説明

免疫グロブリン不変領域の量産方法

本発明は、大腸菌由来のシグナル配列をコードする核酸配列と免疫グロブリン不変領域をコードする核酸配列とを含む組み換え発現ベクター、前記発現ベクターで形質転換された形質転換体、および前記形質転換体を培養し、形質転換体から水溶性の形態で発現された免疫グロブリン不変領域を量産する方法に関するものである。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大腸菌由来のシグナル配列をコードする核酸配列と免疫グロブリン不変領域をコードする核酸配列とを含む組み換え発現ベクター、前記発現ベクターで形質転換された形質転換体、および前記形質転換体を培養し、形質転換体から受容体の形態で発現された免疫グロブリン不変領域を量産する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
遺伝工学技術の発展に伴って多種の蛋白質医薬品が製造されて用いられている。ところが、蛋白質医薬品の場合、変性し易く、あるいは生体内のプロテアーゼなどによって分解され易くて生体内の濃度および力価を長らく持続させることができないという致命的な欠点を持っている。したがって、蛋白質の安定性を増加させて蛋白質医薬品の血中、生体内の濃度を適正の水準に維持させることは、効果的な治療だけでなく、頻繁な注射などにより蛋白質の供給を受けるべき患者の不便軽減および経済的な面においても非常に重要な問題である。
【0003】
したがって、蛋白質医薬品の生体内安定性を増加させるために、蛋白質の剤形を変化させ、あるいは他の蛋白質を融合させ、あるいは蛋白質の表面に適切な高分子を化学的または生物学的方法によって付着させるなどの様々な方法が前々から試みられてきた。
他の蛋白質との融合により蛋白質の安定性を増加させるための試みの一つが、免疫グロブリンFcと蛋白質との融合である。
【0004】
Fc領域は、免疫グロブリンの固有機能である抗原結合能以外の補体依存性細胞毒性(CDC、complement-depentent cytotoxicity)、抗体依存性細胞毒性(ADCC、antibody-dependent cell cytotoxicity)のようなエフェクター機能(effector function)を担当する。また、Fc領域に存在するFcRn配列は、新生児へのIgG輸送および半減期を増加させて血清内IgGの水準を調節する役割を行い(Ghetie and Ward, Immunology Today 18: 592-598, 1997)、プロテインAおよびプロテインGとの相互作用を調節する。このようなFc領域と治療用蛋白質との融合によって治療用蛋白質の安定性を増加させようとする研究が活発に行われた。
【0005】
大韓民国特許第24572号は、IgG1重鎖不変領域(Fc)のアミノ末端にIL4受容体、IL7受容体、G−CSF受容体、EPO受容体などの様々な蛋白質のカルボキシル末端を連結させた後、これを哺乳動物細胞から製造した融合蛋白質を開示している。米国特許第5,605,690号は、腫瘍壊死因子受容体のカルボキシル末端にヒトIgG1 Fc誘導体を融合して動物細胞から製造した融合蛋白質を報告している。また、Tanox社は、ヒトインターフェロンαおよびβ遺伝子のカルボキシル末端と天然型ヒトIgG4 Fc遺伝子をペプチドリンカーを用いて動物細胞から製造することを米国特許第5,723,125号および第5,908,626号で報告し、Lexigen社は、天然型IgG1 Fcカルボキシル末端とヒトインターフェロンのアミノ末端をリンカーなしで遺伝子組み換え方式によって連結して動物細胞から生産することをPCT出願公開第WO00/69913号で報告している。
【0006】
米国特許公開番号第2003008679号では、ヒトG−CSF遺伝子のカルボキシル末端とIgG1 Fcのアミノ末端をペプチドリンカーを用いて連結した後動物細胞から生産した融合蛋白質が、増加した血中半減期を示すことを開示した。米国特許公開番号第20010053539号、第6,030,613号、PCT出願公開第WO99/02709号、第WO01/03737号、ヨーロッパ特許第EP0464533B1号などは、IgG1 Fc遺伝子あるいはFc遺伝子の誘導体をそのアミノ末端にペプチドリンカーを挿入し、あるいはペプチドリンカーなしでヒトEPO遺伝子、TPO遺伝子、ヒト成長ホルモン遺伝子、ヒトインターフェロンベータ遺伝子のカルボキシル末端に連結させた後、それぞれの融合体を動物細胞を用いて生産し、このようなFc融合蛋白質の血中半減期が全て天然型蛋白質より上昇したことを報告した。
【0007】
ところが、前記Fcとの融合蛋白質は、目的蛋白質の血中半減期が増加するが、同時にFc領域の持っているエフェクター機能が発揮されるという問題点がある(米国特許第5,349,053号)。Fc領域のエフェクター機能によって補体を固定させるか、あるいはFcγRsを発現する細胞に結合して特定の細胞を破壊させ、炎症を誘発するいろいろのサイトカインの生成および分泌を誘導することにより、所望しない炎症を誘発させる。また、融合した部位の蛋白質配列は、人体に存在しない新規の蛋白質配列なので、長期投与の際に免疫反応の誘発可能性もあるなどいろいろの欠点を持っている。
【0008】
そこで、長い血中半減期を維持するが、エフェクター機能が欠失された免疫グロブリンあるいは免疫グロブリン断片を利用しようとする研究が行われてきた。Cole等は、Fc受容体に対する親和力が減少したFc誘導体を生産するために、Fc受容体との結合に重要な役割を果たすものと知られているCH2領域中の234、235および237番目の残基をアラニンで置換してADCCの活性が抑制されることを報告した(Cole et al., J. Immunol. 159: 3613-3621, 1997)。ところが、これら全ては、天然型ヒトFc領域とは異なる不適切なアミノ酸の存在により、Fcがさらに大きい免疫性または抗原性を持つことができ、好ましいFc機能を失うおそれもある。
【0009】
免疫グロブリンの高い血中濃度を維持しかつ所望しないエフェクター機能を除去あるいは減少させるための方法の一つとして、免疫グロブリンの糖を除去する方法が研究された。米国特許第5,585,097号では、CD3抗体の製造の際に抗体の糖鎖化残基であるCH2ドメインの297番目のアスパラギン残基を他のアミノ酸で置換し、非糖鎖化された抗体誘導体を製造したが、この場合、誘導体は、FcRn受容体との結合力を血中半減期の変化なしで維持しながら、減少したエフェクター機能を示した。ところが、この方法も、非正常的な配列を有する新しい組み換え構造物の生成により免疫系において外部物質と認識され、拒絶されるという問題点がある。米国特許公開番号第20030073164号では、エフェクター機能が欠失された治療用抗体を製造するために、糖化機能のない大腸菌細胞を用いてFc誘導体を生産する方法を開示している。
【0010】
米国のAmgen社は、米国特許第6,660,843号、米国特許公開番号第20040044188号および第20040053845号では、治療用蛋白質あるいは治療用蛋白質ペプチドミミックを製造し、そのアミノ末端あるいはカルボキシル末端に、ヒトIgG1 Fcヒンジ領域の最初の5個のアミノ酸が欠失された誘導体を融合させた後、大腸菌宿主を用いて生産する方法を開示した。ところが、シグナル配列なしで発現される融合蛋白質は、発現されて細胞質内に凝集体(inclusion body)の形態で存在するため、分離後、別途のリフォールディング過程を経なければならないという欠点を持つ。リフォールディング過程を経ると、蛋白質の生産収率は低下し、相同または異型の二量体の形態で存在する蛋白質の場合には、二量体の形態で生成される収率が著しく減少するという問題点がある。
【0011】
また、シグナル配列なしで大腸菌から発現される蛋白質は、大腸菌の蛋白質発現体系の特性上、アミノ末端にメチオニン残基が付加される。前述のAmgen社の発現産物はアミノ末端にメチオニン残基が付加されており、このようなメチオニン残基は人体への反復あるいは過量投与の際に免疫反応を誘発するおそれがある。また、これらは、治療用蛋白質をコードする遺伝子とFcをコードする遺伝子とを連結させて大腸菌で融合蛋白質の形態で発現させるため、大腸菌で発現され難いか、あるいは大腸菌での発現の際に活性に問題がある治療用蛋白質との融合体は生産し難いという欠点がある。また、2つの蛋白質の融合部位は、生体内には存在していない非正常的な配列なので、免疫系において外部物質と認識されて免疫反応を起こす可能性もある。
【0012】
このような点を改善するために、本発明者は、従来の組み換え的な方法による融合ではなく、Fc領域および蛋白質医薬品を各最上の発現システムで個別のポリペプチドに製造した後、共有結合させてFcを薬物のキャリアとして用いたことがある。この場合、糖鎖化ポリペプチド薬物と非糖鎖化Fcの結合体を製造することができるので、不適切な免疫反応は除去しながら、生理学的薬物活性、生体的持続性と安定性は全て充足させる。
【0013】
前記の場合、Fcは非糖鎖化された形態が好ましいので、大腸菌などの原核細胞発現システムを用いる。大腸菌の発現体系を用いる生産方法は、既存の動物細胞を用いた方法に比べていろいろの利点があるが、大腸菌は、発現ベクターの製作が容易であって発現の有無を迅速に検証することができ、成長速度が非常に速くて低いコストで量産が可能であり、比較的単純な発酵方法を適用することができて商業的利用の面でも他の宿主細胞を用いる場合より有用である。
【0014】
ところが、大腸菌で過発現させる場合、凝集体の形態で発現される免疫グロブリン不変領域を大腸菌で産業的に利用可能に量産する有用な方法は、未だ報告されたことがない。
そこで、本発明者は、糖鎖が除去されて免疫反応誘発のおそれがない免疫グロブリンFc領域などの免疫グロブリン不変領域を量産する方法を見付けようと検討した結果、免疫グロブリンFc領域などの免疫グロブリン不変領域をコードする核酸配列を大腸菌シグナル配列と融合させて大腸菌で発現させる場合、大腸菌の細胞内で凝集体ではない水溶性の形態で発現されることを確認し、本発明を完成した。
【発明の開示】
【0015】
本発明の一目的は、大腸菌由来のシグナル配列をコードする核酸配列および免疫グロブリン不変領域をコードする核酸配列を含む組み換え発現ベクターを原核細胞に形質転換する段階と、前記形質転換体を培養する段階と、形質転換体から水溶性の形態で発現された免疫グロブリン不変領域を分離、精製する段階とを含む、免疫グロブリン不変領域を量産する方法を提供することにある。
