説明

光音響整合材及び人体組織模擬材料

【課題】 光伝播特性と音響伝播特性が人体組織に近く、劣化しにくい媒質を提供することにより、被検部表面における光や音響波の反射を防ぎ、また、光音響波診断装置の精度管理を実現する。
【解決手段】 ポリオールと、前記ポリオールに分散可能な無機酸化物と顔料とを含み、前記ポリオールに対する前記無機酸化物の分散量が0.10〜0.25重量パーセントであり、前記ポリオールに対する前記顔料の分散量が0.0001〜0.0005重量パーセントである光音響整合材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光音響整合材及び人体組織模擬材料に関し、特に光学特性と音響特性とが人体組織に近似する光音響整合材及び人体組織模擬材料に関する。
【背景技術】
【0002】
光音響波診断装置は、被検部となる生体に光照射を行った場合に、測定対象の熱膨張に起因する音響波(典型的には超音波)の検出信号に基づいて画像を表示する装置である。この診断装置により被検部内の特定物質、例えば血液中に含まれるグルコースやヘモグロビンなどの検査が行われる。
光音響波診断装置においては、音響波を受信するための探触子が用いられる。探触子と生体との間に空気層が存在する場合や、また探触子と生体との音響インピーダンスが大きく異なる場合において、音響波は両者の界面において反射してしまう。このため、人体組織の音響特性に近い音響整合材を探触子と生体との間に介在させる必要がある。特許文献1においては、エラストマーまたは樹脂からなる母材と、母材よりも大きい音響インピーダンスを有する複合粉末との構成により、人体組織の音響特性に近似した音響波探触子用の音響整合材とその製造方法とが開示されている。
【0003】
また、医用診断装置においては、精度管理や技術者の訓練のために人体組織模擬材料(ファントム)と呼ばれる生体組織模型が用いられる。ファントムの材料としては、人体組織の特性に近似した材料、及び雑菌の増殖などが発生せず長期保存が可能な材料が求められる。
特許文献2においては、ウレタン樹脂を母材とし、母材に有機粉体フィラーを分散することにより、人体組織の音響特性に近似した腐食性の無い音響波ファントムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−71393号公報
【特許文献2】特開2003−310610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の光音響整合材や、特許文献2に記載のファントムは、光学特性が人体組織と異なるため、光音響波診断装置に用いた場合、被検体である人体との界面において光の散乱や吸収に起因する音響波が発生する。その結果、界面近傍におけるイメージングを明瞭に行うことが困難となる。
特許文献1において開示された複合粉末には光散乱性を有する材料も含まれるが、その体積分率は50〜70重量パーセントであるため、人体組織の光学特性に対して大幅に光散乱性を有することとなり、光学特性を人体に近似することは困難である。また、特許文献2において開示された有機粉体フィラーを用いたファントムの場合も、音響特性を人体組織に近似することは可能である。しかしながら、開示された有機粉体フィラーの分散量においては光吸収性及び光散乱性をほとんど有さないため、光学特性を人体組織に近似することは困難である。
よって、本発明は、音響特性だけではなく、光学特性も人体に近似した整合材やファントムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明者は鋭意に研究した結果、音響特性のみならず光学特性も人体組織に近似する光音響整合媒質を見出した。本発明の光音響整合媒質は、ポリオールと、前記ポリオールに分散可能な無機酸化物と顔料とを含み、前記ポリオールに対する前記無機酸化物の分散量が0.10〜0.25重量パーセントであり、前記ポリオールに対する顔料の分散量が0.0001〜0.0005重量パーセントであることを特徴とする。
また、本発明の光音響整合媒質は、光音響波診断装置における光音響整合材やファントムに用いられうることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の光音響整合材及びファントムは人体組織に近似した光伝播特性と音響伝播特性とを有するため、光音響診断装置に用いた場合に、被検部の界面での音響波の反射や、照射光による音響波の発生が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明において、光伝播特性と音響伝播特性とが人体組織に近似した光音響整合材を被検部に設置した場合における光音響波診断装置の概略図。
【図2】本発明において、光照射部と音響波探触子とを一体化した探触子ユニットの概略図。
【図3】(a)本発明において、光音響整合材から成る容器を光音響波診断装置に適用した場合における概略図。(b)本発明において、光音響整合材から成る容器に被検部を設置した場合における概略図。
【図4】本発明において、光音響整合材を光音響波診断装置用ファントムとして用いた場合の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図面等を用いて本発明の実施形態について説明する。なお、個々に開示する実施形態は、本発明の光音響整合材及び人体組織模擬材料(ファントム)の例であり、本発明はこれに限定されるものではない。
