説明

光記録媒体

【課題】 2枚の光記録媒体の間の気密領域が陰圧になることを防ぎ、搬送エラーを起こさない光記録媒体を提供すること。
【解決手段】 中心孔を有する略円盤状の基板上に、少なくともカバー層と、該カバー層と該基板に対して反対側に印刷層とを備えた光記録媒体において、該基板に、該印刷層の内周側に凸状の内周リム部と、該印刷層の外周側に凸状の外周リム部とが設けられ、該内周リム部及び/又は該外周リム部の表面の略全面に、凹凸構造が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、市場に広く受け入れられ、光学的に情報を記録し、読み込みが可能な光情報記録層を有する光記録媒体としては、CD(Compact Disk)やDVD(Digital Versatile Disk)がある。また、最近では、より高密度記録を行うために短波長の青色レーザを用いた大容量記録媒体であるブルーレイディスク(BD)も実用化され始めている。
【0003】
これらの光記録媒体には、分類や保管を容易にするため、または記録されているデータの内容を容易に確認できるようにするために、光記録媒体のレーベル面(レーザー光を照射して情報の記録を行う場合のレーザーの入射側とは反対側の面)に内容表示等がされた印刷層を有している場合がある。
この印刷層の例としては、スクリーン印刷等の印刷方式によりレーベル面に直接設けられたインク自体の層である場合や、ユーザーがインクジェットプリンタ等により任意の可視情報を記録可能な印刷受容能を有する層である場合等が実用化されている。
【0004】
光記録媒体の保管や運搬等をするときは、複数の光記録媒体を、情報記録面(レーザー光を照射して情報の記録を行う場合のレーザーの入射側の面)とレーベル面とが対向するように積み重ねることが一般的に行われている。その際、情報記録面及びレーベル面に傷がつかないように、通常各面に工夫がなされている。具体的には、印刷層よりも内周側及び/又は外周側に、凸部を設けることにより、光記録媒体を積み重ねた場合に、光記録媒体同士がこの凸部で接触するようにすることにより、情報記録面及びレーベル面同士が接触しないように設計されている(特許文献1、2参照。)。
【0005】
ここで、図1を用いて印刷層を有する光記録媒体の一例を示す。図1は、略円盤状の光記録媒体を、中心を通る情報記録面に垂直な断面で切断した場合の断面図である。この光記録媒体100は中心に中心孔2を有する基板1上のレーベル面に印刷層3、情報記録面に少なくとも記録層(図示せず)及びカバー層4がこの順に設けられており、レーベル面の保護のために、光記録媒体100の内周端部と外周端部に凸状の内周リム部5と外周リム部6が設けられ、また、情報記録面の保護のために、情報記録面の内周端近傍に凸状のプロテクションリング7が設けられている。これら光記録媒体の基板1上に設けられた凸状の構造体(内周リム部5、外周リム部6、プロテクションリング7等)により、光記録媒体100を積み重ねた場合においても、情報記録面及びレーベル面に接触による傷が発生することを防いでいる。
【0006】
このような工夫により、光記録媒体100の製造後の保管、運搬時のみならず、製造途中において基板1同士を積み重ねた状態とする場合においても、情報記録面及びレーベル面を保護することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−130154号公報
【特許文献2】特開2008−130216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述のようなプロテクションリング、内周リム部及び外周リム部を設けた光記録媒体の製造過程において、光記録媒体同士が張り付いた状態となり搬送エラー等の課題が生じることが判った。以下、図2を用いて具体的に説明する。
【0009】
光記録媒体の製造過程において、通常、一時的に複数の光記録媒体を積み重ねた状態で保管する工程が存在する。図2(a)〜(c)は、光記録媒体の中心を通り、情報記録面に垂直な断面で切断した場合の断面図である。なお、図1と同様の部位には同じ符合を付してある。
【0010】
光記録媒体100を上述の保管する工程から次の工程に運搬するために、図2(a)に示すような吸着パッドR1を有するロボットアームR100により光記録媒体100を運搬することが一般的である。ロボットアームR100により、積み重ねられた複数の光記録媒体100の一番上の光記録媒体100を吸着パッドR1により吸着させる際、図2(b)に示すように、荷重をかけるために光記録媒体100が若干たわむことになる。光記録媒体100の吸着後にロボットアームR100を上昇させる際に、一番上の光記録媒体100のたわみが元に戻ることになるが、図2(c)に示すように、プロテクションリング7、内周リム部5及び外周リム部6により一番上の光記録媒体100とその下の光記録媒体100との間に気密領域が発生してしまい、引き上げにより光記録媒体100のたわみが元に戻ることによって、この気密領域が陰圧となり2枚の光記録媒体100が張り付いた状態となる。2枚目の光記録媒体100は自重によりすぐに落下する場合が多いものの、これによる光記録媒体100の搬送エラーが発生してしまい、製造工程に影響を及ぼすのみならず、落下により光記録媒体100の表面に傷が発生する可能性も高くなる。
【0011】
本発明は上記の課題を鑑みてなされたものであり、2枚の光記録媒体の間の気密領域が陰圧になることを防ぎ、搬送エラーを起こさない光記録媒体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は上記課題を解決するため鋭意研究したところ、上記内周リム部、外周リム部、及びプロテクションリングの群から選択される少なくとも一つの表面の略全面に凹凸構造を設けることで、2枚の光記録媒体の間の気密領域を形成することを防ぐことができ、2枚の光記録媒体同士が張り付くことを防止することができることを見出したものである。
【0013】
則ち、本発明の要旨は、中心孔を有する略円盤状の基板上に、少なくともカバー層と、該カバー層と該基板に対して反対側に印刷層とを備えた光記録媒体において、該基板に、該印刷層の内周側に凸状の内周リム部と、該印刷層の外周側に凸状の外周リム部とが設けられ、該内周リム部及び/又は該外周リム部の表面の略全面に、凹凸構造が設けられることを特徴とする光記録媒体に存する(請求項1)。
【0014】
