説明

光検出装置、及び光検出装置を搭載した電子機器

【課題】高精度であり、さらに、低コストかつ電子機器の負担が小さい、光検出装置、及び光検出装置を搭載した電子機器を実現する。
【解決手段】光検出装置100は、受光素子101が受光して得られた電流110を、第1デジタル信号111に変換して出力する光‐デジタル変換回路102と、第1デジタル信号111を浮動小数点データに圧縮して、第2デジタル信号112として出力する浮動小数変換回路107と、第2デジタル信号112に対して所定の演算を行う浮動小数演算回路108と、演算の結果を示す信号113を、整数型のデジタルデータである第3デジタル信号114に変換して出力する浮動小数‐整数型データ変換回路109とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル出力型の光検出装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ等の表示画面を備えた電子機器、例えば、携帯電話、スマートフォン、デジタルカメラ、また、タブレット型あるいは据え置き型のコンピュータ等においては、周囲の明るさに応じてディスプレイの輝度を調整することにより、表示画面を見易くし、ユーザの不快感を軽減する処理が行われている。そして、このような用途に向け、該電子機器では、人の視感度特性に合わせて周囲の明るさを検出するために、照度センサーが利用される。
【0003】
また、特に、携帯電話、スマートフォン、デジタルカメラ等の、携帯型の電子機器においては、電子機器への人体の近接具合を検出した結果に基づく、種々の制御が行われている。例えば、携帯電話及びスマートフォンでは、ディスプレイがタッチパネルとして情報入力機能も兼ねており、通話時あるいは電子機器をポケットに挿入するとき等、何らかの物体がタッチパネルに近接したときに、その情報入力機能をオフすることで誤動作を防止するという制御が可能である。
【0004】
また、デジタルカメラでは、ユーザが液晶画面からファインダーに目線を移す際に、自動的に液晶画面の明るさを低下させるといった制御が行われる。
【0005】
このような用途に向け、前記電子機器では、自ら発光し対象物からの反射光を検出して、対象物の近接具合を判定する近接センサーが用いられる。
【0006】
民生用途の電子機器(民生機器)向けに、電子機器側からの制御が容易なデジタル出力型の光検出装置が求められている。特に、民生機器においては、その意匠が重要であるため、光検出装置が筐体外部から見えにくいよう、可視光領域の分光透過率が極めて低い筺体窓が用いられている。従って、前記光検出装置に対しては、低コストであることと、高感度であることとが同時に要求される。
【0007】
このような用途を意識して開示されたデジタル出力型の光検出装置に関する従来技術としては、特許文献1及び非特許文献1に開示されている各技術が挙げられる。
【0008】
前記光検出装置の内部回路の構成としては、例えば、特許文献1に開示されているような、低速動作のいわゆるLight-to-Digital Converterが使用され得る。また、特許文献1に開示されている回路技術を使用して、低コストの照度センサーを実現した例として、非特許文献1に開示されている技術が挙げられる。同文献では、光学フィルタを使用せず、2種類のフォトダイオードの出力電流をそれぞれデジタル化して別々に光検出装置の外部へ出力し、該光検出装置を搭載する電子機器の側でこれらの出力に演算処理を施すことで、照度情報を得ている。
【0009】
また、視感度をよく再現することを主眼とする照度センサーにおいては、通常、光学フィルタを光検出装置の一部として集積化することが行われている。この場合にも、上記特許文献1に開示されている回路技術を使用することもできるし、その他の回路技術を用いることもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6635859号明細書(2003年8月21日公開)
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】TSL2771 LIGHT-TO-DIGITAL CONVERTER with PROXIMITY SENSING, TAOS Inc. (OCTOBER.2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、非特許文献1に開示されている技術のように、光学フィルタの使用を避けると、光検出装置を制御する電子機器側の負担が大きくなるという問題が発生する。すなわち、非特許文献1に開示されている手法の場合には、照度としての出力が得られるのは、該電子機器側での演算処理後であるため、光検出装置側から、割り込み出力を発生させ、所望の照度レベルである旨をホストシステム等に通知するのは困難である。このため、該通知を該電子機器が実施する必要があり、該電子機器の負担が増大することになる。また、該電子機器の筐体窓の分光特性を変更すると、演算処理式をそれに合わせて最適化し直す必要が生じ、結果的に該電子機器のコストが上昇するという問題が発生する。
【0013】
あるいは、光学フィルタを用いて分光特性の精度を追求する場合には、光学フィルタによる高コスト化が避けられない。
【0014】
本発明は、前記の問題に鑑みて為された発明であり、その目的は、高精度であり、さらに、低コストかつ電子機器の負担が小さい、光検出装置、及び光検出装置を搭載した電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の光検出装置は、前記の問題を解決するために、受光素子と、前記受光素子が受光して得られた信号を、デジタル信号に変換して、第1デジタル信号として出力する第1デジタル信号出力手段と、前記第1デジタル信号を、前記第1デジタル信号よりビット幅が小さくなる浮動小数点データに圧縮して、第2デジタル信号として出力する第2デジタル信号出力手段と、前記第2デジタル信号の、理想値に対する相対誤差を補正するための演算を行う演算手段と、前記演算の結果を整数型のデジタルデータに変換して、第3デジタル信号として出力する第3デジタル信号出力手段と、を備えることを特徴としている。
【0016】
前記の構成によれば、光検出装置を制御する電子機器にて、多くともビットシフト演算(シフト演算)のみで参照可能な照度の出力値が、第3デジタル信号として得られるため、該電子機器の負担を小さくすることが可能である。
【0017】
また、前記の構成によれば、第1デジタル信号出力手段の精度による最小分解能を有し、かつ、受光素子の出力信号の値に対する照度の出力値の相対誤差(誤差を、割合で表現したもの)をダイナミックレンジ全域に渡って一定レベルに維持したままで、演算手段の規模増大を抑え、コストを削減することができる。
【0018】
また、任意の照度レベルで光検出装置から割り込み信号を発生させることにより、光検出装置を備える電子機器の、ディスプレイの輝度の調整を、所望の照度レベルで実現することが可能になり、電子機器の負担を小さくすることができる。また、演算処理を光検出装置の内部で実現することにより、受光素子の分光特性、第1デジタル信号出力手段の特性、さらには電子機器の筐体窓の分光特性を、容易に補正することができる。
【0019】
さらに、前記の構成によれば、第1デジタル信号を、浮動小数点データに変換して、圧縮を行うことにより、第2デジタル信号の生成を容易に行うことができる。
【0020】
また、本発明の光検出装置の前記第3デジタル信号のビット幅は、前記第2デジタル信号のビット幅以上、かつ、前記第1デジタル信号のビット幅以下であることを特徴としている。
【0021】
前記の構成によれば、光検出装置の演算回路ひいては全体回路規模の増大を抑えることが可能である。
【0022】
また、本発明の光検出装置の前記第3デジタル信号の値は、前記受光素子が受光した光の照度を示す値か、または、シフト演算により、前記受光素子が受光した光の照度を示す値が得られる値であることを特徴としている。
【0023】
前記の構成によれば、第3デジタル信号から、受光素子が受光した光の照度を得ることが容易となる。従って、光検出装置を制御する電子機器の負担を小さくすることができる。
【0024】
また、本発明の光検出装置の前記受光素子は、互いに異なる分光特性を有する、複数のフォトダイオードであり、前記第1デジタル信号出力手段は、前記複数のフォトダイオードの個数と同じ数設けられていることを特徴としている。
【0025】
前記の構成によれば、光学フィルタを使用しないで、本発明の光検出装置を実現することが可能となるため、光検出装置のコストをさらに低減することが可能となる。
【0026】
また、本発明の光検出装置の前記演算手段は、前記演算として、前記受光素子の分光特性のばらつきに起因して発生する、前記第2デジタル信号の相対誤差を補正するための演算を行うことを特徴としている。
【0027】
また、本発明の光検出装置の前記演算手段は、前記演算として、前記第1デジタル信号出力手段の特性のばらつきに起因して発生する、前記第2デジタル信号の相対誤差を補正するための演算を行うことを特徴としている。
【0028】
前記の各構成によれば、演算手段は、受光素子の出力信号に対する照度の出力値の相対誤差を、容易に補正することができる。
【0029】
また、本発明の光検出装置は、ヒューズトリミングにより、前記受光素子の分光特性のばらつきに応じた複数の補正係数から、所望の前記補正係数を選択するトリミング補正回路をさらに備え、前記演算手段は、前記演算として、前記第2デジタル信号と、前記選択された補正係数との積を演算することを特徴としている。
【0030】
また、本発明の光検出装置は、ヒューズトリミングにより、前記第1デジタル信号出力手段の特性のばらつきに応じた複数の補正係数から、所望の前記補正係数を選択するトリミング補正回路をさらに備え、前記演算手段は、前記演算として、前記第2デジタル信号と、前記選択された補正係数との積を演算することを特徴としている。
【0031】
前記の各構成によれば、各トリミング補正回路は、一般的なヒューズトリミングにより、受光素子の出力信号に対する照度の出力値の相対誤差を補正することができるため、非常に容易に補正を行うことができる。
【0032】
また、本発明の光検出装置は、ヒューズトリミングにより、前記受光素子の分光特性のばらつきに応じて決定された複数の第1補正係数から、所望の前記第1補正係数を選択する第1トリミング補正回路と、ヒューズトリミングにより、前記第1デジタル信号出力手段の特性のばらつきに応じて決定された複数の第2補正係数から、所望の前記第2補正係数を選択する第2トリミング補正回路とを備え、前記演算手段は、前記演算として、前記受光素子の分光特性のばらつきに起因して発生する、前記第2デジタル信号の相対誤差を補正するための演算を行うと共に、前記第1デジタル信号出力手段の特性のばらつきに起因して発生する、前記第2デジタル信号の相対誤差を補正するための演算を行い、前記第2デジタル信号と、前記選択された第1補正係数と、前記選択された第2補正係数との積を演算し、前記第2デジタル信号に対する積の演算の前に予め、前記第1補正係数と前記第2補正係数との積が演算されることを特徴としている。
【0033】
前記の構成によれば、第1補正係数と第2補正係数との積を演算し、この積を第2デジタル信号に対して乗算することにより、第1補正係数を格納する部材(テーブル等)及び第2補正係数を格納する部材の統合を図ることが可能となり、これらの各格納部材の、光検出装置の集積回路への実装を、容易に行うことが可能となる。
【0034】
