説明

光源装置および照明装置

【課題】 従来に比べて十分な高輝度化を図ることの可能な光源装置を提供する。
【解決手段】 紫外光から可視光までの波長領域のうちの所定の波長の光を発光する固体光源5と、固体光源5からの励起光により励起され固体光源5の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも1種類の蛍光体を含む蛍光体層2と、蛍光体層2の励起光が入射する側の面とは反対の面側に設けられる放熱基板6とを備え、蛍光体層2は実質的に樹脂成分を含まず、固体光源5と蛍光体層2とが空間的に離れて配置されており、蛍光体層2の面のうち励起光が入射する側の面とは反対側に設けられた反射面による反射を用いて蛍光を取り出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置および照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LED等の光半導体と蛍光体層を組み合わせた光源装置は広く普及しているが、近年では高輝度化が進み、一般照明や自動車のヘッドランプなどその応用範囲が広がってきている。このような光源装置は、今後も高輝度化することで、さらに多様な用途での普及が進むと考えられている。
【0003】
このような光半導体と蛍光体層を組み合わせた光源装置を高輝度化するための手段として、光半導体に大電流を投入し光半導体からの励起光強度を強めることが考えられるが、実際には蛍光体層で熱が発生し、蛍光体層において樹脂成分の変色や蛍光体の温度消光による蛍光強度の低下が生じてしまう。このため、結果として、発光強度は飽和、減少し、光半導体と蛍光体層を組み合わせた光源装置の高輝度化は困難であった。
【0004】
ここで、蛍光体層内の樹脂成分の変色とは、通常、蛍光体層は一定の形状に再現性良く形成するため、蛍光体粉末を樹脂成分と混練してペースト状に調製し、印刷法等を用いて塗布形成しており、この樹脂成分が加熱され200℃程度以上になると変色してしまう現象のことである。樹脂成分は本来透明であるため、熱により樹脂成分に変色が起きると、光半導体からの励起光や蛍光体層からの蛍光の一部を吸収してしまい、高輝度化を妨げる要因となっていた。
【0005】
また、蛍光体の温度消光とは、蛍光体を加熱すると蛍光強度が低下する現象のことである。温度消光により蛍光強度が低下すると、蛍光に変換されなかったエネルギーが熱となるため蛍光体の発熱量が増加し、さらに蛍光体の温度が上昇して温度消光が進み、蛍光強度もさらに低下するという現象が起きる。このため、熱により発生する蛍光体の温度消光も、高輝度化を妨げる要因となっていた。
【0006】
これらの問題を解決するために、特許文献1には、樹脂を含まない蛍光体層を用いた光源装置が提案されている。この場合、蛍光体層は、樹脂成分を含まないため変色は起こらず、さらに蛍光体層を温度感受性の低い蛍光体のセラミックス層とするために温度消光が起きないので、高輝度化が可能である。また、図1のように蛍光体層92を光半導体(固体光源)95と直接接合することで、蛍光体層92で発生した熱を光半導体(固体光源)95側に放散することを意図していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−005367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、従来の図1に示すような光半導体(固体光源)95と蛍光体層92とが直接接合された光源装置では、光半導体(固体光源)95からの励起光によって励起された蛍光体層92からの発光(蛍光)のうち光半導体(固体光源)95側とは反対側に出射する蛍光と、蛍光体層92で吸収されずに蛍光体層92を透過する光半導体(固体光源)95からの励起光とを用いている。つまり、図1の光源装置は、蛍光体層92を透過する光を利用する透過方式のものとなっている。
【0009】
ここで、蛍光体層92からの出射光を考えると、上記透過光とともに蛍光体層92との界面で反射されて光半導体(固体光源)95側へ戻って行く光、つまり反射光も存在しており、この光(反射光)は、光半導体(固体光源)95に再吸収されるため、照明光として利用できない光となってしまうという問題があった。
