説明

光音響波測定装置

【課題】光音響波測定装置において被測定対象の移動があっても正確な画像再構成を行うための技術を提供する。
【解決手段】光を照射されると音響波を発生するマーカが複数配置された被測定対象の表面を撮影する画像取得手段と、撮影された画像からマーカの初期配置状況を求めるマーカ初期配置状況算出手段と、光をマーカが配置された被測定対象に照射して発生する音響波を測定して音響データに変換する探触子と、音響データに基づき、測定時のマーカ配置状況を求める測定時マーカ配置状況算出手段と、マーカ初期配置状況と測定時マーカ配置状況を比較し、画像データを生成する際の音響データの補正量を算出する、音響データ補正量算出手段と、音響データの補正量に基づき、取得した音響データを再配置する取得音響データ再配置手段を有する光音響波測定装置を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光音響波測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、被測定対象にレーザ光を照射し、検査対象物体内部から、レーザ照射に起因する超音波(光音響波)を発生させ、この光音響波を解析することで、検査対象物体表面および内部の構造・状況を解析する技術が考案されている。この技術は、主に材料の微細な傷や亀裂の有無を検出するための検査に利用されている(特許文献1)。この光音響波測定方式は、レーザ超音波計測とも呼ばれ、非接触・非破壊で検査が行えるため、人体内部の検査のような医療目的で利用する動きも見られている。
【0003】
生体を対象とする光音響波測定装置では、生体にレーザ光を照射することで、生体内の各組織が熱膨張を起こし、超音波(光音響波)が発生する。この超音波を受信し解析することで、光吸収率の大きな部分が、生体内の機能情報として画像化される。
【0004】
また、従来、超音波を生体に対して送波し、反射してきた超音波を解析することで、生体内の構造を画像化する超音波診断装置が医療現場で運用されている。超音波診断装置では、生体に対して送波した超音波が、生体内での音響インピーダンスの異なる境界面で反射する。この反射波を受信して解析することで、音響インピーダンスの異なる境界面が生体内の形態情報として画像化される。
超音波診断装置と光音響波測定装置とでは、生体内構造を画像化した時の見え方が異なるものの、超音波を解析し、画像を形成する技術においては、共通する点が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-257793号公報
【特許文献2】特許第3450937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光音響波測定装置には、光音響波の測定(単測定)と超音波探触子の移動(スキャン)を繰り返すことで、超音波探触子の開口サイズよりも広い範囲を測定するものがある。光音響波測定装置では、検査対象にレーザ光を照射する度に、検査対象内部から光音響波が発生する。このとき光音響波は超音波探触子の複数の素子で受信されるため、各素子における光音響波の強度値(音響データ)が取得できる。この音響データを基に、画像再構成処理を行い、光音響波画像データを生成する。
【0007】
しかし、このような構成の光音響波測定装置においては、測定中に患者が動いてしまった場合、動く前と後とで、測定位置のズレが生じてしまう。このように測定中に生じた位置ズレを補正しないまま測定結果から画像再構成した場合、歪みやボケを含んだ、不正確な光音響波画像データを生成してしまう。
【0008】
一方、超音波診断装置には、生体から反射された超音波を超音波探触子によって受信して生体内の断層画像を形成する際に、超音波探触子を、前記断層像と直交する方向に機械的、または手動で移動させることで、三次元超音波画像を形成するものがある。このような超音波診断装置では、超音波探触子を移動させる際に、術者による手ぶれや、患者の呼吸、拍動などによって生ずる超音波画像間のズレに起因する三次元超音波画像の歪みが生
じる場合がある。そこで、超音波画像間の相関関係を解析することで、三次元超音波画像の歪みを補正する超音波画像処理装置が提案されている(特許文献2)。
【0009】
特許文献2に記載の方式では、骨や血管など、超音波画像間に相関関係を求められるだけの特徴点が存在する必要がある。しかし乳房などのように特徴点が現れにくい部位の検査においては、位置ズレの補正は困難であった。
