光電陰極および電子管
【課題】特定波長の光の検出感度に優れ、且つ容易に製造可能な光電陰極、およびそのような光電陰極を用いた電子管を提供すること。
【解決手段】光電陰極1のアンテナ層6に光が入射すると、入射光に含まれる特定波長の光がアンテナ層6の表面プラズモンと結合し、アンテナ層6の貫通孔14から近接場光が出力される。出力される近接場光の強度は、特定波長の光の強度に比例しており、且つ当該光の強度よりも大きい。また、出力される近接場光は、光電変換層4にて吸収可能な波長を有している。光電変換層4は、貫通孔14から出力された近接場光を受光する。光電変換層4における貫通孔14の周辺部分は、近接場光を吸収し、近接場光の強度(受光量)に応じた量の光電子(e−)を発生する。光電変換層4にて発生した光電子(e−)は、光電陰極1の外部に出力される。
【解決手段】光電陰極1のアンテナ層6に光が入射すると、入射光に含まれる特定波長の光がアンテナ層6の表面プラズモンと結合し、アンテナ層6の貫通孔14から近接場光が出力される。出力される近接場光の強度は、特定波長の光の強度に比例しており、且つ当該光の強度よりも大きい。また、出力される近接場光は、光電変換層4にて吸収可能な波長を有している。光電変換層4は、貫通孔14から出力された近接場光を受光する。光電変換層4における貫通孔14の周辺部分は、近接場光を吸収し、近接場光の強度(受光量)に応じた量の光電子(e−)を発生する。光電変換層4にて発生した光電子(e−)は、光電陰極1の外部に出力される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電陰極および光電陰極を用いた電子管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特定波長の光を検出する目的で、例えば特許文献1に記載されているように、光電陰極の光入射面上に光フィルタを設けた装置が知られている。この装置では、光フィルタに光が入射すると、この入射光に含まれる特定波長以外の光を光フィルタが除去する。光電陰極は、光フィルタを透過した特定波長の光を吸収して光電子(e−)を発生する。
【特許文献1】特開平6−34548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載の装置では、光電陰極には光フィルタを介して光が入る。そのため、光電陰極は、光フィルタを介さずに直接受光したときと比べて、強度が減衰した光を受ける可能性がある。強度が減衰した光を受光した場合には、光電陰極で発生する光電子(e−)の量が減少し、その結果、特定波長の光の検出感度が低下してしまう。
【0004】
また、特定波長の光を検出する他の技術としては、特定波長の光を選択的に吸収する材料で光電陰極を形成することも考えられる。しかしながらこの場合には、光電陰極を製造する際に、特定波長の光のみを吸収する材料を用意しなければならない。このような材料を得ることは極めて難しいため、光電陰極の製造が困難になってしまう。
【0005】
そこで本発明は、特定波長の光の検出感度に優れ、且つ容易に製造可能な光電陰極、およびそのような光電陰極を用いた電子管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る光電陰極は、(1)厚さ方向に貫通する貫通孔を有するとともに、表面プラズモン共鳴を発生させるための、所定の規則に従ったパターンが表面に形成されたアンテナ層と、(2)アンテナ層と接合し、貫通孔から出力された光を吸収して光電子を発生する光電変換層と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る光電陰極は、表面プラズモン共鳴を発生させるアンテナ層を備えている。このアンテナ層におけるパターンが形成された表面に光(hν)が入射すると、入射光(hν)に含まれる特定波長の光が、アンテナ層の表面プラズモンと結合して、プラズモン共鳴が発生する。プラズモン共鳴が発生すると、アンテナ層の貫通孔から近接場光が出力される。
【0008】
アンテナ層にプラズモン共鳴を発生させる光の波長は、アンテナ層の材料と表面構造とで決まることが、従来から知られている。したがって、アンテナ層の材料とアンテナ層表面のパターンとを適宜決定することにより、特定波長の光でプラズモン共鳴を発生させることが可能となる。更に、アンテナ層から出力される近接場光の波長もまた、アンテナ層の材料と表面構造とで決まることが、従来から知られている。したがって、アンテナ層の材料とアンテナ層表面のパターンとを適宜決定することにより、公知の光電変換層にて吸収可能な波長の近接場光を出力させることが可能となる。よって、特別な材料からなる光電変換層を用意する必要がなくなる。その結果、光電陰極の製造を容易化することができる。
【0009】
光電変換層は、アンテナ層の貫通孔から出力された近接場光を受光して、近接場光による光電子(e−)を発生する。近接場光の強度は、入射光(hν)に含まれる特定波長の光の強度に比例し、且つこれよりも大きい。よって、光電変換層は十分な量の光電子(e−)を発生することとなり、その結果、光電陰極からは十分な量の光電子(e−)が出力されることとなる。したがって、本発明の光電陰極は、高いS/N比で特定波長の光を検出することができる。よって、特定波長の光の検出感度に優れたものとなる。
【0010】
また、本発明に係る光電陰極では、光電変換層で発生した光電子は、アンテナ層の貫通孔から外部に出力されることが好ましい。近接場光による光電子(e−)は、光電変換層における貫通孔の周辺部分で発生する。したがって、光電子は貫通孔から外部に出力されるとした場合には、貫通孔の周辺部分で発生した光電子(e−)、すなわち近接場光による光電子(e−)が確実に出力されることとなる。その結果、本発明の光電陰極は、特定波長の光の検出感度に非常に優れたものとなる。
【0011】
また、本発明に係る光電陰極では、アンテナ層は複数の凸部と当該凸部間に位置する凹部とを有しており、凸部および凹部がパターンを形成しており、貫通孔は凹部に設けられていることが好ましい。この場合、凸部および凹部の位置等を適宜変えることにより、パターンの形状を変えることができる。その結果、アンテナ層にプラズモン共鳴を発生させる光の波長を容易に変更することが可能となる。
【0012】
また、本発明に係る光電陰極では、光電変換層にて発生する光電子の量が、貫通孔を有し且つ表面に凸部および凹部が形成されていないアンテナ層を光電変換層に接合した場合に当該光電変換層にて発生する光電子の量と比べて多くなるように、パターンにおける所定の規則が決められていることが好ましい。この場合、十分な量の光電子を光電変換層にて発生させることができるので、特定波長の光の検出感度にいっそう優れた光電陰極を得ることが可能となる。
【0013】
また、本発明に係る光電陰極では、アンテナ層は貫通孔を複数有しており、当該複数の貫通孔がパターンを形成していることが好ましい。この場合、貫通孔の位置等を適宜変えることによりパターンの形状を変えることができ、その結果、アンテナ層にプラズモン共鳴を発生させる光の波長を容易に変更することが可能となる。
【0014】
また、本発明に係る光電陰極では、貫通孔の最短幅は入射光の波長よりも短いことが好ましい。このように貫通孔の最短幅を狭くすることにより、近接場光を貫通孔から確実に出力させることができる。
【0015】
また、本発明に係る光電陰極では、光電変換層の表面においてアンテナ層の貫通孔と対向する部分には、当該部分の仕事関数を低下させるための活性層が形成されていることが好ましい。この場合、光電陰極で発生した光電子(e−)を、貫通孔を介して真空中へ出力することが容易となる。
【0016】
また、本発明に係る光電陰極では、活性層は、アルカリ金属、アルカリ金属の酸化物、またはアルカリ金属のフッ化物からなることが好ましい。この場合、上記の効果を好適に奏することができる。
【0017】
また、本発明に係る電子管は、上記した光電陰極を備えることを特徴とする。このような光電陰極を用いた電子管によれば、製造が容易であるうえに特定波長の光を精度よく検出することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、特定波長の光の検出感度に優れ、且つ容易に製造可能な光電陰極、およびそのような光電陰極を用いた電子管を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る光電陰極及び電子管の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、「上」、「下」等の語は図面に示す状態に基づいており、便宜的なものである。
【0020】
(光電陰極)
【0021】
図1は本発明に係る光電陰極の一実施形態の構成を示す斜視図である。図1に示されるように、本実施形態に係る光電陰極1は、支持基板2と、支持基板2上に設けられた光電変換層4と、光電変換層4上に設けられたアンテナ層6とを備えている。
【0022】
支持基板2は、光電陰極1の機械的強度を維持するための部材である。支持基板2は、例えば絶縁性基板であって、硼珪酸ガラスといった材料からなっている。支持基板2は、入射光(hν)が入射される一方の主面2aと、一方の主面2aと対向する他方の主面2bとを有している。
【0023】
光電変換層4は、支持基板2の他方の主面2b上に形成されている。光電変換層4は、光電変換を行う部分であり、光を吸収して光電子(e−)を発生する。本実施形態における光電変換層4は、p型GaAs半導体からなっており、波長が200nm〜930nmの範囲にある光を吸収して光電子(e−)を発生する。光電変換層4は、平面状を呈している。
【0024】
光電変換層4の表面の一部は、後述するアンテナ層6の貫通孔14から露出している。光電変換層4の貫通孔14から露出した部分には、極薄くかつ均一に形成された活性層16が形成されている。活性層16は、例えばCs等のアルカリ金属からなっている。このような活性層16は、光電変換層4表面の仕事関数を低下させる。そのため、光電変換層4で発生した光電子(e−)を、アンテナ層6の貫通孔14を介して真空中へ出力することが容易となる。なお、活性層16の材料はCsに限るものではなく、アルカリ金属としてはCs以外にK、Rb、Naなどを用いてもよい。また、このようなアルカリ金属の酸化物や、このようなアルカリ金属のフッ化物であってもよい。
【0025】
光電変換層4の上にはアンテナ層6が設けられている。アンテナ層6は、表面プラズモン共鳴を発生させる層であり、導電性の材料を含んでいる。含まれる導電性の材料としては、Al、Ag、Au等が好ましいが、これ以外であってもよい。