また、本発明の光検出装置は、外部との通信を行う通信手段と、前記通信手段を介して受信したデジタルデータを保持する記憶部とを備え、前記演算手段は、前記演算として、前記受光素子の分光特性のばらつきに起因して発生する、前記第2デジタル信号の相対誤差を補正するために、前記第2デジタル信号と、前記受光素子の分光特性のばらつきに応じて決定された補正係数との積を演算し、前記記憶部に保持されたデジタルデータにより、複数の前記補正係数から、所望の前記補正係数を選択するレジスタ補正部を備えることを特徴としている。
【0035】
また、本発明の光検出装置は、外部との通信を行う通信手段と、前記通信手段を介して受信したデジタルデータを保持する記憶部とを備え、前記演算手段は、複数の前記フォトダイオードのそれぞれについて、前記演算として、前記フォトダイオードの分光特性のばらつきに起因して発生する、前記第2デジタル信号の相対誤差を補正するために、前記第2デジタル信号と、前記フォトダイオードの分光特性のばらつきに応じて決定された補正係数との積を演算し、前記記憶部に保持されたデジタルデータにより、複数の前記フォトダイオードのそれぞれについて、複数の前記補正係数から、所望の前記補正係数を選択するレジスタ補正部を備えることを特徴としている。
【0036】
前記の各構成によれば、外部から光検出装置を起動する際の初期設定の一部として、受光素子の感度の絶対値に対するキャリブレーションを実施することが可能となる。特に、複数のフォトダイオード毎にキャリブレーションをかけられるよう、演算処理回路を構成することにより、赤外域における分光感度特性の大幅な乖離を吸収することが可能となる。
【0037】
また、本発明の光検出装置は、前記第3デジタル信号を、照度を単位として設定された第1の閾値と比較した結果に基づいて、前記受光素子が受光した光の照度が所望の値であるか否かを判定し、前記判定の結果を、外部に出力することが可能であることを特徴としている。
【0038】
前記の構成によれば、割り込み処理が劇的に簡素化され、割り込み信号の検出ミスまたは割り込み処理の遅延によって発生しがちな、電子機器の種々の不安定な挙動あるいは不具合を、確実に回避することが可能である。
【0039】
また、本発明の光検出装置の前記第1の閾値は、外部から設定された、複数の照度を示す値であることを特徴としている。
【0040】
そして、本発明の光検出装置は、複数の照度テーブルを備え、前記複数の照度テーブルのそれぞれは、複数の照度を示す値を、要素として有しており、前記第1の閾値は、前記複数の照度テーブルのうち、外部から指定された照度テーブルの要素を構成する各値の一部または全部であることを特徴としている。
【0041】
前記の構成によれば、照度テーブル等を用いて、外部から第1の閾値を容易に設定することが可能となる。
【0042】
また、本発明の光検出装置は、発光素子をさらに備え、前記発光素子から出射された光が、外部の反射物で反射されて得られた光を、前記受光素子が受光することを特徴としている。
【0043】
そして、本発明の光検出装置は、前記判定の結果を、外部から設定された第2の閾値と比較した結果に基づいて、前記反射物までの距離を検出することが可能であることを特徴としている。
【0044】
前記の構成によれば、本発明の光検出装置を用いて、反射物までの距離を検出する近接センサーを構成することが可能となる。
【0045】
また、本発明の光検出装置は、前記判定の結果が変化した場合に該判定の結果を外部に出力すると共に、前記反射物までの距離を検出した結果が変化した場合に該検出した結果を外部に出力する出力手段を備えることを特徴としている。
【0046】
前記の構成によれば、任意の照度レベルで光検出装置から割り込み信号を発生させることにより、光検出装置を備える電子機器の、ディスプレイの輝度の調整を、所望の照度レベルで実現することが可能になり、電子機器の負担を小さくすることができる。
【0047】
また、本発明の光検出装置は、前記判定の結果を、外部に出力する第1出力手段と、前記反射物までの距離を検出した結果を、外部に出力する第2出力手段とを備えることを特徴としている。
【0048】
前記の構成によれば、第1出力手段を照度センサーとしての割り込み出力専用とし、第2出力手段を近接センサーとしての出力に使い分けることができる。従って、第2出力手段の出力には、近接または非近接の判定結果か、もしくはそれに基づく割り込み出力(すなわち、近接から非近接への、または非近接から近接への状態遷移タイミング)のいずれかを出力することができる。従って、周囲の明るさが変化する中で物体が近接したり離れたりする様々な動作状況下で、煩雑な割り込み処理による遅延時間が変動し、見かけ上近接センサーの検知距離が変動するなどの、不安定かつ好ましくない挙動を確実に回避することができる。
【0049】
また、本発明の電子機器は、本発明の光検出装置を備えており、これにより、該光検出装置と同様の効果を奏する。
【0050】
また、本発明の電子機器は、本発明の光検出装置と、前記光検出装置の筐体とを備え、前記筐体は、可視光および近赤外光の少なくとも一方が入射したときに分光透過率が変化する窓を備え、前記光検出装置の演算手段は、前記演算として、前記窓の分光透過率のばらつきに起因して発生する、前記第2デジタル信号の相対誤差を補正するために、前記第2デジタル信号と、前記窓の分光透過率のばらつきに応じて決定された補正係数との積を演算し、前記光検出装置のレジスタ補正部は、前記光検出装置の記憶部に保持されたデジタルデータにより、複数の前記補正係数から、所望の前記補正係数を選択することを特徴としている。
【0051】
前記の構成によれば、電子機器に設けられる光学窓の分光透過率に大きな波長依存性が無い場合には、平均透過率を外部から補正する演算処理を動作の初期設定時に簡単に実行できる。従って、本発明の光検出装置が、色味の無い黒い窓材を介して外部から視認し辛くする筐体デザインの電子機器に搭載される場合も、該筺体の外部、すなわち電子機器の周囲の実空間における照度を、該光検出装置のデジタル出力として直接的に得ることができる。
【発明の効果】
【0052】
以上の通り、本発明の光検出装置は、受光素子と、前記受光素子が受光して得られた信号を、デジタル信号に変換して、第1デジタル信号として出力する第1デジタル信号出力手段と、前記第1デジタル信号を、前記第1デジタル信号よりビット幅が小さくなる浮動小数点データに圧縮して、第2デジタル信号として出力する第2デジタル信号出力手段と、前記第2デジタル信号の、理想値に対する相対誤差を補正するための演算を行う演算手段と、前記演算の結果を整数型のデジタルデータに変換して、第3デジタル信号として出力する第3デジタル信号出力手段と、を備える。
【0053】
従って、本発明は、高精度であり、さらに、低コストかつ電子機器の負担が小さいという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施の形態に係る、光検出装置の構成を示す回路ブロック図である。
【図2】図2(a)は、公知の、単精度の浮動小数点データの形式を簡略的に示す図であり、図2(b)は、第2デジタル信号の浮動小数点データとしての形式を簡略的に示す図である。
【図3】浮動小数演算回路による演算を行うための構成を示す回路ブロック図である。
【図4】演算処理回路の具体的な構成を示す回路ブロック図である。
【図5】本発明の別の実施の形態に係る、光検出装置の構成を示す回路ブロック図である。
【図6】図6(a)は、各フォトダイオードにおける、入射される光の波長と、感度との関係を示すグラフであり、図6(b)は、各フォトダイオードを実現するための、pn接合の一例を示す図である。
【図7】本発明の別の実施の形態に係る、別の光検出装置の構成を示す回路ブロック図である。
【図8】図8(a)は、図6(a)に示した分光特性ケース(i)で、各種の異なる分光スペクトルを有する光源が一定の照度を与えるよう規格化した際に、複数のフォトダイオードから出力される電流の例を示すグラフであり、図8(b)は、図8(a)に示すグラフにおいて、Ivis´及びIvisの逆数を用いて、同様の関係を示したグラフである。
【図9】光検出装置において使用する照度閾値テーブルの一例を示す図である。
【図10】本発明のさらに別の実施の形態に係る、光検出装置の構成を示す回路ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明を実施するための形態について、図1〜図10を参照して、以下に説明する。
【0056】
但し、本発明は、以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することのない程度に、その形態及び詳細を様々に変更し得るということは、当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、以下に示す各実施の形態の記載内容に限定して解釈されるべきものではないということを理解されたい。
【0057】
なお、以下に説明する本発明の構成において、同様の機能を有する部材に関しては、共通の符号を用いて示しており、同一部分又は同様な機能を有する部材の詳細な説明は省略している。
【0058】
〔実施の形態1〕
本実施の形態に係る、光検出装置100の基本構成について、図1を参照して説明する。
【0059】
光検出装置100は、受光素子101、光‐デジタル変換回路(第1デジタル信号出力手段)102、及び演算処理回路103を備える構成である。また、光‐デジタル変換回路102は、積分器104、比較器105、及びカウンタ106を備えている。また、演算処理回路103は、浮動小数変換回路(第2デジタル信号出力手段)107、浮動小数演算回路(演算手段)108、及び浮動小数‐整数型データ変換回路(第3デジタル信号出力手段)109を備えている。
【0060】
まず、強度を検出すべき光(光検出装置100の周囲からの光、または光を物体にて反射させた光、等)は、光検出装置100に入射し、受光素子101により受光される。
【0061】
受光素子101は、例えばフォトダイオードによって構成されており、受光した前記の光に対して光電変換を施すことによって、電流(受光素子が受光して得られた信号)110を生成し、光‐デジタル変換回路102に出力する。
【0062】
光‐デジタル変換回路102に入力された電流110は、積分器104にて一般的な波形の積分動作が施され、比較器105にて閾値(所定の基準電圧)と比較され、この比較の結果に応じて、ハイレベル及びローレベルの論理が切り替わる2値信号に変換される。さらに、この2値信号は、電流110の値に比例した、カウンタ106によって規定されるカウント値に変換され、光‐デジタル変換回路102から出力される。この光‐デジタル変換回路102の出力は、電流110をデジタル信号に変換して得られた、第1デジタル信号111である(すなわち、周知の光‐デジタル変換)。
【0063】
なお、光‐デジタル変換回路102の構成としては、電流110に対して周知の光‐デジタル変換を行うことが可能な、任意の回路が適用可能である。また、電流110を積分器104にて積分する積分時間は、光検出装置100の内部で生成されるクロック信号または外部から入力されるクロック信号をカウントする手法、あるいは外部から入力されるタイミング信号を用いる手法により、定めることができる(図示しない)。
【0064】
さらに、第1デジタル信号111は、演算処理回路103に入力され、以下に説明する一連の演算処理が行われる。
【0065】
まず、浮動小数変換回路107により、第1デジタル信号111は、浮動小数点形式のデジタルデータ(浮動小数点データ)である、第2デジタル信号112に変換される。
【0066】