【0016】
また、本発明の他の目的は、前記の方法で製造された不変領域を提供することにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
一つの様態として、本発明は、大腸菌由来のシグナル配列をコードする核酸配列および免疫グロブリン不変領域をコードする核酸配列を含む組み換え発現ベクターを原核細胞に形質転換する段階と、前記形質転換体を培養する段階と、形質転換体から水溶性の形態で発現された免疫グロブリン不変領域を分離、精製する段階とを含む、免疫グロブリン不変領域を量産する方法に関するものである。
【0018】
免疫グロブリンは、抗体において抗原と特異的に結合する機能を行いながら、配列上の多くの多様性(variation)を示す可変領域と、補体系を活性化させ且つ胎盤を通過する能力を与え、あるいは各種免疫関連細胞が有する受容体に対するリガンドとして作用するなどのエフェクター機能を持ちながら、固定配列を有する不変領域とに分けられる。
【0019】
本発明は、蛋白質医薬品のキャリアなどとして有用に使用できる免疫グロブリンの不変領域を量産することが可能な方法に関するもので、本発明によって生産できる免疫グロブリン不変領域は、ヒト、牛、山羊、豚、マウス、ウサギ、ハムスター、ラット、モルモットなどの動物の生体内から分離した天然型、形質転換された動物細胞または微生物から得られた組み換え型またはその誘導体である。好ましくはヒト由来のIgG、IgA、IgM、IgE、IgDの不変領域、これらの組み合わせ(combination)またはこれらのハイブリッドである。
【0020】
本発明において、「組み合わせ」とは、二量体または多量体を形成するとき、同一起源の単鎖免疫グロブリン不変領域をコードするポリペプチドが相異なる起源の単鎖ポリペプチドと結合を形成することを意味し、「ハイブリッド(hybrid)」とは、単鎖の免疫グロブリン不変領域内に、2つ以上の相異なる起源の免疫グロブリン不変領域に該当する配列が存在することを意味する用語である。
【0021】
免疫グロブリンとして、好ましくはIgG1、IgG2、IgG3、IgG4不変領域、これらの組み合わせおよびこれらのハイブリッドである。具体的に、重鎖不変領域は、ガンマ(γ)、ミュー(μ)、アルファ(α)、デルタ(δ)、エプシロン(ε)タイプ、より具体的にはサブクラスとしてガンマ1(γ1)、ガンマ2(γ2)、ガンマ3(γ3)、ガンマ4(γ4)、アルファ1(α1)およびアルファ2(α2)の不変領域を有し、軽鎖不変領域は、カッパ(κ)およびラムダ(λ)タイプの不変領域を有する。本発明において、有用なヒト免疫グロブリン不変領域をコードする核酸配列およびこれを限定するアミノ酸配列は、GenBankおよび/またはEMBLデータベースに開示されたヌクレオチド配列によってコードされるものであってもよい。
【0022】
IgG、IgA、IgM、IgEの重鎖不変領域はC1、C2およびC3からなり、IgMはさらにC4を含む。軽鎖不変領域はCを含む。本発明の免疫グロブリン不変領域は、C1、C2、C3、C4、Cドメインよりなる群から選択される一つい上位のドメインである。選択されるドメインは、全体またはその断片(30個以上のアミノ酸残基が除去された形態)である。例えば、CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメインおよびCH4ドメイン;CH1ドメインおよびCH2ドメイン;CH1ドメインおよびCH3ドメイン;CH2ドメインおよびCH3ドメインが選択できる。ところが、選択されたドメインの配列は特に限定されない。
【0023】
本発明の免疫グロブリン不変領域は、アミノ酸配列誘導体を含む。アミノ酸配列誘導体とは、天然のアミノ酸配列と一つ以上のアミノ酸残基が相異なる配列を持つことを意味し、自然的に発生しあるいは人為的に発生させることができる。免疫グロブリンの不変領域は、欠失、挿入、非保全的または保全的置換、またはこれらの組み合わせによる誘導体を含む。挿入は、通常約1〜20個のアミノ酸の連続配列からなるが、より大きい挿入も可能である。欠失は、通常約1〜30個の残基からなる。分子の活性を全体的に変更させない蛋白質およびペプチドにおけるアミノ酸交換は、当該分野に公知となっている(H. Neurath, R. L. Hill, The Proteins, Academic Press, New York, 1979)。最も通常的に起こる交換は、アミノ酸残基Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Thy/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu、Asp/Gly間の交換である。
【0024】
このような誘導体は、当該分野に公知となっている化学的ペプチド合成方法またはDNA配列を基本とする組み換え方法によって製造できる(Sambrook et al., Molecular Cloning, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, USA, 2d Ed., 1989)。
【0025】
場合によっては、リン酸化(phosphorylation)、硫化(sulfation)、アクリル化(acrylation)、糖化(glycosylation)、メチル化(methylation)、ファルネシル化(farnesylation)などで修飾(modification)されることもある。
【0026】
そして、本発明は、二量体の形成を可能とするヒンジ領域を含むことができる。ヒンジ領域は、天然型だけでなく、欠失、挿入、非保全的または保全的置換、またはこれらの組み合わせによる誘導体を含む。
【0027】
前記免疫グロブリン誘導体は、天然蛋白質と同一の生物学的活性を示す機能的等価物であり、必要に応じてはこの蛋白質の特性を変化させた誘導体である。好ましくは、免疫グロブリン不変領域誘導体は、生成される誘導体の蛋白質配列がヒトのものと同一なので免疫反応を誘発しない範囲内で、アミノ酸配列上の誘導と修飾によって蛋白質の熱、pHなどに対する構造的安定性または可溶性が増加し、あるいはジスルフィド結合形成、発現宿主との親和性、補体との結合、Fc受容体との結合、抗体依存性細胞毒性などが改善された誘導体である。この際、不変領域誘導体で変化させた部位がヒトのものと異なってヒトへの投与の際に免疫反応を誘発してはならない。好ましい誘導体の例は次の通りである。
【0028】
(1)ヒンジ領域のジスルフィド結合を形成するシステイン残基は除去できる。好ましくは、IgG1のヒンジ領域の15個のアミノ酸のうち一番目のアミノ酸Gluから12番目のアミノ酸Proまでの12個の残基を除去して2つのシステイン残基を除去することができ、IgG4のヒンジ領域の12個のアミノ酸のうち一番目のアミノ酸Gluから9番目のアミノ酸Proまでの9個の残基を除去して1つのシステイン残基を除去することができる。システイン残基の除去は、宿主細胞内に存在するシステインを含む他の蛋白質との結合を避けることができるため、発現収率の向上と水溶性形態における安定性の増加を期待することができる。
【0029】
(2)抗体依存性細胞毒性を誘発するFc受容体に対して減少した結合力を示すよう、IgG1不変領域の特定の残基を誘導させることができる。前記誘導体は、IgG1 CH2配列に存在する234番のロイシン残基(numberingはKobat databaseの配列を参考)の欠失または他の残基への置換を含むことができるが、最も好ましい誘導は、IgG4において同一の位置に該当するアミノ酸残基のフェニルアラニンで置換することである。このような誘導体は、ヒトに知られていない配列ではないため、ヒトへの投与の際に免疫反応を誘発しないことを予想することができる。
【0030】
(3)IgG1のヒンジ領域の誘導体は、一番目のアミノ酸配列であるプロリン残基の置換を含むことができる。プロリン残基は、他のアミノ酸残基とは異なり、環構造を形成しているため、プロリン残基がアミノ末端を成していると、蛋白質の発現とシグナル配列の除去の際に問題を引き起こすおそれがある。したがって、プロリン残基を他のアミノ酸残基で置換することができ、好ましくはIgG4のヒンジ領域のうち、同一の位置に該当するアミノ酸残基であるセリン残基で置換する。前述したように、このような誘導体は、ヒトに知られていない配列ではないので、ヒトへの投与の際に免疫反応を誘発しないことを予想することができる。
【0031】
本発明の免疫グロブリン不変領域は、重鎖不変領域を含む。好ましくは、IgG1二量体を形成するようヒンジ領域を含む重鎖不変領域は、配列番号25、21、22または23のアミノ酸配列を持つ。IgG1単量体を形成するようヒンジ領域を含まない重鎖不変領域は、配列番号27のアミノ酸配列を持つ。また、IgG2二量体を形成するようヒンジ領域を含む重鎖不変領域は35のアミノ酸配列を持つ。IgG4二量体を形成するようヒンジ領域を含む重鎖不変領域は、配列番号29または24のアミノ酸配列を持つ。IgG4単量体を形成するようヒンジ領域を含まない重鎖不変領域は、配列番号30のアミノ酸配列を有する。
【0032】
また、本発明の免疫グロブリン不変領域は、軽鎖不変領域を含む。好ましくは、免疫グロブリン軽鎖不変領域は34のアミノ酸配列を持つ。
また、本発明の免疫グロブリン不変領域は、重鎖または軽鎖を全て含む不変領域である。好ましくは、24のアミノ酸配列を持つ重鎖不変領域と配列番号34のアミノ酸配列を持つ軽鎖不変領域を含む二量体または四量体である。
非糖鎖化された免疫グロブリン重鎖領域の形態を得るために、大腸菌などの原核生物で過発現させる場合、完全なフォールディングが行われず、様々な機序によって活性を失った状態の不溶性凝集体(inclusion body)を形成する。この凝集体は蛋白質としての活性を持たないので、これから生物学的活性を持つ可溶性蛋白質を得るためには、複雑で時間が長くかかる追加の変性およびリフォールディング工程を必要とする。したがって、凝集体の形態で発現される免疫グロブリン重鎖領域の原核細胞における有用な量産システムの確立が要求されている。
【0033】
大腸菌の細胞質の外に輸送される蛋白質は、一般に、細胞膜のトランス面(trans side)からペプチダーゼによって切り出されるN末端配列(N-terminal sequence)を持っている。「シグナル配列(signal sequence)」または「シグナルペプチド(signal peptide)」と呼ばれるこの配列によって、蛋白質は細胞質の外部に輸送される。
