説明

光音響イメージング装置

【課題】光音響像と可視光像を取得する光音響イメージング装置において、両者の位置的な対応関係を把握可能にする技術を提供する。
【解決手段】被検体および光吸収体に光を照射することによって発生する音響波を検出する音響波検出器と、被検体および光吸収体に光を照射することによって発生する試料光を検出する光検出器と、音響波から第1のデータを生成するとともに、試料光から第2のデータを生成する信号処理部と、第1のデータから生成した光音響像および第2のデータから生成した可視光像を光吸収体の像に基づいて位置合わせして表示させる表示制御部を有する光音響イメージング装置を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光音響イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍や動脈硬化などの疾病増加が社会的に大きな課題となっている。このような疾病の有無を診断するために、X線CTやPET−CTなどの侵襲的な生体の画像化装置を用いた測定法が実用化されているが、より低侵襲な測定法が求められている。
【0003】
このような光イメージング技術の一つとして、Photoacoustic Tomography(PAT:光音響トモグラフィー)が提案されている。例えば、非特許文献1によれば、光音響トモグラフィーの技術では、光源から発生したパルス光を被検体に照射し、被検体内で伝播・拡散した光のエネルギーを吸収した生体組織から発生した音響波の時間による変化を、被検体を取り囲む複数の個所で検出する。そして、得られた信号を数学的に解析処理し、被検体内部の光学特性値に関連した情報を可視化する。これにより、被検体内の初期圧力発生分布あるいは光学特性値分布、特に光エネルギー吸収密度分布などを得ることができ、悪性腫瘍場所の特定などに利用できる。
【0004】
また、非特許文献2においては光音響の原理を利用して細胞やマウスの血管や脳など小動物臓器を観察するために、光音響トモグラフィーの原理を利用した光音響イメージング用顕微鏡も報告されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】M,Xu, L.V.Wang “Photoacoustic imaging in biomedicine”, Review of scientific instruments,77,041101(2006)
【非特許文献2】KONSTANTIN Maslova、 Hao F. Zhang a、B、Song Hua、 Lihong V. Wanga “Optical-Resolution ConfocalPhotoacoustic Microscopy”, Proceedings of SPIE,6856,68561I-1(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光音響イメージングで生体情報の可視化を行う場合に、被検体の観察対象領域で得られた光音響像と観察者が視覚で認識することのできる可視光像(輪郭や形状の情報)との位置的な対応付けは重要である。例えば、ある疾患を光音響イメージングで捉えることができたとしても、光音響像から得られる画像情報は光音響波の空間的な分布や強度を示しているに過ぎない。つまり、光音響の空間的な強度分布だけで、それが可視光像のどの位置に対応しているかを把握することは実際上極めて困難である。しかしながらこれまでに報告されている光音響イメージング装置に関する報告において、光音響像と可視光像の画像を取得し、両方の画像の位置的な対応付けを行ったとする報告はなされていない。
【0007】
非特許文献2において報告されている光音響イメージング装置では、被検体からの光音響像と可視光像の取得が可能な装置構成が報告されている。具体的には光路内にビームスプリッターを設けることでサンプル表面からの試料光を光路外に取り出すという機構を備えている。しかし、先行例中の装置構成には、可視光像を取得するための特別な光源に関する記載は無い。
【0008】
一般に被検体が小動物のような散乱係数を持った不透明体である場合、被検体の深部か
らの光音響信号を取得するためには組織浸透性の高い近赤外領域の波長光(以下、近赤外光)を用いる必要がある。しかし、近赤外領域の波長の反射光は人の網膜で視認することが極めて困難である。そのため、取得した光音響像の位置的な情報を得るためには人の網膜で視認することが出来る可視光領域の波長光の反射光(以下、可視光像)を取得する必要がある。そして、そのためには光音響像取得のための近赤外光と空間的な位置情報取得のための可視光像とに光源波長を切り替えてそれぞれの像を取得しなければならず、両者の画像取得に時間的なズレが生じるという課題が発生する。
