説明

光硬化性コーティング組成物、オーバープリント及びその製造方法

【課題】表面平滑性、非タック性(表面ベトツキ抑制)、及び、臭気抑制に優れる光硬化性コーティング組成物、前記光硬化性コーティング組成物を塗布・硬化して得られるオーバープリント、並びに、オーバープリントの製造方法を提供すること。
【解決手段】縮合多環芳香族環上に電子供与性置換基を3個以上有する化合物、重合開始剤、及び、重合性化合物を含有することを特徴とする光硬化性コーティング組成物、前記光硬化性コーティング組成物を使用したオーバープリント、並びに、その製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性コーティング組成物、オーバープリント及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光硬化性組成物、特に紫外線による硬化性組成物が多量に使用されてきている。前記硬化性組成物として、例えば、印刷インキ、オーバーコートワニス、塗料、接着剤、フォトレジスト等を挙げることができる。
特に、電子写真法のようなトナーベースの画像情報の上にオーバープリントコーティングを施すことにより印刷物の保護性が向上し、光沢性が付与された印刷物は銀塩写真プリントの代替商品として商品化されており、注目を集めている。
トナーベースの印刷物が得られる電子写真法の概略を述べる。電子写真法では、潜像保持体表面、例えば感光体(photoreceptor)に均一に帯電させることによって、まず静電荷を潜像保持体表面に形成させる。次いで、その均一帯電させた領域を、原稿の画像に対応する活性化照射のパターンにより選択的に電荷を逃がす。その表面に残る潜像電荷パターンは、照射に暴露されなかった領域に対応する。次いで、その感光体を、トナーを含む1つ又は複数の現像ハウジングに通すことにより、トナーが、静電引力によって電荷パターンで付着するので、その潜像電荷パターンが可視化される。次いでその現像された画像を、画像形成表面に定着させるか、又は、印刷基材、例えば紙に転写させ、適切な定着技術によりそれに定着させて、電子写真印刷物、すなわちトナーベースの印刷物が得られる。
【0003】
印刷物を保護するための公知の方法としては、印刷物にオーバープリントコーティングを施すことが提案されている。例えば、特許文献1及び2には、電子写真法のような、トナーベースの画像の上に、透明トナーを転写した後に定着を行い、表面を被覆する方法が提案されている。
また、特許文献3には、紫外線などによって硬化させることが可能な液膜コーティングを施し、光によってコーティング成分を重合(架橋)させることにより、オーバープリントコーティングを施す方法が提案されている。
さらに、特許文献4には、三官能不飽和アクリル樹脂からなる群より選択される放射線硬化性オリゴマーと、1種又は複数のジ−アクリレート又はトリ−アクリレートを含む、多官能アルコキシル化アクリルモノマー又はポリアルコキシル化アクリルモノマー、からなる群より選択される放射線硬化性モノマーと、少なくとも1種の光重合開始剤と、少なくとも1種の界面活性剤と、を含むオーバープリント組成物が開示されている。
【0004】
一方、重合開始剤に関してはカルボン酸を含有する重量平均分子量5000以上の付加重合ポリマーと、水酸基を含有するフェニルケトン化合物とをエステル化反応させて得られる光開始剤が特許文献5に開示されている。また、共重合可能なモノアクリレート光重合開始剤も特許文献6に開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平11−70647号公報
【特許文献2】特開2003−241414号公報
【特許文献3】特開昭61−210365号公報
【特許文献4】特開2005−321782号公報
【特許文献5】特開平7−33811号公報
【特許文献6】欧州特許第377191号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、表面平滑性、非タック性(表面ベトツキ抑制)、及び、臭気抑制に優れた光硬化性コーティング組成物、前記光硬化性コーティング組成物を塗設して得られるオーバープリント、並びに、オーバープリントの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、下記に記載した手段<1>〜<10>によって達成された。
<1> (a)縮合多環芳香族環上に電子供与性置換基を3個以上有する化合物、(b)重合開始剤、及び、(c)重合性化合物を含有することを特徴とする光硬化性コーティング組成物、
<2> 可視域に実質的に吸収を有しない上記<1>に記載の光硬化性コーティング組成物、
<3> 前記(a)縮合多環芳香族環上に電子供与性置換基を3個以上含有する化合物が下記式(I)で表される化合物である、上記<1>又は上記<2>に記載の光硬化性コーティング組成物、
【0008】
【化1】

前記式(I)において、Arは縮合多環芳香環から水素原子を(p+q)個除いた基を表し、Rはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、炭化水素環基、又は、複素環基を表し、R’はそれぞれ独立に一価の有機基を表し、ORの置換数pは3以上の整数を表し、R’の置換数qは0以上の整数を表す。ただし、(p+q)は縮合多環芳香環上の芳香族水素原子の数以下である。
<4> 前記(a)縮合多環芳香族環上に電子供与性置換基を3個以上含有する化合物が下記式(II)又は下記式(III)で表される化合物である、上記<1>〜上記<3>いずれか1つに記載の光硬化性コーティング組成物、
【0009】
【化2】

前記式(II)及び前記式(III)において、Rはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、炭化水素環基、又は、複素環基を表し、R’はそれぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、炭化水素環基、又は、複素環基を表し、nは3〜10の整数を表し、また、mは0〜7の整数を表す。
<5> オーバープリント用である、上記<1>〜上記<4>いずれか1つに記載の光硬化性コーティング組成物、
<6> 電子写真印刷物のオーバープリント用である、上記<1>〜上記<5>いずれか1つに記載の光硬化性コーティング組成物、
<7> 印刷物上に上記<1>〜上記<6>いずれか1つに記載の光硬化性コーティング組成物を光硬化したオーバープリント層を有するオーバープリント、
<8> 前記印刷物が電子写真印刷物である、上記<7>に記載のオーバープリント、
<9> 印刷基材上に印刷して印刷物を得る工程、前記印刷物上に上記<1>〜上記<6>いずれか1つに記載の光硬化性コーティング組成物を塗布する工程、及び、前記光硬化性コーティング組成物を光硬化する工程、を含むオーバープリントの製造方法、
<10> 前記印刷物が電子写真印刷物である、上記<9>に記載のオーバープリントの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、表面平滑性、非タック性(表面ベトツキ抑制)、及び、臭気抑制に優れた光硬化性コーティング組成物、前記光硬化性コーティング組成物を塗設して得られるオーバープリント、並びに、オーバープリントの製造方法を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
<光硬化性コーティング組成物>
本発明に係る光硬化性コーティング組成物は、縮合多環芳香族環上に電子供与性置換基を3個以上有する化合物、重合開始剤、重合性化合物を含有することを特徴とする。
本発明のオーバープリントは、印刷物上に上記の光硬化性コーティング組成物を光硬化したオーバープリント層を有する。
本発明のオーバープリントの製造方法は、印刷基材上に印刷して印刷物を得る工程、前記印刷物上に上記の光硬化性コーティング組成物を塗布する工程、及び、前記コーティング組成物を光硬化する工程、を含む。
また、前記印刷物は、電子写真印刷物であることが好ましい。
【0012】
本発明の光硬化性コーティング組成物は、電子線、紫外線等の活性放射線の照射により硬化可能な光硬化性コーティング組成物であり、特に、平版、凸版、凹版、スクリーン印刷、インクジェット、電子写真等の方法でインク及び/又はトナーを印刷基材(受像基材)上に配置して作成した画像に対してコーティングを行うための光硬化性コーティング組成物として好適に用いることができる。さらに、電子写真法により印刷されたトナーベースの印刷物をコーティングするための光硬化性オーバープリント組成物(overprint compositions)として特に好適である。
【0013】
本発明の光硬化性コーティング組成物は、活性放射線の照射により硬化可能な組成物である。
本発明でいう「活性放射線」とは、その照射により組成物中において開始種を発生させ得るエネルギーを付与することができるものであれば、特に制限はなく、広くα線、β線、γ線、X線、紫外線、可視光線、電子線などを包含するものである。中でも、硬化感度及び装置の入手容易性の観点からは、紫外線及び電子線が好ましく、特に紫外線が好ましい。従って、本発明の光硬化性コーティング組成物としては、活性放射線として、紫外線を照射することにより硬化可能なコーティング組成物であることが好ましい。
【0014】
電子写真法のようなトナーベースの画像は、画像表面にフェザーオイル層が存在する場合には、印刷物表面が疎水的であり、かつ表面エネルギーが低いために、硬化性、表面平滑性、強度、保存安定性等の全てにおいて満足する光硬化性組成物を得ることは難しい現状にある。
特に、トナーベースの画像情報の上にオーバープリントコーティングを施して銀塩写真プリントの代替商品として扱う場合、一般消費者が直接手にするために、商品の臭気・安全性が重要な品質の一つとなる。
重合性モノマーに起因する臭気の低減に関しては、低揮発性の観点で、固体モノマーや高分子量液体モノマーの活用が考えられるが、重合性組成物の粘度が上昇するために表面平滑性が低下し、印刷物表面にスジなどが発生するという問題点がある。
【0015】
本発明は、縮合多環芳香族環上に電子供与性置換基を3個以上有する化合物を含有する光硬化性コーティング組成物を使用することにより、表面平滑性、非タック性(表面ベトツキ抑制)、及び、臭気抑制に優れたオーバープリントを提供できることを見出したものである。
【0016】
本発明の光硬化性コーティング組成物は、可視域に実質的に吸収を有しないことが好ましい。「可視域に実質的に吸収を有しない」とは、400〜700nmの可視域に吸収を有しないか、又は、光硬化性コーティング組成物として支障のない程度の吸収しか可視域に吸収を有しないことを意味する。具体的には、コーティング組成物の5μm光路長の透過率が、400〜700nmの波長範囲において、70%以上、好ましくは80%以上であることを意味する。
本発明の光硬化性コーティング組成物は、オーバープリント用として好適に使用することができ、電子写真印刷物のオーバープリント用として特に好適に使用することができる。
本発明の光硬化性コーティング組成物は、画像部がトナー分の厚みを有する電子写真印刷物に対してオーバープリント層を形成する場合においても、非タック性及び表面平滑性に優れ、艶や光沢のあるオーバープリントを与え、視覚的に従来からの銀塩写真プリントに近い印象を与えることができる。
また、本発明の光硬化性コーティング組成物は、画像表面にフェザーオイル層が存在するトナー画像であっても、非タック性と表面平滑性に優れ、艶や光沢があり、反りの少ない柔軟性に富む画像印刷物を与え、視覚的に銀塩写真プリントに近いオーバープリントを得ることができる。
【0017】
<縮合多環芳香族環上に電子供与性置換基を3個以上有する化合物>
本発明の光硬化性コーティング組成物(以下、単に「コーティング組成物」ともいう。)は、縮合多環芳香族環上に電子供与性置換基を3個以上有する化合物(以下、単に「縮合多環芳香族化合物」ともいう。)を含有することを特徴とする。
本発明に用いることのできる縮合多環芳香族化合物は、縮合多環芳香族環上に電子供与性置換基を3個以上有する化合物である。中でも縮合多環芳香族環上に有する置換基としては、ヒドロキシ基、アルコキシ基及び/又はアリーロキシ基のいずれかの置換基が好ましい。
また、本発明に用いることのできる縮合多環芳香族化合物は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0018】
本発明に用いることのできる好ましい縮合多環芳香族化合物は、下記式(I)で表すことができる。
【0019】
【化3】

