光線路特性の解析方法、解析装置およびプログラム
【課題】光スプリッタ下流側における個別の分岐ファイバの線路特性を、低コストで精密に測定可能にすること。
【解決手段】λ1,λ2,…,λnの波長の試験光によりOTDR波形を各波長ごとに得て、さらに、これらのいずれとも異なる基準光λ0のOTDR波形を得る。そして各波長のOTDR波形から基準光λ0のOTDR波形を減算することにより、各分岐ファイバ10の単独での折り返し波形を得る。さらに、この折り返し波形を反射点Tに対して点対称に射影したのち、FBG型光フィルタによる反射減衰量を補正することにより、各分岐ファイバ単独での後方散乱光情報を復元する。
【解決手段】λ1,λ2,…,λnの波長の試験光によりOTDR波形を各波長ごとに得て、さらに、これらのいずれとも異なる基準光λ0のOTDR波形を得る。そして各波長のOTDR波形から基準光λ0のOTDR波形を減算することにより、各分岐ファイバ10の単独での折り返し波形を得る。さらに、この折り返し波形を反射点Tに対して点対称に射影したのち、FBG型光フィルタによる反射減衰量を補正することにより、各分岐ファイバ単独での後方散乱光情報を復元する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光ファイバなどの光線路の特性を解析する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバなどの光線路を使用する光通信システムでは、光線路の破断を検出し、また、破断位置を標定するために光パルス線路監視装置が用いられる。光パルス線路監視装置は、光が光線路内を伝播するに伴いその光と同じ波長の後方散乱光が生じて逆方向に伝搬することを利用する。すなわち、光線路に光パルス(試験光)を入射するとこの光パルスが破断点に到達するまで後方散乱光が発生し続け、試験光と同じ波長の戻り光が入力端面から出射される。この後方散乱光の継続時間を測定することにより光線路の破断点を標定することができる。この原理に基づく測定装置では、OTDR(Optical Time Domain Reflectometer)が代表的である。
【0003】
しかしながら、PON(Passive Optical Network)型の光分岐線路システムを光パルス線路監視装置により試験・監視するにあたり、光スプリッタからユーザ装置側の分岐ファイバ、あるいは装置の状態を個別に識別することは困難である。すなわち、局舎から延びる幹線ファイバが光スプリッタにより複数の分岐ファイバに分岐されるので、試験光も光スプリッタから各心線に一様に分配される。そして各心線からの戻り光は入射端に戻る際に光スプリッタで重なり合ってしまい、このため入射端で観測されるOTDR波形からは、どの分岐ファイバに破断が生じているかを識別できなくなる。このように既存の技術では、光パルス線路監視装置は基本的に1本の光線路に対してのみ有効であり、光分岐線路システムにそのまま適用することはできない。
【0004】
非特許文献1、および特許文献1に上記を解決しようとする技術が提案されている。非特許文献1の提案は、試験光を高く反射する光フィルタをターミネーションフィルタとしてユーザ装置の手前に設置し、各ユーザからの反射光の強度を高分解能なOTDR装置により測定するというものである。同文献ではこの手法により、光スプリッタより下流の分岐ファイバにおける距離分解能として2mの精度を得られることが報告されている。しかしこの文献の技術では故障線番の特定と、装置か光線路のどちらが故障しているかといった故障切り分けとが可能であるにとどまる。
【0005】
特許文献1では、光スプリッタとして、光の多光束干渉を利用するアレイ導波路回折格子型波長合分波器を用い、波長可変光源により試験光の波長を切り替えて被試験光線路を選択するという提案がなされている。波長可変光源の波長を掃引し、反射光の波長を光反射処理部で検出し、その波長を基準に試験光の波長を設定することで、試験光の波長に対応付けて各光線路の個別監視を実現することができる。
【0006】
しかしながらアレイ導波路回折格子型波長合分波器に代表される、波長ルーティング機能を持つ光分岐装置は一般に高価であり、多くの加入者を収容するアクセス系光システムに用いることはコスト面で難しい。さらにこのような光部品は温度依存性が大きく、温度調整機能を付加する必要もある。このためシステム全体のコストが跳ね上がることは避けられない。
このほか、非特許文献2にもOTDRを用いる障害箇所の特定に関する技術が開示される。この文献では光スプリッタでN分岐される光路において、Nに対して最低限必要になるOTDRのダイナミックレンジに関して議論されている。
【0007】
【非特許文献1】Y. Enomoto et al., "Over 31.5 dB dynamic range optical fiber line testing system with optical fiber fault isolation function 32-branched PON", OFC2003 Technical Digest, paper ThAA3(2003),pp. 608-610.
【0008】
【特許文献1】特開平7−87017号公報
【0009】
【非特許文献2】I. Sankawa et al. "Fault location technique for in-service branched optica1 fiber networks, "Photonics Technology Letters, IEEE, vol.2, no. 10, pp. 766-768, Oct, 1990
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上述べたように既存の技術では、PON型光線路において光スプリッタからユーザ装置側の分岐ファイバ、および装置を監視するにあたり個別標定が難しい。これに対し、固有の波長の光を反射するFBG(Fiber Bragg Grating)フィルタを分岐ファイバごとに接続し、波長ごとにOTDR測定を行うことで障害位置を特定することが考えられている。この手法では特に、試験光パルスがFBG型光フィルタで反射されることで生じる後方散乱光波形、すなわち折り返し波形を観測することで、分岐ファイバ間での波形の重なりをできるだけ排除するようにしている。
【0011】
この手法によれば既設の線路や分岐装置を変更せず安価な試験を実現できるが、障害の発生箇所によっては分岐ファイバ間での波形の重なりを排除できないケースが多くある。つまり、後方散乱光の重畳の無い観測データを得られるのは、厳密には最長の分岐ファイバにおける反射端から次に長い分岐ファイバの反射端までの区間に過ぎない。これ以外の区間で障害が生じると必ず複数の経路における波形が重なり合うので、後方散乱光の障害点における変化量を正確に知ることが難しい。この影響は障害点が光スプリッタに近くなるほど大きくなり、障害による減衰の具体的な値などといった正確な光線路特性を観測することができなくなる。
【0012】
このような制約から現状では、定期試験などで得た測定データと、コンピュータに予め記憶させた正常時(無障害時)の測定データとを比較することで障害標定を行うようにしている。よって正常時のOTDR波形情報を準備する手間やデータの管理にかかる手間などが大変煩わしく、何らかの改善策が要望されている。
この発明は以上のような事情によりなされたもので、その目的は、光スプリッタ下流側における個別の分岐ファイバの線路特性を、低コストで精密に測定可能な光線路特性の解析方法、解析装置およびプログラムを提供することにある、
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するためにこの発明の一態様によれば、光ファイバを第1乃至第nの分岐ファイバに分岐する光スプリッタと、前記第1乃至第nの分岐ファイバの遠端に個別に接続され互いに異なる波長λ1,λ2,…,λnの光を個別に反射しそれ以外の波長の光を透過させる第1乃至第nの反射型光フィルタとを備える光分岐線路システムに用いられる光線路特性の解析方法において、λ1,λ2,…,λnの波長の試験光を前記光ファイバに入射して前記試験光の後方散乱光の距離に対する強度分布波形Di(1≦i≦n)を各波長ごとに測定する測定ステップと、λ1,λ2,…,λnのいずれとも異なる波長λ0の基準光を前記光ファイバに入射してこの基準光の後方散乱光の距離に対する強度分布波形D0を測定する基準波形取得ステップと、強度分布波形Diから強度分布波形D0を減算して第1乃至第nの分岐ファイバごとに反射型光フィルタ以遠の折り返し波形を算出する算出ステップと、前記折り返し波形を用いて線路特性を前記分岐ファイバごとに解析する解析ステップとを具備することを特徴とする光線路特性の解析方法が提供される。なお測定ステップと基準波形取得ステップとの順序は記載のとおりでなくとも良く、前後しても良い。
【0014】
このような手段を講じることにより、分岐ファイバのそれぞれに対応するOTDRの波形データとは別に、全ての分岐ファイバに共通する基準波形データが取得される。基準波形データは、各分岐ファイバごとのOTDR測定波形に混入する他の分岐ファイバからの後方散乱光成分と看做すことができる。従って、各波長のOTDR測定波形から基準波形を減算すれば、波長すなわち分岐ファイバの単独での波形データを再生することができる。減算の結果、反射型光フィルタ以遠の折り返し部分の波形が得られ、これを用いて各分岐ファイバの線路特性を個別に解析することができる。なお線路特性とは距離に対する光減衰量、反射ピークの位置、曲げ障害の位置、曲げの程度、断線障害の位置などを含む、要するに線路の状態を示す諸量である。
【0015】
このように、各分岐ファイバに割り当てられた試験光波長λ1,λ2,…,λnのいずれとも異なる波長λ0を用いてOTDR測定を行い、得られた波形データを利用することで全ての分岐ファイバの単独での経路情報を抽出することができる。この情報を用いれば傷害の発生箇所および減衰量を正確に評定することが可能になり、正常時のデータとの比較などといった手間を要することもなく、障害を手軽かつ正確に標定することが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、光スプリッタ下流側における個別の分岐ファイバの線路特性を、低コストで精密に測定可能な光線路特性の解析方法、解析装置およびプログラムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、この発明に関わる光線路特性の解析方法を適用可能な光分岐ファイバ(PON)システムの一例を示す図である。図1は、光スプリッタ2の下流部分と、OTDRによる後方散乱光の観測波形とを示す。図1において光ファイバ線路1は光スプリッタ2によりn本に分岐され、例えばn=4として4本の分岐ファイバ3がスター状に延伸される。このうち最短の分岐ファイバに符号3−1を付し、長さの短いほうから順に符号3−2,3−3,3−4を付して示す。各分岐ファイバ3の末端はONU(宅内装置)12で終端され、ONU12と光スプリッタ2との間には、分岐ファイバ3−1〜3−4ごとに、固有の波長λ1〜λ4を反射し他の波長を透過させるFBG型光フィルタ10が設けられる。さらに、FBG型光フィルタ10とONU12との間にはいずれも、OTDR試験光パルスを遮断する光フィルタ11を接続する。この光フィルタ11によりインサービスでの試験が可能になる。
【0018】
光スプリッタ2とFBG型光フィルタ10との間の区間を、長さの短い順に区間A、B,C,Dとする。つまり最も長い区間は分岐ファイバ3−4の区間Dで、区間C,B,Aの順に短くなる。またこの実施形態では、区間A,B,C,Dの線路特性をOTDRにより観測するのにそれぞれ波長λ1,λ2,λ3,λ4の試験光パルスを用いる。分岐数nが増えるほどに試験光の波長の数も増やす。図1の後方散乱光波形は、波長λ1の試験光で区間Aに対する試験を実施した場合を示す。
【0019】
図1において、区間Aの分岐ファイバ3−1に曲げなどの障害が加わると損失が増加し、後方散乱光波形に段差が観測される。障害点をPとすると段差はまずこの点Pにおいて生じ、さらに、FBG型光フィルタ10の反射パルス波形の位置を基準として対称な位置(P′とする)にも観測される。つまりFBG型光フィルタ10に対する折り返し波形が現れ、段差はこの折り返し部分において、より顕著になる。この折り返しは試験光パルスがFBG型光フィルタ10で反射されることで二次的に形成される光源の後方散乱光によってもたらされる。この効果により、OTDR光源から見てFBG型光フィルタ10よりも遠方に、あたかも線路が存在するような波形が観測される。
【0020】
2つの段差波形のうち点P、すなわちFBG型光フィルタ10による反射波形の左側に観測される波形を用いても、損失増加の微小な値を評定することは難しい。これは分岐ファイバ3−1からの後方散乱光波形が他の分岐ファイバ3−2〜3−4からの後方散乱光波形と重畳されるからである。光スプリッタ2から障害点Pまでの距離が他の分岐ファイバの線路長のいずれよりも長い、という非常に限られた条件でしか、この重畳の影響から逃れることはできない。区間Aは最も短いのでそもそもこの条件を満たすことは不可能である。
【0021】
一方、点P′、すなわちFBG型光フィルタ10による反射波形の右側に観測される波形を用いれば、損失増加の微小な値を評定することができる。これは次のような理由による。すなわち分岐ファイバ3−1の長さをL1とするとP′はL1〜L1×2の区間に観測される。従ってP′での段差波形は他の分岐ファイバ3−2〜3−4からの後方散乱光波形と重畳されることなく、明瞭に観測することが可能である。すなわち他の分岐ファイバの影響を受けることなく障害点を高精度に評定することが可能となる。図1では波長λ1の試験光のケースを示すが、他の波長λ2〜λ4を用いれば分岐ファイバ3−2〜3−4についても同様に試験できる。
【0022】
