説明

光照射型美容装置

【課題】 低いコストで且つ単純な構造のまま、確実に光量を均一なものとすることができ、しかも光量を均一にしたとしてもその光量を減らすことのない光照射型美容装置を提供する。
【解決手段】 処理対象の皮膚Hに光を照射するための光を発する発光体11をハウジング2の内部に収容し、該発光体11の発する光をレンズ12を透過させて外部に照射するようにした光照射型美容装置である。レンズ12の透過方向から見て発光体11と少なくとも重なるようにシボ加工を施した光拡散部3をレンズ12に設けると共に、光拡散部3の周囲を、該光拡散部3よりも表面粗さを小さく又はシボ加工を施さないように形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光照射型美容装置、詳しくは発光部を備え、発光部からの光を処理対象の皮膚に対して照射することで、この処理対象の皮膚をトリートメントする光照射型美容装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、処理対象となる皮膚に光を照射して、光の作用により体毛の脱毛や毛髪の再生を抑制し、あるいは皮膚の赤みや色素沈着等を改善することで、肌をトリートメントする光照射型美容装置が知られている。例えば、特許文献1に開示される光照射型美容装置は、装置本体に備えてある光照射部を処理対象の皮膚に向けてセットし、この状態で装置本体内の発光体を発光させることで、光照射部を通じて処理対象の皮膚に光を照射させる構造となっている。
【0003】
ところで、このような処理対象の皮膚Hが受ける光の光量について、一度に照射される照射範囲内におけるこの光量の分布を見てみると、全体的に均一でないのがわかる(図3(a)参照)。つまり、図3(b)に示すように側断面で見た場合、処理対象の皮膚Hと発光体11との距離が最も近い中央部分において最も光量が大きくなり、中央部分から離れるに従って(すなわち中央から周辺に行くに従って)光量が減少するようになる。なお、図3(a)中の横軸であるXは、図3(b)中のX(レンズ12aの一方の端部からの距離X)と対応している。
【0004】
このように、照射する光の光量が照射範囲において均一でなければ、例えば、光量の多い中央部分を体毛の脱毛や脱毛後の体毛の再生を抑制する効果を及ぼすのに必要な光量となるように設定した場合には、効果が生じる範囲が極めて小さい範囲となるし、他方、光量の少ない周辺部分を体毛の脱毛や脱毛後の体毛の再生を抑制する効果を及ぼすのに必要な光量となるように設定した場合には、効果が生じる範囲は広がるものの、光量が多い中央部分における処理対象の皮膚Hにおいては火傷を負う危険が高まってしまう上に、無駄となる光量が多い。
【0005】
そこで、照射する光の光量を照射範囲で均一なものとするために、その光量の分布や屈折を考慮して複数のレンズを積層したり、複数のレンズを複雑に組み合わせたりして均一な光量を得るようにしていた。また、同様に照射面から発する光を均一なものとするための技術として、特許文献2に示すような技術をこの光照射型美容装置に適用することが考えられる。この特許文献2に示すものは、光照射する面に拡散板を配設してこの拡散板に光を透過させ、これにより光の均一化を図るものである。
【特許文献1】特開2004−321401号公報
【特許文献2】実開平5−69782号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のように複数のレンズを積層して加工したり、複数のレンズを複雑に組み合わせたりする場合は、レンズが複数必要な点、複雑な加工が必要な点、並びに複雑な構造が必要な点等においてコスト高を招来する要因となってしまう。
【0007】
また、光照射部に拡散板を配設した場合であっても、やや光が拡散し広がるものの、均一な光量が得られるものではなかった。仮に、光量を拡散板で均一にできたとしても、拡散板は透過率が低く、その光の光量を全体的に減らしてしまうため、体毛の脱毛や脱毛後の体毛の再生を抑制する効果を発揮するためには、結果的に光量を多くしなければならないという問題があった。
