光電流を用いた被検物質の特異的検出に用いられるセンサユニットおよびそれを用いた測定装置
【課題】増感色素の光励起により生じる光電流を用いた被検物質の特異的検出において電解液の代わりに電解質含有シートを使用することができ、それにより構造および検出手順を大幅に簡素化できるセンサユニットおよび測定装置の提供。
【解決手段】本発明のセンサユニットは、増感色素の光励起により生じる光電流を用いた被検物質の特異的検出に用いられるものであり、作用電極と、作用電極が所定の位置に載置されるための位置決め部材を備えてなる。被検物質の特異的検出は、電解質含有シートを作用電極と対電極の間に挟持させて行われる。
【解決手段】本発明のセンサユニットは、増感色素の光励起により生じる光電流を用いた被検物質の特異的検出に用いられるものであり、作用電極と、作用電極が所定の位置に載置されるための位置決め部材を備えてなる。被検物質の特異的検出は、電解質含有シートを作用電極と対電極の間に挟持させて行われる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増感色素の光励起により生じる光電流を用いて、核酸、外因性内分泌攪乱物質、抗原等の特異的結合性を有する被検物質を特異的に検出する方法に用いられるセンサユニットおよび測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体試料中のDNAを解析する遺伝子診断法が、各種病気の新たな予防および診断法として、有望視されている。このようなDNA解析を簡便かつ正確に行う技術として、被検体DNAを、これと相補的な塩基配列を有し、かつ蛍光物質を標識されたDNAプローブとハイブリダイズさせ、その際の蛍光シグナルを検出する、DNAの分析方法が知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。この方法にあっては、ハイブリダイゼーションによる二本鎖DNAの形成を色素の蛍光により検出する。
【0003】
また、増感色素の光励起により生じる光電流を用いて被検物質(DNA、蛋白などの生体分子)を特異的に検出する方法も提案されている(例えば、特許文献3および非特許文献1参照)。このような検出方法は電解液を満たしたセンサユニットを用いて行われている。
【0004】
一方、酵素の増減を電気信号に変換する酸素電極を用いたマイクロバイオセンサにおいては、電解液含有体としてアガロースのようなゲルを用いることが知られている(例えば、特許文献4参照)。
【0005】
ところで、遺伝子の検出、遺伝子型の決定は、主にDNAチップ及び蛍光検出装置により行われている。一般的なDNAチップとは判明している遺伝子と相補的な塩基配列の核酸プローブを数センチメートル角のガラスチップやシリコンチップに固定化されたものである。
【0006】
一般的に用いられる蛍光検出装置の構成を図1に示す。レーザなどの光源5からの励起光9は、ビームスプリッター4で反射されて、対物レンズ6に入る。励起光9は、対物レンズ6で集光されて、DNAチップ8の核酸プローブの固定部7に当たる。ハイブリダイゼーション反応でハイブリダイゼーションした場合、遺伝子に基づいた核酸プローブと蛍光色素を標識した核酸鎖が二本鎖を形成し、溶液を洗い流した後も、蛍光物質がDNAチップ8上に残ることになり、励起光9により蛍光標識が球状放射の蛍光10を発生する。ハイブリダイゼーションしていない場合は、蛍光しない。蛍光10と励起光9には、数十ナノメートル程度の波長の差がある。蛍光の一部11と励起光9の反射光が対物レンズ6に戻り、ビームスプリッター4に入射する。励起光9の反射光は、ほとんどがビームスプリッター4で反射されて、光源側に向かい、蛍光の一部11は、ビームスプリッター4を透過して、受光器1側に向かう。ビームスプリッター4を透過した蛍光の一部11は、波長を限定するフィルター3で励起光9の反射光は除去される。蛍光の一部11は、受光器レンズ2を通って、蛍光強度を測定する受光器1に入射する。ハイブリダイゼーション反応でハイブリダイゼーションしていない場合は、蛍光しないために、受光器1に光は入射しない。
【0007】
また、検出すべき目的遺伝子に対して相補的な塩基配列を有する一本鎖の核酸プローブを電極表面に固定化し、一本鎖に変性された遺伝子を含む検体と反応させた後、遺伝子とハイブリダイズした前記核酸プローブに二本鎖認識体を結合しこれを電気化学測定によって検出することによって前記目的遺伝子の存在を確認する遺伝子検出装置が知られている(例えば、特許文献5参照)。ここで、電気化学測定は、作用電極および対電極を電解液に浸し、リニアスイープボルタンメトリーによる酸化電流を測定することにより行われている。
【0008】
【特許文献1】特開平7−107999号公報
【特許文献2】特開平11−315095号公報
【特許文献3】特開2006−119111号公報
【特許文献4】特公平5−84860号公報
【特許文献5】特開2000−83647号公報
【非特許文献1】中村他「光電変換による新しいDNA二本鎖検出法」(日本化学会講演予稿集Vol.81ST NO.2(2002)第947頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、構造および検出手順を大幅に簡素化でき、高い加工精度を必要としないセンサユニットおよび測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、今般、増感色素の光励起により生じる光電流を用いた被検物質の特異的検出において電解液の代わりに電解質含有シートを使用することができ、それによりセンサユニットおよび測定装置の構造および検出手順を大幅に簡素化できるとの知見を得た。さらに、検出スポットを有する作用電極に対して許容範囲内の精度で光照射できるような位置決めを行えば、対電極および電解質含有シートのサイズ精度や作用電極に対する配置精度は非常に緩やかにできることも確認した。作用電極の位置決めは従来より用いられている位置決めピンや弾力性のあるバネなどを組み合わせることで容易に達成できるレベル(公差として0.1mm程度)で十分であること、そして、電解質含有シート、ならびに作用電極位置決め機構を備えたセンサユニットおよび測定装置を使用することにより、光電流を高い感度および精度で検出できるとの知見も得た。
【0011】
すなわち、本発明によるセンサユニットは、増感色素の光励起により生じる光電流を用いた被検物質の特異的検出に用いられるセンサユニットであって、作用電極と、対電極と、前記対電極を載置し、さらに前記作用電極が所定の位置に載置されるための位置決め部材を備えてなるベースプレートと、前記作用電極と対向する位置に光照射口を備えた蓋部とを備えてなり、被検物質の特異的検出が、電解質含有シートを前記作用電極と対電極との間に挟持させて行われるものである。
【0012】
また、本発明による作用電極は、特異的検出時に使用者が作用電極に直接触れることなく検出できるように、センサチップケースに取り付けて用いてもよい。特異的検出時に使用者が作用電極に直接触れることなく検出できれば、さらに精度よい検出が可能となる。センサチップケースには、作用電極がセンサチップケースの所定の位置に保持されるための、窪み部および突起部の少なくともいずれか一方と、作用電極をベースプレートの所定の位置に固定されるための位置決め部材を通すための開口部とを有しており、披検物質の特異的検出が、電解質含有シートを作用電極とセンサチップケースとの間に挟持させて行われる。ただし、センサチップケースに設けられた窪み部または突起部は、作用電極をベースプレートの所定の位置に固定するために多少の遊びを設けて設置する必要がある。また、センサチップケースを用いる場合、ベースプレートにはセンサチップケースを所定の位置に着脱可能に載置し、補助的に位置決めするための補助部材を備える。
【0013】
さらに、本発明による装置は、増感色素の光励起により生じる光電流を用いた被検物質の特異的検出に用いられる測定装置であって、上記センサユニットと、前記作用電極に光を照射する光源と、前記光源をXY方向に移動させるXY移動機構と、前記作用電極と前記対電極との間を流れる電流を測定する電流計と、前記光源、前記XY移動機構、および電流計を制御し、前記電流計からの電流信号を受信し、該電気信号に基づいて被検物質の存在、型、および濃度の少なくとも一種を決定する制御演算手段とを備えたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
センサユニット
本発明の態様におけるセンサユニットは、増感色素の光励起により生じる光電流を用いた被検物質の特異的検出に用いられるセンサユニットである。このセンサユニットは、作用電極を所定の位置に載置するための位置決め部材を備えたベースプレートと、光照射のための光照射口を備える蓋部を備えてなる。
【0015】
蓋部は、作用電極、電解質含有シートおよび対電極を密着させるために設けられる。
【0016】
ベースプレートは支持部材、付勢部材を設けるために十分な剛性と加工性を有する材質からなる。樹脂、セラミック、金属などを用いることができるが、絶縁性、加工性の観点から樹脂が最も好ましい。
【0017】
対電極はベースプレートに配置するが、ベースプレートに設けられた作用電極との電気的接点に接触しなければ、特に固定して配置する必要はない。対電極の上に電解質含有シートを載置し、さらに作用電極を位置決め部材により所定の位置に載置させる。この時、作用電極は光源に対し、作用電極上の検出スポットの大きさと光源の光束径によって決められる精度で位置決めをする必要があるが、作用電極上に載置する電解質含有シートのサイズは作用電極上の検出スポットが配置された領域をカバーすればよく、その載置の精度も目視で行える。また、対電極のサイズも同様に作用電極上の検出スポットが配置された領域をカバーすれば十分であり、上述したとおり、ベースプレートに設けた電気的接点に接触しなければ、対電極の加工精度やベースプレートへの取り付けは特段の精度を必要としない。さらに、上述したようにセンサチップケースを用いる場合、ベースプレートにはセンサチップケースを所定の位置に載置するための補助部材を備える。
【0018】
電解質含有シートを用いることで、特段高い加工精度で作製されていなくても、増感色素の光励起により生じる光電流の検出が容易に精度良く行えるセンサユニットを提供できる。
【0019】
本発明において用いられる電解質含有シートは、増感色素の光励起により生じる光電流を用いた被検物質の特異的検出において電解質媒体として用いられるシート状の電解質含有体である。そして、この電解質含有シートは、典型的には、含水性基材と、含水性基材中に含有される電解質とを含んでなることができる。電解質は含水性基材中を自由に移動して増感色素、作用電極、および対電極との間で電子の授受に関与できる。したがって、電解質含有シートを作用電極および対電極の間に挟持させ、各電極表面を電解質含有シートと接触させておくことで、作用電極と対電極との間で、増感色素の光励起により生じる光電流が流れることができる。この電解質含有シートは、電解質媒体という点では従来使用されている電解液と同じであるが、単独で取り扱うことが可能なシート状物であるため、作用電極と対電極の間に容易に挟み込んだり、取り外したり、あるいは持ち運んだりすることができ、その結果、装置構造および検出手順を大幅に簡素化できる。事実、本発明のセンサユニットないし測定装置によれば、作用電極、電解質含有シート、および対電極を、互いに載置ないし挟持するだけという極めて簡便な手法で正確に組み立てることができることは上述の通りである。これは、作用電極と対電極との間に電解液を充填して行われる従来法において、電解液を送液する機構(例えばポンプ、バルブ、およびそれらの制御機構)、液漏れ防止機構(例えばパッキン)、および電解液の廃液処理といった複雑な機構ないし工程が必要とされ、そのためコストの増大および装置の大型化を招いていたという実情に照らせば、極めて大きな利点であると言える。また、電解質含有シートの使用により電解液を送液するための時間が不要となるため、作用電極と対電極との間に電解質含有シートを挟むだけで、即座に測定に付することができるため、測定時間も短縮される。
【0020】
本発明の好ましい態様によれば、対電極表面に電解質含有シートを載置し、さらに作用電極で挟み込む構造にしてもよい。この態様のセンサユニットの一例を図2に示す。図2に示すセンサユニット60は、ベースプレート61に対電極62を備えており、さらに作用電極63を所定の位置に載置するための位置決め部材として支持部材64、付勢部材65を備えている。
【0021】
支持部材はピン形状あるいは少なくとも前記作用電極が当接する部位が平面である突起形状、さらにはベースプレートに設けられた窪み部の壁面を用いることができる。支持部材の材質としては、樹脂、金属、セラミック、ガラスなど十分な強度と加工性を有するものを使用することができる。付勢部材は板状、コイル状のバネ、ゴムやポリマーなどの材質からなる弾力性突起形状を具体例として挙げることができる。作用電極は、付勢部材によって、支持部材に適度な圧力で押しつけられて固定され、所定の位置に配置される。
【0022】
図3に支持部材としてピン形状の突起物41を用いた各例を示す。この支持部材と組み合わせる付勢部材として、図3aでは板バネ44、図3bではコイルバネ45、図3cでは弾力性突起物46を用いる例を示す。図4に支持部材として少なくとも前記作用電極21が当接する部位が平面である突起物42を用いた各例を示す。この支持部材と組み合わせる付勢部材として、図4aでは板バネ44、図4bではコイルバネ45、図4cでは弾力性突起物46を用いる例を示す。図5に支持部材としてベースプレートに設けられた窪み部の壁面43を用いた各例を示す。この支持部材と組み合わせる付勢部材として、図5aでは板バネ44、図5bではコイルバネ45、図5cでは弾力性突起物46を用いる例を示す。また、付勢部材をL型の部材と弾力性を有する部材との組み合わせとすることもできる。このような付勢部材を用いた例を図6に示す。ここでL型部材47は適度な強度を有する材質であれば良く、樹脂、セラミック、金属などを使用できるが、加工性、絶縁性の観点から樹脂が最も好ましい。また、弾力性を有する部材48としては、コイルバネ、ゴムなど弾性を有する部材を使用することができる。この付勢部材と組み合わせる支持部材として図6aにはピン状突起物41、図6bには少なくとも前記作用電極21が当接する部位が平面である突起物42、図6cにはベースプレートに設けられた窪み部の壁面43を用いる例を示す。図示したように、L字部材の両端に取り付けられた弾力性を有する部材48のもう一端は適当な突起物49(図6a,b)あるいはベースプレートに設けられた窪み部の壁面43(図6c)に取り付けられる。前記作用電極21の取り付け時に、L字部材47が指先を干渉し、操作性が劣る場合には、L字部材47の適切な位置に適度な大きさの切り欠きを設けることで、前記作用電極21の取り付けを容易にすることもできる。
【0023】
蓋部66は蝶番などによって取り付け、その取り付け部位としてはベースプレート61が適しているが、これに限定されるものではなく、図11、12に示す凹部102の底部に取り付けることもできる。蓋部66には弾力性のあるシート状の部材69を作用電極63を押さえつけることができる位置に取り付けてもよい。こうすることにより、作用電極63との間に電解質含有シート26を挟時する際に、密着性を確保しながらも、強く押し当てすぎることによる電極の破損を防ぐことが出来る。さらに、蓋部66およびベースプレート61に固定部材71を備えて、蓋部66を適度に保持することができる。固定部材は、磁石、ピンやフックの組み合わせ、などが挙げられる。もしくは蓋部66に適度な自重を持たせることでも蓋部の固定は可能である。
【0024】
作用電極63および対電極62を電流計に接続するための電気的接点65は、作用電極63についてはベースプレート61に、対電極62については蓋部66に備えることができる。こうすることにより、図7に示すように電解質含有シート63を挟時するために蓋66を閉じる等の操作によって蓋部をベースプレート方向に押しつけた状態で、各電極との接点が確保される。電気的接点については、コンタクトプローブや板状や線状の金属バネを使用することができる。また、蓋部には作用電極上の検出スポットに光照射ができるように光照射口67を備えている。光照射口は、開口部または透光部から構成される。すなわち、光照射口は、蓋部の作用電極に対向する位置に、光を通過させるための開口を設けるか、あるいは、透光性の部材からなる透光部を設けてなる。光照射口(67)については、図8および9に示すように、作用電極上の検出スポットの位置に一致するように複数設けても良いし、複数の検出スポットに光照射が可能なように単数設けても良い。光照射口を作用電極上の検出スポットの位置に一致するように光照射口を複数設けることにより、各検出スポットへ順次光源照射を行うときに、迷光により照射していない検出スポットからの光電流の発生し、ノイズ電流となることを防ぐことができるので好ましい。
◆「開口部または透光部」→「光照射口」への変更に伴い、文を追加しました。ご確認ください。
【0025】
本発明の別の好ましい態様によれば、本発明による作用電極を、特異的検出時に使用者が作用電極に直接触れることなく検出できるように、センサチップケースに取り付けて用いてもよい。この態様の一例を図18に示す。図18は、板状の作用電極63と、この作用電極63がほぼ同じ寸法に形成された窪み部162aを有するセンサチップケース162と、センサユニットに設置された、作用電極63の位置決めに用いられる支持部材用開口部163、付勢部材用開口部164、センサチップケース162をセンサユニットの所定の位置に載置させるための補助部材に適合する開口部165を備えてなり、作用電極が載置される領域の少なくとも一部に、測定時に対電極が下方から通過可能な開口部166が形成されてなる。したがって、この開口部166の寸法は対電極が通過可能なサイズとされる。また別の態様である図19に示されるセンサチップは、板状の作用電極63と、窪み部72aおよび第二の窪み部72bを有するセンサチップケース72と、電解質含有シート68と、センサユニットに設置された、作用電極63の位置決めに用いられる支持部材用開口部173、付勢部材用開口部174、センサチップケース162をセンサユニットの所定の位置に載置させるための補助部材に適合する開口部175とを備えてなり、図18と同様に測定時に対電極が下方から通過可能な第三の開口部176が形成されてなる。
【0026】
図20にはセンサチップケースを用いる際のセンサユニットの一例を示す。センサチップケース162に取り付けた作用電極63をベースプレート152に装着する際には、センサチップケース162の下面に設けられた補助部材143に適合する開口部175を補助部材143に合わせて設置し、作用電極63を支持部材141に当接し、付勢部材142により固定する。付勢部材142は支持部材141方向に復元力がかかる例えばV字状に加工した金属、樹脂、ゴムなどの弾性体やばね等が用いられており、センサチップが取り付けられた際には弾性体やばね等の復元力がかかることにより作用電極が確実に固定される。なお、センサチップ取り付けの際には、支持部材とは逆の方向に、付勢部材の復元力に逆らって力を加えることで容易に作用電極の固定状態を解除できる。作用電極63を取り付けると、ベースプレート152の凸部に設けられた対電極159と電解質含有シート68が接触し、電解質含有シート68には作用電極63が接触する。本体蓋154が閉じられると、押さえ部材145が作用電極113を押さえ込むとともに、押さえ部材145に設けられた光照射口144の各々が作用電極63の各検出スポットに対応するような適切な配置が形成される。光照射口144は透光性部材からなるか、または開口により形成される。作用電極63の電流計149への接続は作用電極用コンタクトプローブ118により行い、対電極159と電流計への接続は対電極用コンタクトプローブ119により行う。なお、センサチップケース162には、作用電極用コンタクトプローブ118が作用電極63に接触できるように作用電極コンタクトプローブ用開口部177と対電極159が電解質シート68に接触できるように対電極用開口部178が設けられている。