しかしながら如何なる場合においても重畳が皆無になるわけではない。分岐ファイバ3の最大線路長と最小線路長との差が最小線路長を超える場合、つまり最大線路長が最小線路長の2倍以上であると、最長区間で生じた後方散乱光が必ず他の区間にも影響を及ぼす。つまりFBG型光フィルタからの反射光に基づく後方散乱光の光スプリッタ2側の始端において、光の重畳が発生する。従って分岐ファイバ始点における損失の変化量を正確に把握することが不可能になり、異常の発生の有無を検知することができなくなる。
【0023】
つまり線路長構成と障害位置との関係によっては点P′の計測値をそのまま解析することができない場合がある。また仮に解析できたとしても故障位置の特定が不可能な場合がある。以下ではこの困難を解決し得る技術につき開示する。
[第1の実施形態]
図2は、この発明の第1の実施形態に関わる原理を説明するための図である。図2(a1)に示すように分岐数3の光スプリッタ2を仮定する。この光スプリッタ2から延びる分岐ファイバF1〜F3の長さをそれぞれL1、L2、L3とし、L1<L2<L3の関係が満たされるとする。各分岐ファイバF1〜F3の遠端にはそれぞれ試験光λ1〜3を反射するFBG型光フィルタ#1〜#3を接続する。
【0024】
この系に波長λ2の試験光パルスを入射すると、この波長λ2に高い反射率を有するFBG型光フィルタ#2において反射光が生じる。この反射光の後方散乱光が波形に表れるので、観測波形はFBG型光フィルタ#2の先にあたかも線路が存在しているような形状を示す(図2(a2))。ただし区間Aに着目すると、この区間Aでは分岐ファイバ2の後方散乱光に分岐ファイバ3の後方散乱光が重なり合う。よって区間Aでは分岐ファイバ2,3の経路情報を分離することができないので、各分岐ファイバ2,3の特性を個別に監視することができない。
【0025】
そこでこの実施形態では、波長λ1〜λ3の試験光を入射するのとは別に、λ1〜λ3のいずれとも異なる波長λ0の試験光(基準光と称する)も系に入射する。波長λ0の試験光はFBG型光フィルタ#1〜#3のいずれによっても強く反射されないので反射光による後方散乱光は生じない。このことを図2(b1)に示し、波長λ0による観測波形を図2(b2)に示す。図2(b2)の観測波形を基準波形と称して説明に用いる。この基準波形(b2)に現れる段差は各フィルタにおけるフレネル反射を反映するもので、(a2)の観測波形も同様に、各波形は入射光の後方散乱光とフレネル反射光の双方の受光強度を含む。
【0026】
図2(a1)と(b1)とを比較すると、これらの差分は分岐ファイバF2の折り返し部分だけであることが分かる。すなわち図2(a2)のOTDR波形情報から(b2)の基準波形情報を減算((λ2−λ0)と表記して示す)すると、分岐ファイバF2の折り返し波形情報が他の分岐ファイバF1およびF3と重なり合うことなく得られる。このことを図2(c1)、(c2)に示す。
【0027】
このような処理によって分岐ファイバF2の単独での線路情報を得ることができる。他の分岐ファイバに関しても同様に、その分岐ファイバに対するOTDR波形から基準波形を減算すれば単独での波形情報を抽出することができる。すなわち、FBG型光フィルタで反射された試験光により生じ、さらに同じフィルタで再び反射された後方散乱光、およびフレネル反射光の受光強度を示す波形情報を、分岐ファイバごとに他の分岐ファイバのOTDR波形と重なり合うことなく抽出することができる。この分岐ファイバ単独での波形情報を得られれば、これを用いて分岐ファイバの線路特性を個別に解析することが可能になる。
【0028】
図3は、この発明に係わる解析方法を適用可能な光伝送システムの一例を示すシステム図である。光スプリッタ2の下流の分岐ファイバ3の数を8とし、図1と共通する箇所には同じ符号を付す。光信号送信局STにおいて、OLT(Optical Line Termination)13で終端された光線路14に、光カプラ15を介してOTDR装置100を接続する。OTDR装置100は試験光を光カプラ15から光ファイバ線路1に入射し、その後方散乱光の距離(伝播方向)に対する強度分布波形を得る。光カプラ15から光スプリッタ2までの区間を、共通線路区間と称する。
【0029】
特にこの実施形態では、OTDR装置100は波長可変型であり、試験光の波長を切り替える機能を有する。この実施形態ではλ1,λ2,…,λn、およびλ0の、互いに異なる波長の試験光を出力可能とする。すなわちOTDR装置100は、mをインデックスとしてλm(m=1,2,…,n)およびλ0の波長の試験光を出力可能である。
【0030】
OTDR装置100はLAN(Local Area Network)ケーブルなどを介して波形解析装置300に接続される。波形解析装置300はパーソナルコンピュータなどに専用の処理ソフトウェアを搭載したもので、LANを介してOTDR装置100から測定データを取得する。波形解析装置300は取得したデータを用いて光スプリッタ2よりも下流側(ONU12側)における分岐ファイバ3の線路特性を解析する。分岐ファイバ3は、ユーザ宅近傍に設けられそれぞれ波長λ1,λ2,…,λ8の試験光を反射するFBG型光フィルタ10を介して宅内のONU12に接続される。FBG型光フィルタ10とONU12との間には光フィルタ11が接続される。
【0031】
図4は、図3の波形解析装置300の実施の形態を示す機能ブロック図である。図4において、測定波形入力部21はOTDR装置100から波長λ0,λ1,λ2,…,λnのOTDR波形データを取得する。これらのデータはそれぞれ規格化処理部22により共通線路区間で規格化されたのち、規格化波形記憶部24、基準波形記億部26、および反射点検出部23に与えられる。規格化された波長λ1,λ2,…,λ8の波形データは規格化波形記憶部24に記憶され、波長λ0の波形データは基準波形データとして基準波形記億部26に記憶される。
【0032】
反射点検出部23は規格化された波形データに対する閾値判定などにより反射点の位置を検出し、その波長ごとの位置は反射点記憶部25に記憶される。また規格化された波形データは波形整列部29により反射点位置をインデックスとして整列され、その結果は波形処理部28に渡される。
【0033】
波長λ0,λ1,λ2,…,λ8の波形データは減算処理部32に渡される。減算処理部32は波長λ1,λ2,…,λ8のそれぞれの波形データから基準波形データ(λ0)を減算することにより、FBG型光フィルタ10以遠の折り返し波形を分岐ファイバ3ごとに算出する。得られた波長(すなわち分岐ファイバ)ごとの折り返し波形は波形処理部28に渡され、また、波形記憶部27に保持される。波形処理部28はこの折り返し波形を用いて、分岐ファイバ3ごとの線路特性を解析する。
【0034】
折り返し波形をそのままの状態で観察することだけでも、分岐ファイバにおける曲げ障害の有無、その位置、および曲げの程度などを判定できる。さらに、折り返し波形を処理して折り返しでない波形と等価の波形を復元すれば、断線障害の位置なども判定することができる。断線障害においては折り返し波形が生じないので、まずは折り返し波形の有無に基づいて断線の疑いのある区間を特定し、後の処理によって断線の位置を特定する。
【0035】
折り返しでない波形と等価の波形を復元するために、射影移動処理部30は波形記憶分から各波長λ1,λ2,…,λ8の波形データを取得する。射影移動処理部30は折り返し波形を反射点に対して点対称移動する演算を行い、その結果をレベル調整部31に与える。レベル調整部31は点対称移動後のデータを嵩上げして補正する処理を行い、分岐ファイバ3ごとの単独での復元波形を得る。この復元波形が区間ごとの後方散乱光情報であり、復元された波形は波形表示装置200に表示されるとともに波形積算部33に与えられる。
【0036】
波形積算部33は区間ごとの単独での後方散乱光情報を、断線の疑いのある区間を除いて積算する。これにより得られた積算波形は積算波形記億部34に記憶されたのち減算処理部32に与えられる。減算処理部32は規格化波形記憶部24から断線の疑いのある区間の波形データを読み出し、これから積算波形を減算する。これにより断線の疑いのある区間の単独での後方散乱光情報が抽出され、その結果は波形処理部28に戻されて解析される。
【0037】
図4において規格化波形記憶部24、反射点記憶部25、基準波形記憶部26、波形記憶部27、積算波形記憶部34はRAM(Random Access Memory)などのメモリに設けられる記憶領域である。他の機能ブロックすなわち測定波形入力部21、規格化処理部22、反射点検出部23、波形処理部28、波形整列部29、射影移動処理部30、レベル調整部31、減算処理部32、波形積算部33は、例えばコンピュータのCPU(Central Processing Unit)に読み込まれて実行されるプログラムルーチンとして実現される。もちろん専用のハードウェアデバイスとして実現することもでき、例えば測定波形入力部21などは専用のインタフェース基板として実現することもできる。
【0038】
図5乃至図7は、図4の波形解析装置300により実行される処理手順を示すフローチャートである。図5において、まず波形解析装置300はインデックスiに0を代入して初期化し(ステップS1)、基準光λ0により得られたOTDR測定波形をOTDR装置100から取得する(ステップS2)。この波形データはメモリ内のDATA(i)領域(基準波形記億部26)に記憶される(ステップS3)。
【0039】
次に波形解析装置300は、インデックスiに1を代入したのち(ステップS4)、波長λ1〜λnの試験光により得られたOTDR測定波形をOTDR装置100から取得する。得られた測定波形データは波長ごとにメモリ内のDATA(i)領域に記憶される(ステップS5〜ステップS8のループ)。なおnは光スプリッタ2の分岐数すなわち分岐ファイバの本数である。
【0040】
次に、共通線路区間、すなわち光の重畳の生じる区間での後方散乱光の強度を比較する処理が開始される(ステップS6)。その際、区間ごとの特性に波長依存性が無いと見込むことができれば直ちに図6からの手順が開始されるが、波長依存性のある場合(ステップS10で「あり」)に備え、波形解析装置300は規格化処理部22において各波形データを規格化する(ステップS11)。規格化されたデータは規格化波形記憶部24に記憶され、処理手順は図6のステップS12に移る。
【0041】
図6において、波形解析装置300はiに1を代入する(ステップS12)。次に、反射点検出部23は波形データのピーク位置に基づいて反射点、すなわちFBG型光フィルタ10の位置を検出し、反射点記憶部25のP(i)に記憶する。このルーチンはiを1ずつインクリメントして全ての分岐ファイバごとに実施される(ステップS13〜S15のループ)。
【0042】
次に波形解析装置300は波形整列部29において、波長ごとの波形データDATA(i)をピーク位置順に、昇順で整列させる(ステップS16)。次に波形解析装置300は再度iに1を代入し(ステップS17)、各波長の波形データから基準波長λ0の波形データを減算し、その結果をメモリ内のM1(i)領域に保存する(ステップS18)。ステップS18で得られた減算波形M1(i)は折り返し波形であり、図1の距離L1から2L1までの区間、すなわちFBG型光フィルタ10の反射による二次光源の後方散乱光に対応する。
【0043】
ここまでの手順で、OTDR測定により得られた情報から、各分岐ファイバ3の単独での折り返し波形を復元することができる。折り返し波形を用いれば分岐ファイバの曲げ障害に関する知見を得ることができる。そこで、以下に実験例を交えつつ曲げ障害の検出について詳しく説明することとし、ステップS19以上の手順については後に引き続いて説明する。
【0044】
[実験の前提]
以下では光スターカプラ2の分岐数を8、分岐ファイバの線路長をそれぞれ0.8、1.1、1.5、2.0、2.6、2.9、3.2、および、4.0[km]とした。分岐ファイバ遠端にはそれぞれブラッグ波長が1641、1643、1645、1647、1649、1651、1653、および、1655[ナノメートル(nm)]のFBG型光フィルタ#1,#2,…,#8を設置した。これらの波長をこの順に、λ1、λ2、…、λ8とする。また、光スターカプラ2の上流側の区間、すなわち試験光の入射点から光スターカプラ2までの共通線路の長さを1.1kmとした。以上の構成のもとで各FBG型光フィルタのブラッグ波長に対応する試験光で光パルス試験を行い、各波長における試験波形を測定した。
【0045】
[第1の実験例]
第1の実験例では、第5番目に短い分岐ファイバ、すなわち反射波長が1649nmのFBGを設置した分岐ファイバの、光スプリッタ2から約1.6kmの位置に約2dBの損失を持つ曲げ障害を設定した。まず、光信号送信局STに設置した波長可変OTDR装置100から波長λ1、λ2、…、λ8の試験光パルスを順次入射し、波長ごとに時間に対する受光強度波形(OTDR波形)を測定した。
【0046】
図8は波長λ1、λ2、…、λ8に対するOTDR波形をまとめて示すグラフである。ただし図では光スターカプラ2の下流側の波形のみを示す。各波形において、FBG型光フィルタの設置位置に鋭い反射ピークが現れる。そして、ピーク以遠の区間において折り返し波形が現れていることがわかる。
【0047】
図9は、基準光λ0を入射した場合のOTDR波形を示すグラフである。ここでは波長λ0を1635nmとし、波長λ1、λ2、…、λ8のいずれとも異なるようにする。λ0はいずれのFBG型光フィルタによっても反射されないので、図8のような鋭い反射ピークは現れない。また、反射光の後方散乱光による折り返し波形も観測されない。なお図9の弱いピークはFBG型光フィルタ#1〜#8のサイドローブでの反射である。
【0048】
図10〜図17は、図6のステップS18の手順に従い、各波長λ1、λ2、…、λ8のOTDR波形から基準光λ0の波形を減算して得られた波形を示すグラフである。各図において細い実線はOTDR波形を、点線は基準波形を、太い実線はOTDR波形から基準波形を減算した結果を示す。
