光電子増倍管
【課題】 この発明は、高利得を実現するとともにより高い要求特性を満たすことが可能な構造を備えた光電子増倍管に関する。
【解決手段】 当該光電子増倍管において、密閉容器内に収納される電子増倍ユニットは、集束電極、加速電極、ダイノードユニット及びアノードから構成されている。特に、少なくとも加速電極及びダイノードユニットは、ダイノードユニットに含まれる少なくとも第1段ダイノード及び第2段ダイノードが導電性部材を介することなく加速電極に直接対向した状態で一体的に保持される。従来のような第1段ダイノードと同電位に設定された、第1ダンダイノードを直接支持する金属ディスクが、加速電極とダイノードユニットとの間に介在しないので、カソードから第1段ダイノードを経て第2段ダイノードへ到達する間での電子走行時間のバラツキが飛躍的に低減される。
【解決手段】 当該光電子増倍管において、密閉容器内に収納される電子増倍ユニットは、集束電極、加速電極、ダイノードユニット及びアノードから構成されている。特に、少なくとも加速電極及びダイノードユニットは、ダイノードユニットに含まれる少なくとも第1段ダイノード及び第2段ダイノードが導電性部材を介することなく加速電極に直接対向した状態で一体的に保持される。従来のような第1段ダイノードと同電位に設定された、第1ダンダイノードを直接支持する金属ディスクが、加速電極とダイノードユニットとの間に介在しないので、カソードから第1段ダイノードを経て第2段ダイノードへ到達する間での電子走行時間のバラツキが飛躍的に低減される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光電子の入射に応答して複数段階に分けて順次二次電子を放出していくことにより二次電子のカスケード増倍を可能にする光電子増倍管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、核医学の分野では次世代PET(Positron-EmissionTomography)装置としてTOF−PET(Time-of-Flight-PET)の開発が盛んに進められている。特に、TOF−PET装置は、体内に投与された放射性同位元素から放出される2本のガンマ線を正反対方向の2つの検出器で同時計測した際に、2つの検出器から出力される信号の時間差を求め飛行時間差として陽電子が消滅した位置を求めることができるため、PETの鮮明な画像を得られることが可能となる。この検出器には優れた高速応答性を有する大量の光電子増倍管が使用される。
【0003】
このような光電子増倍管としては、例えば特許文献1に示された光電子増倍管が知られている。この従来の光電子増倍管は、カソードから第1段ダイノードに向かって順に集束電極、加速電極が配置された構造を有する。ここで、集束電極は、カソードから放出された光電子が第1段ダイノードに集束していくように該光電子の軌道を修正するための電極である。また、加速電極は、カソードから放出された光電子を第1段ダイノードへと加速する電極であって、カソードの光電子放出部位に起因した該カソードから第1段ダイノードに至る光電子の走行時間のバラツキを減少させるよう機能する。
【0004】
上述のようにカソードと第1ダイノードとの間に収束電極及び加速電極を配置する構造により、高速応答性を向上させることができる。
【特許文献1】特開平5−114384号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明者は上述の従来技術を検討した結果、以下のような課題を発見した。
【0006】
すなわち、従来の光電子増倍管において、密閉容器内に収納され、優れた高速応答性を実現する電子増倍ユニットは、アノードとともに複数段のダイノードが一対の絶縁性固定板で挟み込まれたダイノードユニット、集束電極、及び加速電極により構成されている。その組み立て作業において、加速電極は、ダイノードユニットに対して特殊な金属部材によって固定され、また、集束電極は、ガラス部材を介して加速電極に固定される。このような組立工程を経て得られた従来の光電子増倍管は、加速電極と第1段ダイノードとの間に、第1段ダイノードを直接支持した、該第1段ダイノードと同電位の金属ディスクが配置される構造となる。この場合、加速電極と第1段ダイノードとの間に配置された金属ディスクの影響により、カソードから第1段ダイノードを経て第2段ダイノードへ到達するまでの電子走行時間が、カソードの光電子放出部位に依存して著しいバラツキが生じるため、CTTD(Cathode Transit Time Difference)が大きくなるとともに、TTS(Transit Time Spread)が悪化するなどの課題があった。
【0007】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、高利得を実現するとともに、Uniformity、CTTD、TTSなどに関するより高い要求特性を満たすことが可能な構造を備えた光電子増倍管を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る光電子増倍管は、内部が真空状態に維持された密閉容器とともに、該密閉容器内にそれぞれ収納されたカソード、集束電極、加速電極、ダイノードユニット、及びアノードを備える。また、ダイノードユニット及びアノードは、一対の絶縁支持部材によって挟まれた状態で一体的に保持されている。カソードは、所定波長の光の入射に応答し、一次電子として光電子を該密閉容器内に放出する。ダイノードユニットは、ホトカソードから到達した光電子に応答して二次電子を放出し、該二次電子を順次カスケード増倍していく複数段のダイノードを含む。アノードは、ダイノードユニットによりカスケード増倍された二次電子を信号として取り出す。集束電極は、ホトカソードから放出された光電子の軌道を修正するよう機能し、該ホトカソードとダイノードユニットとの間に配置されている。また、集束電極は、ホトカソードからの光電子が通過するための貫通孔を有する。加速電極は、ホトカソードから集束電極を介して到達した光電子を加速するよう機能し、集束電極とダイノードユニットの間に配置されている。また、加速電極も、ホトカソードから集束電極を介して到達した光電子が通過するための貫通孔を有する。
【0009】
具体的に、この発明に係る光電子増倍管に要求される特性としては、Uniformity、CTTD(Cathode Transit Time Difference)、TTS(Transit Time Spread)等があり、当該光電子増倍管は、Uniformityとしてカソード全面を有効領域とするとともに、500psec以下のCTTD、300psec以下のTTSを実現する。そのため、この発明に係る光電子増倍管は、ダイノードユニットに含まれる少なくとも第1段ダイノード及び第2段ダイノードが導電性部材を介することなく加速電極に直接対向した状態で、少なくとも加速電極及びダイノードユニットを一体的に保持する構造を備える。
【0010】
このように、当該光電子増倍管は、少なくとも加速電極及びダイノードユニットが、ダイノードユニットに含まれる少なくとも第1段ダイノード及び第2段ダイノードが導電性部材を介することなく加速電極に直接対向した状態で、一体的に保持された構造を有する。その結果、従来のような第1段ダイノードと同電位に設定された、該第1段ダイノードを直接支持する金属ディスクが、加速電極とダイノードユニットとの間に介在しないので、カソードから第1段ダイノードを経て第2段ダイノードへ到達する間での電子走行時間のバラツキが飛躍的に低減される。
【0011】
なお、上述のようにダイノードユニットに含まれる第1段ダイノードと加速電極との間に、該第1段ダイノードを直接支持する金属ディスク(第1段ダイノードと同電位に設定される)を排除するためには、少なくともこれら加速電極及びダイノードユニットを一体的に保持することにより、簡単に(組立工程を複雑にすることなく)構成されるのが好ましい。
【0012】
上述のような一体構成は、例えば、ダイノードユニットに含まれる複数のダイノードを一体的に保持する一対の絶縁支持部材のそれぞれに、ホトカソードへ向かって伸びた、集束電極及び加速電極の配置位置の基準となる1又はそれ以上の突起部を設けることによって実現可能である。すなわち、突起部のそれぞれには、加速電極を直接支持した状態で該加速電極を固定するための第1固定構造が設けられるとともに、集束電極を直接支持した状態で該集束電極を固定するための第2固定構造が設けられている。この場合、当該光電子増倍管では、ダイノードユニット及びアノードを把持する一対の絶縁支持部材のそれぞれに、加速電極及び集束電極の配置位置の基準となる突起部(第1及び第2固定構造が設けられている)が設けられることにより、密閉容器内に収納された電子増倍ユニットを構成する、集束電極、加速電極、ダイノードユニット、及びアノードが一対の絶縁支持部材に対して一体的に固定されることになる。すなわち、ダイノードユニット及びアノードを一体的に把持する一対の絶縁支持部材の一部に設けられた、集束電極及び加速電極を固定する構造により、電子増倍ユニットを構成する部材それぞれが一対の絶縁支持部材を基準部材として簡単に位置決めされる。この結果、電子増倍ユニット組み立ての際に、各部材間の高精度の位置決め作業や特殊な固定部材、固定治具が不要となり、密閉容器内に収納される電子増倍ユニットの生産性を飛躍的に向上させることが可能になる。また、電子増倍ユニットを組み立てる作業者自身の熟練度とは無関係に、製造された光電子増倍管間の性能バラツキが低減される。
【0013】
なお、この発明に係る光電子増倍管において、一対の絶縁支持部材それぞれの一部を構成している突起部は、ダイノード及びアノードを把持した状態で少なくとも加速電極を取り囲むよう該一対の絶縁支持部材それぞれの所定位置に配置されている。また、当該光電子増倍管において、電子増倍ユニットの生産性を向上させるため、第1固定構造は、加速電極の一部を挟むスリット溝を含むのが好ましい。同様の理由により、第2固定構造も、集束電極の一部を挟むスリット溝を含むのが好ましい。このように、収束電極の一部及び加速電極の一部がそれぞれ対応するスリット溝に挟まれることにより、これら収束電極及び加速電極の位置決め作業及び固定作業が同時に行える。
【0014】
