説明

光記録媒体及び光記録媒体再生装置

【目的】 再生時の読出レーザ光波長と対物レンズ開口数により規定される空間周波数を越える情報が記録された光ディスクおよびその再生装置を提供する。
【構成】 位相ピットで情報が保持され、外部から照射された所定の偏光面を有する読出光により情報記録面上の読出光スポット内の第1の領域内からの光の偏光面である第1偏光面の入射光の偏光面に対する回転方向を当該読出光スポット内の第2の領域内からの光の第2偏光面の入射光の偏光面に対する回転方向とは逆方向に変化させる偏光面回転方向変化層を設ける。また、光記録媒体に所定の偏光面を有する読出光を照射する光照射手段と、光記録媒体からの光から、第1、第2の偏光面を有する読出光のいずれか一方を分離する分離手段と、分離手段により分離された読出光を受光し読出信号として出力する受光手段と、読出信号に基づいて光記録媒体の記録情報の再生動作を行う再生手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は位相ピットにより情報が記録された光記録媒体及びその再生装置に係り、特に再生時の読出光の波長および対物レンズの開口数により規定される空間周波数を越える空間周波数を有する情報を記録した光記録媒体及びその再生装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のCD(Compact Disk)やLD(Laser Disk)等に代表される光ディスクにおいては、読出レーザ光のスポットが(位相)ピットに照射されたときに回折や散乱あるいはピット部分の光学定数の変化によって生じる反射光量の減少を光検出器で検出することにより、ピットの有無に対応した情報を取り出していた。
【0003】より具体的には、ピット上に読出レーザ光のスポットが照射されている場合(図8(a)参照)には、散乱などにより反射による戻り光量が小さく、ピット間に読出レーザ光のスポットが照射されている場合(図8(b)参照)には戻り光量が大きいことを利用して情報を読み出している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記従来における光ディスクの再生分解能は、読出レーザ光の波長λと、対物レンズの開口数NAによって制限され、空間周波数fc =2NA/λを越える周波数成分を有する情報を再生することはできないという問題点があった。
【0005】そこで本発明の目的は、再生時の読出レーザ光の波長λと、対物レンズの開口数NAによって規定される空間周波数fc =2NA/λを越える空間周波数を有する情報が記録された光記録媒体及びその光記録媒体を再生することが可能な光記録媒体再生装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、第1の発明は、位相ピットによって情報が保持された光記録媒体であって、外部から照射された所定の偏光面を有する読出光の強度分布あるいは前記読出光の照射に伴う温度分布に対応して、前記情報記録面上の前記読出光スポット内の第1の領域内の反射光または透過光の偏光面である第1偏光面の前記所定の偏光面に対する回転方向を当該読出光スポット内の他の領域である第2の領域内の反射光または透過光の第2偏光面の前記所定の偏光面に対する回転方向とは逆方向になるように変化させる偏光面回転方向変化層を設けて構成する。
【0007】また、第2の発明は、第1の発明の光記録媒体において、前記偏光面回転方向変化層は、第1の保磁力と所定の再生温度よりも高い第1のキュリー温度を有する第1光磁気層と、前記第1の保磁力より大きな第2の保磁力と前記再生温度よりも低い第2のキュリー温度を有し、常温において前記第1光磁気層と交換結合可能に設けられた第2光磁気層と、を備えて構成する。
