説明

光記録媒体

【課題】 情報を記録するまでの間の遮光性を向上させ、安定した光情報の記録を可能にする。
【解決手段】 厚さ50μm以上の2枚の光透過性基板の間に、記録光によって情報が記録される厚さ100μm以上の光情報記録層を備える光記録体と、前記光記録体を収納する収納体とを備え、前記収納体が、紫外線および可視光線の透過率が1%以下である遮光材で形成されていることを特徴とする光記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層光メモリ、ホログラムメモリ等の3次元記録用の光記録媒体に関し、比較的厚みのある光記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、実用化され、または実用化が目前となっている光記録媒体として、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)やブルーレイディスク(Blu-Ray Disk)等の各種の光記録媒体が知られている。しかし、これらの光記録媒体の記録容量は、最高でも27GB程度であり、近年の高度情報化社会の進展に伴う情報の大容量化に対応するためには、さらなる高容量の光記録媒体の開発が求められている。そこで、高容量の光記録媒体として、ホログラフィックメモリ、多層光メモリ、近接場光を利用する光記録媒体などが注目され、次世代の光記録媒体として開発が進められている。
【0003】
ところで、従来の光記録媒体(CD−R、DVD、Blu-Ray Disk)は、光のもたらす熱エネルギーによって記録材料の相転移、磁化反応または熱変形を誘起させて情報を記録する、いわゆるヒートモードによって情報を記録するものである。これに対して、ホログラフィックメモリ等の次世代の光記録媒体は、光エネルギーによる記録材料の化学変化を利用する、いわゆるフォトンモードによって情報を記録するものである。このフォトンモードによる光記録は、ヒートモードの場合に比べて、原理的に高速・高密度の記録が可能であると考えられる。しかし、フォトンモードによる光記録には、写真フィルムに代表されるように、光記録材料として非常に感度が高い材料が用いられる。そのため、情報を記録するまでは、光記録材料に光が入射しないように、光記録媒体に遮光性を付与することが重要になってくる。
【0004】
そこで、特許文献1には、光硬化性有機材料からなるホログラム記録層を2枚の保持基板で保持する構造のホログラム記録媒体の遮光性を向上させるために、記録媒体を遮光カートリッジに収納することが開示されている。しかし、光硬化性の有機材料を用いるヒートモードの光記録ではなく、さらに高感度のフォトンモードによる光記録材料を用いる光記録媒体では、光記録媒体に記録光を照射して情報を記録するまでの間、予期しない光の侵入(漏れ光)によって光記録材料が感光し、安定した情報の記録が困難になることを防止するため、さらに遮光性を高くする必要がある。特に、ディスク状の媒体においては、記録・再生時に、ディスクを回転させるためのハブが、ディスクの中心部に取り付けられるため、カートリッジのハブ周辺部分から漏れ光が発生するおそれがある。このような漏れ光を防止するためにも、記録媒体全体の遮光性を向上させる必要がある。
【特許文献1】特開2004−29476号公報(請求項4、請求項5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、情報を記録するまでの間の遮光性を向上させ、安定した光情報の記録を可能にする光記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明の光記録媒体は、厚さ50μm以上の2枚の光透過性基板の間に、記録光によって生じる光記録材料の構造変化によって情報が記録される厚さ100μm以上の光情報記録層を備える光記録体と、前記光記録体を収納する収納体とを備え、前記収納体が、紫外線および可視光線の透過率が1%以下である遮光材で形成されていることを特徴とする。
【0007】
