説明

光起電装置への適用のための改善されたシリコン薄膜堆積

本発明は、半導電性金属層のオンライン堆積の費用効率のよい方法を提供する。特に、本発明はフロートガラス製造処理において、p−型、n−型及びi−型の半導電性金属層の堆積のためのオンライン熱分解堆積法を提供する。更に、本発明は、単接合、2接合、3接合及び多接合p−(i−)n及びn−(i−)p型半導電性金属層の製造のためのオンライン熱分解堆積方法を提供する。かかるp−型、n−型及びi−型半導電性金属層は、光起電産業において有用であり、光起電モジュールの製造者にとっては「付加価値」製品として魅力があるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して光起電(PV)装置において用いられるシリコン系薄膜堆積及びその製造方法に関する。より具体的には、本発明は、光起電基板へのシリコン系薄膜の堆積の効率を高める改善された方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本願で参照する全ての米国及び外国の特許及び公開された特許出願は、それらの全体が参照としてここに組み入れられる。矛盾が生じた場合は、定義を含み本願が支配するものとする。
【0003】
代替資源のうち、太陽は、日々地球に無限のエネルギーを注いでおり、最も豊富な自然資源であると考えられる。太陽の光エネルギーを捕らえて、これを電気に交換することについて、多くの技術が存在する。光起電(PV)モジュールは、かかる技術を表し、今日までに、遠隔電力システム、宇宙船、及び無線装置等の消費財といった分野に多くの用途を見出している。
【0004】
光起電モジュール、または装置は、光電効果により機能する。PV装置の光電効果は、シリコン(Si)、ガリウムヒ素(GaAs)、硫化カドミウム(CdS)、テルル化カドミウム(CdTe)、二セレン化銅インジウム(CuInSe2、またCISとも称される。)及び二セレン化銅インジウムガリウム(CuInGaSe2、またCIGSとも称される)等の半導電性物質の利用により実現されうる。これらの物質のうち、シリコンは、(1)その入手しやすさと、(2)物質GaAs、CdS、CdTe、CIS及びCIGSと比べて低い費用であることを理由として、光起電装置において最もよく利用されている。しかしながら、今日に至るまで、シリコン系PV装置は、GaAs、CdS、CdTe、CIS及びCIGS系のものよりも効率が低いことがわかっている。
【0005】
PVモジュールは、薄膜でコーティングされたガラス等のPV基板を組み入れたものであることが知られている。薄膜光起電装置は、通常はやはり薄膜である透明な表側導体を更に組み入れたものである。使用されている最も一般的な導電薄膜は、酸化スズ、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)及びインジウムスズ酸化物(ITO)といった、透明導電酸化物(TCO)である。TCOの主な機能は2つある。第1に、TCOは、その下にある光吸収材料まで光を通すことを可能とする。第2に、TCOは、光によって発生した電荷を光吸収材料から離れるように運ぶオーム接点として作用する。かかるTCOは、あらゆる種類の光起電及び太陽モジュールのために望ましく、シリコン系の光起電モジュールのために特に望ましい。
【0006】
ガラス上の光起電薄膜は、多くの理由により望ましい。ガラスはどこにでもあるものであり、そのため、PV薄膜の導入のための既存の基盤を与える。更に、ガラス製造方法は周知である。かかる周知のガラス製造方法の一つは、フロート又はフラットガラスを製造するフロートライン法である。ガラス上の薄膜についてのこの望ましさの結果、ガラス上に薄膜コーティングを作製する多くの方法がある。これらの既存の方法の一つは、「オンライン」堆積として知られるものであり、コーティング装置がフロートラインのスズ浴の中、又はフロートラインのスズ浴の下流に配置されるものである。
【0007】
一般的に、PVモジュール製造者は、例えば、包括的な構造、すなわち、ガラス基板/アンダーコーティング(UC)/TCOを含むPV基板を購入する。より具体的には、オキシ炭化ケイ素のアンダーコーティング及びフッ素ドープ酸化スズのTCO層を有するガラス基板であって、アンダーコーティング及びTCO層はいずれもオンライン工程において熱分解により堆積されるものである。
【0008】
上述のようなPVモジュール基板を得た後、最終的なPVモジュールを実現するべく無数の処理工程に着手しなくてはならない。半導電性薄膜の堆積に必要な処理工程は、(A)半導体薄膜層の堆積に先立ってPVモジュール基板を清浄し、洗浄することと、(B)半導体薄膜層の堆積に先立ってPVモジュール基板を再加熱及び再冷却することと、(C)半導体薄膜層の堆積とを含むが、これらに限られない。半導電性薄膜層の堆積の後、最終的なPVモジュールを得るために更なる処理工程が必要である。これらの工程は、(D)個々のPVセルを形成するためシリコン層をレーザー切断することと、(E)バック接点を形成することと、(F)PVモジュールを積層することと、(G)PVモジュールを配線することと、(H)PVモジュールをポッティングすることと、(I)PVモジュールをテストすることとを含むがこれらに限られない。
【0009】
半導電性薄膜の堆積に関する上述の処理工程は、PVモジュールの製造に関連するかなりの製造時間及び費用がかかる。半導体薄膜堆積工程によって必要とされる時間及び費用の量は、PVモジュールから発生される電気を、化石燃料から発生される電気と経済的に匹敵するものでなくする主な障害のうちの一つである。今日に至るまで、シリコン薄膜系のPVモジュールから発生する電気については、3ドル/ピークワット(pW)をはるかに超える費用がかかる。
【0010】
光起電装置は多くの用途を見出してきたが、PVモジュールによって発生する電気が従来の化石燃料から発生する電気に対して競争力のあるものとなるまでには、克服すべき多くの障害が依然として存在する。同じように、PVモジュール製造費用は、PVモジュールから発生する電気が従来の化石燃料から発生する電気に対して競争力とあるものとなるのを防止している最も大きな障害を表す。
【0011】
従って、PVモジュール製造方法の分野において、PVモジュールの製造の上述の課題を克服しうるものに対するニーズが依然としてある。特に、PVモジュールの技術において、より費用効率がよく製造されうるものに対するニーズが依然としてある。
【0012】
<関連する出願への相互参照>
本願は、ここに参照として全体が組み入れられる2009年4月7日出願の米国仮特許出願第61/167,349号に基づき優先権を主張する。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、PVモジュール基板上にシリコン薄膜を堆積する方法を提供する。
【0014】
本発明の1つの側面では、PVモジュール基板上にシリコン薄膜を熱分解堆積する方法が提供される。
【0015】
本発明の1つの側面では、PVモジュール基板上にシリコン薄膜をオンライン熱分解堆積する方法が提供される。
