説明

光通信システム

【課題】本発明は、集線スイッチの負担を軽減し、集線スイッチの装置規模や消費電力を小さくできる通信システムを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る本通信システムは、下位側にONU10を接続するPON60の上位側に接続されたOSU50と、複数のOSU50を上位ネットワーク40に接続する集線スイッチ30と、を備える。集線スイッチ30は、OSU50毎にPON60から上位ネットワーク40への帯域を割り当てる割当帯域を算出する割当帯域算出手段31を有する。OSU50は、集線スイッチ30から与えられた割当帯域に基づいて、ONU10の上り帯域を制御する帯域制御メッセージを生成する帯域制御メッセージ生成手段52を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光加入者線終端装置(OLT:Optical Line Terminal)及び光ネットワーク終端装置(ONU:Optical Network Unit)を光伝送路を介して接続して、光信号により送受信する光通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
1つの光加入者線終端装置ラインカード(OSU:Optical Subscriber Unit)が、光ファイバとスプリッタからなる光伝送路を介して、1つ以上のONUと、ポイントツーポイントあるいはポイントツーマルチポイントの通信を行う光通信システムが存在している。本明細書では、前記光伝送路を受動光ネットワーク(PON:Passive Optical Network)と記載することがある。
【0003】
PONを介してONUから送信される通信データを上位ネットワークに転送する際に、通信データの総量を上位ネットワークの許容量以下に抑える必要があるため、集線スイッチによって帯域制限が行われている。
【0004】
また、PONでは1つのOSUに1つ以上のONUが接続されるので、ONUからの送信信号の衝突を避けるために、非特許文献1に示すように、動的帯域割り当て(DBA:Dynamic Bandwidth Allocation)によって、送信信号の衝突を避けるとともに、効率的な帯域共有が行われている。
【0005】
DBAでは、REPORTメッセージによってONUが送信待ちデータ量をOLTに通知し、OLTはGATEメッセージによって送信タイミングと送信許可量を通知する。予め送信タイミングと送信許可量を固定にするFBA(Fixed Bandwidth Allocation)では、固定で割り当てられた帯域よりも送信帯域が小さいONUによって余剰帯域が発生するのに対し、DBAを用いれば、ONUの送信量が時間変化する環境でも空き帯域を有効に利用することができる。
【0006】
OSU単位にDBAを用いた場合、OSU毎に流れる通信データ量が異なるため、あるOSU(混雑しているOSU)に接続されたONUと、異なるOSU(空いているOSU)に接続されたONUでは、送信できるデータ量が異なる。
【0007】
このため、OSUより上位で更に帯域制限を行う場合は、複数のOSU間でONUが送信できるデータ量が異なることを考慮しないと、ONU毎に著しい不公平が生じる可能性がある。具体的には、同じサービスの加入者であるにもかかわらず、大容量のデータが送信可能なONUと、最低限のデータのみ送信可能なONUが存在することになる。このため、公平性の観点から、複数のOSU間でONUが送信できるデータ量を偏らせないために、集線スイッチにてONU毎に公平性を考慮した制御が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許4142045号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】NTT技術ジャーナル Vol.17 No.10 技術基礎講座GE−PON技術第3回DBA
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、ONU単位に公平性を担保するためには、集線スイッチはONU単位のバッファを持つ必要があり、かつフレーム単位にどのONUから来たフレームかを識別し、振り分ける必要があるため、集線スイッチの装置規模や消費電力が大きくなっていた。また異なる方法として、集線スイッチが全てのONUとの間で、REPORTとGATEの交換を行い、集線スイッチが全てのONUに対して帯域を割り当てる方法では、集線スイッチが収容するONUの数が多い場合に、同様に集線スイッチの装置規模や消費電力が大きくなる。
