説明

免疫アジュバントとして有用な糖脂質の類似体

本発明は、さまざまな抗原によって誘発される免疫応答を増大させるアルファガラクトシルセラミドの類似体を提供する。本発明は、ワクチンの有効性を増加させるためにこうした化合物を使用する方法も提供する。一局面において、本明細書に記載される一般的な構造に対応する、α−GalCerの類似体である新たなクラスの免疫原性化合物と、その化合物の調製のための新しい合成法と、ワクチンの有効性を高めるためのその化合物の使用とを提供する。これらの化合物はα−GalCerよりも改善された薬物動態学的性質を提供し、抗原またはワクチンが投与されるときには免疫応答を同様に高める効果がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NKT細胞(ナチュラルキラー(natural killer)T細胞)に対するリガンドである糖脂質類似体と、その糖脂質類似体を作製する方法と、ワクチン接種の際に抗体価のレベルを上げるための免疫増強剤としてその糖脂質類似体を使用する方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、糖脂質にはいくつかの異なる免疫学的特性があることが明らかになった。中でも、糖脂質はCD1分子によって提示されるときに抗原として作用できること、およびワクチンと組合せて投与されるときに免疫応答を改善できることが示された。
【0003】
CD1分子は、周知の主要組織適合遺伝子複合体(Major Histocompatibility Complex:MHC)分子と同様の機能を有する高度に保存された抗原提示タンパク質のファミリーである。MHCタンパク質がペプチドを提示するのに対し、CD1タンパク質はTリンパ球に結合してさまざまな脂質および糖脂質を表示する。
【0004】
ヒトにおいては、さまざまなCD1アイソフォームが配列の類似性に基づいて、グループI(CD1a、b、cおよびe)ならびにグループII(CD1d)と分類されている[非特許文献1]。ヒトCD1a[非特許文献2]、hCD1b[非特許文献3]、hCD1d[非特許文献4]およびマウス(mouse)CD1d(mCD1d)[非特許文献5;非特許文献6]の、しばしばそれぞれの抗原と複合体となった結晶構造から、それらのそれぞれの結合溝の形態の違いによってある程度のリガンド特異性が得られる一方で、多様な組の抗原脂質を提示する能力を維持できることが明らかになった。
【0005】
特に、mCD1dは全体的な折り畳みがMHCクラスIタンパク質に似ていることが明らかになった。α鎖は3つのドメイン(α1、α2およびα3)に折り畳まれてβ2mと密接に関係している。膜遠位のα1およびα2ドメインは結合溝を形成し、これは8鎖の逆平行βシートフロアを2つの逆平行αへリックスが横切ったものからなる[非特許文献5]。mCD1dはさらに、結合溝に存在するA’およびF’と呼ばれる2つの疎水性ポケットの中に長い脂質尾部を収容できることが示された。さらに、hCD1bおよびhCD1aの構造から、CD1は抗原糖脂質を与えられると疎水性溝中に脂質部分を結合しながら親水性の糖部分がT細胞受容体に接触できるようにすることが示された。
【0006】
哺乳動物およびマイコバクテリアの脂質は、ヒトCD1a、CD1b、CD1cおよびCD1dによって提示されることが公知である[非特許文献7]。海綿のAgelas mauritianusに見出された脂質であるアルファガラクトシルセラミド(Alpha−galactosyl ceramide:α−GalCer)は、これまでのところ最も広く研究されたCD1dに対するリガンドである。α−GalCerはCD1dに結合すると、マウスにおけるVα14zナチュラルキラーT細胞(Vα14z NKT細胞)およびヒト相同体Vα24z NKT細胞による迅速なTh1およびTh2サイトカイン生成を刺激し、現在ではモデル抗原と考えることができる。しかし、海を起源とするαガラクトシルセラミドがなぜこんなに強力な作用薬であるのかは謎であるため、哺乳動物におけるその生理的重要性はなおも不明である。
【0007】
【化1】

ナチュラルキラー(NK)細胞は典型的に、正常な末梢血中の単核細胞画分のおよそ10%から15%を含む。歴史的には、NK細胞は最初、予め免疫化または活性化することなく特定の腫瘍細胞を溶解する能力によって同定された。NK細胞はサイトカイン生成においても重要な役割をしており、これは癌および感染の制御、ならびにおそらくは胎児の着床に関与している可能性がある。
【0008】
α−GalCerを免疫原性タンパク質とともに投与することによって、樹状細胞との相互作用を通じた可溶性抗原に対するCD4+およびCD8+NKT細胞応答が高められた[非特許文献8]。α−GalCerの投与によってBリンパ球の応答も高められ、追加免疫に応答してより高い頻度のメモリーB細胞およびより高い抗体レベルを誘発した[非特許文献9]。これは特定のペプチド抗原の効力を高めるために用いられた。特許文献1。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2005/000348号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Calabi,F.;Jarvis,J.M.;Martin,L.;Milstein,C.,Two classes of CD1 genes,Eur.J.Immunol.1989,19,(2),285−92
【非特許文献2】Zajonc,D.M.ら、Nat.Immunol.(2003),4,808−815
【非特許文献3】Gadola,S.D.ら、.Nat.Immunol.(2002),3,721−726
【非特許文献4】Koch,M.ら、Nat.Immunol.(2005),6,819−826
【非特許文献5】Zeng,Z.−H.ら、Science(1997),277,339−345
【非特許文献6】Zajonc,D.M.ら、J.Exp.Med.(2005),202,1517−1526
【非特許文献7】Porcelli,S.A.& Modlin,R.L.(1999)Annu.Rev.Immunol.17,297−329
【非特許文献8】Ian F.Hermans,I.F.ら、,J.Immunol.(2003),171,5140−5147
【非特許文献9】Galli G.ら、PNAS,(2007),104;3984−3989
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下に示す一般的な構造に対応する、α−GalCerの類似体である新たなクラスの免疫原性化合物と、その化合物の調製のための新しい合成法と、ワクチンの有効性を高めるためのその化合物の使用とに関する。これらの化合物はα−GalCerよりも改善された薬物動態学的性質を提供し、抗原またはワクチンが投与されるときには免疫応答を同様に高める効果がある。
【0012】
1つの局面において、本発明は、式Iの化合物およびこうした化合物またはその薬学的に受容可能な塩を含有する組成物に関する:
【0013】
【化2】

