説明

光量調整装置

【課題】超薄型で、高効率な応答性に優れた光量調整装置を提供する。
【解決手段】第1の光透過部を有する第1の基板と、第2の光透過部を有し、前記第1の光透過部と前記第2の光透過部とが対向するように、前記第1の基板に対向して配置される第2の基板と、前記第1の基板と前記第2の基板との間に挟まれた不透明液体とを有し、前記第2の基板は圧電性を有し、前記第2の基板の前記第1の基板に対向する側の表面に弾性表面波を励振させるための電極を有し、前記不透明液体が前記第1の基板の前記第1の光透過部と前記第2の基板の前記第2の光透過部との間に流入することを抑制するための流入抑制手段を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射光量を調整することを目的とした主にカメラ等に使用される光量調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カメラ付き携帯電話の急激な普及に伴って、機器の小型化、薄型化が強く要望されている。また、機器に搭載されるカメラ機能についても、カメラの付加価値の面から、絞り機能、AF(オートフォーカス)機能、光学ズーム機能、手振れ防止機能等の高機能化を求められている。しかし機器の小型化と高機能化は、おおよそトレードオフの関係にあり、これまでは携帯電話というモバイル機器の性質上、小型化が優先され、カメラ機能に関しては低機能に留まっていた。
【0003】
上記高機能化の1つである絞り機能については、従来、主に機械的な絞り装置が用いられてきた。しかし、機械的絞りはそれを作動させるための機械的機構が必要であり、カメラの大型化、高コスト化、及び設計の自由度の制約等の原因となっていた。
【0004】
従来技術としては、電磁アクチュエータによって絞り羽根等を移動させ、光量を調整する方法がよく知られている。しかしながら、電磁アクチュエータによる絞り装置の小型化は限界に達しつつある。これらの課題を解決するために、最近、電磁アクチュエータを用いない絞り装置が多数提案されている。
【0005】
一例として、特許文献1においては、圧電体基板上に弾性表面波を励振し、圧電体基板に加圧接触された移動体を、摩擦力により移動させることにより、絞り羽根を機械的に作動させる方法が開示されている。この方法は、主な機械的機構が、電極が蒸着された圧電基板と、圧電基板に加圧接触された移動体だけであるため、これまでの電磁アクチュエータに比べて、小型化、薄型化が図れる。
【0006】
また、絞り装置の小型化を目的とした別の従来技術としては、上記のように絞り羽根に機械的機構を使用せず、遮光流体を吸引排出して、絞り装置とする方法がある。一例として特許文献2にその技術が開示されており、その要部を示す図7(a)、(b)を用いて説明する。
【0007】
図7(a)、(b)において、3、4はレンズ、5は密閉室、6は遮光流体吸排管、9は遮光流体、10は吸排ポンプである。図7(a)において、吸排ポンプ10が遮光流体9を排出することで、レンズ3と4の間の密閉室5に遮光流体9が充填され光が遮断される。また、図7(b)において、吸排ポンプ10が遮光流体9を吸収することで、レンズ3と4の間の密閉室5内の遮光流体9が吸排ポンプ10側に後退し、光を取り込むことができる。このように、絞り羽根に機械的機構を使用しないので、絞り装置の小型化が図れる。
【特許文献1】特開2001−255570号公報
【特許文献2】特開平4−56934号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記従来の技術では次のような課題があった。先ず弾性表面波が励振されている圧電基板に加圧接触されている移動体を、摩擦力により移動させる方法では、圧電基板の表面粗さ等の影響のない弾性表面波を励振するためには、比較的大きな電力を電極に入力する必要があるため、全体的な効率に大きな問題点がある。また、摩擦を介して間接的に絞り羽根を作動させているため、磨耗による信頼性の問題、さらには絞り速度の動作不安定等の問題もある。
【0009】
次に遮光流体をポンプで吸排する方法では、絞り羽根等の機械的機構は削減できても、ポンプ及びポンプを駆動させる機器は必要とするので、絞り装置の搭載される機器の大幅な小型化は図れない。また、ポンプによって、遮光流体を移動させるため、応答性に問題があると思われる。
【0010】
本発明の目的は、上記した従来の課題を解決し、超薄型で、高効率な、応答性に優れた光量調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の光量調整装置は、第1の光透過部を有する第1の基板と、第2の光透過部を有し、第1の光透過部と第2の光透過部とが対向するように、第1の基板に対向して配置される第2の基板と、第1の基板と第2の基板との間に挟まれた不透明液体とを有し、第2の基板は圧電性を有し、第2の基板の第1の基板に対向する側の表面に弾性表面波を励振させるための電極を有し、不透明液体が第1の基板の第1の光透過部と第2の基板の第2の光透過部との間に流入することを抑制するための流入抑制手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電極に高周波電圧を印加し弾性表面波を励振することで、不透明液体を基板間で移動することが可能となり、超薄型な光量調整装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の光量調整装置を、好ましい実施の形態により、図面を参照して、詳細に説明する。
