球に代わるものとして使用されている。
【0003】
しかしながら、従来のLEDを光源とする照明装置は、前方方向のみに光を出射し、白熱電球のように幅広い方向に光を出射することができない。このため、従来の照明装置は、白熱電球のように天井や壁面からの反射光を利用して室内を広範囲に照明することができない。
【0004】
このような従来のLEDを光源とする照明装置の配光特性を白熱電球の配光特性に近づけるため、LEDからの出射光の進行方向を光束制御部材で制御することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図1は、特許文献1に記載の光束制御部材(反射鏡)を含む照明装置の構成を示す模式図である。図1に示されるように、照明装置10は、基板20と、基板20上に配置された複数のLED30と、LED30からの出射光を反射させる反射鏡40とを有する。反射鏡40の反射面は、円錐台の側面と略同一形状である。図1において矢印で示されるように、複数のLED30のうち、反射鏡40の内側に配置されているLED30からの出射光は、そのまま前方方向(上方向)への出射光となる。一方、反射鏡40の外側に配置されているLED30からの出射光は、反射鏡40の反射面で反射して、側方方向(水平方向)または後方方向(下方向)への出射光となる。
【0006】
このように反射鏡を用いてLEDからの出射光の進行方向を制御することにより、前方方向だけでなく、側方方向および後方方向への出射光を得ることができる。したがって、特許文献1に記載の光束制御部材(反射鏡)を使用することで、照明装置(LED電球)の配光特性を白熱電球の配光特性に近づけることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】登録実用新案第3169310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の光束制御部材(反射鏡)には、基板の中央部に配置された発光素子(LED)からの出射光がそのまま前方方向への出射光となるので、前方方向への出射光量を制御することができないという問題がある。このため、特許文献1に記載の光束制御部材を使用した照明装置では、全体としてバランスの悪い配光特性となってしまう。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、側方方向および後方方向へ向かう出射光量だけではなく、前方方向へ向かう出射光量も制御して、配光特性をより白熱電球に近づけることができる光束制御部材を提供することを目的とする。また、本発明は、この光束制御部材を有する照明装置を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の光束制御部材は、基板上に配置された1または2以上の発光素子の光束の中心と同心にその中心軸が位置するように、前記発光素子に対して空気層を介して配置される、平面視形状が略円形の光束制御部材であって、前記発光素子から出射された光を反射させる反射面と、前記発光素子から出射された光を透過させる透過部と、を有し、前記反射面は、外周部よりも中心部の方が前記発光素子寄りに位置する凹面であり、前記光束制御部材を平面視した場合に、半径の外側から0〜25%の部分からなる環形の領域を領域aとし、半径の外側から25〜50%の部分からなる環形の領域を領域bとし、半径の外側から50〜75%の部分からなる環形の領域を領域cとし、半径の外側から75〜100%の部分からなる円形の領域を領域dとしたときに、前記透過部は、少なくとも、前記領域cおよび前記領域dからなる領域に形成されており、かつ前記領域cにおける前記透過部の面積率は、前記領域dにおける前記透過部の面積率以上である、構成を採る。
【0011】
本発明の照明装置は、基板上に配置された1または2以上の発光素子と、前記発光素子に対して空気層を介して配置された、前記光束制御部材と、前記光束制御部材の外縁から前記基板側へ延びる側壁部、および前記光束制御部材に対して空気層を介して配置される蓋部を含むカバーと、を有し、前記側壁部は、前記光束制御部材の反射面で反射して前記側壁部の内面に到達した光、および前記発光素子から前記側壁部の内面に直接到達した光を、前記側壁部の外面から外方へ出射させ、前記蓋部は、前記光束制御部材の透過部を透過して前記蓋部の内面に到達した光を前記蓋部の外面から外方へ出射させる、構成を採る。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光束制御部材は、側方方向および後方方向へ向かう出射光量だけではなく、透過部の透過光量を調整することで、前方方向へ向かう出射光量も制御することができる。このため、本発明の照明装置は、出射光の配光特性を白熱電球の配光特性に近づけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】特許文献1に記載の照明装置の構成を示す模式図である。