【0010】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであって、光音響波測定装置において被測定対象の移動があっても正確な画像再構成を行うための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用する。すなわち、光を照射されることにより音響波を発生するマーカが複数配置された被測定対象の表面を撮影する画像取得手段と、前記画像取得手段によって撮影された画像から、被測定対象の表面における前記マーカの初期配置状況を求めるマーカ初期配置状況算出手段と、光源と、前記光源からの光を前記マーカが配置された被測定対象に照射して発生する音響波を測定して音響データに変換する探触子と、前記音響データに基づき、音響波の測定時のマーカ配置状況を求める測定時マーカ配置状況算出手段と、前記マーカ初期配置状況と前記測定時マーカ配置状況を比較し、音響データから画像データを生成する際の前記音響データの補正量を算出する、音響データ補正量算出手段と、前記音響データの補正量に基づき、取得した音響データを再配置する取得音響データ再配置手段とを有することを特徴とする光音響波測定装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光音響波測定装置において被測定対象の移動があっても正確な画像再構成を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】光音響波測定装置の構成を示すブロック図。
【図2】測定位置ズレ補正用マーカの配置パターン図。
【図3】走査軌道スケジューリングの説明図。
【図4】マーカ配置位置情報の説明図。
【図5】測定位置ズレ補正用マーカから検出される音響データの説明図。
【図6】本発明の処理シーケンスを示すフローチャート。
【図7】被測定対象の測定実施位置における測定範囲の投影図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に図面を参照しつつ、本発明の好適な実施の形態を説明する。
図1は、本発明の適用できる光音響波測定装置の構成を示すブロック図である。同図において、100は被測定対象(乳房)である。101は、測定位置ズレ補正のために乳房100の表面に配置した補正用マーカである。図中では省略しているが、補正用マーカは複数配置することができる。
【0015】
800は、乳房100を圧迫固定するための乳房保持機構である。801は乳房100と保持機構800との間に生じる隙間を埋める為の音響マッチング材である。803は乳房100に光音響波を発生させるためのレーザ照射光学装置である。レーザ照射光学装置803としては、光源や、光源からの光を伝播して被測定対象に照射するファイバやレンズ等の光学部材が用いられる。802は乳房100から発生した光音響波を受信し、音響データとしての電気信号に変換するための超音波探触子である。
【0016】
102はユーザが測定位置や測定範囲を指定するための測定領域画像取得手段である。103は測定領域画像取得手段102で取得した画像領域から補正用マーカ101の初期配置関係(マーカ初期配置状況)を算出するための、マーカ初期配置状況算出手段である。
【0017】
804は、乳房100に対して、超音波探触子802を二次元走査させるためステージ駆動手段である。この超音波探触子802の走査の際、レーザ照射光学装置803も一緒に走査させることが好ましため、本実施例では、レーザ照射光学装置803および超音波探触子802は、ステージ駆動される台座(キャリッジ)に固定されている。201は、ステージ駆動手段804を制御する、ステージ制御手段である。ステージ制御手段を用いることにより、光音響波測定において、任意の座標での測定や、2次元的にスキャンしながらの測定が可能となる。
【0018】
202は、ステージの走査軌道をスケジューリングする走査軌道スケジューラである。203は、走査軌道スケジューラ202でスケジューリングした走査軌道における、光音響波測定時の超音波探触子開口サイズ内で観測されるマーカの配置の予測を行うマーカ配置予測リスト算出手段である。104は、超音波探触子802から取得した音響データから、測定位置におけるマーカ101の配置状況を取得するための、測定位置マーカ配置状況算出手段である。本発明において、測定位置マーカ配置状況は、測定時マーカ配置状況に相当する。本発明において、測定位置マーカ配置状況算出手段は、測定時マーカ配置状況算出手段に相当する。
【0019】
900は、データを記憶するメモリ等の記憶手段である。105は、取得した光音響波のデータに対する補正量を算出するための、取得音響データ補正量算出手段である。106は、音響データの配置の並び替えを行うための、取得音響データ再配置手段である。107は、超音波探触子とレーザ照射光学装置の位置補正量を算出するための、超音波探触子位置補正手段である。
【0020】
まず、装置動作以前の準備として、乳房100表面に配置する補正用マーカ101について説明する。
補正用マーカ101は、被測定対象の表面に配置し、光音響波測定において被測定対象が動いたことを確認するために用いられる。本実施形態においては、まず光音響波測定前に補正用マーカの配置状況を光学的に検知する。そして、光音響測定時には、補正用マーカにレーザ光を照射して光音響波を発生させることで、測定中における配置状況を検知する。