前記式(I)において、Arは縮合多環芳香環から水素原子を(p+q)個除いた基を表し、Rはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、炭化水素環基、又は、複素環基を表し、R’はそれぞれ独立に一価の有機基を表し、ORの置換数pは3以上の整数を表し、R’の置換数qは0以上の整数を表す。ただし、(p+q)は縮合多環芳香環上の芳香族水素原子の数以下であるものとする。
【0020】
縮合多環芳香族環としては、例えば、アントラセン、フェナントレン、ナフタレン、インダセン、アセナフチレン、フルオランテン、アセヘナントリレン、アセアントリレン、ベンゾ[a]アントラセン、テトラセン、トリフェニレン、ピレン、ペリレン、又は、クリセンなどが挙げられ、この中でもアントラセン、トリフェニレン、ペリレン、又は、フェナントレンであることが好ましく、アントラセン、トリフェニレン、又は、フェナントレンであることがより好ましく、アントラセン、又は、フェナントレンであることがさらに好ましく、アントラセンであることが特に好ましい。式(I)におけるArとしては、前記縮合多環芳香族環からORの数pとR’の数qとを加えた個数の水素原子を除いた基である。
【0021】
前記縮合多環芳香族化合物において、ヒドロキシ基、アルコキシ基及び/又はアリーロキシ基(以下、ヒドロキシ基、アルコキシ基及びアリーロキシ基の3つの基の総称して「OR基」ともいう。)は、縮合多環芳香環と3個以上直接結合しており、その数pとしては、3〜6個結合していることが好ましく、3又は4個結合していることがより好ましい。
【0022】
縮合多環芳香族化合物が、縮合多環芳香環上に有するOR基のRとしては、水素原子(ヒドロキシル基に対応する。)、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、炭化水素環基、芳香族ではない複素環基(以上、アルコキシ基に対応する。)、アリール基、及び、芳香族複素環基(以上、アリーロキシ基に対応する。)が挙げられ、前記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、炭化水素環基、芳香族ではない複素環基、アリール基、及び、芳香族複素環基は、それぞれ後述する置換基を有していてもよい。
【0023】
前記式(I)において、3個以上有するOR基中のRはそれぞれ同一であっても、異なっていてもよく、2以上のRが互いに結合して少なくとも2以上の酸素原子を含む環構造を形成していてもよい。
【0024】
OR基のRにおけるアルキル基としては、炭素数1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましく、1〜8であることがさらに好ましい。
OR基のRにおけるアルケニル基としては、炭素数2〜30であることが好ましく、2〜20であることがより好ましく、2〜8であることがさらに好ましい。
OR基のRにおけるアルキニル基としては、炭素数2〜30であることが好ましく、2〜20であることがより好ましく、2〜8であることがさらに好ましい。
OR基のRにおける炭化水素環基としては、炭素数3〜30であることが好ましく、3〜20であることがより好ましく、3〜10であることがさらに好ましく、単環であっても、2環以上の多環基であってもよい。
OR基のRにおける複素環基としては、芳香族複素環基であっても、芳香族ではない複素環基であってもよく、ヘテロ原子種としては酸素原子、硫黄原子、及び、窒素原子が好ましい。また、炭素数が4〜30であることが好ましく、4〜20であることがより好ましく、4〜10であることがさらに好ましい。また、複素環基の複素環は単環であっても、2環以上の多環基であってもよい。
OR基のRにおけるアリール基としては、炭素数6〜30であることが好ましく、6〜20であることがより好ましく、6〜10であることがさらに好ましく、単環であっても、2環以上の多環基であってもよい。
【0025】
Rとして具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オキチル基、アリル基、フェニル基、ベンジル基、ドデシル基又はピリジル基等が好ましく挙げられ、その中でもメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル、ベンジル基が特に好ましい。
【0026】
縮合多環芳香族化合物は、縮合多環芳香環上にOR基以外の基R’を有していてもよく、R’の数については可能である限り特に制限はない。
縮合多環芳香族化合物が有していてもよい一価の有機基R’としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、炭化水素環基、及び、複素環基が挙げられ、後述の置換基を有していてもよい。ただし、縮合多環芳香環上にR’を有することにより縮合多環芳香族化合物の励起酸化電位を大きく低下させないことが重要である。
また、R’が電子吸引基であるハロゲン原子、アルコキシカルボニル基及び/又はアリーロキシカルボニル基等である場合、励起酸化電位を高くするため、縮合多環芳香族化合物は縮合多環芳香環上にOR基が少なくとも4個以上有することが好ましい。
【0027】
一価の有機基R’のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、炭化水素環基、及び、複素環基の好ましい範囲はそれぞれ前述のOR基として挙げられたものと同様である。
一価の有機基R’におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及び、ヨウ素原子が挙げられ、その中でも、フッ素原子及び塩素原子であることが好ましい。
一価の有機基R’におけるアミノ基としては、−NH2、−NHRa、−NRabが挙げられ、Ra及びRbとしては、それぞれ前記ORのRと同義であり、好ましい範囲も同様である。
一価の有機基R’におけるアルコキシカルボニル基としては、アルコキシカルボニル基中のアルキル基の好ましい範囲が、前述のOR基として挙げられたアルキル基と同様である。
一価の有機基R’におけるアリーロキシカルボニル基としては、アリーロキシカルボニル基中のアリール基の好ましい範囲が、前述のOR基として挙げられたアリール基の好ましい範囲と同様である。
【0028】
前記式(I)において、R’の数qは、0以上の整数である。ただし、(p+q)は縮合多環芳香環上の芳香族水素原子の数以下である。
qが0の場合は、式(I)で表される化合物の縮合多環芳香環上にR’がないことを表し、qが1〜r(rは2以上の整数とする。)の場合は、縮合多環芳香環上にRがそれぞれ1〜r個あることを表す。
また、qが2以上の場合は、縮合多環芳香環上のそれぞれのRにおいて、互いに独立にハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、炭化水素環基、又は、複素環基を選ぶことができ、2以上のR’が互いに結合して環を形成していてもよい。また、可能であるならRとR’とが結合し、酸素原子を少なくとも1つ含む環を形成していてもよい。
【0029】
前記式(I)におけるR又はR’として挙げられる前記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、炭化水素環基、アリール基、及び、複素環基が有していてもよい置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いられ、好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、
【0030】
アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキルウレイド基、N’−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アリール−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、
【0031】
ホルミル基、アシル基、カルボキシル基及びその共役塩基基(以下、カルボキシラートと称す)、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SO3H)及びその共役塩基基(以下、スルホナト基と称す)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、N−アシルスルファモイル基及びその共役塩基基、N−アルキルスルホニルスルファモイル基(−SO2NHSO2(alkyl))及びその共役塩基基、N−アリールスルホニルスルファモイル基(−SO2NHSO2(aryl))及びその共役塩基基、N−アルキルスルホニルカルバモイル基(−CONHSO2(alkyl))及びその共役塩基基、N−アリールスルホニルカルバモイル基(−CONHSO2(aryl))及びその共役塩基基、
【0032】
シリル基、アルコキシシリル基(−Si(Oalkyl)3)、アリーロキシシリル基(−Si(Oaryl)3)、ヒドロキシシリル基(−Si(OH)3)及びその共役塩基基、ホスホノ基(−PO32)及びその共役塩基基(以下、ホスホナト基と称す)、ジアルキルホスホノ基(−PO3(alkyl)2)、ジアリールホスホノ基(−PO3(aryl)2)、アルキルアリールホスホノ基(−PO3(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノ基(−PO3H(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスホナト基と称す)、モノアリールホスホノ基(−PO3H(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールホスホナト基と称す)、ホスホノオキシ基(−OPO32)及びその共役塩基基(以後、ホスホナトオキシ基と称す)、ジアルキルホスホノオキシ基(−OPO3(alkyl)2)、ジアリールホスホノオキシ基(−OPO3(aryl)2)、アルキルアリールホスホノオキシ基(−OPO3(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノオキシ基(−OPO3H(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスホナトオキシ基と称す)、モノアリールホスホノオキシ基(−OPO3H(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールホスホナトオキシ基と称す)、シアノ基、ニトロ基が挙げられる。これらの置換基は、上記置換基でさらに置換されていてもよく、また、可能であるなら環を形成していてもよい。
【0033】
縮合多環芳香族化合物として用いることのできるアントラセン化合物又はフェナントレン化合物としては、下記式(II)又は下記式(III)で表される化合物を好ましく挙げることができる。下記式(II)又は下記式(III)で表される化合物は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0034】
【化4】

