光量絞り装置用NDフィルター
【構成】光量絞り装置の絞り羽根に設けられた時に透過光にフィルタリング作用を与えるNDフィルターの濃度分布と所定関係の反射濃度分布を持った原版を作製し、この原版をベースの透過率が80%以上であって且つハレーション防止層が設けられているフィルムを用いてカメラで撮影し、現像処理してNDフィルタとして使用することを特徴とする。
【効果】解像度を高くすると共にゴーストの問題も解決することができる。
【効果】解像度を高くすると共にゴーストの問題も解決することができる。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ビデオカメラ、スチルビデオカメラ等の撮影系に使用するに適した光量絞り装置に用いられるNDフィルター、NDフィルターの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の絞り装置は、図4及び図5に示されているように、小絞り補正のため、F8〜F11程度の絞り口径を覆うようにNDフィルタ14が絞り羽根13の開口部13aの縁部に接着剤15により貼りつけまたは配置されている。従来のNDフィルター14は均一濃度フィルタを用いていた。そのため近年、撮像素子の感度が上昇するに従い、前記フィルタの濃度を濃くして光の透過量を低下させ、被写体の明るさが同一でも絞りの最小開口を大きくするようにしてきた。しかし、このようにNDフィルタの濃度が濃くなると図4に示すような開口量の大きい状態で、フィルタ14を通過した光と通過しない光の光量差が大きく異なり、解像度が劣化してしまうという欠点を生じる。この欠点を解決するためにNDフィルタの濃度を光軸中心に向かって順次透過率が大となるような構造をとることを本出願人は特願平4−77349号としてすでに提案した。
【0003】なお、図において1,2,3及び5は撮影光学系、5は光学的ローパスフィルター、6はCCD等の撮像素子、7は絞り装置の地板、15はNDフィルタ14を絞り羽根13に取付ける為の接着部を示している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】一般的にNDフィルタの作製方法としては、フィルム状をなす材料(セルロースアセテート、PET等)中に光を吸収する顔料を混ぜ、練り込むタイプのものと、前記材料に光を吸収する顔料を塗布するタイプのものがある。これらの製造方法では、濃度が均一なフィルタは作製が可能であるが、濃度が変化するタイプは作製が著しく困難である。
【0005】本発明は以上の難点に対し、光量の均一性の向上した絞り装置の提供を課題とするもので、またそれに使用される濃度変化タイプのNDフィルタ及びその製造方法の提供を課題としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】以上の課題を解決するため、光量絞り装置の絞り羽根に設けられた時に透過光にフィルタリング作用を与える濃度分布と所定関係の反射濃度分布を持った原版を作製し、この原版をベースの透過率が80%以上であって且つハレーション防止層が設けられているフィルムを用いてカメラで撮影し、現像処理してNDフィルタとして使用することを特徴とする。
【0007】
【実施例】本発明の実施例は、決められたNDフィルタの濃度分布に対し対応(濃度は反転する為に逆にする)する濃度分布が形成され、ある拡大率に引き伸ばした原版を作製し、特定の条件を満たすフィルムを用いてこれをカメラで撮影し現像する。
【0008】この撮影されたフィルムに成型加工を施し、そのままNDフィルタとして使用する。
【0009】原版は、反射濃度が変化する方向に対する直角方向が均一反射濃度となり、フィルム1コマ(有効面積29mm×41mm max)内に、所定のフィルタが多数取れるようにパターンを作製する。なお、原版の反射濃度分布は後述する図1の濃度分布の白黒が反転したものである。
【0010】NDフィルタとしての特性として、遮光する量(透過率)がフィルタ内の同じ位置で一定でなくてはならない。品質上バラツキとして平均値±15%(透過率10%なら8.5〜11.5%)以内に入れる必要がある(濃度では±0.05)。濃度Dと透過率Tの関係は、D=0.78×log101/Tである。