この光記録媒体において、厚さ50μm以上の2枚の光透過性基板の間に、記録光によって情報が記録される厚さ100μm以上の光記録層を有する光記録体を収納する収納体を、紫外線および可視光線の透過率が1%以下の遮光材で形成することによって、情報を記録するまでの間の遮光性を向上させ、安定した光情報の記録が可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の光記録媒体は、情報を記録するまでの間の遮光性が向上するため、光記録媒体に記録光を照射して情報を記録するまでの間、予期しない光の侵入(漏れ光)によって光記録材料が感光し、安定した情報の記録が困難になることが防止される。特に、ディスク状の媒体においては、ディスクのハブ周辺部分からの漏れ光が防止される。そのため、本発明の光記録媒体は、安定した光情報の記録が可能となる。また、遮光包装体で包装した場合には、さらに情報を記録するまでの遮光性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る、ホログラフィック記録用の光記録媒体OM1の表側を示す概略斜視図、図2は、その光記録媒体OM1の裏側を示す概略斜視図である。
【0010】
図1に示す光記録媒体OM1は、光記録体2と、その光記録体2を収納する遮光カートリッジ(収納体)3とで構成される。
【0011】
光記録体2は、図3の概略斜視図および図4の模式断面図のとおり、光透過性基板21,22と、その光透過性基板21と光透過性基板22の間に介設された光情報記録層23とを有し、ホログラムによる記録および再生の際に、光記録体2を回転させるための駆動機構(図示せず)が装着される嵌装孔24が中心に穿設された円盤状の積層体として構成される。
【0012】
光透過性基板21,22は、特に限定されず、天然または合成の有機合成樹脂からなるフィルムまたはシートで構成される。例えば、ガラス等の無機物、ポリカーボネート(以下、「PC」と略す。)、トリアセチルセルロース(以下、「TAC」と略す。)、シクロオレフィンポリマー、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と略す。)、ポリフェニレンスルフィド(以下、「PPS」と略す。)、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アモルファスポリオレフィン等の有機合成樹脂等が挙げられる。特に、複屈折が低いことから、PC(ポリカーボネート)などが好ましい。この光透過性基板21と光透過性基板22とは、同一の材料で形成されていてもよく、また、異なる材料で形成されていてもよい。
【0013】
光透過性基板21は、光情報記録層23に接する表面21a(図4参照)に、反射層を設けてもよく、反射層は、Au、Ag、Al、Pt、Cu、Ni、Si、Ge、Cr等の元素成分を単独もしくは他の元素を含んだ状態でスパッタリングしたものを用いて形成されることが好ましい。
【0014】
また、光透過性基板21、22は、取り扱い時の剛性の観点から、厚さが50μm以上の比較的厚みのあるものであり、50〜1500μm程度の厚さであることが好ましい。
【0015】
この2枚の光透過性基板21,22は、光情報記録層23に情報を記録する記録光、光記録体OM1に記録されるサーボ制御情報を再生するための読み取り光、および光記録材料の定着に用いられる光(定着光)の波長領域に吸収を有しない材料で形成されたものであることが好ましい。これによって、熱の影響を受けずに、情報の記録および定着が可能となる。
【0016】
記録光、光記録体OM1に記録されるサーボ制御情報を再生するための読み取り光、および光記録材料の定着に用いられる光の波長領域に吸収を有しない材料としては、前記光透過性基板21,22に用いられる素材で、かつ前記記録光、サーボ光および定着光の波長領域に吸収を有しないものが用いられる。
【0017】
さらに、光透過性基板21の光情報記録層23と接する表面21aに、トラッキング・サーボ、フォーカス・サーボ等のサーボ制御を行うための情報、また、光情報記録層のアドレスを識別する情報などを示す凸凹プリフォーマットパターンや、ピットからなるサーボ信号記録領域を予め形成しておいてもよい。これによって、ホログラムメモリにおいて、光情報記録層における参照光および情報光の干渉による干渉縞の形成が正確に行われ、光情報を正確に記録することが可能となる。また、再生においても、参照光による光情報の再生を正確に行うことが可能となる。このサーボ信号記録領域に記録する情報は、光情報記録層23を構成する光記録材料が吸収しない600nm以上のレーザを使用して再生される。また、また、光情報記録層23の上に、酸素や水分を遮断するための保護層を設けてもよい。
【0018】
