説明

光記録媒体及び光記録媒体再生装置

【目的】 再生時の読出レーザ光波長と対物レンズ開口数により規定される空間周波数を越える情報が記録された光ディスクおよびその再生装置を提供する。
【構成】 第1の発明は、位相ピットによって情報が保持された光記録媒体であって、外部から照射された読出光の強度分布、照射による温度分布に対応して、情報記録面上の読出光スポット内の第1の領域と第2の領域内の反射光または透過光の偏光状態が異なるように変化させる偏光状態変化層を設ける。また、第2の発明は、第1の発明の光記録媒体に読出光を照射する光照射手段と、照射された読出光の反射光または透過光のうちから第1の領域の読出光または第2の領域の読出光のいずれか一方のみを分離する分離手段と、分離された読出光を受光し読出信号として出力する受光手段と、読出信号に基づいて光記録媒体の記録情報の再生動作を行う再生手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は位相ピットにより情報が記録された光記録媒体及びその再生装置に係り、特に再生時の読出光の波長および対物レンズの開口数により規定される空間周波数を越える空間周波数を有する情報を記録した光記録媒体及びその再生装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のCD(Compact Disk)やLD(Laser Disk)等に代表される光ディスクにおいては、読出レーザ光のスポットが(位相)ピットに照射されたときに回折や散乱あるいはピット部分の光学定数の変化によって生じる反射光量の減少を光検出器で検出することにより、ピットの有無に対応した情報を取り出していた。より具体的には、ピット上に読出レーザ光のスポットが照射されている場合(図6(a)参照)には、散乱などにより反射による戻り光量が小さく、ピット間に読出レーザ光のスポットが照射されている場合(図6(b)参照)には戻り光量が大きいことを利用して情報を読み出している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記従来における光ディスクの再生分解能は、読出レーザ光の波長λと、対物レンズの開口数NAによって制限され、空間周波数fc =2NA/λを越える周波数成分を有する情報を再生することはできないという問題点があった。
【0004】そこで本発明の目的は、再生時の読出レーザ光の波長λと、対物レンズの開口数NAによって規定される空間周波数fc =2NA/λを越える空間周波数を有する情報が記録された光記録媒体及びその光記録媒体を再生することが可能な光記録媒体再生装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、第1の発明は、位相ピットによって情報が保持された光記録媒体であって、外部から照射された読出光の強度分布あるいは前記読出光の照射に伴う温度分布に対応して、前記情報記録面上の前記読出光スポット内の第1の領域内の反射光または透過光の第1の偏光状態を当該読出光スポット内の他の領域である第2の領域内の反射光または透過光の第2の偏光状態とは異なるように変化させる偏光状態変化層を設けて構成する。
【0006】また、第2の発明は、第1の発明の光記録媒体から記録情報を再生する光記録媒体再生装置であって、前記光記録媒体に読出光を照射する光照射手段と、前記照射された読出光の前記光記録媒体の反射光または透過光のうちから、前記第1の偏光状態を有する読出光または前記第2の偏光状態を有する読出光のいずれか一方のみを分離する分離手段と、前記分離手段により分離された読出光を受光し読出信号として出力する受光手段と、前記読出信号に基づいて前記光記録媒体の記録情報の再生動作を行う再生手段と、を備えて構成する。
【0007】
【作用】第1の発明によれば、偏光状態変化層は、外部から照射された読出光の強度分布あるいは読出光の照射に伴う温度分布に対応して、情報記録面上の読出光スポット内の第1の領域内の反射光または透過光の偏光状態である第1の偏光状態を当該読出光スポット内の他の領域である第2の領域の反射光または透過光の偏光状態である第2の偏光状態とは異なるように変化させる。
【0008】したがって、第1の偏光状態を有する読出光あるいは第2の偏光状態を有する読出光のいずれか一方のみを受光することにより、情報記録面上の読出光スポット内の第1の領域内あるいは第2の領域内のいずれか一方に記録されている位相ピット(記録情報)のみの情報を再生することが可能となる。
【0009】また、第2の発明によれば、光照射手段は、光記録媒体に読出光を照射し、分離手段は、この照射された読出光の光記録媒体の反射光または透過光のうちから、第1の偏光状態を有する読出光または第2の偏光状態を有する読出光のいずれか一方のみを分離する。
【0010】これにより、受光手段は、分離手段により分離された読出光を受光し読出信号として再生手段に出力し、再生手段は読出信号に基づいて光記録媒体の記録情報の再生動作を行う。
【0011】したがって、それぞれが読出光スポット内の一部分である第1の領域からの第1の偏光状態を有する読出光または第2の領域からの第2の偏光状態を有する読出光のいずれか一方のみに含まれる記録情報のみを再生することができ、読出光スポット内に複数個存在するような場合のように高い空間周波数を有する情報を再生することが可能となる。
【0012】
【実施例】次に、図面を参照して本発明の好適な実施例を説明する。
第1実施例図1に光ディスクの断面図を示す。