前記式(II)及び前記式(III)において、Rはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、炭化水素環基、又は、複素環基を表し、R’はそれぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、炭化水素環基、又は、複素環基を表し、nは3〜10の整数を表し、また、mは0〜7の整数を表す。ただし、OR及びR’はアントラセン環又はフェナントレン環上の任意の位置で結合しているものとする。
【0035】
前記式(II)及び前記式(III)中、OR基はアントラセン環又はフェナントレン環上の任意の位置(1〜10位)で結合しており、その数はn個である。
前記式(II)又は前記式(III)におけるOR基の数nは3〜10の整数を表し、3〜6であることが好ましく、3又は4であることがより好ましい。
OR基中のRはそれぞれ同一であっても、異なっていてもよく、2以上のRが互いに結合して環を形成していてもよい。
【0036】
前記式(II)又は前記式(III)におけるR’の置換数mは0〜7の整数を表す。
mが0の場合は、前記式(II)又は前記式(III)で表される化合物のアントラセン環又はフェナントレン環上にR’がないことを表し、mが1〜7の場合は、アントラセン環又はフェナントレン環上にRがそれぞれ1〜7個あることを表す。
また、mが2以上の場合は、アントラセン環又はフェナントレン環上のそれぞれのRにおいて、互いに独立にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、炭化水素環基、又は、複素環基を選ぶことができ、2以上のR’が互いに結合して環を形成していてもよい。また、可能であるならRとR’とが結合し、酸素原子を少なくとも1つ含む環を形成していてもよい。
【0037】
前記式(II)及び前記式(III)中、Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、炭化水素環基、及び、複素環基を表し、式(I)で前述した置換基を有していてもよい。また、可能であるなら2個以上のRが結合し環構造を形成していてもよい。
【0038】
前記式(II)及び前記式(III)中、R’はハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、炭化水素環基、及び、複素環基を表し、式(I)で前述した置換基を有していてもよい。また、可能であるなら2個以上のR’、又は、RとR’とが結合し環構造を形成していてもよい。
【0039】
前記式(II)及び前記式(III)におけるR及びR’として挙げられるハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、炭化水素環基、及び、複素環基は、前記式(I)におけるOR基及びR’におけるハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、炭化水素環基、及び、複素環基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
また、R’が電子吸引基であるハロゲン原子、アルコキシカルボニル基及び/又はアリーロキシカルボニル基である場合、励起酸化電位を高くするため、式(II)又は(III)で表される化合物はアントラセン環又はフェナントレン環上にOR基が少なくとも4個以上有することが好ましい。
【0040】
本発明の光硬化性コーティング組成物は、縮合多環芳香族化合物を含有するために、照射された活性放射線の吸収効率が向上し、硬化感度が向上する。また、活性放射線、特に紫外線を吸収したエネルギー的に高い状態に励起することができるため、上記化合物は、重合開始剤へ効率よく電子移動又はエネルギー移動を行い、重合開始剤の活性重合開始種を生成するので、光硬化性コーティング組成物の硬化反応を高感度化することができる。
また、縮合多環芳香族化合物は、電子供与性基であるOR基を有していることで、縮合多環芳香環の励起酸化電位を高くすることができ、重合開始剤との電子移動効率が向上し、重合開始剤の分解効率が向上するため、本発明の光硬化性コーティング組成物における硬化反応を高感度化することができる。
【0041】
前記縮合多環芳香族化合物の合成方法は、特に限定はされないが、例えば、Michael Diekers, Chuping Luo, Dirk M. Guldi, and Andreas Hirsch, Chem. Eur. J., 8, 979-991 (2002)等に記載の方法等により合成することができ、また、公知の官能基変換法により種々の化合物を合成できる、
【0042】
前記縮合多環芳香族化合物のうち、好ましい態様として、以下に示すI−1〜I−52の化合物を挙げることができる。なお、化合物中の略記は以下の通りである。
Me:CH3 Et:CH2CH3 Bu:CH2CH2CH2CH3 Ph:C65
【0043】
【化5】

【0044】
【化6】

【0045】
【化7】

【0046】
上記の縮合多環芳香族化合物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明の光硬化性コーティング組成物中における縮合多環芳香族化合物は、光硬化性コーティング組成物全固形物に対して、0.01〜20重量%が好ましく、0.1〜10重量%であることがさらに好ましい。添加量が0.01%以上の場合、感度が高く、非タック性(表面ベトツキ抑制)が向上する。一方、20重量%よりも少ない場合は、光硬化性コーティング組成物中の未硬化成分が減少するために臭気を抑制できるようになる。
本発明において用いられる縮合多環芳香族化合物は、極大吸収波長が400nm以下であることが好ましく、さらに360nm以下であることが好ましい。このように吸収波長を紫外線領域にすることにより、透明性の高いコーティング組成物が得られる。
【0047】
本発明の光硬化性コーティング組成物には、本発明の効果を損ねない範囲で、縮合多環芳香族化合物と共に、既知の縮合多環芳香族環化合物を併用することができる。
併用可能な縮合多環芳香族環の例としては、例えば、ヒドロキシル基、アルコキシ基、及び/又はアリーロキシ基を化合物中に2つ以下しか有さない、縮合多環芳香族環上に他の置換基を有してもよい、アントラセン、フェナントレン、ナフタレン、インダセン、アセナフチレン、フルオランテン、アセヘナントリレン、アセアントリレン、ベンゾ[a]アントラセン、テトラセン、トリフェニレン、ピレン、ペリレン、又は、クリセンなどが挙げられる。また、縮合多環芳香族環上に有してもよい他の置換基としては、上述の式(I)のR又はR’として挙げた置換基が挙げられる。
【0048】
<重合開始剤>
本発明の光硬化性コーティング組成物は、重合開始剤を含有するのが好ましい。本発明で用いることができる重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤又はカチオン重合開始剤を使用することができる。前記重合開始剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
本発明の光硬化性コーティング組成物に用いることのできるラジカル重合開始剤又はカチオン重合開始剤は、外部エネルギーを吸収して重合開始種を生成する化合物である。重合を開始するために使用される外部エネルギーは、熱及び活性放射線に大別され、それぞれ、熱重合開始剤及び光重合開始剤が使用される。活性放射線には、α線、β線、γ線、電子線、紫外線、可視光線、赤外線が例示できる。使用する波長は特に限定されないが、好ましくは200〜500nmの波長領域であり、より好ましくは200〜450nmの波長領域である。
【0050】
<ラジカル重合開始剤>
本発明で用いることができるラジカル重合開始剤としては(a)芳香族ケトン類、(b)芳香族オニウム塩化合物、(c)有機過酸化物、(d)チオ化合物、(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(f)ケトオキシムエステル化合物、(g)ボレート化合物、(h)アジニウム化合物、(i)メタロセン化合物、(j)活性エステル化合物、(k)炭素ハロゲン結合を有する化合物、並びに(l)アルキルアミン化合物等が好ましく挙げられる。これらのラジカル重合開始剤は、上記(a)〜(l)の化合物を単独若しくは組み合わせて使用してもよい。本発明におけるラジカル重合開始剤は単独若しくは2種以上の併用によって好適に用いられる。
(a)芳香族ケトン類、(b)芳香族オニウム塩化合物、(c)有機過酸化物、(d)チオ化合物、(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(f)ケトオキシムエステル化合物、(g)ボレート化合物、(h)アジニウム化合物がより好ましく、(f)ケトオキシムエステル化合物がさらに好ましい。
【0051】
<カチオン重合開始剤>
本発明で用いることができるカチオン重合開始剤(光酸発生剤)としては、例えば、化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が好ましく挙げられる(有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ参照)。本発明に好適なカチオン重合開始剤の例を以下に挙げる。
【0052】
第1に、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウムなどの芳香族オニウム化合物のB(C654-、PF6-、AsF6-、SbF6-、CF3SO3-塩を挙げることができる。第2に、スルホン酸を発生するスルホン化物を挙げることができる。第3に、ハロゲン化水素を光発生するハロゲン化物も用いることができる。第4に、鉄アレン錯体を挙げることができる。
ジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウムなどの芳香族オニウム化合物のB(C654-、PF6-、AsF6-、SbF6-、CF3SO3-塩が好ましく、芳香族スルホニウム化合物のB(C654-、PF6-、CF3SO3-塩がさらに好ましい。
【0053】
<重合性化合物>
本発明の光硬化性コーティング組成物は、重合性化合物を含む。本発明に用いることのできる重合性化合物としては、ラジカル重合性化合物、又は、カチオン重合性化合物が挙げられる。ラジカル重合性化合物としては、例えば特開平7−159983号、特公平7−31399号、特開平8−224982号、特開平10−863号、特開平9−134011号等の各公報に記載されている光重合性組成物を用いた光硬化型材料が知られており、カチオン重合性化合物としては、例えば、カチオン重合系の光硬化性樹脂が知られており、最近では400nm以上の可視光以上の長波長域に増感された光カチオン重合系の光硬化性樹脂も、例えば特開平6−43633号、特開平8−324137号の各公報等に公開されている。
【0054】
<ラジカル重合性化合物>
本発明において、ラジカル重合性化合物としては、エチレン性不飽和結合を有する化合物であることが好ましい。
本発明におけるラジカル重合性化合物は、エチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する化合物であれば、どのようなものでもよく、モノマー、オリゴマー、ポリマー等の化学形態を持つものが含まれる。
ラジカル重合性化合物は、1種のみ用いてもよく、また目的とする特性を向上するために任意の比率で2種以上を併用してもよい。反応性、物性などの性能を制御する点から、2種以上のラジカル重合性化合物を併用することが好ましい。
ラジカル重合性化合物の含有量を、本発明の光硬化性コーティング組成物の全重量に対して、好ましくは20〜95重量%、より好ましくは50〜95重量%、さらに好ましくは70〜95重量%とすることが適当である。
【0055】
ラジカル重合可能なエチレン性不飽和化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸及びそれらの塩、エチレン性不飽和基を有する無水物、アクリロニトリル、スチレン、さらに種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン等のラジカル重合性化合物が挙げられる。
具体的には、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、カルビトールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、エポキシアクリレート等のアクリル酸誘導体、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、アリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン等のメタクリル誘導体、その他、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物の誘導体が挙げられ、さらに具体的には、山下晋三編、「架橋剤ハンドブック」、(1981年、大成社);加藤清視編、「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」(1985年、高分子刊行会);ラドテック研究会編、「UV・EB硬化技術の応用と市場」、79頁、(1989年、シーエムシー);滝山栄一郎著、「ポリエステル樹脂ハンドブック」、(1988年、日刊工業新聞社)等に記載の市販品若しくは業界で公知のラジカル重合性乃至架橋性のモノマー、オリゴマー及びポリマーを用いることができる。
【0056】
また、ラジカル重合性化合物としては、例えば、特開平7−159983号、特公平7−31399号、特開平8−224982号、特開平10−863号、特開平9−134011号等の各公報に記載されている光重合性組成物に用いられる光硬化型の重合性化合物材料が知られており、これらも本発明のコーティング組成物に適用することができる。
【0057】
さらに、ラジカル重合性化合物として、ビニルエーテル化合物を用いることも好ましい。好適に用いられるビニルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、ヒドロキシエチルモノビニルエーテル、ヒドロキシノニルモノビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
これらのビニルエーテル化合物のうち、硬化性、密着性、表面硬度の観点から、ジビニルエーテル化合物又はトリビニルエーテル化合物が好ましく、ジビニルエーテル化合物が特に好ましい。ビニルエーテル化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0058】
本発明の用いることができる他の重合性化合物としては、(メタ)アクリル系モノマー若しくはプレポリマー、エポキシ系モノマー若しくはプレポリマー、又は、ウレタン系モノマー若しくはプレポリマー等の(メタ)アクリル酸エステル(以下、「(メタ)アクリレート化合物」ともいう。)が好ましく用いられる。さらに好ましくは、下記化合物である。なお、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」と「メタクリル」との両方を表し、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」と「メタクリレート」との両方を表す。
【0059】
すなわち、2−エチルヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−アクリロイロキシエチルフタル酸、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、ノニルフェノールエチレンオキサイド(EO)付加物(メタ)アクリレート、変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド(PO)付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートトリレンジイソシアナートウレタンプレポリマー、ラクトン変性可撓性(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートヘキサメチレンジイソシアナートウレタンプレポリマー、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートヘキサメチレンジイソシアナートウレタンプレポリマー、ステアリル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ラクトン変性(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0060】
また、ここに列挙されている(メタ)アクリレート化合物は、反応性が高く、粘度が低く、印刷基材への密着性に優れる。
【0061】
本発明において、非タック性(表面ベトツキ)、透明性をより改善するためには、前述のラジカル重合性化合物に記載の中でも、多官能(メタ)アクリレート化合物とを併用することが好ましい。
多官能(メタ)アクリレートとしては、ビスフェノールAエポキシジ(メタ)アクリレートやトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートを特に好ましく例示できる。
また、多官能エチレン性不飽和化合物を使用する場合、多官能エチレン性不飽和化合物の含有量としては、コーティング組成物の全重量に対し、5〜80重量%であることが好ましく、40〜70重量%であることがより好ましい。上記範囲であると、非タック性に優れる。
【0062】
本発明の光硬化性コーティング組成物は、非タック性の観点から、下記式(M)で表される(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましく、下記式(M)で表されるアクリレート化合物を含むことがより好ましい。
【0063】
【化8】

