光透過性フィルム及びその製造方法
【課題】タッチパネルの画面が均一で、タッチパネルの信頼度を向上させることができ、表面に形成されているストライプを肉眼で容易に観察できず、前記ストライプ及び他の周期的な構造の重畳が鮮明でない光透過性フィルム及びその製造方法を提供する。
【解決手段】光透過性フィルムの製造方法は、複数のナノユニットを含み且つ基準方向を有するフィルム100を提供するステップと、エネルギービーム82を利用して、前記フィルムに、前記基準方向に垂直も平行もしない互いに平行する複数の第一ストライプ210を形成するステップと、を備える。
【解決手段】光透過性フィルムの製造方法は、複数のナノユニットを含み且つ基準方向を有するフィルム100を提供するステップと、エネルギービーム82を利用して、前記フィルムに、前記基準方向に垂直も平行もしない互いに平行する複数の第一ストライプ210を形成するステップと、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム及びその製造方法に関し、特に光透過性フィルム及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ技術及びマルチメディア技術の発展に伴って、伝統的なキーボード或いはマウスのような制御素子は、使用者の需要を満足することができなくなってきている。携帯式の電子装置の普及によって、製造業者は、操作がより便利で、直感的で、占有空間が小さな操作素子を探求している。これらの素子の1つが、タッチパネルである。
【0003】
従来のタッチパネルには、抵抗型のタッチパネル及びコンデンサ型のタッチパネルが含まれる。前記抵抗型のタッチパネルは、2枚のインジウム・スズ酸化物(IndiumTin Oxide、ITO)フィルムを採用する。使用者が指又はタッチペンのようなタッチ部材で抵抗型のタッチパネルにタッチした時、前記2枚のITOフィルムは、互いに接触して電気的に接続され、プロセッサユニットは、前記電気接続を通してタッチ位置を計算する。
【0004】
従来のコンデンサ型のタッチパネルにおいて、ITOフィルムを複数のパターンに分割し、使用者が指又はタッチペンのようなタッチ部材でコンデンサ型のタッチパネルにタッチした時、これらのパターンの間の静電容量が変化し、プロセッサユニットは、前記静電容量の変化を通してタッチ位置を計算する。
【0005】
しかし、コンデンサ型のタッチパネルにおける複数のパターンは、画面の不均一を招きやすい。また、ITOフィルムが過度的に湾曲されるか、或いは湾曲の回数が多い時、ITOフィルムは、破裂するか、劣化する。従って、タッチパネルの信頼度の低下を招きやすい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、タッチパネルの画面が均一で、タッチパネルの信頼度を向上させることができ、表面に形成されているストライプが肉眼で容易に観察できず、前記ストライプ及び他の周期的な構造の重畳が鮮明でない光透過性フィルム及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る光透過性フィルムの製造方法は、複数のナノユニットを含み且つ基準方向を有するフィルムを提供するステップと、エネルギービームを利用して、前記フィルムに、前記基準方向に垂直も平行もしない互いに平行する複数の第一ストライプを形成するステップと、を備える。
【0008】
本発明に係る光透過性フィルムは、複数のナノユニットを含み且つ基準方向を有するフィルムと、前記フィルムの表面に形成され、且つ前記基準方向に垂直も平行もしない互いに平行である複数の第一ストライプと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
従来の技術と比べると、本発明に係る光透過性フィルム及びその製造方法によれば、第一ストライプが基準方向に垂直も平行もしないため、光透過性フィルムに形成されている第一ストライプ及び他の周期的な構造は、モアレ現象が発生しない。また、本発明において、延伸方向が異なる二組以上のストライプを採用し、且つ互いに、各ストライプの周期性を損なわせるので、これらのストライプは、肉眼で容易に観察できない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1A】本発明の第一実施例に係る光透過性フィルムの製造方法のフローチャートである。
【図1B】本発明の第一実施例に係る光透過性フィルムの製造方法のフローチャートである。
【図1C】本発明の第一実施例に係る光透過性フィルムの製造方法のフローチャートである。
【図1D】本発明の第一実施例に係る光透過性フィルムの製造方法のフローチャートである。
【図2A】本発明の第二実施例に係る光透過性フィルムの製造方法のフローチャートである。
【図2B】本発明の第二実施例に係る光透過性フィルムの製造方法のフローチャートである。
【図3A】本発明の第三実施例に係る光透過性フィルムの製造方法のフローチャートである。
【図3B】本発明の第三実施例に係る光透過性フィルムの製造方法のフローチャートである。
【図4】本発明の第四実施例に係る光透過性フィルムの製造方法のフローチャートである。
【図5】光透過性フィルムのストライプが肉眼で観察されることを示す図である。
【図6】2つの周期的な構造の夾角及び周期比が異なる情況下で発成されるモアレ現象の分布図である。
【図7A】光透過性フィルムのストライプの光学顕微鏡の写真である。
【図7B】光透過性フィルムのストライプの光学顕微鏡の写真である。
【図7C】光透過性フィルムのストライプの光学顕微鏡の写真である。
【図7D】光透過性フィルムのストライプの光学顕微鏡の写真である。
【図7E】光透過性フィルムのストライプの光学顕微鏡の写真である。
【図7F】光透過性フィルムのストライプの光学顕微鏡の写真である。
【図7G】光透過性フィルムのストライプの光学顕微鏡の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【0012】
図1A乃至図1Dは、本発明の第一実施例に係る光透過性フィルムの製造方法のフローチャートである。前記光透過性フィルムの製造方法は、下記のステップを含む。先ず、図1Aを参照すると、フィルム100を提供する。前記フィルム100は、複数のナノユニットを含み、且つ第一基準方向D1を有する。本実施例において、これらのナノユニットは、複数のカーボンナノチューブ(Carbon Nano−Tube、CNT)であり、前記フィルム100は、CNTフィルムである。他の実施例において、これらのナノユニットは、ナノ金属粒子のようなナノサイズの導電性分子或いは導電性結晶粒子であることもできる。本実施例においては、巨視的(Macroscopy)に見ると、前記フィルム100は、抵抗異方性を有し、且つ主要導電方向(最小抵抗の方向)は、前記第一基準方向D1に平行する。一方、微視的に見ると、これらのカーボンナノチューブは、前記第一基準方向D1に沿って延伸される。
【0013】
