説明

光源装置及びプロジェクター

【課題】経年変化による管球部及び封止部の変色及び劣化を防止するとともにトリガー線
を設けることによる効果を長期間維持可能な光源装置を提供する。
【解決手段】管球部110と、第1電極121及び第2電極122と、第1金属箔131
及び第2金属箔132と、第1封止部141及び第2封止部142と、第1リード線15
1及び第2リード線152とを有する発光管100を備える光源装置であって、第1封止
部141に接続される第1トリガー線210及び第2封止部142に接続される第2トリ
ガー線220をさらに有し、第1トリガー線210は管球部110と第1封止部141と
の境界部A1から所定長さ離間した位置A2に一端側が接続され、他端側が第2リード線
152に接続され、第2トリガー線220は管球部110と第2封止部142との境界部
B1から所定長さ離間した位置B2に一端側が接続され、他端側が第2リード線152に
接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置及びプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクターの光源装置として、発光管の放電開始を補助することによって点灯始動
性の改善を図るためのトリガー線を設けた光源装置が知られている(例えば、特許文献1
及び特許文献2参照。)。トリガー線を設けることによって得られる効果としては、光源
装置の点灯始動時に必要な電圧(点灯始動電圧という。)を10%以上低下できることが
挙げられる。このため、パルス状の交流電圧による点灯始動時においては、パルス数が少
なくて済み、いわゆる点灯始動性の向上が図れるとともに、光源装置の量産時においては
、個々の光源装置の点灯始動電圧にバラつきが生じた場合でも、そのバラツキを吸収でき
るといった効果もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−97591号公報
【特許文献2】特開2005−32521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている技術(第1従来技術という。)及び特許文献2に記載され
ている技術(第2従来技術という。)においては、トリガー線は、管球部を跨ぐように配
線され、かつ、一端側が管球部と封止部との境界部に所定の締め付け力によって巻回され
た状態で接続されている。このため、光源装置の点灯時においては、管球部が高温となり
、トリガー線が管球部の熱に直接的に晒されることとなる。トリガー線が熱に直接的に晒
されると、トリガー線の材質(例えば、ステンレスなど)も影響して、石英ガラスなどで
なる管球部及び封止部の表面を変色させてしまうといった問題がある。管球部が変色した
場合、管球部を透過する光の損失につながる。
【0005】
また、管球部が高温となると、封止部における管球部との境界部付近も当然のことなが
ら高温となり、特に、トリガー線が接続されている部分(接続部という。)において封止
部が変色してしまうこととなる。また、点灯時と非点灯時との温度差も激しいため、点灯
/非点灯が長期間において繰り返されると、トリガー線の接続部において、トリガー線及
び封止部の熱膨張/収縮が繰り返されることにより、トリガー線の接続部におけるトリガ
ー線の締め付け状態が変化してくる。
【0006】
なお、トリガー線を設けることによって得られる効果すなわち発光管の点灯始動性の改
善を図るといった効果を長期間維持するためには、トリガー線は所定の締め付け力によっ
て巻回された状態で接続されている必要があるが、トリガー線の接続部におけるトリガー
線の締め付け状態が変化してくると、トリガー線を設けることによって得られる効果を長
期間維持できなくなるといった問題もある。
【0007】
また、トリガー線は、管球部を跨いで配線されるため、管球部からの光の一部がトリガ
ー線によって阻害されて光の損失が生じるおそれもある。特に、トリガー線が管球部の表
面に近い位置で配線されると、光の損失はより大きなものとなる。
【0008】
そこで本発明は、少なくとも、経年変化による管球部及び封止部の変色及び劣化を防止
するとともに、トリガー線を設けることによって得られる効果を長期間維持することがで
きる光源装置を提供することを目的とする。また、当該光源装置を用いることにより信頼
性の高いプロジェクターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の光源装置は、管球部と、前記管球部に内蔵される第1電極及び第2電極と、前
記第1電極に電気的に接続される第1金属箔と、前記第2電極に電気的に接続される第2
金属箔と、前記第1金属箔を封止する第1封止部と、前記第2金属箔を封止する第2封止
部と、前記第1金属箔に電気的に接続されて前記第1封止部から外部に突出する第1リー
ド線と、前記第2金属箔に電気的に接続されて前記第2封止部から外部に突出する第2リ
ード線とを有する発光管を備える光源装置であって、前記発光管の放電開始を補助するた
めに前記第1封止部に接続される第1トリガー線及び前記第2封止部に接続される第2ト
リガー線をさらに有し、前記第1トリガー線は、前記管球部と前記第1封止部との境界部
を第1境界部としたとき、前記第1境界部から所定長さだけ離間した位置に一端側が接続
され、他端側が前記第2リード線に電気的に接続され、前記第2トリガー線は、前記管球
部と前記第2封止部との境界部を第2境界部としたとき、前記第2境界部から所定長さだ
け離間した位置に一端側が接続され、他端側が前記第2リード線に電気的に接続されるこ
とを特徴とする。
【0010】
このように、本発明の光源装置は、トリガー線(第1トリガー線及び第2トリガー線)
を封止部(第1封止部及び第2封止部)に接続する際、管球部と封止部との境界部(第1
境界部及び第2境界部)から所定長さだけ離間した位置に接続するようにしている。これ
は、トリガー線を封止部に接続する際、管球部と封止部との境界部から所定長さだけ離間
した位置に接続しても、点灯始動性の改善が図れることが確認できたためである。このよ
うな構成とすることにより、トリガー線が管球部からの熱に直接的に晒されることを防止
でき、経年変化による管球部及び封止部の変色及び劣化を抑制することができるとともに
、トリガー線を設けることによって得られる効果を長期間維持することができる。
【0011】
本発明の光源装置においては、前記第1トリガー線の一端側が接続される位置及び前記
第2トリガー線の一端側が接続される位置は、前記第1境界部から当該第1境界部の反対
側の前記第1封止部の端部までの長さ及び前記第2境界部から当該第2境界部の反対側の
前記第2封止部の端部までの長さをそれぞれ「L」としたとき、前記第1境界部及び第2
境界部からそれぞれ略L/4以上離間した位置とすることが好ましい。
【0012】
このように、トリガー線(第1トリガー線及び第2トリガー線)を封止部(第1封止部
及び第2封止部)に接続する際の接続位置を管球部と封止部との境界部(第1境界部及び
