光源装置、およびプロジェクタ
【課題】マイクロ波励起ランプのエネルギー効率を高め、かつ輝度を容易に制御することができる、光源装置を提供する。
【解決手段】固体マイクロ波電源101から出力されるマイクロ波を2系統のマイクロ波伝送線路(同軸ケーブル110A、110B)によりランプ部10に伝送し、ランプ部10のアンテナ21、22により封入空間(発光領域)14にマイクロ波を給電する。この場合に、一方のマイクロ波伝送線路(同軸ケーブル110B)にマイクロ波の位相を制御する位相制御回路121を設ける。この位相制御回路121により封入空間14に給電されるマイクロ波の位相差を調整し、封入空間14に中心部においてマイクロ波の定在波を立てマイクロ波が強め合う条件とする。すなわち、発光部においてマイクロ波による電界の振幅が腹になるようにする。
【解決手段】固体マイクロ波電源101から出力されるマイクロ波を2系統のマイクロ波伝送線路(同軸ケーブル110A、110B)によりランプ部10に伝送し、ランプ部10のアンテナ21、22により封入空間(発光領域)14にマイクロ波を給電する。この場合に、一方のマイクロ波伝送線路(同軸ケーブル110B)にマイクロ波の位相を制御する位相制御回路121を設ける。この位相制御回路121により封入空間14に給電されるマイクロ波の位相差を調整し、封入空間14に中心部においてマイクロ波の定在波を立てマイクロ波が強め合う条件とする。すなわち、発光部においてマイクロ波による電界の振幅が腹になるようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波励起ランプを使用した光源装置に関し、特にマイクロ波励起ランプのエネルギー効率を高めると共に、発光輝度を容易に制御することができる、光源装置、およびプロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波励起ランプは従来の白熱灯や高圧水銀ランプに代表される放電灯と異なりランプ内部に放電用の電極を持たないため、フィラメントや電極の消耗や、それに伴うガラスの白濁等のランプ劣化要因を持たないという特徴を持つ。また、内部ガスの選択肢が広がり、必ずしも水銀を使用する必要がないので不必要な紫外線を放出せずに済み、液晶プロジェクタ向けの長寿命光源として有力である。
【0003】
このようなマイクロ波励起の光源装置として、従来技術の無電極放電灯装置がある(特許文献1を参照)。この特許文献1の放電灯においては、放電容器を溶融破壊しないため、電灯内部に、アンテナ部材の一部が突出するように設けられており、当該アンテナからマイクロ波を与えることで、放電容器を溶融破壊することなく、放電容器内のガスを励起させて発光させる技術が示されている。
【0004】
また、従来技術の無電極ランプアプリェータにエネルギーを結合するための装置がある(特許文献2を参照)。この特許文献2の無電極電灯においては、両側から光源にマイクロ波エネルギーを供給する構成と、伝送路の長さを予め決めて両側から与えるマイクロ波エネルギーの位相差が180度なるようにして、パワーを高める構成を有している。
【特許文献1】特開2007−115534号公報
【特許文献2】特開平7−307105号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の従来技術では、片側のアンテナからマイクロ波を給電する構成であり、マイクロ波の位相を制御して、発光輝度を制御することはできない。
【0006】
また、特許文献2の従来技術においても、伝送路の長さが固定的に定められているため、例えば、位相差を調整して、発光輝度を制御することはできない。
【0007】
このように、従来技術のマイクロ波励の無電極電灯においては、マイクロ波の位相を制御して、発光輝度を制御することはできないという問題があった。
【0008】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、マイクロ波励起ランプへと給電されるマイクロ波の位相を制御することで発光の際のエネルギー効率を高めるとともに、発光輝度を容易に制御することができる、光源装置、およびプロジェクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題を解決するために、本発明は、マイクロ波を出力するマイクロ波電源と、前記マイクロ波の照射を受けて発光する発光物質が封入された発光容器内に一端が離間して挿入された一対のアンテナと、前記アンテナの他端にそれぞれ接続された一対のマイクロ波伝送線路と、前記マイクロ波伝送線路のいずれか一方の側に設けられ、前記アンテナから照射されるマイクロ波の位相を制御する位相制御部と、を備えたことを特徴とする光源装置である。
上記構成からなる本発明の光源装置では、マイクロ波電源から出力されるマイクロ波を2系統のマイクロ波伝送線路により伝送し、発光物質が封入された発光容器の両端側から、マイクロ波を給電する。この場合に、いずれか一方のマイクロ波伝送線路にマイクロ波の位相を制御する位相制御部を設ける。この位相制御部により発光部に給電されるマイクロ波の位相差を調整し、発光部においてマイクロ波の定在波を立てマイクロ波が強め合う条件とする。すなわち、発光部の中心部においてマイクロ波の電界の振幅が腹になるようにする。
これにより、マイクロ波励起ランプを使用する光源装置において、発光の際のエネルギー効率を高めるとともに、発光輝度を容易に制御することができる。
【0010】
また、本発明の光源装置において、前記アンテナと前記マイクロ波伝送線路の接続点間の距離が、前記マイクロ波の波長の1/2の奇数倍であることを特徴とする。
上記構成からなる本発明の光源装置では、2つのアンテナの全長(封入空間におけるアンテナの先端間の一定の間隔を含めた長さ)を、マイクロ波の波長の1/2の奇数倍にする。
これにより、2つのアンテナに給電されるマイクロ波の位相差がπの場合において、封入空間(発光領域)においてマイクロの定在波を立て、封入空間の中心部においてマイクロ波が強め合う条件とすることができる。すなわち、封入空間内の中心部においてマイクロ波の電界の振幅が腹になるようにすることができる。
【0011】
また、本発明の光源装置において、前記一対のマイクロ波伝送線路の少なくとも一方に設けられ、前記発光容器内の一端からの反射波を検出する反射波モニタと、前記一対のマイクロ波伝送線路の少なくとも一方に設けられ、前記反射波モニタが検出する反射波に基づいて、前記アンテナからの前記マイクロ波の照射強度が最大となるように前記マイクロ波伝送線路の特性インピーダンスと、当該マイクロ波伝送線路から前記アンテナへの入力インピーダンスの整合を行うマッチング回路と、を備えたことを特徴とする。
上記構成からなる本発明の光源装置では、マイクロ波伝送線路の少なくとも一方に、反射波を検出する反射波モニタと、インピーダンス整合を行うマッチング回路とを設け、マイクロ波伝送線路において反射波を検出し、この反射波を低減するようにマッチング回路にインピーダンス整合を行わせる。
これにより、マイクロ波伝送線路における反射を低減し、反射により伝送損失を低減できる。このため、光源装置の全体としてのエネルギー効率を上げることができる。
【0012】
また、本発明の光源装置において、前記マイクロ波電源は、2つ存在し、前記一対のマイクロ波伝送線路が、それぞれのマイクロ波電源に接続されることを特徴とする。
上記構成からなる本発明の光源装置では、マイクロ波電源を2つ設け、2系統のマイクロ波伝送線路のそれぞれに対し、対応する各マイクロ波電源からマイクロ波を給電する。
これにより、各マイクロ波電源のマイクロ波出力電力を小さくすることができる。このため、マイクロ波電源内の増幅器で使用するパワー半導体素子に電流容量の小さい安価なものを使用できる。また調光する場合に、パワー半導体素子を効率の高い動作点で使用でき、1つの大容量のパワー半導体素子を使用する場合に比べて効率的である。また、例えば、マイクロ波電源からのマイクロ波出力電力を半分にする場合は、片方の系統のマイクロ波電源を休止させて、1つのマイクロ波電源のみを使うことができる。このため、同じマイクロ波出力電力を得るために使用する消費電力が少なくて済み、エネルギー効率を高めることができる。
【0013】
また、本発明の光源装置において、前記アンテナと前記マイクロ波伝送線路の接続点間に接続された位相差検出部を有し、該位相差検出部が検出する位相差に基づいて、前記アンテナからの前記マイクロ波の照射強度が最大となるように前記位相制御部で位相制御を行うことを特徴とする。
上記構成からなる本発明の光源装置では、マイクロ波の位相差を検出し、この検出信号により位相制御部における位相シフト量を制御する。
これにより、給電されるマイクロ波の位相差を最適な値に調整することができる。
【0014】
また、本発明の光源装置は、前記位相制御部は、前記アンテナと前記マイクロ波伝送線路の接続点間の位相差が±πの自然数倍であるように位相を制御することを特徴とする。
上記構成からなる本発明の光源装置では、位相制御部により、2つのマイクロ波伝送線路が伝送するマイクロ波の位相差が発光部において±πの自然数倍になるように制御する。これにより、2つのアンテナの全長(封入空間におけるアンテナの先端間の一定の間隔を含めた長さ)をマイクロ波の波長の1/2の奇数倍にした場合に、封入空間(発光領域)においてマイクロの定在波を立て、封入空間の中心部においてマイクロ波が強め合うことができる。
【0015】