【0026】
アンテナ層6は、厚さ方向に対向する一方の主面6aと他方の主面6bとを有している。アンテナ層6の一方の主面6aは、光電変換層4と接合している。アンテナ層6の中央部には、一方の主面6aから他方の主面6bに貫通する貫通孔14が設けられている。貫通孔14は、長辺および短辺からなる略矩形を呈している。貫通孔14の短辺の長さ(最短幅)dは、支持基板2および光電変換層4を介してアンテナ層6に入射する光の波長よりも短くなっている。これにより、貫通孔14から近接場光(後に詳しく述べる)のみを確実に出力させることができる。なお、本願における貫通孔14は近接場光を出力させるためのものであるため、物理的な孔に限るものではなく、光学的な孔(光が透過する開口)も含む。
【0027】
アンテナ層6は、複数の凸部10と、凸部10間に位置する凹部12とを有している。凸部10および凹部12は、アンテナ層6の他方の主面6bに形成されている。先述した貫通孔14は、凹部12に位置している。複数の凸部10は、貫通孔14と同様に、長辺および短辺からなる略矩形を呈している。複数の凸部10は、長辺同士が対向するように一次元に配列されるとともに、貫通孔14を中心として対称的に配置されている。貫通孔14を挟まずに隣り合う凸部10間の中心距離はΛとなっており、貫通孔14を挟んで隣り合う凸部10間の中心距離はΛの2倍の長さとなっている。以下、この距離Λを周期間隔と呼ぶこととする。このように配置された凸部10と、凸部10間に位置する凹部12とにより、アンテナ層6の他方の主面6bには所定の規則に従ったパターンが形成されることとなる。表面にこのようなパターンが形成されたアンテナ層6は、表面に凸部や凹部がない平坦なアンテナ層と比べて、より強度の大きな近接場光を出力することができる。
【0028】
周期間隔Λは、検出したい光の波長に応じて、適宜設定される。ここで、波長λ0(=2πc/ω)の光がアンテナ層6に対して略垂直に入射する場合を考える。この場合、アンテナ層6の周期間隔Λが以下の式(1)を満たせば、波長λ0の光によりアンテナ層6に表面プラズモン共鳴が発生する。
【数1】
【0029】
εaはアンテナ層6と接する誘電体の比誘電率であって、真空の場合にはεa=1である。εmetalはアンテナ層6の比誘電率であって、εmetal>0である。よって、以下の式(2)が導き出せる。
【数2】
【0030】
式(2)によれば、波長λ0の光で表面プラズモン共鳴を発生させるには、アンテナ層6における周期間隔Λを波長λ0よりも短くする必要がある。このことから、貫通孔14の短辺の長さ(幅)dもまた、波長λ0よりも短くする必要があることがわかる。
【0031】
式(1)に示されるmを1とし、アンテナ層6をAg又はAlから形成した場合の、周期間隔Λと光の波長λ0との関係を図2に示す。図2によれば、アンテナ層6において波長λ0=1240nmの光で表面プラズモン共鳴を発生させるには、周期間隔ΛをAgの場合は1234nmとすればよい。本実施形態では、表面プラズモン共鳴が波長λの光で発生し、且つ、表面プラズモン共鳴に応じて第1の電極12の貫通孔18から出力される近接場光の波長が200nm〜930nmの範囲内となるように、アンテナ層6の周期間隔Λを設定することとする。
【0032】
続いて、光電陰極1の製造工程を説明する。まず、図3(a)に示されるように、硼珪酸ガラスからなる支持基板2を用意する。用意した支持基板2上に、p型GaAs半導体からなる光電変換層4を積層する。なお、支持基板2上にp型GaAs半導体からなる光電変換層4を積層する方法についてはその詳細を省略するが、例えば特開平9−180633号広報に開示されているような公知の方法を用いることができる。
【0033】
次に、図3(b)に示されるように、フォトレジスト22を塗布した後、凸部10を形成する領域が開口するように、フォトレジスト22のパターニングを行う。そして、図3(c)に示されるように、フォトレジスト22によりマスクされた光電変換層4上に、Al、Ag、Au等を含む導電膜24を蒸着により成膜する。なお、フォトレジスト22のパターニングは、紫外線等を用いた光リソグラフィ法で行ってもよいし、電子ビームを用いた電子線リソグラフィ法で行ってもよい。
【0034】
次に、図3(d)に示されるように、導電膜24のうち、フォトレジスト22上に成膜された部分をフォトレジスト22と共にリフトオフ除去する。リフトオフ除去を行った後、図4(a)に示されるように、導電膜24と同一の材料からなる導電膜26を蒸着により成膜する。これにより、凸部10と凹部12とが形成される。
【0035】
導電膜26を成膜した後、図4(b)に示されるように、貫通孔14を形成する部分に集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)を照射して、この部分の導電膜26を除去する。これにより、貫通孔14を有するアンテナ層6が形成されることとなる。
【0036】
次に、図4(c)に示されるように、光電変換層4の貫通孔14から露出した部分の上に、Cs等のアルカリ金属からなる活性層16を形成する。以上の工程を経て、図1に示した光電陰極1が完成する。
【0037】
続いて、光電陰極1の動作について説明する。支持基板2の一方の主面2a側から光(hν)が入射すると、かかる入射光(hν)は支持基板2および光電変換層4を透過してアンテナ層6に到達する。アンテナ層6における、凸部10および凹部12によるパターンが形成された面、すなわちアンテナ層6の他方の主面6bに入射光(hν)が到達すると、入射光(hν)に含まれる波長λの光がアンテナ層6の表面プラズモンと結合する。その結果、アンテナ層6にて表面プラズモン共鳴が生じる。
【0038】
表面プラズモン共鳴が生じると、アンテナ層6は貫通孔14から強い近接場光を出力する。近接場光の出力方向は、パターンが形成された面からパターンが形成されていない面に向かう方向、すなわち他方の主面6bから一方の主面6aに向かう方向となる。貫通孔14から出力される近接場光の波長は、アンテナ層6表面に形成されたパターンの周期間隔Λに依存し、200nm〜930nmである。この近接場光の強度は、波長λの光の強度に比例しており、且つ波長λの光の強度よりも大きい。
【0039】
アンテナ層6の一方の主面6aに接合された光電変換層4は、アンテナ層6の貫通孔14から出力された近接場光を受光する。近接場光の波長は200nm〜930nmであるため、p型GaAs半導体からなる光電変換層4は近接場光を吸収することができる。光電変換層4における貫通孔14の周辺部分は、近接場光を吸収し、近接場光の強度(受光量)に応じた量の光電子(e−)を発生する。
【0040】
なお、アンテナ層6の貫通孔14から出力される近接場光は、例えば、表面に凸部や凹部が形成されていない平坦なアンテナ層に光(hν)が入射したときに当該アンテナ層の貫通孔から出力される光と比べて、非常に大きな強度を有している。そのため、貫通孔14の周辺部分にて発生する光電子(e−)の量は、アンテナ層6に代わって上述した平坦な表面を有するアンテナ層を用いた場合に発生する光電子(e−)の量と比べて、非常に多くなっている。
【0041】
光電変換層4の貫通孔14から露出した部分には、活性層16が形成されている。活性層16は、光電変換層4表面の仕事関数を低下させる。そのため、光電変換層4における貫通孔14の周辺部分で発生した光電子(e−)は、貫通孔14から容易に外部に出力されることとなる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態に係る光電陰極1は、光電変換層4およびアンテナ層6を備えている。アンテナ層6の他方の主面2bには、凸部10および凹部12によるパターンが形成されている。パターンを形成されたアンテナ層6は、波長λの光で表面プラズモン共鳴を発生し、且つ、アンテナ層6のパターンの周期間隔Λに依存した波長200nm〜930nmの近接場光を出力する。光(hν)がアンテナ層6の他方の主面2bに入射されると、入射光(hν)に含まれる波長λの光がアンテナ層6の表面プラズモンと結合する。これにより、アンテナ層6に表面プラズモン共鳴が発生する。表面プラズモン共鳴が発生すると、アンテナ層6の貫通孔14から強い近接場光が出力される。近接場光は光電変換層4にて受光される。近接場光の波長はアンテナ層6のパターンの周期間隔Λに依存した200nm〜930nmであるから、p型GaAs半導体といった公知の材料からなる光電変換層4に近接場光を吸収させ、光電子(e−)を発生させることができる。よって、特別な材料からなる光電変換層4を用意する必要がなくなるため、光電陰極1の製造を容易化することができる。
【0043】
光電変換層4は、近接場光を吸収し、近接場光の強度に応じた量の光電子(e−)を発生する。近接場光による光電子(e−)は、光電変換層4における貫通孔14の周辺部分で発生する。そのため、貫通孔14からは、貫通孔14の周辺部分で発生した光電子(e−)、すなわち近接場光による光電子(e−)が出力されることとなる。近接場光の強度は、入射光(hν)に含まれる波長λの光の強度に比例し、且つこれよりも大きい。よって、光電変換層4における貫通孔14の周辺部分は十分な量の光電子(e−)を発生することとなり、その結果、アンテナ層6の貫通孔14からは十分な量の光電子(e−)が出力されることとなる。なお、光電陰極1において、光電子(e−)は貫通孔14のみから出力されることとなるが、例えば入射光に依存しない熱などによって発生する熱電子もまた、貫通孔14のみから出力される。このため、雑音となる暗電流は、アンテナ層6が無い場合に比べて著しく小さくなる。したがって、本発明の光電陰極1では、高いS/N比で波長λの光を検出することが可能となり、波長λの光の検出感度に優れたものとなる。
【0044】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本実施形態における光電変換層4は、p型GaAs半導体からなるとしたが、光電変換層4の材料はこれに限られず、InGaAs,GaAsP,GaN,InGaN,AlGaNといった化合物半導体およびこれらの混晶からなるとしてもよい。また、光電変換層4は、これらの半導体からなる層を積層したヘテロ構造のものであってもよい。光電変換層4の材料および構造は、アンテナ層6から出力される近接場光の波長や光電陰極1の用途に応じて、適宜選択される。
【0045】
また、本実施形態における支持基板2は硼珪酸ガラスからなるとしたが、支持基板2の材料はこれに限られず、光電陰極1の機械的強度を維持できるものであれば、半導体材料や酸化物材料を適宜用いることができる。