【0027】
測定装置
本発明のセンサユニットを用いることにより、構造が大幅に簡素化された安価でかつ小型の測定装置を構築することができる。これは、本発明のセンサユニットは電解質含有シートを用いるため、作用電極と対電極との間に電解液を充填して行われる従来法において必要とされていた、電解液を送液する機構(例えばポンプ、バルブ、およびそれらの制御機構)、液漏れ防止機構(例えばパッキン)、および電解液の廃液処理といった複雑な機構ないし工程が不要となるためである。
【0028】
本発明における測定装置は、本発明のユニットを用いて増感色素の光励起により生じる光電流を用いた被検物質の特異的検出を行う装置である。本発明の測定装置の一例を図10に示す。図10に示すように、本発明の測定装置80は、センサユニット81、光源82、XY移動機構83、電流計84、および制御演算手段85を備えている。測定の際に、電解質含有シート81bが、作用電極81aと作用電極81aとの間に挟持させて設けられていればよい。そして、光源82は、作用電極81aの表面に光を照射可能な位置に配置されればよく、センサユニットの下方および上方のいずれに配置されてもよい。光源82にはXY移動機構83が接続され、光源82が所望の被検スポットに向かってXY方向に移動可能に構成される。そして、作用電極および対電極には電流計84が接続され、その間を流れる電流が測定可能に構成される。
そして、制御演算手段85にあっては、制御部85aが光源82、XY移動機構83および電流計84を制御し、なおかつ電流計84からの電流信号を受信し、演算部85bが電気信号に基づいて被検物質の存在、型、および濃度の少なくとも一種を決定するように構成される。また、測定装置80は、制御演算手段85で得られた結果を表示する表示装置86をさらに備えてもなるのが好ましい。さらに、測定装置81が、測定のための条件の入力が行われる入力装置87をさらに備えてなるのが好ましい。
なお、演算手段85、表示装置86、入力装置87は測定装置80内に備えても良いし、これらの機能をパーソナルコンピュータに備え、測定装置80と連結させて用いても良い。
【0029】
光源がセンサユニットの上方に配置され、なおかつ図2、7に示される本発明のセンサユニット60が使用可能な、本発明における遺伝子検査装置の一例を図11〜13に示す。図11は遺伝子検査装置100の外観を示す斜視図で、同図に示すように、装置筐体101の前面部にはセンサユニットを設置する凹部102が設けられる。凹部102はその内部に設置するセンサユニット60へ作用電極を取り付ける際に、オペレーターの指を緩衝しない大きさに設定する。図9に示すように、凹部前部には扉103を取り付けても良い。ここで示した遺伝子検査装置は、制御、データ取得、解析、保存をPCと接続して行うことを前提としているので、動作条件の入力装置、データの表示装置などを備えていない。PCまたはPCと相当する機能を有するマイコンなどを遺伝子検査装置内に備え、さらには入力装置としてキーパッド、表示装置として液晶画面などを備える構成とすることもできる。図11は遺伝子検査装置100の内部斜視図であり、同図に示すように、光源161は、センサユニット60の作用電極上の各検出スポットに光を照射できるように構成され、XY移動機構162によって移動可能に構成される。電流計163は、作用電極と対電極との間に流れる電流を測定できるように構成される。光源161、XY移動機構162および電流計163の制御ならびに電流信号の受信は、制御演算部において、インターフェースボード164を介して外部コンピューター(図示せず)によって行われる。また、この外部コンピューターは、制御や各種の演算などの処理を行うとともにデータや処理結果を記憶し、その結果を表示装置(図示せず)に表示する。
【0030】
電解質含有シート
本発明に用いる電解質含有シートは、増感色素の光励起により生じる光電流を用いた被検物質の特異的検出において電解質媒体として用いられるシート状の電解質含有体である。そして、この電解質含有シートは、含水性基材と、含水性基材中に含有される電解質とを含んでなる。
【0031】
本発明において電解質は、含水性基材中を自由に移動して増感色素、作用電極、および対電極との間で電子の授受に関与できるものであれば限定されず、幅広い種類の電解質が使用可能である。好ましい電解質は、光照射により励起された色素に電子を供与するための還元剤(電子供与剤)として機能できる物質であり、そのような物質の例としては、ヨウ化ナトリウム(NaI)、ヨウ化カリウム(KI)、ヨウ化カルシウム(CaI2)、ヨウ化リチウム(LiI)、ヨウ化アンモニウム(NH4I)、テトラプロピルアンモニウムヨージド(NPr4I)、チオ硫酸ナトリウム(Na2S2O3)、亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)、ヒドロキノン、K4[Fe(CN)6]・3H2O、フェロセン−1,1’−ジカルボン酸、フェロセンカルボン酸、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、トリエチルアミン、チオシアネートアンモニウム、ヒドラジン(N2H4)、アセトアルデヒド(CH3CHO)、N,N,N’,N’−テトラメチル−p−フェニレンジアミン二塩酸塩(TMPD)、L−アスコルビン酸、亜テルル酸ナトリウム(Na2TeO3)、塩化鉄(II)四水和物(FeCl2・4H2O)、EDTA、システイン、トリエタノールアミン、トリプロピルアミン、ヨウ素を含むヨウ化リチウム(I/LiI)、トリス(2-クロロエチル)リン酸塩(TCEP)、ジチオスレイトール(DTT)、2−メルカプトエタノール、2−メルカプトエタノールアミン、二酸化チオ尿素、(COOH)2、HCHO、およびこれらの組合せが挙げられ、より好ましくは、NaI、KI、CaI2、LiI、NH4I、テトラプロピルアンモニウムヨージド(NPr4I)、チオ硫酸ナトリウム(Na2S2O3)、および亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)、およびこれらの混合物であり、さらに好ましくは、テトラプロピルアンモニウムヨージド(NPr4I)である。
【0032】
(1)ゲルシート
本発明の好ましい態様によれば、含水性基材が、天然ゲルおよび合成ゲルから選択される少なくとも一種を含んでなるゲルマトリクスであって、該ゲルマトリクス中に前記電解質が分散されてなるのが好ましい。すなわち、この態様にあっては、電解質含有シートはゲルシートとして構成される。そして、電解質媒体としてゲルシートを使用した場合、電解液を用いた場合と比べて、同じ被検物質濃度のサンプルについてより高い検出電流が得られるとともに、より広い被検物質濃度範囲において検出電流の濃度依存性が得られる。すなわち、ゲルシートの使用により、光電流の検出感度および精度を大幅に向上させることができる。
【0033】
本発明の好ましい態様によれば、ゲルシートは、100g/cm2以上のゲル強度を有するのが好ましく、より好ましくは120g/cm2以上であり、さらに好ましくは150g/cm2以上である。このようなゲル強度であると、ゲルシートを単独で取り扱いやすくなるので、作用電極と対電極の間に容易に挟み込んだり、取り外したりでき、その結果、センサユニット構造および検出手順を大幅に簡素化できる。
【0034】
本発明のゲルシートの形態としては、作用電極および対電極との良好な密着性が確保されるように各電極との接触部分が平滑平面とされているのが好ましい。したがって、作用電極と対電極との間に挟み込んで使用する場合には、密着性に影響しないように均一な厚みを有する形態とするのが好ましい。一方、作用電極および対電極が同一平面状にパターニングされてなる電極ユニットを使用する場合には、少なくとも電極ユニットと接触する片側面のみが平滑平面とされていればよく、厚さや厚さの均一性は特段問題とならない。
【0035】
本発明の好ましい態様によれば、ゲルシートは0.1〜10mmの厚さを有するのが好ましく、より好ましくは0.5〜3mm、さらに好ましくは1〜3mmの厚さを有する。このような厚さであるとゲルシートを単独で取り扱うのに適した強度が得られやすいので、作用電極と対電極の間に容易に挟み込んだり、取り外したりでき、あるいは持ち運んだりすることができ、その結果、センサユニット構造および検出手順を大幅に簡素化できる。また、光電流測定に悪影響を与えることもない。
【0036】
本発明においてゲルマトリクスは、天然ゲルおよび合成ゲルから選択される少なくとも一種を含んでなり、適度な強度と電極への密着性を示すゲルであれば限定されない。これらのゲルは、一般的なゲルと同様、ゲル化剤が水等の溶媒と共にゲル化することにより形成されることができる。ゲルマトリクス中におけるゲル化剤の濃度は、光電流測定に大きな影響を与えることはないため、単独取り扱いを可能とする強度確保の観点からゲル化剤の種類に応じて適宜決定されてよい。
【0037】
本発明の好ましい態様によれば、ゲルマトリクスが、多糖類および蛋白質を主成分とする天然ゲルを含んでなるのが好ましい。このような天然ゲルの好ましい例としては、アガロース、アルギン酸、カラギーナン、ローストビーンガム、ジェランガム、ゼラチン、およびそれらの混合物のゲルが挙げられ、より好ましくはアガロースのゲルである。好ましいアガロースの添加量は0.5〜25重量%である。
【0038】
本発明の別の好ましい態様によれば、ゲルマトリクスが、合成ゲルを含んでなるのが好ましい。好ましい合成ゲルの例としては、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、PVA添加ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、N−アルキル変性(メタ)アクリルアミド誘導体、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−(イソ)プロピルアクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−ヒドロキシプロピルアクリルアミド、N−ヒドロキシブチルアクリルアミド、(メタ)アクリル酸、t−ブチル(メタ)アクリルアミドスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、グリセリン(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、テトラアリロキシエタン、およびそれらの混合物のゲルが挙げられ、より好ましくはポリアクリルアミドのゲルである。
【0039】
本発明の好ましい態様によれば、本発明のゲルシートは、(1)電解質およびゲル化剤を水に加えて加熱溶解してゲルを作製した後、所望のシート形状に加工する方法、あるいは(2)ゲル化剤のみでゲルを形成して所望のシート形状に加工した後、電解質溶液中に浸漬させてゲル中に電解質を分散させる方法により、製造されることができる。特に、ゲル化剤は使用する電解質との組合せによっては、混合、加熱、あるいは冷却によってゲル化しない場合があり、そのような場合であっても上記(2)の方法によれば、ゲルシートを作製することができる。
【0040】
(2)吸水性シート
本発明の別の好ましい態様によれば、含水性基材が、吸水性基材であるのが好ましい。すなわち、この態様にあっては、電解質含有シートは吸水性シートとして構成される。そして、電解質媒体として吸水性シートを使用した場合、電解液を使用した場合と同等の検出感度および検出精度が得られる。すなわち、吸水性シートの使用により、光電流を精度よく検出することができる。
【0041】
本発明の好ましい態様によれば、吸水性シートは、20%以上の含水率を有するのが好ましく、より好ましくは30%以上であり、さらに好ましくは40%以上である。このような含水率であると、光電流を検出した際に高い光電流を検出することができ、検出感度が向上する。含水率は(1mm3 辺りの含水量)/(吸水性基材の密度)より求める。なお、ここで言う含水率は光電流を検出する際の吸水性シートの含水率であって、後述するように、保管時に上記含水率を満たしていなくてもよい。
【0042】
本発明の吸水性シートの形態としては、作用電極および対電極との良好な密着性が確保されるように各電極との接触部分が平滑平面とされているのが好ましい。したがって、作用電極と対電極との間に挟み込んで使用する場合には、密着性に影響しないように均一な厚みを有する形態とするのが好ましい。一方、作用電極および対電極が同一平面状にパターニングされてなる電極ユニットを使用する場合には、少なくとも電極ユニットと接触する片側面のみが平滑平面とされていればよく、厚さや厚さの均一性は特段問題とならない。
【0043】
本発明の好ましい態様によれば、吸水性シートは0.01〜10mmの厚さを有するのが好ましく、より好ましくは0.1〜3mmの厚さを有する。このような厚さであると吸水性シートを単独で取り扱うのに適した強度が得られやすいので、作用電極と対電極の間に容易に挟み込んだり、取り外したりでき、あるいは持ち運んだりすることができ、その結果、センサユニット構造および検出手順を大幅に簡素化できる。また、光電流測定に悪影響を与えることもない。
【0044】
本発明において吸水性基材は、綿、麻、ウール、絹、セルロースなどの天然繊維;ろ紙、製紙などに用いられるパルプ繊維;レーヨンなどの再生繊維;ろ紙などに用いられるガラス繊維;フェルト、スポンジなどに用いられる合成繊維から選択される少なくとも一種の繊維を含んでなるのが好ましく、適度な強度、含水量、電極への密着性を示す吸水性基材であれば限定されない。なお、本発明の吸水性基材に用いる繊維の加工方法は特定の加工方法に限定されない。
【0045】
本発明の好ましい態様によれば、吸水性基材の好ましい例としては、ろ紙、メンブレンフィルター、ガラスフィルター、ろ布などが挙げられ、より好ましくはろ紙、メンブレンフィルターである。
【0046】
本発明の好ましい態様によれば、本発明の電解質含有吸収性シートは、(1)所望のシート形状に加工し、水ベースの電解液に浸漬した後、使用する、あるいは(2)所望のシート形状に加工し、電解液に浸漬し、乾燥させた後、使用直前に水を添加して使用することもできる。
【0047】
上述のように、ゲルシートおよび吸水性シートのいずれを用いても良好な光電流検出を行うことができるが、作用電極への載置を行う場合の強度の観点からは、吸水性シートを用いることがが好ましい。また、吸水性シートは乾燥状態で電解質を含有させておき、使用時に復水させるといった使い方も可能であるため、保存性にも優れている点においても好ましい。
【0048】
光電流を用いた被検物質の特異的検出
前述の通り、本発明のセンサユニットは増感色素の光励起により生じる光電流を用いた被検物質の特異的検出に用いられるものである。この増感色素の光励起により生じる光電流を用いた被検物質の特異的検出方法について、以下に具体的に説明する。
【0049】
この方法にあっては、まず、被検物質を含む試料液と、作用電極と、対電極とを用意する。本発明に用いる作用電極は、被検物質と直接または間接的に特異的に結合可能なプローブ物質を表面に備えた電極である。すなわち、プローブ物質は、被検物質と直接、特異的に結合する物質のみならず、被検物質を受容体蛋白質分子等の媒介物質に特異的に結合させて得られる結合体と特異的に結合可能な物質であってよい。次いで、増感色素の共存下、試料液を作用電極に接触させて、プローブ物質に被検物質を直接または間接的に特異的に結合させ、この結合により増感色素を作用電極に固定させる。増感色素は、光励起に応じて作用電極に電子を放出可能な物質であり、被検物質あるいは媒介物質に予め標識させておくか、あるいは被検物質およびプローブ物質の結合体にインターカレーション可能な増感色素を用いる場合には試料液に単に添加すればよい。
【0050】
そして、作用電極と対電極とをセンサユニット内において電解質含有シートに接触させた後、作用電極に光を照射して増感色素を光励起させると、光励起された増感色素から電子受容物質へ電子移動が起こる。この電子移動に起因して作用電極と対電極との間に流れる光電流を検出することにより、被検物質を高い感度および精度で検出することができる。また、この検出電流は試料液中の被検試料濃度との高い相関関係を有しているので、測定された電流量または電気量に基づき被検試料の定量測定を行うことができる。
【0051】
(1)被検物質およびプローブ物質
本発明における被検物質としては、特異的な結合性を有する物質であれば限定されず、種々の物質であってよい。このような被検物質であれば、被検物質と直接または間接的に特異的に結合可能なプローブ物質を作用電極表面に担持させておくことにより、被検物質をプローブ物質に直接または間接的に特異的に結合させて検出することが可能となる。
【0052】
すなわち、本発明にあっては、被検物質およびプローブ物質として互いに特異的に結合可能なものを選択することができる。すなわち、本発明の好ましい態様によれば、特異的な結合性を有する物質を被検物質とし、被検物質と特異的に結合する物質をプローブ物質として作用電極に担持させるのが好ましい。これにより、作用電極上に被検物質を直接、特異的に結合させて検出することができる。この態様における、被検物質およびプローブ物質の組合せの好ましい例としては、一本鎖の核酸および核酸に対して相補性を有する一本鎖の核酸の組合せ、ならびに抗原および抗体の組合せが挙げられる。
【0053】
本発明のより好ましい態様によれば、被検物質を一本鎖の核酸とし、プローブ物質を核酸に対して相補性を有する一本鎖の核酸とするのが好ましい。プローブ物質は核酸に対して15bp以上の相補性部分を有するのがより好ましい。この態様における被検物質の作用電極への特異的結合の工程を図14(a)および(b)に示す。これらの図に示されるように、被検物質としての一本鎖の核酸221は、作用電極223上に担持されたプローブ物質としての相補性を有する一本鎖の核酸224とハイブリダイズされて、二本鎖の核酸227を形成する。
【0054】
被検物質としての一本鎖の核酸を含む試料液は、末梢静脈血のような血液、白血球、血清、尿、糞便、精液、唾液、培養細胞、各種臓器細胞のような組織細胞等の、核酸を含有する各種検体試料から、公知の方法により核酸を抽出して作製することができる。このとき、検体試料中の細胞の破壊は、例えば、振とう、超音波等の物理的作用を外部から加えて担体を振動させることにより行なうことができる。また、核酸抽出溶液を用いて、細胞から核酸を遊離させることもできる。核酸溶出溶液の例としては、SDS、Triton−X、Tween−20のような界面活性剤、サポニン、EDTA、プロテア−ゼ等を含む溶液が挙げられる。これらの溶液を用いて核酸を溶出する場合、37℃以上の温度でインキュベ−トすることにより反応を促進することができる。
【0055】