【0011】本実施例での写真方法では、反射率が高い白い紙を撮影すると濃度の高い部分ができ、反射率が低い黒い紙を撮影すると薄い濃度が得られる。白黒反転させた原版のパターンからフィルム上に写し出される。
【0012】この化学的な変化により濃度が決まるので、フィルム内で均一濃度を得るには、撮影時、現像時において条件設定が必要となる。例えば、撮影時には、照明に気を配る必要があり、図7の様に撮影照度を±5%以内に入れる必要がある。
【0013】さらに、カメラのレンズとの関係により撮影縮尺倍率は、1/5〜1/15が適当である。
【0014】1/15よりも小さくなると(たとえば1/24)濃度ムラが大きくなり、前記15%に入らなくなる。また、1/5よりも大きくなると原版サイズが小さくなり分解能(濃度変化の)が落ちてしまう。
【0015】現像時の液温は±0.3℃に管理する。液温とフィルム濃度は図9の様な関係がある。
【0016】次に、フィルタの特性として400nm〜650nmの波長範囲で透過率が一定であることが必要である。また、反射率が10%以上となるとゴーストの原因となり使用不可である。さらに、解像度も高い方が好ましい。最も明るい部分の濃度も薄いことが必要である(濃度変化の範囲を広く取れる)。
【0017】以上からフィルムとしては、■銀縁粒子の粒径が0.5μm以下。
■ハレーション防止層が設けられていること(図9参照)。
■分光透過特性が400nm〜650nmで±20%(平均値に対する割合)であること。
■フィルムのベースの透過率が80%以上であること。
を備えたものが必要である。
【0018】そして、特にNDフィルタとして重要なのはベースの透過率とハレーション防止層の有無である。
【0019】カメラとしては、図6に示したように平床式の複写用カメラを使用した。これは、解像度の点から選んだ。
【0020】現像機としては、複写用の自動現像機を選んだ。
【0021】次に上記原版を上記条件に合致させたフィルムを用いてカメラによって撮影された後の状態を説明する。
【0022】図1は撮影後に現像されたフィルムを示している。
【0023】図1(a)は第1例を示すもので、一定濃度の領域と、徐々に濃度を薄くした可変領域とがつながっており、図2(a)に示した切断線どおりに切断することにより、多数取りのNDフィルム(図3に拡大図を示す)を得ることができる。図において明らかなように、フィルムには略三角形のNDフィルタを互い違いに2列切断できるようにするための濃度分布が設けられている。特に重要なのはNDフィルタを多数取りする為に互い違いに切断する為の濃度分布の形成の仕方であり、中央の一定濃度の領域の上下(図において)に徐々に濃度を薄くする領域を形成した。それにより、図3の拡大図に示すように切断されたNDフィルタは下方位置(図において)だけではなく、上方位置(図において)にも濃度可変領域ができてしまうが、上方位置は絞り羽根13への接着部15としたので何ら問題が生じない。なお、図3に示したNDフィルタには接着部15の領域に絞り羽根13への取付け位置を正確にする為の指標としての白い線が形成されており(当然、原版に形成しておく)、この白い線を絞り羽根の特定位置に合わせて接着することにより、極めて正確な取付け位置を得ることができる。
【0024】図1(b)は第2例を示すもので、全て可変濃度となるようにしたもので、図2(b)のように切断することにより、多数取りのNDフィルタを得ることができる。なお、図2(b)に示したように第2例の場合もNDフィルタが互い違いに2列取れるようにフィルムへの濃度分布を設定している。又、取付け位置を正確にする為の指標としての白い線も上述第1例と同様に形成されている。
【0025】上記図1(a)、図2(a)の第1例にて形成したNDフィルタの使用上の効果について説明する。
【0026】従来の均一濃度のみのNDフィルタでは問題はなかったが、同一のNDフィルタ内で濃度変化を持っている場合には、小絞り時での実質的絞り値が各カメラごとにバラツイてしまうことが考えられる。ビデオレンズの場合、視野がある明るさ以上になると、最小絞りで固定され、それ以上絞らなくなる。これはある絞りの開口以下になると解像度が低下するため、固定させているためである。その為、NDフィルタを最も必要とする屋外での撮影の場合、最小絞り開口に制御する確率が大きくなる。上述第1例にて示したNDフィルタのように一定濃度の領域を有するものでは、最小絞り開口時に一定濃度の領域だけが絞り開口内に位置するので、各カメラごとに小絞り時での実質的絞り値がバラツイてしまうことがなくなる。
