説明

光設備判定システム及び判定方法

【課題】光線路長のデータを精度良く取得し、識別子に対応付けて光設備を判定する。
【解決手段】心線判定装置60は、OLT制御端末によって取得されるOLT11とONU20−1〜20−8それぞれとの間の応答遅延時間に基づいて、OLT11とONU20−1〜20−8それぞれとの間の光線路長を算出する。また、心線判定装置60は、光パルス試験制御端末50を制御して光パルス試験装置30による光パルス試験を実行させ、OLT11と光フィルタ22−1〜22−8それぞれとの間の光線路長を算出する。算出された光線路長はそれぞれ照合され、OLT11とONU20−1〜20−8それぞれとの間の光線路長、及びOLT11と光フィルタ22−1〜22−8それぞれとの間の光線路長は、対応するONUのMACアドレスと対応付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバで構築されたPON型光アクセスネットワークにおける、光スプリッタ下部の光設備判定システム及び判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のインターネット利用者の拡大とTV電話や映像配信といったブロードバンドアプリケーションの普及により、光ファイバを用いた通信ネットワークの利用が進んでいる。特に経済的に比較的安価に構築が可能な点から、PON(Passive Optical Network)型による光アクセスネットワークの構築が広く用いられている。
【0003】
一般の光アクセスネットワークでは、通信事業者の拠点(セントラルオフィス)にOLT(Optical Line Terminal)が設置され、OLTはセントラルオフィス内の光成端架を介して、屋外の光ファイバに接続される。
特にPON型光アクセスネットワークでは、屋外の光ファイバは電柱上などで光スプリッタに接続され、光信号は光スプリッタによって分岐されて加入者宅のONU(Optical Network Unit)にまで伝達される。このような光アクセスネットワークの光設備の管理及び保守業務は通常、通信事業者によって行なわれる。
【0004】
PON型光アクセスネットワークの設備をセントラルオフィス側から集中的に監視する場合には、GE−PON(Gigabit Ether-Passive Optical Network)の監視技術やOTDR(Optical Time Domain Reflectometer)(光パルス試験器)等による光パルス試験技術が用いられる。
【0005】
GE−PON監視技術によれば、GE−PONの規格であるIEEE802.3ahで規定されているOAMフレームを利用した制御機能により、OLT〜ONU間の障害通知及びリンク監視が可能となる(非特許文献1参照)。このため試験対象のONUの通信状態を把握することができる。しかしながら、この技術では、光ファイバ等の断線があった場合には故障位置の特定が困難である。
【0006】
光パルス試験を利用して光アクセスネットワークを監視する技術としては、OTDR及びパワーメータの機能を組み込んだ光線路試験システムが提案されている(非特許文献2参照)。この技術によれば、光ファイバ上に発生した断線等の故障位置を確認することができる。しかしながらこの光パルス試験ではセントラルオフィスから加入者宅に向けて光パルスが送られるため、光スプリッタより下部側(加入者宅側)の光線路に故障が生じた場合には光スプリッタ下部側からの複数の反射光が重畳してしまい、故障位置の特定及び通信状態の監視が困難である。
【0007】
また、PON型光アクセスネットワークに対して、GE−PON監視技術と光パルス試験技術を組み合わせてネットワークの故障区間を推定する方式も提案されている(非特許文献3参照)。しかしながらこの方式では、光スプリッタ下部の光フィルタの位置の特定や線路長の測定を行うことは実効上困難である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】NTT技術ジャーナル 2005年9月号 pp91-94 「GE-PON技術」
【非特許文献2】泉田史、信学技報 Vol.105, No.428, pp.55-60, 2005 「光アクセス系の保守監視技術の標準化動向」
【非特許文献3】電子情報通信学会 2009年総合大会講演論文集 B-10-32 「Ops連携による効率的な光線路故障区間推定システム」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の通り、光スプリッタより下部の設備についての監視及び保守には困難を伴う。また、例えばOTDR波形に基づいて光設備の良否判定を行うためには、光ファイバ長等の設備データが必要となるが、精度の良い光ファイバ長の設備データベースを構築・運用していくためには、加入者の増加に併せて、設備データを常に最新化しておく必要があり、非常に大きな運用コストがかかる。このため、OTDR波形上に現れる複数の反射光とONUの直近に設置された光フィルタを1対1で関係づけることは容易ではない。
【0010】
更に、実際に故障修理等を行う場合は、光スプリッタより下部の複数の光ファイバの心線から対照する必要がある。例えば非特許文献3に記載の光線路試験システム等では、心線対照光による対照が行なわれるが、心線に接続されているONUのMACアドレスを簡便に識別することは難しい。
【0011】
本発明は、前記のような問題に鑑みなされたもので、光線路長のデータを精度良く取得し、識別子に対応付けて光設備を判定できる光設備判定システム及び光設備判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る光設備判定システムは以下のような態様の構成とする。
