説明

光硬化性コーティング組成物、オーバープリント及びその製造方法

【課題】表面平滑性に優れる光硬化性コーティング組成物、及び、前記光硬化性コーティング組成物を使用して、優れた非タック性を有し、光沢性に優れたオーバープリント及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】分子中にラクトン構造を有するエチレン性不飽和化合物、及び、光重合開始剤を含有することを特徴とする光硬化性コーティング組成物、並びに、電子写真印刷物上に前記光硬化性コーティング組成物を光硬化したオーバープリント層を有することを特徴とするオーバープリント及びその製造方法。また、本発明の光硬化性コーティング組成物は、電子写真印刷物のオーバープリント用光硬化性コーティング組成物として好適に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性コーティング組成物、オーバープリント及びその製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、電子線、紫外線等の活性放射線の照射により硬化可能な光硬化性コーティング組成物に関する。特に、平版、凸版、凹版、スクリーン印刷、インクジェット、電子写真等の方法でインク及び/又はトナーを印刷基材(受像基材)上に配置して作成した画像に対してコーティングを行うための光硬化性コーティング組成物に関する。さらに詳しくは、電子写真法により印刷されたトナーベースの印刷物をコーティングするために特に好適に用いることができる光硬化性オーバープリント組成物(overprint compositions)に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紫外線硬化型の印刷用インキ、塗料、コーティングに利用できる、活性放射線硬化型組成物が多数開発され、現在それらの普及が図られている。しかし、硬化性、表面平滑性、強度、保存安定性等の全てにおいて満足する光硬化性組成物を得ることは難しい現状にある。
特に、電子写真法のようなトナーベースの画像は、画像表面にフェザーオイル層が存在する場合には、所望の性能を得ることが一層難しい。
電子写真法のような、トナーベースの画像を発生させる通常の方法においては、潜像保持体表面、例えば感光体(photoreceptor)に均一に帯電させることによって、静電荷を潜像保持体表面に形成させる。次いで、その均一帯電させた領域を、原稿の画像に対応する活性化照射のパターンにより選択的に電荷を逃がす。その表面に残る潜像電荷パターンは、照射に暴露されなかった領域に対応する。次いで、その感光体を、トナーを含む1つ又は複数の現像ハウジングに通すことにより、トナーが、静電引力によって電荷パターンで付着するので、その潜像電荷パターンが可視化される。次いでその現像された画像を、画像形成表面に定着させるか、又は、印刷基材、例えば紙に転写させ、適切な定着技術によりそれに定着させて、電子写真印刷物、すなわちトナーベースの印刷物が得られる。
【0003】
印刷物を保護するための公知の方法としては、印刷物にオーバープリントコーティングを施すことが提案されている。例えば、特許文献1及び2には、電子写真法のような、トナーベースの画像の上に、透明トナーを転写した後に定着を行い、表面を被覆する方法が提案されている。
また、特許文献3には、紫外線などによって硬化させることが可能な液膜コーティングを施し、光によってコーティング成分を重合(架橋)させることにより、オーバープリントコーティングを施す方法が提案されている。
さらに、特許文献4には、三官能不飽和アクリル樹脂からなる群より選択される放射線硬化性オリゴマーと、1種又は複数のジ−アクリレート又はトリ−アクリレートを含む、多官能アルコキシル化アクリルモノマー又はポリアルコキシル化アクリルモノマー、からなる群より選択される放射線硬化性モノマーと、少なくとも1種の光重合開始剤と、少なくとも1種の界面活性剤と、を含むオーバープリント組成物が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平11−70647号公報
【特許文献2】特開2003−241414号公報
【特許文献3】特開昭61−210365号公報
【特許文献4】特開2005−321782号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、表面平滑性に優れる光硬化性コーティング組成物、並びに、前記光硬化性コーティング組成物を塗布・硬化して、非タック性及び表面平滑性に優れたオーバープリント及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、下記に記載の<1>、<6>又は<7>により達成された。好ましい実施態様である<2>〜<5>とともに以下に記す。
<1> 分子中にラクトン構造を有するエチレン性不飽和化合物、及び、光重合開始剤を含有することを特徴とする光硬化性コーティング組成物、
<2> 前記分子中にラクトン構造を有するエチレン性不飽和化合物が、式(1)で表される化合物である<1>に記載の光硬化性コーティング組成物、
【0007】
【化1】

