説明

光重合性組成物及びその重合方法

【課題】本発明は、少量の化学作用放射線で多くの酸を増殖させて、感光速度を著しく向上した光重合性組成物及びそれの重合方法を提供する。
【解決手段】カチオン付加重合可能な化合物と、化学作用放射線によりカチオン重合を活性化させるブレンステッド酸若しくはルイス酸を発生するカチオン重合用光開始剤および発生した酸により新たに酸を発生する物質を組み合わせることにより、感光速度が著しく向上した光重合性組成物であり、またラジカル重合を組み合わせたハイブリッドな光重合性組成物にすることでより感光速度の向上を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光記録媒体を構成する感光性材料であり、カチオン重合可能な化合物と、化学作用放射線によりカチオン重合を活性化させるブレンステッド酸若しくはルイス酸を発生するカチオン重合用光開始剤および発生した酸により新たに酸を発生する物質(以下、酸増殖剤と呼ぶ)とを組み合わせることにより、化学作用放射線に対して高感度を示す光重合性組成物及びその重合方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、写真製版技術などに見られるように、画像形成材料として、高分子材料を主成分とする感光性樹脂が広範囲にわたって用いられるようになった(山岡亜夫、松永元太郎編、「フォトポリマー・テクノロジー」、日刊工業新聞社;1988年参照)。従来の感光性材料は、光開始剤(光重合開始剤)として芳香族ケトン化合物, ベンゾイン誘導体, 芳香族キノン化合物などを用いたネガ型、あるいはノボラック樹脂とその溶解阻害剤としてジアゾナフトキノンとを組み合わせたポジ型などがある。しかし これらの光重合開始剤の感度は紫外線にしか感度を有さず 一般に可視光に対しては殆ど感光性を示さない。また、全体的にその感光速度は銀塩感光材料に比較するときわめて低く、その中で最も高感度な感光性材料と言えども、銀塩感光材料が示す感光速度の千分の一程度であるのが現状である。
【0003】一方、近年においては レ−ザ−技術の進歩に伴いレ−ザ−製版, プリント回路基板, 光ディスク、光メモリ、ホログラム、レ−ザ−リソグラフィ−用として用いるレ−ザ−記録材料の開発が求められている。現在 安定な出力の得られるレ−ザ−光源としては アルゴン、ヘリウム−ネオン、YAG、さらに半導体レ−ザ−などがある。しかし 発振波長はいずれも約500nm以上であり、赤外光領域に及ぶものまである。したがって、従来の感光性材料では不十分であり、より長波長まで分光増感でき、かつ高感度な感光性高分子材料が求められている。
【0004】これまでに、感光性材料の感光速度を向上させるための様々な試みがなされてきており、その一つにラジカル重合型の感光性材料がある。これは、光の作用で光開始剤が分解しラジカル種が発生することにより、多くのビニルモノマーを連鎖的に重合させるものである。この材料は、連鎖反応を利用するために感光速度の向上が期待されるとともに、種々の染料によって光開始剤を分光増感することで長波長化が期待されたため、最も広い開発対象とされてきた(特開昭62−31848号公報、特開昭63−278907号公報、特開昭63−180946号公報、特開昭63−278906号公報および特開昭63−278908号公報等)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、空気中の酸素と容易に反応して失活するラジカル種が成長種であるために、ほとんどの場合、十分な連鎖反応が完結することなく反応が停止し、またラジカル重合反応の進行とともに急激に形成される高分子マトリックス内での編目構造のために、モノマーの拡散が制御されて反応速度が急激に低下するなどの原因からラジカル重合型の感光性材料の感光速度には本質的な限界が存在していた。
【0006】他に、カチオン重合は、上記のラジカル重合に対して重合反応時に空気中の酸素による阻害を受けないため、一般に取り扱いが容易であるという利点を有しており、高感度化の期待を集めていたが、一般的に知られている芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩等を用いる光カチオン重合では、微量塩基性物質による阻害効果や高分子固体中での酸の拡散の限界などにより、感光速度はラジカル重合型の感光性材料にも及ばないのが現状であり、飛躍的な感光速度の向上が求められている。
【0007】さらに、光ラジカル重合や光カチオン重合を用いたり、あるいはその両者を組み合わせることによって、液状あるいは膜状樹脂被膜を光照射で高硬度に硬化する樹脂組成物も広く実用に供せられており、近年、空気中の酸素による阻害効果を受けないカチオン重合型の感光性材料が広く開発研究の対象となっており、硬化に適した光開始剤や硬化に適したモノマーやオリゴマーの開発が活発に行われているが、硬化工程の迅速化のための樹脂組成物の硬化速度の向上と、また厚膜の迅速な硬化が求められている。
【0008】本発明は、カチオン付加重合可能な化合物と、化学作用放射線によりカチオン重合を活性化させるブレンステッド酸若しくはルイス酸を発生するカチオン重合用光開始剤および発生した酸により新たに酸を発生する物質を組み合わせることにより、感光速度が著しく向上した光重合性組成物であり、またラジカル重合を組み合わせたハイブリッドな光重合性組成物にすることでより感光速度の向上を可能とするものである。すなわち、本発明は、少量の化学作用放射線で多くの酸を増殖させて、感光速度を著しく向上した光重合性組成物及びそれの重合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】上記課題を課題を解決すべくなされた本発明は、請求項1に記載の発明は、(A)カチオン重合可能な化合物と、(B)化学作用放射線によりカチオン重合を活性化させるブレンステッド酸若しくはルイス酸を発生するカチオン重合用光開始剤と、(C)該光開始剤より発生したブレンステッド酸或いはルイス酸を触媒として新たに酸を発生する酸増殖剤からなることを特徴とする光重合性組成物である。