さらに、この発明に係る光電子増倍管は、上述の構成には限定されない。すなわち、当該光電子増倍管がダイノードユニットに含まれる第1段ダイノードを直接支持する金属ディスクを有する場合であっても、加速電極及びダイノードユニットのいずれとも絶縁された状態で配置されれば、上述の要求特性を満たすことは可能である。加速電極とダイノードユニットとの間に配置される金属ディスクは、加速電極の電位よりも低く、かつ、ダイノードユニットに含まれる第1段ダイノードの電位よりも高い電位に設定される。
【0015】
また、加速電極とダイノードユニットとの間に、該ダイノードユニットに含まれる第1段ダイノードを直接支持するとともに該第1段ダイノードと同電位に設定された金属ディスクが配置されている場合であっても、当該光電子増倍管によれば、上述の要求特性を満たすことは可能である。すなわち、加速電極とダイノードユニットとの間に配置される金属ディスクは、カソードからの光電子を通過させるための貫通孔を有し、密閉容器の管軸からこの貫通孔のエッジまでの最短距離が、該密閉容器の管軸からダイノードユニットに含まれる第2段ダイノードの端部までの最短距離の1.3倍以上に設定されることによっても、上述の要求特性を満たすことができる。ただし、密閉容器の管軸から金属ディスクの貫通孔のエッジまでの最短距離は、該密閉容器の管軸からダイノードユニットに含まれる第2段ダイノードの端部までの最短距離の2.0倍以上であるのがより好ましい。
【0016】
なお、この発明に係る各実施形態は、以下の詳細な説明及び添付図面によりさらに十分に理解可能となる。これら実施形態は単に例示のために示されるものであって、この発明を限定するものと考えるべきではない。
【0017】
また、この発明のさらなる応用範囲は、以下の詳細な説明から明らかになる。しかしながら、詳細な説明及び特定の事例はこの発明の好適な実施形態を示すものではあるが、例示のためにのみ示されているものであって、この発明の思想及び範囲における様々な変形および改良はこの詳細な説明から当業者には自明であることは明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明に係る光電子増倍管の一実施形態を、図1〜図12、図13(a)〜図14(b)、及び図15を用いて詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一部位、同一部材には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0019】
図1は、この発明に係る光電子増倍管の一実施形態の概略構造を示す一部破断図である。
【0020】
この図1に示されたように、光電子増倍管100は、内部を真空引きするためのパイプ130(真空引き後に中実化される)が底部に設けられた密閉容器110を備えるとともに、この密閉容器110内に設けられたカソード120及び電子増倍ユニットを備える。
【0021】
密閉容器110は、内側にカソード120が形成された面板を有する円筒形の管胴と、複数のリードピン140を貫通した状態で支持しているステムにより構成されている。電子増倍ユニットは、ステムから密閉容器110内に延びたリードピン140によって該密閉容器110内の所定位置に保持されている。
【0022】
電子増倍ユニットは、集束電極200、加速電極300、及びアノードが内部に配置されたダイノードユニット400から構成されている。集束電極200は、カソード120から放出された光電子がダイノードユニット400に集束していくように該光電子の軌道を修正するための電極であって、カソード120とダイノードユニット400との間に配置されるとともに、カソード120からの光電子を通過させるための貫通孔を有する。また、加速電極300は、カソード120から放出された光電子をダイノードユニット400へと加速する電極であって、集束電極200とダイノードユニット400との間に配置されるとともに、集束電極の貫通孔を通過した光電子をさらにダイノードユニット400に向けて通通過させる貫通孔を有する。この加速電極300により、カソード120の光電子放出部位に起因した該カソード120からダイノードユニット400に至る光電子の走行時間のバラツキが減少される。また、ダイノードユニット400は、カソード120から集束電極200、加速電極300を介して到達した光電子に応答して放出される二次電子を順次カスケード増倍していくための複数段のダイノードと、これら複数段のダイノードによりカスケード増倍された二次電子を信号として取り出すためのアノードと、これら複数段のダイノード及びアノードを一体的に把持する一対の絶縁支持部材とを備える。
【0023】
図2は、図1中に示されたI−I線に沿った、第1実施形態に係る光電子増倍管の断面構造を示す図である。
【0024】
第1実施形態に係る光電子増倍管100において、密閉容器110内に収納された電子増倍ユニット400は、図2に示されたように、集束電極200、加速電極300とともにダイノードユニット400が一対の絶縁支持部材によって一体的に保持されている。特に、この一対の絶縁支持部材は、加速電極300ととともに、第1ダイノード(第1段ダイノード)DY1〜第7ダイノードDY7、アノード420、及びアノード420を通過した電子を再び該アノード420へ反転させる反射型ダイノードDY8を一体的に保持している。
【0025】
このように、当該光電子増倍管100は、ダイノードユニット400に含まれる少なくとも第1ダイノードDY1及び第2ダイノードDY2が導電性部材を介することなく加速電極300に直接対向した状態で、少なくとも加速電極300及びダイノードユニット400を一体的に保持する構造を備える。その結果、従来の光電子増倍管ような第1ダイノードDY1と同電位に設定された、該第1ダイノードDY1を直接支持する金属ディスクが、加速電極300とダイノードユニット400との間に介在しないので、カソード120から第1ダイノードDY1を経て第2ダイノードDY2へ到達する間での電子走行時間のバラツキが飛躍的に低減される。
【0026】
上述のような構成により、当該光電子増倍管100は、Uniformityとしてカソード全面を有効領域とするとともに、500psec以下のCTTD、300psec以下のTTSを実現する。
【0027】
以下、上述のように加速電極300とダイノードユニット400との一体的に構成する具体例を、図3〜図12を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明される構成では、ダイノードユニット400に含まれる複数のダイノードDY1〜DY8を一体的に保持する一対の絶縁支持部材のそれぞれに、ホトカソード120へ向かって伸びた、集束電極200及び加速電極300の配置位置の基準となる1又はそれ以上の突起部を設けることによって実現可能である。
【0028】
図3は、この発明に係る光電子増倍管に適用される電子増倍ユニットの構造を説明するための組立工程図である。
【0029】
図3に示されたように、電子増倍ユニットは、集束電極200、加速電極300、及びアノードを含むダイノードユニット400により構成されている。集束電極200は、カソード120からの光電子を通過させるための貫通孔が設けられている。加速電極300は、当該電子増倍ユニットの組立効率を向上させるべく、上側電極310と下側電極320により構成されている。これら上側電極310と下側電極320は、当該電子増倍ユニットの組立作業中、数カ所溶接されることにより一体化される。ダイノードユニット400は、それぞれが該第1及び第2絶縁支持部材410a、410bによって把持された、第1〜第7ダイノードDY1〜DY7、アノード420、反射型ダイノードDY8によって構成されている。なお、第1〜第7ダイノードDY1〜DY7及び反射型ダイノードDY8には、光電子あるいは二次電子を受け、該電子の入射方向に向かって新たに二次電子を放出する反射型の二次電子放出面が形成されている。また、第1ダイノードDY1の両端には、第1及び第2絶縁支持部材410a、410bによって把持されるよう、固定片DY1a、DY1bが設けられている。同様に、第2ダイノードDY2は、その両端に固定片DY2a、DY2bを有し、第3ダイノードDY3は、その両端に固定片DY3a、DY3bを有し、第4ダイノードDY4は、その両端に固定片DY4a、DY4bを有し、第5ダイノードDY5は、その両端に固定片DY5a、DY5bを有し、第6ダイノードDY6は、その両端に固定片DY6a、DY6bを有し、第7ダイノードDY7は、その両端に固定片DY7a、DY7bを有し、アノード420は、その両端に固定片420a〜420dを有し、そして、反射型ダイノードDY8は、その両端に固定片DY8a、DY8bを有する。
【0030】
加速電極300のうち下側電極320は、第1〜第7ダイノードDY1〜DY7、アノード420、反射型ダイノードDY8とともに、第1及び第2絶縁支持部材410a、410bによって把持される。上側電極310は、このように第1及び第2絶縁支持部材410a、410bによって把持された状態の下側電極320に溶接固定される。一方、集束電極200は、第1及び第2絶縁支持部材410a、410bの上部(カソード120側)に設けられた突起部に設置され、補強部材250a、250bが溶接されることにより、該第1及び第2絶縁支持部材410a、410bに固定される。
【0031】
また、上述のように第1〜第7ダイノードDY1〜DY7、アノード420、反射型ダイノードDY8を一体的に把持した状態で、第1及び第2絶縁支持部材410a、410bが金属クリップ450a〜450cによりさらに把持されており、これにより、上述の各部材が第1及び第2絶縁支持部材410a、410bによって各部材が安定的に保持される。
【0032】
図4は、電子増倍ユニットの一部を構成する第1及び第2の絶縁支持部材410a、410bの構造を説明するための図である。ここで、第1及び第2絶縁支持部材410a、410bは同一構造を有するため、共通の構造説明として第2絶縁支持部材410bについてのみ説明する。
【0033】
絶縁支持部材410bには、第1〜第7ダイノードDY1〜DY7、アノード420、及び反射型ダイノードDY8のそれぞれに設けられた固定片DY1b〜DY8b、420bが挿入される位置決め孔D1〜D8、42が設けられている。また、絶縁支持部材410bには、これら部材DY1〜DY8、420をともに把持する絶縁支持部材410aに対して容易に固定するため、金属クリップ450a〜450cを留める切り欠き部411a〜411cが設けられている。
【0034】