本発明の別の要旨は、中心孔を有する略円盤状の基板上に、少なくともカバー層と、該カバー層と該基板に対して反対側に印刷層とを備えた光記録媒体において、該基板に、該印刷層の内周側に凸状の内周リム部と、該印刷層の外周側に凸状の外周リム部と、該カバー層の内周側に凸状のプロテクションリングが設けられ、該内周リム部、該外周リム部、及び該プロテクションリングの群から選択される少なくとも一つの表面の略全面に、凹凸構造が設けられることを特徴とする、光記録媒体に存する(請求項2)。
【0015】
このとき、前記凹凸構造の少なくとも一部が、表面粗さRaが0.1μm以上の凹凸構造であることが好ましい(請求項3)。
【0016】
また、前記凹凸構造の少なくとも一部が、表面粗さRaが0.5μm以上の凹凸構造であることが好ましい(請求項4)。
【0017】
また、前記凹凸構造が、可視的情報の刻印であることが好ましい(請求項5)。
【0018】
このとき、前記可視的情報の刻印が、前記内周リブ部の全周に渡って設けられることが好ましい(請求項6)。
【発明の効果】
【0019】
2枚の光記録媒体の間の気密領域が陰圧になることを防ぎ、搬送エラーを起こさない光記録媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】背景技術にかかる略円盤状の光記録媒体を、中心を通る情報記録面に垂直な断面で切断した場合の断面図である。
【図2】(a)〜(c)は、それぞれ、背景技術にかかる光記録媒体の中心を通り、情報記録面に垂直な断面で切断した場合の断面図である。
【図3】本発明の光記録媒体を、略円盤状の基板の中心を通り、情報記録面に垂直な断面で切断したときの断面図である。
【図4】本発明の光記録媒体を、略円盤状の基板の中心を通り、情報記録面に垂直な断面で切断したときの断面図である。
【図5】(a)は本発明の第2の実施形態における光記録媒体を情報記録面側からみた概略図、図5(b)はレーベル面側からみた概略図である。
【図6】図5(b)のP6−Q6面での断面の種類を(a)〜(h)にそれぞれ示した断面図である。
【図7】(a)は本発明の光記録媒体を情報記録面側からみた概略図、図7(b)は本発明の光記録媒体をレーベル面側からみた概略図である。
【図8】(a)は実施例4における光記録媒体103をレーベル面側からみた概念図、図8(b)は、図8(a)に示される光記録媒体103のP8−Q8断面の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、光記録媒体としてブルーレイディスクの場合を例に詳細に説明するが、本願発明は以下の実施の態様に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0022】
[1.光記録媒体の構成]
[1−1.光記録媒体の基本的構成]
本発明の光記録媒体は、中心孔を有する略円盤状の基板上に、少なくともカバー層と、該カバー層と該基板に対して反対側に印刷層とを備えた光記録媒体である。この光記録媒体において、該基板に、該印刷層の内周側に凸状の内周リム部と、該印刷層の外周側に凸状の外周リム部とが設けられ、該内周リム部及び/又は該外周リム部の表面の略全面に、凹凸構造が設けられている。
【0023】
また、さらに該カバー層の内周側に凸状のプロテクションリングが設けられてもよい。この場合、該凹凸構造は、該内周リム部、該外周リム部、及び該プロテクションリングの群から選択される少なくとも一つの表面の略全面に設けられることになる。
【0024】
以下、本発明の光記録媒体の構成につき、詳述する。
図3は、本発明の光記録媒体の構成を説明するための断面図であり、略円盤状の基板の中心を通り、情報記録面に垂直な断面で切断したときの断面図を表わしている。この光記録媒体101は中心に中心孔12を有する基板11上のレーベル面に印刷層13、情報記録面に少なくとも記録層(図示せず)及びカバー層14がこの順に設けられており、レーベル面の保護のために、印刷層13の内周側に内周リム部15と、印刷層13の外周側に外周リム部16とが設けられている。なお、ここでは内周リム部15及び/又は外周リム部16表面に設ける凹凸構造は省略して示している。
【0025】
図3の上面は、記録層(図示せず)及びカバー層14が設けられた情報記録領域を有する情報記録面(レーザー光を照射して情報の記録を行う場合のレーザーの入射側の面)であり、下面がレーベル面(レーザー光を照射して情報の記録を行う場合のレーザーの入射側とは反対側の面)である。
【0026】
本発明の光記録媒体101がブルーレイディスクである場合、基板の半径の規格は60mmとなる。このとき、光記録媒体101の中心から半径21mm〜58.5mmの領域は、情報記録領域といわれ、光記録媒体101へ情報が記録される領域である。そのため、記録層は少なくとも該情報記録領域全面を覆うように情報記録面に形成される。
【0027】
さらに、光記録媒体101の中心から半径11.5mm〜16.5mmの領域は、クランプエリアといわれ、光記録媒体101が記録再生装置のスピンドルに固定される際にクランプが接する領域である。
【0028】
なお、印刷層13は光記録媒体101の中心から半径7.5〜60mmの領域内に設けられる。通常の場合、後述する内周リム部の外周端から外周リム部の内周端の間に設けられるが、内周リム部及び/又は外周リム部の表面上にも印刷層13を設けることが可能である。
【0029】
(基板)
基板11は中心に半径7.5mmの中心孔12が備わった略円盤状であり、後述するカバー層14、印刷層13等の機能層を積層させる基盤となるものである。基板11のレーベル面には、印刷層13が設けられるが、該印刷層13の内周側に位置する部位に凸状の内周リム部15と、該印刷層の外周側に位置する部位に凸状の外周リム部16が設けられる。該内周リム部15及び外周リム部16とは、情報記録面の基板11表面が円形ドーナツ状に隆起した構造体である。この内周リム部15及び外周リム部16を備えることによって、光記録媒体101を積層した場合に光記録媒体101同士の摩擦等によるレーベル面の傷を防止することが可能となる。
【0030】