一般的にホログラフィックメモリの材料としては、ハロゲン化銀や重クロム酸ゼラチン、フォトリフラクティブ材料、フォトクロミック材料、フォトポリマ材料などが挙げられる。これらの中でも、フォトポリマ材料は、高回折効率が得られること、低ノイズであること、記録後に完全に定着をすれば保存安定性が良好である特徴を有する。このフォトポリマ材料は、通常、バインダ、重合性モノマー、増感色素、重合開始剤などを含有する。バインダと重合性モノマーは屈折率の異なるものを使用することが望ましい。光情報の記録時において、光記録媒体の光情報記録層23内に干渉縞が形成されると、干渉縞の明部においては、増感色素が励起されて電子を放出する。放出された電子は、重合開始剤に移動してラジカルを発生させ、このラジカルが重合性モノマーに移動して重合が開始される。重合性モノマーによっては、酸発生剤で重合を起こすものもある。その結果、干渉縞の明部ではモノマーリッチに、干渉縞暗部ではバインダリッチな構成になり、屈折率差が干渉縞として光記録媒体内に記録される。光情報の記録に使用されなかった重合性モノマーは、記録後にレーザや白色光源を用いて全面露光され、定着処理される。また、素材によっては、熱処理によって定着される場合もある。
【0019】
バインダは、透過率が高く、複屈折の低いものが望ましい。バインダの具体例としては、塩素化ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレートと他の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体、塩化ビニルとアクリロニトリルの共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、エチルセルロース、アセチルセルロース、ポリカーボネートなどが挙げられる。
【0020】
フォトポリマ材料の場合には、バインダとモノマーの屈折率差で記録がなされるため、記録に適した屈折率を有するモノマーが使用される。重合性モノマーは、重合可能な重合性基を有するものであれば、特に限定はされない。例えば、ラジカル重合性モノマー、カチオン重合性モノマーもしくは両モノマーを併用してもよく、具体的には、エポキシ基、エチレン性不飽和基等の重合性基を含む化合物が挙げられる。これらの重合性基を分子内に1つ以上含む重合性モノマーが使用され、分子内に2つ以上の重合性基が含まれる場合は、2つ以上の重合性基は異なるものでもよいし、同じものでもよい。
【0021】
増感色素は、記録光の波長に吸収ピークを有するものが使用され、記録光の波長における色素自体の光吸収係数εが低いものが好ましい。この増感色素としては、シアン系、メロシアン系、フタロシアン系、アゾ系、アゾメチン系、インドアニリン系、キサンテン系、クマリン系、ポリメチン系、ジアリルエテン系、フルギドフルオラン系、アントラキノン系、スチリル系等の公知の有機色素や錯体色素を用いることができる。
【0022】
重合開始剤は、80℃以下で熱不活性であり、適当な遊離ラジカルを発生するものであれば、特に制限されない。また、カチオン重合性の重合性モノマーを用いる場合は、酸発生剤を用いることが好ましい。
【0023】
また、上記の物質以外でも、干渉縞の明暗に沿って素材の物性が変化し、屈折率差や透過率差などが生じる物質であれば、光記録材料として用いることができる。例えば、色素の発色や消色に伴う屈折率変化を生じるものを用いることができる。また、これらの組み合わせ、例えば、光の照射によって発色または消色する色素とフォトポリマ−を含む組成物、フォトリフラクティブ材料とフォトポリマ−を含む組成物なども、ホログラム記録材料として用いることができる。
【0024】
また、光情報記録層23は、記録光によって生じる光記録材料の構造変化によって情報が記録される。この光情報記録層23は、例えば、記録光が照射されたときに光情報記録層23内に形成される干渉縞の明暗に沿って、屈折率、透過率、誘電率、反射率、吸収率等の光学的特性が変化する光記録材料で形成される。
【0025】
記録光によって生じる光記録材料の構造変化によって情報が記録される光情報記録層23としては、例えば、記録層中に、バインダ、増感色素、酸(塩基)発生剤、酸(塩基)発生により構造変化して屈折率変調を起こす色素を含み、これらを混合したもの、また、増感色素自体が構造変化を起こして屈折率変調を起こす物質、フォトクロミック材料やフォトリフラクティブ材料などが挙げられる。増感色素としては、前期光記録材料の成分として用いられるものを使用できる。屈折率変調を起こす色素は、記録光の波長領域に吸収がなく、酸/塩基などにより構造が変化する色素が挙げられる。酸発生剤としては、例えば、ジアリールヨードニウム塩、スルホニウム塩、スルホン酸エステルなどが挙げられる。
【0026】