第2境界部)からそれぞれ略L/4以上離間した位置とすることによって、トリガー線が
管球部の熱によって劣化することを抑制することができる。なお、トリガー線の接続位置
を、第1境界部及び第2境界部からそれぞれ略L/4以上離間した位置としたのは、第1
境界部及び第2境界部からそれぞれ略L/4離間した位置においては、管球部の温度がト
リガー線の劣化を抑制できる温度にまで低下することが確認され、かつ、点灯始動電圧の
改善という点においても有効であることが確認されたことによるものである。
【0013】
本発明の光源装置においては、前記第1電極及び第2電極の間には、1KHzから30
MHzの周波数を有する交流波が与えられることが好ましい。
【0014】
第1電極及び第2電極の間に与える交流波の周波数をこのような範囲の周波数とするこ
とにより、放電開始を適切に行うことができる。すなわち、第1電極及び第2電極の間の
グロー放電が開始される前に、一方の電極から管球部表面に沿った沿面放電が他方の電極
に向かって発生し、それがいわゆる種火となってグロー放電が開始されると考えられ、こ
の沿面放電は単位時間当たりの電圧変化が大きいほど低電圧で進展が可能となるので、結
果として周波数が高いほど、低電圧で沿面放電の発生及び進展が可能となるが、過剰に高
い周波数では、いわゆるインピーダンス整合の課題と、配線における寄生インピーダンス
及び配線長の影響の問題がある。これらの点を考慮して、印加電圧の周波数は1KHzか
ら30MHz程度の範囲とすることが好ましいとの結論を得た。
【0015】
本発明の光源装置においては、前記第1封止部に取り付けられて、前記管球部から射出
される光を被照明領域側に反射する主反射鏡をさらに有し、前記第1トリガー線は、当該
第1トリガー線の前記一端側と前記他端側との間の少なくとも一部が前記主反射鏡の背面
側を通るように配線されることが好ましい。
【0016】
第1トリガー線をこのように配線することにより、第1トリガー線は、発光管から離れ
た位置に存在することとなるので、管球部からの光の一部が第1トリガー線によって阻害
されることを極力防止することができる。また、第1トリガー線が管球部の表面から離れ
ることにより、第1トリガー線が管球部の熱に直接的に晒されることがなくなり、第1ト
リガー線の劣化を抑制するとともに、第1トリガー線が高温となることによる管球部及び
封止部に及ぼす悪影響を抑制することができる。
【0017】
本発明の光源装置においては、前記第1トリガー線の前記一端側が前記主反射鏡の反射
面側において前記第1封止部に接続されている場合、前記第1トリガー線は、前記一端側
から前記主反射鏡を貫通して前記主反射鏡の背面側を通って前記他端側が前記第2リード
線に接続されることが好ましい。
【0018】
このように、第1トリガー線が主反射鏡を貫通して配線されることにより、第1トリガ
ー線が主反射鏡の背面側を通るような配線とすることができる。なお、主反射鏡を貫通さ
せる際の孔は、主反射鏡に元々設けられている第1封止部が挿通される挿通孔を利用する
ことができる。
【0019】
本発明の光源装置においては、前記主反射鏡の反射面と対向する反射面を有する副反射
鏡が前記第2封止部に取り付けられ、前記第2トリガー線は、前記副反射鏡の背面側にお
いて前記第2封止部に接続されることが好ましい。
【0020】
このように、副反射鏡を有する光源装置においては、第2トリガー線を第2封止部に説
接続する際は、副反射鏡よりも前記第2リード線側すなわち副反射鏡の背面側に第2トリ
ガー線を接続することによって、第2トリガー線220が受ける管球部110の熱の影響
をより小さくすることができる。
【0021】
本発明の光源装置の他の態様(本発明の光源装置の第2態様という。)は、管球部と、
前記管球部に内蔵される第1電極及び第2電極と、前記第1電極に電気的に接続される第
1金属箔と、前記第2電極に電気的に接続される第2金属箔と、前記第1金属箔を封止す
る第1封止部と、前記第2金属箔を封止する第2封止部と、前記第1金属箔に電気的に接
続されて前記第1封止部から外部に突出する第1リード線と、前記第2金属箔に電気的に
接続されて前記第2封止部から外部に突出する第2リード線とを有する発光管を備える光
源装置であって、前記発光管の放電開始を補助するために前記第1封止部に接続されるト
リガー線をさらに有し、前記トリガー線は、前記管球部と前記第1封止部との境界部を第
1境界部としたとき、前記第1境界部から所定長さだけ離間した位置に一端側が接続され
、他端側が前記第2リード線に電気的に接続されることを特徴とする。
【0022】
このような構成とすることにより、トリガー線は一本で済み、構成を簡素化することが
できる。また、本発明の光源装置の第2の態様においても、管球部と封止部との境界部か
ら所定長さだけ離間した位置にトリガー線を接続することによって、トリガー線が管球部
からの熱に直接的に晒されることを防止でき、経年変化による管球部及び封止部の変色及
び劣化を抑制するとともに、トリガー線を設けることによって得られる効果を長期間維持
することができる。
【0023】
なお、本発明の光源装置の第2態様においても、前記第トリガー線の一端側が接続され
る位置は、前記第1境界部から前記第1封止部の端部までの長さを「L」としたとき、前
記第1境界部から略L/4以上離間した位置とすることが好ましい。
【0024】
また、本発明の光源装置の第2態様においても、前記第1電極及び第2電極の間には、
1KHzから3MHzの周波数を有する交流波が与えられることが好ましい。
【0025】
また、本発明の光源装置の第2態様においても、前記第1封止部に取り付けられて、前
記発光管から射出される光を被照明領域側に反射する主反射鏡をさらに有し、前記トリガ
ー線は、当該トリガー線の前記一端側と前記他端側との間の少なくとも一部が前記主反射
鏡の背面側を通るように配線されることが好ましい。
【0026】
また、本発明の光源装置の第2態様においても、前記トリガー線の前記一端側が前記主
反射鏡の反射面側において前記第1封止部に接続されている場合、前記トリガー線は、前
記一端側から前記主反射鏡を貫通して前記主反射鏡の背面側を通って前記他端側が前記第
2リード線に接続されることが好ましい。
【0027】
本発明のプロジェクターは、光源装置と、前記光源装置からの光を画像情報に基づいて
変調する光変調素子と、前記光変調素子によって変調された光を投写画像として投写する
投写光学系とを備えるプロジェクターであって、前記光源装置として、前記した本発明の
光源装置を用いたことを特徴とする。
【0028】
本発明のプロジェクターによれば、光源装置として本発明の光源装置を用いているので
、トリガー線が管球部からの熱に直接的に晒されることを防止でき、経年変化による管球
部及び封止部の変色及び劣化を抑制するとともに、トリガー線を設けることによって得ら
れる効果を長期間維持することができ、それによって、信頼性の高いプロジェクターとす
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】発光管の点灯始動時において使用する交流パルスの一例を示す図。