また、本発明において重要な点は、腐敗し難いポリオールを母材とし、人体に近い音響特性及び光学特性を満たす整合材を見出した点にある。
【0010】
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態である光音響整合材は、ポリオールと、前記ポリオールに分散可能な無機酸化物と顔料とを含み、前記ポリオールに対する前記無機酸化物の分散量が0.1重量パーセント以上0.25重量パーセント以下であることを特徴とする。また、前記ポリオールに対する前記顔料の分散量が0.0001重量パーセント以上0.0005重量パーセント以下であることを特徴とする。上記分散量にすることにより、人体に近似した音響特性及び光学特性を有する光音響整合材となる。
本発明に使用されるポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等を挙げることができるが、ポリエーテルポリオールを用いることが人体の音響特性に関する相関性の点においてより好ましい。ポリエーテルポリオールの構造は、人体の音響伝播特性に関する相関性と樹脂の安定性から、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのモル比率が30:70〜70:30の範囲内にあり、数平均分子量が6000〜8000程度の共重合体であることが好ましい。
【0011】
本発明の光音響整合材で用いるポリオールは通常では液体状態(ゲル状も含む)である。そこに必要に応じて硬化剤を含ませて硬化させて固体状にすることができる。その際に用いる硬化剤は特に限定しないが、本発明においては、イソシアネート化合物を用いることが好ましい。硬化剤として本発明に使用されるイソシアネート化合物は、人体組織の音響伝播特性に調製可能なものが好ましい。こうしたイソシアネート化合物の具体例として、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)などが挙げられる。
【0012】
また、光散乱性を有するフィラーとして無機酸化物である酸化チタンをポリオールに分散した場合、樹脂の音響減衰は大きくなるため、音響減衰の少ない樹脂が好ましい。HDIを用いて調製した樹脂の音響減衰は−0.12dB/cm/MHzと非常に小さいため、特に好ましい。以下本実施形態においては、HDIを用いた場合について説明するが、本発明においては、他の材料を用いることも可能である。
ポリオールとイソシアネート化合物とを含む本発明の光音響整合材の数平均分子量が大きい場合には、硬度が低くなりやすい。また、数平均分子量が小さい場合には、硬度が高くなりやすい。本発明における光音響整合材の数平均分子量は、人体の音響伝播特性に関する相関性から、1,000〜10,000程度が好ましい。
【0013】
上述したように光散乱性を有するフィラーとしては酸化チタン等の無機酸化物が挙げられる。しかしながら、表面修飾の無い酸化チタンはポリオール中で沈殿となり、分散しにくい。このため、酸化チタンをポリオールに均一に分散するため、酸化チタンの表面に皮膜を形成することが好ましい。以下本実施形態においては、酸化アルミニウム及びヘキサメチルジシラザンによる表面処理を施した酸化チタンを用いた場合について説明するが、本発明においては、他の材料を用いることも可能である。また、皮膜だけでなく表面をメチル化、エチル化など各種表面修飾手法によって分散性を高めてもよい。
本発明において、表面を酸化アルミニウムにより皮膜処理を施した酸化チタンの平均粒子径は0.2〜0.3μmが光拡散の観点で好ましい。以下本実施形態においては、平均粒子径が0.21μmの表面処理酸化チタンを用いた場合について説明するが、本発明においては、他の粒子径を用いることも可能である。
【0014】
本発明に使用される光吸収性を有するフィラーとしては顔料を用いることが望ましい。顔料としてはカーボンブラックのような黒色顔料、銅フタロシアニン等のシアン顔料、モノアゾレーキ系顔料、モノアゾ系顔料等のマゼンダ顔料、およびジアリライドイエロー等のイエロー顔料が挙げられる。ただし、顔料単体ではポリオール中で沈殿となり分散しないため、ポリオールと共有結合した顔料の分散液を適用することが好ましい。本発明の実施形態においては、ポリエーテルポリオールと共有結合したカーボンブラックの分散液を用いたが、他のポリオールおよび顔料を用いることも可能である。
【0015】
以下に、本発明の実施形態に係る光伝播特性と音響伝播特性を人体組織に近似した媒質の調製方法を説明する。ポリオールを入れたビーカーにフィラーを分散し、攪拌した後に真空脱泡を行う。樹脂硬化を行う場合においては、真空脱泡後、硬化剤となるイソシアネート化合物を添加し、所定の型に入れた後、90℃にて1時間加熱する。ポリオールとイソシアネート化合物から成る樹脂に対して、フィラーを分散した場合における音速と音響減衰の測定結果を表1に示す。ポリオールはエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのモル比率が50:50の共重合体(数平均分子量7000)を用いた。イソシアネート化合物はHDIを用いた。HDIの添加量はポリオールに対して3.4重量パーセントとした。フィラーは酸化アルミニウムおよびヘキサメチルジシラザンによる表面処理を施した酸化チタン(平均粒子径 0.21μm)を用いた。表において重量比は酸化チタンのポリオールに対する重量比を重量パーセント(wtパーセント)の単位で示す。
