説明

光電変換装置

【課題】窓層における光吸収損失の少ない光電変換装置を提供する。
【解決手段】第1の電極と、第1の電極上に形成された第1の半導体層と、第1の半導体層上に形成された第2の半導体層と、第2の半導体層上に形成された第3の半導体層と、第3の半導体層上に形成された第2の電極と、を有し、第1の半導体層は、有機化合物および無機化合物で形成された透光性半導体層であり、第2の半導体層および第3の半導体層は、有機化合物で形成された半導体層とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機材料を含む半導体を用いた光電変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光エネルギーを電気エネルギーに変換する光電変換装置としては、単結晶や多結晶などの結晶系シリコン太陽電池、非晶質シリコン太陽電池、およびCIGS(Cu(In,Ga)Se)などを用いた化合物半導体太陽電池が知られている。これらの太陽電池は、広く普及しつつあるが、コスト面などに多くの課題を残しており、低コストで製造できる太陽電池が望まれている。その一つとして、有機半導体を用いた太陽電池が考案されている。
【0003】
有機半導体太陽電池としては、色素増感型太陽電池のほか、薄膜型太陽電池が知られている。薄膜型太陽電池には、例えばp型の半導体特性を示すフタロシアニン(HPc)、n型の半導体特性を示すべリレン顔料(Me−PTC)および両者の共蒸着層を用いたpin接合構造を有するものがある(非特許文献1参照)。薄膜型太陽電池は、色素増感型太陽電池に用いられるような電解質は不要であるため、生産性や長期信頼性を制御しやすい利点を有している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】M.Hiramoto ,H.Fujiwara ,M.Yokoyama,”Three−layered organic solar cell with a photoactive interlayer of codeposited pigments”,Appl.Phys.Lett.,58,1062−1064(1991).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、有機材料を用いた薄膜型太陽電池は、シリコン系や他の化合物半導体系の太陽電池より変換効率が低いことが課題となっている。
【0006】
薄膜型太陽電池の変換効率が向上しない理由の一つとして、窓層における光吸収損失がある。窓層においても光吸収により励起子は出現するが、有機半導体におけるその拡散距離は非常に短く、接合に到達するまでに失活しやすい。つまり、窓層で吸収された光は、実質的に利用されないため、窓層は透光性の高い材料で形成することが好ましい。
【0007】
また、窓層に用いられる従来の有機半導体は抵抗が高いため、膜厚を薄くしなければならなかった。そのため、パーティクルなどが原因で表裏電極間がショートしやすいことが問題となっていた。
【0008】
したがって、本発明の一態様は、窓層における光吸収損失の少ない光電変換装置を提供することを目的の一つとする。また、上下電極間のショートが起きにくい光電変換装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書で開示する本発明の一態様は、窓層として有機化合物および無機化合物で形成されたp型透光性半導体層を有する光電変換装置に関する。
【0010】
本明細書で開示する本発明の一態様は、第1の電極と、第1の電極上に形成された第1の半導体層と、第1の半導体層上に形成された第2の半導体層と、第2の半導体層上に形成された第3の半導体層と、第3の半導体層上に形成された第2の電極と、を有し、第1の半導体層は、有機化合物および無機化合物を含む透光性半導体層であり、第2の半導体層および第3の半導体層は、有機化合物を含む半導体層であることを特徴とする光電変換装置である。
【0011】
なお、本明細書等における「第1」、「第2」などの序数詞は、構成要素の混同を避けるために付すものであり、順序や数を限定するものではないことを付記する。
【0012】
上記、第1の半導体層の導電型はp型、第2の半導体層の導電型はi型、第3の半導体層の導電型はn型とすることができる。
【0013】
本明細書で開示する本発明の他の一態様は、第1の電極と、第1の電極上に形成された第1の半導体層と、第1の半導体層上に形成された第2の半導体層と、第2の半導体層上に形成された第3の半導体層と、第3の半導体層上に形成された第4の半導体層と、第4の半導体層上に形成された第2の電極と、を有し、第1の半導体層は、有機化合物および無機化合物を含む透光性半導体層であり、第2の半導体層、第3の半導体層、および第4の半導体層は、有機化合物を含む半導体層であることを特徴とする光電変換装置。
である。
【0014】
上記、第1の半導体層および第2の半導体層の導電型はp型、第3の半導体層の導電型はi型、第4の半導体層の導電型はn型とすることができる。
【0015】
また、上記第1の半導体層を形成する有機化合物は、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物、ジベンゾフラン骨格もしくはジベンゾチオフェン骨格を含む複素環化合物のいずれかを用いることができる。
【0016】