ここでR、R、R、およびRは各々独立にHまたは保護基を表わし;
Xは置換可能なC4−C30ヒドロカルビル基(hydrocarbyl group)であり;
Yは2つまでの基で置換可能なC1−C6アルキレンまたはC2−C6アルケニレンリンカーであり;
Zは−ORであり、ここでRは骨格にヘテロ原子を含み得るC4−C20ヒドロカルビル基であり、任意に置換される。
【0014】
式Iの化合物を含有する組成物は薬学的組成物であってもよく、しばしば薬学的に受容可能な担体を含む。いくつかの実施形態において、この組成物は少なくとも1つの抗原をさらに含み、この抗原は所望の免疫応答を誘発できる能力によって選択される。本発明の特定の実施形態は、ワクチンと混合された式Iの化合物を含む。
【0015】
別の局面において、本発明は式Iの化合物を作製する方法と、式Iの化合物を作製するために有用な新規の中間体とに関する。
【0016】
別の局面において、本発明は、抗原に露出される対象に式Iの化合物を投与することによって抗原に対する免疫応答を高めるために、式Iの化合物を使用する方法に関する。特定の実施形態において、この方法はヒト対象への投与のためのワクチンの有効性を増加させるために有用である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】APC(THP1)によって提示されるときのマウスT細胞ハイブリドーマFF13の活性化によって合成化合物の活性を示す図である。T細胞活性化の尺度として、ELISAアッセイによって48時間培養後の培養培地へのIL2放出を定めた。y軸はIL2レベルをpg/mlで示す。x軸は糖脂質の量をμg/mlで示す。
【図2】化合物またはa−GalCerに露出したAPCと接触したNKTハイブリドーマ細胞によるIL−2放出を測定するアッセイにおいてテストされた4つの合成化合物の活性データをまとめた図である。
【図3】Balb/CマウスにおけるHI力価を測定するアッセイにおいてテストされた合成a−Gal GGおよびa−Gal LPのインビボ活性データをまとめた図である。抗−H3N2 HI力価を示す。
【図4】Balb/CマウスにおけるIgG力価を測定するアッセイにおいてテストされた合成a−Gal GGおよびa−Gal LPのインビボ活性データをまとめた図である。IgG力価はEU/mlで示される。グラフ中の3つ組の各々について、列は左から右にB、H1N1およびH3N2を表わす。
【図5】Balb/CマウスにおけるIgG2a/IgG1力価を測定するアッセイにおいてテストされた合成a−Gal GGおよびa−Gal LPのインビボ活性データをまとめた図である。IgG力価はEU/mlで示される。グラフ中の対の各々について、列は左から右にIgG2aおよびIgG1を表わす。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の化合物
本明細書において用いられる「ヒドロカルビル残基」とは、別様に指定されない限り、炭素および水素のみを含有する残基を示す。この残基は、脂肪族または芳香族であっても、直鎖、環状、分岐鎖、飽和または不飽和であっても、これらのあらゆる組合せであってもよい。しかし、そうした記載がある場合には、ヒドロカルビル残基はヒドロカルビル基自身の炭素および水素の構成員に加えて、またはその代わりにヘテロ原子を含有してもよい。よって、ヘテロ原子を含有することが特定的に示されているとき、ヒドロカルビル基はヒドロカルビル残基の「骨格」にヘテロ原子を含有してもよく、任意に置換されているとき、ヒドロカルビル残基は親ヒドロカルビル残基の1つまたはそれ以上の水素の代わりに1つまたはそれ以上のカルボニル基、アミノ基、ヒドロキシル基なども有していてもよい。
【0019】
本明細書において用いられる「無機残基」とは、炭素を含有しない残基を示す。その例にはハロ、ヒドロキシ、NOまたはNHが含まれるがこれに限定されない。
【0020】
本明細書において用いられる「アルキル」、「アルケニル」および「アルキニル」という用語は、直鎖、分岐鎖および環状の一価のヒドロカルビルラジカル、ならびにこれらの組合せを含み、これらは未置換のときにはCおよびHのみを含有する。その例にはメチル、エチル、イソブチル、シクロヘキシル、シクロペンチルエチル、2−プロペニル、3−ブチニルなどが含まれる。本明細書においてはこうした基の各々における炭素原子の総数をしばしば記載しており、たとえばその基が最高10個の炭素原子を含有できるとき、それは1−10CまたはC1−C10もしくはC1−10と表わすことができる。たとえば、ヘテロアルキル基のようにヘテロ原子(典型的にはN、OおよびS)が炭素原子を置換できるとき、その基を説明する数はなおもたとえばC1−C6などと書かれるが、その数は基の中の炭素原子の数と、記載される環または鎖の中の炭素原子に対する置換として含まれるこうしたヘテロ原子の数との和を表わす。
【0021】
典型的に、本発明のアルキル、アルケニルおよびアルキニル置換基は、1−10C(アルキル)または2−10C(アルケニルもしくはアルキニル)を含有する。好ましくは、それらの置換基は1−8C(アルキル)または2−8C(アルケニルもしくはアルキニル)を含有する。時には、それらの置換基は1−4C(アルキル)または2−4C(アルケニルもしくはアルキニル)を含有する。単一の基が2つ以上のタイプの多重結合または2つ以上の多重結合を含んでもよい;こうした基は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含有するときには「アルケニル」という用語の定義に含まれ、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含有するときには「アルキニル」という用語に含まれる。
【0022】
アルキル、アルケニルおよびアルキニル基はしばしば、その置換が化学的に意味をなす程度まで置換される。典型的な置換基は、以下を含むがこれに限定されない:ハロ、=O、=N−CN、=N−OR、=NR、OR、NR、SR、SOR、SONR、NRSOR、NRCONR、NRCOOR、NRCOR、CN、COOR、CONR、OOCR、COR、およびNO、ここで各Rは独立にH、C1−C8アルキル、C2−C8ヘテロアルキル、C1−C8アシル、C2−C8ヘテロアシル、C2−C8アルケニル、C2−C8ヘテロアルケニル、C2−C8アルキニル、C2−C8ヘテロアルキニル、C6−C10アリール、またはC5−C10ヘテロアリールであり、各Rは任意にハロ、=O、=N−CN、=N−OR’、=NR’、OR’、NR’、SR’、SOR’、SONR’、NR’SOR’、NR’CONR’、NR’COOR’、NR’COR’、CN、COOR’、CONR’、OOCR’、COR’、およびNOで置換され、ここで各R’は独立にH、C1−C8アルキル、C2−C8ヘテロアルキル、C1−C8アシル、C2−C8ヘテロアシル、C6−C10アリール、またはC5−C10ヘテロアリールである。アルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、C1−C8アシル、C2−C8ヘテロアシル、C6−C10アリールまたはC5−C10ヘテロアリールで置換されてもよく、その各々が特定の基に対して適切な置換基によって置換されてもよい。
【0023】
「ヘテロアルキル」、「ヘテロアルケニル」および「ヘテロアルキニル」などは、対応するヒドロカルビル(アルキル、アルケニルおよびアルキニル)基と同様に定義されるが、「ヘテロ」という用語は、骨格残基に1〜3個のO、SもしくはNヘテロ原子またはその組合せを含有する基を示す;つまり、対応するアルキル、アルケニルまたはアルキニル基の少なくとも1つの炭素原子が指定のヘテロ原子の1つによって置換されて、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニルまたはヘテロアルキニル基を形成する。一般的に、アルキル、アルケニルおよびアルキニル基のヘテロ形に対する典型的かつ好ましいサイズは、対応するヒドロカルビル基と同じであり、ヘテロ形に存在し得る置換基はヒドロカルビル基に対して上述した置換基と同じである。化学的安定性の理由から、別様に指定されない限り、ニトロまたはスルホニル基のようにNまたはSにオキソ基が存在する場合を除き、こうした基は2つより多くの隣接するヘテロ原子を含まないことも理解される。
【0024】
本明細書において用いられる「アルキル」はシクロアルキルおよびシクロアルキルアルキル基を含むが、本明細書において「シクロアルキル」という用語は、環状炭素原子を介して接続される炭素環式非芳香族基を説明するために用いられてもよく、「シクロアルキルアルキル」はアルキルリンカーを通じて分子に接続された炭素環式非芳香族基を説明するために用いられてもよい。同様に、「ヘテロシクリル」は、少なくとも1つのヘテロ原子を環の構成員として含有し、かつCまたはNであってもよい環の原子を介して分子に接続される非芳香族環状基を説明するために用いられてもよく;「ヘテロシクリルアルキル」は、リンカーを通じて別の分子に接続されるこうした基を説明するために用いられてもよい。シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクリル、およびヘテロシクリルアルキル基に対して好適なサイズおよび置換基は、アルキル基に対して上述したものと同じである。本明細書において用いられるこれらの用語は、1つまたは2つの二重結合を含有する芳香族でない環も含む。
【0025】
本明細書において用いられる「アシル」は、カルボニル炭素原子の2つの利用可能な原子価位置の一方において付着されたアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアリールアルキルラジカルを含む基を包含し、ヘテロアシルとはカルボニル炭素以外の少なくとも1つの炭素がN、OおよびSから選択されるヘテロ原子によって置換された対応する基を示す。よってヘテロアシルは、たとえば−C(=O)ORおよび−C(=O)NRならびに−C(=O)−ヘテロアリールなどを含む。
【0026】
アシルおよびヘテロアシル基は、カルボニル炭素原子の開いた原子価を通じてあらゆる基または分子に付着して結合される。典型的に、それらはホルミル、アセチル、ピバロイルおよびベンゾイルを含むC1−C8アシル基、ならびにメトキシアセチル、エトキシカルボニルおよび4−ピリジノイルを含むC2−C8ヘテロアシル基である。アシルまたはヘテロアシル基を含むヒドロカルビル基、アリール基、およびこうした基のヘテロ形は、アシルまたはヘテロアシル基の対応する構成要素の各々に対する一般的に好適な置換基として本明細書に記載される置換基で置換されてもよい。
【0027】
「芳香族」部分または「アリール」部分とは、芳香性の周知の特徴を有する単環式または融合二環式の部分を示す;その例にはフェニルおよびナフチルが含まれる。同様に、「芳香族複素環」および「ヘテロアリール」とは、環の構成員としてO、SおよびNから選択される1つまたはそれ以上のヘテロ原子を含有するこうした単環式または融合二環式の環系を示す。ヘテロ原子を含むことによって、6員環だけでなく5員環の芳香性も可能になる。典型的な芳香族複素環系は、単環式C5−C6芳香族基、たとえばピリジル、ピリミジル、ピラジニル、チエニル、フラニル、ピロリル、ピラゾリル、チアゾリル、オキサゾリルおよびイミダゾリルなど、ならびにこれらの単環基の1つをフェニル環または芳香族複素環単環基のいずれかと融合してC8−C10二環基を形成することによって形成される融合二環式部分、たとえばインドリル、ベンズイミダゾリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、イソキノリル、キノリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾフラニル、ピラゾロピリジル、キナゾリニル、キノキサリニル、シンノリニルなどを含む。環系全体の電子分布の観点から芳香性の特徴を有するあらゆる単環式または融合環二環式の系がこの定義に含まれる。この定義は、少なくとも分子の残り部分に直接付着する環が芳香性の特徴を有するような二環基も含む。典型的に、この環系は5〜12個の環構成員原子を含有する。好ましくは、単環式ヘテロアリールは5〜6個の環構成員を含有し、二環式ヘテロアリールは8〜10個の環構成員を含有する。
【0028】
アリールおよびヘテロアリール部分は、C1−C8アルキル、C2−C8アルケニル、C2−C8アルキニル、C5−C12アリール、C1−C8アシル、およびこれらのヘテロ形を含むさまざまな置換基で置換されてもよく、これらの置換基の各々自身がさらに置換されてもよい;アリールおよびヘテロアリール部分に対するその他の置換基はハロ、OR、NR、SR、SOR、SONR、NRSOR、NRCONR、NRCOOR、NRCOR、CN、COOR、CONR、OOCR、COR、およびNOを含み、ここで各Rは独立にH、C1−C8アルキル、C2−C8ヘテロアルキル、C2−C8アルケニル、C2−C8ヘテロアルケニル、C2−C8アルキニル、C2−C8ヘテロアルキニル、C6−C10アリール、C5−C10ヘテロアリール、C7−C12アリールアルキル、またはC6−C12ヘテロアリールアルキルであり、各Rは任意に、アルキル基に対して前述したとおりに置換される。アリールまたはヘテロアリール基上の置換基は当然、各種のこうした置換基または置換基の各構成要素に対して好適であると本明細書に記載される基によってさらに置換されてもよい。よって、たとえばアリールアルキル置換基は、アリール部分において、アリール基に対して典型的であると本明細書に記載される置換基によって置換されてもよく、アルキル部分において、アルキル基に対して典型的または好適であると本明細書に記載される置換基によってさらに置換されてもよい。
【0029】
同様に、「アリールアルキル」および「ヘテロアリールアルキル」とは、置換または未置換の、飽和または不飽和の、環式または非環式のリンカーを含む、アルキレンなどのリンク基を通じて付着点に結合された芳香族および芳香族複素環系を示す。典型的に、リンカーはC1−C8アルキルまたはそのヘテロ形である。これらのリンカーは、カルボニル基をも含むことによって、アシルまたはヘテロアシル部分としての置換基を提供できるようにしてもよい。アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキル基中のアリールまたはヘテロアリール環は、アリール基に対して上述したものと同じ置換基で置換されてもよい。好ましくは、アリールアルキル基は、アリール基に対して上に定義された基で任意に置換されるフェニル環と、未置換であるかまたは1つもしくは2つのC1−C4アルキル基もしくはヘテロアルキル基で置換されるC1−C4アルキレンとを含み、アルキルまたはヘテロアルキル基は任意に環化してシクロプロパン、ジオキソランまたはオキサシクロペンタンなどの環を形成してもよい。同様に、ヘテロアリールアルキル基は好ましくは、アリール基の典型的な置換基として上述された基で任意に置換されるC5−C6単環式ヘテロアリール基と、未置換であるかまたは1つもしくは2つのC1−C4アルキル基もしくはヘテロアルキル基で置換されるC1−C4アルキレンとを含むか、または任意に置換されるフェニル環もしくはC5−C6単環式ヘテロアリールと、未置換であるかまたは1つもしくは2つのC1−C4アルキルもしくはヘテロアルキル基で置換されるC1−C4ヘテロアルキレンとを含み、アルキルまたはヘテロアルキル基は任意に環化してシクロプロパン、ジオキソランまたはオキサシクロペンタンなどの環を形成してもよい。
【0030】
アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキル基が任意に置換されると記載されるとき、置換基はその基のアルキルまたはヘテロアルキル部分にあっても、アリールまたはヘテロアリール部分にあってもよい。アルキルまたはヘテロアルキル部分に任意に存在する置換基は、アルキル基に対して一般的に上述されたものと同じである;アリールまたはヘテロアリール部分に任意に存在する置換基は、アリール基に対して一般的に上述されたものと同じである。
【0031】
本明細書において用いられる「アリールアルキル」基は、未置換のときにはヒドロカルビル基であり、環およびアルキレンまたは類似のリンカー中の炭素原子の総数によって記載される。つまりベンジル基はC7アリールアルキル基であり、フェニルエチルはC8アリールアルキルである。
【0032】
上述の「ヘテロアリールアルキル」はリンク基を通じて付着されるアリール基を含む部分を示し、「アリールアルキル」と異なる点は、アリール部分の少なくとも1つの環原子またはリンク基の1つの原子がN、OおよびSから選択されるヘテロ原子であるところである。本明細書において、ヘテロアリールアルキル基は環および組合されるリンカーの原子の総数によって記載され、それはヘテロアルキルリンカーを通じて結合されたアリール基と;アルキレンなどのヒドロカルビルリンカーを通じて結合されたヘテロアリール基と;ヘテロアルキルリンカーを通じて結合されたヘテロアリール基とを含む。よって、たとえばC7ヘテロアリールアルキルは、ピリジルメチル、フェノキシ、およびN−ピロリルメトキシを含む。
【0033】
本明細書において用いられる「アルキレン」とは、二価のヒドロカルビル基を示す;二価であるため、アルキレンは2つの他の基をつなぎ合せることができる。典型的にアルキレンは−(CH−を示し、ここでnは1〜8であり、好ましくはnは1〜4であるが、指定されるときにはアルキレンは他の基で置換されてもよいし、他の長さであってもよいし、開いた原子価は鎖の反対側端部になくてもよい。よって−CH(Me)−および−C(Me)−もアルキレンと呼ばれてもよく、シクロプロパン−1,1−ジイルなどの環状基も同様である。アルキレン基が置換されるとき、置換基は、本明細書に記載されるとおり典型的にアルキル基に存在する置換基を含む。
【0034】
一般的に、置換基に含有されるあらゆるアルキル、アルケニル、アルキニル、アシル、またはアリールもしくはアリールアルキル基またはこれらの基の1つのあらゆるヘテロ形自身が、付加的な置換基によって任意に置換されてもよい。置換基が別様に記載されていなければ、これらの置換基の性質は一次置換基自体に関して挙げられるものと同様である。よって、たとえばRの実施形態がアルキルであるとき、このアルキルはRに対する実施形態として列挙される残りの置換基によって任意に置換されてもよく、ここではこの置換が化学的に意味をなし、かつこの置換がアルキル自身に対して与えられたサイズ制限を損なわないものとする;たとえば、アルキルまたはアルケニルによって置換されたアルキルは、これらの実施形態に対する炭素原子の上限を単純に超えるために含まれない。しかし、アリール、アミノ、アルコキシ、=Oなどによって置換されたアルキルは本発明の範囲に含まれ、これらの置換基の原子は、記載されるアルキル、アルケニルなどの基を説明するために用いられる数に入れられない。置換基の数が指定されていないとき、こうしたアルキル、アルケニル、アルキニル、アシルまたはアリール基の各々が、その利用可能な原子価に従っていくつかの置換基で置換されてもよい;特に、たとえばこれらの基のいずれかが、その利用可能な原子価のいずれかまたはすべてにおいてフッ素原子で置換されてもよい。
【0035】
本明細書において用いられる「ヘテロ形」とは、アルキル、アリールまたはアシルなどの基の誘導体を示し、ヘテロ形では所定の炭素環基の少なくとも1つの炭素原子がN、OおよびSから選択されるヘテロ原子によって置換されている。よってアルキル、アルケニル、アルキニル、アシル、アリールおよびアリールアルキルのヘテロ形は、それぞれヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロアシル、ヘテロアリールおよびヘテロアリールアルキルである。オキソ基がNまたはSに付けられてニトロまたはスルホニル基を形成する場合を除いて、通常3つ以上のN、OまたはS原子が連続的に接続されることはないことが理解される。たとえば、記載される基が骨格またはアルキル鎖に任意のヘテロ原子を含有できるとき、別様に指定されない限りそのヘテロ原子はN、OおよびSから選択される。
【0036】
本明細書において用いられる「任意に置換される」とは、記載される特定の基または複数の基が非水素置換基を有さなくてもよいし、その基または複数の基が1つまたはそれ以上の非水素置換基を有してもよいことを示す。別様に指定されていないとき、存在し得るこうした置換基の総数は、記載される基の非置換形に存在するH原子の数に等しい。カルボニル酸素(=O)などのように、任意の置換基が二重結合を介して付着されるとき、この基は2個の利用可能な原子価を取るため、利用可能な原子価の数に従って、含まれ得る置換基の総数が減る。
【0037】
本明細書において用いられる「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを含む。しばしばフルオロおよびクロロが好まれる。
【0038】
本明細書において用いられる「アミノ」はNHを示すが、アミノが「置換される」または「任意に置換される」と記載されるとき、この用語はNR’R’’を含み、ここでR’およびR’’は独立にHであるか、またはアルキル、アルケニル、アルキニル、アシル、アリール、もしくはアリールアルキル基であるか、またはこれらの基の1つのヘテロ形であり、このアルキル、アルケニル、アルキニル、アシル、アリール、もしくはアリールアルキル基、またはこれらの基の1つのヘテロ形の各々は、本明細書において対応の基に対して好適であると記載される置換基で任意に置換される。この用語は、R’およびR’’がともにつながれて3〜8員環を形成した形も含み、この形は飽和、不飽和または芳香族であってもよく、環構成員としてN、OおよびSから独立に選択される1〜3個のヘテロ原子を含有し、アルキル基に対して好適であると記載される置換基で任意に置換されるか、またはNR’R’’が芳香族基であるときには、ヘテロアリール基に対して典型的であると記載される置換基で任意に置換される。
【0039】
1つの局面において、本発明は式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩を提供する:
【0040】
【化3】

