説明

光源装置及び撮影装置

【課題】励起光として照射するレーザ光のスペックル発生を抑制しつつ、装置の小型化、ローコスト化を図る。
【解決手段】上部光源14は、レーザダイオード30a〜30c、励起フィルタ31、拡散部材32a〜32c、及び反射板33を備える。円柱形状の拡散部材32a〜32cは、一端に軸方向と直交する入射端面35aを、他端に入射端面35aに対して傾斜する傾斜端面35bを有する。拡散部材32a〜32cは、自家蛍光の発生を無視し得る低自家蛍光性の透明材料に、自家蛍光を発生しない無蛍光性の粒状部材を分散させるように混合して形成されている。レーザダイオード30a〜30cから照射されたレーザ光は励起フィルタ31を透過して励起光となり、拡散部材32a〜32cの入射端面35aに入射する。入射端面35aから内部へ入射した励起光が、拡散された状態で傾斜端面35bまたは周面35cから出射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体に標識された蛍光物質を励起させて撮影可能とする光源装置及び撮影装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
筐体内に被写体を配置し、筐体内に備えられた光源で生体を照射して被写体を撮影する装置が、従来より様々な分野で利用されている。生化学、分子生物学の分野においては、化学発光物質や蛍光物質を標識物質として使用し、これらの発光や蛍光を読み取ることによって、遺伝子配列、遺伝子の発現レベル、蛋白質の分離、同定、あるいは分子量、特性の評価などを行う撮影装置が知られている。
【0003】
また、マウスやラット等の生体に上記の標識物質で標識された遺伝子や蛋白質、抗体、薬理物質を与え、生体の体内または体表に分布した標識物質からの光をカメラで撮影し、生体内における遺伝子の発現や薬理作用等を撮影する、いわゆるin vivo イメージング (in vivo imaging)を行う撮影装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この撮影装置では、例えば蛍光物質で標識を行っている場合には、生体に励起光を照射して蛍光物質を励起させ、生じた蛍光をカメラで受光することによって画像を生成する。
【0004】
生体の撮影を行う場合、生体へ照射した励起光の波長ピークよりも励起で生じた蛍光の波長ピークのほうが長く表れるため、観察時は励起光の波長を遮断し、蛍光の分光領域のみを通す光学フィルタを用いて撮影する。
【0005】
従来の撮影装置では、生体へ照射する励起光の光源としてハロゲンランプや発光ダイオード(LED)を使用することが多いが、例えば、ハロゲンランプや白色LEDを使用する場合、バンドパスフィルタで白色光の分光幅を狭めて照射し、単色LEDを使用する場合は、長波長成分を専用の光学フィルタでカットする。これらの光学フィルタを透過して照射された励起光は、励起で生じた蛍光の波長と一部重なることがある。蛍光と同じ波長の励起光は、カメラに入射して受光されるため、画像のバックグラウンドノイズとなって微弱な蛍光成分を打ち消してしまう。よって、微弱な蛍光まで読み取る高精度な観察をすることが困難であった。このような問題は、分光波長幅が狭くて強い光源を使用すれば解消されるが、この条件にあう励起光源としてレーザ光源を使用することが考えられている。
【0006】
ところが、レーザ光源を使用する場合、レーザ光照明時に発生するスペックルによって画像に不自然な照明ムラが現れることがあるため、励起光源として使用するにはスペックルの発生を抑制することが必要となる。そこで、このスペックル対策として、特許文献2では、レーザ光の光路上に共振体を配し、レーザ光が共振体の表面に当たって反射する第1の部分光と、レーザー光が共振体内に入射し、複数回の全反射をした後に入射位置の領域から共振体の外へ出射する第2の部分光とにレーザ光を分割し、さらに共振体内で第2の部分光を変調させることで共振体から出射するレーザ光のコヒーレンスを低減させるシステムが記載されている。これにより、レーザ光を共振体でコヒーレンスを低減させることでスペックルの発生を抑制することができる。また、特許文献3には、レーザ光の光路上に光拡散板を設置し、この光拡散板を振動・回転させることによりレーザ光を拡散させてスペックルの発生を抑える構成が記載されている。
【0007】
【特許文献1】特開2003−287497号公報
【特許文献2】特表2007−528595号公報