この光記録材料は、増感剤、光学的増白剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、連鎖移動剤、可塑剤、着色剤等のこの種の光記録媒体の光情報記録層の形成に常用されるものを、必要に応じて含んでいてもよい。
【0027】
光情報記録層23の厚さは、100μm以上、好ましくは100μm〜2mm、さらに好ましくは200μm〜1.5mmである。100μm未満であると、ホログラムメモリ等の高記録密度および高容量の3次元光記録を行うことが困難となる。
【0028】
さらに、光透過性基板21の外面21b、光透過性基板22の外面22b、または光透過性基板21が光情報記録層23と接する表面21a、光透過性基板22が光情報記録層23と接する表面22aに、光情報記録層23に情報を記録する記録光、光記録体OM1に記録されるサーボ制御情報を再生するための読み取り光、および光記録材料の定着処理に用いられる光の波長領域に吸収を有しない材料からなる遮光層を設けてもよい。これによって、遮光カートリッジ3による遮光性の向上とともに、光情報記録層23における記録光による情報の記録、および光情報記録層23からの情報の読み取り再生を良好に行なうことができる。
【0029】
この遮光層を構成する遮光材料は、例えば、バインダに色素や顔料を分散させたものなどが挙げられる。色素および顔料は、前記記録光、サーボ光および定着光の波長領域に吸収を有しないものを使用する。バインダは、前記光記録材料の成分として記載したものを、色素は、前記光記録材料の増感色素として記載したものを、それぞれ用いることができる。
【0030】
次に、遮光カートリッジ3は、図1に示すとおり、上ハーフ4aと、下ハーフ4bとを接合して構成される筐体からなり、内部に収納される光記録体2に情報を記録するための記録光、および情報の読み取りのための光が入射される開口部5が、上ハーフ4aと下ハーフ4bの側面から中心に向けて穿設されている。この開口部5は、開閉シャッタ6が装着されている。開閉シャッタ6は、例えば、図示しないバネ等によって、情報の記録または再生時以外は、光の入射を阻止するため、開口部5を閉塞するよう常時付勢されている。また、遮光カートリッジは、光記録体2を回転させるための駆動機構(図示せず)を有する。そして、図2に示すとおり、情報の記録および再生に際して、開閉シャッタ6を開放して、開口部5を開口することによって、下ハーフ4bの下面7から前記駆動機構が挿入されるとともに、光記録体2への情報の記録および情報の記録再生が行なわれる。ただし、開口部5は、上ハーフ4aおよび下ハーフ4bの両方が開いている構造となっている。
【0031】
この遮光カートリッジ3は、紫外線および可視光線の透過率が1%以下、好ましくは透過率が0.01〜0.5%の遮光材で形成される。すなわち、前記の上ハーフ4a、下ハーフ4bおよび開閉シャッタ6は、遮光材で形成される。上ハーフ4a、下ハーフ4bおよび開閉シャッタ6は、同一の遮光材で形成されていてもよいし、異なる遮光材で形成されていてもよい。
【0032】
また、遮光カートリッジ3を形成する遮光材料は、金属、プラスチック、ガラス等が用いられる。また、プラスチックやガラスを用いる場合には、遮光性を向上させるために、色素や顔料を含有させることができる。
【0033】
色素としては、シアニン系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、アゾ系、アントラキノン系、ナフトキノン系、ピリリウム系、アズレニウム系、スクワリリウム系、インドフェノール系、インドアニリン系、トリアリールメタン系等の公知の有機色素を用いることができる。これらの色素は1種単独であるいは2種以上を併用してもよい。
【0034】
顔料としては、例えば、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物等の非磁性無機化合物、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂粒子などが使用できる。無機化合物の具体例としては、α化率90%以上のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、θ−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、ヘマタイト、ゲータイト、コランダム、窒化珪素、酸化チタン、二酸化珪素、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二硫化モリブデン、酸化亜鉛、酸化インジウム、カーボンブラック、チタンバイド、ITO(酸化錫−酸化インジウム)などが挙げられる。これらの顔料は、1種単独でまたは2種以上を組合せて使用することができる。これらの顔料は、必要に応じて、表面処理を施したものを用いてもよい。