【0008】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、低いコストで且つ単純な構造のまま、確実に光量を均一なものとすることができ、しかも光量を均一にしたとしてもその光量を減らすことのない光照射型美容装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために請求項1に係る発明にあっては、処理対象の皮膚Hに光を照射するための光を発する発光体11をハウジング2の内部に収容し、該発光体11の発する光をレンズ12を透過させて外部に照射するようにした光照射型美容装置において、レンズ12の透過方向から見て発光体11と少なくとも重なるようにシボ加工を施した光拡散部3をレンズ12に設けると共に、光拡散部3の周囲を、該光拡散部3よりも表面粗さを小さく又はシボ加工を施さないように形成したことを特徴とするものである。
【0010】
このように構成したことで、光量の多い部分に光拡散部3を設けて、光量の少ない光拡散部3の周囲に、光量の多い部分のその一部である余剰分の光量を拡散させることができるので、結果として、全体としての光量を低減させることなく、光の照射範囲における光量の均一化を図ることができる。
【0011】
また、請求項2に係る発明にあっては、処理対象の皮膚Hの体毛の成長を調節するための光を発する発光体11をハウジング2の内部に収容し、発光体11の発する光をハウジング2に設けられた照射開口21を通して外部に照射するようにした光照射型美容装置において、照射開口21を覆うように設けられて発光体11の発する光を透過させ且つ射出面42を処理対象の皮膚Hとの当接面とする透明板4を設け、該透明板4は、照射開口21に対して略直角方向から見て発光体11に近づくほど、入射面41と射出面42との距離が長く形成されて成ることを特徴とするものである。
【0012】
このように構成したことで、光の照射方向に直角な同一平面内で比較した場合における光量が多くなる部分を光量が少なくなる部分よりも、透明板4の厚みを厚くして形成したから、処理対象の皮膚Hに照射される光量を均一にすることができる。しかも、光量を均一にするに当たって、透過率の低い拡散板等を透過させないから、光量を保ったままその均一化を図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、皮膚に照射される光量を均一にすることができるので、光を照射することによる効果を得るために必要な光量を、安全性を確保したまま広範囲で得ることができる。つまり、光量を均一にできることによって、光照射型美容装置が発する均一された光量を、その光照射による効果を得るために必要な最小限の光量に設定することができるので、その効果を広範囲で得ることができると共に、発光体等の長寿命化にもつながり、コストの低減をも図ることができる。その上、光量の無駄が生じないため、発光による発熱の抑制にもつながるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について添付図面に基づいて説明する。なお、説明の便宜上光照射方向を上下方向とし、特にハウジングの照射開口を上方として説明する。
【0015】
図1には、本発明の実施形態の光照射型美容装置は、体毛の脱毛や脱毛後の体毛の再生を抑制する(以下、抑毛という)効果を発揮する波長を有する光を発する発光部を内部に備えて成る光照射型美容装置を示している。図1(a)は本実施形態の光照射型美容装置の上面図を示しており、図1(b)は本実施形態の光照射型美容装置の側断面図、図1(c)は光照射の光量を表したグラフである。なお、図1(c)の横軸におけるXは、図1(b)中のX(レンズの短手方向の一方の端部からの距離X)と対応したものである。
【0016】
この光照射型美容装置は、片手で把持可能な有底円筒状のハウジング2の内部に発光部1を収納し、ハウジング2の長手方向の一側端面に形成してある略矩形状の照射開口21から、発光部1の発する光を外部に向けて照射するようになっている。
【0017】
この発光部1は、発光体11と集光用の反射傘13とから構成されており、反射傘13の内部に発光体11を収容し、且つ反射傘13の開口がハウジング2に設けられた照射開口21に臨むようにして設置されている。さらに、この照射開口21には、発光体11が発する光を透過して外部に照射する光学パネルとしてのレンズ12が、その開口を閉塞するようにして設置されている。
【0018】