【特許文献3】特開2007−233371号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献2,3記載のレーザ光源の構成を撮影装置に備える場合、共振体や、光拡散板を振動・回転させるメカ機構などのコストが高く、またこれらを組み込むためのスペースが必要となるため、装置全体のコスト増加、及び装置の小型化を妨げる原因となる。また、上記特許文献1記載の撮影システムでは、励起光源にレーザ光源を使用することは考えられておらず、レーザ光源を使用した場合のスペックル対策も当然考慮されていない。
【0009】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであって、励起光として照射するレーザ光のスペックル発生を抑制しつつ、装置の小型化、ローコスト化を図ることが可能な光源装置及び撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成するために、本発明の光源装置は、生体に励起光を照射して蛍光物質を励起させ、カメラで撮影可能な蛍光を生じさせる光源装置であって、励起光を発するレーザ光源と、自家蛍光発生を無視し得る低自家蛍光性の透明材料に、自家蛍光を発生しない無蛍光性の粒状部材を分散させるように混合して形成され、前記レーザ光源から内部に入射された励起光を拡散して前記生体へ照射する拡散部材とを備えたことを特徴とする。なお、本発明におけるカメラとは、固体撮像素子などのイメージセンサを備えたものや、写真フィルムに画像を形成する写真カメラなど、受光した蛍光から画像を生成するカメラであればよい。
【0011】
前記拡散部材は、略円柱形状で、一端に軸方向と直交する入射端面が、他端に前記入射端面に対して傾斜する傾斜端面が形成されており、周面及び前記傾斜端面が前記生体に対面し、且つ前記入射端面から内部に向かって前記励起光が入射されるように配置され、周面及び前記傾斜端面から励起光を拡散して前記生体へ照射させることが好ましい。前記拡散部材を基準にして前記生体と反対側の位置に反射板を設け、前記拡散部材から出射する前記励起光を前記反射板で反射させて前記生体へ照射させることが好ましい。また、前記レーザ光源は、前記軸方向と直交する方向に沿って複数配置されており、前記拡散部材は、前記レーザ光源からの励起光が入射する位置にそれぞれ配置されていることが好ましい。
【0012】
前記レーザ光源からの励起光を前記拡散部材を介さずに前記生体に反射させる反射部材を備えており、前記レーザ光源を複数設け、少なくとも1つのレーザダイオードからの励起光が前記反射部材によって前記生体に照射されることが好ましい。
【0013】
前記レーザ光源からの励起光を前記拡散部材を介さずに前記生体に反射させる反射部材と、一個のレーザダイオードからの励起光が前記拡散部材又は前記反射部材のいずれかに入射するように前記レーザ光源の位置を切り替える切替機構とを備えたことが好ましい。
【0014】
前記粒状部材は、酸化チタン、または硫酸バリウムであることが好ましい。あるいは、前記粒状部材は、前記透明材料との境界面で光を反射させる透明ビーズであることが好ましい。前記透明材料は、シリコン、又は石英ガラスであることが好ましい。
【0015】
本発明の撮影装置は、請求項1ないし9いずれか記載の光源装置と、前記励起光で生じた前記生体の蛍光を受光することによって画像を生成するカメラとを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、低自家蛍光性の透明材料に、無蛍光性の粒状部材を分散させるように混合して形成された拡散部材で、レーザダイオードから拡散部材の内部に入射された励起光を拡散して生体へ照射するので、励起光として生体に照射するレーザ光のスペックルを抑制しつつ、装置の小型化、ローコスト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を実施した撮影システムの外観を図1に示す。撮影システム2は、撮影対象、例えばマウスやラット等の生体3(図2参照)の体表や体内に分布する標識物質からの光を受光し、生体3に分布する標識物質の画像(以下、分布画像という)を撮影(生成)して表示する。この実施形態では、標識物質として、励起光を照射することにより蛍光を発する蛍光物質を生体3に投与し、その生体3に分布する蛍光物質の分布画像を生成する場合について説明するが、自家蛍光を発する組織、例えば腫瘍組織の分布画像を生成する場合についても同様である。
【0018】
撮影システム2は、分布画像を生成する撮影装置5と、この撮影装置5に対する各種設定や撮影装置5で生成された分布画像に各種画像処理を施してモニタ6aに表示し、また分布画像を記録媒体への記録等を行うPC(パーソナルコンピュータ)6とから構成されている。PC6には、所定のソフトウェアをインストールすることによって、撮影装置5に対する設定機能や画像処理機能等を実現している。