【0010】請求項2記載の発明は、(A)カチオン重合可能な化合物と、(B)化学作用放射線によりカチオン重合を活性化させるブレンステッド酸若しくはルイス酸を発生するカチオン重合用光開始剤と、(C)該光開始剤より発生したブレンステッド酸或いはルイス酸を触媒として新たに酸を発生する酸増殖剤と、(D)ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1個以上有する重合性モノマーを含有し、かつ(B)カチオン重合用光開始剤が化学作用放射線によりカチオン重合を活性化させるブレンステッド酸若しくはルイス酸の発生と同時にラジカル重合を活性化させるラジカル種を発生する化合物であることを特徴とする光重合性組成物である。
【0011】請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2記載の発明に基づき、可視光領域に吸収を有し、かつ(B)化学作用放射線によりカチオン重合を活性化させるブレンステッド酸若しくはルイス酸を発生するカチオン重合用光開始剤を増感する増感色素を含有してなり、可視領域の化学作用放射線によりカチオン重合が可能であることを特徴とする光重合性組成物である。
【0012】請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3記載の発明に基づき、(A)カチオン重合可能な化合物がエポキシ基を有する化合物であることを特徴とする光重合性組成物である。
【0013】請求項5記載の発明は、請求項1から請求項3記載の発明に基づき、(A)カチオン重合可能な化合物がビニルエーテル化合物であることを特徴とする光重合性組成物である。
【0014】請求項6記載の発明は、請求項1乃至請求項5に記載の光重合性組成物に化学放射線を照射した後、唯一の処理工程として50℃から200℃の範囲で加熱処理をすることにより光重合性組成物を速い感光速度で重合させることを特徴とする重合方法である。
【0015】請求項7記載の発明は、請求項1から請求項5記載の光重合性組成物を酸の存在下で分解あるいは重縮合等の化学反応を起こさない高分子化合物と共に溶媒に溶解して調製した感光液を基板上に塗布、乾燥して膜状となることを特徴とする光重合性組成物である。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明する。
【0017】本発明の第1の発明はカチオン付加重合可能な化合物(A)と、化学作用放射線によりカチオン重合を活性化させるブレンステッド酸若しくはルイス酸を発生するカチオン重合用光開始剤(B)および発生した酸により新たに酸を発生する物質(酸増殖剤)(C)を組み合わせることにより、感光速度を著しく向上させてなる光重合性組成物である。まず本発明の成分(A)カチオン付加重合可能な化合物としては、エポキシ基、ビニルエーテル基、ビニル基、チイラン基、オキタセン環、テトラヒドロピラン環を1つ以上有する化合物、或いはこれらの異なる基を2つ以上有する化合物およびトリメチレンオキサイド類、トリメチレンスルフィド類、スピロオルソエステル類、スピロオルソカーボネート類、ビシクロオルソエステル類などの化合物が挙げられる。これらの化合物のなかでも、特に反応性の高いエポキシ基、ビニルエーテル基を有する化合物が好適に用いることができる。
【0018】エポキシ基を有する化合物の具体例としては、グリシジルメチルエーテル、グリシジリ−n−ブチルエーテル、グリシジルビニルエーテル、グリシジルアリルエーテル、グリシジルアクリル酸、グリシジルメタクリル酸、エチレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ソリビトールポリジグリシジルエーテルなどがあり、他に日本チバ・ガイギー社製の(商品名)PY307、EPN−1138、EPN−1139、アラルダイトXAC5010、XAC8100、XAC8101、8011LA、8024LA、049SP、XN1034、DY022、CY184、CY192、CY−179、CY−177、CY−175、PT−810、日本化薬社製の(商品名)EPPN−201、BROC、BR−250、EBPS- 200およびBREN−S、GAN、GOT、AK−601、油化シェルエオキシ社製の(商品名)YX−4000、エピコート828、1001、1004、YDE205、RXE15、大日本インキ社製の(商品名)N−730、N−740、N−770、S−129、東都化成社製の(商品名)YDPN638、YDF−170、YDF−175、YDF−2001、YDF−2004、YH−434、ST−3000、YD−716、YH−300、PG−202、PG−207、YD−171、YD−172、住友化学社製の(商品名)ELM−120、ELM−434、三井石油化学社製の(商品名)R508、R531、さらに新日鐵化学社製の(商品名)ESF−300などの市販品を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、エポキシオリゴマーの一般的合成法に関するいくつかの文献や専門書、たとえば「高分子合成の実験法」(大津隆行、木下雅悦共著;化学同人)12章に記載されている方法に従って、相当するフェノール化合物とエピクロロヒドリンから合成することもできる。
