説明

光電池を含む曲面モジュール

本発明は次のものに関する:
矩形光電池が埋め込まれた透明高分子材料からなるモジュールであって、前記光電池の側面が、モジュールが曲率半径R、Rを有することにしたがって、それぞれの垂直方向dおよびdにおいて長さlおよびlを有し、eが高分子材料の全体厚みを指し、esupが太陽に向けて方向を合わせられた光電池の側面を被覆する高分子材料の最小厚みとすると、i=1および2の場合、


であることを特徴とするモジュール、
そのようなモジュールを製造する2つのプロセス、
輸送車両用、建築業または街路備品用のその適用、および
そのようなモジュールを含む自動車の屋根または屋根の一部。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、小さな曲率半径、つまり、著しい曲率を有するこれまで以上に複雑な形状が求められる光電池を含むモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特に、剛体支持体を有するタイプの高性能の光電池の組み込みは、2つの割線軸に沿って局所的に曲率を有するモジュールにおいてまだ達成されることができない。
【0003】
この問題は、以下に本発明によって解決されることができ、その1つの主題は、矩形光電池が埋め込まれた透明高分子材料からなるモジュールであり、前記光電池の側面が、モジュールが曲率半径R、Rを有することにしたがって、それぞれの垂直方向dおよびdにおいて長さlおよびlを有することによって識別され、eが高分子材料の全体厚みを指し、esupが太陽に向けて方向を合わせられた光電池の側面を被覆する高分子材料の最小厚みとすると、i=1および2の場合、
【0004】
【数1】

