説明

光音響用アタッチメント及びプローブ

【課題】プローブに取り付けて使用する光音響用のアタッチメントを提供する。
【解決手段】超音波プローブ11は、1以上の検出器素子を含む超音波検出器22を有する。アタッチメント14は、超音波プローブ11に取り付けられる光音響用のアタッチメントである。アタッチメント14は、例えば導波路42と導光板43とを含む導光部材41を有する。導光部材41は、被検体に照射すべき光を導光し、導光した光を、超音波プローブ11の超音波検出面と対向する光出射面から被検体に向けて照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光音響用アタッチメントに関し、更に詳しくは、プローブに取り付けて使用する光音響用アタッチメントに関する。また、本発明は、そのようなアタッチメントを含むプローブに関する。
【背景技術】
【0002】
生体内部の状態を非侵襲で検査できる画像検査法の一種として、超音波検査法が知られている。超音波検査では、超音波の送信及び受信が可能な超音波探触子を用いる。超音波探触子から被検体(生体)に超音波を送信させると、その超音波は生体内部を進んでいき、組織界面で反射する。超音波探触子でその反射音波を受信し、反射超音波が超音波探触子に戻ってくるまでの時間に基づいて距離を計算することで、内部の様子を画像化することができる。
【0003】
また、光音響効果を利用して生体の内部を画像化する光音響イメージングが知られている。一般に光音響イメージングでは、レーザパルスなどのパルスレーザ光を生体内に照射する。生体内部では、例えば生体組織がパルスレーザ光のエネルギーを吸収し、そのエネルギーによる断熱膨張により超音波(光音響信号)が発生する。この光音響信号を超音波プローブなどで検出し、検出信号に基づいて光音響画像を構成することで、光音響信号に基づく生体内の可視化が可能である。光音響イメージング装置は、例えば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−104816号公報
【特許文献2】特開2008−284136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、超音波画像診断装置において、超音波プローブにアタッチメントを取り付けて使用することが知られている(例えば特許文献2参照)。しかしながら、被検体に対するレーザ光の照射が必要な光音響イメージングにおいて、超音波プローブにアタッチメントを取り付け、そのアタッチメントからレーザ光照射を行うことは検討されてこなかった。
【0006】
本発明は、上記に鑑み、超音波プローブに取り付けて使用する光音響用のアタッチメントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、音響波検出器素子を有するプローブに取り付けられる光音響用アタッチメントであって、被検体に照射すべき光を導光し、プローブの音響波検出面と対向する光出射面から被検体に向けて導光した光を出射する導光部材を有する光音響用アタッチメントを提供する。
【0008】
本発明の光音響用アタッチメントでは、導光部材が、取り付けられるプローブの本体に沿って音響波検出面側に光を導光する第1の部分と、光出射面を有し、第1の部分を通って導光された光を光出射面から被検体に向けて出射する第2の部分とを含む構成とすることができる。
【0009】
導光部材の第1の部分が、プローブ本体に沿って導光した光を、光が導光されたプローブ本体の側面から見て音響波検出器素子側に屈折させて導光部材の第2の部分に入射する屈折面を有することが好ましい。
【0010】
導光部材の第2の部分が、光出射面側に、第2の部分本体とは屈折率が異なる樹脂レンズを含んでいてもよい。樹脂レンズの屈折率は、導光部材の第2の部分本体の屈折率よりも高くするとよい。
【0011】
樹脂レンズが、光出射面から出射する光の出射角度が直角に近づくように入射光を屈折させるものであることが好ましい。
【0012】
樹脂レンズが、光出射面の中心線に向かって屈折率勾配を有することとしてもよい。
【0013】
導光部材の第2の部分が、光出射面の縁部の光を音響波検出面方向に反射する第1の反射膜と、該第1の反射膜で反射した光を光出射面側に反射する第2の反射膜とを有する構成とすることができる。
【0014】
導光部材の第2の部分が、音響波検出面を覆うように配置された、音響波透過性及び光拡散性を有する光拡散音響部材を含むこととしてもよい。光拡散音響部材は、音響波透過性を有する音響材料に無機顔料を混合して形成されたものでよい。
【0015】
