説明

光開始剤、光重合性組成物及び光硬化方法

【課題】高感度で黄変が少ない新規な水溶性の光開始剤を提供することにあり、さらに、色汚染が少なく、色再現性に優れた光重合性組成物及び光硬化方法を提供することにある。
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする光開始剤。
【化1】


(式中、Xは酸素原子または硫黄原子を表し、Yは2価の連結基を表し、Zはカルボン酸またはその塩、スルホン酸またはその塩を表し、R、R5、R6はそれぞれアルキル基またはアルコキシル基を表し、R7はアリール基、ヒドロキシル基、アルキル基またはアルコシル基を表す。nは2〜4の自然数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な光開始剤、それを用いた光重合性組成物及び光硬化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光硬化反応を利用するUV硬化システムは、溶媒を使用しないクリーンな硬化方法として、また、極めて短時間に硬化反応が終了するために高速な硬化方法として注目を浴びている。そのために、高精細を要求されるレジストの製造、高速化を要求される印刷等、いろいろな分野に使われている。特に、UV印刷、インクジェット印刷では、高速化、乾燥なしの特徴を生かすために溶媒を使用せず、光重合/架橋性のモノマー/オリゴマー/ポリマーと光開始剤を基本材料とする硬化システムが実用化されている。
【0003】
また、UV光源も従来の高圧水銀灯、低圧水銀灯の他に、波長365nmの発光ダイオード(LED)が実用されつつあり、大きな発展を遂げようとしている。
【0004】
しかしながら、近年の環境意識の高まりとともに、このUV印刷インク、インクジェット印刷でも、水を溶媒に用いて感作性等が懸念される光重合/架橋性のモノマー/オリゴマーの使用量を減らした水性の光硬化システムの必要性が高まっており、さまざまな提案がされている。しかしながら、ほとんどの光開始剤は油溶性であり、市販されている水溶性の光開始剤としては、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−ヒドロキシエトキシ)フェニルプロパン−1−オンが挙げられるが、水中にわずか0.5質量%しか溶解性せず、さらに高圧水銀灯のメイン発光波長であり、LEDの発光波長でもある365nmの光吸収も少ないために、充分な光感度が得られていない。
【0005】
その対策として、水溶性の光開始剤が提案されている。特開平6−228218号公報には、ヒドロキシエトキシ基を2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−オンまたはベンゾフェノンに導入した光開始剤、特開2003−192712号公報にはポリアルキレンオキシド基をα位に置換したアルキルフェノン誘導体の光開始剤、特開2001−525887号公報にはハロメチル−1,3,5−トリアジン陰イオンの光開始剤、特開2000−273110号公報にはシクロアルカノール構造を有する水溶性の光開始剤、特開2000−186242号公報には2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−オンのエチレンオキシド付加物の光開始剤が開示されている。
【0006】
しかしながら、これらの光開始剤も、365nmの光吸収が少ないために、いずれの光源を用いても硬化が不十分である。
【0007】
波長365nmの光吸収が高い水溶性の高い光開始剤として、特許文献1にアシル水溶性ホスフィン化合物が記載されているが、ホスフィン系化合物の多くは、変異原性試験で陽性等の安全性の問題があること、波長420nmまで光吸収があるために蛍光灯下でも硬化し、光重合性組成物として取り扱いが難しいために、広く用いることができなかった。
【0008】
一方、UV印刷インク、インクジェットインクで光開始剤を用いることによる不都合としては、UV露光により分解した光開始剤の一部が黄色に変色し、クリアーインクにおいては黄色く色づき、シアンインクにおいては緑色に変色してしまい、色再現性に問題を及ぼすことが挙げられ、光開始剤の使用量を制限する大きな要因になっていた。この黄変に関しては、特許文献2に、フェニル基にさまざまな置換基を置換すれば、黄変が減少することが提案されている。しかし、これらの光開始剤は、油溶性であり、水溶性の光開始剤としては用いることができなかった。
【特許文献1】特開2005−307199号公報
【特許文献2】国際公開第05/100292号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、高感度で黄変が少ない新規な水溶性の光開始剤を提供することにあり、さらに、色汚染が少なく、色再現性に優れた光重合性組成物及び光硬化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記課題は、以下の構成により達成される。
【0011】
1.下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする光開始剤。
【0012】
【化1】