である。
【0005】
このように、本発明は、光電池、さらに剛体光電池の、曲率を有する、さらに1つまたは2つの割線、特に垂直軸に沿って著しい曲率を有する複数の位置で、モジュールへの組み込みを可能にする。
【0006】
本発明のモジュールは、その2つの他の寸法と比較して小さな厚みを有するシートとして図形的に定義されてもよく、その表面は、多少の複合体および多少の曲面形状を有していてもよい。2つの曲率半径RまたはRのうちの1つは、他の垂直方向に沿った曲率に対して、対応する方向dまたはdに沿った曲率を無視し、モジュールの図形がそのとき(単軸に沿って)円筒状の曲率を有すると考えることができるように、他と比較して十分に大きくてもよい。
【0007】
任意の透明高分子材料がモジュールを構成してもよく、透明高分子材料は、ポリカーボネート(PC)、ポリメタクリル酸メチルメチル(PMMA)などのアクリル、ポリエチレン(PE)またはポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン、ポリアミド(PA、特にPA66)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリビニールアセタール、特にポリビニールブチラール(PVB)、ポリウレタン(PU)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、エチレン酢酸ビニール(EVA)、アイオノマー樹脂(ポリアミンで中和された、イオン架橋を備えたエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体)などの共重合体であり、特に、それらは、単独またはいくつかの混合物として射出成形されることができる。
【0008】
本発明のモジュールは、特に射出成形された全体厚みeのそのような高分子材料のシートから構成され、矩形(または正方形)光電池が埋め込まれている。しかしながら、このシートは、本発明の範囲から逸脱することなく、積層されたおよび/または複合モジュールを構成するために乾燥ガスのギャップの介在でのモジュールを構成するために、PVB、PU、EVAまたは不透明中間接着層などの透明中間接着層によって、無機化合物または有機ガラスまたは不透明材料からなる他の透明材料に取り付けられてもよい。
【0009】
しかしながら、モジュールのそのような任意の追加の構成要素は、光電池を組み込む高分子材料シートの側面に、太陽に対して反対側にあるようにされ、または任意には、これらの追加の構成要素が透明である条件で、太陽の方に向けられるようにされるその側面に取り付けられることが好ましく、太陽輻射の大部分が通過することを可能にし、高い光透過率を有し、特に着色されていない。
【0010】
モジュールの表面のいくらかの部分が透明である場合、それはグレージングと呼ばれてもよい。他方、この表面が完全に不透明である場合、つまり、少なくともモジュールの1つの構成要素が太陽に対してセルの後ろに位置するようにし、その全表面にわたってそれ自体不透明であるなら、モジュールは、自動車または他の輸送車両の本体またはカウルの部品を構成してもよく、または建築業等用であってもよい。
【0011】
モジュール内で、方向d、dに沿った光電池g、g間の間隔が、モジュールの一方の側面または他方の側面で得ることが望まれる視覚的印象によって選択されたいずれかであることが特定される。モジュールの表面の一部が透明な場合、gおよびgの値が大きいほど、透明となる可能性のあるモジュールの表面の割合は大きい。このようにして、モジュールの表面にわたってgおよび/またはgの値を変えることによって、着色されたモジュールまたは陰影モジュールに相当する結果を得ることが可能である。
【0012】
光電池は、最大限でも0.5mmに等しい厚みを有し、モジュールの厚みに対して無視できると考えられ、モジュールの厚みは、例えば、約3〜4mmであってもよい。
【0013】
それらは、可撓性または剛体ベースに堅く取り付けられた活性面から構成される。
【0014】
剛体ベースは、25〜500μm、好ましくは75〜250μmの厚みを有する金属または均等物であってもよく、または13〜125μmの厚みを有するポリイミドなどのポリマーであってもよい。それらの例は、
可撓性であり、厚みが25〜200μm、好ましくは100〜150μm、または、
剛体であり、厚みが100〜500μm、好ましくは175〜225μmである
鋼からなるセルベースである。
【0015】
光電池の活性面は、20〜200μmの厚みを有し、例えば、可撓性金属またはポリマーベースと結合されたアモルファスSiのシートから構成されていてもよく、または100〜300μmの厚みを有し、例えば、剛体金属ベースと結合された結晶性Siのシートから構成されていてもよく、または代わりに可撓性または剛体ポリマー、金属などのベースと結合されたCIGS(CuInGaSe)またはCdTeタイプの薄膜から構成されていてもよい。
【0016】
しかしながら、好ましくは、前記光電池の少なくとも1つは、特に、単結晶または多結晶シリコンの活性面を有する剛体支持体を有し、その効率は比較的高い。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のモジュールの1つの好ましい実施形態では、それが形成される高分子材料はポリカーボネートであり、太陽に向けて方向を合わせられた側面上の光電池を被覆するこの高分子材料の最小厚みesupは、少なくとも2.5mmに等しい。この値は、ポリカーボネートの射出成形が実行される場合に特に推奨される。
【0018】
