説明

光触媒装置

【課題】光触媒として窒化物半導体を用いた、高効率でエネルギー発生可能な光触媒装置を提供する。
【解決手段】窒化物半導体からなる光触媒機能層と、光触媒機能層の表面上に配置された金属酸化膜、金属窒化膜及び金属酸窒化膜のいずれかからなる薄膜とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物半導体を用いた光触媒装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光を照射することにより触媒作用を示す光触媒を利用して、例えば水を電気分解して水素ガスなどのエネルギーを得ることができる。また、有害物質や有機物の分解にも光触媒は利用される。
【0003】
光触媒として窒化物半導体を用いた光触媒装置の研究が進められている(例えば特許文献1参照。)。例えば、窒化ガリウムは、酸化チタンに比べて光触媒活性が大きく、高効率で、耐熱性、耐久性、耐ガス性、耐溶剤性が高い光触媒である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2006/082801号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
窒化物半導体による光触媒の研究は初期段階であり、実用化のためには効率を向上させる必要がある。本発明は、光触媒として窒化物半導体を用いた、高効率なエネルギー発生が可能な光触媒装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、窒化物半導体からなる光触媒機能層と、光触媒機能層の表面上に配置された、金属酸化膜、金属窒化膜及び金属酸窒化膜のいずれかからなる薄膜とを備える光触媒装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、光触媒として窒化物半導体を用いた、高効率でエネルギー発生可能な光触媒装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係る光触媒装置の構成を示す模式的な断面図である。
【図2】光触媒機能を説明するための模式図である。
【図3】本発明の実施形態に係る光触媒装置の機能を説明するための模式図であり、図3(a)は光触媒機能層の表面上に薄膜を配置しない場合、図3(b)は光触媒機能層の表面上に薄膜を配置した場合を示す。
【図4】本発明の実施形態に係る光触媒装置の機能を説明するための他の模式図であり、図4(a)は光触媒機能層の表面上に薄膜を配置しない場合、図4(b)は光触媒機能層の表面上に薄膜を配置した場合を示す。
【図5】本発明の実施形態に係る光触媒装置を用いて水を電気分解する装置の例を示す模式図である。
【図6】本発明の実施形態に係る光触媒装置を用いて水を電気分解する装置の他の例を示す模式図である。
【図7】本発明の実施形態の変形例に係る光触媒装置の構成を示す模式的な断面図である。
【図8】本発明のその他の実施形態に係る光触媒装置の構成を示す模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0010】
又、以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施形態は、構成部品の材質、形状、構造、配置などを下記のものに特定するものでない。この発明の実施形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0011】
本発明の実施形態に係る光触媒装置10は、図1に示すように、窒化物半導体からなる光触媒機能層14と、光触媒機能層14の表面141上に配置された、金属酸化膜、金属窒化膜及び金属酸窒化膜のいずれかからなる薄膜15とを備える。光触媒機能層14は、AlxInyGa1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)で表される窒化物半導体である。
【0012】
薄膜15を構成する金属は、イオン化率が高い金属が好ましく、例えば、セシウム(Cs)、ハフニウム(Hf)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)及びインジウム(In)のいずれか又はこれらの合金である。例えば薄膜15は、Ta、Sc、又はRhと酸素(O)の組み合わせ、或いはTaとMoと酸素の組み合わせ、Csと酸素と窒素の組み合わせで構成される。