【0049】
図10〜図17の各グラフとも、FBG型光フィルタによる鋭い反射ピークを中心として対称位置に、単独での分岐ファイバにおける折り返し波形(他の分岐ファイバと重畳することのない反射光から生じた後方散乱光情報)が現れている。これらのグラフから、λ5の分岐ファイバ以外では損失の大きな変動は見られず、障害が発生していないと判断できる。
【0050】
次に、曲げ障害を設けたλ5の分岐ファイバの波形解析について説明する。対応する図14において、入射点からFBG型光フィルタ#5のピーク位置(1.1(共通線路区間長)+2.6(ファイバ長)=3.7km)までの範囲では、他の分岐ファイバの後方散乱光との重畳が生じる。よって次に示す非特許文献2の式(2)に示されるように、第5番目に短い分岐ファイバは他の分岐ファイバ(第1、2、3番目に長い分岐ファイバ)の後方散乱光情報と重なり合い、障害位置1.6km(横軸の距離座標で2.7km付近)の位置に正確な損失変動量を観測することができない。
【0051】
【数1】
また、折り返し領域(FBG型光フィルタ#5のピーク位置以降の区間)において、ピーク位置に対して対称な位置(距離座標で4.6km付近)に損失の変動が観測されてはいるが(細い実線)、この位置においても後方散乱光情報が重畳しているので曲げ損失を正確に評価することができない。
【0052】
これに対し、波形解析後の折り返し波形領域(太い実線)では、曲げ障害を設けた位置において明確な損失変動が現れていることが分かる。この損失変動量を評価したところ約2.1dBであり、曲げ損失を正確に評価できることが分かった。以上からこの実施形態の手法は、分岐ファイバの個別監視方法として有効であることが結論付けられる。
【0053】
[第2の実験例]
この実施形態ではOTDR波形の波長依存性に関して検討する。OTDR測定装置100から出力される試験光の出力パワーは波長依存性を持つことが多く、測定波形もそれを反映するものになる。
図18は、波長依存性を持つOTDR波形を示すグラフである。図18には第1の実験例と同じ条件で測定した波形を、波長λ5〜λ8の4波長のみ示す。#1−#8との表記は全ての試験光が8本の分岐ファイバの全てに入射することを示す。このグラフから明らかなように、波長ごとに後方散乱光の強度に差があり、波長依存性のあることがわかる。このデータをそのまま用いると減衰量を正確な評価できない場合があると考えられる。そこでこの実施形態では、規格化処理部22(図4)によって測定データを共通線路区間の強度で規格化して、規格化したデータに基づいて光強度の減衰を評価するようにする。
【0054】
図19は、図18の波形を規格化した波形を示すグラフである。規格化により各試験光波長での測定データのレベルが適切に調整される。図19のデータを用いて第1の実験例と同様の波形解析を行った。その結果、曲げ損失を与えていない分岐ファイバにおいては大きな損失の変動は見られず、障害が発生していないと判断可能であった。
【0055】
図20は、曲げ損失を与えたλ5の分岐ファイバのOTDR波形を規格化し、さらに基準波形を減算した結果を示すグラフである。第1の実験例と同様に、基準波形を減算しない波形(図19)では障害箇所(横軸で2.7km付近)に損失の大きな変動が見られない。これに対し図20では太い実線で示すように、FBG型光フィルタを中心とする折り返し波形に曲げ損失が明確に見られることがわかる。このグラフからも、障害の発生箇所として4.6km付近、および損失増加量として2.1dB程度と評価することができ、正確な数値を得られたと言える。以上から、OTDR波形を共通線路区間の強度で規格化することは、分岐ファイバの個別監視方法として有効であることが結論付けられる。
【0056】
[第2の実施形態]
第1の実施形態ではOTDR波形の折り返し部分を正確に抽出する手法につき説明した。しかしながら分岐ファイバが断線すると試験光がFBG型光フィルタに届かず、折り返し波形が現れない。この実施形態ではそのような状態にも対応可能で、しかも断線障害の位置を正確に検出することを可能とする波形解析手法につき説明する。まず原理を説明し、次に図6のステップS19以降の手順に戻って説明を続ける。
【0057】
[原理的説明]
図21は、この発明の第2の実施形態に関わる原理を説明するための図である。ここでは折り返し波形を処理して、折り返しでない波形と等価の波形を復元する手法につき説明する。図21(a1)は、図2の系において分岐ファイバF2が断線した状態を示す。図21(a1)、(b1)はこの状態の系にそれぞれλ1、λ3の試験光を入射した状態を示す。そのOTDR波形からそれぞれ基準波形(λ0)を減算して得た波形図が(a2)、(b2)である。いずれの波形にも折り返し波形が現れている。各グラフにおいて横軸は距離(線形目盛)、縦軸は後方散乱光強度(対数目盛)である。
【0058】
図21の(a2)、(b2)はそれぞれ分岐ファイバF1,F3の単独での(重畳成分を含まない)折り返し波形である。この波形を処理して、重畳のある区間での後方散乱光情報、すなわち折り返しでない波形を復元するための手順を次に説明する。
図21(a2)、(b2)の実線はFBG型光フィルタから光源へと向かう戻り光により生じた情報であり、光フィルタの位置(反射点)に対して対称性を持つ。よってこの波形を、反射点を中心として点対称に射影することで、光源からフィルタ方向に進む試験光による後方散乱光波形に戻すことができる(図21(a2)、(b2)の矢印を参照)。波形データは通常、縦軸を対数目盛り(光強度[dB])、横軸を線形目盛り(距離[m])でプロットされるので、上記の射影操作は、横軸が線形目盛り、縦軸が対数目盛りのグラフ上で点Pに対して波形データを点対称移動することに相当する。
【0059】
図22は、射影操作につき詳しく説明するための図である。射影操作は、横軸が線形目盛り、縦軸が対数目盛りのグラフ上で、或る点に対してデータを点対称移動することに相当する。図22(a)は横軸が線形目盛り、縦軸が対数目盛りのグラフであり、点P(L0、A0)を通る直線の関数形を例えば、F(x)=−kxとすると、区間(1)はA0+F(L−L0)=A0−k・(L−L0)と表される。この区間(1)を点P(L0、A0)に関して点対称移動すると区間(2)が算出され、その関数はA0−F(L0−L)=A0−k・(L−L0)になる。このような変換操作により点対称の移動がなされる。
【0060】
以上の操作は、横軸、縦軸ともに線形目盛りのグラフにおいては図22(b)に示すようになる。区間(3)の関数形を例えばf(x)=e−αxとし、この曲線が点p(L0、a0)を通るならば区間(3)はa0・f(L−L0)=a0・e−α(L−L0)と表される。この区間(3)を点p(L0、a0)に関して点対称移動すると区間(4)が算出され、その関数はa0/f(L0−L)=a0・e−α(L−L0)となる。すなわちこの変換は、曲線を表す関数をa0で除算して得られるf(x)の逆数を求めることに相当する。このように、横軸を線形目盛り、縦軸を対数目盛りとするグラフ上で、折り返し波形を反射点に関して点対称移動する変換処理を行うことにより、通常のOTDR装置側からフィルタへ進む試験光による後方散乱光波形に戻すことが可能である。
【0061】
さらに、FBG型フィルタではその反射減衰量にしたがって反射パルス強度が減衰するのでこの減衰量を加味し、点対称移動で復元した波形の強度レベルを損失分だけ嵩上げすることで補正を行う(図21(a2)、(b2)の上向き矢印)。この損失分は例えば一般的なFBG型フィルタの反射減衰量とし、その分を線形−対数グラフ上で上方に平行移動すればよい。すなわち、線形−線形グラフ上で上記変換処理後の波形にリニアで表したFBG型フィルタの反射減衰量(>1)に相当する定数を乗ずるようにする。
【0062】
以上のような一連の変換処理により、他の分岐ファイバとの重畳により単独の線路情報を知ることができない区間においても、分岐ファイバF1,F3の各単独での後方散乱光情報を復元することが可能である((図21(a3)、(b3)、および(c))。ここまでの情報が得られれば、系にλ2の試験光を入射して得た結果からλ1,λ3の後方散乱光情報を減算することで(図21(d))、断線を生じた分岐ファイバF2のOTDR波形のみを抽出することができる(図21(e))。
【0063】
図6のフローチャートのステップ19において、以上の補正処理がなされる。すなわちメモリ領域M1(i)に保存された波形を反射点に関して点対称に移動し、さらにFBG型光フィルタの反射減衰量を加算した波形をメモリM2(i)領域に保存する(ステップ19)。この処理はステップS18〜S21のループで全ての分岐ファイバにわたり繰り返される。その後、得られた各分岐ファイバの単独での後方散乱光情報がメモリM2(i)から読み出され、波形表示装置200に表示される(ステップS23〜S25のループ)。
【0064】
次に波形解析装置300は、例えば折り返し波形の有無に基づいて断線の有無を判定する(図7のステップS26)。断線がなければ処理はここで終了してよい(ステップS27)が、断線があればその経路番号(分岐ファイバの識別子)をkとし、波形解析装置300は変数Sumに0を代入し(ステップS29)、インデックスiに1を代入する(ステップS30)。次に波形解析装置300は、インデックスiをインクリメントしつつi=kになるまで、変数Sumに補正後の後方散乱光情報を足しこんでゆく(ステップS31〜S34のループ)。そうして、分岐ファイバkのOTDR波形データDATA(k)からSumの値を減算し、得られた結果をメモリ領域M4に保存したのち(ステップS35)、そのデータを波形表示装置200に表示する(ステップS36)。以上の波形処理手順により、断線障害等でFBG型光フィルタに試験パルスが到達しない場合でも分岐ファイバの状態を個別に識別することが可能になる。次に、断線障害に係わる第3の実験例につき説明する。
【0065】
[第3の実験例]
この実験例では、第3番目に短い線路すなわち反射波長がλ3(1645nm)のFBG型光フィルタを設置した分岐ファイバにおいて、光スプリッタから約0.5kmの位置に曲げによる完全放射の断線障害を与えた。この状態で試験光λ3を入射してもこの試験光はFBG型光フィルタ#3に到達できないので、OTDR波形で大きなピークが見られない。また、折り返し波形情報も得られないので第1、第2の実験例における波形解析手法をそのまま適用しても障害位置を特定することができない。しかしながら第2の実施形態の手順によればそれが可能になる。以下に解析の手順および結果を示す。
【0066】
図23は、断線障害のある状態で波長λ8の試験光を入射して得たOTDR波形から基準波形(λ0)を減算し、さらに分岐ファイバ#8の折り返し波形から分岐ファイバ#8単独での後方散乱光情報を復元した波形を示す。まず、基準波形を減算して得られた折り返し波形(λ8−λ0:図中太い実線)を、FBG型光フィルタ#8での反射点(P8)に関して点対称に移動する。さらにFBG型光フィルタ#8の反射減衰量分だけ、線形−対数グラフ上で上方に平行移動(線形−線形グラフでY軸に適切な定数を乗ずる)し、減衰量を補償する。このような処理により分岐ファイバ#8単独での後方散乱光情報#8′を復元した。同様に断線ファイバ#3以外の測定結果に対して波形処理を施し、それぞれの単独での後方散乱光情報を復元した。
【0067】
ここで、λ3を除くλ1からλ7までの6個の減算結果には、試験波長と一致しないブラッグ波長のFBG型光フィルタのサイドローブの影響によるわずかなピークが、折り返し波形領域に残る。例えば図24に示すように、試験光波長がλ7のOTDR波形にはFBG型光フィルタ#8のサイドローブからの反射のピークが現れる。このピーク区間Aでは後方散乱光情報が欠落するが、この区間の直前と直後の後方散乱光レベルの差が小さくOTDR装置100の後方散乱光レベルの変動量の範囲内であれば、障害が存在しないと判断できる。そこで、この区間AのOTDR波形を前後の波形から近似される指数関数で補間し、連結した波形を折り返し波形として使用した。補間した波形を図25に示す。
【0068】
このような手順でλ1,λ2,λ4,λ5,λ6,λ7,λ8の各試験光の後方散乱光波形を復元し、これらの総和を試験光λ3のOTDR波形から減算した。その結果を図26に示す。図26によれば図中点線(λ3′)で示すグラフには、光スプリッタから約0.5km(距離座標約1.6km)の位置で後方散乱光強度が急峻になくなり、この位置で断線していると判断することが可能である。この位置は破断障害を与えた箇所である。以上からこの実施形態は、分岐ファイバを個別監視する方法として有効であることが結論付けられる。
【0069】
[第3の実施形態]
この実施形態ではインサービス試験を可能とする形態につき説明する。試験光を入射すると、その試験光の波長を反射しないFBG型光フィルタよりも下流のユーザ宅にまで試験光が入射してしまう。よって通信に不要な試験光がONU12に混入するので光線路監視試験中は通信できないことになる。これを避けるために光フィルタ11を設けて不要な波長を遮断するようにする。また、光信号送信局ST側に設けた光カプラ15により、通信光(例えば波長1.49μm)に試験光を合波するようにする。
【0070】
光フィルタ11には、誘電体多層膜型の広帯域光フィルタを用いることができる。誘電体多層膜は屈折率の異なる薄い膜を数十〜数百層も石英ガラスなどに積層した多層膜構造をなし、光ファイバ、光導波路、あるいは光コネクタ部分に特定の角度で挿入することにより特定の波長のみをクラッドに反射させ、透過・遮断波長帯域や遮断波長の反射量を調節することができる。
【0071】
図27は光フィルタ11の光学特性の一例を示す図である。1.61μm〜1.62μmの範囲では透過損失を1.0dB以下とし、1.62〜1.63μmの帯域で透過損失が徐々に増加し、波長1.635μm以上の試験光に対しては約40dBの遮断量を持たせるようにする。なお試験光の反射減衰量は、誘電体多層膜フィルタの挿入角度の調整により40dB以上にすることも可能である。