【0034】
本発明において、「シグナル配列」は、蛋白質の細胞質の外への輸送および分泌を可能とする特定のアミノ酸配列を意味し、本発明のシグナル配列は、大腸菌から分泌される蛋白質が持つ大腸菌由来のシグナル配列である。大腸菌由来のシグナル配列は、18〜30個のアミノ酸から構成されており、幾つかの共通的な特徴をもつ。シグナル配列は、まずN末端に1個または数個の最も短い陽電荷を持つN−ドメインが存在し、このドメインの後ろには多少長い疎水性領域のH−ドメインが存在する。N末端は、Lys、Argのような極性の陽電荷を帯びたアミノ酸が多く存在する。H−ドメインにはAla、Leuなどの疎水性残基が主に存在する。H−ドメインと実際分泌しようとする蛋白質との間にはC−ドメインが存在するが、この部位にはシグナルペプチダーゼ(signal peptidase)によって認識される配列が存在する。シグナル配列を持っている蛋白質は、いろいろな蛋白質との相互作用によって細胞膜に到達し、シグナルペプチダーゼによる特定の部位の切断後に成熟な蛋白質(mature protein)となる。大腸菌由来のシグナル配列には、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、Ipp、熱安定性エテロトキシンII、LamB、PhoE、PelB、OmpAまたはマルトース結合蛋白質などがあるが、これに制限されない。本発明のシグナル配列は、共に発現される蛋白質の細胞質の外への分泌を可能とする限り、欠失、挿入、非保全的または保全的置換、またはこれらの組み合わせによる誘導体を含む。特に、融合蛋白質の分泌効率を改善させる誘導体は好ましいものと思われる。
【0035】
シグナル配列は、好ましくは熱安定性エンテロトキシンIIである。配列番号36のアミノ酸配列を有する天然エンテロトキシンIIだけでなく、エンテロトキシンII誘導体を含む。大腸菌において様々な異種蛋白質の分泌効率を増大させる大腸菌熱安定性エンテロトキシンIIシグナル配列誘導体については、既に報告されたことがある(大韓民国特許登録第0316347号)。エンテロトキシンII誘導体は、2番、4番、5番、12番、20番、22番の位置で一つ以上のアミノ酸配列が他のアミノ酸配列で置換された形態が好ましく、より好ましくは、配列番号37、38、39、40、41、42、43、44、45または46のアミノ酸配列を持つ置換体である。本発明の具体的な様態では、配列番号38のアミノ酸配列を持つエンテロトキシンIIを使用しており、配列番号12の塩基配列によってコードされる。
【0036】
天然のエンテロトキシンIIをコードする核酸は、天然から分離し、或いは遺伝子合成法を用いて合成することができる。エンテロトキシンII誘導体は、天然から分離した後、部位特異的突然変異誘発などの方法で製造し、あるいは遺伝子合成法を用いて合成することができる。
【0037】
本発明において、「融合蛋白質」とは、相異なる2つ以上のポリペプチドがペプチド結合(peptide bond)によって1本鎖のポリペプチドで結合していることを意味し、遺伝子水準における組み換えで1本鎖のポリペプチドに翻訳されるようにする方法で容易に製作できる。本発明の目的上、融合蛋白質は、大腸菌由来のシグナル配列と免疫グロブリン不変領域をコードするポリペプチドとの融合を意味する。シグナル配列と免疫グロブリン不変領域は一つのプロモータにおいてインフレーム(in frame)で1本鎖の蛋白質に翻訳されるが、最終的にシグナル配列はポリペプチドから切断されて除去される。融合蛋白質の製造法は制限されないが、好ましくは遺伝子組み換え技術に基づいて、シグナル配列をコードする核酸配列と免疫グロブリン不変領域をコードする核酸配列を一般的な制限酵素を用いて切断し、リガーゼなどの酵素で結合させて製造される。
【0038】
前記融合蛋白質をコードする核酸配列は、組み換え発現ベクターに挿入され、発現される。
【0039】
本発明において、「組み換え発現ベクター」とは、適当な宿主細胞で目的蛋白質を発現することが可能なベクターであって、遺伝子挿入物が発現されるよう作動可能に連結された必須的な調節要素を含む遺伝子作製物をいう。
【0040】
本発明において、「作動可能に連結された(operably linked)」は、一般的な機能を行うよう、核酸発現調節配列と目的の蛋白質をコードする核酸配列とが機能的に連結されていることをいう。組み換えベクターとの作動的連結は、当該技術分野でよく知られている遺伝子組み換え技術を用いて製造することができ、部位特異的DNA切断および連結は、当該技術分野で一般的に知られている酵素などを用いて容易に行うことができる。
【0041】
適切な発現ベクターは、プロモータ、開始コドン、終結コドン、ポリアデニル化シグナルおよびエンハンサーなどの発現調節エレメント配列を含むことができる。宿主が大腸菌の場合には、trpプロモータ、lacプロモータ、recAプロモータ、λP Lプロモータ、lppプロモータ、T7プロモータなどを使用することができ、宿主がバシラス属菌の場合には、SPO1プロモータ、SPO2プロモータ、penPプロモータなどを使用することができるが、これに制限されない。
【0042】
開始コドンおよび終結コドンは、遺伝子作製物が投与されたとき、個体で必ず作用を示さなければならず、コーディング配列とインフレーム(in frame)になければならない。一般プロモータは、構成的または誘導性のものである。また、発現ベクターはベクターを含有する宿主細胞を選択するための選択性マーカーを含み、複製可能な発現ベクターは複製起源を含むことができる。
【0043】
本発明の発現ベクターは、大腸菌シグナル配列を必須的に含むベクターであって、好ましくは大腸菌の熱安定性エンテロトキシンIIシグナル配列を含む。そして、エンテロトキシンIIのシャイン−ダルガーノ(Shine−Dalgarno)配列をエンテロトキシンIIシグナル配列と共に含むベクターが、目的蛋白質の発現量を向上させることができるので好ましい。本発明では、エンテロトキシンIIシグナル配列−免疫グロブリン重鎖領域融合蛋白質を発現させるために、エンテロトキシンIIのシャイン−ダルガーノ配列およびエンテロトキシンIIシグナル配列をコードする核酸配列と免疫グロブリン重鎖領域をコードする配列とがプロモータにおいてインフレームで発現されるよう遺伝子組み換え的な方法によって連結して製造した。
【0044】
本発明の具体的な実施様態において、エンテロトキシンIIシグナル配列および配列番号25のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖領域を発現する組み換え発現ベクターは、pSTIIG1CH1_3であり、エンテロトキシンIIシグナル配列および配列番号21のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖領域を発現するベクターはpSTIIdCG1Fcであり、エンテロトキシンIIシグナル配列および配列番号22のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖領域を発現するベクターはpSTIIdCGSFcであり、エンテロトキシンIIシグナル配列および配列番号23のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖領域を発現するベクターはpSTIIdCG1SFFcであり、エンテロトキシンIIシグナル配列および配列番号27のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖領域を発現するベクターはpSTIIG1Moであり、エンテロトキシンIIシグナル配列および配列番号35のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖領域を発現するベクターはpSTIIdCG2Fcであり、エンテロトキシンIIシグナル配列および発現番号29のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖領域を発現するベクターはpSTIIdCG4Fcであり、エンテロトキシンIIシグナル配列および配列番号24のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖領域を発現するベクターはpSTIIG4CH1_3であり、エンテロトキシンIIシグナル配列および配列番号30のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖領域を発現するベクターはpSTIIG4Moである。
【0045】
本発明の具体的な実施様態において、本発明のエンテロトキシンIIシグナル配列および配列番号24のアミノ酸配列を有する重鎖不変領域と、エンテロトキシンIIシグナル配列および配列番号34のアミノ酸配列を有する免疫グロブリン軽鎖領域とを発現する組み換え発現ベクターはpSTIIG4H_Kであり、それぞれのプロモータでそれぞれ発現される。
【0046】
前記融合蛋白質を発現する組み換え発現ベクターは宿主細胞に形質転換される。
本発明の目的上、宿主細胞は糖鎖化が起こらない原核細胞である。このような原核細胞には、大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、ストレプトミセス(Streptomyces)、シュードモナス(Pseudomonas)、プロテウスミラビリス(Proteus mirabilis)またはスタヒロコッカス(Staphylococcus)などがあるが、好ましくは大腸菌である。大腸菌は、大腸菌XL−1ブルー、大腸菌BL21(DE3)、大腸菌JM109、大腸菌DHシリーズ、大腸菌TOP10および大腸菌HB101であり、より好ましくは大腸菌BL21(DE3)であるが、これに制限されるものではない。大腸菌を宿主細胞として用いる場合には、大腸菌が糖鎖を蛋白質に連結するシステムがないため、天然型免疫グロブリンのCH2ドメインに存在する糖が源泉的に欠失された形態で免疫グロブリンの不変領域を生産することができる。免疫グロブリンのCH2ドメインの糖は、免疫グロブリンの構造的安定性には影響を及ぼさないが、免疫グロブリンがFc受容体を発現する細胞と結合して抗体依存性細胞毒性を起こし、免疫細胞がサイトカインを分泌させて炎症反応を起こし、補体のClq要素と結合して補体固定反応を誘発するものと知られている。したがって、非糖鎖化された免疫グロブリンの不変領域を生産して治療用蛋白質と結合させると、好ましくない免疫グロブリンのエフェクター機能は誘発せず、治療用蛋白質の血中濃度は長らく維持させることができる。