また、上記第1の半導体層を形成する無機化合物は、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウム、酸化チタンのいずれかを用いることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様を用いることにより、窓層における光吸収損失を少なくすることができ、変換効率の高い光電変換装置を提供することができる。また、上下電極間のショートが起きにくい光電変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一態様における光電変換装置を説明する断面図。
【図2】本発明の一態様における光電変換装置を説明する断面図。
【図3】従来の窓層材料と本発明の一態様における窓層材料の透過率を比較する図。
【図4】本発明の一態様における光電変換装置を説明する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略することがある。
【0020】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様における光電変換装置について説明する。
【0021】
なお、本明細書において、n型半導体とは、電子供与体としての特性を有する半導体であり、p型半導体とは、電子受容体としての特性を有する半導体である。また、該半導体は、両者ともに有機材料を含んで構成されるものとする。
【0022】
図1(A)は、本発明の一態様における光電変換装置の断面図の一例である。該光電変換装置は、透光性を有する基板100上に、第1の電極110、第1の半導体層131、第2の半導体層132、第3の半導体層133、および第2の電極120を有して構成される。透光性を有する基板100には、例えばガラス基板を用いることができる。
【0023】
なお、本実施の形態においては、第1の電極110に透光性導電膜を用い、基板100側を受光面とする例を説明するが、第2の電極120に透光性導電膜を用いれば、第2の電極120側を受光面とすることができる。また、第1の電極110および第2の電極120の両方に透光性導電膜を用いれば、両面を受光面とすることができる。なお、第2の電極120側のみを受光面とする場合は、基板100に透光性はなくてもよい。
【0024】
また、図示した構成に限らず、第1の半導体層131と第3の半導体層133を入れ替えた構造としてもよい。また、図2に示すように、第1の電極110と第1の半導体層131との間に第1のバッファ層141、および第2の電極120と第3の半導体層133との間にバッファ層142を設けてもよい。該バッファ層は、半導体層と電極との間のコンタクト特性を改善する効果があり、導電性または半導体特性を有する酸化亜鉛、酸化ニッケル、酸化モリブデンなどの金属酸化物や、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(略称:PEDOT/PSS)などの導電性高分子を用いることができる。なお、第1のバッファ層141、または第2のバッファ層142のどちらか一方が設けられている構成であってもよい。また、第1のバッファ層141、および第2のバッファ層142は異なる材料であってもよい。
【0025】
また、図1(B)では、第1の電極110の表面に凹凸加工を施した例を示している。第1の半導体層131、第2の半導体層132、第3の半導体層133、および第2の電極120は、図示したように第1の電極110の表面凹凸を反映した形状となる。凹凸加工された面では入射光が多重反射し、光電変換領域内には光が斜めに進行することから光路長が増大する。また、裏面反射光が表面で全反射する、所謂光閉じ込め効果を起こさせることもできる。
【0026】
なお、上記透光性導電膜には、例えば、インジウム錫酸化物、珪素を含むインジウム錫酸化物、亜鉛を含む酸化インジウム、酸化亜鉛、ガリウムを含む酸化亜鉛、アルミニウムを含む酸化亜鉛、酸化錫、フッ素を含む酸化錫、アンチモンを含む酸化錫、またはグラフェン等を用いることができる。また、透光性導電膜は単層に限らず、異なる膜の積層でもよい。
【0027】
第1の半導体層131には、p型の導電型を有する透光性半導体層を用いることができる。また、本発明の一態様における透光性半導体層は、無機化合物と有機化合物の複合材料である。
【0028】
該無機化合物としては、バンドギャップが2eV以上、好ましくは3eV以上である遷移金属酸化物を用いることができる。特に元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物であることが好ましい。
【0029】
例えば、該無機化合物としては、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウム、酸化チタンなどを用いることができる。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
【0030】
また、上記有機化合物としては、バンドギャップが2eV以上、好ましくは3eV以上である材料を用いることが好ましい。
【0031】
また、該有機化合物としては、正孔輸送性が高いことが好ましい。具体的には、10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。
【0032】
例えば、該有機化合物としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)、ジベンゾフラン骨格もしくはジベンゾチオフェン骨格を含む複素環化合物など、種々の化合物を用いることができる。
【0033】
上述した無機化合物および有機化合物を用いることにより、透光性の高い複合材料を形成することができる。
【0034】