【0035】
また、光記録媒体OM1は、前記収納体が、遮光包装体で包装されていることが望ましい。これによって、光記録媒体OM1を使用して、光記録体2の光情報記録層23に情報を記録するまでの遮光性を向上させることができる。また、遮光カートリッジ3の周辺部分やハブ取りつけ部分から漏れ光が侵入することがなく、光記録媒体OM1の落下等によって遮光カートリッジ3が損傷したり、ユーザーが誤って遮光カートリッジ3を開けてしまうなどの不測の事態を防止することができる。
【0036】
この遮光包装体は、遮光性を有するとともに、光記録媒体OM1を保護して収納するために、密閉性が高く、破れにくく、加工しやすいものが望ましい。この遮光包装体を使用することは、光記録体2の吸湿を防止し、また、防塵の観点からも望ましい
【0037】
この遮光性包装体を構成する遮光包装材は、遮光材を含有する、または遮光材からなる遮光層で被覆した基材フィルムまたはシートなどを用いることができる。基材フィルムまたはシートとしては、例えば、ポリエステル樹脂、アイオノマー樹脂、セルロース系樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂(ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン12)、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアクリルニトリル樹脂、エチレン・α−オレフィン共重合体樹脂、プロピレン・α−オレフィン共重合体樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂などからなるフィルムまたはシートを用いることができる。これらの基材フィルムまたはシートは、延伸フィルムまたはシートであってもよいし、2層以上の多層フィルムまたはシートであってもよい。さらに、補強フィルムまたはシートで補強されたものでもよい。また、フィルムやシートには、可塑剤等を添加してもよい。
【0038】
遮光材としては、アルミニウム箔、鉛箔、アイアンフォイル、錫箔、亜鉛箔、電解鉄箔、銅箔、ステンレス箔等の金属箔、カーボンブラック等を用いることができる。また、遮光層を形成する場合は、基材フィルムまたはシートの表面に、スプレー塗布法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、電子ビーム蒸着法等によって、遮光材を被覆することによって遮光層を形成することができる。また、遮光層に加えて、水分や酸素を遮断する性能を有する層を設けてもよい。さらに、帯電防止層を設けてもよい。
【0039】
この遮光包装体およびその製造方法の具体例として、特開平5−281664号公報に記載された感光材料用包装材料を用いた包装袋、およびその製造方法を用いることができる。
【0040】
この遮光包装体は、光記録体2の湿度膨張や収縮、光記録体2の光情報記録層23の反応性低下を防ぐ目的で、内部に不活性ガスもしくは湿度が10%以下の空気が充填されているか、もしくは、内部が真空状態であることが好ましい。不活性ガスとしては、例えば、He、Ne、Ar、N2もしくはこれらの2種以上を含む混合ガスが挙げられる。
【0041】
前記実施形態の光記録媒体OM1は、回転円盤状の光記録体2を遮光カートリッジ3内に収納した形態の例であるが、本発明の光記録媒体は、この実施形態に限定されず、カード型、小型チップ型、直方体型等の各種の形態のものでもよい。例えば、光透過性基板21、光情報記録層23、光透過性基板22の順に積層された構造を有するカード型の光記録体を、その光記録体の形状、用途等に対応して構成された遮光性カートリッジに収納した形態の光記録媒体が挙げられる。この光記録媒体においても、光透過性基板21と光情報記録層23の間に反射層、および光情報記録層23と光透過性基板22の間に保護層、酸素遮断層、水分遮断層等を設けてもよい。
【0042】