【0016】
ポリオールとイソシアネート化合物とから成る樹脂に対して、光散乱性を有するフィラーとして、酸化アルミニウムおよびヘキサメチルジシラザンによる表面処理を施した酸化チタンを分散した場合における音速と音響減衰の測定結果を表1に示す。ポリオールはエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのモル比率が50:50の共重合体(数平均分子量7000)を用いた。イソシアネート化合物はHDIを用いた。HDIの添加量はポリオールに対して3.4重量パーセントとした。酸化アルミニウムおよびヘキサメチルジシラザンによる表面処理を施した酸化チタンの平均粒子径は0.21に調整した。表1において重量比は酸化チタンのポリオールに対する重量比を重量パーセント(wtパーセント)の単位で示す。
【0017】
【表1】

【0018】
生体の脂肪組織における音速としては1350〜1450m/s、音響減衰としては−0.20〜−1.3dB/cm/MHzであるため、光音響整合材としてもこの音速の範囲、且つ、音響減衰の範囲であることが求められる。光音響整合材の密度と音速との積で定義される音響インピーダンスは1.5MRaylである(1MRayl=1×106kg・m−2・s−1)。本実施例において調製した樹脂の密度は酸化チタンの分散量に拘わらず1.13であるため、酸化チタンの分散量の調整により生体の音響特性に対応可能となる。よって、ポリオールに対する前記無機酸化物の分散量を0.1〜1.0重量パーセントにすることにより、上記生体の音響特性に近似した音響特性を有する整合材を得ることが可能となる。尚、酸化チタンの分散量が1.0wt%を超える場合においては、硬化不良を生じることにより樹脂とならなかった。
【0019】
次に、ポリオールに対して、樹脂硬化は行わず(HDIを添加しない)、液状状態において酸化チタンを分散した場合における音速と音響減衰との測定結果を表2に示す。樹脂硬化した場合と同様に、ポリオールはエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのモル比率が50:50の共重合体(数平均分子量7000)を用いた。フィラーは酸化アルミニウムおよびヘキサメチルジシラザンによる表面処理を施した酸化チタン(粒子径は0.21)を用いた。表において重量比は酸化チタンのポリオールに対する重量比を重量パーセント(wt%)の単位で示す。
【0020】
【表2】

【0021】
表1及び表2の結果から、樹脂硬化をしない場合において、音速が樹脂硬化した場合に比較して速くなったが、人体組織の音響特性と大きく異なることは無かった。以上の結果より、ポリオールに対する酸化チタンの粒子径と分散量の調整により生体の音響特性に対応可能となる。つまり、樹脂を硬化しない場合においても、ポリオールに対する前記無機酸化物の分散量を0.1〜1.0重量パーセントにすることにより、上記生体(脂肪組織)の音響特性に近似した音響特性を有する整合材を得ることが可能となる。
液状ポリオールの粘度は、酸化チタン分散の有無に関わらず700mPa・s/25℃程度であるため、室温においては流動性を有するゲル状にて存在する。また、酸化チタン及びポリオールは人体に対して無害であるため、酸化チタンを分散したポリオールを皮膚に塗布する光音響波整合材として使用することが可能である。
【0022】
次に、光の等価散乱係数μs’に関して、各組成における酸化チタン分散ポリオール樹脂(HDIを添加)の測定結果を表3に、酸化チタン分散液状ポリオール(HDIを添加しない)の測定結果を表4に示す。表3の測定波長は血液中の酸素飽和度を示す指標となる波長である756nmである。表4の測定波長は、1064nmである。ポリオールはエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのモル比率が50:50の共重合体(数平均分子量7000)を用いた。樹脂硬化におけるイソシアネート化合物はHDIを用いた。HDIの添加量はポリオールに対して3.4重量パーセントとした。フィラーは酸化アルミニウムおよびヘキサメチルジシラザンによる表面処理を施した酸化チタン(平均粒子径 0.21μm)を用いた。表において重量比はポリオールに対する重量比を示す。
【0023】
【表3】

【0024】
【表4】

【0025】
生体における等価散乱係数は概ね波長の増加とともに単調減少する。この生体における等価散乱係数に関しては、波長756nmにおいて等価散乱係数μs’=0.45〜1.15mm−1であり、波長1064nmにおいて等価散乱係数μs’=0.4〜0.95mm−1であることが知られている。表3及び表4より、ポリオールに酸化チタンを分散しない場合には、等価散乱係数が生体の値よりも小さいため、光学特性を再現することができない。
【0026】
そのため、ポリオールに対する酸化チタン分散量の下限値に関しては、少なくとも等価散乱係数を生体の下限値以上を満たす分散量とする必要がある。つまり、表3及び表4より、この条件を満たすためには、0.1重量パーセント以上の酸化チタンが必要であると読み取ることができる。