【図2】発光管の放電開始に至るまでのプロセスを説明するための模式図。
【図3】トリガー線を設けた場合の効果を説明する図。
【図4】トリガー線の接続例について説明するための図。
【図5】一対の封止部のそれぞれにトリガー線を接続して点灯始動電圧を調べる実験について説明する図。
【図6】実施形態1に係る光源装置10の構成を示す図。
【図7】実施形態1に係る光源装置10を採用したプロジェクターPJの光学系の構成を示す平面図。
【図8】実施形態2に係る光源装置20の構成を示す図。
【図9】実施形態3に係る光源装置30の構成を示す図。
【図10】実施形態4に係る光源装置40の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について説明する。具体的な実施形態の説明に入る前にまずは
発光管の放電開始に至るプロセス及びトリガー線を設けることにより得られる効果などに
ついて説明する。
【0031】
図1は、発光の点灯始動時において使用する交流パルスの一例を示す図である。ここで
述べる交流パルスというのは、図1に示すように、減衰する交流波がパルス状に繰り返さ
れる電圧(又は電力)である。図1において、tは交流波の1/4周期であり、Tは交流
パルスの繰り返し周期である。なお、交流波の周波数は、1KHzから30MHz程度と
し、好ましくは10KHzから10MHzである。交流波の周波数をこのような範囲とす
るのは、下記のような理由からである。
【0032】
交流波を利用した発光管の点灯始動については、電極間のグロー放電が開始される前に
、一方の電極から管球部の内部の壁表面に沿った沿面放電が他方の電極に向かって発生し
、それがいわゆる種火となってグロー放電が開始されると考えられる。この沿面放電は単
位時間当たりの電圧変化(dV/dt)が大きいほど低電圧で進展が可能となるので、結
果として周波数が高いほど、低電圧で沿面放電の発生及び進展が可能となる。ただし、過
剰に高い周波数では、いわゆるインピーダンス整合の課題と、配線における寄生インピー
ダンス及び配線長の影響の問題があるので好ましくない。したがって、これらの点を考慮
して、交流波の周波数は1KHzから30MHz程度とし、より好ましくは10KHzか
ら10MHzである。
【0033】
図2は、発光管の放電開始に至るまでのプロセスを説明するための模式図である。発光
管の放電開始に至るまでのプロセスは図2によって説明できると考えられる。図2におい
ては、光源装置の構成要素としては発光管100のみが模式的に示されており、光源装置
としての他の構成要素は省略されている。
【0034】
図2に示す発光管100は、管球部110と、第1電極121及び第2電極122と、
第1電極121に電気的に接続されている第1金属箔131と、第2電極122に電気的
に接続されている第2金属箔132と、第1金属箔131を封止する第1封止部141と
、第2金属箔132を封止する第2封止部142とを有している。発光管100は、これ
らの構成要素の他に、第1金属箔131及び第2金属箔132に電気的に接続されるそれ
ぞれのリード線なども有しているが、図2においてはこれらの構成要素についての図示は
省略されている。
【0035】
図2(a)〜(c)は発光管の放電開始に至るまでの各プロセスを示すものであり、あ
る周波数(50KHzとしている。)の交流パルスを、例えば、第1電極121及び第2
電極122に印加した際のある1/4周期(図1における1/4周期t)における状況を
示すものである。したがって、当該半周期のあとの1/4周期の状態(3/4周期)では
、電界や放電を示す矢印は図示において左右逆方向の状態となる。また、図2(a)〜(
c)において、破線は等電位面を表している。また、図2(a)〜(c)は模式図である
ので、電界を示す矢印の方向などは実際とは異なる場合もある。
【0036】
図2(a)は第1電極121及び第2電極122に交流パルスを印加し始めた段階(初
期段階という。)を示すものである。この初期段階においては、電界は第1電極121及
び第2電極122の間及び管球部110を形成する石英ガラスなどの部材(管球部材とい
う。)内に生じるが、電束量としては管球部材の誘電率及び電場を垂直に切断した断面に
おける管球部材の断面積が第1電極121及び第2電極122の間の誘電率及び断面積よ
りも大きいため、大多数の電束が管球部材を経由している。
【0037】
なお、電束量の量的な差としては、発光管100の形状及び第1電極121及び第2電
極122の形状とその配置などにもよるが、管球部材を経由する電束量は第1電極121
及び第2電極122の間の電束量よりも100倍程度多いと考えられる。また、図2(a
)の初期段階では、等電位面は、第1電極121及び第2電極122の間における左右方
向の中心においてほぼ左右対称となっている。
【0038】
図2(b)は図2(a)の初期段階から第1電極121及び第2電極122に印加する
電圧が徐々に上昇し、電圧の上昇に伴って管球部110の内部の壁面に沿面放電が進展し
始めた様子を示すものであり、グロー放電直前の状態である。沿面放電は管球部110の
内部の壁面上の気体が電離している状況であり、電位的には放電の基となる一方の電極(
第1電極121とする。)とほぼ同等の電位となるので、等電位面は、他方側の電極(第
2電極122)側に圧縮された状態となる。また、沿面放電が進展した部分からは管壁側
に電束が生じており、その電束が管球部材の中に向かって伸びて他方の電極側に向って行
く。このときの第1電極121と第2電極122との電極間における電気特性は容量性で
ある。
【0039】
図2(c)は図2(b)の状態から第1電極121及び第2電極122に印加する電圧
をわずかに上昇させた場合であり、グロー放電特有の陽光柱が生じた状態(グロー放電開
始状態)を示している。図2(c)の状態は、図2(b)の状態に比較すると、印加電圧
は瞬時に降下するとともに電流が急上昇する。このときの第1電極121と第2電極12
2との電極間における電気特性は定電圧特性である。
【0040】
図3は、トリガー線を設けた場合の効果を説明する図である。図3においては、管球部
110と第2封止部142との境界部にトリガー線210が設けられた場合が例示されて
いる。なお、トリガー線210は、第2封止部142に所定の締め付け力によって巻回さ
れた状態で接続される。また、トリガー線210は第1電極121に電気的に接続されて
おり、第1電極121と同電位の関係にある。
【0041】
図3に示すように、トリガー線210が設けられると、トリガー線210の電位(第1
電極121の電位)によって図2(b)で示した等電位面が第2電極122側にさらに圧
縮された状態となり、等電位面の偏りが、より大きくなる。このために沿面放電がさらに
進展し、それによってグロー放電への移行に必要な電圧(点灯始動電圧)を低下させるこ
とができると考えられる。これはトリガー線が放電開始を補助し、それによってグロー放
電への移行に必要な電圧を低下させることができること、すなわち、トリガー線を設ける