ここでR、R、R、およびRは各々独立にHまたは保護基を表わし;
Xは置換可能なC4−C30ヒドロカルビル基であり;
Yは2つまでの基で置換可能なC1−C6アルキレンまたはC2−C6アルケニレンリンカーであり;
Zは−ORであり、ここでRは骨格にヘテロ原子を含み得るC4−C20ヒドロカルビル基であり、かつ任意に置換される。
【0041】
式Iにおいて、R、R、R、およびRの各々がHであってもよく、またはこれらのうちの1つもしくはそれ以上が保護基であってもよい。いくつかの実施形態において、RおよびR;またはRおよびR;またはRおよびRがともに結合して環になってもよい;たとえば、これらの対のいずれかがアセトニド保護基を表わしてもよい。「保護基」は、従来のアシル、アルキル、アリールアルキル、シリル、および有機合成の際のヒドロキシルの保護のために典型的に用いられるその他の基を含む。特定の例は、メチル、ホルミル、アセチル、メトキシアセチル、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、メトキシメチル、2−トリメチルシリルエトキシメチル、ベンジル、ジメトキシベンジル、アリル、メトキシカルボニル、アリルオキシカルボニル、トリクロロエトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニルなどを含む。特に、R、R、R、およびRの各々が任意に置換されたC1−C10アシル基、たとえばホルミル、アセチル、プロピオニル、ピバロイル、ベンゾイル、メトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニルまたは置換ベンジルオキシカルボニル、t−ブトキシカルボニルなどであるか;または任意に置換されたアリールメチル基、たとえばベンジル、メトキシベンジルまたはジメトキシベンジルなどであってもよい。R、R、R、およびRの1つまたはそれ以上がこれらの保護基の1つを表わし、残りの基の各々はHであるような化合物が特に好ましい。なぜならこうした化合物は、さらなる脱保護を含む当該技術分野において周知の修飾によって、本発明のさらなる化合物の合成のための中間体の役割ができるためである;さらにこうした化合物は、直接作用するか、またはR、R、R、およびRの各々がHであるような化合物にインビボ転換された後に作用する免疫増強剤として投与されてもよい。
【0042】
式Iにおいて、Xは好ましくは4〜30個の炭素を有する直鎖または分岐鎖炭化水素であり、好ましくは10〜30個の炭素を含有する。20〜30個の炭素を有する直鎖アルキル基が好ましく、時には25炭素アルキル基が好ましい。Xはしばしばアルキル基であるが、いくつかの実施形態においてはアルケニル基またはアルキニル基である。Xは未置換であってもよいし、アルキル基に対する1つまたはそれ以上の好適な置換基によって置換されてもよい。Xに対する好ましい置換基は、ハロ、特にF;およびアルコキシ、特にC1−C6アルコキシ、たとえばメトキシ、エトキシ、イソプロポキシなどを含む。
【0043】
YはC1−C6アルキレンまたはC2−C6アルケニレンであってもよく、未置換であってもよいし、Yがアルキレンのときにはしばしばハロ、C1−C6アルキル、C1−C6アルコキシ、C1−C6ハロアルキル、およびヒドロキシルから選択される1つまたはそれ以上の基によって置換されてもよい。Yがアルケニレンのとき、好ましい置換基はハロ、C1−C6アルキル、C1−C6アルコキシ、およびC1−C6ハロアルキルを含む。Yの単一の炭素または隣接して接続される炭素の上に2つの置換基が存在するとき、置換基はともに結合されて、5〜6個の構成員を有し、任意にN、OおよびSから選択される2つまでのヘテロ原子を環構成員として有する環を形成してもよい。いくつかの実施形態において、YはCHもしくはCHCHもしくは(CHもしくは(CH、またはこれらの1つのヒドロキシル置換バージョンである。他の実施形態において、Yは−CH(OH)−CH(OH)−CH−である。特定の実施形態において、−Y−Zはこの式で表わされ、ここでZは上に定義されるとおりである。
【0044】
【化4】

Zは−OR基であり、ここでRは骨格にヘテロ原子を含み得るC4−C20ヒドロカルビル基であり、このヘテロ原子はときにはOであり、ときにはNまたはSであり、Rは未置換であっても置換されてもよい。好ましくは、Rは未置換であっても置換されてもよいC4−C20アルキル基であるか、または一般式−(CH−O−R1bの基であり、ここでmは1〜6であり、R1bはC1−C16アルキル、シクロアルキルまたはシクロアルキルアルキル基であり、R1bは未置換であってもよいし、典型的にアルキル基に存在する基、たとえばヒドロキシル、C1−C6アルコキシ、ハロなどで置換されてもよい。
【0045】
Zのいくつかの実施形態において、Rはシクロアルキルまたはアリールまたはヘテロアリール環に結合されたC1−C6アルキレン鎖、たとえば式−(CH−Rgなどの基であり、ここでrは1〜6の整数であり、Rgは3〜8構成員の脂環式もしくは複素環式の環、または5〜10構成員の芳香族もしくは芳香族複素環基であってもよい環を表わし;Rgは置換されてもよい。好適な例は−(CH2−4−Rgを含み、ここでRgは3〜8構成員の単環基、たとえばシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、フラニル、テトラヒドロフラニル、ピラニル、テトラヒドロピラニル、フェニル、ピリジル、ピリミジニル、チエニルなどである。
【0046】
本発明は、スフィンゴシン部分の脂質部分の形成前にガラクトシル環のアノマー炭素に付着するアグリコン部分とガラクトースとの間にグリコシド結合を形成することを伴う新たな合成アプローチも提供する。本発明は、本発明の化合物を作製するために有用な、式(IIa)および式(IIb)の中間体も提供する。よって、本発明は1つの局面において、一般式IIaまたはIIbの中間体を用いて上述の式Iの化合物を作製するための方法を提供する:
【0047】
【化5】