【0064】
式(M)中、RAは、水素原子又はメチル基を表し、RBは、炭素数6〜18のアルキル基を表し、炭素数6〜18の直鎖アルキル基であることが好ましく、炭素数6〜12の直鎖アルキル基であることがより好ましい。
また、本発明の光硬化性コーティング組成物において、式(M)で表される(メタ)アクリレート化合物は、使用しなくとも、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0065】
また、本発明の光硬化性コーティング組成物は、前記式(M)で表される(メタ)アクリレート化合物を、コーティング組成物の全重量に対して、1〜80重量%であることが好ましく、5〜70重量%であることがより好ましく、10〜60重量%であることがさらに好ましい。上記範囲であると、非タック性及び表面平滑性に優れる。
【0066】
ラジカル重合性化合物としては、N−ビニル基を有し、かつ環状構造を有する基を有するラジカル重合性化合物を使用することが好ましい。中でも、N−ビニルカルバゾール、1−ビニルイミダゾール、N−ビニルラクタム類を使用することが好ましく、N−ビニルラクタム類を使用することがさらに好ましい。
本発明に用いることができるN−ビニルラクタム類の好ましい例として、下記式(N)で表される化合物が挙げられる。
【0067】
【化9】

【0068】
式(N)中、mは1〜5の整数を表し、原材料の入手性の観点から、mは2〜4の整数であることが好ましく、mが2又は4であることがより好ましく、mが4である、すなわちN−ビニルカプロラクタムであることが特に好ましい。N−ビニルカプロラクタムは安全性に優れ、汎用的で比較的安価に入手できるので好ましい。
また、上記N−ビニルラクタム類は、ラクタム環上にアルキル基、アリール基等の置換基を有していてもよく、飽和又は不飽和環構造を連結していてもよい。上記N−ビニルラクタム類はコーティング組成物中に1種のみ含有されていてもよく複数種含有されていてもよい。
【0069】
ラジカル重合性化合物としては、環状構造を有するラジカル重合性化合物を使用することが好ましい。
環状構造を有するラジカル重合性化合物は、脂肪族環状構造を有する単官能ラジカル重合性化合物及び/又は芳香族単官能ラジカル重合性化合物であることがより好ましい。
脂肪族環状構造を有する単官能ラジカル重合性化合物及び芳香族単官能ラジカル重合性化合物は、以下の式(A1)で表される単官能ラジカル重合性化合物であることが好ましい。
なお、脂肪族環状構造を有する単官能ラジカル重合性化合物とは、ヘテロ原子を含んでもよい脂環式炭化水素基を有する単官能ラジカル重合性化合物であり、芳香族単官能ラジカル重合性化合物とは、芳香族基を有する単官能ラジカル重合性化合物である。
また、単官能ラジカル重合性化合物は、重合性のあるエチレン性不飽和結合を1つのみ有する化合物であり、重合性のあるエチレン性不飽和結合を有する基としては、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、ビニル基、ビニルオキシ基が好ましく例示できる。
なお、脂肪族環状構造を有するラジカル重合性化合物は、脂肪族環状構造の他にラジカル重合性基を有しており、脂肪族環状構造内に有するエチレン性不飽和結合は、重合性のあるエチレン性不飽和結合に該当しない。
【0070】
【化10】

【0071】
上記式(A1)において、R1は水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1〜4のアルキル基を表し、X1は、単結合、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−C(O)O−又は−OC(O)−)、アミド結合(−C(O)NH−、又は、−NHC(O)−)、カルボニル結合(−C(O)−)、分岐を有していてもよい炭素数20以下のアルキレン基、又はこれらを組み合わせた第2の二価の連結基が結合してもよく、第1の二価の連結基のみ又は第2の二価の連結基を有する場合はエーテル結合、エステル結合及び炭素数20以下のアルキレン基を有するものが好ましい。
2は単環芳香族基及び多環芳香族基を含む芳香族基又は脂環式炭化水素基であり、前記芳香族基及び脂環式炭化水素基は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基、シロキサン基、炭素数30以下の置換基を有していてもよく、前記芳香族基又は脂環炭化水素基の環状構造には、O、N、S等のヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0072】
上記式(A1)において、R1は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、より好ましくは水素原子又はメチル基であり、特に好ましくは水素原子である。
また、X1はエステル結合(−C(O)O−)を有するものであることが好ましい。
すなわち、本発明において、脂肪族環状構造を有する単官能ラジカル重合性化合物及び芳香族単官能ラジカル重合性化合物は、アクリレート(アクリル酸エステル)又はメタクリレート(メタクリル酸エステル)であることが好ましい。
【0073】
式(A1)のR2は脂環式炭化水素基でもよい。また、O、N、Sなどのヘテロ原子を含む脂環式炭化水素基を有する基でもよい。
脂環式炭化水素基は、炭素数3〜12のシクロアルカン類を有する基でもよい。
上記O、N、Sなどのヘテロ原子を含む脂環式炭化水素基は、具体的には、ピロリジン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、イソオキサゾリジン、イソチアゾリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルフォリン、チオモルフォリン、ジアゾール、トリアゾール、テトラゾールから1つ以上の水素を除いた基が例示できる。
これらの脂環式炭化水素基及びヘテロ環を有する脂環式炭化水素基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基、メルカプト基、シロキサン基、さらに置換基を有していてもよい総炭素数30以下の炭化水素基若しくはO、N、S等のヘテロ原子を含む複素環基、又は、二価の置換基としてオキシ基(=O)であることが好ましい。
【0074】
脂肪族環状構造を有する単官能ラジカル重合性化合物は、下記式(A2)で表されるノルボルナン骨格を有する化合物であることがより好ましい。
【0075】
【化11】

【0076】
式(A2)中、R1は水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1〜4のアルキル基を表し、X1は二価の連結基を表し、エーテル基(−O−)、エステル基(−C(O)O−若しくは−OC(O)−)、アミド基(−C(O)NR’−)、カルボニル基(−C(O)−)、窒素原子(−NR’−)、置換基を有していてもよい炭素数1〜15のアルキレン基、又は、これらを2以上組み合わせた二価の基であることが好ましい。なお、R’は水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状若しくは環状アルキル基、又は、炭素数6〜20のアリール基を表す。R2は置換基を表し、rは0〜5の整数を表し、qは環状炭化水素構造を表し、前記環状炭化水素構造として炭化水素結合以外にカルボニル結合(−C(O)−)及び/又はエステル結合(−C(O)O−)を含んでいてもよく、r個存在するR2はそれぞれ同じであっても、異なっていてもよく、また、ノルボルナン骨格中の一炭素原子をエーテル結合(−O−)及び/又はエステル結合(−C(O)O−)で置換してもよい。
式(A2)中、R1は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、より好ましくは水素原子又はメチル基である。
【0077】
式(A2)におけるX1のビニル基と結合する端部は、X1のカルボニル炭素とビニル基とが結合するエステル基又はアミド基であることが好ましく、より好ましくはエステル結合である。特に、H2C=C(R1)−C(O)O−の構造を有するものであることが好ましい。その場合、ノルボルナン骨格と結合するX1の他の部分は、単結合であっても、前記の基から任意に選択したものであってもよい。
1及びX1を含むビニル部分(H2C=C(R1)−X1−)は、脂環式炭化水素構造上の任意の位置で結合することができる。なお、「各脂環式炭化水素構造上」とは、式(A2)におけるノルボルナン構造上及びqを含む環状炭化水素構造上を指す。
また、着色剤との親和性を向上させるという観点から、式(A2)におけるX1の脂環式炭化水素構造と結合する端部は、酸素原子であることが好ましく、エーテル性酸素原子であることがより好ましく、式(A2)におけるX1は−C(O)O(CH2CH2O)p−(pは1又は2を表す。)であることがさらに好ましい。
【0078】
式(A2)におけるR2はそれぞれ独立に置換基を表し、脂環式炭化水素構造上の任意の位置で結合することができる。また、r個存在するR2はそれぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
r個存在するR2は、それぞれ独立に一価又は多価の置換基であってもよく、一価の置換基として水素原子、ヒドロキシル基、置換若しくは無置換のアミノ基、チオール基、シロキサン基、さらに置換基を有していてもよい総炭素数30以下の炭化水素基若しくは複素環基、又は、二価の置換基としてオキシ基(=O)であることが好ましい。
2の置換数rは0〜5の整数を表す。
【0079】
式(A2)におけるqは、環状炭化水素構造を表し、その両端はノルボルナン骨格の任意の位置で置換していてもよく、単環構造であっても、多環構造であってもよく、また、前記環状炭化水素構造として炭化水素結合以外に、カルボニル結合(−C(O)−)及び/又はエステル結合(−C(O)O−)を含んでいてもよい。
【0080】
前記式(A2)で表される化合物としては、式(A3)又は式(A4)で表される化合物であることが好ましい。なお、式(A4)中の環状炭化水素構造中の不飽和結合は、ラジカル重合性が低く、本発明において、式(A4)で表される化合物は単官能ラジカル重合性化合物である。
【0081】
【化12】