特に、絶縁支持部材410bには、上方に向かって伸びた突起部430a、430bを備える。すなわち、これら突起部430a、430bは、密閉容器110内に当該電子増倍ユニットが設置されたときにカソード側に向かって伸びている。そして、突起部430aには、加速電極300を位置決めするとともに固定するための、第1固定構造としてのスリット溝431aと、集束電極200を位置決めするとともに固定するための固定構造としてのスリット溝432aが設けられている。同様に、突起部430bには、加速電極300を位置決めするとともに固定するための、第1固定構造としてのスリット溝431bと、集束電極200を位置決めするとともに固定するための固定構造としてのスリット溝432bが設けられている。
【0035】
次に、加速電極300の構造について、図5及び図6を用いて説明する。図5は、加速電極300の一部を構成する下側電極320の構造を説明するための平面図及び側面図である。また、図6は、加速電極300の一部を構成する上側電極310の構造を説明するための平面図及び側面図である。
【0036】
加速電極300は、図5及び図6に示されたような構造を有する下側電極320及び上側電極310が数カ所溶接固定されることにより得られ、下側電極320は、第1及び第2絶縁支持部材410a、410bそれぞれの突起部430a、430bに設けられたスリット溝431a、431bに直接挿入、固定される。
【0037】
具体的に下側電極320は、図5に示されたように、第1〜第7ダイノードDY1〜DY7、アノード420、及び反射型ダイノードDY8とともに第1及び第2絶縁支持部材410a、410bに把持されるよう、切り欠き部320a〜320dが設けられている。なお、これら切り欠き部320a〜320dは、加速電極320に設けられた貫通孔321の外周に位置するフランジ部に、該貫通孔321を取り囲むように配置されている。一方、上側電極310は、図6に示されたように、貫通孔311を規定する胴体部312と、該胴体部311の一方の開口端部に設けられたフランジ部とで構成されている。このフランジ部の外周には、第1及び第2絶縁支持部材410a、410bのそれぞれに設けられた突起部430a、430bを挟むスリット溝310a〜310dが設けられるとともに、下側電極320と溶接固定するための固定用部位313a、313bが設けられている。
【0038】
上述のような構造を有する下側電極320及び上側電極310は、図7に示されたように、互いに対向するように配置された第1及び第2絶縁支持部材410a、410bに、溶接された状態で固定される。
【0039】
まず、下側電極320は、第1〜第7ダイノードDY1〜DY7、アノード420、及び反射型ダイノードDY8とともに第1及び第2絶縁支持部材410a、410bに把持される。このとき、下側電極320は、そのフランジ部のうち切り欠き部320a〜320dが設けられた部分(図5中に示された領域321a〜321dに相当する部分)が突起部430a、430bのそれぞれに設けられたスリット溝431a、431bにはめ込まれた状態で、第1及び第2絶縁支持部材410a、410bに把持される。その結果、下側電極320は、そのフランジ部を突起部430a、430bによって取り囲まれた状態で、第1及び第2絶縁支持部材410a、410bに固定される。なお、図8は、特に、下側電極320の切り欠き部320aの設置状況を示す拡大図である。ただし、下側電極320が第1及び第2絶縁支持部材410a、410bに把持されることにより、位置決めされるのは、図8中の矢印S1で示された方向に対してのみであって、矢印S2で示された方向に対しては、依然若干の回転が可能である。
【0040】
続いて、上側電極310は、図7に示されたように、スリット溝310a〜310dが突起部430a、430bを挟み込んだ状態で、下側電極320上に配置される。このとき、上側電極310は、下側電極320とは異なり、図8中の矢印S1で示された方向には移動可能であるが、矢印S2で示された方向への回転はできない。そこで、上側電極310におけるフランジ部外周に設けられた固定用部位313a、313bが下側電極320に溶接されることにより、上側電極310と下側電極320とが第1及び第2絶縁支持部材410a、410bに対して一体的に固定される(位置決めされる)。
【0041】
さらに、図9は、収束電極200の構造を説明するための平面図及び側面図である。
【0042】
具体的に集束電極200は、図9に示された胴体部210(実質的には集束電極本体であり、この明細書では胴体部210を指して単に集束電極という場合もある)と該胴体部210の回転を抑制するための補強部材250a、250bから構成されている。胴体部210は、図9に示されたように、円筒形状を有し、該胴体部の一方の開口端から内側に向かって伸び、貫通孔211を規定するフランジ部を備える。このフランジ部には、第1及び第2絶縁支持部材410a、410bの突起部430a、430bに設けられたスリット溝432a、432bに把持されるよう、切り欠き部220a〜220dが設けられている。なお、これら切り欠き部220a〜220dは、突起部430a、430bを集束電極200における貫通孔211を介して収納させるための導入部221a〜221dと、密閉容器110の管軸を中心とした胴体部210の回転を制限するための固定部222a〜222dとから構成されている。
【0043】
上述のような構造を有する胴体部210は、当該胴体部210自体が密閉容器110の管軸を中心に回転することにより、第1及び第2絶縁支持部材410a、410bそれぞれの突起部430a、430bに設けられたスリット溝432a、432bに固定される。
【0044】
具体的には、図10に示されたように、第1〜第7ダイノードDY1〜DY7、アノード420、反射型ダイノードDY8、及び加速電極300を把持している第1及び第2絶縁支持部材410a、410bの突起部430a、430bが胴体部210の貫通孔211内に挿入される。このときの状態が、図11の拡大図に示されている。
【0045】
すなわち、突起部430a、430bは、図11中の矢印S4で示された方向に沿って切り欠き部220a〜220dにおける導入部221a〜221dから挿入される。その後、胴体部210は、図11中の矢印S3で示された方向に回転し、突起部430a、430bのスリット溝432a、432bが固定部222a〜222dに当接するまで回転する。このとき、突起部430a、430bのスリット溝432a、432bは、胴体部210のフランジ部のうち223a〜223dで示された部分を把持することになる。これにより、胴体部210自体は、図11中の矢印S4で示された方向に対して固定される。しかしながら、胴体部210は、矢印S3で示された方向には固定されていないため、胴体部210の矢印S3で示された方向に沿った回転を制限すべく、該胴体部に補強部材250a、250bが溶接固定される。
【0046】
補強部材250aは、胴体部210のフランジ部に当接される本体板251aと胴体部210の側面に当接されるバネ部252aから構成されている。また、本端板251aには、互いに対向するよう配置された第1及び第2絶縁支持部材410a、410bの突起部430aを挟むスリット溝253aが設けられている。同様に、補強部材250bは、胴体部210のフランジ部に当接される本体板251bと胴体部210の側面に当接されるバネ部252bから構成されている。また、本体板251bには、互いに対向するよう配置された第1及び第2絶縁支持部材410a、410bの突起部430bを挟むスリット溝253bが設けられている。
【0047】
これら補強部材250a、250bは、図12中の矢印S5で示された方向から差し込まれる(スリット溝253a、253bが突起部430a、430bを挟み込む)。上述のように、胴体部210は、図11中の矢印S4で示された方向には固定されるが矢印S3で示された方向には固定されていない。一方、補強部材250a、250bは、突起部430a、430bをスリット溝253a、253bで挟み込むため、矢印S3で示された方向には固定されるが、矢印S4で示された方向には固定されています。このような胴体部210と補強部材250a、250bとをそれぞれ溶接固定することにより、当該集束電極200が、第1及び第2絶縁支持部材410a、410bに対して一体的に固定される(位置決めされる)。
【0048】
以上の組立工程を経て、密閉容器110内に収納される電子増倍ユニットが得られる。
【0049】
次に、この発明に係る光電子増倍管の効果について、図13(a)及び図13(b)を用いて説明する。なお、図13(a)は、上述の組立工程を経て得られた第1実施形態に係る光電子増倍管の動作を説明するための図であり、図13(b)は、比較例として用意された従来の光電子増倍管の動作を説明するための図である。
【0050】
第1実施形態に係る光電子増倍管では、図13(a)に示されたように、カソード120の位置a、d、gからそれぞれ放出された光電子は、a−b−cの軌道、d−e−fの軌道、及びg−h−iの軌道のいずれかを辿って第2ダイノードDY2に入射する。このとき、カソード120と第1ダイノードDY1との間には集束電極200及び加速電極300が配置されているため、a−bの軌道、d−eの軌道、g−hの軌道それぞれを辿る光電子の走行時間はほぼ同じである。
【0051】
また、この第1実施形態に係る光電子増倍管には、加速電極300と第1ダイノードDY1との間に導電性部材は配置されていないので、第1ダイノードDY1における位置b側に高い電界(加速電極300の高電位に起因)が入り込む。そのため、第1ダイノードDY1と第2ダイノードDY2との間に形成される静電レンズは、加速電極300、第2ダイノードDY2、及び第3ダイノードDY3の電位により形成される。したがって、第1ダイノードDY1における二次電子放出面上の位置bから放出される二次電子も、高い電位で引っ張られて第2ダイノードDY2に入射するため、b−cの軌道を辿る二次電子の走行時間は、h−iの軌道を辿る二次電子の走行時間とほぼ同じになる。すなわち、この発明に係る光電子増倍管の場合、カソード120から第1ダイノードDY1を経て第2ダイノードDY2に至る電子走行時間は、a−b−cの軌道、d−e−fの軌道、g−h−iの軌道のいずれもほぼ同じになり、CTTDを小さくすることができるとともに、良好なTTSが得られる。
【0052】