【0019】さらにカチオン重合性残基を少なくとも1つ有する高分子化合物も用いることができる。例えばグリシジルメタクリレートのホモポリマーや共重合体を挙げることができる。また共重合体にする場合のコモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の高沸点ビニルモノマー、さらには脂肪族ポリヒドロキシ化合物、例えばエチエングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトールなどのジあるいはポリ(メタ)アクリル酸エステル類等やジメチロールトリシクロデカンモノアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート等の脂環式モノマーや芳香族ポリヒドロキシ化合物、例えばヒドロキノン、レゾルシン、カテコール、ピロガロール、ビスフェノールA等のジあるいはポリ(メタ)アクリル酸エステル、イソシアヌル酸のエチレンオキシド変性(メタ)アクリル酸エステル等の他に2−フェノキシエチルアクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、フェノールエトキシレートモノアクリレート、p−クロロフェニルアクリレート、KAYARAD−R551(日本化薬社製:商品名)などが挙げられる。またこれらは必要に応じて2種以上用いて多元共重合としてもよい。
【0020】また、ビニルエーテル基を有する化合物の具体的な例としては、ビニロキシエトキシベンゼン、ビニロキシエトキシ- p−トルエン、ビニロキシプロポキシベンゼン、ビニロキシエトキシ- p- クメン、ジ(ビニロキシエトキシ)ベンゼン、p, p'-ジ(ビニロキシエトキシ)ビフェニル、ビス(p−ビニロキシフェニル)スルフィド、ビス(p−ビニロキシエトキシフェニル)エーテル、ビスフェノールAビス(4−ビニロキシブチル)、ビスフェノールAビス(2−ビニロキシブチル)、グルタル酸ビス(4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル)、テレ(イソ)フタル酸ビス(2−ビニロキシエチル)、テレ(イソ)フタル酸ビス(4−ビニロキシブチル)などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。さらにビニルエーテル基を有する高分子化合物も用いることができる。
【0021】次に、本発明で用いる成分(B)化学作用放射線によりカチオン重合を活性化させるブレンステッド酸若しくはルイス酸を発生するカチオン重合用光開始剤としては、Macromolecules,10,1307(1977).に記載の化合物、例えばジフェニルヨードニウム、ジトリルヨードニウム、フェニル(p−アニシル)ヨードニウム、ビス(m−ニトロフェニル)ヨードニウム、ビス(p −tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(p −クロロフェニル)ヨードニウムなどのヨードニウムのクロリド、ブロミド、あるいはホウフッ化塩、ヘキサフルオロフォスフェート塩、ヘキサフルオロアルセネート塩等のヨ−ドニウム塩、およびトリアリールスルホニウム塩、トリアリールホスホニウム塩、鉄アレーン錯体、さらにベンゾイントシレート、ピロガロールトリメシレート、o−ニトロベンジルトシレート、2, 5−ジニトロベンジルトシレート、N−トシルフタル酸イミド、α−シアノベンジリデントシルアミン、p−ニトロベンジル-9,10−ジエトキシアントラセン−2−スルホネート等のスルホン酸エステル、イミドスルホネート、ジアルキル−4−ヒドロキシスルホニウム塩、シラノールアルミニウム錯体を挙げることができるが、これらに限定されるものではなく、また2種類以上を混合して用いても構わない。
【0022】上記のこれらカチオン重合用光開始剤のうち、ジフェニルヨードニウム、ジトリルヨードニウム、フェニル(p−アニシル)ヨードニウム、ビス(m−ニトロフェニル)ヨードニウム、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(p−クロロフェニル)ヨードニウムなどのヨードニウムのクロリド、ブロミド、あるいはホウフッ化塩、ヘキサフルオロフォスフェート塩、ヘキサフルオロアルセネート塩等のヨ−ドニウム塩、およびトリアリールスルホニウム塩、トリアリールホスホニウム塩、鉄アレーン錯体などは、同時にラジカル重合を活性化させるラジカル種を発生し、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1個以上有する重合性モノマーの重合を開始することができる化合物である。
【0023】さらに、本発明の成分(C)光開始剤より発生したブレンステッド酸或いはルイス酸が触媒となり、新たに酸を発生する酸増殖剤は、比較的強い酸の残基で置換された化合物であって、酸触媒の存在下で容易に脱離して新たに酸を発生する化合物である。すなわち酸触媒反応によって分解し、再び酸(以下、一般式でZOHと記す。)を発生する。一反応で一つ以上の酸が増えており、反応の進行に伴って加速的に酸濃度が増加することにより、飛躍的に感光速度が向上する光重合性組成物を得ることができる。この発生する酸の強度は酸解離定数(pKa)として3以下であり、さらに2以下であることが好ましい。これよりも弱い酸であれば、酸触媒による脱離反応を引き起こすことができない。このような酸触媒に用いられる酸としては、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p- トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、フェニルホスホン酸などを挙げることができる。
【0024】本発明の成分(C)の酸増殖剤の第1の具体例としては、一般式(1)で表される有機酸エステル化合物を挙げることができる。
【0025】
【化1】