【0047】
組み換え発現ベクターの原核細胞への形質転換方法は、核酸を細胞内に導入するいずれの方法も含み、当該分野で公知となっているように宿主細胞に応じて適切な標準技術を選択して行うことができる。このような方法には、エレクトロポレーション(electroporation)、原形質融合、リン酸カルシウム(CaPO)沈殿、塩化カルシウム(CaCl)沈殿、炭化珪素繊維を用いた攪拌、PEG、硫酸デキストラン、リポフェクトアミンなどが含まれるが、これに制限されない。
【0048】
本発明の具体的な実施様態において、pSTIIG1CH1_3が大腸菌に導入された形質転換体はBL21/pSTIIG1CH1_3(HM10935)であり、pSTIIdCG1Fcが大腸菌に導入された形質転換体はBL21/pSTIIdCG1Fc(HM10927)であり、pSTIIdCG1SFcが大腸菌に導入された形質転換体はBL21/pSTIIdCG1SFc(HM10928)であり、pSTIIdCG1SFFcが大腸菌に導入された形質転換体はBL21/pSTIIdCG1SFFc(HM10929)であり、pSTIIG1Moが大腸菌に導入された形質転換体はBL1/pSTIIG1Mo(HM10930)であり、pSTIIdCG2Fcが大腸菌に導入された形質転換体はBL21/pSTIIdCG2Fc(HM10936)であり、pSTIIdCG4Fcが大腸菌に導入された形質転換体はBL21/pSTIIdCG4Fc(HM10932)であり、pSTIIG4CH1_3が大腸菌に導入された形質転換体はBL21/pSTIIG4CH1_3(HM10931)であり、pSTIIG4Moが大腸菌に導入された形質転換体はBL21/pSTIIG4Mo(HM10933)であり、pSTIIG4H_Kが大腸菌に導入された形質転換体はBL21/pSTIIG4H_K(HM10934)である。
【0049】
前記組み換え発現ベクターで形質転換された形質転換体は、通常の方法で培養される。
【0050】
このような培養過程は、当業者であれば選択される菌株に応じて容易に調整して行うことができる。培養に使用される培地は、一般に細胞の成長と生存に必須的な全ての栄養素を含有しなければならない。前記培地は、様々な炭素源、窒素源および微量元素成分を含む。使用可能な炭素源の例には、ブドウ糖、蔗糖、乳頭、果糖(fructose)、マルトース、澱粉、セルロースなどの炭水化物、大豆油、ひまわり油、ヒマシ油、ココナット油などの脂肪、パルミチン酸、ステアリン酸、リノレン酸などの脂肪酸、グリセロールおよびエタノールなどのアルコール、酢酸などの有機酸が含まれる。これらの炭素源は、単独でまたは組み合わせて使用できる。
【0051】
使用可能な窒素源の例には、ペプトン、酵母抽出物、肉エキス、麦芽エキス、コーンステイーブリカー(CSL)および大豆ホエイなどの有機窒素源、および尿素、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウムおよび硝酸アンモニウムなどの無機窒素源が含まれる。これらの窒素源は、単独でまたは組み合わせて使用できる。
【0052】
前記培地には、リン源として、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウムおよび対応するナトリウム含有の塩を含むことができる。また、硫酸マグネシウムまたは硫酸鉄などの金属塩を含むことができる。その他に、アミノ酸、ビタミン、および適切な前駆体などを含むことができる。培養中に水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、アンモニア、リン酸および硫酸などの化合物を培養物に適切な方式で添加し、培養物のpHを調整することができる。また、培養中には脂肪酸ポリグリコールエステルなどの消泡剤を用いて気泡の生成を抑制することができる。また、培養物の好気状態を保つために、培養物内に酸素または酸素含有気体(例えば、空気)を注入する。培養物の温度は通常20℃〜45℃、好ましくは25℃〜45℃である。
【0053】
少量の培地で発現を確認すると、よりさらに多くの試料を確保するために発酵器を用いることができる。発酵器を用いて蛋白質を生産する際は、宿主細胞の成長速度や発現産物の量など様々な因子を考慮しなければならない。
【0054】
適切な培養条件でIPTGなどを投与して蛋白質の発現を誘導することもできる。
【0055】
前記方法によって原核細胞で発現された本発明のシグナル配列が融合された免疫グロブリン不変領域は、ペリプラスム空間に発現されず、細胞質内で水溶性の形態で過発現され、シグナル配列も正確にプロセスされた。具体的な本発明の実施様態において、培地またはペリプラスム空間に分泌される融合蛋白質の量は無視できる程度であり、細胞を破砕してウエスタンブロットを行った結果、蛋白質は水溶性の形態で細胞質内に過多発現されることが分かった。そして、細胞質内で発現される免疫グロブリン重鎖領域のN末端部位のアミノ酸配列を分析した結果、シグナル配列は正確にプロセスされたことを確認することができた。
【0056】
これは、従来の凝集体から活性蛋白質を分離しようとした方法だけでなく、凝集体から蛋白質などを水溶性の形態で生産するために、様々なシグナル配列と融合して目的蛋白質をペリプラスム空間(periplasmic space)または培地に分泌しようとする方法よりも一層効率的である。その理由は、第一に、過発現によって凝集したリパーゼ蛋白質が、適切な溶液で蛋白質を溶解および変性させて尿素、グアニジン、アルギニンなどのリフォールディング剤でリフォールドさせる複雑な追加の工程を経なければならないことにある(Kohno, Meth. Enzym., 185:187-195, 1990)。そして、複雑な工程に比べて、蛋白質のリフォールディング効率は非常に低く、リフォールディング後の蛋白質の活性も可溶性蛋白質に比べて低くて産業性がない。第二に、ペリプラスム空間または培地に分泌される程度、分泌後の凝集程度、発現効率などは、組み換えようとする蛋白質によって大きく異なることにある。細胞質内で可溶的に発現される形態より発現効率が非常に低いことは公知の事実であり、場合によってはペリプラスム空間に分泌された蛋白質も凝集体の形態で存在することができる。
【0057】
したがって、前記の方法は、産業用の免疫グロブリン不変領域を大量発現可能にする有用な新規のシステムを提供する。
【0058】
本発明の方法で過多発現される免疫グロブリン不変領域は、通常の方式で精製できる。形質転換体から生産された免疫グロブリン不変領域は、フレンチプレス、超音波粉砕器などの方法を用いて細胞を破砕した後、免疫グロブリン不変領域を含む水溶性分画を塩析(例えば、硫酸アンモニウム沈殿、リン酸ナトリウム沈殿など)、溶媒沈殿(例えば、アセトン、エタノールなどを用いた蛋白質分画沈殿)、透析、ゲル濾過、イオン交換、逆相カラムクロマトグラフィなどのカラムクロマトグラフィ、および限界濾過などの技法を単独でまたは組み合わせて適用させ、本発明の免疫グロブリン不変領域をコードする蛋白質を得ることができる(Maniatis et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y. (1982); Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2d Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989); Deutscher, M., Guide to Protein Purification Methods Enzymology, vol. 182. Academic Press. Inc., San Diego, CA (1990))。
【0059】
別の様態として、前記の方法で製造された免疫グロブリン不変領域に関するものである。
前記方法によって大腸菌などの原核細胞から生産された免疫グロブリン不変領域の産業的適用は特に制限されない。一つの例示的適用は、任意の薬物と結合体形成のためのキャリアとして使用することである。免疫グロブリン不変領域と薬物が結合した結合体の形態は特に制限されない。例えば、免疫グロブリン不変領域と薬物は、多様な割合で結合可能であり、リンカーなどによって結合が媒介されることも可能である。
【0060】
薬物は、ポリペプチド、化合物、抽出物、ヘキサンなどを含むが、好ましくは、ポリペプチド(蛋白質と同等な用語として使用)薬物である。リンカーは、ペプチド性リンカーまたは非ペプチド性リンカーのいずれも含むが、好ましくは非ペプチド性リンカーであり、より好ましくは非ペプチド性重合体である。免疫グロブリン重鎖領域の好ましい例はFcである。
【0061】
本発明の方法で製造された免疫グロブリン不変領域と結合して使用できる生理活性ポリペプチドとしては、血中半減期を増加させる必要があるものであれば、いずれも特別な制限なしで使用することができる。例えば、ヒトの疾病を治療または予防する目的で用いられるサイトカイン、インターロイキン、インターロイキン結合蛋白質、酵素、抗体、成長因子、転写調節因子、血液因子、ワクチン、構造蛋白質、リガンド蛋白質または受容体、細胞表面抗原、受容体拮抗物質などの様々な生理活性ポリペプチド、これらの誘導体および類似体を例示することができる。
【0062】