ここで、浮動小数点形式のデータとは、例えばIEEE754規格で規定されるようなデータ形式のことである。
【0067】
図2(a)には、IEEE754規格で定められた公知の、単精度の浮動小数点データの形式を示す(部材番号220参照)。
【0068】
部材番号220に示すデータ形式では、その上位ビットから順に、符号を示すビット201として1ビット、指数部202として8ビット、仮数部203として23ビットの順で、合計32ビットが用いられる。また、該データ形式では、演算の精度を維持するために、3ビット余分に付与し、演算結果を丸める手法等、その詳細が規定されている。
【0069】
しかしながら、光検出装置100は、前記のような規定に拘泥されるものではなく、以下に説明するように、内部変数としてのみ浮動小数(浮動小数点データ)を用いるものである。従って、第2デジタル信号112としては、任意のフォーマットの浮動小数点データを使用することができ、デジタル信号である出力値を指数部及び仮数部に分離することによる利点、すなわち精度と回路規模とのバランスをとるために、浮動小数を用いる。
【0070】
より具体的には、光検出装置100における種々の補正演算とは、第2デジタル信号112において、光検出装置100の各構成要素の、設計値あるいは典型値(理想値)に対する、実際の特性のずれ(すなわち、特性のばらつき)を補正するための積を演算することである。また、この積の演算は、繰り返し行うことが必要となる場合が多い。
【0071】
ここで、例えば、光‐デジタル変換回路102が出力する第1デジタル信号111が、16ビットの整数型のデータである場合、16ビットの定数との積を得る際に同じ精度を保つためには、32ビットのデータを保持しなければならない。この場合、光検出装置100の演算回路及びレジスタを含めたデータパス部分のトータル回路規模は、本来必要な精度に対して非常に大きくなり、結果、光検出装置100のコストが増大する。
【0072】
ここで、一例として、光検出装置100が照度センサーであり、該照度センサーが、入力光レベルの範囲の仕様として、0.01Lux(ルクス:照度のSI単位)〜10万Luxまでをカバーする場合を考える。この場合、入力光レベルの変動範囲は、高々7桁の範囲内である。そのため、入力光レベルの桁数自体は、2進3ビットの程度で表現することができる。
【0073】
また、光‐デジタル変換回路102のLSB(least significant bit:最下位のビット)は、光‐デジタル変換回路102の分解能に対応するが、該分解能が0.01Luxの入力レベルの検出に相当するとして、照度センサーの感度仕様として重要なのは、前記入力光レベルとして取り得る範囲の全域にわたる相対精度である。
【0074】
換言すれば、照度センサーの感度仕様としては、0.01Lux〜10万Luxの全範囲で、例えば1.0×10^−2から1.0×10^5までを、−10%〜+10%の精度で測定することができれば十分であり、該全範囲において、0.01Luxの精度が必要なわけではない。以上のことは、浮動小数の概念とよく符合する。
【0075】
このように、光検出装置100においては、浮動小数変換回路107にて、カウンタ106のビット幅で与えられる第1デジタル信号111に対し、必要最低限のビットを指数部(桁数)及び仮数部(精度)に割り当てる。そして、浮動小数変換回路107は、第1デジタル信号111のビット幅を圧縮し、演算処理すべきデジタルデータ(すなわち、第2デジタル信号112)を生成し、出力する。
【0076】
ここで、仮数部に割り当てるビット幅は、電流110の値に対する照度の出力値の相対誤差の要求仕様(例えば、あらゆるばらつき要因を考慮したときの最終的な照度出力の許容誤差が−10%〜+10%の範囲内)に応じて決定される。また、仮数部に割り当てるビット幅は、繰り返される浮動小数の演算処理毎に発生する、誤差の累積を考慮して、余裕を持たせる(仮数部のビット幅を多めに割り当てる)必要がある。
【0077】
照度センサーとしての最小感度もしくは分解能は、第1デジタル信号111に対応するLSB単位、すなわち光‐デジタル変換回路102の構成によって決まるものである。前記のように相対誤差を制御する限り、照度センサーとしての最小感度もしくは分解能は、第2デジタル信号112のデータ形式が、整数型のデータであるか、浮動小数点データであるかには依存しない。
【0078】
図2(b)には、以上のことを考慮して決定された、光検出装置100における第2デジタル信号112の浮動小数点データとしての形式の一例を示す(部材番号210参照)。
【0079】
第1デジタル信号111は、光‐デジタル変換回路102の特性上、負の値となることはない。従って、第2デジタル信号112に符号を示すビットは不要である。
【0080】
また、一例として、0.01Lux〜10万Luxのダイナミックレンジと、相対誤差として、最大2回の補正演算(詳細は後述する)の後に、−10%〜+10%の範囲内の誤差を許容する程度の精度とを確保するため、第2デジタル信号112は、6ビットの指数部212、及び8ビットの仮数部213という、合計14ビットのビット幅を有している。
【0081】
すなわち、図1の構成によれば、16ビットの整数型のデータである第1デジタル信号111は、浮動小数変換回路107により、14ビットの浮動小数点データである第2デジタル信号112に変換される。これにより、演算処理回路103の大部分を占める、浮動小数演算回路108の回路規模は、16ビットのデータ(第1デジタル信号111)から14ビットのデータ(第2デジタル信号112)へと、圧縮されたビット幅のぶんだけ抑制される。
【0082】
一方で、仮数部213が8ビットの場合、第2デジタル信号112において、最小桁の丸め誤差は、1/(2^8)、すなわち1/256=およそ0.4%の程度となる。このことから、第2デジタル信号112では、前記2回の補正演算によって、最大0.8%程度の演算誤差が見込まれる。
【0083】
実際には、前記補正演算における補正値を決定するための測定誤差(例えば、−3%〜+3%の範囲内)、あるいは該補正値それ自体の量子化誤差(例えば、−5%〜+5%の測定結果毎に、同一の補正値を用いて補正する)がある。このことから、前記演算自体の累積誤差は、これらのその他の各種誤差よりも十分小さいことが望まれるので、前記のように仮数部213のビット幅として、8ビットが選択されている。
【0084】
さらに、前記のようにして得られた第2デジタル信号112は、浮動小数演算回路108に入力される。浮動小数演算回路108は、第2デジタル信号112に対して、光検出装置100の各構成要素の、設計値あるいは典型値に対する、実際の特性のずれを補正するための積の演算(所定の演算)を行い、該演算の結果を示す信号113を出力する。浮動小数演算回路108による演算の詳細については、後述する。
【0085】
前記演算結果を示す信号113は、浮動小数‐整数型データ変換回路109に入力される。浮動小数‐整数型データ変換回路109は、光検出装置100の外部に出力するため、前記信号113を再び整数型のデジタルデータに変換し、第3デジタル信号114として出力する。
【0086】
第3デジタル信号114を整数型のデジタルデータとする目的は、以下の通りである。すなわち、主に光検出装置100が対象とする装置(例えば、照度センサーまたは近接センサー)のホストシステムとなる、コンシューマ向けの電子機器では、浮動小数点データがサポートされない場合がある。また、サポートされているとしても、汎用性の高いIEEE754規格に則った、単精度あるいは倍精度のデータ形式では、該ホストシステムのリソースを相当に圧迫することになる。このため、第3デジタル信号114は、整数型のデジタルデータであることが強く望まれる。
【0087】
次に、第1デジタル信号111と、第3デジタル信号114との、ビット幅(単位ビット幅)の関係について説明する。
【0088】
例えば、第1デジタル信号111のビット幅が16ビットであり、第2デジタル信号112のビット幅が14ビット(指数部6ビット及び仮数部8ビット)であるとする。
【0089】
第2デジタル信号112を演算処理した結果を示す信号113に含まれる、純粋な誤差(測定誤差、ならびに補正値の量子化誤差を含まない誤差)は、先述の通り、全演算回数N×1/(2^8)の程度となる。
【0090】
換言すれば、N=2の時、log10((2^8)/N)〜2.1となり、このとき、信号113の有効数字は、10進表記で常に少なくとも2桁以上が確保されているが、表現できる要素数は高々2^14個である。
【0091】
ここで仮に、第3デジタル信号114のビット幅を、第1デジタル信号111のビット幅と同様に16ビットとすると、信号113として出力され得る2^14個の要素を、第3デジタル信号114における2^16個のビット空間に再分配することになる。結果、一定範囲のビット空間には、同じデータが縮退することになる。
【0092】
しかし、前記再分配の結果生じる量子化誤差は、最大でN×1/(2^8)の程度であり、前記有効数字の桁数は保持される。この誤差の上界は、前記の説明からも明らかなように、第3デジタル信号114のビット幅を、第2デジタル信号112のトータルビット幅(この例では、14ビット)に等しくなるまで減らしても維持される。
【0093】
なお、第3デジタル信号114のビット幅を減らすことは、浮動小数演算回路108による演算処理の際とは異なる、桁の丸め処理が別途必要となるので、全体的な回路規模の観点からは大きなメリットがない。
【0094】
以上より、第3デジタル信号114の単位ビット幅は、第2デジタル信号112の単位ビット幅以上、かつ、第1デジタル信号111の単位ビット幅以下の、いずれかであることが望ましい。より望ましくは、第3デジタル信号114の単位ビット幅は、第1デジタル信号111のビット幅と相等しい。
【0095】
以上、説明したように、図1に示した光検出装置100の基本構成により、光‐デジタル変換回路102の精度による最小分解能を有し、かつ、電流110の値に対する照度の出力値の相対誤差をダイナミックレンジ全域に渡って一定レベルに維持したままで、光検出装置100の演算回路ひいては全体回路規模の増大を抑えることができた。
【0096】
ここで、前記光‐デジタル変換回路102は、より詳細には以下のような設計とすることができる。
【0097】
例えば、前記光‐デジタル変換回路102は、1Luxの入射光に対応する電流110を、一定の積分時間(例えば、100ms)積分した後、カウンタ106の出力値(カウント)が、2のべき乗(例えば、2^4=16カウント)となるように、各々周知の構成である、積分器104及び比較器105の各種アナログ回路定数を設定すればよい。
【0098】
勿論、前記カウント値は、諸々の要因、例えば受光素子101の感度のばらつき、積分器104を構成する積分回路の容量値あるいは寄生容量のばらつき、積分器104内部のアンプのゲインエラー、あるいは比較器105の閾値のばらつき等によって変動し得る。しかしながら、これらの特性変動の要因は、図1に示した光検出装置100の構成において、浮動小数演算回路108を、例えば図3のように構成することで、所望の精度が得られるような補正が、容易に実現可能である。このことは、ここまでの説明及び以下の説明によって当業者に容易に理解されるであろう。
【0099】
受光素子101については、光検出装置100を実現するための集積回路のウェハ製造過程で、同じ構成の受光素子における典型的な設計値に対する、受光素子101の感度の相対値を測定することができる。その一方で、受光素子101の感度の絶対値を測定することは、容易でない。
【0100】