【0010】
また、図1の光源装置では、蛍光体層92の熱を光半導体(固体光源)95側に放散することを意図しているが、光半導体(固体光源)95の励起光強度を高めた場合、蛍光体層92のみならず光半導体(固体光源)95でも発熱が起きるため、蛍光体層92の発熱を同じく発熱している光半導体(固体光源)95の側から放散させることとなり、熱放散の効率が良くないという問題があった。
【0011】
このように、図1の光源装置では、透過方式のものとなっていることと、蛍光体層92の発熱に対する熱放散の効率が良くないということとから、高輝度化に限界があった。
【0012】
本発明は、従来に比べて十分な高輝度化を図ることの可能な光源装置および照明装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、紫外光から可視光までの波長領域のうちの所定の波長の光を発光する固体光源と、該固体光源からの励起光により励起され該固体光源の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも1種類の蛍光体を含む蛍光体層と、該蛍光体層の前記励起光が入射する側の面とは反対の面側に設けられる放熱基板とを備え、前記蛍光体層は実質的に樹脂成分を含まず、前記固体光源と前記蛍光体層とが空間的に離れて配置されており、前記蛍光体層の面のうち励起光が入射する側の面とは反対側に設けられた反射面による反射を用いて蛍光を取り出すことを特徴とする光源装置である。
【0014】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の光源装置において、前記蛍光体層は、蛍光体セラミックスであることを特徴としている。
【0015】
また、請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2記載の光源装置において、前記蛍光体層は、前記放熱基板に金属を介して接合されていることを特徴としている。
【0016】
また、請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の光源装置において、該光源装置は、前記蛍光体層と前記放熱基板とを有する蛍光回転体を備えていることを特徴としている。
【0017】
また、請求項5記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の光源装置が用いられていることを特徴とする照明装置である。
【発明の効果】
【0018】
請求項1乃至請求項5記載の発明によれば、紫外光から可視光までの波長領域のうちの所定の波長の光を発光する固体光源と、該固体光源からの励起光により励起され該固体光源の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも1種類の蛍光体を含む蛍光体層と、該蛍光体層の前記励起光が入射する側の面とは反対の面側に設けられる放熱基板とを備え、前記蛍光体層は実質的に樹脂成分を含まず、前記固体光源と前記蛍光体層とが空間的に離れて配置されており、前記蛍光体層の面のうち励起光が入射する側の面とは反対側に設けられた反射面による反射を用いて蛍光を取り出すので、従来に比べて十分な高輝度化を図ることができる。
【0019】
特に、請求項3記載の発明によれば、請求項1または請求項2記載の光源装置において、前記蛍光体層は、前記放熱基板に金属を介して接合されているので、蛍光体層からの熱放散の効率を、より一層高めることができ、より一層高輝度化を図ることができる。
【0020】
また、請求項4記載の発明によれば、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の光源装置において、該光源装置は、前記蛍光体層と前記放熱基板とを有する蛍光回転体を備えているので、固体光源に対して蛍光体層を回転させることにより、固体光源からの励起光が当たる場所を分散させ、光照射部での発熱を抑えることができ、これにより、より一層の高輝度化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来の光源装置を示す図である。