具体的に、生理活性ポリペプチドは、ヒト成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出ペプチド、インターフェロン類とインターフェロン受容体類(例えば、インターフェロン−α、−βおよび−γ、水溶性タイプIインターフェロン受容体など)、コロニー刺激因子、インターロイキン類(例えば、インターロイキン−1、−2、−3、−4、−5、−6、−7、−8、−9、−10、−11、−12、−13、−14、−15、−16、−17、−18、−19、−20、−21、−22、−23、−24、−25、−26、−27、−28、−29、−30など)とインターロイキン受容体類(例えば、IL−1受容体、IL−4受容体など)、酵素類(例えば、グルコセレブロシダーゼ(glucocerebrosidase)、イズロネート−2−スルファターゼ(iduronate-2-sulfatase)、α−ガラクトシダーゼ−A(alpha-galactosidase-A)、アガルシダーゼα(agalsidase alpha)、アガルシダーゼβ、α−L−イズロニダーゼ(alpha-L-iduronidase)、ブチリルコリンエステラーゼ(butyrylcholinesterase)、キチナーゼ(chitinase)、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase)、イミグルセラーゼ(imiglucerase)、リパーゼ(lipase)、ウリカーゼ(uricase)、血小板−活性因子アセチルハイドロラーゼ(platelet-activating factor acetylhydrolase)、中性エンドペプチダーゼ(neutral endopeptidase)、ミエロペルオキシダーゼ(myeloperoxidase)など)、インターロイキンおよびサイトカイン結合蛋白質類(例えば、IL−18bp、TNF−結合蛋白質など)、マクロファージ活性因子、マクロファージペプチド、B細胞因子、T細胞因子、プロテインA、アレルギー抑制因子、細胞壊死糖蛋白質、免疫毒素、リンポ毒素、腫瘍壊死因子、腫瘍抑制因子、転移成長因子、アルファ−1アンチトリプシン、アルブミン、α−ラクトアルブミン(alpha-lactalbumin)、アポリポ蛋白質−E、赤血球生成因子、高糖鎖化赤血球生成因子、アンジオポエチン類(angiopoietin)、ヘモグロビン、トロンビン(thrombin)、トロンビン受容体活性ペプチド、トロンボモジュリン(thrombomodulin)、血液因子VII、血液因子VIIa、血液因子VIII、血液因子IX、血液因子XIII、プラズミノゲン活性因子、フィブリン−結合ペプチド、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ヒルジン(hirudin)、プロテインC、C−反応性蛋白質、レニン抑制剤、コラゲナーゼ抑制剤、スーパーオキシドジスムターゼ、レプチン、血小板由来成長因子、上皮細胞成長因子、表皮細胞成長因子、アンギオスタチン(angiostatin)、アンギオテンシン(angiotensin)、骨形成成長因子、骨形成促進蛋白質、カルシトニン、インスリン、アトリオペプチン、軟骨誘導因子、エルカトニン(elcatonin)、結合組織活性因子、組織因子経路抑制剤(tissue factor pathway inhibitor)、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、神経成長因子類(例えば、神経成長因子、毛様体神経栄養因子(cilliary neurotrophic factor)、アキソジェネシス因子−1(axogenesis factor-1)、脳−ナトリウム利尿ペプチド(brain-natriuretic peptide)、神経膠由来神経栄養因子(glial derived neurotrophic factor)、ネトリン(netrin)、好中球抑制因子(neurophil inhibitor factor)、神経栄養因子、ニューチュリン(neuturin)など)、 副甲状腺ホルモン、レラキシン、セクレチン、ソマトメジン、インスリン様成長因子、副腎皮質ホルモン、グルカゴン、コレシストキニン、膵臓ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、コルチコトロピン放出因子、甲状腺刺激ホルモン、オートタキシン(autotaxin)、ラクトフェリン(lactoferrin)、ミオスタチン(myostatin)、受容体類(例えば、TNFR(P75)、TNFR(P55)、IL−1受容体、VEGF受容体、B細胞活性因子受容体など)、受容体拮抗物質(例えば、IL1−Raなど)、細胞表面抗原(例えば、CD2、3、4、5、7、11a、11b、18、19、20、23、25、33、40、45、69など)、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体断片類(例えば、scFv、Fab、Fab’、F(ab’)およびFd)、ウイルス由来ワクチン抗原などを例示することができるが、これに限定されない。本発明において適用可能な生理活性ポリペプチドは、天然型であり、あるいは大腸菌のような原核細胞または酵母細胞、昆虫細胞または動物細胞のような真核細胞から遺伝子組み換えによって生産されたものである。また、天然型と同等な活性をもって一つ以上のアミノ酸位置で突然変異が起こった誘導体である。
【0063】
本発明の好適な実施例では、形質転換体BL21/pSTIIdCG1SFFc(HM10929)から生産された免疫グロブリン不変領域断片を受容性重合体としてポリエチレングリコールを用いてヒト赤血球生成促進因子(Erythropoietin:EPO)に結合させてEPO−PEG−免疫グロブリン不変領域蛋白質結合体を製造し、前記蛋白質結合体が天然型EPOおよび増加した血中半減期を示す2世代EPOとして知られたAranesp(Amgen社)より優れた血中半減期を示すことを確認した。したがって、本発明によって大腸菌シグナル配列を用いて受容体の形態で生産された免疫グロブリンの不変領域は、生理活性ペプチドに結合して免疫反応を誘発することなく、生理活性ポリペプチドの血中半減期を増加させ且つ生理活性を改善させるのに有用に使用できる。
【0064】
以下、下記の実施例によって本発明をより詳細に説明する。但し、下記の実施例は、本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲を制限するものではない。
【実施例】
【0065】
(実施例1)ヒト免疫グロブリンIgG1不変領域発現ベクターの製作
(1−1)二量体IgG1不変領域発現ベクターの製作
IgG1のCH1とヒンジ領域を含んだ重鎖および軽鎖の不変領域をクローニングするために、ヒトの血液から収得した血球細胞のRNAを鋳型として次のようにRT−PCRを行った。まず、Qiamp RNA血液キット(Qiagen社)を用いて約6mLの血液から全体RNAを分離した後、このRNAを鋳型とし、One−Step RT−PCRキット(Qiagen社)を用いて遺伝子を増幅した。この際、重鎖遺伝子を増幅するためには、配列番号1および2で表わされるプライマー対を使用し、軽鎖カッパ鎖の不変領域遺伝子を増幅するためには配列番号3および4で表わされるプライマー対を使用した。以後のクローニング過程を容易にするために、配列番号1および3の5’プライマーにはHindIII制限酵素認識部位を、配列番号2および4の3’−プライマーには終結コドンを含むBamHI制限酵素認識部位を挿入した。これから増幅された重鎖および軽鎖不変領域産物をそれぞれHindIIIとBamHIで切断した後、同一の制限酵素で処理されたプラスミドpBluscript SK(−)(Stratagen社)に挿入してプラスミドpBG1CH1−3とpBKを製造した。塩基配列分析の結果、各プラスミドにクローニングされたIgG1重鎖CH1−ヒンジ−CH2−CH3遺伝子と軽鎖不変領域遺伝子はそれぞれ配列番号5および6の塩基配列を持つものと確認された。
【0066】
IgG1不変領域を発現するベクターを製作するために、前記で製作したプラスミドを鋳型としてPCRを行って下記の不変領域断片の遺伝子を増幅した。配列番号7および2のプライマー対は、IgG1のCH1、ヒンジ領域、CH2およびCH3を増幅するために製作された。ヒンジ領域でジスルフィド結合に参加していないシステインを除去したFc領域は、配列番号8および2のプライマー対、配列番号9および2のプライマー対、および配列番号10および2のプライマー対を用いて増幅した。配列番号7および2のプライマー対でプラスミドpBG1CH1−3を鋳型として増幅された遺伝子は、IgG1のCH1−hinge−CH2−CH3を含み、配列番号25で表わされるアミノ酸配列を有する蛋白質をコードする。配列番号8は、15個のアミノ酸配列(Glu Pro Lys Ser Cys Asp Lys Thr His Thr Cys Pro Pro Cys Pro;配列番号26)から構成されたヒンジ領域蛋白質配列のうち13番目のアミノ酸配列であるプロリンから始まる配列であって、配列番号8および2のプライマー対でプラスミドpBG1CH1−3を鋳型として増幅された遺伝子は、全体IgG1不変領域のうちヒンジ領域のプロリン−システイン−プロリンから始まるアミノ末端とCH2、CH3ドメインのアミノ酸配列から構成された蛋白質をコードする(配列番号21)。配列番号9は、ヒンジ領域の13番目のアミノ酸であるプロリンをセリンで置換させたもので、配列番号10は、ヒンジ領域の13番目のアミノ酸であるプロリンをセリンで、CH2の4番目のアミノ酸であるロイシンをフェニルアラニンで置換させたものである。したがって、配列番号9および2のプライマー対、および配列番号10および2のプライマー対でプラスミドpBG1CH1−3を鋳型として増幅された遺伝子は、それぞれ宿主細胞で発現させるときにヒンジ領域のシステイン残基によってジスルフィドジスルフィド結合による二量体を形成することができる(配列番号22および23)。
【0067】
前記で増幅されたIgG1不変領域断片を、それぞれ大腸菌シグナル配列を用いた発現ベクターにクローニングするために、本発明者によって開発された発現ベクターpT14S1SH−4T20V22Q(大韓民国特許第38061号)を出発ベクターとして用いた。前記発現ベクターは、配列番号12で表わされる塩基配列を持つ大腸菌熱安定性エンテロトキシンシグナル配列誘導体を含む。クローニングを容易にするため、pT14S1SH−4T20V22Qプラスミドの大腸菌熱安定性エンテロトキシンシグナル配列誘導体に配列番号13および14のプライマー対を使用した部位特異的突然変異誘発(site-directed mutagenesis)を行い、シグナル配列の最後のアミノ酸をコードする遺伝子配列を突然変異誘発(mutagenesis)してStuI制限酵素認識部位を挿入した。塩基配列分析法によって、正確にStuI制限酵素認識部位が生成されたことを確認した。pT14S1SH−4T20V22QプラスミドにStuI制限酵素認識部位が生成されたプラスミドをpmSTIIと命名した。前記のように製作されたプラスミドpmSTIIをStuI/BamHI制限酵素で処理した後、アガロースゲルに電気泳動を行い、大腸菌熱安定性エンテロトキシンシグナル配列誘導体を含む大きい断片(4.7kb)を回収した。前記で増幅された遺伝子をBamHI制限酵素で処理した後、前記で回収された発現ベクターの断片に挿入してpSTIIG1CH1_3(配列番号7および2のPCR産物)およびpSTIIdCG1Fc(配列番号8および2のPCR産物)、pSTIIdCG1SFc(配列番号9および2のPCR産物)、pSTIIdCG1SFFc(配列番号10および2のPCR産物)を製作した。それぞれ製作された発現ベクターを大腸菌BL1(DE3)に形質転換させて大腸菌形質転換体BL21/pSTIIG1CG1_3(HM10935)、BL21/pSTIIdCG1Fc(HM10927)、BL21/pSTIIdCG1SFc(HM10928)およびBL21/pSTIIdCG1SFFc(HM10929)を製造し、これらを2004年9月15日付で国際寄託機関の韓国微生物保存センター(KCCM、Korean Culture Center of Microorganisms、大韓民国ソウル市西大門区弘済1洞361−221ユリムビル2階所在の)にそれぞれ寄託番号KCCM−10600、KCCM−10588、KCCM−10589、KCCM−10594で寄託した。