【0013】
(式中、Xは酸素原子または硫黄原子を表し、Yは2価の連結基を表し、Zはカルボン酸またはその塩、スルホン酸またはその塩を表し、R、R5、R6はそれぞれアルキル基またはアルコキシル基を表し、R7はアリール基、ヒドロキシル基、アルキル基またはアルコシル基を表す。nは2〜4の自然数を表す。)
2.前記一般式(1)が、下記一般式(2)または(3)で表されることを特徴とする前記1に記載の光開始剤。
【0014】
【化2】

【0015】
(式中、Xは酸素原子または硫黄原子を表し、Yは2価の連結基を表し、Zはカルボン酸またはその塩、スルホン酸またはその塩を表し、R、R5、R6はそれぞれアルキル基またはアルコキシル基を表し、R11は水素原子、アルキル基またはアルキレンオキシド基を表す。nは2〜4の自然数を表す。)
【0016】
【化3】

【0017】
(式中、Xは酸素原子または硫黄原子を表し、Yは2価の連結基を表し、Zはカルボン酸またはその塩、スルホン酸またはその塩を表し、Rはアルキル基またはアルコキシル基を表し、R12、R13はアルキル基を表し、Arはアリール基を表す。nは2〜4の自然数を表す。)
3.前記1に記載の一般式(1)で表される化合物と、水及び活性エネルギー線を照射することにより重合または架橋するエチレン性不飽和基を有する化合物を含有することを特徴とする光重合性組成物。
【0018】
4.前記3に記載の光重合性組成物を、320〜380nmに主波長を有する発光ダイオードを用いて硬化することを特徴とする光硬化方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、高感度で黄変が少ない新規な水溶性の光開始剤、さらに、色汚染が少なく、色再現性に優れた光重合性組成物及び光硬化方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、フェニル基に複数のアルキル基を導入し、カルボン酸、スルホン酸またはそれらの塩をペンダントした新規なアルキルフェノン系光開始剤、または新規なベンジルケタール系光開始剤により、高感度で黄変が少ない新規な水溶性の光開始剤が得られることを見出し、本発明に至った。
【0021】
また、この光開始剤と、水、活性エネルギー線の照射により重合または架橋する重合性/架橋性組成物を含有する光重合性組成物、及びこの光重合性組成物を用いた光硬化方法により、色汚染が少なく、色再現性に優れた光重合性組成物及び光硬化方法が得られることを見出した。
【0022】
このような感度がアップする理由としては、本発明の光開始剤はフェニル基に置換された複数のアルキル基同士の立体障害のために、分子の自由回転が妨げられ、水中でのUV吸収の長波側の裾が延びているためだと考えている。また、黄変が少なくなる理由としては、フェニル基に置換された複数のアルキル基のため、フェニル基に無置換のものと異なり、色素が形成しにくい分解経路をとっていると考えている。
【0023】
また、本発明の新規な光開始剤を用いた水性の光重合性組成物は、安全であり、UV光照射により、十分な光硬化感度が獲られる。さらに、無置換の従来の光開始剤に比べて、光照射後の黄変が少ない特徴があるため、水系UV印刷インクとしてまた、365nmに発光強度を有する発光ダイオード(LED)を用いることにより、最も高い効果を得ることができる。
【0024】
〔一般式(1)で表される化合物〕
一般式(1)において、Xは酸素原子または硫黄原子を表し、Yは2価の連結基を表す。2価の連結基としては、具体的には、アルキレン基(例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、オクチレン基)、アリレン基(例えばフェニレン基、トリエン基)、アルキレンオキシ基(例えばメチレンオキシ基、アルキレンオキシド基、プロピレンオキシ基、ブチレンオキシ基、ポリ(エチレンオキシ)基)、アルキレンチオ基(例えばメチレンチオ、エチレンチオ、プロピレンチオ、ブチレンチオ)が挙げられる。好ましくは、C1〜C4までのアルキレン基、アルキレンオキシド基である。
【0025】
Zはカルボン酸またはその塩、スルホン酸またはその塩を表す。塩とは、カルボン酸、スルホン酸の塩として作用するカチオン種をいい、例えば、1価のカチオン(例えば、ナトリウムカチオン、リチウムカチオン、カルシウムカチオン、アンモニウムカチオン、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエタノールアンモニウムカチオン、ピリジニウムカチオン)が挙げられる。
【0026】
R、R5、R6はアルキル基またはアルコキシル基を表す。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル、プロピル基、ブチル基が挙げられる。アルコキシル基としては、例えば、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基が挙げられる。またR5、R6は結合して環を形成してもよい。形成してもよい環の例としては、−(CH24−、−OCH2CH2O−等を含む環が挙げられる。
【0027】
7はアリール基、ヒドロキシル基、アルキル基またはアルコシル基を表す。アリール基としては、無置換または置換したフェニル基が挙げられる。置換基としては、アルキル基、アルコキシル基、アルキルチオ基が挙げられる。アルキル基、アルコシル基としては、Rで表される前記アルキル基、アルコシル基と同義である。
【0028】
nは2〜4の自然数を表す。
【0029】
〔一般式(2)で表される化合物〕
一般式(2)において、Xは酸素原子または硫黄原子を表し、Yは2価の連結基を表し、Zはカルボン酸またはその塩、スルホン酸またはその塩を表し、R、R5、R6はそれぞれアルキル基またはアルコキシル基を表す。
【0030】
Y、Z、R、R5、R6は、一般式(1)におけるY、Z、R、R5、R6と同義である。
【0031】
11は水素原子、アルキル基またはアルキレンオキシド基を表す。アルキル基は、一般式(1)におけるアルキル基と同義である。アルキレンオキシド基のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基が挙げられる。
【0032】
nは2〜4の自然数を表す。
【0033】
〔一般式(3)で表される化合物〕
一般式(3)において、Xは酸素原子または硫黄原子を表し、Yは2価の連結基を表し、Zはカルボン酸またはその塩、スルホン酸またはその塩を表し、Rはアルキル基またはアルコキシル基を表す。
【0034】
Y、Z、Rは、一般式(1)におけるY、Z、Rと同義である。
【0035】
12、R13はアルキル基を表し、アルキル基は、一般式(1)におけるアルキル基と同義である。
【0036】
Arはアリール基を表す。アリール基としては、一般式(2)におけるアリール基と同義である。また、下記一般式(4)で表される基であってもよい。
【0037】
【化4】