また、本発明は、光源装置と、前記光源装置から射出された光束を、入力される画像情報に応じて変調し光学像を形成する光変調部と、前記光変調部により形成された光学像を投写する投写部と、を備えるプロジェクであって、前記光源装置は、マイクロ波を出力するマイクロ波電源と、前記マイクロ波の照射を受けて発光する発光物質が封入された発光容器内に一端が離間して挿入された一対のアンテナと、前記アンテナの他端にそれぞれ接続された一対のマイクロ波伝送線路と、前記マイクロ波伝送線路のいずれか一方の側に設けられ、前記アンテナから照射されるマイクロ波の位相を制御する位相制御部と、を備えたことを特徴とするプロジェクタである。
上記構成からなる本発明のプロジェクタでは、本発明による光源装置を備えており、これにより、エネルギー効率の高い光源装置を搭載したプロジェクタを提供することができる。したがって、旧来の光源装置を有するプロジェクタに比べ、プロジェクタの消費電力を低減させることができると共に、その発光輝度の調整を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0017】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る光源装置の全体構成を示すブロック図である。図1に示すように、本発明の光源装置は、マイクロ波励起ランプ部10と、固体マイクロ波電源101と、位相制御回路121を備えている。なお、一般に、マイクロ波帯としての慣用的周波数は、3GHz〜30GHzをいうが、以下の説明では、UHF帯からSHF帯に相当する300MHz〜30GHz帯と定義する。また、以下の説明では「マイクロ波励起ランプ部」を単に「ランプ部」ともいう。
【0018】
固体マイクロ波電源101は、固体高周波発振器としての弾性表面波(Su r f a c e Ac ou s ti c Wa v e:SAW)発振器102と、増幅器103とを有して構成される。ダイヤモンドSAW発振器102から出力されたマイクロ波の高周波信号は、増幅器103で増幅された後に、分配器104に向けて出力される。なお、固体マイクロ波電源101は、ダイヤモンドSAW発振器102を用いるものに限られず、位相を制御できる固体発振源でも良い。
【0019】
固体マイクロ波電源101から出力されるマイクロ波は分配器104を用いて2系統に分けられる。この場合、マイクロ波電源内の増幅器103の増幅率は入力パワーが大きいほど高いので、分配器104で分けた後に増幅する場合に比べ電力使用効率を高くすることができる。
【0020】
分配器104からランプ部10までのマイクロ波伝送線路には同軸ケーブル110A、110Bが使用される。この際、マイクロ波伝送線路としては同軸ケーブルに限られず、ストリップ線路や、マイクロストリップ線路、導波管などさまざまな伝送線路を用いることができる。
【0021】
ランプ部10は、非導電性材料で形成される球形状の膨出部13と、この膨出部13から外側に対向するように延出される一対の細管部11、12を有する透明な発光容器で構成されている。この発光容器は、石英ガラス、サファイアガラス、パイレックス(登録商標)等から形成される。また、膨出部13には、マイクロ波により発光する発光物質を充填した封入空間14(発光領域)が形成されている。封入空間14の内径は、例えば、1mm〜2mm程度である。
【0022】
細管部11、12の内部それぞれには、棒状の内部導電体がアンテナ21、22として封入されている。このアンテナ21に同軸ケーブル110Aの中心線(中心導体)が接続され、アンテナ22に同軸ケーブル110Bの中心線が接続される。なお、同軸ケーブル110A、110Bの中心線を直接アンテナ21、22に接続せずに、例えば、細管部11、12の長手方向の範囲に巻回されたコイルを通して、マイクロ波をアンテナ21、22に給電するようにしてもよい。
【0023】
そして、図2に示すように、マイクロ波の波長をλとした場合に、ランプ部10のアンテナ21、22とギャップ部を含む長さL(L=a+g+a)を「λ/2」の奇数倍とする。この長さの規定と、マイクロ波の位相制御により、ギャップ中心部が腹となるような定在波を起こすことができ、発光効率が良くなる。(なお、ランプ部10の詳細については後述する。)
【0024】
また、片側の給電ラインとなる同軸ケーブル110Bには位相制御回路(位相シフター)121が挿入される。この位相制御回路121により、ランプ部10の片側のマイクロ波の位相を制御することで、ランプ部10の両端に給電されるマイクロ波の位相差を調整し、封入空間14の中心部において腹となるような定在波を起こすことができる。
【0025】
図8は、位相制御回路(位相シフター)の構成例を示す図である。図8に示す例は、機械的な構成の位相シフターの例を示している。
【0026】
図8(A)は、同軸ケーブル等で構成された位相シフターであり、A側の伝送路の外部導体171の外表面が、B側の伝送路の外部導体173の内表面と接触するようにして、矢印a方向に挿入または引き抜き可能に構成されている。また、A側の伝送路の中心導体172の外表面が、B側の伝送路の中心導体174に設けた円筒部174Aの内表面と接触するようにして、矢印a方向に挿入または引き抜き可能に構成されている。このような構成により、機械的に伝送路長を変化させ、位相シフターを構成することができる。
【0027】
また、図8(B)は伝送路の長さが異なる複数の同軸ケーブル(または導波管)181、182、183をスイッチ184、185により選択できる構成にしたものである。このように、スイッチ184、185により伝送路長を切り替えることにより、位相シフターを構成することができる。なお、スイッチ184、185はトランジスタ等の半導体スイッチにより構成することができる。
【0028】
また、図9は、電気的な構成の位相シフターの例を示す図である。図9(A)に示す例は−3dB減衰した90度位相差の信号を出力するハイブリッド型の位相シフターを示している。
【0029】
図9(A)に示す位相シフターにおいては、入力ポート1(In)に入力した信号は、ポート2(Out)と分岐ライン(ポート3、4)に等分配されて入力信号に対して−3dB減衰され、ポート2(Out)と分岐ライン(ポート3、4)の間の位相差は90度となる。
【0030】
例えば、電力分配比を決めるためのインピーダンスをZp=50Ω、Zs=35Ωとし、分岐ライン(ポート3、4)を開放、短絡するとポート2(Out)では±90度の位相変化が生じることになる。この分岐ライン(ポート3、4)に可変リアクタンス素子VR1、VR2を接続することにより、所望の角度で位相を調整できる位相シフターを構成できる。
【0031】
また、図9(B)に示す例は、電圧制御型の位相シフターの構成例を示す図であり、SKYWORKS(登録商標)社から市販されている位相シフターである。図9(B)に示す位相シフターは、相互誘導される2つのインダクタンスL1、L2と、各インダクタンスL1、L2に直列に接続されるキャパシタC1、C2、C3、C4と、キャパシタC2、C4とGNDとの間に接続されるバラクタダイオードD1、D2とで構成される。このバラクタダイオードD1、D2のカソード側に抵抗器Rを介してコントロール電圧(0〜12V)を印加することにより、位相シフターが構成される。この位相シフターでは、700MHz〜1100MHzの周波数帯において、約100度程度の位相シフトが実現できるように構成されている。
【0032】
次に、前述したランプ部10の詳細について説明する。前述したように、ランプ部10の発光容器は石英ガラスや、サファイアガラスや、パイレックス(登録商標)などの可視光の透過率の高い材料を使って構成する。ランプ部10の細管部11、12にはマイクロ波を集中させるための2本のアンテナ21、22が備えられている。この2本のアンテナ21、22は、封入空間14の中心部(発光中心領域15)に対して対称に配置されている。
【0033】
アンテナ21、22は封入空間14に侵入してもしなくても構わない。アンテナ21、22の材質は導体とし、特に、熱膨張係数が小さく耐熱性が高い材料、具体的にはタングステン合金やステンレス合金等が適している。途中、石英ガラスとの熱膨張差を打ち消すために、一部分が箔になっていても良い。
【0034】
封入空間14中のガスは、点灯中の水銀蒸気圧が1〜200気圧程度(超高圧水銀ランプ程度)になるように水銀を封じこめたものか、キセノンガスにヨウ化ナトリウムやヨウ化スカンジウムを用いたものを用いても良い。
【0035】
なお、アンテナ21、22の先端がガスの封入空間14に侵入する場合は内部に充填するガスの種類にもよるが、ガスとの反応によりアンテナ材料の金属が腐食することが考えられるので、その場合は保護膜などを備えることが望ましい。
【0036】
また、図2に示すように、アンテナ21は同軸ケーブル110Aの中心線(中心導体)に接続され、アンテナ22は同軸ケーブル110Bの中心線に接続される。そして、同軸ケーブル110A、110Bから露出する部分の距離をL、マイクロ波の波長をλとしたとき、Lは、「L=n・λ/2、ここでnは奇数」を満たすようにする。また、このLが「L=n・λ/2、ここでnは奇数」の場合、同軸ケーブル110A、110Bの両端から給電されるマイクロ波の位相差を±πとすることでL間に定在波が生じ、ランプ中心部においマイクロ波の電界が強め合うことにより点灯効率を高めることができる。
【0037】
そして、ランプ部10の構造が、アンテナ部分とギャップ部を含む全長を「λ/2」とする場合について考える。ランプ部のアンテナ部分の石英の比誘電率(εr)が4.2であることから、2.45GHzのマイクロ波の石英中のマイクロ波の1/2波長(λg)は、空気中のλ0/2波長6.00cmから次式で求める。