【図2】実施の形態1の照明装置の構成を示す断面図である。
【図3】図3Aは、実施の形態1の光束制御部材の平面図であり、図3Bは、実施の形態1の光束制御部材の断面図であり、図3Cは、実施の形態1の光束制御部材の底面図である。
【図4】図4Aおよび図4Bは、透過部の位置を説明するための実施の形態1の光束制御部材の平面図である。
【図5】図5Aおよび図5Bは、実施の形態1の照明装置における光路の一例を示す断面図である。
【図6】実施の形態1の照明装置の配光特性を示すグラフである。
【図7】図7Aは、実施の形態2の光束制御部材の平面図であり、図7Bは、実施の形態2の光束制御部材の断面図であり、図7Cは、実施の形態2の光束制御部材の底面図である。
【図8】透過部の位置を説明するための実施の形態2の光束制御部材の平面図である。
【図9】実施の形態2の照明装置の配光特性を示すグラフである。
【図10】実施の形態2の照明装置の配光特性のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図11】実施の形態2の照明装置の配光特性のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図12】実施の形態2の照明装置の配光特性のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図13】図13Aおよび図13Bは、光束制御部材の固定方法の一例を示す断面図である。
【図14】図14Aおよび図14Bは、光束制御部材の固定方法の別の例を示す断面図である。
【図15】図15Aおよび図15Bは、光束制御部材の固定方法の別の例を示す断面図である。
【図16】図16Aは、図14Bに示されるA−A線についてのカバーの断面図であり、図16Bは、図15Bに示されるB−B線についてのカバーの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
(実施の形態1)
[照明装置の構成]
図2は、本発明の実施の形態1の照明装置100の構成を示す断面図である。本実施の形態の照明装置100は、白熱電球に代えて使用されうる。
【0016】
図2に示されるように、照明装置100は、基板110、1または2以上の発光素子120、光束制御部材130およびカバー140を有する。
【0017】
発光素子120は、照明装置100の光源であり、基板110上に固定されている。発光素子120は、例えば白色発光ダイオードなどの発光ダイオード(LED)である。基板110上に複数の発光素子120が固定されている場合、各発光素子120は、円周上に配置されていることが好ましい。
【0018】
光束制御部材130は、発光素子120からの出射光の進行方向を制御する、平面視形状が略円形の部材である。後述するように、光束制御部材130は、発光素子120からの出射光を反射させる反射面132と、発光素子120からの出射光を透過させる透過部134とを有する。
【0019】
光束制御部材130は、その中心軸CAが発光素子120の光軸LAに合致するように、発光素子120に対して空気層を介して配置されている。すなわち、光束制御部材130は、発光素子120と対向するように配置されている。基板110上に複数の発光素子120が配置されている場合、「発光素子の光軸」とは、複数の発光素子からの立体的な光束の中心における光の進行方向をいう。以下の説明では、光束制御部材130の主たる2つの面のうち、発光素子120と対向する面(図2において下向きの面)を「内面」といい、内面の反対側の面(図2において上向きの面)を「外面」というときがある。
【0020】
本発明の照明装置100は、光束制御部材130の構成に主たる特徴を有する。そこで、光束制御部材130の構成については、別途詳細に説明する。
【0021】
カバー140は、光束制御部材130により進行方向を制御された光を拡散させる、中空構造の部材である。カバー140は、光束制御部材130の外縁から基板110側へ延びる側壁部142と、光束制御部材130に対して空気層を介して配置される蓋部144とを有する。側壁部142は、光束制御部材130の内面(反射面132が存在する面)側に位置し、蓋部144は、光束制御部材130の外面(内面の反対側の面)側に位置する。図2に示される例では、側壁部142と蓋部144とが別部材として形成されているが、これらは一体として形成されていてもよい(図13〜図15参照)。
