説明

光起電デバイス

【課題】10年よりも長い安定な貯蔵寿命を有し、かつ操作時の寿命が長く、周囲環境で製造することができる有機/ポリマー半導体材料とそれを使用した太陽電池を提供する。
【解決手段】基材と、第1の電極と、第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に活性層とを備えている。活性層は、式(I)のポリアリールアミンビスカーボネートエステルを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、広範囲のスペクトルを有する光(例えば、日光)にさらされたときに、電流を発生させるのに有用な光起電デバイスに関する。本明細書に記載の材料は、有機太陽電池で使用することができる。
【背景技術】
【0002】
光起電デバイスは、典型的には、2つの電極(すなわち、カソードおよびアノード)の間に挟まれた光活性材料の層(すなわち、活性層)を含む。光活性層は、放射線(例えば、日光)によって放出された光子のエネルギーを吸収することができる。この光子のエネルギーによって、励起子、すなわち、結合した電子−正孔対が生じる。材料によっては、電子および正孔は、自然発生的な再結合が起こる前に、短い距離(数十ナノメートル程度)を移動することができる。励起子は、接合点まで移動することができ、接合点でこれらは分離することができ、電子は片方の電極に集められ、正孔は、他の電極に集められる。これにより、電流が外部回路に流れる。
【0003】
太陽電池用途で用いられるほとんどの有機/ポリマー半導体材料は、貯蔵寿命に制限があり、このことが実施を困難にしている。例えば、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)は、プラスチック製太陽電池で最もよく知られている材料であり、貯蔵寿命はわずか約1年である。また、太陽電池用のほとんどの有機活性材料は、漏れを防ぎ、光起電効果を促進するために、熱処理および/または真空処理によって後コーティングする必要があり、構造内にさらなる緩衝層または障壁層を必要とする。これらの因子によって、製造プロセスが非常に煩わしいものとなる。
【0004】
後でキャスト処理をすることなく、または任意の緩衝層または障壁層を用いることなく、貯蔵寿命が延び、周囲環境で製造することが可能な新規光起電デバイスを開発することが望ましいだろう。日光に存在する光エネルギーをもっと多く捕捉でき、もっと多くの電気を発生させ、デバイスの電力変換効率を高めることができる光起電デバイスを提供することも望ましいだろう。
【発明の概要】
【0005】
本明細書の種々の実施形態では、光起電デバイスが開示されている。一般的にいうと、光起電デバイスは、基材と、基材の上に第1の電極と、第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に活性層とを備えている。
【0006】
本実施形態では、活性層を備え、この活性層が、電子受容体と、式(I)のポリアリールアミンビスカーボネートエステルとを含む、光起電デバイスが開示されており、
【化1】

式中、ArおよびArは、独立して、アリーレンまたは置換アリーレンであり、ArおよびArは、独立して、アリールまたは置換アリールであり、Rは、アルキレン、置換アルキレン、アリーレンまたは置換アリーレンであり、Zは、二価の結合部であり、mは、0または1であり、yは、1〜3の整数であり、nは、繰り返し単位の数をあらわす。
【0007】
特定の実施形態では、mは1であり、ArおよびArは、フェニレンであり、ArおよびArは、フェニルである。
【0008】
他の実施形態では、Zは、アリーレンまたは置換アリーレンである。ある特定の実施形態では、Zはビフェニレンである。
【0009】
ポリアリールアミンビスカーボネートエステルは、約5〜約5,000個の繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0010】
特定の実施形態では、Rは、−CH−CH−である。
【0011】
電子受容体は、C60フラーレン、[6,6]−フェニル−C61−酪酸メチルエステル(PCBM)、C70フラーレン、[6,6]−フェニル−C71−酪酸メチルエステル、またはフラーレン誘導体であってもよい。
【0012】
ポリアリールアミンビスカーボネートエステルと電子受容体の重量比は、15:85〜30:70であってもよい。より特定的には、ポリアリールアミンビスカーボネートエステルと電子受容体の重量比は、約25:75であってもよい。
【0013】
光起電デバイスは、基材と、基材の上に第1の電極と、第2の電極とをさらに備えていてもよく、活性層は、第1の電極と第2の電極の間にある。特定の態様では、このデバイスは、電子障壁層や正孔障壁層を含まない。他の特定の態様では、活性層は、第1の電極と第2の電極に直接接している。
【0014】
ポリアリールアミンビスカーボネートエステルは、式(A)の構造を有していてもよい。
【化2】