導光部材の第1の部分は、導光する光の進行方向がプローブ本体の側面から見て音響波検出器素子側に傾くように、取り付けられるプローブの本体に対して傾けられていてもよい。
【0016】
導光部材の第2の部分が透明ウレタンゲルを含むこととしてもよい。導光部材の第2の部分は、光透過性を有し、透明ウレタンゴムを包み込んで支持する支持部材を更に含んでいてもよい。
【0017】
導光部材を支持する外装を備えており、その外装の導光部材側の面が白色で形成されていてもよい。
【0018】
本発明は、また、プローブ本体内に配置された音響波検出器素子と、プローブ本体に対して取り付けられる光音響用アタッチメントであって、被検体に照射すべき光を導光し、音響波検出器素子が設けられた音響波検出面と対向する光出射面からから被検体に向けて導光した光を出射する導光部材を有する光音響用アタッチメントとを備えるプローブを提供する。
【0019】
光音響用アタッチメントが、プローブ本体に沿って音響波検出面側に光を導光する第1の部分と、光出射面を有し、第1の部分を通って導光された光を光出射面から被検体に向けて出射する第2の部分とを含む構成を採用できる。
【0020】
導光部材の第2の部分が、光出射面の縁部の光を音響波検出面方向に反射する第1の反射膜を有し、音響波検出器素子の音響波検出面側の表面に、第1の反射膜で反射した光を光出射面側に反射する第2の反射膜が形成されている構成とすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の光音響用アタッチメントは、被検体に照射すべき光を導光し、取り付けられたプローブの超音波検出面と対向する光照射面から被検体に向けて導光した光を照射する導光部材を有する。このような光音響用アタッチメントを用いることで、プローブに取り付けられた光音響用アタッチメントから被検体に対して光照射を行うことができる。光音響用アタッチメントは、取り付けられたプローブと一緒に移動するため、ユーザは、被検体の所望の位置にプローブを移動してその位置で光を照射することができ、操作性に優れる。また、光音響用アタッチメントとプローブとが一体となることから、照明系の位置設定が安定しており、被検体に対して設計した所望の入射角度で光を照射できる。更に、例えば光照射面から超音波検出面までの間の距離が相互に異なる複数種類のアタッチメントを用意しておき、それらを付け替えて使用することも可能であり、その場合、観察対象に応じたアタッチメントを使用して光音響画像の生成を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態の光音響用アタッチメントを含む光音響画像生成装置を示すブロック図。
【図2】(a)はアタッチメントの正面図、(b)はアタッチメントの側面図。
【図3】アタッチメントの中央付近の断面を示す断面図。
【図4】光音響画像生成の動作手順を示すフローチャート。
【図5】本発明の第2実施形態の光音響用アタッチメントを示す断面図。
【図6】屈折率勾配を持つ樹脂レンズの一例を示す断面図。
【図7】本発明の第3実施形態の光音響用アタッチメントを示す断面図。
【図8】本発明の第4実施形態のアタッチメントの正面図、(b)はアタッチメントの側面図。
【図9】無機顔料の粒子の大きさと散乱効率との関係を示すグラフ。
【図10】透明ウレタンゴムを用いたアタッチメントの断面図。
【図11】導波路が傾いているアタッチメントを示す断面図。
【図12】外装を含めたアタッチメントの断面図。
【図13】アタッチメントがプローブケースの内側に組み込まれる例を示す断面図。
【図14】(a)は、術中用の超音波プローブに取り付けられる光音響用アタッチメントの側面図、(b)は、その正面図。
【図15】(a)は、泌尿器用の超音波プローブに取り付けられる光音響用アタッチメントの側面図、(b)は、その正面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態の光音響用アタッチメントを含む光音響画像生成装置の全体構成を示す。光音響画像生成装置10は、超音波プローブ11、超音波ユニット12、レーザユニット13、及びアタッチメント14を備える。超音波プローブ11は、ケーブル15などを介して超音波ユニット12に接続される。アタッチメント14は、光ファイバ16などの導光手段を介して、レーザユニット13に接続される。
【0024】
レーザユニット13は、被検体に照射すべきレーザ光を出射する光源ユニットである。レーザユニット13が出射するレーザ光の波長は、観察対象の光吸収体などに応じて適宜設定される。アタッチメント14は、超音波プローブ11に取り付けられる光音響用のアタッチメントである。アタッチメント14は、被検体に照射すべきレーザ光を導光する導光部材41を含む。レーザユニット13から出射したレーザ光は、光ファイバ16などを通ってアタッチメント14に入射し、導光部材41から被検体に照射される。なお、被検体に照射される光はレーザ光には限定されず、レーザ光以外の光を被検体に照射することとしてもよい。