本実施例において、フィルム100を提供するステップは、下記のサブステップを含む。まず、基板50(例えば、シリコン基板、石英基板或いは他の基板)にカーボンナノチューブ層60を形成する。前記カーボンナノチューブ層60は、化学気相蒸着法(CVD)或いは他の適切な方法よって形成される。次に、引き出し方向(本実施例における第一基準方向D1)に沿って前記カーボンナノチューブ層60の側辺からCNTフィルムを引き出して得る。具体的には、クリップ70でCNTフィルム一端をクランプした後、前記基板50の側方へ引き出して前記CNTフィルムを得る。前記CNTフィルムにおいて、複数のカーボンナノチューブは、前記第一基準方向D1に沿って延伸される。本実施例において、第一基準方向D1は、前記フィルム100の引き出し方向と同じである。または、第一基準方向D1は、前記フィルム100の側辺Mに平行することもできる。
【0014】
次に、図1Bを参照すると、エネルギービーム82を前記フィルム100に照射して、前記フィルム100に互いに平行する複数の第一ストライプ210を形成する。前記複数の第一ストライプ210は、前記第一基準方向D1に垂直も平行もしない。前記第一ストライプ210は、隣接する照射されない部分と構造上の差異を有する。前記差異は、物理的、構造的或いは光学的の差異である。例えば、前記差異は、表面テクスチャ(Texture)の構造の差異、ナノユニットの密度の差異、表面の粗さの差異、厚さの差異(前記第一ストライプ210は、凹状である)、ナノユニットの構造の差異(例えば、二層カーボンナノチューブと単層カーボンナノチューブとの差異)、ナノユニットの位相(Phase)の差異、反射光の強度の差異(例えば、前記第一ストライプ210と隣接する部分との光線に対する反射率の差異によって形成される明暗の対比)、透過光の強度の差異(例えば、前記第一ストライプ210と隣接する部分との光線に対する光透過率の差異によって形成される明暗の対比)或いは回折光の強度の差異を意味する。本実施例において、前記第一ストライプ210の延伸方向L1とフィルム100の表面の第一基準方向D1に垂直する第二基準方向R1とは、傾斜角θを有する。ここで、0度<θ<90度である。他の実施例において、−90度<θ<0度であることもできる。本実施例において、前記エネルギービーム82は、レーザ光源80から出射されるレーザビームであり、その波長の範囲は、可視光波帯、紫外光波帯、赤外光波帯或いは他の電磁波波帯である。しかし、他の実施例においては、前記エネルギービーム82は、電子ビーム、陽子ビーム、ヘリウム原子核ビーム或いは他の適切な粒子ビームのような運動エネルギーを有する粒子ビームである。
【0015】
本実施例において、エネルギービーム82を利用して複数の第一ストライプ210を形成する方法は、前記第一基準方向D1に平行である第一スキャン方向S1(本実施例における第一スキャン方向S1は前記第一基準方向D1と相反する)に沿って前記エネルギービーム82で前記フィルム100に対してスキャンして、複数の第一ストライプ210を順次に形成するステップを含む。本実施例において、前記複数の第一ストライプ210は、周期的に配列(等間隔に配列又は他の周期的な形式に配列)される。例えば、これらの第一ストライプ210の幅Wは、約110マイクロメートルであり、前記第一ストライプ210同士のピッチPは、約200マイクロメートル〜350マイクロメートルであるが、これに限定されない。
【0016】
図1Cを参照すると、本実施例の光透過性フィルムの製造方法は、第一基準方向D1に平行である第一スキャン方向S1及び第二スキャン方向S2(本実施例における第二スキャン方向S2は第一基準方向D1と同じである)に沿って前記エネルギービーム82で前記フィルム100を繰り返してスキャンして、前記複数の第一ストライプ210を繰り返して照射して、前記複数の第一ストライプ210構造と隣接する照射されない部分の構造との間の差異性を強化するステップをさらに含む。例えば、第一ストライプ210の深さ、表面テクスチャの差異性、ナノユニットの密度の差異性、表面の粗さの差異性、ナノユニットの結構の差異性、ナノユニットの位相の差異性、反射光の強度の差異性、透過光の強度の差異性或いは回折光の強度の差異性を強化する。本実施例において、前記第一スキャン方向S1及び第二スキャン方向S2に沿って前記第一ストライプ210を何度もスキャンすることで、前記第一ストライプ210の深さをより深くする。他の実施例においては、前記第一スキャン方向S1及び第二スキャン方向S2に沿って交互にスキャンする時、先に形成された前記複数の第一ストライプ210の元の位置を繰り返しスキャンせずに、前記元の位置から移動した他の位置をスキャンすることもできる。
【0017】
本実施例において、前記複数の第一ストライプ210は、前記フィルム100の光透過度を向上させ、図1Dに示した光透過性フィルム200を形成する。具体的には、本実施例における光透過性フィルム200は、複数の前記ナノユニット及び複数の前記第一ストライプ210を備える。前記複数のナノユニットは、前記フィルム100を形成し、前記第一ストライプ210は、前記フィルム100の表面に形成される。
【0018】
本実施例において、前記第一ストライプ210は、前記第一基準方向D1に垂直も平行もしないため、前記第一ストライプ210の延伸方向L1(即ち、角度θを調整する)、前記第一ストライプ210の幅W及び前記第一ストライプ210同士のピッチP(図1Bに示したように)を適切に調整することによって、前記第一ストライプ210と他の周期的な構造(例えば、表示パネルの画素アレイ)とは、モアレ(Moire)現象の発生を防止することができる。
【0019】
図2A及び図2Bは、本発明の第二実施例に係る光透過性フィルムの製造方法のフローチャートである。本実施例の光透過性フィルムの製造方法は、図1A乃至図1Dに示した光透過性フィルム200の製造方法と類似しているが、下記の点において異なる。図2Aを参照すると、本実施例の光透過性フィルムの製造方法は、エネルギービーム82でフィルム100の表面に互いに平行する複数の第二ストライプ220を形成するステップをさらに含む。各々の第二ストライプ220は、各第一ストライプ210に平行しない。前記第二ストライプ220の特性は、前記第一ストライプ210の特性と類似しているため、それに対する説明は省略する。前記第二ストライプ220は、周期的に配列される。本実施例において、前記第二ストライプ220の延伸方向L2と第二基準方向R1とは、傾斜角φを有する。ここで、−90度<φ<0度である。しかし、他の実施例において、φ及びθのいずれか一方は、0度とすることもできる。本実施例において、前記第二ストライプ220の幅及び前記第二ストライプ220同士のピッチは、前記第一ストライプ210の幅及び前記第一ストライプ210同士のピッチと同じである。また、本実施例において、前記第一スキャン方向S1及び前記第二スキャン方向S2に沿って前記フィルム100を繰り返してスキャンする過程で、前記第二ストライプ220に対して前記エネルギービーム82で繰り返してスキャンすることで、前記複数の第二ストライプ220構造及び隣接する部分の構造との差異性を強化する。
【0020】
前記複数の第一ストライプ210、前記複数の第二ストライプ220、前記フィルム100は、光透過性フィルム200’を形成し、前記複数の第一ストライプ210、前記複数の第二ストライプ220は、前記フィルム100の光透過率を増加させる。本実施例において、互いに平行しない前記複数の第一ストライプ210と前記複数の第二ストライプ220とは、互いに、各ストライプの周期性を損なわせるため、使用者は肉眼で前記複数の第一ストライプ210及び前記複数の第二ストライプ220を視認することができない。従って、本実施例の光透過性フィルム200’をタッチパネルの導電フィルムとして用いる場合、表示画面の品質、輝度の均一性及び色彩の均一性を向上させることができる。また、本実施例の光透過性フィルム200’を窓或いは断熱紙に貼り付けることで、窓がタッチ機能を有するようになる。また、本実施例の光透過性フィルム200’を柔軟性パネル(例えば、柔軟性表示パネル或いは柔軟性タッチパネル)の導電フィルムとして用いることもできる。ここで、カーボンナノチューブフィルムは、優れた柔軟性を有しているため、過度の湾曲或いは湾曲の回数が多いことによって容易に劣化されない。従って、柔軟性パネルの信頼度を向上させる。