【0072】
以上のような光学特性を持つ光フィルタをONU12とFBG型光フィルタ10との間に設置することにより、ユーザ宅への試験光の入射を遮断することができ、従ってインサービスでの試験を実施することができる。なお試験光の波長はほぼ1.64μm〜1.65μmの幅内に収め、このうち最短の波長に基準光λ0を割り当てることができる。
【0073】
[第4の実施形態]
図28は基準光λ0の波長の他の割り当ての例を示す図である。種々の検討の結果、被試験ファイバの光学特性は試験光波長領域で僅かながら波長依存性を示すことがわかった。そこでこの実施形態では波長依存性の影響を最小限に抑えるべく、試験光の帯域の中心波長近傍で、かつ割り当て波長と異なる波長範囲に基準光λ0の波長を割り当てるようにした。すなわち、波長λ4(波長1647nm)およびλ5(波長1649nm)の間に、これらの波長と異なる波長1648nmを、基準光の波長λ0とする。この波長のλ0を用いた試験結果からFBG型光フィルタのサイドローブの影響による、反射光の後方散乱光による折り返し波形は発生しないことが確認できた。
【0074】
この波長の試験光λ0を用いて測定した基準波形を、第1、第2の実施形態での手順に即し、λ1〜λ8を入射して得られた各OTDR波形からそれぞれ減算した。その結果、分岐ファイバλ5以外の、曲げ損失による障害の無い分岐ファイバでの波形からは大きな損失変動は見られず、障害が発生していないと判断可能であった。
【0075】
さらに、曲げ障害を設けた分岐ファイバλ5での波形解析処理の結果を、図29に示す。図29によれば、波形解析後の折り返し波形領域において、FBG型光フィルタ#5に対して対称な位置4.6km付近に損失変動が明確に現れ、約2.05dBの曲げ損失として検出できる。この位置は曲げ障害を設けた位置に相当する。いずれの値も正確な値として評価でき、以上からこの実施形態の手法は、分岐ファイバの個別監視方法として有効であることが結論付けられる。
【0076】
[第5の実施形態]
最後に、基準光λ0の配置により通信波長帯域を拡大できることを説明する。図30(図27)では試験光帯域λ1〜λ8よりも外部に基準光波長λ0を配置した。これに対し図31(図28)では、試験光帯域λ1〜λ8の中央に波長λ0を配置する。これにより図30の21nmに比べ、図31では15nmと、試験光の帯域を狭帯域化することができる。
【0077】
図31に示す特性の誘電体多層膜フィルタを光フィルタ11として用いれば、試験光波長の帯域を狭くできた分、フィルタ特性を長波長方向にシフトすることができる。これにより通信光波長帯を拡大し、同様の線路試験を実施することが可能になる。さらに、光フィルタ11の遮断特性を緩やかな特性とすることができるので、その分、コストも抑えられる。さらに、誘電体多層膜型に限らず他の形式の光フィルタも適用することができる。
【0078】
以上述べたようにこの発明の実施形態によれば、λ1,λ2,…,λnの波長の試験光によりOTDR波形を各波長ごとに得て、さらに、これらのいずれとも異なる基準光λ0のOTDR波形を得る。そして各波長のOTDR波形から基準光λ0のOTDR波形を減算することにより、各分岐ファイバ10の単独での折り返し波形を得る。さらに、この折り返し波形を反射点Tに対して点対称に射影したのち、FBG型光フィルタによる反射減衰量を補正することにより、各分岐ファイバ単独での後方散乱光情報を復元するようにしている。
【0079】
従ってこの実施形態によれば、各分岐ファイバの個別の後方散乱光情報を算出できるので、光スプリッタの下流における既設の光スターカプラ、分岐ファイバの置き換え無しで各分岐ファイバの個別監視が可能となる。よって低コスト化を促せるほか、正常時の測定OTDR波形情報を保存しておく必要がなくなり、データベース管理との煩雑な連携作業なく大規模なシステムなしで短時間に試験を行うことが可能となる。さらに波形解析処理において、他の分岐ファイバとの重畳の無いOTDRレベル(FBG型光フィルタの直前に現れる)にレベル補正を施すので、より正確なデータを得ることができる。さらには、そしてFBG型光フィルタとONU12(ユーザ設備)との間に光フィルタ11を設けることでインサービス試験も可能となる。さらに、試験光波長と基準光波長との配置を工夫することにより通信帯域を拡大することも可能になる。これらのことから、光スプリッタ下流側における個別の分岐ファイバの線路特性を、低コストで精密に測定することが可能になる。
【0080】
なお、この発明は上記実施形態そのままに限定されるものではない。例えば図6のフローチャートのステップS16において、波長ごとの波形データDATA(i)をピーク位置順に昇順で整列するようにした。これはいわば表示の見やすさなどのための便宜的な処理であり、ステップS16の手順は必ずしも必要でない。ステップS16を実施しなくても良ければ、図4の反射点検出部23からのデータは波形処理部28に直接渡される。また実施形態では、曲げ障害の有無を、折り返し波形を用いて判定するようにしたが、折り返し波形を点対称に射影して得た波形(折り返し出ない波形と等価の波形:後方散乱光情報)を用いても、もちろん曲げ障害の有無を判定できる。
またこの発明は、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0081】
また、実施形態に記載した手法は、計算機(コンピュータ)に実行させることができるプログラム(ソフトウェア手段)として、例えば磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD−ROM、DVD、MO等)、半導体メモリ(ROM、RAM、フラッシュメモリ等)等の記録媒体に格納し、また通信媒体により伝送して頒布することもできる。なお、媒体側に格納されるプログラムには、計算機に実行させるソフトウェア手段(実行プログラムのみならずテーブルやデータ構造も含む)を計算機内に構成させる設定プログラムをも含む。本装置を実現する計算機は、記録媒体に記録されたプログラムを読み込み、また場合により設定プログラムによりソフトウェア手段を構築し、このソフトウェア手段によって動作が制御されることにより上述した処理を実行する。なお、本明細書でいう記録媒体は、頒布用に限らず、計算機内部あるいはネットワークを介して接続される機器に設けられた磁気ディスクや半導体メモリ等の記憶媒体を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】この発明に関わる光線路特性の解析方法を適用可能な光分岐ファイバ(PON)システムの一例を示す図。
【図2】この発明に係わる解析方法の第1の実施形態に関わる原理を説明するための図。
【図3】この発明に係わる解析方法を適用可能な光伝送システムの一例を示すシステム図。
【図4】図3の波形解析装置300の実施の形態を示す機能ブロック図。
【図5】図4の波形解析装置300により実行される処理手順を示すフローチャート。
【図6】図4の波形解析装置300により実行される処理手順を示すフローチャート。
【図7】図4の波形解析装置300により実行される処理手順を示すフローチャート。
【図8】波長λ1、λ2、…、λ8に対するOTDR波形をまとめて示すグラフ。
【図9】基準光λ0を入射した場合のOTDR波形を示すグラフ。
【図10】波長λ1のOTDR波形から基準光λ0の波形を減算して得られた波形を示すグラフ。
【図11】波長λ2のOTDR波形から基準光λ0の波形を減算して得られた波形を示すグラフ。
【図12】波長λ3のOTDR波形から基準光λ0の波形を減算して得られた波形を示すグラフ。
【図13】波長λ4のOTDR波形から基準光λ0の波形を減算して得られた波形を示すグラフ。
【図14】波長λ5のOTDR波形から基準光λ0の波形を減算して得られた波形を示すグラフ。
【図15】波長λ6のOTDR波形から基準光λ0の波形を減算して得られた波形を示すグラフ。
【図16】波長λ7のOTDR波形から基準光λ0の波形を減算して得られた波形を示すグラフ。
【図17】波長λ8のOTDR波形から基準光λ0の波形を減算して得られた波形を示すグラフ。
【図18】波長依存性を持つOTDR波形を示すグラフ。
【図19】図18の波形を規格化した波形を示すグラフ。
【図20】曲げ損失を与えたλ5の分岐ファイバのOTDR波形を規格化し、さらに波形処理した結果を示すグラフ。
【図21】この発明の第2の実施形態に関わる原理を説明するための図。
【図22】射影操作につき詳しく説明するための図。
【図23】断線障害のある状態で波長λ8の試験光を入射して得たOTDR波形から基準波形を減算し、分岐ファイバ#8単独での後方散乱光情報を復元した波形を示す図。
【図24】FBG型光フィルタのサイドローブ反射によるピーク波形の一例を示す図。
【図25】図24のグラフのピーク区間を補間した波形を示す図。
【図26】λ1,λ2,λ4,λ5,λ6,λ7,λ8の後方散乱光波形を試験光λ3のOTDR波形から減算した結果を示す図。
【図27】光フィルタ11の光学特性および基準光λ0の波長割り当ての一例を示す図。
【図28】基準光λ0の波長割り当ての他の例を示す図。
【図29】第3の実施形態における分岐ファイバλ5での波形解析処理の結果を示す図。
【図30】光フィルタ11の光学特性および基準光λ0の波長割り当ての一例を示す図。
【図31】基準光λ0の波長割り当てにより通信波長帯域を拡大できることを示す図。
【符号の説明】
【0083】
1…光ファイバ線路、2…光スプリッタ、3…分岐ファイバ、10…FBG型光フィルタ、11…光フィルタ、ST…光信号送信局、12…ONU(宅内装置)、13…OLT、14…光線路、15…光カプラ、100…OTDR装置、200…波形表示装置、300…波形解析装置、21…測定波形入力部、22…規格化処理部、23…反射点検出部、24…規格化波形記憶部、25…反射点記憶部、26…基準波形記億部、27…波形記憶部、28…波形処理部、29…波形整列部、30…射影移動処理部、31…レベル調整部、32…減算処理部、33…波形積算部、34…積算波形記億部
【技術分野】
【0001】
この発明は、光ファイバなどの光線路の特性を解析する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバなどの光線路を使用する光通信システムでは、光線路の破断を検出し、また、破断位置を標定するために光パルス線路監視装置が用いられる。光パルス線路監視装置は、光が光線路内を伝播するに伴いその光と同じ波長の後方散乱光が生じて逆方向に伝搬することを利用する。すなわち、光線路に光パルス(試験光)を入射するとこの光パルスが破断点に到達するまで後方散乱光が発生し続け、試験光と同じ波長の戻り光が入力端面から出射される。この後方散乱光の継続時間を測定することにより光線路の破断点を標定することができる。この原理に基づく測定装置では、OTDR(Optical Time Domain Reflectometer)が代表的である。
【0003】
しかしながら、PON(Passive Optical Network)型の光分岐線路システムを光パルス線路監視装置により試験・監視するにあたり、光スプリッタからユーザ装置側の分岐ファイバ、あるいは装置の状態を個別に識別することは困難である。すなわち、局舎から延びる幹線ファイバが光スプリッタにより複数の分岐ファイバに分岐されるので、試験光も光スプリッタから各心線に一様に分配される。そして各心線からの戻り光は入射端に戻る際に光スプリッタで重なり合ってしまい、このため入射端で観測されるOTDR波形からは、どの分岐ファイバに破断が生じているかを識別できなくなる。このように既存の技術では、光パルス線路監視装置は基本的に1本の光線路に対してのみ有効であり、光分岐線路システムにそのまま適用することはできない。
【0004】
非特許文献1、および特許文献1に上記を解決しようとする技術が提案されている。非特許文献1の提案は、試験光を高く反射する光フィルタをターミネーションフィルタとしてユーザ装置の手前に設置し、各ユーザからの反射光の強度を高分解能なOTDR装置により測定するというものである。同文献ではこの手法により、光スプリッタより下流の分岐ファイバにおける距離分解能として2mの精度を得られることが報告されている。しかしこの文献の技術では故障線番の特定と、装置か光線路のどちらが故障しているかといった故障切り分けとが可能であるにとどまる。
【0005】
特許文献1では、光スプリッタとして、光の多光束干渉を利用するアレイ導波路回折格子型波長合分波器を用い、波長可変光源により試験光の波長を切り替えて被試験光線路を選択するという提案がなされている。波長可変光源の波長を掃引し、反射光の波長を光反射処理部で検出し、その波長を基準に試験光の波長を設定することで、試験光の波長に対応付けて各光線路の個別監視を実現することができる。
【0006】
しかしながらアレイ導波路回折格子型波長合分波器に代表される、波長ルーティング機能を持つ光分岐装置は一般に高価であり、多くの加入者を収容するアクセス系光システムに用いることはコスト面で難しい。さらにこのような光部品は温度依存性が大きく、温度調整機能を付加する必要もある。このためシステム全体のコストが跳ね上がることは避けられない。
このほか、非特許文献2にもOTDRを用いる障害箇所の特定に関する技術が開示される。この文献では光スプリッタでN分岐される光路において、Nに対して最低限必要になるOTDRのダイナミックレンジに関して議論されている。
【0007】
【非特許文献1】Y. Enomoto et al., "Over 31.5 dB dynamic range optical fiber line testing system with optical fiber fault isolation function 32-branched PON", OFC2003 Technical Digest, paper ThAA3(2003),pp. 608-610.