【図2】本発明の光源装置の一構成例を示す図である。
【図3】放熱基板にフィンなどの構造を設けた構成例を示す図である。
【図4】互いに異なる蛍光体からなる複数の蛍光体層が積層された構成例を示す図である。
【図5】蛍光体層を回転軸の周りに回転させる反射型蛍光回転体として構成した例を示す図である。
【図6】反射型蛍光回転体の蛍光体層についての構成例を示す図である。
【図7】反射型蛍光回転体の蛍光体層についての他の構成例を示す図である。
【図8】反射型蛍光回転体の蛍光体層についての他の構成例を示す図である。
【図9】反射型蛍光回転体の蛍光体層についての他の構成例を示す図である。
【図10】反射型蛍光回転体の蛍光体層についての他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
図2(a),(b)は、本発明の光源装置の一構成例を示す図である。なお、図2(a)は全体の正面図、図2(b)は蛍光体層が設けられている部分の平面図である。図2(a),(b)を参照すると、この光源装置10は、紫外光から可視光までの波長領域のうちの所定の波長の光を発光する固体光源5と、該固体光源5からの励起光により励起され該固体光源5の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも1種類の蛍光体を含む蛍光体層2とを備え、固体光源5と蛍光体層2とが空間的に離れて配置されている。
【0024】
ここで、蛍光体層2には、実質的に樹脂成分を含んでいないものが用いられる。
【0025】
また、蛍光体層2の前記励起光が入射する側の面とは反対の面側には放熱基板6が設けられており、蛍光体層2は、放熱基板6に接合部7によって接合されている。ここで、接合部7には、後述のように、熱伝導率の大きな材料が用いられるのが良い。
【0026】
また、この光源装置10では、蛍光体層2の面のうち固体光源5からの励起光が入射する側の面とは反対側に設けられた反射面による反射を用いて蛍光などの光を取り出す方式(以下、反射方式と称す)が採用されている。
【0027】
このように、この光源装置10は、基本的には、固体光源5と蛍光体層2とを空間的に離して配置し、発光を反射方式で利用することを特徴としている。
【0028】
すなわち、図1に示した従来の光源装置のように、蛍光体層92が固体光源95と接している場合には、高輝度化をしようとしても、蛍光体層92と固体光源95との両方とも加熱されてしまうため、蛍光体層92からの熱放散の効率が悪かったが、図2(a),(b)の光源装置10では、蛍光体層2を固体光源5から離して配置することで、高輝度化をする場合にも、蛍光体層2からの熱を、接合部7を介して低温の放熱基板6へ放散させることが可能となり、蛍光体層2からの熱放散の効率を、図1に示した従来の光源装置に比べて、著しく高めることができる。
【0029】
また、図1に示した従来の光源装置では、固体光源95からの励起光と蛍光体層92からの蛍光のうち、固体光源95とは反対の側に出射する蛍光と、蛍光体層92で吸収されずに透過する固体光源95からの励起光とを用いている。つまり透過方式を使用している。ここで、透過方式では、蛍光体層92からの出射光を考えると、励起光については上記透過光とともに蛍光体層92との界面で反射されて固体光源95側へ戻って行く発光、つまり反射光も存在しており、この反射光は固体光源95に再吸収されるため照明光として利用できない光となってしまう。また、蛍光体層92からの蛍光は、蛍光体層92の両面から出射するため、やはり固体光源95側に出射する光は利用できない。このように、透過方式では、光の利用効率が低下してしまう。また、透過方式では、目的の色度の照明光を得るためには蛍光体層92の厚みを厚くする必要があり、蛍光体層92から固体光源95までの距離が長くなるため、蛍光体層92からの熱を固体光源95に放散する上で不利であった。
【0030】