内周リム部15は、印刷層13の内周側のレーベル面に位置し、光記録媒体101の中心から半径7.5mm〜16.5mmの領域内に設けられる。内周リム部15は、半径方向の幅が通常3〜9mm、レーベル面表面、即ち印刷層13の表面からの高さが通常50μm以下の構造体である。内周リム15の内周側端部は中心孔12に達していてもよいし、中心孔12より外周側にあってもよい。内周リム部15の内周側端部及び外周側端部の形状は、レーベル面に対して垂直であってもよく、角度がついた構造(バンク構造)であってもよい。なお、図3においては、内周側端部は垂直で中心孔12に達しており、外周側端部はバンク構造で印刷層13の外縁と接している場合を記載している。
【0031】
外周リム部16は、印刷層13の外周側(則ち、通常光記録媒体101の中心から半径58.5mm〜60mmの領域)のレーベル面に位置し、幅が通常0.1〜1.5mm、レーベル面表面、即ち印刷層13の表面からの高さが通常50μm以下の構造体である。外周リム部15の外周側端部は基板11の外周端部に達していてもよいし、外周端部より内周側にあってもよい。また、外周リム部16の内周側端部は、通常、印刷層13の外縁と接する構造を有する。外周リム部16の内周側端部及び外周側端部の形状は、レーベル面に対して垂直であってもよく、角度がついた構造(バンク構造)であってもよい。なお、図3においては、内周側端部はバンク構造で印刷層13の外縁と接しており、外周側端部は垂直で基板11の外周端部に接している場合を記載している。
【0032】
図4は、図3に示した本願の光記録媒体101に、さらにプロテクションリング27を設けた場合の構成を有する光記録媒体102を説明するための断面図であり、略円盤状の基板21の中心を通り、情報記録面に垂直な断面で切断したときの断面図を表わしている。この光記録媒体102は中心に中心孔22を有する基板21上のレーベル面に印刷層23、情報記録面にカバー層24が設けられており、レーベル面の保護のために、印刷層23の内周側に内周リム部25と、印刷層23の外周側に外周リム部26とが設けられており、情報記録面の保護のために、カバー層24の内周側にプロテクションリング27が設けられている。なお、ここでは該内周リム部25、該外周リム部26、及び該プロテクションリング27の群から選択される少なくとも一つの表面の略全面に設けられる凹凸構造は省略して示している。
【0033】
プロテクションリング27とは、情報記録面の基板21表面が円形ドーナツ状に隆起した構造体である。プロテクションリング27を備えることによって、光記録媒体102を積層した場合に光記録媒体102同士の摩擦等による情報記録面の傷を防止することが可能となる。
【0034】
プロテクションリング27は、カバー層24の内周側、好ましくはクランプエリアの内周側(則ち、通常光記録媒体の中心から半径7.5mm〜10.5mmの領域)の情報記録面に位置し、幅が通常0.5〜4mm、クランプエリアのカバー層24表面からの高さが通常0.12mm未満の構造体である。プロテクションリング27は中心孔22に則していてもよいし、中心孔22より外周側にあってもよい。プロテクションリング27の内周側端部及び外周側端部の形状は、情報記録面に対して垂直であってもよく、角度がついた構造(バンク構造)であってもよい。なお、図4においては角度がついた構造(バンク構造)の場合を記載している。
【0035】
本発明において、該内周リム部15,25、該外周リム部16,26、及び該プロテクションリング27の群から選択される少なくとも一つの表面の略全面に設けられる凹凸構造は、本発明の課題である光記録媒体101,102の搬送時に積層された光記録媒体101,102間の気密領域の発生を抑制できる程度の空気穴の役割を果たせる程度のものであればよく、微視的な凹凸を設けたものであってもよいし、部分的により明確な突起もしくは溝を設けたものであってもよい。この凹凸構造の形状については後に本発明の実施の形態毎に詳述する。
【0036】
(記録層)
記録層は情報を記録される層であり、光記録媒体101,102の情報記録領域(則ち、通常光記録媒体の中心から半径21mm〜58.5mmの領域)の全領域を覆うように、情報記録面に形成される。
【0037】
(カバー層)
カバー層14,24は、情報記録領域に設けられた記録層及びその他の層を保護する層であり、光記録媒体101,102の情報記録領域とクランプエリア全領域を覆うように、通常プロテクションリングの外側から半径10.5mm〜58.5mmの領域に形成される。なお、カバー層14,24は、プロテクションリングの内側の半径7.5mmの領域にも形成されていてもよい。
【0038】
(印刷層)
印刷層13,23は、光記録媒体101,102の識別や中身の情報などを可視的に表現される印刷がなされる層であり、光記録媒体101,102の情報記録面の反対側のレーベル面に設けられる。印刷層12,23は、スクリーン印刷等の印刷方式等によりレーベル面に直接設けられたインク自体の層である場合や、ユーザーがインクジェットプリンタ等により任意の可視情報を記録可能な印刷受容能を有する層である場合等の何れも含まれる。
【0039】
(その他の機能層)
本発明の光記録媒体101,102には、光記録媒体として従来公知の機能を有する反射層、保護層、中間層等を適宜設けることができる(図3及び図4には図示せず。)。また、記録層やこれらの機能層をそれぞれ2層以上有してもよい(図3及び図4には図示せず。)。
【0040】
[1−2.本発明の光記録媒体の第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態としては、光記録媒体101の内周リム部15及び/又は外周リム部16の表面の略全面を意図的に粗らすことにより、表面全体に凹凸構造を設ける形態である。また、本発明の光記録媒体がプロテクションリングを有する光記録媒体102である場合には、内周リム部25、外周リム部26、及びプロテクションリング27の群から選択される少なくとも一つの表面の略全面を意図的に粗らすことにより、表面全体に凹凸構造を設ける形態である。
ここで凹凸構造とは、前述の光記録媒体を積載した状態から搬送する際の気密領域を発生させない程度であればよく、目視できないほどの微視的な凹凸構造であってもよい。
【0041】
内周リム部15,25、外周リム部16,26、及び存在する場合にはプロテクションリング27の表面が平滑である場合、図2を用いて説明した通り、積層された光記録媒体101,102の搬送時に光記録媒体101,102間に気密領域が生じやすいことになる。そこで、内周リム部15,25、外周リム部16,26、及び存在する場合にはプロテクションリング27の群から選択される少なくとも一つの表面の略全面を意図的に粗らして凹凸構造を設ける。この凹凸構造を設けられた部分が、光記録媒体101,102を積層する時に対向する部位との接触面積が小さくなり、空気の抜け穴が生じることになる。その結果、気密領域が発生しないため、光記録媒体101,102間の張り付きが防止されることとなる。