ことによって、点灯始動性の改善(点灯始動電圧の低電圧化)が可能となることを示すも
のである。
【0042】
このように、発光管100の点灯始動性を改善させるためにトリガー線210を設ける
ことは有効な手段であるが、トリガー線210の接続の仕方によって、点灯始動電圧の大
きさも異なってくる。
【0043】
図4は、トリガー線の接続例について説明するための図である。図4(a)は発光管1
00にトリガー線が設けられていない状態を示すものである。図4(a)に示す発光管1
00は、管球部110と、第1電極121及び第2電極122と、第1電極121に電気
的に接続されている第1金属箔131と、第2電極122に電気的に接続されている第2
金属箔132と、第1金属箔131を封止するための第1封止部141と、第2金属箔1
32を封止するための第2封止部142と、第1金属箔131に電気的に接続されて第1
封止部141の端部から外部に突出している第1リード線151と、第2金属箔132に
電気的に接続されて第2封止部142の端部から外部に突出している第2リード線152
とを有している。なお、発光管100の構成は、図4(b),(c)においても同様であ
る。
【0044】
図4(b)は図4(a)に示す発光管100にトリガー線210を設けた場合である。
トリガー線210は、一端側が管球部110と第1封止部141との境界部に巻回された
状態で接続され、他端部が第2封止部142から突出している第2リード線152に接続
された例を示している。
【0045】
また、図4(c)は図4(a)に示す発光管100にトリガー線210,220を設け
た場合である。すなわち、図4(c)は図4(b)に示したトリガー線210に加えてト
リガー線220を設けたものである。以下では、トリガー線210を第1トリガー線21
0、トリガー線220を第2トリガー線220と呼ぶことにする。
【0046】
第1トリガー線210は、図4(b)と同様に接続されている。一方、第2トリガー線
220は、一端側が管球部110と第2封止部142との境界部に巻回された状態で接続
され、他端部が第2封止部142から突出している第2リード線152に接続されている
。なお、図4(c)においては、第1トリガー線210の他端側と第2トリガー線220
の他端側は、共通の線によって第2リード線152に接続されている例が示されている。
【0047】
ここで、トリガー線を設けない場合(図4(a)参照。)の点灯始動電圧をVsとし、
第1トリガー線210のみを設けた場合(図4(b)参照。)の点灯始動電圧をVsaと
し、第1トリガー線210及び第2トリガー線220の両方を設けた場合(図4(c)参
照。)の点灯始動電圧をVsbとすると、点灯始動電圧の大きさは、Vs>Vsa>Vs
bとなる。すなわち、トリガー線を設けない場合よりも、第1トリガー線210を設けた
場合の方が低い点灯始動電圧とすることができ、第1トリガー線210に加えて第2トリ
ガー線220を設けた場合は、さらに低い点灯始動電圧とすることができる。
【0048】
これは、図4(c)に示すような構成とした場合は、図3において説明した等電位面の
偏りが、さらに助長されるためであると考えられる。ただし、図4(c)の場合は、管球
部110の両端側(管球部110と第1封止部141及び第2封止部142とのそれぞれ
の境界部)にそれぞれトリガー線(第1トリガー線210及び第2トリガー線220)が
巻回されることとなるため、管球部110の両端側においてそれぞれの封止部(第1封止
部141及び第2封止部142)が変色してしまうといった問題が発生する。
【0049】
上述したように点灯始動電圧の改善という点を主に考えた場合には、図4(c)が優れ
ているが、図4(b)であっても点灯始動電圧を改善する効果は得られる。また、図4(
b)及び図4(c)のいずれの場合であっても、第1トリガー線210及び第2トリガー
線220は、それぞれ対応する封止部141,142に対して確実に締め付けられて巻回
された状態で接続される必要がある。また、沿面放電の進展時においては、管球部材を経
由して電束が進むので、第1トリガー線210の第1封止部141に対する接続位置及び
第2トリガー線220の第2封止部142に対する接続位置は、第1封止部141及び第
2封止部142の外側表面であれば特に限定されるのもではない。これらの点を踏まえて
、本発明者は、図5に示すような実験を行った。
【0050】
図5は、一対の封止部のそれぞれにトリガー線を接続して点灯始動電圧を調べる実験に
ついて説明する図である。なお、図5は図4と同様に、2つのトリガー線(第1トリガー
線210及び第2トリガー線220)を設けた場合であり、図4と同一構成要素には図4
と同一符号が付されている。
【0051】
図5(a)は第1トリガー線210を管球部110と第1封止部141との境界部A1
(以下、第1境界部A1という。)に接続し、第2トリガー線210を管球部110と第
2封止部142との境界部B1(以下、第2境界部B1という。)に接続した場合である
。なお、図5(a)は図4(c)と同じ接続の仕方としたものである。
【0052】
また、図5(b)は第1トリガー線210を第1境界部A1から所定長さだけ第1封止
部の端部A4側に離間した位置A2に接続し、第2トリガー線220を、第2境界部B1
から第2封止部142の端部B4側に所定長さだけ離間した位置B2に接続した場合であ
る。
【0053】
また、図5(c)は第1トリガー線210を位置A2よりもさらに第1封止部の端部A
4側の位置A3に接続し、第2トリガー線220を位置B2よりもさらに第1封止部の端
部B4側の位置B3に接続した場合である。
【0054】
図5(a)〜(c)に示すように、第1トリガー線210及び第2トリガー線220の
封止部(第1封止部141及び第2封止部142)に対する接続位置を変えた場合の点灯
始動電圧を調べたところ、図5(a)における点灯始動電圧はVaであり、図5(b)に
おける点灯始動電圧はVbであり、図5(c)における点灯始動電圧はVcであったとす
る。ここで、Va,Vb,Vcの大きさの関係は、Va≦Vb≦Vcであり、第1トリガ
ー線210及び第2トリガー線220が第1境界部A1及び第2境界部B1から離れた位
置に接続されるほど、点灯移動電圧は大きくなる傾向にはあるが、ほぼ同程度かせいぜい
数%程度の差である。
【0055】
一方、トリガー線を設けない場合(例えば、図4(a))の点灯始動電圧(Vsとする
。)と、上記点灯始動電圧Va,Vb,Vcとを比較すると、Vs>Va、Vb、Vcで
あった。但し、Va、Vb、Vcの関係は、上記したようにVa≦Vb≦Vcである。こ
の結果、図5(a)〜(c)に示すようにトリガー線を設けた場合は、トリガー線を設け
ない場合に比べて、点灯始動電圧は10%以上も改善(低下)させることができることが
確認できた。
【0056】
以上の実験から、図5(a)〜(c)に示すように、トリガー線を設けることによって
点灯始動電圧の改善(低電圧化)が可能となり、また、トリガー線の接続位置と点灯始動
電圧の大きさとの関係は、必ずしも、管球部110と封止部(第1封止部141及び第2