【0027】次に、図1(a),(b)、図2(a),(b)に示したNDフィルタの特性について説明する。
【0028】図10は3種のフィルタの透過率の違いを示すもので、Aは本実施例での第1例のNDフィルタを示し、Bは本実施例とは異なる一般的(例えば35mm用フィルム)なフィルムによって第1例のようなNDフィルタを作ったものを示し、Cは従来のように全て一定濃度のNDフィルタを示している。NDフィルタAは一定濃度の透過率が約5%であるが、徐々に透過率が変化していて最大透過率は80%をこえている。これはフィルムベース自体の透過率が80%をこえているためである。一方、NDフィルタBは一定濃度の透過率が同じく約5%であるが、最大透過率は40%を少し下まわる。これはフィルムベース自体の透過率が低いためである。なお、NDフィルタCは全て一定濃度(約5%)である。
【0029】図11は上記3種のNDフィルタの解像度を示すもので、図において明らかなようにFNO4.0−8.0間では透過率の差に基づき解像度に差が出てしまう。すなわち、本実施例でのNDフィルタAだけが高い解像度が得られることが理解される。なお、図11において、NDフィルタA〜Cは実験的にフィルムベースの銀塩粒子を0.2〜0.5μmとしたものである。図1111に示したNDフィルタDはNDフィルタBの透過率のものでフィルムベースの銀塩粒子を1μm〜5μmとしたものを示しており、図において明らかなようにNDフィルタBに比べて更に解像度が低下している。
【0030】次に、本実施例のフィルムでの条件であるハレーション防止層を設けた効果について説明する。
【0031】図4に示したようにビデオレンズにNDフィルタを用いた場合では、撮影光学系1〜4を通過してきた被写体光は撮像素子6に入射するが、一部は撮像素子6の面で反射される。この反射光がNDフィルタの裏面側で再反射するとゴーストとなって撮像素子6へ再入射してしまう。本実施例のようにハレーション防止層が設けられているフィルムベースを用いることにより不正な反射が極めて少なくなり、ゴーストの発生を防ぐことができる。
【0032】
【発明の効果】本発明は光量絞り装置に用いるNDフィルターを、ベースの透過率が80%以上であって且つハレーション防止層が設けられているフィルムを用い、領域によって異なる反射濃度分布が形成された原版をカメラによって撮影し、現像処理してNDフィルターとして使用することにより、領域によって透過率が異なるNDフィルターを簡易に作製することができ、又、解像度を高くすると共にゴーストの問題も解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例としてのNDフィルターとして用いる現像後のフィルムを示す図。
【図2】図1のフィルムの切断の仕方を示す図。
【図3】切断されたNDフィルターの拡大図。
【図4】一般的な光量絞り装置のレンズ内配置を示す断面図。
【図5】図4の光量絞り装置の絞り羽根を示す斜視図。
【図6】実施例での撮影方式を示す説明図。
【図7】撮影時の撮影照度の関係を示すグラフ。
【図8】フィルムのハレーション防止層を示す断面図。
【図9】液温とフィルム濃度の関係を示すグラフ。
【図10】3種のNDフィルターの透過率の変化を示すグラフ。
【図11】4種のNDフィルターの解像度を示すグラフ。
【符号の説明】
13 絞り羽根
14 NDフィルター
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ビデオカメラ、スチルビデオカメラ等の撮影系に使用するに適した光量絞り装置に用いられるNDフィルター、NDフィルターの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の絞り装置は、図4及び図5に示されているように、小絞り補正のため、F8〜F11程度の絞り口径を覆うようにNDフィルタ14が絞り羽根13の開口部13aの縁部に接着剤15により貼りつけまたは配置されている。従来のNDフィルター14は均一濃度フィルタを用いていた。そのため近年、撮像素子の感度が上昇するに従い、前記フィルタの濃度を濃くして光の透過量を低下させ、被写体の明るさが同一でも絞りの最小開口を大きくするようにしてきた。しかし、このようにNDフィルタの濃度が濃くなると図4に示すような開口量の大きい状態で、フィルタ14を通過した光と通過しない光の光量差が大きく異なり、解像度が劣化してしまうという欠点を生じる。この欠点を解決するためにNDフィルタの濃度を光軸中心に向かって順次透過率が大となるような構造をとることを本出願人は特願平4−77349号としてすでに提案した。