(1)通信事業者拠点に設置される光加入者線端局装置と、当該光加入者線端局装置と光線路を介して接続され、前記光加入者線端局装置からの光信号を分岐させる光スプリッタと、前記光スプリッタに光線路及び光フィルタを介してそれぞれ接続され、前記光スプリッタによって分岐された光信号を受信し、それぞれ固有の識別子が付与された複数の加入者線終端装置を具備する光アクセスネットワークにおいて用いられる光設備判定システムであって、前記光加入者線端局装置と前記複数の加入者線終端装置それぞれとの間の応答遅延時間に基づいて、前記光加入者線端局装置と前記複数の加入者線終端装置それぞれとの間の光線路長を算出する第1の光線路長算出手段と、光パルス試験を実行して、前記光加入者線端局装置と前記複数の加入者線終端装置それぞれに接続された光フィルタとの間の光線路長を算出する第2の光線路長算出手段と、前記第1の光線路長算出手段が算出した光線路長と、前記第2の光線路長算出手段が算出した光線路長とを照合する照合手段と、前記照合手段による照合結果に基づいて、前記光加入者線端局装置と前記複数の加入者線終端装置それぞれとの間の光線路長、及び前記光加入者線端局装置と前記複数の加入者線終端装置それぞれに接続された光フィルタとの間の光線路長を、それぞれの加入者線終端装置の識別子と対応付ける対応付け手段とを具備する態様とする。
この態様によれば、応答遅延時間の測定から得られた光線路長と光パルス試験で得られた光線路長とを照合することで、光加入者線端局装置と加入者線終端装置との間の光線路長、光フィルタの位置、及び加入者線終端装置の識別子を対応付けることができる。
【0013】
(2)(1)の構成において、前記照合手段による照合結果に基づいて、加入者線終端装置の設備状態を判定する判定手段を更に具備する態様とする。
この態様によれば、照合結果に基づいて加入者線終端装置の設備状態を判定することができる。
【0014】
(3)(2)の構成において、前記判定手段は、前記加入者線終端装置の電源、故障の有無、光フィルタの接続の有無、及び光フィルタとの距離の少なくともいずれかの状態を判定する態様とする。
この態様によれば、加入者線終端装置の設備状態として、電源の状態、故障の有無、光フィルタが接続されているか、光フィルタのとの距離等を判定できる。
【0015】
(4)(3)の構成において、前記判定手段は、前記第1の光線路長算出手段によって光線路長が算出された加入者線終端装置の数を表す第1の数と、前記第2の光線路長算出手段によって光線路長が算出された加入者線終端装置の数を表す第2の数とを比較し、前記第1の数が前記第2の数より小さい場合は、少なくとも1つの加入者線終端装置が電源断状態又は故障状態にあると判定し、前記第1の数が前記第2の数より大きい場合は、少なくとも1つの加入者線終端装置には光フィルタが取り付けられていないと判定し、前記第1の数と前記第2の数が一致し、かつ前記第1の光線路長算出手段によって光線路長と前記第2の光線路長算出手段によって光線路長に相違がある場合には、少なくとも1つの加入者線終端装置が光フィルタとは遠隔に備えられていると判定し、前記第1の数と前記第2の数が一致し、かつ前記第1の光線路長算出手段によって光線路長と前記第2の光線路長算出手段によって光線路長に相違がない場合には、前記複数の加入者線終端装置の設備状態は正常であると判定する態様とする。
この態様によれば、光線路長が算出可能であった加入者線終端装置の数に応じて、加入者線終端装置の設備状態を判定することができる。
【0016】
(5)(1)の構成において、前記第2の光線路長算出手段は、前記光パルス試験を複数回実行して反射光についての物理量を測定し、前記複数回の光パルス試験の結果得られた物理量の測定結果の変化を検出して、当該変化に対応する加入者線終端装置の識別子を出力する出力手段を更に具備する態様とする。
この態様によれば、光線路の対照作業を精度良く行うことが可能となる。
【0017】
(6)(1)の構成において、前記光加入者線端局装置と前記複数の加入者線終端装置それぞれとの間の光線路長を、前記対応付け手段によって対応付けられた識別子と共に格納するデータベースを更に具備する態様とする。
この態様によれば、加入者線終端装置の状態を容易に更新することができる。
【0018】
本発明に係る光設備判定方法は以下のような態様の構成とする。
(7)通信事業者拠点に設置される光加入者線端局装置と、当該光加入者線端局装置と光線路を介して接続され、前記光加入者線端局装置からの光信号を分岐させる光スプリッタと、前記光スプリッタに光線路及び光フィルタを介してそれぞれ接続され、前記光スプリッタによって分岐された光信号を受信し、それぞれ固有の識別子が付与された複数の加入者線終端装置を具備する光アクセスネットワークにおいて用いられる光設備判定方法であって、前記光加入者線端局装置と前記複数の加入者線終端装置それぞれとの間の応答遅延時間に基づいて、前記光加入者線端局装置と前記複数の加入者線終端装置それぞれとの間の光線路長を算出する第1の光線路長算出ステップと、光パルス試験を実行して、前記光加入者線端局装置と前記複数の加入者線終端装置それぞれに接続された光フィルタとの間の光線路長を算出する第2の光線路長算出ステップと、前記第1の光線路長算出ステップによって算出された光線路長と、前記第2の光線路長算出ステップによって算出された光線路長とを照合する照合ステップと、前記照合ステップによる照合結果に基づいて、前記光加入者線端局装置と前記複数の加入者線終端装置それぞれとの間の光線路長、及び前記光加入者線端局装置と前記複数の加入者線終端装置それぞれに接続された光フィルタとの間の光線路長を、それぞれの加入者線終端装置の識別子と対応付ける対応付けステップとを備える態様とする。
この態様によれば、応答遅延時間の測定から得られた光線路長と光パルス試験で得られた光線路長とを照合することで、光加入者線端局装置と加入者線終端装置との間の光線路長、光フィルタの位置、及び加入者線終端装置の識別子を対応付けることができる。
【0019】
(8)(7)の構成において、前記照合結果に基づいて、加入者線終端装置の設備状態を判定する判定ステップを更に備える態様とする。
この態様によれば、照合結果に基づいて加入者線終端装置の設備状態を判定することができる。
(9)(8)の構成において、前記加入者線終端装置の電源、故障の有無、光フィルタの接続の有無、及び光フィルタとの距離の少なくともいずれかの状態が判定される態様とする。
この態様によれば、加入者線終端装置の設備状態として、電源の状態、故障の有無、光フィルタが接続されているか、光フィルタのとの距離等を判定できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、光線路長のデータを精度良く取得し、識別子に対応付けて光設備を判定できる光設備判定システム及び光設備判定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る光設備判定システムの構成の一例を示す図。