【0011】
このように、従来、OSUで収容するONU数の偏りによって発生するONU単位での帯域の偏りを無くすために、集線スイッチにおいてONU単位に公平に制御を行うことから、バッファや優先制御等の規模が大きく、また消費電力も大きくなるという課題があった。
【0012】
そこで、前記課題を解決するために、本発明は、集線スイッチの負担を軽減し、集線スイッチの装置規模や消費電力を小さくできる通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明に係る通信システムは、OSUにおける帯域制御技術で上位に接続された集線スイッチが行っていた公平制御まで含めた帯域制御を行い、集線スイッチの構成およびコストを低減することとした。
【0014】
具体的には、本発明に係る通信システムは、下位側に光ネットワーク終端装置(ONU:Optical Network Unit)を接続する受動光ネットワーク(PON:Passive Optical Network)の上位側に接続された光加入者終端ユニット(OSU:Optical Subscriber Unit)と、複数の前記OSUを上位ネットワークに接続する集線スイッチと、を備え、
前記集線スイッチは、前記OSU毎に前記PONから前記上位ネットワークへの帯域を割り当てる割当帯域を算出する割当帯域算出手段を有し、前記OSUは、前記集線スイッチから与えられた前記割当帯域に基づいて、前記ONUの上り帯域を制御する帯域制御メッセージを生成する帯域制御メッセージ生成手段を有することを特徴とする。
【0015】
本通信システムは、OSUで収容するONU数に偏りがあっても、ONU単位での帯域に偏りがないよう公平性を制御する。このため、集線スイッチの公平制御が不要となり、集線スイッチの構成を低減することができる。従って、本発明は、集線スイッチの負担を軽減し、集線スイッチの装置規模や消費電力を小さくできる通信システムを提供することができる。
【0016】
本発明に係る通信システムの前記OSUは、配下の前記ONUが帯域要求をした要求帯域を合計し前記OSU単位の要求帯域量として前記集線スイッチの前記割当帯域算出手段に通知する要求帯域通知手段をさらに有し、前記集線スイッチは、上り主信号を一時的に保持するバッファをさらに有し、前記割当帯域算出手段は、前記バッファが保持する上り主信号の量若しくは上り主信号の変化量に応じて前記割当帯域を算出することを特徴とする。
【0017】
帯域制限をかける対象のOSUが少なく、全体の送信量が大きい場合であっても集線スイッチのバッファ溢れを防ぐことができる。
【0018】
本発明に係る通信システムの前記集線スイッチは、前記OSU毎に前記割当帯域算出手段が算出した過去の前記割当帯域を時間的に平滑化して記録する帯域情報テーブルをさらに有し、前記割当帯域算出手段は、前記帯域情報テーブルの値を用いて前記割当帯域を算出することを特徴とする。本通信システムは、過去の割当帯域を考慮することでONU間の構成制御が可能となる。
【0019】
本発明に係る通信システムの前記OSUは、配下の前記ONUが、前記ONU間で公平な帯域分配となる目標帯域を越えて送信した帯域を時間で平滑化した帯域超過量のうち、最大の帯域超過量となる前記ONUを最大要求ONUとし、前記最大要求ONUの要求帯域をOSU内最大ONU送信超過量として前記集線スイッチの前記割当帯域算出手段に通知する超過量算出手段をさらに有し、
前記割当帯域算出手段は、前記OSU内最大ONU送信超過量のうち最大値を示す前記OSUに対して、前記OSUの前記要求帯域通知手段が通知する前記要求帯域量から前記最大要求ONUの要求帯域を減じて差引値とし、前記差引値が、サービス毎に規定している最低限の帯域幅である最低保証帯域を下回る場合には最低保証帯域を前記割当帯域として算出することを特徴とする。本通信システムは、OSUの帯域超過量を考慮することでONU間の構成制御が可能となる。
【0020】
本発明に係る通信システムの前記OSUは、帯域要求をした前記ONUの数を前記割当帯域算出手段に通知するONU数通知手段をさらに有し、前記割当帯域算出手段は、前記集線スイッチの前記上位ネットワーク側のポートの帯域を帯域要求をした前記ONUのサービスレベルで規定される係数を合計した値で割った帯域幅を前記目標帯域として前記OSUに通知することを特徴とする。本通信システムは、サービス毎のOSUの帯域超過量を考慮することでONU間の構成制御が可能となる。
【0021】