【0009】
さらに被検体は信号取得中にも被検体自身の拍動や呼吸により体位が変化する可能性がある。つまり、光音響像と可視光像の位置的な対応付けをつけるためには、時間的なズレがなく両者を取得できる装置構成を備えていることが望ましい。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、光音響像と可視光像を取得する光音響イメージング装置において、両者の位置的な対応関係を把握可能にする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明は以下の構成を採用する。すなわち、被検体と、前記被検体との位置関係が決定された位置にある光吸収体とに光を照射することによって発生する音響波を検出する音響波検出器と、前記被検体および前記光吸収体に光を照射することによって発生する試料光を検出する光検出器と、前記音響波検出器が検出した音響波から第1のデータを生成するとともに、前記光検出器が検出した試料光から第2のデータを生成する信号処理部と、前記第1のデータから生成した光音響像および第2のデータから生成した可視光像を、前記光音響像中の前記光吸収体の像と、前記可視光像中の前記光吸収体の像とに基づいて、位置合わせして表示させる表示制御部と、を有する光音響イメージング装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光音響像と可視光像を取得する光音響イメージング装置において、両者の位置的な対応関係を把握可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明における光音響イメージング装置構成の概念図。
【図2】本発明における光音響像検出の概略図。
【図3】マウスを用いた光音響イメージング画像。
【図4】光音響像と可視光像との位置的な対応付けの説明図。
【図5】実施例における光音響イメージング装置構成概略図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の生体情報イメージングの実施形態について示したものである。ここでは、図1に基づいて、本発明の実施形態について説明する。
【0015】
本発明の実施形態で説明する光音響イメージング装置は、悪性腫瘍や血管疾患などの診断や化学治療の経過観察などを目的とする。この光音響イメージング装置により、生体内の初期圧力分布、あるいはそれから導かれる光学特性値分布及び、それらの情報から得られる生体組織を構成する物質の濃度分布及び、生体内へ投入した光音響用造影剤の分布を求めることが可能となる。また、これら求めた情報に基づき、信号処理装置が被検体の内部構造を表わす画像データを生成することができる。この画像データから画像を生成して表示部に表示(イメージング)することにより、治療に役立てることができる。
【0016】
(装置の構成)
本実施形態における光音響イメージング装置は、光音響測定用の第1の光102を被検体100に照射する第1の光源103と、第1の光源103から照射された第1の光102を被検体100に導くレンズなどの光学装置104を有する。被検体とは測定対象物のことを指す。
【0017】
光音響イメージング装置はまた、血液や光音響用造影剤などの光吸収体105が第1の光102のエネルギーを吸収して発生した音響波106を検出し、第1の電気信号に変換する音響波検出器107を有する。光音響イメージング装置はまた、音響波検出器107へ音響波106に導く光音響レンズ(後述)などの光音響装置117を有する。
【0018】
光音響イメージング装置はまた、可視光照明用の第2の光108を被検体100に照射する第2の光源109を有する。光音響イメージング装置はまた、第2の光源109から被検体100に対して照射された第2の光108に基づく試料光110を検出し第2の電気信号に変換する光検出器112と、反射光110を光検出器112に導くフィルタなどの光学装置111を有する。
【0019】
なお、試料光とは、被検体に対して照明光を照射した際に、被検体の光学的な性質に応じて得られる光のことを指す。本明細書では、可視光観察用の機構(例えばCCDカメラ等)で検出可能な波長領域の光を言うものとする。
なお、第1の光源103と第2の光源109とは、図1では、別々に図示されているが、これらは互いに兼用でき、1つの光源であってもよい。
【0020】