【図2】OLT制御端末、光パルス試験制御端末、及び心線判定装置の機能ブロックと機能ブロック間のデータの流れを示す図。
【図3】光設備判定システムによる、反射波形データへのMACアドレスマッピング処理の手順を示すフローチャート。
【図4】ONU間の距離の差分算出処理(図3のステップS31)の詳細を示すフローチャート。
【図5】OLTが取得した各ONUのMACアドレスとRTT値を表す文字列のリストの一例を示す図。
【図6】図4のフローチャートによる算出結果データを格納したデータテーブルの具体例を示す図。
【図7】光フィルタ間の距離の差分算出処理(図3のステップS32)の詳細を示すフローチャート。
【図8】光パルス波形の一例を示す図。
【図9】図7のフローチャートによる算出結果データを格納したデータテーブルの具体例を示す図。
【図10】ONUの照合処理(図3のステップS33)の詳細を示すフローチャート。
【図11】MACアドレスとピーク点の対応テーブルの一例を示す図。
【図12】図8に示す光パルス波形上において、各ピーク点について関連付けされたONUのMACアドレスを表示した一例を示す。
【図13】光線路長データ更新処理に必要とされる光設備判定システムの構成を示す図。
【図14】設備データベースに送信されるデータテーブルの一例を示す図。
【図15】光スプリッタより下部の設備状態の判定処理に必要とされるOLT制御端末、光パルス試験制御端末、及び心線判定装置の機能ブロックと機能ブロック間のデータの流れを示す図。
【図16】光設備判定システムにおいて実行される設備状態の判定処理のフローチャート。
【図17】光線路長が測定されたONUの数が、光線路長が測定された光フィルタの数よりも少ない場合に生成される対応テーブルの一例を示す図。
【図18】光線路長が測定された光フィルタの数が、光線路長が測定されたONUの数よりも少ない場合に生成される対応テーブルの一例を示す図。
【図19】光線路長が測定されたONUの数と光線路長が測定された光フィルタの数は一致しているものの、光線路長の差分が一致しないデータがある場合に生成される対応テーブルの一例を示す図。
【図20】心線対照作業に必要とされるOLT制御端末、光パルス試験制御端末、及び心線判定装置の機能ブロックと機能ブロック間のデータの流れを示す図。
【図21】光設備判定システムにおいて行われる心線対照作業の手順を示すフローチャート。
【図22】ONUのMACアドレスとピーク点の対応テーブルの一例を示す図。
【図23】一回目と二回目の物理量の測定結果が一致する場合の対応テーブルの例を示す図。
【図24】一回目と二回目の物理量の測定結果が一致しない場合の対応テーブルの例を示す図。
【図25】物理量の変化があったポイント及びMACアドレスの表示の一例を示す図。
【図26】心線対象処理の作業イメージを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明による光設備判定システムの実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る光設備判定システムの構成の一例を示す図である。図1に示すように、この光設備判定システムは、PON型の光アクセスネットワークに適用することができる。
【0023】
OLT11は、セントラルオフィスに設置される光加入者線端局装置である。加入者宅には、加入者線終端装置(ONU)20−1〜20−8が備えられている。ONU20−1〜ONU20−8にはそれぞれ固有のMACアドレスが割り当てられている。なお図1に示す例では、8個のONU(ONU20−1〜20−8)が図示されているが、ONUの数(すなわち加入者宅の数)はこれに限定されるものではない。
【0024】
ONU20−1〜20−8の直近には、インサービスの試験光を遮断し、かつ光パルス試験において十分な反射点として確認される特性を有する光フィルタ22−1〜22−8がそれぞれ設置されている。
ONU20−1〜20−8のそれぞれとOLT11とは、光ファイバによって接続されている。光ファイバ経路上には、光信号を合成及び分配する所外光スプリッタSが設けられており、1つのOLT11に複数のONU20−1〜20−8が接続される構成となっている。
【0025】
OLT11と所外光スプリッタSの間には、更に所内光スプリッタ12と光分岐カプラ13が接続されている。
OLT11には、GE−PON方式に基づいてOLT11の動作を制御するためのOLT制御端末40が接続されている。OLT制御端末40は、例えば通常のコンピュータ装置であってもよい。
【0026】
光パルス試験装置30は、光ファイバに光パルスを入射して後方散乱光を測定するOTDR試験のための装置である。光パルス試験装置30から出射される試験光は、光カプラ13によって光ファイバに挿入される。測定された後方散乱光に基づいて、ファイバ内の反射点を検出することができる。光パルス試験装置30は、光パルス試験制御端末50に接続されており、光パルス試験制御端末50によって、光パルス試験装置30によるOTDR試験が制御される。光パルス試験制御端末50は、例えば通常のコンピュータ装置であってもよい。
【0027】
OLT制御端末40及び光パルス試験制御端末50は、例えばLAN等の有線又は無線のネットワークNを介して心線判定装置60と接続されている。
図2は、OLT制御端末40、光パルス試験制御端末50、及び心線判定装置60の機能ブロックと機能ブロック間のデータの流れを示す図である。
【0028】
OLT制御端末40は、通信機能部41及びOLT制御部42を具備している。通信機能部41は、ネットワークNを介して光パルス試験制御端末50及び心線判定装置60と通信を行うためのインタフェースとして機能する。OLT制御部42は、OLT11に接続され、GE−PON技術によるOLT11の試験を制御する。
【0029】
光パルス試験制御端末50は、通信機能部51及び光パルス試験装置制御部52を具備している。通信機能部51は、ネットワークNを介してOLT制御端末40及び心線判定装置60と通信を行うためのインタフェースとして機能する。光パルス試験制御部52は、光パルス試験装置30に接続され、光パルス試験装置30の試験実行等の制御を行う。