一方、比較例に係る光電子増倍管においても、カソード120と第1ダイノードDY1との間に集束電極200及び加速電極300が配置されているため、a’−b’の軌道、d’−e’の軌道、g’−h’の軌道それぞれにおける光電子の走行時間はほぼ同じである。しかしながら、この比較例に係る光電子増倍管では、図13(b)に示されたように、Disk(第1ダイノードDY1と同電位であって、集束電極200の電位よりも高く、かつ加速電極300の電位よりも低い電位を有する)が、加速電極300に起因した電界をブロックしているため、第1ダイノードDY1と第2ダイノードDY2との間に形成される静電レンズは、第2ダイノードDY2の電位及び第3ダイノードDY3の電位のみで形成される。第1ダイノードDY1における二次電子放出面上においてより第3ダイノードDY3に近い位置h’から放出される二次電子は、より強い電界の影響を受けながら(高い電位に引っ張られながら)第2ダイノードDY2へ入射する。一方、位置b’から放出される二次電子は、より弱い電界の影響を受けながら(低い電界に引っ張られながら)第2ダイノードDY2へ入射する。その結果、b’−c’の軌道を辿る二次電子の走行時間は、h’−i’の軌道を辿る二次電子の走行時間よりも長くなる。すなわち、比較例に係る光電子増倍管の場合、カソード120から第1ダイノードDY1を経て第2ダイノードDY2に至る電子走行時間は、g’−h’−i’の軌道、d’−e’−f’の軌道、a’−b’−c’の軌道の順で長くなり、CTTDを大きくなるとともに、TTSが悪化する。
【0053】
この発明に係る光電子増倍管は、上述のような第1実施形態の構成に限定されるものでなく、種々の変形が可能である。
【0054】
例えば、図14(a)は、この発明に係る光電子増倍管の第2実施形態の断面構造を示す図であり、図14(b)は、その応用例の断面構造を示す図である。
【0055】
図14(a)に示された第2実施形態に係る光電子増倍管は、従来の光電子増倍管と同様に、加速電極300とダイノードユニットとの間に、該ダイノードユニットに含まれる第1ダイノードDY1を直接支持するとともに該第1ダイノードDY1と同電位に設定された金属ディスクD2が配置されている。しかしながら、この第2実施形態に係る光電子増倍管では、金属ディスクD2は、カソード120からの光電子を通過させるための貫通孔D2aを有しており、密閉容器110の管軸からこの貫通孔D2aのエッジまでの最短距離が、該密閉容器110の管軸からダイノードユニットに含まれる第2ダイノードDY2の端部までの最短距離の1.3倍以上に設定されている。この構成によっても上述の要求特性を満たすことが可能である。
【0056】
また、図14(b)は、図14(a)に示された第2実施形態に係る光電子増倍管の応用例が示されているが、この応用例において、密閉容器110の管軸から金属ディスクD3の貫通孔D3aのエッジまでの最短距離は、該密閉容器110の管軸からダイノードユニットに含まれる第2ダイノードDY2の端部までの最短距離の2.0倍以上であってもよい。この場合も上述の要求特性を満たすことは可能である。
【0057】
さらに、図15は、この発明に係る光電子増倍管の第3実施形態の断面構造を示す図である。この第3実施形態に係る発明に係る光電子増倍管も、加速電極300と第1ダイノードDY1との間に配置され、該第1ダイノードを直接支持する金属ディスクD4を有する。しかしながら、この金属ディスクD4は、加速電極300及び第1ダイノードDY1のいずれとも絶縁された状態で配置されるとともに、加速電極300の電位よりも低く、かつ、第1ダイノードDY1の電位よりも高い電位に設定されている。この構成によっても、上述の要求特性を満たすことは可能である。
【0058】
なお、上述の第2及び第3実施形態のように、加速電極300と第1ダイノードDY1との間に、別途金属ディスクD2〜D4が配置される構成の場合、従来のような加速電極の固定構造が採用されてもよい。
【0059】
以上の本発明の説明から、本発明を様々に変形しうることは明らかである。そのような変形は、本発明の思想および範囲から逸脱するものとは認めることはできず、すべての当業者にとって自明である改良は、以下の請求の範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】この発明に係る光電子増倍管の第1実施形態の概略構造を示す一部破断図である。
【図2】図1中に示されたI−I線に沿った、第1実施形態に係る光電子増倍管の断面構造を示す図である。
【図3】第1実施形態に係る光電子増倍管に適用される電子増倍ユニットの構造を説明するための組立工程図である。
【図4】電子増倍ユニットの一部を構成する一対の絶縁支持部材の構造を説明するための図である。
【図5】図5は、加速電極における下側電極の構造を説明するための平面図及び側面図である。
【図6】加速電極における上側電極の構造を説明するための平面図及び側面図である。
【図7】一対の絶縁支持部材への加速電極の取り付け工程を説明するための図である。
【図8】図7の取り付け工程をさらに詳細の説明するための拡大図である。
【図9】収束電極の構造を説明するための平面図及び側面図である。
【図10】一対の絶縁支持部材への集束電極の取り付け工程を説明するための図である。
【図11】図10の取り付け工程をさらに詳細の説明するための拡大図である。
【図12】第1実施形態に係る光電子増倍管に適用される電子増倍ユニットの構成を示す側面図である。
【図13】(a)は、第1実施形態に係る光電子増倍管の動作を説明するための図であり、(b)は、比較例として用意された光電子増倍管の動作を説明するための図である。
【図14】(a)は、この発明に係る光電子増倍管の第2実施形態の断面構造を示す図であり、(b)は、その応用例の断面構造を示す図である。
【図15】この発明に係る光電子増倍管の第3実施形態の断面構造を示す図である。
【技術分野】
【0001】
この発明は、光電子の入射に応答して複数段階に分けて順次二次電子を放出していくことにより二次電子のカスケード増倍を可能にする光電子増倍管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、核医学の分野では次世代PET(Positron-EmissionTomography)装置としてTOF−PET(Time-of-Flight-PET)の開発が盛んに進められている。特に、TOF−PET装置は、体内に投与された放射性同位元素から放出される2本のガンマ線を正反対方向の2つの検出器で同時計測した際に、2つの検出器から出力される信号の時間差を求め飛行時間差として陽電子が消滅した位置を求めることができるため、PETの鮮明な画像を得られることが可能となる。この検出器には優れた高速応答性を有する大量の光電子増倍管が使用される。
【0003】
このような光電子増倍管としては、例えば特許文献1に示された光電子増倍管が知られている。この従来の光電子増倍管は、カソードから第1段ダイノードに向かって順に集束電極、加速電極が配置された構造を有する。ここで、集束電極は、カソードから放出された光電子が第1段ダイノードに集束していくように該光電子の軌道を修正するための電極である。また、加速電極は、カソードから放出された光電子を第1段ダイノードへと加速する電極であって、カソードの光電子放出部位に起因した該カソードから第1段ダイノードに至る光電子の走行時間のバラツキを減少させるよう機能する。
【0004】
上述のようにカソードと第1ダイノードとの間に収束電極及び加速電極を配置する構造により、高速応答性を向上させることができる。
【特許文献1】特開平5−114384号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明者は上述の従来技術を検討した結果、以下のような課題を発見した。
【0006】
すなわち、従来の光電子増倍管において、密閉容器内に収納され、優れた高速応答性を実現する電子増倍ユニットは、アノードとともに複数段のダイノードが一対の絶縁性固定板で挟み込まれたダイノードユニット、集束電極、及び加速電極により構成されている。その組み立て作業において、加速電極は、ダイノードユニットに対して特殊な金属部材によって固定され、また、集束電極は、ガラス部材を介して加速電極に固定される。このような組立工程を経て得られた従来の光電子増倍管は、加速電極と第1段ダイノードとの間に、第1段ダイノードを直接支持した、該第1段ダイノードと同電位の金属ディスクが配置される構造となる。この場合、加速電極と第1段ダイノードとの間に配置された金属ディスクの影響により、カソードから第1段ダイノードを経て第2段ダイノードへ到達するまでの電子走行時間が、カソードの光電子放出部位に依存して著しいバラツキが生じるため、CTTD(Cathode Transit Time Difference)が大きくなるとともに、TTS(Transit Time Spread)が悪化するなどの課題があった。
【0007】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、高利得を実現するとともに、Uniformity、CTTD、TTSなどに関するより高い要求特性を満たすことが可能な構造を備えた光電子増倍管を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る光電子増倍管は、内部が真空状態に維持された密閉容器とともに、該密閉容器内にそれぞれ収納されたカソード、集束電極、加速電極、ダイノードユニット、及びアノードを備える。また、ダイノードユニット及びアノードは、一対の絶縁支持部材によって挟まれた状態で一体的に保持されている。カソードは、所定波長の光の入射に応答し、一次電子として光電子を該密閉容器内に放出する。ダイノードユニットは、ホトカソードから到達した光電子に応答して二次電子を放出し、該二次電子を順次カスケード増倍していく複数段のダイノードを含む。アノードは、ダイノードユニットによりカスケード増倍された二次電子を信号として取り出す。集束電極は、ホトカソードから放出された光電子の軌道を修正するよう機能し、該ホトカソードとダイノードユニットとの間に配置されている。また、集束電極は、ホトカソードからの光電子が通過するための貫通孔を有する。加速電極は、ホトカソードから集束電極を介して到達した光電子を加速するよう機能し、集束電極とダイノードユニットの間に配置されている。また、加速電極も、ホトカソードから集束電極を介して到達した光電子が通過するための貫通孔を有する。
【0009】