光記録体2の製造は、2枚の光透過性基板21,22の間に、光情報記録層23が介設された構造を形成できる方法であれば、特に制限されず、いずれの方法にしたがって行ってもよい。例えば、光透過性基板21の片面に、光記録材料を塗布して光情報記録層23を形成する工程と、前記光情報記録層の上に、もう1枚の光透過性基板22を貼り合わせる工程と、2枚の光透過性基板21,22の間に光情報記録層23が挟まれた構造の積層体の側縁部に保護被膜を形成する工程を含む方法が挙げられる。光透過性基板21,22は、所定の形状に成形しておき、光透過性基板21の片面に光情報記録層23を形成した後、光透過性基板22を貼り合わせて、所定の形状の光記録媒体を製造することもできるし、光透過性基板21,22の間に光情報記録層23を形成した後、打ち抜き、切断等の方法によって所定の形状に成形する。この光記録体は、その用途にしたがって、ディスク状(光記録体2)、カード状などの所定の形状に成形することができる。
【0043】
さらに、前記の実施形態は、ホログラフィック記録用の光記録体を例として説明したが、本発明は、ホログラフィック記録用の光記録体に限定されず、他の3次元光記録体、例えば、多層光メモリによる光記録体、2光子吸収を利用する多層光メモリ等の各種の光記録体を遮光カートリッジに収納した形態の光記録媒体に適用可能である。
【0044】
光透過性基板21の上に光情報記録層23を形成する工程は、光透過性基板21の上に、光記録材料を含む塗布液を所定の厚さに塗布した後、乾燥して光情報記録層23を形成することによって行なうことができる。また、光透過性基板21の上に光記録材料を含む塗布液を塗布して乾燥する工程を繰返して所定の厚さの光情報記録層23を形成することによって行なってもよい。
【0045】
光記録材料を含む塗布液は、前記の光記録材料および必要に応じて配合されるその他の成分を混合し、溶剤を加えて撹拌することによって調製することができる。この塗布液の調製は、光記録材料の硬化を防止するため、赤色灯等の暗室照明下で行うことが好ましい。
【0046】
用いられる溶剤としては、用いる光記録材料を十分に溶解し、良好な塗膜性を与えるものであれば特に制限はないが、例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のセロソルブ系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のプロピレングリコール系溶剤、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチルオキサレート、ピルビン酸エチル、エチル−2−ヒドロキシブチレートエチルアセトアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル等のエステル系溶剤、ブタノール、ヘプタノール、ヘキサノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール等のアルコール系溶剤、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、ジメチルケトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドN−メチルピロリドン等の高極性溶剤、アセトニトリル等のシアン化炭化水素系溶剤、あるいはこれらの混合溶剤、さらには、これらに芳香族炭化水素を添加したもの、あるいはジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶剤などが挙げられる。溶剤の割合は、記録材料の総量に対して、通常、質量割合で10〜90%程度の範囲である。また、溶剤は、沸点が100℃以下のものを使用することが好ましい。
【0047】
また、塗布液の粘度は、用いる塗布方法によって適宜調整されるが、通常、0.1〜50Ps程度である。特に、ドクターナイフ等のコーターナイフを用いて塗布する場合には、1〜30Ps程度の粘度であることが好ましい。
【0048】
光透過性基板21への塗布液の塗布方法は、ディップコート法、コータ、ロッド、コイルバー、ギーサー、ブレード器、スピンコート等によって行うことができる。特に、均一かつ厚い光情報記録層を得るためには、コイルバーまたはロッドを用いて塗布する方法が好ましい。
【0049】
さらに、この光記録体を所定の遮光カートリッジに収納して、本発明の光記録媒体を製造することができる。遮光カートリッジは、収納する光記録体の形状、光記録媒体の用途等に応じて、所定の形態に、射出成形等の方法によって、製造することができる。
【0050】