【0030】
心線判定装置60は、通信機能部61、フロー制御部62、及びデータ格納部63を具備する。通信機能部61は、ネットワークNを介してOLT制御端末40及び光パルス試験制御端末50と通信を行うためのインタフェースとして機能する。
フロー制御部62は、たとえばプロセッサ、プログラムメモリ及びワークメモリを具備し、プロセッサがプログラムメモリに記憶された所定のプログラムを実行することで、図3のフローチャートに示される処理を実現する。
【0031】
データ格納部63は、例えばハードディスク装置やフラッシュメモリ等の記憶装置を備え、図3の処理によって算出されたデータを格納する。
<反射波形データへのMACアドレスマッピング>
図3は、以上のように構成された光設備判定システムによる、反射波形データへのMACアドレスマッピング処理の手順を示すフローチャートである。
【0032】
このアドレスマッピング処理では、ONU間での距離の差分算出(ステップS31)、光フィルタ間での距離の差分算出(ステップS32)、及び光パルス波形上の反射点(ピークポイント)とONUの照合及び対応付け(ステップS33)が行なわれる。
図4は、ONU間の距離の差分算出処理(図3のステップS31)の詳細を示すフローチャートである。
【0033】
まず、心線判定装置60からOTL制御端末40へ、OLT11に接続されたONU20−1〜20−8のRTT(Round Trip Time)を取得するように要求する(ステップS41)。これに応じて、OLT制御端末40からOLT11へ、ONU20−1〜20−8のRTT値の取得が要求される(ステップS42)。なお、RTTの値は、データフレームを送ってから確認応答が戻ってくるために要する往復遅延時間を表す。
【0034】
OLT11は、各ONUのMACアドレスとRTT値を表す文字列を取得し、OLT制御端末40に返信する(ステップS43)。
図5は、OLT11が取得した各ONUのMACアドレスとRTT値を表す文字列のリスト500の一例を示す図である。リスト500では、8個のONU(ONU20−1〜ONU20−8)から、それぞれ文字列を取得した場合の例が示されている(リスト500において“number of ONU=8”)。それぞれのONUに対応して、各文字列にはONUのLLID(Logical Link ID)、RTT値、及びMACアドレスが含まれている。LLIDは、各ONUに割り当てられた識別子である。本実施形態ではONU20−1のLLIDが“001”、ONU20−2のLLIDが“002”、…、ONU20−8のLLIDが“008”であるとする。図5に示す例では、RTTの値が、GE−PON方式で規定されている最小単位である16nsの倍数(カウンタ)で16進表示されている。
【0035】
その後、各ONUに対応する文字列が、OLT制御端末40から心線判定装置60に送られる(ステップS44)。心線判定装置60は、受信した各ONUのRTT値から最小値を選択し、当該最小値と他ONUのRTT値の差分値を算出し、ONU間の光線路長差を算出する(ステップS45)。最小のRTT値を与えるONUと他のONUとの光線路長差は、{(RTT差分値)×(光ファイバ中の光の速度)}/2から求められる。
【0036】
算出された各ONUの光線路長差及びMACアドレスの文字列は、データ格納部63に記憶される。RTTの最小切り分け精度は16nsであるため、光ファイバ中の光速を考慮すると、光線路長差の分解能は1.5m程度となる。
図6は、図4のフローチャートによる算出結果データを格納したデータテーブルの具体例を示す図である。図6に示すようなデータテーブル600が、データ格納部63に記憶される。
【0037】
テーブル600では、RTT値が最小値を取るMACアドレス“xx-xx-xx-f9”のONU20−1が基準として選択されており、他のONUについては、ONU20−1との光線路長の差分が、テーブル600に格納されている。
図7は、光フィルタ間の距離の差分算出処理(図3のステップS32)の詳細を示すフローチャートである。
【0038】
まず、心線判定装置60から光パルス試験制御端末50へ、OLT11に接続された光ファイバケーブルに対する光パルス試験の実行指示が送られる(ステップS71)。これに応じて、光パルス試験制御端末50は光パルス試験装置30を制御して、OLT11に接続された光ファイバケーブルに対する光パルス試験を実行させる(ステップS72)。光パルス試験装置30は、各光フィルタから反射されて返ってくる光パルス波形を取得し、光パルス試験制御端末50に送信する。
【0039】
図8は、取得される光パルス波形の一例を示す図である。この図において、横軸は光線路長を、縦軸は信号光強度を示す。図8に示すように、光スプリッタ、及び各光フィルタ22−1〜22−2に対応して、信号光強度のピーク点(ピークポイント)A〜Hが生じている。
【0040】
光パルス試験制御端末50によってこのような光パルス波形が測定されたら、光パルス試験制御端末50は、光パルス波形データを心線判定装置60に送信する(ステップS73)。
心線判定装置60は、予め設定されている各光フィルタの反射基準値に基づいて、光パルス波形のピーク値から、光フィルタを表すピークポイント(反射点)を検出し、当該ピークポイントに対応する光線路長を算出する(ステップS74)。
【0041】
心線判定装置60は、検出した光フィルタまでの線路長から最小値を選択し、当該最小値と、他の光フィルタまでの線路長との差分値を算出する(ステップS75)。
検出された各フィルタポイントと、対応する線路長差分値は、データ格納部63に記憶される。
【0042】
図9は、図7のフローチャートによる算出結果データを格納したデータテーブルの具体例を示す図である。図9に示すようなデータテーブル900が、データ格納部63に記憶される。
テーブル900では、光フィルタを表すピーク点A,B,…,Hに対応して、それぞれのピーク点までの光線路長が記憶されている。このうち、光線路長が最小値(2000)であるピーク点Aが基準として選択されており、他のピーク点については、ピーク点Aとの光線路長の差分がテーブル900に格納されている。
【0043】
図10は、ONUの照合処理(図3のステップS33)の詳細を示すフローチャートである。