【0068】
(1−2)単量体IgG1不変領域発現ベクターの製作
単量体の形態で発現されるIgG1不変領域を製造するために、配列番号11および2のプライマー対を用いて、実施例(1−1)で使用した鋳型と同一の鋳型で遺伝子を増幅した。増幅された遺伝子断片を実施例(1−1)と同一の方法によって発現ベクターpmSTIIに挿入してpSTIIG1Mo(配列番号11および2のPCR産物)を製作し、大腸菌BL21(DE3)に形質転換させて大腸菌形質転換体BL21/pSTIIG1Mo(HM10930)を製造し、これを2004年9月15日付で韓国微生物保存センター(KCCM)に寄託番号KCCM−10595で寄託した。前記発現ベクターによって発現される蛋白質は、二量体の形成を可能とするシステイン残基を含有するヒンジ領域が除去されたため、CH2ドメインから発現されて単量体の形態で存在し、配列番号27で表わされるアミノ酸配列を持つ。
【0069】
(実施例2)ヒト免疫グロブリンIgG2 Fc発現ベクターの製作
IgG2のFc遺伝子をクローニングするために、前記実施例(1−1)で行った方法と同様に、ヒトの血液から収得した血球細胞のRNAを鋳型としてOne−Step RT−PCRキット(Qiagen社)を用いてRT−PCRを行った。この際、前記遺伝子配列を収得するために、配列番号31と配列番号32で表わされるプライマー対を使用した。配列番号31は、12個のアミノ酸配列(Glu Arg Lys Cys Cys Val Glu Cys Pro Pro Cys Pro;配列番号33)からなるヒンジ領域蛋白質配列のうち10番目のアミノ酸配列であるプロリンから始まる配列であり、配列番号31および32のプライマー対で増幅された遺伝子は、全体IgG2Fc遺伝子配列の中でも、ヒンジ領域のプロリン−システイン−プロリンで始まるアミノ末端とCH2、CH3ドメインからなり、配列番号35の遺伝子配列を持つ。前記で増幅されたIgG2 Fc遺伝子配列を、大腸菌シグナル配列を用いた発現ベクターにクローニングするために、前述したpmSTIIベクターを使用した。前記実施例(1−1)で行ったクローニング過程と類似の方法で、プラスミドpmSTIIをStuI/BamHI制限酵素で処理した後、アガロースゲルに電気泳動を行い、大腸菌熱安定性エンテロトキシンシグナル配列誘導体を含む大きい断片(4.7kb)を回収した。前記で増幅されたIgG2 Fc遺伝子をBamHI制限酵素で処理した後、前記で回収された発現ベクターの断片に挿入してpSTIIdCG2Fcを製作した。このように製作された発現ベクターによって発現される産物は、宿主細胞で発現するときに配列番号35のアミノ酸配列を有し、ヒンジ領域のシステイン残基によってジスルフィド結合による二量体を形成することができる。それぞれ製作された発現ベクターを大腸菌BL21(DE3)に形質転換させて大腸菌形質転換体BL21/pSTIIdCG2Fc(HM10936)を製造した。
【0070】
(実施例3)ヒト免疫グロブリンIgG4不変領域発現ベクターの製作
(3−1)二量体IgG4不変領域発現ベクターの製作
ヒト免疫グロブリンIgG4の重鎖不変領域をクローニングするために、IgG1重鎖不変領域が挿入されている実施例(1−1)のプラスミドpBG1CH1−3を鋳型として部位特異的突然変異誘発を行い、IgG4のCH1−ヒンジ−CH2−CH3遺伝子が挿入されたプラスミドpBG4CH1−3を製作した。塩基配列分析の結果、突然変異を起こしたDNA配列は、IgG1の不変領域がIgG4の不変領域で置換されており、配列番号15で表わされる塩基配列を持つことを確認した。前記実施例1と同一の方法でPCR増幅のためのプライマー配列のみを異にしてプラスミドpBG4CH1−3を鋳型として遺伝子を増幅した。IgG4不変領域の5’−末端から、ジスルフィド結合に参加していないシステインを除去するために、プラスミドpBG4CH1−3を鋳型として配列番号16および17のプライマー対を用いてPCRを行った。配列番号16は、IgG4ヒンジ領域の12個(Glu Ser Lys Tyr Gly Pro Pro Cys Pro Ser Cys Pro、配列番号28)のアミノ酸配列のうち10番目のアミノ酸配列であるセリンから始まる配列であり、配列番号17は終結コドンを含むBamHI制限酵素認識部位を挿入したものである。前記プライマー対で増幅された遺伝子は、全体IgG4不変領域の中でもヒンジ領域でセリン−システイン−プロリンから始まるアミノ末端とCH2およびCH3ドメインから構成される。前記で増幅された遺伝子をBamHI制限酵素で処理した後、プラスミドpmSTIIをStuI/BamHI制限酵素で処理して得た大きい断片に挿入してpSTIIdCG4Fcを製作した。このベクターによって発現される蛋白質は、配列番号29のアミノ酸配列を有し、ヒンジ領域のシステイン残基によるジスルフィド結合によって二量体の形態で存在する。また、CH1ドメイン(CH1−ヒンジ−CH2−CH3)を含む不変領域発現ベクターを製作するために、配列番号19および17を用いてpBG4CH1−3を鋳型としてPCRを行った後、同一の方法でクローニングしてプラスミドpSTIIG4CH1_3を製作した。このベクターによって発現される蛋白質は、配列番号24のアミノ酸配列を有する。
【0071】
また、免疫グロブリン重鎖不変領域と軽鎖不変領域を同時に発現するベクターは、次のように製作された。まず、実施例(1−1)で製作されたプラスミドpBKを鋳型として配列番号20および4を用いて遺伝子を増幅した後、大腸菌熱安定性エンテロトキシンシグナル配列誘導体を含むベクターpmSTIIにクローニングしてプラスミドpSTIIKを製作した。プラスミドpSTIIKは、軽鎖カッバ鎖の不変領域が大腸菌熱安定性エンテロトキシンシグナル配列誘導体に連結されている遺伝子切片を含む。プラスミドpSTIIKを制限酵素HindIIIとSalIで切断してプロモータとシグナル配列など蛋白質の発現に必要な遺伝子配列が挿入された約1.2kbの遺伝子切片を収得した後、前記で製作されたpSTIIG4CH1_3ベクターのNruI制限酵素部位に挿入してpSTIIG4H_Kベクターを製作した。前記発現ベクターはそれぞれ異なるプロモータによって重鎖不変領域と軽鎖不変領域を発現させ、発現された産物は各鎖に存在する自由システインによって二量体あるいは四量体を形成する。前記で製作された発現ベクターそれぞれを大腸菌BL(DE3)に形質転換させて大腸菌形質転換体BL21/pSTIIG4CH1_3(HM0931)、BL21/pSTIIdCG4Fc(HM0932)およびBL21/pSTIIG4H_K(HM10934)を製造し、大韓民国ソウル市西大門区弘済1洞361−221ユリムビル2階所在の韓国微生物保存センター(KCCM、Korean Culture Center of Microorganisms)にそれぞれ寄託番号KCCM−10596、KCCM−10597、KCCM−10599で寄託した。
【0072】
(3−2)単量体IgG4不変領域発現ベクターの製作
単量体の形態で発現されるIgG4不変領域をクローニングするために、配列番号18および17を用いて前記(3−1)と同一の方法でIgG4 CH2−3遺伝子を増幅した後、同一の発現ベクターpmSTIIにクローニングしてプラスミドpSTIIG4Moを製作した。前記発現ベクターを大腸菌BL21(DE3)に形質転換させて大腸菌形質転換体BL21/pSTIIG4Mo(HM10933)を製造し、これを2004年9月21日付で韓国微生物保存センター(KCCM)に寄託番号KCCM−10598で寄託した。前記発現ベクターによって発現される蛋白質は、配列番号30のアミノ酸配列を有し、ヒンジ領域がないため、CH2ドメインから発現されて単量体の形態で存在する。
【0073】
本発明の好適な実施例で大腸菌熱安定性エンテロトキシンIIシグナル配列誘導体を用いて免疫グロブリン不変領域を大腸菌から水溶性の形態で発現することが可能な組み換え発現ベクターおよび前記発現ベクターが形質転換された微生物をまとめると、下記表1のとおりである。
【0074】
【表1】

【0075】
(実施例4)免疫グロブリン不変領域の発現および精製
(4−1)発現および精製
前記実施例1および2で収得した微生物形質転換体を発酵器(Marubish社)に接種して発酵させた後、免疫グロブリン不変領域断片の発現有無を確認した。
まず、LB培地100mLに前記形質転換体をそれぞれ一晩中振盪培養した後、発酵器に接種して本培養を行った。発酵器の温度は35℃あるいは30℃を維持し、嫌気性状態になることを防止するために、空気を20vvmで投入しながら500rpmで攪拌した。発酵が進むにつれて、微生物の成長のために足りないエネルギー源は葡萄糖(glucose)と酵母抽出液(yeast extract)を微生物の発酵状態に応じて投与し、吸光度600nmでのOD値が80となる時期に誘導物質(inducer)IPTGを投与して発現を誘導した。これを40〜45時間高濃度で培養して吸光度600nmでのOD値が100〜120となるようにした。
【0076】