【0013】光ディスク1は、図1(a)に示すように、位相ピットが形成された基板2と、入射した直線偏光の読出光の偏光状態を読出光の照射に伴う温度分布に対応して回転させる偏光状態変化層としての材料層3と、材料層3を保護する保護層4a、4bと、を備えて構成されている。尚、以下の説明においては、材料層3、保護層4a及び保護層4bをまとめて光磁気層と呼ぶ。
【0014】光ディスク1の具体的な構成としては、基板側からみて、誘電体保護層であるZnS層4a(85nm)、磁気光学効果を示す材料層であるTbFe層3(80nm)、誘電体保護層であるZnS層4b(30nm)の順番で形成されている。なお、括弧内の数値は各層の厚さの一例を示している。また、この場合において、偏光状態の回転は、主としてカー効果による。
【0015】また、図1(a)に示す光ディスク1は、材料層であるTbFe層3の反射率が高いので、反射層を設ける必要がなかったが、光磁気層として低反射率のものを用いて、反射型の光ディスク1’として用いるには、図1(b)に示すように、反射層5を設ける必要がある。好適には、反射層5として、Al、Au等を用いることができる。この場合の偏光状態の回転は主として、ファラディー効果による。
【0016】具体的には、光ディスク1’は、基板側からみて、誘電体保護層であるZnS層4a、磁気光学効果を示す材料層であるBi置換DyFeガーネット層3’、誘電体保護層であるZnS層4bの順番で形成され、さらに保護層および反射層としてのAl層5を設けている。
【0017】ここで、本実施例における光磁気ディスクの再生原理について図2を参照して説明する。図2(a)に示す初期状態においては、永久磁石等の磁化手段MG1により、光磁気ディスクの光磁気層のすべての領域の垂直磁化方向はすべて同一方向(図面中、上方向)となるようにする。
【0018】そして再生時に、図2(b)に示すように、読出光の出力を調整した光スポットが照射されると、少なくとも光スポットの照射されている領域のうちの一部の領域Aの温度がキュリー温度(TC )以上に上昇することにより、領域Aの磁区が消失する。
【0019】この結果、磁区が消失した領域A内においては、読出光の偏光状態には何等の変化も与えない。したがって、入射した読出光の偏光状態と同一の偏光状態を有する再生光が検出器により受光される。
【0020】また、光スポット内の領域Aを除く領域では、カー効果あるいはファラディー効果等の磁気光学効果により、材料層に依存した所定角度(θ)だけ読出光の偏光状態が回転する。したがって、入射した読出光の偏光状態とは異なる偏光状態を有する再生光が検出器により受光される。
【0021】そこで、偏光状態の異なる2種の再生光を、偏光フィルタ、差動光学系等の分離手段を用いて分離すれば、読出光スポット内の一部分に存在するピットの情報を選択的に検出することができる。
【0022】このことは、光学的には読出光の波長λ及び対物レンズの開口数NAにより規定される読出光スポットの直径rよりも小さな開口を有するピンホールを光ディスクの情報記録面上に設けたことと等価となり、読出光スポット内に複数個存在するような微小サイズの位相ピット、すなわち、高い空間周波数f(f>fC )を有する位相ピットの情報を再生することが可能となる。
【0023】図3に光ディスク再生装置の主要部の構成を示す。光ディスク再生装置10は、読出光であるレーザ光を出射するレーザダイオード11と、レーザダイオード11から入射したレーザ光を透過し、後述のミラーから入射したレーザ光を反射するビームスプリッタ12と、レーザ光を導くためのミラー13と、レーザ光を光ディスクDKの情報記録面状に集光する対物レンズ14と、ビームスプリッタ12により反射されたレーザ光(再生光)のうち非読出領域からのレーザ光の後述の偏光ビームスプリッタにおける反射光量と透過光量の比率を調整する二分の一波長板(halfwave plate)15と、所定の偏光状態を有する偏光のみを透過し、他の光を反射する偏光ビームスプリッタ16と、偏光ビームスプリッタにより反射された偏光を受光し、第1読出信号R1 (RF信号)として出力する第1受光素子17aと、偏光ビームスプリッタ16を透過した偏光を受光し、第2読出信号R2 (RF信号)として出力する第2受光素子17bと、デコーダ、アンプ等を含み読出信号Rを再生信号Sに変換して出力する再生回路18と、光ディスクDKの垂直磁化方向を一定方向に揃える(以下、初期化という。)磁石MG1 と、を備えて構成されている。
【0024】次に、図2を参照して本実施例の動作を説明する。まず、光ディスクDKの光磁気層に磁石MG1 を用いて外部磁界Hi を与え、記録情報読出前の垂直磁化方向を一定方向(初期化:図面では、上方向。)とする初期化を行なう。この場合において、第2の磁石MG2 を設けて再生時において記録情報の読出しの直前に初期化しても良い。また、必要に応じ、あらかじめ光ディスクDKの全ての領域の垂直磁化方向を磁石MG1 で初期化し、読出しのための垂直磁化方向を磁石MG2 により反転後、再び磁石MG1 で初期化するようにしても良い。
【0025】以下の説明においては、あらかじめ光ディスクDKの全ての領域の垂直磁化方向を磁石MG1 により初期化する場合について説明する。レーザダイオード11から出射された直線偏光である読出光(レーザ光)のスポットLBは、ミラー13、ビームスプリッタ12、対物レンズ14を介して光ディスクDKの情報記録面上に集光され、図4(a)に示すように、トラックT1 上に読出スポットLBを形成し、この読出スポットLBはディスクDKの回転によりトラックT1 上を移動する。