【0008】また、第3の発明は、第1の発明または第2の発明の光記録媒体から記録情報を再生する光記録媒体再生装置であって、前記光記録媒体に前記所定の偏光面を有する読出光を照射する光照射手段と、前記照射された読出光の前記光記録媒体の反射光または透過光のうちから、前記第1の偏光面を有する読出光または前記第2の偏光面を有する読出光のいずれか一方を分離する分離手段と、前記分離手段により分離された読出光を受光し読出信号として出力する受光手段と、前記読出信号に基づいて前記光記録媒体の記録情報の再生動作を行う再生手段と、を備えて構成する。
【0009】
【作用】第1の発明によれば、偏光面回転方向変化層は、外部から照射された所定の偏光面を有する読出光の強度分布あるいは前記読出光の照射に伴う温度分布に対応して、情報記録面上の読出光スポット内の第1の領域内の反射光または透過光の偏光面である第1偏光面の前記所定の偏光面に対する回転方向を当該読出光スポット内の他の領域である第2の領域内の反射光または透過光の第2偏光面の所定の偏光面に対する回転方向とは逆方向になるように変化させる。
【0010】したがって、第1偏光面を有する読出光あるいは第2偏光面を有する読出光のいずれか一方のみを受光することにより、情報記録面上の読出光スポット内の第1の領域内あるいは第2の領域内のいずれか一方に記録されている位相ピット(記録情報)のみの情報を再生することが可能となる。
【0011】第2の発明によれば、予め少なくとも第1光磁気層を外部の初期化磁界により垂直磁化方向を一定方向(以下、第1磁化方向という。)に揃えておき、読出光を照射することにより読出位置の温度を第2のキュリー温度よりも高い再生温度とする。
【0012】これにより、第2光磁気層の磁区は消失し、第1光磁気層と第2光磁気層の交換結合力が消失し、第1光磁気層は本来の第1の保磁力となる。このとき、前記第1磁化方向とは逆方向の第2磁化方向に対応する再生磁界を外部より印加すると、読出位置の第1光磁気層の垂直磁化方向は、第2磁化方向となる。
【0013】この結果、読出光の照射スポット内の第1光磁気層の読出位置のみ磁化方向が反転することとなり、当該読出位置のみ読出光の偏光面の回転方向が逆方向となる。従って、偏光面の回転方向に基づいて第1偏光面を有する読出光あるいは第2偏光面を有する読出光のいずれか一方のみを受光することにより、情報記録面上の読出光スポット内の第1の領域内あるいは第2の領域内のいずれか一方に記録されている位相ピット(記録情報)のみの情報を再生することが可能となる。
【0014】また、第3の発明によれば、光照射手段は、光記録媒体に所定の偏光面を有する読出光を照射し、分離手段は、この照射された読出光の光記録媒体の反射光または透過光のうちから、第1の偏光面を有する読出光または第2の偏光面を有する読出光のいずれか一方を分離する。
【0015】これにより、受光手段は、分離手段により分離された読出光を受光し読出信号として再生手段に出力し、再生手段は読出信号に基づいて光記録媒体の記録情報の再生動作を行う。
【0016】したがって、それぞれが読出光スポット内の一部分である第1の領域からの第1偏光面を有する読出光または第2の領域からの第2偏光面を有する読出光のいずれか一方に含まれる記録情報のみを再生することができ、読出光スポット内に複数個存在するような場合のように高い空間周波数を有する情報を再生することが可能となる。
【0017】
【実施例】次に、図面を参照して本発明の好適な実施例を説明する。
第1実施例図1に光ディスクの断面図を示す。
【0018】光ディスク1は、図1(a)に示すように、位相ピットが形成された基板2と、入射した直線偏光の読出光の偏光状態を読出光の照射に伴う温度分布に対応して回転させる偏光面回転方向変化層を構成する第1材料層3aと、同様に偏光面回転方向変化層を構成する第2材料層3bと、第1材料層3a及び第2材料層3bを保護する保護層4a、4bと、を備えて構成されている。尚、以下の説明においては、第1材料層3a、第2材料層3b、保護層4a及び保護層4bをまとめて光磁気層と呼ぶ。
【0019】光ディスク1を構成する第1材料層3aとしては、例えば、GdFeCoを用い、その組成はGdが20〜30[at%]のを用いるのがよく、特にGdが21〜24[at%]のものが好ましい。