封止部142)との境界部(第1境界部A1及び第2境界部B1)でなく、第1境界部A
1及び第2境界部B1から離間した位置であっても、第1境界部A1及び第2境界部B1
に接続した場合と大きな差がないことが確認できた。
【0057】
したがって、第1トリガー線210及び第2トリガー線220を第1封止部141及び
第2封止部142に接続する際、管球部110の熱に直接的に晒される第1境界部A1及
び第2境界部B1を避けて、第1境界部A1及び第2境界部B1から所定長だけ離間した
位置に接続するようにしても、点灯始動電圧の改善が可能となる。
【0058】
ここで、第1境界部A1から第1封止部141の端部A4までの長さ(以下、第1封止
部141の長手方向長さという。)及び第2境界部B1から第2封止部の端部B4までの
長さ(以下、第2封止部142の長手方向長さという。)をそれぞれLとしたとき、第1
トリガー線210及び第2トリガー線220の接続位置は、第1境界部A1及び第2境界
部B1からそれぞれ略L/4以上離間した位置とすることが好ましい。
【0059】
なお、図5(b)において、第1トリガー線210が第1封止部141に接続される位
置A2は、第1境界部A1から略L/4以上離間した位置とし、第2トリガー線220が
第2封止部141に接続される位置B2は、第2境界部B1から略L/4以上離間した位
置としている。
【0060】
具体的には、第1封止部141及び第2封止部142の長手方向長さLをそれぞれL=
20mmとした場合は、位置A2,B2は、第1境界部A1及び第2境界部B1からそれ
ぞれ略5mmの位置となる。したがって、図5(b)においては、第1封止部141及び
第2封止部142の長手方向長さLがL=20mmである場合には、第1封止部141に
おいては、第1境界部A1から略5mmだけ離間している位置A2に第1トリガー線21
0が接続され、また、第2封止部142においては、第2境界部B1から略5mmだけ離
間している位置B2に第2トリガー線220が接続されている。
【0061】
一方、図5(c)においては、第1トリガー線210及び第2トリガー線220は、図
5(b)の場合よりも、第1境界部A1及び第2境界部B1からさらに離間した位置A3
,B3、すなわち、それぞれ対応する封止部(第1封止部141及び第2封止部142)
の端部A4及び端部B4に近い位置に接続されている。
【0062】
なお、図5(a)〜(c)のいずれの場合も、第1トリガー線210は、その一端側が
第1封止部141に所定の締め付け力によって巻回された状態で接続され、他端側が第2
封止部142から突出されている第2リード線152に接続されている。また、第2トリ
ガー線220は、その一端側が第2封止部142に所定の締め付け力によって巻回された
状態で接続され、他端側が第2リード線152に接続されている。
【0063】
ところで、第1トリガー線210及び第2トリガー線220の接続位置を、第1境界部
A1及び第2境界部B1からそれぞれ略L/4以上離間した位置とすることが好ましいと
した理由は、下記のような理由によるものである。
【0064】
すなわち、実験に用いた発光管100の第1封止部141及び第2封止部142は、そ
れぞれの長さLが約20mmであって、このような発光管100において、管球部110
の直近(第1境界部A1及び第2境界部B1とする。)の温度(α1とする。)と、第1
封止部141及び第2封止部142における長手方向各位置の外側表面温度とを比較した
ところ、第1境界部A1及び第2境界部B1からL/4だけ離れた位置(位置A2,B2
)では、温度α1に対して30%程度低下することが確認された。
【0065】
例えば、温度α1が仮に700度であるとすると、位置A2,B2では、500度又は
500度以下にまで温度が低下するので、この程度の温度であれば、第1トリガー線21
0及び第2トリガー線220に与える影響を少なくすることができる。また、第1トリガ
ー線210及び第2トリガー線220の温度上昇が第1封止部141及び第2封止部14
2を形成する部材(例えば、石英ガラス)に与える影響を小さくできるからである。なお
、上記した温度α1及び位置A2,B2における温度の低下の度合いなどは、一例であっ
て、光源装置の出力の大きさや光源装置が有する冷却機能などによって異なる。
以上のような実験結果を踏まえて、以下に本発明の実施形態について説明する。
【0066】
[実施形態1]
図6は、実施形態1に係る光源装置10の構成を示す図である。実施形態1に係る光源
装置10は、図6に示すように、発光管100と主反射鏡としての楕円面リフレクター(
以下、リフレクターという。)270とを有している。発光管100は、図4及び図5で
示した発光管100と同様の構成であり、管球部110と、第1電極121及び第2電極
122と、第1金属箔131及び第2金属箔132と、第1封止部141及び第2封止部
142と、第1リード線151及び第2リード線152とを有している。なお、発光管1
00としては、たとえば、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプな
どの高輝度発光する発光管を採用することができる。
また、管球部110は、例えば、石英ガラスからなり、その内部には、水銀、希ガス及
び少量のハロゲンが封入されている。
【0067】
また、第1電極121及び第2電極122は、例えば、タングステン電極である。また
、第1金属箔131及び第2金属箔132は、例えば、モリブデン箔からなる。そして、
第1金属箔131の一端側は第1電極121に電気的に接続され、第2金属箔132の一
端側は第2電極122に電気的に接続されている。
【0068】
また、第1封止部141及び第2封止部142は、例えば石英ガラスからなる。そして
、第1封止部141は第1金属箔131を封止し、第2封止部142は第2金属箔132
を封止する。また、第1リード線151及び第2リード線152は、モリブデン又はタン
グステンからなる。そして、第1リード線151は、その一端側が第1金属箔131に電
気的に接続され、他端側が第1封止部141の端部A4から外部に突出している。また、
第2リード線152は、その一端側が第2金属箔132に電気的に接続され、他端側が第
2封止部142の端部B4から外部に突出している。
【0069】
リフレクター270は、第1封止部141が挿通される挿通孔271と、発光管100
からの光を被照明領域に反射する反射面272とを有する。そして、リフレクター270
は、挿通孔271に充填されたセメントなどの接着材273により第1封止部141に固
定される。
【0070】
そして、第1封止部141の位置A2には第1トリガー線210の一端側が所定の締め
付け力によって巻回された状態で接続され、第2封止部142の位置B2には第2トリガ
ー線220の一端側が所定の締め付け力によって巻回された状態で接続されている。また
、第1トリガー線210の他端側は、第2封止部142から突出されている第2リード線
152に電気的に接続され、第2トリガー線220の他端側も第2封止部から突出されて
いる第2リード線152に電気的に接続されている。