【0026】(式中、A1 は炭素原子数(C)1から6までのアルキル基またはアリール基を示し、A2 は炭素原子数(C)1から6までのアルキル基を示し、A3 はビス(p−アルコキシフェニル)メチル基、2- アルキル- 2- プロピル基、2- アリール- 2- プロピル基、シクロヘキシル基またはテトラヒドロピラニル基を示し、ZはpKaが3以下であるZOHで表される酸の残基を示す。)
【0027】これらの化合物に酸が作用すると、エステル基が分解してカルボン酸となり、これがさらに脱カルボン酸を起こすことによって酸(ZOH)が脱離するものであり、具体的な例を以下に示す。
【0028】
【化2】


【0029】第2の具体例としては、一般式(2)で表されるアセタールまたはケタール基を持つ有機酸エステルを挙げることができる。
【0030】
【化3】


【0031】(式中、ZはpKaが3以下であるZOHで表される酸の残基を示し、B1 は水素原子、アルキル基あるいはアリール基であり、B2 およびB3 はメチル基あるいはエチル基または両者でエチレンまたはプロピレン基を形成するものであり、B4 は水素原子またはメチル基を示す。)
【0032】これらの化合物は酸の作用でアセタールあるいはケタールが分解してβ−アルデヒドあるいはケトンとなり、これからZOHが容易に脱離する。具体的な例を以下に示す。
【0033】
【化4】