【0008】
式(1)中、R1〜R8のうちの少なくとも1つはエチレン性不飽和結合を有する1価の基であり、その他のR1〜R8は、各々独立に、水素原子、アルキル基、又は、シクロアルキル基を表し、R1〜R8のうちのいずれか2つの基が結合して環を形成してもよく、m、nは、各々独立に、0〜6の整数を表す、
<3> 可視域に実質的に吸収を有しない<1>又は<2>に記載の光硬化性コーティング組成物、
<4> オーバープリント用である<1>〜<3>いずれか1つに記載の光硬化性コーティング組成物、
<5> 電子写真印刷物のオーバープリント用である<1>〜<4>いずれか1つに記載の光硬化性コーティング組成物、
<6> 電子写真印刷物上に<1>〜<5>いずれか1つに記載の光硬化性コーティング組成物を光硬化したオーバープリント層を有することを特徴とするオーバープリント、
<7> 印刷基材上に電子写真印刷して電子写真印刷物を得る工程、前記電子写真印刷物上に<1>〜<5>いずれか1つに記載の光硬化性コーティング組成物を塗設する工程、及び、前記コーティング組成物を光硬化する工程、を含むことを特徴とするオーバープリントの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、表面平滑性に優れる光硬化性コーティング組成物、並びに、前記光硬化性コーティング組成物を塗布・硬化して、非タック性及び表面平滑性に優れたオーバープリント及びその製造方法を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の光硬化性コーティング組成物は、分子中にラクトン構造を有するエチレン性不飽和化合物、及び、光重合開始剤を含有することを特徴とする。本発明のオーバープリントは、電子写真印刷物上に前記光硬化性コーティング組成物を光硬化したオーバープリント層を有することを特徴とする。本発明のオーバープリントの製造方法は、印刷基材上に電子写真印刷して電子写真印刷物を得る工程、前記電子写真印刷物上に前記光硬化性コーティング組成物を塗設する工程、及び、前記コーティング組成物を光硬化する工程、を含むことを特徴とする。以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
<分子中にラクトン構造を有するエチレン性不飽和化合物>
本発明の光硬化性コーティング組成物は、分子中に特定のラクトン構造を有するエチレン性不飽和化合物〔以下、適宜「特定ラクトンモノマー」とも称する〕を含有する。「分子中にラクトン構造を有するエチレン性不飽和化合物」とは、分子中にラクトン構造を有する基を置換基として有するエチレン性不飽和化合物をいう。以下、「分子中にラクトン構造を有するエチレン性不飽和化合物」について詳細に説明する。
【0012】
本発明において、特定ラクトンモノマーとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を有する基及びラクトン構造を有する基を置換基として有する化合物であれば制限なく使用することができる。本発明において「ラクトン構造」とは、環内にカルボン酸エステル結合(−OCO−)を有する環状構造をいう。エチレン性不飽和結合としては、ラジカル重合性のエチレン性不飽和結合であることが好ましい。
ラクトン構造、エチレン性不飽和結合を分子内にそれぞれ複数含有する場合、同一分子内のラクトン構造、エチレン性不飽和結合の種類は同じでも、異なっていてもよい。
【0013】
好ましいエチレン性不飽和結合を含む基としては、(メタ)アクリロイル基、アリル基、スチリル基、ビニルオキシ基等が挙げられ、光硬化性コーティング組成物の硬化感度の観点から(メタ)アクリロイル基であることが好ましく、アクリロイル基であることが特に好ましい。
【0014】
特定ラクトンモノマーの分子内に存在するラクトン構造の数は1〜4が好ましく、より好ましくは1〜2、特に好ましくは1である。また、特定ラクトンモノマーの分子内に存在するエチレン性不飽和結合の数は1〜2が好ましく、密着性機能発現と形成された皮膜の柔軟性の点から、より好ましくは1である。
特定ラクトンモノマーとしては、式(1)で表される化合物が好ましい。
【0015】
【化2】

【0016】
式(1)中、R1〜R8のうちの少なくとも1つはエチレン性不飽和結合を有する1価の基であり、その他のR1〜R8は、各々独立に、水素原子、アルキル基、又は、シクロアルキル基を表し、R1〜R8のうちのいずれか2つの基が結合して環を形成してもよく、m、nは、各々独立に、0〜6の整数を表す。
【0017】
1〜R8に少なくとも1つ含まれるエチレン性不飽和結合を有する1価の基(以下、X1ともいう)は、ラジカル重合によって重合可能な官能基を含む基ならば特に制限はない。X1に含まれる前記官能基として好ましくは、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、(メタ)アクリロイル基、及び、(メタ)アクリルアミド基などのエチレン性不飽和基が挙げられ、合成の容易さと反応性の点から、より好ましくは(メタ)アクリロイル基が挙げられる。
【0018】
また、ラクトン構造と、前記エチレン性不飽和基とは、単結合又は連結基を介して結合されており、前記連結基の分子量としては1,000以下のものが好ましく、より好ましくは600以下である。前記連結基として、具体的には、下記の部分構造、又はこれらが組合わされて構成されるものが挙げられる。
【0019】
【化3】

【0020】
中でも、繰り返し単位n=1〜30程度のアルキレンオキサイド、フェニレン基、又は、カルボニルオキシ基(−OCO−)を含む連結基が好ましい。X1はさらに置換基を有していてもよい。
【0021】
ラクトン構造において、X1が結合した炭素原子には、水素原子、又は、炭素数1〜4個のアルキル基(以下、X2ともいう)が結合していることが好ましい。X2における炭素数1〜4個のアルキル基としては、直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。中でもX2は水素原子、メチル基であることが好ましい。これらのアルキル基は、さらに置換基を有していてもよい。本発明において、式(1)のR1又はR8がX1であることが好ましい。
【0022】
1及びX2を除くR1〜R8は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、及び、アルケニル基よりなる群から選ばれた少なくとも1つの基を表し、R1〜R8のうちのいずれか2つの基が結合して環を形成してもよい。これらのアルキル基、シクロアルキル基、及び、R1〜R8のうちのいずれか2つの基が結合した環は、さらに置換基を有していてもよい。
本発明においては、X1及びX2を除くR1〜R8は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は、R1〜R8のうちのいずれか2つの基が結合した環であることが好ましい。
【0023】
前記アルキル基としては、直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられ、炭素数1〜12個の直鎖状又は分岐状アルキル基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜10個の直鎖状或いは分岐状アルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が好ましい。
【0024】
前記シクロアルキル基としては、炭素数3〜8個のシクロアルキル基が好ましく、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等がより好ましく、炭素数3〜6個のシクロアルキル基がさらに好ましい。
【0025】
1〜R8のうちのいずれか2つの基が結合して環を形成する場合、ラクトン骨格を形成する同一の炭素原子に結合する2つの基が結合して環を形成することが好ましい。すなわち、式(1)で表される化合物はラクトンと前記環とで形成されたラクトン骨格上にスピロ原子を有するスピロ環化合物であることが好ましい。2つの基が結合して形成される環としては、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロオクタン環等の炭素数3〜8個の環が挙げられ、炭素数3〜6個の環が好ましい。
【0026】
また、前記置換基としては、炭素数1〜4個のアルコキシ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アシル基、アシロキシ基、シアノ基、水酸基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基等を挙げることができる。中でも、水酸基が好ましい。
【0027】
本発明においては、R6、R7のうち少なくとも一つが水素原子以外の基であることが好ましい。より好ましくはR6、R7のうち少なくとも一つは、炭素数1〜10個のアルキル基、炭素数3〜8個のシクロアルキル基、又は、R6とR7とが結合して形成された炭素数3〜8個の環であり、さらに好ましくは、炭素数1〜6個のアルキル基、炭素数5〜7個のシクロアルキル基、R6とR7とが結合して形成された炭素数3〜8個の環である。非タック性向上の観点から、R6、R7が嵩高い基であることが好ましく、特に、t−ブチル基、シクロヘキシル基、又は、R6、R7がお互いに結合して形成された炭素数3〜6個の環であることが好ましい。
【0028】
また、本発明においては、R2〜R5としては、好ましくは、水素原子、炭素数1〜10個アルキル基、又は、炭素数3〜8個のシクロアルキル基であり、特に好ましくは水素原子、又は、炭素数1〜6個のアルキル基である。
【0029】
式(1)におけるm、nは、各々独立に、0〜6の整数を表す。mは0〜3であることが好ましく、1又は2であることがより好ましい。nは0又は1であることが好ましい。m+nは1〜3であることが好ましく、m+nは1又は2であることがより好ましい。
【0030】
以下、本発明におけるラクトン構造を有するエチレン性不飽和化合物の具体例(例示化合物)を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記例示化合物を示す構造式中、Rは水素原子、又は、メチル基を表す。
【0031】
【化4】