【0016】
本発明の1つの側面では、PVモジュール基板上にアモルファスシリコン薄膜をオンライン熱分解堆積する方法が提供される。
【0017】
本発明の他の側面では、PVモジュール基板上に結晶シリコン薄膜をオンライン熱分解堆積する方法が提供される。
【0018】
本発明の他の側面では、PVモジュール基板上に正型シリコン(p−Si)薄膜層をオンライン熱分解堆積する方法が提供される。
【0019】
本発明の他の側面では、PVモジュール基板上に真性型、又はドープされていないシリコン(i−Si)薄膜層をオンライン熱分解堆積する方法が提供される。
【0020】
本発明の他の側面では、PVモジュール基板上に負型シリコン(n−Si)薄膜層をオンライン熱分解堆積する方法が提供される。
【0021】
本発明の他の側面では、PVモジュール基板上に単接合p−nシリコン薄膜層をオンライン熱分解堆積する方法が提供される。
【0022】
本発明の他の側面では、PVモジュール基板上に単接合n−pシリコン薄膜層をオンライン熱分解堆積する方法が提供される。
【0023】
本発明の他の側面では、PVモジュール基板上に単接合p−i−nシリコン薄膜層をオンライン熱分解堆積する方法が提供される。
【0024】
本発明の他の側面では、PVモジュール基板上に単接合n−i−pシリコン薄膜層をオンライン熱分解堆積する方法が提供される。
【0025】
本発明の更なる他の側面では、PVモジュール基板上に多接合p−nシリコン薄膜層をオンライン熱分解堆積する方法が提供される。
【0026】
本発明の更なる他の側面では、PVモジュール基板上に多接合n−pシリコン薄膜層をオンライン熱分解堆積する方法が提供される。
【0027】
本発明の更なる他の側面では、PVモジュール基板上に多接合p−i−nシリコン薄膜層をオンライン熱分解堆積する方法が提供される。
【0028】
本発明の更なる他の側面では、PVモジュール基板上に多接合n−i−pシリコン薄膜層をオンライン熱分解堆積する方法が提供される。
【0029】
本発明の更なる他の側面では、本願に記載のオンライン堆積法により製造された「付加価値」PVモジュール基板製品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】従来技術によるPV基板のコーティング構造、すなわちガラス/UC/TCOを示す図である。
【図2】本発明によるPV基板上に配置された単接合p−i−n型シリコン層の構造を示す図である。
【図3】本発明によるPV基板上に配置された2接合p−i−n型シリコン層の構造を示す図である。
【図4】本発明によるPV基板上に配置された3接合p−i−n型シリコン層の構造を示す図である。
【図5】本発明によるPV基板上に配置された単接合n−i−p型シリコン層の構造を示す図である。
【図6】本発明によるPV基板上に配置された2接合n−i−p型シリコン層の構造を示す図である。
【図7】本発明によるPV基板上に配置された3接合n−i−p型シリコン層の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、多くの異なった形で具現化されうるが、本開示は、本発明の原理の例を与えるものと考えられるべきであって、かかる例は本願に記載及び/又は図示された望ましい実施例に本願を限定することが意図されたものではないとの理解のもと、本願には多くの例示的な実施例が記載されている。種々の実施形態は、当業者が本発明を実施できるように十分詳細に記載されている。他の実施形態が用いられてもよいこと、並びに、本発明の主旨又は範囲から逸脱することなく構造的及び論理的な変更もなされうることが理解されるべきである。
【0032】
本発明による方法は、一般式、すなわち、ガラス基板/アンダーコート層/TCO/p型金属/n型金属、又はガラス基板/アンダーコート層/TCO/p型金属/i型金属/n型金属で表されるものを含むPVモジュール基板を提供する。当業者は、p型金属/n型金属及びp型金属/i型金属/n型金属の順序を単p−n型接合及び単p−i−n型接合として夫々認識するであろう。本発明による方法は、2、3及び多p−(i−)n型接合を製造するために容易に適合され構成される。かかる適合及び構成は、当業者により認識され、認められるであろう。本発明による方法はまた、2、3及び多−n−(i−)p型接合を製造するために容易に適合され構成されるであろう。
【0033】
本発明による方法はまた、追加的な薄膜層又は複数の層を上述のコーティング構造に導入するのに適応されうる。かかる追加的な層は、金属層の上又は下に配置されうる。非限定的な例として、一般式:ガラス基板/アンダーコート層1/アンダーコート層2/TCO/p型金属/i型金属/n型金属のPVモジュール基板を形成するよう、ガラス基板の上かつ金属層の下(そしてTCO層の下)に、他のアンダーコーティング薄膜層が配置されうる。アンダーコーティングの数の選択は、当業者によって認識され、認められるであろう。他の制限的でない例として、一般式:ガラス基板/アンダーコート層/TCO層1/TCO層2/p型金属/i型金属//n型金属のPVモジュール基板を形成するよう、他のTCO薄膜層が第1のTCO薄膜層の上又は下に配置されうる。TCO薄膜層の数の選択は、当業者によって認識され、認められるであろう。更なる制限的でない例として、TCO層と金属層の間に更なる層又は複数の層が配置されうる。TCO層と金属層の間に配置されるかかる更なる層は、界面層(IFL)として知られ、本発明の方法によりPV基板に組み入れられると、一般式:ガラス基板/アンダーコート層/TCO/IFL/p型金属/i型金属/n型金属のPVモジュール基板を形成しうる。かかるIFLは、PV基板に機械的及び化学的な耐性を与えることができ、また、PV基板の光学性質を向上させうる。既知のIFLは、チタン酸化物、亜鉛酸化物、及びチタンと亜鉛の酸化物の組合せに基づくものである。
【0034】
「アンダーコート層」、またはUCとは、色中和のために必要な屈折率を与える薄膜であり、従って、PVTCOモジュールの透過率を改善するのに役立つ。
【0035】
「透明な導電酸化物」、又はTCOとは、金属及び酸化物から作られる薄膜層である。PVモジュールに関して、TCOは、その下にある活性光吸収材料まで光が通るのを可能とするよう、また、光によって発生した電荷を光吸収材料から離れるように運ぶオーム接点として作用するよう、機能する。
【0036】
「N層」又は半導体材料の負に帯電した層は、リン又その他のV族元素の出発物質と、堆積されたときに化学的に結合して(即ちドープされて)、導電性を持たせるものである。また、n層は、水素で不動態化されうることに留意すべきである。例えば、n型シリコン又はn−Siは、V族元素でドープされた金属シリコンの層である。
【0037】
「P層」又は半導体材料の正に帯電した層は、堆積されたとき、容易に電子を受け入れる導電性の材料へと変えるホウ素又は他のIII族元素の出発物質と化学的に結合する(即ちドープされる)ものである。また、p型シリコンは、水素で不動態化されうることに留意すべきである。例えば、p型シリコン又はp−Siは、III族元素でドープされた金属シリコンの層である。