また、上述の遷移金属酸化物は電子受容性を有し、正孔輸送性の高い有機化合物との複合材料はキャリア密度が高く、p型の半導体特性を示す。また、該複合材料は、可視光域から赤外域の広い波長範囲に渡って透過率が高い特性を有している。また、該複合材料は、屈折率がインジウム錫酸化物などの透光性導電膜と近く、膜厚を適切に調整することによって、反射防止膜として作用させることができる。
【0035】
また、該複合材料は、共蒸着を用いて形成することができる。また塗布法、またはゾルゲル法などを用いて形成することもできる。有機化合物に対する無機化合物のモル比を大きくすると、電荷移動帯の吸光度が増大する、即ちより多くの分子が励起状態になる傾向にあるが、電荷輸送性は有機化合物と無機化合物の組み合わせにも依存するので、モル比は適宜決めるのが最良である。該複合材料の厚さは、1nm〜50nmにすることが好ましい。
【0036】
従来の有機半導体を用いた光電変換装置では、例えば透光性が不十分なフタロシアニンを窓層としていたため、窓層における光吸収損失が発生していたが、本発明の一態様における透光性を有する該複合材料を窓層に用いることにより、窓層での光吸収損失が低減し、光吸収領域において効率良く光電変換を行うことできるようになる。
【0037】
図3には、従来の窓層の一例である亜鉛フタロシアニン(ZnPc)と、本発明の一態様である無機化合物と有機化合物の複合材料として、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)および酸化モリブデンの複合材料(混合比 CBP:MoOx=1:1)、4,4’−ビス{N−[4−ジ(m−トリル)アミノ]フェニル−N−フェニルアミノ}ビフェニル(略称:DNTPD)および酸化モリブデンの複合材料(混合比 DNTPD:MoOx=1:2)、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル(略称:NPD)および酸化モリブデンの複合材料(混合比 NPB:MoOx=1:2)との透過率の比較結果を示す。本発明の一態様である無機化合物と有機化合物の複合材料は、従来の窓層の一例である亜鉛フタロシアニンに比べて透過率は非常に高く、窓層における光吸収損失を低減できることを示唆している。また、広い波長範囲で透過率が高いため、膜厚を厚く形成することができ、横方向の抵抗の低減および上下電極などによる縦方向のショートを防止することができる。また、該複合材料を窓層として用いる場合は、半導体層とのコンタクト抵抗が低いため、図2に例示した窓層と接するバッファ層は省くことができる。
【0038】
第3の半導体層133には、n型の導電型を有する半導体層を用いることができる。第3の半導体層133の厚さは10nm〜50nmが好ましく、共蒸着法、塗布法、ゾルゲル法などを適宜用いて形成することができる。第3の半導体層133は、電子輸送性の有機化合物であることが好ましく、さらに好ましくは芳香環を含むキレート配位子を有するキレート金属錯体、またはフェナントロリン骨格を有する有機化合物、またはオキサジアゾール骨格を有する有機化合物や、ペリレン誘導体、ナフタレン誘導体、キノン類、メチルビオロゲン、フラーレン等が挙げられる。具体的には、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq3)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq3)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]−キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(略称:BAlq)、ビス[2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンズオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX)2)、ビス[2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ)2)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、2,2’,2’’−(1,3,5−ベンゼントリイル)−トリス(1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、3−(4−ビフェニリル)−4−(4−エチルフェニル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:p−EtTAZ)、フェニルC61酪酸メチルエステル(略称:PCBM)、ナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物(略称:NTCDA)などが挙げられるが、これらに限定されることはない。また、上述した化合物の中でも、ペリレン誘導体、ナフタレン誘導体、キノン類、メチルビオロゲン、フラーレン等は、電子キャリアを発生しやすく、第3の半導体層133として好適な化合物群である。
【0039】
第2の半導体層132には、i型の導電型を有する半導体層を用いることができる。第2の半導体層132は、上述したn型の導電型を有する有機半導体材料と、p型の導電型を有する有機半導体材料とを共蒸着することによって得ることができる。第3の半導体層133の厚さは1nm〜1000nmとすることが好ましい。
【0040】