光音響イメージング装置はまた、被検体100に対して音響波検出器107および光検出器112を相対的に移動させるための駆動装置115を有する。光音響イメージング装置はまた、駆動装置115を走査・制御する駆動装置制御システム116を有する。
【0021】
光音響イメージング装置はまた、前記第1の電気信号と前記第2の電気信号の電気信号を解析し、これにより前記被検体100の光学特性値分布を計算する信号処理装置113及び、その画像を表示装置114に表示させるための表示制御部118を有する。
音響波検出器により取得された音響波から生成されたデジタルデータは第1のデータに、光検出器により取得された試料光から生成されたデジタルデータは第2のデータに相当する。
【0022】
信号処理部113は、前記第1と第2の電気信号を解析して、前記被検体の光学特性値分布情報を得ることができる。信号処理部113は第1と第2の電気信号を記憶し、それを適切な演算手段により、光学特性値分布のデータに変換できるものであればどのようなものを用いても良い。具体的にはオシロスコープとオシロスコープに記憶されたデータを解析できるコンピュータなどから構成されても良い。
【0023】
また、光音響装置117と被検体100との間には、図示してはいないが音波の反射を抑えるためのジェルや水などの音響インピーダンスマッチング剤を使用することが望ましい。
【0024】
次に本実施形態を具体的に説明する。
図1において、第1の光源103としては数ナノから数百ナノ秒オーダーのパルス光を
発生可能なパルス光源を使用することができる。光源103としてはレーザが好ましいが、レーザの代わりに発光ダイオードなどを用いることも可能である。
【0025】
レーザとしては、固体レーザ、ガスレーザ、色素レーザ、半導体レーザなど様々なレーザを使用することができる。発振する波長の変換可能な色素やOPO(Optical Parametric Oscillators)を用いれば、光学特性値分布の波長による違いを測定することも可能になる。
使用する光源の波長に関しては、生体内において吸収が少ない700nm〜1100nmの領域が好ましい。ただし、比較的生体表面の付近の生体組織の光学特性値分布を求める場合は、上記の波長領域よりも範囲の広い、例えば400nmから1600nmの波長領域を使用することも可能である。
【0026】
図1の104は光学部品であり、主に光を反射するミラーや光を集光したり拡大したり、形状を変化させるレンズなどを意味している。所望の形状を形成し被検体100に対して照射できるものであれば、どのようなものを用いても構わない。
【0027】
図1において、第2の光108としては可視光領域の波長を持った光を使用することができる。光源109としては、キセノンランプや水銀ランプなどの白色ランプおよび発光ダイオードなどを用いることも可能である。図1の111は光学部品であり、第2の光108を被検体100に照射した際に得られる被検体100の光学的な性質を持った試料光110を光路から光検出器112に取り出すためのミラーおよびフィルタなどを意味している。
【0028】
被検体100の光吸収体105としては、被検体内で吸収係数が高いものを示す。例えば哺乳類等の生体が観察対象であれば、上記の波長域で特に光吸収の高い生体組織構成成分としてグルコース、コラーゲン、酸化・還元ヘモグロビンなどを一例として挙げることができる。ヘモグロビンが集積した状態で存在する血管、あるいは血管新生が活発に起こっていることが知られている悪性腫瘍なども観察対象の一例として挙げることができる。
【0029】
また光吸収体としては、生体組織構成成分以外にも、生体内へ投与した光音響用の造影剤も含まれる。生体へ投与して光音響シグナルが得られることが知られている造影剤の材料としては、インドシアニングリーン(ICG)、金属酸化物ナノ粒子などを一例として挙げることができる。
【0030】
図1の音響波検出器107は第1の光102のエネルギーの一部を吸収した光吸収体105から発生した光音響信号106を検知し、第1の電気信号に変換するものである。本
実施形態の信号検出器は、光放射点から生体に照射された光が生体組織と作用し、変調された信号を取得できるものであれば該信号より生体内における光学物性値分布を求めることが可能であるので、いずれの種類のものを用いることも可能である。
【0031】
この信号検出器として、フォトマルチプライヤー、フォトダイオードなどの光検出器、音波信号を検出する音響波検出器、その他電磁波や熱などを検出する各種検出器を用いることができる。特に、音響波検出器は、従来広く用いられている超音波診断装置の音響波検出器と同種のものが利用できる点、得られた信号から画像情報への変換が容易である点から、超音波トランスデューサが好適に用いられる。超音波トランスデューサはアレイ状のものを用いることも、単一素子のものを用いることも可能である。