【0026】ところで、トラックT1 上には、読出光の波長λ及び対物レンズ14の開口数NAで規定される空間周波数fc =2NA/λを越える空間周波数f(f>fC)を有する位相ピットが形成されている。具体的には、読出光スポットLB内に複数個の位相ピットP2 、P3 が存在し、このままではそれらの位相ピットP2、P3 の情報を分離することができず、正しい再生を行なうことができない。同様にして、図4(b)に示すように、読出光スポットLB内に複数のトラックT0 ’、T1 ’、T2 ’が含まれるような場合にも正しい再生を行なうことができない。
【0027】そこで、読出光の出力を調整すると、図4(c)に示すように、材料層の温度は、読出光スポットLBの後方部分の領域ARにおいてキュリー温度TC 以上に上昇し、例えば、図4(a)に示すような場合、位相ピットP2 が存在する領域ARの磁区が消失する。
【0028】この結果、磁区の消失した領域AR内においては、読出光の情報記録面による反射光である再生光の偏光状態は読出光の偏光状態と同一のまま、受光素子側に戻ることとなる。一方、領域ARを除く読出光LB内の位相ピットP3 が存在する領域XARにおいては、再生光の偏光状態は読出光の偏光状態と比較して、磁気光学効果により材料層に依存したある角度θK だけ回転した状態で受光素子側に戻ることとなる。
【0029】領域AR及び領域XARからの再生光は混合状態で受光素子17a、17bに達するが、二分の一波長板15等を調節することにより、領域XARからの再生光量が第1受光素子17aと第2受光素子17bに等量づつ入射するように設定すると、第1読出信号R1 と第2読出信号R2 の差を取れば(差動出力)、領域XARからの再生光による信号成分は相殺され、領域XARはみかけ上遮蔽されることとなる。したがって、再生回路18においては、領域AR、すなわち、位相ピットP2 の情報のみを読み出すことが可能となり、再生信号Sは位相ピットP2 の情報のみを含むこととなる。
【0030】以上の説明のように、本第1実施例によれば、読出光の波長λと対物レンズ14の開口数NAによって規定される空間周波数fC (=2NA/λ)を越える空間周波数fを有する情報を再生することが可能となる。
【0031】また、連続再生を行なう場合には、再生時に磁石MG1 に外部磁界Hi を与え、領域ARが冷却される過程で垂直磁化方向が初期化状態と同一になるようにするか、第2の磁石を設けて情報読出後に再初期化を行なえばよい。
【0032】さらに上記実施例における光学系は、現在広く用いられている書換可能型光磁気ディスクの記録再生装置と等価であるため、装置を共用することが可能となる。
【0033】さらにまた、二分の一波長板15等の調節によって、みかけ上遮蔽される領域を設定することができるので、図4(b)に示すように、ピット列方向ばかりでなく、トラックピッチ方向にも高密度化された光ディスクであっても、トラック間クロストーク、ピット間クロストークの発生が減少し、あるいは無視できるため、所望の位相ピットのみの情報を正確に再生することが可能となる。
第2実施例以上の第1実施例は、読出光スポット内の一方の領域の磁区を消失させる場合であったが、本第2実施例は図2(c)に示すように、永久磁石等の磁化手段MG2 により、領域Aの磁化方向を初期状態(図2(a))とは、反転(図中、下方向)させた場合のものである。この場合、領域Aと領域Aを除く読出光スポット内の領域では、再生光の偏光状態の角度差が図2(b)の場合(第1実施例)に対して2倍(=2×θ)となり、偏光状態の異なる2種の再生光の分離がより容易となる。さらに再生信号強度も向上する。
実験例次に実際に光ディスクを作成して行なった再生実験について説明する。
【0034】以下に、試作した光ディスクの構成と測定条件を示す。
ピット長 0.3μm トラックピッチ 1.6μm 材料層の構成と膜厚 保護層(基板側、ZnS) 85nm 光磁気材料層(TbFe) 80nm 保護層(ZnS) 30nm 対物レンズの開口数NA 0.55 レーザ光の波長λ 825nm 線速度 5.4m/秒あらかじめ光ディスク全体を初期化しておき、続いて再生レーザ光の出力をパラメータとして差動出力をとりC/N(Carrier to Noise ratio)を測定した。このとき外部磁界は印加していない。この結果を図5に示す。
【0035】上記光学系の再生分解能の限界に相当するピット長は0.375μmであり、本発明を適用することにより、従来の再生方法では再生不可能な微小サイズ、すなわち高い空間周波数を有する位相ピットのもつ情報を検出することが可能であることが示されている。
【0036】以上の第1及び第2実施例においては、材料層として光磁気記録媒体であるTbFeを用いたが、他の光磁気記録材料、たとえば、TbFeCo、GdTbFe、NdFe、NdFeCo、TbNdFeCo等、また、GdGaガーネット、Bi置換DyFeガーネット等、また、Pt/Co人工格子薄膜、Pd/Co人工格子薄膜等およびこれらの多層膜を用いることも可能である。
第3実施例上記第1及び第2実施例においては、光磁気記録材料として、キュリー温度TC 以上で磁区が消失するキュリー点記録材料を用いていたが、本実施例は、補償温度TCOMPで保持力が急激に増大する補償点記録材料を用いた場合の実施例である。
【0037】光磁気記録材料としては、GdCo系材料、GdFeCo系材料等を用いる。より具体的な例として、光磁気材料としてGd28(Fe90Co1072を用いた場合について説明する。