さらに、重量、空間要件などを考慮して、特に、自動車輸送などの輸送の分野において、高分子材料の全体厚みeは、有利にはほとんど4mmに等しい。
【0019】
本発明のモジュールは、少なくとも1点で、2つの垂直軸に沿った曲率、特に、RおよびRの有限の値を有する。より具体的には、1つの有利な変形によれば、RおよびRは、多くても2000mm、好ましくは1500mm、特に好ましくは1000mmに等しい。
【0020】
方向dまたはdに沿った曲率のうちの1つは、好ましくは著しくてもよく、曲率半径RおよびRの少なくとも1つが、多くても1000mm、好ましくは750mm、特に好ましくは500mmに等しいことによって、モジュールの複雑な形状の表現である。2つの曲率半径RおよびRのうちの一方がこのように特に小さい場合、他方ははるかに大きくてもよく、その結果、本発明の範囲から逸脱することなく、この点での曲率が円筒状(2つの方向dまたはdのうちの単独の1つに沿って)であると考えることができる。
【0021】
本発明のモジュールの1つの特有の実施形態では、セルが埋め込まれた透明高分子材料は、積層品の中間接着層を構成し、この層は、ポリビニールブチラール(PVB)、ポリウレタン(PU)、エチレン酢酸ビニール(EVA)等であってもよい。この中間接着層は、このとき、2枚のガラスシートまたは1枚のガラスシート、および1枚の他の材料シート、例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、アイオノマー樹脂などのポリマー、あるいは他の材料のそのような2枚のシートを結合する。特に、モジュールが電気自動車の屋根またはフロントガラスに設置されることが意図される場合、積層品のこの中間接着層は、そのとき有利には音響特性を有し、例えば、雨は、そのときパッセンジャーコンパートメントにおいてそれほど聞こえない。
【0022】
1つの有利な特徴によれば、光電池は減衰包装材料に封入されている(特に、セルとそれらが埋め込まれた透明高分子材料との減衰微分線形熱膨張に関して)。この減衰包装材料は、例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリウレタン(PU)、エチレン−テトラフロオルエチレン(ETFE)、フルオロエチレン−プロピレン(FEP)または均等物などのフッ素重合体フィルムから構成されており、13μm〜2mmの厚みを有し、好ましくはほとんど500μmに等しい。この包装材料は、さらに水分からその光電池を保護する。この減衰包装材料の外側表面は、それが一体化されることが意図されるものと同じ材料(例えば、積層品への一体化の場合に、ポリカーボネート、ポリビニールブチラール、またはエチレン酢酸ビニールの射出成形の場合のポリカーボネート)から構成されていることが好ましい。
【0023】
他の有利な特徴によれば、モジュールは、最も著しい曲率の領域におけるガラスまたはポリマー基板上の光起電性薄膜と結合された離散化剛体光電池を含む。これらの離散化剛体セルは、そのとき、上記本発明のモジュールの前記矩形光電池、特に高性能を有するタイプから、特に少なくとも部分的に構成される。それらは、曲率への適用、それらの領域における最適な光起電性効率、および太陽輻射に対して反対側のモジュールの側面の明度の審美的および視覚的制御を確実にする。最も著しい曲率の領域は、エッジ領域であってもよく、光起電性薄膜の使用は、離散化剛体光電池の増加した発電量と結びつくことを可能にし、モジュールの表面は、変化され複雑な曲率を有する。積層されたモジュールでは、光起電性薄膜は、例えば、積層品の内面上に堆積される。
【0024】
本発明の他の主題は次のとおりである:
熱可塑性高分子材料の射出成形のための金型のキャビティ内に光電池を位置決めすること、次いでその射出成形を含む上記したモジュールを製造するプロセス、
積層品の組み立てに先立って、積層品の中間接着層への光電池の組み込み(例えば、この層の2つの構成シート間にそれらを挿入することによって)、次いで、従来の手段(温度、圧力、真空)によるこの組み立てを含む他のモジュールを上記のように製造するプロセス、
陸上、空中、または水上輸送車両用、特に、自動車の屋根として、建築業または街路備品(バス待合所、表示パネルなど)用、部分的透明部品、グレージング、または完全不透明部品(本体、カウルなどの部品)としてのこのモジュールの適用、
上記モジュールを含む自動車の屋根または屋根の一部。
【0025】
本発明は、以下に添付図面によって説明される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明によるグレージング(部分的に透明なモジュール)の斜視概略表示である。
【図2】グレージングの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1および図2をともに参照すると、グレージング1は、例えば、点Oで二重曲率を有し、それぞれ半径RおよびRは、それぞれ、2つの垂直面P=(d)およびP=(d)に沿う。
【0028】
グレージング1は、厚みeの1枚のポリカーボネートから構成されており、平坦剛体矩形光電池2が中に埋め込まれており、単結晶または多結晶シリコンからなる活性面を有する。
【0029】
光電池2の厚みは、eと比較して無視できる。
【0030】
太陽に向けて方向を合わせられた側面上の光電池2を被覆するポリカーボネートの最小厚みは、esupである。
【0031】
ここで、EおよびEsupは、4mmおよび2.5mmにそれぞれ等しい。
【0032】
光電池の寸法l×lの極大値は、局部曲率半径RおよびRの関数として計算され、条件によって2027.25mmおよび500mmにそれぞれ等しい。
【0033】
【数2】