【0020】この時の第1材料層3aの保磁力HC3a は、HC3a <1キロエルステッド(k oersted ):室温にてであり、より望ましくは、HC3a <500エルステッド(oersted ):室温にてである。
【0021】また、第1材料層3aのキュリー温度TC3a は、TC3a >200℃である。
【0022】また、第2材料層3bとしては、例えば、TbFe、DyFeを用い、その組成はTbが15〜35[at%]のを用いるのがよく、特にTbが16〜20[at%]あるいは26〜30[at%]のものが好ましい。
【0023】この時の第2材料層3bの保磁力HC3b は、HC3b >2キロエルステッド(k oersted ):室温にてであり、より望ましくは、HC3b >10キロエルステッド(k oersted ):室温にてである。
【0024】また、第2材料層3bのキュリー温度TC3b は、TC3b <150℃である。
【0025】以上の関係をまとめれば、第1材料層の保磁力HC3a 、飽和磁化MS1、膜厚をh1 とし、第2材料層の保持力HC3b 、飽和磁化MS2、膜厚をh2 とし、2層間の交換結合による界面磁壁エネルギーをσw とし、初期化磁界をHini とし、再生磁界をHrとすれば、室温においては、以下の条件が成り立つこととなる。
(I)第1材料層、第2材料層が共に希土類リッチ、または、遷移金属リッチの場合。
a)条件■:Hini >HC3a +(σw /(MS1・h1 ))
かつHC3a >(σw /(MS1・h1 ))
b)条件■:Hini >HC3a +(σw /(MS1・h1 ))
かつHini >HC3b −(σw /(MS2・h2 ))
ただし、条件■,■のうちいずれか一方が成立すればよい。
(II)第1材料層が希土類リッチ、第2材料層が遷移金属リッチの場合。またはその逆の場合。
a)条件■:Hini >HC3a +(σw /(MSi・h1 ))
かつHC3a >(σw /(Ms1・h1 ))
b)条件■:Hini >HC3a +(σw /(MS1・h1 ))
かつHini >HC3b +(σw /(MS2・h2 ))
ただし、条件■または条件■のいずれか一方が成立すればよい。
【0026】また、再生温度においては、次式で表される条件が成り立つこととなる。
Hr>HC3a図1に光ディスクのより具体的な構成例を示す。
【0027】光ディスクは、基板側からみて、誘電体保護層であるZnS層4a(85nm)、磁気光学効果を示す第1材料層であるGd22(Fe70Co3078層3a(50nm)、磁気光学効果を示す第2材料層であるTb20Fe80層3b(50nm)、誘電体保護層であるZnS層4b(30nm)の順番で形成されている。なお、括弧内の数値は各層の厚さの一例を示している。また、この場合において、偏光状態の回転は、主としてカー効果による。
【0028】また、図1(a)に示す光ディスク1は、材料層3a、3bの反射率が高いので、反射層を設ける必要がなかったが、材料層3a、3bの厚さを30nm程度として透過率を上げて反射型の光ディスク1’として用いるには、図1(b)に示すように、反射層5を設ける必要がある。好適には、反射層5として、Al、Au等を用いることができる。この場合の偏光状態の回転は主として、ファラディー効果による。
【0029】ここで、本実施例における光磁気ディスクの再生原理について説明する。図2(a)に示す初期状態においては、永久磁石等の磁化手段により、光磁気ディスクの光磁気層のすべての領域の垂直磁化方向はすべて同一方向(図面中、下方向)となるようにする。尚、原理的には第1材料層3aのみが初期化されれば良い。
【0030】そして再生時に、図2(b)に示すように、読出光の出力を調整した光スポットが照射されると、第2材料層3bの少なくとも光スポットの照射されている領域のうちの一部の領域Aの温度がキュリー温度(TC )以上に上昇することにより、領域ARの磁区が消失する。
【0031】この結果、磁区が消失した領域ARにおいては、第1材料層3a及び第2材料層3b間で生じていた交換結合力が消失し、第1材料層3aの保磁力は第1材料層本来の保磁力HC3a となる。