【0042】
なお、ここにいう略全面に凹凸構造が設けられている状態とは、内周リム部15,25、外周リム部16,26、及び存在する場合にはプロテクションリング27の表面を、円周方向に4等分になるように、任意の位置で4つの領域に分割した際に、4つの領域すべてにおいて、必ずその一部に凹凸構造が存在する分割が可能な状態を意味する。
【0043】
光記録媒体にプロテクションリングが存在しない場合、内周リム部15又は外周リム部16のどちらか1つに凹凸構造を設ければよいが、両方に設けた方がより空気が抜けやすいことになり好ましい。
【0044】
また、共にプロテクションリングが存在する場合には、内周リム部25、外周リム部26、プロテクションリング27のどちらか1つに凹凸構造を設ければよいが、中でも外周リム部26と内周リム部25若しくはプロテクションリング27とに凹凸構造を設けることが好ましく、さらには3つ全てに凹凸構造を設けることが、より空気が抜けやすいことになり好ましい。
【0045】
凹凸構造の粗さは、表面粗さRaの値により好ましい範囲を規定することが可能である。
凹凸構造の表面粗さRaは内周リム部15,25、外周リム部16,26、又はプロテクションリング27の表面の略全面において一様である必要はなく、部分的に粗さが変化してもよい。
ただし、表面粗さRaが極端に変化する場所が偏在すると、光記録媒体101,102同士の剥離に偏りが生じ、搬送時にエラーを生じる可能性があるため、表面粗さRaの分布が光記録媒体101,102の中心点を中心とした点対称になることが好ましい。
【0046】
本発明の凹凸構造の表面粗さは、光記録媒体101,102の内周リム部15,25、外周リム部16,26、プロテクションリング27等の寸法によっても異なるが、実際の光記録媒体101,102の搬送において気密領域が発生せず、搬送エラーが起こらない程度であれば足りる。具体的には、凹凸構造の少なくとも一部のRaが好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.1μm以上、特に好ましくは0.5μm以上である。
【0047】
なお、本発明における表面粗さRaは、触針式表面粗さ計であるテンコール社製αステップを用い、測定長1mmとしてRaを計測した値として定義される。
【0048】
凹凸構造を設ける具体的な方法について制限はない。基板11,21の材料等によって適宜最適な方法を用いればよい。具体的には、内周リム部15,25、外周リム部16,26、プロテクションリング27を成形した後に、ブラスト処理等を行う方法が考えられる。しかし、通常内周リム部15,25、外周リム部16,26、プロテクションリング27は、通常、基板11,21を射出成形する際に一体として成形されることから、射出成形時の金型において凹凸構造を設ける部分の表面を粗らしておくことが好ましい。金型作成後に当該部分にブラスト処理等を行い、表面を粗らすことも可能であるが、金型の作製時に、あえて最終的な表面研磨加工を行わずに粗れた状態のままにしておくことが簡便な方法である。
【0049】
[1−3.本発明の光記録媒体の第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態としては、内周リム部25、外周リム部26、及び存在する場合にはプロテクションリング27の群から選択される少なくとも一つの表面に、部分的に明確な突起及び/又は溝による凹凸構造C1を設ける形態である。なお、上述したような目視できないほどの微視的な凹凸を設けた上で、さらに部分的に明確な突起及び/又は溝による凹凸構造C1を設けてもよい。
【0050】
この第2の実施形態について図5を用いて詳述する。なお、第2の実施形態において凹凸構造C1とは、特に断りがない限り部分的に明確な突起及び/又は溝による凹凸構造を指すものとする。
【0051】
図5(a)は本発明の第2の実施形態における光記録媒体を情報記録面側からみた概略図、図5(b)はレーベル面側からみた概略図である。なお、図4と同じ構成の部分には同じ符合が付してある。
【0052】
図5では、内周リム部25、外周リム部26、及びプロテクションリング27の何れにも放射状に凹凸構造C1を設けてある場合を示している。この凹凸構造C1は、溝状の凹状であってもよいし、突起状の凸状であってもよい。また、溝状の凹状と突起状の凸状を併せ持った構造であってもよい。1枚の光記録媒体に設けられる凹凸構造C1は、全て凹状、若しくは凸状であってもよいし、これらを任意の割合で組み合わせて形成してもよい。
【0053】
このような凹凸構造C1が形成されていない場合、図2を用いて説明した通り、積層された光記録媒体の搬送時に光記録媒体間に気密領域が生じやすいことになる。そこで、内周リム部25、外周リム部26、及びプロテクションリング27の群から選択される少なくとも一つの表面に部分的に明確な突起及び/又は溝による凹凸構造C1を設ける。これにより、光記録媒体102同士の接触面に隙間が生じ、前記気密領域から空気が抜けることとなり、上下の光記録媒体102が張り付くことを防止することができる。
【0054】
このような凹凸構造C1は、内周リム部25、外周リム部26、及び存在する場合にはプロテクションリング27の群から選択される少なくとも一つの表面に設けられればよいが、外周リム部26と内周リム部25若しくはプロテクションリング27とに設けられることが好ましく、さらには、図5に示すとおり、内周リム部25、外周リム部26、及びプロテクションリング27の何れにも凹凸構造C1を設けることが好ましい。空気がより抜けやすく図2に示すような気密状態が形成されにくくなるためである。
【0055】
また、凹凸構造C1の分布は、複数の凹状の凹凸構造C1及び/又は凸状の凹凸構造C1が光記録媒体102の全周に対して均一間隔で配置されていることが好ましい。偏った配置の場合、上下の光記録媒体102が剥離する場合に偏りが生じ、搬送エラーを引き起こす可能性があるからである。
【0056】
凹凸構造C1の配置は、光記録媒体102の円周方向に45°ずつの間隔で設けて光記録媒体102全周に対して8箇所設けることが好ましく、更には30°ずつの間隔で光記録媒体102全周に対して12箇所に設けることが好ましい。より好ましくは22.5°ずつの間隔で光記録媒体102全周に対して16箇所に設けることが好ましく、特に好ましくは11.25°ずつの間隔で光記録媒体102全周に対して32箇所に設けることが好ましい。