具体的に、この発明に係る光電子増倍管に要求される特性としては、Uniformity、CTTD(Cathode Transit Time Difference)、TTS(Transit Time Spread)等があり、当該光電子増倍管は、Uniformityとしてカソード全面を有効領域とするとともに、500psec以下のCTTD、300psec以下のTTSを実現する。そのため、この発明に係る光電子増倍管は、ダイノードユニットに含まれる少なくとも第1段ダイノード及び第2段ダイノードが導電性部材を介することなく加速電極に直接対向した状態で、少なくとも加速電極及びダイノードユニットを一体的に保持する構造を備える。
【0010】
このように、当該光電子増倍管は、少なくとも加速電極及びダイノードユニットが、ダイノードユニットに含まれる少なくとも第1段ダイノード及び第2段ダイノードが導電性部材を介することなく加速電極に直接対向した状態で、一体的に保持された構造を有する。その結果、従来のような第1段ダイノードと同電位に設定された、該第1段ダイノードを直接支持する金属ディスクが、加速電極とダイノードユニットとの間に介在しないので、カソードから第1段ダイノードを経て第2段ダイノードへ到達する間での電子走行時間のバラツキが飛躍的に低減される。
【0011】
なお、上述のようにダイノードユニットに含まれる第1段ダイノードと加速電極との間に、該第1段ダイノードを直接支持する金属ディスク(第1段ダイノードと同電位に設定される)を排除するためには、少なくともこれら加速電極及びダイノードユニットを一体的に保持することにより、簡単に(組立工程を複雑にすることなく)構成されるのが好ましい。
【0012】
上述のような一体構成は、例えば、ダイノードユニットに含まれる複数のダイノードを一体的に保持する一対の絶縁支持部材のそれぞれに、ホトカソードへ向かって伸びた、集束電極及び加速電極の配置位置の基準となる1又はそれ以上の突起部を設けることによって実現可能である。すなわち、突起部のそれぞれには、加速電極を直接支持した状態で該加速電極を固定するための第1固定構造が設けられるとともに、集束電極を直接支持した状態で該集束電極を固定するための第2固定構造が設けられている。この場合、当該光電子増倍管では、ダイノードユニット及びアノードを把持する一対の絶縁支持部材のそれぞれに、加速電極及び集束電極の配置位置の基準となる突起部(第1及び第2固定構造が設けられている)が設けられることにより、密閉容器内に収納された電子増倍ユニットを構成する、集束電極、加速電極、ダイノードユニット、及びアノードが一対の絶縁支持部材に対して一体的に固定されることになる。すなわち、ダイノードユニット及びアノードを一体的に把持する一対の絶縁支持部材の一部に設けられた、集束電極及び加速電極を固定する構造により、電子増倍ユニットを構成する部材それぞれが一対の絶縁支持部材を基準部材として簡単に位置決めされる。この結果、電子増倍ユニット組み立ての際に、各部材間の高精度の位置決め作業や特殊な固定部材、固定治具が不要となり、密閉容器内に収納される電子増倍ユニットの生産性を飛躍的に向上させることが可能になる。また、電子増倍ユニットを組み立てる作業者自身の熟練度とは無関係に、製造された光電子増倍管間の性能バラツキが低減される。
【0013】
なお、この発明に係る光電子増倍管において、一対の絶縁支持部材それぞれの一部を構成している突起部は、ダイノード及びアノードを把持した状態で少なくとも加速電極を取り囲むよう該一対の絶縁支持部材それぞれの所定位置に配置されている。また、当該光電子増倍管において、電子増倍ユニットの生産性を向上させるため、第1固定構造は、加速電極の一部を挟むスリット溝を含むのが好ましい。同様の理由により、第2固定構造も、集束電極の一部を挟むスリット溝を含むのが好ましい。このように、収束電極の一部及び加速電極の一部がそれぞれ対応するスリット溝に挟まれることにより、これら収束電極及び加速電極の位置決め作業及び固定作業が同時に行える。
【0014】
さらに、この発明に係る光電子増倍管は、上述の構成には限定されない。すなわち、当該光電子増倍管がダイノードユニットに含まれる第1段ダイノードを直接支持する金属ディスクを有する場合であっても、加速電極及びダイノードユニットのいずれとも絶縁された状態で配置されれば、上述の要求特性を満たすことは可能である。加速電極とダイノードユニットとの間に配置される金属ディスクは、加速電極の電位よりも低く、かつ、ダイノードユニットに含まれる第1段ダイノードの電位よりも高い電位に設定される。
【0015】
また、加速電極とダイノードユニットとの間に、該ダイノードユニットに含まれる第1段ダイノードを直接支持するとともに該第1段ダイノードと同電位に設定された金属ディスクが配置されている場合であっても、当該光電子増倍管によれば、上述の要求特性を満たすことは可能である。すなわち、加速電極とダイノードユニットとの間に配置される金属ディスクは、カソードからの光電子を通過させるための貫通孔を有し、密閉容器の管軸からこの貫通孔のエッジまでの最短距離が、該密閉容器の管軸からダイノードユニットに含まれる第2段ダイノードの端部までの最短距離の1.3倍以上に設定されることによっても、上述の要求特性を満たすことができる。ただし、密閉容器の管軸から金属ディスクの貫通孔のエッジまでの最短距離は、該密閉容器の管軸からダイノードユニットに含まれる第2段ダイノードの端部までの最短距離の2.0倍以上であるのがより好ましい。
【0016】
なお、この発明に係る各実施形態は、以下の詳細な説明及び添付図面によりさらに十分に理解可能となる。これら実施形態は単に例示のために示されるものであって、この発明を限定するものと考えるべきではない。
【0017】
また、この発明のさらなる応用範囲は、以下の詳細な説明から明らかになる。しかしながら、詳細な説明及び特定の事例はこの発明の好適な実施形態を示すものではあるが、例示のためにのみ示されているものであって、この発明の思想及び範囲における様々な変形および改良はこの詳細な説明から当業者には自明であることは明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明に係る光電子増倍管の一実施形態を、図1〜図12、図13(a)〜図14(b)、及び図15を用いて詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一部位、同一部材には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0019】
図1は、この発明に係る光電子増倍管の一実施形態の概略構造を示す一部破断図である。
【0020】
この図1に示されたように、光電子増倍管100は、内部を真空引きするためのパイプ130(真空引き後に中実化される)が底部に設けられた密閉容器110を備えるとともに、この密閉容器110内に設けられたカソード120及び電子増倍ユニットを備える。
【0021】
密閉容器110は、内側にカソード120が形成された面板を有する円筒形の管胴と、複数のリードピン140を貫通した状態で支持しているステムにより構成されている。電子増倍ユニットは、ステムから密閉容器110内に延びたリードピン140によって該密閉容器110内の所定位置に保持されている。
【0022】
電子増倍ユニットは、集束電極200、加速電極300、及びアノードが内部に配置されたダイノードユニット400から構成されている。集束電極200は、カソード120から放出された光電子がダイノードユニット400に集束していくように該光電子の軌道を修正するための電極であって、カソード120とダイノードユニット400との間に配置されるとともに、カソード120からの光電子を通過させるための貫通孔を有する。また、加速電極300は、カソード120から放出された光電子をダイノードユニット400へと加速する電極であって、集束電極200とダイノードユニット400との間に配置されるとともに、集束電極の貫通孔を通過した光電子をさらにダイノードユニット400に向けて通通過させる貫通孔を有する。この加速電極300により、カソード120の光電子放出部位に起因した該カソード120からダイノードユニット400に至る光電子の走行時間のバラツキが減少される。また、ダイノードユニット400は、カソード120から集束電極200、加速電極300を介して到達した光電子に応答して放出される二次電子を順次カスケード増倍していくための複数段のダイノードと、これら複数段のダイノードによりカスケード増倍された二次電子を信号として取り出すためのアノードと、これら複数段のダイノード及びアノードを一体的に把持する一対の絶縁支持部材とを備える。
【0023】
図2は、図1中に示されたI−I線に沿った、第1実施形態に係る光電子増倍管の断面構造を示す図である。
【0024】
第1実施形態に係る光電子増倍管100において、密閉容器110内に収納された電子増倍ユニット400は、図2に示されたように、集束電極200、加速電極300とともにダイノードユニット400が一対の絶縁支持部材によって一体的に保持されている。特に、この一対の絶縁支持部材は、加速電極300ととともに、第1ダイノード(第1段ダイノード)DY1〜第7ダイノードDY7、アノード420、及びアノード420を通過した電子を再び該アノード420へ反転させる反射型ダイノードDY8を一体的に保持している。
【0025】
このように、当該光電子増倍管100は、ダイノードユニット400に含まれる少なくとも第1ダイノードDY1及び第2ダイノードDY2が導電性部材を介することなく加速電極300に直接対向した状態で、少なくとも加速電極300及びダイノードユニット400を一体的に保持する構造を備える。その結果、従来の光電子増倍管ような第1ダイノードDY1と同電位に設定された、該第1ダイノードDY1を直接支持する金属ディスクが、加速電極300とダイノードユニット400との間に介在しないので、カソード120から第1ダイノードDY1を経て第2ダイノードDY2へ到達する間での電子走行時間のバラツキが飛躍的に低減される。
【0026】
上述のような構成により、当該光電子増倍管100は、Uniformityとしてカソード全面を有効領域とするとともに、500psec以下のCTTD、300psec以下のTTSを実現する。
【0027】