【0048】
【化6】

ここでNxは保護された窒素基、たとえばN、NHC(O)X、NHC(O)Jなど、またはイミド、たとえばスクシンイミドまたはフタルイミドなどであり;Jは任意に置換されたC1−C10アルキルまたは任意に置換されたC1−C10アルコキシまたは任意に置換されたベンジルオキシ基であり;YならびにR、R、R、およびRは式Iに対して定義されたものと同様である。
【0049】
式IIaおよびIIbの化合物に対して、R−Rの各々は好ましくは保護基であってHではない。好ましい保護基は、還元または水素化分解の条件下で容易に除去される基、たとえばベンジル、ジフェニルメチル、ベンジルオキシメチル、ベンジルオキシカルボニルなどを含む。
【0050】
本発明の特定の化合物は、当該技術分野において一般的に公知の方法を用いて、化合物7および10と例示されるようなこのタイプの一般的な中間体から得ることができる。化合物7および10によって例示される中間体は、適切に保護したα−D−ガラクトピラノシル−(1−5)−リキソフラノース二糖類から便利よく誘導され、ここでは下記に例示されるとおり、リキソース部分がスフィンゴシン類似体の極性部分の前駆体である。リキソフラノースの代わりに代替的な出発材料を用いてIIaおよびIIbのような中間体を与えることによって、本発明の他の化合物を同様に作製できる。これらの中間体は基Nxを含有し、これは式Iのアシルアミン−NHC(O)Xであってもよいし、保護された窒素、たとえばアジ化物(−N)など、またはスクシンイミドもしくはアシル化アミン−NHC(O)Jであってもよく、これは従来の方法によって遊離アミン(−NH)または式Iのアシルアミン−NHC(O)Xに転換できる。これらのアシル化アミンにおいて、Jは任意に置換されたC1−C10アルキル基、たとえばトリフルオロメチルまたはトリクロロメチルなどであってもよく;または任意に置換されたC1−C10アルコキシ基、たとえばメトキシ、エトキシ、2,2,2−トリクロロエトキシ、またはt−ブトキシなどであってもよく;または任意に置換されたベンジルオキシ基、たとえばベンジルオキシ、メトキシベンジルオキシ、ジメトキシベンジルオキシなどであってもよい。これらを当該技術分野において広く公知の方法によって窒素から取除いて遊離アミン(NH)を与えることができ、次いでこの遊離アミン(NH)を従来のアシル化条件を用いてアシル化して式Iの−C(O)X基を導入できる。本明細書の実施例に示されるとおり、アジ化物も同様に還元およびアシル化できる。Nxがイミドであるとき、それはヒドラジンによる処理などの公知の方法によって遊離アミンに転換できる。
【0051】
実施形態の1つにおいて、中間体7または10を遊離ヒドロキシル基でアルキル化するか、または多数の他の態様のいずれかで修飾することによって、直鎖または分岐鎖、飽和または不飽和であってもよいさまざまなR基を含み、かつ脂肪族もしくは芳香族の環、ヘテロ原子またはさまざまなその他の官能基を含み得る本発明のさまざまな化合物をもたらしてもよい。こうした方法の代表例には、アルキル化剤R−LGによる式IIaのアルコール化合物のアルキル化、および式IIbの化合物による式R−OHのアルコールのアルキル化が含まれ、この方法は、たとえば塩基を用いてアルキル化反応を促進するWilliamsonエーテル条件、ならびに典型的にホスフィンおよびアゾジカルボン酸を用いてアルキル化反応を促進するMitsunobu条件などの公知の条件下で行なわれる。
【0052】
いくつかの実施形態において、式IIaの中間体はアルキル化剤LG−RによってO−アルキル化されて式Iの化合物を生じる。Rは式IのR1に対して上述される基のいずれかであってもよい。他の実施形態においては、脱離基LGを有する式IIbの中間体が調製され、これはたとえば、塩化スルホニルまたはスルホン無水物によるスルホン化、またはCBrおよびトリフェニルホスフィンなどの公知の条件を用いたハロゲン化物への転換などの従来の手段によって、式IIaの化合物から作製されてもよい。次いで、式IIbの化合物を用いて式HO−Rのアルコールをアルキル化して、式Iの化合物を与える。これらの反応におけるRは上記に定義したとおりであり、遊離ヒドロキシルまたは遊離アミンを含むときには保護された形であってもよい。これらの反応におけるLGおよびLGは従来の離脱基を表わし、これはしばしばCl、Br、I、および任意に置換されたアルキルまたはアリールスルホン酸塩、たとえば−OSO−J’などから選択され、ここでJ’は任意に置換されたC1−C10アルキルまたは任意に置換されたアリールである。LGおよび/またはLGが表わし得る好適なアルキルまたはアリールスルホン酸塩は、たとえばメシル酸塩(メタンスルホン酸塩)、トシル化物(トルエンスルホン酸塩)、フェニルスルホン酸塩、トリフルオロメチルスルホン酸塩(トリフレート)などを含む。
【0053】
ガラクトース基上の特定の保護基を用いたスキームおよび例によって例示しているが、当該技術分野において周知であり本明細書において簡単に考察されるとおり、他の保護基を代わりに用いることもできる。好適な保護基ならびにその取り付けおよび除去のための方法は、本明細書において引用により援用されるWutsおよびGreene,Protective Groups in Organic Synthesis,第4版,Wiley Press(2006)に記載されている。
【0054】
スキーム1は中間体7の調製を例示している。試薬および条件:a)トリ−(1−ピロリジン)−ホスフィンオキシド、b)i.tBuOK、DMSO、80℃;ii.I、ピリジン/HO;c)NaBH、EtOH;d)PivCl、ピリジン、DCM、r.t.;e)クロロメタンスルホニルクロリド、ピリジン;f)NaN、DMF、85℃;g)BuNOH(40%aq)、ジオキサン。スキーム1は次のとおりである:
【0055】
【化7】

通常の当業者が認めるとおり、スキーム1の第1ステップにおける保護されたリキソースの代わりに他のアルコールを用いることによって、式Iの化合物に対するさまざまなY基を導入できる。特に、他の保護された糖の使用を用いて、このスキームに示されるリキソースによって与えられるものとは異なる相対または絶対立体化学を有するYの変形物を導入できる。
【0056】
ヒドロキシ基のアルキル化の後にアジ化物を還元してアミンにすることによって、化合物7から本発明のさまざまな化合物を容易に調製でき、ここでアミンを従来の方法によってアシル化して、式Iの化合物の−C(O)X−部分を取り付けてもよい。次いでガラクトシル環上のベンジル保護基を水素化分解によって、またはTMSIなどの他の手段によって除去でき;さらに以下に例示され、当該技術分野において公知であるとおり、穏やかな水性酸性条件下でアセトニド基を除去できる。これらの脱保護ステップの順序はここに挙げられる順序に限定されない。ベンジルの代わりに他の保護基が用いられるとき、その保護基は当該技術分野において公知の従来の手段によって除去できる。
【0057】
スキーム2は中間体10の調製を例示している。試薬および条件:a)Lindlar触媒、H、EtOH;b)ヘキサコサン酸、EDC、HOBT、DIPEA;c)BuNOH(40%aq)、ジオキサン。スキーム2は次のとおりである:
【0058】
【化8】

同様に、基Zが異なる化合物の合成に対する前駆体として、化合物10または異なるX基を有する化合物10の類似体を用いることができる。さまざまな公知の方法によってZを導入でき、中でも注目すべき方法は、たとえばハロゲン化アルキルまたは硫酸アルキルまたはスルホン酸アルキル(例、メシル酸塩またはトシル化物など)などの従来のアルキル化剤を用いて、塩基性条件下で化合物10の一級ヒドロキシルを直接アルキル化するものである。所望のXおよびZ基が取り付けられてから、上に考察したとおりに化合物を脱保護してもよい。よって、本明細書に例示される方法を用いることによって、本発明のさまざまな化合物を調製できる。
【0059】
スキーム3は、2つの一般的な中間体7および10を用いて、ヒドロキシル基をアルキル化し、(11に対してのみ)脂肪酸を導入し、最後に脱保護して式Iの選択された化合物を与えることによって、α−GalCerの特定のオキサ類似体を与える様子を例示する。
【0060】
【化9】

試薬および条件:a)KOH、18−クラウン−6、nBuOCHCHOMs、THF;b)NaH、nBuOCHCHOMs、DMF;c)i.Lindlar触媒、H、EtOH;ii.ヘキサコサン酸、EDC、HOBT、DIPEA;c)i.ジオキサン中の4N HCl、DCM−MeOH 5:1、ii.H、Pd(OH)/C、CHCl−MeOH 1:3。
【0061】
【化10】