【0025】
超音波プローブ11は、プローブケース21内に、被検体内からの音響波(典型的には超音波)を検出する音響波検出器(超音波検出器)22を有する。超音波検出器22は超音波検出器素子を含む。例えば超音波検出器22は、プローブケース21の長手方向に沿って一次元配列された複数の超音波振動子(超音波検出器素子)を有する。超音波検出器22は、被検体内に光が照射されることで、被検体内で生じた超音波(光音響信号)を検出する。超音波ユニット12は、ケーブル15を介して超音波プローブ11から光音響信号を受信し、受信した光音響信号に基づいて光音響画像を生成する。
【0026】
導光部材41は、導波路(導光路)42と導光板43とを含む。導波路42は、アタッチメント14が取り付けられるプローブの本体に沿って超音波検出面側に光を導光する第1の部分に相当する。導光板43は、第1の部分を通って導光された光を光出射面から被検体に向けて出射する第2の部分に相当する。導波路42は、例えばコネクタなどを介して光ファイバ16に接続される。導波路42は、レーザユニット13から入射したレーザ光を、超音波プローブ11のプローブ本体に沿って超音波検出器22の超音波検出面側に導光する。導光板43は、光出射面を有し、導波路42を通って導光されたレーザ光を被検体方向に出射する。
【0027】
図2は、アタッチメント14が超音波プローブ11に取り付けられた状態を示す。図2(a)はアタッチメント14の正面図であり、(b)はアタッチメント14の側面図である。超音波プローブ11は、例えばユーザが手で握って使用するタイプの超音波プローブである。導光部材41の導波路42部分と導光板43部分とは一体に形成されており、導光部材41はアタッチメント本体を構成する。アタッチメント本体である導光部材41は、例えばツメ44などにより、超音波プローブ11に着脱可能に取り付けられる。あるいは、アタッチメントを取り付けた後は、導光部材41と超音波プローブ11とが一体不可分となってもよい。
【0028】
導波路42は、例えば光ファイバ16の光出射端とコネクタなどを介して接続される。図2(a)では、1本の光ファイバしか描かれていないが、複数の光ファイバを超音波プローブ11の長手方向に並べ、複数の本の光ファイバからレーザ光を入射してもよい。また、図2(b)では、超音波プローブ11を隔てて対向するように2つの導波路42を設けているが、導波路42を片側にのみ設ける構成も可能である。導波路42は、例えば正面から見てテーパー形状に形成されており、レーザ光を超音波振動子が並べられた面側に進行しつつ、レーザ光を超音波プローブ11の長手方向に広げてもよい。
【0029】
導光板43は、超音波プローブ11の超音波振動子が配列された超音波検出面50と対向する位置に光出射面51を有する。光出射面51は、例えば超音波検出面50と空間的に重なるように、導光板43の厚みに相当する距離dだけ離れて超音波検出面50と対向している。導光板43は、導波路42からレーザ光を入射し、超音波検出面50の直下にある光出射面51から、被検体に向けてレーザ光を出射する。
【0030】
超音波検出面50と被検体との間には導光板43が存在しており、超音波検出器22は、導光板43を介して、被検体内で生じた光音響信号を検出する。導波路42及び導光板43には、例えばシリコン樹脂、低密度ポリエチレン、エポキシ樹脂、アクリル、PMMA(Poly Methyl Methacrylate:ポリメチルメタクリレート)、PC(ポリカーボネート)などを用いることができる。導光板43は、被検体に照射される光の波長を含む波長範囲の光を透過し、かつ超音波の減衰が少ない材料で形成されることが好ましい。
【0031】
図3は、アタッチメント14の中央付近の断面を示す。導波路42は、プローブ本体に沿って導光した光を、光が導光されたプローブ本体の側面(例えば超音波振動子が一次元配列された方向)から見て超音波検出器素子方向に屈折させる屈折面45を有していてもよい。屈折面45は、プローブケース21の側面に対して傾斜した角度で形成される。屈折面45は、屈折率が相互に異なる2つの部材の界面で構成される。導波路42の光入射側(光ファイバ16側)の屈折率を、光出射側(導光板43側)の屈折率よりも高くし、その界面を図3に示すようにプローブケース21の側面に対して傾斜させることで、紙面向って下側に進行する光を、超音波検出器素子側(超音波検出面50の内側)に曲げることができる。このような屈折面45を設けることで、光が照射されにくい超音波検出面50の中心付近にレーザ光を向かわせることができる。