【0038】
式中、X、Y、Z、R、nは、一般式(1)におけるX、Y、Z、R、nと同義である。
【0039】
以下に、一般式(1)〜(3)で表される具体的な化合物例を挙げるが、本発明はそれに限定されない。
【0040】
【化5】

【0041】
【化6】

【0042】
【化7】

【0043】
これらの化合物の合成法は実施例に示す。
【0044】
《エチレン性不飽和基を有する化合物》
本発明の光重合性組成物は、本発明の前記一般式(1)で表される化合物と、水及び活性エネルギー線を照射することにより重合または架橋するエチレン性不飽和基を有する化合物を含有することを特徴とする。
【0045】
本発明に係る光開始剤とともに用いるエチレン性不飽和基を有する化合物は、水溶性が好ましいが、水溶性でなくても少量ならば水性の重合性組成物に溶解するため、化合物としては特に制限されない。
【0046】
エチレン性不飽和基を有する化合物とは、化合物中に1個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物をいう。具体的には、スチレン基、アクリル基、メタクリル基、アリル基、クロトン酸基、マレイン酸基、イタコン酸基を少なくとも1つ以上分子中に有する化合物をいう。好ましくはアクリル基、メタクリル基を1つ以上分子中に有する化合物である。
【0047】
スチレン基を有する化合物例をしては、スチレン、スチレンスルホン酸が挙げられる。
【0048】
アクリル基、メタクリル基(以後、2つあわせて(メタ)アクリル基を記する)を有する化合物例としては、(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンモノまたはジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのモノ、ジまたはトリ(メタ)アクリレート等の水酸基を有するポリオールポリ(メタ)アクリレート;エチレングリコールのモノまたはジ(メタ)アクリレート、及びプロピレングリコールのモノまたはジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールのモノまたはジ(メタ)アクリレート;ヘキサンジオール、ノナンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、トリシクロデカンジメチロール及びジペンタエリスリトール等のポリオールのエチレンオキサイド付加物のポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0049】
(メタ)アクリロニトリル並びにビニルアセテート、カチオン性不飽和化合物としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びジエチルアミノ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの塩酸塩及び硫酸塩等の3級塩が挙げられる。
【0050】
その他、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドの塩酸塩及び硫酸塩等の3級塩、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの塩化メチル付加物等のロゲン化アルキル付加物及び塩化ベンジル付加物等のハロゲン化アリール付加物等の4級塩;ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドの塩化メチル付加物等のハロゲン化アルキル付加物及び塩化ベンジル付加物等のハロゲン化アリール付加物等の4級塩等が挙げられる。
【0051】
エチレン性不飽和基を有する化合物は、オリゴマーまたは重合体でもよい。イオン性基としては、カルボキシル基及びスルホン酸等の酸性基の塩、並びにアルキレンオキサイド基、水酸基等が挙げられる。
【0052】
より具体的には、(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体であるカルボキシル基含有共重合体に、グリシジル(メタ)アクリレートを付加させて得られる重合体及びその塩、脂肪酸及びアルキレングリコールモノグリシジルエーテルのエステルに(メタ)アクリル酸を付加させたもの、末端にエチレン性二重結合を持ちアルコール部分にポリアルキレンオキシドを用いたポリウレタン(メタ)アクリレートまたはポリエステル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレートを連結基で介して結合されたポリビニルアルコールポリマー等が挙げられる。
【0053】
ポリウレタン(メタ)アクリレートの例としては、多価アルコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオールや、エチレングリコールアジペート、ブタンジオールアジペート、ブタンジオールフタレート及びヘキサンジオールフタレート等のポリエステルジオールが挙げられる。
【0054】
多価イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート及び水添ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0055】
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0056】
ポリエステル(メタ)アクリレートとしては、ポリエステル型の多価アルコールと(メタ)アクリル酸との反応物を挙げることができる。
【0057】
ポリエステル型の多価アルコールとしては、例えば、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びトリメリット酸等の多塩基酸、並びにその無水物等が挙げられる。アルコール成分としては、エチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパンのエチレンオキサイド、またはプロピレンオキサイド付加物のトリオール、グリセリンのエチレンオキサイド、またはプロピレンオキサイド付加物のトリオール、及びペンタエリスリトールのエチレンオキサイド、またはプロピレンオキサイド付加物のテトラオール等を反応させたポリエステルアルコール等が挙げられる。
【0058】
エチレン性不飽和基を有する化合物は1種でもよいが、2種以上を併用して使用することもできる。
【0059】