【0019】
図2において、撮影装置5は、筐体11と、カメラ部12と、撮影ステージ13と、上部光源14(光源装置)と、底部光源15とからなる。筐体11は、中空の略直方体形状で、前面に開閉自在に取り付けられた蓋16(図1参照)が設けられている。蓋16を開けると、筐体11の内部に設けられた撮影室17が露呈して生体3を収容させることができ、また撮影室17から生体3を取り出すことができる。蓋16を閉じたときには、撮影室17内が遮光され、撮影の際に生体3から発せられる蛍光以外の光がカメラ部12に入射することを防止する。
【0020】
撮影室17は、上部にカメラ部12が設けられている。カメラ部12は、撮影ステージ13にセットされた生体3の分布画像を生成する。このカメラ部12は、イメージセンサ18,撮影レンズ19,カメラ側フィルタ20,冷却部21等から構成される。イメージセンサ18は、デジタルカメラ等に用いられているものと同様であり、その受光面に多数の受光素子をマトリクス状に配してある。具体的には、イメージセンサ18としてはCCDなどの固体撮像素子が用いられる。
【0021】
分布画像を生成する場合には、後述するように、受光素子で光電変換を行って電荷を蓄積する状態にイメージセンサ18を維持し、その間に蛍光物質から蛍光を受光させ、その光を電荷として蓄積させることによって露出を行う。
【0022】
撮影レンズ19は、生体3からの蛍光をイメージセンサ18に結像する。カメラ側フィルタ20は、上部光源14や底部光源15からの励起光を遮断し、生体3に分布する蛍光物質からの蛍光を透過するフィルタである。このカメラ側フィルタ20としては、例えば蛍光物質からの蛍光よりも短波長側の光をカットするロングパスフィルタを用い、生体3からの蛍光だけをイメージセンサ18に受光させる。冷却部21は、イメージセンサ18を冷却することにより暗電流を低減して、生成される分布画像のノイズを抑制する。
【0023】
イメージセンサ18としては、CCDタイプやCMOSタイプ等の各種のものを用いることができる。また、半導体によって光電変換を行うものの他、有機光電変換膜を使ったイメージセンサを用いてもよい。さらには、単色のみならず、受光する光を複数色に色分解して撮影するようにしてもよい。イメージセンサ18は、タイミング制御部22の制御の下で、ドライバ23によって駆動される。
【0024】
カメラ部12の直下に撮影ステージ13が配されている。この撮影ステージ13は、生体3が置かれるステージ面24とその下側のハウジング25とからなる箱状となっている。この撮影ステージ13の中空な内部に底部光源15を配してある。ステージ面24は、その上に置かれた生体3に底部光源15からの励起光が照射されるように透明な板状となっている。ハウジング25は、底部光源15からの励起光を遮断するように不透明にしてありステージ面24以外から励起光が射出されないようにしている。底部光源15としては、ハロゲンランプ,ストロボ放電管,レーザ、LED等の各種のものを用いることができる。この例では、白色LEDと、蛍光物質からの蛍光の波長域及びそれよりも長波長側の光をカットするショートパスフィルタとを含む構成としてある。
【0025】
撮影ステージ13の斜め上方、カメラ部12の撮影中心に対して線対称な位置に、上部光源14を配してある。この上部光源14と、底部光源15とは、いずれも生体3に分布する蛍光物質を励起して発光させるための励起光を生体3に向けて照射する励起光源となっている。これらの上部光源14、底部光源15は、タイミング制御部22の制御の下で、それぞれ対応する上部光源ドライバ28、底部光源ドライバ29によって駆動される。
【0026】
図3に本発明の光源装置である上部光源14の構成を示す。本実施形態では、上部光源14は、3個のレーザダイオード30a〜30c、励起フィルタ31、3個の拡散部材32a〜32c、及び反射板33とを備える。レーザダイオード30a〜30cは、タイミング制御部22の制御により生体を撮影するタイミングに合わせてオン・オフされる。なお、反射板33は、筐体3内に設けられたステー34(図2参照)に固定されており、レーザダイオード30a〜30c、励起フィルタ31、及び拡散部材32についても図示しない保持部材によって保持され、ステー34に固定されている。レーザダイオード30a〜30cとしては、赤色レーザダイオードを使用する。
【0027】
励起フィルタ31は、長手方向がレーザダイオード30a〜30cの配列方向に沿って配された板状で、レーザダイオード30a〜30cから発せられたレーザ光のうち、長波長域の光をカットし、短波長域の光のみを透過させて励起光とする。これによって、励起光の波長と、励起で発生した蛍光の波長とが重なることを防止する。レーザダイオード30a〜30cは、拡散部材32a〜32cの軸方向と直交する方向に沿って配置されている。