【0021】
また、互いに平行しない前記複数の第一ストライプ210と前記複数の第二ストライプ220とは、互いに、各ストライプの周期性を損なわせるため、前記第一ストライプ210及び前記第二ストライプ220と、他の周期的な構造(例えば、表示パネルの画素配列)とは、やはりモアレ現象が容易に発生しない。従って、本実施例の光透過性フィルム200’は、タッチ制御のディスプレイの導電フィルムとして用いられる場合、表示の品質及び画面の均一性を向上させることができる。
【0022】
図3A及び図3Bは、本発明の第三実施例に係る光透過性フィルムの製造方法のフローチャートである。本実施例の光透過性フィルムの製造方法は、図2A乃至図2Bに示した光透過性フィルム200’の製造方法と類似しているが、下記の点において異なる。図3Aを参照すると、本実施例の光透過性フィルムの製造方法は、エネルギービーム82を利用してフィルム100の表面に互いに平行する複数の第三ストライプ230を形成するステップをさらに備える。各第三ストライプ230は、各第一ストライプ210及び各第二ストライプ220に平行しない。前記第三ストライプ230の特性は、前記第一ストライプ210及び前記第二ストライプ220の特性と類似しているため、それに対する説明は省略する。前記第三ストライプ230は、周期的に配列する。本実施例において、前記第三ストライプ230の延伸方向L3は、第二基準方向R1に平行する。即ち、前記第三ストライプ230の延伸方向L3と第二基準方向R1との傾斜角は、0度である。しかし、本発明はこれに限定されない。本実施例において、エネルギービーム82を利用して第一スキャン方向S1及び第二スキャン方向S2に沿って繰り返して前記第三ストライプ230をスキャンすることで、前記第三ストライプ230構造と隣接する部分の構造との相違性を強化する。
【0023】
前記複数の第一ストライプ210、前記複数の第二ストライプ220、前記複数の第三ストライプ230及び前記フィルム100は、光透過性フィルム200’’を形成する。前記複数の第一ストライプ210、前記複数の第二ストライプ220及び前記複数の第三ストライプ230は、前記フィルム100の光透過率を増加させることができる。本実施例の光透過性フィルム200’’は、延伸方向が異なる第一ストライプ210、第二ストライプ220及び第三ストライプ230を有するため、ストライプの周期性を損なわせる程度はもっと大きい。従って、使用者は、前記複数の第一ストライプ210、前記複数の第二ストライプ220及び前記複数の第三ストライプ230を肉眼で視認することができず、且つ他の周期的な構造とのモアレ現象がより発生しない。
【0024】
図4は、本発明の第四実施例に係る光透過性フィルムの製造方法を示す図である。本実施例の光透過性フィルムの製造方法は、図1A乃至図1Dに示した光透過性フィルム200の製造方法と類似しているが、下記の点において異なる。本実施例において、エネルギービーム82を利用して第一ストライプ210を形成する前に、フィルム100を支持するキャリア90を提供するステップをさらに含む。本実施例において、前記キャリア90は、例えば、樹脂又はプラスチック基板である。前記フィルム100を前記キャリア90に配置した後、第一ストライプ210を形成する。この時、第一基準方向D1は、前記フィルム100の側辺Mに平行する。本実施例の光透過性フィルムの製造方法及び該製造方法により製造された光透過性フィルムと上述した他の実施例の光透過性フィルムの製造方法及び該製造方法により製造された光透過性フィルムとは、同様の利点と効果を持つため、それに対する説明は省略する。
【0025】
図5は、ストライプ光透過性フィルムから距離Aほど離れている所でのストライプが肉眼で観察されることを示す図である。図5を参照すると、肉眼でストライプを観察する時の立体角θ1(1つのストライプの両側に達する視線の間の角)がコントラスト感度関数に対応する立体角より小さい場合、肉眼でストライプを視認することができない。反対に、前記立体角θ1がコントラスト感度関数に対応する立体角より大きい場合、肉眼でストライプを視認することができる。或いは、一定の対比条件で、肉眼でストライプを観察できる最小の立体角と前記立体角θ1を対比する時、前記立体角θ1が小さければ、肉眼で前記ストライプを観察することができない。反対に、前記立体角θ1が大きければ、肉眼で前記ストライプを観察することができる。前記コントラスト及び前記コントラスト感度関数(Contrast Sensitivity Function、CSF)は、以下の式1及び式2によって計算される。
【0026】
【数1】
式2:
コントラスト感度関数=1/コントラスト
【0027】
上記式において、Δlは、ストライプの最大輝度と最小輝度との差値であり、laveは、ストライプの平均輝度であり、lmaxは、ストライプの最大輝度であり、lminは、ストライプの最小輝度である。
【0028】
従って、図1A乃至図1Dの実施例(第一実施例)及び図4の実施例(第四実施例)において、前記第一ストライプ210のコントラスト及びコントラスト感度関数と第一ストライプ210の幅及びストライプ同士のピッチとをコントロールすることによって、モアレ現象を低減させることができる。また、図2A及び図2Bの実施例(第二実施例)と図3A及び図3Bの実施例(第三実施例)において、延伸方向が異なる複数組のストライプによって相互に各ストライプの周期性を損なわせるため、肉眼で、ある1組のストライプを観察する時の立体角θ1がコントラスト感度関数に対応する立体角より大きい場合、或いは、一定の対比条件で肉眼で観察できる最小の立体角が前記立体角θ1より小さい場合、肉眼でモアレ現象を観察しにくい。
【0029】
図6は、2つの周期的な構造の夾角及び周期比が異なる状況で発生するモアレ現象の分布図である。図6を参照すると、横軸は、2つの周期的な構造の夾角を示し、縦軸は、2つの周期的な構造の周期比を示す。図6における曲線上の数字は、モアレ現象を示し、数字が大きいほど、モアレ現象がより甚だしい。本発明の各々の実施例におけるストライプ及び他の周期的な構造(例えば、表示パネルの画素アレイ)の関係は、図6における曲線上の数字が小さい区域に基づいて設計を行うので、表示画面の画質及び画面の均一性を向上させることができる。
【0030】