【0038】
「I型シリコン」、又はi−Siは、他の化学物質と結合することなく堆積されたシリコン、又はシリコンの層である。言い換えると、i−Siは、ドープされていないシリコン、又はシリコンの層である。I−Siは、真性型シリコンとも称される。また、i型シリコンは水素で不動態化されうることに留意すべきである。
【0039】
「アモルファスシリコン」又はa−Siは、シリコンの非結晶同素形である。a−Siでは、長距離結晶順序性はなく、原子は連続するランダムなネットワークを形成する。必要であれば、材料は水素で不動態化されてもよく、これにより層間拡散が減少する。
【0040】
「結晶シリコン」又はc−Siには、幾つかの種類がある。夫々は、ナノ結晶シリコン(nc−Si)、マイクロ結晶シリコン(μc−Si)、又は多結晶のように結晶の大きさで特徴付けられる。
【0041】
「P−N接合」又はp−n接合は、P型及びN型の半導体薄膜層を非常に密接に一緒に結合することによって形成される接合又は接点をいう。接合の語は、半導体薄膜層の2つの領域が出会う領域をいう。
【0042】
「P−I−N接合」又はp−i−n接合は、次のような基本的なシナリオを指す。即ち、中間の真性層(i型又はドープされていない)がn型層とp型層の間にある3層のサンドイッチ構造が作られる。同様に、「N−I−P接合」又はn−i−p接合は、次のような基本的なシナリオを指す。即ち、中間の真性層(i型又はドープされていない)がp型層とn型層の間にある3層のサンドイッチ構造が作られる。いずれのシナリオでも、この形状は、p型領域とn型領域の間に電流を発生する。例えば、p−i−nアモルファスシリコン(a−Si)セルでは、最上層がp型a−Siであり、中間層が真性シリコンであり、最下層がn型a−Siである。
【0043】
「単接合」とは、電子アクセプタの密度が高い領域(p型)から電子ドナーの密度が高い領域(n型)へのp−n接合といった、半導体層間の単一の遷移領域を有するPVモジュールをいう。
【0044】
「多接合」とは、2つ又はそれ以上のセル接合を含むPV装置をいい、より高い全体効率を達成するよう、各接合が太陽スペクトルの特定の部分に対して最適化されている。この種の構造は、タンデムセルとも称され、太陽スペクトルのより大きい領域を捕捉することにより、より高い全体変換効率を達成しうる。
【0045】
「フロートガラス」又は「フラットガラス」は、溶融ガラスの連続する流れを溶融スズの浴に浮かべることによりフロートライン上で製造されるガラスをいう。溶融ガラスは、金属の表面に広がり、高品質の一貫して平滑なガラス板を作り出す。
【0046】
「鋳造ガラス」又は「パターンガラス」は、溶融ガラスの連続する流れを鋳造ロールを通して鋳造することにより、または、溶融ガラスが型の中で固まるのを許すことにより製造されるガラスをいう。
【0047】
「オンライン法」又は「オンライン」は、ガラスコーティング技術の当業者に周知であり、よく理解された用語であり、本願の目的においては、ガラス製造ライン上でのガラスの製造中にガラスにコーティングすることをいう。これは、フロートガラス及び鋳造ガラスを含むがこれらに限られない。
【0048】
「オフライン法」又は「オフライン」もまた、ガラスコーティング技術の当業者に周知であり、よく理解された用語であり、本願の目的においては、ガラスがガラス製造ラインで製造され取り除かれた後にガラスをコーティングすることをいう。
【0049】
「その上へ堆積される」又は「その上に堆積される」という場合は、物質が、基準層の上に直接的又は間接的に塗布されることを意味する。間接的に塗布される場合、一又はそれ以上の層が介在しうる。更に、特にことわりのない限り、本発明のコーティングについて、フォーマット「[物質1]/[物質2]/[物質3]/...」又はフォーマット「第1の[物質1]層;第1の[物質2]層;第2の[物質1]層;第2の[物質2]層;...」といったフォーマットを用いて記述するとき、後続の物質は各々、先行する物質の上に直接的又は間接的に堆積されることを意味する。
【0050】
「ピークワット」又はpWは、光起電太陽エネルギー装置に関連して最もよく使用される電力の出力の尺度である。PV発電装置について、ワットピークでのその電力は、ワットで測定された装置のピーク出力として定義される。従って、1pWシステムは、理想条件下では1Wを生じさせる。特に、セルのpWは、PVモジュールが製造者の工場から出る前に、工業規格光試験の下で測定されたワット単位のDC電力出力である。規格光試験は、1平方メートル当たり1000ワットの光強度、25℃の周囲温度、及び大気を通過した太陽光と同様のスペクトルの規格条件の下で照射されたときの出力電力を試験する。
【0051】
本願に開示される本発明の発明者は、驚くべきことに、既知のPV基板は、シリコンをベースとする薄膜層の作製のための更なるオンライン熱分解堆積処理を受けうることを見出した。更に、かかる驚くべき知見は、PVモジュール製造者が購入の際に「付加価値」製品と考え得るPV基板の製造を可能とする。図1は、ガラス基板(10)上に配置されたアンダーコーティング層(20)上にTCO層(30)が配置されたかかる既知のPV基板を示す。
【0052】
PV基板を購入するPVモジュール製造者にとっての幾つかの欠点は、必要な半導電性薄膜層の堆積により生ずる。これらの欠点のうちの2つは、半導電層を堆積するのに必要な時間の長さと、半導電層の堆積の費用である。必要な時間の長さに関して、PVモジュール製造者は一般的には半導電層の堆積のために約2時間乃至約4時間(開始から終了まで)を費やす。約2時間乃至約4時間の製造時間は、購入したPV基板をコンベヤーに載せること、PV基板がコンベヤーに載っている間に洗浄及び清浄すること、半導体薄膜層堆積に最適な条件を作るべくPV基板がコンベヤーに載っている間に再加熱及び再冷却すること、及び、半導体薄膜層を堆積すること、という処理工程を含むが、これらに限られるものではない。
【0053】
本願に開示する主な事項の発明者は、驚くべきことに、半導電性薄膜層がオンライン処理中に堆積されうることを見出した。半導電性物質の選択については、物質がオンラインで堆積されることが可能であるかぎり特に制限はない。本発明の実施態様では、必要な半導電性薄膜層のために金属シリコンが用いられることが好ましい。
【0054】
本発明による方法は、一般式:(A)ガラス基板/UC/TCO/p−Si/i−Si/n−Si(p−i−n単接合)、(B)ガラス基板/UC/TCO/p−Si/i−Si/n−Si/p−Si/i−Si/n−Si(p−i−n2接合)、及び(C)ガラス基板/UC/TCO/p−Si/i−Si/n−Si/p−Si/i−Si/n−Si/p−Si/i−Si/n−Si(p−i−n3接合)のオンラインで製造されたPVモジュール基板を提供しうる。なお、本願に記載の単接合、2接合、及び3接合p−i−n層は、本発明を代表するものである。当業者は、本願に記載の方法が、3よりも多いp−i−n接合を含むPVモジュール基板の製造にどのように適合されるかわかるであろう。