【0027】
一方、ポリオールに対する酸化チタンの分散量の上限値は、酸化チタンの分散量が0.50 重量パーセントのときに生体の等価散乱係数を再現していない。よって、本発明において、ポリオールに対する無機酸化物の分散量は、0.1重量パーセント以上0.25重量パーセント以下とする。このような分散量とすることにより、上記生体の光学特性に近似した特性を有する整合材を得ることが可能となる。
また、表3及び表4の結果より、樹脂硬化の有無が光学特性におよぼす影響はほとんど無いため、樹脂硬化しない場合においても生体の光学特性に対応可能となる。
【0028】
次に、光の吸収係数μaに関して、各組成におけるフィラー分散ポリオールの測定結果を表5および表6に示す。表5は756nm、表6は波長1064nmの吸収係数の測定結果である。ポリオールはエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのモル比率が50:50の共重合体(数平均分子量7000)を用いた。樹脂硬化におけるイソシアネート化合物はHDIを用いた。フィラーは酸化アルミニウムによる表面処理を施した酸化チタンと、ポリオール結合黒色顔料(カーボンブラック)分散液を用いた。表において重量比はポリオールに対する重量比を示す。表面処理を施した酸化チタンの分散量はポリオールに対して0.2重量パーセントとした。HDIの添加量はポリオールに対して3.4重量パーセントとした。
【0029】
【表5】

【0030】
【表6】

【0031】
生体(脂肪組織)における光の吸収係数に関しては、波長756nmにおいて吸収係数μa=0.002〜0.009mm−1、波長1064nmにおいて吸収係数μa=0.004〜0.015mm−1である。表5および表6より、ポリオールに黒色顔料を分散しない場合には、吸収係数が生体の値よりも小さいため、生体の光学特性を再現することができない。そのため、ポリオールに対する黒色顔料分散量の最適範囲を以下に見積もる。
ポリオールに対する黒色顔料分散量の下限値に関しては、少なくとも吸収係数を生体の下限値以上とする必要がある。表5および表6より、この条件を満たすためには、0.0001重量パーセント以上の黒色顔料が必要であると読み取ることができる。
【0032】
一方、上限値に関し、ポリオールに対するフィラー分散量が0.0010重量パーセントのときに生体の吸収係数を再現していないことから、本発明において、ポリオールに対する黒色顔料の分散量は、0.0001重量パーセント以上、0.0005重量パーセント以下であることが好ましい。表5および表6の結果より、樹脂硬化の有無が光学特性におよぼす影響はほとんど無いため、樹脂硬化しない場合においても生体の光学特性に対応可能となる。尚、表5および表6に示した範囲内における黒色顔料の分散量では等価散乱係数および音響特性に影響を及ぼすことは無かった。
【0033】
以上の結果より、酸化チタンと顔料の分散量の調整により生体の光学特性を模擬することが可能となる。よって本発明の光音響整合材は、表1−6により、ポリオールと、前記ポリオールに分散可能な無機酸化物と顔料とを含み、前記ポリオールに対する前記無機酸化物の分散量が0.1重量パーセント以上0.25重量パーセント以下であることを特徴とする。また、前記ポリオールに対する顔料の分散量が0.0001重量パーセント以上0.0005重量パーセント以下であることを特徴とする。
【0034】
また、本発明の光音響整合材は、音速が1350m/s以上1450m/s以下、音響減衰が0.20dB/cm/MHz以上1.3dB/cm/MHz以下であり、波長が756nm以上1064nm以下の範囲の光に対して等価散乱係数が0.4mm−1以上1.15mm−1以下、吸収係数が0.002mm−1以上0.015mm−1以下に調整すると人体組織に近似した音響特性及び光学特性が得られるため好ましい。
【0035】
以上のように、酸化チタンの分散量の調整により、人体組織の光伝播特性と音響伝播特性に近似した光音響整合材を調整可能である。また、樹脂硬化の有無にかかわらず、酸化チタンを分散したポリオールの吸水性は低いため、腐食性の無い光音響整合材を調整可能である。液状ポリオールの粘度は、フィラー分散の有無に関わらず700mPa・s/25℃程度であるため、室温においては流動性を有するゲル状にて存在する。また、本発明におけるポリオールおよびフィラーは人体に対して無害であるため、フィラーを分散した液状ポリオールを皮膚に塗布する光音響波整合材として使用することが可能である。
【0036】
被検部との整合材として液体袋などの容器を用いる場合においては、袋または容器を作成し、内部にフィラー分散液状ポリオールを注入する。このとき、袋または容器の厚さは0.05mm〜10mm程度が望ましい。袋または容器の素材はフィラー分散樹脂硬化ポリオールを用いることが望ましいが、ポリメチルペンテンのように、人体組織の音響インピーダンスに近く、透明性を有する材料であれば、薄膜として適用可能である。また、衛生面にも配慮するため、少なくとも被検部に接触する部分においては、被検者毎に交換可能とすることが望ましい。
【0037】
(音響特性の評価方法)