【0032】
【化5】

【0033】
【化6】

【0034】
【化7】

【0035】
【化8】

【0036】
【化9】

【0037】
【化10】

【0038】
本発明の光硬化性コーティング組成物における、分子中にラクトン構造を有するエチレン性不飽和化合物の含有量は、表面平滑性(レベリング性)と非タック性(表面ベトツキ抑制)のバランスの観点から、光硬化性コーティング組成物全体の重量に対して3〜100重量%の範囲が好ましく、5〜90重量%の範囲がより好ましく、20〜80重量%の範囲がさらに好ましく、30〜60重量%の範囲が特に好ましい。さらに、本発明のコーティング組成物におけるラクトン構造を有するエチレン性不飽和化合物の含有量は、50重量%以上であることが好ましい。また、分子中にラクトン構造を有するエチレン性不飽和化合物は、1種で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
<その他の重合性化合物>
本発明の光硬化性コーティング組成物は、ラクトン構造を有するエチレン性不飽和化合物以外に、その他の重合性化合物を含有しても構わない。
本発明に併用できる重合性化合物としては、ラクトン構造を有しないエチレン性不飽和化合物(ラジカル重合性化合物)、及び、カチオン重合性化合物が挙げられる。
【0040】
本発明において併用できるラジカル重合性化合物としては、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物であり、ラクトン構造を有するエチレン性不飽和化合物と共重合可能であることが好ましく、分子中にラクトン構造を有さずラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する化合物であればどのようなものでもよく、モノマー、オリゴマー、ポリマー等が含まれる。ラジカル重合性化合物は1種のみ用いてもよく、目的とする特性を向上するために任意の比率で2種以上を併用してもよい。好ましくは2種以上併用して用いることが、反応性、物性などの性能を制御する上で好ましい。
【0041】
ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸及びそれらの塩、エチレン性不飽和基を有する無水物、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、アクリロニトリル、スチレン、さらに種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン等のラジカル重合性化合物が挙げられる。
なお、前記(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを表し、(メタ)アクリルアミドとは、アクリルアミド又はメタアクリルアミドを表す。また、本発明において、例えば、単官能(メタ)アクリレート化合物とは、(メタ)アクリロキシ基を1つのみ有する化合物を表し、(メタ)アクリロキシ基以外のエチレン性不飽和結合をさらに有していてもよい。
【0042】
具体的には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、カルビトールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、エポキシアクリレート、ラウリルアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート等のアクリル酸誘導体、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、アリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン等のメタクリル誘導体、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等のN−ビニル化合物類、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物の誘導体が挙げられ、さらに具体的には、山下晋三編、「架橋剤ハンドブック」、(1981年大成社);加藤清視編、「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」(1985年、高分子刊行会);ラドテック研究会編、「UV・EB硬化技術の応用と市場」、79頁、(1989年、シーエムシー社);滝山栄一郎著、「ポリエステル樹脂ハンドブック」、(1988年、日刊工業新聞社)等に記載の市販品若しくは業界で公知のラジカル重合性乃至架橋性のモノマー、オリゴマー、及び、ポリマーを用いることができる。
これらの中でも、トリプロピレングリコールジアクリレート、N−ビニルカプロラクタム、ラウリルアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレートを用いることが好ましい。
【0043】
また、ラジカル重合性化合物としては、例えば、特開平7−159983号、特公平7−31399号、特開平8−224982号、特開平10−863号、特開平9−134011号等の各公報に記載されている光重合性組成物に用いられる光硬化型の重合性化合物材料が知られており、これらも本発明のコーティング組成物に適用することができる。
【0044】
さらに、併用するラジカル重合性化合物として、ビニルエーテル化合物を用いることも好ましい。好適に用いられるビニルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物;エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、ヒドロキシエチルモノビニルエーテル、ヒドロキシノニルモノビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
これらのビニルエーテル化合物のうち、硬化性、密着性、表面硬度の観点から、ジビニルエーテル化合物、トリビニルエーテル化合物が好ましく、特に、ジビニルエーテル化合物が好ましい。ビニルエーテル化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0045】
本発明に用いることができるその他の重合性化合物としては、(メタ)アクリル系モノマー或いはプレポリマー、エポキシ系モノマー或いはプレポリマー、ウレタン系モノマー或いはプレポリマー等の(メタ)アクリル酸エステル(以下、適宜、「アクリレート化合物」ともいう。)であって、ラクトン構造を有しない化合物が好ましく用いられる。さらに好ましくは、下記化合物である。
【0046】
すなわち、2−エチルヘキシルジグリコールアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、2−アクリロイロキシエチルフタル酸、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、エトキシ化フェニルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、ノニルフェノールエチレンオキサイド(EO)付加物アクリレート、変性グリセリントリアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、変性ビスフェノールAジアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド(PO)付加物ジアクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートトリレンジイソシアナートウレタンプレポリマー、ラクトン変性可撓性アクリレート、ブトキシエチルアクリレート、プロピレングリコールジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアナートウレタンプレポリマー、2−ヒドロキシエチルアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ヘキサメチレンジイソシアナートウレタンプレポリマー、ステアリルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソミリスチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ラクトン変性アクリレート等が挙げられる。
【0047】