【0034】第3の具体例は、一般式(3)で表される有機酸エステルを挙げることができる。
【0035】
【化5】


【0036】(式中、ZはpKaが3以下であるZOHで表される酸の残基を示し、D1 、D3 は炭素原子数(C)1から6までのアルキル基または双方が脂環状構造を形成するアルキレン或いは置換アルキレン残基を示し、D2 は水素原子、炭素原子数(C)1から6までのアルキル基またはアリール基を示す。)
【0037】これらの化合物は、酸触媒によって水酸基が脱離してカルボカチオンを形成し、水素移動をしてからZOHが発生するものと推定される。具体的な例を以下に示す。
【0038】
【化6】


【0039】第4の具体例は、一般式(4)で表されるエポキシ環を有する有機酸エステルを挙げることができる。
【0040】
【化7】


【0041】(式中、ZはpKaが3以下であるZOHで表される酸の残基を示し、Eは炭素原子数(C)1から6までのアルキル基またはフェニル基を示す。)
【0042】これらの化合物に酸が作用するとエポキシ環の開環が起こり、β−炭素にカチオンが形成され、水素移動の結果として有機酸が発生するものと推定される。具体的な例を以下に示す。
【0043】
【化8】


【0044】これらの化合物は酸が作用しない限り室温で安定に存在する。これらの化合物が酸触媒の存在下で分解するためには一定以上の酸強度が必要となるが、pKaで3以下であり、さらに好ましくは2以下であることが望ましい。これ以上のpKa、すなわち、これ以上弱い酸であれば、酸増殖剤の反応を引き起こすことができない。
【0045】本発明の第2の発明は、第1の発明のカチオン付加重合可能な化合物(A)と、化学作用放射線によりカチオン重合を活性化させるブレンステッド酸若しくはルイス酸を発生するカチオン重合用光開始剤(B)および発生した酸により新たに酸を発生する物質(酸増殖剤)(C)に、さらにラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1個以上有する重合性モノマーを含有し、ラジカル重合を活性化させるラジカル種を発生する化合物(D)を組み合わせることにより得られるハイブリットな光重合性組成物であり、より感光速度の向上を可能とするものである。
【0046】本発明の(D)ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1個以上有する重合性モノマーとしては、1官能であるビニルモノマーの他に多官能ビニルモノマーを含むものであり、またこれらの混合物であってもよい。具体的には、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の高沸点ビニルモノマー、さらには、脂肪族ポリヒドロキシ化合物、例えば、エチレングルコール、ジエチレングルコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトールなどのジあるいはポリ(メタ)アクリル酸エステル類等やジメチロールトリシクロデカンモノアクリレートやジメチロールトリシクロデカンジアクリレート等の脂環式モノマーや芳香族ポリヒドロキシ化合物、例えばヒドロキノン、レゾルシン、カテコール、ピロガロール、ビスフェノールA等のジあるいはポリ(メタ)アクリル酸エステル、イソシアヌル酸のエチレンオキシド変性(メタ)アクリル酸エステル等の他に2- フェノキシエチルアクリレート、2- フェノキシエチルメタクリレート、フェノールエトキシレートモノアクリレート、p- クロロフェニルアクリレート、KAYARAD−R551(日本化薬社製:商品名)などが挙げられる。また、これらは必要に応じて2種類以上を混合して用いても構わない。
【0047】一方、本発明で使用される、可視光領域に吸収を持ち、かつ(B)化学作用放射線によりカチオン重合を活性化させるブレンステッド酸若しくはルイス酸を発生するカチオン重合用光開始剤(C)を増感可能な色素としては、シアニンまたはメロシアニン系染料、クマリン系染料、カルコン系染料、ポルフィリン系染料などの有機染料化合物を使用することができる。
【0048】まず、シアニンまたはメロシアニン系染料の具体例としては、フルオレセン、ローダミン、2’7’−ジクロロフルオレセン、3,3’−ジカルボキシエチル−2,2’−チオシアニン ブロミド、アンヒドロ−3,3’−ジカルボキシメチル−2,2’−チオシアニン ベタイン、1−カルボキシメチル−1−/ カルボキシエチル−2,2’キノシアニン ブロミド、アンヒドロ−3,3’- ジカルボキシエチル−5,5’,9−トリメチル−2,2’−チアカルボシアニンベタイン、3,3’−ジヒドロキシエチル−5,5’ジメチル−9−エチル−2,2’−チアカルボシアニン ブロミド、アンヒドロ−3,3’−ジカルボキシメチル−2,2’−チアカルボシアニン ベタイン、2−[3−エチル−4−オキソ−5−(1−エチル−4−キノリニデン)−エチリデン−2−チアゾリニデン−メチル]−3−エチルゼンゾキサゾリウム ブロミド、3−エチル−5−2−(3−エチル−2−ベンゾチアゾイリデン)−エチリデン]ロ−ダニン、3−エチル−5−[2−(3−メチル−2(3H)−チアゾリニリデン)−エチリデン]−2−チオ−2,4−オキサザリジオン、3−エチル−5−(3−エチル−ゼンゾチアゾリリデン) ローダニン、2−(p −ジメチルアミノスチリル)−3−エチル, ベンゾチアゾリウム ヨージド、2−(p-ジエチルアミノスチリル)−1−エチル ピリジニウム ヨージド、1,3’−ジエチル−2,2’−キノチアシアニン ヨージドなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0049】また、クマリン系染料の具体例としては、3−(2’−ベンズイミダゾール)7−N,N−ジエチルアミノクマリン、3,3−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3,3’−カルボニルビスクマリン、3,3’−カルボニルビス(7−メトキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(5,7- ジメトキシクマリン)、3,3’カルボニルビス(6−メトキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−アセトキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(5,7−ジ−iso −プロポキシクマリン)、3,3’カルボニルビス(5、7−ジ-n−プロポキシクマリン)、3、3’−カルボニルビス(5,7- ジ-n- ブトキシクマリン)、 3,3’−カルボニルビス(7−ジメチルアミノクマリン)、7−ジエチルアミノ−5’,7’ジメトキシ- 3, 3’カルボニルビスクマリン、3−ベンゾイルクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジメトキシクマリン、3−ベンゾイル−6−メトキシクマリン、3−ベンゾイル−7−メトキシクマリン、3−ベンゾイル−8−メトキシクマリン、3−ベンゾイル−8−エトキシクマリン、3−ベンゾイル−6−ブロモクマリン、3−ベンゾイル−7−ジメチルアミノクマリン、3−ベンゾイル−7−ジエチルアミノクマリン、3−ベンゾイル−7−ヒドロキシクマリン、3−アセチル−7−ジエチルアミノクマリン、3−アセチル−7−メトキシクマリン、3−アセチル−5,7−ジメトキシクマリン、7−ジメチルアミノ−3−(4−ヨードベンゾイル)クマリン、7−ジエチルアミノ−3−(4−ヨードベンゾイル)クマリン、7−ジエチルアミノ−3−(4−ジエチルアミノベンゾイル)クマリンなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0050】また、カルコン系染料の具体例としては、以下の化合物を例示するがこの限りではない。
【0051】
【化9】