【0071】
なお、第1トリガー線210が接続される位置A2は、第1封止部141において図5
(b)と同様に、第1境界部A1から略L/4だけ離間した位置となるように設定されて
いる。また、第2トリガー線220が接続される位置B2は、第2封止部142において
図5(b)と同様に、第1境界部B1から略L/4だけ離間した位置となるように設定さ
れている。
【0072】
ところで、第1トリガー線210は、一端側が第1封止部141に接続され、他端側が
第2封止部142から突出される第2リード線152に接続されるため、管球部110を
跨いで配線されることとなるが、実施形態1に係る光源装置10においては、第1トリガ
ー線210は、図6に示すように、第1トリガー線210の中途部(第1トリガー線21
0の一端側と他端側との間の少なくとも一部)がリフレクター270の背面側を通るよう
に配線される。
【0073】
第1トリガー線210をこのように配線するためには、リフレクター270の一部には
第1トリガー線210を通すための貫通孔が必要となるが、実施形態1に係る光源装置1
0においては、リフレクター270と第1封止部141との接合部(接着材273が充填
される部分)となる挿通孔271を利用し、この挿通孔271に第1トリガー線210を
通すような構成とする。
【0074】
すなわち、第1トリガー線210は、例えば、一端側を第1封止部141に巻回させて
接続させたのち、他端側をリフレクター270の反射面側から挿通孔271を通してリフ
レクター270の背面側に出して、第2封止部142の第2リード線152に接続するよ
うにしてもよく、また、他端側を第2封止部142の第2リード線152に接続したのち
、一端側をリフレクター270の背面側から挿通孔271を通して第1封止部141に巻
回させて接続するようにしてもよい。なお、第1トリガー線210の配線の手順はこれら
の例に限られるものではない。
【0075】
実施形態1に係る光源装置10においては、第1トリガー線210及び第2トリガー線
220は、第1封止部141及び第2封止部142それぞれにおいて、図5(b)と同様
に、第1境界部A1及び第2境界部B1からそれぞれ略L/4だけ離間した位置A2,B
2を接続位置としている。このため、第1トリガー線210及び第2トリガー線220が
管球部110の熱に直接的に晒されることがなく、第1トリガー線210及び第2トリガ
ー線220の劣化を抑制することができる。なお、第1境界部A1及び第2境界部B1か
ら略L/4だけ離間した位置における温度は、図5に示す実験によれば、前述したように
、管球部110の直近の温度α1よりも30%以上低下した温度となることが確認されて
いる。
【0076】
このため、第1トリガー線210及び第2トリガー線220が高温となることによる管
球部110及び封止部(第1封止部141及び第2封止部142)の変色及び劣化を抑制
することができる。
【0077】
また、第1トリガー線210、第2トリガー線220、第1封止部141及び第2封止
部142の熱膨張/収縮を極力抑えることができるので、第1トリガー線210及び第2
トリガー線220の締め付け状態が変化してしまうといったことを防ぐことができる。そ
れにより、トリガー線を設けることによって得られる効果を長期間維持することができる

【0078】
また、実施形態1に係る光源装置10においては、第1トリガー線210は、一端側と
他端側との間の少なくとも一部がリフレクター270の背面側を通るように配線されてい
るため、光源装置10の点灯時において、第1トリガー線210が管球部110の熱に直
接的に晒されることがなくなり、また、第1トリガー線210は管球部110から離れた
位置となるので、管球部110の表面を這うように配線される場合に比べて、管球部11
0から射出される光を阻害することを極力防止でき、それによって光の損失を小さくする
ことができる。
【0079】
なお、第1トリガー線210を図6に示すようにリフレクター270の背面側を通すよ
うに配線すると、配線の長さ(配線長という。)は、第1トリガー線210を管球部11
0の表面を這わすように配線する場合に比べて長くなるが、プロジェクターなどの光源装
置10においては、第1トリガー線210の配線長は、せいぜい10数cmであり、始動
電圧の交流波が仮に30MHzというような高周波であったとしても、当該交流波の1/
2波長は約5mであるため、第1トリガー線210の10数cmという配線長は電気特性
上何ら問題となるものではない。
【0080】
図7は、実施形態1に係る光源装置10を採用したプロジェクターPJの光学系の構成
を示す平面図である。実施形態1に係るプロジェクターPJは、図7に示すように、赤色
光(R)、緑色光(G)及び青色光(B)を含む光を射出する照明装置300と、色分離
導光光学系400と、RGBの各色に対応した光変調素子500R,500G,500B
と、クロスダイクロイックプリズム600と、投写光学系700とを有する。なお、実施
形態1に係るプロジェクターPJにおいては、光変調素子500R,500G,500B
は、液晶を用いた光変調素子であるとする。
【0081】
照明装置300は、図6に示した光源装置10と、凹レンズ310と、第1レンズアレ
イ320と、第2レンズアレイ330と、偏光変換装置340と、重畳装置350とを有
している。
【0082】
色分離導光光学系400は、ダイクロイックミラー410,420と、反射ミラー43
0,440,450と、リレーレンズ460,470と、集光レンズ480R,480G
,480Bとを有する。
【0083】
なお、図示を省略したが、光変調素子500R,500G,500Bの入射側には入射
側偏光板が設けられるとともに、光変調素子500R,500G,500Bの射出側には
射出側偏光板が設けられる。
【0084】
このような構成を有するプロジェクターPJにおいて、光源装置10から発せられた光
は、凹レンズ310、第1レンズアレイ320、第2レンズアレイ330、偏光変換装置
340及び重畳装置350を通過したのち、色分離導光光学系400によってRGBのそ
れぞれの色光に分離されたのち、これらRGBの各色光はそれぞれ対応する光変調素子5
00R,500G,500Bに入射される。そして、光変調素子500R,500G,5
00Bでは、画像データに基づいて各色光を変調し、RGBの各画像光を形成する。光変
調素子500R,500G,500Bで形成されたRGBの各画像光は、クロスダイクロ
イックプリズム600で合成されたのち、投写光学系700によってスクリーンSCR上
にカラー画像として投写される。
【0085】
このようなプロジェクターPJにおいて、光源装置として図6に示すような光源装置1
0を採用することによって、光源装置10の点灯始動電圧の改善が図れ、かつ、光源装置
10の耐久性を向上させることができるので、結果として、信頼性の高いプロジェクター
とすることができる。
【0086】
すなわち、プロジェクターPJの光源装置として図6に示すような光源装置10を採用