ステップ(b)に対する異なるアルキル化剤を用いて、同様に化合物14〜16を作製した。当該技術分野において容易に入手可能な出発材料を用いて、これらの方法によって、異なるX、YおよびZ基を有する式Iのその他の化合物が容易に調製される。
【0062】
いくつかの実施形態において、本発明の化合物は水および水溶液に可溶性である。たとえば、化合物15は水に可溶性である。いくつかの実施形態において、本発明の化合物は、水溶液中で少なくとも約0.5mg/mL、1mg/mL、2mg/mL、5mg/mL、7.5mg/mL、10mg/mL、12.5mg/mL、15mg/mL、17.5mg/mL、20mg/mL、25mg/mL、30mg/mL、40mg/mL、50mg/mL、75mg/mL、100mg/mL、150mg/mL、または200mg/mLの溶解度を有する。他の実施形態において、本発明の化合物は他の相当する化合物よりも改善された水溶性を有する。
【0063】
本発明の化合物の生物学的評価には、細胞融合によって不死化されたマウスVα14iNKT細胞を用いて、APC(THP1)による提示に対するハイブリドーマFF13を与える。T細胞活性化の尺度として、ELISAアッセイによって48時間培養後の培養培地へのIL2放出を定めた。
【0064】
その結果、α−GalCerの合成糖脂質オキサ類似体は、APCによってマウスハイブリドーマに提示されるときにIL2の顕著な放出を刺激できることが示された。α−GalCerとの比較から、それらは類似の活性を有し、本発明の新規の化合物のいくつかはより効率的であることが明らかになった。酸素原子によるα−GalCerのメチレン基の置換は、これらの化合物がCD1dに与えられた後にはこれらの化合物の機能を妨げず、この置換はこれらの化合物がCD1dに与えられる際の生存性を高めてその薬物動態学的性質を改善できる。したがって、式Iの化合物を少なくとも1つの抗原とともに用いることによって、抗原によって誘発される免疫応答を増大できる。よって、本発明の化合物をワクチン投与に用いられる1つまたはそれ以上の抗原と組合せて用いることによって、抗原およびワクチンの能力を高めることができる。
【0065】
送達系
本発明の組成物は、少なくとも1つの式1の化合物が1つまたはそれ以上の薬学的に受容可能な賦形剤と混合されたものを含んでもよい。こうした組成物は対象にワクチン投与するためのワクチンとともに投与されてもよいし、ワクチン投与される対象にワクチンが投与されるのと同じ日に投与されてもよい。しばしば化合物は抗原またはワクチンと混合され、この2つは単一用量として、注射または経口摂取によって、または別様で投与される。典型的に、化合物は抗原送達系の部分として投与され、最も典型的には化合物は単一の組成物中で抗原またはワクチンと混合され、その組成物はあらゆる好適なワクチン組成物であってもよい。好適な系はエマルション、リポソームおよび微粒子を含む。よって組成物は、たとえば上述の作用薬を加えた水中油型エマルション、上述の作用薬を含むリポソーム、または上述の作用薬を含有および/または表示する微粒子などを含んでもよい。
【0066】
エマルション
水中油型(Oil−in−water)および油中水型エマルションをワクチンに用いることは公知である。O/Wエマルションが好ましく、これは典型的に少なくとも1つの油と少なくとも1つの界面活性剤とを含み、この油(類)および界面活性剤(類)は生分解性(代謝性)かつ生体適合性である。エマルション中の油滴は一般的に直径5μm未満であり、サブミクロンの直径であってもよく、こうした小さいサイズは安定なエマルションを与えるためのマイクロ流動化装置によって達成される。220nm未満のサイズの小滴は、フィルター滅菌を受けられるので好ましい。
【0067】
本発明は、たとえば動物(魚など)または植物供給源からの油などの油とともに用いられてもよい。植物油に対する供給源は、ナッツ、種子および穀物を含む。落花生油、大豆油、ヤシ油、およびオリーブ油は最も一般的に入手可能であり、ナッツ油を例示する。たとえばホホバ豆から得られるホホバ油が用いられてもよい。種子油はサフラワー油、綿実油、ヒマワリ種子油、ゴマ種子油などを含む。穀物群の中ではトウモロコシ油が最も容易に入手可能だが、他の穀類、たとえば小麦、カラスムギ、ライ麦、米、テフ、ライ小麦などの油も用いられてよい。グリセロールおよび1,2−プロパンジオールの6−10炭素脂肪酸エステルは、種子油では自然発生しないが、ナッツおよび種子油から出発する適切な材料の加水分解、分離およびエステル化によって調製されてもよい。哺乳動物の乳からの脂肪および油は代謝性であるため、本発明の実施において用いられてもよい。動物供給源から純粋な油を得るために必要な分離、精製、ケン化およびその他の手段に対する手順は、当該技術分野において周知である。ほとんどの魚は、容易に回収され得る代謝性油を含有する。たとえばタラ肝油、サメ肝油、およびクジラ蝋などのクジラ油などは、本明細書において用いられてもよい魚油のいくつかを例示するものである。いくつかの分岐鎖油は、5炭素イソプレン単位で生化学的に合成されて、一般的にテルペノイドと呼ばれる。サメ肝油は、スクアレン、2,6,10,15、19,23−ヘキサメチル−2,6,10,14,18,22−テトラコサヘキサエンとして公知の分岐不飽和テルペノイドを含有し、これは本明細書において特に好ましい。スクアレンの飽和類似体であるスクアランも好ましい油である。スクアレンおよびスクアランを含む魚油は、商業的供給源から容易に入手可能であるし、当該技術分野において公知の方法によって得られてもよい。その他の好ましい油はトコフェロールであり、α、β、γ、δ、εまたはξトコフェロールのいずれが用いられてもよいが、α−トコフェロールが好ましい(例、DL−α−トコフェロール)。油の混合物が用いられてもよい。
【0068】
界面活性剤はその「HLB」(親水性/新油性バランス(hydrophile/lipophile balance)によって分類できる。本発明の好ましい界面活性剤は、HLBが少なくとも10、好ましくは少なくとも15、より好ましくは少なくとも16である。本発明は、以下を含むがそれに限定されない界面活性剤とともに用いられてもよい:ポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤(一般的にTweenと呼ばれる)、特にポリソルベート20およびポリソルベート80;エチレンオキシド(ethylene oxide:EO)、プロピレンオキシド(propylene oxide:PO)、および/またはブチレンオキシド(butylene oxide:BO)の共重合体、DOWFAX(商標)の商品名で販売、たとえば直鎖EO/POブロック共重合体など;オクトキシノール、これは反復エトキシ(オキシ−1,2−エタンジイル)基の数が変動し得るが、オクトキシノール9(Triton X−100、またはt−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール)が特に興味深い;(オクチルフェノキシ)ポリエトキシエタノール(IGEPAL CA−630/NP−40);リン脂質、たとえばホスファチジルコリン(レシチン)など;ノニルフェノールエトキシレート、たとえばTergitol(商標)NPシリーズなど;ラウリル、セチル、ステアリルおよびオレイルアルコールに由来するポリオキシエチレン脂肪エーテル(Brij界面活性剤として公知)、たとえばトリエチレングリコールモノラウリルエーテル(Brij30)など;ならびにソルビタンエステル(一般的にはSPANとして公知)、たとえばソルビタントリオレエート(Span85)およびソルビタンモノラウレートなど。非イオン性の界面活性剤が好ましい。エマルションに含ませるために好ましい界面活性剤は、Tween80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)、Span85(ソルビタントリオレエート)、レシチンまたはTriton X−100である。
【0069】
たとえばTween80/Span85混合物などの界面活性剤の混合物が用いられてもよい。ポリオキシエチレンソルビタンエステル、たとえばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween80)などと、オクトキシノール、たとえばt−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(Triton X−100)などとの組合せも好適である。別の有用な組合せは、ラウレス9と、ポリオキシエチレンソルビタンエステルおよび/またはオクトキシノールとを含む。
【0070】
界面活性剤の好ましい量(重量%)は次のとおりである:ポリオキシエチレンソルビタンエステル(Tween80など)が0.01%から1%、特に約0.1%;オクチル−またはノニルフェノキシポリオキシエタノール(Triton X−100またはTritonシリーズの他の界面活性剤など)が0.001%から0.1%、特に0.005%から0.02%;ポリオキシエチレンエーテル(ラウレス9など)が0.1%から20%、好ましくは0.1%から10%、特に0.1%から1%または約0.5%。本発明とともに有用な特定の水中油型エマルションアジュバントは、以下を含むがこれに限定されない:
・スクアレン、Tween80、およびSpan85のサブミクロンエマルション。体積によるエマルションの組成は、約5%のスクアレン、約0.5%のポリソルベート80および約0.5%のSpan85であってもよい。重量では、これらの比率は4.3%のスクアレン、0.5%のポリソルベート80および0.48%のSpan85となる。このアジュバントは「MF59」として公知である。MF59エマルションは有利にはクエン酸イオン、たとえば10mMクエン酸ナトリウム緩衝液などを含む。
【0071】
・スクアレン、トコフェロール、およびTween80のエマルション。このエマルションはリン酸緩衝食塩水を含んでもよい。このエマルションはSpan85(例、1%で)および/またはレシチンも含んでもよい。これらのエマルションは、2%から10%のスクアレン、2%から10%のトコフェロール、および0.3%から3%のTween80を有してもよく、スクアレン:トコフェロールの重量比は好ましくは≦1であり、これはその方がより安定なエマルションが与えられるためである。スクアレンおよびTween80は約5:2の体積比で存在してもよい。こうしたエマルションの1つは、Tween80をPBSに溶解して2%溶液を与え、次いでこの溶液90mlを(5gのDL−α−トコフェロールおよび5mlのスクアレン)の混合物と混合し、次いで混合物をマイクロ流動化することによって作製できる。その結果得られるエマルションはサブミクロンの油滴を有してもよく、その油滴はたとえば平均直径が100nmから250nm、好ましくは約180nmなどである。
【0072】
・ポリソルベート(例、ポリソルベート80)、Triton界面活性剤(例、Triton X−100)およびトコフェロール(例、α−トコフェロールコハク酸塩)を含むエマルション。このエマルションは、これら3つの構成要素を約75:11:10の質量比で含んでもよく(例、750μg/mlのポリソルベート80、110μg/mlのTriton X−100、および100μg/mlのα−トコフェロールコハク酸塩)、これらの濃度は抗原からのこれらの構成要素のあらゆる寄与を含むべきである。このエマルションンはスクアレンも含んでもよい。このエマルションンは3d−MPLも含んでもよい。水相はリン酸緩衝液を含んでもよい。
【0073】
・スクアラン、ポリソルベート80およびポロキサマー401(「Pluronic(商標)L121」)のエマルション。このエマルションはリン酸緩衝食塩水、pH7.4中で調合されてもよい。このエマルションはムラミルジペプチドに対する有用な送達媒体であり、「SAF−1」アジュバント中でスレオニルMDPとともに用いられてきた(0.05〜1%のThr−MDP、5%のスクアラン、2.5%のPluronic L121および0.2%のポリソルベート80)。このエマルションはThr−MDPなしで、「AF」アジュバント中などで用いられてもよい(5%のスクアラン、1.25%のPluronic L121および0.2%のポリソルベート80)。マイクロ流動化が好ましい。Hariharan,ら、,Cancer Res.Vol55,3486−89(1995)。
【0074】
・スクアレン、トコフェロール、およびTriton界面活性剤(例、Triton X−100)のエマルション。このエマルションは3d−MPLも含んでもよい。このエマルションはリン酸緩衝液を含有してもよい。
【0075】
・0.5〜50%の油、0.1〜10%のリン脂質、および0.05〜5%の非イオン性界面活性剤を有するエマルション。国際公開95/11700号に記載されるとおり、好ましいリン脂質構成要素は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、スフィンゴミエリンおよびカルジオリピンである。サブミクロンの小滴サイズが有利である。
【0076】
・非代謝性の油(軽油など)および少なくとも1つの界面活性剤(レシチン、Tween80またはSpan80など)の、サブミクロン水中油型エマルション。添加剤、たとえばQuilAサポニン、コレステロール、サポニン親油性複合物(GPI−0100など、グルクロン酸のカルボキシル基を介してデスアシルサポニンに脂肪族アミンを加えることによって生成される)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミドおよび/またはN,N−ジオクタデシル−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)プロパンジアミンなどが含まれてもよい。
【0077】
・サポニン(例、QuilAまたはQS21)およびステロール(例、コレステロール)がヘリカルミセルとして関わっているエマルション。国際公開2005/097181号を参照。
【0078】
・鉱油、非イオン性親油性エトキシル化脂肪アルコール、および非イオン性親水性界面活性剤(例、エトキシル化脂肪アルコールおよび/またはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体)を含むエマルション。国際公開2006/113373号を参照。
【0079】
・鉱油、非イオン性親水性エトキシル化脂肪アルコール、および非イオン性親油性界面活性剤(例、エトキシル化脂肪アルコールおよび/またはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体)を含むエマルション。国際公開2006/113373号を参照。
【0080】
サブミクロンの油滴直径を有する、スクアレンを含む水中油型エマルションが理想的である。
【0081】
リポソーム
リポソームは、水性の区画を囲む脂質二重層に基づく小胞構造である。当該技術分野においてはさまざまなタイプのリポソームが公知である。リポソームは、そのサイズ、脂質組成、表面電荷(カチオン性、中性またはアニオン性)、ならびにリン脂質二重層の数および流動性などの物理化学的性質が広く変動し得る。たとえば、リポソームはリン脂質(中性および/または負に帯電)および/またはコレステロールのみで構成されていてもよい。リポソームは単層膜または多重膜であってもよい。アジュバントとしてのリポソームの使用は、たとえばU.S.6,090,406号;US5,916,588号;EP−A−0626169号などに記載される。
【0082】
微粒子
微粒子をアジュバントとして使用することが記載されており、たとえば国際公開98/33487号およびVaccine Adjuvants:Preparation Methods and Research Protocols,Methods in Molecular Medicine,第42号、O’Hagan編などを参照されたい。好ましい微粒子は生分解性の非毒性ポリマーから作られる。たとえば、微粒子は以下からなる群より選択されるポリマーから作られてもよい:ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリオルトエステル、ポリ無水物、およびポリシアノアクリレート。これらのポリマーの共重合体、またはたとえばD,L−ラクチドとカプロラクトンとの共重合体などが用いられてもよい。
【0083】
好ましいポリマーはポリ(α−ヒドロキシ酸)であり、より好ましくはポリ(L−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド)、およびポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)からなる群より選択されるポリマーである。最も好ましいポリマーはポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)(poly(D,L−lactide−co−glycolide))ポリマーであり、「PLG」と呼ばれる。好ましいポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)ポリマーは、そのラクチド/グリコリドのモル比の範囲が25:75から75:25、より好ましくは40:60から60:40、たとえば約50:50のものである。50:50のPLGポリマーは50%のD,L−ラクチドと50%のグリコリドとを含有し、迅速に再吸収する共重合体を与えるのに対し、75:25PLGはもっとゆっくり分解し、85:15および90:10はさらにもっとゆっくり分解するが、これはラクチド成分が増加したためである。
【0084】
これらのポリマーはさまざまな分子量のものが入手可能であり、所与の抗原に対する適切な分子量は当業者によって容易に決定される。たとえばポリラクチドに対する好適な分子量は、約2000から5000のオーダーである。PLGに対する好適な分子量は一般的に約10,000から約200,000、好ましくは約15,000から約150,000、最も好ましくは約50,000から約100,000の範囲である。有用な範囲は30,000ダルトンから70,000ダルトンである。
【0085】
微粒子は直径が約100nmから約150μmの範囲であってもよく、より好ましくは直径が約200nmから約30μm、最も好ましくは直径が約500nmから約10μmの範囲であってもよい。微粒子は典型的に実質的に球形となる。
【0086】
微粒子はさまざまな態様で作製できる。たとえば、ダブルエマルション/溶媒蒸発技術が公知であり、これはポリマー溶液の小滴からなる一次エマルションの形成を含み、その後この一次エマルションが粒子安定剤/界面活性剤を含有する連続的な水相と混合される。より特定的には、水中油中水型(water−in−oil−in−water:w/o/w)溶媒蒸発系を用いて微粒子を形成してもよい。この技術においては、特定のポリマーを、たとえば酢酸エチル、ジメチルクロリド(塩化メチレンおよびジクロロメタンとも呼ばれる)、アセトニトリル、アセトン、クロロホルムなどの有機溶媒と組合せる。ポリマーは有機溶媒中に約2〜15%、より好ましくは約4〜10%、最も好ましくは6%の溶液で与えられる。ポリマー溶液は、たとえばホモジナイザーなどを用いて乳化される。次いでこのエマルションを、より大量の、たとえばポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol:PVA)またはポリビニルピロリドンなどのエマルション安定剤の水溶液と組合せる。エマルション安定剤は典型的に約2〜15%溶液で、より典型的には約4〜10%溶液で与えられる。次いで混合物をホモジナイズして安定なw/o/wダブルエマルションを生成する。次いで有機溶媒を蒸発させる。製剤パラメータを操作して、小さい(<5μm)微粒子および大きい(>30μm)微粒子を調製させてもよい。たとえば、撹拌を減少させると、内側相体積の増加と同様に、より大きな微粒子がもたらされる。粒子サイズはルーチンの方法によって決定できる。