【0052】さらに、ポルフィリン系染料の具体例としては、9, 10−ジヒドロポルフィリン、5, 9, 15, 19−テトラメチルポルフィリン、4, 5, 14, 15−テトラヒドロ−4, 9, 14, 19- テトラメチル−2, 7, 12, 17- テトラザポルフィリン、メソ−テトラフェニルポルフィリン、4, 5, 9, 10, 14, 15, 19, 20−オクタメチルポルフィリン、5, 9−ジアセチル−4,10, 14, 15, 19, 20−ヘキサメチルポルフィリン、5, 9−ジアセチル- 14−エチル−4, 10, 15, 19, 20−ペンタメチルポルフィリン、4, 9, 14, 19−テトラメチル−5, 10, 15, 20−テトラプロピルポルフィリン、2−アミノ−4, 5, 9, 10, 14, 15, 19, 20−オクタエチルポルフィリン、2−ニトロ- 4, 5, 9, 10, 14, 15, 19, 20−オクタエチルポルフィリン、メソ−ジフェニルテトラベンゾポルフィリン、4, 5- ジブロモ−9, 10−,14, 15−,19, 20−トリベンゾ−2, 7, 12, 17−テロラザポルフィリン、4, 5, 9, 10, 14, 15, 19,20−オクタフェニルポルフィリン、テトラキス(3, 4−ジメトキシフェニル)ポルフィリン、4, 5, 9, 10, 14, 15, 19, 20−オクタ(p−メトキシフェニル)ポルフィリンやそれらの銅、コバルト、ニッケル、亜鉛、白金、マグネシウムなどの金属錯体などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0053】この他には、(チオ)キサンテン系染料、アズレニウム系染料、スクアリリウム系染料、(チオ)キサントン系染料、テトラピラジノポルフィラジン系染料などの上記光開始剤(D)を増感する増感色素であれば用いることができる。
【0054】なお、これらの増感剤は使用目的によって光源となる輻射線の波長に合うように選択することができ、用途によっては2種類以上を組み合わせて使用しても構わない。
【0055】本発明の第1の発明にかかる光重合性組成物は、上記したように(A)カチオン付加重合可能な化合物と、(B)化学作用放射線によりカチオン重合を活性化させるブレンステッド酸若しくはルイス酸を発生するカチオン重合用光開始剤および(C)光開始剤より発生したブレンステッド酸或いはルイス酸が触媒となり、新たに酸を発生する酸増殖剤からなり、通常カチオン重合可能な化合物(A)100重量部に対して、カチオン重合用光開始剤(B)を0. 01から20重量部、さらに好ましくは0. 1から10重量部、および酸増殖剤(C)を0. 1から20重量部、さらに好ましくは1から10重量部添加して調製する。これらを均一に分散して重合させるために重合開始前に適当な溶媒に溶解して用いても構わない。これらの組成物に化学放射線を照射し、酸を発生させる。ついで、加熱処理を施すことによって酸増殖剤の連続的な分解反応を促進させると共に、カチオン重合を引き起こすものである。加熱条件は、露光エネルギー量および用いるカチオン重合用光開始剤の種類によってことなるが、50℃から200℃であり、さらに好ましくは80℃から150℃の範囲が適当である。これ以下の低温で加熱を行うと、長時間の加熱時間が必要となり実質的な感光速度の向上が見られない。また、時間的には、30秒以上さらに好ましくは2分以上の加熱時間が適当である。これ以下の加熱時間では重合が十分に完結しない場合がある。
【0056】また、上記の光重合性組成物に、(D)ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1個以上有する重合性モノマーを添加して用いる場合である第2の発明にかかる光重合性組成物では、その添加量は通常カチオン重合可能な化合物(A)100重量部に対して、200重量部以下であることが好ましい。
【0057】さらに、本発明の光重合性組成物に可視光領域に吸収を持ち、かつカチオン重合用光開始剤(B)を増感可能な色素を添加して可視領域の化学作用放射線によりカチオン重合させる場合、増感色素の添加量は通常カチオン重合可能な化合物(A)100重量部に対して、0. 1から10重量部、さらに好ましくは0. 5から5重量部の範囲で用いることができる。なお、増感色素の使用量は光重合性組成物の照射する化学放射線の透過率によって制限を受け、その透過率が10%以下になると全体的に酸の発生が抑制され、見かけの感光速度が低下する問題を有する。
【0058】加えて、光重合性組成物を、酸の存在下で分解あるいは重縮合等の化学反応を起こさない高分子化合物と共に溶媒に溶解して調製してなる感光液を基板上に塗布、乾燥して固形状とすることができる。このような高分子化合物としては、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステルおよびそれらの部分加水分解物物、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルアセテート、ポリビニルフォルマール、ポリクロロプレン、ポリ塩化ビニル、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、メチルセルロース、エチルセルロース、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ- N- ビニルカルバゾール、ポリ- N- ビニルピロリドン、ポリ酢酸/アクリル酸ビニル、ポリ酢酸/メタクリル酸ビニル、エチレン/酢酸ビニル共重合体およびスチレン、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、メタクリルアミド等の共重合可能なモノマーから成る共重合体などを挙げることができる。これらは、必要に応じて2種類以上混合して用いても構わない。
【0059】また本発明の光重合性組成物を酸の存在下で分解あるいは重縮合等の化学反応を起こさない高分子化合物と共に固形状として用いる場合、高分子化合物の添加量は、通常カチオン重合可能な化合物(A)100重量部に対して、200重量部以下であることが好ましい。これ以上の割合で用いると、カチオン重合可能な化合物の拡散が制御され、感光速度に悪影響を及ぼす問題を有する。
【0060】本発明の光重合性組成物の硬化に使用する化学作用放射線の光源としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライドランプ、ヘリウム−カドミウムレーザ、アルゴンレーザ、クリプトンレーザ、ヘリウムネオンレーザ等があるが、これらに限定されるものではない。なお、化学作用放射線の波長域は使用される光開始剤によって定まる。