【0022】
側壁部142は、光束制御部材130の反射面132で反射して側壁部142の内面に到達した光と、発光素子120から側壁部142の内面に直接到達した光とを側壁部142の外面から外方へ出射させる(図5A参照)。一方、蓋部144は、光束制御部材130の透過部134を透過して蓋部144の内面に到達した光を蓋部144の外面から外方へ出射させる(図5B参照)。
【0023】
前述の通り、カバー140(側壁部142および蓋部144)は、光束制御部材130により進行方向を制御された光を拡散させる。カバー140に光拡散機能を付与する手段は、特に限定されない。たとえば、カバー140の内面または外面に光拡散処理(例えば、粗面化処理)を行ってもよいし、光拡散能を有する材料(例えば、ビーズなどの散乱子を含有する透光性材料)を用いてカバー140を作製してもよい。なお、カバー140の形状は、所望の配光特性を実現することができれば特に限定されない。たとえば、カバー140の形状は、球冠(球面の一部を平面で切り取った形状)である。
【0024】
[光束制御部材の構成]
図3Aは、光束制御部材130の平面図であり、図3Bは、図3Aに示されるB−B線の断面図であり、図3Cは、光束制御部材130の底面図である。これらの図に示されるように、光束制御部材130の形状は、中心軸CAを中心とする回転対称である。したがって、光束制御部材130の平面視形状は、略円形状である。
【0025】
図3A〜図3Cに示されるように、光束制御部材130は、反射面132と、複数の透過部134とを有する。
【0026】
反射面132は、照明装置100において発光素子120に対向する面(内面;図3Cに示される面)に形成されている。前述の通り、反射面132は、発光素子120からの出射光をカバー140の側壁部142に向けて反射させる(図5A参照)。たとえば、反射面132は、樹脂などからなる光束制御部材130の内面に光反射膜を成膜することにより形成されうる。また、反射面132は、光束制御部材130を光反射性の材料(例えば、骨白アクリルや、同等色のポリカーボネートなどの樹脂、金属板など)で作製することによっても形成されうる。
【0027】
図2および図3Bに示されるように、反射面132は、中心軸CA上に位置する中心部136が外周部138よりも発光素子120(基板110)側に位置する凹面である。すなわち、反射面132は、中心軸CA上に収斂するテーパー状の凹面である。通常、反射面132の形状は、光束制御部材130の中心部136から外周部138に向かうにつれて傾斜が緩やかになる曲面形状である。ただし、反射面132のうち発光素子120(基板110)から最も離れた部位が、外周部138であるとは限らない。すなわち、図2および図3Bに示されるように、中心部136と外周部138との間に、発光素子120から最も離れた部位が位置していてもよい。この場合、反射面132の形状は、中心部136と外周部138との間であって、かつ外周部138に近い位置に傾斜角度が零となる点が生じる非球面形状となる。もちろん、外周部138が発光素子120(基板110)から最も離れた部位であってもよい。
【0028】
透過部134は、発光素子120からの出射光を、内面(発光素子120に対向する面)側から外面(発光素子120に対向しない面)側に透過させる(図5B参照)。図2および図3に示される例では、透過部134は、貫通孔である。しかしながら、透過部134は、光を透過させることができれば貫通孔でなくてもよく、例えば有底の凹部であってもよい。この場合、発光素子120からの出射光は、凹部の底部(厚みが薄くなっている部分)を透過する。通常、これらの貫通孔または凹部は、中心軸CAと平行になるように形成される。
【0029】
図4Aに示されるように、光束制御部材130を平面視した場合に、半径rの外側から0〜25%の部分からなる環形の領域を「領域a」とし、半径rの外側から25〜50%の部分からなる環形の領域を「領域b」とし、半径rの外側から50〜75%の部分からなる環形の領域を「領域c」とし、半径rの外側から75〜100%の部分からなる円形の領域を「領域d」とする。この場合、図4Bに示されるように、透過部134は、少なくとも、領域cおよび領域dからなる領域に形成される。これらの領域に透過部134を形成しない場合、照明装置100において前方方向(上方向)への出射光が不足してしまい、良好な配光特性を実現することができない(図5Bおよび図10参照)。