【0032】この結果、第1材料層3aの領域Aの磁化方向は上向きの外部磁界Hr(≦500エルステッド)により反転する。この結果、カー効果あるいはファラディー効果等の磁気光学効果により、上向きの磁化方向による材料層に依存した所定角度(+θ)だけ読出光の偏光面が回転し、第1偏光面を有する再生光が検出器により受光される。
【0033】また、光スポット内の領域ARを除く領域XAR(図2(c)参照)では、カー効果あるいはファラディー効果等の磁気光学効果により、下向きの磁化方向による材料層に依存した所定角度(−θ)だけ読出光の偏光面が回転し、第2偏光面を有する再生光が検出器により受光される。
【0034】そこで、偏光面の異なる2種の再生光を、偏光フィルタ、差動光学系等の分離手段を用いて分離すれば、読出光スポット内の一部分(例えば、領域A)に存在するピットの情報を選択的に検出することができる。この場合において、偏光面の差Δθは、Δθ=(+θ)−(−θ)=2θとなるので、容易に両再生光を分離することが可能となる。
【0035】読出光スポット内の一部分に存在するピットの情報を選択的に検出することは、光学的には読出光の波長λ及び対物レンズの開口数NAにより規定される読出光スポットの直径rよりも小さな開口を有するピンホールを光ディスクの情報記録面上に設けたことと等価となり、読出光スポット内に複数個存在するような微小サイズの位相ピット、すなわち、高い空間周波数f(f>fC )を有する位相ピットの情報を再生することが可能となる。
【0036】図3に光ディスク再生装置の主要部の構成を示す。光ディスク再生装置10は、読出光であるレーザ光を出射するレーザダイオード11と、レーザダイオード11から入射したレーザ光を透過し、後述のミラーから入射したレーザ光を反射するビームスプリッタ12と、レーザ光を導くためのミラー13と、レーザ光を光ディスクDKの情報記録面状に集光する対物レンズ14と、ビームスプリッタ12により反射されたレーザ光(再生光)のうち非読出領域からのレーザ光の後述の偏光ビームスプリッタにおける反射光量と透過光量の比率を調整する二分の一波長板(halfwave plate)15と、所定の偏光状態を有する偏光のみを透過し、他の光を反射する偏光ビームスプリッタ16と、偏光ビームスプリッタにより反射された偏光を受光し、第1読出信号R1 (RF信号)として出力する第1受光素子17aと、偏光ビームスプリッタ16を透過した偏光を受光し、第2読出信号R2 (RF信号)として出力する第2受光素子17bと、デコーダ、アンプ等を含み読出信号Rを再生信号Sに変換して出力する再生回路18と、光ディスクDKの垂直磁化方向を一定方向に揃える(以下、初期化という。)初期化磁石MG1 と、再生磁界を印加する再生磁石MG2 と、を備えて構成されている。
【0037】次に、図2乃至図4を参照して本実施例の動作を説明する。まず、光ディスクDKの光磁気層に磁石MG1 を用いて外部磁界Hini を与え、記録情報読出前の垂直磁化方向を一定方向(初期化:図面では、下方向。図2参照)とする初期化を行なう。
【0038】次に、レーザダイオード11から出射された直線偏光である読出光(レーザ光)のスポットLBは、ミラー13、ビームスプリッタ12、対物レンズ14を介して光ディスクDKの情報記録面上に集光され、図4(a)に示すように、トラックT1 上に読出スポットLBを形成し、この読出スポットLBはディスクDKの回転によりトラックT1 上を移動する。
【0039】ところで、トラックT1 上には、読出光の波長λ及び対物レンズ14の開口数NAで規定される空間周波数fc =2NA/λを越える空間周波数f(f>fC)を有する位相ピットが形成されている。具体的には、読出光スポットLB内に複数個の位相ピットP2 、P3 が存在し、このままではそれらの位相ピットP2、P3 の情報を分離することができず、正しい再生を行なうことができない。同様にして、図4(b)に示すように、読出光スポットLB内に複数のトラックT0 ’、T1 ’、T2 ’が含まれるような場合にも正しい再生を行なうことができない。