図7A乃至図7Gは、ストライプの光学顕微鏡の写真である。図面に示した縮尺によって実際のサイズが分かる。図7Aは、ストライプの延伸方向が第一基準方向D1に垂直する場合の光透過性フィルムの光学顕微鏡の拡大写真であり、且つ図面でのストライプが鮮明である。図7Bは、第一実施例によって制作された光透過性フィルム200の光学顕微鏡の拡大写真であり、θ=45度であり、且つ図面でのストライプが鮮明ではない。図7Cは、第二実施例によって制作された光透過性フィルム200’の光学顕微鏡の拡大写真であり、θ=3度、φ=−3度である。図7Dは、第二実施例によって制作された光透過性フィルム200’の光学顕微鏡の拡大写真であり、θ=5度、φ=−5度である。図7Eは、第二実施例によって制作された光透過性フィルム200’の光学顕微鏡の拡大写真であり、θ=8度、φ=−8度である。図7Eを参照すると、前記光透過性フィルム200’を光学顕微鏡で観察しても、ストライプが相当に鮮明ではない。図7Fは、第二実施例によって制作された光透過性フィルム200’の光学顕微鏡の拡大写真であり、θ=10度、φ=−10度である。図7Fを参照すると、前記光透過性フィルム200’を光学顕微鏡で観察しても、ストライプが相当に鮮明ではない。図7Gは、第三実施例によって制作された光透過性フィルム200’’の光学顕微鏡の拡大写真であり、θ=45度、φ=−45度であり、且つ第三ストライプ230の延伸方向L3と第二基準方向R1との傾斜角は、0度である。図7Gを参照すると、前記光透過性フィルム200’’を光学顕微鏡で観察しても、ストライプが全く鮮明ではない。
【0031】
本発明において、光透過性フィルムのストライプは、三組の以下の延伸方向が異なるストライプだけに限定されず、他の実施例においては、四組又は四組以上の延伸方向が異なるストライプであることもできる。
【0032】
本発明に係る光透過性フィルム及びその製造方法において、第一ストライプが基準方向に垂直も平行もしないため、前記光透過性フィルムの第一ストライプと他の周期的な構造とは、モアレ現象が発生しない。また、本発明において、二組の延伸方向が異なるストライプを形成し、且つ互いに各ストライプの周期性を損なわせるので、これらのストライプは、肉眼によって容易に観察されない。
【0033】
以上、本発明の好適な実施例について詳細に説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形又は修正が可能であり、該変形又は修正も又、本発明の特許請求の範囲内に含まれるものであることは、いうまでもない。
【符号の説明】
【0034】
100 フィルム
200、200’、200’’ 光透過性フィルム
50 基板
60 カーボンナノチューブ層
70 クリップ
90 キャリア
80 レーザ光源
82 エネルギービーム
210 第一ストライプ
220 第二ストライプ
230 第三ストライプ
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム及びその製造方法に関し、特に光透過性フィルム及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ技術及びマルチメディア技術の発展に伴って、伝統的なキーボード或いはマウスのような制御素子は、使用者の需要を満足することができなくなってきている。携帯式の電子装置の普及によって、製造業者は、操作がより便利で、直感的で、占有空間が小さな操作素子を探求している。これらの素子の1つが、タッチパネルである。
【0003】
従来のタッチパネルには、抵抗型のタッチパネル及びコンデンサ型のタッチパネルが含まれる。前記抵抗型のタッチパネルは、2枚のインジウム・スズ酸化物(IndiumTin Oxide、ITO)フィルムを採用する。使用者が指又はタッチペンのようなタッチ部材で抵抗型のタッチパネルにタッチした時、前記2枚のITOフィルムは、互いに接触して電気的に接続され、プロセッサユニットは、前記電気接続を通してタッチ位置を計算する。
【0004】
従来のコンデンサ型のタッチパネルにおいて、ITOフィルムを複数のパターンに分割し、使用者が指又はタッチペンのようなタッチ部材でコンデンサ型のタッチパネルにタッチした時、これらのパターンの間の静電容量が変化し、プロセッサユニットは、前記静電容量の変化を通してタッチ位置を計算する。
【0005】
しかし、コンデンサ型のタッチパネルにおける複数のパターンは、画面の不均一を招きやすい。また、ITOフィルムが過度的に湾曲されるか、或いは湾曲の回数が多い時、ITOフィルムは、破裂するか、劣化する。従って、タッチパネルの信頼度の低下を招きやすい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、タッチパネルの画面が均一で、タッチパネルの信頼度を向上させることができ、表面に形成されているストライプが肉眼で容易に観察できず、前記ストライプ及び他の周期的な構造の重畳が鮮明でない光透過性フィルム及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る光透過性フィルムの製造方法は、複数のナノユニットを含み且つ基準方向を有するフィルムを提供するステップと、エネルギービームを利用して、前記フィルムに、前記基準方向に垂直も平行もしない互いに平行する複数の第一ストライプを形成するステップと、を備える。
【0008】
本発明に係る光透過性フィルムは、複数のナノユニットを含み且つ基準方向を有するフィルムと、前記フィルムの表面に形成され、且つ前記基準方向に垂直も平行もしない互いに平行である複数の第一ストライプと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
従来の技術と比べると、本発明に係る光透過性フィルム及びその製造方法によれば、第一ストライプが基準方向に垂直も平行もしないため、光透過性フィルムに形成されている第一ストライプ及び他の周期的な構造は、モアレ現象が発生しない。また、本発明において、延伸方向が異なる二組以上のストライプを採用し、且つ互いに、各ストライプの周期性を損なわせるので、これらのストライプは、肉眼で容易に観察できない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1A】本発明の第一実施例に係る光透過性フィルムの製造方法のフローチャートである。
【図1B】本発明の第一実施例に係る光透過性フィルムの製造方法のフローチャートである。
【図1C】本発明の第一実施例に係る光透過性フィルムの製造方法のフローチャートである。
【図1D】本発明の第一実施例に係る光透過性フィルムの製造方法のフローチャートである。
【図2A】本発明の第二実施例に係る光透過性フィルムの製造方法のフローチャートである。
【図2B】本発明の第二実施例に係る光透過性フィルムの製造方法のフローチャートである。
【図3A】本発明の第三実施例に係る光透過性フィルムの製造方法のフローチャートである。
【図3B】本発明の第三実施例に係る光透過性フィルムの製造方法のフローチャートである。
【図4】本発明の第四実施例に係る光透過性フィルムの製造方法のフローチャートである。
【図5】光透過性フィルムのストライプが肉眼で観察されることを示す図である。
【図6】2つの周期的な構造の夾角及び周期比が異なる情況下で発成されるモアレ現象の分布図である。
【図7A】光透過性フィルムのストライプの光学顕微鏡の写真である。
【図7B】光透過性フィルムのストライプの光学顕微鏡の写真である。
【図7C】光透過性フィルムのストライプの光学顕微鏡の写真である。
【図7D】光透過性フィルムのストライプの光学顕微鏡の写真である。
【図7E】光透過性フィルムのストライプの光学顕微鏡の写真である。
【図7F】光透過性フィルムのストライプの光学顕微鏡の写真である。
【図7G】光透過性フィルムのストライプの光学顕微鏡の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【0012】