以下、上述のように加速電極300とダイノードユニット400との一体的に構成する具体例を、図3〜図12を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明される構成では、ダイノードユニット400に含まれる複数のダイノードDY1〜DY8を一体的に保持する一対の絶縁支持部材のそれぞれに、ホトカソード120へ向かって伸びた、集束電極200及び加速電極300の配置位置の基準となる1又はそれ以上の突起部を設けることによって実現可能である。
【0028】
図3は、この発明に係る光電子増倍管に適用される電子増倍ユニットの構造を説明するための組立工程図である。
【0029】
図3に示されたように、電子増倍ユニットは、集束電極200、加速電極300、及びアノードを含むダイノードユニット400により構成されている。集束電極200は、カソード120からの光電子を通過させるための貫通孔が設けられている。加速電極300は、当該電子増倍ユニットの組立効率を向上させるべく、上側電極310と下側電極320により構成されている。これら上側電極310と下側電極320は、当該電子増倍ユニットの組立作業中、数カ所溶接されることにより一体化される。ダイノードユニット400は、それぞれが該第1及び第2絶縁支持部材410a、410bによって把持された、第1〜第7ダイノードDY1〜DY7、アノード420、反射型ダイノードDY8によって構成されている。なお、第1〜第7ダイノードDY1〜DY7及び反射型ダイノードDY8には、光電子あるいは二次電子を受け、該電子の入射方向に向かって新たに二次電子を放出する反射型の二次電子放出面が形成されている。また、第1ダイノードDY1の両端には、第1及び第2絶縁支持部材410a、410bによって把持されるよう、固定片DY1a、DY1bが設けられている。同様に、第2ダイノードDY2は、その両端に固定片DY2a、DY2bを有し、第3ダイノードDY3は、その両端に固定片DY3a、DY3bを有し、第4ダイノードDY4は、その両端に固定片DY4a、DY4bを有し、第5ダイノードDY5は、その両端に固定片DY5a、DY5bを有し、第6ダイノードDY6は、その両端に固定片DY6a、DY6bを有し、第7ダイノードDY7は、その両端に固定片DY7a、DY7bを有し、アノード420は、その両端に固定片420a〜420dを有し、そして、反射型ダイノードDY8は、その両端に固定片DY8a、DY8bを有する。
【0030】
加速電極300のうち下側電極320は、第1〜第7ダイノードDY1〜DY7、アノード420、反射型ダイノードDY8とともに、第1及び第2絶縁支持部材410a、410bによって把持される。上側電極310は、このように第1及び第2絶縁支持部材410a、410bによって把持された状態の下側電極320に溶接固定される。一方、集束電極200は、第1及び第2絶縁支持部材410a、410bの上部(カソード120側)に設けられた突起部に設置され、補強部材250a、250bが溶接されることにより、該第1及び第2絶縁支持部材410a、410bに固定される。
【0031】
また、上述のように第1〜第7ダイノードDY1〜DY7、アノード420、反射型ダイノードDY8を一体的に把持した状態で、第1及び第2絶縁支持部材410a、410bが金属クリップ450a〜450cによりさらに把持されており、これにより、上述の各部材が第1及び第2絶縁支持部材410a、410bによって各部材が安定的に保持される。
【0032】
図4は、電子増倍ユニットの一部を構成する第1及び第2の絶縁支持部材410a、410bの構造を説明するための図である。ここで、第1及び第2絶縁支持部材410a、410bは同一構造を有するため、共通の構造説明として第2絶縁支持部材410bについてのみ説明する。
【0033】
絶縁支持部材410bには、第1〜第7ダイノードDY1〜DY7、アノード420、及び反射型ダイノードDY8のそれぞれに設けられた固定片DY1b〜DY8b、420bが挿入される位置決め孔D1〜D8、42が設けられている。また、絶縁支持部材410bには、これら部材DY1〜DY8、420をともに把持する絶縁支持部材410aに対して容易に固定するため、金属クリップ450a〜450cを留める切り欠き部411a〜411cが設けられている。
【0034】
特に、絶縁支持部材410bには、上方に向かって伸びた突起部430a、430bを備える。すなわち、これら突起部430a、430bは、密閉容器110内に当該電子増倍ユニットが設置されたときにカソード側に向かって伸びている。そして、突起部430aには、加速電極300を位置決めするとともに固定するための、第1固定構造としてのスリット溝431aと、集束電極200を位置決めするとともに固定するための固定構造としてのスリット溝432aが設けられている。同様に、突起部430bには、加速電極300を位置決めするとともに固定するための、第1固定構造としてのスリット溝431bと、集束電極200を位置決めするとともに固定するための固定構造としてのスリット溝432bが設けられている。
【0035】
次に、加速電極300の構造について、図5及び図6を用いて説明する。図5は、加速電極300の一部を構成する下側電極320の構造を説明するための平面図及び側面図である。また、図6は、加速電極300の一部を構成する上側電極310の構造を説明するための平面図及び側面図である。
【0036】
加速電極300は、図5及び図6に示されたような構造を有する下側電極320及び上側電極310が数カ所溶接固定されることにより得られ、下側電極320は、第1及び第2絶縁支持部材410a、410bそれぞれの突起部430a、430bに設けられたスリット溝431a、431bに直接挿入、固定される。
【0037】
具体的に下側電極320は、図5に示されたように、第1〜第7ダイノードDY1〜DY7、アノード420、及び反射型ダイノードDY8とともに第1及び第2絶縁支持部材410a、410bに把持されるよう、切り欠き部320a〜320dが設けられている。なお、これら切り欠き部320a〜320dは、加速電極320に設けられた貫通孔321の外周に位置するフランジ部に、該貫通孔321を取り囲むように配置されている。一方、上側電極310は、図6に示されたように、貫通孔311を規定する胴体部312と、該胴体部311の一方の開口端部に設けられたフランジ部とで構成されている。このフランジ部の外周には、第1及び第2絶縁支持部材410a、410bのそれぞれに設けられた突起部430a、430bを挟むスリット溝310a〜310dが設けられるとともに、下側電極320と溶接固定するための固定用部位313a、313bが設けられている。
【0038】
上述のような構造を有する下側電極320及び上側電極310は、図7に示されたように、互いに対向するように配置された第1及び第2絶縁支持部材410a、410bに、溶接された状態で固定される。
【0039】
まず、下側電極320は、第1〜第7ダイノードDY1〜DY7、アノード420、及び反射型ダイノードDY8とともに第1及び第2絶縁支持部材410a、410bに把持される。このとき、下側電極320は、そのフランジ部のうち切り欠き部320a〜320dが設けられた部分(図5中に示された領域321a〜321dに相当する部分)が突起部430a、430bのそれぞれに設けられたスリット溝431a、431bにはめ込まれた状態で、第1及び第2絶縁支持部材410a、410bに把持される。その結果、下側電極320は、そのフランジ部を突起部430a、430bによって取り囲まれた状態で、第1及び第2絶縁支持部材410a、410bに固定される。なお、図8は、特に、下側電極320の切り欠き部320aの設置状況を示す拡大図である。ただし、下側電極320が第1及び第2絶縁支持部材410a、410bに把持されることにより、位置決めされるのは、図8中の矢印S1で示された方向に対してのみであって、矢印S2で示された方向に対しては、依然若干の回転が可能である。
【0040】
続いて、上側電極310は、図7に示されたように、スリット溝310a〜310dが突起部430a、430bを挟み込んだ状態で、下側電極320上に配置される。このとき、上側電極310は、下側電極320とは異なり、図8中の矢印S1で示された方向には移動可能であるが、矢印S2で示された方向への回転はできない。そこで、上側電極310におけるフランジ部外周に設けられた固定用部位313a、313bが下側電極320に溶接されることにより、上側電極310と下側電極320とが第1及び第2絶縁支持部材410a、410bに対して一体的に固定される(位置決めされる)。
【0041】
さらに、図9は、収束電極200の構造を説明するための平面図及び側面図である。
【0042】
具体的に集束電極200は、図9に示された胴体部210(実質的には集束電極本体であり、この明細書では胴体部210を指して単に集束電極という場合もある)と該胴体部210の回転を抑制するための補強部材250a、250bから構成されている。胴体部210は、図9に示されたように、円筒形状を有し、該胴体部の一方の開口端から内側に向かって伸び、貫通孔211を規定するフランジ部を備える。このフランジ部には、第1及び第2絶縁支持部材410a、410bの突起部430a、430bに設けられたスリット溝432a、432bに把持されるよう、切り欠き部220a〜220dが設けられている。なお、これら切り欠き部220a〜220dは、突起部430a、430bを集束電極200における貫通孔211を介して収納させるための導入部221a〜221dと、密閉容器110の管軸を中心とした胴体部210の回転を制限するための固定部222a〜222dとから構成されている。
【0043】
上述のような構造を有する胴体部210は、当該胴体部210自体が密閉容器110の管軸を中心に回転することにより、第1及び第2絶縁支持部材410a、410bそれぞれの突起部430a、430bに設けられたスリット溝432a、432bに固定される。
【0044】
具体的には、図10に示されたように、第1〜第7ダイノードDY1〜DY7、アノード420、反射型ダイノードDY8、及び加速電極300を把持している第1及び第2絶縁支持部材410a、410bの突起部430a、430bが胴体部210の貫通孔211内に挿入される。このときの状態が、図11の拡大図に示されている。
【0045】