【0057】
ここで、凹凸構造C1は、気密状態が維持できない程度の空気の抜け穴を実現できる程度であればよく、その形状は適宜決定することができる。図6は、図5(b)のP6−Q6面での断面の種類を示した断面図である。凹凸構造C1の断面形状は矩形であってよいし(例えば、凹状の場合の例として図6(a)、凸状の場合の例として図(b))、台形状であってもよいし(例えば、凹状の場合の例として図6(c)、凸状の場合の例として図6(d))、曲線状であってもよい(例えば、凹状の場合の例として図6(e)、凸状の場合の例として図6(f))。また、凹状及び凸状を併せ持つ構造であってもよい(例えば、図6(g)、(h))。
【0058】
凹凸構造C1の寸法は、凹凸構造C1を何箇所設けるかにもよるが、通常、凹凸構造C1の幅(図6(a)では6aW、図6(b)では6bW、図6(c)では6cW、図6(d)では6dW、図6(e)では6eW、図6(f)では6fW)は、通常20μm以上、好ましくは40μm以上である。また、凹凸構造の深さ(高さ)(図6(a)では6aH、図6(b)では6bH、図6(c)では6cH、図6(d)では6dH、図6(e)では6eH、図6(f)では6fH)は、通常3μm以上、好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上、特に好ましくは20μm以上である。
【0059】
凹凸構造C1を設ける具体的な方法について制限はない。基板21の材料等によって適宜最適な方法を用いればよい。具体的には、内周リム部25、外周リム部26、又はプロテクションリング27を成形した後に、レーザー照射等を行う方法が考えられる。しかし、通常内周リム部25、外周リム部26、プロテクションリング27は、基板を射出成形する際に一体として成形されることから、射出成形時の金型において凹凸構造C1に対応する構造を備えさせることが好ましい。
【0060】
本発明の第2の実施の形態として、プロテクションリングを有する場合(図4に示されるような光記録媒体)を中心に説明したが、光記録媒体がプロテクションリングを有さない場合(図3に示されるような光記録媒体)に、凹凸構造C1を設けることも可能である。
【0061】
図3に示されるような光記録媒体101を用いる場合、凹凸構造C1は内周リム部15又は外周リム部16のどちらか1つに設ければよい。ただし、内周リム部15及び外周リム部16の両方に凹凸構造C1を設けた方が、より空気が抜けやすいことになり好ましい。
【0062】
[1−4.本発明の光記録媒体の第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態としては、本発明の第2の実施形態で説明される凹凸構造が、ディスクのロットナンバー等の可視的情報の刻印C2である形態である。特に、光記録媒体101,102の内周リム部15,25の全周に渡って刻印C2がされていることが好ましい。なお、上述したような目視できないほどの微視的な凹凸を設けた上でさらに刻印C2を設けてもよいし、上述したような部分的に明確な突起もしくは溝による凹凸を設けた上でさらに刻印C2を設けてもよいし、上述したような目視できないほどの微視的な凹凸と上述したような部分的に明確な突起もしくは溝による凹凸とを設けた上でさらに刻印C2を設けてもよい。
【0063】
この第3の実施形態について図7を用いて詳述する。なお、第3の実施形態において凹凸構造C2とは、特に断りがない限り刻印C2による凹凸構造を指すものとする。
【0064】
図7(a)は本発明の光記録媒体を情報記録面側からみた概略図、図7(b)は本発明の光記録媒体をレーベル面側からみた概略図である。なお、図4と同じ構成の部分には同じ符合が付してある。
【0065】
通常、光記録媒体102のロットナンバー等を、レーザー照射によって光記録媒体102の表面に凹凸を形成することにより、目視可能な可視情報として表示することが一般的である。このように可視的情報を、凹凸を形成することにより表示することを刻印という。本発明の第3の実施形態は凹凸構造として刻印C2を用いるものである。
【0066】
通常の場合、この可視情報の刻印は、長くても光記録媒体102の円周方向に対して半周程度の部分しか表示されない。本発明においては、図7に示すように、内周リム部25、外周リム部26、及びプロテクションリング27の群から選択される少なくとも一つの表面の略全面に渡って可視情報を刻印する。ただし、通常刻印は内周リム部25に施されるので、内周リム部25に設けることが好ましい。特別な工程を追加する必要がなくなるためである。
【0067】
光記録媒体102に設けられる刻印C2は、文字のサイズを大きくしたり、ダミーの文字列を追加したり、文字の間隔を広げる等をすることによって、光記録媒体の円周方向に対して略全周に表示することができる。本発明の光記録媒体102の刻印C2は、具体的には200°以上に渡る事が好ましく、更に好ましくは300°以上、最も好ましくは全周(360°)に渡ることである。また、光記録媒体102を積層したときに、内周リム部25とプロテクションリング27とが接する場合には、該接する部分に刻印C2をすることが好ましい。
【0068】
刻印による凹凸構造は、気密状態が維持できない程度の空気の抜け穴を実現できる程度であればよく、その高さ及び/又は深さは適宜決定することができる。具体的には、通常3μm以上、好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上、また、通常100μm以下、好ましくは50μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。この範囲を下回ると、空気の抜け穴としての機能を十分に果たせない可能性がある。また、この範囲を上回ると、基板の強度が不足する可能性がある。
【0069】
上述のように刻印C2を設けることにより、図2を用いて説明した通り、積層された光記録媒体102の搬送時に光記録媒体102間に生じる気密領域に対して、当該刻印C2の部分が空気孔穴の機能を持つことができ、積層された光記録媒体の搬送エラーを抑制することが可能となる。
【0070】