図1A乃至図1Dは、本発明の第一実施例に係る光透過性フィルムの製造方法のフローチャートである。前記光透過性フィルムの製造方法は、下記のステップを含む。先ず、図1Aを参照すると、フィルム100を提供する。前記フィルム100は、複数のナノユニットを含み、且つ第一基準方向D1を有する。本実施例において、これらのナノユニットは、複数のカーボンナノチューブ(Carbon Nano−Tube、CNT)であり、前記フィルム100は、CNTフィルムである。他の実施例において、これらのナノユニットは、ナノ金属粒子のようなナノサイズの導電性分子或いは導電性結晶粒子であることもできる。本実施例においては、巨視的(Macroscopy)に見ると、前記フィルム100は、抵抗異方性を有し、且つ主要導電方向(最小抵抗の方向)は、前記第一基準方向D1に平行する。一方、微視的に見ると、これらのカーボンナノチューブは、前記第一基準方向D1に沿って延伸される。
【0013】
本実施例において、フィルム100を提供するステップは、下記のサブステップを含む。まず、基板50(例えば、シリコン基板、石英基板或いは他の基板)にカーボンナノチューブ層60を形成する。前記カーボンナノチューブ層60は、化学気相蒸着法(CVD)或いは他の適切な方法よって形成される。次に、引き出し方向(本実施例における第一基準方向D1)に沿って前記カーボンナノチューブ層60の側辺からCNTフィルムを引き出して得る。具体的には、クリップ70でCNTフィルム一端をクランプした後、前記基板50の側方へ引き出して前記CNTフィルムを得る。前記CNTフィルムにおいて、複数のカーボンナノチューブは、前記第一基準方向D1に沿って延伸される。本実施例において、第一基準方向D1は、前記フィルム100の引き出し方向と同じである。または、第一基準方向D1は、前記フィルム100の側辺Mに平行することもできる。
【0014】
次に、図1Bを参照すると、エネルギービーム82を前記フィルム100に照射して、前記フィルム100に互いに平行する複数の第一ストライプ210を形成する。前記複数の第一ストライプ210は、前記第一基準方向D1に垂直も平行もしない。前記第一ストライプ210は、隣接する照射されない部分と構造上の差異を有する。前記差異は、物理的、構造的或いは光学的の差異である。例えば、前記差異は、表面テクスチャ(Texture)の構造の差異、ナノユニットの密度の差異、表面の粗さの差異、厚さの差異(前記第一ストライプ210は、凹状である)、ナノユニットの構造の差異(例えば、二層カーボンナノチューブと単層カーボンナノチューブとの差異)、ナノユニットの位相(Phase)の差異、反射光の強度の差異(例えば、前記第一ストライプ210と隣接する部分との光線に対する反射率の差異によって形成される明暗の対比)、透過光の強度の差異(例えば、前記第一ストライプ210と隣接する部分との光線に対する光透過率の差異によって形成される明暗の対比)或いは回折光の強度の差異を意味する。本実施例において、前記第一ストライプ210の延伸方向L1とフィルム100の表面の第一基準方向D1に垂直する第二基準方向R1とは、傾斜角θを有する。ここで、0度<θ<90度である。他の実施例において、−90度<θ<0度であることもできる。本実施例において、前記エネルギービーム82は、レーザ光源80から出射されるレーザビームであり、その波長の範囲は、可視光波帯、紫外光波帯、赤外光波帯或いは他の電磁波波帯である。しかし、他の実施例においては、前記エネルギービーム82は、電子ビーム、陽子ビーム、ヘリウム原子核ビーム或いは他の適切な粒子ビームのような運動エネルギーを有する粒子ビームである。
【0015】
本実施例において、エネルギービーム82を利用して複数の第一ストライプ210を形成する方法は、前記第一基準方向D1に平行である第一スキャン方向S1(本実施例における第一スキャン方向S1は前記第一基準方向D1と相反する)に沿って前記エネルギービーム82で前記フィルム100に対してスキャンして、複数の第一ストライプ210を順次に形成するステップを含む。本実施例において、前記複数の第一ストライプ210は、周期的に配列(等間隔に配列又は他の周期的な形式に配列)される。例えば、これらの第一ストライプ210の幅Wは、約110マイクロメートルであり、前記第一ストライプ210同士のピッチPは、約200マイクロメートル〜350マイクロメートルであるが、これに限定されない。
【0016】
図1Cを参照すると、本実施例の光透過性フィルムの製造方法は、第一基準方向D1に平行である第一スキャン方向S1及び第二スキャン方向S2(本実施例における第二スキャン方向S2は第一基準方向D1と同じである)に沿って前記エネルギービーム82で前記フィルム100を繰り返してスキャンして、前記複数の第一ストライプ210を繰り返して照射して、前記複数の第一ストライプ210構造と隣接する照射されない部分の構造との間の差異性を強化するステップをさらに含む。例えば、第一ストライプ210の深さ、表面テクスチャの差異性、ナノユニットの密度の差異性、表面の粗さの差異性、ナノユニットの結構の差異性、ナノユニットの位相の差異性、反射光の強度の差異性、透過光の強度の差異性或いは回折光の強度の差異性を強化する。本実施例において、前記第一スキャン方向S1及び第二スキャン方向S2に沿って前記第一ストライプ210を何度もスキャンすることで、前記第一ストライプ210の深さをより深くする。他の実施例においては、前記第一スキャン方向S1及び第二スキャン方向S2に沿って交互にスキャンする時、先に形成された前記複数の第一ストライプ210の元の位置を繰り返しスキャンせずに、前記元の位置から移動した他の位置をスキャンすることもできる。
【0017】
本実施例において、前記複数の第一ストライプ210は、前記フィルム100の光透過度を向上させ、図1Dに示した光透過性フィルム200を形成する。具体的には、本実施例における光透過性フィルム200は、複数の前記ナノユニット及び複数の前記第一ストライプ210を備える。前記複数のナノユニットは、前記フィルム100を形成し、前記第一ストライプ210は、前記フィルム100の表面に形成される。
【0018】
本実施例において、前記第一ストライプ210は、前記第一基準方向D1に垂直も平行もしないため、前記第一ストライプ210の延伸方向L1(即ち、角度θを調整する)、前記第一ストライプ210の幅W及び前記第一ストライプ210同士のピッチP(図1Bに示したように)を適切に調整することによって、前記第一ストライプ210と他の周期的な構造(例えば、表示パネルの画素アレイ)とは、モアレ(Moire)現象の発生を防止することができる。
【0019】
図2A及び図2Bは、本発明の第二実施例に係る光透過性フィルムの製造方法のフローチャートである。本実施例の光透過性フィルムの製造方法は、図1A乃至図1Dに示した光透過性フィルム200の製造方法と類似しているが、下記の点において異なる。図2Aを参照すると、本実施例の光透過性フィルムの製造方法は、エネルギービーム82でフィルム100の表面に互いに平行する複数の第二ストライプ220を形成するステップをさらに含む。各々の第二ストライプ220は、各第一ストライプ210に平行しない。前記第二ストライプ220の特性は、前記第一ストライプ210の特性と類似しているため、それに対する説明は省略する。前記第二ストライプ220は、周期的に配列される。本実施例において、前記第二ストライプ220の延伸方向L2と第二基準方向R1とは、傾斜角φを有する。ここで、−90度<φ<0度である。しかし、他の実施例において、φ及びθのいずれか一方は、0度とすることもできる。本実施例において、前記第二ストライプ220の幅及び前記第二ストライプ220同士のピッチは、前記第一ストライプ210の幅及び前記第一ストライプ210同士のピッチと同じである。また、本実施例において、前記第一スキャン方向S1及び前記第二スキャン方向S2に沿って前記フィルム100を繰り返してスキャンする過程で、前記第二ストライプ220に対して前記エネルギービーム82で繰り返してスキャンすることで、前記複数の第二ストライプ220構造及び隣接する部分の構造との差異性を強化する。