【0038】
λg=λ0/(εr)1/2
【0039】
その結果、石英中のλg/2波長は、2.98cmとなる。ギャップ間を1.0mmとすると、aの部分は、1.44cmとなる。この結果、ギャップ間で電界の強度が大きく振幅し、効率よくプラズマを点灯/維持できる。なお、サファイアガラスの場合、比誘電率(εr)は、約9であるため、石英に比べてaの部分を、短くすることができる。
【0040】
このように、本発明の光源装置においては、エネルギー効率の高いマイクロ波励起ランプを使用した光源装置を提供することができる。また、ギャップ間での電界の強さと、ランプから発光される輝度とは比例するため、2つのアンテナに印加するマイクロ波の位相差を調整することにより、ランプ部10の発光輝度を調整することができる。
【0041】
なお、前述のマイクロ波電源は、固体マイクロ波電源101が相当する。また、マイクロ波伝送線路は同軸ケーブル110Aと同軸ケーブル110Bが相当し、前述の位相制御部は位相制御回路121が相当する。また、前述の発光物質が封入された発光容器は、膨出部13が相当する。
【0042】
[第2の実施の形態]
前述したように、図1に示す第1の実施の形態の構成例では、固体マイクロ波電源101から出力される1つの高出力マイクロ波を2系統に分配しているが、これに限定されず、2つの固体マイクロ波電源を用いる形態も考えられる。
【0043】
図3は、本発明の第2の実施の形態に係る光源装置の構成を示すブロック図であり、2つの固体マイクロ波電源を使用する例を示す図である。図3に示す例では、2つの固体マイクロ波電源101Aと101Bを使用し、これらの固体マイクロ波電源101Aと101Bは、図1に示した固体マイクロ波電源101と同じ構成のものである。
【0044】
図3に示す構成の場合、2つの固体マイクロ波電源101A、101Bを使用してランプ部10にマイクロ波電力を与えるため、各固体マイクロ波電源101A、101B内の増幅器103のマイクロ波出力電力を小さくすることができる。例えば、ランプ部10に100Wのマイクロ波電力を供給する場合に、各固体マイクロ波電源101A、101Bから50Wずつマイクロ波電力を与えるようにできる。このため、増幅器103で使用するパワー半導体素子に電流容量の小さい安価なものを使用できる。また調光する場合に、パワー半導体素子を効率の高い動作点で使用でき、1つの大容量のパワー半導体素子を使用する場合に比べて効率的である。
【0045】
また、ランプ部10の輝度を調整するに当たり、例えば、図1に示す1つの増幅器からのマイクロ波出力電力を半分にする場合に、図3の構成では、片方の系統を休止させて、1つの固体マイクロ波電源のみを使うことができる。このため、同じマイクロ波発出力電力を得るための使用する消費電力が少なくて済み、エネルギー効率を高めることができる。
【0046】
なお、前述の2つ存在するマイクロ波電源は、固体マイクロ波電源101Aと固体マイクロ波電源101Bとが相当する。
【0047】
[第3の実施の形態]
さらに、マイクロ波電源中に2つの増幅器を設ける形態も考えられる。
【0048】
図4は、本発明の第3の実施の形態に係る光源装置の構成を示すブロック図であり、固体マイクロ波電源内に2つの増幅器を設ける例を示している。図4に示す例では、固体マイクロ波電源101C中に2つの増幅器103Aと103Bを設け、ダイヤモンドSAW発振器102からの高周波出力を、それぞれの増幅器103Aと103Bで増幅する。そして、増幅器103Aから出力されるマイクロ波は同軸ケーブル110Aによりランプ部10に伝送され、増幅器103Bから出力されるマイクロ波は同軸ケーブル110Bによりランプ部10に伝送される。
【0049】
図4に示す構成の場合、2つの増幅器103A、103Bを使用してランプ部10にマイクロ波電力を与えるため、各増幅器103A、103Bの出力電力を小さくすることができる。例えば、ランプ部10に100Wのマイクロ波電力を供給する場合に、各増幅器103A、103Bから50Wずつマイクロ波電力を与えるようにできる。
【0050】
従って、図3に示す第3の実施の形態の場合と同様に、増幅器103A、103Bで使用するパワー半導体素子に電流容量の小さい安価なものを使用できると共に、パワー半導体素子を効率の高い動作点で使用でき、1つのパワー半導体素子を使用する場合に比べて効率的である。
【0051】
また、ランプ部10の輝度を調整するに当たり、例えば、図1に示す1つの増幅器からのマイクロ波出力電力を半分にする場合に、図4の構成では、片方の系統を休止させて、1つの増幅器のみを使うことができる。このため、同じマイクロ波発出力電力を得るための使用する消費電力が少なくて済み、エネルギー効率を高めることができる。
【0052】
[第4の実施の形態]
さらに、光源装置の全体としてのエネルギー効率を上げるために重要なことは、固体マイクロ波電源の伝送線路の特性インピーダンスとランプ部の入力インピーダンスとを整合させることである。すなわち、ランプ部10からの反射波が生じないようして、反射により伝送損失を生じさせないようにすることである。
【0053】
図5は、本発明の第4の実施の形態に係る光源装置の構成を示すブロック図であり、インピーダンスマッチング回路を備える光源装置の構成例を示している。
【0054】
図5に示すように、マイクロ波伝送線路である同軸ケーブル110Aとランプ部10とのインピーダンス整合を取るためのマッチング回路131Aを備えることができる。同様にして、マイクロ波伝送線路である同軸ケーブル110Bとランプ部10とのインピーダンス整合を取るためのマッチング回路131Bを備えることができる。
【0055】
マッチング回路131A、131Bは、図10に示すように、リアクタンス値が可変なリアクタンス素子191、192で構成することができる。このリアクタンス素子191、192の成分は、インダクタンスLまたはキャパシタCのどちらであってもよく、ランプ部10からの反射波強度に応じてLまたはCを変化させる機構を有する。
【0056】
反射波モニタ141Aはサーキュレータ140Aを介して同軸ケーブル110Aとマッチング回路131Aとの間に配置される。同様にして、反射波モニタ141Bはサーキュレータ140Bを介して同軸ケーブル110Bとマッチング回路131Bとの間に配置される。このサーキュレータ140Aとサーキュレータ140Bは同じ構成のものであり、このサーキュレータ140A、140Bには、マイクロ波の反射波が電源側や増幅器側へ戻ることを防ぐためのアイソレータとしての機能も付加することができる。
【0057】
反射波モニタ141Aでは、サーキュレータ140Aから出力されるマイクロ波の反射波を減衰器142で所定の範囲の電力強度の信号に減衰させ、パワーメータ143に過大な信号が印加され、破壊されるのを防ぐようにしている。
【0058】
このパワーメータ143により反射波の信号強度を測定し、その値が‘0’または‘0’に近い値になるように、マッチング回路131Aの可変リアクタンス値を、制御回路144Aを介して制御する。なお、パワーメータ143は、マイクロ波電流を測定する電流計であってもよい。
【0059】
同様にして、反射波モニタ141Bでは、サーキュレータ140Bから出力されるマイクロ波の反射波を減衰器142で所定の範囲の電力強度に減衰させ、パワーメータ143により反射波の信号強度を測定し、その値が‘0’ または‘0’に近い値になるように、マッチング回路131Bの可変リアクタンス値を、制御回路144Bを介して制御する。
【0060】
このように、図5に示す構成例では、反射波の強度が常に最小になるように、マッチング回路131A、131Bの可変リアクタンス(L又はC)を調整するフィードバック制御が行われる。これにより、ランプ部10からの反射波による伝送損失を低減させ、光源装置の全体としてのエネルギー効率を上げることができる。
【0061】
なお、マッチング回路131A及び反射波モニタ141A、あるいはマッチング回路131B及び反射波モニタ141Bは、いずれか一方に設けられるようにして、いずれか一方のマッチング回路及び反射波モニタにより反射波による伝送損失を低減させるようにしてもよい。
【0062】
また、前述の少なくとも一方に設けられるマッチング回路は、マッチング回路131Aとマッチング回路131Bのいずれかが相当し、前述の少なくとも一方に設けられる反射波モニタは、反射波モニタ141Aと反射波モニタ141Bのいずれかが相当する。
【0063】
[第5の実施の形態]
図6は、本発明の第5の実施の形態に係る光源装置の構成を示すブロック図である。
図6に示す本発明の光源装置が、図5に示す光源装置と構成上異なるのは、図6に示す光源装置において、位相差モニタ回路151を新たに追加した点であり、他の構成は図5に示す光源装置と同様である。このため、同一の構成部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0064】
図6に示す構成例では、2系統の伝送ラインのうち片側のみに位相制御回路121を設けと共に、さらにランプ部10の両端のアンテナ部分に位相差モニタ回路151を設けている。この位相差モニタ回路151には、一般的な位相比較器152を用いる。この位相比較器152の出力信号は位相差に応じて変化するので、この出力信号をローパスフィルタ153を通して制御回路154に入力する。制御回路154では、位相差の信号を基にフィードバック信号FDBKを生成して、このフィードバック信号FDBKを位相制御回路121に出力する。なお、ローパスフィルタ153は、高周波成分や雑音を取り除くためのフィルタである。