【0055】
また、本発明による方法は、一般式:(A)ガラス基板/UC/TCO/n−Si/i−Si/p−Si(n−i−p単接合)、(B)ガラス基板/UC/TCO/n−Si/i−Si/p−Si/n−Si/i−Si/p−Si(n−i−p2接合)、及び(C)ガラス基板/UC/TCO/n−Si/i−Si/p−Si/n−Si/i−Si/p−Si/n−Si/i−Si/p−Si(n−i−p3接合)のオンラインで製造されたPVモジュール基板を提供しうる。なお、本願に記載の単接合、2接合及び3接合n−i−p層は、本発明を代表するものである。当業者は、本願に記載の方法が、3より多いn−i−p接合を含むPVモジュール基板の製造にどのように適合されるかわかるであろう。
【0056】
本発明の方法により説明されるPV基板については、必要ではないが、アンダーコーティングが基板と透明な導電性酸化物薄膜の間に配置されるよう、アンダーコーティングを透明な導電性酸化物薄膜の下に配置することが望ましい。
【0057】
本発明のアンダーコーティング層については、特に限られるわけではないが、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、オキシ窒化ケイ素、炭化ケイ素、オキシ炭化ケイ素及びそれらの組合せを使用することが好ましい。本発明のアンダーコーティング層については、オキシ炭化ケイ素の薄膜をアンダーコーティングとして用いることが最も好ましい。
【0058】
本発明のTCO層については、特に限られるわけではないが、酸化スズ、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)及びインジウムスズ酸化物(ITO)を用いることが好ましい。本発明のTCO層については、フッ素ドープ酸化スズを用いることが好ましい。
【0059】
本発明の半導電層については、導電性物質の選択は、物質が熱分解により堆積されることが可能である限り、特に限られるものではない。熱分解により堆積されることが可能であることが知られている半導電性金属は、シリコン、カドミウム、テルル、インジウム、ガリウム、ヒ素、アンチモン、アルミニウム、亜鉛及びそれらの組合せである。
【0060】
本発明の実施例では、シリコンを用いることが好ましい。シリコンは、高い温度で出発物質シランから熱分解により堆積されうる。p型シリコン層については、含ホウ素出発物質をシランと組み合わせることにより、正に帯電したp型シリコン層が得られる。n型シリコン層については、含リン出発物質をシランと組み合わせることにより、負に帯電したn型シリコン層が得られる。i型シリコンについては、ドープされていないシリコン層であるため、シラン以外の他の化学出発物質は必要ではない。任意に、必要であれば、i−Si層は水素で不動態化されうる。これは、シランを水素ガスと組み合わせることにより達成されうる。
【0061】
以下の記載は、本発明によるPV基板を提供する一般的な方法を与えるものである。以下の記載は、制限的ではないものであることが意図され、一般的なものとして記載された修正及び変形は、薄膜コーティング技術における当業者により、所望の最終的なPV基板のために適合され、変更されることができ、かかる変更は依然として本発明の範囲内にある。
【0062】
ソーダ石灰シリカガラスは、周知のガラスバッチ組成から作成されうる。ガラスバッチ組成は、ガラス溶融炉内で加熱することによって溶融され、次にフロートライン設備のスズ浴に向かわせられ得る。鋳造ガラスの場合、溶融ガラスは、鋳造ローラ又は鋳型のいずれかに向けられる。フロートラインのスズ浴内に配置された第1のコーターから、アンダーコーティング層が堆積されうる。鋳造ガラスの場合、コーターは鋳造ローラ又は鋳型のいずれかの下流に配置される。第1のコーターの下流に配置された第2のコーターから、透明な導電性酸化物薄膜層が堆積されうる。
【0063】
第2のコーターの下流に配置された第3のコーターから、n−Si又はp−Si層が、アンダーコーティング及び透明な導電性酸化物層を含むPV基板上に堆積されうる。
【0064】
n−Si層が第3のコーターから製造されることが望まれる場合、n−Si薄膜層の作製及び堆積のため、シラン(SiH)及びドーパントを含む混合ガス流がガラスリボンの加熱された表面に当てられうる。n−Si層の製造に最もよく用いられるドーパントは、リンといったV族元素である。n−Si層のドープのための含リン出発物質の選択は、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリブチル、リン酸トリ−t−ブチル及びホスフィンを含むが、これらに限られない。本発明のn−Si層のドープにホスフィンを用いることが好ましい。前述の出発物質の各々について含まれる混合ガス流のガスは、以下の流量範囲、すなわち、(1)シラン(SiH)0.0−50.0g/min、及び(2)ホスフィン(PH)0.0−25.0g/minで供給されうる。出発物質を運ぶのに好ましい範囲は、(1)シラン(SiH)0.5−30.0g/min、及び(2)ホスフィン(PH)0.5−15.0g/minである。所望であれば、本発明によるかかるn−Si層は、出発物質の混合ガス流に水素ガスを含めることにより水素で不動態化されうる。水素ガスは、0.0−20.0g/minの流量範囲で供給されうる。水素ガスの好ましい範囲は、0.5−10g/minの流量範囲で供給されうる。
【0065】
p−Si層が第3のコーターから製造されることが望まれる場合、シラン(SiH)及びドーパントを含む混合ガス流は、p−Si薄膜層の作製及び堆積のため、ガラスリボンの加熱された表面に向けられうる。p−Si層の製造に最も多く用いられるドーパントは、ホウ素といったIII族元素である。p−Si層のドープのための含ホウ素出発物質の選択は、ジボラン、三臭化ホウ素、三塩化ホウ素、三フッ化ホウ素及び三ヨウ化ホウ素を含むが、これらに限られない。本発明のp−Si層のドープにジボランを用いることが好ましい。前述の出発物質の各々に含まれる混合ガス流のガスは、以下の流量範囲、即ち、(1)シラン(SiH)0.0−50.0g/min;及び(2)ジボラン(B)0.0−25.0g/minで供給されうる。出発物質を運ぶのに好ましい範囲は、(1)シラン(SiH)0.5−30.0g/min、及び(2)ジボラン(B)0.5−15.0g/minである。所望であるとき、本発明によるかかるp−Si層は、出発物質の混合ガス流に水素ガスを含めることにより、水素で不動態化されうる。水素ガスは、0.0−20.0g/minの流量範囲で供給されうる。水素ガスの望ましい範囲は、0.5−10g/minの流量範囲で供給されうる。
【0066】
第3のコーターの下流に配置された第4のコーターから、n−Si又はp−Si層は、PV基板上に熱分解により堆積されうる。第4のコーターからn−Si層又はp−Si層のいずれが製造されるかの選択は、第3のコーターからどの種類のケイ素層がPV基板上に堆積されたかに依存する。第3のコーターにおいてn−Si層が作製された場合、p−Si層は、上述のように第4のコーターから作製されうる。p−Si層が第3のコーターで作製された場合、n−Si層は、上述のように第4のコーターから作製されうる。