【0030】
領域cにおける透過部134の面積率は、領域dにおける透過部134の面積率以上である(c≧d;図4B参照)。領域cにおける透過部134の面積率が領域dにおける透過部134の面積率未満の場合(微差ではない程度にc<dの場合)、領域cを透過して前方方向へ向かう光が減少し、その分、側方方向に向けて反射する光成分が増加する(図5Aおよび図5B参照)。発光素子120がある程度の面積を有する面発光の光源であることや、カバー140により光束制御部材130からの出射光が拡散されることなどの理由により、照明装置100における前方方向の特定角度(発光中心から領域cを通って前方方向へ向かう光線の光軸に対する角度)の出射光量がゼロになることはない。しかしながら、発光素子120の発光面上の任意点と領域cを結ぶ線分の延長方向に向かう出射光が不足してしまうため、良好な配光特性を実現することができない(図12参照)。なお、透過部134が貫通孔の場合は、透過部134の面積率は、開口率と同じである。
【0031】
また、透過部134は、最も外周側に位置する領域aに形成されていないことが好ましい(図4B参照)。領域aに透過部134が形成されている場合、領域aに形成されている透過部134とカバーの蓋部144とが近接しているため、照明装置100においてカバーの蓋部144にスポット模様が現れてしまい、見た目が悪くなるおそれがある。なお、領域bについては、透過部134は、形成されていてもよいし(図4B参照)、形成されていなくてもよい。
【0032】
具体的には、光束制御部材130の各領域における透過部134の面積率(開口率)は、以下の条件を満たすことが好ましい。
・領域a:0面積%
・領域b:0〜30面積%
・領域c:10〜50面積%
・領域d:0〜15面積%(ただし、領域cの透過部134の面積率以下である)
・領域cおよび領域dの合計:10〜50面積%
【0033】
図2〜図4に示される光束制御部材130の各領域における透過部134の面積率(開口率)は、以下の通りである。
・領域a:0面積%
・領域b:5.3面積%
・領域c:25.5面積%
・領域d:13.3面積%
【0034】
光束制御部材130の素材は、所望の強度を有し、かつ反射面132が反射特性を有するものであれば特に限定されない。光束制御部材130の素材の例には、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、液晶ポリマー(LCP)などの樹脂や、アルミニウム(Al)、ステンレス鋼(SUS)などの金属(合金)、ガラスなどが含まれる。
【0035】
図5Aは、発光素子120からの出射光が光束制御部材130の反射面132で反射される様子を示す模式図である。また、図5Bは、発光素子120からの出射光が光束制御部材130の透過部134を透過する様子を示す模式図である。図5Bでは、各光線がどの領域の透過部134を透過したのかを表記している。
【0036】
図5Aに示されるように、反射面132で反射した光は、側壁部142を通して、側方方向または後方方向に出射される。発光素子120の発光中心からの出射光は、中心部136近傍で反射した光よりも、外周部138近傍で反射した光の方が、より後方に向かう光に変換される。また、図5Bに示されるように、光束制御部材130の領域b、領域cおよび領域dに形成された透過部134を透過した光は、蓋部144を通して、前方方向に出射される。
【0037】
[照明装置の配光特性の測定]
図2に示される実施の形態1の照明装置100の配光特性を測定した。光束制御部材130は、骨白アクリル板を切削加工することにより作製した。なお、照明装置100の各構成要素のパラメータは、以下の通りである。
・発光素子120の大きさ:20×15mm
・発光素子120と光束制御部材の中心部136との間隔:3mm
・カバーの側壁部142の高さ:12mm
・カバー140全体の高さ:30mm
・カバー140全体の外径:40mm
・光束制御部材130の高さ:10mm
・光束制御部材130の外径:38mm
・領域bに形成された透過部134(貫通孔)の径:1mm
・領域cに形成された透過部134(貫通孔)の径:2.4mm
・領域dに形成された透過部134(貫通孔)の径:1mm
・反射面132の粗さ:Ra 0.03μm以下、Ry 0.3μm以下
【0038】