ここで、本発明における音響特性の評価方法について記載する。音響特性評価に用いた探触子としての超音波トランスデューサー(送信部)はオリンパスNDT製のV303(中心周波数1MHz)を用いた。ハイドロフォン(受信部)はPrecision Acoustics製のニードル型ハイドロフォンPAL−1384を用いた。治具によりトランスデューサーとハイドロフォンとを音軸の中心が一致するように水槽内に固定した。トランスデューサーとハイドロフォンとの距離は40mmとした。
樹脂硬化ポリオールの測定時は、サイズ100mm×100mm、厚さ5mmまたは10mm厚に調整した樹脂硬化ポリオール(例えば、ウレタン樹脂からなるゲルシート)を、治具を用いて上記実験系のトランスデューサーとハイドロフォンとの間にゲルシートに対する光音響波の入射角が0°となるように固定した。トランスデューサーから1サイクルのサイン波(送信電圧50V)をファンクションジェネレーター(Tectronix社製AFG3022)を用いて送信し、各シート設置時におけるハイドロフォンの受信電圧値をオシロスコープ(Tectronix社製TDS3012C)を用いて求めた。音速はゲルシートを設置した場合と設置しない場合における受信波到達時間の差を、オシロスコープを用いて求めた。音響減衰は以下に示す式から求めた。
【0038】
【数1】

尚、樹脂効果しない場合の液状ポリオールに関する音響特性は、サイズ100mm×100mm、内幅5mmまたは10mmのポリカーボネート製セル(セル厚1.5mm)内にポリオールを注入し、樹脂硬化ポリオールと同様の手法にて音響特性を算出した。
【0039】
(光学特性の評価方法)
次に、本発明における光学特性の評価方法について記載する。50mm×50mm、光路長5mmの石英セル内に液状ポリオールを注入、または注入後セル内で90℃にて1時間加熱することによる樹脂硬化を行い、光学特性測定用セルを調整した。このセルを日本分光製の分光光度計V−670を用いて透過率と反射率を求めた。また、島津製作所製の屈折率計KPR−2000を用いて屈折率を求めた。これらの結果をモンテカルロシミュレーションにより、測定値と計算値との差が最小となるように変数設定の最適化を行い、各波長における等価散乱係数と吸収係数を算出した。
【0040】
(第二実施形態)
次に、本発明の光音響整合材の使用例について記載する。当該光音響整合材は、液体状(室温(25℃前後)ではゲル状)でも、固体でもよく、特に限定されない。つまり、イソシアネート化合物を含まない液体状の前記光音響整合材またはイソシアネート化合物を含む固体状の前記光音響整合材が得られる。また、当該光音響整合材は主に、光音響波診断装置の探触子、もしくは探触子ユニットと被検部との間の隙間を無くすために用いられる。その具体例は、実施例1(図1)及び実施例2(図2)にて説明する。
【0041】
特異的な形状を有する被検部を隙間無く充填するためには、液体状の光音響整合材が好ましい。その際にその液体を格納する容器も本発明の固体状の光音響整合材からなることが好ましい。つまり、イソシアネート化合物を含まない液体状の前記光音響整合材が、イソシアネート化合物を含む固体状の前記光音響整合材に格納されていることが好ましい。ここでいう「格納」は液体状の前記光音響整合材を固体状の前記光音響整合材で密封して格納する場合と、密封しないで格納する場合のいずれであってもよい。
【0042】
例えば、被検部との整合材として液体袋などの容器を用いる場合においては、薄膜により袋または容器を作成し、内部に液体状の酸化チタン分散ポリオールを注入する。このとき、薄膜の厚さは0.05mm〜5mm程度が好ましい。薄膜の素材は、人体組織の音響インピーダンスに近く、透明性を有する伸縮可能な材料であれば制限されないが、本発明においては、固体状の酸化チタン分散ポリオールを用いることが好ましい。その具体例は、実施例3(図3(a)及び(b))にて説明する。
なお、衛生面にも配慮するため、少なくとも被検部に接触する部分においては、薄膜を被検者毎に交換可能とすることが好ましい。
【0043】
(第三実施形態)
本発明の第三実施形態は、本発明の光音響整合材を少なくとも1つ含んでなる光音響波診断装置用の人体組織模擬材料である光音響波診断装置用ファントムである。光音響波診断装置用ファントムは、シスト材(血管等を模した検出対象)及び母材から構成される。本実施形態においては、当該シスト材及び母材を同じ材料とし、本発明の光音響整合材を用いることが好ましいが、シスト材と母材とは異なる材料を用いても良い。本実施形態では、シスト材として、本発明の光音響整合材に所定量の黒色顔料を分散したものを用い、その吸収係数μaを算出する。具体例は後述実施例4(図4)にて説明する。
【0044】
本発明の光音響整合材の製造方法の具体例として、ポリオールを入れたビーカーに酸化チタンを分散し、攪拌した後に真空脱泡を行う方法がある。また、ファントム製作において、模擬血管として用いられる検出対象であるシスト材を調製する場合は、更に黒色顔料を分散する。樹脂硬化を行う場合においては、真空脱泡後、硬化剤となるイソシアネート化合物を添加し、所定の型に入れた後、90℃にて1時間加熱する方法が例として挙げられる。
【実施例】
【0045】
以下に、本発明の特徴をさらに明らかにするために実施例に沿って本発明を説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、材料、組成条件、反応条件等、同様な機能、効果を有する光音響整合材が得られる範囲で自由に変えることが出来る。