すなわち、突起部430a、430bは、図11中の矢印S4で示された方向に沿って切り欠き部220a〜220dにおける導入部221a〜221dから挿入される。その後、胴体部210は、図11中の矢印S3で示された方向に回転し、突起部430a、430bのスリット溝432a、432bが固定部222a〜222dに当接するまで回転する。このとき、突起部430a、430bのスリット溝432a、432bは、胴体部210のフランジ部のうち223a〜223dで示された部分を把持することになる。これにより、胴体部210自体は、図11中の矢印S4で示された方向に対して固定される。しかしながら、胴体部210は、矢印S3で示された方向には固定されていないため、胴体部210の矢印S3で示された方向に沿った回転を制限すべく、該胴体部に補強部材250a、250bが溶接固定される。
【0046】
補強部材250aは、胴体部210のフランジ部に当接される本体板251aと胴体部210の側面に当接されるバネ部252aから構成されている。また、本端板251aには、互いに対向するよう配置された第1及び第2絶縁支持部材410a、410bの突起部430aを挟むスリット溝253aが設けられている。同様に、補強部材250bは、胴体部210のフランジ部に当接される本体板251bと胴体部210の側面に当接されるバネ部252bから構成されている。また、本体板251bには、互いに対向するよう配置された第1及び第2絶縁支持部材410a、410bの突起部430bを挟むスリット溝253bが設けられている。
【0047】
これら補強部材250a、250bは、図12中の矢印S5で示された方向から差し込まれる(スリット溝253a、253bが突起部430a、430bを挟み込む)。上述のように、胴体部210は、図11中の矢印S4で示された方向には固定されるが矢印S3で示された方向には固定されていない。一方、補強部材250a、250bは、突起部430a、430bをスリット溝253a、253bで挟み込むため、矢印S3で示された方向には固定されるが、矢印S4で示された方向には固定されています。このような胴体部210と補強部材250a、250bとをそれぞれ溶接固定することにより、当該集束電極200が、第1及び第2絶縁支持部材410a、410bに対して一体的に固定される(位置決めされる)。
【0048】
以上の組立工程を経て、密閉容器110内に収納される電子増倍ユニットが得られる。
【0049】
次に、この発明に係る光電子増倍管の効果について、図13(a)及び図13(b)を用いて説明する。なお、図13(a)は、上述の組立工程を経て得られた第1実施形態に係る光電子増倍管の動作を説明するための図であり、図13(b)は、比較例として用意された従来の光電子増倍管の動作を説明するための図である。
【0050】
第1実施形態に係る光電子増倍管では、図13(a)に示されたように、カソード120の位置a、d、gからそれぞれ放出された光電子は、a−b−cの軌道、d−e−fの軌道、及びg−h−iの軌道のいずれかを辿って第2ダイノードDY2に入射する。このとき、カソード120と第1ダイノードDY1との間には集束電極200及び加速電極300が配置されているため、a−bの軌道、d−eの軌道、g−hの軌道それぞれを辿る光電子の走行時間はほぼ同じである。
【0051】
また、この第1実施形態に係る光電子増倍管には、加速電極300と第1ダイノードDY1との間に導電性部材は配置されていないので、第1ダイノードDY1における位置b側に高い電界(加速電極300の高電位に起因)が入り込む。そのため、第1ダイノードDY1と第2ダイノードDY2との間に形成される静電レンズは、加速電極300、第2ダイノードDY2、及び第3ダイノードDY3の電位により形成される。したがって、第1ダイノードDY1における二次電子放出面上の位置bから放出される二次電子も、高い電位で引っ張られて第2ダイノードDY2に入射するため、b−cの軌道を辿る二次電子の走行時間は、h−iの軌道を辿る二次電子の走行時間とほぼ同じになる。すなわち、この発明に係る光電子増倍管の場合、カソード120から第1ダイノードDY1を経て第2ダイノードDY2に至る電子走行時間は、a−b−cの軌道、d−e−fの軌道、g−h−iの軌道のいずれもほぼ同じになり、CTTDを小さくすることができるとともに、良好なTTSが得られる。
【0052】
一方、比較例に係る光電子増倍管においても、カソード120と第1ダイノードDY1との間に集束電極200及び加速電極300が配置されているため、a’−b’の軌道、d’−e’の軌道、g’−h’の軌道それぞれにおける光電子の走行時間はほぼ同じである。しかしながら、この比較例に係る光電子増倍管では、図13(b)に示されたように、Disk(第1ダイノードDY1と同電位であって、集束電極200の電位よりも高く、かつ加速電極300の電位よりも低い電位を有する)が、加速電極300に起因した電界をブロックしているため、第1ダイノードDY1と第2ダイノードDY2との間に形成される静電レンズは、第2ダイノードDY2の電位及び第3ダイノードDY3の電位のみで形成される。第1ダイノードDY1における二次電子放出面上においてより第3ダイノードDY3に近い位置h’から放出される二次電子は、より強い電界の影響を受けながら(高い電位に引っ張られながら)第2ダイノードDY2へ入射する。一方、位置b’から放出される二次電子は、より弱い電界の影響を受けながら(低い電界に引っ張られながら)第2ダイノードDY2へ入射する。その結果、b’−c’の軌道を辿る二次電子の走行時間は、h’−i’の軌道を辿る二次電子の走行時間よりも長くなる。すなわち、比較例に係る光電子増倍管の場合、カソード120から第1ダイノードDY1を経て第2ダイノードDY2に至る電子走行時間は、g’−h’−i’の軌道、d’−e’−f’の軌道、a’−b’−c’の軌道の順で長くなり、CTTDを大きくなるとともに、TTSが悪化する。
【0053】
この発明に係る光電子増倍管は、上述のような第1実施形態の構成に限定されるものでなく、種々の変形が可能である。
【0054】
例えば、図14(a)は、この発明に係る光電子増倍管の第2実施形態の断面構造を示す図であり、図14(b)は、その応用例の断面構造を示す図である。
【0055】
図14(a)に示された第2実施形態に係る光電子増倍管は、従来の光電子増倍管と同様に、加速電極300とダイノードユニットとの間に、該ダイノードユニットに含まれる第1ダイノードDY1を直接支持するとともに該第1ダイノードDY1と同電位に設定された金属ディスクD2が配置されている。しかしながら、この第2実施形態に係る光電子増倍管では、金属ディスクD2は、カソード120からの光電子を通過させるための貫通孔D2aを有しており、密閉容器110の管軸からこの貫通孔D2aのエッジまでの最短距離が、該密閉容器110の管軸からダイノードユニットに含まれる第2ダイノードDY2の端部までの最短距離の1.3倍以上に設定されている。この構成によっても上述の要求特性を満たすことが可能である。
【0056】
また、図14(b)は、図14(a)に示された第2実施形態に係る光電子増倍管の応用例が示されているが、この応用例において、密閉容器110の管軸から金属ディスクD3の貫通孔D3aのエッジまでの最短距離は、該密閉容器110の管軸からダイノードユニットに含まれる第2ダイノードDY2の端部までの最短距離の2.0倍以上であってもよい。この場合も上述の要求特性を満たすことは可能である。
【0057】
さらに、図15は、この発明に係る光電子増倍管の第3実施形態の断面構造を示す図である。この第3実施形態に係る発明に係る光電子増倍管も、加速電極300と第1ダイノードDY1との間に配置され、該第1ダイノードを直接支持する金属ディスクD4を有する。しかしながら、この金属ディスクD4は、加速電極300及び第1ダイノードDY1のいずれとも絶縁された状態で配置されるとともに、加速電極300の電位よりも低く、かつ、第1ダイノードDY1の電位よりも高い電位に設定されている。この構成によっても、上述の要求特性を満たすことは可能である。
【0058】
なお、上述の第2及び第3実施形態のように、加速電極300と第1ダイノードDY1との間に、別途金属ディスクD2〜D4が配置される構成の場合、従来のような加速電極の固定構造が採用されてもよい。
【0059】
以上の本発明の説明から、本発明を様々に変形しうることは明らかである。そのような変形は、本発明の思想および範囲から逸脱するものとは認めることはできず、すべての当業者にとって自明である改良は、以下の請求の範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】この発明に係る光電子増倍管の第1実施形態の概略構造を示す一部破断図である。
【図2】図1中に示されたI−I線に沿った、第1実施形態に係る光電子増倍管の断面構造を示す図である。
【図3】第1実施形態に係る光電子増倍管に適用される電子増倍ユニットの構造を説明するための組立工程図である。
【図4】電子増倍ユニットの一部を構成する一対の絶縁支持部材の構造を説明するための図である。
【図5】図5は、加速電極における下側電極の構造を説明するための平面図及び側面図である。
【図6】加速電極における上側電極の構造を説明するための平面図及び側面図である。
【図7】一対の絶縁支持部材への加速電極の取り付け工程を説明するための図である。
【図8】図7の取り付け工程をさらに詳細の説明するための拡大図である。
【図9】収束電極の構造を説明するための平面図及び側面図である。
【図10】一対の絶縁支持部材への集束電極の取り付け工程を説明するための図である。
【図11】図10の取り付け工程をさらに詳細の説明するための拡大図である。
【図12】第1実施形態に係る光電子増倍管に適用される電子増倍ユニットの構成を示す側面図である。
【図13】(a)は、第1実施形態に係る光電子増倍管の動作を説明するための図であり、(b)は、比較例として用意された光電子増倍管の動作を説明するための図である。
【図14】(a)は、この発明に係る光電子増倍管の第2実施形態の断面構造を示す図であり、(b)は、その応用例の断面構造を示す図である。
【図15】この発明に係る光電子増倍管の第3実施形態の断面構造を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が真空状態に維持された密閉容器と、
前記密閉容器内に収納され、所定波長の光に応答して光電子を該密閉容器内に放出するホトカソードと、
前記密閉容器内に収納され、前記ホトカソードから到達した光電子に応答して二次電子を放出し、該二次電子を順次カスケード増倍していく複数段のダイノードを含むダイノードユニットと、
前記密閉容器内に収納され、前記ダイノードユニットによりカスケード増倍された二次電子を信号として取り出すアノードと、