【0003】なお、図において1,2,3及び5は撮影光学系、5は光学的ローパスフィルター、6はCCD等の撮像素子、7は絞り装置の地板、15はNDフィルタ14を絞り羽根13に取付ける為の接着部を示している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】一般的にNDフィルタの作製方法としては、フィルム状をなす材料(セルロースアセテート、PET等)中に光を吸収する顔料を混ぜ、練り込むタイプのものと、前記材料に光を吸収する顔料を塗布するタイプのものがある。これらの製造方法では、濃度が均一なフィルタは作製が可能であるが、濃度が変化するタイプは作製が著しく困難である。
【0005】本発明は以上の難点に対し、光量の均一性の向上した絞り装置の提供を課題とするもので、またそれに使用される濃度変化タイプのNDフィルタ及びその製造方法の提供を課題としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】以上の課題を解決するため、光量絞り装置の絞り羽根に設けられた時に透過光にフィルタリング作用を与える濃度分布と所定関係の反射濃度分布を持った原版を作製し、この原版をベースの透過率が80%以上であって且つハレーション防止層が設けられているフィルムを用いてカメラで撮影し、現像処理してNDフィルタとして使用することを特徴とする。
【0007】
【実施例】本発明の実施例は、決められたNDフィルタの濃度分布に対し対応(濃度は反転する為に逆にする)する濃度分布が形成され、ある拡大率に引き伸ばした原版を作製し、特定の条件を満たすフィルムを用いてこれをカメラで撮影し現像する。
【0008】この撮影されたフィルムに成型加工を施し、そのままNDフィルタとして使用する。
【0009】原版は、反射濃度が変化する方向に対する直角方向が均一反射濃度となり、フィルム1コマ(有効面積29mm×41mm max)内に、所定のフィルタが多数取れるようにパターンを作製する。なお、原版の反射濃度分布は後述する図1の濃度分布の白黒が反転したものである。
【0010】NDフィルタとしての特性として、遮光する量(透過率)がフィルタ内の同じ位置で一定でなくてはならない。品質上バラツキとして平均値±15%(透過率10%なら8.5〜11.5%)以内に入れる必要がある(濃度では±0.05)。濃度Dと透過率Tの関係は、D=0.78×log101/Tである。
【0011】本実施例での写真方法では、反射率が高い白い紙を撮影すると濃度の高い部分ができ、反射率が低い黒い紙を撮影すると薄い濃度が得られる。白黒反転させた原版のパターンからフィルム上に写し出される。
【0012】この化学的な変化により濃度が決まるので、フィルム内で均一濃度を得るには、撮影時、現像時において条件設定が必要となる。例えば、撮影時には、照明に気を配る必要があり、図7の様に撮影照度を±5%以内に入れる必要がある。
【0013】さらに、カメラのレンズとの関係により撮影縮尺倍率は、1/5〜1/15が適当である。
【0014】1/15よりも小さくなると(たとえば1/24)濃度ムラが大きくなり、前記15%に入らなくなる。また、1/5よりも大きくなると原版サイズが小さくなり分解能(濃度変化の)が落ちてしまう。
【0015】現像時の液温は±0.3℃に管理する。液温とフィルム濃度は図9の様な関係がある。
【0016】次に、フィルタの特性として400nm〜650nmの波長範囲で透過率が一定であることが必要である。また、反射率が10%以上となるとゴーストの原因となり使用不可である。さらに、解像度も高い方が好ましい。最も明るい部分の濃度も薄いことが必要である(濃度変化の範囲を広く取れる)。
【0017】以上からフィルムとしては、
を備えたものが必要である。
【0018】そして、特にNDフィルタとして重要なのはベースの透過率とハレーション防止層の有無である。