【0020】
前記複数の第一ストライプ210、前記複数の第二ストライプ220、前記フィルム100は、光透過性フィルム200’を形成し、前記複数の第一ストライプ210、前記複数の第二ストライプ220は、前記フィルム100の光透過率を増加させる。本実施例において、互いに平行しない前記複数の第一ストライプ210と前記複数の第二ストライプ220とは、互いに、各ストライプの周期性を損なわせるため、使用者は肉眼で前記複数の第一ストライプ210及び前記複数の第二ストライプ220を視認することができない。従って、本実施例の光透過性フィルム200’をタッチパネルの導電フィルムとして用いる場合、表示画面の品質、輝度の均一性及び色彩の均一性を向上させることができる。また、本実施例の光透過性フィルム200’を窓或いは断熱紙に貼り付けることで、窓がタッチ機能を有するようになる。また、本実施例の光透過性フィルム200’を柔軟性パネル(例えば、柔軟性表示パネル或いは柔軟性タッチパネル)の導電フィルムとして用いることもできる。ここで、カーボンナノチューブフィルムは、優れた柔軟性を有しているため、過度の湾曲或いは湾曲の回数が多いことによって容易に劣化されない。従って、柔軟性パネルの信頼度を向上させる。
【0021】
また、互いに平行しない前記複数の第一ストライプ210と前記複数の第二ストライプ220とは、互いに、各ストライプの周期性を損なわせるため、前記第一ストライプ210及び前記第二ストライプ220と、他の周期的な構造(例えば、表示パネルの画素配列)とは、やはりモアレ現象が容易に発生しない。従って、本実施例の光透過性フィルム200’は、タッチ制御のディスプレイの導電フィルムとして用いられる場合、表示の品質及び画面の均一性を向上させることができる。
【0022】
図3A及び図3Bは、本発明の第三実施例に係る光透過性フィルムの製造方法のフローチャートである。本実施例の光透過性フィルムの製造方法は、図2A乃至図2Bに示した光透過性フィルム200’の製造方法と類似しているが、下記の点において異なる。図3Aを参照すると、本実施例の光透過性フィルムの製造方法は、エネルギービーム82を利用してフィルム100の表面に互いに平行する複数の第三ストライプ230を形成するステップをさらに備える。各第三ストライプ230は、各第一ストライプ210及び各第二ストライプ220に平行しない。前記第三ストライプ230の特性は、前記第一ストライプ210及び前記第二ストライプ220の特性と類似しているため、それに対する説明は省略する。前記第三ストライプ230は、周期的に配列する。本実施例において、前記第三ストライプ230の延伸方向L3は、第二基準方向R1に平行する。即ち、前記第三ストライプ230の延伸方向L3と第二基準方向R1との傾斜角は、0度である。しかし、本発明はこれに限定されない。本実施例において、エネルギービーム82を利用して第一スキャン方向S1及び第二スキャン方向S2に沿って繰り返して前記第三ストライプ230をスキャンすることで、前記第三ストライプ230構造と隣接する部分の構造との相違性を強化する。
【0023】
前記複数の第一ストライプ210、前記複数の第二ストライプ220、前記複数の第三ストライプ230及び前記フィルム100は、光透過性フィルム200’’を形成する。前記複数の第一ストライプ210、前記複数の第二ストライプ220及び前記複数の第三ストライプ230は、前記フィルム100の光透過率を増加させることができる。本実施例の光透過性フィルム200’’は、延伸方向が異なる第一ストライプ210、第二ストライプ220及び第三ストライプ230を有するため、ストライプの周期性を損なわせる程度はもっと大きい。従って、使用者は、前記複数の第一ストライプ210、前記複数の第二ストライプ220及び前記複数の第三ストライプ230を肉眼で視認することができず、且つ他の周期的な構造とのモアレ現象がより発生しない。
【0024】
図4は、本発明の第四実施例に係る光透過性フィルムの製造方法を示す図である。本実施例の光透過性フィルムの製造方法は、図1A乃至図1Dに示した光透過性フィルム200の製造方法と類似しているが、下記の点において異なる。本実施例において、エネルギービーム82を利用して第一ストライプ210を形成する前に、フィルム100を支持するキャリア90を提供するステップをさらに含む。本実施例において、前記キャリア90は、例えば、樹脂又はプラスチック基板である。前記フィルム100を前記キャリア90に配置した後、第一ストライプ210を形成する。この時、第一基準方向D1は、前記フィルム100の側辺Mに平行する。本実施例の光透過性フィルムの製造方法及び該製造方法により製造された光透過性フィルムと上述した他の実施例の光透過性フィルムの製造方法及び該製造方法により製造された光透過性フィルムとは、同様の利点と効果を持つため、それに対する説明は省略する。
【0025】
図5は、ストライプ光透過性フィルムから距離Aほど離れている所でのストライプが肉眼で観察されることを示す図である。図5を参照すると、肉眼でストライプを観察する時の立体角θ1(1つのストライプの両側に達する視線の間の角)がコントラスト感度関数に対応する立体角より小さい場合、肉眼でストライプを視認することができない。反対に、前記立体角θ1がコントラスト感度関数に対応する立体角より大きい場合、肉眼でストライプを視認することができる。或いは、一定の対比条件で、肉眼でストライプを観察できる最小の立体角と前記立体角θ1を対比する時、前記立体角θ1が小さければ、肉眼で前記ストライプを観察することができない。反対に、前記立体角θ1が大きければ、肉眼で前記ストライプを観察することができる。前記コントラスト及び前記コントラスト感度関数(Contrast Sensitivity Function、CSF)は、以下の式1及び式2によって計算される。
【0026】
【数1】
式2:
コントラスト感度関数=1/コントラスト
【0027】
上記式において、Δlは、ストライプの最大輝度と最小輝度との差値であり、laveは、ストライプの平均輝度であり、lmaxは、ストライプの最大輝度であり、lminは、ストライプの最小輝度である。
【0028】
従って、図1A乃至図1Dの実施例(第一実施例)及び図4の実施例(第四実施例)において、前記第一ストライプ210のコントラスト及びコントラスト感度関数と第一ストライプ210の幅及びストライプ同士のピッチとをコントロールすることによって、モアレ現象を低減させることができる。また、図2A及び図2Bの実施例(第二実施例)と図3A及び図3Bの実施例(第三実施例)において、延伸方向が異なる複数組のストライプによって相互に各ストライプの周期性を損なわせるため、肉眼で、ある1組のストライプを観察する時の立体角θ1がコントラスト感度関数に対応する立体角より大きい場合、或いは、一定の対比条件で肉眼で観察できる最小の立体角が前記立体角θ1より小さい場合、肉眼でモアレ現象を観察しにくい。