まず、心線判定装置60のフロー制御部62は、上述の各処理によって得られたデータをデータ格納部63から読み出す(ステップS101)。すなわちフロー制御部62は、図4の処理によって得られたOLT11に接続されたONUの数、対応するMACアドレス、及びONU間での光線路長の差分と、図7の処理によって得られた各フィルタポイント(ピーク点)、及びピーク点間での光線路長の差分とを、データ格納部63から読み出す。
【0044】
そして、フロー制御部62は、各データを比較、照合し、光線路長の差分が一致するか否かを判定する(ステップS102)。
フロー制御部62は、光線路長の差分が一致するデータを抽出して、フィルタポイントとMACアドレスの対応テーブルを作成する(ステップS103)。
【0045】
図11は、MACアドレスとピーク点の対応テーブルの一例を示す図である。図11に示す対応テーブル1100では、MACアドレス“xx-xx-xx-f9”のONUとピーク点Aが対応している。また、MACアドレス“xx-xx-xx-f8”がONUに対応する光線路長の差分“12”と、ピーク点Bに対応する光線路長の差分“12”が一致するため、両データが対応付けられている。同様に、他のONUのMACアドレスについても、光線路長の差分が一致するピークポイントが対応付けられている。
【0046】
更に、フロー制御部62は、光パルス試験の結果得られた光パルス波形上のピーク点に対して、対応するONUのMACアドレスを関連付ける(ステップS104)。
図12は、図8に示す光パルス波形上において、各ピーク点について関連付けされたONUのMACアドレスを表示した一例を示す。図12に示すように、ピーク点AにはONU20−1のMACアドレスが関連付けられ、ピーク点BにはONU20−2のMACアドレスが関連付けられている。同様に、他のピーク点にも、それぞれ対応するONUのMACアドレスが関連付けられる。
【0047】
ただし、ステップS104の処理の実行は必須でなくともよい。
<光線路長データ更新>
続いて、本実施形態に係る光設備判定システムによる、光線路長データの更新処理について、図面を参照して説明する。以下の説明では、上述のMACアドレスマッピングの説明と対応する部分には対応する参照数字を付して詳細な説明は省略する。
【0048】
図13は、光線路長データ更新処理に必要とされる光設備判定システムの構成を示す図である。この構成では、図1に示す構成に加えて、設備データベース601と、データベース参照用クライアント端末603が設けられている。設備データベース601及びデータベース参照用クライアント6端末03は、ネットワークNに接続されていてもよい。
【0049】
設備データベース601は、心線判定装置60から送信されるデータを保存するデータベースである。また、データベース参照用クライアント端末603は、設備データベース601に保存されたデータを参照するために用いられる。
上述のMACアドレスマッピングによって生成されたMACアドレスとピーク点の対応テーブル(例えば図11に示すデータテーブル1100)から、必要なデータが設備データベース601に送信され、記憶される。
【0050】
図14は、設備データベース601に送信されるデータテーブルの一例を示す図である。図14に図示されたデータテーブル1400が示すように、心線判定装置60のデータ格納部63から設備データベース601には、各ONUのMACアドレス、対応する光線路長(光パルス試験の結果得られたもの)、及び光スプリッタSからの光線路長(光スプリッタ下部長)が送られる。
【0051】
設備データベース601に送られたデータは、データベース参照用クライアント端末603が読み出して、表示画面上に表示する等の出力が可能となる。
心線判定装置60から設備データベース601へのデータ送信は、オペレータによる心線判定装置60の操作に応じて行われてもよいが、所定の時間間隔で自動的に行なわれてもよい。
【0052】
上述のようにして更新された各データは、以下で述べる所外光スプリッタより下部の設備状態の判定や、心線対照作業において利用することができる。
<所外光スプリッタの下部の設備状態の判定>
次に、本実施形態に係る光設備判定システムによる光スプリッタSより下部の設備状態の判定処理について、図面を参照して説明する。以下の説明では、上述の説明と対応する部分には対応する参照数字を付して詳細な説明は省略する。
【0053】
図15は、光スプリッタSより下部の設備状態の判定処理に必要とされるOLT制御端末40、光パルス試験制御端末50、及び心線判定装置60の機能ブロックと機能ブロック間のデータの流れを示す図である。
図15では、図3に示される機能ブロック図に加えて、心線判定装置60が設備判定部64を具備している。
【0054】
設備判定部64は、上述のONU間での距離の差分算出処理(ステップS31)及び光フィルタ間での距離の差分算出処理(ステップS32)の結果に基づいて、光スプリッタSより下部の設備状態を判定する。
図16は、以上のように構成された光設備判定システムにおいて実行される設備状態の判定処理のフローチャートである。
【0055】
心線判定装置60のフロー制御部62は、図10に示すステップS101と同様に、ONU間での距離の差分算出処理(図4)及び光フィルタ間での距離の差分算出処理(図7)によって得られたデータをデータ格納部63から読み出す(ステップS161)。すなわちフロー制御部62は、図4の処理によって得られたOLT11に接続されたONUの数、対応するMACアドレス及びONU間での光線路長の差分と、図7の処理によって得られた各ピークポイント、及びポイント間の光線路長の差分とを、データ格納部63から読み出す。
【0056】
そして、フロー制御部62は、図10のステップS102と同様に、各データを比較、照合し、光線路長の差分が一致するか否かを判定する(ステップS162)。
フロー制御部62は、図10のステップS103と同様に、光線路長の差分が一致するデータを抽出して、フィルタポイントとMACアドレスの対応テーブルを作成する(ステップS163)。
【0057】
次に、フロー制御部62は、各データの照合の結果、全てのONUについて光線路長の差分が一致するピークポイントが得られたか否かを判定する(ステップS164)。