【0032】
(光音響像の取得)
本実施例における光音響波検出の装置構成の概略図を図2(a)に示す。図には説明のために最低限必要な装置の構成のみを示している。
本実施例では、被検体からの光音響信号を取得するために次のような装置構成を一例として示している。1個の超音波トランスデューサ218を固定し、駆動装置を含む走査ステージ219上に被検体200を置く。続いて走査ステージ219の一部であり、駆動手
段として働くステッピングモータ223で2次元に走査することで、被検体200の観察対象領域の全体の光音響像を取得するという装置構成である。
【0033】
光音響信号の取得は次のようにして行う。第1の光202を、光吸収体205を含む被検体200に照射することで光音響波206を発生させる。発生した光音響波206を、光音響ミラー220を用いて光路から取り出し、超音波トランスデューサ218へと導いて電気信号へと変換することで信号を取得する。なお、光音響ミラーとは、音の反射に加えて光を屈折透過させる機能を備えるミラーのことを指す。
【0034】
光音響信号を取得するための他の装置構成例として、アレイ状のトランスデューサを用いることで多点の同時測定をする方法や、本実施例とは逆に被検体側を固定して音響波検出素子側を走査する装置構成を選択しても良い。本実施例で用いる光音響ミラーとは音の反射に加えて光を屈折透過させる点において一般の音響ミラーとは異なる性質を持つ。
【0035】
なお、光音響ミラーは超音波エコーで用いられている従来型の一般的な金属製の音響ミラーは好ましくない。光音響ミラーは、可視光領域から光音響用のレーザに用いられる近赤外光領域(700nm〜1100nm)で光学的に透明であって音響インピーダンスに比べて大きな値を持つものが好適に用いられる。
【0036】
なお、光音響ミラーと一般の音響ミラーとの違いは、光音響ミラーが音の反射に加えて光を屈折透過させる機能を備えているという点にある。要するに超音波エコーで用いられている一般的な金属製の音響ミラーは用いることができない。
光音響ミラーを構成する具体的な材料としては、可視光から近赤外光付近まで光学的に透明で、かつインピーダンスマッチング材である水と比べて音響インピーダンスが大きい材料としてガラス類やアクリルなどが一例として挙げられる。
【0037】
一方、本実施例で示す装置構成とは別に反射音響波を音響波検出器で検出する装置構成、すなわち光音響ミラーを用いないような装置構成も必要に応じて適宜選択することができる。例えば、コンフォーカルレンズや光ファイバー等の光導波路を用いて音響波検出器の周囲から被検体に光を照射して直上乃至は斜め方向から反射音響を取得する装置構成を一例として挙げることができる。
【0038】
さらに、被検体が動物個体等の不透明な場合には、上記のように反射音響波を検出する構成が考えられるが、被検体が細胞等の透明な場合には、光音響用のレーザの先に音響波検出器を配置して、被検体からの透過音響波を取得する構成を選択してもよい。
【0039】
(可視光像の取得)
図1において光検出器112は、被検体100に照射された第2の光108の試料光110を検知し、第2の電気信号に変換するものである。光検出器112はCCDカメラなど光を検知できるものの中から適宜選択することができる。
【0040】
本実施例での試料光の取り込みおよび可視光像の取得の概略図を図2(b)に示す。図には説明のために最低限必要な装置の構成のみを示している。第2の光208で照射された被検体200からの試料光210を光路からCCDカメラ221に取り出すためにダイクロイックフィルタ222を設置している。
【0041】
本実施例では可視光像の取得は光音響像の場合と同様に走査ステージ219を駆動させる方法を一例として示す。具体的には、走査ステージ上の任意の各ステップにおいてCCDカメラで画像を取り込み、各ポイントで取り込んだ画像の重複領域を重ね合わせることで1枚の画像を取得する方法である。
【0042】
本実施例では試料光として照射した光の反射光をCCDカメラに取り込む構成を一例として挙げているが、被検体が細胞等の光透過性である場合には試料光として透過光を光検出器に取り込むような装置構成を選択してもよい。また、可視光像は前記のようにステッピングモータを駆動する方法で取得しても構わないし、観察対象領域を一括して取り込むような取得方法であっても構わない。
【0043】