【0014】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1を示す光量調整装置の上面図である。
【0015】
図1において、圧電性を有する基板1と基板2(図示せず)との間に、不透明液体3が封入されている。光路5は、不透明液体3が存在しない場合に、外部より入射した光が透過する領域を示している。基板1と基板2のお互いに対向する側の表面には、光路5の領域内に、不透明液体3に対して撥水性を有する薄膜6が配置されている。ここで、基板1と基板2は少なくとも光路5の内側において透明性を有する。また薄膜6も透明性を有する。不透明液体3、及び、基板1と基板2との間隔は、不透明液体3の表面張力により、外部から何らかの作用が働かない限り基板1及び2内で広がらず一定の状態を保持できるように設定する。なお、好ましい基板1と基板2との間隔は、100μm以下である。また、不透明液体3としては、水銀等の遮光性に優れた材料が用いられる。
【0016】
圧電性を有する基板1と基板2の、不透明液体3と接する側の表面上には、光路5の周辺に、複数の平行な直線状の電極からなる電極群4a、4b、4c、4dが配置されている。電極群4a、4b、4c、4dの個々の電極は、電極の列の1本おきに接地し、その他の電極には、所定の周波数、振幅および位相を有する交流電圧を印加する。これにより、圧電性を有する基板1と基板2の表面に弾性表面波が励振される。
【0017】
なお、電極群4a、4b、4c、4dには、周波数が1〜100MHzで同位相となる交流電圧を印加することが望ましい。
【0018】
また、電極群4a、4b、4c、4dは、それぞれの電極群の個々の電極の配列方向中央部から端部へ向かうにつれて、電極交差幅が徐々に狭くなるように構成されている。なお、電極交差幅とは、個々の電極について隣接する電極との対向する部分の長さを意味する。
【0019】
このような構成とすることで、基板1と基板2の表面上に電極群4a、4b、4c、4dを効率良く配置することができ、さらに、不透明液体3をスムーズに光路5の中心方向に移動することが可能となる。
【0020】
次に、具体的な動作原理について、図2(a)、(b)を用いて説明する。
【0021】
図2(a)、(b)は、図1のA−A’における光量調整装置の断面図である。まず、図2(a)においては、電極群4a、4b、4c、4dには交流電圧が印加されておらず、圧電性を有する基板1と基板2の表面に弾性表面波が励振されていない。そのため、不透明液体3に発生する力は、表面張力のみであり、撥水性を有する薄膜6を形成した領域には存在することができず、光路5は全開放の状態となる。
【0022】
次に、図2(b)においては、電極群4a、4b、4c、4dの個々の電極には、先に説明したように、一本おきに、接地または所定の周波数、位相を有する交流電圧が印加され、圧電性を有する基板1と基板2の表面に弾性表面波が励振されている。この時、不透明液体3は、表面張力に加え、弾性表面波による圧力を受けることになり、薄膜6による撥水効果とつりあう状態まで光路5内部に移動し、光路5を透過する光量を抑制した状態となる。すなわち、電極群4a、4b、4c、4dの個々の電極に印加する交流電圧の周波数、振幅および位相等を任意に調整することで、光路5から取り込める光量を自在に調整することが可能となる。
【0023】
なお、電極群4a、4b、4c、4b個々の電極に印加する交流電圧の波形については、弾性表面波を高効率に励振する上で正弦波波形が好ましいが、他の三角波波形、方形波波形及びのこぎり波形においても光量調整装置としての機能を果たすことが可能である。
【0024】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2を示す光量調整装置について、図3を用いて説明する。
【0025】
図3は、本実施の形態を示す光量調整装置の断面図である。図3において、基板1と基板2の光路5の領域には、光路5の中央部に行くほど基板間隔が狭くなるように、凸部7が形成されている。
【0026】
このような構成をすることで、光路5の領域における表面張力の大小を任意に設定することができ、実施の形態1における薄膜6と同様の効果を得ることが可能となる。
【0027】
なお、凸部7は、それが光学的なレンズの役割を果たすようにすれば、部品点数を削減でき低コスト化が実現できる。
【0028】
また、凸部7は、基板1又は基板2の少なくとも一方にのみ設けても同様の効果が得られる。
【0029】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3を示す光量調整装置について、図4を用いて説明する。
【0030】
図4は、本実施の形態を示す光量調整装置の断面図である。図4の基板1と基板2において、基板1および基板2の内側表面の少なくとも光路5を含む部分に、基板1および基板2とは異なる材料で形成された基板8を配置している。このように構成することで、基板1および基板2の材料に関係なく、薄膜6を配置しやすいように基板8の材料を選定することが可能となる。さらに、光学的なレンズの役割を果たすための高精度の加工を施し易い材料を選定することも可能となる。
【0031】
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4を示す光量調整装置について、図5を用いて説明する。
【0032】
図5は、本実施の形態を示す光量調整装置の上面図である。図5における構成要素は、実施の形態1を示す図1と同じである。
【0033】