次に、遮光包装体に光記録媒体を収納する場合は、遮光包装体に光記録媒体を入れた後、開口部を、接着剤による接着、熱シール等によって閉塞することによって、遮光包装体内に光記録媒体を密閉収納することができる。このとき、必要に応じて、遮光包装体内に不活性ガスまたは湿度10%以下の空気して密閉してもよいし、あるいは遮光包装体に光記録媒体を入れた後、遮光包装体内の空気を抜きながら密閉して遮光包装体内を真空状態にすることができる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明の実施例および比較例により本発明を具体的に説明する。
【0052】
<塗布液Aの調整>
表1に示すバインダ、モノマー、重合禁止剤(モノマー中に含有されている)、増感色素および重合開始剤を、赤色灯下で秤量して褐色ナス型フラスコに入れるとともに、さらに溶剤としてジクロロメタンを入れ、スターラを用いて3時間攪拌し、下記表1に示す処方の光記録材料を含む塗布液Aを得た。この塗布液Aの粘度は、21[Ps]であった。
【0053】
【表1】

【0054】
注)
CAB531−1:セルロースアセテートブチレート(イーストマンケミカル社製)
POEA:アクリル酸2−フェノキシエチル(CasNo.48145−04−6)
MEHQ:4−メトキシフェノール(CasNo.150−76−5)
DEAW:シクロペンタノン−2,5−ビス[[4−(ジエチルアミノ)フェニル]メチレン](CasNo.38394−53−5)
MBO:2−メルカプトベンズオキサゾール(CasNo.2382−96−9)
o−Cl−HABI:2,2−ビス[o−クロロフェニル]−4,4,5,5−テトラフェニル−1,1−ビイミダゾール(CasNo.1707−68−2)
【0055】
透明基板(ポリカーボネート、厚さ80μm)の上に、300μmのクリアランス(ギャップ長)のコータを用いて塗布液Aを塗布して、40℃で3分間乾燥した。さらに、引き続いて、塗布液Aの塗布および乾燥を行う工程を2回繰返して、透明基板の上に厚さが120μmの光情報記録層を有する積層体を形成した。次に、この積層体を直径12cmの円板状に打ち抜き、得られた円板状の積層体を、円板状のガラス基板(厚さ:1mm)を貼り合わせて光記録体を製作した。
【0056】
<遮光カートリッジ>
カーボンブラックを30質量%含有するポリカーボネートを用いて、図1および図2に示す構造の遮光カートリッジ3を作成した。得られた遮光カートリッジ3について、外側から内側への光透過率を測定したところ、300nm,400nm,500nm,600nmおよび700nmの各波長における光透過率が、全て1%以下であった。
【0057】
この遮光カートリッジ3に、前記に製作した光記録体を収納して、図1に示す構造の光記録媒体を製造した。
【0058】
<遮光袋>
さらに、表面をアルミラミネートしたポリエチレンシートで遮光袋を作成し、前記の光記録媒体を包み、開放部分がないように熱圧着でシーリングを行った。
【0059】
(実施例2)
<塗布液Bの調整>
バインダ、酸で消色する色素、酸発生剤、および増感色素を赤色灯下で秤量して褐色ナス型フラスコに入れるとともに、さらに溶剤を入れ、スターラを用いて3時間攪拌し、下記表2に示す処方の光記録材料を含む塗布液Bを得た。
【表2】

【0060】
PMMA:ポリメチルメタクリレート(Aldrich社製、Mw:996000)
色素A:下記式(a)で表わされる第4級アンモニウム塩
酸発生剤A:ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロりん酸
(CasNo.58109−40−3)
色素B:下記式(b)で表わされるRu錯体化合物
【化1】

【0061】
この塗布液Bを、塗布液Aの代わりに用いた以外は、実施例1と同様にして光記録媒体のサンプルを製作した。
【0062】
この塗布液Bによって形成された光情報記録層においては、干渉縞明部において、レーザにより増感色素Aが励起され、励起された色素から電子が放出される。放出された電子は酸発生剤に移動して、酸発生剤より酸が発生する。この酸により、増感色素とは異なる色素B(酸により消色する色素)が消色し、屈折率が変化する。このように、干渉縞明部の色素を消色することにより、屈折率変調を起こし、ホログラムが記録される。
【0063】
<評価>
実施例1および実施例2で得られた光記録媒体を、25℃、40RH%の雰囲気中、蛍光灯下で1週間保存して、保存前後の回折効率を下記の方法にしたがって測定した。また、比較のために、実施例1および実施例2で製作した光記録体を比較例1および比較例2として、それぞれ遮光カートリッジに収納せず、そのまま同様に保存して、保存前後の回折効率を測定した。さらに、光情報記録層の厚さを測定した。結果を表3に示す。