(メタ)アクリレートを連結基を介して結合されたポリビニルアルコールポリマーの例としては、特開2000−181062号公報、特開2004−189841号公報記載のように、メタ(アクリル基)を末端に他の末端にアルデヒド基を持つ化合物をポリビニルアルコールの水酸基にアセタール化して結合したポリマーが挙げられる。
【0060】
本発明の水溶性の光開始剤の配合割合としては、目的に応じて適宜設定すればよいが、光重合性組成物に対して0.05〜12質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。本発明の水溶性の光開始剤は水溶性であるため、水系の活性エネルギー線硬化型組成物に好ましく適用できる。
【0061】
エチレン性不飽和基を有する化合物は、重合性組成物量100質量部に対し、乾燥後光照射して硬化させる場合と乾燥前に光照射して硬化させる場合等目的に応じて異なるが、1.0〜60質量部まで広く用いることができる。
【0062】
《併用できる光開始剤》
本発明においては、本発明に係る光開始剤の他に、必要に応じて他の光開始剤や光増感剤を併用してもよい。
【0063】
併用してもよい他の光開始剤としては下記が挙げられる。
【0064】
1)ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ビス−N,N−ジメチルアミノベンゾフェノン、ビス−N,N−ジエチルアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4′−ジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、及びそれらの塩、
2)チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、クロロチオキサントン、イソプロポキシクロロチオキサントン等のチオキサントン類、及びそれらの塩、
3)エチルアントラキノン、ベンズアントラキノン、アミノアントラキノン、クロロアントラキノン等のアントラキノン類
4)アセトフェノン類、
5)ベンゾインメチルエーテル等のベンゾインエーテル類、
6)2,4,6−トリハロメチルトリアジン類、
7)1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール2量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール2量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール2量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール2量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2,4,5−トリアリールイミダゾール2量体等のイミダゾール類、
8)ベンジルジメチルケタール、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、フェナントレンキノン、9,10−フェナンスレンキノン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン類、
9)9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9′−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、
10)ビスアシルフォスフィンオキサイド、ビスフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、
11)4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、及びこれらのエチレンオキシド付加物。
【0065】
また、インクに加える形態は必要に応じて溶解物、または分散物として加えることができる。
【0066】
《光増感剤》
本発明の光重合性組成物には光増感剤を用いることが好ましい。光増感剤の例としては、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0067】
《光重合性組成物》
本発明の光重合性組成物は、前記一般式(1)で表される化合物と、水及び活性エネルギー線を照射することにより重合または架橋する前記エチレン性不飽和基を有する化合物を含有することを特徴とする。
【0068】
本発明の光重合性組成物では、水の他に必要があれば有機溶媒を用いてもよい。有機溶媒は水溶性の溶媒が好ましいが、光重合性組成物中で溶解していれば、特に水溶性でない溶媒も少量用いることができる。
【0069】
光重合性組成物中の水及び有機溶媒の使用量は、光重合性組成物100質量部当たり20〜99質量部であり、好ましくは50〜98質量部である。
【0070】
本発明の光重合性組成物のpHは、光開始剤の、エチレン性不飽和基を有する化合物に対するpH安定性により適宜決めることができるが、pH5.0〜10.0までの間ならば、特に不都合なく用いることができる。
【0071】
《用途》
本発明の光重合性組成物は、塗料等のコーティング剤、接着剤及びレジスト等、UV硬化性のインク、UV硬化性のUV印刷インクといった種々の用途に使用することができ、それに応じて顔料、染料、消泡剤、レベリング剤、無機フィラー、有機フィラー及び光安定剤等を配合することもできる。
【0072】
《光硬化方法》
本発明の光重合性組成物の使用方法としては、従来の光硬化型組成物の使用方法に従えばよい。具体的には、光重合性組成物をバーコーター、ワイヤーバー、インクジェットヘッド等により基材上に塗布印刷した後、紫外線を照射し乾燥するか、基材に光重合性組成物を塗布、加熱により水分を蒸発させた後に、紫外線を照射する方法が挙げられる。
【0073】
本発明の光開始剤は紫外線250〜400nm付近まで吸収があるため、その領域の紫外線を照射できる光源はすべて用いることができるが、本発明の光開始剤の紫外線吸収は他の光開始剤と比べると特に320〜400nmまで吸収の裾野が延びているという特徴があり、その領域の紫外線を照射する光源を用いることが好ましい。具体的に光重合性組成物を硬化させる光源としては、高圧水銀灯、低圧水銀灯、発光ダイオード(LED)、電子線、太陽光等を用いることができるが、実用的には365nm光の出力が強い高圧水銀灯、365nmに発光スペクトルを有する発光ダイオードが好ましく、特に365nmに発光強度を有する発光ダイオードを好ましく用いることができる。
【実施例】
【0074】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0075】
《合成例》
下記スキームにより合成した。
【0076】
【化8】