【0015】
また、ポリアリールアミンビスカーボネートエステルは、式(B)の構造を有していてもよい。
【化3】

【0016】
また、本実施形態では、基材と、基材の上の第1の電極と、第2の電極と、第1の電極と第2の電極の間に活性層とを備え、この活性層が、[6,6]−フェニル−C61−酪酸メチルエステル(PCBM)と、式(I)のポリアリールアミンビスカーボネートエステルとを含む、光起電デバイスも開示されており、
【化4】

式中、ArおよびArは、独立して、アリーレンまたは置換アリーレンであり、ArおよびArは、独立して、アリールまたは置換アリールであり、Rは、アルキレン、置換アルキレン、アリーレンまたは置換アリーレンであり、Zは、二価の結合部であり、mは、0または1であり、yは、1〜3の整数であり、nは、繰り返し単位の数をあらわす。
【0017】
活性層は、ポリアリールアミンビスカーボネートエステルを約15〜約30重量%含んでいてもよい。
【0018】
特定の実施形態では、mは1であり、ArおよびArは、フェニレンであり、ArおよびArは、フェニルであり、yは1または2であり、Rは、−CH−CH−である。
【0019】
また、光起電デバイスを製造するための方法が開示されており、この方法は、活性層溶液を電極に液相成長させることと、この活性層溶液を乾燥させ、電極の上に活性層を作成することとを含み、活性層溶液が、電子受容体と、式(I)のポリアリールアミンビスカーボネートエステルとを含み、
【化5】

式中、ArおよびArは、独立して、アリーレンまたは置換アリーレンであり、ArおよびArは、独立して、アリールまたは置換アリールであり、Rは、アルキレン、置換アルキレン、アリーレンまたは置換アリーレンであり、Zは、二価の結合部であり、mは、0または1であり、yは、1〜3の整数であり、nは、繰り返し単位の数をあらわす。
【0020】
活性層は、乾燥させた後に、熱や真空によるアニーリングを行わない。
【0021】
本開示のこれらの特徴および他の非限定的な特徴を、以下にもっと特定的に開示する。
【0022】
以下は、図面の簡単な説明であり、この説明は、本明細書に開示している例示的な実施形態を説明するために提示されており、本発明を限定するためのものではない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本開示の第1の例示的な光起電デバイスの断面図である。
【図2】本開示の第2の例示的な光起電デバイスの断面図である。
【図3】活性層に含まれるポリアリールアミンビスカーボネートエステルの量の関数として光起電デバイスの効率を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書に開示されている要素、プロセス、装置のもっと完全な理解は、添付の図面を参照することによって得ることができる。これらの図は、簡便に、本開示内容を示しやすくすることに基づく単なる模式図であり、したがって、デバイスまたはその要素の相対的な大きさおよび寸法を示したり、および/または例示的な実施形態の範囲を規定または限定することを意図したりするものではない。
【0025】
明確にするために、以下の記載で特定の用語を使用するが、これらの用語は、図面で説明するために選択された実施形態の特定の構造のみを指すことを意図しており、本開示の範囲を規定したり、または限定することを意図したものではない。図面および以下の記載において、同様の数字による表示は、同様の機能を有する要素を指すことが理解されるべきである
【0026】
量と組み合わせて用いられる修飾語句「約」は、述べられている値を含み、その内容によって示されている意味を有する(例えば、特定の量の測定値に関連する誤差の程度を少なくとも含む)。ある範囲に関して用いられる場合、修飾語句「約」は、2つの終点値の絶対値によって定義される範囲も開示しているものと考えるべきである。例えば、「約2〜約10」の範囲は、「2〜10」の範囲も開示している。
【0027】
用語「〜を含む」は、述べられている要素の存在を必須とし、他の要素が存在してもよいものとして本明細書で用いられる。用語「〜を含む」は、用語「〜からなる」を含むものと解釈されるべきであり、用語「〜からなる」は、述べられている要素の製造によって生じ得る任意の不純物を伴い、述べられている要素のみが存在することが許される。
【0028】
用語「〜の上」は、本明細書で使用される場合、第1の要素について、第2の要素に対する位置を記述しているものと解釈されるべきである。この用語は、第1の要素が第2の要素に直接的に接触している必要があると解釈されるべきではないが、この直接的な接触も、この用語を使用することで包含される。
【0029】
本開示は、活性層を備える光起電デバイスに関する。活性層は、ポリアリールアミンビスカーボネートエステル(すなわちPABC)と、電子受容体とを含む。
【0030】
図1は、例示的な光起電デバイス100の側面の断面図である。基材110が与えられている。第1の電極(例えば、アノード120)は、基材110の上に配置されている。次いで、半導体層(例えば、活性層140)は、アノード120の上に配置されている。任意要素の電子障壁層130は、所望な場合、アノード120と第1の半導体層140との間に配置されていてもよい。第2の電極(例えば、カソード170)は、基材110の上で、かつ活性層140の上にある。任意要素の電子輸送層150は、活性層140の上にあってもよい。任意要素の正孔障壁層160は、任意要素の電子輸送層150の上に配置されていてもよい。アノード120が、カソード170よりも基材110に近いことは注記しておくべきである。
【0031】
図2に示されるように、機能する光起電デバイスを製造するのに必要なのは、基材110、アノード120、半導体層140、カソード170のみである。しかし、きわめて効果のある光起電デバイスを得るのに、上述のさらなる層が役立つことがある。しかし、特定の実施形態では、光起電デバイスは、正孔障壁層または電子障壁層を備えていない。
【0032】
活性層は、式(I)のポリアリールアミンビスカーボネートエステルを含み、
【化6】