本発明に係る通信システムの前記OSUは、前記ONUから帯域要求があり、前記集線スイッチから事前に前記割当帯域を与えられ、且つ前記集線スイッチから次の前記割当帯域を与えられる前である場合に、事前の前記割当帯域に基づいて前記帯域制御メッセージを生成することを特徴とする。本通信システムは、最新の割当帯域をOSUに通知できない場合、直前の割当帯域を利用することで送信許可の遅延を防止できる。
【0022】
本発明に係る通信システムの前記集線スイッチは、前記帯域制御メッセージに基づき前記ONUの帯域が変動した後の前記ONUからの上り主信号が前記集線スイッチの前記バッファに到着するまでの間に、前記上位ネットワークへのデータ送信で前記バッファが空になることを防ぐ量の上り主信号を前記バッファに蓄積した後に、前記割当帯域算出手段が前記OSUに前記割当帯域を与えるように制御するバッファ監視手段をさらに備える。本通信システムは、前記割り当て不足が生じても、集線スイッチの上りバッファが空にならずに、集線スイッチの上位リンクの利用率が低下することを避けられる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、集線スイッチの負担を軽減し、集線スイッチの装置規模や消費電力を小さくできる通信システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る通信システムを説明する図である。
【図2】本発明に係る通信システムの動作を説明する図である。集線スイッチからの割り当てを待たずに前サイクルの割り当て量に応じてOSUが遅延抑制する場合である。従来であれば、(1)のリクエストのみに対して(5)の計算を行うが、本発明の構成では、破線枠内のリクエストも(5)の帯域割り当て計算に含める。これにより、ONUバッファ内フレームの待ち時間を短縮する。
【図3】本発明に係る通信システムの動作を説明する図である。
【図4】本発明に係る通信システムを説明する図である。
【図5】本発明に係る通信システムを説明する図である。
【図6】本発明に係る通信システムを説明する図である。
【図7】本発明に係る通信システムを説明する図である。
【図8】本発明に係る通信システムを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施形態であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。また、枝番号を付さずに説明している場合は、当該符号の全ての枝番号に共通する説明である。
【0026】
図4は、本実施形態の通信システムの構成を説明する図である。本通信システムは、下位側にONU10を接続するPON60の上位側に接続されたOSU50と、複数のOSU50を上位ネットワーク40に接続する集線スイッチ30と、を備える。集線スイッチ30は、OSU50毎にPON60から上位ネットワーク40への帯域を割り当てる割当帯域を算出する割当帯域算出手段31を有する。OSU50は、集線スイッチ30から与えられた割当帯域に基づいて、ONU10の上り帯域を制御する帯域制御メッセージを生成する帯域制御メッセージ生成手段52を有する。
【0027】
本実施形態の通信システムは、図5のような構成としてもよい。本通信システムのOSU50は、配下のONU10が帯域要求をした要求帯域を合計しOSU50単位の要求帯域量として集線スイッチ30の割当帯域算出手段31に通知する要求帯域通知手段54をさらに有し、集線スイッチ30は、上り主信号を一時的に保持するバッファ32をさらに有し、割当帯域算出手段31は、バッファ32が保持する上り主信号の量若しくは上り主信号の変化量に応じて割当帯域を算出する。
【0028】
本実施形態の通信システムは、図6のような構成としてもよい。本通信システムの集線スイッチ30は、OSU50毎に割当帯域算出手段31が算出した過去の割当帯域を時間的に平滑化して記録する帯域情報テーブル34をさらに有し、割当帯域算出手段31は、帯域情報テーブル34の値を用いて前記割当帯域を算出する。
【0029】
本実施形態の通信システムは、図7のような構成としてもよい。本通信システムのOSU50は、配下のONU10が、ONU10間で公平な帯域分配となる目標帯域を越えて送信した帯域を時間で平滑化した帯域超過量のうち、最大の帯域超過量となるONU10を最大要求ONUとし、最大要求ONUの要求帯域をOSU内最大ONU送信超過量として集線スイッチ30の割当帯域算出手段31に通知する超過量算出手段55をさらに有する。割当帯域算出手段31は、OSU内最大ONU送信超過量のうち最大値を示すOSU50に対して、OSU50の要求帯域通知手段54が通知する要求帯域量から最大要求ONUの要求帯域を減じて差引値とし、前記差引値が、サービス毎に規定している最低限の帯域幅である最低保証帯域を下回る場合には最低保証帯域を割当帯域として算出する。