本発明のより好ましい態様によれば、被検物質とする遺伝子の含有量が微量である場合には、公知の方法により遺伝子を増幅した後検出を行なうのが好ましい。遺伝子を増幅する方法としては、ポリメラ−ゼチェインリアクション(PCR)等の酵素を用いる方法が代表的であろう。ここで、遺伝子増幅法に用いられる酵素の例としては、DNAポリメラ−ゼ、Taqポリメラ−ゼのようなDNA依存型DNAポリメラ−ゼ、RNAポリメラ−ゼIのようなDNA依存型RNAポリメラ−ゼ、Qβレプリカ−ゼのようなRNA依存型RNAポリメラ−ゼが挙げられ、好ましくは温度を調節するだけで連続して増幅を繰り返すことができる点で、Taqポリメラ−ゼを用いるPCR法である。
【0056】
本発明の好ましい態様によれば、上記増幅時に特異的に核酸を増感色素で標識することが出来る。一般的には、DNAにアミノアリル修飾dUTPを取り込ませることにより行うことができる。この分子は未修飾の dUTP と同じ効率で取り込まれる。次のカップリング段階において、N−ヒドロキシサクシンイミド(N−hydroxysuccinimide)により活性化された蛍光色素が修飾 dUTP と特異的に反応し、均一に増感色素で標識された被検物質が得られる。
【0057】
本発明の好ましい態様によれば、上記のようにして得られた核酸の粗抽出液あるいは精製した核酸溶液をまず90〜98℃、好ましくは95℃以上の温度で熱変性を施し、一本鎖核酸を調製することができる。
【0058】
本発明にあっては、被検物質とプローブ物質が間接的に特異的に結合するものであってもよい。すなわち、本発明の別の好ましい態様によれば、特異的な結合性を有する物質を被検物質とし、この被検物質と特異的に結合する物質を媒介物質として共存させ、この媒介物質と特異的に結合可能な物質をプローブ物質として作用電極に担持させるのが好ましい。これにより、プローブ物質に特異的に結合できない物質であっても、媒介物質を介して作用電極上に間接的に特異的に結合させて検出することができる。この態様における、被検物質、媒介物質、およびプローブ物質の組合せの好ましい例としては、リガンド、このリガンドを受容可能な受容体蛋白質分子、およびこの受容体蛋白質分子と特異的に結合可能な二本鎖の核酸の組合せが挙げられる。リガンドの好ましい例としては、外因性内分泌攪乱物質(環境ホルモン)が挙げられる。外因性内分泌撹乱物質とは、受容体蛋白質分子を介してDNAに結合し、その遺伝子発現に影響して毒性を生じる物質であるが、本発明の方法によれば、被検物質によりもたらされる受容体等のタンパク質のDNAに対する結合性を簡便にモニタリングすることができる。この態様における被検物質の作用電極への特異的結合の工程を図15に示す。図15に示されるように、被検物質としてのリガンド230は、まず、媒介物質である受容体蛋白質分子231に特異的に結合する。そして、リガンドが結合された受容体蛋白質分子233が、プローブ物質としての二本鎖の核酸234に特異的に結合する。
【0059】
本発明の好ましい態様によれば、被検物質は二種以上であることができる。本発明の方法によれば、複数の増感色素を用いて、各増感色素毎に異なる励起波長の光を照射することにより、複数種類の被検物質を個別に検出することが可能である。
【0060】
(2)増感色素
本発明にあっては、被検物質の存在を光電流で検出するために、増感色素の共存下、プローブ物質に被検物質を直接または間接的に特異的に結合させて、該結合により増感色素を作用電極に固定させる。そのために、本発明にあっては、図14(a)および図15に示されるように被検物質221あるいは媒介物質231に予め増感色素222,232で標識しておくことができる。また、図14(b)に示されるように被検物質およびプローブ物質の結合体227(例えばハイブリダイゼーション後の二本鎖核酸)にインターカレーション可能な増感色素228を用いる場合には、試料液に増感色素を添加することにより、プローブ物質に増感色素を固定させることができる。
【0061】
本発明に用いる増感色素は、光励起に応じて作用電極に電子を放出可能な物質であり、光源の照射による光励起状態への遷移が可能であり、かつ励起状態から作用電極に電子注入できる電子状態を採りうるものであればよい。したがって、用いる増感色素は、作用電極、特に電子受容層との間において上記電子状態をとることができるものであればよいことから、多種の増感色素が使用可能であり、高価な色素を使用する必要がない。
【0062】
増感色素の具体例としては、金属錯体や有機色素が挙げられる。金属錯体の好ましい例としては、銅フタロシアニン、チタニルフタロシアニン等の金属フタロシアニン;クロロフィルまたはその誘導体;ヘミン、特開平1−220380 号公報や特表平5−504023 号公報に記載のルテニウム、オスミウム、鉄及び亜鉛の錯体(例えばシス−ジシアネート−ビス(2、2 ’−ビピリジル−4、4 ’−ジカルボキシレート)ルテニウム(II))があげられる。有機色素の好ましい例としては、メタルフリーフタロシアニン、9−フェニルキサンテン系色素、シアニン系色素、メタロシアニン系色素、キサンテン系色素、トリフェニルメタン系色素、アクリジン系色素、オキサジン系色素、クマリン系色素、メロシアニン系色素、ロダシアニン系色素、ポリメチン系色素、インジゴ系色素等が挙げられる。増感色素のより好ましい具体例としては、Cy3、Cy5、ローダミンが挙げられる。
【0063】
二本鎖核酸にインターカレーション可能な増感色素の好ましい例としては、アクリジンオレンジ、エチジウムブロマイドが挙げられる。このような増感色素を用いる場合、核酸のハイブリダイゼーション後に試料液に添加するだけで増感色素で標識された二本鎖核酸が形成されるので、予め一本鎖の核酸を標識する必要が無い。
【0064】
(3)作用電極およびその製造
本発明に用いる作用電極は、上記プローブ物質を表面に備えた電極であり、プローブ物質を介して固定された増感色素が光励起に応じて放出する電子を受容可能な電極である。したがって、作用電極の構成および材料は、使用される増感色素との間で上記電子移動が生じるものであれば限定されず、種々の構成および材料であってよい。
【0065】
本発明の好ましい態様によれば、作用電極が増感色素が光励起に応じて放出する電子を受容可能な電子受容物質を含んでなる電子受容層を有し、この電子受容層の表面にプローブ物質が備えられてなるのが好ましい。また、本発明のより好ましい態様によれば、作用電極が導電性基材をさらに含んでなり、この導電性基材上に電子受容層が形成されてなるのが好ましい。この態様の電極は図14および15に示される。図14および15に示される作用電極223は、導電性基材225と、この導電性基材上に形成され、電子受容物質を含んで成る電子受容層226とを備えてなる。そして、電子受容層226の表面にプローブ物質が担持される。
【0066】
本発明における電子受容層は、プローブ物質を介して固定された増感色素が光励起に応じて放出する電子を受容可能な電子受容物質を含んでなる。すなわち、電子受容物質は、光励起された標識色素からの電子注入が可能なエネルギー準位を取り得る物質であることができる。ここで、光励起された標識色素からの電子注入が可能なエネルギー準位(A)とは、例えば、電子受容性材料として半導体を用いる場合には、伝導帯(コンダクションバンド:CB)を意味し、電子受容性材料として金属を用いる場合には、フェルミ準位を意味し、電子受容性材料として有機物もしくはC60等の分子状無機物を用いる場合には、最低非占有分子軌道(Lowest Unoccupied Molecular Orbital:LUMO)を意味する。すなわち、本発明に用いる電子受容物質は、このAの準位が、増感色素のLUMOのエネルギー準位よりも卑な準位、換言すれば、増感色素のLUMOのエネルギー準位よりも低いエネルギー準位を有するものであればよい。
【0067】
電子受容物質の好ましい例としては、シリコン、ゲルマニウムなどの単体半導体;チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、タンタル等の酸化物半導体;チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウム等のペロブスカイト型半導体;カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモン、ビスマスの硫化物半導体;カドミウム、鉛のセレン化物半導体;カドミウムのテルル化物半導体;亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム等のリン化物半導体;ガリウムヒ素、銅−インジウム−セレン化物、銅−インジウム−硫化物の化合物半導体;金、白金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム、ニッケル等の金属;ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール等の有機物ポリマー;C60、C70等の分子状無機物が挙げられ、より好ましくは、シリコン、TiO2、SnO2、Fe2O3、WO3、ZnO、Nb2O5、チタン酸ストロンチウム、酸化インジウム、CdS、ZnS、PbS、Bi2S3、CdSe、CdTe、GaP、InP、GaAs、CuInS2、CuInSe、C60であり、さらに好ましくは、TiO2、ZnO、SnO2、Fe2O3、WO3、Nb2O5、チタン酸ストロンチウム、CdS、PbS、CdSe、InP、GaAs、CuInS2、CuInSe2であり、最も好ましくはTiO2である。なお、上記の列挙した半導体は、真性半導体および不純物半導体のいずれであってもよい。
【0068】
本発明の好ましい態様によれば、電子受容物質は半導体であるのが好ましく、より好ましくは酸化物半導体であり、さらに好ましくは金属酸化物半導体であり、最も好ましくはn型金属酸化物半導体である。この態様によれば、半導体のバンドギャップの利用により、色素から効率良く電子を取り出すことができる。また、多孔体あるいは表面の凹凸形状といった構造を有する半導体の使用により、表面積の大きい作用電極を作製することができ、プローブ固定化量を増加させることができる。
【0069】
本発明の好ましい態様によれば、半導体の伝導帯の電位は、増感色素のLUMOの電位よりも低いことが好ましく、より好ましくは、増感色素のLUMO>半導体の伝導帯>電解質の酸化還元電位>増感色素のHOMOの関係を満たす電位である。このような関係にあることで、効率良く電子を取出すことが可能となる。
【0070】
本発明の好ましい態様によれば、電子受容層が半導体からなる場合、層表面をカチオン化処理しても良い。カチオン化により、プローブ物質(DNA,タンパク質など)を高い効率で電子受容層に吸着させることが可能となる。カチオン化は、例えばアミノシランなどのシランカップリング剤、カチオンポリマー、4級アンモニウム化合物、などを電子受容層表面に作用させることにより行うことができる。
【0071】
また、本発明の別の好ましい態様によれば、電子受容物質として、インジウム−スズ複合酸化物(ITO)またはフッ素がドープされた酸化スズ(FTO)を用いることができる。ITOおよびFTOは電子受容層のみならず導電性基材としても機能する性質を有するため、これらの材料を使用することにより導電性基材を用いることなく電子受容層のみで作用電極として機能させることができる。
【0072】
電子受容物質として半導体または金属を用いる場合、その半導体または金属は単結晶および多結晶のいずれであってもよいが、多結晶体が好ましく、さらに緻密なものよりも多孔性を有するものが好ましい。これにより、比表面積が大きくなり、被検物質および増感色素を多く吸着させて、より高い感度および精度で被検物質を検出することができる。したがって、本発明の好ましい態様によれば、電子受容層が多孔性を有しており、各孔の径が3〜1000nmであるのが好ましく、より好ましくは、10〜100nmである。
【0073】
本発明の好ましい態様によれば、電子受容層を導電性基材上に形成した状態での表面積は、投影面積に対して10倍以上であることが好ましく、さらに100倍以上であることが好ましい。この表面積の上限には特に限定されないが、通常1000倍程度であろう。電子受容層を構成する電子受容物質の微粒子の粒径は、投影面積を円に換算したときの直径を用いた平均粒径で一次粒子として5〜200nmであることが好ましく、より好ましくは8〜100nmであり、さらに好ましくは20〜60nmである。また、分散物中の電子受容性物質の微粒子(二次粒子)の平均粒径としては0.01〜100μmであることが好ましい。また、入射光を散乱させて光捕獲率を向上させる目的で、粒子サイズの大きな、例えば300nm程度の電子受容物質の微粒子を併用して、電子受容層を形成してもよい。
【0074】
本発明の好ましい態様によれば、作用電極が導電性基材をさらに含んでなり、電子受容層が導電性基材上に形成されてなるのが好ましい。本発明に使用可能な導電性基板としては、チタン等の金属のように支持体そのものに導電性があるもののみならず、ガラスもしくはプラスチックの支持体の表面に導電材層を有するものであってよい。この導電材層を有する導電性基板を使用する場合、電子受容層はその導電層上に形成される。導電材層を構成する導電材の例としては、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム等の金属;炭素、炭化物、窒化物等の導電性セラミックス;およびインジウム−スズ複合酸化物、酸化スズにフッ素をドープしたもの、酸化スズにアンチモンをドープしたもの、酸化亜鉛にガリウムをドープしたもの、または酸化亜鉛にアルミニウムをドープしたもの等の導電性の金属酸化物が挙げられ、より好ましくは、インジウム−スズ複合酸化物(ITO)、酸化スズにフッ素をドープした金属酸化物(FTO)である。ただし、前述した通り、電子受容層自体が導電性基材としても機能する場合にあっては導電性基材は省略可能である。また、本発明において、導電性基材は、導電性を確保できる材料であれば限定されず、それ自体では支持体としての強度を有しない薄膜状またはスポット状の導電材層も包含するものとする。
【0075】
本発明の好ましい態様によれば、導電性基材が実質的に透明、具体的には、光の透過率が10%以上であるのが好ましく、より好ましくは50%以上であり、さらに好ましくは70%以上である。また、本発明の好ましい態様によれば、導電材層の厚みは、0.02〜10μm程度であるのが好ましい。さらに、本発明の好ましい態様によれば、導電性基材の表面抵抗が100Ω/cm2以下であり、さらに好ましくは40Ω/cm2以下であるのが好ましい。導電性基材の表面抵抗の下限は特に限定されないが、通常0.1Ω/cm2程度であろう。
【0076】
導電性基材上への電子受容層の好ましい形成方法の例としては、電子受容物質の分散液またはコロイド溶液を導電性支持体上に塗布する方法、半導体微粒子の前駆体を導電性支持体上に塗布し空気中の水分によって加水分解して微粒子膜を得る方法(ゾル−ゲル法)、スパッタリング法、CVD法、PVD法、蒸着法などが挙げられる。電子受容物質としての半導体微粒子の分散液を作成する方法としては、前述のゾル−ゲル法の他、乳鉢ですり潰す方法、ミルを使って粉砕しながら分散する方法、あるいは半導体を合成する際に溶媒中で微粒子として析出させそのまま使用する方法等が挙げられる。このときの分散媒としては水または各種の有機溶媒(例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ジクロロメタン、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル等)が挙げられる。分散の際、必要に応じてポリマー、界面活性剤、酸、もしくはキレート剤などを分散助剤として使用してもよい。
【0077】
電子受容物質の分散液またはコロイド溶液の塗布方法の好ましい例としては、アプリケーション系としてローラ法、ディップ法、メータリング系としてエアーナイフ法、ブレード法等、またアプリケーションとメータリングを同一部分でできるものとして、特公昭58−4589号公報に開示されているワイヤーバー法、米国特許2681294号、同2761419号、同2761791号等に記載のスライドホッパ法、エクストルージョン法、カーテン法、スピン法、スプレー法が挙げられる。
【0078】
本発明の好ましい態様によれば、電子受容層が半導体微粒子からなる場合、電子受容層の膜厚が0.1〜200μmであるのが好ましく、より好ましくは0.1〜100μmであり、さらに好ましくは1〜30μm、最も好ましくは2〜25μmである。これにより、単位投影面積当たりのプローブ物質および固定される増感色素量を増加して光電流量を多くするとともに、電荷再結合による生成した電子の損失をも低減することができる。また、導電性基材1m2当たりの半導体微粒子の塗布量は0.5〜400gであるのが好ましく、より好ましくは5〜100gである。
【0079】
本発明の好ましい態様によれば、電子受容物質がインジウム−スズ複合酸化物(ITO)または酸化スズにフッ素をドープした金属酸化物(FTO)を含んでなる場合、電子受容層の膜厚が1nm以上であるのが好ましく、より好ましくは10nm〜1μmである。
【0080】
本発明の好ましい態様によれば、半導体微粒子を導電性基材上に塗布した後に加熱処理を施すのが好ましい。これにより、粒子同士を電気的に接触させ、また、塗膜強度の向上や支持体との密着性を向上させることができる。好ましい加熱処理温度は、40〜700℃であり、より好ましくは100〜600℃である。また、好ましい加熱処理時間は10分〜10時間程度である。
【0081】
また、本発明の別の好ましい態様によれば、ポリマーフィルムなど融点や軟化点の低い導電性基材を用いる場合にあっては、熱による劣化を防止するため、高温処理を用いない方法により膜形成を行うのが好ましく、そのような膜形成方法の例として、プレス、低温加熱、電子線照射、マイクロ波照射、電気泳動、スパッタリング、CVD、PVD、蒸着等の方法が挙げられる。
【0082】
こうして得られた作用電極の電子受容層の表面にはプローブ物質が担持される。作用電極へのプローブ物質の担持は公知の方法に従い行うことができる。本発明の好ましい態様によれば、プローブ物質として一本鎖の核酸を用いる場合には、作用電極表面に酸化層を形成させておき、この酸化層を介して核酸プロ−ブと作用電極とを結合させることにより行うことができる。このとき、核酸プローブの作用電極への固定化は、核酸の末端に官能基を導入することにより行うことができる。これにより、官能基が導入された核酸プロ−ブはそのまま固定化反応により担体上に固定化されることができる。核酸末端への官能基の導入は、酵素反応もしくはDNA合成機を用いて行なうことができる。酵素反応において用いられる酵素としては、例えば、タ−ミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラ−ゼ、ポリAポリメラ−ゼ、ポリヌクレオチドカイネ−ス、DNAポリメラ−ゼ、ポリヌクレオチドアデニルトランスフェラ−ゼ、RNAリガ−ゼを挙げることができる。また、ポリメラ−ゼチェインリアクション(PCR法)、ニックトランスレ−ション、ランダムプライマ−法により官能基を導入することもできる。官能基は、核酸のどの部分に導入されてもよく、3’末端、5’末端もしくはランダムな位置に導入することができる。
【0083】
本発明の好ましい態様によれば、核酸プローブの作用電極への固定化のため官能基として、アミン、カルボン酸、スルホン酸、チオール、水酸基、リン酸等が好適に使用できる。また、本発明の好ましい態様によれば、拡散プローブを作用電極に強固に固定化するためには、作用電極と拡散プローブの間を架橋する材料を使用することも可能である。そのような架橋材料の好ましい例としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤や、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性ポリマーが挙げられる。