【0065】
上記構成により、ランプ部10の両側アンテナ21、22に印加されるマイクロ波の位相差が最適な位相差になるように位相制御回路121を制御する。これにより、ランプ部10に給電される2系統のマイクロ波の位相差を最適な値に調整することができる。
【0066】
なお、上記の例では、第4の実施の形態の光源装置に位相差モニタ回路151を適用する例を示したが、第1から第3の実施の形態の光源装置に位相差モニタ回路151を適用するようにしてもよい。
【0067】
また、前述の位相差検出部は位相差モニタ回路151が相当する。
【0068】
[第6の実施の形態]
図7は、本発明の第6の実施の形態に係る光源装置の構成を示す図である。図7に示す構成のように、リフレクタ201を備えることで、さらに効率よく光を利用することが可能となる。
【0069】
このリフレクタ201は石英ガラス等で形成され、内面側には、ランプ部10の発光中心領域15に相対して放物面形状の曲面を有する光束反射面201aが形成されている。光束反射面201aは、マイクロ波を透過し、光束を反射する誘電体多層膜により構成される。また、光束反射面201aの放物面形状は、リフレクタ201の内面側に設置されるランプ部10の中心部(発光中心領域15)が焦点となるように形成されている。なお、光束反射面201aの形状は球面形状の曲面を有していても良い。
【0070】
以上説明したように、本発明の光源装置においては、エネルギー効率の高いマイクロ波励起ランプを使用した光源装置を提供することができる。また、本発明の光源装置は、様々なマイクロ波アプリケータに適用できるものである。
【0071】
[第7の実施の形態]
続いて、本発明の光源装置を使用したプロジェクタについて図面を参照して説明する。
【0072】
図11は、本発明の光源装置を備えるプロジェクタの構成を示す図である。図11に示すように、プロジェクタ301は、光学系302と、制御回路303と、電源部304とを備えている。このプロジェクタ301は、外部から入力される画像信号に応じた画像を、光学系302を介してスクリーンSなどに投写するものである。なお、プロジェクタ301では、外部電源305からの交流電力が電源部304によって直流電力に変換され、直流電力が電源部304から光学系302や制御回路303などに供給される。
【0073】
また、図12は、図11に示すプロジェクタの光学系302の構成を示すブロック図である。図12に示すように、光学系302は、前述した本発明の光源装置310と、照明光学系311と、光変調部312と、色合成光学系313と、投写部314とを有して構成されている。また、光源装置310は、前述した第1の実施の形態から第6の実施の形態で説明した本発明の光源装置で構成されるものである。
【0074】
なお、図12においては、図1に示した本発明の第1の実施の形態に係る光源装置を光源装置として使用した例を示しているが、これに限られず、前述した第1の実施の形態から第6の実施の形態で説明した本発明の光源装置のいずれであってもよい。
【0075】
次に、図12を参照して、この光学系302の動作について説明する。固体マイクロ波電源101のダイヤモンドSAW発振器102から出力された高周波信号は、増幅器103で増幅された後に、分配器104に向けて出力される。
【0076】
固体マイクロ波電源101から出力されるマイクロ波は分配器104を用いて2系統のマイクロ波伝送線路に分けられ、ランプ部10の両側からマイクロ波が給電される。この場合に、片側のマイクロ波伝送線路には位相制御回路121が挿入される。これにより、ランプ部10の片側のマイクロ波の位相を制御することで、ランプ部10の両端に給電されるマイクロ波の位相差を調整することができる。このため、アンテナ21、22のギャップ部においてマイクロ波の定在波を立てマイクロ波が強め合うように調整することができる。すなわち、マイクロ波励起ランプを使用する光源装置において、発光の際のエネルギー効率を高めることができる。
【0077】
また、照明光学系311は、光源装置310から射出された光束の照度を均一化し、各色光に分離する。光変調部312は、照明光学系311で分離された各色光の光束に対して画像情報に応じて変調して光学像を形成する。色合成光学系313は、照明光学系311で色分離され光変調部312で変調された各色光の光学像を合成し、投写部314にて光学像を投写する。
【0078】
このプロジェクタでは、本発明の光源装置310を使用しており、エネルギー効率の高いマイクロ波励起ランプを使用した光源装置310を搭載したプロジェクタを提供することができる。したがって、旧来の光源装置を有するプロジェクタに比べ、プロジェクタの消費電力を低減させることができる。
【0079】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明のマイクロ波励起ランプを使用した光源装置、およびプロジェクタは、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る光源装置の構成を示す図。
【図2】ランプ部の構成について説明するための図。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る光源装置の構成を示す図。
【図4】本発明の第3の実施の形態に係る光源装置の構成を示す図。
【図5】本発明の第4の実施の形態に係る光源装置の構成を示す図。
【図6】本発明の第5の実施の形態に係る光源装置の構成を示す図。
【図7】本発明の第6の実施の形態に係る光源装置の構成を示す図。
【図8】機械的な位相シフターの構成を示す図。
【図9】電気的な位相シフターの構成を示す図。
【図10】インピーダンスマッチング回路の例を示す図。
【図11】本発明の第7の実施の形態に係るプロジェクタの構成を示す図
【図12】プロジェクタの光学系の構成を示す図。
【符号の説明】
【0081】
10・・・マイクロ波励起ランプ部、11・・・細管部、13・・・膨出部、14・・・封入空間、15・・・発光中心領域、21、22・・・アンテナ、101、101A、101B、101C・・・固体マイクロ波電源、102・・・ダイヤモンドSAW発振器、103、103A、103B・・・増幅器、104・・・分配器、110A、110B・・・同軸ケーブル、121・・・位相制御回路、131A、131B・・・マッチング回路、140A、140B・・・サーキュレータ、141A、141B・・・反射波モニタ、142・・・減衰器、143・・・パワーメータ、144A、144B・・・制御回路、151・・・位相差モニタ回路、152・・・位相比較器、153・・・ローパスフィルタ、154・・・制御回路、201・・・リフレクタ、201a・・・光束反射面、301・・・プロジェクタ、302・・・光学系、303・・・制御回路、304・・・電源部、305・・・外部電源、310・・・光源装置、311・・・照明光学系、312・・・光変調部、313・・・色合成光学系、314・・・投写部
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波励起ランプを使用した光源装置に関し、特にマイクロ波励起ランプのエネルギー効率を高めると共に、発光輝度を容易に制御することができる、光源装置、およびプロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波励起ランプは従来の白熱灯や高圧水銀ランプに代表される放電灯と異なりランプ内部に放電用の電極を持たないため、フィラメントや電極の消耗や、それに伴うガラスの白濁等のランプ劣化要因を持たないという特徴を持つ。また、内部ガスの選択肢が広がり、必ずしも水銀を使用する必要がないので不必要な紫外線を放出せずに済み、液晶プロジェクタ向けの長寿命光源として有力である。
【0003】
このようなマイクロ波励起の光源装置として、従来技術の無電極放電灯装置がある(特許文献1を参照)。この特許文献1の放電灯においては、放電容器を溶融破壊しないため、電灯内部に、アンテナ部材の一部が突出するように設けられており、当該アンテナからマイクロ波を与えることで、放電容器を溶融破壊することなく、放電容器内のガスを励起させて発光させる技術が示されている。
【0004】
また、従来技術の無電極ランプアプリェータにエネルギーを結合するための装置がある(特許文献2を参照)。この特許文献2の無電極電灯においては、両側から光源にマイクロ波エネルギーを供給する構成と、伝送路の長さを予め決めて両側から与えるマイクロ波エネルギーの位相差が180度なるようにして、パワーを高める構成を有している。
【特許文献1】特開2007−115534号公報
【特許文献2】特開平7−307105号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の従来技術では、片側のアンテナからマイクロ波を給電する構成であり、マイクロ波の位相を制御して、発光輝度を制御することはできない。
【0006】
また、特許文献2の従来技術においても、伝送路の長さが固定的に定められているため、例えば、位相差を調整して、発光輝度を制御することはできない。
【0007】
このように、従来技術のマイクロ波励の無電極電灯においては、マイクロ波の位相を制御して、発光輝度を制御することはできないという問題があった。