【0061】本発明の光重合性組成物によれば、少量の化学作用放射線の照射エネルギーによりカチオン重合用光開始剤の分解が起こり、カチオン重合を活性化させるブレンステッド酸若しくはルイス酸を発生する。その後、適当な温度(50℃〜200℃)で適当な時間(30秒以上)加熱することにより、酸増殖剤の連鎖的な分解で酸触媒の増加がねずみ算的に促進されると共に、酸触媒反応によってカチオン重合可能な化合物の重合が加速的に起こる。この結果、見かけの感光速度が促進されると推測される。また、カチオン重合用光開始剤の分解によってブレンステッド酸若しくはルイス酸の発生と同時にラジカル重合を活性化させるラジカル種を発生する化合物を用いた場合、本発明の光重合性組成物に適当量のラジカル重合性モノマーを添加することでより一層の感光速度の向上が見られるものと思われる。さらに、増感剤の添加により可視領域の化学作用放射線による重合反応も可能となる。
【0062】
【実施例】以下、具体的な実施例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明する。まず、本発明中で用いられる代表的な酸増殖剤の合成例を例示する。
【0063】(1)アセト酢酸tert−ブチルエステルをテロラヒドロフラン中水素化ナトリウムの存在下でヨウ化メチルと反応させて得られる2−メチル−3−ケトブタン酸tert−ブチルエステルを、エタノール中水素化カリウム存在下でホルマリンと反応させた。生成した2−ヒドロキシメチル−2−メチル−3−ケトブタン酸tert−ブチルエステルをジクロロメタン中トリエチルアミン存在下でp−トルエンスルホニルクロライドと反応させて、2−メチル−2−(p−トスエンスルホニルオキシ)−3−ケトブタン酸tertブチルエステル(CAG1)を得る。
【0064】(2)上記のCAG1と同様にして、p−トルエンスルホニルクロライドの代わりにメタンスルホニルクロライドを用いて、2−メチル−2−メタンスルホニルオキシ−3−ケトブタン酸tertブチルエステル(CAG2)を得る。
【0065】(3)ジケテンを酢酸ナトリウムを触媒として2−フェニル−2−プロパノールと反応させてアセト酢酸2−フェニル−2−プロピルエステルとした。これをCAG1と同様にしてメチル化およびメチロール化を行い、得られたヒドキシメチル誘導体をp−トルエンスルホニルクロライドと反応させて、2−メチル−2−(p−トルエンスルホニルオキシ)−3−ケトブタン酸−2−フェニル−2−プロピルエステル(CAG3)を得る。
【0066】(4)CAG3と同様にして、p−トルエンスルホニルクロライドの代わりにメタンスルホニルクロライドを用いて、2−メチル−2−メタンスルホニルオキシ−3−ケトブタン酸−2−フェニル−2−プロピルエステル(CAG4)を得る。
【0067】(5)1−メチルシクロヘキセンを酸化オスミウムの存在下で酸化して1−メチル−1, 2−ジヒドロキシヘキサンを得る。これをトリエチルアミンの存在下でp−トルエンスルホニルクロライドと反応させ、シス−1−メチル−1−ヒドロキシ−2−(p−トルエンスルホニルオキシ)ヘキサン(CAG5)を得る。
【0068】(6)ノルボルネンを酸化オスミウムの存在下で酸化してノルボルナンジオールを得た。これをCAG5と同様にして、p−トルエンスルホニルクロライドと反応させ、2−ヒドロキシ−3−(p−トルエンスルホニルオキシ)−エキソ−ビシクロ[2. 2. 1]ヘプタン(CAG6)を得る。
【0069】(7)1S -(−)- α- ピネンを酸化オスミウムの存在下で酸化して1S- (−)- α- ピナンジオールを得た。これをCAG5と同様にして、p−トルエンスルホニルクロライドと反応させ、2−ヒドロキシ−3−(p−トルエンスルホニルオキシ)−{[1S, 1α, 2α, 3α, 5α]−2, 6, 6−トリメチルビシクロ[3. 1. 1]ヘプタン(CAG7)を得る。
【0070】(8)2−メチル−3−ヒドロキシプロペンをトリフェニルホスフィンの存在下でtert−ブチルヒドロペルオキドで酸化して1, 2−エポキシ−2−メチル−3−ヒドロキシプロパンを得た。これをトリエチルアミンの存在下でp−トルエンスルホニルクロライドと反応させて、1, 2−エポキシ−2−メチル−3−(p−トルエンスルホニルオキシ)プロパン(CAG8)を得る。
【0071】(9)ベンゾイル酢酸エチルエステルをエチレングリコールによってケタール化してから、水素化リチウムアルミニウムで還元して3−フェニル−3, 3−エチレンジオキシプロパノールとした。これをトリエチルアミンの存在下でp−トルエンスルホニルクロライドと反応させて、1−(p−トルエンスルホニルオキシ)−3−フェニル−3, 3−エチレンジオキシプロパン(CAG9)を得る。
【0072】<実施例1>ビスフェノールA型エポキシ樹脂エピコート828(油化シェルエポキシ社製)100重量部、ジフェニル(p−フェニルチオフェニル)スルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート5重量部および2−メチル−2−(p−トスエンスルホニルオキシ)−3−ケトブタン酸tertブチルエステル5重量部を2−ブタノン50重量部に混合溶解し、ガラス基板上に約5μmの膜厚になるように塗布、乾燥した。次に100W高圧水銀灯を用いて、露光を行った後、120℃で10分間加熱処理を施した。タルクの粉末を使用し表面がタックフリーになるまでの最小露光量を求めて感度とした。8秒程度の露光で後の加熱処理によって硬化被膜が形成されたの対し、比較例としての酸増殖剤2- メチル−2−(p−トスエンスルホニルオキシ)−3−ケトブタン酸tertブチルエステルを加えない組成物では70秒の光照射を必要とした。
【0073】<実施例2−9>実施例1における2−メチル−2−(p−トスエンスルホニルオキシ)−3−ケトブタン酸tertブチルエステル(CAG1)の代わりに、2−メチル−2−メタンスルホニルオキシ−3−ケトブタン酸tertブチルエステル(CAG2)、2−メチル−2−(p−トルエンスルホニルオキシ)−3−ケトブタン酸−2−フェニル−2−プロピルエステル(CAG3)、2−メチル−2−メタンスルホニルオキシ−3−ケトブタン酸−2−フェニル−2−プロピルエステル(CAG4)、シス−1−メチル−1−ヒドロキシ−2−(p−トルエンスルホニルオキシ)ヘキサン(CAG5)、2−ヒドロキシ−3−(p−トルエンスルホニルオキシ)−エキソ−ビシクロ[2. 2. 1]ヘプタン(CAG6)、2−ヒドロキシ−3−(p−トルエンスルホニルオキシ)−{[1S, 1α, 2α, 3α,5α]−2, 6, 6−トリメチルビシクロ[3. 1. 1]ヘプタン(CAG7)、1, 2−エポキシ−2−メチル−3−(p−トルエンスルホニルオキシ)プロパン(CAG8)および1−(p−トルエンスルホニルオキシ)−3−フェニル−3, 3−エチレンジオキシプロパン(CAG9)を用いる以外は実施例1と同様にして光重合性組成物を作製し、光重合性組成物の硬化までの最小露光量を調べた。これらの結果を実施例1を含めて表1に示す。
【0074】
【表1】