【0084】
本発明の好ましい態様によれば、核酸プロ−ブの固定化を物理吸着という、より簡単な
作で効率よく行うことも可能である。電極表面への核酸プロ−ブの物理吸着は、例えば、以下のように行なうことができる。まず、電極表面を、超音波洗浄器を用いて蒸留水およびアルコ−ルで洗浄する。その後、電極を核酸プロ−ブを含有する緩衝液に挿入して核酸プロ−ブを担体表面に吸着させる。
【0085】
また、核酸プローブの吸着後、ブロッキング剤を添加することにより、非特異的な吸着を抑制することができる。使用可能なブロッキング剤としては、核酸プローブが吸着していない電子受容層表面のサイトを埋めることができ、かつ電子受容物質に対して化学吸着あるいは物理吸着等により吸着可能な物質であれば限定されないが、好ましくは化学結合を介して吸着可能な官能基を有する物質である。例えば、酸化チタンを電子受容層として用いる場合における好ましいブロッキング剤の例としては、カルボン酸基、リン酸基、スルホン酸基、水酸基、アミノ基、ピリジル基、アミド等の酸化チタンに吸着可能な官能基を有する物質が挙げられる。
【0086】
本発明の好ましい態様によれば、作用電極上にプローブ物質が互いに分離された複数の領域毎に区分されて担持されてなり、光源による光照射が各領域に対して個別に行われるのが好ましい。これにより、複数の試料を一枚の作用電極上で測定することができるので、DNAチップの集積化等が可能となる。本発明のより好ましい態様によれば、作用電極上にプローブ物質が担持された、互いに分離された複数の領域がパターニングされており、光源から照射される光でスキャニングしながら、各領域の試料について被検物質の検出または定量を一度の操作で連続的に行うことが好ましい。
【0087】
本発明のより好ましい態様によれば、作用電極上の互いに分離された複数の領域の各領域に複数種類のプローブ物質を担持させることができる。これにより、領域の個数に、各領域毎のプローブ物質の種類数を乗じた数の、多数のサンプルの測定を同時に行うことができる。
【0088】
本発明のより好ましい態様によれば、作用電極上の互いに分離された複数の領域の各領域毎に異なるプローブ物質を担持させることができる。これにより、区分された領域の数に相当する種類数のプローブ物質を担持させることができるので、多種類の被検物質の測定を同時に行うことができる。この態様は、各領域毎に異なる被検物質の分析が可能なため、一塩基多型の解析(SNPs)の多項目解析に好ましく利用することができる。
【0089】
(4)対電極
本発明に用いる対電極は、電解液に接触させた場合に作用電極との間に電流が流れることができるものであれば特に限定されず、金属もしくは導電性の酸化物を蒸着したガラス、プラスチック、セラミックス等が使用可能である。また、対電極としての金属薄膜を5μm以下、好ましくは3nm〜3μmの範囲の膜厚になるように、蒸着やスパッタリングなどの方法により形成して作成することもできる。対電極に使用可能な材料の好ましい例としては、白金、金、パラジウム、ニッケル、カーボン、ポリチオフェン等の導電性ポリマー、酸化物、炭化物、窒化物等の導電性セラミックス等が挙げられ、より好ましくは、白金、カーボンであり、最も好ましくは白金である。これらの材料は電子受容層の形成方法と同様の方法により薄膜形成が可能である。
【0090】
(6)測定方法
本発明のセンサユニットを用いた測定方法にあっては、先ず、増感色素の共存下、試料液を作用電極に接触させて、プローブ物質に被検物質を直接または間接的に特異的に結合させ、この結合により増感色素を前記作用電極に固定させる。
【0091】
本発明の好ましい態様によれば、増感色素で予め標識された一本鎖の核酸を被検物質とする場合、プローブ物質である一本鎖核酸との間でハイブリダイゼーション反応を行なうことができる。ハイブリダイゼーション反応の好ましい温度は37〜72℃の範囲であるが、その最適温度は使用するプロ−ブの塩基配列や長さ等により異なる。
【0092】
本発明の別の好ましい態様によれば、被検物質およびプローブ物質の結合体(例えばハイブリダイゼーション後の二本鎖核酸)にインターカレーション可能な増感色素を用いる場合には、試料液に増感色素を添加することにより結合体を特異的に増感色素で標識することができる。
【0093】
こうして被検物質が増感色素と共に固定された作用電極を、対電極と共に電解液に接触させ、作用電極に光を照射して増感色素を光励起させ、光励起された増感色素から作用電極への電子移動に起因して作用電極と対電極との間に流れる光電流を検出する。その際のセンサユニットとして、本発明の電解質含有シートを用いたセンサユニットを使用する。
【0094】
本発明の好ましい態様によれば、互いに異なる光波長で励起可能な二種以上の増感色素を用いて複数種類の被検物質を個別に検出する場合、光源から波長選択手段を介して特定波長の光を照射することにより、複数の色素を個別に励起することが可能である。波長選択手段の例としては、分光器、色ガラスフィルター、干渉フィルター、バンドパスフィルター等が挙げられる。また、増感色素の種類に応じて異なる波長の光を照射可能な複数の光源を用いてもよく、この場合の好ましい光源の例としては、特定波長の光が照射されるレーザー光やLEDを用いてもよい。また、作用極に光を効率よく照射するため、石英、ガラス、液体ライトガイドを用いて導光してもよい。
【0095】
光照射により系内を流れる光電流は電流計により測定される。これにより、被検物質を検出することができる。その際の電流値は作用電極上にトラップされた増感色素の量を反映する。例えば、被検物質が核酸の場合、相補性のある核酸間で形成された二本鎖の量が、電流値となり反映される。したがって、得られた電流値から被検物質を定量することができる。したがって、本発明の好ましい態様によれば、電流計が、得られた電流量または電気量から試料液中の被検物質濃度を算出する手段をさらに備えてなるのが好ましい。
【0096】
本発明の好ましい態様によれば、光電流を検出する工程が、電流値を測定し、得られた電流値または電気量から試料液中の被検物質濃度を算出することができる。この被検物質濃度の算出は、予め作成された被検物質濃度と電流値または電気量との検量線と、得られた電流値または電気量とを対比することにより行うことができる。本発明の方法にあっては、電流値は作用電極上にトラップされた増感色素の量が反映されるので、被検物質濃度に対応した正確な電流値が得られるため、定量測定に適する。
【0097】
本発明の別の好ましい態様によれば、予め増感色素で標識された被検物質を競合物質として用いて、増感色素で標識されていない、プローブ物質に特異的に結合可能な第二の被検物質を定量することができる。第二の被検物質はプローブ物質に標識済被検物質よりも特異的に結合しやすい性質を有するのが好ましい。これら二種類の被検物質を競合させてプローブ物質に特異的に結合させると、検出される電流値と第二の被検物質の濃度との間に相関関係が得られる。つまり、色素標識されていない第二の被検物質の数が増加するにつれ、プローブ物質に特異的に結合する競合物質の数が減少するため、第二の被検物質濃度の増加につれて、検出電流値が減少する検量線を得ることができる。したがって、増感色素で標識されていない第二の被検物質の検出および定量が可能となる。
【0098】
本発明のより好ましい態様によれば、被検物質および第二の被検物質が抗原であり、プローブ物質が抗体であるのが好ましい。この態様における被検物質および第二の被検物質のプローブ物質への固定化工程を図16に示す。図16に示されるように、増感色素で標識された抗原241と、色素標識されていない抗原242とが競合して抗体243に特異的に結合する。したがって、色素標識されていない抗原242が増加するにつれ、抗体に特異的に結合する色素標識された抗原243が減少するため、第二の被検物質濃度の増加につれて、検出電流値が減少する検量線を得ることができる。
【実施例】
【0099】
例1:図11の装置を使用した一塩基多型(SNPs)検出
本例では、p53遺伝子の一塩基多型の検出を行った。作用電極側に完全一致プローブ、一塩基変異鎖プローブ、および完全不一致プローブを固定化した。それぞれの塩基配列は下記の通りとした。
完全一致(PM)プローブ: 5'-AGGATGGGCCTCAGGTTCATGCCGC-3'(配列番号1)
一塩基変異鎖(SNP)プローブ: 5'-AGGATGGGCCTCCGGTTCATGCCGC-3'(配列番号2)
完全不一致(MM)プローブ: 5'-GCGGCATGAACCGGAGGCCCATCCT-3'(配列番号3)
【0100】
これらのプローブとハイブリダイゼーションさせるターゲットDNAの塩基配列は下記の通りとした。
ターゲットDNA: 5'-ローダミン-GCGGCATGAACCTGAGGCCCATCCT-3'(配列番号4)
【0101】
作用電極用のガラス基材として、フッ素をドープした酸化スズ(F-SnO2:FTO)コートガラス(エイアイ特殊硝子社製、U膜、シート抵抗:12Ω/□、形状:50mm×26mm)を用意した。このガラス基材をアセトン中で15分間、続いて超純水中で15分間超音波洗浄を施して、汚れおよび残存有機物の除去を行った。このガラス基材を5Mの水酸化ナトリウム水溶液中で15分間振盪させた。その後、水酸化ナトリウムの除去のために超純水中での5分間の振盪を水を入れ替えて3回行った。ガラス基材を取り出して空気を吹き付けて残水を飛散させた後、ガラス基材を無水メタノールに浸漬させて脱水した。
【0102】
5wt/vol%となるように超純水を添加したメタノールを溶媒として、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS)を2vol%となるように加え、室温下で5分間の攪拌を行って、カップリング処理用の溶を調製した。このカップリング処理用溶液に上記ガラス基材を浸漬させ、ゆっくりと15分間振盪させた。次いで、ガラス基材を取り出し、メタノール中で10回ほど振盪させて余剰なカップリング処理用溶液を除く操作を、メタノールを3回換えて行った。その後、ガラス基材を110℃で30分間保持してカップリング剤をガラス基材に結合させた。ガラス基材を室温下で冷却した後、直径3mmの大きさの開口部が9スポット形成された粘着性シール(厚さ:0.5mm)を載置して密着させた。続いて、1μMに調製した完全一致鎖、一塩基変異鎖、完全不一致鎖のプローブDNA(25mer)を95℃で10分間保持した後、直ちに氷上に移して10分間保持してDNAを変性させた。この変性DNAを先に用意したガラス上のシールの9開口部に5μlずつ充填し、95℃で10分保持して溶媒を蒸発させた。その後、UVクロスリンカー(UVP社CL-1000型)で120mJの紫外光を照射して、プローブDNAをガラス基材に固定化した(各プローブにつき、3スポットずつ固定化)。シールをガラス基材から剥がし、ガラス基材を0.2 wt/vol%SDS溶液中で15分間×3回振盪させ、超純水を3回入れ替えて濯いだ。このガラス基材を沸騰水に2分間浸漬させて取り出した後、空気を吹き付けて残水を飛散させた。続いて、ガラス基材を4℃の無水エタノールに1分間浸漬させて脱水し、空気を吹き付けて残留エタノールを飛散させた。こうして、プローブDNA固定化作用電極を得た。その後、濃度を100nMに調製したターゲットDNAを含む5×SSC、0.5 wt/vol%SDS溶液を、プローブを固定した電極にのせてカバーガラスで密閉した状態で37℃で10時間保温した。その後、2×SSC(室温)中でカバーガラスを剥がし、電極をラックに立て、40℃に設定した2×SSC/0.2 wt/vol%SDS溶液中に30分間振とうさせた後、水ですすぎ電極を乾燥させた。
【0103】
こうして得られた作用電極63を図2に示したセンサユニット60に取り付けた。対電極62の上に電解質含有シート68を載置し、さらにその上に作用電極63の導電面が電解質含有シート68と接触するように載置した。電解質含有シートに用いる吸水性シートとしてろ紙を用いた。電解質としてはテトラプロピルアンモニウムヨージド(NPr4I)を用い(濃度は0.4M)、これを水に溶解して電解液を作製し、26mm×20mmに切った厚さ0.9mmのろ紙を浸漬させて、軽く水切りをし、電解質含有シートを得た。
【0104】
センサユニット上部、XYステージに取り付けた光源を作用電極上のプローブDNA固定化スポットに順次照射した。各スポット照射時に観察される光電流を記録した。また、各スポットに対応するセンサユニットの各開口部の間で一時的に停止し、作用電極に光が照射されない時間を設定する。この時観察される電流値をベース電流値とする。各スポット由来の光電流値とその直前または直後のベース電流値との差分を観察値とした。
【0105】
結果を図17に示す。図17は、各スポット由来電流とベース電流の差分を、各プローブDNAについてまとめたものであり、平均および標準偏差(エラーバーは±1SD)を示している。図17から明らかなように、一塩基の違い(PMとSNPsで観察される電流値の差)を統計学的に有意に分別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】一般的に用いられる蛍光検出装置の構成を示す図である。
【図2】本発明によるセンサユニットの一例を示す分解斜視図である。
【図3】本発明による位置決め部材(支持部材およぶ付勢部材)と作用電極の配置の例を示す斜視図である。
【図4】本発明による位置決め部材(支持部材およぶ付勢部材)と作用電極の配置の例を示す斜視図である。
【図5】本発明による位置決め部材(支持部材およぶ付勢部材)と作用電極の配置の例を示す斜視図である。
【図6】本発明による位置決め部材(支持部材およぶ付勢部材)と作用電極の配置の例を示す斜視図である。
【図7】本発明によるセンサユニットの一例を示す断面図である。
【図8】本発明によるセンサユニットの他の一例を示す分解斜視図である。
【図9】本発明によるセンサユニットの他の一例を示す断面図である。
【図10】本発明による測定装置の基本構成を示す概念図である。
【図11】本発明による上部光源型の遺伝子検査装置の一例を示す外観斜視図である。
【図12】本発明による上部光源型の遺伝子検査装置の一例を示す外観斜視図である。
【図13】図11、8に示される装置の内部構成を示す斜視図である。
【図14】被検物質が一本鎖の核酸であり、プローブ物質が前記核酸に対して相補性を有する一本鎖の核酸である場合における、被検物質のプローブ物質への固定化工程を示す図であり、(a)は被検物質が予め増感色素で標識されてなる場合を、(b)は二本鎖の核酸にインターカレーション可能な増感色素を添加した場合をそれぞれ示す。
【図15】被検物質がリガンドであり、媒介物質が受容体蛋白質分子であり、プローブ物質が二本鎖の核酸である場合における、被検物質のプローブ物質への固定化工程を示す図である。
【図16】互いに競合する特異的結合性を有する被検物質および第二の被検物質が抗原であり、プローブ物質が抗体である場合の、被検物質のプローブ物質への固定化工程を示す図である。
【図17】例1において得られた、各スポット由来電流とベース電流の差分を、各プローブDNAについて整理した図であり、平均および標準偏差(エラーバーは±1SD)を示している。
【図18】本発明におけるセンサチップの一態様を示した図である。
【図19】本発明におけるセンサチップの他の態様を示した図である。
【図20】本発明によるセンサユニットの他の一例を示した斜視図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、増感色素の光励起により生じる光電流を用いて、核酸、外因性内分泌攪乱物質、抗原等の特異的結合性を有する被検物質を特異的に検出する方法に用いられるセンサユニットおよび測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体試料中のDNAを解析する遺伝子診断法が、各種病気の新たな予防および診断法として、有望視されている。このようなDNA解析を簡便かつ正確に行う技術として、被検体DNAを、これと相補的な塩基配列を有し、かつ蛍光物質を標識されたDNAプローブとハイブリダイズさせ、その際の蛍光シグナルを検出する、DNAの分析方法が知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。この方法にあっては、ハイブリダイゼーションによる二本鎖DNAの形成を色素の蛍光により検出する。
【0003】
また、増感色素の光励起により生じる光電流を用いて被検物質(DNA、蛋白などの生体分子)を特異的に検出する方法も提案されている(例えば、特許文献3および非特許文献1参照)。このような検出方法は電解液を満たしたセンサユニットを用いて行われている。
【0004】
一方、酵素の増減を電気信号に変換する酸素電極を用いたマイクロバイオセンサにおいては、電解液含有体としてアガロースのようなゲルを用いることが知られている(例えば、特許文献4参照)。
【0005】
ところで、遺伝子の検出、遺伝子型の決定は、主にDNAチップ及び蛍光検出装置により行われている。一般的なDNAチップとは判明している遺伝子と相補的な塩基配列の核酸プローブを数センチメートル角のガラスチップやシリコンチップに固定化されたものである。
【0006】
一般的に用いられる蛍光検出装置の構成を図1に示す。レーザなどの光源5からの励起光9は、ビームスプリッター4で反射されて、対物レンズ6に入る。励起光9は、対物レンズ6で集光されて、DNAチップ8の核酸プローブの固定部7に当たる。ハイブリダイゼーション反応でハイブリダイゼーションした場合、遺伝子に基づいた核酸プローブと蛍光色素を標識した核酸鎖が二本鎖を形成し、溶液を洗い流した後も、蛍光物質がDNAチップ8上に残ることになり、励起光9により蛍光標識が球状放射の蛍光10を発生する。ハイブリダイゼーションしていない場合は、蛍光しない。蛍光10と励起光9には、数十ナノメートル程度の波長の差がある。蛍光の一部11と励起光9の反射光が対物レンズ6に戻り、ビームスプリッター4に入射する。励起光9の反射光は、ほとんどがビームスプリッター4で反射されて、光源側に向かい、蛍光の一部11は、ビームスプリッター4を透過して、受光器1側に向かう。ビームスプリッター4を透過した蛍光の一部11は、波長を限定するフィルター3で励起光9の反射光は除去される。蛍光の一部11は、受光器レンズ2を通って、蛍光強度を測定する受光器1に入射する。ハイブリダイゼーション反応でハイブリダイゼーションしていない場合は、蛍光しないために、受光器1に光は入射しない。
【0007】
また、検出すべき目的遺伝子に対して相補的な塩基配列を有する一本鎖の核酸プローブを電極表面に固定化し、一本鎖に変性された遺伝子を含む検体と反応させた後、遺伝子とハイブリダイズした前記核酸プローブに二本鎖認識体を結合しこれを電気化学測定によって検出することによって前記目的遺伝子の存在を確認する遺伝子検出装置が知られている(例えば、特許文献5参照)。ここで、電気化学測定は、作用電極および対電極を電解液に浸し、リニアスイープボルタンメトリーによる酸化電流を測定することにより行われている。
【0008】
【特許文献1】特開平7−107999号公報
【特許文献2】特開平11−315095号公報
【特許文献3】特開2006−119111号公報
【特許文献4】特公平5−84860号公報
【特許文献5】特開2000−83647号公報
