説明

光線平行化装置及び同光線平行化装置を備える観察用人工虹発生装置

【課題】
ランプ等の通常の光源からの光を平行にすることができ、かつ構造が簡単で安価な光線平行化装置を提供するとともに、同光線平行化装置を用いて、高い照度が得られ、自然界に生じる虹を忠実に再現することが可能な観察用人工虹発生装置を提供する。
【解決手段】 前後面へ直線状に連通し、軸線方向が互いに平行となるように形成された多数の小径な導光孔を有するパネルよりなる構成の光線平行化装置10を用い、複数のランプ8からなる光源7と、この光源からの光線を平行にするための前記光線平行化装置10と、この平行化された光線を受けて人工虹を作るために水を噴霧して霧滴スクリーン3を作る霧滴スクリーン装置4とを有する構成の観察用人工虹発生装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数のランプよりなる光源からの光線を平行にするための光線平行化装置及び同光線平行化装置を備え、観察用の人工虹を発生するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の観察用人工虹発生装置31は図6に示すように、単球のランプよりなる光源32と霧滴スクリーン装置33とよりなり、この霧滴スクリーン装置はノズル群34から下向きに霧滴を噴出して霧滴スクリーン35を形成するものとしてあり、ノズル群34から噴出された霧滴は水槽36に受けられ、ポンプ37を途中に備える送水管38によって、再びノズル群34へ戻されて循環するように構成されていて、前記霧滴スクリーン35に対して光源32からの光を照射すると、霧滴スクリーン35上に人工虹が再現される。
【0003】
しかしながら、上述した従来の装置では、光源32が単球ランプであるため、単球ランプを大容量のものとしても高い照度が得られないので、鮮明な虹を再現することができない。
【0004】
また、光源32からの光線は実際の太陽光のような平行光線ではなく、光源から放射状に照射されるため、自然界で発生する虹の副虹や虹と副虹との間の暗くなる部分などを忠実に再現することができず、また、観察者が移動した場合の虹の見え方の変化も不自然なものとなる。
【0005】
さらに、霧滴スクリーン35を通過した光が同スクリーン後方の壁などに反射して、人工虹の背景を明るくしてしまい、人工虹が観察しにくくなるという問題もある。
【0006】
ところで、ランプ等の光源から平行光線を得るための装置にはレンズ等を利用した光学機器があるが、多数枚のレンズを必要し、構造が複雑で高価であり、観察用人工虹発生装置の光源として採用することは困難である。簡素な構造で安価な光線平行化装置が得られれば、観察用人工虹発生装置のみならず今後の環境試験装置などにも応用できることとなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上の課題を解決するためになされたもので、高い照度が得られ、自然界に生じる虹を忠実に再現することが可能な観察用人工虹発生装置を提供することを目的とする。
【0008】
また本発明は、ランプ等の通常の光源からの光を平行にすることができ、かつ構造が簡単で安価な光線平行化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る光線平行化装置は、前後面へ直線状に連通し、軸線方向が互いに平行となるように形成された多数の小径な導光孔を有するパネルよりなる構成のものとしてある。
【0010】
また、本発明に係る光線平行化装置は、両端が開口する多数の細筒状の筒路体を、互いに平行となるように束ねて構成したパネルよりなり、前記筒路体の孔を導光孔としてなる構成のものとしてあり、また、前記導光孔の径を前記パネルの厚さの1/100以下にしたものとしてある。
【0011】
本発明に係る観察用人工虹発生装置は、複数のランプからなる光源と、この光源からの光線を平行にするための光線平行化装置と、この平行化された光線を受けて人工虹を作るために水を噴霧して霧滴スクリーンを作る霧滴スクリーン装置とを有する構成のものとしてある。
【0012】
また、前記光線平行化装置は、前後面へ直線状に連通し、軸線方向が互いに平行となるように形成された多数の小径な導光孔を有するパネルよりなる構成のものとしてある。
【0013】
さらに、前記霧滴スクリーンの背後に、霧滴スクリーンを通過した光を取り込んで吸収するため反射抑制パネルを備え、同反射抑制パネルは、前後面へ直線状に連通し、軸線方向が互いに平行となるように形成された多数の小径な導光孔を有するパネルよりなる構成のものとしてある。
また、前記光源の上方に、排熱機構を設けた構成のものとしてある。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、請求項1乃至3の発明によれば、レンズ等を利用した高価な光学機器を用いることなく簡単な構造で低コストの光線平行化装置を実現することができる。