図5において、基板1または基板2の圧電性の最大となる方向をX軸とし、X軸と直交し圧電性の最小となる方向をY軸とする。このとき、X軸およびY軸に対し、それぞれ所定角度βだけずれた軸をX(β)軸とY(β)軸とした場合、X(β)軸に平行に電極群4a、4bを、Y(β)軸に平行に電極群4c、4dを配置している。なお、βとしては、30〜60度くらいが好ましい。
【0034】
このように構成することで、基板1または基板2を、配向方向が一方向に揃った圧電体基板としても、電極群4a、4b、4c、4dに所定の交流電圧を印加し弾性表面波を励振することで、バランス良く光路5の中心方向に不透明液体3を移動することができ、製造上のバラツキを抑えた低コストで安定な光量調整装置が可能となる。
【0035】
なお、βを45度とすることで、上記効果を最大限活かすことができる。
【0036】
(実施の形態5)
次に、本発明の実施の形態5を示す光量調整装置について、図6を用いて説明する。
【0037】
図6は、本発明の実施の形態5を示す光量調整装置の上面図である。図6において、基板1a、1b、1c、1dは、それぞれ圧電性を有する基板であり、圧電性の最大となる方向が矢印Pa、Pb、Pc、Pdの方向である。そして、矢印Pa、Pb、Pc、Pdの方向に対して、個々の電極が直交するように電極群4a、4b、4c、4dをそれぞれ配置している。
【0038】
このような構成とすることで、実施の形態4に比較して、より高効率な光量調整装置が実現できる。
【0039】
なお、本発明は、以上の実施の形態で述べたカメラの光量調整装置に限定されるものではなく、光量を調整する機器全てに適用される。
【0040】
また、以上説明した実施の形態では、基板1と基板2の両方が圧電性を有する基板とし、それぞれに弾性表面波を発生させるための平行電極を設けたものについて説明したが、基板1、基板2の少なくとも一方は圧電性を有しない基板であっても良い。その場合、圧電性を有しない基板としては、特に限定するものでなく、無機ガラス、透明樹脂等如何なるものでも良い。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、以上の実施の形態で述べたようにカメラの光量調整装置に適用される。また、カメラに限定されることなく光量を調整する機器全てに適用される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施の形態1を示す光量調整装置の上面図
【図2】図1のA−A’における断面図
【図3】本発明の実施の形態2を示す光量調整装置の断面図
【図4】本発明の実施の形態3を示す光量調整装置の断面図
【図5】本発明の実施の形態4を示す光量調整装置の上面図
【図6】本発明の実施の形態5を示す光量調整装置の上面図
【図7】従来の光量調整装置の説明図
【符号の説明】
【0043】
1,1a,1b,1c,1d,2 圧電性を有する基板
3 不透明液体
4a,4b,4c,4d 電極
5 光路
6 薄膜
7 凸部
8 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光透過部を有する第1の基板と、
第2の光透過部を有し、前記第1の光透過部と前記第2の光透過部とが対向するように、前記第1の基板に対向して配置される第2の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間に挟まれた不透明液体とを有し、
前記第2の基板は圧電性を有し、前記第2の基板の前記第1の基板に対向する側の表面に弾性表面波を励振させるための電極を有し、
前記不透明液体が前記第1の基板の前記第1の光透過部と前記第2の基板の前記第2の光透過部との間に流入することを抑制するための流入抑制手段を有することを特徴とする光量調整装置。
【請求項2】
前記流入抑制手段として、前記第1の光透過部の前記第2の基板側の表面、または、前記第2の光透過部の前記第1の基板側の表面が、前記不透明液体に対して撥水性を有する請求項1に記載の光量調整装置。
【請求項3】
前記流入抑制手段として、前記第1の光透過部と前記第2の光透過部との間隔が、前記光透過部の中央部にいくにつれて狭くなっている請求項1に記載の光量調整装置。
【請求項4】
前記第1または第2の基板は、前記光透過部を構成する材料が、その他の部分と異なる材料で構成されている請求項1に記載の光量調整装置。
【請求項5】
前記電極は、複数の互いに平行に配置される線状電極からなる複数の電極群からなり、前記線状電極は前記基板の周辺部から前記第1および第2の光透過部の中央に向かう方向に配列している請求項1に記載の光量調整装置。
【請求項6】
前記電極は、互いに隣接する前記線状電極の対向する幅が、前記電極群における前記線状電極の配列方向中央部から端部へ向かうにつれて、徐々に狭くなる請求項5に記載の光量調整装置。
【請求項7】
前記第2の基板は、所定の方向に圧電性を有し、前記所定の方向は、前記線状電極の方向とβ(30°<β<60°)の角度で交差する請求項5に記載の光量調整装置。
【請求項8】
前記第2の基板は、圧電性の方向が互いに異なる複数の部分からなり、前記複数の部分のそれぞれの圧電性の方向は、前記複数の部分に配置される前記線状電極の方向と平行である請求項5に記載の光量調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−91049(P2006−91049A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−272838(P2004−272838)
【出願日】平成16年9月21日(2004.9.21)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】