【非特許文献1】中村他「光電変換による新しいDNA二本鎖検出法」(日本化学会講演予稿集Vol.81ST NO.2(2002)第947頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、構造および検出手順を大幅に簡素化でき、高い加工精度を必要としないセンサユニットおよび測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、今般、増感色素の光励起により生じる光電流を用いた被検物質の特異的検出において電解液の代わりに電解質含有シートを使用することができ、それによりセンサユニットおよび測定装置の構造および検出手順を大幅に簡素化できるとの知見を得た。さらに、検出スポットを有する作用電極に対して許容範囲内の精度で光照射できるような位置決めを行えば、対電極および電解質含有シートのサイズ精度や作用電極に対する配置精度は非常に緩やかにできることも確認した。作用電極の位置決めは従来より用いられている位置決めピンや弾力性のあるバネなどを組み合わせることで容易に達成できるレベル(公差として0.1mm程度)で十分であること、そして、電解質含有シート、ならびに作用電極位置決め機構を備えたセンサユニットおよび測定装置を使用することにより、光電流を高い感度および精度で検出できるとの知見も得た。
【0011】
すなわち、本発明によるセンサユニットは、増感色素の光励起により生じる光電流を用いた被検物質の特異的検出に用いられるセンサユニットであって、作用電極と、対電極と、前記対電極を載置し、さらに前記作用電極が所定の位置に載置されるための位置決め部材を備えてなるベースプレートと、前記作用電極と対向する位置に光照射口を備えた蓋部とを備えてなり、被検物質の特異的検出が、電解質含有シートを前記作用電極と対電極との間に挟持させて行われるものである。
【0012】
また、本発明による作用電極は、特異的検出時に使用者が作用電極に直接触れることなく検出できるように、センサチップケースに取り付けて用いてもよい。特異的検出時に使用者が作用電極に直接触れることなく検出できれば、さらに精度よい検出が可能となる。センサチップケースには、作用電極がセンサチップケースの所定の位置に保持されるための、窪み部および突起部の少なくともいずれか一方と、作用電極をベースプレートの所定の位置に固定されるための位置決め部材を通すための開口部とを有しており、披検物質の特異的検出が、電解質含有シートを作用電極とセンサチップケースとの間に挟持させて行われる。ただし、センサチップケースに設けられた窪み部または突起部は、作用電極をベースプレートの所定の位置に固定するために多少の遊びを設けて設置する必要がある。また、センサチップケースを用いる場合、ベースプレートにはセンサチップケースを所定の位置に着脱可能に載置し、補助的に位置決めするための補助部材を備える。
【0013】
さらに、本発明による装置は、増感色素の光励起により生じる光電流を用いた被検物質の特異的検出に用いられる測定装置であって、上記センサユニットと、前記作用電極に光を照射する光源と、前記光源をXY方向に移動させるXY移動機構と、前記作用電極と前記対電極との間を流れる電流を測定する電流計と、前記光源、前記XY移動機構、および電流計を制御し、前記電流計からの電流信号を受信し、該電気信号に基づいて被検物質の存在、型、および濃度の少なくとも一種を決定する制御演算手段とを備えたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
センサユニット
本発明の態様におけるセンサユニットは、増感色素の光励起により生じる光電流を用いた被検物質の特異的検出に用いられるセンサユニットである。このセンサユニットは、作用電極を所定の位置に載置するための位置決め部材を備えたベースプレートと、光照射のための光照射口を備える蓋部を備えてなる。
【0015】
蓋部は、作用電極、電解質含有シートおよび対電極を密着させるために設けられる。
【0016】
ベースプレートは支持部材、付勢部材を設けるために十分な剛性と加工性を有する材質からなる。樹脂、セラミック、金属などを用いることができるが、絶縁性、加工性の観点から樹脂が最も好ましい。
【0017】
対電極はベースプレートに配置するが、ベースプレートに設けられた作用電極との電気的接点に接触しなければ、特に固定して配置する必要はない。対電極の上に電解質含有シートを載置し、さらに作用電極を位置決め部材により所定の位置に載置させる。この時、作用電極は光源に対し、作用電極上の検出スポットの大きさと光源の光束径によって決められる精度で位置決めをする必要があるが、作用電極上に載置する電解質含有シートのサイズは作用電極上の検出スポットが配置された領域をカバーすればよく、その載置の精度も目視で行える。また、対電極のサイズも同様に作用電極上の検出スポットが配置された領域をカバーすれば十分であり、上述したとおり、ベースプレートに設けた電気的接点に接触しなければ、対電極の加工精度やベースプレートへの取り付けは特段の精度を必要としない。さらに、上述したようにセンサチップケースを用いる場合、ベースプレートにはセンサチップケースを所定の位置に載置するための補助部材を備える。
【0018】
電解質含有シートを用いることで、特段高い加工精度で作製されていなくても、増感色素の光励起により生じる光電流の検出が容易に精度良く行えるセンサユニットを提供できる。
【0019】
本発明において用いられる電解質含有シートは、増感色素の光励起により生じる光電流を用いた被検物質の特異的検出において電解質媒体として用いられるシート状の電解質含有体である。そして、この電解質含有シートは、典型的には、含水性基材と、含水性基材中に含有される電解質とを含んでなることができる。電解質は含水性基材中を自由に移動して増感色素、作用電極、および対電極との間で電子の授受に関与できる。したがって、電解質含有シートを作用電極および対電極の間に挟持させ、各電極表面を電解質含有シートと接触させておくことで、作用電極と対電極との間で、増感色素の光励起により生じる光電流が流れることができる。この電解質含有シートは、電解質媒体という点では従来使用されている電解液と同じであるが、単独で取り扱うことが可能なシート状物であるため、作用電極と対電極の間に容易に挟み込んだり、取り外したり、あるいは持ち運んだりすることができ、その結果、装置構造および検出手順を大幅に簡素化できる。事実、本発明のセンサユニットないし測定装置によれば、作用電極、電解質含有シート、および対電極を、互いに載置ないし挟持するだけという極めて簡便な手法で正確に組み立てることができることは上述の通りである。これは、作用電極と対電極との間に電解液を充填して行われる従来法において、電解液を送液する機構(例えばポンプ、バルブ、およびそれらの制御機構)、液漏れ防止機構(例えばパッキン)、および電解液の廃液処理といった複雑な機構ないし工程が必要とされ、そのためコストの増大および装置の大型化を招いていたという実情に照らせば、極めて大きな利点であると言える。また、電解質含有シートの使用により電解液を送液するための時間が不要となるため、作用電極と対電極との間に電解質含有シートを挟むだけで、即座に測定に付することができるため、測定時間も短縮される。
【0020】
本発明の好ましい態様によれば、対電極表面に電解質含有シートを載置し、さらに作用電極で挟み込む構造にしてもよい。この態様のセンサユニットの一例を図2に示す。図2に示すセンサユニット60は、ベースプレート61に対電極62を備えており、さらに作用電極63を所定の位置に載置するための位置決め部材として支持部材64、付勢部材65を備えている。
【0021】
支持部材はピン形状あるいは少なくとも前記作用電極が当接する部位が平面である突起形状、さらにはベースプレートに設けられた窪み部の壁面を用いることができる。支持部材の材質としては、樹脂、金属、セラミック、ガラスなど十分な強度と加工性を有するものを使用することができる。付勢部材は板状、コイル状のバネ、ゴムやポリマーなどの材質からなる弾力性突起形状を具体例として挙げることができる。作用電極は、付勢部材によって、支持部材に適度な圧力で押しつけられて固定され、所定の位置に配置される。
【0022】
図3に支持部材としてピン形状の突起物41を用いた各例を示す。この支持部材と組み合わせる付勢部材として、図3aでは板バネ44、図3bではコイルバネ45、図3cでは弾力性突起物46を用いる例を示す。図4に支持部材として少なくとも前記作用電極21が当接する部位が平面である突起物42を用いた各例を示す。この支持部材と組み合わせる付勢部材として、図4aでは板バネ44、図4bではコイルバネ45、図4cでは弾力性突起物46を用いる例を示す。図5に支持部材としてベースプレートに設けられた窪み部の壁面43を用いた各例を示す。この支持部材と組み合わせる付勢部材として、図5aでは板バネ44、図5bではコイルバネ45、図5cでは弾力性突起物46を用いる例を示す。また、付勢部材をL型の部材と弾力性を有する部材との組み合わせとすることもできる。このような付勢部材を用いた例を図6に示す。ここでL型部材47は適度な強度を有する材質であれば良く、樹脂、セラミック、金属などを使用できるが、加工性、絶縁性の観点から樹脂が最も好ましい。また、弾力性を有する部材48としては、コイルバネ、ゴムなど弾性を有する部材を使用することができる。この付勢部材と組み合わせる支持部材として図6aにはピン状突起物41、図6bには少なくとも前記作用電極21が当接する部位が平面である突起物42、図6cにはベースプレートに設けられた窪み部の壁面43を用いる例を示す。図示したように、L字部材の両端に取り付けられた弾力性を有する部材48のもう一端は適当な突起物49(図6a,b)あるいはベースプレートに設けられた窪み部の壁面43(図6c)に取り付けられる。前記作用電極21の取り付け時に、L字部材47が指先を干渉し、操作性が劣る場合には、L字部材47の適切な位置に適度な大きさの切り欠きを設けることで、前記作用電極21の取り付けを容易にすることもできる。
【0023】
蓋部66は蝶番などによって取り付け、その取り付け部位としてはベースプレート61が適しているが、これに限定されるものではなく、図11、12に示す凹部102の底部に取り付けることもできる。蓋部66には弾力性のあるシート状の部材69を作用電極63を押さえつけることができる位置に取り付けてもよい。こうすることにより、作用電極63との間に電解質含有シート26を挟時する際に、密着性を確保しながらも、強く押し当てすぎることによる電極の破損を防ぐことが出来る。さらに、蓋部66およびベースプレート61に固定部材71を備えて、蓋部66を適度に保持することができる。固定部材は、磁石、ピンやフックの組み合わせ、などが挙げられる。もしくは蓋部66に適度な自重を持たせることでも蓋部の固定は可能である。
【0024】
作用電極63および対電極62を電流計に接続するための電気的接点65は、作用電極63についてはベースプレート61に、対電極62については蓋部66に備えることができる。こうすることにより、図7に示すように電解質含有シート63を挟時するために蓋66を閉じる等の操作によって蓋部をベースプレート方向に押しつけた状態で、各電極との接点が確保される。電気的接点については、コンタクトプローブや板状や線状の金属バネを使用することができる。また、蓋部には作用電極上の検出スポットに光照射ができるように光照射口67を備えている。光照射口は、開口部または透光部から構成される。すなわち、光照射口は、蓋部の作用電極に対向する位置に、光を通過させるための開口を設けるか、あるいは、透光性の部材からなる透光部を設けてなる。光照射口(67)については、図8および9に示すように、作用電極上の検出スポットの位置に一致するように複数設けても良いし、複数の検出スポットに光照射が可能なように単数設けても良い。光照射口を作用電極上の検出スポットの位置に一致するように光照射口を複数設けることにより、各検出スポットへ順次光源照射を行うときに、迷光により照射していない検出スポットからの光電流の発生し、ノイズ電流となることを防ぐことができるので好ましい。
◆「開口部または透光部」→「光照射口」への変更に伴い、文を追加しました。ご確認ください。
【0025】
本発明の別の好ましい態様によれば、本発明による作用電極を、特異的検出時に使用者が作用電極に直接触れることなく検出できるように、センサチップケースに取り付けて用いてもよい。この態様の一例を図18に示す。図18は、板状の作用電極63と、この作用電極63がほぼ同じ寸法に形成された窪み部162aを有するセンサチップケース162と、センサユニットに設置された、作用電極63の位置決めに用いられる支持部材用開口部163、付勢部材用開口部164、センサチップケース162をセンサユニットの所定の位置に載置させるための補助部材に適合する開口部165を備えてなり、作用電極が載置される領域の少なくとも一部に、測定時に対電極が下方から通過可能な開口部166が形成されてなる。したがって、この開口部166の寸法は対電極が通過可能なサイズとされる。また別の態様である図19に示されるセンサチップは、板状の作用電極63と、窪み部72aおよび第二の窪み部72bを有するセンサチップケース72と、電解質含有シート68と、センサユニットに設置された、作用電極63の位置決めに用いられる支持部材用開口部173、付勢部材用開口部174、センサチップケース162をセンサユニットの所定の位置に載置させるための補助部材に適合する開口部175とを備えてなり、図18と同様に測定時に対電極が下方から通過可能な第三の開口部176が形成されてなる。
【0026】
図20にはセンサチップケースを用いる際のセンサユニットの一例を示す。センサチップケース162に取り付けた作用電極63をベースプレート152に装着する際には、センサチップケース162の下面に設けられた補助部材143に適合する開口部175を補助部材143に合わせて設置し、作用電極63を支持部材141に当接し、付勢部材142により固定する。付勢部材142は支持部材141方向に復元力がかかる例えばV字状に加工した金属、樹脂、ゴムなどの弾性体やばね等が用いられており、センサチップが取り付けられた際には弾性体やばね等の復元力がかかることにより作用電極が確実に固定される。なお、センサチップ取り付けの際には、支持部材とは逆の方向に、付勢部材の復元力に逆らって力を加えることで容易に作用電極の固定状態を解除できる。作用電極63を取り付けると、ベースプレート152の凸部に設けられた対電極159と電解質含有シート68が接触し、電解質含有シート68には作用電極63が接触する。本体蓋154が閉じられると、押さえ部材145が作用電極113を押さえ込むとともに、押さえ部材145に設けられた光照射口144の各々が作用電極63の各検出スポットに対応するような適切な配置が形成される。光照射口144は透光性部材からなるか、または開口により形成される。作用電極63の電流計149への接続は作用電極用コンタクトプローブ118により行い、対電極159と電流計への接続は対電極用コンタクトプローブ119により行う。なお、センサチップケース162には、作用電極用コンタクトプローブ118が作用電極63に接触できるように作用電極コンタクトプローブ用開口部177と対電極159が電解質シート68に接触できるように対電極用開口部178が設けられている。
【0027】
測定装置
本発明のセンサユニットを用いることにより、構造が大幅に簡素化された安価でかつ小型の測定装置を構築することができる。これは、本発明のセンサユニットは電解質含有シートを用いるため、作用電極と対電極との間に電解液を充填して行われる従来法において必要とされていた、電解液を送液する機構(例えばポンプ、バルブ、およびそれらの制御機構)、液漏れ防止機構(例えばパッキン)、および電解液の廃液処理といった複雑な機構ないし工程が不要となるためである。
【0028】
本発明における測定装置は、本発明のユニットを用いて増感色素の光励起により生じる光電流を用いた被検物質の特異的検出を行う装置である。本発明の測定装置の一例を図10に示す。図10に示すように、本発明の測定装置80は、センサユニット81、光源82、XY移動機構83、電流計84、および制御演算手段85を備えている。測定の際に、電解質含有シート81bが、作用電極81aと作用電極81aとの間に挟持させて設けられていればよい。そして、光源82は、作用電極81aの表面に光を照射可能な位置に配置されればよく、センサユニットの下方および上方のいずれに配置されてもよい。光源82にはXY移動機構83が接続され、光源82が所望の被検スポットに向かってXY方向に移動可能に構成される。そして、作用電極および対電極には電流計84が接続され、その間を流れる電流が測定可能に構成される。
そして、制御演算手段85にあっては、制御部85aが光源82、XY移動機構83および電流計84を制御し、なおかつ電流計84からの電流信号を受信し、演算部85bが電気信号に基づいて被検物質の存在、型、および濃度の少なくとも一種を決定するように構成される。また、測定装置80は、制御演算手段85で得られた結果を表示する表示装置86をさらに備えてもなるのが好ましい。さらに、測定装置81が、測定のための条件の入力が行われる入力装置87をさらに備えてなるのが好ましい。
なお、演算手段85、表示装置86、入力装置87は測定装置80内に備えても良いし、これらの機能をパーソナルコンピュータに備え、測定装置80と連結させて用いても良い。
【0029】
光源がセンサユニットの上方に配置され、なおかつ図2、7に示される本発明のセンサユニット60が使用可能な、本発明における遺伝子検査装置の一例を図11〜13に示す。図11は遺伝子検査装置100の外観を示す斜視図で、同図に示すように、装置筐体101の前面部にはセンサユニットを設置する凹部102が設けられる。凹部102はその内部に設置するセンサユニット60へ作用電極を取り付ける際に、オペレーターの指を緩衝しない大きさに設定する。図9に示すように、凹部前部には扉103を取り付けても良い。ここで示した遺伝子検査装置は、制御、データ取得、解析、保存をPCと接続して行うことを前提としているので、動作条件の入力装置、データの表示装置などを備えていない。PCまたはPCと相当する機能を有するマイコンなどを遺伝子検査装置内に備え、さらには入力装置としてキーパッド、表示装置として液晶画面などを備える構成とすることもできる。図11は遺伝子検査装置100の内部斜視図であり、同図に示すように、光源161は、センサユニット60の作用電極上の各検出スポットに光を照射できるように構成され、XY移動機構162によって移動可能に構成される。電流計163は、作用電極と対電極との間に流れる電流を測定できるように構成される。光源161、XY移動機構162および電流計163の制御ならびに電流信号の受信は、制御演算部において、インターフェースボード164を介して外部コンピューター(図示せず)によって行われる。また、この外部コンピューターは、制御や各種の演算などの処理を行うとともにデータや処理結果を記憶し、その結果を表示装置(図示せず)に表示する。
【0030】
電解質含有シート
本発明に用いる電解質含有シートは、増感色素の光励起により生じる光電流を用いた被検物質の特異的検出において電解質媒体として用いられるシート状の電解質含有体である。そして、この電解質含有シートは、含水性基材と、含水性基材中に含有される電解質とを含んでなる。
【0031】