配光特性は、以下の手順で測定した。照明装置100内の発光素子120の発光中心から光軸LAに沿って所定の距離離れた位置(基準位置0°)に照度計を配置した。照度計を発光素子120の発光中心を回転中心として、右回り方向(+θ方向)に5°間隔で180°回転させて照度を測定し、左回り方向(−θ方向)に5°間隔で180°回転させて照度を測定した。測定した照度のうちの最高照度を1とした場合の相対照度(無次元値)を曲線で滑らかに結んで、図6のグラフを作成した。
【0039】
図6は、実施の形態1の照明装置100の配光特性を示すグラフである。このグラフにおいて、0°は前方方向(上方方向)を意味し、90°は側方方向(水平方向)を意味し、180°は後方方向(下方方向)を意味する。図6から、実施の形態1の照明装置100は、広く(270°程度)かつバランスのよい配光特性であることがわかる。
【0040】
[効果]
実施の形態1の光束制御部材130は、光束制御部材130に到達した発光素子120からの出射光のうち、一部の光を反射面132によってカバーの側壁部142の方向へ反射させ(図5A参照)、残部の光を透過部134によってカバーの蓋部144の方向へ透過させる(図5B参照)。このとき、透過部134の位置および面積率を調整することで、各方向への出射光量を容易に制御することができる。このように、実施の形態1の光束制御部材130は、側方方向および後方方向へ向かう出射光量だけではなく、前方方向へ向かう出射光量も制御して、配光特性をより白熱電球に近づけることができる。
【0041】
実施の形態1の照明装置100は、白熱電球に代えて室内照明などに使用されうる。また、実施の形態1の照明装置100は、白熱電球よりも消費電力を少なくすることができると共に、白熱電球よりも長期間使用することができる。
【0042】
(実施の形態2)
実施の形態2の照明装置200(不図示)は、基板110、1または2以上の発光素子120、光束制御部材210およびカバー140を有する。実施の形態2の照明装置200は、光束制御部材210以外の構成要素については実施の形態1の照明装置100と同一である。そこで、本実施の形態では、光束制御部材210についてのみ説明する。また、図2〜図4に示される実施の形態1の照明装置100および光束制御部材130と同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0043】
[光束制御部材の構成]
図7Aは、実施の形態2の光束制御部材210の平面図であり、図7Bは、図7Aに示されるB−B線の断面図であり、図7Cは、光束制御部材210の底面図である。また、図8は、透過部134の位置を説明するための実施の形態2の光束制御部材210の平面図である。
【0044】
図7A〜図7Cおよび図8に示されるように、実施の形態2の光束制御部材210は、より多数の透過部134(貫通孔)を有する点において実施の形態1の光束制御部材130と異なる。具体的には、実施の形態2の光束制御部材210は、領域bにより多数の透過部134を有している(図4Bと図8とを比較参照)。
【0045】
図7および図8に示される光束制御部材210の各領域における透過部132の面積率(開口率)は、以下の通りである。
・領域a:0面積%
・領域b:15.7面積%
・領域c:25.5面積%
・領域d:13.3面積%
【0046】
[照明装置の配光特性の測定]
図7に示される実施の形態2の光束制御部材210を含む実施の形態2の照明装置200(不図示)の配光特性を測定した。配光特性の測定手順は、実施の形態1において説明した手順と同一である。光束制御部材210は、骨白アクリルを切削することで作製した。なお、照明装置200の各構成要素のパラメータは、以下の通りである(図2参照)。
・発光素子120の大きさ:20×15mm
・発光素子120と光束制御部材130との間隔:3mm
・カバーの側壁部142の高さ:12mm
・カバー140全体の高さ:30mm
・カバー140全体の外径:40mm
・光束制御部材130の高さ:10mm
・光束制御部材130の外径:38mm
・領域bに形成された外側の透過部134(貫通孔)の径:1mm
・領域bに形成された内側の透過部134(貫通孔)の径:1.4mm
・領域cに形成された透過部134(貫通孔)の径:2.4mm
・領域dに形成された透過部134(貫通孔)の径:1mm
・反射面132の粗さ:Ra 0.03μm以下、Ry 0.3μm以下
【0047】
図9は、実施の形態2の照明装置200の配光特性を示すグラフである。図9から、実施の形態2の照明装置200は、実施の形態1の照明装置100と同様に、広く(270°程度)かつバランスのよい配光特性であることがわかる。
【0048】
[照明装置の配光特性のシミュレーション]