【0032】
図4は、光音響画像生成の動作手順を示す。被検体へのレーザ光照射に先立って、超音波プローブ11にアタッチメント14を取り付ける(ステップS1)。例えば、導光板43部分の厚みd(図2(b))、つまり超音波検出面50と光出射面51との間の距離が異なる複数のアタッチメントを用意しておき、取り付けるアタッチメント14を観察対象に応じて選択してもよい。例えばアタッチメント14の取り付け後に、アタッチメント14の導光部材41と光ファイバ16とをコネクタなどにより接続し、レーザ光がアタッチメント14に入射できるようにしておく。
【0033】
アタッチメント14が取り付けられた超音波プローブ11を、被検体の所望の位置に接触させた状態で、レーザユニット13からレーザ光を出射し、アタッチメント14から被検体にレーザ光を照射する(ステップS2)。被検体内の光吸収体は、照射されたレーザ光のエネルギーを吸収して光音響信号を発生する。超音波プローブ11の超音波検出器22は、被検体からの光音響信号を検出する(ステップS3)。超音波ユニット12は、ケーブル15を介して検出された光音響信号を受信し、受信した光音響信号に基づいて光音響画像を生成する(ステップS4)。超音波ユニット12は、例えば生成した光音響画像を表示モニタ上に表示する。
【0034】
本実施形態では、超音波プローブ11に取り付けられるアタッチメント14が導光部材41で構成され、導波路一体となったアタッチメント14から被検体に対してレーザ光を照射できる。本実施形態では、超音波プローブ11を移動させると、それに取り付けられたアタッチメント14も一緒に移動するため、ユーザは、被検体に所望の位置に超音波プローブ11を移動してその位置にレーザ光を照射することができ、操作性に優れる。また、本実施形態では、超音波プローブ11とアタッチメント14とが一体となることから、照明系の位置設定が安定している。そのため、アタッチメント14から、被検体に対して設計した入射角度でレーザ光の照射を行うことができる。
【0035】
本実施形態では、導波路42に屈折面45を設けている。この場合、屈折面45が、図3に示す断面内で光ファイバ16側から入射したレーザ光を、プローブ本体の側面から見て超音波検出器素子方向に屈折させることで、屈折面45を設けない場合に比して、中央付近の光量を増加させることができる。このため、暗くなりがちな、超音波プローブ11の厚み方向(例えば複数の超音波検出器素子が一次元配列された長手方向にほぼ直交する方向)の中央付近から被検体に照射されるレーザ光の光量を確保することができ、超音波検出面50の直下に、十分な光量でレーザ光を照射することができる。
【0036】
続いて、本発明の第2実施形態を説明する。図5は、本発明の第2実施形態の光音響用アタッチメントを示す。本実施形態の光音響用アタッチメント14aは、導光板43aが導光板本体とは屈折率が異なる樹脂レンズ46を含む点で、図3に示す第1実施形態の光音響用アタッチメント14と相違する。その他の点は、第1実施形態と同様でよい。
【0037】
樹脂レンズ46は、導光板43aの光出射面51側に配置される。樹脂レンズ46は、例えば、図5に示す断面内で、超音波検出面50の長手方向に直交する方向の中心(複数の超音波検出器素子が一次元配列された方向にほぼ直交する方向の中心)に関して左右対称に配置される。樹脂レンズ46の屈折率は、導光板43a本体の屈折率よりも高い。樹脂レンズ46は、導光板43aの光出射面51から出射する光の出射角度が直角に近づくように、入射光を屈折させる。
【0038】
レーザユニット13(図1)から出射したレーザ光は、光ファイバ16を通って導波路42に入射する。導波路42を導光された光は導光板43aに向けて進行し、更に光出射面51に向けて進行する。光出射面51に向けて進行するレーザ光が樹脂レンズ46に入射すると、レーザ光は樹脂レンズ46と導光板本体との間の屈折率差で屈折し、より直角に近い角度となって光出射面51から被検体方向へ出射する。
【0039】
ここで、樹脂レンズ46は、光出射面51の中心線に向かって屈折率勾配を持っていてもよい。図6は、屈折率勾配を持つ樹脂レンズの一例を示す。樹脂レンズ46は、導光板43aとの界面側から樹脂レンズ層46−1、46−2、46−3、46−4、及び46−5の5つの層で形成される。樹脂レンズ層46−1〜46−5の屈折率をn〜nとすると、各層の屈折率は、n>n>n>n>nの関係を満たしている。
【0040】
本実施形態では、導光板43aの光出射面51側に樹脂レンズ46を設けている。樹脂レンズ46が、入射光を屈折させることで、被検体に対してより直角に近い角度でレーザ光を照射することができる。その他の効果は、第1実施形態と同様である。