【0087】
ダブルエマルション技術の使用と同様に、単一エマルション技術も用いられてもよい。噴霧乾燥およびコアセルベーションを用いて、またはエアサスペンションコーティング技術、たとえばパンコーティングおよびWursterコーティングなどによって微粒子を形成することもできる。イオン性ゲル化を用いてもよい。
【0088】
調製後、微粒子はそのまま保存されてもよいし、さらなる使用のために凍結乾燥されてもよい。
【0089】
微粒子を任意に処理して、(例、SDSによって)負に帯電した表面または(例、CTABなどのカチオン性界面活性剤によって)正に帯電した表面を有するようにさせてもよい。表面特性の変化によって、吸着すべき抗原に従って吸着特性が変化し得る。
【0090】
さらなる免疫活性構成要素
本明細書に記載される化合物に加えて、本発明の組成物は付加的な免疫賦活性構成要素を含んでもよい。たとえば、本発明の組成物は以下の1つまたはそれ以上を含んでもよい:アルミニウム塩;カルシウム塩;サイトカイン;CD40リガンド;サポニン;および/または免疫賦活性複合体(immunostimulatory complex:ISCOM)。しかし、いくつかの実施形態において、組成物はこうした付加的な免疫賦活性構成要素を含有しない。
【0091】
アルミニウム塩
アルミニウム塩は本発明の組成物に含まれても含まれなくてもよい。好適な塩は、水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウムとして当該技術分野において公知のアジュバントを含む。これらは従来からの名前であるが、どちらも存在する実際の化学的化合物を正確に説明するものではないため、単に便宜上用いられるものである。本発明は、一般的にアジュバントとして用いられる「水酸化物」または「リン酸塩」アジュバントのいずれかを用いてもよい。
【0092】
「水酸化アルミニウム」として公知のアジュバントは典型的にオキシ水酸化アルミニウム塩であり、これは通常少なくとも部分的に結晶である。オキシ水酸化アルミニウムは式AlO(OH)で表わすことができ、他のアルミニウム化合物、たとえば水酸化アルミニウムAl(OH)などとの区別は、赤外線(infrared:IR)分光法によって、特に1070cm−1の吸着バンドおよび3090〜3100cm−1の強い肩部の存在によって付けられる。Vaccine Design,第9章。水酸化アルミニウムアジュバントの結晶化度は、半分の高さにおける回折バンドの幅(width of the diffraction band at half height:WHH)によって反映され、結晶性の低い粒子は微結晶サイズがより小さいために、より大きな線の広がりを見せる。WHHが増加すると表面積が増加し、より高いWHH値を有するアジュバントは抗原吸着に対する容量が大きいことが示されている。(例、透過型電子顕微鏡写真に見られるとおり)繊維状の形態は水酸化アルミニウムアジュバントにとって典型的である。水酸化アルミニウムアジュバントのpIは典型的に約11であり、すなわちアジュバント自身が生理的pHにおいて正の表面電荷を有する。
【0093】
「リン酸アルミニウム」として公知のアジュバントは典型的にアルミニウムヒドロキシリン酸塩であり、しばしば少量の硫酸塩も含有する(すなわち硫酸アルミニウムヒドロキシリン酸塩)。それらは析出によって得られてもよく、析出の際の反応条件および濃度は、塩中のヒドロキシルに対するリン酸の置換度に影響する。ヒドロキシリン酸塩は一般的に、PO/Alモル比が0.3から1.2の間である。ヒドロキシリン酸塩は、ヒドロキシル基の存在によって厳密なAlPOと区別できる。たとえば、(例、200℃に加熱されたときの)3164cm−1におけるIRスペクトルバンドは、構造的ヒドロキシルの存在を示す。VACCINE DESIGN:THE SUBUNIT AND ADJUVANT APPROACH(Powell & Newman編),第9章、Plenum Press(1995)。
【0094】
リン酸アルミニウムアジュバントのPO/Al3+モル比は一般的に0.3から1.2の間、好ましくは0.8から1.2の間、より好ましくは0.95±0.1である。リン酸アルミニウムは一般的に、特にヒドロキシリン酸塩に対して、アモルファスである。典型的なアジュバントは、0.6mgのAl3+/mlが含まれる、PO/Alモル比が0.84から0.92の間のアモルファスアルミニウムヒドロキシリン酸塩である。リン酸アルミニウムは一般的に粒子状である(例、透過型電子顕微鏡写真に見られるプレート様の形態)。粒子の典型的な直径は、あらゆる抗原吸着後に0.5〜20μm(例、約5〜10μm)の範囲である。
【0095】
リン酸アルミニウムのゼロ電荷点(point of zero charge:PZC)は、ヒドロキシルに対するリン酸の置換度に反比例し、この置換度は析出によって塩を調製するために用いられた反応条件および反応物の濃度に依存して変動し得る。PZCは、溶液中の遊離リン酸イオンの濃度を変えることによって(リン酸が多い=より酸性のPZC)、またはヒスチジン緩衝液などの緩衝液を加える(PZCをより塩基性にする)ことによっても変えられる。本発明に従って用いられるリン酸アルミニウムは、一般的にPZCが4.0から7.0の間、より好ましくは5.0から6.5の間であり、たとえば約5.7などである。
【0096】
水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウム両方の混合物を用いることも可能である。この場合、リン酸アルミニウムの方が水酸化アルミニウムより多くてもよく、たとえば重量比が少なくとも2:1、たとえば≧5:1、≧6:1、≧7:1、≧8:1、≧9:1などであってもよい。
【0097】
患者への投与のための組成物におけるAl+++の濃度は、好ましくは10mg/ml未満、たとえば≦5mg/ml、≦4mg/ml、≦3mg/ml、≦2mg/ml、≦1mg/mlなどである。好ましい範囲は0.3mg/mlから1mg/mlの間である。最大0.85mg/用量であることが好ましい。
【0098】
カルシウム塩
本発明の組成物はリン酸カルシウムアジュバントを含んでも含まなくてもよい。以下により詳細に説明するとおり、さまざまな好適な形のリン酸カルシウムが公知である。
【0099】
Vaccine Designの第8章は、抗原の存在下での塩のインサイツ析出によって、または予め形成された塩への吸着によって、抗原がリン酸カルシウムに吸着できる様子を考察している。
【0100】
その他の公知のアジュバントはリン酸カルシウムを含む。アジュバントは厳密なCa(POではなく、式Ca10−x(HPO(PO6−x(OH)2−xの不定比性ヒドロキシアパタイトであることが報告されており、そのpH依存性表面電荷はゼロ電荷点(PZC)が5.5である。このアジュバントは約10nm×150nmの寸法の針様粒子、および直径約20〜30nmの不規則な形のプレートを形成できる。好適なリン酸カルシウム組成物は、たとえば米国特許第5,676,976号;国際公開00/46147号;国際公開03/051394号;米国特許第6,355,271号;および米国特許第5,851,670号などに記載される。
【0101】
リン酸カルシウムアジュバントのCaのPに対するモル比は、たとえば1.35から1.83の間などで変動できる。アジュバントの吸着特性は、析出の際に用いられる条件に依存して変動することが見出されており、たとえばゆっくりした混合で得られるアジュバントは、速い混合によって形成されるアジュバントよりも吸着容量が低くなる可能性がある。
【0102】
Ca++として測定されるリン酸カルシウムの量は、0.1mg/mlから10mg/mlの間であってもよく、たとえば0.5〜5mg/mlの間、好ましくは0.75〜3mg/ml、0.9〜1.5mg/ml、または約1mg/mlであってもよい。
【0103】
リン酸カルシウムアジュバントは抗原を吸着する能力を有する。所与の抗原に対して、その抗原の総量の少なくとも80重量%(例、≧85%、≧90%、≧92.5%、≧95%、≧97.5%、≧97.5%、≧98%、≧99%、≧99.5%など)が吸着される。リン酸カルシウムアジュバントは不溶性で、典型的には粒子状のため、遠心分離の後に固体または可溶性材料の1つ(または両方)における抗原の量を定めるステップを含む方法によって、吸着度を便利よく測定できる。
【0104】
抗原
本発明は、細菌抗原、ウイルス抗原、真菌抗原、原生動物抗原、腫瘍関連抗原などを含むさまざまな異なる抗原とともに使用できる。
【0105】
細菌抗原は、以下を含むがこれに限定されないバクテリアからの抗原であってもよい:Neisseria(N.meningitidis、N.gonorrhoeaeなど)、Streptococcus(S.agalactiae、S.pneumoniae、S.pyogenes、S.mutansなど)、Staphylococcus(S.aureusなど)、Corynebacterium diphtheriae、Clostridium(C.difficle、C.tetaniなど)、Vibrio cholerae、Mycobacterium(M.tuberculosisなど)、Bordetella pertussis、Helicobacter pylori、Haemophilus influenzae、Borrelia burgdorferi、Chlamydia(C.trachomatis、C.pneumoniaeなど)、Yersinia pestis、Porphyramonas gingivalis、Moraxella catarrhalis。
【0106】
原生動物抗原は、以下を含むがこれに限定されない原生動物からの抗原であってもよい:Plasmodium(P.falciparum、P.vivax、P.malariae、P.ovaleなど)。
【0107】
ウイルス抗原は、以下を含むがこれに限定されないウイルスからの抗原であってもよい:A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、麻疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、風疹ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、インフルエンザウイルス、ウエストナイルウイルス、SARSコロナウイルス、ヒト免疫不全症ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、デング熱ウイルス、黄熱ウイルス、日本脳炎ウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、単純疱疹ウイルス、エプスタインバーウイルス、ヒトサイトメガロウイルス、ヒト乳頭腫ウイルス。
【0108】
抗原は、たとえばバクテリア全体、ビリオン全体、不活性化バクテリア、不活性化ビリオン、精製タンパク質、精製糖類、複合糖質などのさまざまな形を取ってもよい。しかし、タンパク質を投与する代わりに、インビボで翻訳されてインサイツでタンパク質を与える核酸を投与することも可能である。
【0109】
糖抗原が用いられるとき、その抗原は免疫原性を高めるために担体タンパク質に結合されることが好ましい。必要であればあらゆる好適なリンカーとともに、あらゆる好適な結合反応が用いられてもよい。
【0110】
いくつかの実施形態において、抗原は免疫賦活薬の1つに結合されてもよい。
【0111】
薬学的組成物
本発明の組成物は薬学的に受容可能である。本発明の組成物は、式Iの免疫賦活薬に加えて構成要素を含んでもよい。本発明の組成物は典型的に、1つまたはそれ以上の医薬担体(単数または複数)および/または賦形剤(単数または複数)を含む。こうした構成要素の詳細な考察は、REMINGTION:THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY,第20版(2000)において得られる。
【0112】
組成物は一般的に水性の形であり、しばしば等張性である。浸透圧を調節するために、ナトリウム塩などの生理学的な塩を含むことが好ましい。塩化ナトリウム(NaCl)が好ましく、これは1mg/mlから20mg/mlの間で存在してもよい。存在し得るその他の塩には、塩化カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二ナトリウム無水物、塩化マグネシウム、塩化カルシウムなどが含まれる。
【0113】
組成物は一般的に、重量オスモル濃度が200mOsm/kgから400mOsm/kgの間、好ましくは240〜360mOsm/kgの間、より好ましくは290〜310mOsm/kgの範囲内である。
【0114】
組成物は1つまたはそれ以上の緩衝液を含んでもよい。典型的な緩衝液は以下を含む:リン酸緩衝液;Tris緩衝液;ホウ酸塩緩衝液;コハク酸塩緩衝液;ヒスチジン緩衝液(特に水酸化アルミニウムアジュバントとともに);またはクエン酸塩緩衝液。緩衝液は典型的には5〜20mMの範囲で含まれる。
【0115】
組成物のpHは、一般的には5.0から8.1の間であり、より典型的には6.0から8.0の間、たとえば6.5から7.5など、または7.0から7.8の間である。
【0116】
組成物は好ましくは無菌である。組成物は好ましくは非発熱性であり、たとえば用量当り<1EU(エンドトキシン単位(endotoxin unit)、標準的尺度)など、好ましくは用量当り<0.1EUを含有する。組成物は好ましくはグルテンを含まない。組成物は保存剤を含んでもよい。
【0117】
全身投与に好適な態様で製剤が調製されてもよい。全身性製剤は、注射(例、筋肉内、静脈内、または皮下注射)のために設計されたものを含み、または経皮(transdermal)、経皮(transcutaneous)、経粘膜もしくは経口投与のために調製されてもよい。注射方法は、静脈内、筋肉内、皮下、および内部送達のためのその他の方法を含む。粘膜投与はあらゆる好適な粘膜表面に対するものであってもよい。全身投与は、たとえば坐薬、経皮パッチ、経粘膜送達および鼻腔内投与の使用などの比較的非侵襲性の方法を含んでもよい。経口投与も好適である。当該技術分野において理解されるとおり、好適な形はシロップ、カプセル、錠剤などを含む。所与の対象に対する特定の経路の選択は、当業者の通常のレベルの範囲内である。たとえば、対象が有効な経口投与を妨げる悪心および嘔吐を有するときには、しばしば坐薬としての直腸送達が適切である。経皮パッチは一般的に数日間にわたって徐放性の用量を送達することができるため、それが適切であるような対象に対して好適である。
【0118】
処置の方法
本発明の組成物はヒト患者への投与のために好適であり、本発明は患者における免疫応答を高める方法を提供し、この方法は本発明の組成物を患者に投与するステップを含む。このステップは、(a)免疫賦活薬および抗原(単数または複数)の両方を含む組成物を投与するステップか、または(b)抗原を含まない免疫賦活薬組成物と抗原含有組成物とを同時投与するステップのいずれかを含んでもよい。
【0119】
本発明は、薬物として使用するための本発明の組成物も提供する。
【0120】
本発明は、患者における免疫応答を高めるための薬物の製造における、2つまたはそれ以上の(上に定義したとおりの)免疫賦活薬の組合せの使用も提供する。
【0121】
本発明は、(i)2つまたはそれ以上の、上に定義したとおりの免疫賦活薬の組合せ、および(ii)免疫化における同時使用、別個の使用または連続的な使用のための抗原も提供する。
【0122】
本発明は、(a)患者における免疫応答を高めるための薬物の製造、または(b)患者における抗原に対する免疫応答を高める方法において使用するための、上に定義したとおりの抗原および免疫賦活薬も提供する。
【0123】
これらの方法および使用によって高められる免疫応答は一般的に、抗体(B細胞応答)応答および/またはT細胞応答を含む。
【0124】
たとえば分泌型IgA応答などのIgA応答などを含む粘膜免疫応答を高めるために、本発明が用いられてもよい。その代わりに、またはその上に、IgG応答が高められてもよい。
【0125】
以下の実施例は本発明の特定の局面および実施形態の理解を増すために提供されるが、本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。
【0126】
試薬
すべての化学物質は試薬用として購入され、さらなる精製なしに用いられた。すべての溶媒は新たに活性化された4Å分子ふるいの上で乾燥された。
【0127】
一般的な情報
Merckシリカゲルプレート60F254上で、分析薄層クロマトグラフィ(thin layer chromatography:TLC)によって反応をモニタし、UV(254)下で、および/またはMeOH、酸性セリウムアンモニウムモリブデン酸塩もしくはKMnO中の5%HSOによる染色によって視覚化した。Macherey−Nagel 60シリカゲル上でフラッシュカラムクロマトグラフィを行なった。25℃にて300MHzのNMR分光計においてNMRスペクトルを記録した。重水素化溶媒において化学シフト(ppm)を決定した。300(75MHz)分光計において13C付着プロトンテスト(attached proton test:APT)スペクトルを得て、重水素化溶媒に関して較正した。
【実施例】
【0128】
(実施例1)
一般的中間体7の合成
アリル2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−α−D−ガラクトピラノシル−(l→5)−2,3−O−イソプロピリデン−α−D−リキソフラノシド(1)。
【0129】
DCM中の5gの2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−α−D−ガラクトピラノシルブロミド[Grayson,E.J.ら、J.Org.Chem.(2005),70,9740−9754](8.34mmol)および1.5gのアリル2,3−O−イソプロピリデン−α−D−リキソフラノシド(6.42mmol)の溶液に、4.4mLのトリ−(1−ピロリジン)−ホスフィンオキシド(19.6mmol)を加えた[Mukaiyama,T.and Kobashi,Y.,Chem. Lett.(2004),33,10−11]。混合物を室温で24時間撹拌し、次いでEtOAcで希釈してセライト上でろ過した。溶媒の蒸発後、未精製品を入念なフラッシュクロマトグラフィ(トルエン/EtOAc 95/5)によって精製し、4.12gの1(85%)を得た。
【0130】
【化11】