【0008】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、マイクロ波励起ランプへと給電されるマイクロ波の位相を制御することで発光の際のエネルギー効率を高めるとともに、発光輝度を容易に制御することができる、光源装置、およびプロジェクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題を解決するために、本発明は、マイクロ波を出力するマイクロ波電源と、前記マイクロ波の照射を受けて発光する発光物質が封入された発光容器内に一端が離間して挿入された一対のアンテナと、前記アンテナの他端にそれぞれ接続された一対のマイクロ波伝送線路と、前記マイクロ波伝送線路のいずれか一方の側に設けられ、前記アンテナから照射されるマイクロ波の位相を制御する位相制御部と、を備えたことを特徴とする光源装置である。
上記構成からなる本発明の光源装置では、マイクロ波電源から出力されるマイクロ波を2系統のマイクロ波伝送線路により伝送し、発光物質が封入された発光容器の両端側から、マイクロ波を給電する。この場合に、いずれか一方のマイクロ波伝送線路にマイクロ波の位相を制御する位相制御部を設ける。この位相制御部により発光部に給電されるマイクロ波の位相差を調整し、発光部においてマイクロ波の定在波を立てマイクロ波が強め合う条件とする。すなわち、発光部の中心部においてマイクロ波の電界の振幅が腹になるようにする。
これにより、マイクロ波励起ランプを使用する光源装置において、発光の際のエネルギー効率を高めるとともに、発光輝度を容易に制御することができる。
【0010】
また、本発明の光源装置において、前記アンテナと前記マイクロ波伝送線路の接続点間の距離が、前記マイクロ波の波長の1/2の奇数倍であることを特徴とする。
上記構成からなる本発明の光源装置では、2つのアンテナの全長(封入空間におけるアンテナの先端間の一定の間隔を含めた長さ)を、マイクロ波の波長の1/2の奇数倍にする。
これにより、2つのアンテナに給電されるマイクロ波の位相差がπの場合において、封入空間(発光領域)においてマイクロの定在波を立て、封入空間の中心部においてマイクロ波が強め合う条件とすることができる。すなわち、封入空間内の中心部においてマイクロ波の電界の振幅が腹になるようにすることができる。
【0011】
また、本発明の光源装置において、前記一対のマイクロ波伝送線路の少なくとも一方に設けられ、前記発光容器内の一端からの反射波を検出する反射波モニタと、前記一対のマイクロ波伝送線路の少なくとも一方に設けられ、前記反射波モニタが検出する反射波に基づいて、前記アンテナからの前記マイクロ波の照射強度が最大となるように前記マイクロ波伝送線路の特性インピーダンスと、当該マイクロ波伝送線路から前記アンテナへの入力インピーダンスの整合を行うマッチング回路と、を備えたことを特徴とする。
上記構成からなる本発明の光源装置では、マイクロ波伝送線路の少なくとも一方に、反射波を検出する反射波モニタと、インピーダンス整合を行うマッチング回路とを設け、マイクロ波伝送線路において反射波を検出し、この反射波を低減するようにマッチング回路にインピーダンス整合を行わせる。
これにより、マイクロ波伝送線路における反射を低減し、反射により伝送損失を低減できる。このため、光源装置の全体としてのエネルギー効率を上げることができる。
【0012】
また、本発明の光源装置において、前記マイクロ波電源は、2つ存在し、前記一対のマイクロ波伝送線路が、それぞれのマイクロ波電源に接続されることを特徴とする。
上記構成からなる本発明の光源装置では、マイクロ波電源を2つ設け、2系統のマイクロ波伝送線路のそれぞれに対し、対応する各マイクロ波電源からマイクロ波を給電する。
これにより、各マイクロ波電源のマイクロ波出力電力を小さくすることができる。このため、マイクロ波電源内の増幅器で使用するパワー半導体素子に電流容量の小さい安価なものを使用できる。また調光する場合に、パワー半導体素子を効率の高い動作点で使用でき、1つの大容量のパワー半導体素子を使用する場合に比べて効率的である。また、例えば、マイクロ波電源からのマイクロ波出力電力を半分にする場合は、片方の系統のマイクロ波電源を休止させて、1つのマイクロ波電源のみを使うことができる。このため、同じマイクロ波出力電力を得るために使用する消費電力が少なくて済み、エネルギー効率を高めることができる。
【0013】
また、本発明の光源装置において、前記アンテナと前記マイクロ波伝送線路の接続点間に接続された位相差検出部を有し、該位相差検出部が検出する位相差に基づいて、前記アンテナからの前記マイクロ波の照射強度が最大となるように前記位相制御部で位相制御を行うことを特徴とする。
上記構成からなる本発明の光源装置では、マイクロ波の位相差を検出し、この検出信号により位相制御部における位相シフト量を制御する。
これにより、給電されるマイクロ波の位相差を最適な値に調整することができる。
【0014】
また、本発明の光源装置は、前記位相制御部は、前記アンテナと前記マイクロ波伝送線路の接続点間の位相差が±πの自然数倍であるように位相を制御することを特徴とする。
上記構成からなる本発明の光源装置では、位相制御部により、2つのマイクロ波伝送線路が伝送するマイクロ波の位相差が発光部において±πの自然数倍になるように制御する。これにより、2つのアンテナの全長(封入空間におけるアンテナの先端間の一定の間隔を含めた長さ)をマイクロ波の波長の1/2の奇数倍にした場合に、封入空間(発光領域)においてマイクロの定在波を立て、封入空間の中心部においてマイクロ波が強め合うことができる。
【0015】
また、本発明は、光源装置と、前記光源装置から射出された光束を、入力される画像情報に応じて変調し光学像を形成する光変調部と、前記光変調部により形成された光学像を投写する投写部と、を備えるプロジェクであって、前記光源装置は、マイクロ波を出力するマイクロ波電源と、前記マイクロ波の照射を受けて発光する発光物質が封入された発光容器内に一端が離間して挿入された一対のアンテナと、前記アンテナの他端にそれぞれ接続された一対のマイクロ波伝送線路と、前記マイクロ波伝送線路のいずれか一方の側に設けられ、前記アンテナから照射されるマイクロ波の位相を制御する位相制御部と、を備えたことを特徴とするプロジェクタである。
上記構成からなる本発明のプロジェクタでは、本発明による光源装置を備えており、これにより、エネルギー効率の高い光源装置を搭載したプロジェクタを提供することができる。したがって、旧来の光源装置を有するプロジェクタに比べ、プロジェクタの消費電力を低減させることができると共に、その発光輝度の調整を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0017】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る光源装置の全体構成を示すブロック図である。図1に示すように、本発明の光源装置は、マイクロ波励起ランプ部10と、固体マイクロ波電源101と、位相制御回路121を備えている。なお、一般に、マイクロ波帯としての慣用的周波数は、3GHz〜30GHzをいうが、以下の説明では、UHF帯からSHF帯に相当する300MHz〜30GHz帯と定義する。また、以下の説明では「マイクロ波励起ランプ部」を単に「ランプ部」ともいう。
【0018】
固体マイクロ波電源101は、固体高周波発振器としての弾性表面波(Su r f a c e Ac ou s ti c Wa v e:SAW)発振器102と、増幅器103とを有して構成される。ダイヤモンドSAW発振器102から出力されたマイクロ波の高周波信号は、増幅器103で増幅された後に、分配器104に向けて出力される。なお、固体マイクロ波電源101は、ダイヤモンドSAW発振器102を用いるものに限られず、位相を制御できる固体発振源でも良い。
【0019】
固体マイクロ波電源101から出力されるマイクロ波は分配器104を用いて2系統に分けられる。この場合、マイクロ波電源内の増幅器103の増幅率は入力パワーが大きいほど高いので、分配器104で分けた後に増幅する場合に比べ電力使用効率を高くすることができる。
【0020】
分配器104からランプ部10までのマイクロ波伝送線路には同軸ケーブル110A、110Bが使用される。この際、マイクロ波伝送線路としては同軸ケーブルに限られず、ストリップ線路や、マイクロストリップ線路、導波管などさまざまな伝送線路を用いることができる。
【0021】
ランプ部10は、非導電性材料で形成される球形状の膨出部13と、この膨出部13から外側に対向するように延出される一対の細管部11、12を有する透明な発光容器で構成されている。この発光容器は、石英ガラス、サファイアガラス、パイレックス(登録商標)等から形成される。また、膨出部13には、マイクロ波により発光する発光物質を充填した封入空間14(発光領域)が形成されている。封入空間14の内径は、例えば、1mm〜2mm程度である。
【0022】
細管部11、12の内部それぞれには、棒状の内部導電体がアンテナ21、22として封入されている。このアンテナ21に同軸ケーブル110Aの中心線(中心導体)が接続され、アンテナ22に同軸ケーブル110Bの中心線が接続される。なお、同軸ケーブル110A、110Bの中心線を直接アンテナ21、22に接続せずに、例えば、細管部11、12の長手方向の範囲に巻回されたコイルを通して、マイクロ波をアンテナ21、22に給電するようにしてもよい。
【0023】
そして、図2に示すように、マイクロ波の波長をλとした場合に、ランプ部10のアンテナ21、22とギャップ部を含む長さL(L=a+g+a)を「λ/2」の奇数倍とする。この長さの規定と、マイクロ波の位相制御により、ギャップ中心部が腹となるような定在波を起こすことができ、発光効率が良くなる。(なお、ランプ部10の詳細については後述する。)