【0041】
次いで、本発明の第3実施形態を説明する。図7は、本発明の第3実施形態の光音響用アタッチメントを示す。本実施形態の光音響用アタッチメント14bは、導光板43bが入射した光を反射する光反射膜47、48を含む点で、図3に示す第1実施形態の光音響用アタッチメント14と相違する。その他の点は、第1実施形態と同様でよい。
【0042】
超音波プローブ11の超音波検出面50と、アタッチメント14bの光出射面51とは、導光板43bの厚みに相当する間隔を隔てて対向している。第1の反射膜47は、導光板43bの光出射面51側に形成される。第1の反射膜47は、導波路42の光進行方向の真下に光出射面51に対して所定の角度で傾いて形成さており、光出射面51の縁部周辺で、光出射面51方向に進行してきた光を、超音波検出面50方向に反射する。
【0043】
第2の反射膜48は、導光板43bの超音波検出面50側に形成される。第2の反射膜48は、例えば超音波検出面50と平行に、一次元配列された複数の超音波検出器素子を覆うように形成される。第2の反射膜48は、第1の反射膜47で反射し超音波検出面50側に進行してきた光を、光出射面51方向に反射する。第2の反射膜48は、必ずしも導光板43bに設けられている必要はなく、例えば第2の反射膜48を超音波プローブ11に形成することも可能である。例えば一次元配列された複数の超音波検出器素子の超音波検出面50側の表面を金属薄膜でコートし、これを第2の反射膜48としてもよい。
【0044】
レーザユニット13(図1)から出射したレーザ光は、光ファイバ16を通って導波路42に入射する。導波路42を導光された光は導光板43bに向けて進行し、更に光出射面51に向けて進行する。導波路42からまっすぐに光出射面51に向かって進行するレーザ光は、第1の反射膜47で反射して超音波検出面50方向に進行し、第2の反射膜48で再度反射して光出射面51に向かう。第2の反射膜48で反射したレーザ光は、第1の反射膜47の開口から、被検体方向へ出射する。
【0045】
本実施形態では、光出射面51の縁部に向かう光を第1の反射膜47で超音波検出面50方向に反射し、その反射した光を第2の反射膜48で再び反射し、光出射面51から被検体に対してレーザ光を照射する。第1の反射膜47と第2の反射膜48とを用いることで、超音波検出面50の長手方向に直交する方向の中央付近に光を集めることができる。また、第1の反射膜47と第2の反射膜48との相対的な角度を適切に設定することで、被検体に対して照射するレーザ光を、光出射面51から、より直角に近い角度で出射することができる。その他の効果は、第1実施形態と同様である。
【0046】
引き続き、本発明の第4実施形態を説明する。図8に、本発明の第4実施形態のアタッチメントが超音波プローブに取り付けられた状態を示す。図8(a)はアタッチメントの正面図であり、(b)はアタッチメントの側面図である。本実施形態のアタッチメント14cは、超音波検出面50を覆うように配置された、音響波透過性及び光拡散性を有する光拡散音響部材60を更に有する点で、図2(a)及び(b)に示した第1実施形態のアタッチメント14と相違する。なお、図8(a)及び(b)ではツメ44を省略して図示している。
【0047】
光拡散音響部材60は、例えば音響波透過性を有する音響材料に無機顔料を混合することで形成される。音響材料には、シリコーンゴムやポリウレタンなどのゴム材料を用いることができる。無機材料には、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化鉄、及び酸化セリウムのうち少なくとも1種の酸化物粒子を用いることができる。
【0048】
光拡散音響部材60の好ましい光学特性について説明する。例えば、光拡散音響部材60の被検体に照射される光(測定光)の波長域における平均拡散反射率が85%未満である場合には、測定対象で反射した光が光拡散音響部材60を通過して超音波検出器22に入射し、超音波検出器22が光を吸収することで生じた振動によるアーティファクト(虚像または偽像)が発生する。また、光拡散音響部材60の測定光の波長域における平均吸収率が10%を超える場合には、測定対象で反射した光が光拡散音響部材60で吸収されて、そこで発生した音響波によるアーティファクトが発生する。従って、光拡散音響部材60は、測定光の波長域における平均拡散反射率が85%以上かつ平均吸収率が10%以下である光学特性を有することが好ましい。光拡散音響部材60にこのような光学特性を持たせることで、アーティファクトの発生を抑えることができる。
【0049】