【0046】
また、本実施形態では、光電変換層4は平面状を呈しているとした。これを、図5(a)に示されるように、光電変換層4は、アンテナ層6の貫通孔14と対向する位置にメサ状部28を有しているとしてもよい。また、本実施形態では、アンテナ層6において、凸部10および凹部12はアンテナ層6の他方の主面6bに形成されるとした。これを、図5(b)に示されるように、凸部10および凹部12は、アンテナ層6の一方の主面6aに形成されるとしてもよい。凸部10および凹部12をアンテナ層6の一方の主面6aに形成した場合には、図5(c)に示されるように、光電変換層4はアンテナ層6の貫通孔14を埋めるように形成されるとしてもよい。また、アンテナ層6の周囲には、ブラッグ反射層が形成されるとしてもよい。
【0047】
また、アンテナ層6表面のパターンは、本実施形態のものに限られない。例えば、図6(a)に示されるように、略矩形状の凸部10を等間隔で一次元配列し、凸部10間に位置する凹部12それぞれに略矩形状の貫通孔14を設けることにより形成されるパターンであってもよい。また、図6(b)に示されるように、略円形状の貫通孔14を中心とし、その周囲に略円形状の凸部10を等間隔で二次元配列することにより形成されるパターンであってもよいし、図6(c)に示されるように、略円形状の貫通孔14と略円形状の凸部10とを交互に且つ等間隔で二次元配列することにより形成されるパターンであってもよい。なお、略円形状の貫通孔14の径(最短幅)は、アンテナ層6に入射する光の波長よりも短いものとする。また、図7(a)に示されるように、貫通孔14と複数の凸部10とで構成されるダーツの的(ブルズアイとも呼ばれる)状の模様を、所定の間隔で2次元配列することにより形成されるパターンであってもよい。図7(b)は、図7(a)を略矩形状に変形したものである。
【0048】
また、本実施形態の光電陰極1において、アンテナ層6表面のパターンは、複数の凸部10および凸部10間に位置する凹部12によって形成されるとした。これを、アンテナ層6表面のパターンは複数の貫通孔14によって形成されるとしてもよい。図7(c)に示されるように、貫通孔14を等間隔(所定の間隔)で二次元配列することによりアンテナ層6表面のパターンを形成した場合には、貫通孔14の位置や配置間隔を変えることで、アンテナ層6におけるパターンの形状を変えることができる。
【0049】
そのほか、図8に示されるように、光電陰極1は凸部10および凹部12が形成されたアンテナ層160を複数備えるものであってもよい。この場合にも、各アンテナ層160にて表面プラズモン共鳴を発生させ、近接場光を出力させることができる。図9は、アンテナ層のパターンの形状を変更した場合における、光電陰極の分光感度特性を示すグラフである。パターンの形状を適宜変えることにより、図9の曲線G1に示されるように、感度波長範囲が比較的広く平坦な感度を有する光電陰極、曲線G2に示されるように、感度波長範囲が比較的広く短波長側に高い分光感度を有する光電陰極、曲線G3に示されるように、感度波長範囲が比較的広く長波長側に高い分光感度を有する光電陰極、曲線G4に示されるように、短波長側の特定波長のみに分光感度を有する光電陰極、および曲線G5に示されるように、長波長側の特定波長のみに分光感度を有する光電陰極を得ることができる。
【0050】
(画像増強管)
【0051】
次に、画像増強管について説明する。図10は、画像増強管30の断面模式図である。画像増強管30は、ガラス面板31と、光電陰極100と、マイクロチャンネルプレート(MCP)32と、蛍光体34と、ガラスファイバープレート36と、真空容器38とを備えている。
【0052】
光電陰極100は、支持基板2と、支持基板2上に設けられた光電変換層4と、光電変換層4上に設けられたアンテナ層106とを備えている。アンテナ層106には、図7(c)に示されるアンテナ層6のように、貫通孔114が等間隔(所定の間隔)で二次元配列されている。光電変換層4の貫通孔114から露出した部分は、極薄くかつ均一に形成された活性層16で覆われている。
【0053】
ガラス面板31は、真空容器38の一方の端部に支持されており、ガラス面板31と真空容器38とは、In等からなるシール部40でシールされている。シールされた真空容器38の内部は、真空となっている。真空容器38内部には、ガラス面板31側から、光電陰極100、MCP32、蛍光体34、およびガラスファイバープレート36が順次配設されている。光電陰極100は、真空容器38内部の一端において、支持基板2がガラス面板31側に位置し、アンテナ層106がMCP32側に位置するように取り付けられている。光電陰極100における光電変換層4の周縁部には電極37が接続されている。電極37は、電極42に接続されている。MCP32及び蛍光体34には、所望の電位を与えるための複数の電極44,46,48が設けられている。
【0054】
電極42および電極44を介して、光電陰極100とMCP32との間には数100Vの電圧が印加されている。また、MCP32に接続された各電極44,46を介して、MCP32の上面側(以下「入力側」という)とMCP32の下面側(以下「出力側」という)との間には増倍用の電圧が印加されている。また、MCP32に接続された電極46および蛍光体34に接続された電極48を介して、MCP32と蛍光体34との間には数kV程度の電圧が印加されている。
【0055】
このような構成を有する画像増強管30の動作を説明する。画像増強管30の入射窓となるガラス面板31に光(hν)が入射すると、入射光(hν)はガラス面板31、光電陰極100の支持基板2、および光電陰極100の光電変換層4を透過して、光電陰極100のアンテナ層106に到達する。アンテナ層106に入射光(hν)が到達すると、入射光(hν)に含まれる波長λの光により、アンテナ層106で表面プラズモン共鳴が発生する。その結果、アンテナ層106の貫通孔114から強い近接場光が出力される。出力される近接場光の波長は200nm〜930nmであり、p型GaAs半導体といった材料からなる公知の光電変換層4にて吸収可能な波長となっている。
【0056】
近接場光は、アンテナ層106の他方の主面6bから一方の主面6aに向かう方向に出力され、光電変換層4にて受光される。光電変換層4における貫通孔114の周辺部分は、近接場光を受光して、近接場光の強度(受光量)に応じた量の光電子(e−)を発生する。光電変換層4における貫通孔114の周辺部分で発生した光電子(e−)は、活性層16を介して貫通孔114から真空中に出力される。近接場光の強度は、入射光(hν)に含まれる波長λの光の強度に比例し、且つこれよりも大きい。よって、光電変換層4における貫通孔114の周辺部分は十分な量の光電子(e−)を発生することとなり、その結果、アンテナ層106の貫通孔114からは十分な量の光電子(e−)が出力されることとなる。
【0057】
真空中に出力された光電子(e−)は、光電陰極100とMCP32との間に印加された電圧により加速されながら、MCP32に入射する。入射した光電子(e−)は、MCP32により二次電子増倍されて、再び真空中に出力される。そして、MCP32と蛍光体34との間に印加された電圧により加速されながら、蛍光体34に入射し発光する。蛍光体34からの発光はガラスファイバープレート36を通して画像増強管30の外部に取り出される。
【0058】
上述したように、本実施形態に係る画像増強管30は、光電陰極100を備えている。光電陰極100は、表面プラズモン共鳴を発生させるアンテナ層106を有している。このようなアンテナ層106を有する光電陰極100は、特定波長の光の入射に応じて、十分な量の光電子(e−)を出力する。なお、画像増強管30においては、光電子(e−)は光電陰極100の貫通孔114のみから出力される。同様に、例えば入射光に依存しない熱などによって発生する熱電子もまた、貫通孔114のみから出力される。このため、雑音となる暗電流は、アンテナ層106が無い場合に比べて著しく小さくなる。したがって、画像増強管30は高いS/N比で特定波長の光を検出することができる。よって、特定波長の光の検出感度に優れた画像増強管30を提供することができる。
【0059】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本実施形態の画像増強管30では、光電陰極100を、入射光(hν)の入射面とは反対側の面から光電子(e−)を出力する透過型光電面として用いたが、光電陰極100を、入射光(hν)の入射面から光電子(e−)を出力する反射型光電面として用いることもできる。
【0060】
(ラインフォーカス型光電子増倍管)
【0061】
次に、ラインフォーカス型の光電子増倍管について説明する。図11は、光電子増倍管60の断面模式図である。光電子増倍管60は、ガラス面板61と、上記の実施形態に係る光電陰極1と、真空容器62と、集束電極64と、複数のダイノード66と、最終ダイノード68と、アノード電極70とを備えている。ガラス面板61は、真空容器62の一方の端部に支持されており、ガラス面板61と真空容器62とはシールされている。シールされた真空容器62の内部は、真空となっている。真空容器62内部には、ガラス面板61側から、光電陰極1、集束電極64、複数のダイノード66、および最終ダイノード68が順次配設されている。光電陰極1は、真空容器62の一端において、支持基板2がガラス面板61側に位置し、アンテナ層6が内側に位置するように取り付けられている。光電陰極1における光電変換層4の周縁部にはカソード電極72が接続して形成されている。アノード電極70とカソード電極72とは外部回路を介して接続されており、バイアス電圧Vbを印加することが可能になっている。
【0062】
集束電極64は、光電陰極1と所定の間隔をあけて対向するように真空容器62内部に設けられている。集束電極64の中心部には開口64aが設けられている。複数のダイノード66は、光電陰極1から出射された光電子(e−)を受けて二次電子を発生する、あるいは他のダイノード66から二次電子を受けてさらに多くの二次電子を発生するための電子増倍手段である。複数のダイノード66は、曲面状を呈しており、ダイノード66それぞれが出射した二次電子を別のダイノード66が受けるように、ダイノード66の複数の段が繰り返して配置されている。最終ダイノード68は、複数のダイノード66によって増倍された二次電子を最後に受ける部分である。アノード電極70は、最終ダイノード68および図示しないステムピンに接続されている。
【0063】