【0021】
よって、本実施例における補正用マーカは、乳房表面において光学的に検知しやすい色であって、かつ光吸収率が高く光音響波が発生し易い上に乳房内部の各組織と区別しやすい光音響特性を持った物質であることが好ましい。具体的には、黒色の炭素素材のものなどが好ましいと考えられる。
【0022】
次に、補正用マーカ101の配置方法について説明する。
乳房100の表面には、補正用マーカ101を複数配置する。乳房100の表面での補正用マーカ101の配置例を図2に示す。図2は、乳房を超音波探触子側から見た図である。図2において、点線枠PSZは、超音波探触子の開口サイズを表している。本実施例では、乳房の超音波探触子側の面の任意領域のスキャンが可能であるものとする。
なお、超音波探触子を紙面横方向にスキャンするとき、その方向をストライプ方向と呼ぶ。また、超音波探触子開口サイズPSZの高さで横方向に端まで1度スキャンしたライン領域を、ストライプと呼ぶ。
【0023】
図2に示すように、補正用マーカ101は、超音波探触子の開口サイズPSZの領域中に2つ以上は含ませられるように配置されることが好ましい。また、より好ましくは、図2に示すように、あるストライプでは、補正用マーカを横に2つ並べたセットが横並びになっており、隣接するストライプでは、補正用マーカを縦に2つ並べたセットが横並びになっていることが望ましい。言い換えると、補正用マーカの2つずつの並び方が、隣接するストライプ間で90度回転していることが望ましい。このような配置をすることで、乳房100が測定中に動いてしまっても、回転方向に最大±90度までの変位が検出可能となる。すなわち、乳房の位置に大きな変位があった際にも、隣接するストライプのマーカを現在のストライプのマーカと誤検出する確率を低くすることが可能である。
【0024】
以下、実際の測定の詳細動作を説明する。
ここで説明する詳細動作は、図6のフローチャートに示す制御ステップに沿って制御が行われる。よって本説明の中では、どこの制御ステップなのかも合わせて表記していく。
【0025】
まず、本実施例では、図1に示すように、乳房100を保持機構800で圧迫保持する。このとき、保持機構800と乳房100との間に空隙があると超音波が伝わらなくなるので、空隙には音響マッチング材801を満たすことが好ましい。保持機構800は、乳房と接する面は透明度が高くレーザ光を透過するものであって、音響特性としても超音波をなるべく減衰させない素材が好ましい。
【0026】
測定開始時に、まず、測定領域画像取得手段102によって、測定直前の測定領域全域の光学画像を撮影する(ステップS−1)。この光学画像から、マーカ初期配置状況算出手段103によって、マーカ初期配置状況を算出する(ステップS−2)。具体的には、撮影した光学画像に対して、輪郭抽出やパターンマッチングなどの一般的な画像処理によって各マーカのVGA座標値を求める。このVGA座標値から、スキャン機構での移動量を、次式(1)および(2)で計算できる。
Xreal = Xo + ((VGA_x − 320)/640) × WL …(1)
Yreal = Yo − ((VGA_y − 240)/480) × WL …(2)
【0027】
式(1)および(2)において、XrealはX方向の移動量(μm)、YrealはY方向の移動量である。VGA_x、VGA_yはそれぞれ、VGA座標のX座標、Y座標である。また、Xo、Yoは
それぞれ、測定領域画像取得手段102の撮影画像の中心の、スキャン機構での物理座標(以下、物理座標)である。WLは、測定領域画像取得手段102から、撮影面つまり、保持機構800の測定領域画像取得手段102側の面までの距離である。
【0028】
次に、前記マーカ初期配置状況を元に、スキャン機構での走査軌道のスケジューリングを走査軌道スケジューラ202で行う(ステップS−3)。図3(a)に示すように、被測定対象100は保持機構800によって圧迫保持される場合、多少の変形を伴い、補正用マーカ101の配置も変形したものとなる。図3(a)のように圧迫保持された被測定対象100に対して、図3(b)に示すように、走査軌道を決定していく。図中の点線枠が超音波探触子開口サイズでの各測定位置である。乳房の1回の測定でpos1,pos2,…,posNまでN回分の測定位置の移動をおこなうように、位置と順序のスケジューリングを行う
。このとき、複数の補正用マーカが超音波探触子の中心付近になるように、位置決めをしていく。走査軌道スケジューリング結果は、記憶手段900に保持する。
【0029】