シリコーンゴムなどの音響部材に混合される無機顔料の粒子の大きさは、アーティファクトの発生が電気ノイズレベルになる画像上問題とならない範囲で適宜調整すればよい。図9に、無機顔料の粒子の大きさと散乱効率との関係を示す。図9に示すグラフは、756nmの光においてMie散乱を仮定して計算した散乱効率の値をプロットしたものである。プロットAは、シリコーンゴム(屈折率:1.41)に酸化チタン(屈折率:2.6)を混合した試料についてのデータであり、プロットBは、シリコーンゴムに酸化ジルコニウム(屈折率:2.4)を混合した試料についてのデータである。また、プロットCは、シリコーンゴムにポリスチレン(屈折率:1.6)を混合した試料についてのデータである。
【0050】
図9を参照すると、無機顔料の粒子の大きさが0.05〜0.35μmの範囲にあるとき、音響材料に対する酸化物粒子の濃度(粒子濃度)が低くても高い拡散反射率を得ることができることがわかる。従って、音響部材に混合される無機顔料の粒子の大きさは、0.05〜0.35μmであることが好ましい。さらに無機顔料の粒子が音響減衰率を増加させないことまで考慮すると、無機顔料の粒子の大きさは、0.08〜0.2μmであることが好ましい。ここで、「粒子の大きさ」は、その材料種の粒子の直径の平均値を意味する。粒子の大きさは、例えば動的光散乱法、レーザ回折法および走査型電子顕微鏡(SEM)による画像イメージング法等によって測定できる。
【0051】
光拡散音響部材60の厚み(最も厚い部分の厚み)は0.5〜2mmであることが好ましい。厚みが0.5mmよりも薄い場合には、所定の濃度で測定光の波長域における拡散反射率を得ることが難しくなる。また、厚みが2mmよりも厚い場合には、当該部材の材料による測定光の波長域における吸収が増加する。
【0052】
無機顔料の添加量については、アーティファクトの発生が電気ノイズレベルになり画像上問題とならない範囲で適宜調整される。無機顔料の添加量は、2〜65wt%であることが好ましい。無機顔料の添加量が2wt%よりも低い場合には、測定光の波長域における平均拡散反射率が85%に達せず、添加量が65wt%よりも多い場合には測定光の波長域における平均拡散反射率を増加させる効果が飽和する。
【0053】
一般に、粒子同士が粒子径の半分以下の距離まで近接するような程度にまで粒子濃度が高くなると、散乱能(拡散反射率)は飽和する。例えば0.2μmの粒子が一辺0.3μmの立方体空間に入ることを想定すると、散乱能は、例えばシリコーンゴム及び無機顔料の混合物中における無機顔料の体積分率が0.155のときに飽和する。そこで、無機顔料の添加量は、光拡散音響部材60を構成する材料中における無機顔料の体積分率が0.155よりも低い範囲で適宜設定される。これは、図9のグラフに示されていない酸化鉄及び酸化セリウムについても同様である。
【0054】
本実施形態では、アタッチメント14cが、超音波検出器22の超音波検出面50を覆う光拡散音響部材60を含む。この光拡散音響部材60が、超音波検出器22への光入射を抑制することで、超音波検出器22に光が入射することで生じるアーティファクトを抑制することができる。その他の効果は第1実施形態と同様である。
【0055】
なお、上記各実施形態では、導光された光を光出射面から被検体に向けて出射する導光部材の第2の部分が導光板43で構成される例について説明したが、第2の部分は導光板43には限定されない。第2の部分は光透過性及び超音波透過性を有していればよく、第2の部分に、例えばソナゲル(商品名)などの透明ウレタンゲルを用いてもよい。その場合に、第2の部分が、光透過性を有し、透明ウレタンゴムを包み込んで支持する袋(支持部材)を有していてもよい。
【0056】
図10は、透明ウレタンゴムを用いたアタッチメントの断面を示している。図10に示す断面は、図8(b)に示す側面の断面に対応する。導光部材の第2の部分43dは、袋61と透明ウレタンゲル62とを含む。透明ウレタンゲル62は、光及び音響波を透過するゲル状の材料で形成されている。袋61は、光及び音響波を透過する特性を持ち、透明ウレタンゲル62を包み込んで保持する。透明ウレタンゲル62を袋61で包み込むことで、透明ウレタンゲル62の形状が保たれ易くなる。また、強度も向上する。なお、図10では、アタッチメント14dがプローブに取り付けられた際に超音波検出器22(図3)を覆う位置に光拡散音響部材60が配置されているが、光拡散音響部材60はなくてもよい。
【0057】