これらのアクリレート化合物は、比較的粘度を下げることができ、重合感度、印刷基材との密着性も良好である。
また、ここに列挙されているアクリレート化合物は、反応性が高く、粘度が低く、印刷基材との密着性に優れる。
【0048】
本発明のコーティング組成物は、ラクトン構造を有するエチレン性不飽和化合物又は任意に併用できるその他の重合性化合物として、多官能のエチレン性不飽和化合物を含有することが好ましい。
また、多官能エチレン性不飽和化合物を使用する場合、多官能エチレン性不飽和化合物の含有量としては、コーティング組成物の全重量に対し、5〜40重量%であることが好ましく、10〜30重量%であることがより好ましい。上記範囲であると、非タック性に優れ、適切なコーティング組成物の粘度のために、良好な表面平滑性が得られる。
【0049】
本発明において、非タック性(表面ベトツキ抑止)、及び、表面平滑性を改善するためには、ラクトン構造を有するエチレン性不飽和化合物と、ラクトン構造を有しない多官能エチレン性不飽和化合物とを併用することが好ましく、ラクトン構造を有するエチレン性不飽和化合物と、ラクトン構造を有しない多官能(メタ)アクリレートモノマーとを併用することがより好ましく、単官能のラクトン構造を有するエチレン性不飽和化合物と、ラクトン構造を有しない多官能アクリレートモノマーとを併用することがさらに好ましい。
【0050】
また、ラクトン構造を有するエチレン性不飽和化合物と、ラクトン構造を有しない多官能エチレン性不飽和化合物とを併用する場合、ラクトン構造を有しない多官能エチレン性不飽和化合物の含有量は、コーティング組成物の全重量に対し、5〜40重量%であることが好ましく、10〜30重量%であることがより好ましい。上記範囲であると、非タック性に優れ、また、コーティング組成物の適切な粘度が得られる。
【0051】
なお、本発明においては、種々の目的に応じて、ラジカル重合性化合物とラジカル重合開始剤との組み合わせの他、これらと共に、下記に示すようなカチオン重合性化合物とカチオン重合開始剤とを併用した、ラジカル・カチオンのハイブリッド型コーティング組成物としてもよい。
【0052】
本発明に用いることができるカチオン重合性化合物としては、光酸発生剤から発生する酸により重合反応を開始し、硬化する化合物であれば特に制限はなく、光カチオン重合性モノマーとして知られる各種公知のカチオン重合性のモノマーを使用することができる。
カチオン重合性モノマーとしては、例えば、特開平6−9714号、特開2001−31892号、同2001−40068号、同2001−55507号、同2001−310938号、同2001−310937号、同2001−220526号などの各公報に記載されているエポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。
【0053】
また、カチオン重合性化合物としては、例えば、カチオン重合系の光硬化性樹脂に適用される重合性化合物が知られており、最近では400nm以上の可視光波長域に増感された光カチオン重合系の光硬化性樹脂に適用される重合性化合物として、例えば、特開平6−43633号、特開平8−324137号の各公報等に公開されている。これらも本発明のコーティング組成物に適用することができる。
【0054】
<光重合開始剤>
本発明のコーティング組成物は、光重合開始剤を含有する。
光重合開始剤としては、公知の光重合開始剤を使用することができる。本発明において、光ラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。
本発明のコーティング組成物に使用する光重合開始剤は、活性放射線による外部エネルギーを吸収して重合開始種を生成する化合物である。活性放射線には、γ線、β線、電子線、紫外線、可視光線、赤外線が例示できる。使用する波長は特に限定されないが、好ましくは200〜500nmの波長領域であり、より好ましくは200〜450nmの波長領域である。
【0055】
本発明で好ましく使用できる光ラジカル重合開始剤としては、(a)芳香族ケトン類、(b)アシルホスフィン化合物、(c)芳香族オニウム塩化合物、(d)有機過酸化物、(e)チオ化合物、(f)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(g)ケトオキシムエステル化合物、(h)ボレート化合物、(i)アジニウム化合物、(j)メタロセン化合物、(k)活性エステル化合物、(l)炭素ハロゲン結合を有する化合物、並びに、(m)アルキルアミン化合物等が挙げられる。
透明性の観点から好ましい光重合開始剤としては、光重合開始剤を3g/cm2の厚みで製膜した際に、400nmの波長の吸光度が0.3以下の化合物であることが好ましく、0.2以下の化合物であることがより好ましく、0.1以下の化合物であることがさらに好ましい。
上記の中でも、好ましい光重合開始剤としては、(a)芳香族ケトン類、(b)アシルホスフィン化合物、(c)芳香族オニウム塩化合物が挙げられる。
本発明における光重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0056】
本発明における光重合開始剤の含有量は、前述のラクトン構造を有するエチレン性不飽和化合物及び併用する他の重合性化合物の総量に対して、0.01〜35重量%であることが好ましく、0.1〜30重量%であることがより好ましく、0.5〜30重量%であることがさらに好ましい。
また、光重合開始剤は、後述する増感剤を用いる場合、増感剤に対して、光重合開始剤:増感剤の重量比で、200:1〜1:200であることが好ましく、50:1〜1:50であることがより好ましく、20:1〜1:5であることがさらに好ましい。
【0057】
本発明において、上記のカチオン重合性化合物と併用するカチオン重合開始剤(光酸発生剤)としては、例えば、化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が用いられる(例えば、有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページを参照することができる。)。
本発明に好適なカチオン重合開始剤の例を以下に挙げる。
すなわち、第1に、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウムなどの芳香族オニウム化合物のB(C654-、PF6-、AsF6-、SbF6-、CF3SO3-塩を挙げることができる。第2に、スルホン酸を発生するスルホン化物を挙げることができる。第3に、ハロゲン化水素を光により発生するハロゲン化物も用いることができる。第4に、鉄アレーン錯体を挙げることができる。
上記如きカチオン重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0058】
<増感剤>
本発明のコーティング組成物には、前記光重合開始剤の活性放射線の照射による分解を促進させるために増感剤を添加することができる。
増感剤は、特定の活性放射線を吸収して電子励起状態となる。電子励起状態となった増感剤は、光重合開始剤と接触して、電子移動、エネルギー移動、発熱などの作用を生じ、これにより光重合開始剤の化学変化、すなわち、分解、ラジカル、酸又は塩基の生成を促進させるものである。
また、本発明に用いることのできる増感剤は、本発明のコーティング組成物をオーバープリントに使用した際に、着色等の影響が小さい化合物又は量を使用することが好ましい。
本発明における増感剤の含有量は、コーティング組成物の全重量に対して、0.001〜5重量%であることが好ましく、0.01〜3重量%であることがさらに好ましい。この添加量であると、硬化性が向上し、着色の影響が少ない。
【0059】
増感剤は、使用する光重合開始剤に開始種を発生させる活性放射線の波長に応じた化合物を使用すればよいが、一般的なコーティング組成物の硬化反応に使用されることを考慮すれば、好ましい増感剤の例としては、以下の化合物類に属しており、かつ350nmから450nm域に吸収波長を有するものを挙げることができる。
多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えば、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン)、ベンゾフェノン類(例えば、ベンゾフェノン)等が挙げられる。
【0060】
より好ましい増感剤の例としては、下記式(II)〜(VI)で表される化合物が挙げられる。
【0061】
【化11】