【0029】
図6は、2つの周期的な構造の夾角及び周期比が異なる状況で発生するモアレ現象の分布図である。図6を参照すると、横軸は、2つの周期的な構造の夾角を示し、縦軸は、2つの周期的な構造の周期比を示す。図6における曲線上の数字は、モアレ現象を示し、数字が大きいほど、モアレ現象がより甚だしい。本発明の各々の実施例におけるストライプ及び他の周期的な構造(例えば、表示パネルの画素アレイ)の関係は、図6における曲線上の数字が小さい区域に基づいて設計を行うので、表示画面の画質及び画面の均一性を向上させることができる。
【0030】
図7A乃至図7Gは、ストライプの光学顕微鏡の写真である。図面に示した縮尺によって実際のサイズが分かる。図7Aは、ストライプの延伸方向が第一基準方向D1に垂直する場合の光透過性フィルムの光学顕微鏡の拡大写真であり、且つ図面でのストライプが鮮明である。図7Bは、第一実施例によって制作された光透過性フィルム200の光学顕微鏡の拡大写真であり、θ=45度であり、且つ図面でのストライプが鮮明ではない。図7Cは、第二実施例によって制作された光透過性フィルム200’の光学顕微鏡の拡大写真であり、θ=3度、φ=−3度である。図7Dは、第二実施例によって制作された光透過性フィルム200’の光学顕微鏡の拡大写真であり、θ=5度、φ=−5度である。図7Eは、第二実施例によって制作された光透過性フィルム200’の光学顕微鏡の拡大写真であり、θ=8度、φ=−8度である。図7Eを参照すると、前記光透過性フィルム200’を光学顕微鏡で観察しても、ストライプが相当に鮮明ではない。図7Fは、第二実施例によって制作された光透過性フィルム200’の光学顕微鏡の拡大写真であり、θ=10度、φ=−10度である。図7Fを参照すると、前記光透過性フィルム200’を光学顕微鏡で観察しても、ストライプが相当に鮮明ではない。図7Gは、第三実施例によって制作された光透過性フィルム200’’の光学顕微鏡の拡大写真であり、θ=45度、φ=−45度であり、且つ第三ストライプ230の延伸方向L3と第二基準方向R1との傾斜角は、0度である。図7Gを参照すると、前記光透過性フィルム200’’を光学顕微鏡で観察しても、ストライプが全く鮮明ではない。
【0031】
本発明において、光透過性フィルムのストライプは、三組の以下の延伸方向が異なるストライプだけに限定されず、他の実施例においては、四組又は四組以上の延伸方向が異なるストライプであることもできる。
【0032】
本発明に係る光透過性フィルム及びその製造方法において、第一ストライプが基準方向に垂直も平行もしないため、前記光透過性フィルムの第一ストライプと他の周期的な構造とは、モアレ現象が発生しない。また、本発明において、二組の延伸方向が異なるストライプを形成し、且つ互いに各ストライプの周期性を損なわせるので、これらのストライプは、肉眼によって容易に観察されない。
【0033】
以上、本発明の好適な実施例について詳細に説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形又は修正が可能であり、該変形又は修正も又、本発明の特許請求の範囲内に含まれるものであることは、いうまでもない。
【符号の説明】
【0034】
100 フィルム
200、200’、200’’ 光透過性フィルム
50 基板
60 カーボンナノチューブ層
70 クリップ
90 キャリア
80 レーザ光源
82 エネルギービーム
210 第一ストライプ
220 第二ストライプ
230 第三ストライプ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のナノユニットを含み且つ基準方向を有するフィルムを提供するステップと、
エネルギービームを利用して、前記フィルムに、前記基準方向に垂直も平行もしない互いに平行する複数の第一ストライプを形成するステップと
を備えることを特徴とする光透過性フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記フィルムを提供するステップは、前記フィルムを引き出し方向に沿って引き出すステップをさらに含み、前記フィルムの基準方向は、前記引き出し方向と同じであることを特徴とする請求項1に記載の光透過性フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記基準方向は、前記フィルムの側辺に平行することを特徴とする請求項1に記載の光透過性フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記フィルムは、抵抗異方性を有する導電フィルムであり、前記導電フィルムの主要導電方向は、前記基準方向に平行することを特徴とする請求項2に記載の光透過性フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記抵抗異方性を有する導電フィルムは、カーボンナノチューブフィルムであることを特徴とする請求項4に記載の光透過性フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記フィルムを提供するステップは、基板にカーボンナノチューブ層を形成するステップと、引き出し方向に沿って前記カーボンナノチューブ層の側辺からカーボンナノチューブフィルムを引き出すステップとをさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の光透過性フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記フィルムを提供するステップは、前記カーボンナノチューブフィルムをキャリアに配置するステップをさらに備えることを特徴とする請求項6に記載の光透過性フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記エネルギービームは、レーザ光ビーム或いは粒子ビームであることを特徴とする請求項1に記載の光透過性フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記エネルギービームを利用して、複数の第一ストライプを形成するステップは、前記エネルギービーム利用して前記基準方向に平行する方向に沿って前記フィルムをスキャン及び照射して、前記複数の第一ストライプを順次に形成するステップをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の光透過性フィルムの製造方法。
【請求項10】
前記エネルギービームを利用して、前記基準方向に平行する方向に沿って前記フィルムを繰り返してスキャンしながら、前記第一ストライプの位置を繰り返して照射して、前記複数の第一ストライプと隣接する部分の構造との相違性を強化するステップをさらに備えることを特徴とする請求項9に記載の光透過性フィルムの製造方法。
【請求項11】
前記エネルギービームを利用して、前記フィルムに互いに平行である複数の第二ストライプを形成するステップをさらに備え、各々の前記第二ストライプは、各々の前記第一ストライプに平行しないことを特徴とする請求項1に記載の光透過性フィルムの製造方法。
【請求項12】
前記複数の第一ストライプは、周期的に配列されることを特徴とする請求項1に記載の光透過性フィルムの製造方法。