発光体11は、円筒状の放電管にキセノンガスを封入したキセノンランプから成るフラッシュライトで構成されており、この発光体11による光を皮膚面に照射することで、脱毛及び抑毛効果を発揮させることができる。また、発光体11を収容する反射傘13は断面椀状に形成されており、断面においては開口を形成する外縁に近づく程対向する側面間の距離が長くなるように形成されている。このような反射傘13によって、発光体11により発せられる光が反射・集光して、より多くの光量が反射傘13開口方向(すなわち、レンズ12が設置される照射開口21の方向)に向けて照射されるようになっている。
【0019】
レンズ12は、集光用のレンズ12により構成されており、ハウジング2に設けられた矩形状の照射開口21に嵌め込まれるように形成されている。そして、そのレンズ12の略中央部にはシボ加工を施した光拡散部3が設けてある。詳しく説明すると、この光拡散部3は、上方から見て(要するに、レンズ12の透過方向から見て)、内部に配設された発光体11と少なくとも重なるような範囲でシボ加工を施してある。すなわち、本実施形態の発光体11は、円筒状に形成してあるから、照射開口21に対して略直角な方向から(つまり上方から)見れば略矩形状に見えるため、この光拡散部3のシボ加工を施した範囲も略矩形状をなして形成されている。なお、この光拡散部3のシボ加工を施す範囲は、上方から見て、発光体11と少なくとも重なるような範囲で形成されていればよいため、矩形状でなくとも楕円形であってもよく、特に限定されない。このシボ加工を施した光拡散部3の周囲は、シボ加工を施さない単なるレンズ面となっている。
【0020】
ハウジング2内には、制御回路(図示なし)が収納してある。この制御回路は発光体11に接続されており、図示しない電源から供給される電圧を昇圧させて成る高電圧を前記発光体11に印加するようになっている。
【0021】
上記光照射型美容装置を用いて脱毛処理を行うには、ハウジング2を片手で把持した状態で、処理対象の皮膚Hに対してハウジング2の上方の端部に設けられた照射開口21を押し当ててセットする。この状態で照射スイッチ(図示せず)を操作して光照射をオンにすれば、発光体11から発せられる光がレンズ12を介して処理対象の皮膚Hに照射され、この皮膚Hの体毛に対して脱毛及び抑毛作用を及ぼし、処理対象の皮膚Hの美肌効果を向上させる。
【0022】
このとき、発光体11から発せられる光について、レンズ12の略中央に設けられた光拡散部3を透過する光は、光拡散部3の周囲のシボ加工を施していない部分に向けて拡散する。つまり、この光拡散部3を透過して処理対象の皮膚Hに到達する光の光量は少なくなるのに対して、その減少した分の光量は、光拡散部3の周囲に拡散してその周囲の光量を増加させる。その結果、図1(c)に示すように、照射範囲内全体として光量を減少させることなく、全体として均一な光量を得ることができる。
【0023】
なお、上記実施形態において、光拡散部3の周囲にあるシボ加工を施さない単なるレンズ面は、光拡散部3よりも表面粗さを小さくしたシボ加工を施したものであってもよい。この場合においても、周囲よりも光拡散部3のほうがシボ加工を粗くして形成してあるから、この光拡散部3を透過する光量を減少させ、一方、その減少した分の光量については、その光拡散部3の周囲を透過するため、その光拡散部3の周囲を透過する光量を増加させることができる。つまりこの結果、照射範囲全体として光量を減少させることなく、全体として均一な光量を得ることができる。
【0024】
次に、他の実施形態について図2に基づいて説明する。なお、本実施形態は図1に示す実施形態と大部分において同じであるため、同じ部分においては同符号を付して説明を省略し、主に異なる部分について説明する。図2(a)は本実施形態の光照射型美容装置の側断面図を示しており、図2(b)は光照射の光量を表したグラフである。なお、図2(b)の横軸におけるXは、図2(a)中のX(照射開口の短手方向の一方の端部からの距離X)と対応したものである。
【0025】
本実施形態の光照射型美容装置は、レンズが設けられておらず、ハウジング2の端部の照射開口21を覆うようにして、照射開口の上面に設けられた上方に凸と成る透明板4が設けられている点で、上記実施形態とは異なっている。
【0026】
この透明板4は、照射開口21に対して略直角方向から見て(すなわち、上方からみて)、発光体11に近づくほど、入射面41と射出面42との距離が長くなるように形成されている。本実施形態の発光体11は円筒状に形成されているから、この透明板4の射出面42は略アーチ状に形成されている。また、この透明板4は、この射出面42を処理対象の皮膚Hに当接する当接面としている。