することによって、第1トリガー線210及び第2トリガー線220が設けられることに
よる点灯始動電圧の改善(点灯始動電圧の低電圧化)が図れる。また、第1トリガー線2
10及び第2トリガー線220が管球部110からの熱に直接的に晒されることを防止で
き、経年変化による管球部110及び封止部の変色及び劣化を抑制するとともに、トリガ
ー線を設けることによって得られる効果を長期間維持することができる。
【0087】
また、第1トリガー線210は、図6に示すようにリフレクター270の背面側を通る
ように配線されるので、光源装置10の点灯時において、第1トリガー線210が管球部
110の熱に直接的に晒されることがなくなり、また、管球部110から射出される光を
阻害することを極力防止でき、光の損失を小さくすることができる。
【0088】
なお、図7に示すプロジェクターPJは、その光源装置として、実施形態1に係る光源
装置10だけではなく、後述する実施形態2に係る光源装置20、実施形態3に係る光源
装置30及び実施形態4に係る光源装置40を採用することも可能である。
【0089】
[実施形態2]
図8は、実施形態2に係る光源装置20の構成を示す図である。実施形態2に係る光源
装置20は、光源装置20としての基本的な構成は実施形態1に係る光源装置10(図6
参照。)と同じである。実施形態2に係る光源装置20が実施形態1に係る光源装置10
と異なるのは、第1封止部141のみに第1トリガー線210を接続した点であり、実施
形態1に係る光源装置10と同一構成要素には同一符号が付されている。
【0090】
図8に示すような実施形態2に係る光源装置20とした場合であっても点灯始動電圧を
改善する効果は得られる。なお、点灯始動電圧の改善という点のみで考えた場合には、実
施形態1に係る光源装置10の方がやや優れるが、実施形態2に係る光源装置20におい
ては、トリガー線は第1トリガー線210のみで済むことから構成を簡素化することがで
きる効果が得られるとともに、第2封止部142の側においてはトリガー線(第2トリガ
ー線220)が不要となるため、トリガー線が設けられることによる封止部の劣化などに
ついて何ら考慮する必要がないといった効果も得られる。
【0091】
なお、実施形態2に係る光源装置20を図7に示したプロジェクターPJの光源装置と
して採用することによっても、光源装置の点灯始動電圧の改善が図れ、かつ、光源装置の
耐久性を向上させることができるので、結果として、信頼性の高いプロジェクターとする
ことができる。
【0092】
[実施形態3]
上記実施形態1では、第1トリガー線210の第1封止部141に対する接続位置及び
第2トリガー線220の第2封止部142に対す接続位置は、第1境界部A1及び第2境
界部B1からそれぞれ略L/4とした場合を例示したが、第1封止部141及び第2封止
部142上であれば他の位置であってもよい。例えば、図6に示す光源装置10ように、
第1封止部141の端部A4がリフレクター270の背面側に突出した状態に設けられる
光源装置においては、図6における第1封止部141の突出部(リフレクター270の背
面側から突出している部分)に接続することも可能である。
【0093】
図9は、実施形態3に係る光源装置30の構成を示す図である。実施形態3に係る光源
装置30は、実施形態1に係る光源装置10(図6参照。)と同様に、第1封止部141
及び第2封止部142の両方にトリガー線(第1トリガー線210及び第2トリガー線2
20)を設けた場合を例にとって説明する。なお、実施形態3に係る光源装置30におけ
る第1トリガー線210及び第2トリガー線220の接続の仕方は、図5(c)と同様で
ある。すなわち、第1トリガー線210は第1封止部141の端部A4に近い位置A3に
接続し、第2トリガー線220は第2封止部142の端部B4に近い位置B3に接続した
場合である。
【0094】
実施形態3に係る光源装置30は、第1トリガー線210及び第2トリガー線220を
このように接続することにより、図9に示すように、第1トリガー線210は、リフレク
ター270の背面側から突出している第1封止部141の突出部141aに接続されてい
る。このような構成とすることによっても、図5(c)において説明したように、点灯始
動電圧の改善は図れる。なお、このとき第2トリガー線220は第2封止部142の位置
B2でもよく、光源装置30の始動の状況により適切に設定することが好ましい。
【0095】
また、実施形態3に係る光源装置30は、図9のような構成とすることにより、第1ト
リガー線210は、その一端側がリフレクター270の背面側で第1封止部141に接続
されているので、他端側を第2封止部142の第2リード線152に接続する際は、リフ
レクター270を貫通させることなく第2リード線152に接続することができる。この
ため、製造工程を簡素化することができる。また、リフレクター270の背面側において
は、管球部110の熱の影響はより小さくなるため、第1トリガー線210が受ける管球
部110の熱の影響をより小さなものとすることができる。
【0096】
なお、実施形態3に係る光源装置30を図7に示したプロジェクターPJの光源装置と
して採用することによっても、光源装置の点灯始動電圧の改善が図れ、かつ、光源装置の
耐久性を向上させることができるので、結果として、信頼性の高いプロジェクターとする
ことができる。
【0097】
[実施形態4]
図10は、実施形態4に係る光源装置40の構成を示す図である。実施形態4に係る光
源装置40は、図10に示すように、副反射鏡280を有する光源装置である。なお、図
10に示す光源装置40は、副反射鏡280が設けられている点が実施形態1に係る光源
装置10と異なるだけであり、その他の構成要素は、実施形態1に係る光源装置10同じ
であるので、実施形態1に係る光源装置10と同一構成要素には同一符号が付されている

【0098】
実施形態4に係る光源装置40においては、第2トリガー線220が第2封止部142
に接続される位置は、副反射鏡280の背面側となるようにする。なお、図10において
は、第2トリガー線220が接続される位置は、実施形態1に係る光源装置10と同様、
第2境界部B1から略L/4の位置B2としているが、これは、図10における光源装置
40においては、第2境界部B1から略L/4の位置B2が、たまたま、副反射鏡280
の背面側に近接した位置に存在している場合となっているためである。したがって、光源
装置の種類によっては、副反射鏡280の背面側の位置が第2境界部B1から略L/4の
位置とはならない場合もあるが、その場合は、副反射鏡280の取り付け位置に応じて、
最適な位置を設定することが可能である。
【0099】
第2トリガー線220の第2封止部142に対する接続位置を図10に示すように副反
射鏡280の背面側とすることにより、第2トリガー線220が受ける管球部110の熱
の影響をより小さくすることができる。これは、副反射鏡280の背面側においては、よ
り低い温度(例えば、200度以下)にまで低下するためである。
【0100】
また、実施形態4に係る光源装置40においても、実施形態3に係る光源装置30と同