シミュレーションソフト(LightTools;Optical Research Associates社)を使用して、実施の形態2の光束制御部材210の透過部134の面積率を変化させたときの照明装置の配光特性をシミュレーションした。透過部134の面積率(開口率)以外の条件(パラメータ)は、実施の形態2の照明装置200および光束制御部材210と同じ値となるように設定した。
【0049】
以下の4種類の光束制御部材を含む照明装置について、配光特性のシミュレーションを行った。「光束制御部材1」は、実施の形態2の光束制御部材210に相当する(図7参照)。
[光束制御部材1]
・領域a:0面積%
・領域b:15.7面積%
・領域c:25.5面積%
・領域d:13.3面積%
[光束制御部材2]
・領域a:0面積%
・領域b:15.7面積%
・領域c:0面積%
・領域d:0面積%
[光束制御部材3]
・領域a:0面積%
・領域b:15.7面積%
・領域c:13.3面積%
・領域d:13.3面積%
[光束制御部材4]
・領域a:0面積%
・領域b:15.7面積%
・領域c:0面積%
・領域d:13.3面積%
【0050】
図10は、光束制御部材1を含む照明装置および光束制御部材2を含む照明装置の配光特性のシミュレーション結果を示すグラフである。図9に示される光束制御部材210を含む照明装置200の配光特性(測定結果)と、図10に示される光束制御部材1を含む照明装置の配光特性(シミュレーション結果)とが異なるのは、光束制御部材210の反射面132において反射する光の拡散の度合、およびカバー140において透過する光の拡散の度合をシミュレーションにおいて厳密に設定することが困難であるためと考えられる。
【0051】
光束制御部材1は、領域cおよび領域dの両方に透過部134が形成されている(c,d>0)。一方、光束制御部材2は、領域cおよび領域dのいずれにも透過部134が形成されていない(c,d=0)。
【0052】
図10に示されるように、光束制御部材1(c,d>0)を含む照明装置では、前方方向、側方方向および後方方向にバランスよく配光されていた。一方、光束制御部材2(c,d=0)を含む照明装置では、側方方向および後方方向には配光されていたものの、前方方向にはほとんど配光されていなかった。これらの結果から、バランスよく配光するためには、領域cおよび領域dの両方または少なくとも一方に透過部134を形成する必要があることが示唆される。
【0053】
図11は、光束制御部材1を含む照明装置および光束制御部材3を含む照明装置の配光特性のシミュレーション結果を示すグラフである。また、図12は、光束制御部材1を含む照明装置および光束制御部材4を含む照明装置の配光特性のシミュレーション結果を示すグラフである。
【0054】
光束制御部材1は、領域cにおける透過部134の面積率が領域dの透過部134の面積率を超えている(c>d)。一方、光束制御部材3は、領域cにおける透過部134の面積率が領域dの透過部134の面積率と同じである(c=d)。また、光束制御部材4は、領域cにおける透過部134の面積率が領域dの透過部134の面積率よりも小さい(c<d)。
【0055】
図11に示されるように、光束制御部材1(c>d)を含む照明装置および光束制御部材3(c=d)を含む照明装置では、いずれもバランスよく配光されていた。一方、図12に示されるように、光束制御部材4(c<d)を含む照明装置では、側方方向および後方方向には配光されていたものの、前方方向にはほとんど配光されていなかった。これらの結果から、バランスよく配光するためには、領域cにおける透過部134の面積率を領域dの透過部134の面積率以上にする必要があることが示唆される。
【0056】
[効果]
実施の形態2の照明装置200および実施の形態2の光束制御部材210は、実施の形態1の照明装置100および実施の形態1の光束制御部材130と同様の効果を有する。実施の形態2の照明装置200は、白熱電球に代えて室内照明などに使用されうる。
【0057】
(変形例)
上記各実施の形態では、図13A(固定前)および図13B(固定後)に示されるように、カバーの側壁部142と蓋部144とで挟み込むことで光束制御部材130を固定する例について説明した。しかしながら、本発明の照明装置では、光束制御部材130の固定方法はこれに限定されるものではない。また、カバーの側壁部142と蓋部144とは、別部材である必要は無く、一体として形成されていてもよい。
【0058】