【0067】
アモルファス及び結晶シリコン系のPVモジュールの場合のように、n−Si層とp−Si層の間にi−Si半導電性薄膜層を組み込むことが必要な場合、かかるi−Si層を作製するための堆積用に、第3と第4のコーターの間に他のコーターが配置されうる。i−Si層を作製することが望まれている場合、i−Si薄膜層の作製及び堆積のためにガラスリボンの加熱された表面にシラン(SiH)を含むガス流が当てられ得る。シランガスは、0.0−50.0g/minの流量範囲で供給されうる。シランガスの好ましい範囲は、0.5−30.0g/minの流量範囲で供給されうる。所望であれば、i−Si層は、水素で不動態化されうる。これを達成するために、水素ガスは、以下の流量範囲、即ち、0.0−20.0g/minでシラン出発物質と結合されうる。水素ガスの好ましい範囲は、0.5−10g/minの流量範囲で供給されうる。
【0068】
一般的に、フロートラインにおいてフロートバスの下流に配置されうるコーターの数については、フロートライン上にかかるコーターの配置のための十分なスペースがあるかぎり、制限はない。同様に、鋳造ガラスライン上で鋳造ローラー又は鋳型の下流に配置されうるコーターの数については、かかるコーターの配置のための十分なスペースがあるかぎり、制限はない。しかしながら、潜在的に下流に配置されうるコーターの数は、溶融ガラスリボンの製造に用いられるラインの長さによって制限を受ける。当業者は、コーティング装置及び機器を、スズ浴の内部又はスズ浴の下流又は鋳造ローラー若しくは鋳型の下流のいずれにどのように設け、組み込むかを認識するであろう。また、上述の一般的な記載の本発明の実施形態は、単接合p−(i−)n型PV基板のコーティング構造に関するものであるが、当業者は、2接合、3接合及び多接合p−(i−)n型PV基板を製造するのに必要とされる追加的なコーターをどのように設け、組み込むかを認識するであろう。同様に、当業者は、単接合、2接合、3接合及び多接合n−(i−)p型PV基板を製造するのに必要な適合を認識するであろう。
【0069】
本発明の発明者は、驚くべきことに、PVモジュール製造者の場合と比較したとき、半導電層をはるかに短い時間で堆積させることが可能であることを見出した。これは、堆積工程をオンラインで行うことによるものである。典型的には、PVモジュール製造者が半導電層を製造するのには2乃至4時間かかりうる。半導電性金属層のオンライン製造のための堆積技術を組み込むことにより、PVモジュール製造者がかかる層を製造する必要がなくなる。従って、PVモジュール製造者によって生ずるコストは、著しく低減されうる。更に、発明者は、半導電層を、数分で、それどころか数秒で堆積することが可能であることを見出した。本願に記載する堆積工程は、熱分解堆積工程であることが好ましい。
【0070】
更に、本発明の発明者は、半導電層のオンライン堆積が、ガラスの連続するリボン上に層を堆積するという利点を提供することを見出した。したがって、これにより、半導電層は縁効果を受けないため、より高品質の膜が得られる。本発明の方法はまた、PVモジュール製造者が利用することが多いオフラインのスパッタリング工程と比較して、出発物質についての費用の減少と、コーティング効率の改善を可能とする。
【0071】
本発明の方法は、本願に記載の本発明による方法によって製造されたPV基板の購入を望むPVモジュール製造者にとって魅力的な特徴を与える。かかる特徴は、PV半導電層を「付加価値」製品として望ましいものとし、(1)シリコン層堆積前にPVモジュール製造者がPV基板を洗浄又は製造する必要をなくし、(2)半導電層堆積のためにPVモジュール製造者がPV基板を再加熱及び再冷却する必要性をなくし、並びに(3)PVモジュール製造者が半導電層を堆積、又はスパッタリングする必要をなくす。これらの処理工程をなくすことにより、PVモジュール製造者にとって大きな費用削減となる。
【0072】
〔実施例1〕
以下の実施例は、p−i−nシリコン単接合PV基板を表す図2に具現化されるような、本発明によるp−i−nコーティングを有するPV基板を製造するオンライン方法について記載したものである。
【0073】
フロートバスの内部に配置された第1のコーターから、混合ガス流をガラスリボン基板10の加熱された面に当て、アンダーコーティング層20を形成した。
【0074】
第1のコーターの下流に配置した第2のコーターから、混合ガス流をアンダーコーティング層20の表面に当て、TCO層30を形成した。
【0075】
第2のコーターの下流に配置した第3のコーターから、混合ガス流をTCO層30の表面に当て、n−Si層40を形成した。
【0076】
第3のコーターの下流に配置した第4のコーターから、混合ガス流をn−Si層40の表面に当て、i−Si層50を形成した。
【0077】
第4のコーターの下流に配置した第5のコーターから、混合ガス流をi−Si層50の表面に当て、p−Si層60を形成した。
【0078】
〔実施例2〕
以下の実施例は、p−i−nシリコン2接合PV基板を表す図3に具現化されるような、本発明によるPV基板を製造するオンライン方法を記載したものである。
【0079】
フロートバスの内部に配置した第1のコーターから、混合ガス流をガラスリボン基板10の加熱された表面に当て、アンダーコーティング層20を形成した。
【0080】
第1のコーターの下流に配置した第2のコーターから、混合ガス流をアンダーコーティング層20の表面に当て、TCO層30を形成した。
【0081】
第2のコーターの下流に配置した第3のコーターから、混合ガス流をTCO層30の表面に当て、n−Si層40を形成した。
【0082】
第3のコーターの下流に配置した第4のコーターから、混合ガス流をn−Si層40の表面に当て、i−Si層50を形成した。
【0083】
第4のコーターの下流に配置した第5のコーターから、混合ガス流をi−Si層50の表面に当て、p−Si層60を形成した。
【0084】
第5のコーターの下流に配置した第6のコーターから、混合ガス流をp−Si層60の表面に当て、n−Si層40’を形成した。
【0085】
第6のコーターの下流に配置した第7のコーターから、混合ガス流をn−Si層40’の表面に当て、i−Si層50’を形成した。
【0086】
第7のコーターの下流に配置した第8のコーターから、混合ガス流をi−Si層50’の表面に当て、p−Si層60’を形成した。
【0087】
〔実施例3〕
以下の実施例は、p−i−nシリコン3接合PV基板を表す図4によって具現化されるような、本発明によるPV基板を製造するオンライン方法を記載したものである。
【0088】
フロートバスの内部に配置した第1のコーターから、混合ガス流をガラスリボン基板10の加熱された表面に当て、アンダーコーティング層20を形成した。
【0089】
第1のコーターの下流に配置した第2のコーターから、混合ガス流をアンダーコーティング層20の表面に当て、TCO層30を形成した。
【0090】