【0062】
式(II)中、A1は硫黄原子又はNR50を表し、R50はアルキル基又はアリール基を表し、L2は隣接するA1及び隣接炭素原子と共同して塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R51、R52はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団を表し、R51、R52は互いに結合して、酸性核を形成してもよい。Wは酸素原子又は硫黄原子を表す。
【0063】
【化12】

【0064】
式(III)中、Ar1及びAr2はそれぞれ独立にアリール基を表し、−L3−による結合を介して連結している。ここでL3は−O−又は−S−を表す。また、Wは式(II)に示したものと同義である。
【0065】
【化13】

【0066】
式(IV)中、A2は硫黄原子又はNR59を表し、L4は隣接するA2及び炭素原子と共同して塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R53、R54、R55、R56、R57及びR58はそれぞれ独立に一価の非金属原子団の基を表し、R59はアルキル基又はアリール基を表す。
【0067】
【化14】

【0068】
式(V)中、A3、A4はそれぞれ独立に−S−又は−NR62−又は−NR63−を表し、R62、R63はそれぞれ独立に置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基を表し、L5、L6はそれぞれ独立に、隣接するA3、A4及び隣接炭素原子と共同して塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R60、R61はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団であるか又は互いに結合して脂肪族性又は芳香族性の環を形成することができる。
【0069】
【化15】

【0070】
式(VI)中、R66は置換基を有してもよい芳香族環又はヘテロ環を表し、A5は酸素原子、硫黄原子又はNR67を表す。R64、R65及びR67はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団を表し、R67とR64、及び、R65とR67はそれぞれ互いに脂肪族性又は芳香族性の環を形成するため結合することができる。
【0071】
式(II)〜(VI)で表される化合物の好ましい具体例としては、以下に示すものが挙げられる。
【0072】
【化16】