このとき、マーカ配置予測リスト算出手段203にて、走査軌道スケジューリングとマーカ初期配置状況とから、各測定位置において光音響波測定の結果表れると予測されるマーカの配置状況(正解配置情報)も算出する(ステップS−4)。例えば、スケジューリングの結果、走査軌道上でpos1〜posNまでN回の撮影が実行されるとなった場合、N回分の撮影位置におけるマーカの配置状況を算出する。このとき、M番目の撮影位置posM用に
算出されたマーカ配置状況は、posMにおける正解配置情報となる。
【0030】
マーカ配置タイプは測定時に検出される複数のマーカの配置形情報、マーカ配置位置情報は移動の際に追跡すべきマーカの検出されるべき座標値と回転角である。マーカ配置位置情報の説明図を図4に示す。図中、PSZは、超音波探触子の開口サイズである。上述のスケジューリングの際に位置決めを行っているので、各測定位置における複数の補正マーカ101の検出位置は予想可能である。
【0031】
この図4には、ある所定の測定位置における、複数の補正マーカ101の配置関係が示されている。複数の補正マーカにおいて、まず中心座標を求め、その座標である中心座標値を求める。このとき、複数の補正マーカ101の中心座標を結ぶ直線の中心部POS(x,y)が、追跡すべきマーカの座標値である。この座標値は、移動完了時に検出されるべき複数マーカの平均位置座標である。図中θで表現している角度が、マーカ配置位置情報の角度情報(回転角)である。回転角は、複数のマーカの中心座標同士を通る直線と、基準線となる超音波探触子鉛直方向の軸(図中点線)とで成す角度である。座標系は、超音波探触子開口領域PSZの左上隅を原点(0,0)とする座標系(探触子座標系)である。この座標系で追跡対象のマーカの位置関係を表現し、正解配置情報として記憶手段900に保持する。
【0032】
走査軌道が決定後、光音響波測定処理が行われる(ステップS−5)。この処理の詳細について、図6右上のサブフローを用いて説明する。
まず、ステージ制御手段201によって、超音波探触子802およびレーザ照射光学装置803を第一の測定位置に移動させる(ステップS−5−1)。
【0033】
次にレーザ照射光学装置803から1パルスのレーザ光照射を行い、補正用マーカ101から発生する光音響波を超音波探触子802で受信し、音響データを測定位置マーカ配置状況算出手段104に出力する。測定位置マーカ配置状況算出手段104にて、音響データからマーカを検知し、配置状況を算出する。(ステップS−5−2)
このとき、超音波探触子802では、図5に示すような光音響波を受信することができる。このグラフにおいて、横軸は時間、縦軸は光音響波の音圧の強度を表わす。
【0034】
レーザ照射を受けた補正用マーカから発生した光音響波の音圧は、超音波探触子から乳房表面までの距離時間分のディレイをもって検出される。この距離時間はT1で表わされる。この距離時間に最も近い時間で音圧が検出された超音波探触子の素子の直上の位置にあたる位置情報を、測定位置マーカ配置状況1として保存する。次に、超音波探触子位置補正手段107において、前記測定位置マーカ配置状況1と正解配置情報とを比較し、超音波探触子802およびレーザ照射光学装置803の位置補正量を計算する(ステップS−5−3)。
【0035】
ここで算出された位置補正量をもって、ステージ制御手段201によって、キャリッジを移動させる(ステップS−5−4)。
キャリッジの位置補正ができたところで、画像再構成を行う(画像データを生成する)ための光音響波測定を開始する(S−5−5)。これにより、現在の測定領域における光音響波が取得できる。
上記ステップS−5−1からステップS−5−5までを、測定領域全域分、N回繰り返す。
【0036】
次に、測定データの並び替え処理を行う(ステップS−6)。この処理の詳細について、図6右下のサブフローを用いて説明する。
測定位置マーカ配置状況算出手段104は、ステップS−5において各測定位置で取得
した補正用マーカからの光音響波に由来する音響データのそれぞれから、測定位置マーカ配置状況2を算出する(ステップS−6−1)。算出内容は、検出された複数の測定位置マーカの中間座標と、複数のマーカ同士の中心を結ぶ直線と、超音波探触子のセンサ面垂直方向との成す角度である。
【0037】
次に、取得音響データ補正量算出手段105が、各々の測定位置における測定位置マーカ配置状況2と、走査スケジューリング結果の正解配置情報を元に、S5−5−5で取得できた音響データに必要な回転量、シフト量を求める(ステップS−6−2)。具体的には、正解配置情報と、測定位置マーカ配置状況2の、双方のマーカの座標(複数マーカの平均座標値)を比較してシフト量を算出し、回転角を比較して回転量を算出する。
【0038】
前記回転量、シフト量をもって、取得光音響データ再配置手段106において、取得した音響データに回転、シフトを行い、音響データの配置の並び替えを行う。並び替えたデータは記憶手段900に保存する(ステップS−6−3)。