本発明の刻印の形成は、通常光記録媒体102に刻印をするときと同様の方法によって行なうことができる。例えば、レーザー照射によって光記録媒体102の表面に凹凸を形成することができる。これにより、特別な工程を加えることなく、光記録媒体が凹凸構造C2を設けることができる。またこの方法によれば、基板21を射出成形するときに、従来の金型を用いることができる。
【0071】
本発明の第3の実施の形態として、プロテクションリングを有する場合(図4に示されるような光記録媒体)を中心に説明したが、光記録媒体がプロテクションリングを有さない場合(図3に示されるような光記録媒体)に、凹凸構造C2を設けることも可能である。
【0072】
図3に示されるような光記録媒体101を用いる場合、凹凸構造C1は内周リム部15又は外周リム部16のどちらか1つに設ければよい。ただし、通常刻印は内周リム部15に施されるので、内周リム部15に設けることが好ましい。特別な工程を追加する必要がなくなるためである。
【0073】
[2.本発明の光記録媒体の製造方法]
本発明の光記録媒体は、従来公知の材料を用いて形成することができる。また、形成の方法も、基板を形成するとき、若しくは形成した後に凹凸構造を設けること以外は、従来の形成方法によって形成することができる。具体的には例えば基板を射出成型で形成した後で、基板に近い層から順に反射層、記録層、保護層等、及びカバー層を積層形成していく。このとき、レーベル面側の印刷層は通常、最後に形成する。
【0074】
(基板)
本発明の基板は、光記録媒体用の基板として従来公知の材料を適宜利用可能である。一般に、適度な加工性と剛性を有するプラスチック、金属、ガラス等を用いることができるが、生産性及びコストの面から通常プラスチックが好ましい。
【0075】
通常の光記録媒体では、情報記録面の情報記録領域にトラッキング用の案内溝を形成するため、製造上は、プラスチック材料を用いて射出成型によって中心孔を有する略円盤状の基板形状と表面の案内溝を一度に形成するほうが好ましい。このような、射出成型できるプラスチック材料としては、従来CDやDVDで用いられたポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等を用いることができる。これらは1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
【0076】
基板の厚みとしては0.5mm以上1.2mm以下とするのが好ましい。なお、ブルーレイディスクにおいては、規格上、基板厚みは1.1mmと規定されているので、準拠することが好ましい。
【0077】
本発明の光記録媒体の基板は、上述のように射出成形によって形成されるのが好ましい。基板の製造にあたっては、従来公知の製造方法が適宜用いられるが、以下にその一例を示す。
【0078】
固定側金型コア又は可動側金型コアの金型面にスタンパを装着した金型を使用し、これらにより形成されたキャビティとよばれる所望の基板形状を形どった空間内に、ポリカーボネート等の溶融樹脂材料を充填し、その後冷却することで基板を製造する。
【0079】
ここで、スタンパとは、情報記録領域に形成される案内溝の形状の反転パターンが形成された薄板状のもので、レーザーカッティングとフォトリソ技術等により所望の案内溝パターンが形成されたガラス原盤表面に、ニッケル等をスパッタ及び電鋳し、その後剥離したものを用いるのが一般的である。
【0080】
また、金型は、案内溝以外の基板形状に対応させて形状に加工されたもので、本願発明においては、中心孔を有する略円盤状の外形を有し、かつ、内周リム部、及び外周リム部、さらに存在する場合にはプロテクションリングをも形成できる形状とすることが好ましい。
【0081】
なお、金型による基板成形時には内周リム部、外周リム部及びプロテクションリングを形成せず、基板成形後に別途内周リム部、外周リム部及びプロテクションリングを付加する加工を施してもよいが、製造コストや寸法精度の点からは、射出成形時に一体成形するほうが好ましい。
【0082】
加えて本発明においては、光記録媒体に凹凸構造を形成するために、金型に凹凸構造に対応する形状を備えさせ、射出成形時に凹凸構造も同時に形成することが好ましい。製造コストや寸法精度の点か有利になるためである。凹凸構造は本発明の実施の形態で説明したように、微視的な凹凸であってもよいし、部分的に明確な突起及び/又は溝による凹凸でもよい。また明確な凹凸構造として、可視的情報の刻印であってもよい。
【0083】
なお、金型による射出成形時には凹凸構造を形成せず、基板成形後に、ブラスト加工やレーザー照射等の方法により内周リム部及び/又は外周リム部に凹凸を形成してもよい。この場合凹凸構造の備えられていない従来の金型を用いて基板を作成することができる。従って、例えば凹凸構造が可視的情報の刻印で有った場合、同じ金型を用いて作成した基板であっても、可視的情報の内容(刻印の内容)を変えることができる。
【0084】
また、内周リム部及び/又は外周リム部上に凹凸を形成する別の方法として、スクリーン印刷やスピンコートによって、表面に凹凸を有する層を付与することも可能である。例えば、印刷層13を内周リム部及び/又は外周リム部上に形成することにより、内周リム部及び/又は外周リム部の表面粗さを大きくする方法も考えられる。
【0085】
(カバー層)
本発明の光記録媒体は、基板の記録情報面にカバー層が設けられている。カバー層は、記録層等を水分や塵埃から保護すると同時に記録再生用のレーザー光が透過する層でもある。したがって、記録再生用のレーザー光に対して透明であると同時に、その厚さは80μm以上110μm以下が好ましい。本発明のカバー層は、光記録媒体用のカバー層として従来公知の材料を適宜利用可能である。例えば、ウレタン、エポキシ、アクリル、メタクリレート系の樹脂等が用いられる。
【0086】
カバー層は、通常、紫外線硬化樹脂をスピンコート、ディップ法等により塗布した後、紫外線を照射し硬化させるか、あるいは、プラスチック製の透明シートを、粘着材を用いて貼り合せることで形成される。
【0087】
また、カバー層は2種以上の異なる材料からなる層を2層以上積層させてもよく、最表面に防汚性、耐擦傷性を高めるために硬度の高い材料からなるハードコート層が設けられていてもよい。
【0088】
(記録層)
本発明の光記録媒体は、基板の記録情報面に記録層が設けられている。本発明の記録層は、光記録媒体用の記録層として従来公知の材料を適宜利用可能である。例えば、色素、アモルファス半導体、部分窒化膜、部分酸化膜などが挙げられる。