前記で大腸菌形質転換体から免疫グロブリンFcの発現有無、発現場所、水溶性および二量体の形成有無を確認するために、下記のような試験を行った。発現産物が前記発現ベクターに融合しているシグナル配列によって発酵液またはペリプラスム空間に発現されるかを確認するために、発酵液を遠心分離して、細胞を除去した発酵液溶液を収得し且つ細胞を回収した。前記細胞を除去した発酵液溶液と、前記回収した細胞の浸透圧衝撃(osmotic shock)によって得られたペリプラスム空間溶液をウエスタンブロットして免疫グロブリンFcの発現有無を確認したが、その量は極めて少量であった。前記発酵液をウルトラ−ソニケーション(Misonix社)を用いて破砕して細胞溶解液(cell lysate)を得、その細胞溶解液を遠心分離して水溶性物質と不溶性物質に分離した後、水溶性物質を次のような方法でウエスタンブロットした。前記水溶性物質をDTTまたはβ−メルカプトエタノールのような還元剤を除去した蛋白質サンプルバッファと混ぜた後、15%SDS−PAGE(Criterion Gel、Bio−Rad)に電気泳動した。電気泳動済みのゲルをニトロセルロース(nitro-cellulose)膜に転写させた後、HRPが結合している抗−ヒトFc抗体(Sigma)を用いて検出(detect)を行った。図1より、細胞内で水溶性の状態で過量が発現されることが分かるとともに、ヒンジ領域の一部が挿入された形質転換体から発現された産物は二量体を形成することが分かる。図1のレーン1、2、3はそれぞれ形質転換体HM10927、HM10932、HM10936で発現された産物であり、レーン4は動物細胞で生産された免疫グロブリンをパパイン処理して生成されたFcであって、糖が存在するため、大腸菌で生成されたものよりやや大きく展開されることが分かる。
【0077】
(4−2)N末端配列の確認
前記実施例において細胞質内で水溶性二量体の形態で発現されるFcは、シグナル配列が融合しているために分泌されず、細胞質内に存在するとき、シグナル配列のプロセシングなしで融合したままで存在するかを確認するために、N末端アミノ酸配列の分析を基礎科学支援研究所のソウル分所に依頼した。分析する試料は下記のように準備した。
まず、PVDF膜(Bio−Rad社)をメタノールに約2〜3秒間浸漬して活性化させた後、ブロッキングバッファ(170mMのグリシン、25mMのTris−HCl(pH8)、20%のメタノール)に十分濡らした。実施例(4−1)で展開された非還元条件のSDS−PAGEゲルを、前記のように準備されたPVDF膜にブロッティングキット(Hoefer Semi−Dry Transfer unit、Amersham)を用いて約1時間ブロッティングを行った。PVDF膜に転写された蛋白質を蛋白質染色薬のCoomassie Blue R−250(Amnesco社)でしばらく(3〜4秒間)染色した後、脱色溶液(水:酢酸:メタノールが5:1:4)で洗浄した。洗浄済みの膜から、蛋白質が含まれている部位をハサミで切断してN末端配列の分析を依頼した。
IgG1 Fc蛋白質の配列はPro−Cys−Pro−Ala−Pro−Glu−Leu−Leu−Gly−Glyであり、IgG4 Fc蛋白質の配列はSer−Cys−Pro−Ala−Pro−Glu−Phe−Leu−Gly−Glyである。また、IgG2 Fc蛋白質の配列はPro−Cys−Pro−Ala−Pro−Pro−Val−Ala−Gly−Proである。以上のようなアミノ酸配列の分析結果、本発明の大腸菌形質転換体から発現されるFc断片は、正確なN末端配列を持つものと確認された。また、シグナル配列を融合させて発現させる際に、細胞外膜またはペリプラスムに分泌されず、細胞質内に過発現されてもシグナル配列が正確にプロセスされて水溶性の形態で存在するという新しい事実が確認された。
【0078】
前記で大腸菌形質転換体から発現された免疫グロブリン不変領域を確認するために、免疫グロブリン不変領域に強い親和性があると知られているプロテインAカラム(protein-A affinity column)を用いて下記のような方法で精製した。
遠心分離によって発酵液から回収された大腸菌細胞を破砕して細胞溶解液(cell lysate)を得、細胞質内に存在する組み換え免疫グロブリン不変領域を2段階のカラムクロマトグラフィによって精製した。プロテインA親和性カラム(Pharmacia社)5mLをPBSで平衡化させた後、細胞溶解液を5mL/分の流速で負荷した。結合していない分画はPBSで洗浄した後、100mMのクエン酸溶液(pH3.0)で溶出させた。溶出した分画を脱塩カラム(desalting column Hiprep 26/10、Pharmacia社)を用いて10mMのTris緩衝液(pH8.0)で交換した。Q HP 26/10カラム(Pharmacia社)50mLを用いて2次陰イオン交換カラムクロマトグラフィを行ったが、1次精製された組み換え免疫グロブリン不変領域の分画を結合させた後、10mMのTris緩衝液(pH8.0)条件で直線濃度勾配(塩化ナトリウムの濃度0M→0.2M)法によって溶出して高純度の分画を得ることができた。各産物をプロテインAカラムを用いて部分精製した後の発現量を下記表2に示した。
【0079】
【表2】

【0080】
(4−3)発現蛋白質の確認
前記のように収得された免疫グロブリン不変領域は、重鎖の二量体あるいは単量体の形態なので、還元条件のSDS−PAGEと非還元条件のSDS−PAGEにおける蛋白質の移動様相が異なる。発現された産物を精製した後、純度を確認するために行ったSDS−PAGE結果を、図2および図3に示した。
【0081】
図2および図3は、このように精製された二量体の形態と単量体の形態の免疫グロブリン不変領域蛋白質を15%のクライテリオンゲル(criterion gel、Bio−Rad社)を用いて非還元条件のSDS−PAGEゲルと還元条件のSDS−PAGEゲルに展開させてその移動様相を比較したものである。図2のAは非還元条件でSDS−PAGEゲルに展開したものであり、Bは還元条件でSDS−PAGEゲルに展開したものである。レーンMは予め染色された低範囲標準蛋白質マーカー(prestained low-range standard marker、Bio−Rad社)であり、レーン1〜4はそれぞれ形質転換体HM10927、HM10928、HM10929およびHM10932から生産された免疫グロブリン不変領域試料である。図2に示すように、還元条件のSDS−PAGEではヒンジ領域のシステイン残基によるジスルフィド結合が還元されてこれらがそれぞれ単量体の形態で存在するため単量体の大きさだけ移動した反面、非還元条件のSDS−PAGEではそれぞれの単量体がジスルフィド結合で連結された二量体の形態で存在して約42kDaの移動距離を持つことを確認した。
【0082】
図3のAは非還元条件でSDS−PAGEゲルに展開したものであり、Bは還元条件でSDS−PAGEゲルに展開したものである。レーンMは前記の標準蛋白質マーカーであり、レーン1および2は形質転換体HM10930およびHM10933から生産された免疫グロブリン不変領域試料である。図2に示すように、還元条件と非還元条件における移動距離はあまり差異がなく、内部のジスルフィド結合の還元有無によって移動距離に若干の差異があることを確認した。
【0083】
(実施例5)活性酵素免疫測定によるClq結合能の確認
前記実施例4で大腸菌形質転換体から発現されて精製された免疫グロブリン不変領域蛋白質がヒトのClqと結合するか否かを確認するために、下記のように固相酵素免疫検定法(ELISA)を行った。形質転換体HM10929、HM10930、HM10932およびHM10933から生産された免疫グロブリン不変領域試料と、糖が結合している比較群としての免疫グロブリン(IVIGG−グロブリンS、緑十字PBM)を10mMのカーボネート緩衝液(pH9.6)に1μg/mLの濃度で準備した。準備された試料を96ウェルプレート(Nunc)にウェル当たり200ngの量で分注した後、4℃で一晩中コートし、その後ウェルプレートをPBS−T溶液(137mMのNaCl、2mMのKCl、10mMのNaHPO、2mMのKHPO、0.05%のツイン20)で3回洗浄した。牛血清アルブミンを1%の濃度でPBS−T溶液に溶解させて準備したブロッキングバッファ250μLを各ウェルに添加した後、常温で1時間放置し、同一のPBS−T溶液を3回洗浄した。標準液と試料を適当な濃度でPBS−T溶液で希釈した後、抗体がコートされたウェルに加えて常温で1時間放置させて反応させた後、さらにPBS−T溶液で3回洗浄した。ブロッキング反応済みのプレートに2μg/mLのClq(R&D systems社)を添加した後、2時間常温で反応させ、反応済みのプレートを前記PBS−T溶液で6回洗浄した。ヒトの抗−ヒトClq抗体−ペルオキシダーゼコンジュゲート(Biogenesis社、米国)をブロッキングバッファに1000:1で希釈して各ウェルに200μLずつ加えた後、1時間常温で反応させた。反応が完了した後、各ウェルをPBS−T溶液で3回洗浄した後、発色溶液AとB(カラーA−安定化ペルオキシダーゼ[Color A-Stabilized peroxide]溶液およびカラーB−安定化クロモゲン[Color B-stabilized chromogen]溶液、DY999、R&D systems社)を同量で混合して各ウェルに200μLずつ添加し、30分間放置した。その後、反応停止溶液である2Mの硫酸を50μLずつ添加して反応を停止させた。反応済みのウェルプレートは、マイクロプレートリーダー(Molecular Device社)を用いて450nmの波長で標準液と検液の吸光度を測定し、その結果を図4に示した。
【0084】
図4に示すように、本発明によって大腸菌から生産された免疫グロブリン不変領域蛋白質は、糖があるものに比べて著しく低下したClqに対する結合能を示すため、生理活性ポリペプチドとの結合蛋白質形成の際にキャリアとして用いられて人体に投与される場合にも、細胞毒性や炎症などの免疫反応を誘発する危険性が非常に低いことが分かる。
【0085】
(実施例6)ヒト赤血球生成促進因子結合体の製造および薬物動力学
(6−1)ヒト赤血球生成促進因子の製造
ヒト赤血球生成促進因子(Erythropoietin:EPO)の結合体を製造するために、まずEPO遺伝子を血液からRT−PCRで得た後、pBluescriptII(Stratagen社)ベクターにクローニングしてpBlueEPベクターを製作した。EPO遺伝子を動物細胞発現ベクターpCMV/dhfr−に移すために、前記ベクターpBlueEPをHindIIIとBamHI制限酵素で切断してEPO遺伝子含有の切片を得た後、同一の制限酵素で処理された前記動物細胞発現ベクターに挿入してpcmvEPを製作した。EPO遺伝子が挿入された発現ベクターをリポフェクトアミン(Lipofectamine、Gibco社)を用いて蛋白質発現細胞株のCHO細胞株に形質感染させ、発現量を増加させるためにMTXの濃度を120nMまで段階的に上昇させてリットル当たり100mg以上のEPO発現を確認した。