これに対し、図2(a),(b)の光源装置10では、固体光源5とは反対の側に出射する光(励起光、蛍光)を反射面(例えば基板の反射面)で固体光源5側に反射する反射方式を採用しているので、固体光源5からの励起光によって励起された蛍光体層2からの発光(蛍光)の全て(すなわち、固体光源5側に出射する蛍光)と、蛍光体層2で吸収されなかった固体光源5からの励起光の全て(すなわち、蛍光体層2で吸収されなかった固体光源5からの光の反射光)とを照明光として利用できるため(すなわち、励起光、蛍光とも効率よく照明光として利用できるため)、光の利用効率を著しく高めることができ、高輝度化が可能となる。また、透過型に対し、反射型では、蛍光体層2の厚みが半分以下でも蛍光体層2内の光路長が等しくなり、同じ色度の光が得られるため、蛍光体層2を薄くすることができ、蛍光体層2から基板6までの距離が短くなるので、熱放散の面でも有利である。
【0031】
このように、図2(a),(b)の光源装置10では、基本的には、固体光源5と蛍光体層2とを空間的に離して配置し、発光を反射方式で利用するので、従来に比べて十分な高輝度化を図ることができる。
【0032】
さらに、図2(a),(b)の光源装置10では、蛍光体層2には、実質的に樹脂成分を含んでいないものが用いられるので、熱による変色がなく、光の吸収が少ないことから、より一層の高輝度化を図ることができる。
【0033】
ここで、樹脂成分を実質的に含まない蛍光体層2とは、蛍光体層の形成に通常使用される樹脂成分が蛍光体層の5wt%以下であるものを意味する。このような蛍光体層を実現するものとして蛍光体粉末をガラス中に分散させたもの、ガラス母体に発光中心イオンを添加したガラス蛍光体、蛍光体の単結晶や蛍光体の多結晶体(以下、蛍光体セラミックスと称す)などが挙げられる。蛍光体セラミックスは、蛍光体の製造過程において、焼成前に材料を任意の形状に成形し、焼成した蛍光体の塊である。蛍光体セラミックスは、その製造工程のうち、成形工程においてバインダーとして有機物を使用する場合があるが、成形後に脱脂工程を設けて有機成分を焼き飛ばすため、焼成後の蛍光体セラミックスには有機樹脂成分は5wt%以下しか残留しない。したがって、ここに挙げた蛍光体層は、実質的に樹脂成分を含まず、無機物質のみから構成されているため、熱による変色が発生することがない。また、無機物質のみからなるガラスやセラミックスは、一般に、樹脂よりも熱伝導率が高いため、蛍光体層2から基板6への熱放散においても有利である。特に蛍光体セラミックスは、一般的に、ガラスよりもさらに熱伝導率が高く、単結晶より製造コストが安いため、これを蛍光体層2に用いるのが好適である。
【0034】
また、蛍光体層2は、固体光源5からの励起光により励起され固体光源5の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも1種類の蛍光体を含んでいる。具体的には、固体光源5が紫外光を発光するものである場合、蛍光体層2は、例えば、青、緑、赤色などの蛍光体のうち、少なくとも1種類の蛍光体を含んでいる。固体光源5が紫外光を発光するものである場合、蛍光体層2が、例えば、青、緑、赤色の蛍光体を含んでいるときには(青、緑、赤色の蛍光体のそれぞれが例えば均一に分散されて混合されたものとなっているときには)、固体光源5からの紫外光を蛍光体層2に照射するとき、反射光として白色の照明光を得ることができる。また、固体光源5が可視光として青色光を発光するものである場合、蛍光体層2は、例えば、緑、赤、黄色などの蛍光体のうち、少なくとも1種類の蛍光体を含んでいる。固体光源5が可視光として青色光を発光するものである場合、蛍光体層2が、例えば、緑、赤色の蛍光体を含んでいるときには(緑、赤色の蛍光体のそれぞれが例えば均一に分散されて混合されたものとなっているときには)、固体光源5からの青色光を蛍光体層2に照射するとき、反射光として白色などの照明光を得ることができる。また、固体光源5が可視光として青色光を発光するものである場合、蛍光体層2が、例えば、黄色の蛍光体だけを含んでいるときには、固体光源5からの青色光を蛍光体層2に照射するとき、反射光として白色などの照明光を得ることができる。
【0035】