代表的なp型の有機半導体材料としては、フタロシアニン(略称:HPc)、銅フタロシアニン(略称:CuPc)、亜鉛フタロシアニン(略称:ZnPc)、錫フタロシアニン(略称:SnPc)バナジルフタロシアニン(略称:VOPc)、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル(略称:NPD)、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニル−アミノ]−トリフェニルアミン(m−TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、1,3,5−トリス[N,N−ジ(m−トリル)アミノ]ベンゼン(略称:m−MTDAB)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)、4,4’−ビス{N−[4−ジ(m−トリル)アミノ]フェニル−N−フェニルアミノ}ビフェニル(略称:DNTPD)、4,4’,4’’−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(略称:TCTA)、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(略称:PEDOT/PSS)、ポリ−3−ヘキシルチオフェン(略称:P3HT)、ポリ(N−ドデシル−2,5,−ビス(2’−チエニル)ピロール−2,1,3−ベンゾチアジアゾール)(略称:PTPTB)、ポリ[2,1,3−ベンゾチアジアゾール−4,7−ジイル[4,4−ビス(2−エチルヘキシル)−4H−シクロペンタ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェン−2,6−ジイル]](略称:PCPTBT)、ポリ(2−メトキシ−5−(3’,7’−ジメチルオクチルオキシ)−1,4−フェニレン−ビニレン)(略称:MDMO−PPV)、パーフルオロオクタン酸のアンモニウム塩(略称:APFO)、ポリチエノチオフェン−ベンゾチオフェン(略称:PTB1)などが挙げられるが、これらに限定されることはない。また、上述した化合物の中でも、NPD、TDATA、MTDATA、m−MTDAB、TPD、NPB、DNTPD、TCTAなどに代表される芳香族アミン化合物は、正孔キャリアを発生しやすく、p型の有機半導体材料として好適な化合物群である。
【0041】
上述した第1の半導体層131、第2の半導体層132、第3の半導体層133により、pin接合を形成することができる。また、n型の導電型を有する半導体層と、p型の導電型を有する半導体層との混合によって得られるi型の半導体層である第3の半導体層133は、光吸収層として光電変換に寄与する。
【0042】
第2の電極120は、銀、アルミニウム、銅などの低抵抗金属を用いることができ、スパッタ法や真空蒸着法などで形成することができる。または、スクリーン印刷法を用いて、銀ペーストや、銅ペーストなどの導電性樹脂で形成しても良い。また、前述したように透光性導電膜を用いることもできる。
【0043】
なお、図4に示すように、窓層であるp型半導体層を2層とする構成としてもよい。図4に示す光電変換装置は、透光性を有する基板200上に、第1の電極210、第1の半導体層231、第2の半導体層232、第3の半導体層233、第4の半導体層234、および第2の電極220を有して構成される。
【0044】
基板200、第1の電極210、第1の半導体層231、第2の電極220のそれぞれは、図1構成の説明で記した基板100、第1の電極110、第1の半導体層131、第2の電極120のそれぞれと同じ材料を用いることができる。
【0045】
また、第3の半導体層233は、図1の構成で説明した第2の半導体層132と同じ材料を用いることができ、第4の半導体層234は、第3の半導体層133と同じ材料を用いることができる。
【0046】
第2の半導体層232はp型の半導体特性を示す有機化合物から構成されており、前述したp型の有機半導体材料に例示した材料を用いることができる。
【0047】
このように、窓層であるp型半導体層を2層とするためのプロセスを行うことで、ピンホール生成の機会を低減させることができ、上下電極間のショートなどの不良を低減させることができる。なお、図4の光電変換装置の構成に、図1(B)の光電変換装置の構成、および/または図2の光電変換装置の構成を組み合わすこともできる。
【0048】
以上の構成の構成を用いることにより、窓層における光吸収損失が少なく、上下電極間のショートが起きにくい光電変換装置とすることができる。
【0049】
本実施の形態は、他の実施の形態と自由に組み合わすことができる。
【0050】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1で示した透光性半導体層について説明する。
【0051】
実施の形態1で示した光電変換装置における透光性半導体層(第1の半導体層131)には、遷移金属酸化物と有機化合物との複合材料を用いることができる。なお、本明細書中において、複合とは、単に2つの材料を混合させるだけでなく、複数の材料を混合することによって材料間での電荷の授受が行われ得る状態になることを言う。
【0052】
上記遷移金属酸化物としては、電子受容性を有する遷移金属酸化物を用いることができる。また、遷移金属酸化物の中でも、元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物であり、バンドギャップが2eV以上、好ましくは3eV以上であることが好ましい。
【0053】
例えば、該遷移金属酸化物としては、電子受容性の高い、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウム、酸化チタンなどを用いることができる。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
【0054】