各回の測定データの並び替えを行い、測定の全領域のデータが揃ったら、画像再構成処理を行って画像データを生成させ、光音響波測定処理が終了する(ステップS−7)。
【0039】
ここで、ステップS−5の測定処理が完了するまでの間に、被測定対象(乳房)が途中で動いた場合について説明する。
【0040】
図7は、仮に3番目の測定位置pos3に移動する際に、被測定対象(乳房)が動いてしまった場合の、各回の測定領域を表した図である。特に、図7の場合は、左回転の動き方をした場合を表している。図から見て取れるように、乳房が移動した場合でも、キャリッジが2次元移動することにより、位置補正用マーカを追従することはできるが、3番目以降の測定範囲は、傾いた領域を対象として測定したことになる。
【0041】
よって、測定中に乳房が動いてしまった場合は、キャリッジの位置が目標のマーカ101を追従することで、測定範囲の補正ができるが、取得されたデータの並びは、傾きを含む可能性がある。よって、測定位置補正のみを行っても、各測定範囲のデータをつなぎ合わせるだけでは正しく測定範囲内の光音響波画像データを生成できない可能性がある。
【0042】
そこで、本発明のように、測定位置に加えて回転を考慮した各測定データの配置補正もあわせて行うことで、全ての測定領域のデータをつなぎ合わせた際の、画像データの歪みを軽減することが可能となる。これにより、光音響波測定装置において、より正確な画像データの生成が可能となる。
【符号の説明】
【0043】
101:補正用マーカ,102:測定領域画像取得手段,103:マーカ初期配置状況算出手段,104:測定位置マーカ配置状況算出手段,105:取得音響データ補正量算出手段,106:取得音響データ再配置手段,202:走査軌道スケジューラ,203:マーカ配置予測リスト算出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を照射されることにより音響波を発生するマーカが複数配置された被測定対象の表面を撮影する画像取得手段と、
前記画像取得手段によって撮影された画像から、被測定対象の表面における前記マーカの初期配置状況を求めるマーカ初期配置状況算出手段と、
光源と、
前記光源からの光を前記マーカが配置された被測定対象に照射して発生する音響波を測定して音響データに変換する探触子と、
前記音響データに基づき、音響波の測定時のマーカ配置状況を求める測定時マーカ配置状況算出手段と、
前記マーカ初期配置状況と前記測定時マーカ配置状況を比較し、音響データから画像データを生成する際の前記音響データの補正量を算出する、音響データ補正量算出手段と、
前記音響データの補正量に基づき、取得した音響データを再配置する取得音響データ再配置手段と
を有することを特徴とする光音響波測定装置。
【請求項2】
前記探触子は、被測定対象の表面の複数の測定位置で音響波を測定するものであり、
前記探触子を被測定対象に対して移動させる制御手段と、
前記マーカ初期配置状況に基づいて、前記複数の測定位置のそれぞれにおいてマーカ配置状況を予測する、マーカ配置予測手段と、
をさらに有し、
前記音響データ補正量算出手段は、前記複数の測定位置のそれぞれにおいて、前記マーカ配置予測手段により予測されたマーカ配置状況と、前記測定時マーカ配置状況とを比較し、前記音響データの補正量を算出するものである
ことを特徴とする請求項1に記載の光音響波測定装置。
【請求項3】
前記複数の測定位置のそれぞれにおいて、前記予測されたマーカ配置状況と前記測定時マーカ配置状況とを比較して前記探触子の位置の補正量を計算する探触子位置補正手段をさらに有し、
前記制御手段が、前記探触子位置補正手段により計算された前記探触子の位置の補正量に基づいて前記探触子の位置を移動させた後、
前記探触子は、画像データの生成のための音響波の測定を行うものである
ことを特徴とする請求項2に記載の光音響波測定装置。
【請求項4】
前記複数の測定位置のそれぞれにおいて、前記探触子の開口サイズには複数の前記マーカが含まれるものであり、
前記複数の測定位置のそれぞれにおける前記マーカ初期配置状況および前記測定時マーカ配置状況は、前記複数のマーカの中心座標の値、および、中心座標を結ぶ線が所定の基準線となす回転角を含むものであり、
前記音響データ補正量算出手段は、前記マーカ初期配置状況および前記測定時マーカ配置状況に含まれる前記中心座標値および前記回転角を比較して、前記音響データの補正量を算出するものである
ことを特徴とする請求項2または3に記載の光音響波測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−40038(P2012−40038A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180909(P2010−180909)
【出願日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】