【0073】
【化17】

【0074】
<共増感剤>
本発明のコーティング組成物は、共増感剤を含有することもできる。
本発明において共増感剤は、増感剤の活性放射線に対する感度を一層向上させる、或いは酸素による重合性化合物の重合阻害を抑制する等の作用を有する。
このような共増感剤の例としては、アミン類、例えばM.R.Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻3173頁(1972)、特公昭44−20189号公報、特開昭51−82102号公報、特開昭52−134692号公報、特開昭59−138205号公報、特開昭60−84305号公報、特開昭62−18537号公報、特開昭64−33104号公報、Research Disclosure 33825号記載の化合物等が挙げられる。
具体的には、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ホルミルジメチルアニリン、p−メチルチオジメチルアニリン等が例示できる。
【0075】
共増感剤の別の例としてはチオール及びスルフィド類、例えば、特開昭53−702号公報、特表昭55−500806号公報、特開平5−142772号公報記載のチオール化合物、特開昭56−75643号公報のジスルフィド化合物等が挙げられる。
具体的には、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4(3H)−キナゾリン、β−メルカプトナフタレン等が例示できる。
【0076】
また別の例としては、アミノ酸化合物(例えば、N−フェニルグリシン等)、特公昭48−42965号公報記載の有機金属化合物(例えば、トリブチル錫アセテート等)、特公昭55−34414号公報記載の水素供与体、特開平6−308727号公報記載のイオウ化合物(例えば、トリチアン等)、特開平6−250387号公報記載のリン化合物(例えば、ジエチルホスファイト等)、特開平8−54735号記載のSi−H、Ge−H化合物等が挙げられる。
【0077】
<界面活性剤>
本発明のコーティング組成物は、界面活性剤を含有していてもよい。
界面活性剤としては、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。また、前記界面活性剤として有機フルオロ化合物やポリシロキサン化合物を用いてもよい。前記有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。前記有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。これらの中でも、界面活性剤としては、ポリジメチルシロキサンが好ましく例示できる。
これらの界面活性剤は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0078】
<その他の成分>
本発明のコーティング組成物には、必要に応じて、他の成分を添加することができる。その他の成分としては、例えば、重合禁止剤、溶剤、無機粒子、有機粒子等が挙げられる。
重合禁止剤は、保存性を高める観点から添加され得る。重合禁止剤は、本発明のコーティング組成物全量に対し、200〜20,000ppm添加することが好ましい。
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ベンゾキノン、p−メトキシフェノール、TEMPO、TEMPOL、クペロンAl等が挙げられる。
アエロジル(デグサ社製二酸化ケイ素粒子)のような無機粒子や、架橋したポリメチルメタクリレート(PMMA)のような有機粒子を本発明のコーティング組成物に添加して、意図的に表面光沢を下げたオーバープリント層又はオーバープリントを形成することができる。
【0079】
本発明のコーティング組成物が放射線硬化性コーティング組成物であることに鑑み、塗布後に速やかに反応しかつ硬化し得るよう、本発明のコーティング組成物は溶剤を含まないことが好ましい。しかし、コーティング組成物の硬化速度等に影響がない限り、所定の溶剤を含めることができる。
本発明において、溶剤としては、有機溶剤が使用でき、硬化速度の観点から水は実質的に添加しないことが好ましい。有機溶剤は、印刷基材(紙などの受像基材)との密着性を改良するために添加され得る。
有機溶剤を使用する場合も、その量は少ないほど好ましく、本発明のコーティング組成物全体の重量に対し、0.1〜5重量%であることが好ましく、0.1〜3重量%であることがより好ましい。
【0080】
この他に、必要に応じて公知の化合物を本発明のコーティング組成物に添加することができる。
例えば、界面活性剤、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類等を適宜選択して添加することができる。
【0081】
また、ポリオレフィンやポリエチレンテレフタレート(PET)等の印刷基材への密着性を改善するために、重合を阻害しないタッキファイヤー(粘着付与剤)を含有させることも好ましい。具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6頁に記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環族アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香族アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などが挙げられる。
【0082】
<光硬化性コーティング組成物の性質>
本発明の光硬化性コーティング組成物における好ましい物性について説明する。
光硬化性コーティング組成物として使用する場合には、塗布性を考慮し、25〜30℃における粘度が、5〜100mPa・sであることが好ましく、7〜75mPa・sであることがより好ましい。
本発明の光硬化性コーティング組成物は、粘度が上記範囲になるように適宜組成比を調整することが好ましい。
25〜30℃における粘度を上記の値に設定することにより、非タック性に優れ(表面ベトツキがなく)、表面平滑性に優れたオーバープリント層を有するオーバープリントが得られる。
本発明の光硬化性コーティング組成物の表面張力は、16〜40mN/mであることが好ましく、18〜35mN/mであることがより好ましい。
【0083】
(オーバープリント及びその製造方法)
本発明のオーバープリントは、印刷物上に本発明のコーティング組成物を光硬化したオーバープリント層を有する。
前記オーバープリントとは、電子写真印刷、インクジェット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、平版印刷、凹版印刷又は凸版印刷等の印刷方法により得られた印刷物の表面上に、少なくとも1層のオーバープリント層を形成したものである。
本発明のオーバープリントにおけるオーバープリント層は、印刷物の一部に形成しても、印刷物の表面全体に形成してもよく、また、両面印刷物の場合には印刷基材の両方側全面に形成することが好ましい。また、前記オーバープリント層は、印刷物における印刷されていない部分に形成してもよいことは言うまでもない。
本発明のオーバープリントに使用する印刷物は、電子写真印刷物であることが好ましい。電子写真印刷物上に本発明のコーティング組成物の硬化層であるオーバープリント層を形成することにより、非タック性、表面平滑性、光沢性に優れ、視覚的に銀塩写真プリントに類似したオーバープリントを得ることができる。
本発明のオーバープリントにおけるオーバープリント層の厚みは、1〜10μmであることが好ましく、3〜6μmであることがより好ましい。
【0084】
本発明のオーバープリントの製造方法は、印刷基材上に印刷して印刷物を得る工程、前記印刷物上に本発明の光硬化性コーティング組成物を塗布する工程、及び、前記コーティング組成物を光硬化する工程、を含むことが好ましい。
また、本発明のオーバープリントの製造方法は、潜像担持体の上に静電潜像を発生させる工程と、前記静電潜像をトナーにより現像する工程と、現像された静電画像を印刷基材へ転写させ電子写真印刷物を得る工程と、前記電子写真印刷物上に本発明の光硬化性コーティング組成物を塗布する工程、及び、前記コーティング組成物を光硬化する工程とを含むことがより好ましい。
前記印刷基材としては、特に制限はなく、公知のものを使用することができるが、受像用紙であることが好ましく、普通紙又はコート紙であることがより好ましく、コート紙であることがさらに好ましい。コート紙としては、両面コート紙が、フルカラー画像を美しく両面印刷できるので好ましい。印刷基材が紙又は両面コート紙である場合、好ましい坪量は20〜200g/m2であり、より好ましい坪量は40〜160g/m2である。
【0085】
電子写真法における画像を現像させるための方法に特に制限はなく、当業者には公知の方法から任意に選択することができる。例えば、カスケード法、タッチダウン法、パウダー・クラウド(powder cloud)法、磁気ブラシ法などが挙げられる。
また、現像された画像を印刷基材に転写させるための方法としては、コロトロン又はバイアスロールを使用する方法が例示できる。
電子写真法における画像を定着させるための定着工程(fixing step)は、各種適切な方法により実施することができる。例えば、フラッシュ定着、加熱定着、加圧定着、蒸気定着(vapor fusing)などが挙げられる。
電子写真法による画像形成方法、装置及びシステムとしては、特に制限はないが、公知のものを使用することができる。具体的には、以下の米国特許に記載されているようなものである。
米国特許第4,585,884号明細書、米国特許第4,584,253号明細書、米国特許第4,563,408号明細書、米国特許第4,265,990号明細書、米国特許第6,180,308号明細書、米国特許第6,212,347号明細書、米国特許第6,187,499号明細書、米国特許第5,966,570号明細書、米国特許第5,627,002号明細書、米国特許第5,366,840号明細書;米国特許第5,346,795号明細書、米国特許第5,223,368号明細書、及び、米国特許第5,826,147号明細書。
【0086】
光硬化性コーティング組成物を塗布するためには、通常使用される液膜コーティング装置(liquid film coating device)を使用することができる。具体的には、ロールコーター、ロッドコーター、ブレード、ワイヤバー、浸漬(dips)、エアナイフ、カーテンコーター、スライドコーター、ドクターナイフ、スクリーンコーター、グラビアコーター、オフセットグラビアコーター、スロットコーター、及び、押出しコーターなどが例示できる。それらの装置は、通常と同じようにして使用することができるが、例えば、ダイレクトロールコーティング及びリバースロールコーティング(direct and reverse roll coating)、ブランケットコーティング(blanket coating)、ダンプナーコーティング(dampner coating)、カーテンコーティング、平版コーティング、スクリーンコーティング、及び、グラビアコーティングなどがある。好ましい実施の態様においては、本発明のコーティング組成物の塗布及び硬化は、2台又は3台のロールコーターとUV硬化ステーションを使用して実施する。
また、本発明のコーティング組成物の塗設時や硬化時においては、必要に応じ、加熱を行ってもよい。
本発明のコーティング組成物の塗布量の典型的なレベルは、単位面積当たりの重量で表して、1〜10g/m2の範囲であることが好ましく、3〜6g/m2であることがより好ましい。
また、本発明のオーバープリントにおけるオーバープリント層の形成量は、単位面積当たり、1〜10g/m2の範囲であることが好ましく、3〜6g/m2であることがより好ましい。
【0087】
本発明のコーティング組成物に含まれる重合性化合物の重合を開始させるために使用するエネルギー源としては、例えば、スペクトルの紫外線又は可視光線の波長を有する放射線のような、化学線作用のある(actinic)もの(活性放射線)が挙げられる。活性放射線の照射による重合は、重合の開始及び重合速度の調節に優れる。
好適な活性放射線照射源としては、例えば、水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、タングステンフィラメントランプ、レーザー、太陽光などが挙げられる。
【0088】
紫外線照射(UV光照射)の下で、高速コンベヤ(好ましくは、20〜70m/分)を用いた中圧(medium pressure)水銀ランプによる照射が好ましく、その場合UV光照射は、波長200〜500nmで、1秒未満の間与えることが好ましい。高速コンベヤの速度を15〜35m/分とし、波長200〜450nmのUV光を10〜50ミリ秒(ms)間照射するのがより好ましい。UV光源の発光スペクトルは通常、UV重合開始剤の吸収スペクトルと重なっている。場合によっては使用される硬化装置(curing equipment)としては、UV光を焦点に集めたり拡散させたりする反射板や、UV光源により発生する熱を除去するための冷却システムなどがあるが、これらに限定される訳ではない。
【実施例】
【0089】
以下に示す実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例における形態に限定されるものではない。
【0090】
(実施例1)
以下の成分を撹拌機により撹拌し、光硬化性コーティング組成物を得た。
・表1に示すラクトン構造を有するエチレン性不飽和化合物 50重量%
・トリプロピレングリコールジアクリレート(アルドリッチ社製) 20重量%
・N−ビニルカプロラクタム(アルドリッチ社製) 10重量%
・IRGACURE 907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 15重量%
・ベンゾフェノン(東京化成工業(株)製) 3重量%
・ポリジメチルシロキサン(アルドリッチ社製) 2重量%
【0091】
【化18】