式中、ArおよびArは、独立して、アリーレンまたは置換アリーレンであり、ArおよびArは、独立して、アリールまたは置換アリールであり、Rは、アルキレン、置換アルキレン、アリーレンまたは置換アリーレンであり、Zは、二価の結合部であり、mは、0または1であり、yは、1〜3の整数であり、nは、繰り返し単位の数をあらわす。
【0033】
用語「アルキル」は、完全に炭素原子と水素原子で構成され、完全に飽和であり、式C2n+1を有する基を指す。アルキル基は、直鎖、分枝鎖、または環状であってもよい
【0034】
用語「アルキレン」は、完全に炭素原子と水素原子で構成され、2個の異なる水素以外の元素と単結合を形成することが可能な、完全に飽和な基を指す。アルキレン基は、式−C2n−を有している。
【0035】
用語「アリール」は、完全に炭素原子と水素原子で構成される芳香族基を指す。アリールが、炭素原子の数値範囲と組み合わせて記述される場合、置換された芳香族基を含むと解釈すべきではない。例えば、句「6〜10個の炭素原子を含有するアリール」は、フェニル基(6個の炭素原子)またはナフチル基(10個の炭素原子)のみを指すと解釈されるべきであり、メチルフェニル基(7個の炭素原子)を含むと解釈されるべきではない。例示的なアリール基としては、フェニル、ビフェニル、フルオレニルが挙げられる。
【0036】
用語「アリーレン」は、2個の異なる水素以外の元素と単結合を形成することが可能な芳香族基を指す。この場合も、炭素原子の数値範囲と組み合わせて記述される場合、この用語は、置換された芳香族基を含むと解釈すべきではない。例示的なアリーレンは、フェニレン(−C−)である。
【0037】
用語「アルコキシ」は、酸素原子に結合したアルキル基、すなわち、−O−C2n+1を指す。
【0038】
用語「置換された」は、述べられている基の少なくとも1つの水素原子が、別の官能基、例えば、ハロゲン、−CN、−NO、−COOH、−SOHで置換されていることを指す。例示的な置換されたアルキル基は、ペルハロアルキル基であり、この場合、アルキル基の1個以上の水素原子が、ハロゲン原子、例えば、フッ素、塩素、ヨウ素、臭素と置き換わっている。上述の官能基以外に、アリール基またはアリーレン基も、アルキルまたはアルコキシで置換されていてもよい。例示的な置換アリール基としては、メチルフェニルおよびメトキシフェニルが挙げられる。例示的な置換アリーレン基としては、メチルフェニレンおよびメトキシフェニレンが挙げられる。
【0039】
用語「二価の結合部」は、水素ではない2個の異なる原子と単結合を形成することが可能であり、その2個の異なる原子を結合する任意の部分を指す。例示的な二価の結合部としては、−O−、−NH−、アルキレン、アリーレンが挙げられる。
【0040】
一般的に、アルキル基、アルキレン基、アルコキシ基は、それぞれ独立して、1〜30個の炭素原子を含むが、特定の実施形態では、2〜10個の炭素原子を含んでいてもよい。同様に、アリール基およびアリーレン基は、独立して、6〜30個の炭素原子を含む。実施形態では、nは、約5〜約5,000である。
【0041】
ある種の実施形態では、Ar、Ar、Ar、Arは、同じである。mが1である特定の実施形態では、ArおよびArは、フェニレンであり、ArおよびArは、フェニルである。
【0042】
特定の実施形態では、Zは、アリーレンまたは置換アリーレンである。特定の実施形態では、Zは、ビフェニレン(−C−C−)である。
【0043】
特定の実施形態では、Rは、アルキレンである。特定の実施形態では、Rは、エチレン、すなわち、−CH−CH−である。
【0044】
特定の実施形態では、ポリアリールアミンビスカーボネートエステルは、式(A)または式(B)の構造を有していてもよい。
【化7】