【0024】
また、片側の給電ラインとなる同軸ケーブル110Bには位相制御回路(位相シフター)121が挿入される。この位相制御回路121により、ランプ部10の片側のマイクロ波の位相を制御することで、ランプ部10の両端に給電されるマイクロ波の位相差を調整し、封入空間14の中心部において腹となるような定在波を起こすことができる。
【0025】
図8は、位相制御回路(位相シフター)の構成例を示す図である。図8に示す例は、機械的な構成の位相シフターの例を示している。
【0026】
図8(A)は、同軸ケーブル等で構成された位相シフターであり、A側の伝送路の外部導体171の外表面が、B側の伝送路の外部導体173の内表面と接触するようにして、矢印a方向に挿入または引き抜き可能に構成されている。また、A側の伝送路の中心導体172の外表面が、B側の伝送路の中心導体174に設けた円筒部174Aの内表面と接触するようにして、矢印a方向に挿入または引き抜き可能に構成されている。このような構成により、機械的に伝送路長を変化させ、位相シフターを構成することができる。
【0027】
また、図8(B)は伝送路の長さが異なる複数の同軸ケーブル(または導波管)181、182、183をスイッチ184、185により選択できる構成にしたものである。このように、スイッチ184、185により伝送路長を切り替えることにより、位相シフターを構成することができる。なお、スイッチ184、185はトランジスタ等の半導体スイッチにより構成することができる。
【0028】
また、図9は、電気的な構成の位相シフターの例を示す図である。図9(A)に示す例は−3dB減衰した90度位相差の信号を出力するハイブリッド型の位相シフターを示している。
【0029】
図9(A)に示す位相シフターにおいては、入力ポート1(In)に入力した信号は、ポート2(Out)と分岐ライン(ポート3、4)に等分配されて入力信号に対して−3dB減衰され、ポート2(Out)と分岐ライン(ポート3、4)の間の位相差は90度となる。
【0030】
例えば、電力分配比を決めるためのインピーダンスをZp=50Ω、Zs=35Ωとし、分岐ライン(ポート3、4)を開放、短絡するとポート2(Out)では±90度の位相変化が生じることになる。この分岐ライン(ポート3、4)に可変リアクタンス素子VR1、VR2を接続することにより、所望の角度で位相を調整できる位相シフターを構成できる。
【0031】
また、図9(B)に示す例は、電圧制御型の位相シフターの構成例を示す図であり、SKYWORKS(登録商標)社から市販されている位相シフターである。図9(B)に示す位相シフターは、相互誘導される2つのインダクタンスL1、L2と、各インダクタンスL1、L2に直列に接続されるキャパシタC1、C2、C3、C4と、キャパシタC2、C4とGNDとの間に接続されるバラクタダイオードD1、D2とで構成される。このバラクタダイオードD1、D2のカソード側に抵抗器Rを介してコントロール電圧(0〜12V)を印加することにより、位相シフターが構成される。この位相シフターでは、700MHz〜1100MHzの周波数帯において、約100度程度の位相シフトが実現できるように構成されている。
【0032】
次に、前述したランプ部10の詳細について説明する。前述したように、ランプ部10の発光容器は石英ガラスや、サファイアガラスや、パイレックス(登録商標)などの可視光の透過率の高い材料を使って構成する。ランプ部10の細管部11、12にはマイクロ波を集中させるための2本のアンテナ21、22が備えられている。この2本のアンテナ21、22は、封入空間14の中心部(発光中心領域15)に対して対称に配置されている。
【0033】
アンテナ21、22は封入空間14に侵入してもしなくても構わない。アンテナ21、22の材質は導体とし、特に、熱膨張係数が小さく耐熱性が高い材料、具体的にはタングステン合金やステンレス合金等が適している。途中、石英ガラスとの熱膨張差を打ち消すために、一部分が箔になっていても良い。
【0034】
封入空間14中のガスは、点灯中の水銀蒸気圧が1〜200気圧程度(超高圧水銀ランプ程度)になるように水銀を封じこめたものか、キセノンガスにヨウ化ナトリウムやヨウ化スカンジウムを用いたものを用いても良い。
【0035】
なお、アンテナ21、22の先端がガスの封入空間14に侵入する場合は内部に充填するガスの種類にもよるが、ガスとの反応によりアンテナ材料の金属が腐食することが考えられるので、その場合は保護膜などを備えることが望ましい。
【0036】
また、図2に示すように、アンテナ21は同軸ケーブル110Aの中心線(中心導体)に接続され、アンテナ22は同軸ケーブル110Bの中心線に接続される。そして、同軸ケーブル110A、110Bから露出する部分の距離をL、マイクロ波の波長をλとしたとき、Lは、「L=n・λ/2、ここでnは奇数」を満たすようにする。また、このLが「L=n・λ/2、ここでnは奇数」の場合、同軸ケーブル110A、110Bの両端から給電されるマイクロ波の位相差を±πとすることでL間に定在波が生じ、ランプ中心部においマイクロ波の電界が強め合うことにより点灯効率を高めることができる。
【0037】
そして、ランプ部10の構造が、アンテナ部分とギャップ部を含む全長を「λ/2」とする場合について考える。ランプ部のアンテナ部分の石英の比誘電率(εr)が4.2であることから、2.45GHzのマイクロ波の石英中のマイクロ波の1/2波長(λg)は、空気中のλ0/2波長6.00cmから次式で求める。
【0038】
λg=λ0/(εr)1/2
【0039】
その結果、石英中のλg/2波長は、2.98cmとなる。ギャップ間を1.0mmとすると、aの部分は、1.44cmとなる。この結果、ギャップ間で電界の強度が大きく振幅し、効率よくプラズマを点灯/維持できる。なお、サファイアガラスの場合、比誘電率(εr)は、約9であるため、石英に比べてaの部分を、短くすることができる。
【0040】
このように、本発明の光源装置においては、エネルギー効率の高いマイクロ波励起ランプを使用した光源装置を提供することができる。また、ギャップ間での電界の強さと、ランプから発光される輝度とは比例するため、2つのアンテナに印加するマイクロ波の位相差を調整することにより、ランプ部10の発光輝度を調整することができる。
【0041】
なお、前述のマイクロ波電源は、固体マイクロ波電源101が相当する。また、マイクロ波伝送線路は同軸ケーブル110Aと同軸ケーブル110Bが相当し、前述の位相制御部は位相制御回路121が相当する。また、前述の発光物質が封入された発光容器は、膨出部13が相当する。
【0042】
[第2の実施の形態]
前述したように、図1に示す第1の実施の形態の構成例では、固体マイクロ波電源101から出力される1つの高出力マイクロ波を2系統に分配しているが、これに限定されず、2つの固体マイクロ波電源を用いる形態も考えられる。
【0043】
図3は、本発明の第2の実施の形態に係る光源装置の構成を示すブロック図であり、2つの固体マイクロ波電源を使用する例を示す図である。図3に示す例では、2つの固体マイクロ波電源101Aと101Bを使用し、これらの固体マイクロ波電源101Aと101Bは、図1に示した固体マイクロ波電源101と同じ構成のものである。
【0044】
図3に示す構成の場合、2つの固体マイクロ波電源101A、101Bを使用してランプ部10にマイクロ波電力を与えるため、各固体マイクロ波電源101A、101B内の増幅器103のマイクロ波出力電力を小さくすることができる。例えば、ランプ部10に100Wのマイクロ波電力を供給する場合に、各固体マイクロ波電源101A、101Bから50Wずつマイクロ波電力を与えるようにできる。このため、増幅器103で使用するパワー半導体素子に電流容量の小さい安価なものを使用できる。また調光する場合に、パワー半導体素子を効率の高い動作点で使用でき、1つの大容量のパワー半導体素子を使用する場合に比べて効率的である。
【0045】
また、ランプ部10の輝度を調整するに当たり、例えば、図1に示す1つの増幅器からのマイクロ波出力電力を半分にする場合に、図3の構成では、片方の系統を休止させて、1つの固体マイクロ波電源のみを使うことができる。このため、同じマイクロ波発出力電力を得るための使用する消費電力が少なくて済み、エネルギー効率を高めることができる。
【0046】
なお、前述の2つ存在するマイクロ波電源は、固体マイクロ波電源101Aと固体マイクロ波電源101Bとが相当する。
【0047】
[第3の実施の形態]
さらに、マイクロ波電源中に2つの増幅器を設ける形態も考えられる。
【0048】
図4は、本発明の第3の実施の形態に係る光源装置の構成を示すブロック図であり、固体マイクロ波電源内に2つの増幅器を設ける例を示している。図4に示す例では、固体マイクロ波電源101C中に2つの増幅器103Aと103Bを設け、ダイヤモンドSAW発振器102からの高周波出力を、それぞれの増幅器103Aと103Bで増幅する。そして、増幅器103Aから出力されるマイクロ波は同軸ケーブル110Aによりランプ部10に伝送され、増幅器103Bから出力されるマイクロ波は同軸ケーブル110Bによりランプ部10に伝送される。
【0049】
図4に示す構成の場合、2つの増幅器103A、103Bを使用してランプ部10にマイクロ波電力を与えるため、各増幅器103A、103Bの出力電力を小さくすることができる。例えば、ランプ部10に100Wのマイクロ波電力を供給する場合に、各増幅器103A、103Bから50Wずつマイクロ波電力を与えるようにできる。