【0038】Gd28(Fe90Co1072の横軸に温度をとった場合の垂直保磁力Hc(⊥)を図6に示す。Gd28(Fe90Co1072の垂直保磁力Hc(⊥)は、50℃〜150℃の温度範囲で1kエルステッド(Oersted )より大きくなる。また、室温TR では垂直保磁力Hc(⊥)は、ほぼ0エルステッドとなる。
【0039】この結果、光スポット内の高温部が50℃〜150℃範囲内の温度となるように光ビームの出力パワーを設定して照射すれば、図7(b)に示すように高温部内のカー回転角θK は、図7(a)に示す低温部内のカー回転角θK (=ほぼ0)よりもはるかに大きくなり、カー回転角θK の大きな領域の情報のみを光学系で選択的に読み出すことにより、より空間周波数の大きな情報を読み出すことができるとともにトラック方向のピッチも狭くしてより高密度に記録された情報を再生することができる。
第4実施例上記第3実施例においては、補償点記録材料を用いて光スポット内の領域を2分割する場合の実施例であったが、本第4実施例は、補償点記録材料を用いるとともに光ビームの強度を上げて、あるいは、光スポットを楕円形状として光スポット内の領域を3分割し、さらに空間周波数の大きな情報を読み出すように構成したものである。
【0040】GdFeCo系等の補償点記録材料を用いて光ディスクを作成し、再生を行った場合には、狭い範囲で安定に温度を保持する必要がある。したがって、制御が難しいという問題点が生じる。
【0041】そこで、本第4実施例では、図8(b)に示すように、光スポット内の温度分布が補償温度TCOMP上下にわたる広範な温度分布になるように光ビームの出力パワーを上げ、これに加えて、あるいはこれに代えてトラック方向が長軸方向となるように楕円形状の光ビームを照射し、光ビームの中間領域が補償温度TCOMP近傍の温度となるように設定する(図8(a)参照)。
【0042】この結果、光スポットの中温領域AM (温度T=TM )のカー回転角θK は、図7(b)と同様に大きくなり、低温領域AL (温度T=TR )及び高温領域AH (温度T=TH )のカー回転角θK はほぼ0となってカー回転角θK の大きな部分からの反射光のみを受光すべく光学系を構成すれば、中温領域のみを読出領域とすることができ、当該読出領域のみの情報を再生することができるので、より空間周波数の高い記録情報を再生することが可能となる。
第5実施例上記第1実施例においては、再生用磁界を印加することが必要であったが、本第5実施例はディスク形成後1度の初期化を行うだけで再生用磁界を印加することなく再生を行わせるものである。
【0043】光ディスクは、図9に示すように、位相ピットが形成された基板22と、入射した直線偏光の読出光の偏光状態を読出光の照射に伴う温度分布に対応して回転させる偏光状態変化層としての材料層23と、再生磁界を印加するための再生磁界印加層24と、再生磁界印加層24を保護する保護層25と、を備えて構成されている。
【0044】光ディスクの具体的な構成としては、材料層23はGdFeCo、GdCo等の補償点材料であり、かつ室温では垂直保磁力Hc(⊥)は、ほぼ0となり、50℃〜150℃の読出温度範囲では垂直保磁力Hc(⊥)≧1kエルステッドとなるような材料で構成する。
【0045】また、再生磁界印加層24は読出温度の最高温度である150℃以下の温度では常に垂直磁化膜となるTbFeCo、DyFeCo等のキュリー点材料用いる。
【0046】この結果、材料層と再生磁界印加層との相互間で、交換相互作用、静磁的結合力が働き、再生磁界印加層は材料層の磁化方向を垂直方向にしようとする。したがって、再生時に再生用磁界を印加する必要がなくなり、再生装置の構成を簡略化することが可能となる。
第6実施例上記第1乃至第5実施例では、垂直磁化膜を用いて情報の読出を行っている。
【0047】しかしながら、垂直磁化膜は、ビームスポット径をより小さくすることができる青色光レーザではカー回転角θK が小さくなる傾向がある。より具体的には、図10下部に示すように、Tb28(Fe90Co1072(厚さ100nm)では波長が短い側ほどカー回転角θK が小さくなることが分る。
【0048】そこで本実施例は、特定の面内磁化膜は、外部磁界を印加して垂直磁化状態となった領域の短波長の読出光によるカー回転角θK が大きくなることを利用し、高密度記録情報の再生を行うことができるようにしたものである。例えば、Nd20Fe40Co40に±10Kエルステッドの磁界を印加した場合のカー回転角θKを図10上部に示す。
【0049】図10に示すように、Nd20Fe40Co40は短波長領域でカー回転角θK が増大することがわかる。このような挙動を示す材料層としては、NdFeCo系、PtCo系、PtMnSb(ホイスラー合金)等のキュリー点材料が挙げられる。
【0050】より具体的には、材料層としてNd40(Fe70Co30)を90nm程度の厚さとした場合、その印加磁界Hとカー回転角との関係は、図11に示すようなものとなっており、同一の印加磁界H1 で比較した場合、カー回転角θK は室温の方が、150℃付近の温度の場合より大きい、すなわち、ビームスポット内の低温領域の方がカー回転角θK は大きくなる。
【0051】そこで図12(a)に示すように、ビームスポットの領域を含む広範囲な領域に外部磁界を印加し、図12(b)に示すようにカー回転角θK が大きな領域AL (温度T=室温TR )の情報を読み出すように光学系を構成すれば、ビーム径で規定される空間周波数よりも高空間周波数を有する記録情報を再生することが可能となる。
第7実施例上記第3実施例のように、反射兼マスク生成膜としてGdFeCo系補償点記録材料膜を用いた場合等には、高温部が読出領域となるが、組成により垂直磁化状態となる温度が大きく変化する。また、読出領域を狭くしたい場合には、材料膜の温度を狭い範囲に安定に保持する必要がある。