【0019】カメラとしては、図6に示したように平床式の複写用カメラを使用した。これは、解像度の点から選んだ。
【0020】現像機としては、複写用の自動現像機を選んだ。
【0021】次に上記原版を上記条件に合致させたフィルムを用いてカメラによって撮影された後の状態を説明する。
【0022】図1は撮影後に現像されたフィルムを示している。
【0023】図1(a)は第1例を示すもので、一定濃度の領域と、徐々に濃度を薄くした可変領域とがつながっており、図2(a)に示した切断線どおりに切断することにより、多数取りのNDフィルム(図3に拡大図を示す)を得ることができる。図において明らかなように、フィルムには略三角形のNDフィルタを互い違いに2列切断できるようにするための濃度分布が設けられている。特に重要なのはNDフィルタを多数取りする為に互い違いに切断する為の濃度分布の形成の仕方であり、中央の一定濃度の領域の上下(図において)に徐々に濃度を薄くする領域を形成した。それにより、図3の拡大図に示すように切断されたNDフィルタは下方位置(図において)だけではなく、上方位置(図において)にも濃度可変領域ができてしまうが、上方位置は絞り羽根13への接着部15としたので何ら問題が生じない。なお、図3に示したNDフィルタには接着部15の領域に絞り羽根13への取付け位置を正確にする為の指標としての白い線が形成されており(当然、原版に形成しておく)、この白い線を絞り羽根の特定位置に合わせて接着することにより、極めて正確な取付け位置を得ることができる。
【0024】図1(b)は第2例を示すもので、全て可変濃度となるようにしたもので、図2(b)のように切断することにより、多数取りのNDフィルタを得ることができる。なお、図2(b)に示したように第2例の場合もNDフィルタが互い違いに2列取れるようにフィルムへの濃度分布を設定している。又、取付け位置を正確にする為の指標としての白い線も上述第1例と同様に形成されている。
【0025】上記図1(a)、図2(a)の第1例にて形成したNDフィルタの使用上の効果について説明する。
【0026】従来の均一濃度のみのNDフィルタでは問題はなかったが、同一のNDフィルタ内で濃度変化を持っている場合には、小絞り時での実質的絞り値が各カメラごとにバラツイてしまうことが考えられる。ビデオレンズの場合、視野がある明るさ以上になると、最小絞りで固定され、それ以上絞らなくなる。これはある絞りの開口以下になると解像度が低下するため、固定させているためである。その為、NDフィルタを最も必要とする屋外での撮影の場合、最小絞り開口に制御する確率が大きくなる。上述第1例にて示したNDフィルタのように一定濃度の領域を有するものでは、最小絞り開口時に一定濃度の領域だけが絞り開口内に位置するので、各カメラごとに小絞り時での実質的絞り値がバラツイてしまうことがなくなる。
【0027】次に、図1(a),(b)、図2(a),(b)に示したNDフィルタの特性について説明する。
【0028】図10は3種のフィルタの透過率の違いを示すもので、Aは本実施例での第1例のNDフィルタを示し、Bは本実施例とは異なる一般的(例えば35mm用フィルム)なフィルムによって第1例のようなNDフィルタを作ったものを示し、Cは従来のように全て一定濃度のNDフィルタを示している。NDフィルタAは一定濃度の透過率が約5%であるが、徐々に透過率が変化していて最大透過率は80%をこえている。これはフィルムベース自体の透過率が80%をこえているためである。一方、NDフィルタBは一定濃度の透過率が同じく約5%であるが、最大透過率は40%を少し下まわる。これはフィルムベース自体の透過率が低いためである。なお、NDフィルタCは全て一定濃度(約5%)である。
【0029】図11は上記3種のNDフィルタの解像度を示すもので、図において明らかなようにFNO4.0−8.0間では透過率の差に基づき解像度に差が出てしまう。すなわち、本実施例でのNDフィルタAだけが高い解像度が得られることが理解される。なお、図11において、NDフィルタA〜Cは実験的にフィルムベースの銀塩粒子を0.2〜0.5μmとしたものである。図1111に示したNDフィルタDはNDフィルタBの透過率のものでフィルムベースの銀塩粒子を1μm〜5μmとしたものを示しており、図において明らかなようにNDフィルタBに比べて更に解像度が低下している。