2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−α−D−ガラクトピラノシル−(l→5)−2,3−O−イソプロピリデン−D−リキソフラノース(2)。
【0131】
アルゴン下の34mLの乾性DMSO中の2,509g(3.33mmol)の1の溶液に、0.56g(5mmol)のtBuOKを加えた。混合物を80℃にて1.5時間撹拌した。冷却後に混合物をEtOAcで希釈し、有機溶液を水(x1)および塩水(x3)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させて蒸発させた。残留物を65mLのTHFに溶解し、この溶液に13mLの水、1.1mLのピリジンおよび1.69g(6.66mmol)のヨウ素を加えた。室温にて3時間後、混合物をEtOAcで希釈し、5%のチオ硫酸ナトリウム水溶液、1NのHCl、重炭酸ナトリウムの飽和溶液、および水で洗浄した。溶液を硫酸ナトリウムで乾燥して溶媒を蒸発させた。フラッシュクロマトグラフィ(トルエン/AcOEt 90/10)によって2.16gの2(91%)を得た。
【0132】
【化12】


(2R,3S,4R)−3,4−O−イソプロピリデン−1−O−(2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−α−D−ガラクトピラノシル)−1,2,3,4,5−ペンタンペントール(3)。
【0133】
20mLのEtOH中の2.1g(2.85mmol)の2の溶液に、140mg(3.56mmol)の水素化ホウ素ナトリウムを加えた。混合物を室温にて2時間撹拌した。混合物をEtOAcで希釈し、1NのHCl、重炭酸ナトリウムの飽和溶液、および水で洗浄した。溶液を硫酸ナトリウムで乾燥して溶媒を蒸発させた。フラッシュクロマトグラフィ(DCM/MeOH 97:3)によって1.65gの3(81%)を得た。
【0134】
【化13】

(2R,3S,4R)−3,4−O−イソプロピリデン−5−O−ピバロイル−1−O−(2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−α−D−ガラクトピラノシル)−1,2,3,4,5−ペンタンペントール(4)。
【0135】
0℃のアルゴン下の28mLの乾性DCM中の1,265g(1.77mmol)の3の溶液に、0.65mLのピリジンおよび0.66mL(5.3mmol)の塩化ピバロイルを加えた。混合物を室温まで温め、一晩撹拌した。26時間後に混合物をEtOAcで希釈し、1NのHClおよび塩水(3x)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥して蒸発させた。フラッシュクロマトグラフィ(Pet.エーテル/EtOAc 75:25)によって1.22gの4(86%)を得た。
【0136】
【化14】

(2S,3S,4R)−2−アジド−3,4−O−イソプロピリデン−5−O−ピバロイル−1−O−(2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−α−D−ガラクトピラノシル)−1,3,4,5−ペンタンテトロール(6)。
【0137】
0℃に冷却されたアルゴン下の30mLの乾性ピリジン中の1,21g(1.52mmol)の4の溶液に、1.6mL(1.77mmol)のクロロメタンスルホニルクロリドを加えた。反応を室温に温め、5時間撹拌した。混合物をEtOAcで希釈した。有機層を1NのHCl、重炭酸ナトリウムおよび塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥して蒸発させた。未精製物をシリカゲルの短いパッドでろ過し、さらなる精製なしに次のステップに用いた。
【0138】
未精製物をアルゴン下で乾性DMF(12mL)に溶解した。アジ化ナトリウム(0.45g)を加え、混合物を85℃で温めた。2.5時間後に混合物をDCMで希釈し、水(3x)で洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥して蒸発させた。フラッシュクロマトグラフィ(Pet.エーテル/EtOAc 85:15)0.85gの4(2ステップにわたって72%)。
【0139】
【化15】

(2S,3S,4R)−2−アジド−3,4−O−イソプロピリデン−1−O−(2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−α−D−ガラクトピラノシル)−1,3,4,5−ペンタンテトロール(7)。
【0140】
ジオキサン(20mL)中の0.5g(0.6mmol)の6の溶液に、1.7mLの水酸化テトラブチルアンモニウムの溶液を加えた。混合物を72時間撹拌し、次いでEtOAcで希釈した。有機層を1NのHCl、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥して蒸発させた。未精製物のフラッシュクロマトグラフィ(Pet.エーテル/EtOAc 70:30)によって0.35g(78%)の7を得た。
【0141】
【化16】

(実施例2)
一般的中間体10の合成
(2S,3S,4R)−2−(N−エサコサノイルアミノ)−3,4−O−イソプロピリデン−5−O−ピバロイル−1−O−(2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−α−D−ガラクトピラノシル)−1,3,4,5−ペンタンテトラオール(9)。
【0142】
EtOH(40mL)中の0.5g(0.6mmol)の6の溶液に、触媒的量のLindlar触媒を加え、混合物を水素雰囲気下で4.5時間撹拌した。0,107gのジ(15)0,07)。混合物をDCMで希釈してセライトでろ過し、得られた0.5gの未精製アミン8を次のステップに直接使用した。
【0143】
0℃のアルゴン下の乾性DCM−DMFの3:1混合物20mLにおける化合物8の溶液に、296mg(0.75mmol)のヘキサコサン酸を加えた。この懸濁液に、EDC(145mg、0.75mmol)、HOBT(102mg、0.75mmol)、および最後にDCM中のDIPEA溶液(0.26ml、1.5mmol)を加えた。20時間後に混合物をEtOAcで希釈し、1NのHCl、重炭酸ナトリウムの飽和溶液および塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥して溶媒を蒸発させた。フラッシュクロマトグラフィ(Pet.エーテル/AcOEt 80:20)によって534mgの9(2ステップにわたって72%)を得た。
【0144】
【化17】

(2S,3S,4R)−2−(N−エサコサノイルアミノ)−3,4−O−イソプロピリデン−1−O−(2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−α−D−ガラクトピラノシル)−1,3,4,5−ペンタンテトラオール(10)。
【0145】
500mgの9から出発して、化合物7の調製に対して記載されるとおりに化合物10を得た。生成物をフラッシュクロマトグラフィ(Pet.エーテル/EtOAc 50:50)によって精製し、345mg(76%)の化合物10を得た。
【0146】
【化18】