【0050】
従って、図3に示す第3の実施の形態の場合と同様に、増幅器103A、103Bで使用するパワー半導体素子に電流容量の小さい安価なものを使用できると共に、パワー半導体素子を効率の高い動作点で使用でき、1つのパワー半導体素子を使用する場合に比べて効率的である。
【0051】
また、ランプ部10の輝度を調整するに当たり、例えば、図1に示す1つの増幅器からのマイクロ波出力電力を半分にする場合に、図4の構成では、片方の系統を休止させて、1つの増幅器のみを使うことができる。このため、同じマイクロ波発出力電力を得るための使用する消費電力が少なくて済み、エネルギー効率を高めることができる。
【0052】
[第4の実施の形態]
さらに、光源装置の全体としてのエネルギー効率を上げるために重要なことは、固体マイクロ波電源の伝送線路の特性インピーダンスとランプ部の入力インピーダンスとを整合させることである。すなわち、ランプ部10からの反射波が生じないようして、反射により伝送損失を生じさせないようにすることである。
【0053】
図5は、本発明の第4の実施の形態に係る光源装置の構成を示すブロック図であり、インピーダンスマッチング回路を備える光源装置の構成例を示している。
【0054】
図5に示すように、マイクロ波伝送線路である同軸ケーブル110Aとランプ部10とのインピーダンス整合を取るためのマッチング回路131Aを備えることができる。同様にして、マイクロ波伝送線路である同軸ケーブル110Bとランプ部10とのインピーダンス整合を取るためのマッチング回路131Bを備えることができる。
【0055】
マッチング回路131A、131Bは、図10に示すように、リアクタンス値が可変なリアクタンス素子191、192で構成することができる。このリアクタンス素子191、192の成分は、インダクタンスLまたはキャパシタCのどちらであってもよく、ランプ部10からの反射波強度に応じてLまたはCを変化させる機構を有する。
【0056】
反射波モニタ141Aはサーキュレータ140Aを介して同軸ケーブル110Aとマッチング回路131Aとの間に配置される。同様にして、反射波モニタ141Bはサーキュレータ140Bを介して同軸ケーブル110Bとマッチング回路131Bとの間に配置される。このサーキュレータ140Aとサーキュレータ140Bは同じ構成のものであり、このサーキュレータ140A、140Bには、マイクロ波の反射波が電源側や増幅器側へ戻ることを防ぐためのアイソレータとしての機能も付加することができる。
【0057】
反射波モニタ141Aでは、サーキュレータ140Aから出力されるマイクロ波の反射波を減衰器142で所定の範囲の電力強度の信号に減衰させ、パワーメータ143に過大な信号が印加され、破壊されるのを防ぐようにしている。
【0058】
このパワーメータ143により反射波の信号強度を測定し、その値が‘0’または‘0’に近い値になるように、マッチング回路131Aの可変リアクタンス値を、制御回路144Aを介して制御する。なお、パワーメータ143は、マイクロ波電流を測定する電流計であってもよい。
【0059】
同様にして、反射波モニタ141Bでは、サーキュレータ140Bから出力されるマイクロ波の反射波を減衰器142で所定の範囲の電力強度に減衰させ、パワーメータ143により反射波の信号強度を測定し、その値が‘0’ または‘0’に近い値になるように、マッチング回路131Bの可変リアクタンス値を、制御回路144Bを介して制御する。
【0060】
このように、図5に示す構成例では、反射波の強度が常に最小になるように、マッチング回路131A、131Bの可変リアクタンス(L又はC)を調整するフィードバック制御が行われる。これにより、ランプ部10からの反射波による伝送損失を低減させ、光源装置の全体としてのエネルギー効率を上げることができる。
【0061】
なお、マッチング回路131A及び反射波モニタ141A、あるいはマッチング回路131B及び反射波モニタ141Bは、いずれか一方に設けられるようにして、いずれか一方のマッチング回路及び反射波モニタにより反射波による伝送損失を低減させるようにしてもよい。
【0062】
また、前述の少なくとも一方に設けられるマッチング回路は、マッチング回路131Aとマッチング回路131Bのいずれかが相当し、前述の少なくとも一方に設けられる反射波モニタは、反射波モニタ141Aと反射波モニタ141Bのいずれかが相当する。
【0063】
[第5の実施の形態]
図6は、本発明の第5の実施の形態に係る光源装置の構成を示すブロック図である。
図6に示す本発明の光源装置が、図5に示す光源装置と構成上異なるのは、図6に示す光源装置において、位相差モニタ回路151を新たに追加した点であり、他の構成は図5に示す光源装置と同様である。このため、同一の構成部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0064】
図6に示す構成例では、2系統の伝送ラインのうち片側のみに位相制御回路121を設けと共に、さらにランプ部10の両端のアンテナ部分に位相差モニタ回路151を設けている。この位相差モニタ回路151には、一般的な位相比較器152を用いる。この位相比較器152の出力信号は位相差に応じて変化するので、この出力信号をローパスフィルタ153を通して制御回路154に入力する。制御回路154では、位相差の信号を基にフィードバック信号FDBKを生成して、このフィードバック信号FDBKを位相制御回路121に出力する。なお、ローパスフィルタ153は、高周波成分や雑音を取り除くためのフィルタである。
【0065】
上記構成により、ランプ部10の両側アンテナ21、22に印加されるマイクロ波の位相差が最適な位相差になるように位相制御回路121を制御する。これにより、ランプ部10に給電される2系統のマイクロ波の位相差を最適な値に調整することができる。
【0066】
なお、上記の例では、第4の実施の形態の光源装置に位相差モニタ回路151を適用する例を示したが、第1から第3の実施の形態の光源装置に位相差モニタ回路151を適用するようにしてもよい。
【0067】
また、前述の位相差検出部は位相差モニタ回路151が相当する。
【0068】
[第6の実施の形態]
図7は、本発明の第6の実施の形態に係る光源装置の構成を示す図である。図7に示す構成のように、リフレクタ201を備えることで、さらに効率よく光を利用することが可能となる。
【0069】
このリフレクタ201は石英ガラス等で形成され、内面側には、ランプ部10の発光中心領域15に相対して放物面形状の曲面を有する光束反射面201aが形成されている。光束反射面201aは、マイクロ波を透過し、光束を反射する誘電体多層膜により構成される。また、光束反射面201aの放物面形状は、リフレクタ201の内面側に設置されるランプ部10の中心部(発光中心領域15)が焦点となるように形成されている。なお、光束反射面201aの形状は球面形状の曲面を有していても良い。
【0070】
以上説明したように、本発明の光源装置においては、エネルギー効率の高いマイクロ波励起ランプを使用した光源装置を提供することができる。また、本発明の光源装置は、様々なマイクロ波アプリケータに適用できるものである。
【0071】
[第7の実施の形態]
続いて、本発明の光源装置を使用したプロジェクタについて図面を参照して説明する。
【0072】
図11は、本発明の光源装置を備えるプロジェクタの構成を示す図である。図11に示すように、プロジェクタ301は、光学系302と、制御回路303と、電源部304とを備えている。このプロジェクタ301は、外部から入力される画像信号に応じた画像を、光学系302を介してスクリーンSなどに投写するものである。なお、プロジェクタ301では、外部電源305からの交流電力が電源部304によって直流電力に変換され、直流電力が電源部304から光学系302や制御回路303などに供給される。
【0073】
また、図12は、図11に示すプロジェクタの光学系302の構成を示すブロック図である。図12に示すように、光学系302は、前述した本発明の光源装置310と、照明光学系311と、光変調部312と、色合成光学系313と、投写部314とを有して構成されている。また、光源装置310は、前述した第1の実施の形態から第6の実施の形態で説明した本発明の光源装置で構成されるものである。
【0074】
なお、図12においては、図1に示した本発明の第1の実施の形態に係る光源装置を光源装置として使用した例を示しているが、これに限られず、前述した第1の実施の形態から第6の実施の形態で説明した本発明の光源装置のいずれであってもよい。
【0075】
次に、図12を参照して、この光学系302の動作について説明する。固体マイクロ波電源101のダイヤモンドSAW発振器102から出力された高周波信号は、増幅器103で増幅された後に、分配器104に向けて出力される。
【0076】
固体マイクロ波電源101から出力されるマイクロ波は分配器104を用いて2系統のマイクロ波伝送線路に分けられ、ランプ部10の両側からマイクロ波が給電される。この場合に、片側のマイクロ波伝送線路には位相制御回路121が挿入される。これにより、ランプ部10の片側のマイクロ波の位相を制御することで、ランプ部10の両端に給電されるマイクロ波の位相差を調整することができる。このため、アンテナ21、22のギャップ部においてマイクロ波の定在波を立てマイクロ波が強め合うように調整することができる。すなわち、マイクロ波励起ランプを使用する光源装置において、発光の際のエネルギー効率を高めることができる。
【0077】