【0015】
請求項4乃至7の発明によれば、光線平行化装置を用いることで、実際の太陽光に近似する平行光線を使って人工虹を発生させることができ、自然界の虹に近い人工虹が得られ、したがって自然界で見ることのできる副虹、および虹と副虹の間の暗くなる部分なども忠実に再現することができ、さらに、観察者が移動した場合の虹の見え方の変化も自然界の虹と同様に再現することができる。
【0016】
さらに、光源を複数のランプで構成してあるので、高い照度を得ることができ、鮮明な虹を観察することができる。
【0017】
また、霧滴スクリーンを通過した光は反射抑制パネルに吸収されて観察者の側へ反射することは殆どないので、人工虹をより観察し易くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る光線平行化装置及び観察用人工虹発生装置の実施例を図1乃至図5に示す具体例に基づいて説明する。
図1、2に示すように、本実施例の観察用人工虹発生装置1は、人工虹を作るのに必要な光を発する光源装置2と、この光を受けて実際に人工虹を発生させる霧滴スクリーン3を作る霧滴スクリーン装置4とよりなり、両装置2、4は観察者が通る観察スペース5を挟んで配置される。
【0019】
光源装置2の光源7は、複数のランプ8、8を略鉛直平面上に配列したものとしてあり、光源7の縦横の寸法は、発生させようとする虹の大きさとほぼ同じとし、例えば1m×1mの虹を発生させようとする場合は、光源7の縦寸法H(図1参照)と横寸法W(図2参照)を各1m程度のものとする。
【0020】
この光源7を囲むケーシング9の前面に、光源7と略平行をなす光線平行化装置10を設けてあり、この光線平行化装置10は、前後面へ直線状に連通し、軸線方向が互いに平行となるように形成された多数の小径な導光孔を有するパネル状のものとしてあり、具体的には、図3に示すように両端が開口する多数の細筒状の筒路体11を互いに平行となるように束ねてパネル状に構成し、筒路体の孔を前記導光孔としてあり、筒路体11の孔径Rは、パネルの厚さすなわち筒路体の長さLの1/100以下とするのが望ましい。
【0021】
前記筒路体11は例えば断面が円形のストロー状のものとしてあり、筒路体の内壁および縁部は黒色等の明度の低い色としてあって、光の反射が極力小となるようにしてある。
【0022】
また、光源7の上方には、光源7から出る熱をケーシング9外へ排出するための排熱機構12を設けてあって、この排熱機構は排気ダクト13と排気ファン14とで構成してある。
【0023】
光源装置2はキャスター15付きの支持フレーム16上に搭載されていて、移動可能となっており、前記霧滴スクリーン装置4との間隔を調節できるようになっている。
【0024】
霧滴スクリーン装置4は、水を噴霧するための多数のノズルが水平方向に配列されてなるノズル群17を備え、前述した光源装置2の光線平行化装置10に対し概略平行な霧滴スクリーン3を形成するものとしてあり、霧滴スクリーン3の大きさが光源7の縦横寸法よりも大きくなるように、ノズル群17を構成するノズルの数や高さを設定する。
【0025】
霧滴スクリーン3の下方すなわちノズル群17の下方には、噴霧された水を受ける水受用の水槽18が設けられていて、この水槽に一端を接続した送水管19の他端を、ポンプ20を介してノズル群17に接続してある。
【0026】
また、霧滴スクリーン3の背後に反射抑制パネル21を立設してあり、この反射抑制パネル21は、図4に示すように前述した光源装置2の光線平行化装置10と同様に両端が開口する多数の細筒状の筒路体22を互いに平行となるように束ねてパネル状に構成してあって、筒路体22の孔を導光孔としてあり、外周を枠体23で囲んである。
【0027】
なお、前記筒路体22の内壁および縁部も光線平行化装置10の筒路体11と同様に黒色等の明度の低い色としてあって、光の反射が極力小となるようにしてある。
【0028】
上述した霧滴スクリーン装置4と反射抑制パネル21はともにベース24に立設されたフレームにて支持してある。
【0029】
次ぎに、上述のように構成した光線平行化装置および観察用人工虹発生装置の作用を説明する。
光源装置2においては、光源7を構成する各ランプ8、8からの光は放射状に広がり、斜め方向の光線を多く含んでいるが、斜め方向の光線は光線平行化装置10を通過する際に、筒路体11の導光孔の内壁で反射を繰り返して減衰、吸収され、したがって光線平行化装置を通過した後の光は、互いに平行な光線の割合が非常に多い光、すなわち太陽光に近い光が得られる。
【0030】
一方、霧滴スクリーン装置4においては、ノズル群17から噴霧された霧滴が霧滴スクリーン3を形成し、この霧滴は落下して水槽18に受けられ、ポンプ20により送水管19を経て、再びノズル群17へ送られて循環する。