【0077】
〔例示化合物S−1の合成〕
(S−1A)から(S−1B)の合成
ジクロロメタン20mlに塩化アルミニウム4.40g(33mmol)を加え、10℃以下になるように冷却した。そこに、2,6−ジメチルフェノキシアセト酢酸エチルエステル(S−1A)3.12g(20mmol)を滴下後、イソブチロリルクロリド1.75g(22mmol)を滴下した。滴下終了後、液温を室温に戻し、2時間攪拌した。反応終了後、反応液を氷水300g中に加え、酢酸エチルで抽出、濃縮により、黄色オイル5.4gを得た。カラムクロマトグラフィーで目的物を単離精製し、無色透明オイルの(S−1B)を2.5g(収率61%)得た。
【0078】
(S−1B)から(S−1C)の合成
100ml用三口フラスコに、(S−1B)2.2g(8mmol)、ジクロロメタン20mlを加え、水冷により液温を20〜25℃にした。臭素1.3g(8mmol)をゆっくり滴下すると、臭化水素の発泡とともに、反応が始まった。反応終了後、水で洗浄後、ジクロロメタンを濃縮し、無色透明オイルの(S−1C)を2.6g(収率92%)得た。
【0079】
(S−1C)から例示化合物S−1の合成
(S−1C)2.5g(7mmol)をエタノール20mlに溶解し、水酸化カリウム1.0g(17mmol)、水2mlに溶解した溶液を加え、1時間還流した。反応終了後、水50mlを加え、濃塩酸で酸性にした後、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル相を濃縮して、例示化合物S−1を1.7g(収率93%)得た。
【0080】
得られた例示化合物S−1は、核磁気共鳴スペクトルで構造を確認した。
【0081】
NMR(CDCl3) δ7.6(s,2H)、δ4.5(s,2H)、δ2.5(s,6H)、δ1.6(s,6H)
〔例示化合物S−3の合成〕
例示化合物S−1の合成において、(S−1A)から(S−1B)の合成で用いた、2,6−ジメチルフェノキシアセト酢酸エチルエステル(S−1A)の代わりに、3,5−ジメチルフェノキシアセト酢酸エチルエステル(S−1A)を用いる他は、同様に反応させ、例示化合物S−3を得た。得られた例示化合物S−3は、核磁気共鳴スペクトルで構造を確認した。
【0082】
〔例示化合物S−10の合成〕
下記スキームにより合成した。
【0083】
【化9】