【0013】
図1に示した例では、光触媒装置10は、半導体基板11と、半導体基板11上に配置されたバッファ層12、及びバッファ層12上に配置された窒化物半導体層13を更に備え、窒化物半導体層13上に光触媒機能層14が配置されている。
【0014】
ここで、図2を参照して光触媒機能について説明する。図2は、窒化物半導体にバンドギャップエネルギー以上のエネルギーを有する照射光Lを照射した状態を表す模式図である。この場合、窒化物半導体の価電子帯から伝導帯に電子が励起されて、伝導体に電子が、価電子帯に正孔(ホール)が発生する。窒化物半導体内から表面に移動した電子が外部の物質に移動すると還元反応が行われ、正孔が外部の物質に移動すると酸化反応が行われる。これらの酸化還元反応によって、水の電気分解や有機物の分解反応が可能である。
【0015】
光触媒装置10に光触媒として使用される窒化物半導体は、光触媒活性が大きく、高効率で、耐熱性、耐久性、耐ガス性、耐溶剤性が高い光触媒である。また、光触媒として窒化物半導体を使用することにより、照射光Lの波長を長くすることができる。例えば酸化チタン膜を光触媒として使用すると、照射光Lとして紫外線を使用する必要がある。しかし、図1に示した光触媒装置10では、照射光Lに可視光を使用することができる。
【0016】
窒化物半導体を用いた光触媒の実用化に向けて重要な点は、酸化還元反応の効率を向上することである。具体的には、(1)窒化物半導体が光を効率よく吸収する、(2)窒化物半導体内部又は表面における電子と正孔の再結合を抑制する、(3)窒化物半導体表面における電子及び正孔の反応を起こしやすくする、などによって、酸化還元反応の効率は向上する。図1に示した光触媒装置10では、上記(3)に関して、酸化還元反応の効率が向上する。以下に、光触媒装置10の詳細について説明する。
【0017】
図3(a)及び図3(b)に示すように、光触媒機能層14の表面141上に薄膜15を配置することによって、表面141上で発生する表面準位電荷によるポテンシャル障壁Viの高さが低くなる。図3(a)は表面141上に薄膜15を配置しない場合、図3(b)は表面141上に薄膜15を配置した場合を示す。
【0018】
更に、図4(a)及び図4(b)に示すように、光触媒機能層14の表面141上に薄膜15を配置することによって、光触媒機能層14の表面141又は外部におけるポテンシャル障壁Vxの高さが低くなり、光触媒機能層14内部のポテンシャルとの差を改善することができる。なお、説明を分かりやすくするために図3と図4に分けてポテンシャルの変化を示したが、ポテンシャル障壁Vi及びポテンシャル障壁Vxの変化は同時に起こっている。
【0019】
上記のように、光触媒機能層14の表面141上に薄膜15を配置することによって、ポテンシャル障壁Vi及びポテンシャル障壁Vxの高さが低くなり、電子及び正孔が光触媒機能層14の表面141に移動する確率が高くなる。その結果、図1に示した光触媒装置10では、触媒反応の効率が向上する。
【0020】
なお、表面141を粗面にするなど、光触媒機能層14の表面積を増やすことも、触媒反応を促進するために有効である。例えば、凹凸が形成されるように表面141をエッチング加工してもよい。
【0021】
薄膜15の膜厚は、バルクではなく薄膜としての特性を薄膜15に持たせるために、50nm以下である。好ましくは20nm以下であり、更に好ましくは2nm以下である。薄膜15は、例えばスパッタ法や蒸着法などによって形成される。また、薄膜15側から照射光Lを光触媒装置10に照射する場合には、膜厚が薄いほど、薄膜15を透過して光触媒機能層14に照射される照射光Lの光量が大きい。このため、薄膜15の膜厚は薄いほどよい。
【0022】
光触媒機能を発揮させるために、光触媒機能層14に導電型不純物が拡散されている。例えば、光触媒機能層14をp型半導体にするためにp型不純物としてマグネシウム(Mg)イオンが拡散され、光触媒機能層14をn型半導体にするためにシリコン(Si)イオンが拡散される。不純物濃度は、1×1017cm-3程度である。不純物濃度を高くすることによって照射光Lの波長をより長くすることが可能である。しかし、不純物濃度が高くなると結晶性が低下するという問題があり、使用される照射光Lの波長と光触媒として使用可能な結晶性とを考慮して、光触媒機能層14の不純物濃度は決定される。
【0023】