【0046】
(実施例1)
本発明における光音響整合材を、光音響波診断装置に用いた場合の概略図を図1に示す。図1に示す光音響波診断装置は、少なくとも被検部1、音響波受信機能を有する探触子6、光源5、ミラー4、光照射部3、電気信号処理回路7、信号処理装置8、及び表示装置9を含む。光音響整合材2は被検部1と探触子6とに当接して用いられる。
当該光音響波診断装置は、光照射部3により光音響整合材2を介して被検部に光照射を行う。被検部に光吸収性が高い部位(シスト材)10が存在する場合、光照射による熱膨張に起因する音響波11(光音響波)が発せられる。この音響波11を探触子6が検出し電気信号(アナログ信号)に変換する。そして、電気信号処理回路7により前記電気信号のA/D変換等を行い、信号処理装置8により画像再構成(画像データを生成)を行う。そして、表示装置9を用いて前記画像データを画面表示する。
【0047】
本実施例における光音響整合材2は、酸化アルミによる皮膜を施した粒子径0.21μmの酸化チタンをポリオールに対して0.2重量パーセント、ポリオール結合黒色顔料(カーボンブラック)分散液をポリオールに対して0.0005重量パーセント分散した。また、HDIをポリオールに対して3.4重量パーセント添加することにより調製した。ポリオールはエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのモル比率が50:50の共重合体(数平均分子量7000)を用いた。本実施例における光音響整合材の光音響特性は、音速1393.6m/s、音響減衰は0.57dB/cm/MHzであった。また、波長1064nmにおける等価散乱係数μs’=0.72mm−1、吸収係数μa=0.0082mm−1であり、波長1064nmにおける等価散乱係数μs’=0.61mm−1、吸収係数μa=0.0119mm−1であった。従って、本実施例により人体組織とほぼ等しい光音響特性を有する光音響整合材が得られた。
光音響整合材2が生体と探触子に当接することにより、空気層による音響減衰を防ぐことが可能となる。また、光音響整合材2が生体と近似した光伝播特性と音響伝播特性とを有することにより、界面における反射を防止することが可能となる。
さらに、生体表面に樹脂硬化を行わないフィラー分散液状ポリオールを塗布することにより、探触子の圧接時における皮膚の皺に起因する空気層の発生を防ぐことが可能となる。
【0048】
(実施例2)
本発明における光音響整合材を光音響波診断装置の光照射部及び探触子に接合した例について、図2を用いて説明する。図2において21は光音響波診断装置の光照射部と音響波探触子とを一体化した探触子ユニットである。探触子ユニット21は光ガイド管22、音響波探触子23、音響整合層24、信号伝送部25により構成され、さらに本発明による光音響整合材26を先端に設けたものである。光音響整合材26は、光音響整合性を有する厚さ0.05mmの薄膜からなる袋内に、フィラーとして、酸化アルミニウムによる皮膜を施した酸化チタンをポリオールに対して0.2重量パーセント、およびポリオール結合黒色顔料分散液をポリオールに対して0.0005重量パーセントを分散したポリオールを封入した液体袋を用いた。ポリオールはエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのモル比率が50:50の共重合体(数平均分子量7000)を用いた。また、探触子ユニット21は光音響整合材26を被検体27に密着して用いた。
【0049】
光ガイド管22を通過した光は、被検体27に向かって照射され、被検体内部に存在する血管など光吸収体によって光が吸収され、そこで光励起による音響波が発生する。その音響波は被検体27、光音響整合材26、音響波整合層24を伝搬、及び音響波探触子23によって電気信号に変換され、その信号は信号伝送部25を通って得ることができる。本発明による光音響整合材26が存在しない場合、光ガイド管22から直接被検体27に光が侵入する場合には被検体27の界面で音響波が発生する。この音響波は被検体内部、特に被検体界面に近い部位に存在する光吸収体から発生する音響波に重畳することで光吸収体からの音響波にとって望ましくないノイズとなる。このように、被検体界面で音響波が発生すると、被検体内部の界面近傍の観察が困難になる。
【0050】
本発明による光音響整合材26を探触子ユニット21の先端に設けることによって、上記の問題を回避することが可能となり、さらに音響波の伝播をも問題なく行うことが可能となる。光音響整合材26はフィラー分散ポリオールを樹脂硬化した伸縮可能な薄膜から成る液体袋内にフィラー分散ポリオールを封入したものを用いた。樹脂硬化したフィラー分散薄膜の光音響特性は、音速1393.6m/s、音響減衰は0.57dB/cm/MHz、波長756nmにおける等価散乱係数μs’=0.72mm−1、吸収係数μa=0.0082mm−1、波長1064nmにおける等価散乱係数μs’=0.61mm−1、吸収係数μa=0.0119mm−1であった。また、フィラー分散液状ポリオールの光音響特性は、音速1442.2m/s、音響減衰は0.51dB/cm/MHz、波長756nmにおける等価散乱係数μs’=0.70mm−1、吸収係数μa=0.0078mm−1、波長1064nmにおける等価散乱係数μs’=0.59mm−1、吸収係数μa=0.0107mm−1であった。光ガイド管22から照射された光は光音響整合材26に入射するが、その際、光音響整合材26と光ガイド管22の界面にて音響波が発生する。さらに光は被検体27に向かって進行するが、被検体27と光音響整合材26は光学的特性が近似しているため、両者の界面では音響波の発生は低減する。さらに、光音響整合材26と被検体27の音響的特性は近似しているため、被検体内の光吸収体から発生した音響波は反射されることなく光音響整合材26へ伝播し、音響整合層24を通して音響波探触子23で電気信号に変換され、信号伝送部25を通して信号を得ることが可能となる。