本発明の実施の形態において、図4の概念図に示すように、得られる光音響イメージング画像403は光音響像401と可視光像402との位置合わせがなされ、対応付けが行われたものである。本発明では両者の画像の位置的な対応関係の把握を少なくとも可視光で視認可能で、より好ましくは光音響及び可視光の両方で認識可能な目印404を用いることで実現する。目印は、本発明の光吸収体に相当する。ただし、位置合わせの手法は重ね合わせに限らず、例えば並べて表示しても良い。
【0044】
目印に用いることができるものとしては、少なくとも可視光で視認できるものであれば用いることが可能である。さらに、より好ましくは光音響及び可視光の両方で認識可能なものを好適に用いることができる。具体的には近赤外波長領域には吸収を持たない可視蛍光物質や光吸収体であるカーボンブラックや金属酸化物などを一例として挙げることができる。また、被検体が生体の場合には、被検体の表面にあるほくろを目印として使用することも可能である。
【0045】
本実施形態における目印を用いた光音響像と可視光像アライメントとして以下の方法を挙げることができる。本発明の装置では両者の画像の取得に際して共通のステッピングモータを用いる構成となっているため、光音響信号測定時の走査範囲の可視光像を経時的にPC等の記憶装置に取り込むことで被検体の測定範囲での両者のイメージング画像を取得することが可能である。しかしながら両者の画像を構成するために取得する信号が光音響波(光音響像)及び可視光(可視光像)と異なるため、位置的な対応関係を決めるために相対位置の把握が不可欠である。
【0046】
両者の画像の相対位置を決定するための手法としては前述の通り目印を用いる手法が挙げられ、その中で少なくとも次の2つの手法を挙げることができる。
(1)光音響イメージング前に両者の画像の相対位置を確定する方法
(2)測定範囲内に目印を置き、両者の画像で比較から相対位置を決定する方法
【0047】
(1)の方法に関しては、次のような方法を一例として挙げることができる。ステッピングモータで測定位置を適当に設定し、CCDカメラの視野内で、グリッド状のアライメントチャートをステッピンモータ上のステージに置く。アライメントチャートをカーボンブラックで作製することにより、光音響像および可視光像の取得が可能となる。取得後に両者の画像を比較することで、可視光像上における光音響信号の相対位置を決定することができる。これにより両者の画像の位置的な対応付けが可能になる。相対位置の決定をするための目印の形状の一例としてグリッドパターンを挙げたが、目的を達成する形状であればどんな形状でも好適に用いることができる。
【0048】
(2)の方法に関しては、次のような方法を一例として挙げることができる。被検体をステッピングモータ上のステージに置き、被検体もしくは観察対象の関心領域から離れたところに光吸収体を目印として置く。目印を含む観察対象領域をステッピングモータで走査して光音響像と可視光像の両方の画像を取得する。両方の画像には目印が信号として取得される。測定後に目印を基準に両方の画像の相対位置を決定することができる。これにより両者の画像の位置的な対応付けが可能になる。光音響像と可視光像との位置的な対応付けのための目印は両者の位置的な対応関係を事前にわかっているのであれば測定の度に
行う必要は無い。
【0049】
本実施例では光音響像および可視光像の相対位置の把握は次のような方法で行った。被検体の観察部位の上に予め光吸収体を置き、光音響測定と可視光像を取得することで、光音響信号と可視光像との相対位置を決定する。その後に光吸収体を外して再度観察部位の光音響像と可視光像を取得することによって、両者の位置的な対応付けがなされた光音響イメージング画像を取得する。これにより、光音響像中の光吸収体の位置と、可視光像中の光吸収体の位置が対応付けられる。さらに本実施例においては両者の画像を重ね合わせることで被検体の観察部位における光音響イメージング画像取得を行った。
【0050】
本実施例はあくまでも一例であり、目印を用いて両者の画像位置関係の対応付けを行うものであればどのような方法も好適に用いることが出来る。
【0051】
<実施例1>
本発明の実施例を説明する。装置の概略図を図5に示す。図には説明のために最低限必要な装置の構成を特に強調して示している。光路も説明のために位置をずらして図示している。
【0052】
まず、光音響用の第1の光502を被検体500に照射する光源503から出た光は、光学装置504、光音響ミラー520、水槽524を通って、被検体500に照射される。その結果、内部の光吸収体505から光音響波506が発生する。なお、水槽は、水によるインピーダンスマッチングや被検体の固定等のために配置される。続いて、光音響波506は光音響ミラー520で90度反射されてトランスデューサ518に入る。