【0030】
本実施形態の通信システムは、図8のような構成としてもよい。本通信システムのOSU50帯域要求をしたONU10を割当帯域算出手段31に通知するONU数通知手段57をさらに有し、割当帯域算出手段31は、集線スイッチ30の上位ネットワーク側のポートの帯域を帯域要求をしたONU10のサービスレベルで規定される係数を合計した値で割った帯域幅を目標帯域としてOSU50に通知する。
【0031】
(OSUの単位の要求と帯域割り当て)
OSU50は、配下のONU10からの送信要求量の和を、OSU送信要求量として、集線スイッチ30に通知し、集線スイッチ30は配下のOSU50からの要求量を基に帯域割り当てを行い、OSU単位に送信許可量を通知する。
【0032】
(制限するOSUの選択)
特許文献1では、OSUはONU単位に、ONU間で公平な割り当てとなる目標帯域と、目標帯域を越えて実際にONUが送信した帯域を、時間で平滑化した量である超過量を保持し、超過量が0に近づくようにONUに送信許可を通知する。一方、本実施形態の通信システムは、OSU50が保持する超過量のうち、最大の値を集線スイッチ30に通知し、集線スイッチ30は複数のOSU50から通知された超過量のうち、最大の超過量であるONU10を収容しているOSU50に対して、フィードバックをかけることで、全てのONU10のうち最も超過量の多いONU10に対して帯域制限をかける。
【0033】
(OSUの超過量の計算)
OSU50は集線スイッチ30に一定間隔ごとに、帯域要求のあったONU10の、サービスレベルに応じて規定される係数を合計した値を集線スイッチ30に通知し、集線スイッチ30は複数のOSU50から通知された要求のある全ONU10の係数の合計を全てのOSU50に通知する。OSU50は、集線スイッチ30の上位リンクの帯域を、上記係数の合計と当該ONU10のサービスレベルに応じて規定される係数から比例分配して得られる値を目標帯域とし、実際に送信した帯域から目標帯域を差し引いた帯域を超過量として再計算する。
【0034】
集線スイッチ30が収容している全ONU10が等しいサービスレベルの場合であれば、要求のある全ONU10の数の合計で集線スイッチ30の上位リンクの帯域で割った値が目標帯域となる。
【0035】
(ONU間公平制御)
OSU50は、最も超過量の大きいONU10から通知された要求帯域を、集線スイッチ30に通知する。集線スイッチ30は、帯域制限をかける状態において、最も超過量の多いONU10を収容しているOSU50から通知された当該OSU50の合計要求量から、該当OSU50内の最も超過量のONU10から通知された要求量を差し引き、差し引き後の要求量に基づいて帯域計算を行うことで、該当OSU50配下の該当ONU10に対する送信許可量を減少させる。
【0036】
(1サイクル予測による遅延の低減)
本実施形態の通信システムのOSU50は、ONU10から帯域要求があり、集線スイッチ30から事前に割当帯域を与えられ、且つ集線スイッチ30から次の割当帯域を与えられる前である場合に、事前の割当帯域に基づいて前記帯域制御メッセージを生成する。
【0037】
OSU50における帯域割り当てと、集線スイッチ30における帯域割り当てと、帯域割り当てが2段階になるため、下位の帯域割り当てとなるOSU50のDBA51は、上位の帯域割り当てである集線スイッチ30からの帯域割り当てが行われるまでONU10に対する送信許可を発出できないため、遅延が増加する。これを解決するためOSU50は、ONU10からの送信要求があり、かつ以前に集線スイッチ30からの送信許可が与えられている場合に、次回の集線スイッチ30からの帯域割り当てを待たずに、直前に与えられた帯域に基づいて、ONU10からの帯域要求に対する送信許可を与える。
【0038】
(バッファ量監視方式による1サイクル分の吸収)
本実施形態の通信システムの集線スイッチ30は、帯域制御メッセージに基づきONU10の帯域が変動した後のONU10からの上り主信号が集線スイッチ30のバッファ32に到着するまでの間に、上位ネットワーク40へのデータ送信でバッファ32が空になることを防ぐ量の上り主信号をバッファ32に蓄積した後に、割当帯域算出手段31がOSU50に割当帯域を与えるように制御するバッファ監視手段33をさらに備える。
【0039】