【0082】
式(A3)及び式(A4)中、R1は水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1〜4のアルキル基を表し、X1は二価の連結基を表し、R3及びR4はそれぞれ独立に置換基を表し、s及びtはそれぞれ独立に0〜5の整数を表し、また、s個存在するR3及びt個存在するR4はそれぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
【0083】
式(A3)又は式(A4)におけるR1及びX1は、式(A2)におけるR1及びX1と同義であり、好ましい範囲も同様である。
式(A3)又は式(A4)におけるR1及びX1を含むビニル部分は、式(A3)又は式(A4)における下記に示す各脂環式炭化水素構造上の任意の位置で結合することができる。
【0084】
【化13】

【0085】
式(A3)又は式(A4)におけるR3及びR4はそれぞれ独立に置換基を表し、式(A3)、又は式(A4)における上記各脂環式炭化水素構造上の任意の位置で結合することができる。R3及びR4における置換基は、式(A2)のR2における置換基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
式(A3)又は式(A4)におけるs及びtはそれぞれ独立に0〜5の整数を表し、また、s個存在するR3及びt個存在するR4はそれぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
【0086】
式(A2)で表される化合物として、単官能アクリレートの好ましい具体例を以下に示す。これらの中でも、(M−13)が特に好ましく例示できる。
【0087】
【化14】

【0088】
式(A2)で表される化合物として、単官能メタクリレートの好ましい具体例を以下に示す。
【0089】
【化15】

【0090】
式(A2)で表される化合物として、単官能アクリルアミドの好ましい具体例を以下に示す。
【0091】
【化16】

【0092】
本発明のコーティング組成物は、ラジカル重合性化合物として、芳香族単官能ラジカル重合性化合物を用いることが好ましい。
芳香族単官能ラジカル重合性化合物は、以下の式(A5)で表される化合物であることが好ましい。
【0093】
【化17】

(式(A5)中、R1は水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1〜4のアルキル基を表し、X1は二価の連結基を表し、R5は置換基を表し、uは0〜5の整数を表し、また、u個存在するR5はそれぞれ同じであっても、異なっていてもよく、複数のR5がお互いに結合して環を形成してもよく、その環は芳香環であってもよい。)
【0094】
式(A5)中、R1として好ましくは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、より好ましくは水素原子又はメチル基であり、さらに好ましくは水素原子である。
1は式(A2)におけるX1と同義であり、その好ましい範囲も同じである。
u個存在するR5は、それぞれ独立に一価又は多価の置換基であってもよく、一価の置換基として水素原子、ヒドロキシル基、置換若しくは無置換のアミノ基、チオール基、シロキサン基、又は、さらに置換基を有していてもよい総炭素数30以下の炭化水素基若しくは複素環基であることが好ましい。
【0095】
式(A5)中、複数のR5は、お互いに結合して環を形成している場合には、芳香環を形成していることが好ましい。
すなわち、式(A5)中、芳香族基として好ましいものは、単環芳香族であるベンゼンから1つ以上の水素を除いた基(フェニル基、フェニレン基等)のほか、2〜4つの環を有する多環芳香族基であり、限定されるものではない。具体的には、ナフタレン、アントラセン、1H−インデン、9H−フルオレン、1H−フェナレン、フェナントレン、トリフェニレン、ピレン、ナフタセン、テトラフェニレン、ビフェニレン、as−インダセン、s−インダセン、アセナフチレン、フルオランテン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、クリセン、プレイアンデン等から1つ以上の水素原子を除いた基が例示できる。
【0096】
これらの芳香族基は、O、N、S等のヘテロ原子を含む芳香族複素環基であってもよい。具体的には、フラン、チオフェン、1H−ピロール、2H−ピロール、1H−ピラゾール、1H−イミダゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、2H−ピラン、2H−チオピラン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール等の単環芳香族複素環化合物から、少なくとも1つの水素原子を除いた基が挙げられる。
【0097】
また、チアントレン、イソベンゾフラン、イソクロメン、4H−クロメン、キサンテン、フェノキサチイン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、4H−キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、β−カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、ペリミジン、フェナントロリン、フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピロリジン、等の多環芳香族複素環化合物から、少なくとも1つの水素原子を除いた基が挙げられる。
【0098】
上記の芳香族基は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基、メルカプト基、シロキサン基、炭素数30以下の置換基を1又は2以上有していてもよい。例えば無水フタル酸や無水フタルイミドのように芳香族基が有する2以上の置換基でO、N、S等のヘテロ原子を含む環状構造を形成してもよい。
これらの中でも、芳香族単官能ラジカル重合性化合物としては、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレートが好ましく、2−フェノキシエチルアクリレートがより好ましい。
【0099】
なお、本発明において、種々の目的に応じて、ラジカル重合性化合物とラジカル光重合開始剤との組み合わせや、カチオン重合性化合物とカチオン光重合開始剤との組み合わせの他、これらを組み合わせた、ラジカル・カチオンのハイブリッド型コーティング組成物としてもよい。
【0100】
<カチオン重合性化合物>
本発明に用いることができるカチオン重合性化合物は、前述の光重合開始剤により重合反応を開始し、硬化する化合物であれば特に制限はなく、光カチオン重合性モノマーとして知られる各種公知のカチオン重合性のモノマーを使用することができる。カチオン重合性モノマーとしては、例えば、特開平6−9714号、特開2001−31892号、同2001−40068号、同2001−55507号、同2001−310938号、同2001−310937号、同2001−220526号などの各公報に記載されているエポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。
【0101】
エポキシ化合物としては、芳香族エポキシド、脂環式エポキシド、芳香族エポキシドなどが挙げられ、芳香族エポキシドとしては、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジ又はポリグリシジルエーテルが挙げられ、例えば、ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、並びにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0102】
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロへキセン又はシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイド又はシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましく挙げられる。
脂肪族エポキシドとしては、脂肪族多価アルコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル等があり、その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル又は1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリンあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテルに代表されるポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0103】
本発明に用いることのできる単官能及び多官能のエポキシ化合物を詳しく例示する。
単官能エポキシ化合物の例としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−エポキシドデカン、エピクロロヒドリン、1,2−エポキシデカン、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、3−メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−ビニルシクロヘキセンオキサイド等が挙げられる。
【0104】
また、多官能エポキシ化合物の例としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、1,1,3−テトラデカジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタン等が挙げられる。
【0105】
これらのエポキシ化合物の中でも、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドが、硬化速度に優れるという観点から好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。
【0106】
ビニルエーテル化合物としては、例えばエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−O−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0107】
以下に、単官能ビニルエーテルと多官能ビニルエーテルを詳しく例示する。
単官能ビニルエーテルの例としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2−ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテル、クロルエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテル等が挙げられる。
【0108】
また、多官能ビニルエーテルの例としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキサイドジビニルエーテルなどのジビニルエーテル類;トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルなどの多官能ビニルエーテル類等が挙げられる。
ビニルエーテル化合物としては、ジ又はトリビニルエーテル化合物が、硬化性、被記録媒体との密着性、形成された画像の表面硬度などの観点から好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。
【0109】
本発明に使用できるオキセタン化合物は、少なくとも1つのオキセタン環を有する化合物を指し、特開2001−220526号、同2001−310937号の各公報、及び特開2003−341217号公報の段落0021乃至0084に記載される如き、公知のオキセタン化合物を任意に選択して使用できる。
本発明の光硬化性コーティング組成物に使用し得るオキセタン環を有する化合物としては、その構造内にオキセタン環を1〜4個有する化合物が好ましい。このような化合物を使用することで、光硬化性コーティング組成物の粘度をハンドリング性の良好な範囲に維持することが容易となり、また、硬化後の光硬化性コーティング組成物の印刷物との高い密着性を得ることができる。
【0110】
分子内に1〜2個のオキセタン環を有する化合物としては、下記式(1)〜(3)で示される化合物等が挙げられる。
【0111】
【化18】

【0112】
a1は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、アリル基、アリール基、フリル基又はチエニル基を表す。分子内に2つのRa1が存在する場合、それらは同じであっても異なるものであってもよい。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、フルオロアルキル基としては、これらアルキル基の水素のいずれかがフッ素原子で置換されたものが好ましく挙げられる。
a2は、水素原子、炭素数1〜6個のアルキル基、炭素数2〜6個のアルケニル基、芳香環を有する基、炭素数2〜6個のアルキルカルボニル基、炭素数2〜6個のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜6個のN−アルキルカルバモイル基を表す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、アルケニル基としては、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基等が挙げられ、芳香環を有する基としては、フェニル基、ベンジル基、フルオロベンジル基、メトキシベンジル基、フェノキシエチル基等が挙げられる。アルキルカルボニル基としては、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基等が、アルキコキシカルボニル基としては、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等が、N−アルキルカルバモイル基としては、エチルカルバモイル基、プロピルカルバモイル基、ブチルカルバモイル基、ペンチルカルバモイル基等が挙げられる。また、Ra2は置換基を有していてもよく、置換基としては、1〜6のアルキル基、フッ素原子が挙げられる。
【0113】
a3は、線状又は分枝状アルキレン基、線状又は分枝状ポリ(アルキレンオキシ)基、線状又は分枝状不飽和炭化水素基、カルボニル基又はカルボニル基を含むアルキレン基、カルボキシル基を含むアルキレン基、カルバモイル基を含むアルキレン基、又は、以下に示す基を表す。アルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が挙げられ、ポリ(アルキレンオキシ)基としては、ポリ(エチレンオキシ)基、ポリ(プロピレンオキシ)基等が挙げられる。不飽和炭化水素基としては、プロペニレン基、メチルプロペニレン基、ブテニレン基等が挙げられる。
【0114】
【化19】

【0115】
a3が上記多価基である場合、Ra4は、水素原子、炭素数1〜4個のアルキル基、炭素数1〜4個のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、低級アルキルカルボキシル基、カルボキシル基、又はカルバモイル基を表す。
a5は、酸素原子、硫黄原子、メチレン基、NH、SO、SO2、C(CF32、又は、C(CH32を表す。
a6は、炭素数1〜4個のアルキル基、又は、アリール基を表し、nは0〜2,000の整数である。Ra7は炭素数1〜4個のアルキル基、アリール基、又は、下記構造を有する1価の基を表す。下記式中、Ra8は炭素数1〜4個のアルキル基、又はアリール基であり、mは0〜100の整数である。
【0116】
【化20】

【0117】
式(1)で表される化合物として、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(OXT−101:東亞合成(株)製)、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(OXT−212:東亞合成(株)製)、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン(OXT−211:東亞合成(株)製)が挙げられる。式(2)で表される化合物としては、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン(OXT−121:東亞合成(株)が挙げられる。また、式(3)で表される化合物としては、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル(OXT−221:東亞合成(株))が挙げられる。
【0118】
3〜4個のオキセタン環を有する化合物としては、下記式(4)で示される化合物が挙げられる。
【0119】
【化21】