【0053】
一方、被検体照明用の第2の光508は光源509から被検体500全体を照射する。照明光を受けた被検体500からの試料光510はダイクロイックフィルタ522で光路外に取り出されてCCDカメラ521に入る。
被検体はステッピングモータ523を備えた走査ステージ519に設置し、ステッピングモータ走査により光音響像および可視光像の取得を行った。被検体の測定を行う前に、観察対象部である腫瘍部上に目印として光吸収体を置き、その状態で光音響像および可視光像を取得した。この目印を基準に両者の画像の相対位置を決定した。
【0054】
第1の光源としては、QスイッチYAGレーザを励起源としたTiSレーザを用いて800nmのナノ秒パルス光を用いて観察対象に照射した。光音響検出器としては中心周波数2.5MHzのフォーカスタイプの超音波トランスデューサを用いた。
被検体としてはマウスを用いて測定をおこなった。マウスはステッピングモータ上のステージに置き、観察対象範囲に合わせてステッピングモータを2次元走査することで光音響信号の取得を行った。被検体であるマウスは走査ステージと水槽とで挟むように設置し、マウスと超音波トランスデューサとの音響インピーダンスマッチングには水および超音波ゲルを用いた。
【0055】
第2の光源にはLEDライトを用い、その反射光を光/音響分離ミラー外に置いた可視
域のダイクロイックフィルタ(シグマ光機)により光音響用レーザと分離してからCCDカメラへ取り込んだ。取り込んだ可視光のデータは重複している領域を重ね合わせることで1枚の画像とした。
【0056】
上記の光音響イメージング装置でマウスの光音響イメージングを取得した画像結果を図3にそれぞれ示す。図3(a)が光音響像、図3(b)が可視光像、図3(c)が両者の画像を重ね合わせた結果を示す。これによりマウスの位置に対応して光音響信号が検出されていることが示された。
【符号の説明】
【0057】
100、200、500:被検体,103、503:第1の光源,105、205、5
05:光吸収体,107:音響波検出器,109、509:第2の光源,112:光検出器,113:信号処理装置,218、518:超音波トランスデューサ,221、521:CCDカメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体と、前記被検体との位置関係が決定された位置にある光吸収体とに光を照射することによって発生する音響波を検出する音響波検出器と、
前記被検体および前記光吸収体に光を照射することによって発生する試料光を検出する光検出器と、
前記音響波検出器が検出した音響波から第1のデータを生成するとともに、前記光検出器が検出した試料光から第2のデータを生成する信号処理部と、
前記第1のデータから生成した光音響像および第2のデータから生成した可視光像を、前記光音響像中の前記光吸収体の像と、前記可視光像中の前記光吸収体の像とに基づいて、位置合わせして表示させる表示制御部と、
を有する光音響イメージング装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記光音響像および可視光像を重ね合わせて表示させる
ことを特徴とする請求項1に記載の光音響イメージング装置。
【請求項3】
前記光吸収体は、被検体の表面に配置されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の光音響イメージング装置。
【請求項4】
前記被検体を置くステージをさらに有し、
前記光吸収体は、前記ステージに配置されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の光音響イメージング装置。
【請求項5】
前記ステージを駆動する駆動手段をさらに有し、
前記駆動手段は、前記被検体の観察対象領域の全体から、前記第1のデータおよび前記第2のデータが取得されるように、前記ステージを駆動する
ことを特徴とする請求項4に記載の光音響イメージング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−135368(P2012−135368A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288400(P2010−288400)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】