このような構成を有する光電子増倍管60の動作を説明する。光電子増倍管60のガラス面板61に光(hν)が入射すると、入射光(hν)はガラス面板61、光電陰極1の支持基板2、および光電陰極1の光電変換層4を透過して、光電陰極1のアンテナ層6に到達する。入射光(hν)が、アンテナ層6における凸部10および凹部12によるパターンが形成された面、すなわちアンテナ層6の他方の主面6bに到達すると、入射光(hν)に含まれる波長λの光により、アンテナ層6で表面プラズモン共鳴が生じる。その結果、アンテナ層6の貫通孔14から強い近接場光が出力される。出力される近接場光の波長は200nm〜930nmであり、p型GaAs半導体といった材料からなる公知の光電変換層4にて吸収可能な波長となっている。
【0064】
近接場光は、アンテナ層6の他方の主面6bから一方の主面6aに向かう方向に出力され、光電変換層4にて受光される。光電変換層4における貫通孔14の周辺部分は、近接場光を受光して、近接場光の強度(受光量)に応じた量の光電子(e−)を発生する。光電変換層4における貫通孔14の周辺部分で発生した光電子(e−)は、活性層16を介して貫通孔14から集束電極64に向かって出力される。近接場光の強度は、入射光(hν)に含まれる波長λの光の強度に比例し、且つこれよりも大きい。よって、光電変換層4における貫通孔14の周辺部分は十分な量の光電子(e−)を発生することとなり、その結果、アンテナ層6の貫通孔14からは十分な量の光電子(e−)が出力されることとなる。
【0065】
光電陰極1から出力された光電子(e−)は、集束電極64によって引き出されるとともに集束され、集束電極64の開口64aを通過する。開口64aを通過した光電子(e−)を受けた複数のダイノード66は、二次電子を発生し、発生した二次電子を増倍する。増倍された二次電子は最終ダイノード68に入力され、最終ダイノード68によりさらに増倍される。アノード電極70とカソード電極72にはバイアス電圧Vbが印加されているため、最終ダイノード68により増倍された二次電子は、アノード電極70によって収集され、アノード電極70に接続された図示しないステムピンを介して、光電子増倍管60の外部へ出力される。
【0066】
上述したように、本実施形態に係る光電子増倍管60は、上記の実施形態に係る光電陰極1を備えている。光電陰極1は表面プラズモン共鳴を発生させるアンテナ層6を有している。そのため、光電陰極1は、特定波長の光の入射に応じて、十分な量の光電子(e−)を出力することができる。なお、光電子増倍管60においては、光電子(e−)は光電陰極1の貫通孔14のみから出力される。同様に、例えば入射光に依存しない熱などによって発生する熱電子もまた、貫通孔14のみから出力される。このため、雑音となる暗電流は、アンテナ層6が無い場合に比べて著しく小さくなる。したがって、特定波長の光の検出感度に優れ、且つ容易に製造可能な光電子増倍管60を提供することができる。
【0067】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、光電子増倍管60では、光電陰極1を、入射光(hν)の入射面とは反対側の面から光電子(e−)を出力する透過型光電面として用いたが、光電陰極1を、入射光(hν)の入射面から光電子(e−)を出力する反射型光電面として用いることもできる。
【0068】
(電子打ち込み型光電子増倍管)
【0069】
次に、電子打ち込み型の光電子増倍管について説明する。図12は、光電子増倍管80の断面模式図である。光電子増倍管80は、ガラス面板81と、光電陰極1と、真空容器82と、フォトダイオード84とを備えている。
【0070】
真空容器82の一方の端部にはガラス面板81が支持されており、真空容器82の他方の端部には底板部85が支持されている。ガラス面板81および底板部85は真空容器82を気密に封止して、真空容器82内部を真空状態に保持させている。真空容器82内部には、ガラス面板81側から、光電陰極1およびフォトダイオード84が順次配設されている。光電陰極1は、真空容器82内部の一端において、支持基板2がガラス面板81側に位置し、アンテナ層6がフォトダイオード84側に位置するように取り付けられている。光電陰極1における光電変換層4の周縁部には電極86が接続されている。底板部85上面には、光電陰極1と対向して、光電子が打ち込まれたとき増倍作用を有しているフォトダイオード84が設置されている。フォトダイオード84にはステムピン88が接続されており、ステムピン88の一端は底板部85を貫通して延びている。
【0071】
ステムピン88を介して、フォトダイオード84には逆バイアス電圧が印加されている。また、ステムピン88と電極86とを介して、光電陰極1とフォトダイオード84との間に数kVの電圧が印加されている。
【0072】
このような構成を有する光電子増倍管80の動作を説明する。光電子増倍管80の入射窓となるガラス面板81に光(hν)が入射すると、入射光(hν)はガラス面板81を透過して、光電陰極1に到達する。光電陰極1は、ラインフォーカス型の光電子増倍管60における光電陰極1と同様に動作する。すなわち、光電陰極1のアンテナ層6は、入射光(hν)に含まれる波長λの光により表面プラズモン共鳴を発生する。そして、波長が200nm〜930nmの範囲にある近接場光を貫通孔14から出力する。光電変換層4における貫通孔14の周辺部分は、近接場光を受光して、近接場光の強度(受光量)に応じた量の光電子(e−)を発生する。光電変換層4における貫通孔14の周辺部分で発生した光電子(e−)は、活性層16を介して貫通孔14から真空中に出力される。近接場光の強度は、入射光(hν)に含まれる波長λの光の強度に比例し、且つこれよりも大きいため、アンテナ層6の貫通孔14からは十分な量の光電子(e−)が出力されることとなる。
【0073】
真空中に出力された光電子(e−)は、光電陰極1とフォトダイオード84との間に印加された電圧により加速されながら、フォトダイオード84に入射する。光電子(e−)が入射されたフォトダイオード84は、光電子(e−)1つに対し数1000倍に増倍された二次電子を発生する。増倍された二次電子は、ステムピン88を介して光電子増倍管80の外部へ出力される。
【0074】
上述したように、本実施形態に係る光電子増倍管80は、上記の実施形態に係る光電陰極1を備えている。光電陰極1は表面プラズモン共鳴を発生させるアンテナ層6を有している。そのため、光電陰極1は特定波長の光の入射に応じて、十分な量の光電子(e−)を出力することができる。なお、光電子増倍管80においては、光電子(e−)は光電陰極1の貫通孔14のみから出力される。同様に、例えば入射光に依存しない熱などによって発生する熱電子もまた、貫通孔14のみから出力される。このため、雑音となる暗電流は、アンテナ層6が無い場合に比べて著しく小さくなる。したがって、特定波長の光の検出感度に優れ、且つ容易に製造可能な光電子増倍管80を提供することができる。
【0075】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、光電子増倍管80では、光電陰極1を、入射光(hν)の入射面とは反対側の面から光電子(e−)を出力する透過型光電面として用いたが、光電陰極1を、入射光(hν)の入射面から光電子(e−)を出力する反射型光電面として用いることもできる。また、光電子増倍管80では、光電子(e−)はフォトダイオード84に入射するとしたが、フォトダイオード84の代わりに電荷結合素子(CCD)を用いるとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明に係る光電陰極の一実施形態の構成を示す平面図である。
【図2】光の波長とアンテナ層の周期間隔との関係を示す表である。
【図3】図1に示される光電陰極の製造工程を示す断面図である。
【図4】図3の後続の工程を示す断面図である。
【図5】本実施形態に係る光電陰極が備える光電変換層およびアンテナ層の変形例を示す図である。
【図6】本実施形態に係る光電陰極が備えるアンテナ層の変形例を示す図である。
【図7】本実施形態に係る光電陰極が備えるアンテナ層の変形例を示す図である。
【図8】本実施形態に係る光電陰極が備えるアンテナ層の変形例を示す図である。
【図9】本実施形態に係る光電陰極が備えるアンテナ層のパターンを変更した場合における、光電陰極の分光感度特性を示すグラフである。
【図10】本発明の実施形態に係る画像増強管の断面模式図である。
【図11】本発明の実施形態に係るラインフォーカス型の光電子増倍管の断面模式図である。
【図12】本発明の実施形態に係る電子打ち込み型の光電子増倍管の断面模式図である。
【符号の説明】
【0077】
1,100・・・光電陰極、2・・・支持基板、4・・・光電変換層、6・・・アンテナ層、10・・・凸部、12・・・凹部、14・・・貫通孔、16・・・活性層、30・・・画像増強管、60・・・光電子増倍管、80・・・光電子増倍管。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電陰極および光電陰極を用いた電子管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特定波長の光を検出する目的で、例えば特許文献1に記載されているように、光電陰極の光入射面上に光フィルタを設けた装置が知られている。この装置では、光フィルタに光が入射すると、この入射光に含まれる特定波長以外の光を光フィルタが除去する。光電陰極は、光フィルタを透過した特定波長の光を吸収して光電子(e−)を発生する。
【特許文献1】特開平6−34548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載の装置では、光電陰極には光フィルタを介して光が入る。そのため、光電陰極は、光フィルタを介さずに直接受光したときと比べて、強度が減衰した光を受ける可能性がある。強度が減衰した光を受光した場合には、光電陰極で発生する光電子(e−)の量が減少し、その結果、特定波長の光の検出感度が低下してしまう。
【0004】
また、特定波長の光を検出する他の技術としては、特定波長の光を選択的に吸収する材料で光電陰極を形成することも考えられる。しかしながらこの場合には、光電陰極を製造する際に、特定波長の光のみを吸収する材料を用意しなければならない。このような材料を得ることは極めて難しいため、光電陰極の製造が困難になってしまう。
【0005】