【0008】
【特許文献1】特開平7−87017号公報
【0009】
【非特許文献2】I. Sankawa et al. "Fault location technique for in-service branched optica1 fiber networks, "Photonics Technology Letters, IEEE, vol.2, no. 10, pp. 766-768, Oct, 1990
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上述べたように既存の技術では、PON型光線路において光スプリッタからユーザ装置側の分岐ファイバ、および装置を監視するにあたり個別標定が難しい。これに対し、固有の波長の光を反射するFBG(Fiber Bragg Grating)フィルタを分岐ファイバごとに接続し、波長ごとにOTDR測定を行うことで障害位置を特定することが考えられている。この手法では特に、試験光パルスがFBG型光フィルタで反射されることで生じる後方散乱光波形、すなわち折り返し波形を観測することで、分岐ファイバ間での波形の重なりをできるだけ排除するようにしている。
【0011】
この手法によれば既設の線路や分岐装置を変更せず安価な試験を実現できるが、障害の発生箇所によっては分岐ファイバ間での波形の重なりを排除できないケースが多くある。つまり、後方散乱光の重畳の無い観測データを得られるのは、厳密には最長の分岐ファイバにおける反射端から次に長い分岐ファイバの反射端までの区間に過ぎない。これ以外の区間で障害が生じると必ず複数の経路における波形が重なり合うので、後方散乱光の障害点における変化量を正確に知ることが難しい。この影響は障害点が光スプリッタに近くなるほど大きくなり、障害による減衰の具体的な値などといった正確な光線路特性を観測することができなくなる。
【0012】
このような制約から現状では、定期試験などで得た測定データと、コンピュータに予め記憶させた正常時(無障害時)の測定データとを比較することで障害標定を行うようにしている。よって正常時のOTDR波形情報を準備する手間やデータの管理にかかる手間などが大変煩わしく、何らかの改善策が要望されている。
この発明は以上のような事情によりなされたもので、その目的は、光スプリッタ下流側における個別の分岐ファイバの線路特性を、低コストで精密に測定可能な光線路特性の解析方法、解析装置およびプログラムを提供することにある、
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するためにこの発明の一態様によれば、光ファイバを第1乃至第nの分岐ファイバに分岐する光スプリッタと、前記第1乃至第nの分岐ファイバの遠端に個別に接続され互いに異なる波長λ1,λ2,…,λnの光を個別に反射しそれ以外の波長の光を透過させる第1乃至第nの反射型光フィルタとを備える光分岐線路システムに用いられる光線路特性の解析方法において、λ1,λ2,…,λnの波長の試験光を前記光ファイバに入射して前記試験光の後方散乱光の距離に対する強度分布波形Di(1≦i≦n)を各波長ごとに測定する測定ステップと、λ1,λ2,…,λnのいずれとも異なる波長λ0の基準光を前記光ファイバに入射してこの基準光の後方散乱光の距離に対する強度分布波形D0を測定する基準波形取得ステップと、強度分布波形Diから強度分布波形D0を減算して第1乃至第nの分岐ファイバごとに反射型光フィルタ以遠の折り返し波形を算出する算出ステップと、前記折り返し波形を用いて線路特性を前記分岐ファイバごとに解析する解析ステップとを具備することを特徴とする光線路特性の解析方法が提供される。なお測定ステップと基準波形取得ステップとの順序は記載のとおりでなくとも良く、前後しても良い。
【0014】
このような手段を講じることにより、分岐ファイバのそれぞれに対応するOTDRの波形データとは別に、全ての分岐ファイバに共通する基準波形データが取得される。基準波形データは、各分岐ファイバごとのOTDR測定波形に混入する他の分岐ファイバからの後方散乱光成分と看做すことができる。従って、各波長のOTDR測定波形から基準波形を減算すれば、波長すなわち分岐ファイバの単独での波形データを再生することができる。減算の結果、反射型光フィルタ以遠の折り返し部分の波形が得られ、これを用いて各分岐ファイバの線路特性を個別に解析することができる。なお線路特性とは距離に対する光減衰量、反射ピークの位置、曲げ障害の位置、曲げの程度、断線障害の位置などを含む、要するに線路の状態を示す諸量である。
【0015】
このように、各分岐ファイバに割り当てられた試験光波長λ1,λ2,…,λnのいずれとも異なる波長λ0を用いてOTDR測定を行い、得られた波形データを利用することで全ての分岐ファイバの単独での経路情報を抽出することができる。この情報を用いれば傷害の発生箇所および減衰量を正確に評定することが可能になり、正常時のデータとの比較などといった手間を要することもなく、障害を手軽かつ正確に標定することが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、光スプリッタ下流側における個別の分岐ファイバの線路特性を、低コストで精密に測定可能な光線路特性の解析方法、解析装置およびプログラムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、この発明に関わる光線路特性の解析方法を適用可能な光分岐ファイバ(PON)システムの一例を示す図である。図1は、光スプリッタ2の下流部分と、OTDRによる後方散乱光の観測波形とを示す。図1において光ファイバ線路1は光スプリッタ2によりn本に分岐され、例えばn=4として4本の分岐ファイバ3がスター状に延伸される。このうち最短の分岐ファイバに符号3−1を付し、長さの短いほうから順に符号3−2,3−3,3−4を付して示す。各分岐ファイバ3の末端はONU(宅内装置)12で終端され、ONU12と光スプリッタ2との間には、分岐ファイバ3−1〜3−4ごとに、固有の波長λ1〜λ4を反射し他の波長を透過させるFBG型光フィルタ10が設けられる。さらに、FBG型光フィルタ10とONU12との間にはいずれも、OTDR試験光パルスを遮断する光フィルタ11を接続する。この光フィルタ11によりインサービスでの試験が可能になる。
【0018】
光スプリッタ2とFBG型光フィルタ10との間の区間を、長さの短い順に区間A、B,C,Dとする。つまり最も長い区間は分岐ファイバ3−4の区間Dで、区間C,B,Aの順に短くなる。またこの実施形態では、区間A,B,C,Dの線路特性をOTDRにより観測するのにそれぞれ波長λ1,λ2,λ3,λ4の試験光パルスを用いる。分岐数nが増えるほどに試験光の波長の数も増やす。図1の後方散乱光波形は、波長λ1の試験光で区間Aに対する試験を実施した場合を示す。
【0019】
図1において、区間Aの分岐ファイバ3−1に曲げなどの障害が加わると損失が増加し、後方散乱光波形に段差が観測される。障害点をPとすると段差はまずこの点Pにおいて生じ、さらに、FBG型光フィルタ10の反射パルス波形の位置を基準として対称な位置(P′とする)にも観測される。つまりFBG型光フィルタ10に対する折り返し波形が現れ、段差はこの折り返し部分において、より顕著になる。この折り返しは試験光パルスがFBG型光フィルタ10で反射されることで二次的に形成される光源の後方散乱光によってもたらされる。この効果により、OTDR光源から見てFBG型光フィルタ10よりも遠方に、あたかも線路が存在するような波形が観測される。
【0020】
2つの段差波形のうち点P、すなわちFBG型光フィルタ10による反射波形の左側に観測される波形を用いても、損失増加の微小な値を評定することは難しい。これは分岐ファイバ3−1からの後方散乱光波形が他の分岐ファイバ3−2〜3−4からの後方散乱光波形と重畳されるからである。光スプリッタ2から障害点Pまでの距離が他の分岐ファイバの線路長のいずれよりも長い、という非常に限られた条件でしか、この重畳の影響から逃れることはできない。区間Aは最も短いのでそもそもこの条件を満たすことは不可能である。
【0021】
一方、点P′、すなわちFBG型光フィルタ10による反射波形の右側に観測される波形を用いれば、損失増加の微小な値を評定することができる。これは次のような理由による。すなわち分岐ファイバ3−1の長さをL1とするとP′はL1〜L1×2の区間に観測される。従ってP′での段差波形は他の分岐ファイバ3−2〜3−4からの後方散乱光波形と重畳されることなく、明瞭に観測することが可能である。すなわち他の分岐ファイバの影響を受けることなく障害点を高精度に評定することが可能となる。図1では波長λ1の試験光のケースを示すが、他の波長λ2〜λ4を用いれば分岐ファイバ3−2〜3−4についても同様に試験できる。
【0022】
しかしながら如何なる場合においても重畳が皆無になるわけではない。分岐ファイバ3の最大線路長と最小線路長との差が最小線路長を超える場合、つまり最大線路長が最小線路長の2倍以上であると、最長区間で生じた後方散乱光が必ず他の区間にも影響を及ぼす。つまりFBG型光フィルタからの反射光に基づく後方散乱光の光スプリッタ2側の始端において、光の重畳が発生する。従って分岐ファイバ始点における損失の変化量を正確に把握することが不可能になり、異常の発生の有無を検知することができなくなる。
【0023】
つまり線路長構成と障害位置との関係によっては点P′の計測値をそのまま解析することができない場合がある。また仮に解析できたとしても故障位置の特定が不可能な場合がある。以下ではこの困難を解決し得る技術につき開示する。
[第1の実施形態]
図2は、この発明の第1の実施形態に関わる原理を説明するための図である。図2(a1)に示すように分岐数3の光スプリッタ2を仮定する。この光スプリッタ2から延びる分岐ファイバF1〜F3の長さをそれぞれL1、L2、L3とし、L1<L2<L3の関係が満たされるとする。各分岐ファイバF1〜F3の遠端にはそれぞれ試験光λ1〜3を反射するFBG型光フィルタ#1〜#3を接続する。
【0024】
この系に波長λ2の試験光パルスを入射すると、この波長λ2に高い反射率を有するFBG型光フィルタ#2において反射光が生じる。この反射光の後方散乱光が波形に表れるので、観測波形はFBG型光フィルタ#2の先にあたかも線路が存在しているような形状を示す(図2(a2))。ただし区間Aに着目すると、この区間Aでは分岐ファイバ2の後方散乱光に分岐ファイバ3の後方散乱光が重なり合う。よって区間Aでは分岐ファイバ2,3の経路情報を分離することができないので、各分岐ファイバ2,3の特性を個別に監視することができない。
【0025】
そこでこの実施形態では、波長λ1〜λ3の試験光を入射するのとは別に、λ1〜λ3のいずれとも異なる波長λ0の試験光(基準光と称する)も系に入射する。波長λ0の試験光はFBG型光フィルタ#1〜#3のいずれによっても強く反射されないので反射光による後方散乱光は生じない。このことを図2(b1)に示し、波長λ0による観測波形を図2(b2)に示す。図2(b2)の観測波形を基準波形と称して説明に用いる。この基準波形(b2)に現れる段差は各フィルタにおけるフレネル反射を反映するもので、(a2)の観測波形も同様に、各波形は入射光の後方散乱光とフレネル反射光の双方の受光強度を含む。
【0026】
図2(a1)と(b1)とを比較すると、これらの差分は分岐ファイバF2の折り返し部分だけであることが分かる。すなわち図2(a2)のOTDR波形情報から(b2)の基準波形情報を減算((λ2−λ0)と表記して示す)すると、分岐ファイバF2の折り返し波形情報が他の分岐ファイバF1およびF3と重なり合うことなく得られる。このことを図2(c1)、(c2)に示す。
【0027】
このような処理によって分岐ファイバF2の単独での線路情報を得ることができる。他の分岐ファイバに関しても同様に、その分岐ファイバに対するOTDR波形から基準波形を減算すれば単独での波形情報を抽出することができる。すなわち、FBG型光フィルタで反射された試験光により生じ、さらに同じフィルタで再び反射された後方散乱光、およびフレネル反射光の受光強度を示す波形情報を、分岐ファイバごとに他の分岐ファイバのOTDR波形と重なり合うことなく抽出することができる。この分岐ファイバ単独での波形情報を得られれば、これを用いて分岐ファイバの線路特性を個別に解析することが可能になる。
【0028】
図3は、この発明に係わる解析方法を適用可能な光伝送システムの一例を示すシステム図である。光スプリッタ2の下流の分岐ファイバ3の数を8とし、図1と共通する箇所には同じ符号を付す。光信号送信局STにおいて、OLT(Optical Line Termination)13で終端された光線路14に、光カプラ15を介してOTDR装置100を接続する。OTDR装置100は試験光を光カプラ15から光ファイバ線路1に入射し、その後方散乱光の距離(伝播方向)に対する強度分布波形を得る。光カプラ15から光スプリッタ2までの区間を、共通線路区間と称する。
【0029】
特にこの実施形態では、OTDR装置100は波長可変型であり、試験光の波長を切り替える機能を有する。この実施形態ではλ1,λ2,…,λn、およびλ0の、互いに異なる波長の試験光を出力可能とする。すなわちOTDR装置100は、mをインデックスとしてλm(m=1,2,…,n)およびλ0の波長の試験光を出力可能である。
【0030】
OTDR装置100はLAN(Local Area Network)ケーブルなどを介して波形解析装置300に接続される。波形解析装置300はパーソナルコンピュータなどに専用の処理ソフトウェアを搭載したもので、LANを介してOTDR装置100から測定データを取得する。波形解析装置300は取得したデータを用いて光スプリッタ2よりも下流側(ONU12側)における分岐ファイバ3の線路特性を解析する。分岐ファイバ3は、ユーザ宅近傍に設けられそれぞれ波長λ1,λ2,…,λ8の試験光を反射するFBG型光フィルタ10を介して宅内のONU12に接続される。FBG型光フィルタ10とONU12との間には光フィルタ11が接続される。
【0031】
図4は、図3の波形解析装置300の実施の形態を示す機能ブロック図である。図4において、測定波形入力部21はOTDR装置100から波長λ0,λ1,λ2,…,λnのOTDR波形データを取得する。これらのデータはそれぞれ規格化処理部22により共通線路区間で規格化されたのち、規格化波形記憶部24、基準波形記億部26、および反射点検出部23に与えられる。規格化された波長λ1,λ2,…,λ8の波形データは規格化波形記憶部24に記憶され、波長λ0の波形データは基準波形データとして基準波形記億部26に記憶される。
【0032】
反射点検出部23は規格化された波形データに対する閾値判定などにより反射点の位置を検出し、その波長ごとの位置は反射点記憶部25に記憶される。また規格化された波形データは波形整列部29により反射点位置をインデックスとして整列され、その結果は波形処理部28に渡される。
【0033】
波長λ0,λ1,λ2,…,λ8の波形データは減算処理部32に渡される。減算処理部32は波長λ1,λ2,…,λ8のそれぞれの波形データから基準波形データ(λ0)を減算することにより、FBG型光フィルタ10以遠の折り返し波形を分岐ファイバ3ごとに算出する。得られた波長(すなわち分岐ファイバ)ごとの折り返し波形は波形処理部28に渡され、また、波形記憶部27に保持される。波形処理部28はこの折り返し波形を用いて、分岐ファイバ3ごとの線路特性を解析する。