図1に示した光触媒装置10では、光触媒機能層14よりも不純物濃度が低い、或いはノンドープの窒化物半導体層13上に光触媒機能層14が配置される。これにより、結晶性のよい窒化物半導体からなる窒化物半導体層13を実現できる。窒化物半導体層13も、光触媒機能層14と同様に、AlxInyGa1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)で表される窒化物半導体からなる。
【0024】
窒化物半導体層13、及び光触媒機能層14は、例えば有機金属気相成長(MOCVD)法などにより形成される。
【0025】
図1のバッファ層12は1つの層として図示されているが、バッファ層12を複数の層で形成してもよい。例えば、バッファ層12を窒化アルミニウム(AlN)からなる第1のサブレイヤー(第1の副層)と窒化ガリウム(GaN)からなる第2のサブレイヤー(第2の副層)とを交互に積層した多層構造バッファとしてもよい。なお、バッファ層12は光触媒装置10の機能に直接には関係しないため、バッファ層12を省いてもよい。
【0026】
半導体基板11には、例えばサファイア基板やシリコン基板が採用可能である。例えば、半導体基板11に安価なシリコン基板を採用した場合に、半導体基板11と窒化物半導体層13間にバッファ層12を配置することにより、結晶性の向上や欠陥発生の抑制を図れる。
【0027】
光触媒装置10で光触媒反応を起こさせる場合、照射光Lを薄膜15側から光触媒装置10に照射することが好ましい。これは、触媒反応が生じる表面141とは逆の方向、即ち、半導体基板11側から照射光Lを光触媒装置10に照射する場合には、半導体基板11やバッファ層12、窒化物半導体層13によって照射光Lが吸収され、光触媒機能層14の表面141に到達する照射光Lの光量が減少してしまうからである。
【0028】
したがって、半導体基板11側から照射光Lを光触媒装置10に照射する場合は、半導体基板11、バッファ層12及び窒化物半導体層13によって照射光Lが吸収されない構成にすることが好ましい。例えば、半導体基板11に、照射光Lに対して透明な、光透過性を有する基板を採用する。具体的には、サファイア基板などが半導体基板11に採用可能である。また、照射光Lが光触媒機能層14に達するまでに通過する窒化物半導体領域、即ちバッファ層12及び窒化物半導体層13には、光触媒機能層14よりもバンドギャップエネルギーが大きい窒化物半導体層を採用する。これらの対策により、半導体基板11側から照射光Lを光触媒装置10に照射する場合においても、光触媒装置10の効率の低下を抑制できる。
【0029】
また、窒化物半導体は分極特性を有するので、分極により発生する電界を積極的に利用することにより、キャリアの移動を補助することができる。例えば、窒化物半導体の自発分極は[0001]方向に発生するため、発生電子は[000−1]方向にドリフトされ、発生正孔は[0001]方向にドリフトされる。また圧電分極では、引張応力により[0001]方向に発生し、圧縮応力では[000−1]方向に発生する。
【0030】
光触媒機能層14の格子定数Aと下地層(バッファ層12及び窒化物半導体層13)の平均格子定数Bとが、A>Bであるように設計することにより、光触媒機能層14に圧縮応力を加えることができる。例えば、光触媒機能層14を膜厚0.5μmのGaN膜とし、下地層を膜厚2μmのAl0.3Ga0.7N膜とする。そして、(0001)面を光触媒面として陰極に用いることにより、[000−1]方向に発生する電界によりキャリアがドリフトし、反応が促進される。例えば水の電気分解の場合は、以下の式(1)の反応が促進され、より高効率な水素発生が可能となる:

2H+ → H2↑ + 2h ・・・(1)

なお、光触媒面での正孔の移動が更に容易であるように、光触媒機能層14内の正孔のポテンシャルを下げるため、光触媒機能層14をp型にすることが好ましい。
【0031】
また、(0001)面を光触媒面として陽極に用いる場合は、例えば光触媒機能層14を膜厚0.5μmのGaN膜とし、下地層を膜厚2μmのIn0.3Ga0.7N膜とする。引張応力により[0001]方向に電界が発生し、キャリアがドリフトし、反応が促進される。この場合は光触媒機能層14内の電子のポテンシャルを下げるために、光触媒機能層14をn型にすることが好ましい。
【0032】