上記の、OSU50が集線スイッチ30からの帯域割り当てを待たずにONU10に対して割り当てを行う場合に、要求と割当の間にずれが生じ、ONU10からの要求に対して過剰割り当てや割り当て量の不足が発生する可能性がある。これを解決するために、集線スイッチ30に上りバッファを備え、集線スイッチ30からの帯域割り当てが反映されるまでの間にバッファが空にならない分のフレームが蓄積されるまでは帯域制限を開始しない。これにより、前記割り当て不足が生じても、集線スイッチ30の上りバッファが空にならずに、集線スイッチ30の上位リンクの利用率が低下することを避けられる。
【0040】
(バッファ量監視方式による輻輳の検知と、帯域制限の高速・低速化)
帯域制限をかける対象のOSU50が少なく、全体の送信量が大きい場合には集線スイッチ30のバッファが溢れてしまう可能性があるため、集線スイッチ30のバッファ量に応じて、帯域制限をかける対象のOSU50の数を変化させる。バッファ蓄積量が多いほど、より多くのOSU50に対して帯域制限をかける。
【0041】
(バッファ増加速度監視方式による輻輳の検知)
帯域制限をかける対象のOSU50が少なく、全体の送信量が大きい場合には集線スイッチ30のバッファが溢れてしまう可能性があるため、単位時間あたりのバッファ増加量が大きいほど、より多くのOSU50に対して帯域制限をかける。
【0042】
本実施形態の通信システムは、OLTと集線スイッチ30で連携した帯域制御を行うことで、ONU単位の公平制御をOLTが行い、集線スイッチ30ではONU単位の公平制御は不要となるため、集線スイッチ30の装置規模を小さくし、消費電力および装置コストの低減が可能となる。
【0043】
連携によって新たに課題となる遅延増加は、集線スイッチ30におけるバッファ量の監視で抑制できる。
【0044】
バッファ蓄積量に応じて帯域制限をかける対象のOSU50数を増減させることで、集線スイッチ30におけるバッファ溢れをなくし、フレーム破棄の発生場所をONU10に限定することができる。
【0045】
バッファ増加速度に応じて帯域制限をかける対象のOSU50数を増減させることで、より小容量のバッファで、集線スイッチ30におけるバッファ溢れをなくし、フレーム破棄の発生場所をONU10に限定することができる。
【0046】
(実施例1)
図1は、本実施形態の通信システムの実施例の一つである。OLT20は、OSU50−1とOSU50−2を有する。ONU10#1−1〜1−4が接続されたOSU50−1と、ONU10#2−1〜2−4が接続されたOSU50−2が、集線スイッチ30に収容されているとする。また、各PONのリンク速度を1000Mbpsとする。ONU10#1−1〜1−4およびONU10#2−4の要求量が1000Mbps、ONU10#2−1〜2−3の要求量が10Mbpsとし、集線スイッチ30の上位リンクの帯域を1000Mbpsとする。また、全てのONU10のサービスレベルは同等であるとする。
【0047】
OSU50において、特許文献1に記載の帯域割り当て方法を用いた場合、ONU10#1−1〜1−4はそれぞれ平均的に250Mbps分帯域が割り当てられ、ONU10#2−1〜2−3ではそれぞれ平均的に10Mbpsの帯域が、ONU10#2−4からは平均的に970Mbpsの帯域が割り当てられる。
【0048】
集線スイッチ30でONU単位の公平制御を行わず、ドロップテイルで破棄する場合、 OSU50−1から送信される1000Mbpsのデータと、OSU50−2から送信される1000Mbpsのデータからそれぞれ平均的に同じ量が破棄され、上記のONU10の割り当て量の半分が実際に集線スイッチ30を通過することになり、ONU10#1−1〜1−4から送られたデータはそれぞれ125Mbpsが通過し、ONU10#2−1〜ONU10#2−3から送られたデータはそれぞれ5Mbps、ONU10#2−4から送られたデータは485Mbpsが通過することになる。
【0049】
この時、例えばONU10#1−1はONU10#2−4と要求量が同じであるにもかかわらず、収容されているOSU50によって、実際に通過するデータ量が大きく異なり、不公平な割り当てとなっている。
【0050】
本実施例によれば、OSU50は帯域要求のあるONU10の数を集線スイッチ30へ通知し、集線スイッチ30は2つのOSU50から集約した合計のONU数で、集線スイッチ30の上位リンクの帯域を割った値を各OSU50へ通知し、OSU50は各ONU10の目標帯域を通知された帯域に設定する。
【0051】
OSU50は、実際にONU10からOSU50に送信されたデータ量を目標帯域と比較し、目標帯域を超過した帯域を超過量として算出し、最も超過量の多いONU10の超過量(OSU内最大ONU送信超過量)と要求帯域を集線スイッチ30に通知する。
【0052】