本発明の光記録媒体は記録層を複数有していてもよいが、この場合、各々の層が同じ材料で形成されていてもよいし、別の材料を任意に組み合わせて形成してもよい。このようにすることで各層毎に透過率などの光学的性質を変えることができる。
【0089】
記録層に使用される色素は特に限定されないが、その例を挙げると、有機色素が使用される。有機色素としては、例えば、大環状アザアヌレン系色素(フタロシアニン色素、ナフタロシアニン色素、ポルフィリン色素等)、ピロメテン系色素、ポリメチン系色素(シアニン色素、メロシアニン色素、スクワリリウム色素等)、アントラキノン系色素、アズレニウム系色素、含金属アゾ系色素、含金属インドアニリン系色素等が挙げられる。なお、これらの色素は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0090】
一方、記録層に使用されるアモルファス半導体材料の具体例としては、SbTe系、GeTe系、GeSbTe系、InSbTe系、AgSbTe系、AgInSbTe系、GeSb系、GeSbSn系、InGeSbTe系、InGeSbSnTe系等の材料が挙げられる。これらの中でも、結晶化速度を高めるために、Sbを主成分とする組成物を用いることが好ましい。なお、これらのアモルファス半導体材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0091】
部分窒化膜、部分酸化膜の具体例としては、BiGeN、SnNbNなどの部分窒化膜、TeOx、BiFOxなどの部分酸化膜が挙げられる。
【0092】
記録層の1層あたりの厚みは、何層の記録層を有するかによっても異なるが、通常3nm以上、好ましくは4nm以上、さらに好ましくは6nm以上、また、通常40nm以下、好ましくは30nm以下、さらに好ましくは25nm以下である。
【0093】
本発明の光記録媒体の記録層は、従来公知の製造方法が適宜用いられるが、例えばアモルファス半導体、部分窒化膜、部分酸化膜などはスパッタ法により形成することが好ましく、色素材料の場合はスピンコート法を用いて形成することが好ましい。
【0094】
(印刷層)
本発明の光記録媒体は、基板のレーベル面に印刷層が設けられている。本発明の印刷層は、スクリーン印刷等の印刷方式等によりレーベル面に直接設けられたインク自体の層であってもよいし、ユーザーがインクジェットプリンタ等により任意の可視情報を記録可能な印刷受容能を有する層であってもよい。
【0095】
インクジェットプリンタ用の印刷受容能を有する層を形成する場合、その材料としては従来公知の材料を適宜利用可能である。例えば、非晶質シリカやアルミナなど無機微粒子とポリビニルアルコールなどの水溶性バインダーからなる多孔質のインク吸収層等を用いることができる。膜厚としては、10μm以上が好ましく、さらに好ましくは15μm以上である。また、100μm以下が好ましく、さらに好ましくは50μm以下である。
【0096】
インクジェットプリンタ用の印刷受容能を有する層を形成方法としては、従来公知の製造方法を適宜用いることが可能であるが、上述した各材料に適した方法、例えばスピンコート法、スクリーン印刷法等を用いて形成することができる。
【0097】
(その他の機能層)
本発明の光記録媒体は、基板成形後に、記録層、カバー層、印刷層等を形成することによって製造されるが、その他の機能を有する層をさらに形成してもよい。例えば、Ag、Cu等を主成分とする反射層、主に誘電体材料からなる保護層等である。
【0098】
これらの層は、従来公知の材料を適宜用いて形成することができ、その形成方法もスパッタ法、スピンコート法等任意の方法を用いることができる。
【実施例】
【0099】
以下、本発明について、実施例を用いてさらに説明するが、本発明はその趣旨を逸脱しない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0100】
[実施例1]
(光記録媒体の作成)
以下の手順に従って、光記録媒体を100枚作成した。
【0101】
まず、トラックピッチ0.32μmでトラッキング用の案内溝が形成された内径15mm、外径120mm、厚さ1.1mmのポリカーボネート製の基板を射出成型によって得た。この際、射出成形用の金型を加工しておくことにより、後述する寸法の内周リム部、外周リム部、及びプロテクションリングを基板と一体成形した。
【0102】
次に、この基板の案内溝上に厚さ100nmのAg合金の反射層と、厚さ15nmのZnS/SiOからなる透明誘電体層と、厚さ14nmのInGeSbTeからなる記録層と、厚さ120nmのZnS/SiOからなる透明誘電体層とをスパッタ法により順次積層した。
【0103】
次に、この記録層及びその他の機能層が形成された基板中心部に半径11mm、斜面の角度10度の傾斜を有し、プロテクションリングに当たる部分は溝となって逃げた構造の円錐形状のステンレス製のマスクを設置し、粘度1500MPa・Sのウレタンアクリレート系のカバー層用光硬化性樹脂をマスク上に滴下し、1500rpmにて回転し透明誘電体層上に一様な厚さの樹脂膜を形成させ、回転中に波長365nmで120mW/cmの強度を有する高圧水銀ランプから発生するUV光を5秒間照射し、内周から外周にわたって一様な厚み96μmの光硬化したカバー層を形成した。その後、ステンレス製のマスクの周囲の半径11.2mmの位置で光硬化性樹脂膜にレーザー光を一周照射し、光硬化性樹脂膜を焼き切り、その後ステンレスマスクを除去した。
【0104】
続いて、粘度80mPa・Sのウレタンアクリレート系のハードコード用光硬化性樹脂を半径11.5mmの位置に円環状に滴下し3000rpmで回転し、回転を停止した後、365nmで300mW/cmの強度を有する高圧水銀ランプから発生するUV光を2秒間照射し、硬化した。カバー層とハードコート層を含んだ厚みを測定したところ全体の厚みは98μmであった。
【0105】
次に、カバー層がついた逆の面であるレーベル面にスクリーン印刷機(株式会社ミヤコシ製)を用いて、UV硬化型のスクリーン印刷用インクを半径11.0〜58.5mmまで印刷し、波長365nmで300mw/cmの強度を有する高圧水銀ランプからハッスルUV光を1秒間照射し、硬化した。
ここで、スクリーン印刷用のインクには、ウレタンアクリレートを主たる樹脂材料とし、Si0やTiO等の顔料、消泡剤、レベリング剤等の界面活性剤を混ぜたものを使用した。
【0106】