(実施例3)
α−GalCerのオキサ類似体の合成
(2S,3S,4R)−2−アジド−5−(2−ブトキシエチル)−3,4−O−イソプロピリデン−1−O−(2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−α−D−ガラクトピラノシル)−1,3,4,5−ペンタンテトラオール(11)。
【0147】
アルゴン下の乾性DMF(3mL)中の100mg(0.135mmol)の7の溶液に、60%のNaH(11mg、0.27mmol)および2−ブトキシエチルメシラート(75mg、0.4mmol)を加えた。混合物を100℃にて2時間撹拌した。別の2eqのNaHおよび2−ブトキシエチルメシラートを加えた。さらに2時間後に、EtOAcで希釈した塩化アンモニウム(飽和溶液)で混合物をクエンチし、水(4x)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥して蒸発させた。フラッシュクロマトグラフィ(Pet.エーテル/AcOEt 80:20)は74mg(65%)の11を与えた。
【0148】
【化19】

(2S,3S,4R)−5−O−(2−ブトキシエチル)−2−(N−エキサコサノイルアミノ)−3,4−O−イソプロピリデン−1−O−(2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−α−D−ガラクトピラノシル)−1,3,4,5−ペンタエンテトラオール(12)。
【0149】
10より:100mg(92mmol)の10の溶液に、10mgのKOHおよび20mg(0.1mmol)の2−ブトキシエチルメシラートを加えた。混合物を40℃にて20時間撹拌し、次いでEtOAcで希釈した。有機層を塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥して蒸発させた。フラッシュクロマトグラフィ(トルエン/EtOAc 80:20)は75mg(68%)の12を与えた。
【0150】
11より:6からの9の調製に対して記載されたものと同じ手順に従って、69%の収率の化合物12を得た。
【0151】
【化20】

(2S,3S,4R)−5−O−(2−ブトキシエチル)−2−(N−エキサコサノイルアミノ)−1−O−(α−D−ガラクトピラノシル)−1,3,4,5−ペンタンテトラオール(13)。
【0152】
0℃の4mLのジオキサン中の70mg(0.06mmol)の12の溶液に、ジオキサン中の4NのHClを0.08mL加えた。混合物を室温まで温めて4時間撹拌した。溶媒を蒸発させて未精製生成物を次のステップに直接供した。
【0153】
未精製物を2mLのCHCl/MeOH混合物に溶解した。30mgの10%Pd(OH)/Cを加えて、混合物を水素雰囲気下で3時間撹拌した。混合物をセライトでろ過し、溶媒を蒸発させた。フラッシュクロマトグラフィ(DCM/MeOH 90:10)は29mg(2ステップにわたって62%)の13を与えた。
【0154】
【化21】

類似の態様で、化合物14および15を得ることができる。
【0155】
(実施例4)
ネズミNKT細胞系による糖脂質の認識によるIL−2分泌
糖脂質:すべてのα−GalCer類似体を記載されるとおりに合成した。α−GalCerは文献の方法に従って合成した[Figueroa−Perez,S.& Schmidt,R.R.(2000)Carbohydr.Res.,328,95−102]。
【0156】
CD1d受容体を過剰発現するTHP1(ヒト急性単球白血病細胞系)をAPC(抗原提示細胞(antigen presenting cells))として用いて、RPMI培地(グルタミン2mM、NaPyruvate1mM、非必須アミノ酸1%、カナマイシン100μl/ml、FBS10%、β−メルカプトエタノール0.01mM)中で培養した。
【0157】
活性化に対する応答としてIL2を分泌するCD1d反応性マウスT細胞ハイブリドーマFF13を化合物の評価に用いた。FF13細胞をRPMI1640培地(グルタミン2mM、NaPyruvate1mM、非必須アミノ酸1%、カナマイシン100μl/ml、FBS10%、β−メルカプトエタノール0.01mM)中で培養した。
【0158】
THP1 hCD1d(ヒト(human)CD1Dで形質移入したヒトTHP−1細胞)およびマウスNKT細胞ハイブリドーマFF13は、University Hospital Baselより提供された。
【0159】
化合物のDMSOストック溶液(1mg/mL)を調製し、異なる濃度に希釈した:10μg/ml;1,1μg/ml;0.37μg/ml;0.12μg/ml;0.04μg/ml;0.01μg/ml。
【0160】
FF13刺激
96マルチウェル中で、90μlの無血清培地中のTHP1(APC)(5x10細胞)に10μlの化合物の溶液を加え、2時間インキュベートした。
【0161】
完全培地中の100μlのFF13を加え(ウェル当り10x10)、48時間後にIL2生成に対するテストを評価した。
【0162】
IL2濃度はELISAによって、一次モノクローナル抗マウスIL−2抗体(R&D System)と、ビオチン化検出抗マウスIL−2抗体(R&D System)と、発色剤としてSIGMA FAST OPDとを用いて評価された。標準として組換えマウスIL2(R&D System)を用い、すべてのテストを3回行なった。
【0163】
図2は、NKT細胞ハイブリドーマテストにおいてアルファGalCer自身の効果と比較したときの、化合物13〜16で処置された細胞によって放出されるIL2レベルを示す。さまざまな用量のテスト化合物(約0.1μg/mLから約10μg/mL)に2時間露出させたCD1d形質移入THP−1細胞に、a−GalCer特異的なNKTハイブリドーマ細胞を加え、48時間後に培地中のIL−2レベルを定めた。化合物13および16は10マイクロモル濃度においてa−GalCerと同様に効果的であり、他の化合物は少しだけ効果が低かった。よって、セラミド化合物のアルキル基に挿入された酸素は活性に悪影響を与えず、アルキル基の顕著な変更は活性に少しの変化しか与えずに行なわれ得る。
【0164】
(実施例5)
合成アルファGal GGおよびアルファGal LPのインビボ比較。
【0165】
合成α−GalCerの2つの異なる供給源を比較した。成体Balb/Cマウスにおいて、インフルエンザ抗原の存在下での合成「アルファGal GG」および「アルファGal LP」の効果のインビボ比較を行なった。両方のα−GalCerは最初に、HOおよび0.5%のTween20に溶解した形で与えられた。このTween20溶解材料を単独で、または水中MF59スクアレンエマルションと組合せて投与した。α−GalCerをMF59(非製剤)に加えるか、またはMF59(製剤)に組み込んだ。
【0166】
8匹の成体マウス(7週)のグループを3週間間隔で2回免疫化した。加えて、マウスのあるグループにはいずれのワクチン組成物も投与せずに対照として用いた。免疫化組成物はインフルエンザ抗原「Flu」を含み、各免疫化に対して各マウスは0.1μgのA/Solomon H1N1、0.1μgのA/Wisconsin H3N2、または0.1μgのB/Malaysiaインフルエンザ抗原を受けた。a−GalCerで処置されたマウスについては、各マウスは各免疫化に対して0.1μgのa−GalCerを受けた。免疫化は、脚への50μL組成物の筋肉内注射によって投与された。第1の投与の3週間後に第2の免疫化を送達し、ここでは異なる脚に付加的な50μLのワクチンを投与した。マウスのグループに以下の組成物の各々を投与した:
Flu;
FluおよびMF59;
Fluおよびa−Gal GG;
FluおよびMF59およびa−Gal GG;
FluおよびMF59およびa−Gal GG、製剤;
Fluおよびa−Gal LP;
FluおよびMF59およびa−Gal LP;
FluおよびMF59およびa−Gal LP(製剤)。
【0167】
第2の免疫化投与の2週間後にワクチン投与組成物に対する免疫応答を評価した。HI(赤血球凝集阻止(hemagglutination−inhibition))力価およびIgG力価の測定値を記録して、免疫応答の指標として用いた。HI力価はHIアッセイを用いて測定し、IgG力価はELISAによって測定した。結果をまとめたものを図3、図4および図5に示しており、これらはそれぞれH3N2(A/Wisconsin)に応答したHI力価、B(B/Malaysia)、H1N1(A/Solomon)およびH3N2(A/Wisconsin)に応答したIgG力価、ならびにIgG力価のサブクラスを示す。
【0168】
(実施例6)
合成アルファGal LPおよびその誘導体のインビボ比較。
【0169】
インフルエンザ抗原によって、成体Balb/Cマウスにおいて、化合物a−Gal LP、13、14、15および16の効果のインビボ比較を行なう。化合物13〜16は明細書に記載されるとおりに合成される。
【0170】
8匹の成体マウス(7週)のグループを3週間間隔で2回免疫化する。加えて、4匹のマウスにはいずれのワクチン組成物も投与せずに対照グループとして用いる。免疫化組成物は、2008/09株、すなわちA/Brisbane/59/2007様、A/Brisbane//10/2007様およびB/Florida/4/2006様の各々からの0.1μgの赤血球凝集素を含むインフルエンザ抗原「Flu」を含む。a−GalCerで処置すべきマウスについては、各マウスは各免疫化に対して0.1μgのa−GalCerを受ける。免疫化は、脚への50μL組成物の筋肉内注射によって投与される。第1の投与の3週間後に第2の免疫化を送達し、ここでは異なる脚に付加的な50μLの組成物を投与する。マウスのグループに以下の組成物の各々を投与する:
Flu;
FluおよびMF59アジュバント;
Fluおよびa−Gal LP;
Fluおよび化合物13(HO/Tween20 0.5%)、14(HO/Tween20 0.5%)、15(HO)、または16(HO/Tween20 0.5%);
FluおよびMF59/a−Gal LP;ならびに
FluおよびMF59/化合物13、14、15、または16。
【0171】
第2の免疫化投与の2週間後にワクチン投与組成物に対する免疫応答を評価する。HI(赤血球凝集阻止)力価、IgGおよびIgGサブクラス力価の測定値を記録して、免疫応答の指標として用いる。HI力価はHIアッセイを用いて測定し、IgG力価はELISAによって測定する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化22】

の化合物またはその薬学的に受容可能な塩であって、ここで、
、R、R、およびRは各々独立にHまたは保護基を表わし;
Xは置換可能なC4−C30ヒドロカルビル基であり;
Yは2つまでの基で置換可能なC1−C6アルキレンまたはC2−C6アルケニレンリンカーであり;
Zは−ORであり、ここでRは骨格にヘテロ原子を含み得るC4−C20ヒドロカルビル基であり、任意に置換される、
化合物またはその薬学的に受容可能な塩。
【請求項2】
Xは10〜30個の炭素を有する未置換アルキル基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Yは任意に置換されるC2アルキレンである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
−Y−Zは
【化23】

である、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
Zは−O−Rであり、ここでRはC4−C20ヒドロカルビルである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
Zは−O−R1であり、ここでRは(CH−O−R1bであり、ここでmは1〜6であり、R1bはC1−C16アルキル、シクロアルキルまたはシクロアルキルアルキルである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
、R、R、およびRの各々はHである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
化合物13、14、15および16からなる群より選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物および抗原を含む、免疫原性組成物。
【請求項10】
抗原によって誘発される免疫応答を増大するための方法であって、該方法は、該抗原を受容する対象に有効量の式I:
【化24】

の化合物またはその薬学的に受容可能な塩を投与するステップを含み、ここで、
、R、R、およびRは各々独立にHまたは保護基を表わし;
Xは置換可能なC4−C30ヒドロカルビル基であり;
Yは2つまでの基で置換可能なC1−C6アルキレンまたはC2−C6アルケニレンリンカーであり;
Zは−ORであり、ここでRは骨格にヘテロ原子を含み得るC4−C20ヒドロカルビル基であり、任意に置換される、
方法。
【請求項11】
前記抗原および式Iの化合物は、同時または同じ日に投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記抗原は、細菌抗原、ウイルス抗原、真菌抗原、原生動物抗原、および腫瘍関連抗原から選択される、請求項10に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−510910(P2011−510910A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528504(P2010−528504)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【国際出願番号】PCT/IB2008/003263
【国際公開番号】WO2009/060305
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(510102100)
【Fターム(参考)】