第2のコーターの下流に配置した第3のコーターから、混合ガス流をTCO層30の表面に当て、n−Si層40を形成した。
【0091】
第3のコーターの下流に配置した第4のコーターから、混合ガス流をn−Si層40の表面に当て、i−Si層50を形成した。
【0092】
第4のコーターの下流に配置した第5のコーターから、混合ガス流をi−Si層50の表面に当て、p−Si層60を形成した。
【0093】
第5のコーターの下流に配置した第6のコーターから、混合ガス流をp−Si層60の表面に当て、n−Si層40’を形成した。
【0094】
第6のコーターの下流に配置した第7のコーターから、混合ガス流をn−Si層40’の表面に当て、i−Si層50’を形成した。
【0095】
第7のコーターの下流に配置した第8のコーターから、混合ガス流をi−Si層50’の表面に当て、p−Si層60’を形成した。
【0096】
第8のコーターの下流に配置した第9のコーターから、混合ガス流をp−Si層60’の表面に当て、n−Si層40”を形成した。
【0097】
第9のコーターの下流に配置した第10のコーターから、混合ガス流をn−Si層40”の表面に当て、i−Si層50”を形成した。
【0098】
第10のコーターの下流に配置した第11のコーターから、混合ガス流をi−Si層50”の表面に当て、p−Si層60”を形成した。
【0099】
〔実施例4〕
以下の実施例は、p−i−nシリコン単接合PV基板を表す図5によって具現化されるような、本発明によるPV基板を製造するオンライン方法を記載したものである。
【0100】
フロートバスの内部に配置した第1のコーターから、混合ガス流をガラスリボン基板10の加熱された表面に当て、アンダーコーティング層20を形成した。
【0101】
第1のコーターの下流に配置した第2のコーターから、混合ガス流をアンダーコーティング層20の表面に当て、TCO層30を形成した。
【0102】
第2のコーターの下流に配置した第3のコーターから、混合ガス流をTCO層30の表面に当て、p−Si層60を形成した。
【0103】
第3のコーターの下流に配置した第4のコーターから、混合ガス流をp−Si層60の表面に当て、i−Si層50を形成した。
【0104】
第4のコーターの下流に配置した第5のコーターから、混合ガス流をi−Si層50の表面に当て、n−Si層40を形成した。
【0105】
〔実施例5〕
以下の実施例は、p−i−nシリコン2接合PV基板を表す図6に具現化されるような、本発明によるPV基板を製造するオンライン方法を記載したものである。
【0106】
フロートバスの内部に配置した第1のコーターから、混合ガス流をガラスリボン基板10の加熱された表面に当て、アンダーコーティング層20を形成した。
【0107】
第1のコーターの下流に配置した第2のコーターから、混合ガス流をアンダーコーティング層20の表面に当て、TCO層30を形成した。
【0108】
第2のコーターの下流に配置した第3のコーターから、混合ガス流をTCO層30の表面に当て、p−Si層60を形成した。
【0109】
第3のコーターの下流に配置した第4のコーターから、混合ガス流をp−Si層60の表面に当て、i−Si層50を形成した。
【0110】
第4のコーターの下流に配置した第5のコーターから、混合ガス流をi−Si層50の表面に当て、n−Si層40を形成した。
【0111】
第5のコーターの下流に配置した第6のコーターから、混合ガス流をn−Si層40の表面に当て、p−Si層60’を形成した。
【0112】
第6のコーターの下流に配置した第7のコーターから、混合ガス流をp−Si層60’の表面に当て、i−Si層50’を形成した。
【0113】
第7のコーターの下流に配置した第8のコーターから、混合ガス流をi−Si層50’の表面に当て、n−Si層40’を形成した。
【0114】
〔実施例6〕
以下の実施例は、p−i−nシリコン3接合PV基板を表す図7によって具現化されるような、本発明によるPV基板を製造するオンライン方法を記載したものである。フロートバスの内部に配置した第1のコーターから、混合ガス流をガラスリボン基板10の加熱された表面に当て、アンダーコーティング層20を形成した。
【0115】
第1のコーターの下流に配置した第2のコーターから、混合ガス流をアンダーコーティング層20の表面に当て、TCO層30を形成した。
【0116】
第2のコーターの下流に配置した第3のコーターから、混合ガス流をTCO層30の表面に当て、p−Si層60を形成した。
【0117】
第3のコーターの下流に配置した第4のコーターから、混合ガス流をp−Si層60の表面に当て、i−Si層50を形成した。
【0118】
第4のコーターの下流に配置した第5のコーターから、混合ガス流をi−Si層50の表面に当て、n−Si層40を形成した。
【0119】
第5のコーターの下流に配置した第6のコーターから、混合ガス流をn−Si層40の表面に当て、p−Si層60’を形成した。
【0120】
第6のコーターの下流に配置した第7のコーターから、混合ガス流をp−Si層60’の表面に当て、i−Si層50’を形成した。
【0121】
第7のコーターの下流に配置した第8のコーターから、混合ガス流をi−Si層50’の表面に当て、n−Si層40’を形成した。
【0122】
第8のコーターの下流に配置した第9のコーターから、混合ガス流をn−Si層40’の表面に当て、p−Si層60”を形成した。
【0123】
第9のコーターの下流に配置した第10のコーターから、混合ガス流をp−Si層60”の表面に当て、i−Si層50”を形成した。
【0124】
第10のコーターの下流に配置した第11のコーターから、混合ガス流をi−Si層50”の表面に当て、n−Si層40”を形成した。
【0125】
本発明について特定の実施形態に関して説明したが、本発明は上述の特定の詳細に限定されるものではなく、当業者に示唆を与えうる様々な変更及び修正を含み、それら全ては請求項によって定められる本発明の範囲にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスラインのフロートバス、鋳造ロール、又は鋳型と、内部又は下流のオンラインに配置された1つ以上のコーターを有するフロートライン又は鋳造ガラスラインのいずれかにおいて、コーティングされたガラス基板を製造する方法であって、
(a)溶融ガラスを形成するよう炉の中でバッチ材料を溶融することと、
(b)(1)ガラス板を形成するようフロートラインの溶融スズの浴に溶融ガラスの連続した流れを浮かべること、又は、(2)ガラス板を形成するよう鋳造ガラスラインの鋳造ロール又は鋳型を通して溶融ガラスの流れを鋳造することのうちの一つを選択することと、
(c)オンラインに配置された前記コーターのうちの1つから、前記ガラス板の一部に半導電性金属層を堆積することとを含む、方法。
【請求項2】