【0027】
本実施形態の光照射型美容装置を用いて脱毛処理を行なうには、ハウジング2を片手で把持した状態で、処理対象の皮膚Hに対してこの透明板4の射出面42を当接してセットする。この状態で照射スイッチ(図示せず)を操作して光照射をオンにすれば、発光体11から発せられる光がレンズ12を介して処理対象の皮膚Hに照射され、この皮膚の体毛に対して脱毛及び抑毛作用を及ぼし、その結果、その処理対象の皮膚Hに美肌効果を及ぼす。
【0028】
このときの発光体11からの光は、照射方向に略直角な同一平面で比較した場合には、発光体11の直上程その光量が多くなる。しかし、本実施形態のように透明板4をこの照射開口21を覆うように配設し、尚且つ、この透明板4は、上方からみて発光体11に近づくほど入射面41と射出面42との距離が長くなるように形成したから、光照射方向と直角な方向における同一平面で比較すれば光量の多い部分である中央部分ほど、発光体11と処理対象の皮膚Hとの距離を長くすることができ、その結果、照射範囲全体として均一な光量を得ることができる。その上、本実施形態の透明板4は、拡散板や粗面のシボ加工のような透過率を低下させる加工を施していない。つまり、透過させた光の光量を全体として低下させることなく、処理対象の皮膚Hに対して効果的に光照射を行なうことができる。
【0029】
なお当然のことながら、本実施形態の発光体11は円筒状のものを使用しているが、球状のものを使用すれば、透明板4の光の射出面42は、球状の曲面となる。
【0030】
以上、キセノンライトを用いた光照射型美容装置に基づいて本発明の光照射型美容装置を説明したが、発光体11はキセノンライトから成るフラッシュライトに限定されず、他の構成から成るフラッシュライトであってもよい。また、発光体11は脱毛及び抑毛用に限定されず、上記実施形態の発光体11による波長を、皮膚の赤みや色素沈着等を改善できる波長にして、美肌効果をより向上させるものであっても勿論よい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態の光照射型美容装置を説明する図であり(a)は上面図であり(b)は側断面図であり(c)は光量の分布を示すグラフある。
【図2】本発明の他例の光照射型美容装置を説明する図であり(a)は側断面図であり(b)は光量の分布を示すグラフである。
【図3】従来例を説明する図であり(a)は光量を示すグラフであり(b)は側断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 発光部
11 発光体
12 レンズ
13 反射傘
2 ハウジング
21 照射開口
3 光拡散部
4 透明板
41 入射面
42 射出面
H 処理対象の皮膚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象の皮膚に光を照射するための光を発する発光体をハウジングの内部に収容し、該発光体の発する光をレンズを透過させて外部に照射するようにした光照射型美容装置において、レンズの透過方向から見て発光体と少なくとも重なるようにシボ加工を施した光拡散部をレンズに設けると共に、光拡散部の周囲を、該光拡散部よりも表面粗さを小さく又はシボ加工を施さないように形成したことを特徴とする光照射型美容装置。
【請求項2】
処理対象の皮膚に光を照射するための光を発する発光体をハウジングの内部に収容し、発光体の発する光をハウジングに設けられた照射開口を通して外部に照射するようにした光照射型美容装置において、照射開口を覆うように設けられて発光体の発する光を透過させ且つ射出面を処理対象の皮膚との当接面とする透明板を設け、該透明板は、照射開口に対して略直角方向から見て発光体に近づくほど、入射面と射出面との距離が長く形成されて成ることを特徴とする光照射型美容装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−142613(P2010−142613A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−326534(P2008−326534)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】