【0051】
光音響整合材26を探触子ユニット21の先端に設けることにより、界面で発生するノイズは100分の1程度に抑えられ、無視可能なレベルとなった。以上のように、光伝播特性と音響伝播特性を人体組織に近似した光音響整合材を探触子ユニットに接合させることにより、被検体内部の光吸収体で発生した音響波を明瞭に取得し、被検体内部のイメージングの質を向上することが可能となる。
尚、本実施例においては光音響整合材26として、光音響整合性を有する薄膜からなる袋内に酸化チタンとカーボンブラックを分散したフィラー分散ポリオールを封入した液体袋を用いたが、実施例1と同様の樹脂硬化したフィラー分散ポリオールを用いても同様の効果を得ることが出来る。さらに、液体袋に樹脂硬化を行わないフィラー分散ポリオールを塗布することにより、探触子の圧接時における液体袋の皺に起因する空気層の発生を防ぐことが可能となる。
【0052】
(実施例3)
本発明における光音響整合材から成る容器を光音響波診断装置に適用した例について、図3を用いて説明する。図3(a)に示す光音響波診断装置は、音響波受信機能を有し自動スキャン可能な探触子38に当接して用いられる被検体の保持板34、光源37とミラー36及び被検部に対して光照射を行う光照射部35、電気信号処理回路39、信号処理装置40、表示装置41である。本実施例では、液状光音響整合材31を内部に有し、壁面が樹脂硬化した光音響整合材から成る容器32を用いる。また、図3(b)は、図3(a)に示した光音響波診断装置において、被検部42を設置した場合における容器32の断面図を示したものである。
【0053】
音響波診断装置は、光照射部35により保持板34と容器32を介して被検部42に光照射を行う。被検部42に光吸収性が高い部位43が存在する場合、光照射による熱膨張に起因する音響波44が発せられる。この音響波を探触子38により検出し、電気信号処理回路39、信号処理装置40、及び表示装置41を用いて画面表示する。
本実施例における容器32は、酸化アルミによる皮膜を施した粒子径0.21μmの酸化チタンをポリオールに対して0.2重量パーセント分散、およびポリオール結合黒色顔料(カーボンブラック)分散液をポリオールに対して0.0005重量パーセントを分散し、HDIをポリオールに対して3.4重量パーセント添加することにより調製した。ポリオールはエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのモル比率が50:50の共重合体(数平均分子量7000)を用いた。容器32の壁厚は5mmとした。また、本実施例において容器32の少なくとも被検部に接触する面は伸縮可能な薄膜33とした。本実施例において、薄膜33は容器32と同様のフィラー分散樹脂硬化ポリオールを用いた。本実施例における薄膜33の膜厚は50μmとした。
【0054】
本実施例における容器32および薄膜33に用いた光音響整合材の光音響特性は、音速1393.6m/s、音響減衰は0.57dB/cm/MHz、波長756nmにおける等価散乱係数μs’=0.72mm−1、吸収係数μa=0.0082mm−1、波長1064nmにおける等価散乱係数μs’=0.61mm−1、吸収係数μa=0.0119mm−1であった。また、光音響整合材から成る容器32に注入した液状光音響整合材31は酸化アルミニウムによる皮膜を施した酸化チタンをポリオールに対して0.2重量パーセント、およびポリオール結合黒色顔料(カーボンブラック)分散液をポリオールに対して0.0005重量パーセントを分散したポリオールを用いた。ポリオールはエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのモル比率が50:50の共重合体(数平均分子量7000)を用いた。本実施例における液状光音響整合材の光音響特性は、音速1442.2m/s、音響減衰は0.51dB/cm/MHz、波長756nmにおける等価散乱係数μs’=0.70mm−1、吸収係数μa=0.0078mm−1、波長1064nmにおける等価散乱係数μs’=0.59mm−1、吸収係数μa=0.0107mm−1であった。
従って、本実施例により人体組織とほぼ等しい光音響特性を有する光音響整合材が得られた。
【0055】
容器32中に被検体を挿入することにより、界面で発生するノイズは100分の1程度に抑えられ、無視可能なレベルとなった。以上のように、光伝播特性と音響伝播特性とを人体組織に近似した光音響整合材から成る容器を被検部に当接することにより、被検体内部の光吸収体で発生した音響波を明瞭に取得し、被検体内部のイメージングの質を向上することが可能となる。
【0056】
(実施例4)