同じ計算によって、
【0034】
【数3】

【0035】
光電池の間隔、言いかえれば、間隔gおよびgの値は、いくつかの基準の関数として選択される:
これらの値が小さいほど、電気を生成するための表面は大きい、
しかし、これらの値が小さいほど、太陽光の大部分が通過することを可能にするモジュールの表面の割合は小さい。
【0036】
このように、この例と同様に、モジュールが(部分的透明)グレージングである場合、gおよびgの値の選択は、太陽に対して反対側にある側面(車両パッセンジャーコンパートメント、建物内部など)から見られた審美的発生(明度の陰影などの様々な視覚効果)を有し、モジュールが完全に不透明な場合、gおよびgの値の選択が太陽側から見られた審美的発生を有する。
【0037】
いくつかの光電池を互いに、およびこれらのセルを集電装置に連結する電気的接続は表わされていない。
【0038】
このように、高性能の剛体光電池は、単純なプロセス(ポリカーボネートの射出成形、積層など)によって複雑な形状のグレージングに一体化された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形光電池が埋め込まれた透明高分子材料からなるモジュールであって、
前記光電池の側面が、モジュールが曲率半径R、Rを有することにしたがって、それぞれの垂直方向dおよびdにおいて長さlおよびlを有し、
が高分子材料の全体厚みを指し、esupが太陽に向けて方向を合わせられた光電池の側面を被覆する高分子材料の最小厚みとすると、i=1および2の場合、
【数1】

であることを特徴とするモジュール。
【請求項2】
前記光電池の少なくとも1つが剛体支持体を有することを特徴とする、請求項1に記載のモジュール。
【請求項3】
前記高分子材料がポリカーボネートであり、太陽に向けて方向を合わせられた光電池の側面を被覆する高分子材料の最小厚みesupが、少なくとも2.5mmに等しいことを特徴とする、請求項1または2に記載のモジュール。
【請求項4】
高分子材料の全体厚みeが多くても4mmに等しいことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のモジュール。
【請求項5】
およびRが多くても2000mm、好ましくは1500mm、特に好ましくは1000mmに等しいことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のモジュール。
【請求項6】
曲率半径RおよびRの少なくとも1つが多くても1000mm、好ましくは750mm、特に好ましくは500mmに等しいことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のモジュール。
【請求項7】
前記透明高分子材料が積層品の中間接着層を構成することを特徴とする、請求項1、2、4、5、および6のいずれか一項に記載のモジュール。
【請求項8】
光電池が減衰包装材料に封入されていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のモジュール。
【請求項9】
最もきつい曲率の領域でガラスまたはポリマー基板上の光起電性薄膜と結合した離散化剛体光電池を含むことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のモジュール。
【請求項10】
熱可塑性高分子材料の射出成形のための金型のキャビティ内に光電池を位置決めすること、次いでその射出成形を含む、請求項7以外の請求項1から9のいずれか一項に記載のモジュールを製造するプロセス。
【請求項11】
その組み立てに先立って積層品の中間接着層に光電池を組み込むこと、次いでこの組み立てを含む、請求項1、2、および4から9のいずれか一項に記載のモジュールを製造するプロセス。
【請求項12】
陸上、空中、または水上輸送車両用、建築業または街路備品用の請求項1から9のいずれか一項に記載のモジュールの適用。
【請求項13】
請求項1から9のいずれか一項に記載のモジュールを含む自動車の屋根または屋根の一部。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−513248(P2013−513248A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542599(P2012−542599)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【国際出願番号】PCT/FR2010/052611
【国際公開番号】WO2011/070277
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(500374146)サン−ゴバン グラス フランス (388)
【Fターム(参考)】