全てのONUについて、光線路長の差分が一致するピーク点が得られた場合(ステップS164でYes)、光パルス波形から抽出された各ピークポイントとONUのMACアドレスが1対1で対応付けられ、ONU20−1〜20−8及び光フィルタ22−1〜22−8に異常は無いと判定される(ステップS165)。
【0058】
この場合、図11の対応テーブル1100に示すように、全てのONUのMACアドレスに対して、対応するピーク点が検出できる。
一方、光線路長が測定されたONUの数が、光線路長が測定された光フィルタの数よりも少ない場合、図17に示すような対応テーブル1700がステップS163で生成されている。図17の対応テーブル1700では、ピーク点Hに対応するONUのMACアドレスのデータが得られていない。この場合、光スプリッタSより下部の光ファイバケーブルには異常は無いが、故障が生じているか電源が入っていないONUが存在すると判定される(ステップS166)。
【0059】
また、光線路長が測定された光フィルタの数が、光線路長が測定されたONUの数よりも少ない場合、図18に示すような対応テーブル1800がステップS163で生成されている。図18の対応テーブル1800では、MACアドレスが“xx-xx-xx-ac”のONU20−8に対応する光フィルタが検出されていない。この場合、光スプリッタSより下部に、光フィルタが接続されていない光ファイバケーブルが存在すると判定される(ステップS167)。
【0060】
また、光線路長が測定されたONUの数と光線路長が測定された光フィルタの数は一致しているものの、光線路長の差分が一致しないデータがある場合、図19に示すような対応テーブル1900がステップS163で生成されている。図19の対応テーブル1600では、MACアドレスが“xx-xx-xx-ac”のONU20−8の光線路長の差分が“100”であり、ピーク点Hの光線路長の差分が“115”となっており、両者が一致していない。このような場合は、光フィルタとONUの線路上の距離に差があると判定される(ステップS168)。
【0061】
特にRTT値に基づいて算出される光線路差の最小分解能が1.5mであるため、光線路長の差分の不一致が1.5m以上であると、光フィルタとONUの間に不一致分の長さに相当する光ファイバが存在すると判定される。
<心線対照作業への適用>
次に、本実施形態に係る光設備判定システムを心線対照作業へ適用する例について、図面を参照して説明する。以下の説明では、上述の説明と対応する部分には対応する参照数字を付して詳細な説明は省略する。
【0062】
図20は、心線対照作業に必要とされるOLT制御端末40、光パルス試験制御端末50、及び心線判定装置60の機能ブロックと機能ブロック間のデータの流れを示す図である。
図20では、図3に示される機能ブロック図に加えて、心線判定装置60が測定値比較部65を具備している。また図26は、具体的な心線対照の作業イメージを示す図である。以下の説明では、セントラルオフィス内のオペレータPOと所外光スプリッタSの下部にいる屋外作業者PSは、携帯電話等で連絡を取りながら作業を進行することが想定されている。
【0063】
図21は、以上のように構成された光設備判定システムにおいて行われる心線対照作業の手順を示すフローチャートである。
まず、オペレータPOの指示に応じて、心線判定装置60によって、各ONUのMACアドレスと光パルス波形におけるフィルタポイント(ピーク点)の対応テーブルが作成される(ステップS211)。この対応テーブルの作成は、図3に示すMACアドレスマッピングと同様の手順で行なわれる。ただし、光パルス試験(図7のステップS72〜S73)において、各光フィルタポイントに関する物理量(例えば反射ピーク強度)が測定される。
【0064】
図22は、ONUのMACアドレスとピーク点の対応テーブルの一例を示す図である。図22に示す対応テーブル2200では、MACアドレス“xx-xx-xx-f9”のONUとピーク点Aが対応している。また、MACアドレス“xx-xx-xx-f8”のONUの光線路長差分“12”と、ピーク点Bの光線路長差分“12”が一致するため、両データが対応付けられている。同様に、他のONUのMACアドレスについても、光線路長差分が一致するピークポイントが対応付けられている。更に対応テーブル2200では、各ピーク点について、測定された反射ピーク強度(フィルタピーク値)が対応付けられている。
【0065】
次に、例えば屋外の作業者PSが光スプリッタSより下部の特定の光ファイバの心線に曲げを加えることにより、反射波形のピーク強度を変更させる(ステップS212)。
続いて、ステップS211と同様の処理が繰り返され、再び心線判定装置60によって、各ONUのMACアドレスと光パルス波形におけるフィルタポイントの対応テーブルが作成される(ステップS213)。
【0066】
そして心線判定装置60では、測定値比較部65が、ステップS211で測定された物理量(反射ピーク強度)とステップS213で得られた物理量(反射ピーク強度)を比較し、ステップS211での測定結果とステップS213での測定結果が一致するか否かを判定する(ステップS214)。
【0067】
物理量の測定結果が全て一致していれば(ステップS214でYes)、図23に示すように、ステップS211で作成された対応テーブル2301とステップS213で作成された対応テーブル2302とは一致する。このため、1回目の測定(ステップS211)と2回目の測定(ステップS213)で変化が無いと判定される(ステップS215)。この場合、図23に示すように、全てのONU(あるいは光フィルタ)で1回目と2回目の反射ピーク強度(光フィルタピーク値)一致する。
【0068】
一方、測定結果に不一致が生じていれば(ステップS214でNo)、図24に示すように、ステップS211で作成された対応テーブル2401とステップS213で作成された対応テーブル2402の間で、光フィルタピーク値に不一致が生じる。図24に示す例では、ピーク点Hにおいて物理量の計測結果に変化が生じている。
【0069】
この場合は、物理量の変化のあったピーク点、及び対応するONUのMACアドレスを例えば心線判定装置60の表示画面上に表示する(ステップS216)。