また、図2(a),(b)の光源装置10において、放熱基板6は、光(固体光源5からの励起光によって励起された蛍光体層2からの発光(蛍光)と、蛍光体層2で吸収されなかった固体光源5からの光)に対する反射面の役割と、蛍光体層2から放散してきた熱を外部へ放散させる役割と、蛍光体層2の支持基板の役割も担うものである。このため、高い光反射特性、伝熱特性、加工性が求められる。この放熱基板6には、金属基板やアルミナなどの酸化物セラミックス、窒化アルミニウムなどの非酸化セラミックスなどが使用可能であるが、特に高い光反射特性、伝熱特性、加工性を併せ持つ金属基板が使用されるのが望ましい。
【0036】
また、蛍光体層2と放熱基板6との接合部7には、有機接着剤、無機接着剤、低融点ガラス、金属(金属のろう付け)などを用いることができる。接合部7も、光(固体光源5からの励起光によって励起された蛍光体層2からの発光(蛍光)と、蛍光体層2で吸収されなかった固体光源5からの光)に対する反射面の役割と、蛍光体層から熱を放散させる役割とを担うものであるから、高い光反射特性と伝熱特性を併せ持つ金属(金属のろう付け)が用いられるのが望ましい。
【0037】
次に、図2(a),(b)の光源装置10をより詳細に説明する。
【0038】
図2(a),(b)の光源装置10において、固体光源5には、紫外光から可視光領域に発光波長をもつ発光ダイオードや半導体レーザーなどが使用可能である。
【0039】
より具体的に、固体光源5には、例えば、InGaN系の材料を用いた発光波長が約380nmの近紫外光を発光する発光ダイオードや半導体レーザーなどを用いることができる。この場合、蛍光体層2の蛍光体としては、波長が約380nmないし約400nmの紫外光により励起されるものとして、例えば、赤色蛍光体には、CaAlSiN:Eu2+、CaSi:Eu2+、LaS:Eu3+、KSiF:Mn4+、 KTiF:Mn4+等を用いることができ、緑色蛍光体には、(Si,Al)(O,N):Eu2+、BaMgAl1017:Eu2+,Mn2+、(Ba,Sr)SiO:Eu2+等を用いることができ、青色蛍光体には、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(POl2:Eu2+、BaMgAl1017:Eu2+、LaAl(Si,Al)(N,O)10:Ce3+等を用いることができる。
【0040】
また、固体光源5には、例えば、GaN系の材料を用いた発光波長が約460nmの青色光を発光する発光ダイオードや半導体レーザーなどを用いることができる。この場合、蛍光体層2の蛍光体としては、波長が約440nmないし約470nmの青色光により励起されるものとして、例えば、赤色蛍光体には、CaAlSiN:Eu2+、CaSi:Eu2+、KSiF:Mn4+、KTiF:Mn4+等を用いることができ、緑色蛍光体には、Y(Ga,Al)12:Ce3+、CaScSi12:Ce3+、CaSc:Eu2+、(Ba,Sr)SiO:Eu2+、BaSi12:Eu2+、(Si,Al)(O,N):Eu2+等を用いることができる。また、波長が約440nmないし約470nmの青色光により励起されるものとして、例えば、YAl12:Ce3+ (YAG)、(Sr,Ba)SiO:Eu2+、Ca(Si,Al)12(O,N)16:Eu2+等の黄色蛍光体を用いることができる。
【0041】
蛍光体層2としては、これらの蛍光体粉末をガラス中に分散させたものや、ガラス母体に発光中心イオンを添加したガラス蛍光体、樹脂などの結合部材を含まない蛍光体セラミックス等を用いることができる。蛍光体粉末をガラス中に分散させたものの具体例としては、上に列挙した組成の蛍光体粉末をP、SiO、B、Alなどの成分を含むガラス中に分散したものが挙げられる。ガラス母体に発光中心イオンを添加したガラス蛍光体としては、Ce3+やEu2+を付活剤として添加したCa−Si−Al−O−N系やY−Si−Al−O−N系などの酸窒化物系ガラス蛍光体が挙げられる。蛍光体セラミックスとしては、上に列挙した組成の蛍光体組成からなり、樹脂成分を実質的に含まない焼結体が挙げられる。これらの中でも透光性を有する蛍光体セラミックスを使用することが望ましい。これは、焼結体中に光の散乱の原因となるポアや粒界の不純物がほとんど存在しないために透光性を有するに至った蛍光体セラミックスである。ポアや不純物は熱拡散を妨げる原因にもなるため、透光性セラミックスは高い熱伝導率を示す。このため蛍光体層として利用した場合には励起光や蛍光を拡散により失うことなく蛍光体層から取り出して利用でき、さらに蛍光体層で発生した熱を効率良く放散することができる。透光性を示さない焼結体でも出来るだけポアや不純物の少ないものが望ましい。ポアの残存量を評価する指標としては蛍光体セラミックスの比重の値を用いることができ、その値が計算される理論値に対して95%以上のものが望ましい。