また、本実施例によれば、OSU50はOSU50が収容している全てのONU10の要求帯域を合計し、OSU50の要求帯域として、ひとまとめにして集線スイッチ30に通知する。
【0053】
集線スイッチ30は、各OSU50から通知されたOSU内最大ONU送信超過量のうち、最大を示すOSU50に対して帯域制限をかけることで、収容しているONU10のうち最も超過量の大きいONU10に対して帯域制限をかけることができる。
【0054】
具体的には、最大のOSU内最大ONU送信超過量を示したOSU50から通知された、OSU50の要求帯域から、当該ONU10の要求帯域を差し引いて、OSU50に対する帯域割当の算出を行う。ただし、当該ONU10に対する割り当てが、サービスで保証している最低保証帯域を下回る場合は、最低保証帯域を割り当てる。
【0055】
発明の構成によれば、一時的に輻輳が発生しても、集線スイッチ30が帯域制限をかけてから、帯域制限が反映されたデータ量が集線スイッチ30に届くまでに、集線スイッチ30の上りバッファが空にならない量が蓄積するまでは全てのOSU50からの要求帯域に対して許可を与える。
【0056】
集線スイッチ30が帯域制限をかける一例として、集線スイッチ30の上位リンクの帯域幅を、各OSU50の収容ONU数に比例して帯域を分配したものを目標帯域とし、目標帯域を超過してOSU50から送られたデータ量をOSU50の超過量として算出し、超過量の最も小さなOSU50から許可量の合計が上位リンクに達するまで要求量を割り当てる方法を用いる。ただし、各OSU50に対して、OSU50内の要求のあるONU数分の最低保証帯域の合計を下回らないように割り当てる。
【0057】
具体的には、本実施例においては、各OSU50の目標帯域が500Mbps、各ONU10の目標帯域が125Mbpsとなり、ONU10#2−4のみ超過量が増加するため、OSU50−2はONU10#2−4の超過量を集線スイッチ30へ通知する。集線スイッチ30のバッファが上記に定めた量を超えると、集線スイッチ30はOSU50−2の要求量から、ONU10#2−4の要求量を差し引いた値で、超過量の小さいものから優先的に帯域割り当てを行う。OSU50−2に割り当てられる割り当て量が小さくても、超過量の小さいものから割り当てられるため、ONU10#2−4以外に帯域が割り当てられ、相対的に帯域を独占していたONU10#2−4に対する帯域制限が実現でき、集線スイッチ30に収容されるONU間の公平性が向上する。
【0058】
この際、OSU50は集線スイッチ30からの帯域割り当てを待つと、集線スイッチ30からの割り当てが来るまで、OSU50はONU10に対して送信許可を送れず、従来の構成よりも遅延が増加することが懸念される。しかし、発明の構成によれば、ONU10から要求帯域があり、かつ以前に集線スイッチ30からの帯域割り当てがある場合、OSU50は集線スイッチ30からの次の帯域割当を待たずに、直前に割り当てられた帯域を用いてONU10に帯域割り当てを行うことで、遅延抑制が可能となる。
【0059】
具体的に、各ONU10が定期的にREPORTを送信することを考え、DBAにおけるREPORT送信、GATE受信、ONU10からの上りデータ送信、という一連の動作を1周期(DBAサイクル)とする。図2に示すように、初めのサイクルにおいて、ONU10#1がOSU50−1に対してREPORTを送信し(図2の“R1”)、OSU50−1は全ONU10の要求帯域を合計し、集線スイッチ30に通知する。初めのサイクルにおいて、OSU50−1がGATEメッセージを発出する前に、集線スイッチ30における各OSU50への帯域割り当て(図2の“G1”)が行えない場合、OSU50−1への帯域割り当てがONU10#1への帯域割り当てへ反映されるのは次のサイクルのGATE(図2の“G2”)となる。従って、要求帯域“R1”によって、実際にONU10#1がデータを送信できるのは、図2の“Data”で示すタイミングとなり遅延が大きくなる。これに対し、要求帯域“R2”を“G2”に含めて計算を行うことで、要求帯域“R2”によって、次サイクルとなる“Data”のタイミングに送信が可能となり遅延抑制が可能となる。
【0060】
また、OSU50が直前に割り当てられた帯域を用いる際に、ONU10に対する割り当てが過剰となる、あるいは不足する可能性が出るため、集線スイッチ30の上位リンクの帯域利用率低下が懸念されるが、発明の構成によれば、前記の通り集線スイッチ30は、一定以上のバッファが溜まってから帯域制限を開始するため、帯域利用率を低下させることなく公平制御が可能となる。
【0061】