また、上記各実施形態において、例えば図3などでは導波路42の断面形状が矩形であるものとして描かれているが、導波路42の断面形状は任意である。例えば導波路42の断面形状を、直線や球面、その他任意形状で形成された断面形状とし、導光板43の光出射面から出射するレーザ光の光強度の分布ができるだけ均一になるようにしてもよい。また、導波路42は、プローブ本体の側面に平行である必要はなく、導波路42がプローブ本体の側面に対して傾いていてもよい。図11は、導波路が傾いているアタッチメントを示す。アタッチメント14eでは、導波路42(導光部材の第1の部分)が、導光する光の進行方向がプローブ本体の側面から見て超音波検出器22の検出器素子側に傾くように、取り付けられるプローブの本体に対して傾けられている。このようなアタッチメント14dを用いることで、超音波検出面50の長手方向に直交する方向の中央付近に光を集めることができる。
【0058】
ここで、図2(a)及び(b)や図3などでは、説明簡略化のために、導波路42及び導光板43を含む導光部材41(図1)を覆う外装は図示していないが、アタッチメントは、例えば樹脂で形成された外装に少なくとも部分的に覆われている。その場合に、外装の少なくとも導光部材41側の面が白色で形成されていることが好ましい。
【0059】
図12に、外装を含めたアタッチメントの断面を示す。外装63は、例えばABS樹脂(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂で形成されており、その導波路42及び導光板43側(内側)の面に、無機顔料を含有する塗料などが塗布されている。無機顔料には、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化鉄、及び酸化セリウムのうち少なくとも1種の酸化物粒子を用いることができる。それら無機顔料の塗布膜により、外装63の内側の色が白色となる。ここでの白色は、完全な白である必要はなく、黄色や茶色などの何らかの色味が混じった白でよい。外装63の内側の面を白色にすることで、外装63において光吸収が生じ、不要な音響波が生じることを抑制できる。
【0060】
更に、上記各実施形態では、超音波プローブ11のプローブケース21の外側にアタッチメント14を取り付けるものとして説明したが、これには限定されない。図13は、アタッチメント14がプローブケース21の内側に組み込まれる例を示す。プローブケース21は、アタッチメント14を収容するための空間を有している。その空間にアタッチメント14の導波路部分を挿し込むことで、超音波プローブ11にアタッチメント14を取り付けることができる。
【0061】
図2(a)及び(b)などでは、超音波プローブ11として手持ちタイプの超音波プローブを想定したが、光音響用アタッチメントが取り付けられる超音波プローブは、手持ちタイプには限定されない。図14(a)及び(b)は、術中用の超音波プローブに光音響用アタッチメントが取り付けられた状態を示している。図14(a)は側面図であり、(b)は正面図である。術中用の超音波プローブ11aに対し、それに適合する光音響用のアタッチメント14が取り付けられる。この場合も、光ファイバ16から入射したレーザ光は、導波路42及び導光板43を通り、超音波検出器22の検出器素子が配列された面(超音波検出面)の直下から被検体に照射される。
【0062】
また、図15(a)及び(b)は、泌尿器用の超音波プローブに光音響用アタッチメントが取り付けられた状態を示している。図15(a)は側面図であり、(b)は正面図である。泌尿器用の超音波プローブ11bに対し、それに適合する光音響用のアタッチメント14が取り付けられる。この例では、図13の例と同様に、プローブ本体内に導波路42部分が挿し込まれており、それを保持部材(外側ケース)49で保持している。この場合も、光ファイバ16から入射したレーザ光は、導波路42及び導光板43を通り、超音波検出器22の検出器素子が配列された面(超音波検出面)の直下から被検体に照射される。
【0063】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明の光音響用アタッチメント及び超音波プローブは、上記実施形態にのみ限定されるものではなく、上記実施形態の構成から種々の修正及び変更を施したものも、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
10:光音響画像生成装置
11:超音波プローブ
12:超音波ユニット
13:レーザユニット
14:アタッチメント
15:ケーブル
16:光ファイバ
21:プローブケース
22:超音波検出器
41:導光部材
42:導波路
43:導光板
44:ツメ
45:屈折面
46:樹脂レンズ
47、48:反射膜
49:保持部材
50:超音波検出面
51:光出射面
60:光拡散音響部材
61:支持部材
62:透明ウレタンゲル
63:外装