本発明において電解質は、含水性基材中を自由に移動して増感色素、作用電極、および対電極との間で電子の授受に関与できるものであれば限定されず、幅広い種類の電解質が使用可能である。好ましい電解質は、光照射により励起された色素に電子を供与するための還元剤(電子供与剤)として機能できる物質であり、そのような物質の例としては、ヨウ化ナトリウム(NaI)、ヨウ化カリウム(KI)、ヨウ化カルシウム(CaI2)、ヨウ化リチウム(LiI)、ヨウ化アンモニウム(NH4I)、テトラプロピルアンモニウムヨージド(NPr4I)、チオ硫酸ナトリウム(Na2S2O3)、亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)、ヒドロキノン、K4[Fe(CN)6]・3H2O、フェロセン−1,1’−ジカルボン酸、フェロセンカルボン酸、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、トリエチルアミン、チオシアネートアンモニウム、ヒドラジン(N2H4)、アセトアルデヒド(CH3CHO)、N,N,N’,N’−テトラメチル−p−フェニレンジアミン二塩酸塩(TMPD)、L−アスコルビン酸、亜テルル酸ナトリウム(Na2TeO3)、塩化鉄(II)四水和物(FeCl2・4H2O)、EDTA、システイン、トリエタノールアミン、トリプロピルアミン、ヨウ素を含むヨウ化リチウム(I/LiI)、トリス(2-クロロエチル)リン酸塩(TCEP)、ジチオスレイトール(DTT)、2−メルカプトエタノール、2−メルカプトエタノールアミン、二酸化チオ尿素、(COOH)2、HCHO、およびこれらの組合せが挙げられ、より好ましくは、NaI、KI、CaI2、LiI、NH4I、テトラプロピルアンモニウムヨージド(NPr4I)、チオ硫酸ナトリウム(Na2S2O3)、および亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)、およびこれらの混合物であり、さらに好ましくは、テトラプロピルアンモニウムヨージド(NPr4I)である。
【0032】
(1)ゲルシート
本発明の好ましい態様によれば、含水性基材が、天然ゲルおよび合成ゲルから選択される少なくとも一種を含んでなるゲルマトリクスであって、該ゲルマトリクス中に前記電解質が分散されてなるのが好ましい。すなわち、この態様にあっては、電解質含有シートはゲルシートとして構成される。そして、電解質媒体としてゲルシートを使用した場合、電解液を用いた場合と比べて、同じ被検物質濃度のサンプルについてより高い検出電流が得られるとともに、より広い被検物質濃度範囲において検出電流の濃度依存性が得られる。すなわち、ゲルシートの使用により、光電流の検出感度および精度を大幅に向上させることができる。
【0033】
本発明の好ましい態様によれば、ゲルシートは、100g/cm2以上のゲル強度を有するのが好ましく、より好ましくは120g/cm2以上であり、さらに好ましくは150g/cm2以上である。このようなゲル強度であると、ゲルシートを単独で取り扱いやすくなるので、作用電極と対電極の間に容易に挟み込んだり、取り外したりでき、その結果、センサユニット構造および検出手順を大幅に簡素化できる。
【0034】
本発明のゲルシートの形態としては、作用電極および対電極との良好な密着性が確保されるように各電極との接触部分が平滑平面とされているのが好ましい。したがって、作用電極と対電極との間に挟み込んで使用する場合には、密着性に影響しないように均一な厚みを有する形態とするのが好ましい。一方、作用電極および対電極が同一平面状にパターニングされてなる電極ユニットを使用する場合には、少なくとも電極ユニットと接触する片側面のみが平滑平面とされていればよく、厚さや厚さの均一性は特段問題とならない。
【0035】
本発明の好ましい態様によれば、ゲルシートは0.1〜10mmの厚さを有するのが好ましく、より好ましくは0.5〜3mm、さらに好ましくは1〜3mmの厚さを有する。このような厚さであるとゲルシートを単独で取り扱うのに適した強度が得られやすいので、作用電極と対電極の間に容易に挟み込んだり、取り外したりでき、あるいは持ち運んだりすることができ、その結果、センサユニット構造および検出手順を大幅に簡素化できる。また、光電流測定に悪影響を与えることもない。
【0036】
本発明においてゲルマトリクスは、天然ゲルおよび合成ゲルから選択される少なくとも一種を含んでなり、適度な強度と電極への密着性を示すゲルであれば限定されない。これらのゲルは、一般的なゲルと同様、ゲル化剤が水等の溶媒と共にゲル化することにより形成されることができる。ゲルマトリクス中におけるゲル化剤の濃度は、光電流測定に大きな影響を与えることはないため、単独取り扱いを可能とする強度確保の観点からゲル化剤の種類に応じて適宜決定されてよい。
【0037】
本発明の好ましい態様によれば、ゲルマトリクスが、多糖類および蛋白質を主成分とする天然ゲルを含んでなるのが好ましい。このような天然ゲルの好ましい例としては、アガロース、アルギン酸、カラギーナン、ローストビーンガム、ジェランガム、ゼラチン、およびそれらの混合物のゲルが挙げられ、より好ましくはアガロースのゲルである。好ましいアガロースの添加量は0.5〜25重量%である。
【0038】
本発明の別の好ましい態様によれば、ゲルマトリクスが、合成ゲルを含んでなるのが好ましい。好ましい合成ゲルの例としては、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、PVA添加ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、N−アルキル変性(メタ)アクリルアミド誘導体、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−(イソ)プロピルアクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−ヒドロキシプロピルアクリルアミド、N−ヒドロキシブチルアクリルアミド、(メタ)アクリル酸、t−ブチル(メタ)アクリルアミドスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、グリセリン(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、テトラアリロキシエタン、およびそれらの混合物のゲルが挙げられ、より好ましくはポリアクリルアミドのゲルである。
【0039】
本発明の好ましい態様によれば、本発明のゲルシートは、(1)電解質およびゲル化剤を水に加えて加熱溶解してゲルを作製した後、所望のシート形状に加工する方法、あるいは(2)ゲル化剤のみでゲルを形成して所望のシート形状に加工した後、電解質溶液中に浸漬させてゲル中に電解質を分散させる方法により、製造されることができる。特に、ゲル化剤は使用する電解質との組合せによっては、混合、加熱、あるいは冷却によってゲル化しない場合があり、そのような場合であっても上記(2)の方法によれば、ゲルシートを作製することができる。
【0040】
(2)吸水性シート
本発明の別の好ましい態様によれば、含水性基材が、吸水性基材であるのが好ましい。すなわち、この態様にあっては、電解質含有シートは吸水性シートとして構成される。そして、電解質媒体として吸水性シートを使用した場合、電解液を使用した場合と同等の検出感度および検出精度が得られる。すなわち、吸水性シートの使用により、光電流を精度よく検出することができる。
【0041】
本発明の好ましい態様によれば、吸水性シートは、20%以上の含水率を有するのが好ましく、より好ましくは30%以上であり、さらに好ましくは40%以上である。このような含水率であると、光電流を検出した際に高い光電流を検出することができ、検出感度が向上する。含水率は(1mm3 辺りの含水量)/(吸水性基材の密度)より求める。なお、ここで言う含水率は光電流を検出する際の吸水性シートの含水率であって、後述するように、保管時に上記含水率を満たしていなくてもよい。
【0042】
本発明の吸水性シートの形態としては、作用電極および対電極との良好な密着性が確保されるように各電極との接触部分が平滑平面とされているのが好ましい。したがって、作用電極と対電極との間に挟み込んで使用する場合には、密着性に影響しないように均一な厚みを有する形態とするのが好ましい。一方、作用電極および対電極が同一平面状にパターニングされてなる電極ユニットを使用する場合には、少なくとも電極ユニットと接触する片側面のみが平滑平面とされていればよく、厚さや厚さの均一性は特段問題とならない。
【0043】
本発明の好ましい態様によれば、吸水性シートは0.01〜10mmの厚さを有するのが好ましく、より好ましくは0.1〜3mmの厚さを有する。このような厚さであると吸水性シートを単独で取り扱うのに適した強度が得られやすいので、作用電極と対電極の間に容易に挟み込んだり、取り外したりでき、あるいは持ち運んだりすることができ、その結果、センサユニット構造および検出手順を大幅に簡素化できる。また、光電流測定に悪影響を与えることもない。
【0044】
本発明において吸水性基材は、綿、麻、ウール、絹、セルロースなどの天然繊維;ろ紙、製紙などに用いられるパルプ繊維;レーヨンなどの再生繊維;ろ紙などに用いられるガラス繊維;フェルト、スポンジなどに用いられる合成繊維から選択される少なくとも一種の繊維を含んでなるのが好ましく、適度な強度、含水量、電極への密着性を示す吸水性基材であれば限定されない。なお、本発明の吸水性基材に用いる繊維の加工方法は特定の加工方法に限定されない。
【0045】
本発明の好ましい態様によれば、吸水性基材の好ましい例としては、ろ紙、メンブレンフィルター、ガラスフィルター、ろ布などが挙げられ、より好ましくはろ紙、メンブレンフィルターである。
【0046】
本発明の好ましい態様によれば、本発明の電解質含有吸収性シートは、(1)所望のシート形状に加工し、水ベースの電解液に浸漬した後、使用する、あるいは(2)所望のシート形状に加工し、電解液に浸漬し、乾燥させた後、使用直前に水を添加して使用することもできる。
【0047】
上述のように、ゲルシートおよび吸水性シートのいずれを用いても良好な光電流検出を行うことができるが、作用電極への載置を行う場合の強度の観点からは、吸水性シートを用いることがが好ましい。また、吸水性シートは乾燥状態で電解質を含有させておき、使用時に復水させるといった使い方も可能であるため、保存性にも優れている点においても好ましい。
【0048】
光電流を用いた被検物質の特異的検出
前述の通り、本発明のセンサユニットは増感色素の光励起により生じる光電流を用いた被検物質の特異的検出に用いられるものである。この増感色素の光励起により生じる光電流を用いた被検物質の特異的検出方法について、以下に具体的に説明する。
【0049】
この方法にあっては、まず、被検物質を含む試料液と、作用電極と、対電極とを用意する。本発明に用いる作用電極は、被検物質と直接または間接的に特異的に結合可能なプローブ物質を表面に備えた電極である。すなわち、プローブ物質は、被検物質と直接、特異的に結合する物質のみならず、被検物質を受容体蛋白質分子等の媒介物質に特異的に結合させて得られる結合体と特異的に結合可能な物質であってよい。次いで、増感色素の共存下、試料液を作用電極に接触させて、プローブ物質に被検物質を直接または間接的に特異的に結合させ、この結合により増感色素を作用電極に固定させる。増感色素は、光励起に応じて作用電極に電子を放出可能な物質であり、被検物質あるいは媒介物質に予め標識させておくか、あるいは被検物質およびプローブ物質の結合体にインターカレーション可能な増感色素を用いる場合には試料液に単に添加すればよい。
【0050】
そして、作用電極と対電極とをセンサユニット内において電解質含有シートに接触させた後、作用電極に光を照射して増感色素を光励起させると、光励起された増感色素から電子受容物質へ電子移動が起こる。この電子移動に起因して作用電極と対電極との間に流れる光電流を検出することにより、被検物質を高い感度および精度で検出することができる。また、この検出電流は試料液中の被検試料濃度との高い相関関係を有しているので、測定された電流量または電気量に基づき被検試料の定量測定を行うことができる。
【0051】
(1)被検物質およびプローブ物質
本発明における被検物質としては、特異的な結合性を有する物質であれば限定されず、種々の物質であってよい。このような被検物質であれば、被検物質と直接または間接的に特異的に結合可能なプローブ物質を作用電極表面に担持させておくことにより、被検物質をプローブ物質に直接または間接的に特異的に結合させて検出することが可能となる。
【0052】
すなわち、本発明にあっては、被検物質およびプローブ物質として互いに特異的に結合可能なものを選択することができる。すなわち、本発明の好ましい態様によれば、特異的な結合性を有する物質を被検物質とし、被検物質と特異的に結合する物質をプローブ物質として作用電極に担持させるのが好ましい。これにより、作用電極上に被検物質を直接、特異的に結合させて検出することができる。この態様における、被検物質およびプローブ物質の組合せの好ましい例としては、一本鎖の核酸および核酸に対して相補性を有する一本鎖の核酸の組合せ、ならびに抗原および抗体の組合せが挙げられる。
【0053】
本発明のより好ましい態様によれば、被検物質を一本鎖の核酸とし、プローブ物質を核酸に対して相補性を有する一本鎖の核酸とするのが好ましい。プローブ物質は核酸に対して15bp以上の相補性部分を有するのがより好ましい。この態様における被検物質の作用電極への特異的結合の工程を図14(a)および(b)に示す。これらの図に示されるように、被検物質としての一本鎖の核酸221は、作用電極223上に担持されたプローブ物質としての相補性を有する一本鎖の核酸224とハイブリダイズされて、二本鎖の核酸227を形成する。
【0054】
被検物質としての一本鎖の核酸を含む試料液は、末梢静脈血のような血液、白血球、血清、尿、糞便、精液、唾液、培養細胞、各種臓器細胞のような組織細胞等の、核酸を含有する各種検体試料から、公知の方法により核酸を抽出して作製することができる。このとき、検体試料中の細胞の破壊は、例えば、振とう、超音波等の物理的作用を外部から加えて担体を振動させることにより行なうことができる。また、核酸抽出溶液を用いて、細胞から核酸を遊離させることもできる。核酸溶出溶液の例としては、SDS、Triton−X、Tween−20のような界面活性剤、サポニン、EDTA、プロテア−ゼ等を含む溶液が挙げられる。これらの溶液を用いて核酸を溶出する場合、37℃以上の温度でインキュベ−トすることにより反応を促進することができる。
【0055】
本発明のより好ましい態様によれば、被検物質とする遺伝子の含有量が微量である場合には、公知の方法により遺伝子を増幅した後検出を行なうのが好ましい。遺伝子を増幅する方法としては、ポリメラ−ゼチェインリアクション(PCR)等の酵素を用いる方法が代表的であろう。ここで、遺伝子増幅法に用いられる酵素の例としては、DNAポリメラ−ゼ、Taqポリメラ−ゼのようなDNA依存型DNAポリメラ−ゼ、RNAポリメラ−ゼIのようなDNA依存型RNAポリメラ−ゼ、Qβレプリカ−ゼのようなRNA依存型RNAポリメラ−ゼが挙げられ、好ましくは温度を調節するだけで連続して増幅を繰り返すことができる点で、Taqポリメラ−ゼを用いるPCR法である。
【0056】
本発明の好ましい態様によれば、上記増幅時に特異的に核酸を増感色素で標識することが出来る。一般的には、DNAにアミノアリル修飾dUTPを取り込ませることにより行うことができる。この分子は未修飾の dUTP と同じ効率で取り込まれる。次のカップリング段階において、N−ヒドロキシサクシンイミド(N−hydroxysuccinimide)により活性化された蛍光色素が修飾 dUTP と特異的に反応し、均一に増感色素で標識された被検物質が得られる。
【0057】
本発明の好ましい態様によれば、上記のようにして得られた核酸の粗抽出液あるいは精製した核酸溶液をまず90〜98℃、好ましくは95℃以上の温度で熱変性を施し、一本鎖核酸を調製することができる。
【0058】
本発明にあっては、被検物質とプローブ物質が間接的に特異的に結合するものであってもよい。すなわち、本発明の別の好ましい態様によれば、特異的な結合性を有する物質を被検物質とし、この被検物質と特異的に結合する物質を媒介物質として共存させ、この媒介物質と特異的に結合可能な物質をプローブ物質として作用電極に担持させるのが好ましい。これにより、プローブ物質に特異的に結合できない物質であっても、媒介物質を介して作用電極上に間接的に特異的に結合させて検出することができる。この態様における、被検物質、媒介物質、およびプローブ物質の組合せの好ましい例としては、リガンド、このリガンドを受容可能な受容体蛋白質分子、およびこの受容体蛋白質分子と特異的に結合可能な二本鎖の核酸の組合せが挙げられる。リガンドの好ましい例としては、外因性内分泌攪乱物質(環境ホルモン)が挙げられる。外因性内分泌撹乱物質とは、受容体蛋白質分子を介してDNAに結合し、その遺伝子発現に影響して毒性を生じる物質であるが、本発明の方法によれば、被検物質によりもたらされる受容体等のタンパク質のDNAに対する結合性を簡便にモニタリングすることができる。この態様における被検物質の作用電極への特異的結合の工程を図15に示す。図15に示されるように、被検物質としてのリガンド230は、まず、媒介物質である受容体蛋白質分子231に特異的に結合する。そして、リガンドが結合された受容体蛋白質分子233が、プローブ物質としての二本鎖の核酸234に特異的に結合する。
【0059】
本発明の好ましい態様によれば、被検物質は二種以上であることができる。本発明の方法によれば、複数の増感色素を用いて、各増感色素毎に異なる励起波長の光を照射することにより、複数種類の被検物質を個別に検出することが可能である。
【0060】
(2)増感色素
本発明にあっては、被検物質の存在を光電流で検出するために、増感色素の共存下、プローブ物質に被検物質を直接または間接的に特異的に結合させて、該結合により増感色素を作用電極に固定させる。そのために、本発明にあっては、図14(a)および図15に示されるように被検物質221あるいは媒介物質231に予め増感色素222,232で標識しておくことができる。また、図14(b)に示されるように被検物質およびプローブ物質の結合体227(例えばハイブリダイゼーション後の二本鎖核酸)にインターカレーション可能な増感色素228を用いる場合には、試料液に増感色素を添加することにより、プローブ物質に増感色素を固定させることができる。
【0061】
本発明に用いる増感色素は、光励起に応じて作用電極に電子を放出可能な物質であり、光源の照射による光励起状態への遷移が可能であり、かつ励起状態から作用電極に電子注入できる電子状態を採りうるものであればよい。したがって、用いる増感色素は、作用電極、特に電子受容層との間において上記電子状態をとることができるものであればよいことから、多種の増感色素が使用可能であり、高価な色素を使用する必要がない。
【0062】
増感色素の具体例としては、金属錯体や有機色素が挙げられる。金属錯体の好ましい例としては、銅フタロシアニン、チタニルフタロシアニン等の金属フタロシアニン;クロロフィルまたはその誘導体;ヘミン、特開平1−220380 号公報や特表平5−504023 号公報に記載のルテニウム、オスミウム、鉄及び亜鉛の錯体(例えばシス−ジシアネート−ビス(2、2 ’−ビピリジル−4、4 ’−ジカルボキシレート)ルテニウム(II))があげられる。有機色素の好ましい例としては、メタルフリーフタロシアニン、9−フェニルキサンテン系色素、シアニン系色素、メタロシアニン系色素、キサンテン系色素、トリフェニルメタン系色素、アクリジン系色素、オキサジン系色素、クマリン系色素、メロシアニン系色素、ロダシアニン系色素、ポリメチン系色素、インジゴ系色素等が挙げられる。増感色素のより好ましい具体例としては、Cy3、Cy5、ローダミンが挙げられる。