【0040】そこで、読出光の出力を調整すると、図4(c)に示すように、第2材料層3bの温度は、読出光スポットLBの後方部分の領域ARにおいてキュリー温度TC3b 以上に上昇し、例えば、図4(a)に示すような場合、位相ピットP2 が存在する領域ARの磁区が消失する。
【0041】この結果、第2材料層3bの磁区の消失した領域AR内においては、第1材料層3aと第2材料層3bとの間の交換結合力も消失し、第1材料層3aの保磁力は本来の保磁力となって、再生磁石MG2 の再生磁界Hr により第1材料層の磁化方向が反転することとなる。
【0042】この結果、読出光の情報記録面による反射光である再生光の偏光面は読出光の偏光面から磁気光学効果により材料層に依存した+θだけ回転されて、受光素子側に戻ることとなる。一方、領域ARを除く読出光LB内の位相ピットP3 が存在する領域XARにおいては、再生光の偏光面は読出光の偏光面と比較して、磁気光学効果により材料層に依存したある角度(−θ)だけ回転した状態で受光素子側に戻ることとなる。
【0043】領域AR及び領域XARからの再生光は混合状態で受光素子17a、17bに達するが、二分の一波長板15等を調節することにより、領域XARからの再生光量が第1受光素子17aと第2受光素子17bに等量づつ入射するように設定すると、第1読出信号R1 と第2読出信号R2 の差を取れば(差動出力)、領域XARからの再生光による信号成分は相殺され、領域XARはみかけ上遮蔽されることとなる。したがって、再生回路18においては、領域AR、すなわち、位相ピットP2 の情報のみを読み出すことが可能となり、再生信号Sは位相ピットP2 の情報のみを含むこととなる。
【0044】以上の説明のように、本第1実施例によれば、読出光の波長λと対物レンズ14の開口数NAによって規定される空間周波数fC (=2NA/λ)を越える空間周波数fを有する情報を再生することが可能となる。
【0045】さらに上記実施例における光学系は、現在広く用いられている書換可能型光磁気ディスクの記録再生装置と等価であるため、装置を共用することが可能となる。
【0046】さらにまた、二分の一波長板15等の調節によって、みかけ上遮蔽される領域を設定することができるので、図4(b)に示すように、ピット列方向ばかりでなく、トラックピッチ方向にも高密度化された光ディスクであっても、トラック間クロストーク、ピット間クロストークの発生が減少し、あるいは無視できるため、所望の位相ピットのみの情報を正確に再生することが可能となる。
第2実施例上記第1実施例においては、再生用磁界を印加することが必要であったが、本第2実施例はディスク形成後1度の初期化を行うだけで再生用磁界を印加することなく再生を行わせるものである。
【0047】光ディスク1”は、図5に示すように、位相ピットが形成された基板22と、入射した直線偏光の読出光の偏光状態を読出光の照射に伴う温度分布に対応して回転させる偏光面回転方向変化層を構成する第1材料層23aと、同様に偏光面回転方向変化層を構成する第2材料層23bと、初期化磁界Hini を印加するための初期化磁界印加層24と、初期化磁界印加層24を保護する保護層4a、4bと、ディスク全体を保護する保護層25と、を備えて構成されている。
【0048】光ディスク1”を構成する第1材料層23aとしては、例えば、GdFeCoを用い、その組成はGdが20〜30[at%]のを用いるのがよく、特にGdが21〜24[at%]のものが好ましい。
【0049】この時の第1材料層23aの保磁力HC23aは、HC23a<1キロエルステッド(k oersted ):室温にてであり、より望ましくは、HC23a<500エルステッド(oersted ):室温にてである。
【0050】また、第1材料層23aのキュリー温度TC23aは、TC23a>200℃である。
【0051】また、第2材料層23bとしては、例えば、TbFe、DyFeを用い、その組成はTbが15〜35[at%]のを用いるのがよく、特にTbが20〜23[at%]あるいは26〜30[at%]のものが好ましい。