そこで本発明は、特定波長の光の検出感度に優れ、且つ容易に製造可能な光電陰極、およびそのような光電陰極を用いた電子管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る光電陰極は、(1)厚さ方向に貫通する貫通孔を有するとともに、表面プラズモン共鳴を発生させるための、所定の規則に従ったパターンが表面に形成されたアンテナ層と、(2)アンテナ層と接合し、貫通孔から出力された光を吸収して光電子を発生する光電変換層と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る光電陰極は、表面プラズモン共鳴を発生させるアンテナ層を備えている。このアンテナ層におけるパターンが形成された表面に光(hν)が入射すると、入射光(hν)に含まれる特定波長の光が、アンテナ層の表面プラズモンと結合して、プラズモン共鳴が発生する。プラズモン共鳴が発生すると、アンテナ層の貫通孔から近接場光が出力される。
【0008】
アンテナ層にプラズモン共鳴を発生させる光の波長は、アンテナ層の材料と表面構造とで決まることが、従来から知られている。したがって、アンテナ層の材料とアンテナ層表面のパターンとを適宜決定することにより、特定波長の光でプラズモン共鳴を発生させることが可能となる。更に、アンテナ層から出力される近接場光の波長もまた、アンテナ層の材料と表面構造とで決まることが、従来から知られている。したがって、アンテナ層の材料とアンテナ層表面のパターンとを適宜決定することにより、公知の光電変換層にて吸収可能な波長の近接場光を出力させることが可能となる。よって、特別な材料からなる光電変換層を用意する必要がなくなる。その結果、光電陰極の製造を容易化することができる。
【0009】
光電変換層は、アンテナ層の貫通孔から出力された近接場光を受光して、近接場光による光電子(e−)を発生する。近接場光の強度は、入射光(hν)に含まれる特定波長の光の強度に比例し、且つこれよりも大きい。よって、光電変換層は十分な量の光電子(e−)を発生することとなり、その結果、光電陰極からは十分な量の光電子(e−)が出力されることとなる。したがって、本発明の光電陰極は、高いS/N比で特定波長の光を検出することができる。よって、特定波長の光の検出感度に優れたものとなる。
【0010】
また、本発明に係る光電陰極では、光電変換層で発生した光電子は、アンテナ層の貫通孔から外部に出力されることが好ましい。近接場光による光電子(e−)は、光電変換層における貫通孔の周辺部分で発生する。したがって、光電子は貫通孔から外部に出力されるとした場合には、貫通孔の周辺部分で発生した光電子(e−)、すなわち近接場光による光電子(e−)が確実に出力されることとなる。その結果、本発明の光電陰極は、特定波長の光の検出感度に非常に優れたものとなる。
【0011】
また、本発明に係る光電陰極では、アンテナ層は複数の凸部と当該凸部間に位置する凹部とを有しており、凸部および凹部がパターンを形成しており、貫通孔は凹部に設けられていることが好ましい。この場合、凸部および凹部の位置等を適宜変えることにより、パターンの形状を変えることができる。その結果、アンテナ層にプラズモン共鳴を発生させる光の波長を容易に変更することが可能となる。
【0012】
また、本発明に係る光電陰極では、光電変換層にて発生する光電子の量が、貫通孔を有し且つ表面に凸部および凹部が形成されていないアンテナ層を光電変換層に接合した場合に当該光電変換層にて発生する光電子の量と比べて多くなるように、パターンにおける所定の規則が決められていることが好ましい。この場合、十分な量の光電子を光電変換層にて発生させることができるので、特定波長の光の検出感度にいっそう優れた光電陰極を得ることが可能となる。
【0013】
また、本発明に係る光電陰極では、アンテナ層は貫通孔を複数有しており、当該複数の貫通孔がパターンを形成していることが好ましい。この場合、貫通孔の位置等を適宜変えることによりパターンの形状を変えることができ、その結果、アンテナ層にプラズモン共鳴を発生させる光の波長を容易に変更することが可能となる。
【0014】
また、本発明に係る光電陰極では、貫通孔の最短幅は入射光の波長よりも短いことが好ましい。このように貫通孔の最短幅を狭くすることにより、近接場光を貫通孔から確実に出力させることができる。
【0015】
また、本発明に係る光電陰極では、光電変換層の表面においてアンテナ層の貫通孔と対向する部分には、当該部分の仕事関数を低下させるための活性層が形成されていることが好ましい。この場合、光電陰極で発生した光電子(e−)を、貫通孔を介して真空中へ出力することが容易となる。
【0016】
また、本発明に係る光電陰極では、活性層は、アルカリ金属、アルカリ金属の酸化物、またはアルカリ金属のフッ化物からなることが好ましい。この場合、上記の効果を好適に奏することができる。
【0017】
また、本発明に係る電子管は、上記した光電陰極を備えることを特徴とする。このような光電陰極を用いた電子管によれば、製造が容易であるうえに特定波長の光を精度よく検出することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、特定波長の光の検出感度に優れ、且つ容易に製造可能な光電陰極、およびそのような光電陰極を用いた電子管を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る光電陰極及び電子管の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、「上」、「下」等の語は図面に示す状態に基づいており、便宜的なものである。
【0020】
(光電陰極)
【0021】
図1は本発明に係る光電陰極の一実施形態の構成を示す斜視図である。図1に示されるように、本実施形態に係る光電陰極1は、支持基板2と、支持基板2上に設けられた光電変換層4と、光電変換層4上に設けられたアンテナ層6とを備えている。
【0022】
支持基板2は、光電陰極1の機械的強度を維持するための部材である。支持基板2は、例えば絶縁性基板であって、硼珪酸ガラスといった材料からなっている。支持基板2は、入射光(hν)が入射される一方の主面2aと、一方の主面2aと対向する他方の主面2bとを有している。
【0023】
光電変換層4は、支持基板2の他方の主面2b上に形成されている。光電変換層4は、光電変換を行う部分であり、光を吸収して光電子(e−)を発生する。本実施形態における光電変換層4は、p型GaAs半導体からなっており、波長が200nm〜930nmの範囲にある光を吸収して光電子(e−)を発生する。光電変換層4は、平面状を呈している。
【0024】
光電変換層4の表面の一部は、後述するアンテナ層6の貫通孔14から露出している。光電変換層4の貫通孔14から露出した部分には、極薄くかつ均一に形成された活性層16が形成されている。活性層16は、例えばCs等のアルカリ金属からなっている。このような活性層16は、光電変換層4表面の仕事関数を低下させる。そのため、光電変換層4で発生した光電子(e−)を、アンテナ層6の貫通孔14を介して真空中へ出力することが容易となる。なお、活性層16の材料はCsに限るものではなく、アルカリ金属としてはCs以外にK、Rb、Naなどを用いてもよい。また、このようなアルカリ金属の酸化物や、このようなアルカリ金属のフッ化物であってもよい。
【0025】
光電変換層4の上にはアンテナ層6が設けられている。アンテナ層6は、表面プラズモン共鳴を発生させる層であり、導電性の材料を含んでいる。含まれる導電性の材料としては、Al、Ag、Au等が好ましいが、これ以外であってもよい。
【0026】
アンテナ層6は、厚さ方向に対向する一方の主面6aと他方の主面6bとを有している。アンテナ層6の一方の主面6aは、光電変換層4と接合している。アンテナ層6の中央部には、一方の主面6aから他方の主面6bに貫通する貫通孔14が設けられている。貫通孔14は、長辺および短辺からなる略矩形を呈している。貫通孔14の短辺の長さ(最短幅)dは、支持基板2および光電変換層4を介してアンテナ層6に入射する光の波長よりも短くなっている。これにより、貫通孔14から近接場光(後に詳しく述べる)のみを確実に出力させることができる。なお、本願における貫通孔14は近接場光を出力させるためのものであるため、物理的な孔に限るものではなく、光学的な孔(光が透過する開口)も含む。
【0027】
アンテナ層6は、複数の凸部10と、凸部10間に位置する凹部12とを有している。凸部10および凹部12は、アンテナ層6の他方の主面6bに形成されている。先述した貫通孔14は、凹部12に位置している。複数の凸部10は、貫通孔14と同様に、長辺および短辺からなる略矩形を呈している。複数の凸部10は、長辺同士が対向するように一次元に配列されるとともに、貫通孔14を中心として対称的に配置されている。貫通孔14を挟まずに隣り合う凸部10間の中心距離はΛとなっており、貫通孔14を挟んで隣り合う凸部10間の中心距離はΛの2倍の長さとなっている。以下、この距離Λを周期間隔と呼ぶこととする。このように配置された凸部10と、凸部10間に位置する凹部12とにより、アンテナ層6の他方の主面6bには所定の規則に従ったパターンが形成されることとなる。表面にこのようなパターンが形成されたアンテナ層6は、表面に凸部や凹部がない平坦なアンテナ層と比べて、より強度の大きな近接場光を出力することができる。
【0028】
周期間隔Λは、検出したい光の波長に応じて、適宜設定される。ここで、波長λ0(=2πc/ω)の光がアンテナ層6に対して略垂直に入射する場合を考える。この場合、アンテナ層6の周期間隔Λが以下の式(1)を満たせば、波長λ0の光によりアンテナ層6に表面プラズモン共鳴が発生する。
【数1】
【0029】
εaはアンテナ層6と接する誘電体の比誘電率であって、真空の場合にはεa=1である。εmetalはアンテナ層6の比誘電率であって、εmetal>0である。よって、以下の式(2)が導き出せる。
【数2】
【0030】
式(2)によれば、波長λ0の光で表面プラズモン共鳴を発生させるには、アンテナ層6における周期間隔Λを波長λ0よりも短くする必要がある。このことから、貫通孔14の短辺の長さ(幅)dもまた、波長λ0よりも短くする必要があることがわかる。
【0031】
式(1)に示されるmを1とし、アンテナ層6をAg又はAlから形成した場合の、周期間隔Λと光の波長λ0との関係を図2に示す。図2によれば、アンテナ層6において波長λ0=1240nmの光で表面プラズモン共鳴を発生させるには、周期間隔ΛをAgの場合は1234nmとすればよい。本実施形態では、表面プラズモン共鳴が波長λの光で発生し、且つ、表面プラズモン共鳴に応じて第1の電極12の貫通孔18から出力される近接場光の波長が200nm〜930nmの範囲内となるように、アンテナ層6の周期間隔Λを設定することとする。
【0032】