【0052】ところで、情報ビットそのものは位相ピットとして光ディスクに記録されているので、再生時の読出光の出力パワーを上げすぎたとしても情報が消えるおそれはない。
【0053】そこで、光ピックアップの出力信号を増幅するアンプの出力信号レベルに応じて読出光を出射するレーザーダイオードの出力パワーを制御するように負帰還を構成するサーボ回路を設ければ、光ディスクの組成のばらつき等による最適再生温度のずれを補正して確実な情報再生を行うことができる。
【0054】この場合において、サーボ周期は1800rpmで回転する光ディスクの場合、30Hz以下(1回転時間以上の長周期)でよい。この結果、光ディスクの製造条件が緩やかになる。また、光ディスク再生装置の使用中における装置内の温度変動にも容易に追従させることができる。
第8実施例上記第1実施例の光ディスク再生装置においては、2個の受光素子を有する差動光学系を用いて記録情報の再生を行っていたが、本第8実施例は、1個の受光素子を用いて光学系を構成した場合の実施例である。
【0055】図13に光ディスク再生装置の主要部の構成を示す。図3の第1実施例と同一の部分には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。光ディスク再生装置10Aは、読出光であるレーザ光を出射するレーザダイオード11と、レーザダイオード11から入射したレーザ光を透過し、後述のミラーから入射したレーザ光を反射するビームスプリッタ12と、レーザ光を導くためのミラー13と、レーザ光を光ディスクDKの情報記録面状に集光する対物レンズ14と、ビームスプリッタ12により反射されたレーザ光(再生光)のうち読出領域からのレーザ光のみを透過させる偏光板と、偏光板を透過した偏光を受光し、読出信号R’(RF信号)として出力する受光素子17’と、デコーダ、アンプ等を含み読出信号Rを再生信号Sに変換して出力する再生回路18と、を備えて構成されている。
【0056】次に動作を説明する。レーザダイオード11を出射したレーザ光はビームスプリッタ12を透過し、ミラー13により反射され、さらに対物レンズ14によりレーザ光を光ディスクDKの情報記録面上に集光される。
【0057】この時、ビームスポット内の光ディスクDKの状態は、図14に示すように、ビームの進行方向前方の領域が低温領域AL となりカー回転角θK =a(a:ほぼ一定値)となり、進行方向後方の領域が高温領域AH となりカー回転角θK =0となる。
【0058】そこで、偏光板15をレーザダイオード側からの入射光と同一の偏光面を有する光を通すように設定すれば、低温領域AL からの反射光は偏光板15を透過しづらくなるので、高温領域AH からの反射光(カー回転角θK =0)のみが偏光板15を透過し、受光素子R’により受光され、再生回路18により、再生信号Sとして出力されることとなる。
【0059】すなわち、低温領域AL がマスク領域となり、高温領域AH が読出領域となる。したがって、トラックピッチ方向にも記録密度を向上させることができ、より高空間周波数を有する記録情報を再生することが可能となる。
第9実施例トラックピッチ方向にも高密度化された光ディスクにおいては、クロストークを低減し、良好な再生信号を得るためにはマスク領域が書換可能型光磁気ディスク再生装置における読出領域と反転させる必要があるため、二分の一波長板を調整する必要があり、従来の書換可能型光磁気ディスク再生装置の光学系と共用することは困難となっていた。
【0060】そこで、本実施例は光学系を書換可能型光磁気ディスク再生装置の光学系と共通とし、信号処理によりトラックピッチ方向にも高密度化された光ディスクを読取れるようにしたものである。
【0061】図15に光ディスク再生装置の主要部の構成を示す。光ディスク再生装置10Bは、読出光であるレーザ光を出射するレーザダイオード11と、レーザダイオード11から入射したレーザ光を透過し、後述のミラーから入射したレーザ光を反射するビームスプリッタ12と、レーザ光を導くためのミラー13と、レーザ光を光ディスクDKの情報記録面上に集光する対物レンズ14と、ビームスプリッタ12により反射されたレーザ光(再生光)のうち非読出領域からのレーザ光の後述の偏光ビームスプリッタにおける反射光量と透過光量の比率を調整する二分の一波長板(halfwave plate)15と、所定の偏光状態を有する偏光のみを透過し、他の光を反射する偏光ビームスプリッタ16と、偏光ビームスプリッタにより反射された偏光を受光し、第1読出信号R1 (RF信号)として出力する第1受光素子17aと、偏光ビームスプリッタ16を透過した偏光を受光し、第2読出信号R2 (RF信号)として出力する第2受光素子17bと、デコーダ、アンプ等を含み読出信号Rを再生信号Sに変換して出力する再生回路18aと、光ディスクDKの垂直磁化方向を一定方向に揃える(以下、初期化という。)磁石MG1 と、を備えて構成されている。
【0062】再生回路18aの主要部の構成を図16に示す。再生回路18aは、第1読出信号R1 及び第2読出信号R2 が入力され、両者を加算して加算信号SUM(=R1 +R2 )を出力する加算器30と、第1読出信号R1 及び第2読出信号R2 が入力され、第1読出信号R1 から第2読出信号を減算して減算信号DIFF(=R1 −R2 )を出力する第1減算器31と、減算信号DIFFに係数K(=1/tan θK )を乗じて乗算信号MUL(=K×DIFF)を出力する乗算器32と、加算信号SUMから乗算信号MULを減算して再生信号S’を出力する第2減算器33と、を備えて構成されている。