具体的には、図3に示すように、集線スイッチ30に上りバッファを持たせ、OSU50−1とOSU50−2からの上り帯域の合計が1000Mbpsを越えても、バッファ蓄積量が帯域制限を開始する閾値以下である間は帯域制限を開始しない。帯域制限開始の閾値は、集線スイッチ30の上位リンクの帯域と、帯域制限を開始してから制限が反省されるまでにかかる時間によって決定する。本実施例では、集線スイッチ30の上位リンクの帯域は1000Mbpsであり、帯域制限を開始してから反映されるまでの時間、つまり、集線スイッチ30がOSU50へ割り当てた帯域を通知し、OSU50がONU10に割り当てた帯域を通知し、ONU10が割り当て量に応じてデータを送信し、OSU50が送られたデータを集線スイッチ30に送信する時間によって決定する。この反映されるまでの時間は、OSU50と集線スイッチ30の通信遅延が小さい場合、最大で約DBAサイクル3サイクル分となるため(図2)、DBAサイクルを1msとした場合、3msと1000Mbpsから3Mbitを閾値とする。これにより、3Mbit分バッファに溜まった直後に帯域制限をかけ、かつ、ONU10の上り送信帯域が0になったとしても、DBAサイクル3サイクル分はバッファが空になることはなく、ONU10に対して、ONU10のバッファしている量以上の割り当てを行った時に、集線スイッチ30の上位リンクの帯域に無駄が発生する(帯域が余っているのに使用しない)ことを防ぐ。
【0062】
また、帯域制限をかけるOSU50を1つのみではなく、同時に複数のOSU50に対して帯域制限をかけることで、バッファを溢れないようにすれば、輻輳時のフレーム廃棄をONU10に限定することが可能となる。フレーム破棄をONU10に限定すれば、ONU10にフィードバック機能、例えば映像通信アプリケーションに対するエンコードレートの切替制御を備えることで、更なるフレーム破棄を抑制し、ユーザの体感品質を向上させることができる。
【0063】
具体的には、集線スイッチ30のバッファ容量全体からバッファ蓄積量を差し引いた量が、帯域制限をかけてから、帯域制限が反映され、その送信データ量が集線スイッチ30に到着するまでの間に、ちょうどバッファが溢れない量に達した時に、集線スイッチ30がOSU50に与える送信許可量の合計を、上位リンクの帯域以下に制限する。
【0064】
本実施例においては、集線スイッチ30の帯域制限の開始から、帯域制限が反映され、反映されたONU10の送信データが集線スイッチ30に到着するまでに5msかかるとし、OSU50からの送信帯域は帯域制限前に合計が2000Mbpsであり、集線スイッチ30からは上位リンクへ1000Mbpsでデータが通過するため、帯域制限が反映されるまでにバッファを溢れさせないためには、集線スイッチ30における出力帯域と入力帯域の差分である1000Mbpsと5msを乗じた5Mbit分が集線スイッチ30のバッファに蓄積した時に、帯域制限後の全てのOSU50に対する許可量の合計を、上位リンクの帯域と等しい1000Mbpsとして帯域制限をかければ、集線スイッチ30においてバッファ溢れを起こすことがなく、フレーム破棄をONU10に限定することができる。
【0065】
更に、同時に全てのOSU50に対しては帯域制限をかけず、バッファの蓄積量に応じて段階的に、帯域制限をかけるOSU50の数を増減させ、超過量の大きいONU10が接続されたOSU50に対して優先的に帯域制限をかけることで、公平性が収束するまでの高速化が可能となる。
【0066】
(実施例2)
実施例1の構成と同様に、ONU10#1−1〜1−4が接続されたOSU50−1と、ONU10#2−1〜2−4が接続されたOSU50−2が、集線スイッチ30に収容されているとする。また、各PONのリンク速度を1000Mbpsとする。ONU10#1−1〜1−4およびONU10#2−4の要求量が1000Mbps、ONU10#2−1〜2−3の要求量が10Mbpsとし、集線スイッチ30の上位リンクの帯域を1000Mbpsとする。また、実施例1からの差分としてONU10#1−1〜1−4に設定されたサービスレベルの係数を2、ONU10#2−1〜2−4に設定されたサービスレベルの係数を1とする。
【0067】
実施例1と異なる部分は、目標帯域を設定するフェーズであり、全ONU10のサービスレベルの係数を合計した12で集線スイッチ30の上位リンクの帯域幅を比例分配し、ONU10#1−1〜ONU10#1−4には166.7Mbps、ONU10#2−1〜ONU10#2−4には83.3Mbpsを目標帯域として設定し、超過量を算出する。
【符号の説明】
【0068】
10:ONU
20:OLT
30:集線スイッチ
31:割当帯域算出手段