様に、第1トリガー線210をリフレクター270の背面側(第1封止部141の突出部
141a)に接続するような構成とすれば、第2トリガー線220のみならず、第1トリ
ガー線210が受ける管球部110の熱の影響をより小さくすることができる。
【0101】
なお、実施形態4に係る光源装置40を図7に示したプロジェクターPJの光源装置と
して採用することによっても、光源装置の点灯始動電圧の改善が図れ、かつ、光源装置の
耐久性を向上させることができるので、結果として、信頼性の高いプロジェクターとする
ことができる。
【0102】
なお、本発明は上記各実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範
囲で種々変形実施可能となるものである。例えば、下記(1)に示すような変形実施も可
能である。
【0103】
(1)上記各実施形態では、第1トリガー線210及び第2トリガー線220(ただし
、第2トリガー線220は実施形態2においては設けられていない。)が第1封止部及び
第2封止部に接続される位置A2,B2は、第1境界部A1及び第2境界部B1からそれ
ぞれ略L/4の位置とした場合を例示したが、必ずしも略L/4の位置とする必要はなく
、光源装置の出力の大きさや型式など光源装置の種類によって最適な位置A2,B2を設
定することができる。例えば、光源装置の種類ごとに、点灯時における封止部の長手方向
における各位置の温度を測定し、第1トリガー線210及び第2トリガー線220が熱に
よるダメージを受けにくい温度となるような位置を光源装置の種類ごとに設定して、設定
した位置を当該光源装置における位置A2及び位置B2とすることができる。
【符号の説明】
【0104】
10,20,30,40・・・光源装置、100・・・発光管、110・・・管球部、
121・・・第1電極、122・・・第2電極、131・・・第1金属箔、132・・・
第2金属箔、141・・・第1封止部、142・・・第2封止部、151・・・第1リー
ド線、152・・・第2リード線、210・・・第1トリガー線、220・・・第2トリ
ガー線、270・・・リフレクター(主反射鏡)、280・・・副反射鏡、A1・・・第
1境界部、B1・・・第2境界部、A2,B2,A3,B3・・・位置(第1トリガー線
210及び第2トリガー線を接続する位置)、A4・・・第1封止部の端部、B4・・・
第2封止部の端部、PJ・・・プロジェクター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管球部と、前記管球部に内蔵される第1電極及び第2電極と、前記第1電極に電気的に
接続される第1金属箔と、前記第2電極に電気的に接続される第2金属箔と、前記第1金
属箔を封止する第1封止部と、前記第2金属箔を封止する第2封止部と、前記第1金属箔
に電気的に接続されて前記第1封止部から外部に突出する第1リード線と、前記第2金属
箔に電気的に接続されて前記第2封止部から外部に突出する第2リード線とを有する発光
管を備える光源装置であって、
前記発光管の放電開始を補助するために前記第1封止部に接続される第1トリガー線及
び前記第2封止部に接続される第2トリガー線をさらに有し、
前記第1トリガー線は、前記管球部と前記第1封止部との境界部を第1境界部としたと
き、前記第1境界部から所定長さだけ離間した位置に一端側が接続され、他端側が前記第
2リード線に電気的に接続され、
前記第2トリガー線は、前記管球部と前記第2封止部との境界部を第2境界部としたと
き、前記第2境界部から所定長さだけ離間した位置に一端側が接続され、他端側が前記第
2リード線に電気的に接続されることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光源装置において、
前記第1トリガー線の一端側が接続される位置及び前記第2トリガー線の一端側が接続
される位置は、
前記第1境界部から当該第1境界部の反対側の前記第1封止部の端部までの長さ及び前
記第2境界部から当該第2境界部の反対側の前記第2封止部の端部までの長さをそれぞれ
「L」としたとき、前記第1境界部及び第2境界部からそれぞれ略L/4以上離間した位
置とすることを特徴とする光源装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光源装置において、
前記第1電極及び第2電極の間には、1KHzから30MHzの周波数を有する交流波
が与えられることを特徴とする光源装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の光源装置において、
前記第1封止部に取り付けられて、前記発光管から射出される光を被照明領域側に反射
する主反射鏡をさらに有し、
前記第1トリガー線は、当該第1トリガー線の前記一端側と前記他端側との間の少なく
とも一部が前記主反射鏡の背面側を通るように配線されることを特徴とする光源装置。
【請求項5】
請求項4に記載の光源装置において、
前記第1トリガー線の前記一端側が前記主反射鏡の反射面側において前記第1封止部に
接続されている場合、前記第1トリガー線は、前記一端側から前記主反射鏡を貫通して前
記主反射鏡の背面側を通って前記他端側が前記第2リード線に接続されることを特徴とす
る光源装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の光源装置において、
前記主反射鏡の反射面と対向する反射面を有する副反射鏡が前記第2封止部に取り付け
られ、前記第2トリガー線は、前記副反射鏡の背面側において前記第2封止部に接続され
ることを特徴とする光源装置。
【請求項7】
管球部と、前記管球部に内蔵される第1電極及び第2電極と、前記第1電極に電気的に
接続される第1金属箔と、前記第2電極に電気的に接続される第2金属箔と、前記第1金
属箔を封止する第1封止部と、前記第2金属箔を封止する第2封止部と、前記第1金属箔
に電気的に接続されて前記第1封止部から外部に突出する第1リード線と、前記第2金属
箔に電気的に接続されて前記第2封止部から外部に突出する第2リード線とを有する発光
管を備える光源装置であって、
前記発光管の放電開始を補助するために前記第1封止部に接続されるトリガー線をさら
に有し、
前記トリガー線は、前記管球部と前記第1封止部との境界部を第1境界部としたとき、
前記第1境界部から所定長さだけ離間した位置に一端側が接続され、他端側が前記第2リ
ード線に電気的に接続されることを特徴とする光源装置。
【請求項8】
光源装置と、前記光源装置からの光を画像情報に基づいて変調する光変調素子と、前記
光変調素子によって変調された光を投写画像として投写する投写光学系とを備えるプロジ
ェクターであって、
前記光源装置として、前記請求項1〜7のいずれかの光源装置を用いたことを特徴とす
るプロジェクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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