図5に、光触媒装置10を用いて水を電気分解する装置の例を示す。反応容器100内の反応溶液110に、光触媒電極としての光触媒装置10、及び対向電極200が浸されている。反応溶液110には、ph5〜8程度の、希釈した塩化ナトリウム(NaCl)溶液又は水酸化ナトリウム(NaOH)溶液などが採用可能である。対向電極200には、白金(Pt)電極やカーボン電極などが採用可能である。なお、図5では対向電極200を用意する例を示したが、陽極と陰極の両方に光触媒装置10を使用してもよい。
【0033】
図5に示した装置において、電気分解によって陰極から水素、陽極から酸素が発生する。光触媒装置10を陰極として用いる場合、光触媒機能層14内の正孔のポテンシャルを下げるために、光触媒機能層14をp型にすることが好ましい。これにより、図5に示した装置によって水素エネルギーを発生させることができる。光触媒装置10を陽極として用いる場合は、光触媒機能層14内の電子のポテンシャルを下げるために、光触媒機能層14をn型にすることが好ましい。
【0034】
図5に示した装置の効率を向上させるために、例えば太陽光などを照射光Lに使用する場合には、光を集光することが好ましい。図5は、光Lsをミラーレンズ300で集光した照射光Lを、光触媒装置10に照射する例である。なお、図5では、照射光Lを半導体基板11側から光触媒装置10に照射する場合を示している。反応容器100の外部に露出した半導体基板11に照射光Lを照射するため、反応溶液110内の薄膜15側から照射光Lを照射する場合よりも、光触媒装置10に照射光Lを照射することが容易である。この場合、既に説明したように、半導体基板11から光触媒機能層14までにおいて照射光Lが吸収されにくい構成にすることが好ましい。
【0035】
また、照射光Lが反応溶液110中に効率よく入射させるために、光触媒装置10の照射光Lが照射される領域、例えば半導体基板11の裏面には、反射防止膜の形成や細かな凹凸形状加工を行うことが好ましい。図5では、半導体基板11の裏面に凹凸が形成された例を示した。照射光Lが薄膜15に照射される場合には、薄膜15の表面を同様に処理することが好ましい。
【0036】
反応溶液110中に入射された照射光Lは、直接又は反応容器100の内壁で反射して、光触媒機能層14に入射する。反応容器100の内壁での反射ロスを低減するために、内壁は照射光Lを反射する構造であることが好ましい。例えば図5に示したように、反応容器100の内壁に光反射ミラー120を配置する。また、反応容器100の内壁が照射光Lを反射散乱する構造であることが、更に好ましい。
【0037】
光触媒装置10による触媒反応を補助するために、陰極と陽極間に電圧を印加してもよい。図6に、陰極と陽極間に電解電圧Vを印加する例を示す。電解電圧Vは、水の電気分解電圧である1.23V以下でよい。例えば、電解電圧Vを0.5Vにする。このように、電解電圧Vを低くすることができるため、消費電力を低減することができる。
【0038】
なお、光触媒装置10に電解電圧Vを印加する場合、膜厚が薄いほど薄膜15に大きな電界がかかる。このため、エネルギー障壁を下げる効果が大きい。したがって、薄膜15の膜厚は薄いほど好ましい。
【0039】
また、半導体基板11に導電性基板を使用し、導電性を有するバッファ層12及び窒化物半導体層13を使用することにより、電解電圧Vを出力する外部電源を半導体基板11に電気的接続することができる。具体的には、半導体基板11にシリコン基板を採用し、バッファ層12及び窒化物半導体層13に不純物をドーピングする。
【0040】
例えば、シリコン基板上にn型の窒化物半導体層を形成する場合、p型シリコン基板を用いると、以下のようにシリコン基板と窒化物半導体層との接続抵抗が低減される。p型のシリコン基板上にn型の窒化物半導体層を形成した場合に、シリコン基板と窒化物半導体層とのヘテロ接合界面に界面準位が存在する。また、シリコン基板と窒化物半導体層間に量子力学的トンネル効果を有する層(以下において「介在層」という。)が形成される場合には、介在層を介してp型シリコン基板とn型窒化物半導体層との間に界面準位が存在する。この界面準位はn型窒化物半導体層とp型シリコン基板との間の電気伝導に寄与するエネルギー準位である。界面準位が存在することによって、p型シリコン基板内のキャリア(電子)が界面準位を経由してn型窒化物半導体層に良好に注入される。その結果、p型シリコン基板とn型窒化物半導体層との間のヘテロ接合の電位障壁、又は、量子力学的トンネル効果を有する介在層を介したp型シリコン基板とn型窒化物半導体層との界面の電位障壁が小さくなる。これにより、シリコン基板と窒化物半導体層との接続抵抗が低減される。