【0031】
光源装置2からの平行光は、霧滴スクリーン3に照射され、この霧滴スクリーン3を構成する微細な霧滴のプリズム作用により、図5に示すように人工虹25が発生し、観察者は光線の進行方向と観察者の視線26とのなす角θが40度乃至42度となる範囲内で、霧滴スクリーン3上に人工虹25を観察することができる。
【0032】
また、人工虹25の周りに副虹27や、人工虹25と副虹27との間の暗い部分も、自然界と同様に観察することができ、さらに、観察者が自分の位置を変えることによって、人工虹25の大きさや太さが自然界と同様に変わる様子も観察することができる。
【0033】
霧滴によって反射されず霧滴スクリーン3を通過した光は、同スクリーン背後の反射抑制パネル21に達し、反射抑制パネル21を構成する筒路体22の導光孔内部の壁で反射を繰り返して減衰、吸収される。これにより光の反射が抑えられ、人工虹25をより明瞭に観察することができる。
【0034】
上述した実施例においては、光線平行化装置10および反射抑制パネル21を、両端が開口する多数の細筒状の筒路体11、22を互いに平行となるように束ねてパネル状に構成して、筒路体11、22の孔を導光孔としてあるが、断面形状が格子状であるパネルや、あるいは断面形状が六角格子状であるハニカム構造のパネルを使用する場合もある。
【0035】
また、上述した実施例においては、霧滴スクリーン装置4と反射抑制パネル21を1つのベース24上に設けてあるが、個別のベースにて支持する場合もあるし、ベースにキャスターを取り付けて移動可能とする場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る観察用人工虹発生装置の実施例を示す概略全体図。
【図2】本発明に係る観察用人工虹発生装置の実施例を示す概略平面図。
【図3】光線平行化装置の構造を示す一部拡大斜視図。
【図4】反射抑制パネルの構造を示す一部拡大斜視図。
【図5】図1の装置により発生する人工虹を示す図。
【図6】従来の観察用人工虹発生装置の一例を示す概略全体図。
【符号の説明】
【0037】
1 人工虹発生装置 2 光源装置
3 霧滴スクリーン 4 霧滴スクリーン装置
5 観察スペース 7 光源
8 ランプ 9 ケーシング
10 光線平行化装置 11 筒路体
12 排熱機構 13 排気ダクト
14 排気ファン 15 キャスター
16 支持フレーム 17 ノズル群
18 水槽 19 送水管
20 ポンプ 21 反射抑制パネル
22 筒路体 23 枠体
24 ベース 25 人工虹
26 観察者の視線 27 副虹

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後面へ直線状に連通し、軸線方向が互いに平行となるように形成された多数の小径な導光孔を有するパネルよりなる光線平行化装置。
【請求項2】
両端が開口する多数の細筒状の筒路体を、互いに平行となるように束ねて構成したパネルよりなり、前記筒路体の孔を導光孔としてなる光線平行化装置。
【請求項3】
前記導光孔の径を前記パネルの厚さの1/100以下としてなる請求項1、2に記載の光線平行化装置。
【請求項4】
複数のランプからなる光源と、この光源からの光線を平行にするための光線平行化装置と、この平行化された光線を受けて人工虹を作るために水を噴霧して霧滴スクリーンを作る霧滴スクリーン装置とを備える観察用人工虹発生装置。
【請求項5】
前記光線平行化装置は、前後面へ直線状に連通し、軸線方向が互いに平行となるように形成された多数の小径な導光孔を有するパネルよりなる請求項4に記載の観察用人工虹発生装置。
【請求項6】
前記霧滴スクリーンの背後に、霧滴スクリーンを通過した光を取り込んで吸収するため反射抑制パネルを備え、同反射抑制パネルは、前後面へ直線状に連通し、軸線方向が互いに平行となるように形成された多数の小径な導光孔を有するパネルよりなる請求項4に記載の観察用人工虹発生装置。
【請求項7】
前記光源の上方に、排熱機構を設けてなる請求項4に記載の観察用人工虹発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−285285(P2006−285285A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−177518(P2006−177518)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【分割の表示】特願平11−125207の分割
【原出願日】平成11年4月30日(1999.4.30)
【出願人】(390026974)株式会社東洋製作所 (132)
【Fターム(参考)】