受光素子101の感度の相対値を測定する一例として、一定の光量レベルに校正されたテスト光を受光素子101に照射した際、電流110の測定値が、受光素子101の設計値、もしくは多数の典型的な受光素子での測定平均値(典型値)に対して、80%にまで低下していた場合を考える。この場合、受光素子101の特性に起因して、照度の出力値に発生する相対誤差の補正は、電流110を25%増し(すなわち、1/0.8=1.25)とするのに相当する補正係数(第1補正係数)を用い、図1における第2デジタル信号112との積を演算するように、前記集積回路を設計することによって行われる。
【0101】
ここで、前記「・・・に相当する補正係数を用い」という表現は、ある一定の相対感度の範囲内に対して一律の補正係数を用いることを意図しており、いわゆるトリミング(例えば、ヒューズを用いたヒューズトリミング)を行う際のごく一般的な手法である。
【0102】
具体的に、例えば電流110の測定値が、前記典型値に対して70%〜90%の範囲にあった場合は、該測定値に対して一律に1.25倍の補正係数を用いることにする。また、該測定値が、前記典型値に対して110%〜130%の範囲にあった場合は、該測定値に対して一律に、1/1.2=0.83倍の補正係数を用いることにする。また、該測定値が、前記典型値に対して90%〜110%の範囲にあった場合は、補正係数を1とする、すなわち、該測定値に対する補正を行わない。これは、電流110における相対誤差として−30%〜+30%の最大ばらつき幅(−3σ〜+3σ)を見込んだ際の、最も簡素な補正係数テーブルの構成例である。補正後の等価的な受光素子101の感度は、前記典型値に対して、−10%〜+10%の範囲内に収まることとなる。
【0103】
図3に示す、受光素子101のトリミング補正回路(第1トリミング補正回路)115は、受光素子101の感度トリミング部115aと、受光素子101の感度トリミングに用いる補正係数テーブル115cとを備えている。また、図示していないが、感度トリミング部115aは、少なくとも3つ(1.6ビット)のトリミングヒューズと、各トリミングヒューズの切断の有無をセンス(測定)するセンス回路と、センス結果を示すトリミングビット情報をデコードするためのデコード回路とを備えている。
【0104】
前記デコード回路によるデコード結果(部材番号115b参照)に応じて、補正係数テーブル115cの各要素、すなわち補正係数を用いる一例(前述)における{1.25 , 1 , 0.83}のいずれかの補正係数が選択される。そして、選択された補正係数は、補正係数を示す信号115dとして浮動小数演算回路108に供給され、浮動小数演算回路108での積演算に使用される。
【0105】
また、光‐デジタル変換回路102の特性に起因して、照度の出力値に発生する相対誤差も、全く同様にして補正できる。
【0106】
すなわち、光‐デジタル変換回路102の特性に関する補正を行うための一例としては、光検出装置100を実現するための集積回路のウェハ製造過程の、受光素子101の感度に関する補正と別のステップにおいて、受光素子101にテスト光の照射が無い状態(ダーク状態)で、電流110にかえて、一定のテスト電流を、外部から積分器104に印加可能なように、前記集積回路を設計することによって行われる。あるいは、前記テスト電流には、光検出装置100の内部で別途生成する電流をトリミングしたものを用いることもできる。
【0107】
このように一定レベルに校正されたテスト電流に対して、光検出装置100のテスト専用動作モードとして、実際の動作時と同一の積分時間、積分器104に積分させ、カウンタ106でカウント値に変換して、デジタル信号を生成することは、当業者にはごく容易である。例えば、このときのカウンタ106の出力を、光検出装置100の外部から読み出せるように、テスト専用の動作モードを設計すれば、光‐デジタル変換回路102の特性の、典型的な設計値に対する相対的なずれは、容易に知ることができる。
【0108】
図3に示す、トリミング補正回路(第2トリミング補正回路)116は、トリミング部116aと、補正係数テーブル116cとを備えている。また、図示していないが、トリミング部116aは、トリミングヒューズと、トリミングヒューズの切断の有無をセンスするセンス回路と、センス結果を示すトリミングビット情報をデコードするためのデコード回路とを備えている。
【0109】
受光素子101の感度に関する補正を行う場合と同様に、2つのトリミングヒューズを用いた2ビットのトリミングを行うとする。この場合、例えば、光‐デジタル変換回路102の出力の測定値(感度)が、典型的な設計値に対して70%〜90%の範囲内であれば、この測定結果に対応付けられたトリミングヒューズの切断が行われる。そして、この切断に伴い得られたデコード結果(部材番号116b参照)によって、光‐デジタル変換回路102の補正係数テーブル116cから、{1.25}、すなわち1.25倍の補正係数(第2補正係数)が選択される。そして、実際の光検出装置100の動作時には、光‐デジタル変換回路102の特性に対応する補正値として、1.25倍の補正係数が、補正係数を示す信号116dとして浮動小数演算回路108に供給され、浮動小数演算回路108での積演算に使用される。
【0110】
このように、前記トリミングビットが持つ意味は、第2デジタル信号112において、光検出装置100を構成する部材の、設計値あるいは典型値に対する実際の特性のずれを補正するための補正係数を、同部材に対応する補正係数の各々が格納された補正係数テーブルから選択することと等価である。そして、前記トリミングビット数及び補正係数テーブルを任意に設計して、光検出装置100を実現するための集積回路に全て集積することができる。
【0111】
また、ここまでの説明からも明らかであるように、受光素子101に関する補正を行う演算と、光‐デジタル変換回路102に関する補正を行う演算とは、同時に演算可能である。
【0112】
すなわち、光検出装置100を実現するための集積回路のウェハ製造過程で、受光素子101及び光‐デジタル変換回路102のそれぞれの相対感度(すなわち、典型的な設計値に対する、出力の測定値の割合)を求めた後、それらの相対感度の積を求める。そして、この積を用いて、一括で補正を行う演算が可能であるように予め統合された、トリミングビット情報及び補正係数テーブルを用いることができる。
【0113】
また、実際の光検出装置100の動作時には、受光素子101及び光‐デジタル変換回路102の感度に関する補正を行う値として、一つの補正係数が使用されるよう(すなわち、1回の演算サイクルで一括して補正演算が行われるよう)、前記集積回路を設計することができる。
【0114】
なお、当然ながら、統合された補正係数テーブルは、統合前の補正係数テーブル115cまたは116cよりも大規模になる。但し、統合された補正係数テーブルは、統合前の補正係数テーブル115c及び116cのトータルの回路規模と同程度であり、係数の要素数がよほど大きくない限りは、統合された補正係数テーブルの方が、前記集積回路への実装が容易である。
【0115】
なお、前記の補正係数はいずれも、有効数字3桁の10進表記で示したが、実際の集積回路においては、図2(b)のフォーマットに従い、2進の浮動小数で表現される最も近接する値として実装されるべきであることは言うまでもない。
【0116】
さらに、もう一つの有益な演算手法について、同じく図3を参照して説明する。
【0117】
デジタル出力型の照度センサーにおいては、一般的に、積分器による積分時間、比較器の感度(あるいはゲイン)、及び/または最大照度レンジを、該照度センサーの外部から、レジスタにより設定可能とすることがよく行われる。通常、そのような照度センサーである光検出装置を搭載するホスト機器は、光検出装置(照度センサー)から、デジタル信号の出力(カウント値)を読み出した後、さらに前記各種設定を考慮した演算(スケーリングするための乗算または除算、あるいはさらに必要であれば加減算)を行うことで、該出力を、照度を示す値へと換算する必要がある。
【0118】
一方、光検出装置100においては、ここまでの説明から明らかであるように、ホストシステムから、レジスタに設定された内容に応じて自身の動作条件を定める。そして、光検出装置100は、前記各種設定に応じた演算を内部で実行し、該演算結果を外部に出力することが可能な構成である。
【0119】
具体的には、図3に示す外部との通信手段117は、例えばI2Cバス通信路のような、周知のシリアルインターフェイスが用いられ得る。
【0120】
通信手段117の制御部(記憶部)118は、通信手段117による通信自体の制御回路を備えている。加えて、制御部118は少なくとも、外部から書き込み(受信)可能であり、光検出装置100の内部から参照可能なレジスタと、外部から読み出し可能であり、光検出装置100の内部から書き込み可能なレジスタとを備えている。
【0121】
通信手段117及びその制御部118は、周知慣用技術で実現可能である。
【0122】
このようにして、外部(ホストシステム)から設定された、積分器104のゲイン及び積分時間等の出力をリニアにスケーリングして、感度及びダイナミックレンジを変更する。該変更のための設定に関して、制御部118は、前記ヒューズトリミングの際のデコード信号に相当する信号118bを生成し、スケーリング係数テーブル118cから適切なスケーリング係数を選択することができる。
【0123】
なお、図3では、前記スケーリングを、浮動小数‐整数型データ変換回路109において、第3デジタル信号114の生成とともに行う例を示した。これは、先に説明したとおり、例えば、1Luxの入射光に対応する電流110を一定時間積分した後、カウンタ106の出力値が2のべき乗となるように、積分器104及び比較器105の各種アナログ回路定数を設計することができることによる。さらには、この設計値あるいは典型値からのずれは、図3で説明した他の補正演算によって、十分な精度で補正することができることにもよる。
【0124】
すなわち、光検出装置100において、前記の感度及びダイナミックレンジを変更するレジスタの設定は、全て2のべき乗によって、値を変更できるように設計することが望ましい。このような構成により、動作条件設定のためのスケーリングは全て、2進の整数値に対するビットシフト演算(シフト演算)として、浮動小数‐整数型データ変換回路109において容易に実現することができる。
【0125】
以上で説明した演算処理を実現するための、演算処理回路103全体のブロックダイアグラムの例を図4に示す。
【0126】
第1デジタル信号111は、図1には図示していなかったセレクタ(台形で図示)を介して、浮動小数変換回路107、すなわち整数−浮動小数変換回路に入力され、図2(b)に示した浮動小数点データ、すなわち第2デジタル信号112に変換される。
【0127】
なお、ここまでの実施例の説明では、浮動小数変換回路107前段の前記セレクタは何の役割も果たしていないが、2系統の第1デジタル信号(後述する、第1デジタル信号111A及び111B)を切り替えて、浮動小数変換回路107に入力する(点線矢印)ために使用される。これに関しては、後に〔実施の形態2〕で詳細を説明する。
【0128】
次に、第2デジタル信号112は、再び別のセレクタを介して、データレジスタ群401に入力される。
【0129】
なお、図4に示した演算処理回路103の例は、回路規模低減のため、前述した各種の積演算を、シリアルに実行していく例である。
【0130】
入力された第2デジタル信号112をロードし、さらにそれに対する各演算結果を記憶するため、例えば2系統の第1デジタル信号が存在する場合、データレジスタ群401の内部には、2系統×2個、すなわち計4つの、第2デジタル信号112と同じビット幅を有するデータレジスタが設けられる。