続いて、光電陰極1の製造工程を説明する。まず、図3(a)に示されるように、硼珪酸ガラスからなる支持基板2を用意する。用意した支持基板2上に、p型GaAs半導体からなる光電変換層4を積層する。なお、支持基板2上にp型GaAs半導体からなる光電変換層4を積層する方法についてはその詳細を省略するが、例えば特開平9−180633号広報に開示されているような公知の方法を用いることができる。
【0033】
次に、図3(b)に示されるように、フォトレジスト22を塗布した後、凸部10を形成する領域が開口するように、フォトレジスト22のパターニングを行う。そして、図3(c)に示されるように、フォトレジスト22によりマスクされた光電変換層4上に、Al、Ag、Au等を含む導電膜24を蒸着により成膜する。なお、フォトレジスト22のパターニングは、紫外線等を用いた光リソグラフィ法で行ってもよいし、電子ビームを用いた電子線リソグラフィ法で行ってもよい。
【0034】
次に、図3(d)に示されるように、導電膜24のうち、フォトレジスト22上に成膜された部分をフォトレジスト22と共にリフトオフ除去する。リフトオフ除去を行った後、図4(a)に示されるように、導電膜24と同一の材料からなる導電膜26を蒸着により成膜する。これにより、凸部10と凹部12とが形成される。
【0035】
導電膜26を成膜した後、図4(b)に示されるように、貫通孔14を形成する部分に集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)を照射して、この部分の導電膜26を除去する。これにより、貫通孔14を有するアンテナ層6が形成されることとなる。
【0036】
次に、図4(c)に示されるように、光電変換層4の貫通孔14から露出した部分の上に、Cs等のアルカリ金属からなる活性層16を形成する。以上の工程を経て、図1に示した光電陰極1が完成する。
【0037】
続いて、光電陰極1の動作について説明する。支持基板2の一方の主面2a側から光(hν)が入射すると、かかる入射光(hν)は支持基板2および光電変換層4を透過してアンテナ層6に到達する。アンテナ層6における、凸部10および凹部12によるパターンが形成された面、すなわちアンテナ層6の他方の主面6bに入射光(hν)が到達すると、入射光(hν)に含まれる波長λの光がアンテナ層6の表面プラズモンと結合する。その結果、アンテナ層6にて表面プラズモン共鳴が生じる。
【0038】
表面プラズモン共鳴が生じると、アンテナ層6は貫通孔14から強い近接場光を出力する。近接場光の出力方向は、パターンが形成された面からパターンが形成されていない面に向かう方向、すなわち他方の主面6bから一方の主面6aに向かう方向となる。貫通孔14から出力される近接場光の波長は、アンテナ層6表面に形成されたパターンの周期間隔Λに依存し、200nm〜930nmである。この近接場光の強度は、波長λの光の強度に比例しており、且つ波長λの光の強度よりも大きい。
【0039】
アンテナ層6の一方の主面6aに接合された光電変換層4は、アンテナ層6の貫通孔14から出力された近接場光を受光する。近接場光の波長は200nm〜930nmであるため、p型GaAs半導体からなる光電変換層4は近接場光を吸収することができる。光電変換層4における貫通孔14の周辺部分は、近接場光を吸収し、近接場光の強度(受光量)に応じた量の光電子(e−)を発生する。
【0040】
なお、アンテナ層6の貫通孔14から出力される近接場光は、例えば、表面に凸部や凹部が形成されていない平坦なアンテナ層に光(hν)が入射したときに当該アンテナ層の貫通孔から出力される光と比べて、非常に大きな強度を有している。そのため、貫通孔14の周辺部分にて発生する光電子(e−)の量は、アンテナ層6に代わって上述した平坦な表面を有するアンテナ層を用いた場合に発生する光電子(e−)の量と比べて、非常に多くなっている。
【0041】
光電変換層4の貫通孔14から露出した部分には、活性層16が形成されている。活性層16は、光電変換層4表面の仕事関数を低下させる。そのため、光電変換層4における貫通孔14の周辺部分で発生した光電子(e−)は、貫通孔14から容易に外部に出力されることとなる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態に係る光電陰極1は、光電変換層4およびアンテナ層6を備えている。アンテナ層6の他方の主面2bには、凸部10および凹部12によるパターンが形成されている。パターンを形成されたアンテナ層6は、波長λの光で表面プラズモン共鳴を発生し、且つ、アンテナ層6のパターンの周期間隔Λに依存した波長200nm〜930nmの近接場光を出力する。光(hν)がアンテナ層6の他方の主面2bに入射されると、入射光(hν)に含まれる波長λの光がアンテナ層6の表面プラズモンと結合する。これにより、アンテナ層6に表面プラズモン共鳴が発生する。表面プラズモン共鳴が発生すると、アンテナ層6の貫通孔14から強い近接場光が出力される。近接場光は光電変換層4にて受光される。近接場光の波長はアンテナ層6のパターンの周期間隔Λに依存した200nm〜930nmであるから、p型GaAs半導体といった公知の材料からなる光電変換層4に近接場光を吸収させ、光電子(e−)を発生させることができる。よって、特別な材料からなる光電変換層4を用意する必要がなくなるため、光電陰極1の製造を容易化することができる。
【0043】
光電変換層4は、近接場光を吸収し、近接場光の強度に応じた量の光電子(e−)を発生する。近接場光による光電子(e−)は、光電変換層4における貫通孔14の周辺部分で発生する。そのため、貫通孔14からは、貫通孔14の周辺部分で発生した光電子(e−)、すなわち近接場光による光電子(e−)が出力されることとなる。近接場光の強度は、入射光(hν)に含まれる波長λの光の強度に比例し、且つこれよりも大きい。よって、光電変換層4における貫通孔14の周辺部分は十分な量の光電子(e−)を発生することとなり、その結果、アンテナ層6の貫通孔14からは十分な量の光電子(e−)が出力されることとなる。なお、光電陰極1において、光電子(e−)は貫通孔14のみから出力されることとなるが、例えば入射光に依存しない熱などによって発生する熱電子もまた、貫通孔14のみから出力される。このため、雑音となる暗電流は、アンテナ層6が無い場合に比べて著しく小さくなる。したがって、本発明の光電陰極1では、高いS/N比で波長λの光を検出することが可能となり、波長λの光の検出感度に優れたものとなる。
【0044】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本実施形態における光電変換層4は、p型GaAs半導体からなるとしたが、光電変換層4の材料はこれに限られず、InGaAs,GaAsP,GaN,InGaN,AlGaNといった化合物半導体およびこれらの混晶からなるとしてもよい。また、光電変換層4は、これらの半導体からなる層を積層したヘテロ構造のものであってもよい。光電変換層4の材料および構造は、アンテナ層6から出力される近接場光の波長や光電陰極1の用途に応じて、適宜選択される。
【0045】
また、本実施形態における支持基板2は硼珪酸ガラスからなるとしたが、支持基板2の材料はこれに限られず、光電陰極1の機械的強度を維持できるものであれば、半導体材料や酸化物材料を適宜用いることができる。
【0046】
また、本実施形態では、光電変換層4は平面状を呈しているとした。これを、図5(a)に示されるように、光電変換層4は、アンテナ層6の貫通孔14と対向する位置にメサ状部28を有しているとしてもよい。また、本実施形態では、アンテナ層6において、凸部10および凹部12はアンテナ層6の他方の主面6bに形成されるとした。これを、図5(b)に示されるように、凸部10および凹部12は、アンテナ層6の一方の主面6aに形成されるとしてもよい。凸部10および凹部12をアンテナ層6の一方の主面6aに形成した場合には、図5(c)に示されるように、光電変換層4はアンテナ層6の貫通孔14を埋めるように形成されるとしてもよい。また、アンテナ層6の周囲には、ブラッグ反射層が形成されるとしてもよい。
【0047】
また、アンテナ層6表面のパターンは、本実施形態のものに限られない。例えば、図6(a)に示されるように、略矩形状の凸部10を等間隔で一次元配列し、凸部10間に位置する凹部12それぞれに略矩形状の貫通孔14を設けることにより形成されるパターンであってもよい。また、図6(b)に示されるように、略円形状の貫通孔14を中心とし、その周囲に略円形状の凸部10を等間隔で二次元配列することにより形成されるパターンであってもよいし、図6(c)に示されるように、略円形状の貫通孔14と略円形状の凸部10とを交互に且つ等間隔で二次元配列することにより形成されるパターンであってもよい。なお、略円形状の貫通孔14の径(最短幅)は、アンテナ層6に入射する光の波長よりも短いものとする。また、図7(a)に示されるように、貫通孔14と複数の凸部10とで構成されるダーツの的(ブルズアイとも呼ばれる)状の模様を、所定の間隔で2次元配列することにより形成されるパターンであってもよい。図7(b)は、図7(a)を略矩形状に変形したものである。
【0048】
また、本実施形態の光電陰極1において、アンテナ層6表面のパターンは、複数の凸部10および凸部10間に位置する凹部12によって形成されるとした。これを、アンテナ層6表面のパターンは複数の貫通孔14によって形成されるとしてもよい。図7(c)に示されるように、貫通孔14を等間隔(所定の間隔)で二次元配列することによりアンテナ層6表面のパターンを形成した場合には、貫通孔14の位置や配置間隔を変えることで、アンテナ層6におけるパターンの形状を変えることができる。
【0049】
そのほか、図8に示されるように、光電陰極1は凸部10および凹部12が形成されたアンテナ層160を複数備えるものであってもよい。この場合にも、各アンテナ層160にて表面プラズモン共鳴を発生させ、近接場光を出力させることができる。図9は、アンテナ層のパターンの形状を変更した場合における、光電陰極の分光感度特性を示すグラフである。パターンの形状を適宜変えることにより、図9の曲線G1に示されるように、感度波長範囲が比較的広く平坦な感度を有する光電陰極、曲線G2に示されるように、感度波長範囲が比較的広く短波長側に高い分光感度を有する光電陰極、曲線G3に示されるように、感度波長範囲が比較的広く長波長側に高い分光感度を有する光電陰極、曲線G4に示されるように、短波長側の特定波長のみに分光感度を有する光電陰極、および曲線G5に示されるように、長波長側の特定波長のみに分光感度を有する光電陰極を得ることができる。