【化8】

【0045】
式(I)のポリアリールアミンビスカーボネートエステルは、ポリカーボネートコポリマーであると考えてもよく、このエステルは、一般的に、(i)2個のヒドロキシル基を有する窒素系化合物と、(ii)ビスクロロホルメートとの反応から作られる。この反応を触媒するために、トリエチルアミンを用いてもよい。例えば、式(A)のPABCは、以下に示されるビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルアミンのモノマーと、エチレングリコールビスクロロホルメートから作られてもよい。
【化9】

ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルアミン エチレングリコールビスクロロホルメート
【0046】
同様に、式(B)のPABCは、以下の示されるN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−ヒドロキシフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン、ジエチレングリコールビスクロロホルメートのモノマーから作られてもよい。
【化10】

N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−ヒドロキシフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(DHTBD)
【化11】

ジエチレングリコールビスクロロホルメート
【0047】
活性層は、電子受容体をさらに含む。電子受容体は、別の化合物から移動してくる電子を受け取る材料または化合物である。一般的にいうと、電子受容体は、ポリアリールアミンビスカーボネートエステルよりも効率よく電子を移動させる。ある種の実施形態では、電子受容体は、フラーレンまたはフラーレン誘導体である。特定の実施形態では、電子受容体は、C60フラーレン、[6,6]−フェニル−C61−酪酸メチルエステル(PCBM)、C70フラーレン、または[6,6]−フェニル−C71−酪酸メチルエステルである。
【0048】
特定の実施形態では、電子受容体は、PCBMである。PCBMは、以下の式を有しており、
【化12】