【0120】
式(4)において、Ra1は、前記式(1)におけるのと同義である。また、他か連結基であるRa9としては、例えば、下記A〜Cで示される基等の炭素数1〜12の分枝状アルキレン基、下記Dで示される基等の分枝状ポリ(アルキレンオキシ)基又は下記Eで示される基等の分枝状ポリシロキシ基等が挙げられる。jは、3又は4である。
【0121】
【化22】

【0122】
上記Aにおいて、Ra10はメチル基、エチル基又はプロピル基を表す。また、上記Dにおいて、pは1〜10の整数である。
【0123】
また、本発明に好適に用いることのできるオキセタン化合物の別の態様として、側鎖にオキセタン環を有する下記式(5)で示される化合物が挙げられる。
【0124】
【化23】

【0125】
式(5)において、Ra8は前記式におけるのと同義である。Ra11はメチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基又はトリアルキルシリル基であり、rは1〜4である。
【0126】
このようなオキセタン環を有する化合物については、前記特開2003−341217号公報、段落番号0021ないし0084に詳細に記載され、ここに記載の化合物は本発明にも好適に用いることができる。
特開2004−91556号公報に記載されたオキセタン化合物も本発明に使用することができる。段落番号0022ないし0058に詳細に記載されている。
本発明で使用するオキセタン化合物の中でも、光硬化性コーティング組成物の粘度と粘着性の観点から、オキセタン環を1〜4個有する化合物が好ましく、1〜2個有する化合物を使用することがより好ましい。
【0127】
本発明に用いることのできるカチオン重合性化合物は、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよいが、光硬化性コーティング組成物の硬化時の収縮を効果的に抑制するといった観点からは、オキセタン化合物とエポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物と、ビニルエーテル化合物とを併用することが好ましい。オキセタン化合物とエポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種のオキセタン化合物とエポキシ化合物とを併用することがより好ましい。
光硬化性コーティング組成物中のカチオン重合性化合物の含量は、組成物の全固形分に対し、10〜95重量%が好ましく、より好ましくは30〜90重量%、さらに好ましくは50〜85重量%の範囲である。
【0128】
本発明に用いることのできる光重合開始剤及び重合性化合物としては、ラジカル重合開始剤とラジカル重合性化合物との組合せ、及び/又はカチオン重合開始剤とカチオン重合性化合物とを組合せを用いるが、ラジカル重合開始剤とラジカル重合性化合物との組合せ、又はカチオン重合開始剤とカチオン重合性化合物との組合せが好ましく、カチオン重合開始剤とカチオン重合性化合物の組合せが表面平滑性の点でより優れるのでより好ましい。
【0129】
<他の増感剤>
本発明のコーティング組成物には、前記光重合開始剤の活性放射線の照射による分解を促進させるために、前記(a)縮合多環芳香族化合物以外の増感剤を添加することができるが、(a)縮合多環芳香族化合物のみであることが好ましい。
また、本発明に用いることのできる他の増感剤は、本発明のコーティング組成物をオーバープリントに使用した際に、着色等の影響が小さい化合物又は量を使用することが好ましい。
本発明における他の増感剤の含有量は、コーティング組成物の全重量に対して、0.001〜5重量%であることが好ましく、0.01〜3重量%であることがさらに好ましい。この添加量であると、硬化性が向上し、着色の影響が少ない。
【0130】
他の増感剤は、使用する光重合開始剤に開始種を発生させる活性放射線の波長に応じた化合物を使用すればよいが、一般的なコーティング組成物の硬化反応に使用されることを考慮すれば、好ましい他の増感剤の例としては、以下の化合物類に属しており、かつ350nmから450nm域に吸収波長を有するものを挙げることができる。
多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えば、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン)、ベンゾフェノン類(例えば、ベンゾフェノン)等が挙げられる。
【0131】
より好ましい他の増感剤の例としては、下記式(II)〜(VI)で表される化合物が挙げられる。
【0132】
【化24】

【0133】
式(II)中、A1は硫黄原子又はNR50を表し、R50はアルキル基又はアリール基を表し、L2は隣接するA1及び隣接炭素原子と共同して塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R51、R52はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団を表し、R51、R52は互いに結合して、酸性核を形成してもよい。Wは酸素原子又は硫黄原子を表す。
【0134】
【化25】

【0135】
式(III)中、Ar1及びAr2はそれぞれ独立にアリール基を表し、−L3−による結合を介して連結している。ここでL3は−O−又は−S−を表す。また、Wは式(II)に示したものと同義である。
【0136】
【化26】

【0137】
式(IV)中、A2は硫黄原子又はNR59を表し、L4は隣接するA2及び炭素原子と共同して塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R53、R54、R55、R56、R57及びR58はそれぞれ独立に一価の非金属原子団の基を表し、R59はアルキル基又はアリール基を表す。
【0138】
【化27】

【0139】
式(V)中、A3、A4はそれぞれ独立に−S−又は−NR62−又は−NR63−を表し、R62、R63はそれぞれ独立に置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基を表し、L5、L6はそれぞれ独立に、隣接するA3、A4及び隣接炭素原子と共同して塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R60、R61はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団であるか又は互いに結合して脂肪族性又は芳香族性の環を形成することができる。
【0140】
【化28】

【0141】
式(VI)中、R66は置換基を有してもよい芳香族環又はヘテロ環を表し、A5は酸素原子、硫黄原子又はNR67を表す。R64、R65及びR67はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団を表し、R67とR64、及び、R65とR67はそれぞれ互いに脂肪族性又は芳香族性の環を形成するため結合することができる。
【0142】
式(II)〜(VI)で表される化合物の好ましい具体例としては、以下に示すものが挙げられる。なお、下記具体例におけるPhは、フェニル基を表し、Meはメチル基を表す。
【0143】
【化29】