【0084】
例示化合物S−1の合成において、(S−1A)から(S−1B)の合成で用いたイソブチロリルクロリドの代わりに、シクロヘキシルアセチルクロリドを用いる他は、同様に反応させ、例示化合物S−10を得た。得られた例示化合物S−10は、核磁気共鳴スペクトルで構造を確認した。
【0085】
〔例示化合物S−13の合成〕
下記スキームにより合成した。
【0086】
【化10】

【0087】
(S−13A)から(S−13B)の合成
ジクロロメタン20mlに塩化アルミニウム7.3g(55mmol)を加え、10℃以下になるように冷却した。そこに、2,6−キシレノール3.0g(25mmol)をジクロロメタン10mlに溶解した溶液を滴下後、オキザリルクロリド1.6g(13mmol)を滴下した。直ちに赤色になり、液温を室温に戻し、塩化水素ガスの発生が止むまで攪拌する反応終了後、反応液を氷水300g中に加え、酢酸エチルで抽出、濃縮により、黄色オイル5.4gを得た。カラムクロマトグラフィーで目的物を単離精製し、淡黄色結晶として(S−13B)を2.5g(収率67%)得た。
【0088】
(S−13B)から(S−13C)の合成
(S−13B)1.4g(4.6mmol)、クロロ酢酸メチル1.10g(10mmol)、炭酸カリウム1.6g(12mmol)、アセトン30mlを混合し、10時間還流した。冷却後、水に空け、析出した黄色結晶をろ過により採取し、(S−13C)を1.9g(収率94%)得た。
【0089】
(S−13C)から(S−13D)の合成
(S−13C)4.42g(10mmol)、オルトギ酸トリメチル10.6g(100mol)、メタノール3.2g(100mmol)、トルエン50mlを加え、還流中に、トリフルオロスルホン酸0.3g(2mmol)を加え、2時間還流を続けた。冷却後、酢酸エチルを加えた後、炭酸水素ナトリウムの水溶液で洗浄後濃縮し、クロマトグラフィーで単離精製し、(S−13D)を白い粉末として、1.9g(収率39%)得た。
【0090】
(S−13D)から例示化合物S−13の合成
(S−13D)4.9g(10mmol)をメタノール30mlに溶解し、水酸化ナトリウム0.84g(21mmol)の水溶液を加えた。直ちに溶液が黄色に変化するので、還流10分行った後に、冷却、濃縮した。エタノールを加えて、結晶化させた後に、ろ過により取り出し、黄色粉末の例示化合物S−13を3.4g(収率67%)得た。
【0091】
得られた例示化合物S−13は、核磁気共鳴スペクトルで構造を確認した。
【0092】
NMR(D2O) δ7.6(s,2H)、δ7.1(s,2H)、δ4.1(s,4H)、δ3.0(s,6H),δ2,2(s,6H)、δ2,1(s,6H)
〔例示化合物S−15の合成〕
下記スキームにより合成した。
【0093】
【化11】