【0041】
光触媒装置10に電解電圧Vを印加する場合、図7に示すように、薄膜15上に電気的接続用の接続電極16を配置してもよい。接続電極16は、例えばドット状、メッシュ状、或いは薄膜として形成される。薄膜として接続電極16を形成する場合は、光触媒特性を低下させないように、接続電極16を薄く形成する。具体的には、接続電極16の膜厚は50nm以下、好ましくは20nm以下、更に好ましくは2nm以下である。
【0042】
更に、図7に示すように、薄膜15上に保護膜17を配置してもよい。保護膜17は、薄膜15が浸される反応溶液110と薄膜15とが反応して、薄膜15が劣化するのを抑制する。保護膜17には、例えば窒化シリコン(SiNx)膜、酸化シリコン(SiOx)膜、窒化チタン(TiNx)膜などを採用可能である。保護膜17の膜厚は、光触媒特性を低下させないように、10nm以下、好ましくは2nm以下である。なお、接続電極16と保護膜17を薄膜15上に配置する場合には、保護膜17に形成された開口部を介して、接続電極16と薄膜15は接触する。
【0043】
以上に説明したように、本発明の実施形態に係る光触媒装置10によれば、光触媒機能層14の表面141上に薄膜15を配置することによって表面141付近の価電子帯及び伝導帯のポテンシャルが調整され、効率よく電子及び正孔を光触媒機能層14内部から表面141に移動させることができる。その結果、光触媒機能層14の表面141における酸化還元反応が促進される。これにより、光触媒として窒化物半導体を用いた、高効率でエネルギー発生可能な光触媒装置10を実現することができる。
【0044】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0045】
既に述べた実施形態の説明においては、光触媒機能層14の表面141上に薄膜15が一様に形成された例を示した。しかし、図8に示すように、島状の複数の薄膜15が、光触媒機能層14の表面141上に互いに離間して配置されていてもよい。
【0046】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0047】
L…照射光
10…光触媒装置
11…半導体基板
12…バッファ層
13…窒化物半導体層
14…光触媒機能層
15…薄膜
16…接続電極
17…保護膜
100…反応容器
110…反応溶液
120…光反射ミラー
141…表面
200…対向電極
300…ミラーレンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化物半導体からなる光触媒機能層と、
前記光触媒機能層の表面上に配置された、金属酸化膜、金属窒化膜及び金属酸窒化膜のいずれかからなる薄膜と
を備えることを特徴とする光触媒装置。
【請求項2】
前記薄膜が、Cs、Hf、W、Ta、Rh、Ru、Nb、Mo、V、Cr、Al及びInのいずれか又はこれらの合金の、金属酸化膜、金属窒化膜及び金属酸窒化膜のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の光触媒装置。
【請求項3】
前記薄膜の膜厚が50nm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光触媒装置。
【請求項4】
前記光触媒機能層が、光透過性を有する半導体基板上に配置された、前記光触媒機能層よりもバンドギャップエネルギーが大きい窒化物半導体層上に配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光触媒装置。
【請求項5】
前記半導体基板及び前記窒化物半導体層が導電性を有することを特徴とする請求項4に記載の光触媒装置。
【請求項6】
前記薄膜の表面に、前記薄膜が浸される溶液と前記薄膜との反応を抑制する保護膜が形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光触媒装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−148250(P2012−148250A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9733(P2011−9733)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【Fターム(参考)】