【0092】
得られた実施例1の無溶剤型の光硬化性コーティング組成物を、以下の方法により性能評価を行った。
【0093】
<表面平滑性(レベリング性)評価>
富士ゼロックス(株)製デジタルプリンター(DC8000)で両面コート紙に出力した電子写真印刷物に対して、シナノケンシ(株)製UVニスコーター(SG610V)を用いて5g/m2の膜厚で片面にコーティングを行い、次いで、1.0W/cm2の照度で120mJ/cm2露光を行い、オーバープリントのサンプルを作製し、コーティングされた印刷物表面のタテスジ発生状態を目視にて評価した。評価基準を以下に示す。
○:タテスジなし
×:タテスジが見られる
【0094】
<非タック性(表面ベトツキ抑制)評価>
富士ゼロックス(株)製デジタルプリンター(DC8000)で両面コート紙に出力した電子写真印刷物に対して、コーティング組成物が膜厚5g/m2となるように片面にバーコートで塗布を行い、得られた塗布膜に対して、浜松ホトニクス(株)製UVランプ(LC8)を用いて、1.0W/cm2の照度で120mJ/cm2露光を行い、オーバープリントのサンプルを作製した。露光後の非タック性を触感で評価した。評価基準を以下に示す。
◎:ベトツキなし
○:ほぼベトツキなし
△:若干のベトツキあり
×:表面が未硬化
【0095】
上記の方法にて評価した結果、実施例1の光硬化性コーティング組成物は、表面平滑性は○、タック性は○であった。
【0096】
(実施例2〜15、及び、比較例1〜9)
ラクトン構造を有するエチレン性不飽和化合物を表1に示す特定の化合物に変更した以外は、実施例1と同様の方法で光硬化性コーティング組成物を作製し、次いでこれを使用してオーバープリントを作製して、これらの性能評価を行った。評価結果を表1にまとめて示した。
【0097】
(実施例16)
以下の成分を撹拌機により撹拌し、光硬化性コーティング組成物を得た。
・表2に示すラクトン構造を有するエチレン性不飽和化合物 30重量%
・トリプロピレングリコールジアクリレート(アルドリッチ社製) 20重量%
・アクリル酸ラウリル 20重量%
・ヘキサンジオールジアクリレート(アルドリッチ社製) 10重量%
・IRGACURE 907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 15重量%
・ベンゾフェノン(東京化成工業(株)製) 3重量%
・ポリジメチルシロキサン(アルドリッチ社製) 2重量%
【0098】
得られた実施例16の光硬化性コーティング組成物及びこれを使用して得られるオーバープリントを製作し、実施例1と同様の方法により性能評価を行った。評価結果を表2に示した。
【0099】
(実施例17〜30、及び、比較例10〜18)
ラクトン構造を有するエチレン性不飽和化合物を表2に示す特定の化合物に変更した以外は、実施例16と同様の方法で光硬化性コーティング組成物を作製し、次いでこれを使用してオーバープリントを作製して、これらの性能評価を行った。評価結果を表2にまとめて示した。
【0100】
【表1】