たとえば、図14A(固定前)および図14B(固定後)に示されるように、光束制御部材130を固定するための固定部146をそれぞれ有する2つのカバー140a,140bを用いて、光束制御部材130を固定してもよい。また、図15A(固定前)および図15B(固定後)に示されるように、固定部146を有する一体型のカバー140を用いて、光束制御部材130を固定してもよい。
【0059】
図16Aおよび図16Bは、それぞれ図14Bに示されるA−A線におけるカバー140の断面図、図15Bに示されるB−B線におけるカバー140の断面図である。図16Aおよび図16Bに示されるように、固定部160は、向かい合うように一対形成されていればよいが、カバー140の内周全体に亘り形成されていてもよい。
【0060】
図13〜図15に示されるカバー140は、すべてアンダーカット部が存在しないため、射出成形法などにより容易に製造することができる。なお、光束制御部材130とカバー140とを固定する方法は、特に限定されない。光束制御部材130とカバー140とを固定する方法の例には、接着や圧入などが含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の光束制御部材を含む照明装置は、白熱電球に代えて使用されうる。また、本発明の光束制御部材を含む照明装置は、配光特性を用途に応じて任意に調整することができるため、シャンデリアや間接照明装置などの各種照明機器に幅広く適用されうる。
【符号の説明】
【0062】
10 照明装置
20 基板
30 LED
40 反射鏡
100,200 照明装置
110 基板
120 発光素子
130,210 光束制御部材
132 反射面
134 透過部(貫通孔)
136 中心部
138 外周部
140 カバー
142 側壁部
144 蓋部
146 固定部
CA 中心軸
LA 光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に配置された1または2以上の発光素子の光束の中心と同心にその中心軸が位置するように、前記発光素子に対して空気層を介して配置される、平面視形状が略円形の光束制御部材であって、
前記発光素子から出射された光を反射させる反射面と、
前記発光素子から出射された光を透過させる透過部と、を有し、
前記反射面は、外周部よりも中心部の方が前記発光素子寄りに位置する凹面であり、
前記光束制御部材を平面視した場合に、半径の外側から0〜25%の部分からなる環形の領域を領域aとし、半径の外側から25〜50%の部分からなる環形の領域を領域bとし、半径の外側から50〜75%の部分からなる環形の領域を領域cとし、半径の外側から75〜100%の部分からなる円形の領域を領域dとしたときに、
前記透過部は、少なくとも、前記領域cおよび前記領域dからなる領域に形成されており、かつ
前記領域cにおける前記透過部の面積率は、前記領域dにおける前記透過部の面積率以上である、
光束制御部材。
【請求項2】
前記透過部は、前記領域aには形成されていない、請求項1に記載の光束制御部材。
【請求項3】
前記領域cにおける前記透過部の面積率は、10〜50面積%の範囲内であり、
前記領域dにおける前記透過部の面積率は、15面積%以下であり、
前記領域cおよび前記領域dからなる領域における前記透過部の面積率は、10〜50面積%の範囲内である、
請求項1に記載の光束制御部材。
【請求項4】
前記透過部は、前記領域bにも形成されている、請求項1に記載の光束制御部材。
【請求項5】
前記領域bにおける前記透過部の面積率は、30面積%以下である、請求項4に記載の光束制御部材。
【請求項6】
前記透過部は、貫通孔または凹部である、請求項1に記載の光束制御部材。
【請求項7】
前記反射面は、非球面である、請求項1に記載の光束制御部材。
【請求項8】
基板上に配置された1または2以上の発光素子と、
前記発光素子に対して空気層を介して配置された、請求項1〜7のいずれか一項に記載の光束制御部材と、
前記光束制御部材の外縁から前記基板側へ延びる側壁部、および前記光束制御部材に対して空気層を介して配置される蓋部を含むカバーと、を有し、
前記側壁部は、前記光束制御部材の反射面で反射して前記側壁部の内面に到達した光、および前記発光素子から前記側壁部の内面に直接到達した光を、前記側壁部の外面から外方へ出射させ、
前記蓋部は、前記光束制御部材の透過部を透過して前記蓋部の内面に到達した光を前記蓋部の外面から外方へ出射させる、
照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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