【0063】次に動作を説明する。図17に示すように、読出信号(カー回転角=0)の成分を示すベクトルをa1 、その第1受光素子17aに入射する成分をa1 、その第2受光素子17bに入射する成分をa2 とし、マスクすべき信号(カー回転角=θK )の成分を示すベクトルをb、その第1受光素子17aに入射する成分をb1 、その第2受光素子17bに入射する成分をb2 とすると、R1 =a1 +b12 =a2 +b2が成立する。
【0064】また、a1 =a2 =a’(=√2/2×|a1 |)
が成立する。
【0065】ここで、加算信号SUM及び減算信号DIFFを上記各成分で示すと、SUM=R1 +R2=(a1 +b1 )+(a2 +b2 )=2a’+b1 +b2DIFF=R1 −R2=(a1 +b1 )−(a2 +b2 )=b1 −b2ここで、再生信号S’をS’=SUM−K×DIFFと定義すると、S’=2a’+b1 +b2 −K(b1 −b2
となり、読み出したい信号成分は2a’であるので、b1 +b2 −K(b1 −b2 )=0を満たすように、定数Kを定めればよいこととなる。すなわち、 K=(b1 +b2 )/(b1 −b2 ) ……(A)
となる。
【0066】ところで、図17からわかるようにtan(θK +(π/4))=b1 /b2であるので、 b1 /b2 =(1+tan θK )/(1−tan θK
……(B)
となる。
【0067】したがって、(A)式及び(B)式より、 K=1/tan θK ……(C)
となる。
【0068】これにより、(C)式で示される係数Kを用いて図16の再生回路を用いて再生を行えば、従来の書換可能型光磁気ディスク再生装置の光学系を用いてクロストークを生じることなく、確実に記録情報を再生することが可能となる。
【0069】この場合において、係数Kを最適化する方法としては、1) 光ディスク内の変動は無視できると仮定し、予めカー回転角θK を測定し、係数Kを設定する。
【0070】2) 光ディスク内に無信号部を一定間隔で設け、これに同期してカー回転角θK を測定して、係数Kを設定する。
3) 読出用のビームとは別個にカー回転角θK 測定用の補助ビームを設けて、カー回転角θK を測定し、係数Kを設定する。
等の方法が考えられる。
【0071】なお、光学系によってθK を強調している場合には、係数Kにこの強調分を加味する必要がある。
第10実施例上記第9実施例においては、再生光成分のうち一方が、入射した読出光と同一偏光面を有することが必要であるとともに、領域XARの温度はキュリー温度近傍まで上昇させるので、温度上昇に伴い、カー回転角θK が減少し遮蔽(マスク)効率が低下する可能性があった。
【0072】そこで、本第10実施例は、再生光の偏光面が読出光の偏光面と同一である必要がなく、さらにマスク領域(例えば、領域XAR;図4参照)の遮蔽効率を向上することを可能とするものである。
【0073】図18に光ディスクの断面図を示す。光ディスク50は、図18に示すように、位相ピットが形成された基板51と、入射した直線偏光の読出光の偏光状態を読出光の照射に伴う温度分布に対応して回転させる偏光状態変化層としての再生層52と、通常は再生層52と交換結合可能であり、再生温度においては磁区が消失すべく設定されたスイッチング層53と、再生層52及びスイッチング層53を保護する保護層54a、54bと、を備えて構成されている。尚、以下の説明においては、再生層52、スイッチング層53、保護層54a及び保護層54bをまとめて光磁気層と呼ぶ。
【0074】光ディスク50の具体的な構成としては、基板側からみて、誘電体保護層であるZnS層54a、磁気光学効果を示す再生層であるGdFeCo層52、スイッチング層であるTbFeCo層53、誘電体保護層であるZnS層54bの順番で形成されている。
【0075】また、この場合において、偏光状態の回転は、主としてカー効果による。ここで、本第10実施例における光磁気ディスクの再生原理について説明する。
【0076】初期状態においては、永久磁石等の磁化手段により初期化磁界Hinitを印加し、光磁気ディスクの再生層52及びスイッチング層53のすべての領域の垂直磁化方向はすべて同一方向(図面中、上方向)となるようにしておく。
【0077】そして再生時に、読出光の出力を調整した光スポットが照射されると、スイッチング層53の少なくとも光スポットの照射されている領域のうちの一部の領域(例えば、領域AR;図4参照)の温度がキュリー温度(TC )以上に上昇することにより、当該領域ARの磁区が消失する。
【0078】これと並行して、再生時には、再生磁界Hr (磁化方向は図面中、下方向)を印加する。この結果、スイッチング層53の磁区が消失した領域ARに対応する再生層52の再生位置においては、スイッチング層53との交換結合力が無くなって再生層52の本来の保磁力となり、再生磁界Hr により磁化方向が下方向となる。
【0079】これに対し、再生層52の再生位置以外の領域の磁化方向は上方向となっているので、読出光スポット内の領域XARの磁区の向きは上方向であり、領域ARにおける読出光の偏光面の回転方向と、領域XARにおける読出光の偏光面の回転方向とは、逆方向となり、両領域からの再生光の偏光面の開き角度を大きくすることができる。