本発明における光音響整合材を光音響波診断装置用ファントムに適用した例について、図4を用いて説明する。図4に示す光音響波診断装置用ファントムは、人体組織の光伝播特性及び音響伝播特性に近似した光音響整合材から成る母材51内に模擬血管として用いられる検出対象であるシスト材(1)から(4)である符号52〜55を配置した。ファントムのサイズは120×70×50mmとした。本発明における光音響波診断装置ファントムの母材は、酸化アルミニウムによる皮膜を施した酸化チタンをポリオールに対して0.2重量パーセント、およびポリオール結合黒色顔料(カーボンブラック)分散液をポリオールに対して0.0005重量パーセント分散し、HDIをポリオールに対して3.4重量パーセント添加することにより調製した。ポリオールはエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのモル比率が50:50の共重合体(数平均分子量7000)を用いた。本実施例における母材の光音響特性は、音速1393.6m/s、音響減衰は0.57dB/cm/MHz、波長756nmにおける等価散乱係数μs’=0.72mm−1、吸収係数μa=0.0082mm−1、波長1064nmにおける等価散乱係数μs’=0.61mm−1、吸収係数μa=0.0119mm−1であった。従って、本実施例により人体組織とほぼ等しい光音響特性を有する母材が得られた。
【0057】
シスト材(1)から(4)は母材と同じ材料に黒色顔料(カーボンブラック)を分散することにより調製した。このとき、黒色顔料の分散量に対する吸収係数μaを算出することにより、光音響波診断装置を用いた検出画像のコントラストに関する評価を行った。そして、この前記シスト材をファントム内部に配置することにより、光音響波診断装置の精度評価を行った。本実施例においては直径2mm、長さ70mmに調整した円筒状の前記シスト材をファントム内部に配置した。表7は測定波長1064nmにおける母材とシスト材の吸収係数μa及び母材に対するシスト材のコントラスト比を示したものである。血液の吸収係数μaは約0.05mm−1であることから、本実施例における光音響波診断装置ファントムを用いることにより、ヘモグロビンを検出するための光音響波診断装置に関する精度管理が可能となる。また、本実施例における光音響波診断装置ファントムを用いることにより、母材に対して、5〜20dBのコントラスト比に関する精度管理が可能となる。
【0058】
【表7】

【符号の説明】
【0059】
1 生体(被検部)
2 光音響整合材
3 光照射部
4 ミラー
5 光源
6 探触子
7 電気信号処理回路
8 信号処理装置
9 表示装置
10 シスト材




【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールと、前記ポリオールに分散可能な無機酸化物と顔料とを含み、前記ポリオールに対する前記無機酸化物の分散量が0.10〜0.25重量パーセントであり、前記ポリオールに対する顔料の分散量が0.0001〜0.0005重量パーセントであることを特徴とする光音響整合材。
【請求項2】
イソシアネート化合物をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の光音響整合材。
【請求項3】
前記ポリオールはエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合体から成るポリエーテルポリオールであることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の光音響整合材。
【請求項4】
前記無機酸化物が酸化チタンであることを特徴とする、請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の光音響整合材。
【請求項5】
前記顔料がカーボンブラックであることを特徴とする、請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の光音響整合材。
【請求項6】
前記イソシアネート化合物がヘキサメチレンジイソシアネートであることを特徴とする、請求項2乃至請求項5の何れか一項に記載の光音響整合材。
【請求項7】
イソシアネート化合物を含まない液体状の前記光音響整合材が、イソシアネート化合物を含む固体状の前記光音響整合材に格納されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載の光音響整合材。
【請求項8】
ポリオールと、前記ポリオールに分散可能な無機酸化物と顔料とを含み、前記ポリオールに対する前記無機酸化物の分散量が0.10〜0.25重量パーセントであり、前記ポリオールに対する顔料の分散量が0.0001〜0.0005重量パーセントであることを特徴とする人体組織模擬材料。

【図2】
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【図4】
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【図1】
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【図3】
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