【0030】次に、本実施例のフィルムでの条件であるハレーション防止層を設けた効果について説明する。
【0031】図4に示したようにビデオレンズにNDフィルタを用いた場合では、撮影光学系1〜4を通過してきた被写体光は撮像素子6に入射するが、一部は撮像素子6の面で反射される。この反射光がNDフィルタの裏面側で再反射するとゴーストとなって撮像素子6へ再入射してしまう。本実施例のようにハレーション防止層が設けられているフィルムベースを用いることにより不正な反射が極めて少なくなり、ゴーストの発生を防ぐことができる。
【0032】
【発明の効果】本発明は光量絞り装置に用いるNDフィルターを、ベースの透過率が80%以上であって且つハレーション防止層が設けられているフィルムを用い、領域によって異なる反射濃度分布が形成された原版をカメラによって撮影し、現像処理してNDフィルターとして使用することにより、領域によって透過率が異なるNDフィルターを簡易に作製することができ、又、解像度を高くすると共にゴーストの問題も解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例としてのNDフィルターとして用いる現像後のフィルムを示す図。
【図2】図1のフィルムの切断の仕方を示す図。
【図3】切断されたNDフィルターの拡大図。
【図4】一般的な光量絞り装置のレンズ内配置を示す断面図。
【図5】図4の光量絞り装置の絞り羽根を示す斜視図。
【図6】実施例での撮影方式を示す説明図。
【図7】撮影時の撮影照度の関係を示すグラフ。
【図8】フィルムのハレーション防止層を示す断面図。
【図9】液温とフィルム濃度の関係を示すグラフ。
【図10】3種のNDフィルターの透過率の変化を示すグラフ。
【図11】4種のNDフィルターの解像度を示すグラフ。
【符号の説明】
13 絞り羽根
14 NDフィルター
【特許請求の範囲】
【請求項1】 光量絞り装置での絞り羽根で形成される開口内に位置し、領域によって異なる透過率となるように設けられたNDフィルターの製造方法において、ベースの透過率が80%以上であって且つハレーション防止層が設けられているフィルムを用い、前記異なる透過率と所定の関係の反射濃度分布を持った原版を作成し、該原版を該フィルムを用いてカメラで撮影し、現像処理してNDフィルターとして使用することを特徴とする光量絞り装置用NDフィルターの製造方法。
【請求項2】 上記フィルムは銀塩粒子が0.5μm以下であることを特徴とする請求項1記載の光量絞り装置用NDフィルターの製造方法。
【請求項3】 上記フイルムは透過分光特性に関し、波長400nm〜650nmの範囲で透過率のバラツキが最大と最小で割合にして20%以内であることを特徴とする請求項1又は2記載の光量絞り装置用NDフィルターの製造方法。
【請求項4】 上記フィルムには複数のNDフィルターの撮影を同時に行い、現像処理後に切断することにより多数個取りしたことを特徴とする請求項1,2又は3記載の光量絞り装置用NDフィルターの製造方法。
【請求項5】 上記原版の反射濃度は一定濃度の領域と、該一定濃度から徐々に濃度を低くした連続可変の領域と、を一方向につながるようにしたことを特徴とする請求項1,2,3又は4記載の光量絞り装置用NDフィルターの製造方法。
【請求項6】 上記フィルムには上記NDフィルター状に切断した際での上記絞り羽根への取付け位置を表わすマークを該NDフィルター上に形成したことを特徴とする請求項1,2,3,4,又は5記載の光量絞り装置用NDフィルターの製造方法。
【請求項7】 絞り羽根で形成される開口内に位置し、領域によって異なる透過率となるように設けられたNDフィルターを用いた光量絞り装置において、ベースの透過率が80%以上であって且つハレーション防止層が設けられているフィルムを用い、前記異なる透過率と所定の関係の反射濃度分布を持った原版を該フィルムを用いてカメラで撮影し、現像処理して形成されたことを特徴とするNDフィルターを用いた光量絞り装置。
【請求項8】 上記フィルムは銀塩粒子が0.5μm以下であることを特徴とする請求項7記載のNDフィルターを用いた光量絞り装置。