【0063】
二本鎖核酸にインターカレーション可能な増感色素の好ましい例としては、アクリジンオレンジ、エチジウムブロマイドが挙げられる。このような増感色素を用いる場合、核酸のハイブリダイゼーション後に試料液に添加するだけで増感色素で標識された二本鎖核酸が形成されるので、予め一本鎖の核酸を標識する必要が無い。
【0064】
(3)作用電極およびその製造
本発明に用いる作用電極は、上記プローブ物質を表面に備えた電極であり、プローブ物質を介して固定された増感色素が光励起に応じて放出する電子を受容可能な電極である。したがって、作用電極の構成および材料は、使用される増感色素との間で上記電子移動が生じるものであれば限定されず、種々の構成および材料であってよい。
【0065】
本発明の好ましい態様によれば、作用電極が増感色素が光励起に応じて放出する電子を受容可能な電子受容物質を含んでなる電子受容層を有し、この電子受容層の表面にプローブ物質が備えられてなるのが好ましい。また、本発明のより好ましい態様によれば、作用電極が導電性基材をさらに含んでなり、この導電性基材上に電子受容層が形成されてなるのが好ましい。この態様の電極は図14および15に示される。図14および15に示される作用電極223は、導電性基材225と、この導電性基材上に形成され、電子受容物質を含んで成る電子受容層226とを備えてなる。そして、電子受容層226の表面にプローブ物質が担持される。
【0066】
本発明における電子受容層は、プローブ物質を介して固定された増感色素が光励起に応じて放出する電子を受容可能な電子受容物質を含んでなる。すなわち、電子受容物質は、光励起された標識色素からの電子注入が可能なエネルギー準位を取り得る物質であることができる。ここで、光励起された標識色素からの電子注入が可能なエネルギー準位(A)とは、例えば、電子受容性材料として半導体を用いる場合には、伝導帯(コンダクションバンド:CB)を意味し、電子受容性材料として金属を用いる場合には、フェルミ準位を意味し、電子受容性材料として有機物もしくはC60等の分子状無機物を用いる場合には、最低非占有分子軌道(Lowest Unoccupied Molecular Orbital:LUMO)を意味する。すなわち、本発明に用いる電子受容物質は、このAの準位が、増感色素のLUMOのエネルギー準位よりも卑な準位、換言すれば、増感色素のLUMOのエネルギー準位よりも低いエネルギー準位を有するものであればよい。
【0067】
電子受容物質の好ましい例としては、シリコン、ゲルマニウムなどの単体半導体;チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、タンタル等の酸化物半導体;チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウム等のペロブスカイト型半導体;カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモン、ビスマスの硫化物半導体;カドミウム、鉛のセレン化物半導体;カドミウムのテルル化物半導体;亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム等のリン化物半導体;ガリウムヒ素、銅−インジウム−セレン化物、銅−インジウム−硫化物の化合物半導体;金、白金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム、ニッケル等の金属;ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール等の有機物ポリマー;C60、C70等の分子状無機物が挙げられ、より好ましくは、シリコン、TiO2、SnO2、Fe2O3、WO3、ZnO、Nb2O5、チタン酸ストロンチウム、酸化インジウム、CdS、ZnS、PbS、Bi2S3、CdSe、CdTe、GaP、InP、GaAs、CuInS2、CuInSe、C60であり、さらに好ましくは、TiO2、ZnO、SnO2、Fe2O3、WO3、Nb2O5、チタン酸ストロンチウム、CdS、PbS、CdSe、InP、GaAs、CuInS2、CuInSe2であり、最も好ましくはTiO2である。なお、上記の列挙した半導体は、真性半導体および不純物半導体のいずれであってもよい。
【0068】
本発明の好ましい態様によれば、電子受容物質は半導体であるのが好ましく、より好ましくは酸化物半導体であり、さらに好ましくは金属酸化物半導体であり、最も好ましくはn型金属酸化物半導体である。この態様によれば、半導体のバンドギャップの利用により、色素から効率良く電子を取り出すことができる。また、多孔体あるいは表面の凹凸形状といった構造を有する半導体の使用により、表面積の大きい作用電極を作製することができ、プローブ固定化量を増加させることができる。
【0069】
本発明の好ましい態様によれば、半導体の伝導帯の電位は、増感色素のLUMOの電位よりも低いことが好ましく、より好ましくは、増感色素のLUMO>半導体の伝導帯>電解質の酸化還元電位>増感色素のHOMOの関係を満たす電位である。このような関係にあることで、効率良く電子を取出すことが可能となる。
【0070】
本発明の好ましい態様によれば、電子受容層が半導体からなる場合、層表面をカチオン化処理しても良い。カチオン化により、プローブ物質(DNA,タンパク質など)を高い効率で電子受容層に吸着させることが可能となる。カチオン化は、例えばアミノシランなどのシランカップリング剤、カチオンポリマー、4級アンモニウム化合物、などを電子受容層表面に作用させることにより行うことができる。
【0071】
また、本発明の別の好ましい態様によれば、電子受容物質として、インジウム−スズ複合酸化物(ITO)またはフッ素がドープされた酸化スズ(FTO)を用いることができる。ITOおよびFTOは電子受容層のみならず導電性基材としても機能する性質を有するため、これらの材料を使用することにより導電性基材を用いることなく電子受容層のみで作用電極として機能させることができる。
【0072】
電子受容物質として半導体または金属を用いる場合、その半導体または金属は単結晶および多結晶のいずれであってもよいが、多結晶体が好ましく、さらに緻密なものよりも多孔性を有するものが好ましい。これにより、比表面積が大きくなり、被検物質および増感色素を多く吸着させて、より高い感度および精度で被検物質を検出することができる。したがって、本発明の好ましい態様によれば、電子受容層が多孔性を有しており、各孔の径が3〜1000nmであるのが好ましく、より好ましくは、10〜100nmである。
【0073】
本発明の好ましい態様によれば、電子受容層を導電性基材上に形成した状態での表面積は、投影面積に対して10倍以上であることが好ましく、さらに100倍以上であることが好ましい。この表面積の上限には特に限定されないが、通常1000倍程度であろう。電子受容層を構成する電子受容物質の微粒子の粒径は、投影面積を円に換算したときの直径を用いた平均粒径で一次粒子として5〜200nmであることが好ましく、より好ましくは8〜100nmであり、さらに好ましくは20〜60nmである。また、分散物中の電子受容性物質の微粒子(二次粒子)の平均粒径としては0.01〜100μmであることが好ましい。また、入射光を散乱させて光捕獲率を向上させる目的で、粒子サイズの大きな、例えば300nm程度の電子受容物質の微粒子を併用して、電子受容層を形成してもよい。
【0074】
本発明の好ましい態様によれば、作用電極が導電性基材をさらに含んでなり、電子受容層が導電性基材上に形成されてなるのが好ましい。本発明に使用可能な導電性基板としては、チタン等の金属のように支持体そのものに導電性があるもののみならず、ガラスもしくはプラスチックの支持体の表面に導電材層を有するものであってよい。この導電材層を有する導電性基板を使用する場合、電子受容層はその導電層上に形成される。導電材層を構成する導電材の例としては、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム等の金属;炭素、炭化物、窒化物等の導電性セラミックス;およびインジウム−スズ複合酸化物、酸化スズにフッ素をドープしたもの、酸化スズにアンチモンをドープしたもの、酸化亜鉛にガリウムをドープしたもの、または酸化亜鉛にアルミニウムをドープしたもの等の導電性の金属酸化物が挙げられ、より好ましくは、インジウム−スズ複合酸化物(ITO)、酸化スズにフッ素をドープした金属酸化物(FTO)である。ただし、前述した通り、電子受容層自体が導電性基材としても機能する場合にあっては導電性基材は省略可能である。また、本発明において、導電性基材は、導電性を確保できる材料であれば限定されず、それ自体では支持体としての強度を有しない薄膜状またはスポット状の導電材層も包含するものとする。
【0075】
本発明の好ましい態様によれば、導電性基材が実質的に透明、具体的には、光の透過率が10%以上であるのが好ましく、より好ましくは50%以上であり、さらに好ましくは70%以上である。また、本発明の好ましい態様によれば、導電材層の厚みは、0.02〜10μm程度であるのが好ましい。さらに、本発明の好ましい態様によれば、導電性基材の表面抵抗が100Ω/cm2以下であり、さらに好ましくは40Ω/cm2以下であるのが好ましい。導電性基材の表面抵抗の下限は特に限定されないが、通常0.1Ω/cm2程度であろう。
【0076】
導電性基材上への電子受容層の好ましい形成方法の例としては、電子受容物質の分散液またはコロイド溶液を導電性支持体上に塗布する方法、半導体微粒子の前駆体を導電性支持体上に塗布し空気中の水分によって加水分解して微粒子膜を得る方法(ゾル−ゲル法)、スパッタリング法、CVD法、PVD法、蒸着法などが挙げられる。電子受容物質としての半導体微粒子の分散液を作成する方法としては、前述のゾル−ゲル法の他、乳鉢ですり潰す方法、ミルを使って粉砕しながら分散する方法、あるいは半導体を合成する際に溶媒中で微粒子として析出させそのまま使用する方法等が挙げられる。このときの分散媒としては水または各種の有機溶媒(例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ジクロロメタン、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル等)が挙げられる。分散の際、必要に応じてポリマー、界面活性剤、酸、もしくはキレート剤などを分散助剤として使用してもよい。
【0077】
電子受容物質の分散液またはコロイド溶液の塗布方法の好ましい例としては、アプリケーション系としてローラ法、ディップ法、メータリング系としてエアーナイフ法、ブレード法等、またアプリケーションとメータリングを同一部分でできるものとして、特公昭58−4589号公報に開示されているワイヤーバー法、米国特許2681294号、同2761419号、同2761791号等に記載のスライドホッパ法、エクストルージョン法、カーテン法、スピン法、スプレー法が挙げられる。
【0078】
本発明の好ましい態様によれば、電子受容層が半導体微粒子からなる場合、電子受容層の膜厚が0.1〜200μmであるのが好ましく、より好ましくは0.1〜100μmであり、さらに好ましくは1〜30μm、最も好ましくは2〜25μmである。これにより、単位投影面積当たりのプローブ物質および固定される増感色素量を増加して光電流量を多くするとともに、電荷再結合による生成した電子の損失をも低減することができる。また、導電性基材1m2当たりの半導体微粒子の塗布量は0.5〜400gであるのが好ましく、より好ましくは5〜100gである。
【0079】
本発明の好ましい態様によれば、電子受容物質がインジウム−スズ複合酸化物(ITO)または酸化スズにフッ素をドープした金属酸化物(FTO)を含んでなる場合、電子受容層の膜厚が1nm以上であるのが好ましく、より好ましくは10nm〜1μmである。
【0080】
本発明の好ましい態様によれば、半導体微粒子を導電性基材上に塗布した後に加熱処理を施すのが好ましい。これにより、粒子同士を電気的に接触させ、また、塗膜強度の向上や支持体との密着性を向上させることができる。好ましい加熱処理温度は、40〜700℃であり、より好ましくは100〜600℃である。また、好ましい加熱処理時間は10分〜10時間程度である。
【0081】
また、本発明の別の好ましい態様によれば、ポリマーフィルムなど融点や軟化点の低い導電性基材を用いる場合にあっては、熱による劣化を防止するため、高温処理を用いない方法により膜形成を行うのが好ましく、そのような膜形成方法の例として、プレス、低温加熱、電子線照射、マイクロ波照射、電気泳動、スパッタリング、CVD、PVD、蒸着等の方法が挙げられる。
【0082】
こうして得られた作用電極の電子受容層の表面にはプローブ物質が担持される。作用電極へのプローブ物質の担持は公知の方法に従い行うことができる。本発明の好ましい態様によれば、プローブ物質として一本鎖の核酸を用いる場合には、作用電極表面に酸化層を形成させておき、この酸化層を介して核酸プロ−ブと作用電極とを結合させることにより行うことができる。このとき、核酸プローブの作用電極への固定化は、核酸の末端に官能基を導入することにより行うことができる。これにより、官能基が導入された核酸プロ−ブはそのまま固定化反応により担体上に固定化されることができる。核酸末端への官能基の導入は、酵素反応もしくはDNA合成機を用いて行なうことができる。酵素反応において用いられる酵素としては、例えば、タ−ミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラ−ゼ、ポリAポリメラ−ゼ、ポリヌクレオチドカイネ−ス、DNAポリメラ−ゼ、ポリヌクレオチドアデニルトランスフェラ−ゼ、RNAリガ−ゼを挙げることができる。また、ポリメラ−ゼチェインリアクション(PCR法)、ニックトランスレ−ション、ランダムプライマ−法により官能基を導入することもできる。官能基は、核酸のどの部分に導入されてもよく、3’末端、5’末端もしくはランダムな位置に導入することができる。
【0083】
本発明の好ましい態様によれば、核酸プローブの作用電極への固定化のため官能基として、アミン、カルボン酸、スルホン酸、チオール、水酸基、リン酸等が好適に使用できる。また、本発明の好ましい態様によれば、拡散プローブを作用電極に強固に固定化するためには、作用電極と拡散プローブの間を架橋する材料を使用することも可能である。そのような架橋材料の好ましい例としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤や、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性ポリマーが挙げられる。
【0084】
本発明の好ましい態様によれば、核酸プロ−ブの固定化を物理吸着という、より簡単な
作で効率よく行うことも可能である。電極表面への核酸プロ−ブの物理吸着は、例えば、以下のように行なうことができる。まず、電極表面を、超音波洗浄器を用いて蒸留水およびアルコ−ルで洗浄する。その後、電極を核酸プロ−ブを含有する緩衝液に挿入して核酸プロ−ブを担体表面に吸着させる。
【0085】
また、核酸プローブの吸着後、ブロッキング剤を添加することにより、非特異的な吸着を抑制することができる。使用可能なブロッキング剤としては、核酸プローブが吸着していない電子受容層表面のサイトを埋めることができ、かつ電子受容物質に対して化学吸着あるいは物理吸着等により吸着可能な物質であれば限定されないが、好ましくは化学結合を介して吸着可能な官能基を有する物質である。例えば、酸化チタンを電子受容層として用いる場合における好ましいブロッキング剤の例としては、カルボン酸基、リン酸基、スルホン酸基、水酸基、アミノ基、ピリジル基、アミド等の酸化チタンに吸着可能な官能基を有する物質が挙げられる。
【0086】
本発明の好ましい態様によれば、作用電極上にプローブ物質が互いに分離された複数の領域毎に区分されて担持されてなり、光源による光照射が各領域に対して個別に行われるのが好ましい。これにより、複数の試料を一枚の作用電極上で測定することができるので、DNAチップの集積化等が可能となる。本発明のより好ましい態様によれば、作用電極上にプローブ物質が担持された、互いに分離された複数の領域がパターニングされており、光源から照射される光でスキャニングしながら、各領域の試料について被検物質の検出または定量を一度の操作で連続的に行うことが好ましい。
【0087】
本発明のより好ましい態様によれば、作用電極上の互いに分離された複数の領域の各領域に複数種類のプローブ物質を担持させることができる。これにより、領域の個数に、各領域毎のプローブ物質の種類数を乗じた数の、多数のサンプルの測定を同時に行うことができる。
【0088】
本発明のより好ましい態様によれば、作用電極上の互いに分離された複数の領域の各領域毎に異なるプローブ物質を担持させることができる。これにより、区分された領域の数に相当する種類数のプローブ物質を担持させることができるので、多種類の被検物質の測定を同時に行うことができる。この態様は、各領域毎に異なる被検物質の分析が可能なため、一塩基多型の解析(SNPs)の多項目解析に好ましく利用することができる。
【0089】
(4)対電極
本発明に用いる対電極は、電解液に接触させた場合に作用電極との間に電流が流れることができるものであれば特に限定されず、金属もしくは導電性の酸化物を蒸着したガラス、プラスチック、セラミックス等が使用可能である。また、対電極としての金属薄膜を5μm以下、好ましくは3nm〜3μmの範囲の膜厚になるように、蒸着やスパッタリングなどの方法により形成して作成することもできる。対電極に使用可能な材料の好ましい例としては、白金、金、パラジウム、ニッケル、カーボン、ポリチオフェン等の導電性ポリマー、酸化物、炭化物、窒化物等の導電性セラミックス等が挙げられ、より好ましくは、白金、カーボンであり、最も好ましくは白金である。これらの材料は電子受容層の形成方法と同様の方法により薄膜形成が可能である。
【0090】
(6)測定方法
本発明のセンサユニットを用いた測定方法にあっては、先ず、増感色素の共存下、試料液を作用電極に接触させて、プローブ物質に被検物質を直接または間接的に特異的に結合させ、この結合により増感色素を前記作用電極に固定させる。
【0091】
本発明の好ましい態様によれば、増感色素で予め標識された一本鎖の核酸を被検物質とする場合、プローブ物質である一本鎖核酸との間でハイブリダイゼーション反応を行なうことができる。ハイブリダイゼーション反応の好ましい温度は37〜72℃の範囲であるが、その最適温度は使用するプロ−ブの塩基配列や長さ等により異なる。
【0092】
本発明の別の好ましい態様によれば、被検物質およびプローブ物質の結合体(例えばハイブリダイゼーション後の二本鎖核酸)にインターカレーション可能な増感色素を用いる場合には、試料液に増感色素を添加することにより結合体を特異的に増感色素で標識することができる。
【0093】
こうして被検物質が増感色素と共に固定された作用電極を、対電極と共に電解液に接触させ、作用電極に光を照射して増感色素を光励起させ、光励起された増感色素から作用電極への電子移動に起因して作用電極と対電極との間に流れる光電流を検出する。その際のセンサユニットとして、本発明の電解質含有シートを用いたセンサユニットを使用する。
【0094】