【0052】この時の第2材料層23bの保磁力HC23bは、HC23b>2キロエルステッド(k oersted ):室温にてであり、より望ましくは、HC23b>10キロエルステッド(k oersted ):室温にてである。
【0053】また、第2材料層23bのキュリー温度TC23bは、TC23b<150℃である。
【0054】また、初期化磁界印加層24としては、例えば、GdFeCo、TbCo、TbFeCo、DyFeCo等を用いる。この時の初期化磁界印加層24の保磁力HC24 は、HC24 >5キロエルステッド(k oersted ):室温にてである。
【0055】また、初期化磁界印加層24のキュリー温度TC24 は、TC24 >200℃である。
【0056】以上をまとめると、HC23b、HC24 >HC23aC23a、TC24 >TC23bとなる。
【0057】光ディスクの具体的な構成としては、材料層23は、磁気光学効果を示す第1材料層であるGd22(Fe90Co1078層23a(30nm)、磁気光学効果を示す第2材料層であるTb20Fe80層23b(10nm)で構成し、初期化磁界印加層24は補償点材料であるTb24(Fe90Co1076で構成する。
【0058】この場合において、第1材料層23a、第2材料層23b及び初期化磁界印加層24は、室温で垂直磁化状態となる組成であれば良いが、初期化磁界印加層24が再生中に初期化能力を失わないようにするため、初期化磁界印加層24の補償温度Tcompが第2材料層のキュリー温度Tc とほぼ等しくなるのが望ましい。
【0059】この場合の再生条件及び初期化条件は、線速10m/secの場合、再生ビームパワー=2.0mW、再生磁界Hr =400エルステッド、初期化ビームパワー=6.0mW、初期化磁界Hini =500エルステッドとなる。
【0060】室温では、第1材料層23a、第2材料層23b及び初期化磁界印加層24は、各々交換結合力が働いて磁気的に強く結合しており、安定な状態にあるが、再生温度(例えば、120℃前後)では、第2材料層23bの磁区が消失する。
【0061】この結果、交換結合力が消失して、弱い再生磁界Hr (例えば、500エルステッド未満)により、第1材料層23aの磁化状態が初期状態と反転する。この結果、読出光のスポット内の磁化状態が反転した領域と、初期化状態のままの領域では、偏光面の回転方向が逆方向となり、容易に両読出光の反射光を分離することができ、超解像再生を行うことができる。
【0062】その後、読出光が通過し、読出光の照射後の位置の温度が室温に戻ると、再び第1材料層23a、第2材料層23b及び初期化磁界印加層24は、各々交換結合力が働いて磁気的に強く結合して、初期化が行われることとなる。
【0063】したがって、再生時に初期化磁界を印加する必要がなくなり、再生装置の構成を簡略化することが可能となる。
第3実施例上記第1実施例の光ディスク再生装置においては、2個の受光素子を有する差動光学系を用いて記録情報の再生を行っていたが、本第3実施例は、1個の受光素子を用いて光学系を構成した場合の実施例である。
【0064】図6に光ディスク再生装置の主要部の構成を示す。図3の第1実施例と同一の部分には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。光ディスク再生装置10Aは、読出光であるレーザ光を出射するレーザダイオード11と、レーザダイオード11から入射したレーザ光を透過し、後述のミラーから入射したレーザ光を反射するビームスプリッタ12と、レーザ光を導くためのミラー13と、レーザ光を光ディスクDKの情報記録面状に集光する対物レンズ14と、ビームスプリッタ12により反射されたレーザ光(再生光)のうち読出領域からのレーザ光のみを透過させる偏光板と、偏光板を透過した偏光を受光し、読出信号R’(RF信号)として出力する受光素子17’と、デコーダ、アンプ等を含み読出信号Rを再生信号Sに変換して出力する再生回路18と、を備えて構成されている。
【0065】次に動作を説明する。レーザダイオード11を出射したレーザ光はビームスプリッタ12を透過し、ミラー13により反射され、さらに対物レンズ14によりレーザ光を光ディスクDKの情報記録面上に集光される。