【0042】
ここで、青色励起の黄色発光蛍光体であるYAl12:Ce3+蛍光体を例に、透光性を有する蛍光体セラミックスの製造方法を説明する。蛍光体セラミックスは出発原料の混合工程、成形工程、焼成工程、加工工程を経て製造される。出発原料には、酸化イットリウムや酸化セリウムやアルミナ等、YAl12:Ce3+蛍光体の構成元素の酸化物や、焼成後に酸化物となる炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩等を用いる。出発原料の粒径はサブミクロンサイズのものが望ましい。これらの原料を化学量論比となるように秤量する。このとき焼成後のセラミックスの透過率向上を目的として、カルシウムやシリコンなどの化合物を添加することも可能である。秤量した原料は、水もしくは有機溶剤を用い、湿式ボールミルにより十分に分散、混合を行う。次に混合物を所定の形状に成形する。成形方法としては、一軸加圧法、冷間静水圧法、スリップキャスティング法や射出成形法等を用いることができる。得られた成形体を1600〜1800℃で焼成する。これにより、透光性のYAl12:Ce3+蛍光体セラミックスを得ることができる。
【0043】
以上のようにして作製した蛍光体セラミックスは、自動研磨装置などを用いて、厚さ数十〜数百μmの厚みに研磨し、さらに、ダイアモンドカッターやレーザーを用いたダイシングやスクライブにより、円形や四角形や扇形、リング形など任意の形状の板に切り出して使用する。
【0044】
ここで、蛍光体セラミックスは、空気に対して屈折率が高く、さらに、内部にポアなどの散乱の原因となるものが少なく、光がセラミックス内部を導波するため、板状に成形した場合には側面から出射される発光成分が増加し、正面方向へ出射される発光成分が減少してしまう。この問題を解決するために、セラミックスの表面にエッチングにより凹凸の光取出し構造を設けたり、レンズを実装したり、側面に反射層を設けることで、正面方向へ出射される発光成分を増加させることも可能である。
【0045】
また、放熱基板6には、金属基板や酸化物セラミックス、非酸化セラミックスなどを使用可能であるが、特に高い光反射特性、伝熱特性、加工性を併せ持つ金属基板を使用するのが望ましい。金属としては、Al、Cu、Ti、Si、Ag、Au、Ni、Mo、W、Fe、Pdなどの単体や、それらを含む合金が使用可能である。また、放熱基板6の表面に増反射や腐食防止を目的としたコーティングを施しても良い。また、放熱基板6には、放熱性を高めるために、図3に示すようにフィンなどの構造8を設けても良い。
【0046】
また、蛍光体層2と放熱基板6との接合部7には、有機接着剤、無機接着剤、低融点ガラス、金属ろう付けなどを用いることができる。これらの中でも、高い反射率と伝熱特性を両立可能な金属ろう付けを用いるのが望ましい。セラミックス(蛍光体層2)と金属基板(放熱基板6)との接合は、まず、セラミックス側に金属膜を形成し、その金属膜と金属基板を金属ろう付けすることで可能である。セラミックスへの金属膜の形成は、真空中での蒸着法やスパッタ法、もしくは高融点金属法などが使用可能である。なお、高融点金属法とは、セラミックスの表面に金属微粒子を含む有機バインダーを塗布し、水蒸気と水素を含む還元雰囲気下で1000〜1700℃に加熱する方法である。このとき形成される金属膜には、Si、Nb、Ti、Zr、Mo、Ni、Mn、W、Fe、Pt、Al、Au、Pd、Ta、Cuなどを含む単体や合金が用いられる。また、金属ろう材には、Ag、Cu、Zn、Ni、Sn、Ti、Mn、In、Biなどを含むろう材が使用可能である。必要であれば金属膜と金属の接合面の酸化被膜をフラックスで除去し、接合面に金属ろう材を配置し、200〜800℃に加熱し、冷却することで、接合することができる。また、接合後にセラミックスと金属の膨張係数の差による接合面の破壊を防ぐために、セラミックスと金属の中間の膨張係数を有する物質を介在させて接合を行っても良い。