本発明の好ましい態様によれば、互いに異なる光波長で励起可能な二種以上の増感色素を用いて複数種類の被検物質を個別に検出する場合、光源から波長選択手段を介して特定波長の光を照射することにより、複数の色素を個別に励起することが可能である。波長選択手段の例としては、分光器、色ガラスフィルター、干渉フィルター、バンドパスフィルター等が挙げられる。また、増感色素の種類に応じて異なる波長の光を照射可能な複数の光源を用いてもよく、この場合の好ましい光源の例としては、特定波長の光が照射されるレーザー光やLEDを用いてもよい。また、作用極に光を効率よく照射するため、石英、ガラス、液体ライトガイドを用いて導光してもよい。
【0095】
光照射により系内を流れる光電流は電流計により測定される。これにより、被検物質を検出することができる。その際の電流値は作用電極上にトラップされた増感色素の量を反映する。例えば、被検物質が核酸の場合、相補性のある核酸間で形成された二本鎖の量が、電流値となり反映される。したがって、得られた電流値から被検物質を定量することができる。したがって、本発明の好ましい態様によれば、電流計が、得られた電流量または電気量から試料液中の被検物質濃度を算出する手段をさらに備えてなるのが好ましい。
【0096】
本発明の好ましい態様によれば、光電流を検出する工程が、電流値を測定し、得られた電流値または電気量から試料液中の被検物質濃度を算出することができる。この被検物質濃度の算出は、予め作成された被検物質濃度と電流値または電気量との検量線と、得られた電流値または電気量とを対比することにより行うことができる。本発明の方法にあっては、電流値は作用電極上にトラップされた増感色素の量が反映されるので、被検物質濃度に対応した正確な電流値が得られるため、定量測定に適する。
【0097】
本発明の別の好ましい態様によれば、予め増感色素で標識された被検物質を競合物質として用いて、増感色素で標識されていない、プローブ物質に特異的に結合可能な第二の被検物質を定量することができる。第二の被検物質はプローブ物質に標識済被検物質よりも特異的に結合しやすい性質を有するのが好ましい。これら二種類の被検物質を競合させてプローブ物質に特異的に結合させると、検出される電流値と第二の被検物質の濃度との間に相関関係が得られる。つまり、色素標識されていない第二の被検物質の数が増加するにつれ、プローブ物質に特異的に結合する競合物質の数が減少するため、第二の被検物質濃度の増加につれて、検出電流値が減少する検量線を得ることができる。したがって、増感色素で標識されていない第二の被検物質の検出および定量が可能となる。
【0098】
本発明のより好ましい態様によれば、被検物質および第二の被検物質が抗原であり、プローブ物質が抗体であるのが好ましい。この態様における被検物質および第二の被検物質のプローブ物質への固定化工程を図16に示す。図16に示されるように、増感色素で標識された抗原241と、色素標識されていない抗原242とが競合して抗体243に特異的に結合する。したがって、色素標識されていない抗原242が増加するにつれ、抗体に特異的に結合する色素標識された抗原243が減少するため、第二の被検物質濃度の増加につれて、検出電流値が減少する検量線を得ることができる。
【実施例】
【0099】
例1:図11の装置を使用した一塩基多型(SNPs)検出
本例では、p53遺伝子の一塩基多型の検出を行った。作用電極側に完全一致プローブ、一塩基変異鎖プローブ、および完全不一致プローブを固定化した。それぞれの塩基配列は下記の通りとした。
完全一致(PM)プローブ: 5'-AGGATGGGCCTCAGGTTCATGCCGC-3'(配列番号1)
一塩基変異鎖(SNP)プローブ: 5'-AGGATGGGCCTCCGGTTCATGCCGC-3'(配列番号2)
完全不一致(MM)プローブ: 5'-GCGGCATGAACCGGAGGCCCATCCT-3'(配列番号3)
【0100】
これらのプローブとハイブリダイゼーションさせるターゲットDNAの塩基配列は下記の通りとした。
ターゲットDNA: 5'-ローダミン-GCGGCATGAACCTGAGGCCCATCCT-3'(配列番号4)
【0101】
作用電極用のガラス基材として、フッ素をドープした酸化スズ(F-SnO2:FTO)コートガラス(エイアイ特殊硝子社製、U膜、シート抵抗:12Ω/□、形状:50mm×26mm)を用意した。このガラス基材をアセトン中で15分間、続いて超純水中で15分間超音波洗浄を施して、汚れおよび残存有機物の除去を行った。このガラス基材を5Mの水酸化ナトリウム水溶液中で15分間振盪させた。その後、水酸化ナトリウムの除去のために超純水中での5分間の振盪を水を入れ替えて3回行った。ガラス基材を取り出して空気を吹き付けて残水を飛散させた後、ガラス基材を無水メタノールに浸漬させて脱水した。
【0102】
5wt/vol%となるように超純水を添加したメタノールを溶媒として、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS)を2vol%となるように加え、室温下で5分間の攪拌を行って、カップリング処理用の溶を調製した。このカップリング処理用溶液に上記ガラス基材を浸漬させ、ゆっくりと15分間振盪させた。次いで、ガラス基材を取り出し、メタノール中で10回ほど振盪させて余剰なカップリング処理用溶液を除く操作を、メタノールを3回換えて行った。その後、ガラス基材を110℃で30分間保持してカップリング剤をガラス基材に結合させた。ガラス基材を室温下で冷却した後、直径3mmの大きさの開口部が9スポット形成された粘着性シール(厚さ:0.5mm)を載置して密着させた。続いて、1μMに調製した完全一致鎖、一塩基変異鎖、完全不一致鎖のプローブDNA(25mer)を95℃で10分間保持した後、直ちに氷上に移して10分間保持してDNAを変性させた。この変性DNAを先に用意したガラス上のシールの9開口部に5μlずつ充填し、95℃で10分保持して溶媒を蒸発させた。その後、UVクロスリンカー(UVP社CL-1000型)で120mJの紫外光を照射して、プローブDNAをガラス基材に固定化した(各プローブにつき、3スポットずつ固定化)。シールをガラス基材から剥がし、ガラス基材を0.2 wt/vol%SDS溶液中で15分間×3回振盪させ、超純水を3回入れ替えて濯いだ。このガラス基材を沸騰水に2分間浸漬させて取り出した後、空気を吹き付けて残水を飛散させた。続いて、ガラス基材を4℃の無水エタノールに1分間浸漬させて脱水し、空気を吹き付けて残留エタノールを飛散させた。こうして、プローブDNA固定化作用電極を得た。その後、濃度を100nMに調製したターゲットDNAを含む5×SSC、0.5 wt/vol%SDS溶液を、プローブを固定した電極にのせてカバーガラスで密閉した状態で37℃で10時間保温した。その後、2×SSC(室温)中でカバーガラスを剥がし、電極をラックに立て、40℃に設定した2×SSC/0.2 wt/vol%SDS溶液中に30分間振とうさせた後、水ですすぎ電極を乾燥させた。
【0103】
こうして得られた作用電極63を図2に示したセンサユニット60に取り付けた。対電極62の上に電解質含有シート68を載置し、さらにその上に作用電極63の導電面が電解質含有シート68と接触するように載置した。電解質含有シートに用いる吸水性シートとしてろ紙を用いた。電解質としてはテトラプロピルアンモニウムヨージド(NPr4I)を用い(濃度は0.4M)、これを水に溶解して電解液を作製し、26mm×20mmに切った厚さ0.9mmのろ紙を浸漬させて、軽く水切りをし、電解質含有シートを得た。
【0104】
センサユニット上部、XYステージに取り付けた光源を作用電極上のプローブDNA固定化スポットに順次照射した。各スポット照射時に観察される光電流を記録した。また、各スポットに対応するセンサユニットの各開口部の間で一時的に停止し、作用電極に光が照射されない時間を設定する。この時観察される電流値をベース電流値とする。各スポット由来の光電流値とその直前または直後のベース電流値との差分を観察値とした。
【0105】
結果を図17に示す。図17は、各スポット由来電流とベース電流の差分を、各プローブDNAについてまとめたものであり、平均および標準偏差(エラーバーは±1SD)を示している。図17から明らかなように、一塩基の違い(PMとSNPsで観察される電流値の差)を統計学的に有意に分別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】一般的に用いられる蛍光検出装置の構成を示す図である。
【図2】本発明によるセンサユニットの一例を示す分解斜視図である。
【図3】本発明による位置決め部材(支持部材およぶ付勢部材)と作用電極の配置の例を示す斜視図である。
【図4】本発明による位置決め部材(支持部材およぶ付勢部材)と作用電極の配置の例を示す斜視図である。
【図5】本発明による位置決め部材(支持部材およぶ付勢部材)と作用電極の配置の例を示す斜視図である。
【図6】本発明による位置決め部材(支持部材およぶ付勢部材)と作用電極の配置の例を示す斜視図である。
【図7】本発明によるセンサユニットの一例を示す断面図である。
【図8】本発明によるセンサユニットの他の一例を示す分解斜視図である。
【図9】本発明によるセンサユニットの他の一例を示す断面図である。
【図10】本発明による測定装置の基本構成を示す概念図である。
【図11】本発明による上部光源型の遺伝子検査装置の一例を示す外観斜視図である。
【図12】本発明による上部光源型の遺伝子検査装置の一例を示す外観斜視図である。
【図13】図11、8に示される装置の内部構成を示す斜視図である。
【図14】被検物質が一本鎖の核酸であり、プローブ物質が前記核酸に対して相補性を有する一本鎖の核酸である場合における、被検物質のプローブ物質への固定化工程を示す図であり、(a)は被検物質が予め増感色素で標識されてなる場合を、(b)は二本鎖の核酸にインターカレーション可能な増感色素を添加した場合をそれぞれ示す。
【図15】被検物質がリガンドであり、媒介物質が受容体蛋白質分子であり、プローブ物質が二本鎖の核酸である場合における、被検物質のプローブ物質への固定化工程を示す図である。
【図16】互いに競合する特異的結合性を有する被検物質および第二の被検物質が抗原であり、プローブ物質が抗体である場合の、被検物質のプローブ物質への固定化工程を示す図である。
【図17】例1において得られた、各スポット由来電流とベース電流の差分を、各プローブDNAについて整理した図であり、平均および標準偏差(エラーバーは±1SD)を示している。
【図18】本発明におけるセンサチップの一態様を示した図である。
【図19】本発明におけるセンサチップの他の態様を示した図である。
【図20】本発明によるセンサユニットの他の一例を示した斜視図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
増感色素の光励起により生じる光電流を用いた被検物質の特異的検出に用いられるセンサユニットであって、
作用電極と、
対電極と、
前記対電極を載置し、さらに前記作用電極が所定の位置に載置されるための位置決め部材を備えてなるベースプレートと、
前記作用電極と対向する位置に光照射口を備えた蓋部とを備えてなり、
被検物質の特異的検出が、電解質含有シートを前記作用電極と対電極との間に挟持させて行われるセンサユニット。
【請求項2】
前記作用電極が複数の検出スポットを有しており、前記複数の検出スポットに対応する各位置に前記蓋部の光照射口が形成されてなる、請求項1に記載のセンサユニット。
【請求項3】
前記蓋部が、前記対電極との電気的接点を備え、
前記ベースプレートが、前記作用電極との電気的接点を備え、
蓋部をベースプレート方向に押しつけることによって、前記電気的接点がそれぞれ前記作用電極および前記対電極と
接触することを特徴とする請求項1または2に記載のセンサユニット。
【請求項4】
前記位置決め部材が、支持部材と、前記支持部材の方向に作用電極を付勢する付勢部材とからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のセンサユニット。
【請求項5】
前記作用電極が、センサチップケースに取り付けられており、前記センサチップケースには前記作用電極が所定の位置に載置されるための窪み部および突起部の少なくともいずれか一方と、前記作用電極を前記ベースプレートの所定の位置に載置するための前記位置決め部材を通すための開口部とを有する請求項1〜4のいずれか一項に記載のセンサユニット。
【請求項6】
前記光電流を用いた被検物質の特異的検出が、
被検物質が直接または間接的に特異的に結合したプローブ物質を表面に備え、かつ該結合により増感色素が固定されてなる作用電極と、対電極とを前記電解質含有シートに接触させ、
前記作用電極に光を照射して前記増感色素を光励起させ、該光励起された増感色素から前記作用電極への電子移動に起因して前記作用電極と前記対電極との間に流れる光電流を検出することを含んでなるステップにより行われる、請求項1〜5のいずれか一項に記載のセンサユニット。
【請求項7】
前記被検物質が一本鎖の核酸であり、前記プローブ物質が前記核酸に対して相補性を有する一本鎖の核酸である、請求項6に記載のセンサユニット。
【請求項8】
前記被検物質が抗原であり、前記プローブ物質が前記抗原に対して特異的な結合を有する抗体である、請求項6に記載のセンサユニット。
【請求項9】
前記プローブ物質に前記被検物質を結合させる手段が、増感色素の共存下、被検物質を含む試料液を作用電極に接触させることであり、更に前記試料液が、予め前記増感色素で標識されてなる、前記被検物質と特異的に結合可能な媒介物質をさらに含んでなり、該媒介物質と前記被検物質との結合物が前記プローブ物質に特異的に結合する、請求項6に記載のセンサユニット。
【請求項10】
前記被検物質がリガンドであり、前記媒介物質が受容体蛋白質分子であり、前記プローブ物質が二本鎖の核酸である、請求項9に記載のセンサユニット。
【請求項11】
前記被検物質が外因性内分泌攪乱物質である、請求項9または10に記載のセンサユニット。
【請求項12】
増感色素の光励起により生じる光電流を用いた被検物質の特異的検出に用いられる測定装置であって、
請求項1〜5のいずれか一項に記載されるセンサユニットと、
前記作用電極に前記蓋部の光照射口を通過して光を照射する光源と、
前記光源をXY方向に移動させるXY移動機構と、
前記作用電極と前記対電極との間を流れる電流を測定する電流計と、
前記光源、前記XY移動機構、および電流計を制御し、前記電流計からの電流信号を受信し、該電気信号に基づいて被検物質の存在、型、および濃度の少なくとも一種を決定する制御演算手段とを備えた装置。
【請求項13】
前記測定装置が、前記制御演算手段で得られた結果を表示する表示装置をさらに備えてなる、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記測定装置が、測定のための条件の入力が行われる入力装置をさらに備えてなる、請求項12または13に記載の装置。
【請求項1】
増感色素の光励起により生じる光電流を用いた被検物質の特異的検出に用いられるセンサユニットであって、
作用電極と、
対電極と、
前記対電極を載置し、さらに前記作用電極が所定の位置に載置されるための位置決め部材を備えてなるベースプレートと、
前記作用電極と対向する位置に光照射口を備えた蓋部とを備えてなり、
被検物質の特異的検出が、電解質含有シートを前記作用電極と対電極との間に挟持させて行われるセンサユニット。
【請求項2】
前記作用電極が複数の検出スポットを有しており、前記複数の検出スポットに対応する各位置に前記蓋部の光照射口が形成されてなる、請求項1に記載のセンサユニット。
【請求項3】
前記蓋部が、前記対電極との電気的接点を備え、
前記ベースプレートが、前記作用電極との電気的接点を備え、
蓋部をベースプレート方向に押しつけることによって、前記電気的接点がそれぞれ前記作用電極および前記対電極と
接触することを特徴とする請求項1または2に記載のセンサユニット。
【請求項4】
前記位置決め部材が、支持部材と、前記支持部材の方向に作用電極を付勢する付勢部材とからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のセンサユニット。
【請求項5】
前記作用電極が、センサチップケースに取り付けられており、前記センサチップケースには前記作用電極が所定の位置に載置されるための窪み部および突起部の少なくともいずれか一方と、前記作用電極を前記ベースプレートの所定の位置に載置するための前記位置決め部材を通すための開口部とを有する請求項1〜4のいずれか一項に記載のセンサユニット。
【請求項6】
前記光電流を用いた被検物質の特異的検出が、
被検物質が直接または間接的に特異的に結合したプローブ物質を表面に備え、かつ該結合により増感色素が固定されてなる作用電極と、対電極とを前記電解質含有シートに接触させ、
前記作用電極に光を照射して前記増感色素を光励起させ、該光励起された増感色素から前記作用電極への電子移動に起因して前記作用電極と前記対電極との間に流れる光電流を検出することを含んでなるステップにより行われる、請求項1〜5のいずれか一項に記載のセンサユニット。
【請求項7】
前記被検物質が一本鎖の核酸であり、前記プローブ物質が前記核酸に対して相補性を有する一本鎖の核酸である、請求項6に記載のセンサユニット。
【請求項8】
前記被検物質が抗原であり、前記プローブ物質が前記抗原に対して特異的な結合を有する抗体である、請求項6に記載のセンサユニット。
【請求項9】
前記プローブ物質に前記被検物質を結合させる手段が、増感色素の共存下、被検物質を含む試料液を作用電極に接触させることであり、更に前記試料液が、予め前記増感色素で標識されてなる、前記被検物質と特異的に結合可能な媒介物質をさらに含んでなり、該媒介物質と前記被検物質との結合物が前記プローブ物質に特異的に結合する、請求項6に記載のセンサユニット。
【請求項10】
前記被検物質がリガンドであり、前記媒介物質が受容体蛋白質分子であり、前記プローブ物質が二本鎖の核酸である、請求項9に記載のセンサユニット。
【請求項11】
前記被検物質が外因性内分泌攪乱物質である、請求項9または10に記載のセンサユニット。
【請求項12】
増感色素の光励起により生じる光電流を用いた被検物質の特異的検出に用いられる測定装置であって、
請求項1〜5のいずれか一項に記載されるセンサユニットと、
前記作用電極に前記蓋部の光照射口を通過して光を照射する光源と、
前記光源をXY方向に移動させるXY移動機構と、
前記作用電極と前記対電極との間を流れる電流を測定する電流計と、
前記光源、前記XY移動機構、および電流計を制御し、前記電流計からの電流信号を受信し、該電気信号に基づいて被検物質の存在、型、および濃度の少なくとも一種を決定する制御演算手段とを備えた装置。
【請求項13】
前記測定装置が、前記制御演算手段で得られた結果を表示する表示装置をさらに備えてなる、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記測定装置が、測定のための条件の入力が行われる入力装置をさらに備えてなる、請求項12または13に記載の装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2009−186454(P2009−186454A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−216372(P2008−216372)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
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