【0028】
拡散部材32a〜32cは、円柱形状で、一端に軸方向と直交する入射端面35aが、他端に入射端面35aに対して傾斜する傾斜端面35bが形成されており、生体3に向かう方向と、軸方向とが直交し、さらに傾斜端面35b及び周面35cが生体3に対面し、入射端面35aから内部に向かってレーザダイオード30a〜30cからの励起光が入射される位置にそれぞれ配置されている。
【0029】
これら拡散部材32a〜32cは、自家蛍光の発生を無視し得る低自家蛍光性の透明材料に、自家蛍光を発生しない無蛍光性の粒状部材を分散させるように混合して形成されている。本実施形態では、この拡散部材を形成する低自家蛍光性の透明材料としてはシリコンが使用され、無蛍光性の粒状部材としては、白色粉末である酸化チタンが使用される。なお、拡散部材を形成する透明材料としては、シリコンに限らず低自家蛍光性の透明材料であればよく、例えば石英ガラスを用いることができる。このような材料から拡散部材32a〜32cが形成されるときには、溶融した状態の透明材料に粒状部材が分散するように混合してから型に流し込み、硬化させることによって、上述した拡散部材32a〜32cの形状に形成する。このような拡散部材32a〜32cを使用することで、入射端面35aから内部へ入射した励起光が、透明材料を通過するとともに粒状部材で反射して拡散し、傾斜端面35bまたは周面35cから出射する。
【0030】
反射板33は、拡散部材32a〜32cを基準にして生体3と反対側に位置している。この反射板33は、拡散部材32a〜32cと平行に位置する底面部33aと両側の側面部33b,33cとからなる略コの字断面状に形成された板材であり、拡散部材32a〜32cから出射する励起光を反射させて生体3へ照射させる。
【0031】
上部光源ドライバ28及び底部光源ドライバ29は、タイミング制御部22からパルス状のタイミング信号が入力されている間、光源をオンとする。励起光源から励起光を生体3に照射して蛍光物質からの蛍光を発生させる。なお、光源をオン(点灯状態)としたまま、シャッタの開閉等によりタイミング信号に基づく生体への励起光の照射を行ってもよい。
【0032】
次に、上記構成の作用について説明する。まず、ユーザーが蓋16を開いて、蛍光物質を予め投与した生体3が撮影ステージ13に置かれる。ユーザーが蓋16を閉めて撮影室17が遮光状態とされた後、PC6を操作して、上部光源14と底部光源15とのいずれを使用するかを選択設定し、撮影開始を指示する。以下では、本発明に関わる上部光源14が選択された場合について詳細に説明する。撮影開始が指示されると、タイミング制御部22は、露出開始信号をドライバ23に送る。
【0033】
ドライバ23が露出開始信号を受けることにより、イメージセンサ18が作動を開始して、各受光素子で受光する光を電荷に光電変換し蓄積する状態となる。一方、タイミング制御部22では、タイミング信号を生成する処理が開始される。そして、この処理で発生する各タイミング信号が選択されている光源のドライバに順次に送出される。例えば、選択されている光源が上部光源14であった場合には、上部光源ドライバ28に各タイミング信号が順次に送られる。
【0034】
タイミング信号が上部光源ドライバ28に入力されると、このタイミング信号の入力に応じて上部光源14がオンとなって生体3に向けて励起光が照射される。そして、その照射で蛍光物質から発せられる蛍光がカメラ側フィルタ20、撮影レンズ19を通してイメージセンサ18に受光され、その受光による電荷が徐々に蓄積される。イメージセンサ18に蓄積された電荷が光電変換されて画像が生成され、PC6に送られる。
【0035】
上述したように、レーザダイオード30a〜30cから発せられたレーザ光を励起光として照射し、この励起光が拡散部材32a〜32cによって拡散された状態で生体3に照射されるので、蛍光の波長と励起光の波長とが重なることを防ぎ、且つスペックルの発生を防ぐことが可能となる。これにより、イメージセンサ18で蓄積された電荷から生成された画像は、微弱な蛍光まで読み取り可能であるとともに、スペックルに起因する照明ムラが無くなるので、高画質な画像で生体3を観察することができる。さらに、上部光源14は、共振体やメカ機構などの複雑な構成を使用することなく、簡単な構成で励起光を拡散して照射し、スペックルの発生を防ぐことができるので、撮影装置の小型化、ローコスト化を図ることができる。
【0036】
なお、上記実施形態では、レーザダイオード30a〜30cとして単色の赤色レーザダイオードのみを使用しているが、これに限らず、赤、緑、青の各色に対応したレーザダイオードを使用する構成としてもよい。