【0047】
図2(a),(b)の光源装置10では、1つの蛍光体層2だけが設けられている構成となっているが、例えば図4に示すように、複数の蛍光体層(図4の例では、2つの蛍光体層2j,2k)が積層された構成にすることもできる。この場合、例えば、固体光源5が可視光として青色光を発光するものであるとき、蛍光体層2jには、緑色の蛍光体からなるものを用い、蛍光体層2kには、赤色の蛍光体からなるものを用いれば、反射光として白色などの照明光を得ることができる。
【0048】
また、図2(a),(b)の光源装置10において、蛍光体層2は、固定されていてもよいが、蛍光体層2を移動可能に構成することもできる。例えば、図5に示すように、蛍光体層2を回転軸Xの周りに回転させる(モーター4等によって回転させる)反射型蛍光回転体1として構成することもできる。すなわち、反射型蛍光回転体1は、蛍光体層2と放熱基板6を接合したものをモーター4等と連結することで実現できる。また、この反射型蛍光回転体1において、放熱基板6や接合部7が、励起光および蛍光の反射面として機能している。なお、放熱基板6の形状は、円盤状や四角形などが考えられる。また回転の安定性を確保するために、円盤の一部を切り欠いたり、逆におもりをつけた形状とすることも可能である。
【0049】
なお、図5の例では、反射型蛍光回転体1の蛍光体層2としては、1種類の蛍光体層だけが用いられている。具体的に、図5の例では、反射型蛍光回転体1の蛍光体層2として、例えば黄色蛍光体からなる蛍光体層だけが用いられ、この場合、固体光源5として青色光を発光するものを用いれば、反射光として白色などの照明光を得ることができる。あるいは、図5の例では、反射型蛍光回転体1の蛍光体層2として、例えば青、緑、赤色の蛍光体のそれぞれが例えば均一に分散されて混合されたものとなっている蛍光体層だけが用いられ、この場合、固体光源5として紫外光を発光するものを用いれば、反射光として白色などの照明光を得ることができる。ただし、本発明は、これに限定されず、種々の変形が可能である。すなわち、反射型蛍光回転体1の蛍光体層2としては、青、緑、黄、赤色などの蛍光体層を少なくとも1つ配置した構成にすることができる。図6(a),(b)、図7(a),(b)、図8(a),(b)、図9(a),(b)には、反射型蛍光回転体1の蛍光体層2についての種々の構成例が示されている。なお、図6(a)、図7(a)、図8(a)、図9(a)はそれぞれ平面図、図6(b)、図7(b)、図8(b)、図9(b)は、それぞれ、図6(a)、図7(a)、図8(a)、図9(a)のA−A線における断面図である。図6(a),(b)の例は、蛍光体層2としては、1種類の蛍光体層(例えば黄色蛍光体からなる蛍光体層)だけが用いられる場合であり、図5の例に相当している。また、図7(a),(b)の例は、反射型蛍光回転体1の蛍光体層2として、2種類の蛍光体層2a,2b(例えば赤色蛍光体からなる赤色の蛍光体層2aと緑色蛍光体からなる緑色の蛍光体層2b)が2等分に分割された蛍光体領域として設けられており、この場合、固体光源5として青色光を発光するものを用いれば、反射型蛍光回転体1の回転時の反射光として白色などの照明光を得ることができる。また、図8(a),(b)の例は、反射型蛍光回転体1の蛍光体層2として、3種類の蛍光体層2a,2b,2c(例えば赤色蛍光体からなる赤色の蛍光体層2aと緑色蛍光体からなる緑色の蛍光体層2bと青色蛍光体からなる青色の蛍光体層2c)が3等分に分割された蛍光体領域として設けられており、この場合、固体光源5として紫外光を発光するものを用いれば、反射型蛍光回転体1の回転時の反射光として白色などの照明光を得ることができる。また、図9(a),(b)の例は、反射型蛍光回転体1の蛍光体層2として、2種類の蛍光体層2a,2b(例えば赤色蛍光体からなる赤色の蛍光体層2aと緑色蛍光体からなる緑色の蛍光体層2b)が蛍光体領域として設けられ、蛍光体層が設けられていない領域が非蛍光体領域12cとして設けられており、この場合、固体光源5として青色光を発光するものを用いれば、反射型蛍光回転体1の回転時の反射光として白色などの照明光を得ることができる。この他にも、種々の変形が可能である。