【0131】
第2デジタル信号112において、光検出装置100の各構成要素の、設計値あるいは典型値に対する、実際の特性のずれを補正する積演算(補正演算)自体は、浮動小数乗算器402で行われる。そして、各積演算の毎に、結果は前記データレジスタ群401のいずれかのデータレジスタに格納される。この一連の動作(演算処理)は、全ての積演算を完了するまで続けられる。
【0132】
なお、浮動小数乗算器402の入出力データは、データレジスタ群401への記憶に際して、必ずしも特定のデータレジスタに入出力を区別して記憶される必要はない。
【0133】
前記4つのデータレジスタを使い分けながら一連の演算処理が完了した段階で、最終的な演算結果である信号113を示すデータが記憶されたデータレジスタから、該データが図示のようにセレクタで選択されて、浮動小数‐整数型データ変換回路109に出力される。
【0134】
これ以降の演算処理の具体例は、〔実施の形態2〕で説明する。
【0135】
また、前記最終的な演算結果(または、それを第3デジタル信号114に変換した結果)に対して、光検出装置100の外部へ何らかの割り込み出力あるいはアラートを発生させる必要が有るか無いかを、浮動小数減算器及び判定器403によって判定する。
【0136】
浮動小数減算器及び判定器403では、図3に示す補正係数テーブル115c及び116cを備えた閾値テーブル404から選択される特定の閾値404aと、前記最終的な演算結果405との差を、浮動小数減算器により求める。そして、浮動小数減算器及び判定器403では、減算結果の大小関係に基づいて、最終的な演算結果405が、第3デジタル信号114として、外部に出力すべきデータであるのか否かを、判定器によって判定し、判定結果406が該判定器から出力される。これと同時に、浮動小数‐整数型データ変換回路109においては、光検出装置100から外部への割り込みを出力する直前までに、既に説明した浮動小数−整数値の変換、あるいは必要に応じてビットシフト演算が完了していることが望ましい。
【0137】
なお、割り込み出力の詳細については、〔実施の形態3〕で説明する。
【0138】
以上、図1〜図4を参照して詳しく説明したように、光検出装置100の基本構成により、光‐デジタル変換回路102の精度による最小分解能を有し、かつ、電流110の値に対する照度の出力値の相対誤差をダイナミックレンジ全域に渡って一定レベルに維持したままで、光検出装置100の演算回路ひいては全体回路規模の増大を抑えることができる。
【0139】
さらに、各種の特性補正及び動作条件設定に応じたスケーリングを装置内部で実現するので、最終的に光検出装置100の外部では、物理的に意味のあるデジタル出力値(すなわち、照度の出力値)を、直接もしくはビットシフト演算のみで得ることができる。
【0140】
このことは、特に照度センサーにおいて、Luxを単位とする照度値を、複雑な演算を行うことなく直接的に得ることができるという極めて優れた効果を奏する。
【0141】
これに関するさらに具体的な実施例は、〔実施の形態2〕以降で詳しく説明する。
【0142】
〔実施の形態2〕
本実施の形態では、光検出装置100の別の構成例である、光検出装置200の構成について、図5を参照して説明する。
【0143】
光検出装置200における、光検出装置100との主たる相違点は、受光素子101として、互いに異なる分光感度特性が付与された、複数のフォトダイオードを用いる点にある。ここでは、フォトダイオード(受光素子)101Aと、フォトダイオード101Bとの2種類を、受光素子101として用いている。
【0144】
また、前記相違点に対応して、光‐デジタル変換回路102としても、積分器104、比較器105、及びカウンタ106をそれぞれ備えた、2系統の光‐デジタル変換回路、すなわち、光‐デジタル変換回路102A及び102Bが用いられている。光‐デジタル変換回路102Aは、第1デジタル信号111Aを出力する。また、光‐デジタル変換回路102Bは、第1デジタル信号111Bを出力する。
【0145】
図5の構成をとる目的は、前述したように、周知のコスト低減策である光学フィルタレスの受光素子101を用いつつ、ホストシステムの負担を大幅に削減した、光検出装置を実現するためである。
【0146】
ここでまず、図6(a)及び図6(b)を参照して、前記複数のフォトダイオードに付与されるべき分光感度特性について説明する。
【0147】
照度センサー、及び近接センサー等の光検出装置においては、可視光の波長帯、乃至近赤外光の波長帯に渡って、高い感度を有することが必要である。
【0148】
特に、安価なSi(珪素)フォトダイオードを用いて、人の視感度特性を近似的に再現するため、可視光に感度のピークを有する構造のフォトダイオードと、近赤外光に対して感度のピークを有する構造のフォトダイオードとを利用する技術が知られている。なお、Siフォトダイオードは、典型的には波長900nm付近に感度のピークを有し、概ね波長300nm乃至波長1100nmに渡って感度を有する。人の視感度特性は一般的に、波長555nmに感度のピークを有し、波長400nm乃至波長700nmまでに感度を有する。前記技術では、両フォトダイオードの出力電流の和、差、あるいは比を利用して、元来ブロードなSiの赤外分光応答特性を考慮した補正を行い、光検出装置の分光特性を視感度特性に近づける。この技術は、非特許文献1に開示されている技術等から周知である。
【0149】
また、一般的なCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor:相補型金属酸化膜半導体)の製造プロセスにおいては、種々の深さのpn接合が利用可能であり、図6(b)に図示したように、前記の各フォトダイオードの分光特性は、互いに異なる深さのpn接合を用いて実現することができる。
【0150】
図6(a)は、フォトダイオード101A及び101Bにおける、入射される光の波長(横軸)と、感度(縦軸:電流/電力で示している)との関係を示すグラフである。図6(b)は、フォトダイオード101A及び101Bを実現するための、pn接合の一例を示す図である。
【0151】
但し、受光素子101の出力電流がpAのオーダとなる、高感度の光検出装置では、順方向にせよ、逆方向にせよ、受光素子101のpn接合部分に対して0Vではないバイアス電圧が印加されると、nAオーダのリーク電流(暗電流)が発生し得る。このため、利用できるpn接合の構造、すなわち受光素子101の分光特性及び積分器104の回路形態は、限定される。
【0152】
例えば、図6(b)は、p型不純物の濃度が高い領域であるP+601と、n型のウエルであるNW602と、p型の基板であるPsub603とで形成される、2つのpn接合604及び605を用いる例である。
【0153】
フォトダイオード101Bは、接合604及び605のうちの深い方である、NW602とPsub603との接合605のみを利用して形成する。この場合、フォトダイオード101Bは、波長900nm付近にピークを有する分光感度特性(点線)となっている。通常、Psub603の電位は、最低電位に固定され、接合604及び605のうちの浅い方である、P+601とNW602との接合604は、その両端子間をショートすることで無効化される。従って、フォトダイオード101Bの出力電流は、NW602からのシンク電流である(図6(a)の、ケース(i)101B参照)。
【0154】
一方、フォトダイオード101Aは、本来、浅い方の接合604のみを利用して形成して、波長550nm付近にピークを有する分光感度特性(破線)とするのが理想である。しかしながら、浅い方の接合604に対して前記深い方の接合605が寄与しないように、NW602をPsub603と同様の最低電位に固定すると、フォトダイオード101Aの出力電流は、フォトダイオード101Bと同様のシンク電流では取り出せない。この場合、フォトダイオード101Aの出力電流は、P+601からのソース電流を取り出すこととなる(図6(a)の、ケース(i)101A参照)。
【0155】
従って、積分器104の設計によっては、フォトダイオード101A及び101Bのそれぞれにあわせて、積分器104A及び104Bの回路構成を、互いに異なる形態とする必要が生じる場合がある。
【0156】
このような制限を避けるため、図6(b)に示す、2つのpn接合604及び605を、次のように利用することもできる。
【0157】
すなわち、フォトダイオード101Aは、前記2つのpn接合604及び605からの電流の和をシンク出力するものとする。一方、フォトダイオード101Bは、ケース(i)と同様(図6(a)の、ケース(ii)101B参照)に、接合605からのシンク電流のみを利用する(図6(a)の、ケース(ii)101A参照)。
【0158】
この場合、積分器104A及び104Bには、同一の回路構成を用いることができる。以下の詳細な説明から明らかとなるように、前記のように、光学フィルタを用いずに異なる分光特性を付与することのできる構造の受光素子101に対しては勿論、通常のCMOSプロセスに変更または追加の工程を設けて集積化可能な、比較的低コストの光学フィルタを付加した前記受光素子101に対して、あるいはまた如何なる回路構成の積分器104に対しても、前記のような配慮のもとで、光検出装置200は有効に作用する。
【0159】
ところで、図1〜図4で説明した光検出装置100の構成に対して、最も低コストな分光の演算手法を適用すること、すなわち図5の構成を採用することは、本願発明者らの知る限りにおいて、これまでに示唆も開示もなされていない。
【0160】
これは、低コストであることが常に求められる、コンシューマ向けの光検出装置において、例えば0.1Lux以下の測定を可能とする高感度の実現と、16ビットのデジタルデータを取り扱うという高分解能とを、演算処理の内蔵化に依存して実現することは相容れないものとされ、特に、浮動小数演算は、回路規模の観点から常に敬遠されてきたからである。その結果、ホスト側での演算処理、及び割り込み処理が煩雑になることを許容するか、または光学フィルタの集積化によるコスト上昇を是認するほかなかった。
【0161】
光学フィルタレス化に必要な演算処理に対して、〔実施の形態1〕で詳しく説明したように、用途及び/または仕様に応じて、光検出装置の全体を最適に構成することによってはじめて、図5に示す光検出装置200の構成が実用のものとなり、以下の如き格別の効果を得ることが可能となった。
【0162】
図6(a)に示したような分光感度特性は、いわゆる典型値であって、個々の光検出装置が備えるフォトダイオードの全てにおいて適用されるものではない。また、光検出装置の設計段階で想定する分光特性と、光検出装置を量産する際に最も安定して得られる分光特性とが、完全に一致することは稀である。さらに、元来ブロードな、Siの分光応答特性を考慮した補正を行い、視感度特性、つまり可視光に対する応答を制御する場合を考える。この場合、Siウェハの厚み方向に、より深く侵入する赤外光の分光特性が、Siウェハが含有する不純物濃度あるいは不純物偏析させるための熱処理あるいは通常の製造工程における熱処理等に依存して、大幅に変動するという問題に対処する必要がある。
【0163】
すなわち、実際には、〔実施の形態1〕で説明したような、典型値を中心に分布する相対的なばらつき誤差を補正する演算処理だけでは、このような問題に確実に対処するのは困難である。
【0164】
上記の問題を解決する手段として、図7に示すように、浮動小数演算回路108を構成することができる。なお、図7及び以下の説明は、簡単化のため、図5における片側の信号チャネル(すなわち、電流110Aまたは110Bのいずれか一方)に対して、記載されていることに注意されたい。