PCBM
70フラーレンおよびPC[70]BMは、以下の式を有している。
【化13】

【0049】
式(I)のポリアリールアミンビスカーボネートエステルの主要な利点のひとつは、10年よりも長い安定な貯蔵寿命を有し、かつ操作時の寿命が長いことである。対照的に、ポリチオフェンの典型的な貯蔵寿命は、18ヶ月に満たない。それに加えて、ほとんどの光起電材料は、酸素感受性であり、製造は不活性雰囲気下で行わなければならない。これとは対照的に、本発明の半導体層は、周囲環境で製造することができる。また、良好な性能を得るために、電子障壁層も正孔障壁層も不要である。
【0050】
半導体層は、スピンコーティング、浸漬コーティング、ブレードコーティング、ロッドコーティング、スクリーン印刷、スタンピング、インクジェット印刷、および当該技術分野で既知の他の従来からのプロセスといった液相成長プロセスを用いて作成することができる。典型的には、式(I)のPABCと、電子受容体と、溶媒とを含む半導体組成物が作られる。例示的な溶媒としては、水、アルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、エチレングリコール、ドワノール、メトキシエタノール、アセテート、例えば、酢酸エチル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ケトン、例えば、メチルイソブチルケトン、メチルイソアミルケトン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、エーテル、例えば、石油エーテル、テトラヒドロフラン、メチル t−ブチルエーテル、炭化水素、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロペンタン、ヘキサデカン、iso−オクタン、芳香族炭化水素、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン、塩素化溶媒、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、他の溶媒、例えば、ジメチルスルホキシド、トリフルオロ酢酸、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ピリジン、n−メチル−α−ピロリジノンが挙げられる。
【0051】
PABCおよびPCBMを含む組成物は、種々の重量比で良好な膜形成性を示す。また、PABCとPCBMの比率が特定のものは、得られる光起電デバイスで良好な電力変換効率を示す。本実施形態では、ポリアリールアミンビスカーボネートエステルと電子受容体の重量比は、15:85〜30:70である(半導体組成物または半導体層自体のいずれかで)。特定の実施形態では、ポリアリールアミンビスカーボネートエステルと電子受容体の重量比は、約25:75である。言い換えると、活性層は、ポリアリールアミンビスカーボネートエステルを約15〜約30重量%含んでいてもよい。
【0052】
活性層は、厚みが約50nm〜約150nmであってもよい。
【0053】
光起電デバイスは、活性層溶液を電極の上で液相成長させることによって製造されてもよい。活性層溶液は、電子受容体と、式(I)のポリアリールアミンビスカーボネートエステルとを含み、
【化14】