【0080】図19に光ディスク再生装置の主要部の構成を示す。図19において、光ディスク再生装置10Bが図15の光ディスク再生装置10Aと異なる点は、デコーダ、アンプ等を含み第1読出信号R1 (RF信号)及び第2読出信号R2 (RF信号)を再生信号S”に変換して出力する再生回路18bと、光ディスクDKの垂直磁化方向を一定方向に揃えて初期化磁界Hinitを印加するための初期化磁石MG3 と、再生磁界Hr を印加するための再生磁石MG4 と、を備えて構成した点である。他の部分については同一であるので詳細な説明を省略する。
【0081】再生回路18bの主要部の構成を図20に示す。再生回路18bは、第1読出信号R1 が入力され、第1読出信号R1 に係数K’を乗じて乗算信号MUL2 (=K’・R1 ’)を出力する乗算器60と、第2読出信号R2 及び乗算信号MUL2 が入力され、第2読出信号R2 から乗算信号MUL2 を減算して再生信号S”を出力する減算器61と、を備えて構成されている。
【0082】次に動作を説明する。図21に示すように、マスクすべき信号(カー回転角=θK1)の成分を示すベクトルをA、その第1受光素子17aに入射する成分をAx 、その第2受光素子17bに入射する成分をAy とし、読み出すべき信号(カー回転角=θK2)の成分を示すベクトルをB、その第1受光素子17aに入射する成分をBx 、その第2受光素子17bに入射する成分をBy とすると、R1 =Ax +Bx2 =Ay +Byとなる。
【0083】ここで、乗算信号MUL2 及び再生信号S”を上記各成分で示すと、MUL2 =K’・R1=K’・(Ax +Bx
S”=R2 −R1 ・K’=Ay −K’・Ax +By −K’・Bxとなり、読み出したい信号成分はAy −K’・Ax あるいはBy −K’・Bx であるので、By −K’・Bx =0あるいは、Ay −K’・Ax =0を満たすように、定数K’を定めれば、読み出すべき領域(ARまたはXAR;図4参照)を入れ替えることが可能となる。
【0084】より具体的には、領域ARの情報を再生する場合には、Ay −K’・Ax =0とすればよい。この時、Ax =|[A]|cos((π/4)+θK1
y =|[A]|sin((π/4)+θK1
であるから(但し[A]はベクトルAを表わす。以下同じ。)、Ay −K’・Ax =|[A]|sin((π/4)+θK1)−K’・(|[A]|cos((π/4)+θK1))=0である。
【0085】従って、 K’=tan((π/4)+θK1)) ……(D)
となる。
【0086】同様にして、領域XARの情報を再生する場合には、By −K’・Bx =0とすればよい。この時、Bx =|[B]|cos((π/4)−θK2
y =|[B]|sin((π/4)−θK2
であるから(但し[B]はベクトルBを表わす。以下同じ。)、By −K’・Bx =|[B]|sin((π/4)−θK2)−K’・(|[B]|cos((π/4)−θK2))=0である。
【0087】従って、 K’=tan((π/4)−θK2)) ……(E)
となる。
【0088】これにより、(D)式あるいは(E)式で示される係数K’を用いて図19の再生回路を用いて再生を行えば、従来の書換可能型光磁気ディスク再生装置の光学系を用いてクロストークを生じることなく、確実に記録情報を再生することが可能となる。
【0089】この場合において、係数K’を最適化する方法としては、1) 光ディスク内の変動は無視できると仮定し、予めカー回転角θK1(あるいはθK2)を測定し、係数K’を設定する。
【0090】2) 光ディスク内に無信号部を一定間隔で設け、これに同期してカー回転角θK1(あるいはθK2)を測定し、係数K’を設定する。
3) 読出用のビームとは別個にカー回転角θK 測定用の補助ビームを設けて、カー回転角θK1(あるいはθK2)を測定し、係数K’を設定する。
等の方法が考えられる。
【0091】なお、光学系によってθK1(あるいはθK2)を強調している場合には、係数K’にこの強調分を加味する必要がある。以上の説明のように、本第10実施例によれば、再生光の偏光面は入射した読出光と同一である必要が無くなる。
【0092】さらにマスクする領域と再生する領域の偏光面の開き角度が大きくとれ(θK=θK1+θK2)、再生層としてキュリー温度の高い材料を用いることができるので、温度上昇に伴うカー回転角θK の減少を防止できるため遮蔽効率を向上させることができる。
他の変形例以上の各実施例においては、光磁気記録材料について述べたが、光磁気記録材料に限らず、照射する光の強度あるいは材料層の温度に依存して偏光状態が初期の偏光状態に対して変化を生じる材料(例えば、フォトクロミック材料等)であれば、本発明を適用することが可能である。
【0093】さらに、以上の各実施例においては、レーザダイオード11の出射レーザ光をビームスプリッタ12、ミラー13、対物レンズ14を介してそのまま光ディスクDKの情報記録面に照射していたが、直線偏光性をよくするために、レーザダイオード11とビームスプリッタ12の間の光路中に偏光板を設け、偏光板を介して光ディスクDKに照射させてもよい。
【0094】さらにまた、以上の各実施例においては、読出光を直線偏光とする場合について説明したが、楕円偏光を用いるように構成することも可能である。また、偏光状態は2種類に限らないので、複数の偏光状態の再生光から一の偏光状態を有する再生光を分離するように構成しても良い。
【0095】
【発明の効果】第1の発明によれば、偏光状態変化層は、外部から照射された直線偏光である読出光の強度分布あるいは読出光の照射に伴う温度分布に対応して、情報記録面上の読出光スポット内の第1の領域内の反射光または透過光の偏光状態である第1の偏光状態を当該読出光スポット内の他の領域である第2の領域の反射光または透過光の偏光状態である第2の偏光状態とは異なるように変化させるので、第1の偏光状態の偏光状態を有する読出光あるいは第2の偏光状態を有する読出光のいずれか一方のみを受光することにより、情報記録面上の読出光スポット内の第1の領域内あるいは第2の領域内のいずれか一方に記録されている位相ピット(記録情報)のみの情報を再生することが可能となる。