【0094】
(S−15A)から(S−15B)の合成
ジクロロメタン20mlに塩化アルミニウム6.7g(50mmol)を加え、10℃以下になるように冷却した。そこに、2,6−キシレノール2.4g(20mmol)をジクロロメタン10mlに溶解した溶液を滴下後、ベンゾイルフォルミルクロリド3.4g(20mmol)を滴下した。液温を室温に戻し2時間攪拌した。透明液を得るので、反応終了後、反応液を氷水300g中に加え、酢酸エチルで抽出、濃縮後、カラムクロマトグラフィーで目的物を単離精製し、無色結晶の(S−15A)を2.9g(収率58%)得た。
【0095】
(S−15B)から例示化合物S−15までの合成
(S−15B)以下は、(S−13B)以降の合成と同様に行い、例示化合物S−15を淡黄色結晶として得た。得られた例示化合物S−15は、核磁気共鳴スペクトルで構造を確認した。
【0096】
その他の化合物も同様にして合成できる。
【0097】
実施例1(UVクリアーインクの例)
《インクの調製》
〔インク1−1の調製〕
A400(新中村化学製) 18部
TO−1343(東亞合成製、アクリロイル基を2個以上有する水溶性ポリエステル系アクリルオリゴマー) 7部
ジョンクリル537J(ジョンソンポリマー製、固形分46%) 10部
光開始剤:例示化合物S−1 2部
ジエチレングリコール 20部
以上に、水酸化ナトリウム溶液または塩酸でpHを8.2に調整した後、イオン交換水を加えて100部とし、超音波分散を行った後、0.8μmのメンブランフィルターでろ過し、インク1−1を得た。
【0098】
〔インク1−2〜1−15の調製〕
インク1−1の調製において、光開始剤を表1記載の化合物に代えて、インク1−2〜1−15を調製した。
【0099】
【化12】

【0100】
《インクの評価》
作製したインクについて、下記の方法で評価した。
【0101】
(硬化性)
インクをアート紙上にワイヤーバーでウエット膜厚50μmで塗布し、365nmに発光強度を有するLEDランプ(日亜化学工業製)で10mJ/cm2の照度で照射し、照射後の状態を目視で観察し、下記基準で評価した。
【0102】
○:流動性がない
△:一部に流動性がある
×:流動性がある
(黄変)
インクをアート紙上にワイヤーバーでウエット膜厚50μmで塗布し、365nmに発光強度を有するLEDランプ(日亜化学工業製)で1000mJ/cm2の照度で照射し、照射前後の状態を目視で観察し、下記基準で評価した。
【0103】
○:黄変が認められない
△:わずかに黄色を呈するが、許容範囲である
×:明らかに黄変している
(保存性)
インク20mlを50mlビーカーに入れ、50cm上部より100Wの蛍光灯を24時間照射し、照射後の状態を目視で観察し、下記基準で評価した。
【0104】
○:インクに変化がない
△:表面の一部がゲル化している
×:不溶物がある
評価の結果を表1に示す。
【0105】
【表1】

【0106】
表1より、本発明の光開始剤を用いたインクでは、365nmに発光強度を有するLEDでの硬化性が高いとともに、黄変も少なく、さらに室内蛍光灯下での保存性に優れていることが分かる。
【0107】
実施例2(UV印刷インクの例)
《インクの調製》
(シアン顔料分散液の調製)
以下の各添加剤を混合し、0.5mmのジルコニアビーズを体積率で50%充填したサンドグラインダーを用いて分散し、イオン交換水で希釈してシアン顔料の含有量が10%のシアン顔料分散液を調製した。このシアン顔料分散液に含まれるシアン顔料粒子の平均粒径は123nmであった。なお、粒径測定はマルバーン製ゼータサイザ1000HSにより行った。
【0108】
C.I.Pigment Blue 15:3 15部
高分子分散剤(スチレン/アクリル酸/ブチルアクリレート共重合体、Tg65℃、数平均分子量7000) 4部
グリセリン 18部
これにイオン交換水を加えて100部とする。
【0109】
〔インク2−1〜2−15の調製〕
シアン顔料分散液 30部
A400(新中村化学製) 20部
TO−1343(東亞合成製、アクリロイル基を2個以上有する水溶性ポリエステル系アクリルオリゴマー) 5部
ジョンクリル537J(ジョンソンポリマー製、固形分46%) 8部
光開始剤:表2記載 2部
ジエチレングリコール 20部
これに、水酸化ナトリウム溶液または塩酸でpHを8.2に調整した後、イオン交換水を加えて100部とし、超音波分散を行った後、0.8μmのメンブランフィルターでろ過し、インク2−1〜2−15を得た。
【0110】
《インクの評価》
作製したインクについて、下記の方法で評価した。
【0111】
(硬化性)
インクをアート紙上にワイヤーバーでウエット膜厚10μmで塗布し、365nmに発光強度を有するLEDランプ(日亜化学工業製)で115mJ/cm2の照度で照射し、照射後の状態を目視で観察し、下記基準で評価した。
【0112】
○:流動性がない
△:一部に流動性がある
×:流動性がある
(黄変)
インクをアート紙上にワイヤーバーでウエット膜厚10μmで塗布し、365nmに発光強度を有するLEDランプ(日亜化学工業製)で1200mJ/cm2の照度で照射し、照射前後の状態を目視で観察し、下記基準で評価した。
【0113】
○:黄変が認められない
△:わずかに黄色を呈するが、許容範囲である
×:明らかに黄変している
(保存性)
インク20mlを50mlビーカーに入れ、50cm上部より100Wの蛍光灯を24時間照射し、照射後の状態を目視で観察し、下記基準で評価した。
【0114】
○:インクに変化がない
△:表面の一部がゲル化している
×:不溶物がある
評価の結果を表2に示す。
【0115】
【表2】