【0075】<実施例10−18>実施例1〜9におけるビスフェノールA型エポキシ樹脂エピコート828(油化シェルエポキシ社製)代わりにエポキシ化合物CY−179(日本チバガイギー社製:商品名)を用いる以外は実施例1〜9と同様にして光重合性組成物を作製し、光重合性組成物の硬化までの最小露光量を調べた。これらの結果を表2に示す。
【0076】
【表2】


【0077】<実施例19−23>ビスフェノールA型エポキシ樹脂エピコート828(油化シェルエポキシ社製)代わりに、グリシジルメチルエーテル(EP1)、エチレングリシジルエーテル(EP2)、ビニロキシプロポキシベンゼン(VE1)、ビス(p−ビニロキシエトキシフェニル)エーテル(VE2)またはビニロキシエチル安息香酸エステル(VE3)を用いる以外は実施例1と同様にして光重合性組成物を作製し、光重合性組成物の硬化までの最小露光量を調べた。これらの結果を表3に示す。
【0078】
【表3】


【0079】<実施例24−28>実施例5において、ジフェニル(p−フェニルチオフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネートの代わりに、ジフェニル(p−フェニルチオフェニル)スルホニウム ヘキサフルオロホスフェート(IN1)、トリフェニルホスホニウム トリフルオロメタンスルホネート(IN2)、トリフェニルホスホニウム ヘキサフルオロアンチモネート(IN3)、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート(IN4)またはジ- tert- ブチルフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート(IN5)を用いる以外は実施例5と同様にして光重合性組成物を作製し、光重合性組成物の硬化までの最小露光量を調べた。これらの結果を表4に示す。
【0080】
【表4】


【0081】<実施例29−33>実施例27において、ラジカル重合可能なモノマーとしてトリメチロールプロパントリアクリレート(RM1)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(RM2)、アロニックスM−315 (RM3;東亜合成化学工業社製)、KAYARAD R551 (RM4;日本化薬社製)またはジエチレングリコールジアクリレート(RM5)をビスフェノールA型エポキシ樹脂エピコート828(油化シェルエポキシ社製)100重量部に対して、50重量部添加して実施例27と同様にして光重合性組成物を作製し、光重合性組成物の硬化までの最小露光量を調べた。これらの結果を表5に示す。
【0082】
【表5】


【0083】<実施例34>ビスフェノールA型エポキシ樹脂エピコート828(油化シェルエポキシ社製)100重量部、ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート5重量部、3, 3'-カルボニルビス(7−ジエチルアミノ)クマリン0. 5重量部およびシス−1−メチル−1−ヒドロキシ−2−(p−トルエンスルホニルオキシ)ヘキサン5重量部を2- ブタノン50重量部に混合溶解し、ガラス基板上に約5μmの膜厚になるように塗布、乾燥した。次に5Wアルゴンレーザを用いて、488nmの単色光で露光を行った後、120℃で10分間加熱処理を施した。タルクの粉末を使用し表面がタックフリーになるまでの最小露光量を求めて感度とした。2秒程度の露光で後の加熱処理によって硬化被膜が形成されたの対し、比較のため行った酸増殖剤2−メチル−2−(p−トスエンスルホニルオキシ)−3−ケトブタン酸tertブチルエステルを加えない組成物では50秒の光照射を必要とした。
【0084】<実施例35>エポキシ化合物CY−179(日本チバガイギー社製)100重量部、ポリ(メチル メタクリレート)100重量部、トリフェニルホスホニウム ヘキサフルオロアンチモネート5重量部、2−ヒドロキシ−3−(p−トルエンスルホニルオキシ)−エキソ−ビシクロ[2. 2. 1]ヘプタン10重量部を酢酸エチル100重量部に混合溶解し、ガラス基板上に約5μmの膜厚になるように塗布、乾燥した。次に100W高圧水銀灯を用いて露光した後、120℃で10分間加熱処理を施した。タルクの粉末を使用し表面がタックフリーになるまでの最小露光量を求めて感度とした。10秒程度の露光で後の加熱処理によって硬化被膜が形成されたの対し、比較として酸増殖剤2−メチル−2−(p−トスエンスルホニルオキシ)−3−ケトブタン酸tertブチルエステルを加えない組成物では100秒の光照射を必要とした。
【0085】
【発明の効果】本発明の光重合性組成物およびその重合方法によれば、感光速度を著しく向上させることが可能となる。またラジカル重合を組み合わせたハイブリッドな光重合性組成物とすることで、より感光速度の向上が期待される。すなわち本発明は、少量の化学作用放射線で多くの酸を増殖させて、感光速度を著しく向上した光重合性組成物を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】(A)カチオン重合可能な化合物と、(B)化学作用放射線によりカチオン重合を活性化させるブレンステッド酸若しくはルイス酸を発生するカチオン重合用光開始剤と、(C)該光開始剤より発生したブレンステッド酸或いはルイス酸を触媒として新たに酸を発生する酸増殖剤からなることを特徴とする光重合性組成物。
【請求項2】(A)カチオン重合可能な化合物と、(B)化学作用放射線によりカチオン重合を活性化させるブレンステッド酸若しくはルイス酸を発生するカチオン重合用光開始剤と、(C)該光開始剤より発生したブレンステッド酸或いはルイス酸を触媒として新たに酸を発生する酸増殖剤と、(D)ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1個以上有する重合性モノマーを含有し、かつ前記(B)カチオン重合用光開始剤が化学作用放射線によりカチオン重合を活性化させるブレンステッド酸若しくはルイス酸の発生と同時にラジカル重合を活性化させるラジカル種を発生する化合物であることを特徴とする光重合性組成物。
【請求項3】可視光領域に吸収を有し、かつ(B)化学作用放射線によりカチオン重合を活性化させるブレンステッド酸若しくはルイス酸を発生するカチオン重合用光開始剤を増感する増感色素を含有してなり、可視領域の化学作用放射線によりカチオン重合が可能であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の光重合性組成物。
【請求項4】(A)カチオン重合可能な化合物がエポキシ基を有する化合物であることを特徴とする請求項1乃至請求項3記載の光重合性組成物。
【請求項5】(A)カチオン重合可能な化合物がビニルエーテル化合物であることを特徴とする請求項1乃至請求項3記載の光重合性組成物。
【請求項6】請求項1乃至請求項5に記載の光重合性組成物に化学作用放射線を照射した後、唯一の処理工程として50℃から200℃の範囲で加熱処理をすることにより光重合性組成物を速い感光速度で重合させてなることを特徴とする重合方法。
【請求項7】請求項1乃至請求項5に記載の光重合性組成物を、酸の存在下で分解あるいは重縮合等の化学反応を起こさない高分子化合物と共に溶媒に溶解して調製してなる感光液を基板上に塗布、乾燥して固形状としたことを特徴とする光重合性組成物。