【0037】
また、上記実施形態では、上部光源14(光源装置)に、レーザダイオード30a〜30cにそれぞれ対応する拡散部材32a〜32cを備える構成としているがこれに限らず、図4に示すように、レーザダイオード30a〜30cから照射される励起光が入射される1つの拡散部材36を備えた構成としてもよい。この場合、拡散部材36は、レーザダイオード30a〜30cの配置に合わせた横幅の広い直方体形状で、一端に軸方向と直交する入射端面37aが、他端に入射端面37aに対して傾斜する傾斜端面37bが形成され、傾斜端面37b及び上面37cが生体3に対面するように配置されている。この拡散部材36は、上記実施形態の拡散部材32a〜32cと同様に低自家蛍光性の透明材料に、無蛍光性の粒状部材を分散させるように混合して形成されており、レーザダイオード30a〜30cからの励起光が入射端面37aから拡散部材36の内部に入射して粒状部材で反射し、拡散した状態で傾斜端面37b及び上面37cから生体へ照射される。
【0038】
上記実施形態においては、上部光源14(光源装置)に、レーザダイオードを複数配置し、レーザダイオードからの励起光が入射する位置に拡散部材をそれぞれ配置しているが、本発明はこれに限らず、複数のレーザダイオードのうち、少なくとも1つのレーザダイオードからの励起光が拡散部材を介さずに生体に照射させる構成としてもよい。この構成を適用した上部光源を図5に示す。なお、図5において、上記実施形態と同じ部品、部材を用いるものは同符号を付して説明を省略する。この場合、上部光源40(光源装置)は、レーザダイオード41a〜41cと、2つの拡散部材32a,32bと並列に配置された反射鏡42と、コリメータレンズ43とを備えている。また、レーザダイオード41a〜41cとしては、例えば、IR(赤外線)レーザダイオードを使用する。2個のレーザダイオード41a,41bから照射される励起光は、それぞれ拡散部材32a,32bに入射し、1個のレーザダイオード41cから照射される励起光はコリメータレンズ43により平行光線化されて反射鏡42へ入射する。反射鏡42は、励起光を反射することが可能な反射部材であり、励起光の光路を90°屈曲させて生体3へ照射させるように配置されている。このような構成とすることで、レーザダイオード41cから照射された励起光については、拡散部材を介さずに生体3へ照射されるので、より強い光量のスポットライトとして使用することができる。そして、通常時はレーザダイオード41a,41bをオンして励起光を拡散部材32a,32bを介して生体3へ照射させ、より強い光量が要求されるときは、PC6からの指示によってレーザダイオード41cをオンして励起光を直接的に生体3へ照射させるように切り替え制御を行う。
【0039】
上記実施形態では、複数のレーザダイオードを設け、それぞれのレーザダイオードに対応した拡散部材、又は反射部材を備えた構成としているが、本発明はこれに限らず、一個のレーザダイオードからの励起光が拡散部材又は反射部材のいずれかに入射するように切り替える構成としてもよい。この構成を適用した上部光源を図6に示す。この場合、上部光源50(光源装置)は、拡散部材32aと、反射鏡42と、1個のレーザダイオード51と、励起フィルタ52と、レーザダイオード51及び励起フィルタ52を保持するハウジング53と、ハウジング53の位置を切り替える切替機構54とを備える。切替機構54は、例えば駆動モータ、ベルト、プーリなどからなり、レーザダイオード51から照射される励起光が拡散部材32aに入射する間接照射位置と、反射鏡42に入射する直接照射位置との間でハウジング53の位置を切り替える。そして、通常時はハウジング53を間接照射位置に移動させてレーザダイオード51からの励起光を拡散部材32aを介して生体3へ照射させ、より強い光量が要求されるときは、PC6からの指示によってハウジング53を直接照射位置に切り替えて励起光を直接的に生体3へ照射させるように切替機構54の切り替え制御を行う。
【0040】
なお、上記実施形態においては、上部光源に本発明を適用した構成を列挙しているがこれに限らず、底部光源に適用してもよい。また、レーザ光源としてレーザダイオードを使用する構成を列挙しているが、本発明はこれに限らず、レーザダイオード以外の固体レーザやガスレーザなど他のレーザ光源からなる構成にも適用することができる。
【0041】