【0165】
図7に示す回路において、電流110Aまたは110Bのいずれか一方に対する演算自体は、〔実施の形態1〕で説明した回路と全く同様に行われる。ここで重要な点は、図7に示す回路は、光検出装置100の設計段階で、受光素子101として使用する特定の構造のフォトダイオードの典型的な分光特性自体が変動すること、すなわち、受光素子101の感度の絶対値が想定値から乖離し得ることを、予め光検出装置100の補正処理過程に取り込むことにある。
【0166】
具体的には、受光素子101の受光感度の絶対値を補正する演算を行うために、既に図3で説明した受光感度の相対値のトリミング補正回路115、積分器102の特性トリミング補正回路116に加えて、レジスタ補正部701を新たに設けている。なお、実際には、トリミング補正回路115及び116は、図5の構成に応じて受光素子101A及び101Bに応じて、受光素子101A及び101Bのそれぞれに対するトリミング補正回路115、ならびに受光素子101A及び101Bのそれぞれに対するトリミング補正回路116として併設されることに注意されたい(図示せず)。
【0167】
受光素子101のレジスタ補正部701は、トリミング用の補正係数テーブル701cを備える。また、レジスタ補正部701は、外部との通信手段117により、その制御部118の一部であるレジスタ(図示せず)に外部から書き込まれたデータに基づいて、信号701bによって補正係数テーブル701cから所望の補正係数が選択される。そして、選択された補正係数は、信号701dとして浮動小数演算回路108に供給され、受光素子101のレジスタ設定による補正値として、前記受光素子101の特性に関するトリミング補正とは別に、浮動小数演算回路108の積演算に使用される。
【0168】
ここで、上記のレジスタ設定による受光素子101の感度に関する補正は、複数(本実施の形態では、2種類)の分光特性を付与された、構造の異なる特定のフォトダイオードのそれぞれに対して、互いに独立に設定可能であることが望ましい。このため、図7には、レジスタ補正係数を選択する信号701b、及び浮動小数演算回路108で使用される補正係数を示す信号701dが、受光素子101A及び101Bに応じた並列データであることが示されている(レジスタ補正部701は2つの受光素子101A及び101Bに対応したものとして図示されている)。
【0169】
このような構成によって、外部から光検出装置100を起動する際の初期設定の一部として、受光素子101の感度の絶対値に対するキャリブレーションを実施することができる。特に、互いに構造の異なる複数のフォトダイオード毎にキャリブレーションをかけられるよう、演算処理回路103を構成し、前述した赤外域に特有の分光感度の大幅な変動を吸収し、正しく補正することが可能になる。
【0170】
このようにして、外部からのレジスタ設定によって、第2デジタル信号112において、受光素子101の感度を補正する演算を制御することができるが、その制御内容は、同一設計の全ての光検出装置100に対しては、一律の初期設定値として与えれば十分である。なぜならば、〔実施の形態1〕で説明したように、相対的な誤差の補正は、光検出装置100の出荷段階で既に、測定及び補正されているからである。
【0171】
従って、光検出装置100の製造過程においては、設計段階で、受光素子101の特性の、正しい典型値あるいは変動幅(ばらつき)の上限及び下限を把握できていなかったことによる、突発的あるいは極端な歩留りの低下のリスクを排除することができる。
【0172】
以上、図5あるいは図7の構成によれば、本実施の形態に係る光検出装置は、光‐デジタル変換回路102の精度による最小分解能を有し、かつ、電流110(電流110A及び110B)の値に対する照度の出力値の相対誤差をダイナミックレンジ全域に渡って一定レベルに維持したままで、光検出装置100の演算回路ひいては全体回路規模の増大を抑えることができる。
【0173】
さらに、各種の特性補正及びスケーリングが容易に実現できるので、最終的に光検出装置の外部では、物理的に意味のあるデジタル出力値(すなわち、照度の出力値)を、複雑な演算を行うことなく、直接もしくはビットシフト演算のみで得ることができる。
【0174】
特に、本実施の形態に係る光検出装置の構成によれば、光学フィルタレスの照度センサーにおいて問題となる、受光素子101における赤外領域の分光感度特性の変動を吸収し正しく補正して、Luxを単位とする照度値を直接的に得ることができるようになる。このことにより、〔実施の形態3〕で詳しく説明するように、割り込み出力の閾値設定に関する、光検出装置の更なる効果がもたらされる。
【0175】
次に、図5の構成、すなわち互いに異なる2つの分光感度特性を付与されたフォトダイオード101A及び101Bを用いて、図1乃至図4を参照して説明した演算処理を含め、光検出装置200が、如何にしてより高精度の照度センサーとして動作し得るのかについて説明する。
【0176】
図8(a)には、図6(a)に示した分光特性ケース(i)で、各種の異なる分光スペクトルを有する光源が一定の照度を与えるよう規格化した際に、フォトダイオード101A及び101Bから出力される電流の例を示す。
【0177】
一般的な光源として、CIE(Commission Internationale de I'Eclairage:国際照明委員会)が定める標準の光である、A、D50、D55、D65、D75、F1、及びF12を、少なくとも考慮すべきである。なお、A、D50、D55、D65、及びD75等の、相対的に赤外成分の強い各光源に対しては、色温度を考慮して、CIEで定義されない赤外領域のスペクトルを補完した、疑似的な標準の光(すなわち、常用光源の近似モデル)として考慮した。図8(a)及び(b)では、’付き、もしくは白抜きのドットで、疑似的な標準の光を表示している。
【0178】
図8(a)の横軸は、フォトダイオード101Aの出力電流(以下、Ivisと表記)と、フォトダイオード101Bの出力電流(以下、Iirと表記)との比、すなわちr(=Iir/Ivis)である。色温度の低いA光源(A’光源)は、図の右端に位置しており、赤外成分を含まない各種F光源は、左側に位置している。
【0179】
当然であるが、赤外領域(波長900nm)に感度ピークを有するフォトダイオード101Bの出力Iirは、比rの増加に伴って、単調かつ急激に増加する。
【0180】
一方、可視領域(波長550nm)に感度ピークを有するフォトダイオード101Aの出力Ivisは、赤外域の感度が低いことを反映して、rが大きい領域での増加はごく緩やかとなる。
【0181】
Iir及びIvisのいずれにおいても、各種F光源の演色性の違い(F7乃至F9参照)、ならびに3波長域発光型のF10乃至F12等スペクトル構造の違いを反映して、r=Iir/Ivisが小さくなるに伴い、出力電流も小さくなる。また、r=1の周辺には、Ivisがほとんど変化しない領域がある。
【0182】
このような、図8(a)に示すグラフの特徴を考慮すると、光源スペクトル分光特性に対する依存性を打ち消して、照度として単位:Luxの値に補正した値を出力するための演算に関して、以下に述べる知見が得られる。図8(b)に示すIvisの逆数1/Ivisが、前記演算における補正係数に比例する量となるので、同時に参照されたい。
【0183】
比r=Iir/Ivisは、光源の分光特性(赤外線成分及び可視光成分の、短波長成分の相対的な含有量)を区別するのに利用できる。rの値によって用いるべき演算式を切り替え、各領域で用いる補正式は、高々1次式で十分に表現可能である。
【0184】
つまり、Lux=α・Ivis−β・Iir=α・Ivis・(1−β/α・r)なる補正式の係数α及びβを、前記rによって区別される領域毎に切り替えればよい。
【0185】
特に、図6(a)に示すケース(i)のように、フォトダイオード101Aの分光感度ピーク(波長550nm)が、視感度特性のピーク(波長555nm)と概ね一致している場合は、r=1の周辺ではrの値に依存した補正を行わなくてもよい(例えば、0.7≦r≦1.5でα=1,β=0)。図8(b)には、上記のrによる補正係数の切り替えが分かりやすいよう、3つの領域にわけて各補正1次式を破線で例示している。
【0186】
このようにして抽出された補正式を用いた演算回路は、図7に示した演算処理回路103として、設計及び実装される。
【0187】
実際の光検出装置200の動作としては、フォトダイオード101A及び101Bの各出力電流Ivis及びIir、すなわち電流110A及び110Bが、第1デジタル信号111A及び111B、さらには浮動小数である第2デジタル信号112A及び112Bに変換され、これに対して上記rによる領域切り替えの判定が施されなければならない。
【0188】
これは、例えば、図4に示す、浮動小数乗算器402、浮動小数減算器及び判定器403、及びデータレジスタ群401を用いて、浮動小数演算回路108で実行することができる。
【0189】
このようにして、上記補正式の係数を最適に設計することにより、出力(照度値)の前記各種光源スペクトル依存性を、−20%〜+20%の範囲内に収めることができる。
【0190】
また、図6(a)のケース(ii)のような分光特性が付与された場合(複数のフォトダイオードの分光感度特性のピークがいずれも視感度特性のピークから外れている場合)には、フォトダイオード101Aの出力電流(以下、Iallと表記)と、フォトダイオード101Bの出力電流(以下、Iirと表記)の比、R=Iir/Iall(0≦R≦1)を指標として、上記ケース(i)と同様の手順で、より視感度特性に近い分光特性のIallに対する補正式を新たに抽出し、光源依存性を抑圧することができる。
【0191】
ここで、上記補正式の係数α及びβは、実際には、受光素子101としての、上記複数のフォトダイオード101A及び101Bのそれぞれに対して、図1乃至図4で説明した受光素子101の相対感度に関するトリミング補正(α1)、受光素子101が接続された光‐デジタル変換回路102に関するトリミング補正(α2)、さらに図7で説明した受光素子101の感度に関するレジスタ補正(α3)の、全てを含めて、α=α1・α2・α3、あるいはβ=β1・β2・β3のように、積演算の形で所望の補正係数を表現できる。この一連の積演算は、図4あるいは図7に示した演算処理回路103の構成によって容易に実行することができ、最後に、α・Ivis−β・Iirなる差を演算することで、第2デジタル信号112に対する演算結果である信号113が得られる。
【0192】
また、Lux=γ(α・Ivis−β・Iir)のように、上記演算結果に対するスケーリング係数γの積演算を容易に追加し得ることは、これまでの説明からも明らかであろう。
【0193】
これによって、光検出装置200を搭載する電子機器に設けられる光学窓の分光透過率に大きな波長依存性が無い場合には、平均透過率を外部から補正する演算処理を動作の初期設定時に簡単に実行できる。従って、光検出装置200が、色味の無い黒い窓材を介して外部から視認し辛くする筐体デザインの電子機器に搭載される場合も、当該筺体の外部、すなわち電子機器の周囲の実空間における照度を、光検出装置200のデジタル出力として直接的に得ることができる。
【0194】
あるいはまた、光検出装置200を搭載する電子機器に設けられる光学窓は、筺体色にあわせて色付けられる場合がある。さらに、近接照度センサーとして集積化された光検出装置200においては、近接センサーの発光素子として、波長830nm乃至波長950nm程度にピーク出力を持つ、いわゆる近赤外LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)が用いられる場合が多い。