【0034】
折り返し波形をそのままの状態で観察することだけでも、分岐ファイバにおける曲げ障害の有無、その位置、および曲げの程度などを判定できる。さらに、折り返し波形を処理して折り返しでない波形と等価の波形を復元すれば、断線障害の位置なども判定することができる。断線障害においては折り返し波形が生じないので、まずは折り返し波形の有無に基づいて断線の疑いのある区間を特定し、後の処理によって断線の位置を特定する。
【0035】
折り返しでない波形と等価の波形を復元するために、射影移動処理部30は波形記憶分から各波長λ1,λ2,…,λ8の波形データを取得する。射影移動処理部30は折り返し波形を反射点に対して点対称移動する演算を行い、その結果をレベル調整部31に与える。レベル調整部31は点対称移動後のデータを嵩上げして補正する処理を行い、分岐ファイバ3ごとの単独での復元波形を得る。この復元波形が区間ごとの後方散乱光情報であり、復元された波形は波形表示装置200に表示されるとともに波形積算部33に与えられる。
【0036】
波形積算部33は区間ごとの単独での後方散乱光情報を、断線の疑いのある区間を除いて積算する。これにより得られた積算波形は積算波形記億部34に記憶されたのち減算処理部32に与えられる。減算処理部32は規格化波形記憶部24から断線の疑いのある区間の波形データを読み出し、これから積算波形を減算する。これにより断線の疑いのある区間の単独での後方散乱光情報が抽出され、その結果は波形処理部28に戻されて解析される。
【0037】
図4において規格化波形記憶部24、反射点記憶部25、基準波形記憶部26、波形記憶部27、積算波形記憶部34はRAM(Random Access Memory)などのメモリに設けられる記憶領域である。他の機能ブロックすなわち測定波形入力部21、規格化処理部22、反射点検出部23、波形処理部28、波形整列部29、射影移動処理部30、レベル調整部31、減算処理部32、波形積算部33は、例えばコンピュータのCPU(Central Processing Unit)に読み込まれて実行されるプログラムルーチンとして実現される。もちろん専用のハードウェアデバイスとして実現することもでき、例えば測定波形入力部21などは専用のインタフェース基板として実現することもできる。
【0038】
図5乃至図7は、図4の波形解析装置300により実行される処理手順を示すフローチャートである。図5において、まず波形解析装置300はインデックスiに0を代入して初期化し(ステップS1)、基準光λ0により得られたOTDR測定波形をOTDR装置100から取得する(ステップS2)。この波形データはメモリ内のDATA(i)領域(基準波形記億部26)に記憶される(ステップS3)。
【0039】
次に波形解析装置300は、インデックスiに1を代入したのち(ステップS4)、波長λ1〜λnの試験光により得られたOTDR測定波形をOTDR装置100から取得する。得られた測定波形データは波長ごとにメモリ内のDATA(i)領域に記憶される(ステップS5〜ステップS8のループ)。なおnは光スプリッタ2の分岐数すなわち分岐ファイバの本数である。
【0040】
次に、共通線路区間、すなわち光の重畳の生じる区間での後方散乱光の強度を比較する処理が開始される(ステップS6)。その際、区間ごとの特性に波長依存性が無いと見込むことができれば直ちに図6からの手順が開始されるが、波長依存性のある場合(ステップS10で「あり」)に備え、波形解析装置300は規格化処理部22において各波形データを規格化する(ステップS11)。規格化されたデータは規格化波形記憶部24に記憶され、処理手順は図6のステップS12に移る。
【0041】
図6において、波形解析装置300はiに1を代入する(ステップS12)。次に、反射点検出部23は波形データのピーク位置に基づいて反射点、すなわちFBG型光フィルタ10の位置を検出し、反射点記憶部25のP(i)に記憶する。このルーチンはiを1ずつインクリメントして全ての分岐ファイバごとに実施される(ステップS13〜S15のループ)。
【0042】
次に波形解析装置300は波形整列部29において、波長ごとの波形データDATA(i)をピーク位置順に、昇順で整列させる(ステップS16)。次に波形解析装置300は再度iに1を代入し(ステップS17)、各波長の波形データから基準波長λ0の波形データを減算し、その結果をメモリ内のM1(i)領域に保存する(ステップS18)。ステップS18で得られた減算波形M1(i)は折り返し波形であり、図1の距離L1から2L1までの区間、すなわちFBG型光フィルタ10の反射による二次光源の後方散乱光に対応する。
【0043】
ここまでの手順で、OTDR測定により得られた情報から、各分岐ファイバ3の単独での折り返し波形を復元することができる。折り返し波形を用いれば分岐ファイバの曲げ障害に関する知見を得ることができる。そこで、以下に実験例を交えつつ曲げ障害の検出について詳しく説明することとし、ステップS19以上の手順については後に引き続いて説明する。
【0044】
[実験の前提]
以下では光スターカプラ2の分岐数を8、分岐ファイバの線路長をそれぞれ0.8、1.1、1.5、2.0、2.6、2.9、3.2、および、4.0[km]とした。分岐ファイバ遠端にはそれぞれブラッグ波長が1641、1643、1645、1647、1649、1651、1653、および、1655[ナノメートル(nm)]のFBG型光フィルタ#1,#2,…,#8を設置した。これらの波長をこの順に、λ1、λ2、…、λ8とする。また、光スターカプラ2の上流側の区間、すなわち試験光の入射点から光スターカプラ2までの共通線路の長さを1.1kmとした。以上の構成のもとで各FBG型光フィルタのブラッグ波長に対応する試験光で光パルス試験を行い、各波長における試験波形を測定した。
【0045】
[第1の実験例]
第1の実験例では、第5番目に短い分岐ファイバ、すなわち反射波長が1649nmのFBGを設置した分岐ファイバの、光スプリッタ2から約1.6kmの位置に約2dBの損失を持つ曲げ障害を設定した。まず、光信号送信局STに設置した波長可変OTDR装置100から波長λ1、λ2、…、λ8の試験光パルスを順次入射し、波長ごとに時間に対する受光強度波形(OTDR波形)を測定した。
【0046】
図8は波長λ1、λ2、…、λ8に対するOTDR波形をまとめて示すグラフである。ただし図では光スターカプラ2の下流側の波形のみを示す。各波形において、FBG型光フィルタの設置位置に鋭い反射ピークが現れる。そして、ピーク以遠の区間において折り返し波形が現れていることがわかる。
【0047】
図9は、基準光λ0を入射した場合のOTDR波形を示すグラフである。ここでは波長λ0を1635nmとし、波長λ1、λ2、…、λ8のいずれとも異なるようにする。λ0はいずれのFBG型光フィルタによっても反射されないので、図8のような鋭い反射ピークは現れない。また、反射光の後方散乱光による折り返し波形も観測されない。なお図9の弱いピークはFBG型光フィルタ#1〜#8のサイドローブでの反射である。
【0048】
図10〜図17は、図6のステップS18の手順に従い、各波長λ1、λ2、…、λ8のOTDR波形から基準光λ0の波形を減算して得られた波形を示すグラフである。各図において細い実線はOTDR波形を、点線は基準波形を、太い実線はOTDR波形から基準波形を減算した結果を示す。
【0049】
図10〜図17の各グラフとも、FBG型光フィルタによる鋭い反射ピークを中心として対称位置に、単独での分岐ファイバにおける折り返し波形(他の分岐ファイバと重畳することのない反射光から生じた後方散乱光情報)が現れている。これらのグラフから、λ5の分岐ファイバ以外では損失の大きな変動は見られず、障害が発生していないと判断できる。
【0050】
次に、曲げ障害を設けたλ5の分岐ファイバの波形解析について説明する。対応する図14において、入射点からFBG型光フィルタ#5のピーク位置(1.1(共通線路区間長)+2.6(ファイバ長)=3.7km)までの範囲では、他の分岐ファイバの後方散乱光との重畳が生じる。よって次に示す非特許文献2の式(2)に示されるように、第5番目に短い分岐ファイバは他の分岐ファイバ(第1、2、3番目に長い分岐ファイバ)の後方散乱光情報と重なり合い、障害位置1.6km(横軸の距離座標で2.7km付近)の位置に正確な損失変動量を観測することができない。
【0051】
【数1】
また、折り返し領域(FBG型光フィルタ#5のピーク位置以降の区間)において、ピーク位置に対して対称な位置(距離座標で4.6km付近)に損失の変動が観測されてはいるが(細い実線)、この位置においても後方散乱光情報が重畳しているので曲げ損失を正確に評価することができない。
【0052】
これに対し、波形解析後の折り返し波形領域(太い実線)では、曲げ障害を設けた位置において明確な損失変動が現れていることが分かる。この損失変動量を評価したところ約2.1dBであり、曲げ損失を正確に評価できることが分かった。以上からこの実施形態の手法は、分岐ファイバの個別監視方法として有効であることが結論付けられる。
【0053】
[第2の実験例]
この実施形態ではOTDR波形の波長依存性に関して検討する。OTDR測定装置100から出力される試験光の出力パワーは波長依存性を持つことが多く、測定波形もそれを反映するものになる。
図18は、波長依存性を持つOTDR波形を示すグラフである。図18には第1の実験例と同じ条件で測定した波形を、波長λ5〜λ8の4波長のみ示す。#1−#8との表記は全ての試験光が8本の分岐ファイバの全てに入射することを示す。このグラフから明らかなように、波長ごとに後方散乱光の強度に差があり、波長依存性のあることがわかる。このデータをそのまま用いると減衰量を正確な評価できない場合があると考えられる。そこでこの実施形態では、規格化処理部22(図4)によって測定データを共通線路区間の強度で規格化して、規格化したデータに基づいて光強度の減衰を評価するようにする。
【0054】
図19は、図18の波形を規格化した波形を示すグラフである。規格化により各試験光波長での測定データのレベルが適切に調整される。図19のデータを用いて第1の実験例と同様の波形解析を行った。その結果、曲げ損失を与えていない分岐ファイバにおいては大きな損失の変動は見られず、障害が発生していないと判断可能であった。
【0055】
図20は、曲げ損失を与えたλ5の分岐ファイバのOTDR波形を規格化し、さらに基準波形を減算した結果を示すグラフである。第1の実験例と同様に、基準波形を減算しない波形(図19)では障害箇所(横軸で2.7km付近)に損失の大きな変動が見られない。これに対し図20では太い実線で示すように、FBG型光フィルタを中心とする折り返し波形に曲げ損失が明確に見られることがわかる。このグラフからも、障害の発生箇所として4.6km付近、および損失増加量として2.1dB程度と評価することができ、正確な数値を得られたと言える。以上から、OTDR波形を共通線路区間の強度で規格化することは、分岐ファイバの個別監視方法として有効であることが結論付けられる。
【0056】
[第2の実施形態]
第1の実施形態ではOTDR波形の折り返し部分を正確に抽出する手法につき説明した。しかしながら分岐ファイバが断線すると試験光がFBG型光フィルタに届かず、折り返し波形が現れない。この実施形態ではそのような状態にも対応可能で、しかも断線障害の位置を正確に検出することを可能とする波形解析手法につき説明する。まず原理を説明し、次に図6のステップS19以降の手順に戻って説明を続ける。
【0057】
[原理的説明]
図21は、この発明の第2の実施形態に関わる原理を説明するための図である。ここでは折り返し波形を処理して、折り返しでない波形と等価の波形を復元する手法につき説明する。図21(a1)は、図2の系において分岐ファイバF2が断線した状態を示す。図21(a1)、(b1)はこの状態の系にそれぞれλ1、λ3の試験光を入射した状態を示す。そのOTDR波形からそれぞれ基準波形(λ0)を減算して得た波形図が(a2)、(b2)である。いずれの波形にも折り返し波形が現れている。各グラフにおいて横軸は距離(線形目盛)、縦軸は後方散乱光強度(対数目盛)である。
【0058】
図21の(a2)、(b2)はそれぞれ分岐ファイバF1,F3の単独での(重畳成分を含まない)折り返し波形である。この波形を処理して、重畳のある区間での後方散乱光情報、すなわち折り返しでない波形を復元するための手順を次に説明する。
図21(a2)、(b2)の実線はFBG型光フィルタから光源へと向かう戻り光により生じた情報であり、光フィルタの位置(反射点)に対して対称性を持つ。よってこの波形を、反射点を中心として点対称に射影することで、光源からフィルタ方向に進む試験光による後方散乱光波形に戻すことができる(図21(a2)、(b2)の矢印を参照)。波形データは通常、縦軸を対数目盛り(光強度[dB])、横軸を線形目盛り(距離[m])でプロットされるので、上記の射影操作は、横軸が線形目盛り、縦軸が対数目盛りのグラフ上で点Pに対して波形データを点対称移動することに相当する。
【0059】
図22は、射影操作につき詳しく説明するための図である。射影操作は、横軸が線形目盛り、縦軸が対数目盛りのグラフ上で、或る点に対してデータを点対称移動することに相当する。図22(a)は横軸が線形目盛り、縦軸が対数目盛りのグラフであり、点P(L0、A0)を通る直線の関数形を例えば、F(x)=−kxとすると、区間(1)はA0+F(L−L0)=A0−k・(L−L0)と表される。この区間(1)を点P(L0、A0)に関して点対称移動すると区間(2)が算出され、その関数はA0−F(L0−L)=A0−k・(L−L0)になる。このような変換操作により点対称の移動がなされる。
【0060】
以上の操作は、横軸、縦軸ともに線形目盛りのグラフにおいては図22(b)に示すようになる。区間(3)の関数形を例えばf(x)=e−αxとし、この曲線が点p(L0、a0)を通るならば区間(3)はa0・f(L−L0)=a0・e−α(L−L0)と表される。この区間(3)を点p(L0、a0)に関して点対称移動すると区間(4)が算出され、その関数はa0/f(L0−L)=a0・e−α(L−L0)となる。すなわちこの変換は、曲線を表す関数をa0で除算して得られるf(x)の逆数を求めることに相当する。このように、横軸を線形目盛り、縦軸を対数目盛りとするグラフ上で、折り返し波形を反射点に関して点対称移動する変換処理を行うことにより、通常のOTDR装置側からフィルタへ進む試験光による後方散乱光波形に戻すことが可能である。
【0061】
さらに、FBG型フィルタではその反射減衰量にしたがって反射パルス強度が減衰するのでこの減衰量を加味し、点対称移動で復元した波形の強度レベルを損失分だけ嵩上げすることで補正を行う(図21(a2)、(b2)の上向き矢印)。この損失分は例えば一般的なFBG型フィルタの反射減衰量とし、その分を線形−対数グラフ上で上方に平行移動すればよい。すなわち、線形−線形グラフ上で上記変換処理後の波形にリニアで表したFBG型フィルタの反射減衰量(>1)に相当する定数を乗ずるようにする。
【0062】