また、上記有機化合物としては、バンドギャップ(最高被占有軌道準位(HOMO準位)と最低空軌道準位(LUMO準位)とのエネルギー差)が2eV以上、好ましくは3eV以上である材料を用いることが好ましい。
【0055】
また、該有機化合物としては、正孔輸送性が高いことが好ましい。具体的には、10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。
【0056】
例えば、該有機化合物としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)、ジベンゾフラン骨格もしくはジベンゾチオフェン骨格を含む複素環化合物など、種々の化合物を用いることができる。
【0057】
上述した無機化合物および有機化合物を用いることにより、透光性の高い複合材料を形成することができる。
【0058】
上記遷移金属酸化物と上記有機化合物とを含む複合材料では、有機化合物の最高被占有軌道準位(HOMO準位)にある電子が、遷移金属酸化物の伝導帯に移動することにより、遷移金属酸化物と有機化合物との間に相互作用が生じる。この相互作用により、遷移金属酸化物と有機化合物とを含む複合材料は、キャリア濃度が高く、p型の半導体特性を示す。
【0059】
以下では、複合材料に用いることのできる有機化合物を具体的に列挙する。
【0060】
例えば、複合材料に用いることのできる芳香族アミン化合物としては、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、N,N’−ビス(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(略称:BSPB)等を用いることができる。また、N,N’−ビス(4−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン(略称:DTDPPA)、4,4’−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、N,N’−ビス[4−[ビス(3−メチルフェニル)アミノ]フェニル]−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:DNTPD)、1,3,5−トリス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)、4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)、4,4’−ビス[N−(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DFLDPBi)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)等を挙げることができる。
【0061】
複合材料に用いることのできるカルバゾール誘導体としては、具体的には、3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)等を挙げることができる。
【0062】
また、複合材料に用いることのできる他のカルバゾール誘導体としては、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、1,3,5−トリス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9−[4−(N−カルバゾリル)フェニル]−10−フェニルアントラセン(略称:CzPA)、1,4−ビス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]−2,3,5,6−テトラフェニルベンゼン等を用いることができる。
【0063】
複合材料に用いることのできる芳香族炭化水素としては、例えば、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、9,10−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、2−tert−ブチル−9,10−ビス(4−フェニルフェニル)アントラセン(略称:t−BuDBA)、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuAnth)、9,10−ビス(4−メチル−1−ナフチル)アントラセン(略称:DMNA)、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]−2−tert−ブチル−アントラセン、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]アントラセン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン、9,9’−ビアントリル、10,10’−ジフェニル−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス(2−フェニルフェニル)−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス[(2,3,4,5,6−ペンタフェニル)フェニル]−9,9’−ビアントリル、アントラセン、テトラセン、ルブレン、ペリレン、2,5,8,11−テトラ(tert−ブチル)ペリレン等が挙げられる。また、この他、ペンタセン、コロネン等も用いることができる。このように、1×10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有し、炭素数14〜42である芳香族炭化水素を用いることがより好ましい。