【0096】また、第2の発明によれば、それぞれが読出光スポット内の一部分である第1の領域からの第1の偏光状態を有する読出光または第2の領域からの第2の偏光状態を有する読出光のいずれか一方のみに含まれる記録情報のみを再生することができ、読出光スポット内に複数個存在するような場合のように高い空間周波数を有する情報を再生することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例の光ディスクの詳細構造を示す断面図である。
【図2】第1実施例及び第2実施例の光ディスクの再生原理を説明する図である。
【図3】第1実施例の光ディスク再生装置の主要部の構成図である。
【図4】第1実施例の再生動作の説明図である。
【図5】再生実験の説明図である。
【図6】Gd26(Fe90Co1074における横軸に温度をとった場合の垂直保磁力Hc(⊥)を説明する図である。
【図7】第3実施例の動作を説明する図である。
【図8】第4実施例の説明図である。
【図9】第5実施例の光ディスクの詳細構造を示す断面図である。
【図10】第6実施例の原理を説明する図である。
【図11】Nd40(Fe70Co30)〔厚さ90nm〕の保磁力Hとカー回転角との関係を説明する図である。
【図12】第6実施例の再生状態を説明する図である。
【図13】第8実施例の光ディスク再生装置の主要部の構成図である。
【図14】第8実施例の動作を説明する図である。
【図15】第9実施例の光ディスク再生装置の主要部の構成図である。
【図16】第9実施例の再生回路の詳細構成図である。
【図17】第9実施例の動作を説明する図である。
【図18】第10実施例の光ディスクの詳細構造を示す断面図である。
【図19】第10実施例の光ディスク再生装置の主要部の構成図である。
【図20】第10実施例の再生回路の詳細構成図である。
【図21】第10実施例の動作を説明する図である。
【図22】従来の情報読出原理の説明図である。
【符号の説明】
1…光ディスク
2…基板(位相ピット付き)
3…光磁気層(TbFe層)
3’…光磁気層(Bi置換DyFeガーネット層)
4a…誘電体層(ZnS層)
4b…誘電体層(ZnS層)
5…反射層(Al層)
10…光ディスク再生装置
11…レーザーダイオード
12…ビームスプリッタ
13…ミラー
14…対物レンズ
15…二分の一波長板
16…ビームスプリッタ
17a…第1受光素子
17b…第2受光素子
17’…受光素子
18、18a…再生回路
22…基板
23…材料層
24…再生磁界印加層
25…保護層
30…加算器
31…第1減算器
32…乗算器
33…第2減算器
50…光ディスク
51…基板
52…再生層
53…スイッチング層
54a…保護層
54b…保護層
60…乗算器
61…減算器
H …高温領域
M …中温領域
L …低温領域
1 …第1読出信号
2 …第2読出信号
R’…読出信号
DIFF…減算信号
SUM…加算信号
MUL、MUL2 …乗算信号
MG1 …磁石
MG2 …磁石
MG3 …初期化磁石
MG4 …再生磁石
LB…読出光スポット
1 〜P4 …位相ピット
C …キュリー温度
comp…補償点温度
R …室温

【特許請求の範囲】
【請求項1】 位相ピットによって情報が保持された光記録媒体であって、外部から照射された読出光の強度分布あるいは前記読出光の照射に伴う温度分布に対応して、前記情報記録面上の前記読出光スポット内の第1の領域内の反射光または透過光の第1の偏光状態を当該読出光スポット内の他の領域である第2の領域内の反射光または透過光の第2の偏光状態とは異なるように変化させる偏光状態変化層を設けたことを特徴とする光記録媒体。
【請求項2】 請求項1記載の光記録媒体から記録情報を再生する光記録媒体再生装置であって、前記光記録媒体に読出光を照射する光照射手段と、前記照射された読出光の前記光記録媒体の反射光または透過光のうちから、前記第1の偏光状態を有する読出光または前記第2の偏光状態を有する読出光のいずれか一方のみを分離する分離手段と、前記分離手段により分離された読出光を受光し読出信号として出力する受光手段と、前記読出信号に基づいて前記光記録媒体の記録情報の再生動作を行う再生手段と、を備えたことを特徴とする光記録媒体再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図9】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図17】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図14】
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【図16】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開平7−6432
【公開日】平成7年(1995)1月10日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−251980
【出願日】平成5年(1993)10月7日
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)