【0195】
この結果、近赤外の波長域では、透過率が高く(例えば、透過率が80%乃至95%程度)、可視光の波長域においては、筺体色に合わせた色味を付加するために、分光透過率が可視光の波長域で急峻に変化するような窓材が使用され得る。
【0196】
この場合にも、Lux=γ(α・Ivis−β・Iir)の係数α,β,γのうち、可視域で相対的に高感度なフォトダイオード(図5の例では、フォトダイオード101A)に対する、補正係数α=α1・α2・α3の中でレジスタ設定により選択される補正係数α3を、必要であればさらにβあるいはγについても独立にレジスタ設定可能な補正係数を最適化することで、当該筺体の外部、すなわち電子機器の周囲の実空間における照度を、光検出装置200のデジタル出力として直接的に得られるよう調整することができる。
【0197】
以上、図5〜図8の構成によれば、本実施の形態に係る光検出装置は、光‐デジタル変換回路102の精度による最小分解能を有し、かつ、電流110の値に対する照度の出力値の相対誤差をダイナミックレンジ全域に渡って一定レベルに維持したままで、光検出装置100の演算回路ひいては全体回路規模の増大を抑えることができる。
【0198】
さらに、各種の特性補正及びスケーリングが容易に実現できるので、最終的に光検出装置の外部では、物理的に意味のあるデジタル出力値(すなわち、照度の出力値)を、複雑な演算を行うことなく、もしくはビットシフト演算のみで得ることができる。
【0199】
特に、受光素子として異なる分光感度特性を付与された複数のフォトダイオードを用いて演算処理回路を最適化することにより、光学フィルタレスの安価なフォトダイオードをベースに、照度センサーとして、高感度かつ光源依存性を抑えた光検出装置を、低コストで実現することができた。この結果、本実施の形態に係る光検出装置を搭載する電子機器の配色デザインの自由度を増しつつ、光検出装置の存在が視認され難く極めて満足度の高い電子機器筐体デザインを実現することが可能になった。
【0200】
〔実施の形態3〕
周囲の明るさに応じてディスプレイの輝度をデジタル制御するため、人の視感度特性に合わせて周囲の明るさを検出する照度センサーには、測定結果が所望の照度レベル範囲内にあるか否かを判定して、この判定結果をホストシステムに通知(割り込み出力)する機能が望まれる。
【0201】
一方で、直接照度レベルで前記判定を行うのではなく、前回測定と最新測定との差分(カウント値の変化)が所定の閾値を超えるか否かで割り込みを発生させる、または、直前の測定カウント値に対して所定のカウントを付加して、次回測定の閾値を設定するデジタル出力型の照度センサーも、市場には数多く存在する。
【0202】
いずれにせよ、デジタル出力型の照度センサーにおいては、一旦得られた測定結果に対して、必要に応じて、照度の出力値のレンジ及び/または感度のレジスタ設定を更新するとともに、次回測定で、割り込み出力の要否判定に使用すべき照度範囲に対応する閾値(上限閾値及び下限閾値の2つ)を、その都度設定する必要がある。
【0203】
一方で、〔実施の形態1〕及び〔実施の形態2〕で説明した各光検出装置(照度センサー)のように、デジタル出力値が、直接もしくはビットシフト演算のみで照度値として得られる場合には、上記のような動作継続時のホストシステム側の処理負担を軽減することができる。しかしながら、光‐デジタル変換回路102のビット幅が、16ビット等の高分解能である場合は、割り込み出力の要否判定の閾値のそれぞれ(上限照度閾値及び下限照度閾値、すなわち第1の閾値)を、光検出装置の外部から、同じく16ビットの幅でレジスタ設定する場合が多い。
【0204】
さらに、照度センサーと近接センサーとを集積化し、同時またはシーケンシャル動作させる場合は、近接センサーとしての動作、すなわち、所望の距離で反射物が非近接から近接状態、あるいは近接から非近接状態に遷移したと判定する、のに必要となる判定閾値のそれぞれ(上限閾値及び下限閾値、これらを以下では第2の閾値という)を設定することも、併せて必要になるので、光検出装置(近接照度センサー)が内部に備えるべきレジスタサイズが増大する。
【0205】
なお、近接センサーとは、〔背景技術〕で説明した通り、光検出装置自らの発光が反射物から再び入射する光の強度レベルから、該反射物の近接または非近接の状態判定を行うものであり、ここで説明した光検出装置(照度センサー)の構成のほとんど流用して実現することができる。
【0206】
より具体的には、近接センサーとしてさらに必要となる構成要素として、少なくとも光を出射する発光素子及びその駆動手段がある。また、他にも、近接センサーとしての発光時間あるいは反射光の強度を測定する積分時間を定めるタイミング制御、また、上記第2の閾値の保持及び設定手段、ならびに判定回路等が必要である。
【0207】
但し、これらの追加構成の詳細は、ここまでに照度センサーに関して説明した補正演算のための各手段に修正を加えることで実現でき、当業者にとっては設計事項に過ぎないため、これ以上の説明は割愛する。
【0208】
さて、ここからは、ここまで説明した各光検出装置による、デジタル出力型の照度センサーもしくは近接照度センサーが、直接的に(すなわち、多くともビットシフト演算のみで得られる)照度値を出力可能であることを利用して、該光検出装置を搭載するホストシステム側に従来必要であった、煩雑なレジスタ設定の更新手順を大幅に簡素化する手法について、以下に開示する。
【0209】
まず、図9に例を示すように、{10Lux,100Lux,1000Lux}という、3値(各値)の照度が記載された照度閾値テーブル1(照度テーブル)から、1〜30000Luxまでの範囲において、1桁あたり2値、合計10値の照度が記載された照度閾値テーブル8まで、3ビットで選択可能な複数(ここでは8つ)の照度閾値テーブルの集合を、ROM(Read-Only Memory:読み出し専用メモリ)として、光検出装置の内部に集積化する。
【0210】
なお、N個の照度を要素として持つテーブルの場合には、N+1個の照度レンジが定義される。例えば、3つの要素を持つ照度閾値テーブル1は、これら各要素の一部または全部を用いて{10Lux未満,10Lux以上100Lux未満,100Lux以上1000Lux未満,1000Lux以上}の4つの照度レンジを定義することができる。
【0211】
図9に示す照度閾値テーブル1〜8の各々は、外部からのレジスタ設定によって、いずれかの照度閾値テーブルが選択(指定)され、実際の照度センサー動作時に割り込み出力を発生する基準として用いられる。
【0212】
具体的には、前回照度を測定した結果が、ある照度レンジに存在するとして、次の測定結果が、別の照度レンジに遷移していれば、光検出装置は、ホストシステムに対して、割り込み出力を発生する。
【0213】
当然、図10に示す光検出装置300のように、外部との通信に用いられるインターフェイスである通信手段117とは別に、光検出装置は、割り込み専用の出力手段(第1出力手段)1001を備えていることが必要である。
【0214】
また、光検出装置300は、直前の照度測定結果がどの照度レンジに該当するかの判定手段、及びそれを保持し新たな測定結果が属する照度レンジと異なるか否かの判定手段も必要である。
【0215】
なお、照度閾値テーブルの集合、ならびに必要な上記の各判定手段は、図4に示した演算処理回路103に修正を加えて実現できることは、当業者には容易であるため、詳細な説明は割愛する。
【0216】
このような構成により、ホストシステムとして割り込み出力が必要な照度レベルに合致する照度閾値テーブルを、図9に示す各テーブルの中から、通信手段117を用いて選択及び設定する。
【0217】
一旦照度センサーとしての動作を開始した後は、割り込み専用の出力手段1001からの割り込み発生後、ホストは照度データを通信手段117から読み出してディスプレイの輝度調整を行い、割り込み専用の出力手段1001の割り込み出力をクリアするだけで、ディスプレイ輝度の調整動作を継続することができる。
【0218】
このことは、特に、各実施の形態に係る光検出装置の構成を、近接照度センサーとして集積化し、割り込み出力手段を近接センサーと照度センサーとで共用する場合に、ホストシステム側での割り込み処理が劇的に簡素化され、割り込み信号の検出ミスまたは割り込み処理の遅延によって発生しがちな、電子機器の種々の不安定な挙動あるいは不具合を、確実に回避することが可能であることを意味する。
【0219】
ところで、先述の通り、電子機器では、近接センサーと照度センサーとで共用する機能ブロックを可能な限り多く設計することがコスト削減のため必要となるので、近接センサーと照度センサーとは、時分割でシーケンシャルに動作させることが望ましい。
【0220】
ここで、照度センサーの積分時間は、商用電源周波数である50Hzまたは60Hzのノイズをキャンセルするために、一般的に、これらの差周波の逆数である100msの、整数倍とされる。すなわち、電源ノイズ耐性を犠牲にしない限りは最短の積分時間は100ms以上となる。一方で、近接センサーとしては、少なくとも人体の動きに追随する必要があるため、1ms乃至最大でも200ms以内程度の応答速度が求められるのが一般的である。
【0221】
上記のように、光検出装置300を照度センサーとして用いる場合、その割り込み処理が大きく軽減されることは既に述べた通りであるが、その場合であってもなお、近接照度センサーとして交互に動作させ、照度測定ならびに近接または非近接の判定をそれぞれ1回ずつ行うための動作サイクルは、少なくとも100ms以上必要になる。従って、交互動作の近接照度センサーにおいては、照度センサー及び近接センサーそれぞれに対して迅速な割り込み処理を行うことが特に重要である。
【0222】
ここで、図10における外部との通信手段117の他に、割り込みを出力する手段が、割り込み専用の出力手段1001の1つのみである場合、近接及び照度の各センサー機能が論理和(いずれかの状態変化)で割り込みを発生する。ホストシステム側では、いずれのセンサーが割り込み出力を行っているのかを示す情報を読み出すか、両センサーの出力データを全て読み出して、具体的な割り込みの内容を解釈する必要がある。この一連の割り込み処理の間に、新たな割り込みが発生すると、検出ミス及び大幅な処理遅延の発生確率が高まる。その結果、近接センサーに求められる約100ms以内程度の応答時間を安定して満足することは困難になる。
【0223】
この問題を解決するため、図10に示す光検出装置300は、割り込み専用の出力手段1001に加えて、第2出力手段1002が設けられている。
【0224】
これにより、割り込み専用の出力手段1001を照度センサーの割り込み出力専用とし、第2出力手段1002を近接センサーの出力に使い分けることができる。従って、第2出力手段1002の出力には、近接または非近接の判定結果か、もしくはそれに基づく割り込み出力(すなわち、近接から非近接への、または非近接から近接への状態遷移タイミング)のいずれかを出力することができる。
【0225】
近接センサーの動作の結果、演算処理回路103で、近接センサー用の第2の閾値と反射光レベルとの減算結果から上記判定結果、あるいはそれに基づく割り込み出力1003が通信手段117の制御部118に送られ、前記第2出力手段1002が駆動される。
【0226】
なお、前記の近接照度センサーとしての動作サイクル短縮の観点からは、前記の構成の場合において、前記第2出力手段1002からは、近接または非近接の判定結果そのものを、2値信号におけるLowレベルまたはHighレベルに対応させて出力し、これにより直接ディスプレイのON/OFFを駆動する方が、より望ましい。