【請求項9】 上記フィルムは透過分光特性に関し、波長400nm〜650nmの範囲で透過率のバラツキが最大と最小で割合にして20%以内であることを特徴とする請求項7又は8記載のNDフィルターを用いた光量絞り装置。
【請求項10】 上記NDフィルターは一定の透過率領域と、徐々に透過率を大きくした連続可変領域と、を一方向につながるように形成したことを特徴とする請求項7,8又は9記載のNDフィルターを用いた光量絞り装置。
【請求項11】 上記NDフィルターに上記絞り羽根への取付け位置を表わすマークを形成したことを特徴とする請求項7,8,9又は10記載のNDフィルターを用いた光量絞り装置。
【請求項1】 光量絞り装置での絞り羽根で形成される開口内に位置し、領域によって異なる透過率となるように設けられたNDフィルターの製造方法において、ベースの透過率が80%以上であって且つハレーション防止層が設けられているフィルムを用い、前記異なる透過率と所定の関係の反射濃度分布を持った原版を作成し、該原版を該フィルムを用いてカメラで撮影し、現像処理してNDフィルターとして使用することを特徴とする光量絞り装置用NDフィルターの製造方法。
【請求項2】 上記フィルムは銀塩粒子が0.5μm以下であることを特徴とする請求項1記載の光量絞り装置用NDフィルターの製造方法。
【請求項3】 上記フイルムは透過分光特性に関し、波長400nm〜650nmの範囲で透過率のバラツキが最大と最小で割合にして20%以内であることを特徴とする請求項1又は2記載の光量絞り装置用NDフィルターの製造方法。
【請求項4】 上記フィルムには複数のNDフィルターの撮影を同時に行い、現像処理後に切断することにより多数個取りしたことを特徴とする請求項1,2又は3記載の光量絞り装置用NDフィルターの製造方法。
【請求項5】 上記原版の反射濃度は一定濃度の領域と、該一定濃度から徐々に濃度を低くした連続可変の領域と、を一方向につながるようにしたことを特徴とする請求項1,2,3又は4記載の光量絞り装置用NDフィルターの製造方法。
【請求項6】 上記フィルムには上記NDフィルター状に切断した際での上記絞り羽根への取付け位置を表わすマークを該NDフィルター上に形成したことを特徴とする請求項1,2,3,4,又は5記載の光量絞り装置用NDフィルターの製造方法。
【請求項7】 絞り羽根で形成される開口内に位置し、領域によって異なる透過率となるように設けられたNDフィルターを用いた光量絞り装置において、ベースの透過率が80%以上であって且つハレーション防止層が設けられているフィルムを用い、前記異なる透過率と所定の関係の反射濃度分布を持った原版を該フィルムを用いてカメラで撮影し、現像処理して形成されたことを特徴とするNDフィルターを用いた光量絞り装置。
【請求項8】 上記フィルムは銀塩粒子が0.5μm以下であることを特徴とする請求項7記載のNDフィルターを用いた光量絞り装置。
【請求項9】 上記フィルムは透過分光特性に関し、波長400nm〜650nmの範囲で透過率のバラツキが最大と最小で割合にして20%以内であることを特徴とする請求項7又は8記載のNDフィルターを用いた光量絞り装置。
【請求項10】 上記NDフィルターは一定の透過率領域と、徐々に透過率を大きくした連続可変領域と、を一方向につながるように形成したことを特徴とする請求項7,8又は9記載のNDフィルターを用いた光量絞り装置。
【請求項11】 上記NDフィルターに上記絞り羽根への取付け位置を表わすマークを形成したことを特徴とする請求項7,8,9又は10記載のNDフィルターを用いた光量絞り装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開平6−95208
【公開日】平成6年(1994)4月8日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−248030
【出願日】平成4年(1992)9月17日
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【公開日】平成6年(1994)4月8日
【国際特許分類】
【出願日】平成4年(1992)9月17日
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
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