前記ダイノードユニット及び前記アノードを把持した状態で、該ダイノードユニット及び該アノードを一体的に保持する一対の絶縁支持部材と、
前記ホトカソードと前記ダイノードユニットとの間に配置され、前記ホトカソードからの光電子が通過するための貫通孔を有する集束電極であって、前記ホトカソードから放出された光電子の軌道を修正するための集束電極と、
前記集束電極と前記ダイノードユニットの間に配置され、前記ホトカソードから前記集束電極を介して到達した光電子が通過するための貫通孔を有する加速電極であって、前記ホトカソードから前記集束電極を介して到達した光電子を加速するための加速電極と、そして、
前記ダイノードユニットに含まれる少なくとも第1段ダイノード及び第2段ダイノードが導電性部材を介することなく前記加速電極に直接対向した状態で、少なくとも前記加速電極及び前記ダイノードユニットを一体的に保持する構造と、を備えた光電子増倍管。
【請求項2】
内部が真空状態に維持された密閉容器と、
前記密閉容器内に収納され、所定波長の光に応答して光電子を該密閉容器内に放出するホトカソードと、
前記密閉容器内に収納され、前記ホトカソードから到達した光電子に応答して二次電子を放出し、該二次電子を順次カスケード増倍していく複数段のダイノードを含むダイノードユニットと、
前記密閉容器内に収納され、前記ダイノードユニットによりカスケード増倍された二次電子を信号として取り出すアノードと、
前記ダイノードユニット及び前記アノードを把持した状態で、該ダイノードユニット及び該アノードを一体的に保持する一対の絶縁支持部材と、
前記ホトカソードと前記ダイノードユニットとの間に配置され、前記ホトカソードからの光電子が通過するための貫通孔を有する集束電極であって、前記ホトカソードから放出された光電子の軌道を修正するための集束電極と、
前記集束電極と前記ダイノードユニットの間に配置され、前記ホトカソードから前記集束電極を介して到達した光電子が通過するための貫通孔を有する加速電極であって、前記ホトカソードから前記集束電極を介して到達した光電子を加速するための加速電極と、そして、
前記加速電極と前記ダイノードユニットとの間に該加速電極及び該ダイノードユニットのいずれとも絶縁された状態で配置された金属ディスクであって、前記カソードからの光電子を通過させるための貫通孔を有する金属ディスクとを備え、
前記金属ディスクは、前記加速電極の電位よりも低く、かつ、前記ダイノードユニットに含まれる第1段ダイノードの電位よりも高い電位に設定されていることを特徴とする光電子増倍管。
【請求項3】
内部が真空状態に維持された密閉容器と、
前記密閉容器内に収納され、所定波長の光に応答して光電子を該密閉容器内に放出するホトカソードと、
前記密閉容器内に収納され、前記ホトカソードから到達した光電子に応答して二次電子を放出し、該二次電子を順次カスケード増倍していく複数段のダイノードを含むダイノードユニットと、
前記密閉容器内に収納され、前記ダイノードユニットによりカスケード増倍された二次電子を信号として取り出すアノードと、
前記ダイノードユニット及び前記アノードを把持した状態で、該ダイノードユニット及び該アノードを一体的に保持する一対の絶縁支持部材と、
前記ホトカソードと前記ダイノードユニットとの間に配置され、前記ホトカソードからの光電子が通過するための貫通孔を有する集束電極であって、前記ホトカソードから放出された光電子の軌道を修正するための集束電極と、
前記集束電極と前記ダイノードユニットの間に配置され、前記ホトカソードから前記集束電極を介して到達した光電子が通過するための貫通孔を有する加速電極であって、前記ホトカソードから前記集束電極を介して到達した光電子を加速するための加速電極と、そして、
前記加速電極と前記ダイノードユニットとの間に配置され、前記ダイノードユニットに含まれる第1段ダイノードを直接支持する金属ディスクであって、該第1段ダイノードと同電位に設定された金属ディスクとを備え、
前記金属ディスクは、前記カソードからの光電子を通過させるための貫通孔を有し、前記密閉容器の管軸から該金属ディスクの貫通孔のエッジまでの最短距離は、該密閉容器の管軸から前記ダイノードユニットに含まれる第2段ダイノードの端部までの最短距離の1.3倍以上であることを特徴とする光電子増倍管。
【請求項4】
前記密閉容器の管軸から前記金属ディスクの貫通孔のエッジまでの最短距離は、該密閉容器の管軸から前記ダイノードユニットに含まれる第2段ダイノードの端部までの最短距離の2.0倍以上であることを特徴とする請求項3記載の光電子増倍管。
【請求項1】
内部が真空状態に維持された密閉容器と、
前記密閉容器内に収納され、所定波長の光に応答して光電子を該密閉容器内に放出するホトカソードと、
前記密閉容器内に収納され、前記ホトカソードから到達した光電子に応答して二次電子を放出し、該二次電子を順次カスケード増倍していく複数段のダイノードを含むダイノードユニットと、
前記密閉容器内に収納され、前記ダイノードユニットによりカスケード増倍された二次電子を信号として取り出すアノードと、
前記ダイノードユニット及び前記アノードを把持した状態で、該ダイノードユニット及び該アノードを一体的に保持する一対の絶縁支持部材と、
前記ホトカソードと前記ダイノードユニットとの間に配置され、前記ホトカソードからの光電子が通過するための貫通孔を有する集束電極であって、前記ホトカソードから放出された光電子の軌道を修正するための集束電極と、
前記集束電極と前記ダイノードユニットの間に配置され、前記ホトカソードから前記集束電極を介して到達した光電子が通過するための貫通孔を有する加速電極であって、前記ホトカソードから前記集束電極を介して到達した光電子を加速するための加速電極と、そして、
前記ダイノードユニットに含まれる少なくとも第1段ダイノード及び第2段ダイノードが導電性部材を介することなく前記加速電極に直接対向した状態で、少なくとも前記加速電極及び前記ダイノードユニットを一体的に保持する構造と、を備えた光電子増倍管。
【請求項2】
内部が真空状態に維持された密閉容器と、
前記密閉容器内に収納され、所定波長の光に応答して光電子を該密閉容器内に放出するホトカソードと、
前記密閉容器内に収納され、前記ホトカソードから到達した光電子に応答して二次電子を放出し、該二次電子を順次カスケード増倍していく複数段のダイノードを含むダイノードユニットと、
前記密閉容器内に収納され、前記ダイノードユニットによりカスケード増倍された二次電子を信号として取り出すアノードと、
前記ダイノードユニット及び前記アノードを把持した状態で、該ダイノードユニット及び該アノードを一体的に保持する一対の絶縁支持部材と、
前記ホトカソードと前記ダイノードユニットとの間に配置され、前記ホトカソードからの光電子が通過するための貫通孔を有する集束電極であって、前記ホトカソードから放出された光電子の軌道を修正するための集束電極と、
前記集束電極と前記ダイノードユニットの間に配置され、前記ホトカソードから前記集束電極を介して到達した光電子が通過するための貫通孔を有する加速電極であって、前記ホトカソードから前記集束電極を介して到達した光電子を加速するための加速電極と、そして、
前記加速電極と前記ダイノードユニットとの間に該加速電極及び該ダイノードユニットのいずれとも絶縁された状態で配置された金属ディスクであって、前記カソードからの光電子を通過させるための貫通孔を有する金属ディスクとを備え、
前記金属ディスクは、前記加速電極の電位よりも低く、かつ、前記ダイノードユニットに含まれる第1段ダイノードの電位よりも高い電位に設定されていることを特徴とする光電子増倍管。
【請求項3】
内部が真空状態に維持された密閉容器と、
前記密閉容器内に収納され、所定波長の光に応答して光電子を該密閉容器内に放出するホトカソードと、
前記密閉容器内に収納され、前記ホトカソードから到達した光電子に応答して二次電子を放出し、該二次電子を順次カスケード増倍していく複数段のダイノードを含むダイノードユニットと、
前記密閉容器内に収納され、前記ダイノードユニットによりカスケード増倍された二次電子を信号として取り出すアノードと、
前記ダイノードユニット及び前記アノードを把持した状態で、該ダイノードユニット及び該アノードを一体的に保持する一対の絶縁支持部材と、
前記ホトカソードと前記ダイノードユニットとの間に配置され、前記ホトカソードからの光電子が通過するための貫通孔を有する集束電極であって、前記ホトカソードから放出された光電子の軌道を修正するための集束電極と、
前記集束電極と前記ダイノードユニットの間に配置され、前記ホトカソードから前記集束電極を介して到達した光電子が通過するための貫通孔を有する加速電極であって、前記ホトカソードから前記集束電極を介して到達した光電子を加速するための加速電極と、そして、
前記加速電極と前記ダイノードユニットとの間に配置され、前記ダイノードユニットに含まれる第1段ダイノードを直接支持する金属ディスクであって、該第1段ダイノードと同電位に設定された金属ディスクとを備え、
前記金属ディスクは、前記カソードからの光電子を通過させるための貫通孔を有し、前記密閉容器の管軸から該金属ディスクの貫通孔のエッジまでの最短距離は、該密閉容器の管軸から前記ダイノードユニットに含まれる第2段ダイノードの端部までの最短距離の1.3倍以上であることを特徴とする光電子増倍管。
【請求項4】
前記密閉容器の管軸から前記金属ディスクの貫通孔のエッジまでの最短距離は、該密閉容器の管軸から前記ダイノードユニットに含まれる第2段ダイノードの端部までの最短距離の2.0倍以上であることを特徴とする請求項3記載の光電子増倍管。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2008−535147(P2008−535147A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−538791(P2007−538791)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【国際出願番号】PCT/JP2006/303338
【国際公開番号】WO2006/112143
【国際公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【国際出願番号】PCT/JP2006/303338
【国際公開番号】WO2006/112143
【国際公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
[ Back to top ]