図25は、物理量の変化があったポイント及びMACアドレスの表示の一例を示す図である。この例では、光パルス波形の表示上に、物理量変化が生じたONUのMACアドレス“xx-xx-xx-ac”と対応するピークポイント“H”が示されている。
【0070】
以上のように、物理量の変化が検出された光フィルタの位置とONUのMACアドレスから、屋外の作業者PSが現場において、該当する心線が作業すべき加入者のONUに接続されている光ファイバ心線であることを確認することが可能となる。
以上のように、この心線対照作業では、オペレータPOが心線判定装置60を操作して、光スプリッタ下部の各光フィルタの反射ピーク強度などの物理量を測定する(1回目)。次に屋外の作業者PSが光スプリッタ下部の光ファイバの1本に曲げを加え、その状態でオペレータPOが下部心線判定60を操作して2回目の測定を行う。
【0071】
心線判定装置60では、曲げが加えられた光ファイバ配下のONUを表示することができ、作業者PSは、曲げを加えた光ファイバ心線に接続されたONUの対照ができる。測定値比較部65は、1回目と2回目の測定結果を比較して、変化のあったONUのMACアドレス及び対応する光フィルタポイントを検出する。検出結果は、心線判定装置60の表示画面に表示され得る。
【0072】
なお、光パルス波形のピーク値に変動を与える方法については、上述のように光スプリッタの下部の心線に曲げを加えるだけでなく、光ファイバへの側圧印加による偏波変調を用いてもよい。あるいは、他の方法によってピーク値を変動させてもよい。
以上述べたように、本実施形態に係る心線判定装置によれば、図3に示すMACアドレスマッピング処理により、各ONUのMACアドレスと、光フィルタによる反射点を1対1に対応付けることが可能となる。これによって、設備の詳細情報を保持する設備データベースが不要となり、光フィルタを増設しても設備データベースに当該光フィルタのデータを手入力する更新作業も不要となる。また光パルス試験の結果とOLT11が取得するRTTの情報をリアルタイムで取得することで、最新の光フィルタの反射点とONUのMACアドレスを対応付けることができる。
【0073】
また、光線路の最大全長が数kmのオーダで表されることに対して、RTT情報から得られる線路長の測定精度は1.5m程度である。このため、高い精度での光フィルタの位置を特定することができる。更に、光パルス試験の結果得られる反射波形から、光フィルタの位置を計測する場合に、複数の光フィルタの線路長が同一であるために反射ピークの値が重畳していたとしても、RTTに基づいて得られる光線路長と照合が行なわれるため、光フィルタの位置の推測が容易になる。
【0074】
また、上述の実施形態によれば、光フィルタやOLTなどの既存の光設備だけで実現で光フィルタの位置特定が行なえるため、追加の設備投資を行うが必要がない。従って経済性の面からも優れている。また加入者宅側からの測定等を必要とせず、セントラルオフィス側からの試験だけで実現可能であり、現場作業員の増員が必要ない。
【0075】
また、光線路長データの更新処理によって、光パルス試験装置30から各ONUまでの線路長や、光スプリッタSから各ONUまでの線路長が設備データベースに自動的に更新されて格納される。これらのデータは、光パルス試験器30で測定した線路長データであるため線路長測定精度が極めて高い。またデータベースへのデータ入力に人手を介さない方式であるためヒューマンエラーによる誤りがなくなり、正確な線路長データベース構築が可能である。また、リアルタイムにデータ更新が可能であり、タイムラグの無い設備データベースの参照も可能である。
【0076】
さらに所外光スプリッタSより下部の設備状態の判定処理では、各ONUについて光フィルタが接続されているか否かを確認し、光線路の正常性を確認できる。また判定時に、通信状態にないONUや電源が入っていないONUが存在しても、光フィルタの位置を確認することができる。従って、光スプリッタSより下部の光線路区間の異常を確認することができる。光フィルタの設置の有無が判定できることにより、光フィルタ設置の正常性を評価することができる
また、本実施形態に係る光設備判定システムにおける心線対象作業では、物理量(例えばピーク強度)の測定が複数回(例えば2回)行なわれる。測定の間に人為的に光線路の状態に変化を与え、その後の測定結果に基づいて、人為的な状態変化を加えられた光線路に接続された光フィルタのピーク点と対応するONUのMACアドレスが検出される。従って、状態変化が加えられた光線路が、作業すべき加入者のONUに接続されている光ファイバ心線であるか否かを、作業者が現場において確認することが可能となる。
【0077】
本実施形態に係る光設備判定システムでは、PON型のネットワークにおける伝送装置であるOLTと加入者宅に備えられたONUとの間のフレームの往復時間を表すRTTを測定し、OLTからONUまでの光線路長を算出する。一方で、光パルス試験を行い、光フィルタからの反射波形に基づいて、ONUの極近傍に設けられた光フィルタの位置及び当該光フィルタまでの光線路長を計測する。RTTの測定で得られた光線路長と光パルス試験で得られた光線路長とを照合することで、光フィルタの位置と対応するONUのMACアドレスを判定し、それぞれを関連付けて記憶することができる。
【0078】
更には、上述のようにして得られた光線路長に関するデータを容易に、且つ精度良くデータベースシステムに登録することができる。
また、データの照合結果に基づいて、光スプリッタより下部の光設備の状態(故障の有無等)を判定することができる。
【0079】
また、光線路に人為的な変化を加えて、光フィルタからの反射波形のピーク値などの物理量の変化を測定し、変化が検出されたピーク点から、人為的な変化が加えられた光線路に接続された光フィルタ、当該光フィルタ位置及び対応するONUのMACアドレス取得することができる。このため光スプリッタより下部の光ファイバの対照作業を容易に進めることができる。
【0080】
本発明は、前記各実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。さらに、前記各実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、1つの実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されたり、幾つかの実施形態に示される構成要件が組み合わされても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除されたり組み合わされた構成が発明として抽出され得るものである。