【0101】
【表2】

【0102】
なお、表中におけるOTA−480、及び、ブレンマーPDT−800は、以下に示す構造の化合物である。
【0103】
【化19】

【0104】
【化20】

【0105】
(実施例31)
A4サイズの両面コート紙(坪量100g/m2)の両面に各数コマずつのフルカラー画像を電子写真印刷した20枚の印刷物を作製し、その印刷物の両面に、前記の実施例1〜30にて作製した光硬化性コーティング組成物をそれぞれ、実施例1と同様の方法で、片面5g/m2の塗布量になるように塗布した後、紫外線を照射して両面オーバープリントを作製した。これらを製本して表紙と共に写真アルバムとしたところ、銀塩写真プリントと同様の視認性が得られる写真アルバムが得られた。
【0106】
(実施例32)
ほぼB4サイズの両面コート紙(坪量100g/m2)の両面に献立写真を含むフルカラー画像とテキストを電子写真印刷した10枚の印刷物を作製し、その印刷物の両面に、前記の実施例1〜30にて作製した光硬化性コーティング組成物をそれぞれ、実施例1と同様の方法で、片面5g/m2の塗布量になるように塗布した後、紫外線を照射して両面オーバープリントを作製した。これらを綴じてレストランメニューとしたところ、銀塩写真プリントと同様の視認性が得られるレストランメニューが得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子中にラクトン構造を有するエチレン性不飽和化合物、及び、
光重合開始剤を含有することを特徴とする
光硬化性コーティング組成物。
【請求項2】
前記分子中にラクトン構造を有するエチレン性不飽和化合物が、式(1)で表される化合物である請求項1に記載の光硬化性コーティング組成物。

式(1)中、R1〜R8のうちの少なくとも1つはエチレン性不飽和結合を有する1価の基であり、その他のR1〜R8は、各々独立に、水素原子、アルキル基、又は、シクロアルキル基を表し、R1〜R8のうちのいずれか2つの基が結合して環を形成してもよく、m、nは、各々独立に、0〜6の整数を表す。
【請求項3】
可視域に実質的に吸収を有しない請求項1又は2に記載の光硬化性コーティング組成物。
【請求項4】
オーバープリント用である請求項1〜3いずれか1つに記載の光硬化性コーティング組成物。
【請求項5】
電子写真印刷物のオーバープリント用である請求項1〜4いずれか1つに記載の光硬化性コーティング組成物。
【請求項6】
電子写真印刷物上に請求項1〜5いずれか1つに記載の光硬化性コーティング組成物を光硬化したオーバープリント層を有することを特徴とするオーバープリント。
【請求項7】
印刷基材上に電子写真印刷して電子写真印刷物を得る工程、
前記電子写真印刷物上に請求項1〜5いずれか1つに記載の光硬化性コーティング組成物を塗設する工程、及び、
前記コーティング組成物を光硬化する工程、を含むことを特徴とする
オーバープリントの製造方法。

【公開番号】特開2009−79093(P2009−79093A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−247869(P2007−247869)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】