【0086】
(6−2)ヒト赤血球生成因子−PEG連結体の製造
両末端にアルデヒド反応基を持つ分子量3.4kDaのポリエチレングリコールALD−PEG−ALD(Shearwater社)を、前記で生産されたEPOが5mg/mLの濃度で溶解された100mMのリン酸塩緩衝液にEPO:PEGのモル比が1:1、1:2.5、1:5、1:10および1:20となるように添加した。ここに還元剤のナトリウムシアノボロハイドライド(NaCNBH、Sigma社)を最終濃度が20mMとなるように添加し、4℃で徐々に攪拌しながら2時間反応させた。EPOのアミノ末端部位に選択的にPEGが連結され、PEGとインターフェロンアルファが1:1で結合した連結体を得るために、前記反応混合物をもってSuperdex(SuperdexR、Pharmacia社)サイズ排除(size exclusion)クロマトグラフィを行った。溶出液として10mMのリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)を用いてEPO−PEG連結体を精製し、PEGと結合していないEPO、未反応PEGおよび2つのEPOがPEGと連結された二量体副産物を除去した。精製されたEPO−PEG連結体を5mg/mLの濃度で濃縮した。これにより、反応性が最も良くて二量体などの副産物が少ないEPO:PEGの最適反応モル比は1:2.5〜1:5であることを確認した。
【0087】
(6−3)ヒト赤血球生成因子−PEG連結体と組み換え免疫グロブリン不変領域の結合体製造
前記実施例(6−2)で製造したEPO−PEG連結体と実施例(4−3)でHM10929形質転換体から生産した免疫グロブリン不変領域を結合させた。具体的に、実施例(4−3)で準備された免疫グロブリン不変領域断片(約53kDa)を10mMのリン酸塩緩衝液に溶解させた後、EPO−PEG連結体:不変領域断片のモル比がそれぞれ1:1、1:2、1:4および1:8となるようにEPO−PEG連結体と混合して反応させた。反応液を100mMのリン酸塩緩衝液状態に作り、還元剤としてNaCNBHを最終濃度が20mMとなるように添加した後、4℃で20時間徐々に攪拌しながら反応させた。これから反応性が最も良くて二量体などの副産物が少ないEPO−PEG連結体:不変領域断片の最適反応モル比は1:2であることを確認した。
【0088】
結合反応後、未反応物質および副産物を除去し、生成されたEPO−PEG−免疫グロブリン不変領域蛋白質結合体を精製するために、高圧液体クロマトグラフィを行った。カップリング反応液を脱塩カラムHiPrep26/10(Pharmacia社)を用いて10mMのTris緩衝液(pH8.0)で交換した後、Q HP 26/10カラム(Pharmacia社)50mLに8mL/分の流速で負荷して結合させ、その後直線濃度勾配(塩化ナトリウムの濃度0M→0.2M)法で所望の分画を得た。溶出した分画を10mMの酢酸緩衝液(pH5.2)で平衡化されたpolyCAT21.5×250カラム(polyLC社)に15分mL/分の流速でさらに結合させた後、直線濃度勾配(塩化ナトリウムの濃度0.1M→0.3M)法で溶出させて高純度の分画を得ることができた。
【0089】
(6−4)薬物動態学的な解析
各群当たり5匹のSDラットに、前記実施例(5−1)で得た天然型EPOとシアル酸の量を増やして半減期を増大させたAranesp(Amgen社)、そして実施例(5−3)で製造したEPO−PEG−Fc結合体(試験群)を100μg/kgとなるように皮下注射した。対照群は、注射してから0.5.1、2、4、6、12、24および48時間後に採血し、試験群は注射してから1、12、24、30、48、72、96、120、144、168、192、240、288、336および384時間後に採血した。血液試料は、1.5mLのチューブに集めて凝固させた後、エッペンドルフ高速マイクロ遠心分離機で10分間遠心分離して血球細胞を除去した。血清内の蛋白質量は、EPOに対する抗体を用いたELISA法によって測定した。
【0090】
表3および図5は、各天然型蛋白質と結合蛋白質の血中半減期を示したもので、本発明によって生産された免疫グロブリン不変領域をキャリアとして用いて製造された結合蛋白質EPO−PEG−Fc(E.coli)結合体がEPO(天然型EPO)に比べて著しく増加した血中半減期を示した。これは増加した血中半減期を示す高糖鎖化EPO(hyperglycosylated EPO、Aranesp)よりも優れたものであることが確認された。
【0091】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0092】
上述したように、本発明の方法によって大腸菌シグナル配列を用いて水溶性の形態で免疫グロブリン不変領域を量産することができ、生産された免疫グロブリン不変量領域は、生理活性ペプチドに結合して免疫反応を誘発することなく、生理活性ポリペプチドの血中半減期を増加させ且つ生理活性を改善させるのに有用に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】図1は、大腸菌形質転換体から発現された免疫グロブリンFc領域をウエスタンブロットで分析した結果である。
【図2】図2は、大腸菌形質転換体から発現された二量体免疫グロブリンFc領域を非還元条件と還元条件のSDS−PAGEで分析した結果である。
【図3】図3は、大腸菌形質転換体から発現された単量体免疫グロブリンFc領域を非還元条件と還元条件のSDS−PAGEで分析した結果である。
【図4】図4は、大腸菌形質転換体から発現された免疫グロブリンFc領域と天然型免疫グロブリンの活性酵素免疫測定によるClq結合能を分析した結果である。
【図5】図5は、天然型EPO、Aranesp、EPO−PEG−大腸菌由来Fc結合体の薬物動態を分析したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大腸菌由来のシグナル配列をコードする核酸配列および免疫グロブリン不変領域をコードする核酸配列を含む組み換え発現ベクターを原核細胞に形質転換する段階と、前記形質転換体を培養する段階と、形質転換体から発現された免疫グロブリン不変領域を分離、精製する段階とを含む免疫グロブリン不変領域の量産方法。
【請求項2】
免疫グロブリン不変領域が、IgG、IgA、IgM、IgE、IgD、これらの組み合わせ、またはこれらのハイブリッドの不変領域よりなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
IgGが、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、これらの組み合わせ、またはこれらのハイブリッドの不変領域よりなる群から選択される請求項2に記載の方法。
【請求項4】
免疫グロブリン不変領域がIgG不変領域である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
免疫グロブリン不変領域がヒト非糖鎖化IgG4不変領域である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
免疫グロブリン不変領域が、C1、C2、C3およびC4ドメインよりなる群から選択される1〜4個のドメインから構成される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ヒンジ領域をさらに含む請求項6に記載の免疫グロブリン不変領域の量産方法。
【請求項8】
組み換え発現ベクターが、重鎖不変領域をコードする核酸配列および軽鎖不変領域をコードする核酸配列を含む請求項1に記載の核酸配列を含む方法。
【請求項9】
免疫グロブリン不変領域が、配列番号21、22、23、24、25、27、29、30、34、35のアミノ酸配列を有する請求項1に記載の方法。
【請求項10】
大腸菌由来のシグナル配列が、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、Ipp、熱安定性エテロトキシンII、LamB、PhoE、PelB、OmpAまたはマルトース結合蛋白質シグナル配列である請求項1に記載の方法。
【請求項11】
熱安定性エンテロトキシンIIシグナルペプチドが、配列番号36、37、38、39、40、41、42、43、44、45または46のアミノ酸配列を有する請求項10に記載の方法。
【請求項12】
組み換え発現ベクターが、pSTIIG1CH1_3、pSTIIdCG1Fc、pSTIIdCG1SFc、pSTIIdCG1SFFc、pSTIIG1MopSTIIdCG2FC、pSTIIdCG4Fc、pSTIIG4CH1_3、pSTIIG4Mo、pSTIIG4H_Kである請求項1に記載の方法。
【請求項13】
形質転換体が、大腸菌BL21/pSTIIG1CH1_3(HM10935)、BL21/pSTIIdCG1Fc(HM10927)、BL21/pSTIIdCG1SFc(HM10928)、BL21/pSTIIdCG1SFFc(HM10929)、BL21/pSTIIG1Mo(HM10930)、BL21/pSTIIdCG2Fc(HM10936)、BL21/pSTIIdCG4Fc(HM10932)、BL21/pSTIIG4CH1_3(HM10931)、BL21/pSTIIG4Mo(HM10933)、BL21/pSTIIG4H_K(HM10934)である請求項1に記載の方法。
【請求項14】
形質転換体が原核細胞大腸菌である請求項1に記載の方法。
【請求項15】
請求項1の方法で製造された免疫グロブリン不変領域。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−532098(P2007−532098A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−539397(P2006−539397)
【出願日】平成16年11月13日(2004.11.13)
【国際出願番号】PCT/KR2004/002943
【国際公開番号】WO2005/047335
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(505214032)ハンミ ファーム.インダストリー カンパニー リミテッド (4)
【Fターム(参考)】