【0116】
表2より、本発明の光開始剤を用いたインクは、365nmに発光強度を有するLED、高圧水銀灯での硬化に優れるとともに、黄変が少なく、室内蛍光灯下での保存性に優れていることが分かる。
【0117】
実施例3(インクジェットUVインクの例)
《インク3−1の調製》
実施例で用いたシアン顔料分散液 30部
アクリル基含有ポリビニルアルコール(重合度500、変性率3%、濃度10%)
30部
光開始剤(表3参照) 1部
エチレングリコール 15部
2−ピロリドン 5部
オルフィンE1010(日信化学製) 0.4部
水酸化ナトリウム溶液または塩酸でpHを8.2に調整した後、純水を加えて100部とし、超音波分散を行った後、0.8μmのメンブランフィルターでろ過しインクを得た。
【0118】
〔インク3−2〜3−15の調製〕
上記インク3−1と同様にして、表3記載の光開始剤を用いてインク3−2〜3−15を調製した。
【0119】
《インクの評価》
LEDを搭載したUVインクジェットプリンターで、アート紙上にベタ画像を形成し、365nmに発光強度を有するLEDランプ(日亜化学工業製)で115mJ/cm2の照度になるようにUV光を露光し、下記のようにして黄変の評価、実施例2と同様にして365nmに発光強度を有するLEDでの硬化性及び蛍光灯下でのインク保存性の評価を行った。
【0120】
(黄変)
作製したインクをアート紙上にワイヤーバーでウエット膜厚10μmで塗布し、365nmに発光強度を有するLEDランプ(日亜化学工業製)で1200mJ/cm2の照度で照射し、照射前後の状態を目視で観察し、下記基準で評価した。
【0121】
○:黄変が認められない
△:わずかに黄色を呈するが、許容範囲である
×:明らかに黄変している
評価の結果を表3に示す。
【0122】
【表3】

【0123】
表3より、本発明の光開始剤を用いたUV硬化型インクは、インクジェットインクとして用いても、365nmに発光強度を有するLEDでの硬化性に優れるとともに、黄変の少ない画像を与え、さらに室内蛍光灯下でのインク保存性に優れていることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする光開始剤。
【化1】

(式中、Xは酸素原子または硫黄原子を表し、Yは2価の連結基を表し、Zはカルボン酸またはその塩、スルホン酸またはその塩を表し、R、R5、R6はそれぞれアルキル基またはアルコキシル基を表し、R7はアリール基、ヒドロキシル基、アルキル基またはアルコシル基を表す。nは2〜4の自然数を表す。)
【請求項2】
前記一般式(1)が、下記一般式(2)または(3)で表されることを特徴とする請求項1に記載の光開始剤。
【化2】

(式中、Xは酸素原子または硫黄原子を表し、Yは2価の連結基を表し、Zはカルボン酸またはその塩、スルホン酸またはその塩を表し、R、R5、R6はそれぞれアルキル基またはアルコキシル基を表し、R11は水素原子、アルキル基またはアルキレンオキシド基を表す。nは2〜4の自然数を表す。)
【化3】

(式中、Xは酸素原子または硫黄原子を表し、Yは2価の連結基を表し、Zはカルボン酸またはその塩、スルホン酸またはその塩を表し、Rはアルキル基またはアルコキシル基を表し、R12、R13はアルキル基を表し、Arはアリール基を表す。nは2〜4の自然数を表す。)
【請求項3】
請求項1に記載の一般式(1)で表される化合物と、水及び活性エネルギー線を照射することにより重合または架橋するエチレン性不飽和基を有する化合物を含有することを特徴とする光重合性組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の光重合性組成物を、320〜380nmに主波長を有する発光ダイオードを用いて硬化することを特徴とする光硬化方法。

【公開番号】特開2009−138150(P2009−138150A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−318209(P2007−318209)
【出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】