式中、ArおよびArは、独立して、アリーレンまたは置換アリーレンであり、ArおよびArは、独立して、アリールまたは置換アリールであり、Rは、アルキレン、置換アルキレン、アリーレンまたは置換アリーレンであり、Zは、二価の結合部であり、mは、0または1であり、yは、1〜3の整数であり、nは、繰り返し単位の数をあらわす。
【0054】
次いで、活性層溶液を乾燥させ、活性層を作成する。特に、光起電デバイスは、熱や真空によるアニーリング工程を行わずに製造されてもよい。
【0055】
光起電デバイスの基材110は、光起電デバイスの他の要素を保持している。また、基材は、光が通過し、半導体層と接触することができるように、少なくともスペクトルの紫色部分から赤色部分までで光学的に透明でなければならない。本実施形態では、基材は、限定されないが、ガラス、シリコン、またはプラスチックの膜またはシートを含む材料で構成される。構造的に可とう性のデバイスの場合、プラスチック基材(例えば、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミドのシードなど)を用いてもよい。基材の厚みは、約10マイクロメートルから、10ミリメートルを超えてもよく、例示的な厚みは、特に、可とう性プラスチック基材の場合、約50マイクロメートル〜約5ミリメートルであり、ガラスまたはシリコンのような剛性基材の場合、約0.5〜約10ミリメートルである。
【0056】
アノード120およびカソード170は、導電性材料で構成されている。電極に適した例示的な材料としては、アルミニウム、金、銀、クロム、ニッケル、白金、インジウムスズオキシド(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)などが挙げられる。電極の1つ、特にアノードは、ITOまたはZnOのような光学的に透明な材料で作られる。特定の実施形態では、アノードはITOであり、カソードはアルミニウムである。電極の典型的な厚みは、例えば、約40ナノメートル〜約1マイクロメートルであり、もっと特定的な厚みは、約40〜約400ナノメートルである。
【0057】
電子障壁層130は、アノード120と半導体層140の間にあってもよい。この層は、電子がアノードに移動するのを防ぐことによって、アノードでの再結合を防ぐ。例示的な材料としては、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT:PSS)、MoO、Vが挙げられる。電子障壁層の厚みは、約1〜約100nmであってもよい。
【0058】
電子輸送層150は、半導体層140とカソード170の間にあってもよい。この層は、一般的に、電子を効率的に移動させる材料から作られており、さらに、ある光の波長を吸収してもよい。電子輸送層の例示的な材料としては、C60フラーレン、[6,6]−フェニル−C61−酪酸メチルエステル(PCBM)、C70フラーレン、[6,6]−フェニル−C71−酪酸メチルエステル(PC[70]BM)、または任意のフラーレン誘導体が挙げられる。電子輸送層の厚みは、約1nm〜約50nmであってもよい。
【0059】
また、正孔障壁層160は、半導体層140とカソード170の間に配置されていてもよい。電子輸送層が存在する場合、正孔障壁層160は、電子輸送層150とカソード170の間にある。この層のための例示的な正孔障壁材料としては、バトクプロイン(BCP)、フッ化リチウム、バトフェナントロリンが挙げられる。正孔障壁層の厚みは、約0.1nm〜約100nmであってもよい。
【0060】
この場合も、特定の実施形態では、本開示の光起電デバイスに正孔障壁層や電子障壁層は用いられない。特定の実施形態では、活性層は、第1の電極と第2の電極に直接接している。
【0061】
以下の例は、本開示をさらに説明するためのものである。実施例は、単なる実例であり、実施例に記載されている材料、条件、またはプロセスパラメータに関して製造されるデバイスに限定することを意図していない。すべての部は、他の意味であると示されていない限り、重量パーセントである。
【実施例】
【0062】
PABCおよびPCBMを種々の重量比で含む活性層を備える光起電デバイスを製造した。モノクロロベンゼン溶媒中に2重量%のPABC/PCBMを含む溶液を、実験室の周囲環境でITOコーティングされたガラス基材にスピンキャスト成型し、活性層を作成した。活性層の厚みは、約50〜約150nmであった。次いで、100〜200nmのアルミニウム電極層を活性層の上に真空昇華させた。これらのデバイスでは、ITOはアノードとして機能し、アルミニウム層はカソードとして機能した。
【0063】
結果を図3に示し、この図は、PABCの量(重量%)の関数として電力変換効率を示している。得られた効率の最大値は、25重量%のPABCと75重量%のPCBMを含む活性層を備えるデバイスの場合で、0.45%であった。PABCの量が30重量%まで増えると、効率は約0.32%まで低下した。PABCの量がもっと増えると、デバイスの効率はさらに低下し、35重量%のPABCでは効率は0.05%であり、40重量%および45重量%のPABCでは、効率はほぼゼロであった。PABCの濃度が20重量%および15重量%まで低くなると、デバイスの効率は、それぞれ約0.40%および約0.35%を示した。5重量%のPABCでは、効率は、無視できるほど小さな値となった。
【0064】
種々の上に開示した特徴および機能を有する変形例または代替物、および他の特徴および機能を有する変形例または代替物は、多くの他の異なるシステムまたは用途に望ましく組み込まれてもよいことを理解されたい。さらに、種々の現時点でわかっていないか、または予想されていない代替物、改変例、変形例または改良例は、当業者によって後でなされてもよく、これらも以下の特許請求の範囲に包含されることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性層を備え、この活性層が、電子受容体と、式(I)
【化1】