32:バッファ
33:バッファ監視手段
34:帯域情報テーブル
40:上位ネットワーク
50:OSU
51:DBA(動的帯域割当算出手段)
52:帯域制御メッセージ生成手段
53:バッファ
54:要求帯域通知手段
55:超過量算出手段
56:超過量テーブル
57:ONU数通知手段
60:PON

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下位側に光ネットワーク終端装置(ONU:Optical Network Unit)を接続する受動光ネットワーク(PON:Passive Optical Network)の上位側に接続された光加入者終端ユニット(OSU:Optical Subscriber Unit)と、
複数の前記OSUを上位ネットワークに接続する集線スイッチと、
を備え、
前記集線スイッチは、前記OSU毎に前記PONから前記上位ネットワークへの帯域を割り当てる割当帯域を算出する割当帯域算出手段を有し、
前記OSUは、前記集線スイッチから与えられた前記割当帯域に基づいて、前記ONUの上り帯域を制御する帯域制御メッセージを生成する帯域制御メッセージ生成手段を有することを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記OSUは、配下の前記ONUが帯域要求をした要求帯域を合計し前記OSU単位の要求帯域量として前記集線スイッチの前記割当帯域算出手段に通知する要求帯域通知手段をさらに有し、
前記集線スイッチは、上り主信号を一時的に保持するバッファをさらに有し、
前記割当帯域算出手段は、前記バッファが保持する上り主信号の量若しくは上り主信号の変化量に応じて前記割当帯域を算出することを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記集線スイッチは、前記OSU毎に前記割当帯域算出手段が算出した過去の前記割当帯域を時間的に平滑化して記録する帯域情報テーブルをさらに有し、
前記割当帯域算出手段は、前記帯域情報テーブルの値を用いて前記割当帯域を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記OSUは、配下の前記ONUが、前記ONU間で公平な帯域分配となる目標帯域を越えて送信した帯域を時間で平滑化した帯域超過量のうち、最大の帯域超過量となる前記ONUを最大要求ONUとし、前記最大要求ONUの要求帯域をOSU内最大ONU送信超過量として前記集線スイッチの前記割当帯域算出手段に通知する超過量算出手段をさらに有し、
前記割当帯域算出手段は、前記OSU内最大ONU送信超過量のうち最大値を示す前記OSUに対して、前記OSUの前記要求帯域通知手段が通知する前記要求帯域量から前記最大要求ONUの要求帯域を減じて差引値とし、前記差引値が、サービス毎に規定している最低限の帯域幅である最低保証帯域を下回る場合には最低保証帯域を前記割当帯域として算出することを特徴とする請求項2又は請求項2を引用する請求項3に記載の通信システム。
【請求項5】
前記OSUは、帯域要求をした前記ONUの数を前記割当帯域算出手段に通知するONU数通知手段をさらに有し、
前記割当帯域算出手段は、前記集線スイッチの前記上位ネットワーク側のポートの帯域を帯域要求をした前記ONUのサービスレベルで規定される係数を合計した値で割った帯域幅を前記目標帯域として前記OSUに通知することを特徴とする請求項4に記載の通信システム。
【請求項6】
前記OSUは、前記ONUから帯域要求があり、前記集線スイッチから事前に前記割当帯域を与えられ、且つ前記集線スイッチから次の前記割当帯域を与えられる前である場合に、事前の前記割当帯域に基づいて前記帯域制御メッセージを生成することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の通信システム。
【請求項7】
前記集線スイッチは、前記帯域制御メッセージに基づき前記ONUの帯域が変動した後の前記ONUからの上り主信号が前記集線スイッチの前記バッファに到着するまでの間に、前記上位ネットワークへのデータ送信で前記バッファが空になることを防ぐ量の上り主信号を前記バッファに蓄積した後に、前記割当帯域算出手段が前記OSUに前記割当帯域を与えるように制御するバッファ監視手段をさらに備える請求項2又は請求項2を引用する請求項3から6のいずれかに記載の通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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