【0064】
図5に示すとおり、YAGレーザ源31から、対物レンズ32、レンズ33、ビームスプリッタ34およびミラー35を介して、光記録体36の表面Aに照射される波長532nmのYAGレーザ光L1を用いて、光記録体36の表面に、入射角度15度でスポット径8mmφ、出力3mW/ビーム、記録エネルギ2000[mJ/cm2]で、飽和露光記録を行った。その後、光記録体36に紫外線(キセノンランプ100W)を1時間照射して、記録されたホログラムの定着を行った。
【0065】
次に、He−Neレーザ源38からミラー39およびミラー40を介して、波長633nmのHe−Neレーザ光L2を、光記録体36の裏面Bに入射角度18度で照射して、露光量に対する回折効率の変化を観測した。このとき、回折効率は、光記録体36の表面Aの側に設けられたパワーメータ41によって測定されるHe−Neレーザの回折光の光量と、光記録体36の裏面Bに入射するHe−Neレーザの入射光量(He−Neレーザ源38からの出射光量)とから下記の式によって求めた。
回折効率(%)=回折光の光量/入射光量×100
【0066】
光情報記録層の厚さ
ソニー社製DIGITAL MICROMETERを用いて、光情報記録層の厚さを測定した。厚さは、まず光記録体全体の厚さを測定し、透明基板とガラス基板の厚さを差し引いて求めた。
【表3】

【0067】
表3に示すとおり、実施例1の光記録媒体では、回折効率は、保存前とほとんど変わらない値を示した。また、実施例2の光記録媒体では、保存後の回折効率は、保存前の32%と比べて28%に低下しているが、光記録媒体として問題はないレベルであった。次に、比較例1では、保存後の回折効率は、1%に低下していた。また、比較例2では、保存後の回折効率は、1.5%に低下していた。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施形態に係る光記録媒体を示す概略斜視図である。
【図2】図1に示す光記録媒体の下面側を示す概略斜視図である。
【図3】光記録体を示す概略斜視図である。
【図4】光記録体の構造を示す模式断面図である。
【図5】回折効率の測定方法を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0069】
2 光記録体
3 遮光カートリッジ
21 光透過性基板
22 光透過性基板
23 光情報記録層
OM1 光記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ50μm以上の2枚の光透過性基板の間に、記録光によって生じる光記録材料の構造変化によって情報が記録される厚さ100μm以上の光情報記録層を備える光記録体と、
前記光記録体を収納する収納体とを備え、
前記収納体が、紫外線および可視光線の透過率が1%以下である遮光材で形成されていることを特徴とする光記録媒体。
【請求項2】
前記2枚の光透過性基板が、前記記録光、前記光記録体に記録されるサーボ制御情報の読み取り光、および前記光記録材料の定着に用いられる光の波長領域に吸収を有しないことを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項3】
前記光透過性基板の外面、または前記2枚の光透過性基板と光記録層の間に、前記記録光、前記光記録体に記録されるサーボ制御情報の読み取り光、および前記光記録材料の定着に用いられる光の波長領域に吸収を有しない遮光層を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光記録媒体。
【請求項4】
前記収納体が、遮光包装体で包装されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光記録媒体。
【請求項5】
前記遮光包装体は、内部に不活性ガスもしくは湿度が10%以下の空気が充填されていることを特徴とする請求項4に記載の光記録媒体。
【請求項6】
前記遮光包装体は、内部が真空状態であることを特徴とする請求項4に記載の光記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−85771(P2006−85771A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−267093(P2004−267093)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】