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響波検出器素子を有するプローブに取り付けられる光音響用アタッチメントであって、
被検体に照射すべき光を導光し、前記プローブの音響波検出面と対向する光出射面から被検体に向けて前記導光した光を出射する導光部材を有する光音響用アタッチメント。
【請求項2】
前記導光部材が、取り付けられるプローブの本体に沿って前記音響波検出面側に光を導光する第1の部分と、前記光出射面を有し、前記第1の部分を通って導光された光を前記光出射面から被検体に向けて出射する第2の部分とを含むことを特徴とする請求項1に記載の光音響用アタッチメント。
【請求項3】
前記第1の部分が、前記プローブ本体に沿って導光した光を、前記光が導光されたプローブ本体の側面から見て前記音響波検出器素子側に屈折させて前記第2の部分に入射する屈折面を有することを特徴とする請求項2に記載の光音響用アタッチメント。
【請求項4】
前記第2の部分が、前記光出射面側に、第2の部分本体とは屈折率が異なる樹脂レンズを含むことを特徴とする請求項2又は3に記載の光音響用アタッチメント。
【請求項5】
前記樹脂レンズの屈折率が、前記第2の部分本体の屈折率よりも高いことを特徴とする請求項4に記載の光音響用アタッチメント。
【請求項6】
前記樹脂レンズが、前記光出射面から出射する光の出射角度が直角に近づくように入射光を屈折させるものであることを特徴とする請求項4又は5に記載の光音響用アタッチメント。
【請求項7】
前記樹脂レンズが、前記光出射面の中心線に向かって屈折率勾配を有することを特徴とする請求項3から5何れかに記載の光音響用アタッチメント。
【請求項8】
前記第2の部分が、前記光出射面の縁部の光を前記音響波検出面方向に反射する第1の反射膜と、該第1の反射膜で反射した光を前記光出射面側に反射する第2の反射膜とを有することを特徴とする請求項2又は3に記載の光音響用アタッチメント。
【請求項9】
前記第2の部分が、前記音響波検出面を覆うように配置された、音響波透過性及び光拡散性を有する光拡散音響部材を含むことを特徴とする請求項2から7何れかに記載の光音響用アタッチメント。
【請求項10】
前記光拡散音響部材が、音響波透過性を有する音響材料に無機顔料を混合して形成されるものであることを特徴とする請求項9に記載の光音響用アタッチメント。
【請求項11】
前記第1の部分が、導光する光の進行方向がプローブ本体の側面から見て前記音響波検出器素子側に傾くように、取り付けられるプローブの本体に対して傾けられていることを特徴とする請求項2から10何れかに記載の光音響用アタッチメント。
【請求項12】
前記第2の部分が透明ウレタンゲルを含むことを特徴とする請求項1から11何れかに記載の光音響用アタッチメント。
【請求項13】
前記第2の部分が、光透過性を有し、前記透明ウレタンゴムを包み込んで支持する支持部材を更に含むことを特徴とする請求項12に記載の光音響用アタッチメント。
【請求項14】
前記導光部材を支持する外装を備えており、該外装が白色で形成されていることを特徴とする請求項1から13何れかに記載の光音響用アタッチメント。
【請求項15】
プローブ本体内に配置された音響波検出器素子と、
前記プローブ本体に対して取り付けられる光音響用アタッチメントであって、被検体に照射すべき光を導光し、前記音響波検出器素子が設けられた音響波検出面と対向する光出射面からから被検体に向けて前記導光した光を出射する導光部材を有する光音響用アタッチメントとを備えるプローブ。
【請求項16】
前記光音響用アタッチメントが、前記プローブ本体に沿って前記音響波検出面側に光を導光する第1の部分と、前記光出射面を有し、前記第1の部分を通って導光された光を前記光出射面から被検体に向けて出射する第2の部分とを含むことを特徴とする請求項15に記載のプローブ。
【請求項17】
前記第2の部分が、前記光出射面の縁部の光を前記音響波検出面方向に反射する第1の反射膜を有し、
前記音響波検出器素子の音響波検出面側の表面に、前記第1の反射膜で反射した光を前記光出射面側に反射する第2の反射膜が形成されていることを特徴とする請求項16に記載のプローブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−48892(P2013−48892A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−159395(P2012−159395)
【出願日】平成24年7月18日(2012.7.18)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】