【0066】この時、ビームスポット内の光ディスクDKの状態は、図7に示すように、ビームの進行方向前方の領域が低温領域AL となりカー回転角θK =−a(a:ほぼ一定値)となり、進行方向後方の領域が高温領域AH となりカー回転角θK =+aとなる。
【0067】そこで、偏光板15をレーザダイオード側からの入射光と同一の偏光面を有する光を通すように設定すれば、低温領域AL からの反射光は偏光板15を透過しづらくなるので、高温領域AH からの反射光(カー回転角θK =+a)のみが偏光板15を透過し、受光素子R’により受光され、再生回路18により、再生信号Sとして出力されることとなる。
【0068】すなわち、低温領域AL がマスク領域となり、高温領域AH が読出領域となる。したがって、トラックピッチ方向にも記録密度を向上させることができ、より高空間周波数を有する記録情報を再生することが可能となる。
他の変形例以上の各実施例においては、光磁気記録材料について述べたが、光磁気記録材料に限らず、照射する光の強度あるいは材料層の温度に依存して偏光状態が初期の偏光状態に対して変化を生じる材料(例えば、フォトクロミック材料等)であれば、本発明を適用することが可能である。
【0069】さらに、以上の各実施例においては、レーザダイオード11の出射レーザ光をビームスプリッタ12、ミラー13、対物レンズ14を介してそのまま光ディスクDKの情報記録面に照射していたが、直線偏光性をよくするために、レーザダイオード11とビームスプリッタ12の間の光路中に偏光板を設け、偏光板を介して光ディスクDKに照射させてもよい。
【0070】さらにまた、以上の各実施例においては、読出光を直線偏光とする場合について説明したが、楕円偏光を用いるように構成することも可能である。また、偏光状態は2種類に限らないので、複数の偏光状態の再生光から一の偏光状態を有する再生光を分離するように構成しても良い。
【0071】また、上記各実施例では各材料層間で交換結合を行わせていたが、交換結合でなく静磁結合を行わせるべく構成することも可能である。
【0072】
【発明の効果】第1の発明によれば、偏光面回転方向変化層は、外部から照射された所定の偏光面を有する読出光の強度分布あるいは前記読出光の照射に伴う温度分布に対応して、情報記録面上の読出光スポット内の第1の領域内の反射光または透過光の偏光面である第1偏光面の前記所定の偏光面に対する回転方向を当該読出光スポット内の他の領域である第2の領域内の反射光または透過光の第2偏光面の所定の偏光面に対する回転方向とは逆方向になるように変化させるので、第1偏光面を有する読出光あるいは第2偏光面を有する読出光のいずれか一方を受光することにより、情報記録面上の読出光スポット内の第1の領域内あるいは第2の領域内のいずれか一方に記録されている位相ピット(記録情報)のみの情報を再生することが可能となり、読出光のビーム径により規定される空間周波数よりも高い空間周波数を有する記録情報を再生することができる。
【0073】第2の発明によれば、予め少なくとも第1光磁気層を外部の初期化磁界により垂直磁化方向を第1磁化方向に揃えておき、読出光を照射することにより読出位置の温度を第2のキュリー温度よりも高い再生温度とし、第2光磁気層の磁区を消失させて第1光磁気層と第2光磁気層の交換結合力を消失させ、さらに第1磁化方向とは逆方向の第2磁化方向に対応する再生磁界を外部より印加することにより、読出光の照射スポット内の第1光磁気層の読出位置のみ磁化方向が反転するので、偏光面の回転方向に基づいて第1偏光面を有する読出光あるいは第2偏光面を有する読出光のいずれか一方を受光することにより、情報記録面上の読出光スポット内の第1の領域内あるいは第2の領域内のいずれか一方に記録されている位相ピット(記録情報)のみの情報を再生することが可能となり、超解像再生を行うことができる。