前記半導電性金属層は、シリコン、カドミウム、テルル、インジウム、ガリウム、ヒ素、アンチモン、アルミニウム、亜鉛及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記半導電性金属層はシリコンである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記シリコンは、p型シリコンである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記p型シリコンは、III族元素でドープされ、任意に、水素で不動態化される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記III族元素は、ホウ素である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記シリコンは、n型シリコンである、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記n型シリコンは、V族元素でドープされ、任意に、水素で不動態化される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記V族元素は、リンである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記シリコンは、任意に水素で不動態化されたi型シリコンである、請求項3に記載の方法。
【請求項11】
前記ガラス基板は、前記半導電性金属層の堆積中、約200℃乃至約800℃の温度である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ガラス基板は、約400℃乃至約780℃の温度である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
オンラインで、前記ガラス基板と前記半導電性金属層との間にアンダーコーティング層を堆積することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
オンラインで、前記ガラス基板と前記半導電性金属層との間に透明な導電性酸化物層を堆積することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記半導電性金属層は、アモルファスシリコン又は結晶シリコンからなる、請求項3に記載の方法。
【請求項16】
前記結晶シリコンは、ナノ結晶シリコン、マイクロ結晶シリコン、多結晶シリコン、単結晶シリコン及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つの半導電性金属層を前記ガラス基板に堆積させることは、前記少なくとも1つの半導電性金属層を前記ガラス基板に熱分解的に堆積させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記アンダーコーティングは、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、オキシ窒化ケイ素、炭化ケイ素、オキシ炭化ケイ素及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記透明な導電性酸化物層は、酸化スズ、フッ素ドープ酸化スズ、アルミニウムドープ酸化亜鉛及びインジウムスズ酸化物からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
ガラスラインのフロートバス、鋳造ロール、又は鋳型と、内部又は下流のオンラインに配置された1つ以上のコーターを有するフロートライン又は鋳造ガラスラインのいずれかにおいて、コーティングされたガラス基板を製造する方法であって、
(a)溶融ガラスを形成するよう炉の中でバッチ材料を溶融することと、
(b)(1)ガラス板を形成するようフロートラインの溶融スズの浴に溶融ガラスの連続した流れを浮かべること、又は、(2)ガラス板を形成するよう鋳造ガラスラインの鋳造ロール又は鋳型を通して溶融ガラスの流れを鋳造することのうちの一つを選択することと、
(c)オンラインに配置された前記コーターのうちの1つから、前記ガラス板の一部に半導電性金属層を堆積し、前記半導電性金属層はn型シリコン及びp型シリコンからなる群から選択されることと、
(d)任意に、工程(c)の前記コーターとオンラインかつそれよりも下流に配置されたコーターから、工程(c)の前記金属層上にi型シリコンを含む半導電性金属層を堆積させることと、
(e)工程(c)及び/又は(d)の前記コーターとオンラインかつそれよりも下流に配置されたコーターから、工程(c)及び/又は(d)の前記金属層上に半導電性金属層を堆積させ、ケイ素を含む前記金属層は、n型シリコン及びp型シリコンからなる群から選択されることと、
(f)任意に、前記ガラス基板上に追加的なp−(i−)n又はn−(i−)pシリコン層を形成するよう工程(c)乃至(e)を繰り返すこととを含む、方法。
【請求項21】
前記p型シリコンは、III族元素でドープされ、任意に、水素で不動態化される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記III族元素は、ホウ素である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記n型シリコンは、V族元素でドープされ、任意に、水素で不動態化される、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記V族元素は、リンである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記i型シリコンは、任意に水素で不動態化される、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記ガラス基板は、前記工程(c)乃至(e)の堆積中、約200℃乃至約800℃の温度である、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
前記ガラス基板は、前記工程(c)乃至(e)の堆積中、約400℃乃至約780℃の温度である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
オンラインで、前記ガラス基板と工程(c)の前記金属層の間にアンダーコーティング層を堆積することを更に含む、請求項20に記載の方法。
【請求項29】
オンラインで、前記ガラス基板と工程(c)の前記金属層の間に透明な導電性酸化物層を堆積することを更に含む、請求項20に記載の方法。
【請求項30】
前記アンダーコーティングは、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、オキシ窒化ケイ素、炭化ケイ素、オキシ炭化ケイ素、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記透明な導電性酸化物層は、酸化スズ、フッ素ドープ酸化スズ、アルミニウムドープ酸化亜鉛及びインジウムスズ酸化物からなる群から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