以上のような一連の変換処理により、他の分岐ファイバとの重畳により単独の線路情報を知ることができない区間においても、分岐ファイバF1,F3の各単独での後方散乱光情報を復元することが可能である((図21(a3)、(b3)、および(c))。ここまでの情報が得られれば、系にλ2の試験光を入射して得た結果からλ1,λ3の後方散乱光情報を減算することで(図21(d))、断線を生じた分岐ファイバF2のOTDR波形のみを抽出することができる(図21(e))。
【0063】
図6のフローチャートのステップ19において、以上の補正処理がなされる。すなわちメモリ領域M1(i)に保存された波形を反射点に関して点対称に移動し、さらにFBG型光フィルタの反射減衰量を加算した波形をメモリM2(i)領域に保存する(ステップ19)。この処理はステップS18〜S21のループで全ての分岐ファイバにわたり繰り返される。その後、得られた各分岐ファイバの単独での後方散乱光情報がメモリM2(i)から読み出され、波形表示装置200に表示される(ステップS23〜S25のループ)。
【0064】
次に波形解析装置300は、例えば折り返し波形の有無に基づいて断線の有無を判定する(図7のステップS26)。断線がなければ処理はここで終了してよい(ステップS27)が、断線があればその経路番号(分岐ファイバの識別子)をkとし、波形解析装置300は変数Sumに0を代入し(ステップS29)、インデックスiに1を代入する(ステップS30)。次に波形解析装置300は、インデックスiをインクリメントしつつi=kになるまで、変数Sumに補正後の後方散乱光情報を足しこんでゆく(ステップS31〜S34のループ)。そうして、分岐ファイバkのOTDR波形データDATA(k)からSumの値を減算し、得られた結果をメモリ領域M4に保存したのち(ステップS35)、そのデータを波形表示装置200に表示する(ステップS36)。以上の波形処理手順により、断線障害等でFBG型光フィルタに試験パルスが到達しない場合でも分岐ファイバの状態を個別に識別することが可能になる。次に、断線障害に係わる第3の実験例につき説明する。
【0065】
[第3の実験例]
この実験例では、第3番目に短い線路すなわち反射波長がλ3(1645nm)のFBG型光フィルタを設置した分岐ファイバにおいて、光スプリッタから約0.5kmの位置に曲げによる完全放射の断線障害を与えた。この状態で試験光λ3を入射してもこの試験光はFBG型光フィルタ#3に到達できないので、OTDR波形で大きなピークが見られない。また、折り返し波形情報も得られないので第1、第2の実験例における波形解析手法をそのまま適用しても障害位置を特定することができない。しかしながら第2の実施形態の手順によればそれが可能になる。以下に解析の手順および結果を示す。
【0066】
図23は、断線障害のある状態で波長λ8の試験光を入射して得たOTDR波形から基準波形(λ0)を減算し、さらに分岐ファイバ#8の折り返し波形から分岐ファイバ#8単独での後方散乱光情報を復元した波形を示す。まず、基準波形を減算して得られた折り返し波形(λ8−λ0:図中太い実線)を、FBG型光フィルタ#8での反射点(P8)に関して点対称に移動する。さらにFBG型光フィルタ#8の反射減衰量分だけ、線形−対数グラフ上で上方に平行移動(線形−線形グラフでY軸に適切な定数を乗ずる)し、減衰量を補償する。このような処理により分岐ファイバ#8単独での後方散乱光情報#8′を復元した。同様に断線ファイバ#3以外の測定結果に対して波形処理を施し、それぞれの単独での後方散乱光情報を復元した。
【0067】
ここで、λ3を除くλ1からλ7までの6個の減算結果には、試験波長と一致しないブラッグ波長のFBG型光フィルタのサイドローブの影響によるわずかなピークが、折り返し波形領域に残る。例えば図24に示すように、試験光波長がλ7のOTDR波形にはFBG型光フィルタ#8のサイドローブからの反射のピークが現れる。このピーク区間Aでは後方散乱光情報が欠落するが、この区間の直前と直後の後方散乱光レベルの差が小さくOTDR装置100の後方散乱光レベルの変動量の範囲内であれば、障害が存在しないと判断できる。そこで、この区間AのOTDR波形を前後の波形から近似される指数関数で補間し、連結した波形を折り返し波形として使用した。補間した波形を図25に示す。
【0068】
このような手順でλ1,λ2,λ4,λ5,λ6,λ7,λ8の各試験光の後方散乱光波形を復元し、これらの総和を試験光λ3のOTDR波形から減算した。その結果を図26に示す。図26によれば図中点線(λ3′)で示すグラフには、光スプリッタから約0.5km(距離座標約1.6km)の位置で後方散乱光強度が急峻になくなり、この位置で断線していると判断することが可能である。この位置は破断障害を与えた箇所である。以上からこの実施形態は、分岐ファイバを個別監視する方法として有効であることが結論付けられる。
【0069】
[第3の実施形態]
この実施形態ではインサービス試験を可能とする形態につき説明する。試験光を入射すると、その試験光の波長を反射しないFBG型光フィルタよりも下流のユーザ宅にまで試験光が入射してしまう。よって通信に不要な試験光がONU12に混入するので光線路監視試験中は通信できないことになる。これを避けるために光フィルタ11を設けて不要な波長を遮断するようにする。また、光信号送信局ST側に設けた光カプラ15により、通信光(例えば波長1.49μm)に試験光を合波するようにする。
【0070】
光フィルタ11には、誘電体多層膜型の広帯域光フィルタを用いることができる。誘電体多層膜は屈折率の異なる薄い膜を数十〜数百層も石英ガラスなどに積層した多層膜構造をなし、光ファイバ、光導波路、あるいは光コネクタ部分に特定の角度で挿入することにより特定の波長のみをクラッドに反射させ、透過・遮断波長帯域や遮断波長の反射量を調節することができる。
【0071】
図27は光フィルタ11の光学特性の一例を示す図である。1.61μm〜1.62μmの範囲では透過損失を1.0dB以下とし、1.62〜1.63μmの帯域で透過損失が徐々に増加し、波長1.635μm以上の試験光に対しては約40dBの遮断量を持たせるようにする。なお試験光の反射減衰量は、誘電体多層膜フィルタの挿入角度の調整により40dB以上にすることも可能である。
【0072】
以上のような光学特性を持つ光フィルタをONU12とFBG型光フィルタ10との間に設置することにより、ユーザ宅への試験光の入射を遮断することができ、従ってインサービスでの試験を実施することができる。なお試験光の波長はほぼ1.64μm〜1.65μmの幅内に収め、このうち最短の波長に基準光λ0を割り当てることができる。
【0073】
[第4の実施形態]
図28は基準光λ0の波長の他の割り当ての例を示す図である。種々の検討の結果、被試験ファイバの光学特性は試験光波長領域で僅かながら波長依存性を示すことがわかった。そこでこの実施形態では波長依存性の影響を最小限に抑えるべく、試験光の帯域の中心波長近傍で、かつ割り当て波長と異なる波長範囲に基準光λ0の波長を割り当てるようにした。すなわち、波長λ4(波長1647nm)およびλ5(波長1649nm)の間に、これらの波長と異なる波長1648nmを、基準光の波長λ0とする。この波長のλ0を用いた試験結果からFBG型光フィルタのサイドローブの影響による、反射光の後方散乱光による折り返し波形は発生しないことが確認できた。
【0074】
この波長の試験光λ0を用いて測定した基準波形を、第1、第2の実施形態での手順に即し、λ1〜λ8を入射して得られた各OTDR波形からそれぞれ減算した。その結果、分岐ファイバλ5以外の、曲げ損失による障害の無い分岐ファイバでの波形からは大きな損失変動は見られず、障害が発生していないと判断可能であった。
【0075】
さらに、曲げ障害を設けた分岐ファイバλ5での波形解析処理の結果を、図29に示す。図29によれば、波形解析後の折り返し波形領域において、FBG型光フィルタ#5に対して対称な位置4.6km付近に損失変動が明確に現れ、約2.05dBの曲げ損失として検出できる。この位置は曲げ障害を設けた位置に相当する。いずれの値も正確な値として評価でき、以上からこの実施形態の手法は、分岐ファイバの個別監視方法として有効であることが結論付けられる。
【0076】
[第5の実施形態]
最後に、基準光λ0の配置により通信波長帯域を拡大できることを説明する。図30(図27)では試験光帯域λ1〜λ8よりも外部に基準光波長λ0を配置した。これに対し図31(図28)では、試験光帯域λ1〜λ8の中央に波長λ0を配置する。これにより図30の21nmに比べ、図31では15nmと、試験光の帯域を狭帯域化することができる。
【0077】
図31に示す特性の誘電体多層膜フィルタを光フィルタ11として用いれば、試験光波長の帯域を狭くできた分、フィルタ特性を長波長方向にシフトすることができる。これにより通信光波長帯を拡大し、同様の線路試験を実施することが可能になる。さらに、光フィルタ11の遮断特性を緩やかな特性とすることができるので、その分、コストも抑えられる。さらに、誘電体多層膜型に限らず他の形式の光フィルタも適用することができる。
【0078】
以上述べたようにこの発明の実施形態によれば、λ1,λ2,…,λnの波長の試験光によりOTDR波形を各波長ごとに得て、さらに、これらのいずれとも異なる基準光λ0のOTDR波形を得る。そして各波長のOTDR波形から基準光λ0のOTDR波形を減算することにより、各分岐ファイバ10の単独での折り返し波形を得る。さらに、この折り返し波形を反射点Tに対して点対称に射影したのち、FBG型光フィルタによる反射減衰量を補正することにより、各分岐ファイバ単独での後方散乱光情報を復元するようにしている。
【0079】
従ってこの実施形態によれば、各分岐ファイバの個別の後方散乱光情報を算出できるので、光スプリッタの下流における既設の光スターカプラ、分岐ファイバの置き換え無しで各分岐ファイバの個別監視が可能となる。よって低コスト化を促せるほか、正常時の測定OTDR波形情報を保存しておく必要がなくなり、データベース管理との煩雑な連携作業なく大規模なシステムなしで短時間に試験を行うことが可能となる。さらに波形解析処理において、他の分岐ファイバとの重畳の無いOTDRレベル(FBG型光フィルタの直前に現れる)にレベル補正を施すので、より正確なデータを得ることができる。さらには、そしてFBG型光フィルタとONU12(ユーザ設備)との間に光フィルタ11を設けることでインサービス試験も可能となる。さらに、試験光波長と基準光波長との配置を工夫することにより通信帯域を拡大することも可能になる。これらのことから、光スプリッタ下流側における個別の分岐ファイバの線路特性を、低コストで精密に測定することが可能になる。
【0080】
なお、この発明は上記実施形態そのままに限定されるものではない。例えば図6のフローチャートのステップS16において、波長ごとの波形データDATA(i)をピーク位置順に昇順で整列するようにした。これはいわば表示の見やすさなどのための便宜的な処理であり、ステップS16の手順は必ずしも必要でない。ステップS16を実施しなくても良ければ、図4の反射点検出部23からのデータは波形処理部28に直接渡される。また実施形態では、曲げ障害の有無を、折り返し波形を用いて判定するようにしたが、折り返し波形を点対称に射影して得た波形(折り返し出ない波形と等価の波形:後方散乱光情報)を用いても、もちろん曲げ障害の有無を判定できる。
またこの発明は、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0081】
また、実施形態に記載した手法は、計算機(コンピュータ)に実行させることができるプログラム(ソフトウェア手段)として、例えば磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD−ROM、DVD、MO等)、半導体メモリ(ROM、RAM、フラッシュメモリ等)等の記録媒体に格納し、また通信媒体により伝送して頒布することもできる。なお、媒体側に格納されるプログラムには、計算機に実行させるソフトウェア手段(実行プログラムのみならずテーブルやデータ構造も含む)を計算機内に構成させる設定プログラムをも含む。本装置を実現する計算機は、記録媒体に記録されたプログラムを読み込み、また場合により設定プログラムによりソフトウェア手段を構築し、このソフトウェア手段によって動作が制御されることにより上述した処理を実行する。なお、本明細書でいう記録媒体は、頒布用に限らず、計算機内部あるいはネットワークを介して接続される機器に設けられた磁気ディスクや半導体メモリ等の記憶媒体を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】この発明に関わる光線路特性の解析方法を適用可能な光分岐ファイバ(PON)システムの一例を示す図。
【図2】この発明に係わる解析方法の第1の実施形態に関わる原理を説明するための図。
【図3】この発明に係わる解析方法を適用可能な光伝送システムの一例を示すシステム図。
【図4】図3の波形解析装置300の実施の形態を示す機能ブロック図。
【図5】図4の波形解析装置300により実行される処理手順を示すフローチャート。
【図6】図4の波形解析装置300により実行される処理手順を示すフローチャート。
【図7】図4の波形解析装置300により実行される処理手順を示すフローチャート。
【図8】波長λ1、λ2、…、λ8に対するOTDR波形をまとめて示すグラフ。
【図9】基準光λ0を入射した場合のOTDR波形を示すグラフ。
【図10】波長λ1のOTDR波形から基準光λ0の波形を減算して得られた波形を示すグラフ。
【図11】波長λ2のOTDR波形から基準光λ0の波形を減算して得られた波形を示すグラフ。
【図12】波長λ3のOTDR波形から基準光λ0の波形を減算して得られた波形を示すグラフ。
【図13】波長λ4のOTDR波形から基準光λ0の波形を減算して得られた波形を示すグラフ。
【図14】波長λ5のOTDR波形から基準光λ0の波形を減算して得られた波形を示すグラフ。
【図15】波長λ6のOTDR波形から基準光λ0の波形を減算して得られた波形を示すグラフ。
【図16】波長λ7のOTDR波形から基準光λ0の波形を減算して得られた波形を示すグラフ。
【図17】波長λ8のOTDR波形から基準光λ0の波形を減算して得られた波形を示すグラフ。
【図18】波長依存性を持つOTDR波形を示すグラフ。
【図19】図18の波形を規格化した波形を示すグラフ。
【図20】曲げ損失を与えたλ5の分岐ファイバのOTDR波形を規格化し、さらに波形処理した結果を示すグラフ。
【図21】この発明の第2の実施形態に関わる原理を説明するための図。
【図22】射影操作につき詳しく説明するための図。
【図23】断線障害のある状態で波長λ8の試験光を入射して得たOTDR波形から基準波形を減算し、分岐ファイバ#8単独での後方散乱光情報を復元した波形を示す図。
【図24】FBG型光フィルタのサイドローブ反射によるピーク波形の一例を示す図。
【図25】図24のグラフのピーク区間を補間した波形を示す図。
【図26】λ1,λ2,λ4,λ5,λ6,λ7,λ8の後方散乱光波形を試験光λ3のOTDR波形から減算した結果を示す図。
【図27】光フィルタ11の光学特性および基準光λ0の波長割り当ての一例を示す図。