【0144】
【化30】

【0145】
<共増感剤>
本発明のコーティング組成物は、共増感剤を含有することもできる。
本発明において共増感剤は、増感剤の活性放射線に対する感度を一層向上させる、又は、酸素による重合性化合物の重合阻害を抑制する等の作用を有する。
このような共増感剤の例としては、アミン類、例えばM.R.Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻3173頁(1972)、特公昭44−20189号公報、特開昭51−82102号公報、特開昭52−134692号公報、特開昭59−138205号公報、特開昭60−84305号公報、特開昭62−18537号公報、特開昭64−33104号公報、Research Disclosure 33825号記載の化合物等が挙げられる。
具体的には、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ホルミルジメチルアニリン、p−メチルチオジメチルアニリン等が例示できる。
【0146】
共増感剤の別の例としてはチオール及びスルフィド類、例えば、特開昭53−702号公報、特表昭55−500806号公報、特開平5−142772号公報記載のチオール化合物、特開昭56−75643号公報のジスルフィド化合物等が挙げられる。
具体的には、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4(3H)−キナゾリン、β−メルカプトナフタレン等が例示できる。
【0147】
また別の例としては、アミノ酸化合物(例えば、N−フェニルグリシン等)、特公昭48−42965号公報記載の有機金属化合物(例えば、トリブチル錫アセテート等)、特公昭55−34414号公報記載の水素供与体、特開平6−308727号公報記載のイオウ化合物(例えば、トリチアン等)、特開平6−250387号公報記載のリン化合物(例えば、ジエチルホスファイト等)、特開平8−54735号記載のSi−H、Ge−H化合物等が挙げられる。
【0148】
<界面活性剤>
本発明のコーティング組成物は、界面活性剤を含有していてもよい。
界面活性剤としては、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。また、前記界面活性剤として有機フルオロ化合物やポリシロキサン化合物を用いてもよい。前記有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。前記有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。これらの中でも、界面活性剤としては、ポリジメチルシロキサン化合物が好ましく例示できる。
これらの界面活性剤は、1種単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0149】
<その他の成分>
本発明のコーティング組成物には、必要に応じて、他の成分を添加することができる。その他の成分としては、例えば、重合禁止剤、溶剤、無機粒子、有機粒子等が挙げられる。
重合禁止剤は、保存性を高める観点から添加され得る。重合禁止剤は、本発明のコーティング組成物全量に対し、200〜20,000ppm添加することが好ましい。
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ベンゾキノン、p−メトキシフェノール、TEMPO、TEMPOL、クペロンAl等が挙げられる。
アエロジル(デグサ社製二酸化ケイ素粒子)のような無機粒子や、架橋したポリメチルメタクリレート(PMMA)のような有機粒子を本発明のコーティング組成物に添加して、意図的に表面光沢を下げたオーバープリント層又はオーバープリントを形成することができる。
【0150】
本発明のコーティング組成物が放射線硬化性コーティング組成物であることに鑑み、塗布後に速やかに反応しかつ硬化し得るよう、本発明のコーティング組成物は溶剤を含まないことが好ましい。しかし、コーティング組成物の硬化速度等に影響がない限り、所定の溶剤を含めることができる。
本発明において、溶剤としては、有機溶剤が使用でき、硬化速度の観点から水は実質的に添加しないことが好ましい。有機溶剤は、印刷基材(紙などの受像基材)との密着性を改良するために添加され得る。
有機溶剤を使用する場合も、その量は少ないほど好ましく、本発明のコーティング組成物全体の重量に対し、0.1〜5重量%であることが好ましく、0.1〜3重量%であることがより好ましい。
【0151】
この他に、必要に応じて公知の化合物を本発明のコーティング組成物に添加することができる。
例えば、界面活性剤、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類等を適宜選択して添加することができる。
【0152】
また、ポリオレフィンやポリエチレンテレフタレート(PET)等の印刷基材への密着性を改善するために、重合を阻害しないタッキファイヤー(粘着付与剤)を含有させることも好ましい。具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6頁に記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環族アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香族アルコールとのエステルからなる共重合物)や、エチレン性不飽和基を有する低分子量粘着付与性樹脂などが挙げられる。
【0153】
<光硬化性コーティング組成物の性質>
本発明の光硬化性コーティング組成物における好ましい物性について説明する。
光硬化性コーティング組成物として使用する場合には、塗布性を考慮し、25〜30℃における粘度が、5〜100mPa・sであることが好ましく、7〜75mPa・sであることがより好ましい。
本発明の光硬化性コーティング組成物は、粘度が上記範囲になるように適宜組成比を調整することが好ましい。
25℃〜30℃における粘度を上記の値に設定することにより、非タック性に優れ(表面ベトツキがなく)、表面平滑性に優れたオーバープリント層を有するオーバープリントが得られる。
本発明の光硬化性コーティング組成物の表面張力は、16〜40mN/mであることが好ましく、18〜35mN/mであることがより好ましい。
【0154】
(オーバープリント及びその製造方法)
本発明のオーバープリントは、印刷物上に本発明のコーティング組成物を光硬化したオーバープリント層を有する。
前記オーバープリントとは、電子写真印刷、インクジェット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、平版印刷、凹版印刷又は凸版印刷等の印刷方法により得られた印刷物の表面上に、少なくとも1層のオーバープリント層を形成したものである。
本発明のオーバープリントにおけるオーバープリント層は、印刷物の一部に形成しても、印刷物の表面全体に形成してもよく、また、両面印刷物の場合には印刷基材の両方側全面に形成することが好ましい。また、前記オーバープリント層は、印刷物における印刷されていない部分に形成してもよいことは言うまでもない。
本発明のオーバープリントに使用する印刷物は、電子写真印刷物であることが好ましい。電子写真印刷物上に本発明のコーティング組成物の硬化層であるオーバープリント層を形成することにより、非タック性、表面平滑性、光沢性に優れ、視覚的に銀塩写真プリントに類似したオーバープリントを得ることができる。
また、本発明のオーバープリントは、非タック性に優れるため、複数作製した本発明のオーバープリントを重ねて長期間保存しても、オーバープリント同士が張り付いたりせず、保管性に優れる。
本発明のオーバープリントにおけるオーバープリント層の厚みは、1〜10μmであることが好ましく、3〜6μmであることがより好ましい。
【0155】
本発明のオーバープリントの製造方法は、印刷基材上に印刷して印刷物を得る工程、前記印刷物上に本発明の光硬化性コーティング組成物を塗布する工程、及び、前記光硬化性コーティング組成物を光硬化する工程、を含むことが好ましい。
また、本発明のオーバープリントの製造方法は、潜像担持体の上に静電潜像を発生させる工程と、前記静電潜像をトナーにより現像する工程と、現像された静電画像を印刷基材へ転写させ電子写真印刷物を得る工程と、前記電子写真印刷物上に本発明の光硬化性コーティング組成物を塗布する工程、及び、前記光硬化性コーティング組成物を光硬化する工程とを含むことがより好ましい。
前記印刷基材としては、特に制限はなく、公知のものを使用することができるが、受像用紙であることが好ましく、普通紙又はコート紙であることがより好ましく、コート紙であることがさらに好ましい。コート紙としては、両面コート紙が、フルカラー画像を美しく両面印刷できるので好ましい。印刷基材が紙又は両面コート紙である場合、好ましい坪量は20〜200g/m2であり、より好ましい坪量は40〜160g/m2である。
【0156】
電子写真法における画像を現像させるための方法に特に制限はなく、当業者には公知の方法から任意に選択することができる。例えば、カスケード法、タッチダウン法、パウダー・クラウド(powder cloud)法、磁気ブラシ法などが挙げられる。
また、現像された画像を印刷基材に転写させるための方法としては、コロトロン又はバイアスロールを使用する方法が例示できる。
電子写真法における画像を定着させるための定着工程(fixing step)は、各種適切な方法により実施することができる。例えば、フラッシュ定着、加熱定着、加圧定着、蒸気定着(vapor fusing)などが挙げられる。
電子写真法による画像形成方法、装置及びシステムとしては、特に制限はないが、公知のものを使用することができる。具体的には、以下の米国特許に記載されているようなものである。
米国特許第4,585,884号明細書、米国特許第4,584,253号明細書、米国特許第4,563,408号明細書、米国特許第4,265,990号明細書、米国特許第6,180,308号明細書、米国特許第6,212,347号明細書、米国特許第6,187,499号明細書、米国特許第5,966,570号明細書、米国特許第5,627,002号明細書、米国特許第5,366,840号明細書;米国特許第5,346,795号明細書、米国特許第5,223,368号明細書、及び、米国特許第5,826,147号明細書。
【0157】
光硬化性コーティング組成物を塗布するためには、通常使用される液膜コーティング装置(liquid film coating device)を使用することができる。具体的には、ロールコーター、ロッドコーター、ブレード、ワイヤバー、浸漬(dips)、エアナイフ、カーテンコーター、スライドコーター、ドクターナイフ、スクリーンコーター、グラビアコーター、オフセットグラビアコーター、スロットコーター、及び、押出しコーターなどが例示できる。それらの装置は、通常と同じようにして使用することができるが、例えば、ダイレクトロールコーティング及びリバースロールコーティング(direct and reverse roll coating)、ブランケットコーティング(blanket coating)、ダンプナーコーティング(dampner coating)、カーテンコーティング、平版コーティング、スクリーンコーティング、及び、グラビアコーティングなどがある。好ましい実施の態様においては、本発明のコーティング組成物の塗布及び硬化は、2台又は3台のロールコーターとUV硬化ステーションを使用して実施する。
また、本発明のコーティング組成物の塗設時や硬化時においては、必要に応じ、加熱を行ってもよい。
本発明のコーティング組成物の塗布量は、単位面積当たりの重量で表して、1g/m2〜10g/m2の範囲であることが好ましく、3g/m2〜6g/m2であることがより好ましい。
また、本発明のオーバープリントにおけるオーバープリント層の形成量は、単位面積当たり重量で表して、1g/m2〜10g/m2の範囲であることが好ましく、3g/m2〜6g/m2であることがより好ましい。
【0158】
本発明のコーティング組成物に含まれる重合性化合物の重合を開始させるために使用するエネルギー源としては、例えば、スペクトルの紫外線又は可視光線の波長を有する放射線のような、化学線作用のある(actinic)もの(活性放射線)が挙げられる。活性放射線の照射による重合は、重合の開始及び重合速度の調節に優れる。
好適な活性放射線照射源としては、例えば、水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、タングステンフィラメントランプ、レーザー、太陽光などが挙げられる。
【0159】
紫外線照射(UV光照射)の下で、高速コンベヤ(好ましくは、20〜70m/分)を用いた中圧(medium pressure)水銀ランプによる照射が好ましく、その場合UV光照射は、波長200〜500nmで、1秒未満の間与えることが好ましい。高速コンベヤの速度を15〜35m/分とし、波長200〜450nmのUV光を10〜50ミリ秒(ms)間照射するのがより好ましい。UV光源の発光スペクトルは通常、UV重合開始剤の吸収スペクトルと重なっている。場合によっては使用される硬化装置(curing equipment)としては、UV光を焦点に集めたり拡散させたりする反射板や、UV光源により発生する熱を除去するための冷却システムなどがあるが、これらに限定される訳ではない。
【0160】
<光硬化性コーティング組成物を硬化させた硬化物の性質>
本発明の光硬化性コーティング組成物を光照射(好ましくは紫外線照射(UV光照射))により硬化させた硬化物は、可視域に実質的に吸収を有しないことが好ましい。「可視域に実質的に吸収を有しない」とは、400〜700nmの可視域に吸収を有しないか、又は、光硬化性コーティングとして支障のない程度の吸収しか可視域に吸収を有しないことを意味する。具体的には、コーティング組成物の5μm光路長の透過率が、400〜700nmの波長範囲において、70%以上、好ましくは80%以上であることを意味する。
【実施例】
【0161】
以下実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例における形態に限定されるものではない。
【0162】
(合成例1)
[ポリオキシアントラセン化合物Aの合成例]
Anthrarufin(Aldrich社製、1,5−ジヒドロキシアントラキノン)2.5g、炭酸カリウム3.2g、ヨードメタン7.4gをジメチルアセトアミド50ml中に加え、80℃で12時間撹拌した。放冷後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液20mlを投入し、析出した結晶を濾過した。続いて、濾過物を水20ml中で2回、メタノール20mlで1回洗浄した後、真空ポンプで30分乾燥し、化合物Xを2.4g得ることができた。
【0163】
【化31】

【0164】
化合物X2.4gをクロロホルム20ml、蒸留水20ml溶液中に加え、次にソジウムジチオナイト(Na224)6.6g、Adogen464(Aldrich社製)8.9gを加え、窒素フロー下、室温で5分撹拌した。続いて水酸化ナトリウム7.5gを加え、窒素フロー下、室温で10分撹拌した。さらにブチルブロミド16.5g、ヨウ化カリウム100mgを加え窒素フロー下室温で12時間撹拌した。反応後析出物をろ過し、シリカゲルクロマトグラフィーで精製し(酢酸エチル/ヘキサン溶離液)、濃縮した。さらにメタノールでスラリー洗浄した後、真空ポンプで30分乾燥し、化合物Aを1.5g得ることができた。
【0165】
【化32】

【0166】
(合成例2)
ポリオキシアントラセン化合物Aの合成法のAnthrarufin2.5gをAnthraflavic acid(Aldrich社製、2,6−ジヒドロキシアントラキノン)2.5gに代えた以外はポリオキシアントラセン化合物Aの合成法と同様にして、化合物Bを1.3g合成した。
【0167】
【化33】

【0168】
(合成例3)
ポリオキシアントラセン化合物Aの合成法のAnthrarufin2.5gをAlizarin(Aldrich社製、1,2−ジヒドロキシアントラキノン)2.5gに代えた以外はポリオキシアントラセン化合物Aの合成法と同様にして、化合物Cを1.1g合成した。
【0169】
【化34】

【0170】
(合成例4)
ポリオキシアントラセン化合物Aの合成法のブチルブロミド12.3gをベンジルブロミド15.3gに代えた以外はポリオキシアントラセン化合物Aの合成法と同様にして、化合物Dを1.6g合成した。
【0171】
【化35】

【0172】
(合成例5)
ポリオキシアントラセン化合物Aの合成法のAnthrarufin2.5gをPurpurin(Aldrich社製、1,2,4−トリヒドロキシアントラキノン)2.7gに代えた以外はポリオキシアントラセン化合物Aの合成法と同様にして、化合物Eを1.3g合成した。
【0173】
【化36】

【0174】
〔実施例1〕
以下の成分を撹拌機により撹拌し、光硬化性コーティング組成物1を得た。
・1,4−ブタンジオールジアクリレート(アルドリッチ社製) 25重量%
・2−フェノキシエチルアクリレート(東京化成工業(株)製) 25重量%
・N−ビニルカプロラクタム(アルドリッチ社製) 20重量%
・アクリル酸ヘキシル(東京化成工業(株)製) 15重量%
・重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(CSC)社製IRGACURE OXE01) 10重量%
・化合物(I−29) 5重量%
【0175】
【化37】

【0176】
〔実施例2〜10〕
実施例2〜10は、実施例1の化合物(I−29)を表1に記載の化合物に変えた以外は、実施例1と同様にして光硬化性コーティング組成物2〜10を得た。
【0177】
〔実施例11〕
以下の成分を撹拌機により撹拌し、光硬化性コーティング組成物11を得た。
・3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(セロキサイド2021A:ダイセルユーシービー社製) 20重量%
・3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサノナン(OXT−221:東亞合成(株)製) 45重量%
・3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン(OXT−211:東亞合成(株)製)
20重量%
・UVI−6992(ダウケミカル社製) 10重量%
・化合物(I−29) 5重量%
【0178】
【化38】