【0227】
その理由は、各実施の形態に係る光検出装置を近接照度センサーとしてシーケンシャル動作させる場合に、ホストシステム側で必要な割り込み処理の対象は先述の照度閾値テーブルで大幅に簡素化された照度センサーのみとなり、近接センサーの応答時間に余分な遅延が加わることなく継続動作のサイクルを安定化することができるからである。
【0228】
近接センサーは動く物体を測定対象とするものであるため、上記の効果は近接センサーの検知距離を安定化することと等価である。従って、周囲の明るさが変化する中で物体が近接したり離れたりする様々な動作状況下で、煩雑な割り込み処理による遅延時間が変動し、見かけ上近接センサーの検知距離が変動するなどの、不安定かつ好ましくない挙動を確実に回避することができる。
【0229】
以上、図9乃至図10を参照して説明した光検出装置300の構成によれば、これまでに説明した照度センサーとしての諸々の効果を維持しつつ、光検出装置300を搭載する電子機器の側で必要となる一連の割り込み処理の負荷を大幅に軽減し、特に近接照度センサーとして継続動作を行う際の動作サイクルを安定化することにより、近接センサーとしての応答速度を確定し割り込み処理に起因する不安定な挙動を解消することができた。
【0230】
各実施の形態に係る浮動小数変換回路107は、第1デジタル信号を、浮動小数点データへと変換することで、第2デジタル信号への圧縮を行っているが、これに限定されない。すなわち、第1デジタル信号は、浮動小数点データ以外のデータへと変換されることで、第2デジタル信号へと圧縮されてもよい。
【0231】
さらに、以上に説明した光検出装置のいずれかを、携帯電話、スマートフォン、デジタルカメラ、また、タブレット型あるいは据え置き型のコンピュータ等の電子機器に搭載することにより、電子機器は、備えられた光検出装置と同様の効果を奏する。
【0232】
なお、例えば、各実装形態に係る光検出装置に関して、各光検出装置が備える受光素子の分光特性の補正以外の、第2デジタル信号にて補正すべき重要な特性(筺体窓の色または透過率)は、ユーザによって実測される必要はなく、カタログあるいはデータシートに記載された、窓メーカから提供される測定値を用いた場合であっても成立すべきである。
【0233】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0234】
本発明は、デジタル出力型の光検出装置、及び光検出装置を搭載した電子機器に利用することができる。この電子機器としては、携帯電話、スマートフォン、デジタルカメラ、また、タブレット型あるいは据え置き型のコンピュータ等が挙げられる。
【符号の説明】
【0235】
100、200、及び300 光検出装置
1001 割り込み専用の出力手段(第1出力手段)
1002 第2出力手段
101 受光素子
101A、及び101B フォトダイオード(受光素子)
102、102A、及び102B 光−デジタル変換回路(第1デジタル信号出力手段)
107 浮動小数変換回路(第2デジタル信号出力手段)
108 浮動小数演算回路(演算手段)
109 浮動小数‐整数型データ変換回路(第3デジタル信号出力手段)
110 電流
111、111A、及び111B 第1デジタル信号
112、112A、及び112B 第2デジタル信号
114 第3デジタル信号
115 トリミング補正回路(第1トリミング補正回路)
116 トリミング補正回路(第2トリミング補正回路)
117 通信手段(外部との通信手段)
118 制御部(記憶部)
701 レジスタ補正部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光素子と、
前記受光素子が受光して得られた信号を、デジタル信号に変換して、第1デジタル信号として出力する第1デジタル信号出力手段と、
前記第1デジタル信号を、前記第1デジタル信号よりビット幅が小さくなる浮動小数点データに圧縮して、第2デジタル信号として出力する第2デジタル信号出力手段と、
前記第2デジタル信号の、理想値に対する相対誤差を補正するための演算を行う演算手段と、
前記演算の結果を整数型のデジタルデータに変換して、第3デジタル信号として出力する第3デジタル信号出力手段と、を備えることを特徴とする光検出装置。
【請求項2】
前記第3デジタル信号のビット幅は、前記第2デジタル信号のビット幅以上、かつ、前記第1デジタル信号のビット幅以下であることを特徴とする請求項1に記載の光検出装置。
【請求項3】
前記第3デジタル信号の値は、前記受光素子が受光した光の照度を示す値か、または、シフト演算により、前記受光素子が受光した光の照度を示す値が得られる値であることを特徴とする請求項1または2に記載の光検出装置。
【請求項4】
前記受光素子は、互いに異なる分光特性を有する、複数のフォトダイオードであり、
前記第1デジタル信号出力手段は、前記複数のフォトダイオードの個数と同じ数設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光検出装置。
【請求項5】
前記演算手段は、前記演算として、前記受光素子の分光特性のばらつきに起因して発生する、前記第2デジタル信号の相対誤差を補正するための演算を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光検出装置。
【請求項6】
ヒューズトリミングにより、前記受光素子の分光特性のばらつきに応じた複数の補正係数から、所望の前記補正係数を選択するトリミング補正回路をさらに備え、
前記演算手段は、前記演算として、前記第2デジタル信号と、前記選択された補正係数との積を演算することを特徴とする請求項5に記載の光検出装置。
【請求項7】
前記演算手段は、前記演算として、前記第1デジタル信号出力手段の特性のばらつきに起因して発生する、前記第2デジタル信号の相対誤差を補正するための演算を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光検出装置。
【請求項8】
ヒューズトリミングにより、前記第1デジタル信号出力手段の特性のばらつきに応じた複数の補正係数から、所望の前記補正係数を選択するトリミング補正回路をさらに備え、
前記演算手段は、前記演算として、前記第2デジタル信号と、前記選択された補正係数との積を演算することを特徴とする請求項7に記載の光検出装置。
【請求項9】
ヒューズトリミングにより、前記受光素子の分光特性のばらつきに応じて決定された複数の第1補正係数から、所望の前記第1補正係数を選択する第1トリミング補正回路と、
ヒューズトリミングにより、前記第1デジタル信号出力手段の特性のばらつきに応じて決定された複数の第2補正係数から、所望の前記第2補正係数を選択する第2トリミング補正回路とを備え、
前記演算手段は、前記演算として、
前記受光素子の分光特性のばらつきに起因して発生する、前記第2デジタル信号の相対誤差を補正するための演算を行うと共に、前記第1デジタル信号出力手段の特性のばらつきに起因して発生する、前記第2デジタル信号の相対誤差を補正するための演算を行い、
前記第2デジタル信号と、前記選択された第1補正係数と、前記選択された第2補正係数との積を演算し、
前記第2デジタル信号に対する積の演算の前に予め、前記第1補正係数と前記第2補正係数との積が演算されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光検出装置。
【請求項10】
外部との通信を行う通信手段と、
前記通信手段を介して受信したデジタルデータを保持する記憶部とを備え、
前記演算手段は、前記演算として、前記受光素子の分光特性のばらつきに起因して発生する、前記第2デジタル信号の相対誤差を補正するために、前記第2デジタル信号と、前記受光素子の分光特性のばらつきに応じて決定された補正係数との積を演算し、
前記記憶部に保持されたデジタルデータにより、複数の前記補正係数から、所望の前記補正係数を選択するレジスタ補正部を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光検出装置。
【請求項11】
外部との通信を行う通信手段と、
前記通信手段を介して受信したデジタルデータを保持する記憶部とを備え、
前記演算手段は、複数の前記フォトダイオードのそれぞれについて、前記演算として、前記フォトダイオードの分光特性のばらつきに起因して発生する、前記第2デジタル信号の相対誤差を補正するために、前記第2デジタル信号と、前記フォトダイオードの分光特性のばらつきに応じて決定された補正係数との積を演算し、
前記記憶部に保持されたデジタルデータにより、複数の前記フォトダイオードのそれぞれについて、複数の前記補正係数から、所望の前記補正係数を選択するレジスタ補正部を備えることを特徴とする請求項4に記載の光検出装置。
【請求項12】
前記第3デジタル信号を、照度を単位として設定された第1の閾値と比較した結果に基づいて、前記受光素子が受光した光の照度が所望の値であるか否かを判定し、
前記判定の結果を、外部に出力することが可能であることを特徴とする請求項3に記載の光検出装置。
【請求項13】
前記第1の閾値は、外部から設定された、複数の照度を示す値であることを特徴とする請求項12に記載の光検出装置。
【請求項14】
複数の照度テーブルを備え、
前記複数の照度テーブルのそれぞれは、複数の照度を示す値を、要素として有しており、
前記第1の閾値は、前記複数の照度テーブルのうち、外部から指定された照度テーブルの要素を構成する各値の一部または全部であることを特徴とする請求項12に記載の光検出装置。
【請求項15】
発光素子をさらに備え、
前記発光素子から出射された光が、外部の反射物で反射されて得られた光を、前記受光素子が受光することを特徴とする請求項12に記載の光検出装置。
【請求項16】
前記判定の結果を、外部から設定された第2の閾値と比較した結果に基づいて、前記反射物までの距離を検出することが可能であることを特徴とする請求項15に記載の光検出装置。
【請求項17】
前記判定の結果が変化した場合に該判定の結果を外部に出力すると共に、前記反射物までの距離を検出した結果が変化した場合に該検出した結果を外部に出力する出力手段を備えることを特徴とする請求項16に記載の光検出装置。
【請求項18】
前記判定の結果を、外部に出力する第1出力手段と、
前記反射物までの距離を検出した結果を、外部に出力する第2出力手段とを備えることを特徴とする請求項16に記載の光検出装置。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の光検出装置を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項20】
請求項11に記載の光検出装置と、
前記光検出装置の筐体とを備え、
前記筐体は、可視光および近赤外光の少なくとも一方が入射したときに分光透過率が変化する窓を備え、
前記光検出装置の演算手段は、前記演算として、前記窓の分光透過率のばらつきに起因して発生する、前記第2デジタル信号の相対誤差を補正するために、前記第2デジタル信号と、前記窓の分光透過率のばらつきに応じて決定された補正係数との積を演算し、
前記光検出装置のレジスタ補正部は、前記光検出装置の記憶部に保持されたデジタルデータにより、複数の前記補正係数から、所望の前記補正係数を選択することを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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