【0050】
(画像増強管)
【0051】
次に、画像増強管について説明する。図10は、画像増強管30の断面模式図である。画像増強管30は、ガラス面板31と、光電陰極100と、マイクロチャンネルプレート(MCP)32と、蛍光体34と、ガラスファイバープレート36と、真空容器38とを備えている。
【0052】
光電陰極100は、支持基板2と、支持基板2上に設けられた光電変換層4と、光電変換層4上に設けられたアンテナ層106とを備えている。アンテナ層106には、図7(c)に示されるアンテナ層6のように、貫通孔114が等間隔(所定の間隔)で二次元配列されている。光電変換層4の貫通孔114から露出した部分は、極薄くかつ均一に形成された活性層16で覆われている。
【0053】
ガラス面板31は、真空容器38の一方の端部に支持されており、ガラス面板31と真空容器38とは、In等からなるシール部40でシールされている。シールされた真空容器38の内部は、真空となっている。真空容器38内部には、ガラス面板31側から、光電陰極100、MCP32、蛍光体34、およびガラスファイバープレート36が順次配設されている。光電陰極100は、真空容器38内部の一端において、支持基板2がガラス面板31側に位置し、アンテナ層106がMCP32側に位置するように取り付けられている。光電陰極100における光電変換層4の周縁部には電極37が接続されている。電極37は、電極42に接続されている。MCP32及び蛍光体34には、所望の電位を与えるための複数の電極44,46,48が設けられている。
【0054】
電極42および電極44を介して、光電陰極100とMCP32との間には数100Vの電圧が印加されている。また、MCP32に接続された各電極44,46を介して、MCP32の上面側(以下「入力側」という)とMCP32の下面側(以下「出力側」という)との間には増倍用の電圧が印加されている。また、MCP32に接続された電極46および蛍光体34に接続された電極48を介して、MCP32と蛍光体34との間には数kV程度の電圧が印加されている。
【0055】
このような構成を有する画像増強管30の動作を説明する。画像増強管30の入射窓となるガラス面板31に光(hν)が入射すると、入射光(hν)はガラス面板31、光電陰極100の支持基板2、および光電陰極100の光電変換層4を透過して、光電陰極100のアンテナ層106に到達する。アンテナ層106に入射光(hν)が到達すると、入射光(hν)に含まれる波長λの光により、アンテナ層106で表面プラズモン共鳴が発生する。その結果、アンテナ層106の貫通孔114から強い近接場光が出力される。出力される近接場光の波長は200nm〜930nmであり、p型GaAs半導体といった材料からなる公知の光電変換層4にて吸収可能な波長となっている。
【0056】
近接場光は、アンテナ層106の他方の主面6bから一方の主面6aに向かう方向に出力され、光電変換層4にて受光される。光電変換層4における貫通孔114の周辺部分は、近接場光を受光して、近接場光の強度(受光量)に応じた量の光電子(e−)を発生する。光電変換層4における貫通孔114の周辺部分で発生した光電子(e−)は、活性層16を介して貫通孔114から真空中に出力される。近接場光の強度は、入射光(hν)に含まれる波長λの光の強度に比例し、且つこれよりも大きい。よって、光電変換層4における貫通孔114の周辺部分は十分な量の光電子(e−)を発生することとなり、その結果、アンテナ層106の貫通孔114からは十分な量の光電子(e−)が出力されることとなる。
【0057】
真空中に出力された光電子(e−)は、光電陰極100とMCP32との間に印加された電圧により加速されながら、MCP32に入射する。入射した光電子(e−)は、MCP32により二次電子増倍されて、再び真空中に出力される。そして、MCP32と蛍光体34との間に印加された電圧により加速されながら、蛍光体34に入射し発光する。蛍光体34からの発光はガラスファイバープレート36を通して画像増強管30の外部に取り出される。
【0058】
上述したように、本実施形態に係る画像増強管30は、光電陰極100を備えている。光電陰極100は、表面プラズモン共鳴を発生させるアンテナ層106を有している。このようなアンテナ層106を有する光電陰極100は、特定波長の光の入射に応じて、十分な量の光電子(e−)を出力する。なお、画像増強管30においては、光電子(e−)は光電陰極100の貫通孔114のみから出力される。同様に、例えば入射光に依存しない熱などによって発生する熱電子もまた、貫通孔114のみから出力される。このため、雑音となる暗電流は、アンテナ層106が無い場合に比べて著しく小さくなる。したがって、画像増強管30は高いS/N比で特定波長の光を検出することができる。よって、特定波長の光の検出感度に優れた画像増強管30を提供することができる。
【0059】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本実施形態の画像増強管30では、光電陰極100を、入射光(hν)の入射面とは反対側の面から光電子(e−)を出力する透過型光電面として用いたが、光電陰極100を、入射光(hν)の入射面から光電子(e−)を出力する反射型光電面として用いることもできる。
【0060】
(ラインフォーカス型光電子増倍管)
【0061】
次に、ラインフォーカス型の光電子増倍管について説明する。図11は、光電子増倍管60の断面模式図である。光電子増倍管60は、ガラス面板61と、上記の実施形態に係る光電陰極1と、真空容器62と、集束電極64と、複数のダイノード66と、最終ダイノード68と、アノード電極70とを備えている。ガラス面板61は、真空容器62の一方の端部に支持されており、ガラス面板61と真空容器62とはシールされている。シールされた真空容器62の内部は、真空となっている。真空容器62内部には、ガラス面板61側から、光電陰極1、集束電極64、複数のダイノード66、および最終ダイノード68が順次配設されている。光電陰極1は、真空容器62の一端において、支持基板2がガラス面板61側に位置し、アンテナ層6が内側に位置するように取り付けられている。光電陰極1における光電変換層4の周縁部にはカソード電極72が接続して形成されている。アノード電極70とカソード電極72とは外部回路を介して接続されており、バイアス電圧Vbを印加することが可能になっている。
【0062】
集束電極64は、光電陰極1と所定の間隔をあけて対向するように真空容器62内部に設けられている。集束電極64の中心部には開口64aが設けられている。複数のダイノード66は、光電陰極1から出射された光電子(e−)を受けて二次電子を発生する、あるいは他のダイノード66から二次電子を受けてさらに多くの二次電子を発生するための電子増倍手段である。複数のダイノード66は、曲面状を呈しており、ダイノード66それぞれが出射した二次電子を別のダイノード66が受けるように、ダイノード66の複数の段が繰り返して配置されている。最終ダイノード68は、複数のダイノード66によって増倍された二次電子を最後に受ける部分である。アノード電極70は、最終ダイノード68および図示しないステムピンに接続されている。
【0063】
このような構成を有する光電子増倍管60の動作を説明する。光電子増倍管60のガラス面板61に光(hν)が入射すると、入射光(hν)はガラス面板61、光電陰極1の支持基板2、および光電陰極1の光電変換層4を透過して、光電陰極1のアンテナ層6に到達する。入射光(hν)が、アンテナ層6における凸部10および凹部12によるパターンが形成された面、すなわちアンテナ層6の他方の主面6bに到達すると、入射光(hν)に含まれる波長λの光により、アンテナ層6で表面プラズモン共鳴が生じる。その結果、アンテナ層6の貫通孔14から強い近接場光が出力される。出力される近接場光の波長は200nm〜930nmであり、p型GaAs半導体といった材料からなる公知の光電変換層4にて吸収可能な波長となっている。
【0064】
近接場光は、アンテナ層6の他方の主面6bから一方の主面6aに向かう方向に出力され、光電変換層4にて受光される。光電変換層4における貫通孔14の周辺部分は、近接場光を受光して、近接場光の強度(受光量)に応じた量の光電子(e−)を発生する。光電変換層4における貫通孔14の周辺部分で発生した光電子(e−)は、活性層16を介して貫通孔14から集束電極64に向かって出力される。近接場光の強度は、入射光(hν)に含まれる波長λの光の強度に比例し、且つこれよりも大きい。よって、光電変換層4における貫通孔14の周辺部分は十分な量の光電子(e−)を発生することとなり、その結果、アンテナ層6の貫通孔14からは十分な量の光電子(e−)が出力されることとなる。
【0065】
光電陰極1から出力された光電子(e−)は、集束電極64によって引き出されるとともに集束され、集束電極64の開口64aを通過する。開口64aを通過した光電子(e−)を受けた複数のダイノード66は、二次電子を発生し、発生した二次電子を増倍する。増倍された二次電子は最終ダイノード68に入力され、最終ダイノード68によりさらに増倍される。アノード電極70とカソード電極72にはバイアス電圧Vbが印加されているため、最終ダイノード68により増倍された二次電子は、アノード電極70によって収集され、アノード電極70に接続された図示しないステムピンを介して、光電子増倍管60の外部へ出力される。
【0066】
上述したように、本実施形態に係る光電子増倍管60は、上記の実施形態に係る光電陰極1を備えている。光電陰極1は表面プラズモン共鳴を発生させるアンテナ層6を有している。そのため、光電陰極1は、特定波長の光の入射に応じて、十分な量の光電子(e−)を出力することができる。なお、光電子増倍管60においては、光電子(e−)は光電陰極1の貫通孔14のみから出力される。同様に、例えば入射光に依存しない熱などによって発生する熱電子もまた、貫通孔14のみから出力される。このため、雑音となる暗電流は、アンテナ層6が無い場合に比べて著しく小さくなる。したがって、特定波長の光の検出感度に優れ、且つ容易に製造可能な光電子増倍管60を提供することができる。
【0067】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、光電子増倍管60では、光電陰極1を、入射光(hν)の入射面とは反対側の面から光電子(e−)を出力する透過型光電面として用いたが、光電陰極1を、入射光(hν)の入射面から光電子(e−)を出力する反射型光電面として用いることもできる。
【0068】
(電子打ち込み型光電子増倍管)