【0074】また、第3の発明によれば、光照射手段は、光記録媒体に所定の偏光面を有する読出光を照射し、分離手段は、この照射された読出光の光記録媒体の反射光または透過光のうちから、第1の偏光面を有する読出光または第2の偏光面を有する読出光のいずれか一方のみを分離し、受光手段は、分離手段により分離された読出光を受光し読出信号として再生手段に出力し、再生手段は読出信号に基づいて光記録媒体の記録情報の再生動作を行うので、それぞれが読出光スポット内の一部分である第1の領域からの第1偏光面を有する読出光または第2の領域からの第2偏光面を有する読出光のいずれか一方のみに含まれる記録情報のみを再生することができ、読出光スポット内に複数個存在するような場合のように高い空間周波数を有する情報を再生することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例の光ディスクの詳細構造を示す断面図である。
【図2】光ディスクの再生原理を説明する図である。
【図3】第1実施例の光ディスク再生装置の主要部の構成図である。
【図4】第1実施例の再生動作の説明図である。
【図5】第2実施例の光ディスクの詳細構造を示す断面図である。
【図6】第3実施例の光ディスク再生装置の主要部の構成図である。
【図7】第3実施例の動作を説明する図である。
【図8】従来の情報読出原理の説明図である。
【符号の説明】
1…光ディスク
2…基板(位相ピット付き)
3…光磁気層
3a…第1材料層
3b…第2材料層
4a…誘電体層(ZnS層)
4b…誘電体層(ZnS層)
5…反射層(Al層)
10…光ディスク再生装置
11…レーザーダイオード
12…ビームスプリッタ
13…ミラー
14…対物レンズ
15…二分の一波長板
16…ビームスプリッタ
17a…第1受光素子
17b…第2受光素子
17’…受光素子
18、18a…再生回路
22…基板
23a…第1材料層
23b…第2材料層
24…初期化磁界印加層
25…保護層
H …高温領域
L …低温領域
1 …第1読出信号
2 …第2読出信号
R’…読出信号
MG1 …初期化磁石
MG2 …再生磁石
LB…読出光スポット
1 〜P4 …位相ピット
C3a ,TC3b ,TC23a,TC23b…キュリー温度
comp…補償温度
r …再生磁界
ini …初期化磁界
C3a ,HC3b ,HC23a,HC23b…保磁力

【特許請求の範囲】
【請求項1】 位相ピットによって情報が保持された光記録媒体であって、外部から照射された所定の偏光面を有する読出光の強度分布あるいは前記読出光の照射に伴う温度分布に対応して、前記情報記録面上の前記読出光スポット内の第1の領域内の反射光または透過光の偏光面である第1偏光面の前記所定の偏光面に対する回転方向を当該読出光スポット内の他の領域である第2の領域内の反射光または透過光の第2偏光面の前記所定の偏光面に対する回転方向とは逆方向になるように変化させる偏光面回転方向変化層を設けたことを特徴とする光記録媒体。
【請求項2】 請求項1記載の光記録媒体において、前記偏光面回転方向変化層は、第1の保磁力と所定の再生温度よりも高い第1のキュリー温度を有する第1光磁気層と、前記第1の保磁力より大きな第2の保磁力と前記再生温度よりも低い第2のキュリー温度を有し、常温において前記第1光磁気層と交換結合可能に設けられた第2光磁気層と、を備えていることを特徴とする光記録媒体。
【請求項3】 請求項1または請求項2記載の光記録媒体から記録情報を再生する光記録媒体再生装置であって、前記光記録媒体に前記所定の偏光面を有する読出光を照射する光照射手段と、前記照射された読出光の前記光記録媒体の反射光または透過光のうちから、前記第1の偏光面を有する読出光または前記第2の偏光面を有する読出光のいずれか一方を分離する分離手段と、前記分離手段により分離された読出光を受光し読出信号として出力する受光手段と、前記読出信号に基づいて前記光記録媒体の記録情報の再生動作を行う再生手段と、を備えたことを特徴とする光記録媒体再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図7】
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