【請求項13】
複数のナノユニットを含み且つ基準方向を有するフィルムを備え、
前記フィルムは、前記フィルムの表面に形成され、且つ前記基準方向に垂直も平行もしない互いに平行である複数の第一ストライプを有することを特徴とする光透過性フィルム。
【請求項14】
前記基準方向は、前記フィルムを制作する時の引き出し方向と同じであることを特徴とする請求項13に記載の光透過性フィルム。
【請求項15】
前記基準方向は、前記フィルムの側辺に平行することを特徴とする請求項13に記載の光透過性フィルム。
【請求項16】
前記フィルムは、抵抗異方性を有する導電フィルムであり、前記導電フィルムの主要導電方向は、前記基準方向に平行することを特徴とする請求項13に記載の光透過性フィルム。
【請求項17】
前記抵抗異方性を有する導電フィルムは、カーボンナノチューブフィルムであることを特徴とする請求項16に記載の光透過性フィルム。
【請求項18】
前記光透過性フィルムは、前記フィルムの表面に形成される互いに平行である複数の第二ストライプをさらに備え、各々の前記第二ストライプは、各々の前記第一ストライプに平行しないことを特徴とする請求項13に記載の光透過性フィルム。
【請求項19】
前記複数の第一ストライプは、周期的に配列されることを特徴とする請求項13に記載の光透過性フィルム。
【請求項1】
複数のナノユニットを含み且つ基準方向を有するフィルムを提供するステップと、
エネルギービームを利用して、前記フィルムに、前記基準方向に垂直も平行もしない互いに平行する複数の第一ストライプを形成するステップと
を備えることを特徴とする光透過性フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記フィルムを提供するステップは、前記フィルムを引き出し方向に沿って引き出すステップをさらに含み、前記フィルムの基準方向は、前記引き出し方向と同じであることを特徴とする請求項1に記載の光透過性フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記基準方向は、前記フィルムの側辺に平行することを特徴とする請求項1に記載の光透過性フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記フィルムは、抵抗異方性を有する導電フィルムであり、前記導電フィルムの主要導電方向は、前記基準方向に平行することを特徴とする請求項2に記載の光透過性フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記抵抗異方性を有する導電フィルムは、カーボンナノチューブフィルムであることを特徴とする請求項4に記載の光透過性フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記フィルムを提供するステップは、基板にカーボンナノチューブ層を形成するステップと、引き出し方向に沿って前記カーボンナノチューブ層の側辺からカーボンナノチューブフィルムを引き出すステップとをさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の光透過性フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記フィルムを提供するステップは、前記カーボンナノチューブフィルムをキャリアに配置するステップをさらに備えることを特徴とする請求項6に記載の光透過性フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記エネルギービームは、レーザ光ビーム或いは粒子ビームであることを特徴とする請求項1に記載の光透過性フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記エネルギービームを利用して、複数の第一ストライプを形成するステップは、前記エネルギービーム利用して前記基準方向に平行する方向に沿って前記フィルムをスキャン及び照射して、前記複数の第一ストライプを順次に形成するステップをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の光透過性フィルムの製造方法。
【請求項10】
前記エネルギービームを利用して、前記基準方向に平行する方向に沿って前記フィルムを繰り返してスキャンしながら、前記第一ストライプの位置を繰り返して照射して、前記複数の第一ストライプと隣接する部分の構造との相違性を強化するステップをさらに備えることを特徴とする請求項9に記載の光透過性フィルムの製造方法。
【請求項11】
前記エネルギービームを利用して、前記フィルムに互いに平行である複数の第二ストライプを形成するステップをさらに備え、各々の前記第二ストライプは、各々の前記第一ストライプに平行しないことを特徴とする請求項1に記載の光透過性フィルムの製造方法。
【請求項12】
前記複数の第一ストライプは、周期的に配列されることを特徴とする請求項1に記載の光透過性フィルムの製造方法。
【請求項13】
複数のナノユニットを含み且つ基準方向を有するフィルムを備え、
前記フィルムは、前記フィルムの表面に形成され、且つ前記基準方向に垂直も平行もしない互いに平行である複数の第一ストライプを有することを特徴とする光透過性フィルム。
【請求項14】
前記基準方向は、前記フィルムを制作する時の引き出し方向と同じであることを特徴とする請求項13に記載の光透過性フィルム。
【請求項15】
前記基準方向は、前記フィルムの側辺に平行することを特徴とする請求項13に記載の光透過性フィルム。
【請求項16】
前記フィルムは、抵抗異方性を有する導電フィルムであり、前記導電フィルムの主要導電方向は、前記基準方向に平行することを特徴とする請求項13に記載の光透過性フィルム。
【請求項17】
前記抵抗異方性を有する導電フィルムは、カーボンナノチューブフィルムであることを特徴とする請求項16に記載の光透過性フィルム。
【請求項18】
前記光透過性フィルムは、前記フィルムの表面に形成される互いに平行である複数の第二ストライプをさらに備え、各々の前記第二ストライプは、各々の前記第一ストライプに平行しないことを特徴とする請求項13に記載の光透過性フィルム。
【請求項19】
前記複数の第一ストライプは、周期的に配列されることを特徴とする請求項13に記載の光透過性フィルム。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図7G】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図7G】
【公開番号】特開2011−56948(P2011−56948A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200760(P2010−200760)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(510138796)奇美電子股▲ふん▼有限公司 (24)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(510138796)奇美電子股▲ふん▼有限公司 (24)
【Fターム(参考)】
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