【0179】
〔実施例12〜20〕
実施例12〜20は、実施例11の化合物(I−29)を表1に記載の化合物に変えた以外は、実施例11と同様にして光硬化性コーティング組成物12〜20を得た。
【0180】
〔比較例1〕
以下の成分を撹拌機により撹拌し、比較用光硬化性コーティング組成物1を得た。
・1,4−ブタンジオールジアクリレート(アルドリッチ社製) 25重量%
・2−フェノキシエチルアクリレート(東京化成工業(株)製) 25重量%
・N−ビニルカプロラクタム(アルドリッチ社製) 20重量%
・アクリル酸ヘキシル(東京化成工業(株)製) 20重量%
・重合開始剤(CSC社製IRGACURE OXE01) 10重量%
【0181】
〔比較例2〕
以下の成分を撹拌機により撹拌し、比較用光硬化性コーティング組成物2を得た。
・1,4−ブタンジオールジアクリレート(アルドリッチ社製) 25重量%
・2−フェノキシエチルアクリレート(東京化成工業(株)製) 25重量%
・N−ビニルカプロラクタム(アルドリッチ社製) 20重量%
・アクリル酸ヘキシル(東京化成工業(株)製) 15重量%
・重合開始剤(CSC社製IRGACURE OXE01) 15重量%
【0182】
〔比較例3〕
以下の成分を撹拌機により撹拌し、比較用光硬化性コーティング組成物3を得た。
・1,4−ブタンジオールジアクリレート(アルドリッチ社製) 37重量%
・2−フェノキシエチルアクリレート(東京化成社製) 25重量%
・N−ビニルカプロラクタム(アルドリッチ社製) 20重量%
・アクリル酸ヘキシル(東京化成工業(株)製) 15重量%
・重合開始剤(CSC社製IRGACURE OXE01) 3重量%
【0183】
〔比較例4〕
以下の成分を撹拌機により撹拌し、比較用光硬化性コーティング組成物4を得た。
・3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(セロキサイド2021A:ダイセルユーシービー社製) 20重量%
・3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサノナン(OXT−221:東亞合成(株)製) 45重量%
・3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン(OXT−211:東亞合成(株)製)
25重量%
・UVI−6992(ダウケミカル社製) 10重量%
【0184】
〔比較例5〕
以下の成分を撹拌機により撹拌し、比較用光硬化性コーティング組成物5を得た。
・3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(セロキサイド2021A:ダイセルユーシービー社製) 20重量%
・3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサノナン(OXT−221:東亞合成(株)製) 45重量%
・3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン(OXT−211:東亞合成(株)製)
20重量%
・UVI−6992(ダウケミカル社製) 15重量%
【0185】
〔比較例6〕
以下の成分を撹拌機により撹拌し、比較用光硬化性コーティング組成物6を得た。
・3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(セロキサイド2021A:ダイセルユーシービー社製) 20重量%
・3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサノナン(OXT−221:東亞合成(株)製) 57重量%
・3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン(OXT−211:東亞合成(株)製)
20重量%
・UVI−6992(ダウケミカル社製) 3重量%
【0186】
〔比較例7〕
以下の成分を撹拌機により撹拌し、比較用光硬化性コーティング組成物7を得た。
・1,4−ブタンジオールジアクリレート(アルドリッチ社製) 40重量%
・2−フェノキシエチルアクリレート(東京化成工業(株)製) 15重量%
・N−ビニルカプロラクタム(アルドリッチ社製) 20重量%
・アクリル酸ヘキシル(東京化成工業(株)製) 15重量%
・UVI−6992(ダウケミカル社製) 8重量%
・(比較化合物)9,10−ジブトキシアントラセン(川崎化成工業(株)製)
2重量%
【0187】
〔比較例8〕
以下の成分を撹拌機により撹拌し、比較用光硬化性コーティング組成物8を得た。
・3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(セロキサイド2021A:ダイセルユーシービー社製) 25重量%
・3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサノナン(OXT−221:東亞合成(株)製) 45重量%
・3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン(OXT−211:東亞合成(株)製)
20重量%
・UVI−6992(ダウケミカル社製) 8重量%
・(比較化合物)9,10−ジブトキシアントラセン(川崎化成工業(株)製)
2重量%
【0188】
<性能評価>
得られた光硬化性コーティング組成物を、以下の方法により性能評価した。
【0189】
<表面平滑性(レベリング性)評価>
富士ゼロックス(株)製デジタルプリンター(DC8000)で両面コート紙に出力した電子写真印刷物に対して、シナノケンシ(株)製UVニスコーター(SG610V)を用いて5g/m2の膜厚で片面にコーティングを行い、コーティングされた印刷物表面のタテスジ発生状態を目視にて評価した。評価基準を以下に示す。
◎:タテスジなし
○:少しタテスジが残る
×:著しくタテスジが見られる
【0190】
<非タック性(表面ベトツキ抑制)評価>
富士ゼロックス(株)製デジタルプリンター(DC8000)で両面コート紙に出力した電子写真印刷物に対して、コーティング組成物が膜厚5g/m2となるように片面にバーコートで塗布を行い、得られた塗布膜に対して、浜松ホトニクス(株)製UVランプ(LC8)を用いて、1.0W/cm2の照度で120mJ/cm2露光を行い、オーバープリントのサンプルを作製した。露光後の非タック性を触感で評価した。評価基準を以下に示す。
◎:ベトツキなし
○:ほぼベトツキなし
△:若干のベトツキあり
×:表面が未硬化
【0191】
<臭気評価>
富士ゼロックス(株)製デジタルプリンター(DC8000)で両面コート紙に出力した電子写真印刷物に対して、コーティング組成物が膜厚5g/m2となるように片面にシナノケンシ(株)製UVニスコーター(SG610V)を用いてコーティングを行なった後に1時間放置した印刷物について、臭気を嗅いで官能評価を行い、下記の基準に従って臭気のレベルを評価した。
【0192】
専門パネラー8人で下記評価基準(評価点)で評価した。
評価基準(評価点):
5(点):8人中8人が臭気低減効果を認めた。
4(点):8人中6〜7人が臭気低減効果を認めた。
3(点):8人中4〜5人が臭気低減効果を認めた。
2(点):8人中1〜3人が臭気低減効果を認めた。
1(点):臭気低減効果が認められなかった。
なお、評価点が4点以上の場合、実用使用上問題がないと考えられる。
【0193】
実施例1〜20並びに比較例1〜8の評価結果を表1に示す。
【0194】
【表1】

【0195】
実施例1〜20のコーティング組成物を使用し、前記性能評価を行った際において、コーティング組成物を塗布量5g/m2で両面コート紙に塗布し硬化して得られたオーバーコート層の形成量は、塗布量と同様に5g/m2であった。また、前記オーバープリント層の厚みは、それぞれ約5μmであった。なお、前記オーバープリント層の厚みは、オーバープリントの断面を光学顕微鏡により観察し測定した。
【0196】
〔実施例21〕
A4サイズの両面コート紙(坪量100g/m2)上の両面に各数コマずつのフルカラー画像を電子写真印刷した20枚の印刷物を作製し、その印刷物の両面に、前記の実施例1〜20にて作製した光硬化性コーティング組成物をそれぞれ、実施例1と同様の方法で、不揮発性成分が5g/m2の塗布量になるように塗布した後、紫外線を照射してオーバープリントを作製した。これらを製本して表紙と共に写真アルバムとしたところ、銀塩写真プリントと同様の視認性が得られる写真アルバムが得られた。
【0197】
〔実施例22〕
A3サイズの両面コート紙(坪量100g/m2)20枚の両面に献立写真を含むフルカラー画像とテキストを電子写真印刷した。これらの印刷物の両面に、前記の実施例1〜20にて作製した光硬化性コーティング組成物をそれぞれ、実施例1と同様の方法で、不揮発性成分が片面5g/m2の塗布量になるように塗布した後、紫外線を照射して両面オーバープリントを作製した。これらを綴じてレストランメニューとしたところ、銀塩写真プリントと同様の視認性が得られるレストランメニューが得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)縮合多環芳香族環上に電子供与性置換基を3個以上有する化合物、
(b)重合開始剤、及び、
(c)重合性化合物を含有することを特徴とする
光硬化性コーティング組成物。
【請求項2】
可視域に実質的に吸収を有しない請求項1に記載の光硬化性コーティング組成物。
【請求項3】
前記(a)縮合多環芳香族環上に電子供与性置換基を3個以上有する化合物が下記式(I)で表される化合物である、請求項1又は2に記載の光硬化性コーティング組成物。
【化1】

前記式(I)において、Arは縮合多環芳香環から水素原子を(p+q)個除いた基を表し、Rはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、炭化水素環基、又は、複素環基を表し、R’はそれぞれ独立に一価の有機基を表し、ORの置換数pは3以上の整数を表し、R’の置換数qは0以上の整数を表す。ただし、(p+q)は縮合多環芳香環上の芳香族水素原子の数以下である。
【請求項4】
前記(a)縮合多環芳香族環上に電子供与性置換基を3個以上有する化合物が下記式(II)又は下記式(III)で表される化合物である、請求項1〜3いずれか1つに記載の光硬化性コーティング組成物。
【化2】

前記式(II)及び前記式(III)において、Rはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、炭化水素環基、又は、複素環基を表し、R’はそれぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、炭化水素環基、又は、複素環基を表し、nは3〜10の整数を表し、また、mは0〜7の整数を表す。
【請求項5】
オーバープリント用である、請求項1〜4いずれか1つに記載の光硬化性コーティング組成物。
【請求項6】
電子写真印刷物のオーバープリント用である、請求項1〜5いずれか1つに記載の光硬化性コーティング組成物。
【請求項7】
印刷物上に請求項1〜6いずれか1つに記載の光硬化性コーティング組成物を光硬化したオーバープリント層を有するオーバープリント。
【請求項8】
前記印刷物が電子写真印刷物である、請求項7に記載のオーバープリント。
【請求項9】
印刷基材上に印刷して印刷物を得る工程、
前記印刷物上に請求項1〜6いずれか1つに記載の光硬化性コーティング組成物を塗布する工程、及び、
前記光硬化性コーティング組成物を光硬化する工程、を含む
オーバープリントの製造方法。
【請求項10】
前記印刷物が電子写真印刷物である、請求項9に記載のオーバープリントの製造方法。

【公開番号】特開2009−263435(P2009−263435A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−112112(P2008−112112)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】