さらにまた、粒状部材としては、酸化チタンに限らず、無蛍光性の白色粉末であればよく、例えば硫酸バリウムを用いてもよい。あるいは、これらの白色粉末に代えて、特開2003−107217号公報、または特開平6−347616号公報に記載された透明ビーズ(拡散体)を粒状部材として使用してもよい。これらの透明ビーズは、透明材料との境界面で光を反射して拡散させるので、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0042】
なお、上記実施形態では、撮影装置に用いられるカメラとして、イメージセンサを備えたカメラの構成を例示しているが、本発明はこれに限らず、受光した蛍光から写真フィルムに画像を生成する写真カメラを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明を実施した撮影システムの構成を示す斜視図である。
【図2】撮影装置の構成の概略を示すブロック図である。
【図3】光源装置の構成を示す斜視図である。
【図4】第1実施形態の変形例の構成を示す斜視図である。
【図5】第2実施形態の光源の構成を示す斜視図である。
【図6】第3実施形態の光源の構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0044】
2 撮影システム
3 生体
5 撮影装置
12 カメラ部
14,40,50 上部光源(光源装置)
15 底部光源
30a〜30c,41,51 レーザダイオード(レーザ光源)
32a〜32c 拡散部材
35a,37a 入射端面
35b,37b 傾斜端面
42 反射鏡(反射部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体に励起光を照射して蛍光物質を励起させ、カメラで撮影可能な蛍光を生じさせる光源装置であって、
励起光を発するレーザ光源と、自家蛍光発生を無視し得る低自家蛍光性の透明材料に、自家蛍光を発生しない無蛍光性の粒状部材を分散させるように混合して形成され、前記レーザ光源から内部に入射された励起光を拡散して前記生体へ照射する拡散部材とを備えたことを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記拡散部材は、略円柱形状で、一端に軸方向と直交する入射端面が、他端に前記入射端面に対して傾斜する傾斜端面が形成されており、周面及び前記傾斜端面が前記生体に対面し、且つ前記入射端面から内部に向かって前記励起光が入射されるように配置され、周面及び前記傾斜端面から励起光を拡散して前記生体へ照射させることを特徴とする請求項1記載の光源装置。
【請求項3】
前記拡散部材を基準にして前記生体と反対側の位置に反射板を設け、前記拡散部材から出射する前記励起光を前記反射板で反射させて前記生体へ照射させることを特徴とする請求項1又は2記載の光源装置。
【請求項4】
前記レーザ光源は、前記軸方向と直交する方向に沿って複数配置されており、前記拡散部材は、前記レーザ光源からの励起光が入射する位置にそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項1ないし3いずれか記載の光源装置。
【請求項5】
前記レーザ光源からの励起光を前記拡散部材を介さずに前記生体に反射させる反射部材を備えており、前記レーザ光源を複数設け、少なくとも1つのレーザダイオードからの励起光が前記反射部材によって前記生体に照射されることを特徴とする請求項1ないし3いずれか記載の光源装置。
【請求項6】
前記レーザ光源からの励起光を前記拡散部材を介さずに前記生体に反射させる反射部材と、一個のレーザダイオードからの励起光が前記拡散部材又は前記反射部材のいずれかに入射するように前記レーザ光源の位置を切り替える切替機構とを備えたことを特徴とする請求項1ないし3いずれか記載の光源装置。
【請求項7】
前記粒状部材は、酸化チタン、または硫酸バリウムであることを特徴とする請求項1ないし6いずれか記載の光源装置。
【請求項8】
前記粒状部材は、前記透明材料との境界面で光を反射させる透明ビーズであることを特徴とする請求項1ないし6いずれか記載の光源装置。
【請求項9】
前記透明材料は、シリコン、又は石英ガラスであることを特徴とする請求項1ないし8いずれか記載の光源装置。
【請求項10】
請求項1ないし9いずれか記載の光源装置と、前記励起光で生じた前記生体の蛍光を受光することによって画像を生成するカメラとを備えたことを特徴とする撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−85151(P2010−85151A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252445(P2008−252445)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】