【符号の説明】
【0081】
11…OLT、12…所内光スプリッタ、13…光カプラ、20−1〜20−8…ONU、22−1〜22−8…光フィルタ、30…光パルス試験装置、40…OLT制御端末、50…光パルス試験制御端末、60…心線判定装置、N…ネットワーク、S…所外光スプリッタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信事業者拠点に設置される光加入者線端局装置と、当該光加入者線端局装置と光線路を介して接続され、前記光加入者線端局装置からの光信号を分岐させる光スプリッタと、前記光スプリッタに光線路及び光フィルタを介してそれぞれ接続され、前記光スプリッタによって分岐された光信号を受信し、それぞれ固有の識別子が付与された複数の加入者線終端装置を具備する光アクセスネットワークにおいて用いられる光設備判定システムであって、
前記光加入者線端局装置と前記複数の加入者線終端装置それぞれとの間の応答遅延時間に基づいて、前記光加入者線端局装置と前記複数の加入者線終端装置それぞれとの間の光線路長を算出する第1の光線路長算出手段と、
光パルス試験を実行して、前記光加入者線端局装置と前記複数の加入者線終端装置それぞれに接続された光フィルタとの間の光線路長を算出する第2の光線路長算出手段と、
前記第1の光線路長算出手段が算出した光線路長と、前記第2の光線路長算出手段が算出した光線路長とを照合する照合手段と、
前記照合手段による照合結果に基づいて、前記光加入者線端局装置と前記複数の加入者線終端装置それぞれとの間の光線路長、及び前記光加入者線端局装置と前記複数の加入者線終端装置それぞれに接続された光フィルタとの間の光線路長を、それぞれの加入者線終端装置の識別子と対応付ける対応付け手段と、
を具備する光設備判定システム。
【請求項2】
前記照合手段による照合結果に基づいて、加入者線終端装置の設備状態を判定する判定手段を更に具備する請求項1に記載の光設備判定システム。
【請求項3】
前記判定手段は、前記加入者線終端装置の電源、故障の有無、光フィルタの接続の有無、及び光フィルタとの距離の少なくともいずれかの状態を判定する請求項2に記載の光設備判定システム。
【請求項4】
前記判定手段は、
前記第1の光線路長算出手段によって光線路長が算出された加入者線終端装置の数を表す第1の数と、前記第2の光線路長算出手段によって光線路長が算出された加入者線終端装置の数を表す第2の数とを比較し、
前記第1の数が前記第2の数より小さい場合は、少なくとも1つの加入者線終端装置が電源断状態又は故障状態にあると判定し、
前記第1の数が前記第2の数より大きい場合は、少なくとも1つの加入者線終端装置には光フィルタが取り付けられていないと判定し、
前記第1の数と前記第2の数が一致し、かつ前記第1の光線路長算出手段によって光線路長と前記第2の光線路長算出手段によって光線路長に相違がある場合には、少なくとも1つの加入者線終端装置が光フィルタとは遠隔に備えられていると判定し、
前記第1の数と前記第2の数が一致し、かつ前記第1の光線路長算出手段によって光線路長と前記第2の光線路長算出手段によって光線路長に相違がない場合には、前記複数の加入者線終端装置の設備状態は正常であると判定する請求項3に記載の光設備判定システム。
【請求項5】
前記第2の光線路長算出手段は、前記光パルス試験を複数回実行して反射光についての物理量を測定し、
前記複数回の光パルス試験の結果得られた物理量の測定結果の変化を検出して、当該変化に対応する加入者線終端装置の識別子を出力する出力手段を更に具備する請求項1に記載の光設備判定システム。
【請求項6】
前記光加入者線端局装置と前記複数の加入者線終端装置それぞれとの間の光線路長を、前記対応付け手段によって対応付けられた識別子と共に格納するデータベースを更に具備する請求項1に記載の光設備判定システム。
【請求項7】
通信事業者拠点に設置される光加入者線端局装置と、当該光加入者線端局装置と光線路を介して接続され、前記光加入者線端局装置からの光信号を分岐させる光スプリッタと、前記光スプリッタに光線路及び光フィルタを介してそれぞれ接続され、前記光スプリッタによって分岐された光信号を受信し、それぞれ固有の識別子が付与された複数の加入者線終端装置を具備する光アクセスネットワークにおいて用いられる光設備判定方法であって、
前記光加入者線端局装置と前記複数の加入者線終端装置それぞれとの間の応答遅延時間に基づいて、前記光加入者線端局装置と前記複数の加入者線終端装置それぞれとの間の光線路長を算出する第1の光線路長算出ステップと、
光パルス試験を実行して、前記光加入者線端局装置と前記複数の加入者線終端装置それぞれに接続された光フィルタとの間の光線路長を算出する第2の光線路長算出ステップと、
前記第1の光線路長算出ステップによって算出された光線路長と、前記第2の光線路長算出ステップによって算出された光線路長とを照合する照合ステップと、
前記照合ステップによる照合結果に基づいて、前記光加入者線端局装置と前記複数の加入者線終端装置それぞれとの間の光線路長、及び前記光加入者線端局装置と前記複数の加入者線終端装置それぞれに接続された光フィルタとの間の光線路長を、それぞれの加入者線終端装置の識別子と対応付ける対応付けステップと、
を備える光設備判定方法。
【請求項8】
前記照合結果に基づいて、加入者線終端装置の設備状態を判定する判定ステップを更に備える請求項7に記載の光設備判定方法。
【請求項9】
前記加入者線終端装置の電源、故障の有無、光フィルタの接続の有無、及び光フィルタとの距離の少なくともいずれかの状態が判定される請求項8に記載の光設備判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2011−191147(P2011−191147A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56725(P2010−56725)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】