【図28】基準光λ0の波長割り当ての他の例を示す図。
【図29】第3の実施形態における分岐ファイバλ5での波形解析処理の結果を示す図。
【図30】光フィルタ11の光学特性および基準光λ0の波長割り当ての一例を示す図。
【図31】基準光λ0の波長割り当てにより通信波長帯域を拡大できることを示す図。
【符号の説明】
【0083】
1…光ファイバ線路、2…光スプリッタ、3…分岐ファイバ、10…FBG型光フィルタ、11…光フィルタ、ST…光信号送信局、12…ONU(宅内装置)、13…OLT、14…光線路、15…光カプラ、100…OTDR装置、200…波形表示装置、300…波形解析装置、21…測定波形入力部、22…規格化処理部、23…反射点検出部、24…規格化波形記憶部、25…反射点記憶部、26…基準波形記億部、27…波形記憶部、28…波形処理部、29…波形整列部、30…射影移動処理部、31…レベル調整部、32…減算処理部、33…波形積算部、34…積算波形記億部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバを第1乃至第nの分岐ファイバに分岐する光スプリッタと、前記第1乃至第nの分岐ファイバの遠端に個別に接続され互いに異なる波長λ1,λ2,…,λnの光を個別に反射しそれ以外の波長の光を透過させる第1乃至第nの反射型光フィルタとを備える光分岐線路システムに用いられる光線路特性の解析方法において、
λ1,λ2,…,λnの波長の試験光を前記光ファイバに入射して前記試験光の後方散乱光の距離に対する強度分布波形Di(1≦i≦n)を各波長ごとに測定する測定ステップと、
λ1,λ2,…,λnのいずれとも異なる波長λ0の基準光を前記光ファイバに入射してこの基準光の後方散乱光の距離に対する強度分布波形D0を測定する基準波形取得ステップと、
強度分布波形Diから強度分布波形D0を減算して反射型光フィルタ以遠の折り返し波形を前記分岐ファイバごとに算出する算出ステップと、
前記折り返し波形を用いて線路特性を前記分岐ファイバごとに解析する解析ステップとを具備することを特徴とする光線路特性の解析方法。
【請求項2】
さらに、
第iの反射型光フィルタ以遠の折り返し波形を、横軸を線形目盛り、縦軸を対数目盛りとするグラフ上で当該第iの反射型光フィルタの位置に対して点対称に射影する射影ステップと、
前記射影した折り返し波形を補正して第iの分岐ファイバにおける後方散乱光情報を復元する復元ステップとを具備し、
前記解析ステップにおいて、前記後方散乱光情報を用いて前記線路特性を前記分岐ファイバごとに解析することを特徴とする請求項1に記載の光線路特性の解析方法。
【請求項3】
前記復元ステップにおいて、
前記第iの反射型光フィルタの位置に対して点対称に射影した折り返し波形にこの第iの反射型光フィルタの反射減衰量を前記グラフ上で加算して、当該折り返し波形を補正することを特徴とする請求項2に記載の光線路特性の解析方法。
【請求項4】
さらに、
前記折り返し波形における不連続ピークの前後におけるレベル差が前記試験光の後方散乱光レベルの変動量よりも小さければ、この不連続ピークの区間をその前後の波形から近似される関数で補間する補間ステップを具備することを特徴とする請求項2に記載の光線路特性の解析方法。
【請求項5】
さらに、
前記試験光の入射点と前記光スプリッタとの間の区間における後方散乱光の強度を基準として前記強度分布波形Diおよび強度分布波形D0を規格化する規格化ステップを具備し、
前記算出ステップにおいて、前記規格化ステップにおいて規格化された強度分布波形Diおよび強度分布波形D0を用いて前記折り返し波形を算出することを特徴とする請求項1に記載の光線路特性の解析方法。
【請求項6】
前記解析ステップにおいて、前記折り返し波形の損失変動量に基づいて曲げ障害の有無を前記分岐ファイバごとに解析することを特徴とする請求項1に記載の光線路特性の解析方法。
【請求項7】
前記解析ステップにおいて、前記後方散乱光情報の損失変動量に基づいて曲げ障害の有無を前記分岐ファイバごとに解析することを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の光線路特性の解析方法。
【請求項8】
前記解析ステップにおいて、第i(1≦i≦n)の分岐ファイバにおける後方散乱光情報からその他の分岐ファイバの後方散乱光情報の総和を減算した結果に基づいて当該第iの分岐ファイバにおける断線障害の有無を解析することを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の光線路特性の解析方法。
【請求項9】
前記反射型光フィルタとユーザ設備との間に、前記試験光および前記基準光を遮断する光フィルタを設けることを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載の光線路特性の解析方法。
【請求項10】
前記試験光の波長λ1,λ2,…,λnにより占有される帯域の中央に前記基準光波長λ0を割り当てることを特徴とする請求項9に記載の光線路特性の解析方法。
【請求項11】
光ファイバを第1乃至第nの分岐ファイバに分岐する光スプリッタと、前記第1乃至第nの分岐ファイバの遠端に個別に接続され互いに異なる波長λ1,λ2,…,λnの光を個別に反射しそれ以外の波長の光を透過させる第1乃至第nの反射型光フィルタとを備える光分岐線路システムに用いられる光線路特性の解析装置において、
λ1,λ2,…,λnの波長の試験光を前記光ファイバに入射して測定される前記試験光の後方散乱光の距離に対する強度分布波形Di(1≦i≦n)から、λ1,λ2,…,λnのいずれとも異なる波長λ0の基準光を前記光ファイバに入射して測定されるこの基準光の後方散乱光の距離に対する強度分布波形D0を減算して、第1乃至第nの分岐ファイバごとに反射型光フィルタ以遠の折り返し波形を算出する算出手段と、
前記折り返し波形を用いて線路特性を前記分岐ファイバごとに解析する解析手段とを具備することを特徴とする光線路特性の解析装置。
【請求項12】
さらに、
第iの反射型光フィルタ以遠の折り返し波形を、横軸を線形目盛り、縦軸を対数目盛りとするグラフ上で当該第iの反射型光フィルタの位置に対して点対称に射影する射影手段と、
前記射影した折り返し波形を補正して第iの分岐ファイバにおける後方散乱光情報を復元する復元手段とを具備し、
前記解析手段は、前記後方散乱光情報を用いて前記線路特性を前記分岐ファイバごとに解析することを特徴とする請求項11に記載の光線路特性の解析装置。
【請求項13】
前記光分岐線路システムは、さらに、前記反射型光フィルタとユーザ設備との間に設けられ前記試験光および前記基準光を遮断する光フィルタを具備し、
前記試験光の波長λ1,λ2,…,λnにより占有される帯域の中央に前記基準光波長λ0を割り当てることを特徴とする請求項11および請求項12のいずれか1項に記載の光線路特性の解析装置。
【請求項14】
光ファイバを第1乃至第nの分岐ファイバに分岐する光スプリッタと前記第1乃至第nの分岐ファイバの遠端に個別に接続され互いに異なる波長λ1,λ2,…,λnの光を個別に反射しそれ以外の波長の光を透過させる第1乃至第nの反射型光フィルタとを備える光分岐線路システムに用いられるコンピュータに読み込まれるプログラムであって、
前記コンピュータに、
λ1,λ2,…,λnの波長の試験光を前記光ファイバに入射して前記試験光の後方散乱光の距離に対する強度分布波形Di(1≦i≦n)を各波長ごとに測定する処理を実行させる命令と、
λ1,λ2,…,λnのいずれとも異なる波長λ0の基準光を前記光ファイバに入射してこの基準光の後方散乱光の距離に対する強度分布波形D0を測定する処理を実行させる命令と、
強度分布波形Diから強度分布波形D0を減算して第1乃至第nの分岐ファイバごとに反射型光フィルタ以遠の折り返し波形を算出する処理を実行させる命令と、
前記折り返し波形を用いて線路特性を前記分岐ファイバごとに解析する処理を実行させる命令とを含むことを特徴とするプログラム。
【請求項1】
光ファイバを第1乃至第nの分岐ファイバに分岐する光スプリッタと、前記第1乃至第nの分岐ファイバの遠端に個別に接続され互いに異なる波長λ1,λ2,…,λnの光を個別に反射しそれ以外の波長の光を透過させる第1乃至第nの反射型光フィルタとを備える光分岐線路システムに用いられる光線路特性の解析方法において、
λ1,λ2,…,λnの波長の試験光を前記光ファイバに入射して前記試験光の後方散乱光の距離に対する強度分布波形Di(1≦i≦n)を各波長ごとに測定する測定ステップと、
λ1,λ2,…,λnのいずれとも異なる波長λ0の基準光を前記光ファイバに入射してこの基準光の後方散乱光の距離に対する強度分布波形D0を測定する基準波形取得ステップと、
強度分布波形Diから強度分布波形D0を減算して反射型光フィルタ以遠の折り返し波形を前記分岐ファイバごとに算出する算出ステップと、
前記折り返し波形を用いて線路特性を前記分岐ファイバごとに解析する解析ステップとを具備することを特徴とする光線路特性の解析方法。
【請求項2】
さらに、
第iの反射型光フィルタ以遠の折り返し波形を、横軸を線形目盛り、縦軸を対数目盛りとするグラフ上で当該第iの反射型光フィルタの位置に対して点対称に射影する射影ステップと、
前記射影した折り返し波形を補正して第iの分岐ファイバにおける後方散乱光情報を復元する復元ステップとを具備し、
前記解析ステップにおいて、前記後方散乱光情報を用いて前記線路特性を前記分岐ファイバごとに解析することを特徴とする請求項1に記載の光線路特性の解析方法。
【請求項3】
前記復元ステップにおいて、
前記第iの反射型光フィルタの位置に対して点対称に射影した折り返し波形にこの第iの反射型光フィルタの反射減衰量を前記グラフ上で加算して、当該折り返し波形を補正することを特徴とする請求項2に記載の光線路特性の解析方法。
【請求項4】
さらに、
前記折り返し波形における不連続ピークの前後におけるレベル差が前記試験光の後方散乱光レベルの変動量よりも小さければ、この不連続ピークの区間をその前後の波形から近似される関数で補間する補間ステップを具備することを特徴とする請求項2に記載の光線路特性の解析方法。
【請求項5】
さらに、
前記試験光の入射点と前記光スプリッタとの間の区間における後方散乱光の強度を基準として前記強度分布波形Diおよび強度分布波形D0を規格化する規格化ステップを具備し、
前記算出ステップにおいて、前記規格化ステップにおいて規格化された強度分布波形Diおよび強度分布波形D0を用いて前記折り返し波形を算出することを特徴とする請求項1に記載の光線路特性の解析方法。
【請求項6】
前記解析ステップにおいて、前記折り返し波形の損失変動量に基づいて曲げ障害の有無を前記分岐ファイバごとに解析することを特徴とする請求項1に記載の光線路特性の解析方法。
【請求項7】
前記解析ステップにおいて、前記後方散乱光情報の損失変動量に基づいて曲げ障害の有無を前記分岐ファイバごとに解析することを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の光線路特性の解析方法。
【請求項8】
前記解析ステップにおいて、第i(1≦i≦n)の分岐ファイバにおける後方散乱光情報からその他の分岐ファイバの後方散乱光情報の総和を減算した結果に基づいて当該第iの分岐ファイバにおける断線障害の有無を解析することを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の光線路特性の解析方法。
【請求項9】
前記反射型光フィルタとユーザ設備との間に、前記試験光および前記基準光を遮断する光フィルタを設けることを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載の光線路特性の解析方法。
【請求項10】
前記試験光の波長λ1,λ2,…,λnにより占有される帯域の中央に前記基準光波長λ0を割り当てることを特徴とする請求項9に記載の光線路特性の解析方法。
【請求項11】
光ファイバを第1乃至第nの分岐ファイバに分岐する光スプリッタと、前記第1乃至第nの分岐ファイバの遠端に個別に接続され互いに異なる波長λ1,λ2,…,λnの光を個別に反射しそれ以外の波長の光を透過させる第1乃至第nの反射型光フィルタとを備える光分岐線路システムに用いられる光線路特性の解析装置において、
λ1,λ2,…,λnの波長の試験光を前記光ファイバに入射して測定される前記試験光の後方散乱光の距離に対する強度分布波形Di(1≦i≦n)から、λ1,λ2,…,λnのいずれとも異なる波長λ0の基準光を前記光ファイバに入射して測定されるこの基準光の後方散乱光の距離に対する強度分布波形D0を減算して、第1乃至第nの分岐ファイバごとに反射型光フィルタ以遠の折り返し波形を算出する算出手段と、
前記折り返し波形を用いて線路特性を前記分岐ファイバごとに解析する解析手段とを具備することを特徴とする光線路特性の解析装置。
【請求項12】
さらに、
第iの反射型光フィルタ以遠の折り返し波形を、横軸を線形目盛り、縦軸を対数目盛りとするグラフ上で当該第iの反射型光フィルタの位置に対して点対称に射影する射影手段と、
前記射影した折り返し波形を補正して第iの分岐ファイバにおける後方散乱光情報を復元する復元手段とを具備し、
前記解析手段は、前記後方散乱光情報を用いて前記線路特性を前記分岐ファイバごとに解析することを特徴とする請求項11に記載の光線路特性の解析装置。
【請求項13】
前記光分岐線路システムは、さらに、前記反射型光フィルタとユーザ設備との間に設けられ前記試験光および前記基準光を遮断する光フィルタを具備し、
前記試験光の波長λ1,λ2,…,λnにより占有される帯域の中央に前記基準光波長λ0を割り当てることを特徴とする請求項11および請求項12のいずれか1項に記載の光線路特性の解析装置。
【請求項14】
光ファイバを第1乃至第nの分岐ファイバに分岐する光スプリッタと前記第1乃至第nの分岐ファイバの遠端に個別に接続され互いに異なる波長λ1,λ2,…,λnの光を個別に反射しそれ以外の波長の光を透過させる第1乃至第nの反射型光フィルタとを備える光分岐線路システムに用いられるコンピュータに読み込まれるプログラムであって、
前記コンピュータに、
λ1,λ2,…,λnの波長の試験光を前記光ファイバに入射して前記試験光の後方散乱光の距離に対する強度分布波形Di(1≦i≦n)を各波長ごとに測定する処理を実行させる命令と、
λ1,λ2,…,λnのいずれとも異なる波長λ0の基準光を前記光ファイバに入射してこの基準光の後方散乱光の距離に対する強度分布波形D0を測定する処理を実行させる命令と、
強度分布波形Diから強度分布波形D0を減算して第1乃至第nの分岐ファイバごとに反射型光フィルタ以遠の折り返し波形を算出する処理を実行させる命令と、
前記折り返し波形を用いて線路特性を前記分岐ファイバごとに解析する処理を実行させる命令とを含むことを特徴とするプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【公開番号】特開2010−38882(P2010−38882A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−205757(P2008−205757)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]