【0064】
複合材料に用いることのできる芳香族炭化水素は、ビニル骨格を有していてもよい。ビニル基を有している芳香族炭化水素としては、例えば、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(略称:DPVBi)、9,10−ビス[4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル]アントラセン(略称:DPVPA)等が挙げられる。
【0065】
また、複合材料に用いることのできる有機化合物は、ジベンゾフラン骨格もしくはジベンゾチオフェン骨格を含む複素環化合物であっても良い。
【0066】
また、複合材料に用いることのできる有機化合物は、高分子化合物であってもよく、例えば、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)、ポリ(4−ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N−(4−{N’−[4−(4−ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル−N’−フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)ポリ[N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly−TPD)などを用いても良い。
【0067】
透光性半導体層の形成方法としては、乾式法、湿式法を問わず、種々の方法を用いることができる。また、各層ごとに異なる成膜方法を用いて形成しても構わない。乾式法としては、例えば、複数の蒸着源から複数の蒸着材料を気化させて成膜する共蒸着法などが挙げられる。また、湿式法としては、ゾルゲル法などを用いて複合材料を含む組成物を調整し、インクジェット法またはスピンコート法などを用いて成膜することができる。
【0068】
以上説明した透光性半導体層を光電変換装置の窓層に用いれば、窓層における光吸収損失が低減し、光電変換装置の電気特性を向上させることができる。また、高い透光性を有し、かつ抵抗が低いため、窓層を厚く形成することができ、上下電極間のショートが起きにくい光電変換装置とすることができる。
【0069】
本実施の形態は、他の実施の形態と自由に組み合わすことができる。
【符号の説明】
【0070】
100 基板
110 第1の電極
120 第2の電極
131 第1の半導体層
132 第2の半導体層
133 第3の半導体層
141 第1のバッファ層
142 第2のバッファ層
200 基板
210 第1の電極
220 第2の電極
231 第1の半導体層
232 第2の半導体層
233 第3の半導体層
234 第4の半導体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極と、
前記第1の電極上に形成された第1の半導体層と、
前記第1の半導体層上に形成された第2の半導体層と、
前記第2の半導体層上に形成された第3の半導体層と、
前記第3の半導体層上に形成された第2の電極と、
を有し、
前記第1の半導体層は、有機化合物および無機化合物を含む透光性半導体層であり、前記第2の半導体層および前記第3の半導体層は、有機化合物を含む半導体層であることを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
請求項1において、前記第1の半導体層の導電型はp型、前記第2の半導体層の導電型はi型、前記第3の半導体層の導電型はn型であることを特徴とする光電変換装置。
【請求項3】
第1の電極と、
前記第1の電極上に形成された第1の半導体層と、
前記第1の半導体層上に形成された第2の半導体層と、
前記第2の半導体層上に形成された第3の半導体層と、
前記第3の半導体層上に形成された第4の半導体層と、
前記第4の半導体層上に形成された第2の電極と、
を有し、
前記第1の半導体層は、有機化合物および無機化合物を含む透光性半導体層であり、前記第2の半導体層、前記第3の半導体層、および前記第4の半導体層は、有機化合物を含む半導体層であることを特徴とする光電変換装置。
【請求項4】
請求項3において、前記第1の半導体層および前記第2の半導体層の導電型はp型、前記第3の半導体層の導電型はi型、前記第4の半導体層の導電型はn型であることを特徴とする光電変換装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項において、前記第1の半導体層を形成する有機化合物は、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物、ジベンゾフラン骨格もしくはジベンゾチオフェン骨格を含む複素環化合物のいずれかであることを特徴とする光電変換装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項において、前記第1の半導体層を形成する前記無機化合物は、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウム、酸化チタンのいずれかであることを特徴とする光電変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−58562(P2013−58562A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195372(P2011−195372)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】