また、照明光学系311は、光源装置310から射出された光束の照度を均一化し、各色光に分離する。光変調部312は、照明光学系311で分離された各色光の光束に対して画像情報に応じて変調して光学像を形成する。色合成光学系313は、照明光学系311で色分離され光変調部312で変調された各色光の光学像を合成し、投写部314にて光学像を投写する。
【0078】
このプロジェクタでは、本発明の光源装置310を使用しており、エネルギー効率の高いマイクロ波励起ランプを使用した光源装置310を搭載したプロジェクタを提供することができる。したがって、旧来の光源装置を有するプロジェクタに比べ、プロジェクタの消費電力を低減させることができる。
【0079】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明のマイクロ波励起ランプを使用した光源装置、およびプロジェクタは、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る光源装置の構成を示す図。
【図2】ランプ部の構成について説明するための図。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る光源装置の構成を示す図。
【図4】本発明の第3の実施の形態に係る光源装置の構成を示す図。
【図5】本発明の第4の実施の形態に係る光源装置の構成を示す図。
【図6】本発明の第5の実施の形態に係る光源装置の構成を示す図。
【図7】本発明の第6の実施の形態に係る光源装置の構成を示す図。
【図8】機械的な位相シフターの構成を示す図。
【図9】電気的な位相シフターの構成を示す図。
【図10】インピーダンスマッチング回路の例を示す図。
【図11】本発明の第7の実施の形態に係るプロジェクタの構成を示す図
【図12】プロジェクタの光学系の構成を示す図。
【符号の説明】
【0081】
10・・・マイクロ波励起ランプ部、11・・・細管部、13・・・膨出部、14・・・封入空間、15・・・発光中心領域、21、22・・・アンテナ、101、101A、101B、101C・・・固体マイクロ波電源、102・・・ダイヤモンドSAW発振器、103、103A、103B・・・増幅器、104・・・分配器、110A、110B・・・同軸ケーブル、121・・・位相制御回路、131A、131B・・・マッチング回路、140A、140B・・・サーキュレータ、141A、141B・・・反射波モニタ、142・・・減衰器、143・・・パワーメータ、144A、144B・・・制御回路、151・・・位相差モニタ回路、152・・・位相比較器、153・・・ローパスフィルタ、154・・・制御回路、201・・・リフレクタ、201a・・・光束反射面、301・・・プロジェクタ、302・・・光学系、303・・・制御回路、304・・・電源部、305・・・外部電源、310・・・光源装置、311・・・照明光学系、312・・・光変調部、313・・・色合成光学系、314・・・投写部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波を出力するマイクロ波電源と、
前記マイクロ波の照射を受けて発光する発光物質が封入された発光容器内に一端が離間して挿入された一対のアンテナと、
前記アンテナの他端にそれぞれ接続された一対のマイクロ波伝送線路と、
前記マイクロ波伝送線路のいずれか一方の側に設けられ、前記アンテナから照射されるマイクロ波の位相を制御する位相制御部と、
を備えたことを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記アンテナと前記マイクロ波伝送線路の接続点間の距離が、
前記マイクロ波の波長の1/2の奇数倍である
ことを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記一対のマイクロ波伝送線路の少なくとも一方に設けられ、前記発光容器内の一端からの反射波を検出する反射波モニタと、
前記一対のマイクロ波伝送線路の少なくとも一方に設けられ、前記反射波モニタが検出する反射波に基づいて、前記アンテナからの前記マイクロ波の照射強度が最大となるように前記マイクロ波伝送線路の特性インピーダンスと、当該マイクロ波伝送線路から前記アンテナへの入力インピーダンスの整合を行うマッチング回路と、
を備えたことを特徴とする請求項1から2のいずれか1つに記載の光源装置。
【請求項4】
前記マイクロ波電源は、2つ存在し、
前記一対のマイクロ波伝送線路が、それぞれのマイクロ波電源に接続される
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の光源装置。
【請求項5】
前記アンテナと前記マイクロ波伝送線路の接続点間に接続された位相差検出部を有し、
該位相差検出部が検出する位相差に基づいて、前記アンテナからの前記マイクロ波の照射強度が最大となるように前記位相制御部で位相制御を行う
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の光源装置。
【請求項6】
前記位相制御部は、
前記アンテナと前記マイクロ波伝送線路の接続点間の位相差が±πの自然数倍であるように位相を制御する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の光源装置。
【請求項7】
光源装置と、前記光源装置から射出された光束を、入力される画像情報に応じて変調し光学像を形成する光変調部と、前記光変調部により形成された光学像を投写する投写部と、を備えるプロジェクであって、
前記光源装置は、
マイクロ波を出力するマイクロ波電源と、
前記マイクロ波の照射を受けて発光する発光物質が封入された発光容器内に一端が離間して挿入された一対のアンテナと、
前記アンテナの他端にそれぞれ接続された一対のマイクロ波伝送線路と、
前記マイクロ波伝送線路のいずれか一方の側に設けられ、前記アンテナから照射されるマイクロ波の位相を制御する位相制御部と、
を備えたことを特徴とするプロジェクタ。
【請求項1】
マイクロ波を出力するマイクロ波電源と、
前記マイクロ波の照射を受けて発光する発光物質が封入された発光容器内に一端が離間して挿入された一対のアンテナと、
前記アンテナの他端にそれぞれ接続された一対のマイクロ波伝送線路と、
前記マイクロ波伝送線路のいずれか一方の側に設けられ、前記アンテナから照射されるマイクロ波の位相を制御する位相制御部と、
を備えたことを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記アンテナと前記マイクロ波伝送線路の接続点間の距離が、
前記マイクロ波の波長の1/2の奇数倍である
ことを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記一対のマイクロ波伝送線路の少なくとも一方に設けられ、前記発光容器内の一端からの反射波を検出する反射波モニタと、
前記一対のマイクロ波伝送線路の少なくとも一方に設けられ、前記反射波モニタが検出する反射波に基づいて、前記アンテナからの前記マイクロ波の照射強度が最大となるように前記マイクロ波伝送線路の特性インピーダンスと、当該マイクロ波伝送線路から前記アンテナへの入力インピーダンスの整合を行うマッチング回路と、
を備えたことを特徴とする請求項1から2のいずれか1つに記載の光源装置。
【請求項4】
前記マイクロ波電源は、2つ存在し、
前記一対のマイクロ波伝送線路が、それぞれのマイクロ波電源に接続される
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の光源装置。
【請求項5】
前記アンテナと前記マイクロ波伝送線路の接続点間に接続された位相差検出部を有し、
該位相差検出部が検出する位相差に基づいて、前記アンテナからの前記マイクロ波の照射強度が最大となるように前記位相制御部で位相制御を行う
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の光源装置。
【請求項6】
前記位相制御部は、
前記アンテナと前記マイクロ波伝送線路の接続点間の位相差が±πの自然数倍であるように位相を制御する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の光源装置。
【請求項7】
光源装置と、前記光源装置から射出された光束を、入力される画像情報に応じて変調し光学像を形成する光変調部と、前記光変調部により形成された光学像を投写する投写部と、を備えるプロジェクであって、
前記光源装置は、
マイクロ波を出力するマイクロ波電源と、
前記マイクロ波の照射を受けて発光する発光物質が封入された発光容器内に一端が離間して挿入された一対のアンテナと、
前記アンテナの他端にそれぞれ接続された一対のマイクロ波伝送線路と、
前記マイクロ波伝送線路のいずれか一方の側に設けられ、前記アンテナから照射されるマイクロ波の位相を制御する位相制御部と、
を備えたことを特徴とするプロジェクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−170349(P2009−170349A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−9271(P2008−9271)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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