のポリアリールアミンビスカーボネートエステルとを含み、
式中、ArおよびArは、独立して、アリーレンまたは置換アリーレンであり、ArおよびArは、独立して、アリールまたは置換アリールであり、Rは、アルキレン、置換アルキレン、アリーレンまたは置換アリーレンであり、Zは、二価の結合部であり、mは、0または1であり、yは、1〜3の整数であり、nは、繰り返し単位の数をあらわす、光起電デバイス。
【請求項2】
mは1であり、ArおよびArは、フェニレンであり、ArおよびArは、フェニルである、請求項1に記載の光起電デバイス。
【請求項3】
Zがアリーレンまたは置換アリーレンである、請求項1に記載の光起電デバイス。
【請求項4】
Zがビフェニレンである、請求項3に記載の光起電デバイス。
【請求項5】
nが約5〜約5,000である、請求項1に記載の光起電デバイス。
【請求項6】
Rが−CH−CH−である、請求項1に記載の光起電デバイス。
【請求項7】
前記電子受容体が、C60フラーレン、[6,6]−フェニル−C61−酪酸メチルエステル(PCBM)、C70フラーレン、[6,6]−フェニル−C71−酪酸メチルエステル、またはフラーレン誘導体である、請求項1に記載の光起電デバイス。
【請求項8】
前記電子受容体がPCBMである、請求項1に記載の光起電デバイス。
【請求項9】
前記ポリアリールアミンビスカーボネートエステルと前記電子受容体の重量比が15:85〜30:70である、請求項1に記載の光起電デバイス。
【請求項10】
前記ポリアリールアミンビスカーボネートエステルと前記電子受容体の重量比が約25:75である、請求項1に記載の光起電デバイス。
【請求項11】
基材と、基材の上に第1の電極と、第2の電極とをさらに備えており、前記活性層が、前記第1の電極と前記第2の電極の間にある、請求項1に記載の光起電デバイス。
【請求項12】
前記デバイスが、電子障壁層も正孔障壁層も含まない、請求項1に記載の光起電デバイス。
【請求項13】
前記活性層が、前記第1の電極と前記第2の電極に直接接している、請求項1に記載の光起電デバイス。
【請求項14】
前記ポリアリールアミンビスカーボネートエステルが、式(A)の構造を有している、請求項1に記載の光起電デバイス。
【化2】

【請求項15】
前記ポリアリールアミンビスカーボネートエステルが、式(B)の構造を有している、請求項1に記載の光起電デバイス。
【化3】

【請求項16】
基材と、
基材の上に第1の電極と、
第2の電極と、
第1の電極と第2の電極の間に活性層とを備え、
この活性層が、[6,6]−フェニル−C61−酪酸メチルエステル(PCBM)と、式(I)のポリアリールアミンビスカーボネートエステル
【化4】

とを含み、
式中、ArおよびArは、独立して、アリーレンまたは置換アリーレンであり、ArおよびArは、独立して、アリールまたは置換アリールであり、Rは、アルキレン、置換アルキレン、アリーレンまたは置換アリーレンであり、Zは、二価の結合部であり、mは、0または1であり、yは、1〜3の整数であり、nは、繰り返し単位の数をあらわす、光起電デバイス。
【請求項17】
前記活性層が、前記ポリアリールアミンビスカーボネートエステルを約15〜約30重量%含む、請求項16に記載の光起電デバイス。
【請求項18】
mは1であり、ArおよびArは、フェニレンであり、ArおよびArは、フェニルであり、yは1または2であり、Rは、−CH−CH−である、請求項16に記載の光起電デバイス。
【請求項19】
活性層溶液を電極に液相成長させることと、
この活性層溶液を乾燥させ、電極の上に活性層を作成することとを含み、
活性層溶液が、電子受容体と、式(I)
【化5】

のポリアリールアミンビスカーボネートエステルとを含み、
式中、ArおよびArは、独立して、アリーレンまたは置換アリーレンであり、ArおよびArは、独立して、アリールまたは置換アリールであり、Rは、アルキレン、置換アルキレン、アリーレンまたは置換アリーレンであり、Zは、二価の結合部であり、mは、0または1であり、yは、1〜3の整数であり、nは、繰り返し単位の数をあらわす、光起電デバイスを製造するための方法。
【請求項20】
前記活性層に、乾燥させた後に、熱や真空によるアニーリングを行わない、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−169618(P2012−169618A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−24174(P2012−24174)
【出願日】平成24年2月7日(2012.2.7)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】