【0069】
次に、電子打ち込み型の光電子増倍管について説明する。図12は、光電子増倍管80の断面模式図である。光電子増倍管80は、ガラス面板81と、光電陰極1と、真空容器82と、フォトダイオード84とを備えている。
【0070】
真空容器82の一方の端部にはガラス面板81が支持されており、真空容器82の他方の端部には底板部85が支持されている。ガラス面板81および底板部85は真空容器82を気密に封止して、真空容器82内部を真空状態に保持させている。真空容器82内部には、ガラス面板81側から、光電陰極1およびフォトダイオード84が順次配設されている。光電陰極1は、真空容器82内部の一端において、支持基板2がガラス面板81側に位置し、アンテナ層6がフォトダイオード84側に位置するように取り付けられている。光電陰極1における光電変換層4の周縁部には電極86が接続されている。底板部85上面には、光電陰極1と対向して、光電子が打ち込まれたとき増倍作用を有しているフォトダイオード84が設置されている。フォトダイオード84にはステムピン88が接続されており、ステムピン88の一端は底板部85を貫通して延びている。
【0071】
ステムピン88を介して、フォトダイオード84には逆バイアス電圧が印加されている。また、ステムピン88と電極86とを介して、光電陰極1とフォトダイオード84との間に数kVの電圧が印加されている。
【0072】
このような構成を有する光電子増倍管80の動作を説明する。光電子増倍管80の入射窓となるガラス面板81に光(hν)が入射すると、入射光(hν)はガラス面板81を透過して、光電陰極1に到達する。光電陰極1は、ラインフォーカス型の光電子増倍管60における光電陰極1と同様に動作する。すなわち、光電陰極1のアンテナ層6は、入射光(hν)に含まれる波長λの光により表面プラズモン共鳴を発生する。そして、波長が200nm〜930nmの範囲にある近接場光を貫通孔14から出力する。光電変換層4における貫通孔14の周辺部分は、近接場光を受光して、近接場光の強度(受光量)に応じた量の光電子(e−)を発生する。光電変換層4における貫通孔14の周辺部分で発生した光電子(e−)は、活性層16を介して貫通孔14から真空中に出力される。近接場光の強度は、入射光(hν)に含まれる波長λの光の強度に比例し、且つこれよりも大きいため、アンテナ層6の貫通孔14からは十分な量の光電子(e−)が出力されることとなる。
【0073】
真空中に出力された光電子(e−)は、光電陰極1とフォトダイオード84との間に印加された電圧により加速されながら、フォトダイオード84に入射する。光電子(e−)が入射されたフォトダイオード84は、光電子(e−)1つに対し数1000倍に増倍された二次電子を発生する。増倍された二次電子は、ステムピン88を介して光電子増倍管80の外部へ出力される。
【0074】
上述したように、本実施形態に係る光電子増倍管80は、上記の実施形態に係る光電陰極1を備えている。光電陰極1は表面プラズモン共鳴を発生させるアンテナ層6を有している。そのため、光電陰極1は特定波長の光の入射に応じて、十分な量の光電子(e−)を出力することができる。なお、光電子増倍管80においては、光電子(e−)は光電陰極1の貫通孔14のみから出力される。同様に、例えば入射光に依存しない熱などによって発生する熱電子もまた、貫通孔14のみから出力される。このため、雑音となる暗電流は、アンテナ層6が無い場合に比べて著しく小さくなる。したがって、特定波長の光の検出感度に優れ、且つ容易に製造可能な光電子増倍管80を提供することができる。
【0075】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、光電子増倍管80では、光電陰極1を、入射光(hν)の入射面とは反対側の面から光電子(e−)を出力する透過型光電面として用いたが、光電陰極1を、入射光(hν)の入射面から光電子(e−)を出力する反射型光電面として用いることもできる。また、光電子増倍管80では、光電子(e−)はフォトダイオード84に入射するとしたが、フォトダイオード84の代わりに電荷結合素子(CCD)を用いるとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明に係る光電陰極の一実施形態の構成を示す平面図である。
【図2】光の波長とアンテナ層の周期間隔との関係を示す表である。
【図3】図1に示される光電陰極の製造工程を示す断面図である。
【図4】図3の後続の工程を示す断面図である。
【図5】本実施形態に係る光電陰極が備える光電変換層およびアンテナ層の変形例を示す図である。
【図6】本実施形態に係る光電陰極が備えるアンテナ層の変形例を示す図である。
【図7】本実施形態に係る光電陰極が備えるアンテナ層の変形例を示す図である。
【図8】本実施形態に係る光電陰極が備えるアンテナ層の変形例を示す図である。
【図9】本実施形態に係る光電陰極が備えるアンテナ層のパターンを変更した場合における、光電陰極の分光感度特性を示すグラフである。
【図10】本発明の実施形態に係る画像増強管の断面模式図である。
【図11】本発明の実施形態に係るラインフォーカス型の光電子増倍管の断面模式図である。
【図12】本発明の実施形態に係る電子打ち込み型の光電子増倍管の断面模式図である。
【符号の説明】
【0077】
1,100・・・光電陰極、2・・・支持基板、4・・・光電変換層、6・・・アンテナ層、10・・・凸部、12・・・凹部、14・・・貫通孔、16・・・活性層、30・・・画像増強管、60・・・光電子増倍管、80・・・光電子増倍管。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向に貫通する貫通孔を有するとともに、表面プラズモン共鳴を発生させるための、所定の規則に従ったパターンが表面に形成されたアンテナ層と、
前記アンテナ層と接合し、前記貫通孔から出力された光を吸収して光電子を発生する光電変換層と、
を備えることを特徴とする光電陰極。
【請求項2】
前記光電変換層で発生した前記光電子は、前記アンテナ層の前記貫通孔から外部に出力されることを特徴とする請求項1に記載の光電陰極。
【請求項3】
前記アンテナ層は複数の凸部と当該凸部間に位置する凹部とを有しており、前記凸部および前記凹部が前記パターンを形成しており、前記貫通孔は前記凹部に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光電陰極。
【請求項4】
前記光電変換層にて発生する光電子の量が、貫通孔を有し且つ表面に凸部および凹部が形成されていないアンテナ層を前記光電変換層に接合した場合に当該光電変換層にて発生する光電子の量と比べて多くなるように、前記パターンにおける前記所定の規則が決められていることを特徴とする請求項3に記載の光電陰極。
【請求項5】
前記アンテナ層は前記貫通孔を複数有しており、当該複数の貫通孔が前記パターンを形成していることを特徴とする請求項1〜2のいずれか一項に記載の光電陰極。
【請求項6】
前記貫通孔の最短幅は前記アンテナ層に入射する光の波長よりも短いことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の光電陰極。
【請求項7】
前記光電変換層の表面において前記アンテナ層の前記貫通孔から露出した部分には、当該部分の仕事関数を低下させるための活性層が形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の光電陰極。
【請求項8】
前記活性層は、アルカリ金属、アルカリ金属の酸化物、またはアルカリ金属のフッ化物からなることを特徴とする請求項7に記載の光電陰極。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか一項に記載の光電陰極を備えることを特徴とする電子管。
【請求項1】
厚さ方向に貫通する貫通孔を有するとともに、表面プラズモン共鳴を発生させるための、所定の規則に従ったパターンが表面に形成されたアンテナ層と、
前記アンテナ層と接合し、前記貫通孔から出力された光を吸収して光電子を発生する光電変換層と、
を備えることを特徴とする光電陰極。
【請求項2】
前記光電変換層で発生した前記光電子は、前記アンテナ層の前記貫通孔から外部に出力されることを特徴とする請求項1に記載の光電陰極。
【請求項3】
前記アンテナ層は複数の凸部と当該凸部間に位置する凹部とを有しており、前記凸部および前記凹部が前記パターンを形成しており、前記貫通孔は前記凹部に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光電陰極。
【請求項4】
前記光電変換層にて発生する光電子の量が、貫通孔を有し且つ表面に凸部および凹部が形成されていないアンテナ層を前記光電変換層に接合した場合に当該光電変換層にて発生する光電子の量と比べて多くなるように、前記パターンにおける前記所定の規則が決められていることを特徴とする請求項3に記載の光電陰極。
【請求項5】
前記アンテナ層は前記貫通孔を複数有しており、当該複数の貫通孔が前記パターンを形成していることを特徴とする請求項1〜2のいずれか一項に記載の光電陰極。
【請求項6】
前記貫通孔の最短幅は前記アンテナ層に入射する光の波長よりも短いことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の光電陰極。
【請求項7】
前記光電変換層の表面において前記アンテナ層の前記貫通孔から露出した部分には、当該部分の仕事関数を低下させるための活性層が形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の光電陰極。
【請求項8】
前記活性層は、アルカリ金属、アルカリ金属の酸化物、またはアルカリ金属のフッ化物からなることを特徴とする請求項7に記載の光電陰極。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか一項に記載の光電陰極を備えることを特徴とする電子管。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−16293(P2008−16293A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−185944(P2006−185944)
【出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
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