【0050】
また、反射型蛍光回転体1の上述の各例では、複数の蛍光体層を使用する場合、各蛍光体層を水平方向に並べて配置しているが、図10(a),(b)に示すように、複数の蛍光体層(図10(a),(b)の例では、2つの蛍光体層2j,2k)を垂直方向に重ねて(積層して)配置しても良い。なお、図10(a)は平面図、図10(b)は、図10(a)のA−A線における断面図である。この場合、例えば、固体光源5が可視光として青色光を発光するものであるとき、蛍光体層2jには、緑色蛍光体からなるものを用い、蛍光体層2kには、赤色蛍光体からなるものを用いれば、反射光として白色などの照明光を得ることができる。
【0051】
このように、蛍光体層2を回転軸Xの周りに回転させる(モーター4等によって回転させる)反射型蛍光回転体1として構成することにより、すなわち、固体光源5に対して蛍光体層2を回転させることにより、固体光源5からの励起光が当たる場所を分散させ、光照射部での発熱を抑えることができ(この蛍光回転体1を用いることで、そもそも蛍光体の発熱を抑えることができ)、これにより、より一層の高輝度化が可能となる。
【0052】
上述したように、本発明では、固体光源5と蛍光体層2を放熱基板6に対して同じ側に設置することで、反射型の光源装置となる。もちろん必要であれば、固体光源5と蛍光体層2との間にレンズなどの光学素子を入れることもできる。
【0053】
また、本発明の上述した種々の光源装置を所定のレンズ系などの光学部品と組み合わせることで、高輝度化が可能な照明装置を提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、照明一般などに利用可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 蛍光回転体
2 蛍光体層
4 モーター
5 固体光源
6 放熱基板
7 接合部
10 光源装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外光から可視光までの波長領域のうちの所定の波長の光を発光する固体光源と、該固体光源からの励起光により励起され該固体光源の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも1種類の蛍光体を含む蛍光体層と、該蛍光体層の前記励起光が入射する側の面とは反対の面側に設けられる放熱基板とを備え、前記蛍光体層は実質的に樹脂成分を含まず、前記固体光源と前記蛍光体層とが空間的に離れて配置されており、前記蛍光体層の面のうち励起光が入射する側の面とは反対側に設けられた反射面による反射を用いて蛍光を取り出すことを特徴とする光源装置。
【請求項2】
請求項1記載の光源装置において、前記蛍光体層は、蛍光体セラミックスであることを特徴とする光源装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の光源装置において、前記蛍光体層は、前記放熱基板に金属を介して接合されていることを特徴とする光源装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の光源装置において、該光源装置は、前記蛍光体層と前記放熱基板とを有する蛍光回転体を備えていることを特徴とする光源装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の光源装置が用いられていることを特徴とする照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−129354(P2011−129354A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286397(P2009−286397)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】