このようにして、内周リム部が半径7.5〜10mmの範囲に高さ30μmで形成され、外周リム部が半径58.5〜60mmの範囲に高さ30μmで形成されるように光記録媒体を作製した。このとき、基板成形用の金型の外周リムの表面に当たる部分を、金型作製時の旋盤加工後のまま表面研磨処理を行わない状態で光記録媒体を作製した。プロテクションリングについては半径8.75〜10.5mmの範囲に高さ90μmとなるように設けた。
【0107】
作製後の光記録媒体の外周リムの表面を、テンコール社製αステップにより測定長1mmで測定したところ、Raの値は0.5μmであった。
【0108】
(Pケーサー搬送テスト)
上述の方法で作成した光記録媒体100枚を積層し、Pケーサー(京都製作所製)により1枚ずつピックアップアームにより搬送し、1枚入りのプラスチックケースに光記録媒体を収納する工程を全枚数について行った。
【0109】
この結果、光記録媒体の張り付きによる搬送エラーが全く発生せず、100枚全ての搬送処理が完了した。
【0110】
[比較例1]
実施例1で用いた射出成形用の金型に対し、外周リムに当たる部分を研磨加工した後、実施例1と同様に光記録媒体を作製した。
【0111】
作製後の光記録媒体の外周リムの表面を、テンコール社製αステップにより測定長1mmで測定したところ、Raの値は0.03μmであった。
【0112】
上記光記録媒体を100枚作製し、実施例1と同様の搬送テストを行ったところ、3枚に1枚の割合でディスクの張り付きによる搬送エラーが発生し、100枚連続して搬送処理することが不可能であった。
【0113】
[実施例2〜4、比較例2]
比較例1で用いた射出成形用の金型を用いて光記録媒体用基板31を作製した後、下記表1に示す条件で、内周リム部35及び/又は外周リム部36に、凸状凹凸構造C3をカッターで形成した。なお、図8(a)は実施例4(内周リム部35及び外周リム部36に、凸状凹凸構造C3を設けた例)における光記録媒体103をレーベル面側からみた概念図である。実施例2の場合には図8(a)の内周リム部35の凸状凹凸構造C3が存在しない構成、実施例3の場合には図8(a)の外周リム部36の凸状凹凸構造C3が存在しない構成、比較例2の場合には図8(a)の内周リム部35及び外周リム部36共に凸状凹凸構造C3が存在しない構成となる。
【0114】
なお、カッターで形成した凸状凹凸構造C3の形状は、図8(b)に示すとおりであった。図8(b)は、図8(a)に示される光記録媒体103のP8−Q8断面の断面図である。
【0115】
これらの光記録媒体基板を各2枚ずつ作製し、実施例1と同様にPケーサーによる搬送テストを実施した。光記録媒体を積層する時に、ピックアップされる光記録媒体(表1では「ピックアップされる光記録媒体」と表記する。)と、その一つ下側に積層された光記録媒体(表1では「下側に積層される光記録媒体」と表記する。)との組み合わせは、表1の条件に従った。
【0116】
実施例2、3については、光記録媒体用基板の搬送時に、2枚の光記録媒体用基板が一瞬張り付いた状態であったものの、0.5秒程度で剥離したため、搬送エラーは発生しなかった。実施例4においては2枚の光記録媒体用基板はまったく張り付かず、搬送エラーも発生しなかった。一方、比較例2では2枚の光記録媒体用基板が3秒程度張り付いた状態であったため、搬送エラーが発生した。
【0117】
【表1】

【符号の説明】
【0118】
1 基板
2 中心孔
3 印刷層
4 カバー層
5 内周リム部
6 外周リム部
7 スタックリング
11 基板
12 中心孔
13 印刷層
14 カバー層
15 内周リム部
16 外周リム部
21 基板
22 中心孔
23 印刷層
24 カバー層
25 内周リム部
26 外周リム部
27 スタックリング
31 光記録媒体用基板
32 中心孔
35 内周リム部
36 外周リム部
37 スタックリング
6aH 凹凸構造C1の深さ
6bH 凹凸構造C1の高さ
6cH 凹凸構造C1の深さ
6dH 凹凸構造C1の高さ
6eH 凹凸構造C1の深さ
6fH 凹凸構造C1の高さ
6aW 凹凸構造C1の幅
6bW 凹凸構造C1の幅
6cW 凹凸構造C1の幅
6dW 凹凸構造C1の幅
6eW 凹凸構造C1の幅
6fW 凹凸構造C1の幅
C1 凹凸構造
C2 刻印
C3 凸状凹凸構造
R1 吸着パッド
R100 ロボットアーム
100 光記録媒体
101 光記録媒体
102 光記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心孔を有する略円盤状の基板上に、少なくともカバー層と、該カバー層と該基板に対して反対側に印刷層とを備えた光記録媒体において、
該基板に、該印刷層の内周側に凸状の内周リム部と、該印刷層の外周側に凸状の外周リム部とが設けられ、
該内周リム部及び/又は該外周リム部の表面の略全面に、凹凸構造が設けられる
ことを特徴とする、光記録媒体。
【請求項2】
中心孔を有する略円盤状の基板上に、少なくともカバー層と、該カバー層と該基板に対して反対側に印刷層とを備えた光記録媒体において、
該基板に、該印刷層の内周側に凸状の内周リム部と、該印刷層の外周側に凸状の外周リム部と、該カバー層の内周側に凸状のプロテクションリングが設けられ、
該内周リム部、該外周リム部、及び該プロテクションリングの群から選択される少なくとも一つの表面の略全面に、凹凸構造が設けられる
ことを特徴とする、光記録媒体。
【請求項3】
前記凹凸構造の少なくとも一部が、表面粗さRaが0.1μm以上の凹凸構造である
ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の光記録媒体。
【請求項4】
前記凹凸構造の少なくとも一部が、表面粗さRaが0.5μm以上の凹凸構造である
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載の光記録媒体。
【請求項5】
前記凹凸構造が、可視的情報の刻印である
ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の光記録媒体。
【請求項6】
前記可視的情報の刻印が、前記内周リブ部の全周に渡って設けられる
ことを特徴とする、請求項5に記載の光記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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