工程(f)は、2接合のp−(i−)n又はn−(i−)p型シリコン光起電基板を製造するよう、一回繰り返される、請求項20に記載の方法。
【請求項33】
工程(f)は、3接合のp−(i−)n又はn−(i−)p型シリコン光起電基板を製造するよう、二回繰り返される、請求項20に記載の方法。
【請求項34】
工程(f)は、多接合型のp−(i−)n又はn−(i−)p型シリコン光起電基板を製造するよう、多数回繰り返される、請求項20に記載の方法。
【請求項35】
工程(c)乃至(f)は、工程(c)乃至(f)により形成される層を熱分解的に堆積させる方法を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項36】
前記p−(i−)n又はn−(i−)p型シリコン層は、アモルファスシリコン又は結晶シリコンからなる、請求項20に記載の方法。
【請求項37】
前記結晶シリコンは、ナノ結晶シリコン、マイクロ結晶シリコン又は多結晶シリコン、一結晶シリコン及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
ガラスラインのフロートバス、鋳造ロール、又は鋳型と、内部又は下流のオンラインに配置された1つ以上のコーターを有するフロートライン又は鋳造ガラスラインのいずれかにおいて、コーティングされたガラス基板を製造する方法であって、
(a)溶融ガラスを形成するよう炉の中でバッチ材料を溶融することと、
(b)(1)ガラス板を形成するようフロートラインの溶融スズの浴に溶融ガラスの連続した流れを浮かべること、又は、(2)ガラス板を形成するよう鋳造ガラスラインの鋳造ロール又は鋳型を通して溶融ガラスの流れを鋳造することのうちの一つを選択することと、
(c)フロートバスとオンラインに又は内部に配置されたコーターから、前記ガラス板上に配置されるアンダーコーティングを堆積することと、
(d)オンラインに又はフロートバスの内部に、かつ、工程(c)の前記コーターの下流に配置されたコーターから、前記アンダーコーティング上に配置される透明な導電性酸化物層を堆積することと、
(e)オンラインにかつ工程(d)の前記コーターの下流に配置されたコーターから、透明な導電性酸化物層上に半導電性金属層を堆積させ、前記半導電性金属層は、n型シリコン及びp型シリコンからなる群から選択されることと、
(f)任意に、工程(e)の前記コーターとオンラインかつそれよりも下流に配置されたコーターから、i型シリコンを含む半導電性金属層を工程(c)の金属層上に堆積させることと、
(g)工程(e)及び/又は(f)の前記コーターからオンラインかつそれよりも下流に配置されたコーターから、工程(e)及び/又は(f)の前記金属層上に半導電性金属層を堆積させ、前記半導電性金属層は、n型シリコン及びp型シリコンからなる群から選択されることと、
(h)任意に、前記ガラス基板上に追加的なp−(i−)n又はn−(i−)pシリコン層を形成するよう工程(e)乃至(g)を繰り返すこととを含む、方法。
【請求項39】
前記p型シリコンは、III族元素でドープされ、任意に、水素で不動態化される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記III族元素は、ホウ素である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記n型シリコンは、V族元素でドープされ、任意に、水素で不動態化される、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記V族元素は、リンである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記i型シリコンは、任意に水素で不動態化される、請求項38に記載の方法。
【請求項44】
前記ガラス基板は、工程(c)乃至(h)の堆積中、約200℃乃至約800℃の温度である、請求項38に記載の方法。
【請求項45】
前記ガラス基板は、工程(c)乃至(h)の堆積中、約400℃乃至約780℃の温度である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記アンダーコーティングは、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、オキシ窒化ケイ素、炭化ケイ素、オキシ炭化ケイ素及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項47】
前記透明な導電性酸化物層は、酸化スズ、フッ素ドープ酸化スズ、アルミニウムドープ酸化亜鉛及びインジウムスズ酸化物からなる群から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項48】
前記工程(f)は、2接合p−(i−)n又はn−(i−)p型シリコン光起電基板を製造するよう、1回繰り返される、請求項38に記載の方法。
【請求項49】
前記工程(f)は、3接合p−(i−)n又はn−(i−)p型シリコン光起電基板を製造するよう、2回繰り返される、請求項38に記載の方法。
【請求項50】
前記工程(f)は、多接合p−(i−)n又はn−(i−)p型シリコン光起電基板を製造するよう、多数回繰り返される、請求項38に記載の方法。
【請求項51】
前記工程(c)乃至(h)の堆積は、工程(c)乃至(h)によって形成される層を熱分解的に堆積させることを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項52】
前記p−(i−)n又はn−(i−)pシリコン層は、アモルファスシリコン又は結晶シリコンからなる、請求項38に記載の方法。
【請求項53】
前記結晶シリコンは、ナノ結晶シリコン、マイクロ結晶シリコン、多結晶シリコン、単結晶シリコン及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項52に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−523703(P2012−523703A)
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−504810(P2012−504810)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【国際出願番号】PCT/US2010/030199
【国際公開番号】WO2010/118105
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(507090421)エージーシー フラット グラス ノース アメリカ,インコーポレイテッド (12)
【氏名又は名称原語表記】AGC FLAT GLASS NORTH AMERICA,INC.
【住所又は居所原語表記】11175 Cicero Dr.,Suite 400,Alpharetta,GA 30022,U.S.A.
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】